説明

物質乱用及び依存の治療方法

本発明は、不安の感覚を緩和するために生理学的動因により引き起こされる適応症に関連する症候及び疾患を治療し、軽減するための方法及び組成物に関する。より詳細には、本発明は、物質乱用及び離脱に関連する症候を治療し、軽減するための方法及び組成物に関する。本発明は、抗うつ薬、アヘン剤、ニコチン又はマリファナの中毒に関連する症候を治療し、軽減するための方法及び組成物に関する。一方法において、患者は、GABAA受容体a4サブユニットの発現を調節することによりGABAAを直接又は間接的に調節する組成物で治療される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不安の感覚を緩和するために生理学的動因により引き起こされる適応症に関連する症候及び疾患を治療し、軽減するための方法及び組成物に関する。より詳細には、本発明は、物質乱用及び離脱に関連する症候を治療し、軽減するための方法及び組成物に関する。本発明は、抗うつ薬、アヘン剤、ニコチン又はマリファナへの中毒を治療するための方法及び組成物に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本発明は、優先権に関して、米国特許仮出願第60/669,033号(表題「物質乱用の治療のための改良型方法」)(2005年4月7日出願)、米国特許仮出願第60/728,979号(表題「物質乱用及び依存症の治療方法」)(2005年10月21日出願)及び米国特許仮出願第60/729,013号(表題「不安関連疾患の治療方法」)(2005年10月21日出願)によっている。
【0003】
本発明は、変更されたGABAA受容体状態におけるヒトの診断方法にも関する。特に、当該方法は、患者におけるプロゲステロンレベル、さらに好ましくは患者の脳内のアロプレグナノロンレベルを定性的又は定量的に測定することにより、本発明の治療方法に対する患者の相対的受容性を確定することに関する。
【0004】
本発明は、第一段階において、治療に対する患者の生理学的受容性を改善する治療方法にも関する。特に、当該方法は、内因性神経活性ステロイドの上方制御を防止すること、又は内因性神経活性ステロイドの産生を活性化するように下方制御して外因性物質と内因性物質との間の交差耐性効果を回避することに関する。
【0005】
本発明は、第二段階において、或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節し、したがって包括的治療計画における心理学的及び生理学的中毒及び依存に関連する離脱症候を治療するための方法及び組成物を用いる治療方法にも関する。本発明は、包括的治療計画における本発明の方法及び組成物と組合せた従来の治療プログラムの任意の使用にも関する。
【0006】
より詳細には、本発明は、GABAA受容体α4サブユニットの発現を調節することによりGABAAを直接又は間接的に調節する一クラスの化合物からの薬学的組成物を用いるための方法、装置及び治療プロトコールに関する。
【0007】
本発明は、或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する一クラスの化合物及びこのような化合物の同定方法にも関する。より詳細には、選択される化合物は、a)GABAAの部分的アゴニストとして作用するもの;b)GABAA受容体α4サブユニットの上方制御を抑制し、且つ/又はGABAA受容体α1サブユニット対GABAA受容体α4サブユニットの相対比を増大するもの;並びにc)当該組成物が患者の系中にもはや存在しなくなると、GABAA受容体α4サブユニットの上方制御を生じない、且つ/又はGABAA受容体α1サブユニット対GABAA受容体α4サブユニットの相対比の低減を生じないものである。
【背景技術】
【0008】
物質中毒及び乱用は、多因性神経学的疾患である。時が経つにつれ、内因性及び外因性の両方の種々の物質への反復曝露は、受容体後シグナル伝達カスケードにおける神経伝達回路及び適応の修飾を引き起こす。この神経細胞修飾のいくつかの作用が存在する。中で
も、報酬経路を活性化して、抑うつ動機づけ及び気分をもたらす天然報酬の能力の低減、ならびに生理学的変化を補償する強迫増大が存在する。
【0009】
中毒の基礎を成す共通認知は「報酬回路」ということであるが、快楽は、必ずしも人をかれらの中毒に駆り立てるのに十分強い衝動であるわけではない。むしろ常用行為は、誰かが離脱を経験している時に生じる不安を管理及び/又は回避したいという強い欲求から生じる。
【0010】
物質依存、例えばベンゾジアゼピン乱用のための伝統的治療は、認知行動療法、薬物療法又はその組合せに基づいていた。しかしながら従来の治療方法は、中毒及び依存に伴って起こる生理化学的変化を取り扱わないという点で失敗している。したがって離脱症候及び常用物質に対する欲求を制御するための従来の治療は、成功が限定され、そしてしばしば望ましくない副作用を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、常用物質に対する心理学的中毒ならびに生理学的依存を防止するための改良型方法、組成物及び治療プロトコールが必要とされている。
【0012】
また、物質乱用により引き起こされる欲求及び離脱症候を制御するための改良型治療方法も必要とされている。
【0013】
また、患者の脱落率低減を生じる物質乱用を治療するための改良型方法及びプロトコールも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
その主要な態様及び広範な記述に従って、本発明は、治療のために患者を準備し、そして或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節するための方法及び組成物に関する。したがって本発明は、行動治療及び/又は薬理学的治療の包括的治療計画の状況において種々の外因性及び内因性物質に関する心理学的中毒及び生理学的依存に関連する離脱症候を治療する。
【0015】
本発明の多段階治療方法は、常用物質及び/又は依存誘導性物質、例えばオピオイド及び誘導体、ニコチン、ベンゾジアゼピン、カフェイン、大麻又は抗うつ薬(これらに限定されない)からの離脱を経験している患者における生理化学的変化をリセットするために1つ又は複数の化合物を用いる。
【0016】
本発明は、不安の感覚を緩和するために生理学的動因により引き起こされる適応症に関連する症候及び疾患を治療し、軽減するための方法及び組成物に関する。より詳細には、本発明は、物質乱用及び離脱に関連する症候を治療し、軽減するための方法及び組成物に関する。一実施形態では、患者は、GABAA受容体α4サブユニットの発現を調節することによりGABAAを直接又は間接的に調節する一クラスの化合物からの組成物で治療される。
【0017】
本発明は、第一段階において、治療に対する個体の生理学的受容性を改善する方法も提供する。特に、当該方法は、内因性神経活性ステロイドの上方制御を防止すること、又は内因性神経活性ステロイドの産生を活性化するように下方制御して交差耐性を回避することに関する。
【0018】
本発明は、第二段階において、或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節し
、したがって包括的治療計画における心理学的及び生理学的中毒及び依存に関連する離脱症候を治療するための方法及び組成物を用いる方法も提供する。本発明は、任意に、包括的治療計画において本発明の方法及び組成物と組合せて従来の治療プログラムを用いることにも関する。
【0019】
GABAA受容体発現を選択的に調節するクラスの化合物からの一化合物を投与することにより抗うつ薬中毒を治療するための方法も提供される。一実施形態では、当該方法は、治療適合性に関して患者を査定するステップと;治療のために患者を準備するステップと;そしてGABAA受容体発現を選択的に調節するクラスの化合物からの一化合物を患者に投与するステップとを包含する。
【0020】
GABAA受容体発現を選択的に調節するクラスの化合物からの一化合物を投与するステップを含むアヘン剤中毒を治療するための方法も提供される。一実施形態では、当該方法は、治療適合性に関して患者を査定するステップと;治療のために患者を準備するステップと;GABAA受容体発現を選択的に調節する化合物のクラスからの一化合物を患者に投与するステップとを包含する。
【0021】
ニコチン中毒を治療するための方法であって、治療適合性に関して患者を査定するステップと;治療のために患者を準備するステップと;GABAA受容体発現を選択的に調節する化合物のクラスからの一化合物を患者に投与するステップとを包含する方法も提供される。
【0022】
マリファナ中毒を治療するための方法であって、治療適合性に関して患者を査定するステップと;治療のために患者を準備するステップと;GABAA受容体発現を選択的に調節する化合物のクラスからの一化合物を患者に投与するステップとを包含する方法も提供される。
【0023】
本発明は、或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する一クラスの化合物及びこのような化合物の同定方法も提供する。より詳細には、選択される化合物は、a)GABAAの部分的アゴニストとして作用するもの;b)GABAA受容体α4サブユニットの上方制御を抑制し、且つ/又はGABAA受容体α1サブユニット対GABAA受容体α4サブユニットの相対比を増大するもの;並びにc)当該組成物が患者の系中にもはや存在しなくなると、GABAA受容体α4サブユニットの上方制御を生じない、且つ/又はGABAA受容体α1サブユニット対GABAA受容体α4サブユニットの相対比の低減を生じないものである。
【0024】
したがって、神経ステロイドの形成を抑制するための方法及び組成物を提供することが、本発明の一目的である。
【0025】
GABAA受容体のような塩素イオンチャネルを調節するための方法及び組成物を提供することが、本発明の別の目的である。
【0026】
刺激物質乱用の症候を治療するための方法及び組成物を提供することが、本発明の別の目的である。
【0027】
抗うつ薬、アヘン剤、ニコチン又はマリファナへの中毒を治療するための方法及び組成物を提供することが、本発明の別の目的である。
【0028】
本発明の別の目的は、抗うつ薬、アヘン剤、ニコチン又はマリファナへの中毒を治療するための薬剤の製造におけるGABAA受容体モジュレーターの使用を提供することであ
る。
【0029】
本発明の別の目的は、抗うつ薬、アヘン剤、ニコチン又はマリファナへの中毒を治療するための薬剤の製造における神経ステロイド産生阻害剤の使用を提供することである。
【0030】
本発明のこれらの並びにその他の目的、特徴及び利点は、開示された実施形態及び特許請求の範囲についての以下の詳細な説明、並びに提示された図面の再検討後、明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
I.序論
薬物中毒は、強迫的薬剤取込み、取込みの制御の喪失、ならびに社会的及び職業的機能の減損により特性化される障害である。報酬機能におけるアロスタティック変化は過剰薬剤取込みにつながり、薬剤中毒の発症に関与する神経生物学的メカニズムを同定するための枠組みをもたらす。神経薬理学的試験は、脳報酬経路の負の強化又は本質的にその効能の低減を生じ、さらに中毒を生じる脳の報酬及びストレスの回路における特定の神経化学的メカニズムの調節不全に関する証拠を提供した。アロスタティックモデルは、遺伝的脆弱性を伴う慢性薬剤摂取により発生される脳動機づけ系における分子、細胞及び回路神経適応を統合する。気分の正及び負の変化はともに、物質依存においてアロスタシスと強く相関する。さらに、物質乱用は、コルチコトロフィン放出因子(CRF)及び神経ペプチドY(NPY)(ストレス応答に影響を及ぼすことが既知であるペプチド)に対する神経生理学的応答における長期変更をもたらす、ということが示されている。
【0032】
しかしながら物質乱用は、個体の副作用を回避する必要性によりさらに特性化される疾患としてより正確に特性化され得る。一般的依存及びその後の離脱状況において、薬剤への反復曝露は、動機づけ及び動因(前帯状回による)、報酬(側坐核及び腹側被蓋領域による)、ならびに記憶及び学習機能(扁桃体及び海馬による)が修正されて、皮質抑制的影響(眼窩前頭皮質、ここに制御が位置する)の損失を生じる変化のカスケードを始動させる神経学的機能不全を引き起こす。多くの場合、報酬中心が漸減的に応答性であるという事実に関わらず、抑制制御のこの損失は、結果と関係なく、薬剤を獲得し且つ消費するための欲求及び不合理な行為に関与する。
【0033】
ほとんどの抑制制御に関与するGABA作動性系は一般的には、アロスタティック平衡においてGABAA受容体及びグルタミン酸受容体と共に開始する。アロスタティック平衡は、依存、耐性又は離脱を経験していない正常個体における細胞膜上の受容体の正常補体を指す。特定の物質の取込みは、被験者において、報酬の感情及び不安低減をもたらす。「物質」とは、不安を軽減する任意の物質と定義される。しかしながら長期使用とその後の物質からの離脱は、GABAA受容体により媒介されるGABA調節不全を引き起こして、グルタミン酸及びGABAA受容体にそれらの相対的アロスタティック平衡を失わせ、さらに抑制レベルを修飾させる。
【0034】
したがってGABAA受容体が調節不全の場合、この調節不全の臨床的症状は最初は不安である。さらに、不安はしばしば、強迫的行動を伴う。或る種の強迫的行動、例えば薬物乱用、賭博、強迫的性的活動、及び強迫的ビデオゲーム遊戯(これらに限定されない)は、増大された多幸感、神経ステロイド産生及び脳刺激をもたらし得る。これらの活動のその後の中断は、不安増大及びGABAA調節因子調節不全によりそれ自体を現す離脱症候を生じ得る。
【0035】
非依存性被験者では、脳中の最も一般的なGABAA受容体は、ベンゾジアゼピン感受性受容体であるα1β2γ2受容体である。α1サブユニットは、ベンゾジアゼピンに関する
重要な結合部位である。常用物質からの人の離脱中、α1サブユニットの量はα4サブユニットの量に比して低減する。GABAA受容体α4サブユニットと比較した場合のGABAA受容体α1サブユニットの数の低減のためGABA取込みが低減されると、物質からの離脱はしばしば、抑うつ、不安、衝動及び不快の症候を引き起こす。ベンゾジアゼピンはα4サブユニットと好ましくは結合せず、したがってα4β2γ2受容体はベンゾジアゼピン非感受性受容体と考えられる。α1受容体サブユニットに比して多量のα4受容体を有する人は、「離脱状態」にあると考えられ得る。したがって本発明は、個体を「離脱状態」から非離脱状態に、又は「正常」受容体平衡に回復することに関する。
【0036】
本発明は、不安の感覚を緩和するために生理学的動因により引き起こされる適応症に関連する症候及び疾患を治療し、軽減するための方法及び組成物にも関する。本発明は、物質乱用及び離脱に関連する症候を治療し、軽減するための方法及び組成物にも関する。
【0037】
本発明はさらに、或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する一クラスの化合物、及びこのような化合物の同定方法に関する。より詳細には、選択される化合物は、a)GABAAの部分的アゴニストとして作用するもの;b)GABAA受容体α4サブユニットの上方制御を抑制し且つ/又はGABAA受容体α1サブユニット対GABAA受容体α4サブユニットの相対比を増大するもの;そしてc)該組成物が患者の系中にもはや存在しなくなると、GABAA受容体α4サブユニットの上方制御を生じず且つ/又はGABAA受容体α1サブユニット対GABAA受容体α4サブユニットの相対比の低減を生じないものである。
【0038】
本発明は、変更されたGABAA受容体状態におけるヒトの診断方法にも関する。特に当該方法は、患者におけるプロゲステロンレベル、さらに好ましくは患者の脳内のアロプレグナノロンレベルを測定することにより、本発明の治療方法に対する患者の相対的受容性を確定することに関する。
【0039】
本発明は、第一段階において、治療に対する患者の生理学的受容性を改善する治療方法にも関する。特に、当該方法は、内因性神経活性ステロイドの上方制御を防止すること、又は内因性神経活性ステロイドの産生を活性化するように下方制御して交差耐性を回避することに関する。
【0040】
本発明は、第二段階において、従来の治療プログラムと組合わせて或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節し、したがって包括的治療計画において心理学的及び生理学的中毒及び依存に関連する離脱症候を治療するための方法及び組成物を用いる治療方法にも関する。
【0041】
より詳細には、本発明は、GABAA受容体α4サブユニットの発現を調節することによりGABAAを直接又は間接的に調節する一クラスの化合物からの薬学的組成物を用いるための方法、装置及び治療プロトコールに関する。
【0042】
本発明はさらに、物質乱用、依存及び耐性を治療するための方法、装置及び治療プロトコールに関する。
【0043】
II.GABA作動性系
a.ガンマ−アミノ酪酸(GABA)
GABAは、脳及び脊髄中の抑制性シナプスで作用する神経伝達物質である。GABA系は、他の場所の中でも特に、記憶形成に関連する脳の領域である海馬に見出される。グルタミン酸又はグルタミン酸塩は、興奮性神経伝達物質として、そしてGABA作動性ニューロン中でのGABAの合成のための前駆体として、脳機能において重要である。グル
タメートは、以下でさらに詳細に記載されるイオンチャネル型及び代謝型グルタミン酸受容体の両方を活性化する。GABAシグナルは、記憶形成の登録及び固定段階を妨害する。
【0044】
b.GABA受容体タイプ
GABA受容体は、それらの内因性リガンドとしてGABAを有する受容体の一群である。イオンチャネルそれ自体であるイオンチャネル型受容体、及び中間体によりイオンチャネルを開放するGプロテイン結合受容体である代謝型受容体を含むGABA受容体のいくつかのクラスが既知である。グルタミン酸及びGABAは、それらの受容体の活性化によりそれらの作用を媒介する。
【0045】
イオンチャネル型GABA受容体(GABAA受容体)は、21のサブユニットから成る8つのサブユニットファミリー(α1-6、β1-4、γ1-4、δ、ε、π、θ、p1-3)の存在を基礎にしており、並外れた構造的不均質性を示す。GABAA受容体は、5つの円形に配列された相同サブユニットで構成され、薬剤作用の重要部位である。非常にしばしば、GABAA受容体異性体は、2つのαサブユニット、2つのβサブユニット及び1つのγサブユニットを含む。代謝型GABA受容体(GABAB受容体)は、2つのサブユニット:即ちGABAB1及びGABAB2から成る。GABAB受容体の活性化後の生理学的応答は、GABAB1及びGABAB2の共同アセンブリ(co-assembly)を要し、GABAC受容体も元々存在する。
【0046】
c.GABAA受容体サブユニット
GABAA受容体系は、多数の中枢神経系障害に関与し、GABAA受容体リガンドを潜在的治療薬にする。GABAA受容体は、グリシン、ニコチン様コリン作動性及びセロトニン5HT3受容体と同一のスーパーファミリーの受容体に属するリガンド依存性イオンチャネルである。いくつかのGABAA受容体の機能増強は、以下でさらに詳細に記載されるベンゾジアゼピンの主要作用を説明する。さらに、多数の化合物が、GABAA受容体に対する機能的選択性を示している。
【0047】
GABAA受容体複合体は、7つの異なるクラスからのサブユニットの共同アセンブリにより形成される五量体受容体タンパク質構造である。5つのサブユニットは、中心塩素イオン透過性孔を囲む環状アレイ中に置かれる。ニコチン様アセチルコリン受容体中のリガンド誘導性チャネル開口に関するメカニズムはリガンド結合ドメイン中のサブユニットの回転を包含する、ということが示唆されている。GABAA受容体がチャネル開口に関して同様のメカニズムを利用すると仮定すると、GABAA受容体はニコチン様アセチルコリン受容体と同一のスーパーファミリーに属するため、大型置換基はチャネル開口を妨げて(立体障害)、或る種の化合物のアンタゴニスト作用を生じ得る。さらに、GABA受容体の活性化は、いくつかのその他の系に影響を及ぼして、最終的には中枢神経系の全体的機能の全身性急性修飾を生じる。
【0048】
サブユニットの特定の組合せは異なる薬理学的及び生理学的特性を有する受容体を生じるが、GABAA受容体組成物は不変ではない。GABAA受容体媒介性抑制を促すことによりそれらの作用を生じる抗不安薬ベンゾジアゼピンからの離脱は、皮質及び海馬の両方におけるα4及びβ1サブユニットmRNAの定常状態mRNAレベルの増大を生じる。δサブユニットはしばしば、α4サブユニットを含むGABAA受容体サブタイプと関連づけられる、ということに留意すべきである。
【0049】
GABA及びGABAA受容体は、発作、抑うつ、不安及び睡眠障害のような疾患状態に関与する。GABA、並びにその他の直接又は間接的に作用するGABAA受容体アゴニスト(GABA模倣物)、例えばぞれぞれアロプレグナノロン及びテトラヒドロデオキ
シコルチコステロンのうちのいくつかは、α及びβサブユニット間の界面に位置する認識部位に特異的に結合する。しかしながら古典的ベンゾジアゼピン、例えばジアゼパム及びフルニトラゼパムは、αサブユニット及びγサブユニット間の界面に位置するアロステリック部位に結合する。
【0050】
より詳細には、GABAは、αサブユニット及びβサブユニット間の間隙に結合し、その作用は塩素イオンチャネルをゲート開口して、細胞中への塩素イオンの流入を可能にする。これは、一般的には、細胞の膜電位をより負とすることにより、ニューロン活性に及ぼす抑制作用を有する細胞を過分極して、結果的に脱分極閾値を増大して、作用電位を生じる。
【0051】
ほとんどの抑うつ及び鎮静薬、例えばベンゾジアゼピン精神安定薬、バルビツレート、麻酔薬及びアルコールは、細胞中に負荷電塩素イオンを蓄積して、鎮静又は麻酔作用を誘導するに際して、それらがGABAの作用を増強し得る独特の部位でGABAA受容体に及ぼす調節作用を有すると考えられる。
【0052】
GABAの分子の種々の部分のコンホメーション制限及びアミノ酸の官能基の生物立体的置換は、広範囲の特異的GABAAアゴニストをもたらす。これらの分子のいくつかは、GABAA受容体ファミリーの薬理学を理解するに際して重要な役割を果たす。
【0053】
GABAA受容体中の特定のαサブユニットアイソフォームの非存在又は存在は、或る種の薬剤に対する選択性を付与する。異なるαサブユニットは、ベンゾジアゼピンの別個の薬理学的作用、例えば鎮静−催眠作用及び抗不安作用も媒介する。ベンゾジアゼピンの長期投与は、これらの薬剤の作用のいくつかに対する耐性の発現を生じ、したがってそれらの臨床的効能を低減する。これらの依存に関する分子的基礎は依然として不明であるが、耐性及び依存はベンゾジアゼピンの薬力学に関連づけられるようである。
【0054】
ベンゾジアゼピンの長期投与は、種々のGABAAサブユニットをコードする遺伝子の発現を修飾する。遺伝子発現におけるこれらの変化は、GABAA受容体のそれらの薬理学的モジュレーターに対する感受性を変更し、それによりこれらの薬剤に対する耐性又は依存の発現の基礎を成す。GABAA受容体のサブユニット組成物は、ベンゾジアゼピン受容体リガンドに対するそれらの親和性及びこれらのリガンドの効能を確定する。例えば古典的ベンゾジアゼピンアゴニスト(例えばジアゼパム)、イミダゾピリジン、イミダゾキノロン及びピラゾロピリミジンは、α4サブユニット又はα6サブユニットを含むGABAA受容体に対する親和性又はGABAA受容体での効能を示さない。
【0055】
ネイティブGABAA受容体のサブユニット組成物は、それらの生理学的及び薬理学的機能を規定するに際して重要な役割を果たす。GABAA受容体のサブユニット組成物が調節されるメカニズムを理解することにより、GABAA受容体の生理学的、薬理学的及び病理学的役割を特性化することが可能である。したがって特異的GABAA受容体サブユニット遺伝子の発現は、種々の生理学的及び薬理学的モジュレーター、例えば薬理学的作用物質、内因性神経ステロイド及び食物(これらに限定されない)により影響を及ぼされ得る。
【0056】
例えば、ベンゾジアゼピン、ザルペロン、ゾルピデム又は神経ステロイドへの長期曝露及びその後の離脱は、α4サブユニットmRNAの増大を含む特異的GABAA受容体mRNAの及びポリペプチドサブユニットの発現における、並びに培養細胞中でのGABAA受容体機能における選択的変化を生じる。ジアゼパム又はイミダゼニルからの離脱は、GABA作用を強化するジアゼパムの能力低減及びGABA作用を強化するフルマゼニルの能力の両方に関連する。長期ベンゾジアゼピン治療及びその後の離脱は受容体サブユニッ
ト組成物における変化をもたらし、そしてこれらの新規合成受容体は、ベンゾジアゼピンに対して低応答性である。しかしながらα4サブユニットの上方制御は、ベンゾジアゼピン依存の発現のために、必然的に他のサブユニットの下方制御とカップリングされ得る。
【0057】
ザルペロン又はゾルピデムの離脱は、ジアゼパムの場合と同様に、α4サブユニットmRNAの量の顕著な増大を誘導した。GABAA受容体遺伝子発現に及ぼすザルペロン及びゾルピデムのこれらの作用は、ジアゼパムの場合と比較してこれらの薬剤の耐性傾向低減と、並びに身体依存及び離脱症候の両方を誘導するそれらの能力と一致する。
【0058】
α4サブユニットmRNA及びタンパク質の量のエタノール離脱誘導性増大は、GABA及びベンゾジアゼピンに対するGABAA受容体の感受性低減に関連する。アルコールの作用は、上記のように、脳中のほとんどの抑制性神経伝達を媒介するCl-流をゲート制御するGABAA受容体の機能を増強する薬剤の作用と類似する。短期的には、高用量のアルコールは、ネイティブ及び組換えGABAA受容体の両方でGABAゲート制御流を強化し、そして長期的には、GABAA受容体発現を変更する。エタノールは、種々の受容体により媒介される神経伝達、特にGABAA受容体により媒介される神経伝達の調節によりその中心的作用を引き出す。長期エタノール投与はサブユニット組成物にも、その結果としてネイティブGABAA受容体の機能的特性にも影響を及ぼす、ということが示されている。エタノールの薬理学的プロフィールはベンゾジアゼピンのものと類似しており、そして交差耐性及び依存の発現も生じる。
【0059】
エタノール離脱の時点でのジアゼパムへの曝露は、多量のα4サブユニットmRNAの離脱誘導性増大と拮抗する。ジアゼパムによるエタノールの置換も、細胞代謝におけるエタノール離脱誘導性減損を遮断する。エタノール離脱の時点でGHBに曝露された細胞は、多量のα4サブユニットmRNAの増大の抑制を生じる。
【0060】
エタノールに曝露される細胞中のフルマゼニルの調節作用は、エタノールに曝露されない細胞中で測定されるものと類似する。しかしながらそれに対して、エタノール離脱細胞では、3μMのフルマゼニルは、これらの細胞中でのα4サブユニットのエタノール離脱誘導性上方制御と一致してGABA惹起性Cl-流を強化する。エタノールの代わりの10μMのジアゼパム又は100mMのGHBの置換は、エタノール離脱により誘導される3μMのフルマゼニルの正の調節を無効にした。
【0061】
組換えGABAA受容体中のα4サブユニットの存在は、古典的ベンゾジアゼピンアゴニストに対する、そしてゾルピデムに対する感受性低減と、フルマゼニルによる別個のパターンの調節(アロステリック調節でないというよりむしろ正の)とに関連する。
【0062】
概して、GABAA受容体の異なる部位で作用するアゴニストによる長期治療は、大量の特異的受容体サブユニットmRNAの変化を伴う受容体の生化学的及び機能的特性における変化を引き起こす。さらに、神経ステロイド経路によりGABAA機能を調節する物質を用いた長期治療は、大量の特異的受容体サブユニットmRNAの変化を伴う受容体の生化学的及び機能的特性の変化を引き起こす。培養小脳顆粒細胞中のα4サブユニット遺伝子の発現におけるエタノール離脱誘導性増大がジアゼパムにより防止されるという観察は、ベンゾジアゼピン治療がヒトにおけるアルコール離脱症候を治療するのに有効である、という事実と一致する。よって、エタノール離脱により誘導される大量のα4サブユニットにおける迅速且つ顕著な増大は、したがって、ヒトにおけるジアゼパム感受性離脱症候の発現に関与し得る。
【0063】
III.GABA及び神経ステロイド
GABAA受容体の役割の特性化は、サブユニット組成物が調節されるメカニズムにつ
いての理解を要する。鎮静−催眠、抗不安又は抗痙攣薬の長期投与は、これらの受容体の薬剤感受性及び機能と同様に、GABAA受容体サブユニット遺伝子の発現に影響を及ぼし得るが、これは、このような変化に関与するメカニズムも、神経ステロイドのような内因性化合物によるGABAA受容体の生理学的調節の基礎となる、ということを示唆する。
【0064】
神経活性ステロイド3α−ヒドロキシ−5α−プレグナン−20−オン(アロプレグナノロン)及び3α,21−ジヒドロキシ−5α−プレグナン−20−オン(アロテトラジヒドロデオキシコルチコステロン又はTHDOC)は、ベンゾジアゼピン及びその他の抗不安薬と同様の抗不安、鎮静、催眠及び抗痙攣作用を誘導する。これらの神経ステロイドの濃度は、不安惹起、抗抑うつ又は抗精神病薬による治療に、並びに気分及び情緒的状態に影響を及ぼす生理学的又は病理学的条件(例えば抑うつ、ストレス、月経周期の黄体期、及び妊娠)の両方に応答してヒトの脳中で増大される。付加的研究は、ラット脳における基本的及びストレス誘導性ドーパミン放出の両方の生理学的調節物質としての内因性アロプレグナノロンに関係する。
【0065】
ステロイド代謝産物はGABA受容体複合体と反応して、脳興奮性を変更する。これらのステロイドのいくつかは、副腎ステロイドの局所的合成後又は代謝後に脳中に蓄積する。神経ステロイドは、末梢神経系及び中枢神経系で、末梢供給源から移入されるコレステロール又はステロイド前駆体から合成される。プロゲステロン及びエストロゲンはともに、中枢神経系のニューロンの興奮性を変更する。例えばエストロゲンはGABAA受容体で抑制を低減し、グルタミン酸受容体で興奮を増強し、そして興奮ニューロンシナプスの数を増大する。これに対して、プロゲステロンはGABA媒介性抑制を増強し、GABA合成を増大し、そしてGABAA受容体の数を増大する。特に、プロゲステロン及びその代謝物質は、脳興奮性に及ぼす顕著な作用を有することが実証されている。プロゲステロン及びその代謝物質のレベルは、月経周期の時期に伴って変わり、月経開始前に低減する。プロゲステロンは、ヒト脳中で、アロプレグナノロン(3α−OH−5α−プレグナン−20−オン又は3α,5α−THP)に容易に転換される。アロプレグナノロン誘導性GABAA受容体調節不全は、主要な不安関連疾患と密接に結びついており、したがって不安をアロプレグナノロン「離脱」と結びつける。
【0066】
神経ステロイドは、神経伝達物質依存性イオンチャネルとの相互作用により、ニューロン興奮性を急速に変更する。アロプレグナノロンはGABAA受容体の陽電位モジュレーターであり、塩素イオンチャネルをゲート開口して、細胞中への塩素イオンの流入を可能にする作用を増強する。これは、一般的には、ニューロン活性に及ぼす抑制作用を有する細胞を過分極して、したがってアロプレグナノロンは鎮静又は抗不安薬として作用して、不安を低減する。
【0067】
GABAA調節アロプレグナノロンは、上記のように、不安惹起性離脱症候の発生にも関与する。そこで示される離脱プロフィールは、その他のGABAA調節薬、例えばベンゾジアゼピン、バルビツレート及びエタノール等に関して報告されたものと類似する。したがって、脳中の伝統的伝達物質受容体に及ぼす神経活性ステロイドの作用は、受容体及び行動興奮性の固有のチャネル特性における変化を生じるGABAA受容体サブユニット組成物の変更をもたらす。変化は、海馬中のGABAA受容体のα4サブユニットに関するmRNA及びタンパク質の両方における有意の増大にも関連する。プロゲステロンの長期投与は、GABAA受容体のα4サブユニットの上方制御を阻害し、且つ/又は受容体活性を抑制する、ということも実証されている。
【0068】
したがって、内因性神経ステロイドアロプレグナノロンは、上記のように精神安定薬及びアルコールのようなGABAモジュレーターと類似の離脱特性を示し、長期投与後の急
激中断後の不安感受性を増大する。ニューロン興奮性の増大は、GABAAα4サブユニットの上方制御に起因すると考えられている。したがってα4β2γは、ホルモン離脱後に選択的に発現される。α4遺伝子転写物の遮断は、離脱特性を妨げる。
【0069】
GABAA受容体α1サブユニットに比してのGABAA受容体α4サブユニットの発現の増大は、したがって、多数の因子に起因し得る。これらの例としては、1)離脱時に、GABAA受容体α1サブユニットに比してGABAA受容体α4サブユニットを増大する、内因性及び外因性の両方の組成物;並びに2)GABAA受容体α4サブユニットの発現の増大又はGABAA受容体α1サブユニットの発現の低減を生じる、内因性又は外因性の両方の組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
或る種の物質(内因性及び外因性の両方)は、内因性神経ステロイド経路により、直接的又は間接的に、GABAAのアロスタティック制御における修飾を生じ得る。十分量で血液−脳関門を横断するほとんどの物質は、神経保護的神経ステロイド応答を刺激し得る。概して、物質が神経興奮性であるほど、より多くの神経ステロイド応答が達成される。神経ステロイドの上方制御を用いて、GABAA受容体活性が増強されて、一定状態の活性化を引き起こし、これは、時が経つにつれ、神経ステロイド耐性を生じ得る。したがって、神経興奮性物質がもはや存在しなくなると、脳の神経ステロイドレベルは天然レベルに低減して、神経ステロイドから「離脱」の状態を個体に経験させる。
【0071】
この「離脱」の経過において、或る種のGABAA受容体サブユニットは、不安のより大きな感情に対してヒトの脳を感受性にさせるように、発現されるか又は抑制され得る。特に、ヒトの脳のGABAA受容体α1サブユニットは、GABAA受容体α4サブユニットとの相対量で低減する。神経ステロイド「離脱」及びその後のα1サブユニットと比したα4サブユニットの上方制御の結果として、GABA受容体はGABAによりもはや有効に調節されず、したがって不安のより大きい感覚を経験しているヒトを生じる。
【0072】
一実施形態では、個体の思考の抑制性制御の程度の低下は、個体の脳における神経伝達物質GABAに対するシナプスGABAA受容体の受容性の修飾により引き起こされる。例えば物質乱用はGABA受容性を減少させる;したがって外因性物質又は「薬剤」はGABAA受容体を調節する。使用者が外因性物質の消費を中止すると、離脱時のGABAA受容体組成物における変化(即ちGABAA受容体α1サブユニットと比較した場合のGABAA受容体α4サブユニットの相対量増大)のために、受容体はGABAにより有効に調節されず、したがって不安を引き起こす。
【0073】
図1は、GABAAの直接及び/又は間接的アロステリック調節による抑制と脱抑制との間のスペクトルを示す。スペクトル100はさらに、抑制105と脱抑制110との間の範囲を示す。GABAの機能又はGABAA受容体115を直接又は間接的に増強する外因性又は内因性物質の増大は、GABAアゴニズムの増大を生じ、したがって抑制、不安緩解、記憶喪失及び鎮静の増大、並びに昏睡状態増大さえ生じ得る。
【0074】
しかしながら、詳細に上述したように、ストレス、薬剤使用、及び行動でさえもが、これらの適応応答を活性化し、そしてホメオスタシス、脳の内部平衡を乱す。内因性及び外因性物質の両方の離脱時に、スペクトル150で示されるようにGABAA受容体115のa1サブユニット125に比してα4サブユニット120の顕著な増大が認められる。GABAA受容体115のα4サブユニット120の増大は、ベンゾジアゼピン、並びにGABA及びGABAA受容体に作用し且つ/又はその機能を増強する他の組成物に対して受容体を無感受性にさせる。したがってアロスタシスに関与する系が自己調節しない(即ち、必要でない場合に止めず、又は必要な場合に活性化しない)場合、しばしば不安又は渇望の形態で示されるこの不活性な又は絶えず活性な状態を取り扱うために、脳は補償的動
因を経験する。
【0075】
IV.不安及び抑制
不安は、いくつかの、しばしばあいまいな不運、身体的感覚、例えば動悸、胸痛及び/又は息切れをしばしば伴う恐怖、懸念及び心配の感情の複雑な組合せ、懸念、恐怖、神経衰弱或いは畏怖の感情(不穏若しくは緊張を伴う)、並びに/又は正常な生活機能を妨げる恐怖の衰弱状態の予期において経験される漠然とした不快な情動を含めて、複数の点で定義され得る。不安は、診断尺度、例えばハミルトン不安評価尺度(Guy, William, "048
HAMA Hamilton Anxiety Scale," ECDEU Assessment Manual, U.S. Department of Health and Human Services, Public Health Service − Alcohol, Drug Abuse, and Mental Health Administration, Rev. 1976, pp. 194-198)又はベック不安尺度(Encephale. 1994 Jan-Feb; 20 (1): 47-55)(これらは参照により本明細書中で援用される)を用いて、臨床的に評価される。
【0076】
一実施形態では、不安は、図1に関して上述したように、個体が思考の抑制性制御の程度の低下を示す生理学的状態を含む。このような抑制性制御の程度低下は、ヒトの脳における内部思考フィルタリングメカニズムの中止、抑制又はそうでなければ下方制御により引き起こされ得る。図2を参照すると、内部思考フィルタリングメカニズム200は、眼窩前頭皮質210(制御を発揮することに関与すると考えられる)及び前帯状回215(動機づけ及び動因衝撃に関与すると考えられる)を含めてヒトの前頭前野205内に或る種の中心を包含する。これらの脳中心は、例えば脳の側坐核220及び腹側被蓋野225の領域を含む報酬回路のような或る種の生理学的入力により実質的に影響を及ぼされる。
【0077】
正常に調節されると、眼窩前頭皮質210はヒトの思考の制御に力を発揮して、漠然とした不快な情動並びに恐怖、懸念及び心配の感情により「圧倒される」個々の感情を有することを回避し得る。しかしながらGABAA受容体機能がともかくも減損される場合、GABA調節不全が起こり、そしてヒトの思考の制御に力を発揮する眼窩前頭皮質210の能力減損を、したがって抑制制御の程度の低下を生じ得る。
【0078】
その結果として、いかなる物質でも個体が得るのを確実にすることより、個体はこの不安を「取り扱う」よう強迫的に駆動されるようになるか、又は、不安の感情を排除することにより、例えば個体の思考の抑制制御を回復するために、個体の脳が必要であると考える活性が何であれ、関わるようになる。したがって、それは、自己破壊的と分類され得る行動、例えば物質乱用に意識的に個体を関わらせる不安の感情を取り扱うための生理学的動因である。
【0079】
不安を取り扱うための解決法の非存在下では、ヒトは一定のストレス応答状態にあり、これが、不安に対する解決法を探し出しそして獲得するよう、心理学的及び生理学的にヒトに指図する。不安の感情を取り扱うための生理学的動因により引き起こされているとして、多数の適応症が包含される。下記のように、或る種の適応症は、内因性及び外因性の両方の種々の物質に関する心理学的中毒及び生理学的依存により引き起こされる。
【0080】
外因性物質、例えばオピオイド、ベンゾジアゼピン、大麻、カフェイン、ニコチン及びその他の薬剤は、GABAA受容体機能に直接又は間接的に影響を及ぼし、そしてそれらの外因性物質が個体から差し止められると、GABAA受容体α4サブユニット(本明細書中では以後、α4サブユニットと一般的に呼ばれる)の発現を生じて、α1サブユニットの発現に比して増大する。
【0081】
特に、使用中、このような物質は、神経ステロイド媒介性経路を介してGABAAを直接又は間接的に刺激し得る。それらの物質が後に差し止められると、α4サブユニットの
量がα1サブユニットに比して増大する。この比の変化はしばしば一過性であり、そして逆転を受ける。しかしながら逆転しなくなると、即ちα4サブユニットがα1サブユニットに比してもはや下方制御しない場合、別個の病理生理学が出現する。上記のように、このような病理生理学が確立されると、GABAA受容体はしたがってベンゾジアゼピンに対して、並びに有効には、神経伝達物質GABAによる調節に対して低感受性になり、そして個体の思考及び行動に及ぶ抑制制御を発揮できにくい。
【0082】
一実施形態では、ほぼすべての物質に関するGABA活性ステロイドスコア(「GSスコア」)を算定することが可能である。血液脳関門を横切る、又は中枢神経系で活性であるすべての物質に関して、GABA活性ステロイドのレベルを有効に上げるためにその特定の物質の必要とされる最小閾値レベルが存在する。したがってGSスコアは、アロプレグナノロン(これに限定されない)のような神経ステロイド媒介性経路を介したGABAAの直接的アゴニズム及び間接的調節と相関する。例えばコカイン(これに限定されない)は、より強力であり、そしてGABA活性ステロイドのレベルを上げるためにより低い閾値用量のコカインを要するため、コカインはアスパルテームより低いGSスコアを有する。GSスコアは、数値を測定し、物質の相対的中毒特性に割り当てるための一方法である。
【0083】
図3aを参照すると、ベンゾジアゼピン感受性GABAA受容体300aが示されている。GABAA受容体は、複数のサブユニット、例えば2つのβ2サブユニット305a、1つのγ2サブユニット310a及び2つのα1サブユニット315aを含む。受容体サブユニットmRNAの機能及び発現に影響を及ぼすことにより、或る種の内因性及び外因性物質はGABAA受容体α4サブユニットの発現をα1サブユニットの発現に比して増大させる。図3bを参照すると、修飾GABAA受容体300bは、複数のサブユニット、例えば2つのβ2サブユニット305b、1つのγ2サブユニット310b及び2つのα4サブユニット315bを含む。図3cに示されているように、GABAA受容体はしたがって、ベンゾジアゼピンに対して、並びに有効には、神経伝達物質GABAによる調節に対して低感受性になり、そして個体の思考及び行動に及ぶ抑制制御を発揮できにくい。
【0084】
内因性物質も、類似の作用を有し得る。詳細には、GABA調節ステロイド、例えばプロゲステロン及びデオキシコルチコステロン(DOC)並びにそれらの代謝物質アロプレグナノロン及びテトラヒドロデオキシコルチコステロンはそれぞれ、GABAA受容体機能に影響を及ぼし、したがってプロゲステロン又はDOCが個体中で低減されるか又は「離脱される」と、GABAA受容体α4サブユニットの発現をα1サブユニットの発現に比して増大させる。
【0085】
さらに、内因性神経ステロイドのレベルの増大は、耐性と関連する。したがって神経ステロイド産生を増大する活動に関わることは、しばしば一過性解決法であるが、それは、上記のように、逆転しなくなると、即ちα4サブユニットがα1サブユニットに比してもはや下方制御しない場合、別個の病理生理学が出現するためである。抑制制御のこの損失は、渇望に作用する個体の能力を減損し、したがって結果と関係なく活動に関わるよう不合理な行動に関与する。
【0086】
身体内の多数の系は、脳中に存在するGABA作動性ニューロンによる抑制制御を受ける。内因性系がGABAによる抑制フィードバックを受ける場合には、GABAA受容体の調節不全がその特定の系の抑制低減又は脱抑制を生じ得る。したがって、主要な系が調節不全であり、よって脱抑制されるか否かが判定され、しばしば、患者が特定の適応症又は疾患状態を、より詳細には高レベルの内因性マーカーが存在する疾患状態を示すため留意される。例えば異常コレステロールレベル(これに限定されない)は、主要系の調節不全を示す。しかしながら主要系が調節不全である場合には、抑制系が脱抑制されるか又は
調節不全であるか否かが、そして内因性神経ステロイド、例えばアロプレグナノロン及びプロゲステロンの存在下で、その抑制系が回復されるか否かが判定され得る。
【0087】
例えば、プロラクチン(これに限定されない)はドーパミンを阻害し、したがって、患者が低レベルのドーパミンを示す場合、プロラクチンは抑制フィードバックを受けておらず、プロラクチンのレベル増大を生じることが示唆される。プロラクチンレベル増大は、少なくとも一部はGABAA受容体調節不全のためであり、したがって脱抑制のためであり得る。
【0088】
V.本発明の新規の治療方法に用いられる組成物
本明細書中に記載される組成物、及び本明細書中に記載されるスクリーニング方法により同定される化合物は、下記の治療方法において薬剤として用いられるよう意図される。この説明において用いられる場合、薬剤という用語は、活性成分、及び任意に非活性の緩衝又は安定化成分、例えば上記の薬学的組成物の投与の形態に適した薬学的に許容可能な担体若しくは賦形剤を含む処方又は非処方薬学的組成物及び/又は薬剤を指すために用いられる。薬剤の投与は、任意の適切な投与経路により、例えば経口的、吸入、肛門、舌下、頬、経皮的、鼻、インプラント又は非経口的に達成することができ、そのために、投与形態のための適切な賦形剤を用いて処方される、と理解されるべきである。
【0089】
表1は、本明細書に添付され、本明細書中に記載される化合物のクラスの中の薬理学的化合物の例示的な一覧を提示する。しかしながら、表1は、本発明と共に用いられ得る組成物のすべての包括的一覧というわけではなく、本発明はこのような化合物の使用に限定されない、ということに留意すべきである。
【0090】
a.神経ステロイド産生を抑制する化合物
一実施形態では、本発明は、神経ステロイド産生を抑制する化合物(「神経ステロイド産生の阻害薬」)の一クラスからの化合物の使用方法に関する。一実施形態では、化合物は、プロゲステロンのその代謝物質アロプレグナノロンへの転換を抑制するものである。別の実施形態では、化合物は、プロゲステロン代謝物質5α−ジヒドロプロゲステロンのアロプレグナノロンへの転換を抑制するものである。
【0091】
図4に示されるように、プロゲステロンは、まず、5α−レダクターゼと呼ばれる酵素により5α−ジヒドロプロゲステロンに転換される。5α−ジヒドロプロゲステロンは次に、3α−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ酵素により5α,3α−プレグナノロン(アロプレグナノロン)に転換される。
【0092】
ここで、本発明における使用のために神経ステロイド産生の特定のクラスの阻害薬が参照される。神経ステロイド産生のクラス及び阻害薬は本明細書中に概括的に記載されているが、当業者は、プロゲステロンのその代謝物質アロプレグナノロンへの転換を妨げる神経ステロイド産生の任意数の阻害薬が本発明に用いられ、そしてその一覧は包括的というわけではない、と理解するべきである。
【0093】
一実施形態では、プロゲステロンのアロプレグナノロンへの転換を遮断する治療的有効量の5−α−レダクターゼ阻害薬を個体に投与する。1つの例示的な5−α−レダクターゼ阻害薬は、フィナステリド又はその類似体若しくは誘導体である。好ましくは5α−レダクターゼ阻害薬は、I型阻害薬、II型阻害薬又はその組合せとして作用することができ、5α−レダクターゼ酵素にプロゲステロンの5α−ジヒドロプロゲステロンへの転換をさせないように、したがってプロゲステロン代謝物質アロプレグナノロンを作らせないようにし得る。
【0094】
5−α−レダクターゼ阻害薬に関する一般的に許容される用量投与レジメンが存在する。アロプレグナノロンの産生を最大限低減し、そして治療に対して個体を最も受容性にするために、本発明は、一般的に許容される用量投与レジメンの最大限度内での操作を意図する。
【0095】
一実施形態では、プロゲステロン代謝物質5α−ジヒドロプロゲステロンのアロプレグナノロンへの転換を遮断する治療的有効量の3−α−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ阻害薬を個体に投与する。1つの例示的な3−α−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼは、インドメタシン又はその類似体若しくは誘導体である。3−α−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ阻害薬に関する一般的に許容される用量投与レジメンが存在する。アロプレグナノロンの産生を有効に低減し、そして治療に対して個体を最も受容性にするために、本発明は、一般的に許容される用量投与レジメンの最大限度内での操作を意図する。
【0096】
Bitran他(1995)は、5−α−レダクターゼ阻害薬による治療がプロゲステロンのアロプレグナノロンへの転換を妨げ、そしてプロゲステロンの抗不安活性を排除する、ということを実証した。さらに、アロプレグナノロンの不安惹起性離脱特性は、インドメタシンのような3α−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ遮断薬の予めの投与により防止され得る、ということが示唆された。
【0097】
i.5α−レダクターゼ阻害薬
5α−レダクターゼ阻害薬は、5α−レダクターゼ酵素の量を有効に低減し、したがって神経ステロイド産生を抑制する抗アンドロゲン活性を有する薬剤の一群である。
【0098】
1.フィナステリド
フィナステリドは、合成4−アザステロイド化合物であり、5α−還元酵素阻害剤である。フィナステリドは4−アザアンドロスト−1−エン−17−カルボキサミド、N−(1,1−ジメチルエチル)−3−オキソ−,(5α,17β)−である。フィナステリドの実験式はC233622であり、その分子量は372.55である。
【0099】
フィナステリドは、競合的及び特異的5α−レダクターゼ阻害薬である。フィナステリドは、アンドロゲン受容体に対する親和性を有さず、そしてアンドロゲン性、抗アンドロゲン性、エストロゲン性、抗エストロゲン性又はプロゲステロン性の作用を有しない。
【0100】
プロゲステロンは、5α−レダクターゼイソ酵素によりGABAA受容体強化神経活性ステロイドアロプレグナノロンに代謝的に転換され、その後、3α−ヒドロキシステロイドオキシド還元される。フィナステリドは、競合的5α−レダクターゼ阻害薬として作用し、したがってプロゲステロンからのアロプレグナノロンの産生を遮断する。
【0101】
一実施形態では、フィナステリドは、10mg未満、好ましくは5mg未満の総1日用量で少なくとも1つの経口錠剤を用いて送達される。規制当局により認可される範囲で、フィナステリドはまた、ゲルカプセルで、又は注射若しくは注入により送達され得る、と理解されるべきである。フィナステリドは、出産適齢の女性が用いるべきでない。フィナステリドの副作用としては、乳房拡張及び圧痛、皮膚発疹、口唇の膨潤、腹痛、背痛、性欲減退、射精量減少、下痢、眩暈、頭痛、インポテンス及び精巣痛が挙げられる。
【0102】
2.デュタステリド
デュタステリドは、I型及びII型アイソフォーム両方のステロイド5α還元酵素(細胞内酵素)の選択的阻害剤である合成4−アザステロイド化合物である。デュタステリドは、化学的には(5α,17β)−N−{2,5ビス(トリフルオロメチル)フェニル}
−3−オキソ−4−アザアンドロスト−1−エン−17−カルボキサミドと指定される。デュタステリドの実験式はC2730622であり、分子量は528.5を示す。
【0103】
競合的I型及びII型5α−レダクターゼ阻害薬として、デュタステリドは、プロゲステロンのアロプレグナノロンへの転換を抑制する。デュタステリドは、ヒトアンドロゲン受容体と結合しない。
【0104】
一実施形態では、デュタステリドは、10mg未満、好ましくは0.5mg未満の総1日用量で少なくとも1つのカプセルを用いて送達される。規制当局により認可される範囲で、デュタステリドはまた、錠剤で、又は注射若しくは注入により送達され得る、と理解されるべきである。デュタステリドは、出産適齢の女性が用いるべきでない。デュタステリドの副作用としては、咳、嚥下困難、眩暈、動悸、蕁麻疹又はみみず腫れ、皮膚掻痒、目蓋若しくは眼周囲、顔面、口唇若しくは舌の脹れ又は膨潤、皮膚の赤味、息切れ、皮膚発疹、顔面、指、足及び/又は下肢の膨潤、胸の圧迫感、異常な疲労又は衰弱、喘鳴、異常射精、性交における関心低減、性行為又は欲求の低減、インポテンス、勃起を有したり又は維持する能力なし、性的能力、欲求、欲動又は行為の損失、或いは乳房膨潤又は乳房のうずきが挙げられる。
【0105】
3.その他の5α−レダクターゼ阻害薬
本発明は、その他の5−αレダクターゼ阻害薬、例えばa)4−アザ−4−メチル−5α−プレグナン−3,20−ジオン(AMPD)(下垂体プロゲステロン5−アルファ還元を抑制する)、b)シプロテロンアセテート、並びにc)スピロノラクトン(アンドロゲン又は男性ホルモンの産生への2つの経路を遮断する利尿薬であり、そのうちの1つが5α−レダクターゼの抑制である)の使用も包含する。
【0106】
本発明は、ノコギリヤシのような有機供給源を含む5−αレダクターゼ抑制の有機供給源の使用も包含する。ノコギリヤシ(Serenoa repens)は、5α−レダクターゼ阻害薬の天然供給源である。いくつかの研究は、6ヶ月間摂取された場合、それがフィナステリドに匹敵し得る、ということを示唆している。ノコギリヤシは、1)副作用が実質的にない、そして2)費用効果的であるために、有益である。
【0107】
ii.神経ステロイド産生のその他の阻害薬
本発明はさらに、3α−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ遮断薬の使用を包含する。プロゲステロンの不安惹起性離脱特性は、3α−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ遮断薬の先の投与により防止されるということを、Gallo及びSmith(1993)は示唆している。一実施形態ではインドメタシンが用いられる。インドメタシンは、発熱、疼痛及び炎症を低減する非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。それは、イブプロフェン及びナプロキセンと類似する。インドメタシンは、プロスタグランジンの産生を低減するに際して有効である。
【0108】
神経ステロイド産生を抑制するために用いられ得る任意の組成物が本発明に用いられ得ると理解されるべきであり、一実施形態では、化合物は好ましくは、それらが本発明の治療方法に用いられ得るか否かを判定するためにスクリーニングされる。
【0109】
詳細には、神経ステロイド産生の抑制をモデル化するために、適切な細胞モデルが用いられる。組成物の効率は、組成物の投与前及び組成物の投与後に、モデル中のプロゲステロン及びアロプレグナノロンの相対レベルを測定することにより測定される。プロゲステロン及びアロプレグナノロンの相対レベルが投与後に低減する場合、組成物は神経ステロイド産生に対する阻害薬として適切であり得る。
【0110】
b.或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する化合物
分子生物学研究は、GABAA受容体の高度の構造的不均質性を明示している。サブタイプの選択的又は特異的化合物の開発は、異なるGABA受容体サブタイプの生理学的及び病理学的役割についての理解のために重要であり、そして有益な治療薬をもたらし得る。機能的選択性が多数のGABAAアゴニストに関して得られる、ということが示されている。
【0111】
GABAA受容体の役割の特性化は、サブユニット組成物が調節されるメカニズムの理解を要する。鎮静−催眠、抗不安又は抗痙攣薬の長期投与は、これらの受容体の薬剤感受性及び機能と同様に、GABAA受容体サブユニット遺伝子の発現に影響を及ぼし得るが、これは、このような変化に関与するメカニズムも、神経ステロイドのような内因性化合物によるGABAA受容体の生理学的調節の基礎となり得る、ということを示唆する。
【0112】
部分的アゴニスト/アンタゴニストの効能のレベルは、該当する疾患又は依存による。したがって、受容体部位での部分的アゴニスト/アンタゴニストの効能又は活性のレベルを測定することにより、どんな疾患状態であるかを確定することができ、GABAA受容体サブユニットにおいてどんなコンホメーション変化が起きているかを確定できる。この情報に基づいて、或る種の組成物は、それらがGABAAサブユニット中で引き起こす変化によって分類され得る。さらに、GABAA受容体中のGABA結合部位はαサブユニット及びβサブユニット間の界面に位置するため、GABAAアンタゴニストは別個の不活性受容体コンホメーションと結合し、安定化し得る。
【0113】
したがって本発明は、或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する化合物の一クラスに関する。より詳細には、化合物は、GABAA受容体で、より詳細にはα4サブユニット又はα6サブユニットでアゴニストとして役立ち、そしてGABA流を積極的に強化し得るものである。
【0114】
より詳細には、選択される化合物は、a)GABAAの部分的アゴニストとして作用するもの;b)α4サブユニットの上方制御を抑制し、且つ/又はα4サブユニットの量に比してα1サブユニットの量を増大するもの;並びにc)化合物が患者の系中にもはや存在しなくなると、α4サブユニットの上方制御を生じない、且つ/又はα1サブユニットの量に比してα4サブユニットの量を増大させないものである。
【0115】
GABAA受容体α1サブユニットと比較した場合のGABAA受容体α4サブユニットの発現における変化は、多数の因子に起因すると考えられ得る。これらの例としては、1)GABAA受容体α1サブユニットに比してGABAA受容体α4サブユニット(及びその逆)を形質転換する、内因性及び外因性の両方の組成物;2)GABAA受容体α4サブユニットの発現の低減又はGABAA受容体α1サブユニットの発現の増大を生じる組成物;並びに3)現存するサブユニットレベルを修飾せず、むしろGABAA受容体α4サブユニットの上方制御を防止する組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
したがって選択される化合物は、α4サブユニットの発現に比して、GABAA受容体α1サブユニットの発現における増大を達成するものである。α1サブユニットの発現におけるこの増大は、以下のうちの1つ又は複数により達成され得る:a)α1サブユニットの発現を上方制御する;b)α4サブユニットの発現を下方制御する;c)α4サブユニットを遮蔽する;又はd)α4サブユニットの上方制御を防止する。
【0117】
したがって注目の中心は、或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する、そしてより詳細には、α4サブユニット対α1サブユニットの相対的平衡を、異常アロスタティック状態から正常状態により近づける化合物のクラスからの一化合物を用いることに
ある。
【0118】
i.フルマゼニル
一実施形態において、本発明は治療的に効果的な量の薬剤、及びより詳細には、薬物乱用の処置に対する方法における、フルマゼニル(これに限定されない)等のGABAAサブユニットの発現を調節するものの使用に関する。一実施形態では、この化合物は、或る特定のイミダゾベンゾジアゼピン及びエチル8−フルオロ−5,6−ジヒドロ−5−メチル−6−オキソ−4H−イミダゾ−[1,5−a][1,4]ベンゾジアゼピン−3−カルボキシレートの誘導体を含む場合があり、これにはカルボン酸、エステル、塩化アシル、酸無水物、アミド、ニトリル、アルキル、アルカン、シクロアルカン、アルケン、アルコール、アルデヒド、ケトン、ベンゼン、フェニル、及びそれらの塩等のカルボン酸官能基の様々な置換物(substitution)が包含される。別の実施形態では、この化合物は、フルマゼニル又はカルボン酸、エステル、塩化アシル、酸無水物、アミド、ニトリル、アルキル、アルカン、シクロアルカン、アルケン、アルコール、アルデヒド、ケトン、ベンゼン、フェニル、及びそれらの塩を含む。
【0119】
フルマゼニルは、GABAAの部分的アゴニストとして作用し、α4サブユニットの上方制御を抑制し、且つ/又はα4サブユニットの量に比してα1サブユニットの量を増大し、そして化合物が患者の系中にもはや存在しなくなると、α4サブユニットの上方制御を生じず、且つ/又はα1サブユニットの量に比してα4サブユニットの量を増大させない。
【0120】
ii.ミルチロン
別の実施形態では、化合物は、Mostallino et al., "Inhibition by miltirone of up-regulation of GABAA receptor α4 subunit mRNA by ethanol withdrawal in hippocampal neurons", European Journal of Pharmacology, 494 (2004) 83-90に記載されるように、ミルチロンを含み得る。
【0121】
iii.フラボノイド
別の実施形態では、化合物は、GABAAの部分的アゴニストとして作用し、α4サブユニットの上方制御を抑制し、且つ/又はα4サブユニットの量に比してα1サブユニットの量を増大し、そして化合物が患者の系中にもはや存在しなくなると、α4サブユニットの上方制御を生じず、且つ/又はα1サブユニットの量に比してα4サブユニットの量を増大させない或る種のフラボノイドを含み得る。
【0122】
上記のように機能し得る任意の組成物が本発明に用いられ得る、と理解されるべきである。一実施形態では、化合物は好ましくは、それらが本発明の治療方法に用いられ得るか否かを判定するためにスクリーニングされる。一実施形態では、化合物がGABAAの部分アゴニストとして機能し、α4サブユニットの上方制御を抑制し、そして化合物が患者の系中にもはや存在しなくなると、α4サブユニットの上方制御を生じないか否かを判定するために、実験が実行される。当業者はこのような実験を考案し得るが、このような実験の例示的な実施形態は、Mostallino et al., "Inhibition by miltirone of up-regulation of GABAA receptor α4 subunit mRNA by ethanol withdrawal in hippocampal neurons", European Journal of Pharmacology, 494 (2004) 83-90に提示されている。
【0123】
VI.新規の治療方法
本発明は、治療のために患者を準備し、そして或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節するための方法及び組成物を用いる包括的治療プロトコールに関する。したがって本発明は、行動及び/又は薬理学的治療の包括的治療計画の状況で、種々の外因性及び内因性物質に対する心理学的中毒及び生理学的依存に関連する症候を治療する。
【0124】
本発明の多段階治療方法は、常用及び/又は依存誘導性物質、例えばオピオイド及び誘導体、ニコチン、ベンゾジアゼピン、カフェイン、大麻又は抗うつ薬(これらに限定されない)からの離脱を経験している患者における生理化学的変化をリセットするために1つ又は複数の化合物を用いる。このような適応症の有効な治療は、種々の外因性物質に対する中毒及び生理学的依存の基礎を成す不適応性行動、即ち、α1サブユニットと比較した場合のGABAA受容体α4サブユニットの発現増大を取り扱う必要がある。
【0125】
したがって本発明の治療方法は、1)ヒトが治療に対して受容状態であるか否かを判定し、且つ/又は治療に対してヒトを受容状態にさせること、及び2)任意の解毒作用、処置及びアフターケアを含む前薬剤査定を包含する包括的治療プロトコールにおいて適切な薬剤を用いてヒトを治療することを含む。「受容状態」という用語は、本明細書中で用いる場合、患者が内因性及び外因性物質の両方から離脱される生理学的状態を指す。
【0126】
この説明で用いる場合、「物質乱用」という用語は、物質使用に対する個体の制御減損、有害結果にも関わらず物質使用を継続すること、強迫的物質使用及び/又は薬剤欲求を発現する種々の身体的及び心理学的状態を指すために使用される。この用語は、心理学的依存、身体的依存、耐容、物質使用の不適応パターン、物質使用に心を奪われること、及び/又は使用中断時の離脱症候の存在を含むよう意図される。上記にも関わらず、「中毒」及び「依存」という用語は、本明細書全体を通して互換的に用いられる。中毒及び依存は違法物質又は麻薬物質に関連する、と伝統的に理解されるが、ここでは、本発明の治療プロトコールは他の薬剤中毒、処方薬剤からの離脱反応、及び食物、性又はギャンブルに関連する他の型の強迫的行為を治療するためにも用いられ得る、と理解されるべきである。
【0127】
この説明で用いる場合、「物質」という用語は、組成物の取込み又は産生の突然の中断から人が離脱症候を示し得る組成物を指し、例としてはアヘン剤、ニコチン、ベンゾジアゼピン、カフェイン、大麻及び抗うつ薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
この説明で用いられる場合、患者という用語は、任意の人種、国籍、年齢、生理学的素質、遺伝的素質、疾患素因、身長又は体重の、そして任意の疾患状態、症候又は疾病を有する男性又は女性のヒトを指す。
【0129】
本発明の方法及びプロセスは、患者のデータを受容し、保存するためのデータ貯蔵庫、本発明の方法及びプロセスを含むプロトコールステップを保存するメモリー、上記のプロトコールステップに関して患者データを評価するためのプロセッサー、他のコンピューター装置とネットワークを介して通信するためのネットワークインターフェース、並びにユーザーに情報を送達するためのディスプレイを有するコンピューターシステムで実行され得る、とさらに理解されるべきである。一実施形態では、特定のプロトコールステップは、上記のメモリー中に保存され、そして患者データ、例えば行動的、心理学的又は生理学的プロフィールに対して比較して、どのプロトコールステップが適用されるべきかを確定する。比較の結果は、ネットワーク及びその他のコンピューター装置又はディスプレイを介してユーザーに通信される。したがって本発明の方法は、任意のハードウェア・プラットフォーム上で動作するソフトウエアプログラムとしてアクセスされ、それに適合され、そして通信される。
【0130】
本発明の例示的な治療方法は、例示的な方法の種々の構成要素(component)をさらに含む治療前、治療と同時及び治療後の段階を包含する。
【0131】
本明細書中に記載されるように、治療方法の個々の段階の特定の構成要素が参照される。しかしながら、方法の、治療前、治療と同時及び治療後の各段階を含む個々の構成要素
は互換性があり、可変的に実施され得るということに留意すべきであり、そして患者ごとに確定されるべきである。したがって、特定の順序での当該方法の段階の個々の構成要素を投与することに対する任意の参照は例示であり、そして投与の方法は患者の査定された必要性によって変わり得る、と当業者に理解されるべきである。さらに、本発明は特定の実施形態と共に記載されるが、一実施形態に本発明を限定することを意図されない。さらに、上記の方法の構成要素の多数の組合せが可能であり、したがって本発明は提示されるような実施例に限定されない。
【0132】
まず、治療プロトコールを概括的に説明し、その後、当該治療プロトコールの具体例を提示する。
【0133】
a.治療前/患者査定段階
本発明の治療プログラムに入る前に、各患者は治療前分析を受けるべきである。治療前分析は、患者が本発明の治療方法の候補であるか否かを判定するために用いられ得る。さらに、治療前プロセスは、本発明の治療方法に入るために患者を準備するために実施され得る。治療前段階としては、一般的には医療歴及び身体検査、心理学的査定及び行動的査定、必要な薬物治療の確定、並びに患者を治療受容状態にさせるために必要な場合は解毒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
物質乱用の治療方法は、組合せて、包括的及び統合的神経学的、生理学的及び心理学的アプローチを物質依存患者に提供する複数の段階及び構成要素を有する。各構成要素は、神経学的回路における平衡を回復する目的で、慢性的な物質使用及び離脱の対応する症候の特定の効果を取り扱うために選択されてきた。当該方法は、物質依存にしばしば関連づけられる、特定の身体的外傷を取り扱わない。したがって、この治療のために用いられる任意の薬剤と依存治療のために用いられる薬剤との潜在的相互作用に関する正当な考察により、各患者が査定され、そして適切な治療が開始されて、身体的外傷を取り扱う、ということが不可欠である。
【0135】
本発明の方法はあらゆる患者に適用され得るが、患者は18歳以上であるのが好ましい。
【0136】
i.完全身体検査
治療を開始する前に、患者は治療歴、身体検査及び実験室査定、例えば全血球算定、生化学的プロフィール[例えばクレアチニン、グルコース、尿素、コレステロール(HDL及びLDL)、トリグリセリド、アルカリ性ホスファターゼ、LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)及び総タンパク質]、肝機能検査[GOT、GPT、GGT、ビリルビン]、心電図、並びに適切な場合には妊娠検査及びX線検査(これらに限定されない)を受ける。除外判定基準は、他の急性又は非補償性疾病が患者内に存在しないことを保証するために、そして用いられているGABAA受容体調節化合物と禁忌である薬剤を患者が必要としないか又は現在は摂っていない、ということを保証するために適用される。
【0137】
ii.物質乱用、依存及び耐性の診断
患者は、DSM−IV判定基準のような特定の物質への依存に関する承認判定基準の少なくとも一部を満たす、というのが好ましい。DSM−IV判定基準は当業者に既知であり、そして同一12ヶ月期間の任意の時期に生じる以下のいずれかにより示されるような臨床的に有意の減損又は窮迫をもたらす物質使用の不適応パターンとして説明され得る:
・以下のどちらかにより定義されるような耐性:
○中毒又は所望の作用を達成するための物質の量の顕著な増大の必要性
○同一量の物質の継続使用に伴う作用の顕著な減少
・以下のいずれかにより発現されるような完全離脱:
○物質に関する特徴的離脱症候
○同一(又は密接に関連する)物質が離脱症候を軽減するか又は回避するために摂取される
○生理学的確定(以下でさらに詳細に記載されるような)
・物質はしばしば、意図されたより大量に又は長期間にわたって摂取される(制御喪失)
・物質使用を減らし、又は制御するための持続的願望又は不首尾の努力が存在する(制御喪失)
・物質を獲得し、物質を使用し、又はその作用から回復するために必要な活動には多大な時間が費やされる(没頭)
・物質使用のため、重要な社会的、職業的又は休養的活動が断念されるか又は低減される(有害結果にも関わらず継続)
・物質により引き起こされるか又は悪化させられたと思われる持続性又は再発性身体的又は心理学的問題を有するという知識にも関わらず、物質使用が継続される(有害結果)。
【0138】
或る種の除外判定基準は患者のスクリーニングに適用されるべきである、ということにさらに留意されるべきである。排除判定基準は、外来患者又は入院患者治療シナリオに適合され得る。例えば、物質乱用又は依存に関して入院患者を基礎にして患者を治療しないのが好ましく、この場合、患者は、スクリーニング医者毎に、即時的専門的評価及び治療を要する目下の医学的又は精神医学的問題を有し、スクリーニング医者毎に、本方法を用いて又は治療を施しているスタッフを用いて依頼人が首尾よく作業できなくさせる目下の医学的又は心理学的問題を有し、目下のベンゾジアゼピン及びその他の鎮静−催眠−抗不安的使用を有し(尿毒性学知見は陰性でなければならない)、或いは抗精神病薬(複数可)を摂取中である。
【0139】
b.本発明のプロトコールによる治療のための患者の準備(「治療のための受容状態」)
しかしながら、方法の準備段階を含む個々の構成要素は互換性であり且つ可変的に実施されることができ、患者に適合させるべきであるということに留意すべきである。したがって、特定の順序での当該方法の準備段階の個々の構成要素を実施することに対する任意の参照は例示であり、そして方法の実施は患者の査定された必要性によって変わり得る、と当業者に理解されるべきである。さらに、上記の方法の構成要素の多数の組合せが可能であり、したがって本発明は提示されるような実施例に限定されない。
【0140】
i.患者を離脱状態に置くこと
本明細書中で用いる場合、「離脱」という用語は、生物学的利用可能量の特定の物質を有しないことから、又は漸減的生物学的利用可能量の特定の物質を有することから逆の心理学的及び/又は生理学的作用を個体が有し始めた生理学的状態を指す。より詳細には、離脱は、GABAA受容体α1サブユニットと比較した場合のGABAA受容体α4サブユニット発現の増大に起因し得る。
【0141】
本発明の治療方法は、患者を離脱状態に置くという第一段階を包含する。一実施形態では、内因性神経ステロイドの上方制御を活性化するように抑制し、且つ/又は内因性神経ステロイドの下方制御を引き起こすことにより、治療のために、ヒトは受容状態に置かれる。神経ステロイドの上方制御は、多数の外部因子、例えば或る種の物質、例えばカフェイン若しくはニコチンの摂取又は投与、或いは心理学的ストレスにより引き起こされ得る。したがって本発明は、個体の神経ステロイドレベルの上方制御を生じ得るこのような活動すべてを回避するステップを包含する。
【0142】
別の実施形態では、内因性神経ステロイド及び/又はそれらの代謝物質の産生を遮断す
る神経ステロイド産生の阻害薬の投与によって内因性神経ステロイド、例えばアロプレグナノロンの下方制御を活性化するように生じることにより、治療のためにヒトは受容状態に置かれる。本発明は、GABAAに及ぼす神経ステロイドの調節作用の抑制も包含する。そうすることにより、α1サブユニットに比して、α4サブユニットの曝露又は上方制御を加速し、そしてかなりの数のα4サブユニットが曝露され、その後の治療ステップの効能を増強するために利用可能である、ということを保証する。
【0143】
一実施形態では、治療に対して受容性の状態に患者を置くために、患者が中毒になっているか又は依存する物質からの離脱の状態に患者は誘導される。離脱状態は、物質を控えることにより、又は類似の薬理学的特性を有するアゴニスト若しくは部分的アゴニスト薬剤(例えばヘロイン依存に対するブプレノルフィンのメタドン)の1日投与量の逐次的漸減のプロセスにより、開始され得る。
【0144】
例えば、アヘン剤物質乱用又は依存の場合(これらに限定されない)、アヘン剤使用者は、好ましくは患者が中毒になっている薬剤より長い半減期を有し、そしてより低効力であるアヘン剤アゴニストを投与される。常用物質から人を用量設定するための適切な方法は、例示的な治療プロトコールに関して以下でさらに詳細に考察される。或る種の組成物の投与は、使用者の系をフラッシュし、そして欲求及びその他の離脱症候を軽減する目的のための薬剤の投与を有効に受容しうる生理学的状態に使用者を置くのに役立つ。
【0145】
患者がもはや常用物質を摂取していないか、又は彼の依存を十分低いレベルに用量設定したならば、本発明はさらに、内因性神経ステロイド及び/又はそれらの代謝物質の産生を遮断する作用物質の投与により、アロプレグナノロンのような内因性神経ステロイドの下方制御を活性化するように引き起こすステップを包含する。本発明は、GABAAに及ぼす神経ステロイドの調節作用の抑制も包含する。そうすることにより、α1サブユニットに比して、α4サブユニットの曝露又は上方制御を加速し、そしてかなりの数の望ましくないサブユニットが曝露され、そして薬物療法効能増強のために利用可能である、ということを保証する。
【0146】
プロトコールの治療前部分における一貫したレベルに内因性神経ステロイド産生を基線化するための特定の方法は以下で考察されるが、治療プロトコールはこのような方法に限定されない。下記の方法に関しては、プロゲステロンの産生を最大限低減し、そして個体を治療に対して最も受容性にするために、本発明は確立された安全且つ効率の用量投与範囲での操作を意図する。
【0147】
1.ストレス誘導性活動の回避
一実施形態では、本発明は、個体の神経ステロイドレベルの上方制御を生じ得るような活動すべてを回避するステップ、及び内因性神経ステロイド、例えばアロプレグナノロンの下方制御を活性化するように生じるステップを包含する。ストレス誘導性活動は患者及び患者の全身状態による、ということに留意すべきである。したがって個々の推奨は、治療医により成され得る。
【0148】
2.活動を増強する神経ステロイド産生の回避
神経ステロイド産生を増大すると思われる活動に関わらないよう、又はそのように思われるあらゆる物質を摂取しないよう、患者は忠告される。そのような活動としては、性行動、ストレスの多い活動、格闘、激しい論争が挙げられる。そのような物質としては、チョコレート、非合法薬物、処方薬又は市販薬が挙げられる。
【0149】
これらの組成物は神経ステロイド産生を増大するのに役立ち得るため好ましくないが、或る場合には、ストレスを低減するために組成物を投与することが必要であり得る。
【0150】
一実施形態では、ストレス低減組成物はガバペンチンである。ガバペンチンは、一般的には癲癇に罹患している患者に処方される抗不安及び抗痙攣薬であり(脳グルタミン酸濃度を有効に低下する)、そして不安障害、例えば社会不安障害及び強迫性障害の治療にも用いられてきた。患者にガバペンチンを投与する前に、相互作用及び禁忌に関して患者を査定することが不可欠である。ガバペンチンは、癲癇発作(部分的)の治療における補助療法に、そしてヘルペス感染後神経痛の管理のために用いられるべきものである。ガバペンチンは感知可能的に代謝されず、そして変化せずに排出され、排除半減期は5〜7時間である。ガバペンチンの使用により考えられる副作用は、眩暈、傾眠、CNSのその他の症候/徴候、例えば抑うつ、悪心、運動失調、振顫及び末梢性浮腫である。癲癇を有する患者において、急激な中断は、発作頻度を増大し得る。臨床的に有意の薬剤相互作用は、文献中で報告されていない。
【0151】
別の実施形態では、ストレス低減組成物は、H1ヒスタミン受容体アゴニスト、例えばヒドロキシジン(これに限定されない)である。ヒドロキシジンは、全身性不安障害症候群の治療のために、そして入院患者治療の初期段階及び退院後ケア(必要な場合)の両方の間の、物質依存からの離脱の管理に用いるために、指示される。それは抗嘔吐性及び骨格筋弛緩という利益も有し、そして鎮静薬として用いられ得る。この鎮静作用は、アルコール依存から回復中の患者においてしばしば認められる不眠症に関与する睡眠障害性呼吸及び周期的脚運動増大を治療するために有用であり得る。これは、或る患者たちに関して、その後のアルコール依存再発に有意に関連する進行中の不眠症の取り扱いを助ける。
【0152】
ヒドロキシジンは迅速に吸収され、そして経口投与後15〜30分以内に効果を生じる。さらに、ヒドロキシジンは、抗不安、抗悪心、弛緩及び種々のその他の特性により物質離脱プロセスを手助けする。その他の鎮静又は精神安定剤の作用はヒドロキシジンの投与と相乗的に増強され得る、ということに留意すべきである。これらの薬剤の商品名の例としては、アタラックス及びビスタリルが挙げられる。
【0153】
3.患者におけるプロゲステロンレベル増大の回避
任意の一実施形態では、増大プロゲステロン周期を回避する様式で治療を時間調節することにより、内因性神経ステロイド産生を最小限にすることができる。
【0154】
女性では、プロゲステロンレベルは月経周期の排卵前期中は低く、排卵後に上がり、そして黄体期中は高められる。特に、プロゲステロンレベルは、排卵前は<2ng/ml、そして排卵後は>5ng/mlである傾向がある。妊娠が生じた場合、プロゲステロンレベルは最初に黄体レベルに維持される。妊娠の支持における黄体−胎盤シフトの開始に伴って、プロゲステロンレベルはさらに上昇し始め、そして終わりには100〜200ng/mlに到達し得る。胎盤の分娩後そして授乳中、プロゲステロンレベルは低い。
【0155】
例えば(しかしこれに限定されない)、プロゲステロンレベルは月経周期の黄体期中に最高であるため、この時間ウインドウ中に女性を治療しないことが好ましい。逆に、プロゲステロンレベルが低い月経周期の排卵前期中に女性を治療するのが好ましい。
【0156】
プロゲステロンレベルは、小児、男性及び閉経後女性においては低い。
【0157】
4.女性のプロゲステロンレベルの活性化するような調節
別の実施形態では、女性のプロゲステロンは、女性を一定のプロゲステロンレベルに維持する処方ホルモンの投与、例えばプロゲステロンによる避妊(これに限定されない)により活性化するように調節される。このような避妊は、プロゲスチン・インプラント及びレボノルゲストレル・インプラントを含む。これらの組成物の投与は、女性のプロゲステ
ロンレベルを有効に一定にする。
【0158】
これらの避妊組成物の離脱時に、女性のホルモンレベルは低減し、それによりそのα4受容体サブユニットを「非遮蔽」して、治療に対して最も受容性の状態に女性を置く。
【0159】
本発明は、投与プロゲステロンが系を離れる場合と内因性プロゲステロン産生が再開する場合との間の時間の間隙を有益に用いる。一実施形態では、この最小プロゲステロン点ウインドウは好ましくは、本発明の治療プロトコールが開始すべき時である。
【0160】
一実施形態では、プロゲステロンは、経口的に、舌下に、膣座薬により、注射により、局所的に、経皮的に又はインプラントにより送達され得る。プロゲステロンの吸収速度は、投与経路によって大きく変わる。用いられる型に関係なく、プロゲステロン、プロゲスチン又はその他のプロゲステロン様化合物は、増大レベルのプロゲステロンを獲得するのに十分な量で投与され、そして次に治療前にプロゲステロンレベルを低減させるのに十分な時間で終了されるべきである。
【0161】
表1は、本明細書中に記載される化合物のクラス中の薬理学的化合物の例示的な一覧を提供する、ということにも留意すべきである。避妊及び推奨用量投与パラメーターのいくつかの例も、表1に列挙される。
【0162】
5.男性又は女性のプロゲステロンレベルの活性化するような調節
上記のように、種々の神経ステロイド阻害薬は、プロゲステロンのアロプレグナノロンへの転換を防止する。内因性の症例では、アロプレグナノロンはGABAA受容体の調節に関与する。離脱した物質の作用を補償することにより、内因性神経ステロイドは、増大された場合、GABAA受容体を「遮蔽」し、そしてフルマゼニルがそれらの受容体を「リセット」するのを妨げる。これらの薬剤の投与は、内因性神経ステロイドレベルを有効に抑え得る。
【0163】
一実施形態では、化合物は5α−レダクターゼ阻害薬である。好ましくは5α−レダクターゼ阻害薬は、I型阻害薬、II型阻害薬又はその組合せとして作用することができ、5α−レダクターゼ酵素がプロゲステロンを5α−ジヒドロプロゲステロンに転換させないようにし、したがってプロゲステロン代謝物質アロプレグナノロンを作り出させないようにする。別の実施形態では、化合物は3α−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ阻害薬であり、これは3α−ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ酵素が5α−ジヒドロプロゲステロンを5α,3α−プレグナノロン(アロプレグナノロン)に転換するのを妨げる。
【0164】
神経ステロイド産生を抑制する化合物のクラスは詳細に上記されているが、化合物の例示的な一覧は、表1に詳細に記載される。しかしながら、本発明はこのような化合物に限定されず、そして内因性神経ステロイド産生、特にプロゲステロンのその代謝産物アロプレグナノロンへの転換を有効に抑制する任意の化合物が本発明と共に用いられ得る、ということに留意すべきである。
【0165】
ii.産業基準治療アプローチ
一実施形態では、患者は標準的及び/又は産業容認治療プロトコールを施される。いくつかの例示的な治療プロトコールは、以下の節で詳述される。しかしながら、本明細書中に略記される治療プロトコールは例示的であり、そして任意数の治療プロトコールが本発明と共に用いられ得るが、但し、それらは、α4GABAAサブユニットに比してα1GABAAサブユニットの相対的発現を持続的に増大する化合物のクラスからの一化合物の使用に対して禁忌を示さない、ということに留意すべきである。
【0166】
本明細書中に記載される従来のプロトコールの多くは、National Guideline Clearinghouseにより適合される。National Guideline Clearinghouse(商標)(NGC)は、証拠に基づいた臨床的実行ガイドライン及び関連文書の包括的データベースである。NGCは、米国保険社会福祉省の医療研究・品質調査機構(AHRQ)のイニシャティブである。NGCは、Americal Medical Association及びAmerican Association of Health Plans(現在、America's Health Insurance Plans[AHIP])と協同でAHRQにより最初に作製された。NGCの任務は、医者、看護士及びその他の健康専門家、ヘルスケア・プロバイダー、健康計画、統合送達システム、購買者等に、臨床的実行ガイドラインに関する、ならびにさらにそれらの普及、実行及び使用への客観的な詳細情報を得るための利用可能なメカニズムを提供することである。
【0167】
さらに、いくつかの臨床実行ガイドラインは、米国保険社会福祉省物質乱用精神衛生業務局から適合された。さらに詳細には、プロトコールは全米アルコール薬物情報センターから適合された。
【0168】
或る種の臨床的業務ガイドラインは、臨床医、政策担当者、行政官、ケース・マネージャー、精神衛生教育者、患者の代弁者、ならびに臨床的及び公共医療サービス研究者により国中で用いられているExpert Consensus Guidelinesからも適合された。
【0169】
産業容認治療プロトコールの使用は随意である。
【0170】
c.或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与
任意のその他の治療アプローチと関係なく用いられるにせよ、その一部として用いられるにせよ、本発明は、上記のように或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する化合物のクラスからの一化合物を患者に投与する必要がある。一実施形態では、化合物は、GABAA受容体で、より詳細にはα4サブユニット又はα6サブユニットで、アゴニストとして役立ち、そしてGABA流を積極的に強化し得る。
【0171】
しかしながら、本発明はこのような化合物に限定されず、そして非一時的なやり方で、α4GABAAサブユニットに比してα1GABAAサブユニットの発現を有効に増大する任意の化合物が本発明と共に用いられ得る、ということに留意すべきである。
【0172】
本発明は、一実施形態では、当該治療方法の一部として、所定時間の間、多用量投与で、フルマゼニルのような或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する化合物の使用に関する。本発明に従って投与される場合、治療的有効量の薬剤が患者中で維持され、それによりアロプレグナノロンの上方制御を有意に低減する。本発明の方法は、有意の副作用を伴わずに、フルマゼニルのような或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する化合物の投与も提供する。
【0173】
したがって、一実施形態では、物質乱用の治療のための方法であって、例えば患者の血圧、心拍数、渇望の感情及び不安の感情の定量的及び/又は定性的査定により測定した場合、物質乱用を治療するためのフルマゼニルの治療的有効量が達成されるまで、所定期間/間隔中に多用量投与で、治療的有効量のフルマゼニルを上記の治療を必要とする患者に投与することを包含する方法が提供される。したがって、所望の治療的応答を得るために、可変用量でフルマゼニルを投与し、患者における副次的作用の危険を低減する(適用用量投与当たりの投与される薬剤の量の低減の結果として)ことが可能である。
【0174】
別の実施形態では、物質乱用の治療のための方法であって、0.1〜0.3mgのフル
マゼニルの多用量投与に分けられ、そして当該物質乱用を治療するためのフルマゼニルの上記治療的有効量が達成されるまで、所定期間又は間隔中に投与するよう意図される治療的有効量のフルマゼニル、通常は0.5mg/日〜20mg/日、0.5mg/日〜15mg/日、詳細には1.0〜3.0mg/日、より詳細には1.5〜2.5mg/日のフルマゼニルの、上記治療を必要とする患者に投与することを包含する方法が提供される。一実施形態では、所定時間は1〜15分間の範囲であり、そしてフルマゼニルの「用量投与当たり」の量は0.1〜0.3mgである。
【0175】
個々の用量投与は量が変動する可能性があり、そして個々の用量投与間の時間間隔は量が変動する可能性があるが、但し、送達される総用量は1.0mg/日及び3.0mg/日の範囲であり、そして個々の用量は相対的に一貫した時間間隔で送達されることを当業者は理解するであろう。したがって時間間隔は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25分或いはその端数の範囲であり得る。各時期に送達され、時間間隔により分離される用量は、0.1〜0.3mg又はその端数であってもよく、送達される総薬剤は好ましくは3.0mg/日未満であることに留意されたい。したがって本発明は、実質的に一貫した時間間隔で送達される多数回、逐次的用量の送達を提供する。
【0176】
フルマゼニルの従来の使用は、短時間にわたる1回用量又はより多数回の用量投与を含み、麻酔の鎮静作用、意識的鎮静又はベンゾジアゼピン過剰用量を逆転することに関する。さらにロマジコン(Rocheにより市販されるフルマゼニルの商標名)は、アルコール、バルビツレート及び交差耐性鎮静薬に関する離脱症候の管理を複雑にすることが明白に示されており、そして神経系に及ぼす副作用を有して、動揺及び不安増大を引き起こすことが示されている。麻酔及び意識的鎮静を取り扱う1回用量投与のために、0.2mg〜1mgのロマジコンの用量を用い、その後の用量は20分以上後であることが従来より推奨される。反復治療のためには、1mg用量が5分間にわたって、3mg用量まで15分間送達され得る。ベンゾジアゼピンの過剰用量の状況では、より多くの用量が短時間の間投与され、例えば3mg用量が6分以内に投与され得る。フルマゼニルのこのような従来の使用は物質乱用の治療には向けられない、と当業者は理解する。
【0177】
さらに、本発明の投与方法はフルマゼニルのより良好な使用を提供して、物質乱用離脱の症候を治療し、そして上記薬剤の不必要な消費を低減し、それにより患者の便利性及び生活の質を増大し、非常に短時間で物質乱用を治療することにより経費を低減する。
【0178】
本発明により提供される物質乱用の治療方法は、治療が開始されるべき時に、フルマゼニルのような或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する化合物による治療を有害にする医学的疾病を有しないか、又は或る種のGABAA受容体サブユニットの発現を調節する化合物で禁忌にされる投薬を受けている任意の患者に適用可能である。
【0179】
概して、本発明により提供される物質乱用の治療方法は、上で詳細に記載されたように、完全医学的及び心理学的検査で開始する。フルマゼニルの投与の前、最中及び後、物質乱用離脱の症候、心拍数及び血圧がモニタリングされる。
【0180】
一実施形態では、或る種のGABAA受容体サブユニット、例えばフルマゼニルの発現を調節する化合物は、物質乱用を示す定性的及び定量的パラメーターが許容可能な範囲に下げられるまで投与される。
【0181】
一実施形態では、或る種のGABAA受容体サブユニット、例えばフルマゼニルの発現を調節する化合物は、a)患者が不安を感じ始める時(これは、プロゲステロンが実質的にもはやアロプレグナノロンに転換されないので、受容体が「非遮蔽」される時である)
、又はb)患者に施された先の薬剤に基づいて投与されることが安全である場合、のうちの後者で投与される。
【0182】
一実施形態では、或る種のGABAA受容体サブユニット、例えばフルマゼニルの発現を調節する化合物は、任意の速度で投与されるが、但し、その速度は、症候についての患者の自己報告、或いは心拍数、心臓の律動又は血圧のような生理学的パラメーターにより確定した場合に患者に有害でない。
【0183】
d.付加的な治療選択肢
いくつかの場合、治療中又は治療後に、治療プロトコールの以下の任意の構成成分を用いることが必要であり得る。以下の任意の構成成分は例示であり、そして種々の因子、例えば治療に対する患者の応答性、及び5−αレダクターゼ活性における持続性増大の指標が存在するか否か(これらに限定されない)によって変わる。
【0184】
i.5−αレダクターゼ阻害薬
5−αレダクターゼ活性における持続性増大の指標が存在する場合、5−αレダクターゼ阻害薬で患者を継続的に治療することが必要であり得る。5−α−レダクターゼ阻害薬は上記で詳細に記載されており、ここでは繰り返し記載されない。
【0185】
ii.プロラクチン
いくつかの場合、プロゲステロン・フィードバックの低下により引き起こされるエストロゲンレベルの増大のための、プロラクチンの産生増大を解消するために患者を治療することが必要であり得る。プロラクチンレベルの持続性増大は、ドーパミン放出に関するより高い刺激閾値により特性化されるドーパミン機能性の減損をもたらす。例示的な薬剤としては、ドーパミンアゴニスト、例えばブロモクリプチン、並びに処方アンフェタミン、例えばリタリン及びアデラルが挙げられる。
【0186】
e.プロトコールの治療後段階
患者が首尾よく本発明の方法の治療段階を完了した後、各患者は治療後レジメンを処方されて、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。本発明の方法の治療後段階の構成成分は、以下でさらに詳細に記載される。
【0187】
退院前に、1つ又は複数の以下の組成物又は薬剤が処方され得る:ガバペンチン及び塩酸フルオキセチン。好ましくは組成物又は薬剤は、より多くの患者の遵守及び便利性を可能にするために、経口形態で投与され得る。本明細書中に記載される薬剤のいずれかがが本発明が実行されるべき管轄区域で利用可能でないのであれば、等価の機能性薬剤が用いられ得る、と理解されるべきである。
【0188】
心理療法/行動療法及びカウンセリングは、薬理学的補助剤を用いる場合、物質依存の治療の上首尾のために重要であり得る。したがって当該方法は、ケアプログラムを継続することにより患者がそれらの回復プロセスで継続する薬物及び誘因を含む維持プログラムも提供する。物質依存の複雑性のため、患者は、薬理学的及び行動的介入の組合せから最も利益を受ける。
【0189】
治療プログラムの一部として、頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう患者は任意に指図され得る。
【0190】
同様に、認知行動療法の半構造的追跡調査が任意に実行される。個人及び家族の心理療
法は、患者の社会的、家族、作業、個人的及び余暇の生活の建て直しを目標とした認知再構成法、作業療法、再発防止、並びにストレス低減を含む複数の介入に集中される。
【0191】
初期検査の結果によって、普遍的又は患者特異的な食事計画が任意に当該方法と共に施され得る。初期検査の結果によって、普遍的又は患者特異的な運動プログラムが任意に当該方法と共に施され得る。
【0192】
以下の実施例は、本発明をさらに例証するのに役立つが、同時に、本発明を限定するものではない。これに反して、本明細書中の説明を読んだ後に、本発明の精神を逸脱することなくそれ自体を当業者に示唆し得る種々の実施形態、修正形態及び均等物に対して方策が取られ得るということは、明らかに理解されるべきことである。
【実施例1】
【0193】
VII.オピオイド乱用の治療のためのプロトコール
「オピオイド」は、アヘン様及び/又はモルヒネ様薬理学的作用を有する薬剤のクラスに関して用いられる用語である。オピオイドは、中枢神経系及び消化管中に主に見出されるオピオイド受容体と結合する任意の作用物質である。多くの型のオピオイド、例えば身体内で産生される内因性オピオイド(エンドルフィン、ジノルフィン、エンケファリン);アヘン植物体中に見出されるアヘンアルカロイド(モルヒネ、コデイン、テバイン);半合成オピオイド誘導体(ヘロイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロコデイン、ヒドロモルヒネ、オキシモルホン、ニコモルヒネ);ならびに全合成オピオイド誘導体(フェニルヘプチルアミン、フェニルピペリジン、ジフェニルプロピルアミン誘導体、ベンゾモルファン誘導体、オリパビン誘導体、モルフィナン誘導体、ロペリミド、ジフェノキシレート)が存在する。本明細書中で用いる場合、「アヘン剤」という用語は、オピオイド受容体と結合する任意の化合物、例えば天然アヘンアルカロイド、それから得られる半合成オピオイド、ならびに天然アヘン剤と類似の生理化学を有し、そして一般にモルヒネに代謝させる合成オピオイドを指す。臨床設定では、オピオイドは鎮痛剤として、そして慢性及び/又は重症疼痛及びその他の疾患症候を軽減するために用いられる。しかしながらいくつかのオピオイドは、静脈内投与される場合の、又は吸った場合のそれらの多幸感誘導特性のため、乱用されるか又は違法に用いられる。
【0194】
本実施例は、上記の一般的治療方法の教示を取り込む。本発明の方法の治療前段階の構成要素は、より詳細に上述されており、ここでは反復しない。
【0195】
a.治療前/患者査定段階
上記のように、本発明の治療プログラムに入る前に、各患者は治療前分析を受ける必要がある。治療前分析を用いて、患者が本発明の治療方法の最適候補であるか否かを判定し得る。さらに治療前プロセスは、本発明の治療方法に入るために患者を準備するために施され得る。
【0196】
b.本発明のプロトコールによる治療のための患者の準備
i.患者を離脱状態に置く
内因性神経ステロイドの上方制御を活性化するように抑制するか及び/又は内因性神経ステロイドの下方制御を引き起こすことにより、患者は離脱状態に置かれ得る。前記のように、この治療ステップは、a)ストレス誘導性活動を回避すること、b)神経ステロイド産生増強活動を回避すること、c)患者におけるプロゲステロンレベル上昇を回避すること、d)女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節すること、又はe)神経ステロイド阻害薬の投与により男性又は女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節することにより達成され得る。
【0197】
ii.付加的前治療
患者が離脱状態に置かれた場合でも、中毒物質のための他の治療前プロトコールを患者は任意に受け得る。例示的なプロトコールは以下に記載されており、したがって、このようなプロトコールの使用は例示であり、本発明はこのようなプロトコールに限定されない、ということに留意すべきである。
【0198】
1.任意のアヘン剤アゴニスト投与
以下の治療プロトコールは、「Center for Substance Abuse Treatment, Medication-Assisted Treatment for Opioid Addiction in Opioid Treatment Programs. Treatment Improvement Protocol (TIP) Series 43.」(DHHS Publication No. (SMA) 05-4048. Rockville, MD: Substance Abuse and Mental Health Services Administration, 2005)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)から適合される。プロトコールの2〜3の詳細は以下に記載されるが、上で参照された治療改善プロトコールは詳細に関して相談されるべきである、と当業者に理解されるべきである。治療改善プロトコール(TIP)は、SAMHSA's Center for Substance Abuse Treatment(CSAT)のサービスとして提供される物質乱用障害の治療のための最良実施ガイドラインである。
【0199】
任意の第一のステップにおいて、アヘン剤使用者は好ましくは、患者が中毒を有する薬剤より長い半減期を有し、そしてより低効力であるアヘン剤アゴニストを投与される。好ましくは薬剤は、アヘン剤アゴニスト、例えばブプレノルフィン又はメタドン(これらに限定されない)であり、低中毒性及び自己用量設定性である物質に対する患者の依存を生み出す。好ましい実施形態では、物質は用量設定されて徐々に患者をその作用から引き離す。しかしながら完全離脱への置換は非常に困難であり、患者によっては、違法アヘン剤使用への逆戻りを生じ得るアヘン剤離脱症候の出現を示す。したがって任意の第一のステップでは、アヘン剤アゴニストは、患者が逆戻りすることなく耐容し得る最小用量に低減される。
【0200】
a.メタドン
メタドン[化学名6−(ジメチルアミノ)−4,4−ジフェニル−3−ヘプタノン]は、低中毒性を有する合成オピオイド鎮痛薬である。それは、モルヒネ又はヘロインと化学的に異なるが、オピオイド受容体に作用し、そして同一作用の多くを生じる。それは一般的には、経口的に又は静脈内に投与される。メタドンはモルヒネベースの薬剤より長く作用し、そして24時間以上の一般的半減期を有して、オピオイド解毒及び維持治療プログラムにおいて1日1回のみの投与を可能にする。患者は、一般的にはメタドンから徐々に引き離される。
【0201】
耐性、依存及び離脱症候が発症し得るが、それらはモルヒネ及びヘロインの場合より非常にゆっくりと発現し、そしてそれほど深刻に重症ではない。メタドンと密接に関連して、合成化合物レボ−アルファアセチルメタドール(LAMM)は、48〜72時間の作用持続期間を有し、低頻度で投与され得る。LAAM及びメタドンはともに規制物質であり、入院患者に用いられ得るに過ぎない。
【0202】
b.ブプレノルフィン
ブプレノルフィン[化学名(2S)−2−[(−)−(5R,6R,7R,14S)−9a−シクロプロピルメチル−4,5−エポキシ−3−ヒドロキシ−6−メトキシ−6,14−エタノモルフィナン−7−イル]−3,3−ジメチルブタン−2−オール]は、GABAニューロン上のμ−オピオイド受容体での部分オピオイドアゴニストであり、そしてオピオイドアンタゴニストでもある。ブプレノルフィンはテバイン誘導体であり、その鎮痛作用はμ−オピオイド受容体の作動性のためである。それはκアンタゴニストでもある。ナロキソンは、ブプレノルフィンの作用を部分的に復帰させ得る。それは、オピオイ
ド受容体からのその遅い解離のため、約48時間という長期作用を有する。ブプレノルフィンは、筋肉内又は静脈内注射としての塩酸塩として、或いは舌下錠として投与される。それは、高初回通過代謝のため、経口投与されない。メタドンと違って、ブプレノルフィンは、規制物質ではないので、外来患者に用いられ得る。
【0203】
2.任意のアヘン剤アンタゴニスト投与
できるだけ低いが、欲求及び離脱を誘発するのに十分なほど低くない用量レベルで患者が安定化したら、オピオイドアンタゴニスト、例えばナロキソン、ナルトレキソン又はナルメフェンが随意に投与される。アヘン剤アンタゴニスト投与は、使用者の系からのオピオイドをフラッシュし、そして欲求及びその他の離脱症候を軽減する目的のためのGABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの化合物の投与を有効に受容し得る生理学的状態に使用者を置くのに役立つ。
【0204】
a.ナロキソン
ナロキソン[化学名17−アリル−4,5α−エポキシ−3,14−ジヒドロキシモルフィナン−6−オン]は、ヘロイン及びモルヒネのようなオピオイドに及ぼす過剰投与の作用を無効にするために用いられる薬剤である。それはテバイン誘導体であり、μ−オピオイド受容体に対する非常に高い親和性を有する。ナロキソンは、μ−オピオイド受容体競合性アゴニストであり、これらの受容体のその迅速遮断は、しばしば、離脱症候の急速開始をもたらす。競合的アゴニストとして、ナロキソンは、受容体結合オピオイド分子の実質的部分に取って代わり、したがってオピオイド過剰投与の作用の逆転を生じる。ナロキソンはまた、低親和性を有するが、κ−及びδ−オピオイド受容体で、アンタゴニスト作用を有する。ナロキソンは通常、迅速作用のために静脈内注射されて、30秒以内に呼吸抑制の逆転及び昏睡の逆転の徴候を示す。それは短時間持続製剤であり、約60〜100分の半減期を有する。その作用は約45分持続する。
【0205】
b.ナルトレキソン
ナルトレキソン[化学名17−(シクロプロピルメチル)−4,5α−エポキシ−3,14−ジヒドロキシモルフィナン−6−オン]は、ナロキソンと構造的に類似するが、ナロキソンよりわずかに高いκ−オピオイド受容体に対する親和性を有し、経口投与されることができ、より長い作用持続時間を有する。さらに、ナルトレキソンは、注射により徐放性形態で投与され得る。それは、アルコール依存及びオピオイド依存の管理に用いられるオピオイド受容体アンタゴニストである。ナルトレキソン及びその活性代謝物質6−β−ナルトレキソールは、μ−オピオイド受容体及びκ−オピオイド受容体での、そしてより低い程度にδ−オピオイド受容体での競合的アンタゴニストである。それはオピオイドの作用を可逆的に遮断するか又は弱めるため、ナルトレキソンはオピオイド依存の管理に用いられる。ナルトレキソンは一般的には、迅速解毒手法に用いられる。それはナロキソンより長い持続期間を有し、1回経口用量投与は注射ヘロイン作用を48時間遮断し得る。
【0206】
c.ナルメフェン
ナルメフェン[化学名17−(シクロプロピルメチル)−4,5α−エポキシ−6−メチレンモルフィナン−3,14−ジオール、塩酸塩](オピオイドアンタゴニスト)は、ナルトレキソンの6−メチレン類似体である。それは、オピオイドの作用を防止するか又は逆転するために用いられ、オピオイドアゴニスト活性を有さない。
【0207】
c.GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与
治療前プロトコールが固守され、そして完了されると、一般治療方法で上述したようなGABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物、例えばフルマゼニルを患者は投与される。
【0208】
d.付加的な治療選択肢
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような付加的な治療選択肢が施され得る。
【0209】
e.プロトコールの治療後段階
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような治療後プロトコールが施される。
【0210】
f.仮説的治療例1
45歳の男性が8年間ヘロインを使用中であり、治療前査定を受けた後、DSM−IV判定基準下で、ヘロイン中毒であると診断された。
【0211】
患者準備: 予定治療の4週間前に、5mg/日の予定フィナステリド投与で開始した。予定治療の3日前に、フィナステリド投与を終結し、いかなるストレス誘導性活動にも携わらないよう、又は神経ステロイド産生を増大すると思われるいかなる物質も摂取しないよう患者に指図する。
【0212】
治療1日目: 15mg/日未満の量で、注入により、男性患者にフルマゼニルを投与する。不安の主観的感情(これに限定されない)を含む患者の健康についての患者自身の定性的査定と共に、患者の心拍数及び血圧をモニタリングする。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0213】
治療2日目: 少なくとも2.5mg/日の割合で、注入により、男性患者にフルマゼニルを投与する。
【0214】
治療3日目: 男性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも2.5mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0215】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【0216】
g.仮説的治療例2
45歳の男性が、8年間ヘロインを使用中であり、治療前査定を受けた後、DSM−IV判定基準下で、ヘロイン中毒であると診断された。
【0217】
患者準備: 予定治療の1週間前に、男性患者に、上述のようなアヘン剤中毒の治療のための従来のプロトコールを施す。一実施形態では、患者における物質の用量設定を開始するのに治療的に有効な量でアヘン剤アゴニストのブプレノルフィンを男性患者に投与する。患者にブプレノルフィンを投与するための所定時間はない。患者が十分低いレベルに用量設定されたら、本発明の治療プロトコールを開始する。一実施形態では、十分低レベルのブプレノルフィンは、3mgである。
【0218】
治療1日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を.25mg低減し、したがって男性患者に2.75mgのブプレノルフィンを投与する。さらに注入により、少なくとも1
.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0219】
治療2日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を再び.25mg低減し、したがって2.50mgのブプレノルフィンを投与する。注入により、少なくとも1.0mg/日の割合で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0220】
治療3日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を再び.25mg低減し、したがって2.25mgのブプレノルフィンを投与する。さらにまた、注入により、少なくとも1.0mg/日の割合で、男性患者にフルマゼニルを投与する。
【0221】
次の治療までの維持段階: 必要な場合、次の治療まで、2.25mg/日以下の量でブプレノルフィンを摂取し得る、と男性患者に忠告する。
【0222】
治療21日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を半分低減し、したがって1.125mgのブプレノルフィンを投与する。さらに、注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0223】
治療22日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を再び半分低減し、したがって0.50mgのブプレノルフィンを投与する。さらに、注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される
【0224】
治療23日目: ブプレノルフィンを含めたすべての薬剤を中止するよう、男性患者に指図する。
【0225】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【0226】
h.仮説的治療例3
45歳の男性が、8年間ヘロインを使用中であり、治療前査定を受けた後、DSM−IV判定基準下で、ヘロイン中毒であると診断された。
【0227】
患者準備: 予定治療の1週間前に、男性患者に、上記のようなアヘン剤中毒の治療のための従来のプロトコールを施す。一実施形態では、患者における物質の用量設定を開始するのに治療的に有効な量でアヘン剤アゴニストのブプレノルフィンを男性患者に投与する。患者にブプレノルフィンを投与するための所定時間はない。患者が十分低いレベルに用量設定されたら、本発明の治療プロトコールを開始する。一実施形態では、十分低レベルのブプレノルフィンは、4mgである。
【0228】
治療1日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を1mg低減し、したがって3mgのブプレノルフィンを投与する。さらに注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0229】
治療2日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を再び1mg低減し、したがって2mgのブプレノルフィンを投与する。注入により、少なくとも1.0mg/日の割合で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0230】
治療3日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を再び1mg低減し、したがって1mgのブプレノルフィンを投与する。さらにまた、注入により、少なくとも1.0mg/日の割合で、男性患者にフルマゼニルを投与する。
【0231】
治療4日目: ブプレノルフィンを含めたすべての薬剤を中止するよう、男性患者に指図する。
【0232】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【0233】
i.仮説的治療例4
45歳の男性は、8年間ヘロインを使用中であり、治療前査定を受けた後、そしてDSM−IV判定基準下で、ヘロイン中毒であると診断された。
【0234】
患者準備: 男性患者が実質的に最小量の離脱症候を伴うか又は全く伴わずに耐容することができ、したがって低中毒性及び自己用量設定性である物質に対する患者の依存を生み出し得る最低可能用量で、ブプレノルフィンを男性患者に投与する。例えば男性患者は15mgのブプレノルフィンと等価の量のヘロインに対して「中毒」である(これに限定されない)。
【0235】
治療1日目: 治療1日目、男性患者に14mgのブプレノルフィンを投与する。さらに注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0236】
治療2日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を1mg低減し、したがって13mgのブプレノルフィンを投与する。注入により、少なくとも1.0mg/日の割合で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0237】
治療3〜14日目: 男性患者のブプレノルフィン投与量を1mg低減する。さらにまた、注入により、少なくとも1.0mg/日の割合で、毎日男性患者にフルマゼニルを投与する。
【0238】
治療15日目: ブプレノルフィンを含めたすべての薬剤を中止するよう、男性患者に指図する。
【0239】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そ
してその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【実施例2】
【0240】
VIII.ベンゾジアゼピン乱用の治療のためのプロトコール
ベンゾジアゼピンはしばしば、重症不能状態不安又は不眠症の短期軽減のために用いられる。長期使用は、耐性及び依存の発現のために問題がある可能性がある。上記で詳細に説明したように、それらはGABA受容体GABAAで作用し、その活性化はより高いニューロン活性を鈍らせる。ベンゾジアゼピン使用は、種々の副作用、例えば眠気、運動失調、錯乱、眩暈及び判断障害(これらに限定されない)を生じ得る。さらにベンゾジアゼピンは身体依存を誘導し、潜在的に中毒性である。物質使用の突然の中断は、痙攣、錯乱、精神病、又は振戦せん妄と類似の作用を生じ得る。離脱症候の開始は遅延される場合があり、不眠症、不安、振顫、発汗、食欲喪失及び妄想により特性化される。ベンゾジアゼピン乱用の一般的治療は、認知行動療法、患者を薬剤から引き離すこと、そしていくつかの症例では、薬剤の作用を中和するためにベンゾジアゼピンアンタゴニストを投与することを基礎にしていた。しかしながらこれらの方法は、中毒に伴って生じる根元的生理化学的変化を取り扱わないという点で失敗である。
【0241】
a.治療前/患者査定段階
上記のように、本発明の治療プログラムに入る前に、各患者は治療前分析を受ける必要がある。治療前分析を用いて、患者が本発明の治療方法の最適候補であるか否かを判定し得る。さらに治療前プロセスは、本発明の治療方法に入るために患者を準備するために施され得る。
【0242】
b.本発明のプロトコールによる治療のための患者の準備
i.離脱状態に患者を置くこと
内因性神経ステロイドの上方制御を活性化するように抑制すること、及び/又は内因性神経ステロイドの下方制御を引き起こすことにより、患者は離脱状態に置かれ得る。前述のように、この治療ステップは、a)ストレス誘導性活動を回避すること、b)神経ステロイド産生増強活動を回避すること、c)患者におけるプロゲステロンレベル上昇を回避すること、d)女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節すること、又はe)神経ステロイド阻害薬の投与により男性又は女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節することにより達成され得る。
【0243】
ii.付加的前治療
1つの前治療アプローチでは、患者は用量の漸次低減により漸次離脱される。一実施形態では、患者は、15〜25mg、1日4回のジアゼパム(バリウム)の投与で開始される。離脱増大の徴候(例えば脈拍増大、血圧増大又は発汗増大)を抑制するために、十分量のジアゼパムが投与される。離脱の徴候を抑制するジアゼパム用量に達すると、投与をさらに2日間継続し、次に10%/日だけ低減し得る。ジアゼパム用量が初期用量の10%に近づいたら、残りの用量を3〜4日間にわたって徐々に低減し、次に中断する。このアプローチでは、ベンゾジアゼピン解毒は約14日で成し遂げられ、その後、GABAA発現を選択的に調節する化合物のクラスからの一化合物が投与される。しかしながらより長い解毒が必要とされることもある、と理解されるべきである。
【0244】
c.GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与
治療前プロトコールが固守され、そして完了されると、一般治療方法で上述したようなGABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物、例えばフルマゼニルを患者は投与される。
【0245】
d.付加的な治療選択肢
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような付加的な治療選択肢が施され得る。
【0246】
e.プロトコールの治療後段階
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような治療後プロトコールが施される。
【0247】
f.仮説的治療例1
25歳の男性が、5年間アルプラゾラムを使用中であり、治療前査定を受けた後、DSM−IV判定基準下で、アルプラゾラム中毒であると診断された。
【0248】
患者準備: 予定治療の4週間前に、5mg/日の予定フィナステリド投与で開始した。予定治療の3日前に、フィナステリド投与を終結し、いかなるストレス誘導性活動にも携わらないよう、又は神経ステロイド産生を増大すると思われるいかなる物質も摂取しないよう患者に指図する。
【0249】
治療1日目: 少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、注入により、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0250】
治療2日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の割合で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0251】
治療3日目: 男性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0252】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【0253】
g.仮説的治療例2
35歳の男性が、5年間アルプラゾラムを使用中であり、治療前査定を受けた後、DSM−IV判定基準下で、アルプラゾラム中毒であると診断された。
【0254】
患者準備: 予定治療の4週間前に、5mg/日の予定フィナステリド投与で開始した。予定治療の3日前に、フィナステリド投与を終結し、いかなるストレス誘導性活動にも携わらないよう、又は神経ステロイド産生を増大すると思われるいかなる物質も摂取しないよう患者に指図する。
【0255】
次に、治療の少なくとも2週間前に、患者は治療誘導性ベンゾジアゼピン離脱プロセスを受ける。好ましいアプローチでは、発作及びその他の問題を防止するために、用量の漸次低減によりベンゾジアゼピン離脱を成し遂げる。15〜25mg、1日4回のジアゼパムを用いて、患者を離脱させる。離脱増大の徴候(例えば脈拍増大、血圧増大又は発汗増
大)を抑制するために、十分量のさらなるジアゼパムを患者に投与する。離脱の徴候を抑制するジアゼパム用量に達すると、ジアゼパム投与を2日間継続し、次に10%/日だけ低減する。ジアゼパム用量が10%に近づいたら、用量を3〜4日間にわたって徐々に低減し、次に中断する。
【0256】
治療1日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0257】
治療2日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の割合で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0258】
治療3日目: 男性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0259】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【実施例3】
【0260】
IX.ニコチン乱用の治療のためのプロトコール
ニコチンは、強い刺激作用を有する天然液体アルカロイドである。ニコチンは、皮膚、肺又は粘膜を通して容易に拡散し、そして血管、脳及び身体の残りの部分に移動する。吸入すると、10〜15秒以内に、人はニコチンの刺激作用を受ける。ニコチンの半減期は約60秒である。ニコチンは脳及び身体機能を変え、そして最初にアドレナリンの急速放出を生じ、それにより急速心拍動、血圧増大及び急速表在呼吸を引き起こす。
【0261】
ニコチンは、ストレスの多い事象により誘発されるものと類似の抗不安及び不安惹起作用の両方を誘導し、情動及び報酬に寄与する薬剤である。主にシナプス前終末上に位置する脳中のニコチン性アセチルコリン受容体とのその相互作用により、ニコチンは多数の神経伝達物質、例えばセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン及びGABAの放出を調節する。ニコチンは、その活性化がより高いニューロン活動を鈍らせるGABA受容体GABAAに直接又は間接的に作用し得る。ニコチンは中脳辺縁ドーパミン系を活性化し、これは、薬剤の補強特性にとって重要である。ヘロイン、コカイン及びアルコールと同様、ニコチンは、人において、幸福感及び身体依存の両方を誘導し、そしてストレス関連不安を低減する、ということが示唆される。
【0262】
さらに、ニコチンは、アロプレグナノロン及びその前駆体の大脳皮質濃度を増大することが実証された。アロプレグナノロンがGABAA受容体機能を増大し、不安及び気分障害の調節に重要な役割を果たすとすると、ニコチンにより誘発されるこの内因性神経ステロイドの脳内濃度の一過性増大は、ニコチンにより引き出されるニューロン興奮及び不安惹起様作用を低減するか又は中和する恒常性メカニズムを表わし得る。
【0263】
アロプレグナノロンが、中脳皮質及び中脳辺縁系ドーパミン作動性ニューロンの抑制調節に関与するGABAA受容体の最も強力な陽性モジュレーターの1つだとすると、これ
らのホルモンの脳内含有量のニコチン誘導性増大は、GABAにより誘導されるこれらのドーパミン作動性経路の抑制を促し得る。
【0264】
長期使用は、耐性及び依存の発現のために問題がある可能性がある。物質使用の突然の中断は、痙攣、錯乱、精神病、又は振戦せん妄と類似の作用を生じ得る。離脱症候の開始は遅延される場合があり、不眠症、不安、振顫、発汗及び食欲喪失により特性化される。ニコチン乱用の一般的治療は、認知行動療法、ならびに患者を薬剤から引き離すことを基礎にしていた。しかしながらこれらの方法は、中毒に伴って生じる生理化学的変化を取り扱わないという点で失敗である。
【0265】
a.治療前/患者査定段階
上記のように、本発明の治療プログラムに入る前に、各患者は治療前分析を受ける必要がある。治療前分析を用いて、患者が本発明の治療方法の最適候補であるか否かを判定し得る。さらに治療前プロセスは、本発明の治療方法に入るために患者を準備するために施され得る。
【0266】
b.本発明のプロトコールによる治療のための患者の準備
i.離脱状態に患者を置くこと
内因性神経ステロイドの上方制御を活性化するように抑制すること、及び/又は内因性神経ステロイドの下方制御を引き起こすことにより、患者は離脱状態に置かれ得る。前述のように、この治療ステップは、a)ストレス誘導性活動を回避すること、b)神経ステロイド産生増強活動を回避すること、c)患者におけるプロゲステロンレベル上昇を回避すること、d)女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節すること、又はe)神経ステロイド阻害薬の投与により男性又は女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節することにより達成され得る。
【0267】
ii.その他の前治療アプローチ
以下の臨床ガイドラインは、米国保険社会福祉省(United States Department of Health and Human Services)、より詳細には物質乱用精神衛生業務局(Substance Abuse and
Mental Health Services Administration)(以後、SAMHSA)により刊行されたガイドライン(「Treating Tobacco Use and Dependence」)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)から適合された(Fiore MC, Bailey WC, Cohen SJ, et al. 「Treating Tobacco Use and Dependence. Clinical Practice Guideline.」 (Rockville,
MD: U.S. Department of Health and Human Services. Public Health Service. June 2000)参照)。
【0268】
一実施形態では、患者は、カウンセリング及び行動療法、例えば実践的カウンセリングの提示(問題解決/技能訓練);治療の一部としての社会的支援の提示(治療内社会的支援);ならびに治療外の社会的支持を確保する支援(治療外社会的支援)(これに限定されない)に参加する。別の実施形態では、長期喫煙禁断率増大に関して既知である薬物療法:ブプロピオンSR、ニコチンガム、ニコチン吸入器、ニコチン鼻スプレー、ニコチンパッチ、クロニジン及び/又はノルトリプチリンを患者に処方する。
【0269】
採用される特定の治療前療法と関係なく、GABAA発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与の少なくとも1週間前にこのような薬物療法を患者は中止すべきである、と理解されるべきである。
【0270】
c.GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与
治療前プロトコールが固守され、そして完了されると、一般治療方法で上述したようなGABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物、例えばフルマゼニルを
患者は投与される。
【0271】
d.付加的な治療選択肢
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような付加的な治療選択肢が施され得る。
【0272】
e.プロトコールの治療後段階
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような治療後プロトコールが施される。
【0273】
f.仮説的治療例1
30歳の女性は、11年間ニコチンを使用しており、そして明らかにニコチンに対して中毒者である。彼女は少なくとも5年間、経口避妊薬を摂取していた。
【0274】
患者準備: プロゲステロンが投与されない期間中に、治療を予定する(例えば21日ピルパックでは、治療は最初のプラセボ日で開始するよう予定する)。これが可能でない場合、予定治療前の1週間、避妊薬使用を止めるよう、女性患者に指図する。予定治療の3日前に、いかなるストレス誘発性活動にも携わらぬよう、又は神経ステロイド産生を増大すると思われるいかなる物質(経口避妊薬を含めて)も摂取せぬよう、患者に指図する。
【0275】
治療1日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、女性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0276】
治療2日目: 女性患者を評価して、第二日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0277】
治療3日目: 女性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0278】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう女性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【0279】
g.仮説的治療例2
30歳の女性は、11年間ニコチンを使用しており、そして明らかにニコチンに対して中毒者である。
【0280】
患者準備: 予定治療の6週間前に、経口避妊薬を女性患者に投与する。予定治療の1週間前に、経口避妊薬の投与を終結する。治療の2週間前に、女性患者はあらゆるニコチン使用を中止し、そして離脱症候のためにニコチンパッチを処方される。ベンゾジアゼピンを5mg、1日3回の用量で、4日間まで投与する。予定治療の3日前に、いかなるストレス誘導性活動にも携わらないよう、又は神経ステロイド産生を増大すると思われるいかなる物質(経口避妊薬を含めて)も摂取しないよう患者に指図する。
【0281】
治療1日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、女性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0282】
治療2日目: 女性患者を評価して、第二日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0283】
治療3日目: 女性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0284】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう女性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【実施例4】
【0285】
X.大麻(THC)乱用の治療のためのプロトコール
大麻又はマリファナは、向精神性化学物質であるTHC(デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール)を含有する植物である。喫煙すると、THCは個体の肺中に、その結果、血流中に、容易に拡散する。THCは脳及び身体機能を変え、そして最初に朦朧感及び立ちくらみ、ならびに短期記憶、協調、学習及び問題解決に及ぼす有害作用を生じる。
【0286】
長期使用は、耐性及び依存の発現のために問題がある可能性がある。THCは、GABA受容体GABAAに直接又は間接的に作用する場合があり、その活性化はより高いニューロン活性を鈍らせる。THC使用は、種々の副作用、例えば学習及び記憶問題、異常知覚、不安、偏執症及びパニック発作(これらに限定されない)を生じ得る。さらにTHCは身体依存を誘導し、中毒性である。医学的に危険ではないが、離脱症候としては、不安、被刺激性、発汗、睡眠障害、不機嫌及び食欲不振が挙げられる。あまり一般的でない離脱症候としては、振顫、悪心及び嘔吐、不定期性下痢及び唾液過多が挙げられる。
【0287】
THC乱用の一般的治療は、認知行動療法、及び患者を薬剤から引き離すことを基礎にしていた。しかしながらこれらの方法は、中毒に伴って生じる生理化学的変化を取り扱わないという点で失敗である。
【0288】
a.治療前/患者査定段階
上記のように、本発明の治療プログラムに入る前に、各患者は治療前分析を受ける必要がある。治療前分析を用いて、患者が本発明の治療方法の最適候補であるか否かを判定し得る。さらに治療前プロセスは、本発明の治療方法に入るために患者を準備するために施され得る。
【0289】
b.本発明のプロトコールによる治療のための患者の準備
i.離脱状態に患者を置くこと
内因性神経ステロイドの上方制御を活性化するように抑制すること、及び/又は内因性神経ステロイドの下方制御を引き起こすことにより、患者は離脱状態に置かれ得る。前述のように、この治療ステップは、a)ストレス誘導性活動を回避すること、b)神経ステ
ロイド産生増強活動を回避すること、c)患者におけるプロゲステロンレベル上昇を回避すること、d)女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節すること、又はe)神経ステロイド阻害薬の投与により男性又は女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節することにより達成され得る。
【0290】
ii.その他の前治療アプローチ
以下のプロトコールは、「Cannabis Dependence and Treatment」(GP Drug & Alcohol
Supplement No. 10 (June 1998))から適合される。一実施形態では、以下のうちの少なくとも1つが1ヶ月以上の間当てはまるため、大麻依存であると患者を診断した:a)大麻はしばしば、意図されたよりも大量に又は長い期間摂取される、b)大麻使用を減らし、又は制御するための持続的願望又は1つ若しくは複数の不首尾の努力が存在する、c)大麻を獲得し、例えば盗み、大麻を摂取し、或いはその作用から回復するために必要とする活動には多大な時間が費やされる、d)仕事、学校又は家庭での重要な役割義務を果たすことが期待される場合、或いは大麻が身体に有害である場合に、しばしば中毒又は離脱症候が起こる、e)大麻使用のために断念されるか又は低減される、重要な社会的、職業的又は休養的活動が存在する、f)大麻の使用により引き起こされるか又は悪化させられる持続性又は再発性のある社会心理学的又は身体的問題を有するという知識にも関わらず、大麻使用が継続される、ならびにg)顕著な耐性が認められる。
【0291】
一実施形態では、以下に基づいた前治療療法を患者に処方する:a)患者が望むこと;b)患者の大麻関連問題の重症度;c)患者の安全性、即ち心理学的又は抑うつ症候からの自殺の危険又は他者への危害;ならびにd)患者が中止し易いか否か。一実施形態では、前治療療法は、動揺、睡眠障害、不穏状態及び易刺激性の症候を取り扱うために薬剤を処方することを包含する。一実施形態では、処方される薬剤は、ベンゾジアゼピン(例えばジアゼパム)であり、これは5mgの容量で、1日3回で4日間まで投与され得る。ベンゾジアゼピンは、これらの患者においては4日を超えて継続されるべきでない。
【0292】
採用される特定の処方薬と関係なく、GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与の少なくとも1週間前にこのような薬物療法をすべて患者は中止すべきである、と理解されるべきである。
【0293】
c.GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与
治療前プロトコールが固守され、そして完了されると、一般治療方法で上述したようなGABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物、例えばフルマゼニルを患者は投与される。
【0294】
d.付加的な治療選択肢
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような付加的な治療選択肢が施され得る。
【0295】
e.プロトコールの治療後段階
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような治療後プロトコールが施される。
【0296】
f.仮説的治療例1
30歳の女性は、9年間大麻を使用しており、DSM−III−R判定基準下で、大麻に対する中毒者であると診断された。彼女は、少なくとも5年間経口避妊薬を摂取してきた。
【0297】
患者準備: 予定治療の1週間前に、経口避妊薬の投与を終結する。予定治療の3日前
に、任意のストレス誘導性活動にも携わらないよう、又は神経ステロイド産生を増大すると思われるいかなる物質(経口避妊薬を含めて)も摂取しないよう患者に指図する。
【0298】
治療1日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、女性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0299】
治療2日目: 女性患者を評価して、第二日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0300】
治療3日目: 女性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0301】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう女性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【0302】
g.仮説的治療例2
30歳女性は、9年間大麻を使用し続けており、DSM−III−R判定基準下で、大麻に対する中毒者であると診断された。
【0303】
患者準備: 予定治療の6週間前に、経口避妊薬を女性患者に投与する。予定治療の1週間前に、経口避妊薬の投与を終結する。予定治療の2週間前に、女性患者はあらゆる大麻使用を中止し、そして大麻離脱症候のためにベンゾジアゼピンを処方される。ベンゾジアゼピンを5mg、1日3回の用量で、4日間まで投与する。予定治療の3日前に、任意のストレス誘導性活動に携わらないよう、或いは神経ステロイド産生を増大すると思われる任意の物質(経口避妊薬を含めて)を摂取しないよう患者に指図する。
【0304】
治療1日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、女性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0305】
治療2日目: 女性患者を評価して、第二日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0306】
治療3日目: 女性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0307】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう女性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル
治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【実施例5】
【0308】
XI.カフェイン乱用の治療のためのプロトコール
カフェイン(トリメチルキサンチンとしても既知である)は、天然心臓刺激剤及び弱利尿剤である。カフェインは、正常個体において神経衰弱及び不眠症を誘導し、そしてそれは、不安及びパニック発作傾向がある患者において不安レベルを増大する。不安惹起剤として、カフェインは脳及び身体機能を変え、そしてアドレナリンの急速放出を生じ、それにより急速心拍動、血圧増大及び急速表在呼吸を引き起こす。
【0309】
カフェインは、GABA受容体GABAAに直接又は間接的に作用し、その活性化はより高いニューロン活性を鈍らせる。さらに、神経活性ステロイドはカフェインの刺激作用及び不安惹起作用を調節する、ということが示唆されている。より詳細には、カフェインのIP投与は、アロプレグナノロンの血漿及び脳内濃度の、ならびにその前駆体プレグネノロン及びプロゲステロンの濃度の用量依存性増大を引き起こすということをConcas他は実証した。したがって神経活性ステロイドの血漿及び脳内濃度に及ぼすカフェインの作用は、不安惹起薬の濃度、例えば人において実験的不安を誘導するGABAA受容体複合体の直接及び間接的阻害薬の濃度と類似であることが示された。これらの作用は抗不安薬の全身投与により拮抗されるということも実証され、これはさらに、不安様又は葛藤行動を誘導する薬理学的治療及び実験条件も神経活性ステロイドの血漿及び脳内濃度の増大を誘導することを実証する。
【0310】
さらに、カフェインは神経活性ステロイドの血漿及び脳内濃度の増大に関連する神経伝達物質放出及び不安様行動の両方を誘導するため、HPA軸がカフェインのこのような作用を媒介し得るということが示唆される。カフェインにより誘発されるアロプレグナノロンの脳内濃度の一過性増大は、覚醒状態に関連する神経内分泌及び神経化学経路の活性化を低減するための、そしてニューロン興奮の程度を限定するための生理学的メカニズムを反映する場合がある;これは、神経活性ステロイドがCNSの過剰興奮を相殺するよう機能するという事実と一致する。
【0311】
カフェインは身体依存を誘導し、中毒性であり、したがって長期使用は、耐性及び依存の発現のために問題がある。物質使用の突然の中断は、不安及び痙攣を生じ得る。カフェイン依存及び乱用の一般的治療は、認知行動療法、ならびに患者を薬剤から引き離すことを基礎にしていた。しかしながらこれらの方法は、中毒に伴って生じる生理化学的変化を取り扱わないという点で失敗である。
【0312】
カフェインの作用のさらなる支持において、GABAA受容体アンタゴニストであるビククリンで、或いは種々の神経ステロイド生合成酵素阻害薬、即ちトリロスタン、フィナステリド又はインドメタシンのいずれかで前に治療された動物において、カフェインはより高い不安を生じる、ということをJain他は実証した。
【0313】
a.治療前/患者査定段階
上記のように、本発明の治療プログラムに入る前に、各患者は治療前分析を受ける必要がある。治療前分析を用いて、患者が本発明の治療方法の最適候補であるか否かを判定し得る。さらに治療前プロセスは、本発明の治療方法に入るために患者を準備するために施され得る。
【0314】
b.本発明のプロトコールによる治療のための患者の準備
i.離脱状態に患者を置くこと
内因性神経ステロイドの上方制御を活性化するように抑制すること、及び/又は内因性
神経ステロイドの下方制御を引き起こすことにより、患者は離脱状態に置かれ得る。前述のように、この治療ステップは、a)ストレス誘導性活動を回避すること、b)神経ステロイド産生増強活動を回避すること、c)患者におけるプロゲステロンレベル上昇を回避すること、d)女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節すること、又はe)神経ステロイド阻害薬の投与により男性又は女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節することにより達成され得る。
【0315】
i.その他の前治療アプローチ
カフェイン乱用及び中毒は、物質依存の治療の基本原理に従うべきである。これらの因子としては、違反物質の排除;必要な場合の解毒;関連症状及び合併症に関する医学的及び心理学的評価;中毒、自己管理及び回復についての教育;ストレスの軽減及び健康なライフスタイルの開発;ならびに心理社会的治療及び支持が挙げられる。
【0316】
採用される特定の治療アプローチと関係なく、GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与の少なくとも1週間前に全ての薬物療法を患者は中止すべきである、と理解されるべきである。
【0317】
c.GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与
治療前プロトコールが固守され、そして完了されると、患者は一般治療方法で上述したようなGABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物、例えばフルマゼニルを投与される。
【0318】
d.付加的な治療選択肢
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような付加的な治療選択肢が施され得る。
【0319】
e.プロトコールの治療後段階
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような治療後プロトコールが施される。
【0320】
f.仮説的治療例1
40歳男性は、15年間カフェインを使用しており、DSM−IV判定基準下で、カフェインに対する中毒者であると診断された。彼はまた、カフェイン離脱時に急性頭痛を示した。
【0321】
患者準備: 予定治療の4週間前に、5mg/日の予定フィナステリド投与で開始した。予定治療の3日前に、フィナステリド投与を終結し、いかなるストレス誘導性活動にも携わらないよう、又は神経ステロイド産生を増大すると思われるいかなる物質も摂取しないよう患者に指図する。
【0322】
治療1日目:注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0323】
治療2日目: 男性患者を評価して、第二日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0324】
治療3日目: 男性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入
により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0325】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、例えば、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進む。頻度を低減しながら(即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回)数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【実施例6】
【0326】
XII.非ベンゾジアゼピン抗不安薬、鎮静薬、催眠薬及び精神安定薬/バルビツレート(「CNS抑うつ薬」)に対する中毒の治療のためのプロトコール
非ベンゾジアゼピン催眠薬は、不眠症(或いは就寝又は睡眠継続困難)の短期治療のために用いられる。クロルメチアゾールのようなものは、動揺及び不穏を助けるために、そしてアルコール離脱症候を助けるために用いられ得る。
【0327】
バルビツレートは、中枢神経系(CNS)抑うつ薬として作用して、広範囲の作用(軽度の鎮静から麻酔まで)を生じる薬剤である。今日、バルビツレートは、抗痙攣薬として、そして麻酔誘導のために滅多に用いられない。時々、2つ以上のバルビツレートが、単一錠剤又はカプセル中で組合される。
【0328】
バルビツレートはGABAの機能を増強し、そして神経及び筋肉組織に対する一般的抑うつ薬である。軽度〜中等度のバルビツレートの毒性は、アルコール中毒によく似ている。重症急性バルビツレート毒は、CNS問題、例えば嗜眠及び昏睡を引き起こす。
【0329】
中等度量では、バルビツレートは、アルコールの作用と類似する中毒の状態を生じる。用量、頻度及び使用継続期間によって、バルビツレートに対する耐性、身体依存及び心理学的依存を人は急速に発現し得る。使用者がバルビツレートに対する耐性を発現する場合、有効用量は致死用量に近い。同一レベルの中毒、したがって満足を得るために、耐性乱用者はその用量を致死量知覚又は致死レベルに上げる。
【0330】
乱用する人はその鎮静及び多幸作用に対する耐性を発現するがしかしそれらの呼吸抑制作用に対しては耐性を発現しないため、非ベンゾジアゼピン鎮静薬、例えば中間体又は短期作用性バルビツレート或いはグルテチミドは、ベンゾジアゼピンより致死的過剰用量を生じやすい。したがってこれらの人々はその投与量を恍惚状態を得るまで増大するので、彼等は突然過剰投与して、呼吸低下を生じる。オピオイド中毒である人そして非ベンゾジアゼピン鎮静薬を乱用する人は、通常は、MATを開始する前に解毒のために入院する必要があり、或いは治療共同体のような長期滞在型プログラムに委託するのがより良好である。非ベンゾジアゼピン鎮静薬は、メタドン、レボ−アルファアセチルメタノール(LAAM)及びブプレノルフィン代謝に関与する酵素であるチトクロームP450 3Aを誘導し、そして安定化を難しくさせ得る。
【0331】
a.治療前/患者査定段階
上記のように、本発明の治療プログラムに入る前に、各患者は治療前分析を受ける必要がある。治療前分析を用いて、患者が本発明の治療方法の最適候補であるか否かを判定することができる。さらに治療前プロセスは、本発明の治療方法に入るために患者を準備するために施され得る。
【0332】
b.本発明のプロトコールによる治療のための患者の準備
i.離脱状態に患者を置くこと
内因性神経ステロイドの上方制御を活性化するように抑制すること、及び/又は内因性神経ステロイドの下方制御を引き起こすことにより、患者は離脱状態に置かれ得る。前述のように、この治療ステップは、a)ストレス誘導性活動を回避すること、b)神経ステロイド産生増強活動を回避すること、c)患者におけるプロゲステロンレベル上昇を回避すること、d)女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節すること、又はe)神経ステロイド阻害薬の投与により男性又は女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節することにより達成され得る。
【0333】
i.その他の治療前アプローチ
一実施形態では、GABAA受容体発現を選択的に調節する化合物のクラスからの一化合物による治療の少なくとも2週間前に、任意のCNS抑うつ薬を摂取しないようにし、そして患者にベンゾジアゼピン、例えばジアゼパムを、15〜25mgの用量で1日4回処方する。離脱増大の徴候(例えば脈拍増大、血圧増大又は発汗増大)を抑制するために、さらに十分量のジアゼパムを投与する。離脱の徴候を抑制するジアゼパム用量が到達されたら、ジアゼパム投与をさらに2日間継続し、次に10%/日だけ低減する。
【0334】
採用される治療アプローチと関係なく、GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与の少なくとも1週間前に、全薬物療法を患者は中止すべきである、と理解されるべきである。
【0335】
c.GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与
治療前プロトコールが固守され、そして完了されると、患者は、一般治療方法で上述したようなGABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物、例えばフルマゼニルを投与される。
【0336】
d.付加的な治療選択肢
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような付加的な治療選択肢が施され得る。
【0337】
e.プロトコールの治療後段階
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような治療後プロトコールが施される。
【0338】
f.仮説的治療例1
32歳の男性は、5年間ザルペロンを使用しており、DSM−IV判定基準下で、ザルペロンに対する中毒者であると診断された。
【0339】
患者準備: 予定治療の4週間前に、男性患者に5mg/日の予定フィステリド投与を開始する。予定治療の3日前に、フィステリドの投与を終結し、いかなるストレス誘導性活動にも携わらないよう、又は神経ステロイド産生を増大すると思われるいかなる物質も摂取しないよう患者に指図する。
【0340】
治療1日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0341】
治療2日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0342】
治療3日目: 男性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0343】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、例えば、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進める。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【0344】
g.仮説的治療例2
32歳の男性は、5年間ザルプロン(zalpelon)を使用しており、DSM−IV判定基準下で、ザルフェロンに対する中毒者であると診断された。
【0345】
患者準備: 予定治療の4週間前に、5mg/日の予定フィナステリド投与で開始する。予定治療の2週間前に、任意のCNS抑うつ薬を摂取しないようにし、そして15〜25mgの用量で1日4回、ジアゼパムを処方する。離脱増大の徴候を抑制するジアゼパム用量が達成されたら、それを2日間以上継続し、次に10%/日だけ低減する。予定治療の3日前に、フィナステリド投与を終結し、任意のストレス誘導性活動に携わらないよう、或いは神経ステロイド産生を増大すると思われる任意の物質を摂取しないよう患者に指図する。
【0346】
治療1日目:注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0347】
治療2日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0348】
治療3日目: 男性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0349】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、例えば、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進める。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【実施例7】
【0350】
XIII.抗うつ薬離脱の治療のためのプロトコール
臨床的抑うつは、臨床医により一般的に許容される判定基準に到達する精神的及び身体的構成成分を有する健常状態である(以下で詳細に記載)。抑うつの生理学的症候は、神経伝達物質と呼ばれる脳内の情報を伝達する化学物質の変化又は不均衡のためであり得る。多数の当代の抗うつ薬が、或る種の神経伝達物質、例えばセロトニンのレベルを増大しようと試みている。さらに、プロゲステロン及びGABAに及ぼすその作用は、抑うつ及び抗うつ薬依存に関連づけられる、ということが示されてきた。CNS薬、例えば選択的
セロトニン再取込み阻害薬、三環系抗うつ薬、ならびにモノアミンオキシド阻害薬の中止は離脱、即ちGABAA受容体α1サブユニットと比較した場合の全GABAA受容体α4サブユニットの増大を引き起こし、これが次に不安を引き起こす。
【0351】
アロプレグナノロンは、フルオキセチンの抗痙攣作用において役割を果たし、したがって、神経ステロイド代謝物質によるGABAA受容体の調節がフルオキセチンの抗痙攣作用を媒介するという仮説を支持する、ということをKhemraj他は実証した。さらに、フルオキセチン及びフルボキサミンの薬理学的プロフィールは、GABAA受容体でのGABA作用の強力な陽性モジュレーターであるアロプレグナノロンの脳内及び脳脊髄液内含量を増大するこれらの薬剤の能力と相関する、ということをPinna他は示唆している。これはさらに、選択的セロトニン再取込み阻害薬が二重経路により作用し、その両方が遊離セロトニンのレベルを調節し、そして内因性神経ステロイドのレベルを増大して、SSRIの「中毒」特性をもたらす、ということを支持する。
【0352】
アロプレグナノロン上方制御がより低い用量でそのセロトニン調節を生じる、ということが実証されているため、アロプレグナノロンに及ぼすSSRIの作用を取り除くことにより、高用量の薬剤で患者を治療して、セロトニンのレベルを調節することが可能である。
【0353】
a.治療前/患者査定段階
上記のように、本発明の治療プログラムに入る前に、各患者は治療前分析を受けるべきである。治療前分析を用いて、患者が本発明の治療方法の最適候補であるか否かを判定することができる。さらに治療前プロセスは、本発明の治療方法に入るために患者を準備するために施され得る。
【0354】
b.本発明のプロトコールによる治療のための患者の準備
i.離脱状態に患者を置くこと
内因性神経ステロイドの上方制御を活性化するように抑制すること、及び/又は内因性神経ステロイドの下方制御を引き起こすことにより、患者は離脱状態に置かれ得る。前述のように、この治療ステップは、a)ストレス誘導性活動を回避すること、b)神経ステロイド産生増強活動を回避すること、c)患者におけるプロゲステロンレベル上昇を回避すること、d)女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節すること、又はe)神経ステロイド阻害薬の投与により男性又は女性のプロゲステロンレベルを活性化するように調節することにより達成され得る。
【0355】
c.GABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物の投与
治療前プロトコールが固守され、そして完了されると、患者は、一般治療方法で上述したようなGABAA受容体発現を調節する化合物のクラスからの一化合物、例えばフルマゼニルを投与される。
【0356】
d.付加的な治療選択肢
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような付加的な治療選択肢が施され得る。
【0357】
e.プロトコールの治療後段階
治療プロトコールが施されると、一般治療方法で上述したような治療後プロトコールが施され得る。
【0358】
f.仮説的治療例1
32歳の男性は、5年間塩酸フルオキセチンを使用しており、そして離脱時に、中毒に
関するDMS−IV判定基準における症候と類似の不安惹起症候を経験している。
【0359】
患者準備: 予定治療の4週間前に、男性患者に5mg/日の予定フィナステリド投与を開始する。予定治療の3日前に、フィナステリドの投与を終結し、いかなるストレス誘導性活動にも携わらないよう、又は塩酸フルオキセチンを含む神経ステロイド産生を増大すると思われるいかなる物質も摂取しないよう患者に指図する。
【0360】
治療1日目: 注入により、少なくとも1.0mg/日の治療的有効量で、男性患者にフルマゼニルを投与する。主治医により、患者の心拍数、血圧及び主観的報告の評価に基づいて、総用量及び割合が修正される。
【0361】
治療2日目: 男性患者を評価して、第二日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0362】
治療3日目: 男性患者を評価して、第三日の治療が必要であるか否かを判定する。患者が不安又は渇望の感覚を報告し続ける場合、少なくとも1.0mg/日の割合で、注入により、患者にフルマゼニルを再び投与する。
【0363】
治療後: 治療段階の完了後、患者に治療後レジメンを処方して、例えば、薬学的組成物の投与、外来患者療法、食事プログラム及び運動レジメン(これらに限定されない)に進める。頻度を低減しながら[即ち、最初の3ヶ月間は週1回、次の3ヶ月間は2週ごとに1回、そしてその次の3ヶ月間は毎月1回]数ヶ月間、外来患者治療センターに通うよう男性患者に指図する。不安の感情が戻った場合、少なくとも1日、そして3日までのフルマゼニル治療を反復するよう、患者のスケジュールを立てる。
【0364】
上記の実施例は、本発明の系の多数の適用の例示に過ぎない。本発明のいくつかの実施形態のみを本明細書中に記載してきたが、本発明の精神又は範囲を逸脱することなく、本発明は多数の他の特定の形態で具体化され得ることが理解されるべきである。したがって本発明の実施例及び実施形態は、例証であると考えられるべきものであって、本発明はそれらに限定されず、そして本発明は、本明細書中に示された詳細に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で改変され得る。上記で引用された特許文献、刊行物及び要約はすべて、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0365】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【表1−10】

【表1−11】

【表1−12】

【表1−13】

【表1−14】

【表1−15】

【表1−16】

【表1−17】

【表1−18】

【表1−19】

【表1−20】

【表1−21】

【表1−22】

【表1−23】

【図面の簡単な説明】
【0366】
詳細な説明は、以下に簡単に説明する図面を鑑みて考察されるべきである。
【図1】GABAAの直接的及び/又は間接的なアロステリック調節による抑制と実質的又は完全な抑制の低減との間のスペクトルを示す図である。
【図2】ヒトの脳における内部思考フィルタリングメカニズムを示す図である。
【図3a】複数のGABAA受容体サブユニットの第一模式図である。
【図3b】複数のGABAA受容体サブユニットの第二模式図である。
【図3c】ベンゾジアゼピンに対する調節GABAA受容体の非感受性の図解である。α1サブユニット:α1β2γ2含有GABAA受容体は脳中の最も一般的なGABA受容体であることに留意されたい。
【図4】神経ステロイド産生の阻害薬によるプロゲステロンのアロプレグナノロンへの転換の遮断についての化学図式である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗うつ剤、アヘン剤、ニコチン又はマリファナの中毒を治療するための薬剤の製造におけるGABAA受容体発現モジュレーターの使用。
【請求項2】
前記GABAA受容体モジュレーターがフルマゼニルである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記フルマゼニルが0.5〜10mg/日で投与される、請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記フルマゼニルが1.5〜2.5mg/日で投与される、請求項2記載の使用。
【請求項5】
抗うつ剤、アヘン剤、ニコチン又はマリファナの中毒を治療するための薬剤の製造における神経ステロイド産生阻害薬の使用。
【請求項6】
前記神経ステロイド産生阻害薬が5−α−レダクターゼ阻害薬である、請求項5記載の使用。
【請求項7】
前記5−α−レダクターゼ阻害薬がフィナステリドである、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記フィナステリドが約5mg/日で投与される、請求項7記載の使用。
【請求項9】
抗うつ剤、アヘン剤、ニコチン又はマリファナの中毒の治療方法であって、GABAA受容体発現を選択的に調節する化合物を投与するステップを包含する、方法。
【請求項10】
前記化合物がフルマゼニルである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記フルマゼニルが治療的有効量で投与される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記フルマゼニルの前記治療的有効量が0.5mg/日〜10mg/日である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記フルマゼニルが所定の時間間隔にわたって0.1〜0.3mgの割合で投与され、合計0.5mg/日〜10mg/日で投与される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記所定の時間間隔が1〜15分の範囲である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記フルマゼニルが所定の時間間隔にわたって0.1〜0.3mgの割合で投与され、合計1.0mg/日〜3.0mg/日で投与される、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記フルマゼニルが所定の時間間隔にわたって0.1〜0.3mgの割合で投与され、合計1.5mg/日〜2.5mg/日で投与される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
GABAA受容体発現を選択的に調節する化合物を投与するステップの前に、神経ステロイド産生の阻害薬を投与するステップをさらに包含する、請求項9記載の方法。
【請求項18】
前記神経ステロイド産生の阻害薬が5−α−レダクターゼ阻害薬である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記5−α−レダクターゼ阻害薬がフィナステリドである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記フィナステリドが治療的有効量で投与される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
フィナステリドの前記治療的有効量が5mg/日である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
抗うつ剤、アヘン剤、ニコチン又はマリファナの中毒の治療方法であって、
治療適合性に関して患者を査定するステップと;
治療のために患者を準備するステップと;
GABAA受容体発現を選択的に調節する化合物を患者に投与するステップと
を包含する、方法。
【請求項23】
前記治療のために患者を準備するステップが現行の治療から患者を離脱させることを包含する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記治療のために患者を準備するステップが患者を離脱状態に置くことを包含する、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記患者が女性患者であり、該女性患者のプロゲステロンレベルを避妊薬で活性化するように調節することにより該女性患者が離脱状態に置かれる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
神経ステロイド産生の阻害薬を投与することにより前記患者が離脱状態に置かれる、請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−535850(P2008−535850A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505580(P2008−505580)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/013099
【国際公開番号】WO2006/110557
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507182634)ハイシアム, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】