説明

特にサイトメトリー用の微小液滴吐出装置

本発明は、液滴吐出装置に関し、本装置は、主流路として認識され、第1流体流を循環させる第1流路(8、10)、流体を循環させ、第1流路と交差して交差ゾーン(27)を形成し、排出穴(20)で終端する第2流路(12、13)、第1流路(18)内の粒子又は細胞の物理特性を測定する手段(4)、並びに第2流路(12、13)内に圧力波を生成する手段を備える。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、懸濁液中の粒子を操作して注目する粒子を抽出するための方法と装置に関する。
具体的には、無標識の生細胞の解析及びスクリーニングを行ない、必要に応じて選択された細胞を含む液滴を、非接触で吐出する装置に関する。
【0002】
この装置によって、細胞を基板の上に、特に高い精度で細胞の位置決めを行って播種することができる。本発明は、例えば一つの細胞型、又は複数の異なる細胞型を同じ基板の上に有する細胞チップの作製に使用することができる。
この点に関し、本発明による装置は、粒子又は細胞の自動検出、計数、解析、スクリーニング、及び分配を行なう非常に柔軟性の高い機器である。
【0003】
背景技術
フローサイトメトリー法は、分子生物学及び細胞生物学において使用される技術であり、検出器を通過する連続流として循環する細胞の分子特性の解析に利用される。サイトメトリー解析によって、細胞又は他の生物学的粒子(バクテリア、寄生体、精子、リンパ節、染色体)の識別、計数、及び特徴付けを行い、それらをオペレータが事前に定義する物理−化学パラメータに関連付けることができる。サイトメトリー法が流れに注目するのは、細胞の操作が簡単であるからである。細胞が通過する毛管は、特徴付けを行う細胞懸濁液を収容するタンクに直接接続される。
更に、細胞は一つずつ連続して検出器の前で注入されるので、細胞の識別は多くの場合、非常な高速で行なわれ、一部の機器では1秒当たり1000個超の細胞が識別される。
【0004】
しかしながら、研究対象の分子特性は通常、標識法を使用することにより明らかにする必要があり、従って真の指定パラメータが装置によって検出される訳ではなく、パラメータに関連する標識が検出される。
現在の標識法の多くは、研究対象の細胞の特定の分子成分に移植される蛍光標識を用いる。蛍光標識は流れの中でレーザビームによって励起され、標識の応答が光学装置によって検出され、関連する電子機器によって特徴付けされる。
【0005】
いずれにしろ、これまでの細胞標識法には、解析に先立ち細胞を準備する段階が必要である。蛍光標識法は基本的に、非常に近似する特性を有し、別の手法によって差を検出することが殆どできない細胞、例えば、細胞の一の幹細胞が正常であり、別の幹細胞が癌細胞である、同じ細胞型の細胞を扱う場合に有利である。
しかしながら、不均一な細胞懸濁液の分離を、サイズ、細胞膜、及び/又は細胞質特性の簡単な基準に基づいて行なうことができる場合が非常に多く、これらの場合においては、標識が必要ではない。
【0006】
細胞の非破壊スクリーニングは多くの場合、オペレータが予め定義する陽性又は陰性基準に基づいて、流れの中で細胞を特徴付ける操作に続いて行なわれる。サンプリングを実施することによって注目粒子を溶液から抽出し、特定容器の一つ以上の精製された画分に回収する。細胞スクリーニング技術は、免疫学、腫瘍学、血液学、及び遺伝学等の広い分野におけるツールとなっている。
従って、流れの中で解析を行ない、連続的に広範囲の粒子、例えば種々のタンパク質粘度及び濃度を有する溶液中の無標識細胞をスクリーニングする機能を備える安価なシステムが必要とされている。
【0007】
更に、一種類の粒子又は細胞の操作を可能にするツール、特に細胞懸濁液から各細胞を個々に分離し、注目細胞の各々を特定の位置に位置決めする機能を備えるツールが必要とされている。
また、2次元ネットワークの局所的な位置へ、生細胞を個々に位置決めすることができる、高速且つ安価で、柔軟性が高く、操作性の良い分配ツールに対する需要がある。
【0008】
全ての公知の細胞スクリーニング法では、特定の基準を満たす全ての細胞を中間容器に回収するか、又は遠心分離機によって細胞を濃縮するステップを行った後で個々の細胞を配置する別の分離技術を利用する。
従って、精製した部分集団を収集する中間段階を無くし、細胞を基板上に直接分離することが望まれている。
【0009】
いずれにせよ、単一装置に、細胞又は粒子を流れの中で解析し、スクリーニングする機能、及び注目する細胞又は粒子を基板上に分配する機能を統合したシステムは現時点で存在しない。
欧州特許第1335198号は、流れを供給する流路、一連の電極を用いてインピーダンスによる測定を行なうゾーン、粒子をスクリーニングするためのゾーン、及び電極との信号の送受信を行う導電細片を備える装置を開示している。粒子のスクリーニングに使用される手段は、電極システムを用いた誘電泳動である。
【0010】
この公知の装置は3つの枝路、すなわち1つの流入枝路、及び2つの排出枝路を備える流路を有し、粒子は排出枝路のいずれかに向かう。このような排出枝路に向かう粒子の方向付けは必ず、誘電泳動力によって懸濁液中の粒子に作用する電極を用いて行なわれる。
この装置は、流入流体を2つの連続流体に分離することしかできず、2つの流体の内の一方がスクリーニングされる粒子を含む。この装置は流体から微小液滴を抽出しない。
【0011】
従って、液滴の抽出又は排出を可能にする装置を開発する必要があるという問題が生じている。
キャリア流体が向かう排出システムが、Picoliter社による国際公開番号WO02/44319に提案されている。しかしながら、細胞を方向付けする手段は集中波、通常は音波を利用するシステムに基づくものであり、このシステムは、例えば同社による国際公開番号WO 02/054044に記載されている。しかしながら、音波を利用して集中させる装置によって期待される精度は、超音波を正確に、信頼性且つ再現性を有するように集中させるのが困難であるために低い。
従って、別の排出方法を使用する装置を開発する必要があるという問題が生じている。
【0012】
発明の説明
本発明はこれらの問題を解決することを目的とする。
本発明は第一に、
− 主流路として認識される、第1流体流を循環させるための第1流路、
− 流体を循環させるための流路であって、第1流路と交差して交差ゾーンを形成し、排出穴で終端する第2流路、
− 第1流路内の粒子又は細胞の物理特性を測定する手段、及び
− 第2流路内に圧力波を生成する手段
を備える液滴吐出装置に関する。
【0013】
従って、本発明は、例えば基板の上に接触することなく粒子又は細胞を分配する装置に関し、粒子は圧力波を生成する手段を作動することにより選択される。
従って、本発明により、懸濁液中の粒子又は無標識細胞を選択し、次に接触することなく、必要に応じて、粒子又は細胞を基板の上に分配することができる。
【0014】
本発明は、特に補助流路に圧力波を発生させ、この圧力波の衝撃によって粒子の方向付け及び排出を行う手段が先行技術による構成要素とは異なる。
また、本発明による装置は流入流路の少なくとも2つの枝路、すなわち第1流体用の主流路の流入枝路、及び第2流路の流入枝路を備える。
【0015】
本発明による装置は、小さな空間に、例えばインピーダンス測定によって粒子の検出及び解析を行うシステム、及び必要に応じて注目する微細粒子を含有する液滴を排出する微量分配器を含む。
本装置は特に、希釈、混合、濃縮、又は粒子をスクリーニングするための他の用途に適用することができる。
【0016】
本発明によれば、粒子の排出は、粒子に直接適用される電気現象に限定されず、圧力波の影響下での微小液滴の排出によって(粒子の電荷に関係なく)、任意で第2流体を加えて行なわれる。
装置は更に、電気信号を解析し、圧力波を生成する手段の開放を始動させる手段を備えることができる。
【0017】
粒子又は細胞が特定の基準を満たす場合、圧力波を生成する手段の作動は、これらの解析手段から送出される信号又は信号群によって制御することができるか、或いは検出手段又は測定手段から受信する制御信号によって制御することができる。
本発明によるマイクロ流体装置によって、流体中に懸濁する粒子を流れの中で解析し、検出することができる。
【0018】
本発明によって特に、流体から微小液滴を抽出することができる。
従って本発明はまた、流れの中の粒子又は細胞、例えば無標識生細胞の検出及び/又は計数、及び/又は特徴付けを行い、続いて注目する粒子又は細胞を基板上でスクリーニング及び分配することを可能にする装置に関する。
【0019】
試薬の混合及び分配は、基板の所与の位置に一つ以上の細胞を分配する前、間又は分配の後に、基板の同じ位置で行なうことができる。
この排出モードによって、2つの液体(細胞を含む、又は含まない)を、高精度の比率で、表面に向かって液滴を排出する形で混合することができる。
【0020】
基板上に分配を行なう場合、2つの液体の一方の液体は、例えば、細胞を基板の所与の位置に滴下した後に細胞に作用する試薬を含むことができる。
一つ以上の細胞型の個々の細胞を、基板上にマトリクス状に播種して、例えば細胞チップを作製することができる。
【0021】
細胞チップ、すなわち2次元の生細胞ネットワークを、本発明による装置又は方法によって作製することができる。本発明による装置又は方法では、個々の細胞を非平坦基板のウェル又は穴か、又は平坦基板上の「仮想ウェル」に滴下する。細胞チップ上では、各位置において比較的良く知られた数の細胞に細胞のスクリーニングを用いて、異なる細胞型の細胞集団の中の一細胞、及び/又は細胞分裂のサイクルの異なる段階にある一細胞の、機能又は特定の特性の検出及び定量化に関連付ける。研究対象の細胞機能又は細胞特性は、当該位置に存在するか、又はチップに向かって外部で生成される化学的、光学的、電気的刺激などの影響によって強調することができる。非平坦基板上では、チップ上の位置密度は、2つのウェル又は2つの穴の間の壁の厚さ、及び/又はマイクロ流体接続が可能となる2つの位置の間に残された空間の厚さ等の物理的仕様に依存する。
仮想ウェルに、平坦基板上に滴下される液滴の形態で細胞を導入することにより、非常に高い位置密度が得られる。
【0022】
分配位置がウェル、例えば基板上の仮想ウェルである場合、本発明は非常に高い密度の細胞チップ、すなわちウェルプレート又は基板の穴に細胞を位置決めすることによって達成される密度よりずっと高い密度の細胞チップを提供することができる。
本発明によるシステムは更に、上述のような装置と、X、Y、及びZ方向に基板を高精度でシフトさせることができるキャリア−基板プレートとを提供することができる。
【0023】
従って、排出粒子を基板上に配置することができる。
任意で、気圧を制御する筐体により装置又はシステム全体を密閉する。
【0024】
本発明による装置はまた、チップを作製するための機器、及び制御された数の細胞を基板上に特定の形で空間配置する必要のある他のいずれかの用途に使用することができる。
例えば、生体高分子、異なる型及び成長因子(興奮剤及び抑制剤)を有する細胞等の、異なる数の生成物及び目標物を正確に滴下する機能は、損傷組織の再生及び人工組織の生成のフレームワークにおいて有利であることが立証できる。
【0025】
また、本発明による装置によって、流れの中の無標識細胞を検出及び解析し易くなり、制御された再現可能な数の細胞を複数の位置に分配する追加機能を取り込むことができる。
細胞が装置の中に沈降する現象は、本発明による装置内で細胞を継続的に循環させることにより回避することができ、本発明による装置に凝集細胞が入り込む現象は、装置の寸法を小さくすることにより防止することができる。
【0026】
分配体積は、微細粒子を取り込むために必要な最小体積にまで減らすことができ、これによって、各細胞又は各粒子の播種を高精度に局在化し、非常に高い位置密度を有する細胞チップを作製することができる。
例えば、約1フェムトリットル〜10μLの体積を有するか、又は約0.1μm〜2mm又は5mmの直径を有する液滴を生成することができる。
【0027】
細胞を含む培地の蒸発は、気圧制御を使用すること、特に湿度測定により湿度を制御することにより、防ぐことができる。
特定の実施形態によれば、本発明による装置は、主流路の2つの枝路と、副流路の少なくとも一つの枝路を備え、これらの枝路は交差ゾーンで合流する。
【0028】
更に、第1流体の流入口を第1流路の第1枝路に接続することができ、別の流体の注入口を第2流路に接続することができる。
本発明による装置は、第1及び/又は第2基板の表面に堆積する少なくとも一つの層、又はプレートとプラットフォームの境界に挿入される少なくとも一つの中間膜を備えることができ、枝路は前記層(群)又は前記中間膜(群)に設けられる穴又は穿孔である。
【0029】
プラットフォーム及び/又はプレートの基板の厚さを貫通する少なくとも一つの開口及び/又は穴を開けることができる。
基板表面上に堆積する各層、又はプラットフォームとプレートの境界に挿入される各中間膜は、電子工業分野におけるエッチング材料、樹脂、ポリマー、誘電体材料、半導体素子からなる絶縁化合物、特に感光性樹脂又は電気感光性樹脂、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリビニル、ポリジメチルシロキサン、窒化物、酸化物、及びシリコン化合物、並びにガラスからなる材料群より選択される一つ以上の材料により作製することができる。
【0030】
枝路は、約数十ナノメートル(例えば、20nm)〜数ミリメートル(例えば、2mm〜5mm)の平面寸法を有する毛管を形成することができる。
測定手段は光学タイプ及び/又は電気タイプとし、例えば流体媒質のインピーダンスを測定する手段とすることができる。これは、例えば少なくとも一つの枝路に沿って配置される一連の電極を用いて実現することができる。
【0031】
例えば、少なくとも3つのマイクロ電極を枝路に配置してインピーダンスの変化を測定する。
圧力波を生成する手段は、電子バルブ及び/又は圧力波を生成する物理的−機械的アクチュエータを備えることができる。
【0032】
本発明による装置は、マイクロ流路及び一連のマイクロ電極を含む微細加工チップ、並びに圧力波を生成して粒子をチップの外部に排出する電子バルブを組み立てることにより製作することができる。
電子バルブの排出口からの排出量は、非常に正確で再現性の高いものにできる。
【0033】
本発明はまた、微小液滴の形成に関する用途に関するものであり、粒子の構成成分は調整可能であった。この技術によって、各粒子を個々に制御しながら、微小液滴の体積が先行技術における体積よりも1桁〜数桁小さくなるように、非接触で分配することが可能になる。
例示的実施形態によれば、装置内を循環する第1流体は、例えば、粒子又は生物細胞、又は成分又は細胞生成物、特にバクテリア、又は細胞株、又は小球、又は節細胞、又は染色体、又はDNA鎖又はRNA鎖、又はヌクレオチド、又はリボソーム、又は酵素、又はプロタイド、又はタンパク質、又は寄生体、又はウィルス、又はポリマー、又は生物学的因子、又は興奮剤、及び/又は成長抑制剤を含む、液体又は溶液、又は懸濁液、又は培地からなる。
【0034】
粒子の特定の例は、液体に溶解しない固体粒子であり、例えば誘電体粒子(例えばラテックス微小球)、又は磁気粒子、又は顔料(例えばインク顔料)、又は色素、又はタンパク質結晶、又は粉末、又は微細ポリマー構造、又は不溶性薬物、又はコロイド凝集により形成される微細凝集体(「クラスター」)である。
第2流体流は、例えば、第1流体、特に少なくとも試薬、活性成分、標識、栄養培地、化学生成物、抗体、DNA配列、酵素、プロタイド、タンパク質、生物学的因子、興奮剤、又は成長抑制剤と反応するか、又は相互作用する手段を含む。
【0035】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、実施形態に関する次の記述から、添付図面を参照する非限定的実施例により明らかになる。
【実施例】
【0036】
本発明の実施形態の詳細な説明
本発明による装置の第1の実施例について図1を参照しながら以下に説明する。
この図では、装置は、例えばガラスにより作製される基板2を備え、この基板の上には一連の電極4が形成される。
【0037】
層6は、これらの電極を少なくとも部分的に覆う。この層は、例えばポリイミド、又は薄層として堆積させることができる他のいずれかの材料、特に例えばShipley製のS1818又はS1813樹脂のような感光性樹脂又は電気感光性樹脂、或いは電気感光性のポリメチルメタクリレート樹脂により作製される。この層に形成されるのは、第1マイクロ流路の第1及び第2部分8、10、第2マイクロ流路の第1及び第2部分12、13、並びに開口20又は排出穴である。
マイクロ電極の部分14は第1流路8、10に接触している。
【0038】
第1流路の枝路8、10の各端部には、幅広のゾーン22、24が画定されており、これらのゾーンは、流路8、10を循環する流体の流入ポイント及び流出ポイントとして機能する。
同様に、開口26は第2流路12、13を排出穴20に向かって循環する第2流体の流入ポイントとして機能する。
【0039】
交差ゾーン27は、第2流路12の流入ポイント26と、この排出穴20との間に位置する。
図1Aでは、第2マイクロ流路の第1及び第2部分12、13は、主マイクロ流路8、10と同程度の寸法又は断面を有し、主マイクロ流路とほぼ直角に交差する。しかしながら、斜めの角度で交差させることもできる。第2マイクロ流路12、13は、液滴を排出するための排出作動装置を穴20に接続する。
【0040】
従って、「駆動流路」という表現は、導入ゾーン26から主流路に延びる第2流路の部分12を指し、「排出流路」という表現は、主流路8、10から排出穴20に延びる流路部分13を指す。
図2に示すように、層6は、例えばこれもガラスにより作製される第2基板28によって覆われる。
【0041】
図1Bは、この第2基板28を示している。この第2基板28には、第1基板2の層6と同様の層6’を設けることが好ましく、この層6’には、流路8、10、12、13、20と同じパターン8’、10’、12’、13’、20’を設け、また流出ゾーン22、24、26と同じゾーン22’、24’、26’を設ける。
装置は、図1Bのウェハをひっくり返して図1Aのウェハの上に載せることにより組み立てられる。
【0042】
第1層6と第2層6’とを組み合わせることによって、基板2、28を効率的に組み立てることができる。
第2基板28には3つの穴32、34、36を設け、これらの穴は層6及び6’(図2)に画定された開口22、24、26と連通する。
【0043】
図3は装置の透視図であり、矢印42、44は第1流体、例えば細胞培地の流入口及び排出口を表わしている。同じように、この図は、圧力波を流路12に加える手段40、41(この場合は電子バルブ)を示している。これらの手段は基板28上に基板と向き合うように配置されるものとして示される。矢印46はこれらの手段40、41を通して第2流体を流路12に導入する様子を表わす。任意で釣合いおもり48を対向基板2に取り付けることができる。
電極4は、電気接続5によって解析手段50(図5)、例えば電子回路に接続することができる。これらの手段は、第1流路8、10と交差する電極4の部分14(図1参照)を通過する粒子又は細胞を検出するように構成又はプログラムされる。
【0044】
有利には、電極4及び電子手段50は、インピーダンス測定による解析装置を構成する。
更に、基板2、28が透明である場合、チップに向けた光検出手段を使用することができる。これらの光学的手段が生成する信号を制御手段50に送信し、使用して、例えば当該信号のみで、又は当該信号を電極4から生じる信号と組み合わせて、排出手段40を作動させることができる。従って、光検出技術は、装置の電極14の間に向けられる光学的手段により使用することができる。これらの光学的手段は、例えば、細胞又は粒子が通過するときの光拡散反射の原理に基づいて動作する。
電極を用いることなく光解析のみを行なうこともできる。この場合、本発明による装置は必ずしも電極を備えない。
【0045】
図4は、例えばプラスチックにより作製されるボックス又はモールド49に収納された装置を示している。参照番号72、74、76は、流体接続を指し、参照番号51、53は電気接続を指す。
システムには、例えば均一な又は不均一な細胞懸濁液を収容するタンク52(図5)から流体を継続的に供給することができる。流体又は液体は、枝路8、10を経由して装置を通過し、第2開口24から流出し、第2タンク54に回収される。タンク56は、手段40、41の中を循環して流路12に向かう流体を収容する。
【0046】
主マイクロ流路8、10は、排出する必要のある粒子のタイプ、例えば1マイクロメートル〜300マイクロメートルの大きさの細胞に適した断面を有することが好ましく、一の形態では毛管を形成する。従って、主マイクロ流路8を循環する細胞は電極14の前を通過し、一つずつ、例えばインピーダンス測定によって解析され、これらの細胞の電気特性は流れの中で電極14によって測定される。3つの非常に近接するマイクロ電極群によって、粒子の通過中にインピーダンスの差動変化を測定することができ、従って測定値を予測インピーダンス分布と比較することによって粒子を識別することができる。これは、特許出願EP1335198、及びGawad S,Schild L、及びRenaud Phによる文献「Lab on a chip」(2001年、1:76−82)に記載されている。
従って、細胞又は粒子を、電気的及び/又は光学的に、特にサイズ、細胞質の導電率、及び/又は細胞膜のキャパシタンスを基準に検出される関連特性に従って識別することができる。
【0047】
この技術は非常に感度が高く、例えば細胞質による影響、又は直径がわずか数ミクロンだけ異なる微小球の有意差を検出する。記録された電気信号を処理する複数の操作を電子回路50によって同時に行なうことにより、粒子をリアルタイムで検出し、特徴付けを行い、粒子の各識別カテゴリーに番号を付けることができる。
この方法によって更に、粒子が電極14の前を通過するときに粒子の速度を測定することができる。測定結果に応じて、以下に説明するように、排出決定をケースバイケースでパラメータ化するように装置をプログラムすることができる。
【0048】
実際に、手段50は、取得した測定値に応じて、命令又は信号を手段40に送信するように構成又はプログラムすることができる。次に、手段40は圧力波を発生し、この圧力波は、流路12に含まれる流体に到達すると、流路8から送り込まれて、交差ゾーン27に位置する流体を排出穴20に向かって押す。流路12、13によって排出作動装置40が液滴の排出穴20に効果的に接続される。
手段40は主流路8、10から後退した位置にあるので、手段40が、主流路8、10を循環する第1流体によって、又は第1流体に含まれる細胞培地の細胞及びタンパク質の蓄積によって、詰まったり損壊したりする危険が無い。実際には、このとき、駆動流路12内の第2流体が、主流路8、10を循環する流体又は細胞培地に対する境界として機能する。
【0049】
手段40が主流路8、10から後退した位置で該主流路に向かい合っていることにより、更に、排出中に細胞に加わるずれ応力が小さくなり易く、発生波の大部分を排出流路13に集中させることができる。
他方、主マイクロ流路8、10の寸法を小さくすると、微量分配器を詰まらせる可能性のある細胞の凝集物は手段40に従って移動することができない。
【0050】
排出決定の精度は、一連の電極14と交差ゾーン27(図1)との間の距離dを小さく、例えば5μm〜15μmの距離、例えば約10μmに等しい距離にすることにより、高くすることができる。従って、電極群は交差ゾーン27に出来る限り近接して配置される。
従って、図3に示すように、粒子の分配は、注目粒子を含む液滴60を、装置から、例えば基板の所与の位置に向けて排出することにより行なわれる。本発明による装置及びこのような基板71の相対位置を図5に示す。注目粒子を排出することによって、オペレータが予め決めた基準に従って粒子をスクリーニングすることができる。
【0051】
注目粒子の検出及び排出は、電極4の間で測定される電気信号をリアルタイムで解析することができる手段50によって調整することができる。特に、制御信号の幅及び/又は送出時間、及び/又は制御信号の形状、及び/又は強度は、手段50によって調節することができる。その結果、生成される各液滴60は注目微細粒子を含み、特定の容器又は基板上の特定の位置に各液滴を排出することができる。
従って、本発明によるオンデマンドの分配を行なう方法は、本実施例においては、マイクロソレノイドによって電気的に制御される超小型バルブ40(図3)が操作する圧力波を使用し、プロセス全体は手段50によって制御される。
【0052】
特定の実施形態によれば、電子バルブはマイクロ加工技術によってチップに直接一体化することができる。他の手段を使用して、電子バルブの位置に圧力波を生成することもできる。例えば、圧電タイプ又は音響タイプ、又は電気機械タイプ、空気圧タイプのオンデマンド分配器、或いは、エア又は溶解気泡によって作動するオンデマンド分配器を使用することができ、駆動流路12の端部の小型バルブの代わりに圧電材料又は電気音響トランスデューサ、又は機械アクチュエータ、又はピストン、又は加熱抵抗体を使用できる。
熱タイプのオンデマンド分配の場合、加熱抵抗体を相対的に引き離す(主流路8、10から手段40を分離する流路部分12によって)ことにより、細胞の損傷が防止されるので、細胞の生存率が高くなる。
【0053】
手段50が特定の基準を満たす粒子を検出すると、手段40によって圧力パルスが加えられ、液滴60が排出穴を通して排出される。排出を生じさせる圧力波は、手段40によって駆動される第2流体又は液体46によって発生する(図3)。この流体又は液体は、排出流路13と向かい合う駆動流路12を通って運ばれ、主流路8、10を通過し、排出穴20を通って排出される。この動きにより、液体の一部分が主流路から抽出され、液体の元来の移動方向にほぼ直交する方向に、排出穴に向かって押される。或いは、排出流路と主流路とが直交しない場合には、異なる方向に向かって排出穴の方に押される。主流路から排出される体積要素、特に注目細胞又は粒子を含む体積要素は、注目される画分のみを含む。
排出量に関わらず、排出流路13は毛管作用によって充填される。液体はその表面張力によって排出穴20に維持される。最初、手段40が駆動するこの第2液体は、駆動流路の中で静止している。
【0054】
圧力パルスを加えると、液滴の排出が行なわれ、液滴の体積はパルスの形状及び持続期間によって決まる。
同じパルスの場合、液体の密度、粘度、及び表面張力に関係なく、並びに生じ得る大気条件の変動に関係なく、同じ体積が吐出される。
【0055】
分配される体積は、手段40を電子的に制御するパルスの送出時間及び/又は開放時間、及び/又は形状、及び/又は強度を調整することにより、正確にモニタリングすることができる。これは、例えばこのような動作を行なうようにプログラムされた手段50を使用して行なわれる。排出容積は、例えば0.1pL〜10μLの範囲で、流路の寸法及び電子バルブのパルスパラメータに応じて変化する。
従って、本発明による微量分配器を使用するモードは、各々が注目の微細粒子を含む液滴の生成である。
【0056】
本発明による微量分配器は、液体の充填機能、微細粒子又は無標識生細胞の解析機能、注目細胞又は粒子の分離及び排出機能、並びに不要細胞又は粒子を含む液体の放出機能を統合する。
注目微細粒子は、流れの中で、インピーダンス測定(電子検出)及び/又は排出ゾーン上流での光検出によって検出及び解析できる。液滴の排出モードは「ドロップオンデマンド」タイプ(DOD)とすることができ、このモードでは、流体流から、接触することなく、注目の体積要素の一分配量、すなわち選択された微細粒子を含む分配量を生成することができる。
【0057】
図5は、トレーシングテーブルタイプのキャリア−基板システム70を示し、このシステムは、基板71のX、Y、及びZ方向の移動量を所定の精度(好ましくはマイクロメートルレベル)で、各々が細胞を含む複数の液滴60を基板の適切な位置で受け入れることができるように記録する。トレーシングテーブルの移動量は、手段50により、液滴の排出に関して調節することができる。詳細には、排出ノズル下のキャリア−基板プレートの位置は、検出対象の細胞又は粒子のタイプに応じて制御することができる。手段50により微細粒子を識別することによって、分配又は排出動作と、基板上の位置の決定が同時に可能になる。
本発明による装置を利用する別のモードは、一連の液滴の排出であり、これらの液滴の内の一つが微細粒子を含む。分配ヘッドと基板71の位置合わせを行なうことにより、各位置に吐出される液滴の数を制御し易くなり、必要に応じて後の時点で新規の液滴を分配位置に付加することが容易になる。
【0058】
基板の所与の位置における粒子の濃度は、吐出される液滴の数によって変わり、特に粒子の濃度はタンクにおける初期濃度よりも小さくても大きくてもよい。
また、本装置は、例えば経時的実験の範囲内で、溶媒及び/又は試薬を高い精度で局所的又は規則的に加えることができる。
【0059】
手段40によって駆動される液体46は、粒子を含む主流路8、10の液体と同じでも、同じでなくてもよい。2つの液体が異なる場合、又は電子バルブによって駆動される液体が特定の生成物を含む場合、2つの液体を排出時に混合することができる。
この混合機能によって、例えば試薬を、細胞を含む液滴に導入することができ、この試薬は所与の位置に吐出された後に作用する。同様に、基板71上既に存在する液滴の上に新規の液滴を吐出することにより、後で同じ装置を使用して混合することができる。
【0060】
例えば、試薬は、活性成分、特定の抗原を標的とする免疫蛍光標識、代謝標識又は生存標識、例えばトリパンブルー、又は毒性産物、或いは細胞の形質移入に使用されるDNA配列とすることができる。
試薬は同様に、タンパク質、例えばトリプシンのような酵素とすることができる。2つの細胞型を同じ位置に播種することにより、細胞間の相互作用を研究することができる。分配器は同様に、上流又は下流で他の装置に接続し、例えば毛管電気泳動及び/又は質量分析のような解析を流れの中で行なうことができる。
【0061】
本発明による微量分配器は、マイクロ加工に関する従来技術を使用してクリーンルームにおいて製作することができる。製作方法の一実施例について以下に説明する。
第1光マスクを使用して、例えば4インチ(又は約10cm)のガラスウェハの上の感光性樹脂(例えば、商品名「AZ5214」として市販されるもの)にマイクロ電極パターンを形成し、50nmのチタン及び150nmの白金から成る金属二重層を、陰極粉砕により堆積させる。
【0062】
マイクロ電極14は、幅20μmであり、電極間の距離は20μm〜50μmであり、チップの反対側に位置する電気コンタクトブロック5まで延びる(図1)。
微量分配器は、同一構造の2つのチップを組み立てることにより製作することができ、但しマイクロ電極14はこれらのチップの一方のチップの上にしか形成することができない。従って、マイクロ電極はガラスウェハの一方の側にのみ、例えば左側にのみ形成することができ、右側に電極は形成されない。
【0063】
マイクロ流路は、第2光マスクによってポリイミド感光性樹脂(Dupont製PI−2732)の中に画定される。主マイクロ流路8、10、駆動流路12、及び排出流路13の寸法は交差ゾーン27において同じであることが好ましく、それらは排出する必要のある粒子のタイプに適した断面を有する。マイクロ流路の幅は、通常1μm〜300μmである。ポリイミド層6、6’の厚さによって決まるこれらの流路の高さは、100nm〜75μmとすることができる。微量分配器は同じ厚さの2つのチップを組み立てることにより製作することができるので、ポリイミド膜の厚さは必要な厚さの半分(50nm〜38μm)に等しくするだけで十分である。
ポリイミド6、6’の厚さは15μm〜25μmとし、この層6、6’に形成できる流路の厚さは30μm〜50μmとすることができ、流路の幅は、マイクロ流路の交差ゾーン27において50μm〜100μmとすることができる。ガラスウェハは2つの片に切断され、一方にマイクロ電極が形成され、他方には形成されない。これらの2つの片を互いに対して位置合わせしてマイクロ流路を形成し、300℃の窒素気圧下で熱アニールすることにより組み立てる。
【0064】
チップを切り出して微量分配器を分離し、マイクロ電極から成るブロック5を分離する。タングステンチップを用いる電気侵食によって各装置に3つの開口を形成する。主マイクロ流路の各端部の2つの開口は、微細粒子を含む溶媒の流入口及び排出口を形成し、微量分配器の中心近傍の第3開口は電子バルブの位置決め専用に使用される。一の構成では、電子バルブ用の開口36は、電極14、4、5を搭載するガラスウェハ2に形成される。図2に示す別の構成では、電子バルブ40用の開口36は、電極14、4、5を搭載し、プラットフォームを形成するウェハ2とは反対側のガラスウェハ28に形成される。開口32、34、36の各々は微量分配器のいずれの側にも形成することができ、特に溶媒の流入及び流出用の開口32、34と、電子バルブ用の開口36とは、同じ側に配置しても、又は反対側に配置してもよい。
使用する電子バルブは、例えば微量分配バルブVHS Small Port INKA 4026212H(The Lee Company/米国ウエストブルック)であり、このバルブは内径100μmの排出穴を備え、ポリジメチルシロキサン(PDMS)から成る密着ガスケット、又は樹脂製Oリングによってチップに対して保持される。電子バルブ−チップアセンブリは、電子バルブの反対側のチップに釣合いおもり48を付加することにより安定させ、この構成によってチップが垂直にしっかりと支持され、液滴が下方に排出される。電子バルブ40及び釣合いおもり48は、チップ、電子バルブ、釣合いおもり、及びタンクへの流体接続を封入する樹脂モールド49によってチップ平面に直交する方向に支持される。
【0065】
微量分配器は、駆動流路12及び排出流路13が形成する軸に対して対称に設計することが好ましく、流路8、10及びマイクロ電極14はこの対称軸に対して同じ構成になるようにコピーされる。この構成では、微細粒子の検出は微量分配器の両側で行なうことができるので、流入口及び排出口は交換可能である。また、排出流路13の後にマイクロ電極14が位置するので、排出に選択されていない細胞又は粒子の移動を追跡することができる。
同じように、微細粒子の移動量の光学的追跡は、分配器がガラスウェハ(透明材料)により製作されている場合、微量分配器の両面を通して行なうことができる。特に、微細粒子の光学的観察は、細胞又は粒子を電気的に検出し、電子バルブの開放を始動させる動作を調整するための第1調整の間に行なうと有用である。
【0066】
例えば図6Cに示す別の構成では、マイクロ電極63、65は微量分配器の両側に配置される。この場合、向かい合う2つの対向電極63、65の間のインピーダンスの差を、Gawad S and coll.、による文献「Lab on a chip」(2001年、1:76−82)に明記されているように測定する。
別の構成では、電子バルブ40は主マイクロ流路の上方に配置され、排出流路66及び駆動流路68は、図6A〜6Dに示すように、ガラス基板28及び2を貫通する開口から成る。この場合、液滴60の排出は直接電子バルブ40の軸の中に行なわれる。
【0067】
複数のタイプの材料を、微量分配器の基板、及びマイクロ流路の形成に使用することができるが、使用材料は絶縁性(電気的解析の障害にならないように)及び生体適合性であることが好ましく、感光性樹脂又は電気感光性樹脂、ポリマー(ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(塩化ビニル)など、化学気相成長(CVD)によって堆積するSi層又はSiO層などの絶縁層である。
一つの可能な方法では、希釈BHF(緩衝性フッ化水素酸)又はHF(フッ化水素酸)による化学エッチングによってガラス基板に直接マイクロ流路を形成し、接着又は直接溶接によって2つのチップを密封する。
【0068】
上述の本発明は非常に柔軟であり、ユーザが望む仕様に適合する。特に、本装置は、装置の機能の一部のみに関して利用することができる。
例えば、一適用例は、細胞を後で排出することなく、流れの中で単純に計数することである。別の使用可能な操作は、細胞を排出することなく流れの中で特徴付け及び計数を行うことである。計数は手段50を使用して行なうことができ、この手段50は、所定の特性を有し、上記のような電気的測定手段及び/又は光学的測定手段によって測定される粒子又は細胞を計数する。
【0069】
一適用例では粒子を希釈する。液滴60は、第1流路を循環する液体と、圧力波を生成するシステム(例えば電子バルブ)によって駆動される液体とを混合することにより形成される。液滴の体積は圧力波を生成するシステムを開放している時間に比例する。従って、希釈は、排出液滴の体積を増やすことによって行なうことができる。
希釈を可能にする別の方法は、分配器から排出された複数の小液滴からなる、基板の上に吐出される液滴に関する。排出液滴の一部は「空の」液滴、すなわち細胞又は粒子を含まない液滴とすることができる。これらの液滴は基板上の液滴の体積を増大させ、液滴に含まれる成分を希釈する。
【0070】
別の適用例では、細胞をスクリーニングし、基板上に特殊な形で配置することなく一以上の容器に排出する。
一般的には、スクリーニングでは、第1流路の排出口24に向かって細胞又は粒子を循環させる(図1A)か、又は分配器の外に液滴の形で細胞又は粒子を放出することができる。従って、2つの排出口への細胞又は粒子の分離は、検出システムが検出する信号に応じて2つの流路の交差部分27で完了する。
【0071】
別の形態のスクリーニングでは、排出液滴に含まれる細胞に応じて基板71を位置決めすることにより、細胞型に従って異なる容器に細胞を回収する。これによって、特定の容器内に精製された細胞培養物が得られる。
本発明は、例えば試料のスクリーニング、及び/又は分配、及び/又は投与、及び/又は運搬に適用するため、容器内又は基板上に決定された位置に、正確な数の細胞を供給する。
【0072】
微量分配器を使用して、一つ以上の細胞を培地から回収することができ、このとき、細胞を含む液体の体積を正確にモニタリングし、その結果、細胞を所与の位置に集めるか、又は細胞を含まない追加の補充液滴を当該位置に加えることによって細胞を希釈することができる。
基板上の細胞を取り除くことによって、一つ以上の細胞を各位置に配置することができる。これらの位置に複数の細胞が含まれる場合、単一の細胞型又は複数の細胞型を同じ位置に播種することができる。
【0073】
細胞を含まない液滴は、基板上の複数の所望の位置に、当該位置に細胞が含まれているかどうかに関係なく付加することができ、これによって例えば、試薬を非常に正確な量だけ当該位置に移送するか、又は基板上の液体の蒸発を補うことができる。
有利には、装置のサイズを小さくする(1辺1cm〜3cm)ことによって、小体積の細胞懸濁液を取り扱い、例えば極めて希少又は貴重な試料を採取することができるか、或いは非常に大きな体積の液体の中に希釈された非常に少ない量の細胞を抽出することができる。タンク内の当初の細胞濃度は低くすることができ、分配する必要のある細胞の合計数に適合させることができ、これによって、重要な細胞培地から回収される少量の試料から細胞を分配することが可能になる。微量分配器は、必要に応じて、分配器の排出口及び流入口のループ接続を利用して、培地を装置に数回に渡って連続的に通過させることにより、培地の注目細胞の全てを分配することができる(例えば、細胞数が多く、排出動作の全てが1回の通過の間に行なわれない場合)。
【0074】
図5に示すように、装置の器具49、50、52、54、56、及びトレーシングテーブル70、71の全てが筐体500の中に配置され、大気制御、すなわち湿度、圧力、及び温度の制御が行われる。分配中のエアの動きが小さくなることにより、液滴を形成する間における信頼度及び精度が高まる。更に、環境条件をモニタリングして空気湿度を80%超とすることにより、基板上の位置における液滴の蒸発を最小化する。一般的に、周囲大気中における細胞培地の液滴の蒸発は、約10nLの分配体積について約3nL/分であるので、湿度の高い空気を使用することによって、体積が大きく変動することなく、少なくとも2週間に渡って生成された液滴を保存することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】A及びBは、ウェハを分解したときの本発明による液滴吐出装置の開放図である。
【図2】ウェハを組み立てた後の本発明による装置の上平面図である。
【図3】電子バルブ及び釣合いおもりを装着した、本発明による装置の全体正面図である。
【図4】本発明による装置の底面図である。
【図5】筐体内で装置とトレーシングテーブルとが接続されている、本発明によるシステムの概要図である。
【図6】A〜Dは本発明による装置の別の実施形態である。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する装置であって、
− 主流路として認識され、少なくとも一つの枝路を含み、第1流体流を循環させる第1流路(8、10)、
− 流体を循環させ、少なくとも一つの枝路を含み、第1流路と交差して交差ゾーン(27)を形成し、排出穴(20)を通って終端する第2流路(12、13)、
− 第1流路内の粒子又は細胞の物理特性を測定する手段(4、14)、及び
− 第2流路内に圧力波を生成する手段(40)
を備える装置。
【請求項2】
主流路の2つの枝路(8、10)、及び副流路の少なくとも一つの枝路を備え、これらの枝路が交差ゾーン(27)で合流する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
第1流路の第1枝路(8)に接続される、第1流体の流入口(22)、及び第2流路への別の流体の注入口(26)を備える、請求項2記載の装置。
【請求項4】
第2流路が主流路(8、10)のいずれかの側に枝路(12、13)を備える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
流れの一部分の排出口となる、液滴の排出穴(20)とは別に、流れの別の部分の別の流出穴(24)を備える、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
第1基板から成るプラットフォーム(2)、及びプラットフォームに覆い被さる第2基板から成るプレート(28)を備え、これらの基板の中、上、又は間に、或いはこれらの基板の境界に、枝路(8、10、12、13)が配置される、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
更に、基板(2、28)の表面上に配置される少なくとも一つの層(6、6’)、又はプレート(28)とプラットフォーム(2)の境界に挿入される少なくとも一つの中間膜を備え、前記層又は前記中間膜に、切削又は穿孔によって枝路(8、10、12、13)が形成される、請求項6記載の装置。
【請求項8】
基板表面(2、28)に配置される各層(6、6’)、又はプラットフォーム(2)とプレート(28)の境界に挿入される各中間膜は、電子工業分野におけるエッチング材料、樹脂、ポリマー、誘電体材料、半導体素子の絶縁化合物、特に感光性樹脂又は電気感光性樹脂、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリビニル、ポリ−ジメチルシロキサン、窒化物、酸化物、及びシリコン化合物、並びにガラスからなる材料のグループから選択される一つ以上の材料により構成される、請求項7記載の装置。
【請求項9】
少なくとも一つの開口及び/又は一つの穴(32、34、36、62、64、66、68)が、プラットフォーム(2)及び/又はプレート(28)の基板の厚さを貫通するように穿孔される、請求項6ないし8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
プラットフォーム及び/又はプレート(2、28)の基板がガラスにより作製される、請求項6ないし9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも一つの穴(34、64、68)及び/又は一つの開口(32、62、68)、及び/又は少なくとも一つの枝路(8、10、12、13、66、68)が、穿孔又は切削によって、ガラスにより作製される基板に形成される、請求項10記載の装置。
【請求項12】
枝路(8、10、12、13)が、約数十ナノメートル〜数ミリメートルの幅を有する毛管を形成する、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
流体流の光学特性を測定する手段を備える、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
流体流の電気パラメータを測定する手段(4、5、14)を備える、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
電気パラメータを測定するためのゾーンが交差ゾーン(27)の近傍に配置される、請求項14記載の装置。
【請求項16】
培地のインピーダンスを測定する手段を備える、請求項1ないし15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
測定手段が一連の電極(5、4、14)を含む、請求項1ないし16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
電極(14、63、65)が少なくとも一つの枝路(8、10)に沿って配置される、請求項17記載の装置。
【請求項19】
対向する電極(63、65)が、枝路(8、10)のそれぞれの側に配置される、請求項16又は17記載の装置。
【請求項20】
少なくとも3つのマイクロ電極(14)が枝路(8)に配置されて、インピーダンスの変化を測定する、請求項1ないし19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
電子バルブ(40)、及び/又は圧力波及び/又は流れを生成する物理的−機械的アクチュエータを備えることを特徴とする、請求項1ないし20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
物理特性を測定する手段(4)から送信される測定信号を受信し、圧力波を生成する手段(40)に制御信号を送信する制御手段(50)を備える、請求項1ないし21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
制御手段(50)が、制御信号の振幅及び/又は送出時間、及び/又は形状、及び/又は持続期間の制御に適している、請求項22記載の装置。
【請求項24】
更に、主流路に流体を供給する、及び/又は主流路内で流体を継続的に循環させる手段(52、54)を備える、請求項1ないし23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
更に、対応する枝路(8、10)に接続されて、液体、特に溶液又は細胞懸濁液を含む液体又は培地を収容する少なくとも一つのタンク(52、54)を備える、請求項1ないし24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
更に、密閉筐体(500)を備える、請求項1ないし25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
少なくとも一つの試料(60)を基板(71)上に配置するシステムであって、請求項1ないし26のいずれか一項に記載の液滴吐出装置を備え、基板及び吐出装置をスキャンするか、又は相対的に移動させる手段(70)に接続されることにより、排出された液滴(60)を基板(71)上の複数の位置に配置することができる、システム。
【請求項28】
第1流路(8、10)、及び第1流路と交差して交差ゾーン(27)を形成し、排出穴(20)で終端する第2流路を利用する液滴(60)吐出方法であって、
− 第1流路内で第1流体を循環させるステップ、
− 第1流体の流れの物理特性を測定するか、又は第1流体の流れの成分を解析するステップ、及び
− 前のステップの結果に応じて圧力波を生成するステップ
を含む方法。
【請求項29】
圧力波を生成するステップと同時に、第2流体を交差ゾーン内に又は交差ゾーンに向けて注入するステップを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
− 流路(8)の1の枝路の流入口(32)に第1流体の連続流を供給するステップ、
− 交差ゾーン(27)と連通する注入口(26、36)に第2流体の流れを供給するステップ
を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
第1流体と第2流体とを希釈又は混合した液を、流路の排出口(34)又は液滴排出穴(20)で回収する、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
注入する第2流体流は、第1流体以外の流体から成る、請求項29ないし31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
注入する第2流体が、第1流体と同じ流体、液体、又は溶媒、及び/又は培地から成る、請求項29ないし31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
第2流体流が、第1流体、特に少なくとも試薬及び/又は活性成分、及び/又は標識、及び/又は栄養培地、及び/又は化学生成物、及び/又は抗体、及び/又はDNA配列、及び/又は酵素、及び/又はプロタイド、及び/又はタンパク質、及び/又は生物学的因子、及び/又は興奮剤、及び/又は成長抑制剤と反応又は相互作用する手段を含む、請求項29ないし33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
− 第2流体を交差ゾーンに注入するように較正された電気命令を送信するステップ
を含む、請求項29ないし34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
電気命令は、制御又は較正された体積を有する液滴を排出するように制御された振幅及び/又は送出時間、及び/又は形状、及び/又はパルス持続期間を有する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
第1流体の成分の濃縮、分離、及び/又は抽出、及び/又は選択、及び/又は回収を、液滴の排出穴又は流路の排出口でまとめて行なう、請求項28ないし36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
第1流体が、生物細胞、及び/又は成分、及び/又は細胞生成物、特にバクテリア、及び/又は細胞株、及び/又は小球、及び/又は節細胞、及び/又は染色体、及び/又はDNA鎖又はRNA鎖、及び/又はヌクレオチド、及び/又はリボソーム、及び/又は酵素、及び/又はプロタイド、及び/又はタンパク質、及び/又は寄生体、及び/又はウィルス、及び/又はポリマー、及び/又は生物学的因子、及び/又は興奮剤、及び/又は成長抑制剤を含む液体、溶液、懸濁液、又は培地を含む、請求項28ないし37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
第1流体が、粒子を含む液体、溶液、懸濁液、又は培地を含む、請求項28ないし38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
粒子は、液体に溶解しない固体粒子であり、誘電体粒子又は電気粒子、又は磁気粒子、又は顔料、又は色素、又はタンパク質結晶、又は粉末、又はポリマー構造、又は不溶性薬物、又はコロイドのアグロメレーションにより形成される微細クラスター又は凝集体等である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
− 注目成分が通過するときに液滴の排出制御パルスを駆動する中間ステップ
を含む、請求項28ないし40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
− 第1流体流のフローサイトメトリー解析を行なって、流れに含まれる生物粒子又は細胞、細胞成分又は細胞生成物を検出すること、及び
− 液滴の排出制御パルスを駆動して、検出された生物粒子又は細胞、細胞成分又は細胞生成物を単離すること
からなる中間ステップを含む、請求項28ないし41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
測定するステップが、少なくとも、一つの電気パラメータを測定すること、及び/又は流路を循環する第1流体の流れの成分のインピーダンス又はインピーダンスの変化を測定することを含む、請求項28ないし42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
測定するステップが、流路を循環する第1流体の流れの成分の光学測定を行なうことを含む、請求項28ないし43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
小体積の液滴、特に約1フェムトリットル〜1マイクロリットルの液滴、又は約0.1μm〜数ミリメートルの、マイクロメートル単位に制御された直径を有する液滴を生成する、請求項28ないし44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
基板(71)又は支持体(70)上の複数の位置に液滴(60)を排出する、請求項28ないし45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
密閉環境(500)の中で使用されることを特徴とする、請求項28ないし46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
細胞株の抽出、選択、及び/又はスクリーニングに適用される、請求項28ないし47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
生物粒子又は細胞、成分又は細胞生成物の、検出、及び/又は識別、及び/又は計数、及び/又は特徴付けに適用される、請求項28ないし48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
粒子又は生物細胞、細胞成分又は細胞生成物の、好ましい移植部位、及び/又は成長部位、及び/又は再生部位、及び/又は接合部位への配置、特に細胞株、生体高分子、生物学的因子、興奮剤、又は成長抑制剤の配置に適用される、請求項28ないし49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
生物学的試薬又は化学試薬のマイクロ流を、生物学的活性成分を含む液滴が吐出される位置に対応する位置に分配する操作に適用され、試薬の分配が、生物学的活性成分を吐出している間に行われるか、又は生物学的活性成分を含む液滴が既に存在するか、又は後で分配される位置に他の液滴を吐出することにより行なわれる、請求項28ないし50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
請求項1ないし26のいずれか一項に記載の装置を使用して粒子の計数を行なう方法であって、流体が第1流路を循環する粒子を含み、粒子の計数を測定手段(4、14)又は光学的手段によって行なう方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【公表番号】特表2007−526762(P2007−526762A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550251(P2006−550251)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050025
【国際公開番号】WO2005/071097
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(502124444)コミッサリア タ レネルジー アトミーク (383)
【Fターム(参考)】