説明

特に自動車構造における使用のための成形部材、およびコーティングを有するこの目的に適したシートを製造するための方法

成形部材を製造するための方法であって、支持シートに、顔料含有コーティング組成物(P)を塗布し、完全架橋した後に透明コーティング(KE)が得られるラジカル的に架橋可能なコーティング組成物(K)を塗布し、そこから乾燥されているが、まだ完全に架橋していないコーティング(KT)を得て、コーティングされた支持シートを成形し、液体のプラスチック材料と共に射出バック成形または発泡バッキングし、コーティング(KT)を、まだ行われていなければ硬化または後硬化させる方法において、架橋可能な成分(KK)は、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)を含有し、その成分が、1.成分(KK)と添加剤との混合物(M)から作り出されたが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)は、5から200の損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比を有し、G(MT)’およびG(MT)"が、レオロジー振動測定によって20℃の温度において測定され、2.成分(KK)と添加剤との混合物(M)から作り出され、完全に架橋している透明コーティング(ME)が、1.0*107.0から8.0*107.0Paの貯蔵弾性率E(ME)’を有し、E(ME)’が、動的機械熱分析装置により、ゴム弾性領域において測定されるような量において水素結合形成構造要素を含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車構造における使用のための成形部材を製造するための方法に関し、
I.コーティング(B)を有するシート(F)が、熱可塑性サポートシート(T)の必要に応じて前処理された面(T1)に塗布することにより製造され、
1.顔料含有コーティング組成物(P)と、
2.ラジカル的に架橋可能な成分(KK)を含み、完全に架橋した後に透明コーティング(KE)が得られる架橋可能なコーティング組成物、
3.ステージ2において塗布されたコーティング組成物(K)が、乾燥および/または部分架橋され、まだ完全に架橋していないコーティング(KT)を得て、
II.ステージ1で製造されたシート(F)が、開放した型に挿入され、
III.型が閉じられ、そして熱可塑性支持シート(T)の表面(T1)に面していない側面(T2)が、液体または柔軟化されたプラスチック材料(KM)と接触し、そしてプラスチック材料(KM)が固化を生じ、
IV.ステージIIIにおいて得られた成形部材が、型から取り出され、
V.コーティング(KT)が、プロセスの過程の任意の時点において、完全に架橋され、
架橋可能なコーティング組成物(K)は、
(i)1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートを含み、
(ii)1分子あたり平均して1個を超える、好ましくは少なくとも2個そして特に2から10個以上のエチレン性不飽和二重結合を含み、
(iii)1000から10000g/mol、好ましくは2000から5000g/mol、より好ましくは2500から3500g/molの数平均分子量を有し、
(iv)1000gの反応成分(KK)あたり1.0から5.0mol、好ましくは1.5から4.0mol、より好ましくは2.0から3.5mol以上の二重結合という二重結合含有量を有し、
(v)1分子あたりに平均して>1個、好ましくは≧1.4個、より好ましくは>2個の分岐点を含み、
(vi)それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づいて、5質量%から50質量%、好ましくは10質量%から40質量%、より好ましくは15質量%から30質量%の環状構造要素を含み、
(vii)鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族構造要素を含むようなラジカル的に架橋可能な成分(KK)を含む。
【0002】
本発明はまた、このようにして得られた成形部材の使用、および本方法に適し、そしてコーティングを有するシート(F)に関する。
【0003】
シートを備えるポリマー材料を含む成形部材は、当業者に公知である。シートをプラスチック部品にラミネートまたは接着する代わりに、最近増加する傾向にあるのは、工業用途においても同様であるが、射出成型、圧縮成型または発泡成型により、成型工程においてシートをポリマー材料で直接バッキングすることへの切り替えである(A.Grefenstein、「Folienhinterspritzen statt Lackieren, Neue Technik fuer Karosseriebauteile aus Kunststoff」[コーティングの代わりのシートの射出バック成型:プラスチック車体部品のための新技術]Metalloberflaeche、10/99、Vol.53、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン、1999)。
【0004】
成形部材を製造するために使われる多層の色および/またはエフェクトのシートは、周知であるように、バッキングシート、少なくとも1つの色および/またはエフェクトのベースコートおよびクリアコートを含む。それらは、それらの構築において、従来の多層の色および/またはエフェクトの塗装システムに対応している。
【0005】
しかしながら、特に自動車塗装分野において、多様な要求が、シート側の成形部材の表面の外観に課せられている(参照:例えば、欧州特許EP0352298B1、15頁42行から17頁40行)。
【0006】
しかし、従来の技術で提案された解決法は、これらの要求、つまりに自動車塗装の分野における通常の要求に適合することができない。さらに、従来技術で提案された解決法の中のいくつかは、使用される放射線架橋性クリアコート材料のために設定されるガラス転移温度に関して矛盾すらしたものである。
【0007】
例えば、WO00/63015は、成形部材を製造するための前述の種類の方法を開示している。そこでは、架橋可能なコーティング組成物(K)は、40℃を超えるガラス転移温度を有する結合剤を含む放射線架橋性材料で構成される。しかしながら、この方法で得られる完全に架橋した透明コーティング(KE)は、不満足な特性を有する。特に透明コーティング(KE)の架橋が不適切である。
【0008】
さらに、WO00/63015で記述の方法において使われた顔料含有コーティング組成物は、ポリマー層に分散する染料または顔料を含有する熱可塑性ポリマーを含む。この色彩層は、押出によって塗布されるが、一方、溶媒性(solventborne)または水性の顔料含有コーティング組成物の使用およびそれらの塗布技法は記述されていない。
【0009】
さらに、EP−A−819516は、成形部材を製造するための方法を開示する。そこでは、コーティングを施されたシートが、型に挿入され、型が閉じられ、そしてプラスチック材料(KM)と接触し、そしてプラスチック材料(KM)が固化される。その方法は、ポリマー材料が導入される前にコーティング材料が部分的にのみ架橋し、プラスチック材料(KM)の導入の間および/または後にのみ架橋が完成するという特徴を有している。方法において好ましいのは、特にウレタンをベースとする、40℃未満のガラス転移温度を有する放射線架橋可能なコーティング組成物を使うことである。しかしながら、適切なコーティング組成物の構成についてのそれ以上の情報は書かれていない。
【0010】
さらに、EP−B−403573は、コーティングが施されており、熱成形プロセスでの使用のために意図されるシートについて記述している。その本質的な特徴は、未架橋または低度の架橋を有し、そして20℃以下のガラス転移温度を有するクリアコート材料が、クリアコートフィルムの少なくとも一部を形成するということである。
【0011】
最後に、EP−B−1144476は、熱付加および放射線誘導付加の両方によって硬化可能である二重硬化組成物と呼ばれるコーティング組成物を開示し、そして深絞り可能な乾燥塗装フィルムを製造するためのそれらの使用を開示する。しかしながら、その中に記述されたコーティング組成物は、遊離イソシアネート基を含んでおり、そしてそれは熱硬化法のために必要である。したがって、そのコーティング組成物は、比較的複雑な物理的組成物を有する。さらに、目的が、例えば、高温における深絞りまたは熱成形のような熱操作工程の間に、熱反応性成分の制御されない硬化を避けることである場合、操作制御が困難である。
【0012】
したがって、本発明によって取り上げられる課題は、成形部材を製造する方法を提供することである。一方、その方法では、コーティング組成物(K)の適切な架橋が保証される。しかしながら、他方、まだ完全に架橋しなかったコーティング(KT)は、もはや流動せず、そして塗布され得る任意の保護シートによって跡が付けられてはならない。
【0013】
そのため、特に成形部材が自動車産業で使われる場合、成形部材は、シート側におけるそれらの外観に関してクラスA表面として知られている要件を満たすべきである。
【0014】
加えて、成形部材は、シート側におけるそれらの外観に関して、自動車の完成品に通常課される要件に適合すべきである(参照:欧州特許EPO352298B1、15頁42行から17頁40行)。そのため、特に、耐候安定性だけではなく、完全架橋の透明コーティング(KE)の耐薬品性もまた、従来の自動車クリアコートフィルムのそれらより劣っていてはならない。最終的に、完全に架橋した後のコーティング(KE)は、十分な耐スクラッチ性を有するべきである。
【0015】
この課題は、前述の種類の方法により、驚くべきことに、解決される。その方法では、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、
1.混合物(M)から作り出されたが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)が、5から200、好ましくは8から100、より好ましくは10から80の損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比を有し、G(MT)’およびG(MT)"が、毎分2℃の加熱速度および10s−1の角振動数でプレート/プレート測定システムを使ったレオロジー振動測定によって20℃の温度において測定され、
2.混合物(M)から作り出され、完全に架橋している透明コーティング(ME)が、1.0×107.0から8.0×107.0Pa、好ましくは1.5×107.0から4.5×107.0Pa、より好ましくは1.9×107.0から3.7×107.0Paの貯蔵弾性率E(ME)’を有し、E(ME)’が、毎分2℃の加熱速度および1Hzの周波数による動的機械的熱分析により、40μm+/−10μmの層厚を有するフリーの完全架橋フィルム上でゴム弾性領域において測定されるような量において水素結合形成構造要素を含む。
【0016】
混合物(M)は、メチルエチルケトン中70%の100部の成分(KK)(143部の70%強度溶液に対応)と、3.0部の80%強度アセトン溶液の形で使用される2.4部の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および0.8部のエチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、およびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとの1.0部の混合物、および2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの2.0部の混合物(2.4部の85%強度1−メトキシ−2−プロパノール溶液の形で使用)、0.2部のポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン(7/2キシレン/モノフェニルグリコール中のポリジメチルシロキサンの1.7部の溶液として使用、12.5%の不揮発性画分を保有)、および70.0部の3−ブトキシ−2−プロパノールとを混合することによって得られる。
【0017】
本発明はまた、コーティング(B)を有し、そして本方法で使われるシート(F)、およびシート(F)を備える成形部材を提供し、そしてそれらの使用を提供する。
【0018】
本発明の利点
以下のことは、驚くべきことあり、そして予見可能ではなかった。架橋可能なコーティング組成物(K)において特定成分(KK)を使用することにより、一方では、まだ完全に架橋していないコーティング(KT)がもはや流動せず、塗布され得る保護フィルムにより跡が付くことはなく、他方では、硬化完成の過程にあるコーティング組成物(K)の架橋が十分であるコーティングが得られる。
【0019】
適切な特定のラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、水素結合含有量の制御を介して提供され得る。
【0020】
したがって、本発明の方法により、成形部材は、シート側におけるそれらの外観に関して、クラスA表面を保証し、自動車の仕上げに通常課される要件に適合する(参照:欧州特許EPO352298B1、15頁42行から17頁40行)。そのため、特に、完全架橋した透明コーティング(KE)の耐候安定性および耐薬品性の両方は、従来の自動車クリアコートフィルムのそれらより劣っていない。最後に完全架橋した後のコーティング(KE)は、十分な耐スクラッチ性もまた有している。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明の方法において使用される材料
コーティング(B)を有するシート(F)
架橋可能なコーティング組成物(K)
以下のことも、驚くべきことあり、そして予見可能ではなかった。まだ完全に架橋していないコーティング(MT)の場合にはレオロジー測定による、または完全に架橋したコーティング(ME)の場合にはフリーフィルム上での動的機械的熱分析(以下、DMTAとも略される)による、粘弾特性の測定を通してのみが、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)の提供のため、およびそれ故望ましい特性を有するコーティングを与えるように使用し得る適切な架橋可能なコーティング組成物(K)の提供のために利用できる普遍的で代表的な選択基準であった。
【0022】
したがって、本発明にとって、
1.混合物(M)から作り出されたが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)が、5から200、好ましくは8から100、より好ましくは10から80の損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比を有し、G(MT)’およびG(MT)"が、毎分2℃の加熱速度および10s−1の角振動数でプレート/プレート測定システムを使ったレオロジー振動測定によって20℃の温度において測定され、
2.混合物(M)から作り出され、完全架橋している透明コーティング(ME)が、1.0×107.0から8.0×107.0Pa、好ましくは1.5×107.0から4.5×107.0Pa、より好ましくは1.9×107.0から3.7×107.0Paの貯蔵弾性率E(ME)’を有し、E(ME)’が、毎分2℃の加熱速度および1Hzの周波数による動的機械的熱分析により、40μm+/−10μmの層厚を有するフリーの完全架橋フィルム上でゴム弾性領域において測定されることが必要不可欠となる。
【0023】
プレート/プレート測定システムによるレオロジー振動測定は、コーティング組成物の粘弾特性の決定のための技術常識であり、例えば、Thomas Mezger、「Das Rheologie−Handbuch、Vincentz Verlag」、ISBN3−87870−567−0、208から212頁に記述されている。
【0024】
その測定は、例えば、10s−1の角振動数および0.1%の振幅を有するPhysica社製MCR300装置(プレート/プレート測定システム、直径25mm)を使って行うことができる。
【0025】
レオロジー測定の場合の加熱速度は、毎分2℃である。
【0026】
損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比は、混合物(M)から製造され、そして乾燥されるが、しかしまだ完全に架橋していないコーティング(MT)において測定される。まだ完全に架橋していないこの乾燥コーティング(MT)は、公知の方法で、メチルエチルケトン中70%の100部の成分(KK)(143部の70%強度溶液に対応)を、3.0部の80%強度アセトン溶液の形で使用される2.4部の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(特に、チバガイギー製市販品Irgacure(登録商標)184)、および0.8部のエチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(特に、BASF AG製市販品Lucirin(登録商標)TPO−L)、およびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとの1.0部の混合物(チバガイギー製市販品Tinuvin(登録商標)292)、および2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2 ,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの2.0部の混合物(2.4部の市販の慣例的な85%強度1−メトキシ−2−プロパノール溶液の形で使用。特に、チバガイギー製市販品Tinuvin(登録商標)400)、および0.2部のポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン(7/2キシレン/モノフェニルグリコール中のポリジメチルシロキサンの1.7部の3−ブトキシ−2−プロパノール溶液として使用。12.5%の不揮発性画分を保有。特に、Byk Chemie製市販品Byk R306)に溶かし、その溶液を3−ブトキシ−2−プロパノールで48%の固体含有量に調節することにより製造される。
【0027】
このように得られた混合物(M)は、Coatema GmbH社製(Dormagen)ラインコーターを使って、箱型コーティングバーにより、37cmの幅および200μm厚の湿潤フィルムでポリエチレンテレフタレートシートにUV光がない状態でナイフコーティングされる。次いで、その被コートシートは、0.2m/分のスピードでフラッシュオフ(flashoff)トンネルの中に通す。ここで、それは、25℃の温度および65%の相対湿度において20分間滞留する。引き続き、その被コートシートは、119℃のオーブン気温におけるオーブンにおいて15分間乾燥される。その後、乾燥されたコーティングフィルムは、スクレーパーにより被コートシートから擦り取られ、そしてレオロジー試験のために使われる。
【0028】
動的機械的熱分析は、コーティングの粘弾特性を決定するための広く知られている測定方法であり、例えば、Murayama,T.「Dynamic Mechanical Analysis of Polymeric Material(ポリマー材料の動的機械的分析Elsevier、ニューヨーク、1978年」およびLoren W. Hill「Jounal of coatings Technology、Vol.64、No.808、1992年5月、31から33頁」に記述されている。
【0029】
その測定は、例えば、Rheometrics Scientific社製DMTA V装置を使って、1Hzの周波数および0.2%の振幅において、行なうことができる。
【0030】
ゴム弾性領域における貯蔵弾性率E’は、完全架橋されている均質のフリーフィルム上で測られる。フリーフィルムは、公知の方法で、メチルエチルケトン中70%の100部の成分(KK)(143部の70%強度溶液に対応)を、3.0部の80%強度アセトン溶液の形で使用される2.4部の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(特に、チバガイギー製市販品Irgacure(登録商標)184)、および0.8部のエチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(特に、BASF AG製市販品Lucirin(登録商標)TPO−L)、およびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとの1.0部の混合物(特にチバガイギー製市販品Tinuvin(登録商標)292)、および2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの2.0部の混合物(2.4部の市販の慣例的な85%強度1−メトキシ−2−プロパノール溶液の形で使用。特に、チバガイギー製市販品Tinuvin(登録商標)400)、0.2部のポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン(7/2キシレン/モノフェニルグリコール中のポリジメチルシロキサンの1.7部の3−ブトキシ−2−プロパノール溶液として使用。12.5%の不揮発性画分を保有。特に、Byk Chemie製市販品Byk R306)に溶かし、その溶液を3−ブトキシ−2−プロパノールで48%の固体含有量に調節することにより製造される。
【0031】
このように得られた混合物(M)は、結果として生じるコーティングが付着しない基板に塗布される。適切な基板について挙げることのできる例としては、ガラス、テフロン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリプロピレン、特にポリプロピレンである。結果物のコーティングは、レオロジー測定のために記述された手法で乾燥し、続いて200ppmの残余の酸素含有量を有する不活性条件の下で、1.9J/cmの線量のUV光を使って完全に架橋させる。使用されたユニットは、高圧HgランプおよびLight Bug IL390C線量計を備えるISTベルトユニットであった。
【0032】
測定のために使われるフリーフィルムの厚さは、一般に40±10μmである。加熱速度は、毎分2℃である。
【0033】
驚くべきことに、コーティング組成物(K)が以下のラジカル的に架橋可能な成分(KK)を含む場合において、シート側の上のそれらの外観において混合物(M)から製造されたが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)、および混合物(M)から製造され、完全に架橋している透明コーティング(ME)が、損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比に関する非常に具体的な値、および貯蔵弾性率E(ME)’に関する非常に具体的な値をそれぞれ有するように選択されたラジカル的に架橋可能な成分(KK)など望ましい特性を有する成形部材が得られることを見出した。
【0034】
言い換えれば、当業者は、上述のパラメータ(i)から(vii)を特徴とし、H結合を形成する構造要素のレベルもまた正確に規定する反応成分(KK)を使うことによって、本発明の方法に適したコーティング組成物(K)を得ることが可能である。次いで、この成分(KK)から、当業者は、(課題に対する見出しの解決法の下で上述されるように)正確に規定された所定量の添加剤および溶媒を加えることによって混合物(M)をそれぞれの場合において製造し、正確に記述された測定法により、まだ完全に架橋していない得られた透明コーティング(MT)および完全架橋している得られた透明コーティング(ME)から上述の粘弾パラメータを決定する。
【0035】
コーティング組成物(K)の構成についての下記の記述から明白であるように、この混合物(M)はまた、コーティング組成物(K)として直接使用することができる。しかしながら、以下に詳細に述べるように、混合物(M)のために使用される前記成分(KK)を使うが、例えば、他の光開始剤および/または添加剤および/または溶媒および/または他の成分を使ったコーティング組成物(K)を製造することもまた可能であることは理解されるであろう。
【0036】
まだ完全に架橋していない透明コーティング(KT)を有するシートの抵抗が、乾燥しているが、まだ架橋していない透明コーティング(MT)の温度20℃における損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比が可能な限り高い場合、フィルム処理(抵抗は、まだ完全に架橋していないコーティング(KT)が、もはや流動せず、塗布され得る保護シートによって跡が付けられないことを一方では意味している。)の間に、一般的に特に高いことはここでの事例である。
【0037】
一方、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の温度20℃における損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比が非常に低い場合、完全に架橋する過程中の反応物の移動性は特に高く、したがって、所定の官能基により、および1分子あたりの所定量の二重結合により、完全に架橋したコーティング(KE)において良好な架橋密度を達成することが可能である。
【0038】
さらに、ゴム弾性領域における完全架橋透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率E(ME)’の増加に従って、完全架橋透明コーティング(KE)の耐スクラッチ性は一般的に向上する。
【0039】
しかしながら、ゴム弾性領域における完全架橋の透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率E(ME)’が高すぎる場合、完全架橋の透明コーティングは、非常に脆くなる。この場合には、完全架橋透明コーティング(KE)は、UV硬化後に応力亀裂を起こす傾向が増加することを示す。
【0040】
上述の粘弾性変数、すなわち、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の貯蔵弾性率および損失弾性率、ならびに完全架橋透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率は、架橋性成分(KK)の構造パラメータを介して制御することができる。そのため、例えば、二重結合含有量、分子量、二重結合当量、堅い構造単位(rigid structural unit)の性質および量、および水素結合形成構造単位の量は、前記粘弾性変数に影響を与える。
【0041】
したがって、架橋性コーティング成分(K)中に存在しているフリーラジカル架橋性コーティング成分(KK)は、1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートを含むことがまず重要である。
【0042】
これ以降において、オリゴマーは、一般的に平均して2個から10個の基本構造またはモノマー単位を含有する化合物である。それと対照的に、ポリマーは、一般的に平均して10個以上の基本構造またはモノマー単位を含有する化合物である。この種の混合物または物理的実態はまた、当業者によって結合剤または樹脂とも呼ばれる。
【0043】
それと対照的に、これ以降において、低分子量化合物は、本質的に1つの基本構造または1つのモノマー単位からのみ得られる化合物である。
【0044】
フリーラジカル架橋性コーティング成分(KK)は、それぞれの場合において成分(KK)の固体含有量に基づき、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、非常に好ましくは少なくとも80%の1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートを含有する。特に、ラジカル的に架橋可能な成分は、1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートから100%構成される。
【0045】
さらに、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、非常に好ましくは20質量%以下のさらなるラジカル的に架橋可能な成分を含有し、特にこのような置換基は全く含有しない。
【0046】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づいて、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満の検出可能な遊離イソシアネート基を含有し、そして特にはこのようなイソシアネート基を全く含有しない。
【0047】
架橋可能なコーティング組成物(K)中に存在しているラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、様々な二重結合含有量、分子量、二重結合当量もまた有し得、分岐点の量ならびに環状および比較的長鎖の脂肪族構造要素の量ならびに水素結合形成構造要素の量において異なる様々なオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートの混合物を含むこともまた好ましい。決定因子は、成分(KK)が以下に示すパラメータ値を平均して有するということである。
【0048】
この混合物は、様々なオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートを混合することによって、または対応するオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートの製造の間での様々な生成物の同時形成の結果として得ることができる。
【0049】
ウレタン(メタ)アクリレートの他に、成分(KK)の適切なさらなるラジカル的に架橋可能な成分として、モノマーが挙げられるが、好ましくはオリゴマーおよび/またはポリマー、特にポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル官能性(メタ)アクリルコポリマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート、非飽和ポリエステル、アミノ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートおよび/またはシリコン(メタ)アクリレート、好ましくはポリエステル(メタ)アクリレートおよび/またはエポキシ(メタ)アクリレートおよび/またはポリエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
効率的な架橋を得るために、官能基の高反応性を特徴としているラジカル的に架橋可能な成分(KK)を使うことが好ましく、官能基としてアクリル二重結合を含むラジカル的に架橋可能な成分(KK)を使うことがより好ましい。
【0051】
ウレタン(メタ)アクリレートは、高温において適切である場合、任意の順で成分を混合することにより、イソシアネート官能性化合物およびイソシアネート基に対して反応性を有する基を含む少なくとも1つの化合物から当業者に公知の手法で製造することができる。
【0052】
好ましくは2つ以上の工程において、イソシアネート官能性化合物にイソシアネート反応性基含有化合物を添加することは、この場合において好適である。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレートは、特に、初めにジイソシアネートまたはポリイソシアネートを導入し、続いて他のエチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシアルキルエステルを添加し、イソシアネート基の内のいくつかを最初に反応させることにより得られる。その後、ジオール/ポリオールおよび/またはジアミン/ポリアミンおよび/またはジチオール/ポリチオールおよび/またはアルカノールアミンの基からの鎖延長剤が添加され、残余イソシアネート基は、そのようにして鎖延長剤と反応する。
【0054】
さらなる可能性は、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートと鎖延長剤とを反応させ、次いで残りの遊離イソシアネート基と少なくとも1つのエチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルとを反応させることにより、ウレタン(メタ)アクリレートを製造することである。
【0055】
これらの2つの方法のハイブリッド型の全てもまた可能であることは理解されるであろう。例えば、ジイソシアネートのイソシアネート基のいくつかは、最初にジオールと反応することができ、次いでイソシアネート基のさらなる部分が、エチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルと反応することができ、その後、残りのイソシアネート基が、ジアミンと反応することができる。
【0056】
一般的に、その反応は、5から100℃の間、好ましくは20から90℃の間、より好ましくは40から80℃の間、そして特には60から80℃の間の温度で行なわれる。
【0057】
この場合、無水条件下で操作するのがより好ましい。ここで、無水とは、反応系における含水量が、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下であることを意味する。
【0058】
重合可能な二重結合の重合を抑制するために、酸素含有ガス、より好ましくは空気または空気/窒素混合物の下で操作することが好ましい。
【0059】
酸素含有ガスとして、空気または酸素もしくは空気と使用条件の下で不活性であるガスとの混合物を優先して使うことが可能である。使われる不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、低級炭化水素またはそれらの混合物を含むことが可能である。
【0060】
酸素含有ガスの酸素含有量は、例えば、0.1体積%から22体積%の間、好ましくは0.5体積%から20体積%の間、より好ましくは1体積%から15体積%の間、非常に好ましくは2体積%から10体積%の間、そして特には4体積%から10体積%の間であり得る。必要に応じて、より高い酸素含有量もまた使うことができることは理解されるであろう。
【0061】
その反応はまた、不活性溶媒の存在下で行なうことができ、その溶媒の例としては、アセトン、イソブチルメチルケトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸ブチルまたはエトキシエチルアセテートである。
【0062】
使われたジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート、鎖延長剤およびヒドロキシアルキルエステルの性質および量の選択を介して、ウレタン(メタ)アクリレートのさらなる変数にわたって制御が実行される。その変数としては、例えば、二重結合含有量、二重結合当量、分岐点の量、環状構造要素の量、少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の量、水素結合形成構造要素の量などである。
【0063】
さらに、使われたジイソシアネートもしくはポリイソシアネートおよび鎖延長剤の特定量の選択および鎖延長剤の官能性を通して、エチレン性不飽和二重結合の他に他の官能基、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基および/またはチオール基なども含んでいるウレタン(メタ)アクリレートをさらに製造することもまた可能である。ウレタン(メタ)アクリレートはまた、水酸基および/またはカルボキシル基を好ましくは含んでいる。
【0064】
特に、ウレタン(メタ)アクリレートが水性コーティング組成物(K)において使われる場合、反応混合物中の遊離イソシアネート基のいくつかは、好ましくは水酸基、チオール、第1アミノ基および第2アミノ基からなる群から選択されるイソシアネート反応性基(特に水酸基)、ならびに好ましくはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基からなる群から選択される少なくとも1つ(特に1つ)の酸基(特にカルボキシル基)を含んでいる化合物とさらに反応する。この種の適切な化合物の例は、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸またはγ−ヒドロキシ酪酸、特にヒドロキシ酢酸である。
【0065】
ウレタン(メタ)アクリレートに加えて、適切なポリエステル(メタ)アクリレートは、原則として当業者に公知である。それらは、様々な方法によって製造することができる。例えば、アクリル酸および/またはメタクリル酸をポリエステル合成の酸成分として直接使うことが可能である。別の可能性は、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルをポリエステル合成におけるアルコール成分として直接使用することである。しかしながら、好ましくは、ポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリエステルをアクリル化(acrylating)することによって製造される。一例として、最初に水酸基含有ポリエステルを合成し、次いでアクリル酸またはメタクリル酸と反応させることは可能である。最初にカルボキシル基含有ポリエステルを合成し、次いでアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルと反応させることもまた可能である。非反応(メタ)アクリル酸は、洗浄、蒸留により、または例えばトリフェニルホスフィンのような適切な触媒を使って1当量のモノエポキシド化合物またはジエポキシド化合物と好ましくは反応させることにより、反応混合物から取り除くことができる。ポリエステルアクリレートの製造に関するさらなる詳細のために、DE−A3316593およびDE−A3836370、ならびにEP−A−54105、DE−B2003579およびEP−B−2866が参照される。
【0066】
適切なポリエーテル(メタ)アクリレートもまた、原則として当業者に同じく公知である。それらは、様々な方法によって製造することができる。一例として、周知の方法(例えば、Houben−Weyl、14巻、2、Macromolecular Compounds II、(1963年)を参照)に従って、二価アルコールおよび/または多価アルコールと種々の量の酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンとを反応させることにより、アクリル酸および/またはメタクリル酸とエステル化する水酸基含有ポリエーテルを得ることは可能である。テトラヒドロフランの重合生成物またはブチレンオキシドの重合生成物を使うこともまた可能である。
【0067】
使われたアルコール成分および酸成分の性質および量の選択を介して、ポリエーテル(メタ)アクリレートおよびポリエステル(メタ)アクリレートのさらなる変数、例えば、二重結合含有量、二重結合当量、分岐点の量、環状構造要素の量、少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の量、水素結合形成構造要素の量などにわたって制御が実行される。
【0068】
さらに、適切なエポキシ(メタ)アクリレートもまた、当業者に周知であり、したがってさらなる説明は必要としない。それらは、例えば、アクリル酸と、ビスフェノールAベースのエポキシ樹脂、または他の市販の慣例的なエポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂との付加反応によって通常製造される。
【0069】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、1分子あたり平均して1個を超える、好ましくは少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を含んでいることは、さらに本発明にとって不可欠である。特に好ましくは、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、1分子あたり2個より多く最大100個、特に3.0から9.5個、好ましくは3.5から9.0個、非常に好ましくは4.0から8.5個の二重結合を含んでいる。
【0070】
一般的に、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、10質量%以下、好ましくは7.5質量%以下、より好ましくは5質量%以下、非常に好ましくは2.5質量%以下、特に1質量%以下、そして特別には0質量%の1つのみの硬化可能基を含有している化合物を含んでいる。
【0071】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)の1分子あたりの二重結合含有量を増加させることは、完全架橋の透明コーティング(KE)の架橋密度の増加によって一般的に達成される。このことは、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)の1分子あたりの二重結合含有量が増加するにつれて、ゴム弾性領域における完全架橋透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率E(ME)’もまた増加することを意味する。
【0072】
しかしながら同時に、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)の1分子あたりの二重結合含有量を増やすことは、完全架橋透明コーティング(KE)の破断伸び(breaking elongation)の減少を伴う。すなわち、システムはいっそう脆くなる。したがって、完全架橋透明コーティング(ME)は、完全架橋透明コーティング(KE)も一般的に同様であるが、1分子あたりの二重結合含有量が増加するにつれて、UV硬化後に応力亀裂に向かう傾向が大きくなることを示す。
【0073】
さらに、所定の種類のウレタン(メタ)アクリレートに対して、成分(KK)中の1分子あたりの二重結合含有量を増加させることは、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の温度20℃における損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比の減少を伴う。
【0074】
しかしながら、理解されるように、反応成分(KK)の二重結合含有量だけではなく他の変数(例えば、分子量、分岐点の数、環状構造要素の数、水素結合形成構造要素の数など)もまた粘弾特性に影響を与える(まだ完全に架橋していないコーティング(MT)だけではなく、完全架橋コーティング(ME)の粘弾特性への各変数の下記の影響も参照のこと)。結局、粘弾特性に対する二重結合含有量の影響および後述される粘弾特性に対する効果に関する上記のこれらの記述は、他の変数の影響についての論議において、それぞれの場合おいて一度に1つのみのパラメータが考慮され(例えば、ここでの二重結合含有量)、一方、他のパラメータは特に変更されないという仮説は、唯一の条件として妥当である。
【0075】
上述されるように、二重結合は、一般的に、1つ以上のエチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルと、ウレタン(メタ)アクリレートの場合にはイソシアネートおよび/またはイソシアネートプレポリマーのイソシアネート基とを、および/またはポリエステル(メタ)アクリレートの場合にはポリエステルの酸基とを反応させることにより、成分(KK)に導入される。上述したように、ポリエステル、ポリエーテル、エポキサイドおよびアクリレートポリマーなどの出発オリゴマーまたは出発ポリマーと、例えば、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/または別のエチレン性不飽和酸とを反応させることも同様に可能である。
【0076】
適切なエチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルの例は、アクリル酸およびメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、マレイン酸およびフマル酸のヒドロキシアルキルエステル、クロトン酸およびイソクロトン酸およびビニル酢酸のヒドロキシアルキルエステルであり、好ましくはアクリル酸のエチレン性不飽和ヒドロキシアルキルエステルである。より好ましくは、エチレン性不飽和ヒドロキシエチルエステルおよび/またはヒドロキシプロピルエステルおよび/またはヒドロキシブチルエステルおよび/またはヒドロキシペンチルエステルおよび/またはヒドロキシヘキシルエステル、非常に好ましくは、エチレン性不飽和ヒドロキシエチルエステル、または上述の不飽和酸のエチレン性不飽和ヒドロキシブチルエステルと共にエチレン性不飽和ヒドロキシエチルエステルが使われ、特にはアクリル酸のそれらのエステルである。
【0077】
成分(KK)に二重結合を導入するために、ペンタエリトリチルジアクリレート、ペンタエリトリチルトリアクリレートおよびペンタエリトリチルテトラアクリレートなどの分子あたり1つより多い二重結合を有するヒドロキシアルキルエステルを使うこともまた可能であることは理解されるであろう。
【0078】
特に好ましくは、二重結合は、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび/または4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび/またはペンタエリトリチルトリアクリレートを使って、成分(KK)に導入される。
【0079】
二重結合を導入するために使われる化合物は、その構造に依存して、特定の状況の下で粘弾変数にそれ自身影響を与える。なぜなら、二重結合含有量だけでなく、特定の状況下で、例えばウレタン基含有量のような他の変数もまた変更されるからである。例えば、成分(KK)の二重結合含有量がヒドロキシエチルアクリレートと鎖延長剤のいくつかとを置換することによって増加する場合、ウレタン基含有量は、ヒドロキシエチルアクリレートに対する鎖延長剤の質量比に従って変化するであろう。一方、例えば、ヒドロキシエチルアクリレートの代わりに1分子あたり1個より多い二重結合を有するヒドロキシアルキルエステルを使うことによって、例えばペンタエリスチルトリアクリレートおよび/またはペンタエリスチルテトラアクリレートを使うことによって成分(KK)の二重結合含有量が増加する場合、ウレタン基含有量は適度に減少する。
【0080】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、1000から10000g/mol、好ましくは2000から5000g/mol、より好ましくは2500から3500g/molの数平均分子量を有することは、本発明にさらに必要不可欠である。
【0081】
反応成分(KK)の分子量が高ければ高いほど、ゴム弾性領域における完全架橋透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率E(ME)’は低くなる。
【0082】
同時に、反応成分(KK)の分子量が高ければ高いほど、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の温度20℃における損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比が、一般的に高くなる。
【0083】
さらに、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、1000gの反応成分(KK)あたり1.0から5.0mol、好ましくは1.5から4.0mol、より好ましくは2.0から3.5molの二重結合という二重結合含有量を有することは、本発明にとって必要不可欠である。それらの値は、それぞれの場合においてラジカル的に架橋可能な成分(KK)の質量を基準とするが、例えば、溶媒、水または添加剤などの非反応性化合物は当然除かれる。
【0084】
当業者が認識しているように、成分(KK)の二重結合含有量は、1分子あたりの二重結合の量だけでなく、特に、成分(KK)の数平均分子量とも関連している。
【0085】
成分(KK)の二重結合含有量が下がるにつれて、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の、もはや流動せず、塗布され得る保護フィルムによってもはや跡が付かないという能力が改良される。このことは、成分(KK)の二重結合含有量が下がるにつれて、特に一般的に必要とされる水素結合形成構造の増加のために、および/または成分(KK)の分子量の増加のために、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の温度20℃における損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比が増加することを意味する。
【0086】
成分(KK)中の二重結合含有量を減少させることは、完全架橋透明なコーティング(ME)のゴム弾性領域における貯蔵弾性率E(ME)’の減少を伴う。
【0087】
当業者が認識しているように、分子量および二重結合含有量は、使用された構築ブロック成分の性質および量によって、また反応条件によって、調節することができる。
【0088】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、1分子あたり平均>1個、好ましくは≧1.4個、より好ましくは>2個の分岐点を含んでいることは、さらに本発明にとって必要不可欠である。
【0089】
成分(KK)中において1分子あたりの分岐点の平均数を減らすことは、一般に、ゴム弾性領域における完全架橋透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率E(ME)’の減少を伴う。同時に、1分子あたりの分岐点の平均数を減らすことで、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の温度20℃における損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比は、一般的に減少する。
【0090】
成分(KK)中における1分子あたりの分岐点の平均数は、2つを超える、特に少なくとも3つの官能基を有する成分(KK)を合成するために使われる化合物の量により、一般的に調節される。
【0091】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)の分岐点は、2つを超える、特に少なくとも3つの官能基を有するイソシアネートの使用を介して、好ましくは導入される。
【0092】
特に好ましくは、トリマーイソシアネートおよび/またはポリマーイソシアネート、特にイソシアヌレート、および/または2つを超えるイソシアネート官能基を有する付加化合物またはプレポリマー、特にアロファネートおよび/またはビウレットを使って、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)において使用されるオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、分岐点が導入される。特に好ましくは、分岐点は、1つ以上のイソシアヌレートおよび/または1つ以上のビウレットの使用を介して導入される。
【0093】
しかしながら、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)を合成する場合、例えば、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパンおよびトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートの使用を通して、2つより多い官能基を有するアルコール、チオールまたはアミンを使うこともまた可能である。
【0094】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づき、5質量%から50質量%、好ましくは10質量%から40質量%、より好ましくは15質量%から30質量%(当然、例えば、溶媒、水または添加剤などの非反応性化合物は除外される。)の環状構造要素を含有することは、さらに本発明にとって必要不可欠である。
【0095】
成分(KK)中の環状構造要素の量が増加することで、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(KT)の、もはや流動せず、塗布され得る保護フィルムによってもはや跡が付かないという能力が改良される。
【0096】
これは、成分(KK)中の環状構造要素の量が上がるにつれて、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の温度20℃における損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比が増加するからである。
【0097】
成分(KK)の環状構造要素の量が上がるにつれて、完全架橋透明コーティング(KE)の耐薬品性、耐候性および耐スクラッチ性もまた向上する。さらに、成分(KK)中の環状構造要素を過剰に含有すると、完全架橋コーティングの破断伸びが減少(KE)し、それにより脆くなる。
【0098】
さらに、成分(KK)の環状構造要素の量が上がるにつれて、ゴム弾性領域における完全架橋透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率E(ME)’が増加する。
【0099】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、環状構造要素として、4から8個、好ましくは5から6個の環員数を有する単環構造要素、および/または7から18個の環員数を有する多環構造要素、好ましくは10から12個の環員数を有する二環構造要素および/または三環構造要素、非常に好ましくはトリシクロデカン環を含むことが好ましく、および/または環状構造要素が置換されていることが好ましい。
【0100】
環状構造単位は、環状脂肪族、ヘテロ環または芳香族であり、好ましくは環状脂肪族構造単位および/またはヘテロ環構造単位である。特に、環状脂肪族構造単位とヘテロ環構造単位との組合せが使用される。
【0101】
ヘテロ環構造単位は、例えばウレトジオン(uretdiones)が使われる場合として、鎖状であり得、および/または、例えばイソシアヌレートが使われる場合としては分岐点を形成し得る。環状脂肪族構造単位は、例えば水素化ビスフェノールAなどの環状脂肪族ジオールを使って例えばウレタンを合成する場合としては鎖状であり得、および/または分岐点を形成し得る。しかしながら、特に好ましくは、ヘテロ環構造単位が分岐点を形成し、一方、環状脂肪族構造単位が鎖状であることである。
【0102】
好ましい環状脂肪族構造要素は、非置換シクロペンタン環もしくは置換シクロペンタン環、非置換シクロヘキサン環もしくは置換シクロヘキサン環、非置換ジシクロヘプタン環もしくは置換ジシクロヘプタン環、非置換ジシクロオクタン環もしくは置換ジシクロオクタン環および/または非置換ジシクロデカン環もしくは置換ジシクロデカン環および/または非置換トリシクロデカン環もしくは置換トリシクロデカン環であり、特に非置換トリシクロデカン環もしくは置換トリシクロデカン環および/または非置換シクロヘキサン環もしくは置換シクロヘキサン環である。
【0103】
ヘテロ環構造単位は、飽和、不飽和または芳香族であり得る。飽和ヘテロ環構造単位を使用することが好ましい。
【0104】
ヘテロ原子は、好ましくは窒素および/または酸素および/または硫黄および/またはリンおよび/またはケイ素および/またはホウ素の群から、より好ましくは窒素の群から選択される。環あたりのヘテロ原子数は、通常1から18個、好ましくは2から8個、より好ましくは3個である。
【0105】
特に好適に使われるヘテロ環構造単位は、イソシアヌレート環および/またはウレトジオンおよび/または非置換トリアジン環もしくは置換トリアジン環であって、特にイソシアヌレート環である。
【0106】
それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づき、芳香族構造要素の量が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、そして非常に好ましくは2質量%以下である場合には、芳香族構造要素は、原則として環状構造要素を導入することにも適している。これは、芳香族構造要素が、一般的に、得られた完全架橋透明コーティング(KE)の耐候性に悪影響を与え、そのため芳香族構造要素の量がしばしば制限されるからである。
【0107】
環状構造要素は、成分(KK)を製造するための環状構造要素を有する対応する化合物を使用することにより反応性成分(KK)に導入される。成分(KK)は、特に、環状構造要素を有するジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート、および/またはジオールおよび/またはポリオール、ジアミンおよび/またはポリアミン、および/または環状構造要素を有するジチオールおよび/またはポリチオールを使って製造することができる。特に好ましいのは、環状構造要素を有するジオールおよび/またはポリオールおよび/またはジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを使うことである。
【0108】
したがって、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)において使われるオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、イソシアネート成分として、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートのイソシアヌレートを少なくとも比例的に使用するのが好ましい。これらは、一般にコーティング産業で使用されている。これらのイソシアヌレートの代わりまたは一緒に、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートのプレポリマーおよび/または付加化合物、特にビウレットおよび/またはアロファネートおよび/またはウレトジオンを使うことは可能である。これらは、一般にコーティング産業で使われる。特に好ましいのは、脂肪族および/または環状脂肪族のイソシアネートのイソシアヌレートおよび/またはビウレットおよび/またはアロファネートおよび/またはウレトジオンを使うことである。また、環状脂肪族のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを単独または上記のイソシアヌレートおよび/またはビウレットおよび/またはアロファネートおよび/またはウレトジオンと組み合わせて使うことも可能である。
【0109】
コーティング産業において一般に使われる(環状)脂肪族のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートの例として、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくは1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサンもしくは1,3−ジイソシアナトシクロヘキサンもしくは1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、2,4−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサンもしくは2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、ダイマー脂肪酸由来ジイソシアネート(Henkelから商品名DDI1410で市販)、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナト−メチルヘプタンもしくは1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサン、またはこれらのポリイソシアネートの混合物が挙げられる。
【0110】
しかしながら、少なくともイソシアネート基のいくつかが、脂肪族および/またはシクロ脂肪族のラジカル、特に1,3−ビス(2−イソシアナトプロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)と結合している芳香族構造要素を含むイソシアネートもまた、さらに適切である。
【0111】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)において使われるオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、(シクロ)脂肪族イソシアネートのイソシアヌレート、特にイソホロンジイソシアネートおよび/またはヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートを少なくとも比例的に使用するのが特に好ましい。非常に好ましくは、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートおよび/またはヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートおよび/またはヘキサメチレンジイソシアヌレートのビウレットおよび/または1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび/またはジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネートの混合物である。
【0112】
さらに、EP−B−1144476(4頁43行から5頁31行)に記述され、イソシアヌレート(上記文献中のa2.1)、ウレトジオン(上記文献中のa2.2)、ビウレット(上記文献中のa2.3)、ウレタンおよび/またはアロファネート基(上記文献中のa2.4)を含んでいるポリイソシアネート、オキサジアジントリオン基を含んでいるポリイソシアネート(上記文献中のa2.6)、およびカルボジイミド修飾ポリイソシアネートもしくはウレトンイミン修飾ポリイソシアネート(上記文献中のa.2.7)に基づいた高級多官能ポリイソシアネートは、さらに適合性を有する。
【0113】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)において使われるオリゴマーおよび/またはポリマー、特にオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、シクロ脂肪族ジオールおよび/またはポリオールおよび/またはシクロ脂肪族ジアミンおよび/またはポリアミン、特に、例えば、シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオールもしくは1,4−シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールFおよびトリシクロデカンジメタノールなどのシクロ脂肪族ジオールを少なくとも比例的に使用することもまた好ましい。
【0114】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)において使われるオリゴマーおよび/またはポリマー、特にオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、水素化ビスフェノールAを使うことが特に好ましい。
【0115】
すでに述べたように、環状構造要素はまた、芳香族構造要素を使用することによって、例えば、芳香族イソシアネートまたは芳香族イソシアネートのトリマーおよび/またはプレポリマーおよび/または付加化合物(例えば、1,2−ベンゼンジイソシアネート、1,3−ベンゼンジイソシアネートもしくは1,3−ベンゼンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−イソシアナトフェニル)プロパンおよび位置異性体ナフタレンジイソシアネート)、特に、例えば、2,4−トリレンジイソシアネートおよび2,6−トリレンジイソシアネートの技術的な混合物を比例的に使用することを介して導入することができる。適切な芳香族構造単位のさらなる例は、トリアジン環である。
【0116】
これらの構造単位は、例えば、米国特許4939213号、米国特許5084541号およびEP−A−624577に従って、トリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの使用を介して導入することができる。前述の化合物の誘導体もまた、使用することができる。
【0117】
さらに、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、鎖中に少なくとも6個の炭素原子、好ましくは6から18個の炭素原子、より好ましくは6個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族構造要素を含むことは、本発明にとって必要不可欠である。
【0118】
これらの構造要素は、成分(KK)への柔軟化効果を有する。したがって、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の量が多ければ多いほど、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の温度20℃における損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比は、低くなる。したがって、成分(KK)における鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の量が増加するにつれて、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の、もはや流動せず、塗布され得る保護フィルムによる跡がもはや付かないという能力は、減衰する。
【0119】
さらに、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の量が少なければ少ないほど、完全架橋透明コーティングの耐薬品性は向上する。
【0120】
さらに、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の量が多ければ多いほど、ゴム弾性領域における完全架橋透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率E(ME)’は低くなる。
【0121】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づき(しかし、例えば、溶媒、水または添加剤などの非反応性成分を当然除いて)、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する好ましくは3質量%から30質量%、より好ましくは5質量%から25質量%、非常に好ましくは8質量%から20質量%の脂肪族構造要素を含んでいる。
【0122】
すべての比較的長い炭化水素鎖は、成分(KK)中への導入のための適合性を有している。
【0123】
反応成分(KK)中へ鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有するこの脂肪族構造要素を導入することは、成分(KK)を製造するために、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有するこの脂肪族構造要素を含んでいる対応する化合物の使用を通して行なわれる。ウレタン(メタ)アクリレートを製造するために、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有するこの脂肪族構造要素を含んでいるジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートおよび/または鎖延長剤(ジオールおよび/またはポリオール、ジアミンおよび/またはポリアミン、ジチオールおよび/またはポリチオール、ジカルボン酸および/またはポリカルボン酸など)が特に使用され得る。鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有するこの脂肪族構造要素を含むジオールおよび/またはポリオールおよび/またはジカルボン酸および/またはポリカルボン酸および/またはジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを使用することが、特に好ましい。
【0124】
例えば、ダイマーおよび/またはトリマーの脂肪酸は、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートを修飾するための適合性を有する。
【0125】
特に好ましくは、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有するこの脂肪族構造要素は、オリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリウレタン(メタ)アクリレートの製造において、ヘキサメチレンの対応した官能性誘導体の使用、特に、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのイソシアネート基またはOH基および/またはNH基および/またはSH基をさらに含有するヘキサメチレン系化合物の使用を通して、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)に導入される。
【0126】
使用することができる化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソシアネート官能性トリマーおよび/またはポリマーおよび/またはヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート官能性付加化合物、特にヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットおよび/またはイソシアヌレートが挙げられる。さらに使用の可能性として、ヘキサメチレンジオールおよび/またはヘキサメチレンジアミンまたは類似の化合物が挙げられる。最終的に、さらに可能性があるのは、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合ならびにイソシアネート基またはOH基またはNH基に対して反応的な少なくとも1つの反応基の他に、例えば、ヒドロキシヘキシルアクリレートのような鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する上記脂肪族構造要素もまた含む化合物の使用である。
【0127】
それに相当して、ポリエーテル(メタ)アクリレートおよびポリエステル(メタ)アクリレートはまた、例えば、(ポリエーテルまたはポリエステルに基づいて)相当するOH官能性プレポリマーおよび/またはOH官能性オリゴマーと比較的長鎖の脂肪族ジカルボン酸、特に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸および/またはダイマー脂肪酸とを反応させることによって、柔軟化することができる。この柔軟化反応は、アクリル酸および/またはメタクリル酸とオリゴマーおよび/またはプレポリマーとの付加反応の前もしくは後において実行することができる。
【0128】
エポキシ(メタ)アクリレートの柔軟化は、例えば、相当するエポキシ官能性プレポリマーおよび/またはオリゴマーと比較的長鎖の脂肪族ジカルボン酸、特に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸および/またはダイマー脂肪酸とを反応させることによって、同様の方法で可能である。この柔軟化反応は、アクリル酸および/またはメタクリル酸とオリゴマーおよび/またはプレポリマーとの付加反応の前もしくは後において実行することができる。
【0129】
上に説明したように、ポリエーテル(メタ)アクリレートおよび/またはポリエステル(メタ)アクリレートおよび/またはエポキシ(メタ)アクリレートの柔軟化、言い換えれば、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の量の増加は、乾燥しているが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)の、もはや流動せず、塗布され得る任意の保護フィルムによって跡がもはや付かないという能力の低下をもたらす。
【0130】
さらに、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の量が少なければ少ないほど、完全架橋透明コーティングの耐薬品性は、それだけ良好となる。
【0131】
さらに、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素の量が多ければ多いほど、ゴム弾性領域における完全架橋透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率E(ME)’は、それだけ低くなる。
【0132】
すでに挙げたこれらのパラメータに加えて、まだ完全に架橋していないコーティング(MT)および完全架橋コーティング(ME)の粘弾変数はともに、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)中の水素結合形成構造要素の量によって影響される。したがって、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、
1.混合物(M)から作り出され、しかしまだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)が、5から200、好ましくは8から100、より好ましくは10から80の損失弾性率G(MT)"に対する弾性率G(MT)’の比を有し、G(MT)’およびG(MT)"は、毎分2℃の加熱速度および10s−1の角振動数で、プレート/プレート測定システムを使ったレオロジー的振動測定によって20℃の温度において測定され、
2.混合物(M)から作り出された完全架橋透明コーティング(ME)が、1.0×107.0から8.0×107.0Pa、好ましくは1.5×107.0から4.5×107.0Pa、より好ましくは1.9×107.0から3.7×107.0Paの貯蔵弾性率E(ME)’を有し、E(ME)’は、フリーの40μm±10μmの層厚を有する完全架橋フィルム上で、毎分2℃の加熱速度および1Hzの周波数を有する動的機械的熱分析により、ゴム弾性領域において測定されるような量において水素結合形成構造要素を含むことは、本発明にとって必要不可欠である。
【0133】
水素結合形成構造要素の量が多ければ多いほど、乾燥しているが、まだ完全架橋していない透明コーティング(MT)の温度20℃における損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比は、それだけ高くなる。
【0134】
したがって、水素結合形成構造要素の量が多ければ多いほど、乾燥しているが、まだ完全架橋していないクリアコートが塗布され得る任意の保護フィルムにより跡がつく範囲は、それだけ小さくなる。
【0135】
そして、水素結合形成構造要素の量が多ければ多いほど、乾燥しているが、まだ完全架橋していないクリアコートフィルムの流れ出る傾向もまた小さくなる。
【0136】
水素結合形成構造要素の量が多ければ多いほど、ゴム弾性領域における完全架橋透明コーティング(ME)の貯蔵弾性率E(ME)’も同様に高くなる。
【0137】
したがってまだ完全架橋していないコーティング(MT)の場合における粘弾測定、または完全架橋コーティング(ME)の場合におけるフリーフィルム上の動的機械的熱分析(省略のため以下DMTAとも記される。)によるレオロジー特性の測定を通してのみが、望ましい特性を有するシート面の外観にある成形部材が得られるコーティング組成物の提供のために利用可能である普遍的で代表的な選択基準となる。
【0138】
それと対照的に、粘弾特性が必要とされる値を有しなかった場合には、この値は、水素結合形成構造要素の量を変えることによって設定することができる。
【0139】
すでに述べたように、水素結合形成構造要素の量に加え、反応成分(KK)の他の変数(例えば、二重結合含有量、分子量、分岐点の数、環状構造要素の数など)もまた、個別のパラメータのそれぞれについての論議で示された意味で粘弾特性に影響を与えることは、まさにその事例である。これらのパラメータに対する前記値の範囲を通して、特に水素結合形成構造要素の量を変えることによって、粘弾特性を本発明による値に調節することは可能である。
【0140】
そのため、当業者は、水素結合形成構造要素の量を対応して増やすことによって、例えば反応成分の1000gあたりの二重結合含有量が減る場合において生じる貯蔵弾性率E(ME)’の減少を補うことが可能である。例えば、環状構造要素の画分の増加の結果としての貯蔵弾性率E(ME)’の増加もまた、水素結合形成構造要素の量を対応して下げることによって、当業者が補うことができる。それと対応して、このことは、それぞれの場合において他の物理パラメータの変更に同様に当てはまる。すでに何回も述べられたように、本発明に欠くことができないことは、貯蔵弾性率E(ME)’、および損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比のそれぞれが、特許請求される範囲内の値を有するということである。
【0141】
ここで、特に適切な水素結合形成構造要素としては、ウレタン基、アロファネート基、ビウレット基、ユレア基、カルバメート基、カルボネート基、水酸基、アミド基、カルボキシル基、エーテル基、エステル基およびイオン基またはイオン形成基が挙げられる。
【0142】
特に好ましくは、ドナーとしてもアクセプターとしても共に作用する水素結合形成構造要素である。したがって、特に、水素結合形成構造は、ウレタン基、アロファネート基、ビウレット基、ユレア基、カルバミン酸エステル基およびアミド基からなる群から選択される。非常に好ましくは、水素結合形成構造要素の量は、使われたイソシアネート付加化合物および/またはイソシアネートプレポリマーの性質および量を介して調節される。そのため、非常に好ましくは、使われるビウレットおよび/またはアロファネートの量のおよび/またはウレタン基含有量の増加の結果として、水素結合形成構造要素の割合が増加するであろう。カルバメート基および/またはアミド基および/またはユレア基からウレタン基へのさらなる組み込みもまた有利である。
【0143】
架橋可能なコーティング組成物(K)は、それぞれの場合においてコーティング組成物(K)の全体質量に基づいて、好ましくは30.0質量%から99.9質量%、より好ましくは34.0質量%から69.9質量%、そして非常に好ましくは38.8質量%から59.5質量%の成分(KK)を含んでいる。
【0144】
架橋可能なコーティング組成物(K)は、好ましくは少なくとも1つの化学架橋の開始剤を含んでいる。これらの開始剤は、好ましくは光開始剤である。1つもしくは複数の光開始剤は、単分子(タイプI)光開始剤および二分子(タイプII)光開始剤からなる群から好ましくは選択される。より好ましくは、タイプIの光開始剤は、第三アミンと組み合わされたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロンおよびハロゲン化するベンゾフェノンからなる群から選択される。そして、タイプIIの光開始剤は、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体、特にベンゾインエーテル、ベンジルケタール、酸化アシルホスフィン、特に、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン酸化物およびエチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、酸化ビスアシルホスフィン、フェニルグリオキシルエステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノンおよびα−ヒドロキシアルキルフェノンからなる群から選択される。
【0145】
コーティング組成物の架橋が、熱的手段によって、排他的または追加的に完了される場合、それらは、C−C切断開始剤、好ましくはベンズピナコールを含むことが好適である。ベンズピナコールの適切な例は、米国特許US4,288,527Aの3段5から44行およびWO02/16461の8頁1行から9頁15行に記載のベンズピナコールシリルエーテルまたは置換および非置換のベンズピナコールである。好ましくは、ベンズピナコールシリルエーテル、特にモノマーおよびオリゴマーのベンズピナコールシリルエーテルの混合物を使うことである。
【0146】
架橋可能なコーティング組成物(K)中の開始剤の量は、広範囲に変えることができ、そして制御下(in hand)の場合の要件によって、そしてそれから製造されるコーティング(KE)が有することが意図される性能特性によって導かれる。その量は、それぞれの場合においてコーティング組成物(K)の固体に基づいて、好ましくは0.1質量%から10質量%、特に1.0質量%から7.0質量%である。
【0147】
さらに、架橋可能なコーティング組成物(K)は、有効量の従来の添加剤を含むことが可能である。通常、これらの添加剤の量は、コーティング組成物(K)の固体に基づいて、0質量%から10質量%、好ましくは0.2質量%から5.0質量%である。それら添加剤は、UV吸収剤および可逆フリーラジカルスカベンジャー(HALS)のような光安定剤、酸化防止剤、湿潤剤、乳化剤、潤滑添加剤、重合抑制剤、接着促進剤、レベリング剤、フィルム形成助剤、レオロジー補助剤、難燃剤、顔料ではない腐蝕防止剤、フリーフロー助剤、ワックス、乾燥剤、バイオサイド、艶消し剤からなる群から好ましくは選択される。
【0148】
適切な添加剤の例は、Johan Bieleman、による教科書「Lackadditive」(コーティングのための添加剤)Wiley− VCH、Weinheim、ニューヨーク、1998年、D.StoyeおよびW.Freitag(編)において、ドイツ特許出願DE199 148 96 A1(14段26行から15段46行)において、またはドイツ特許出願DE19908018A1(9頁31行から8ページ30行)において詳細に記述される。
【0149】
架橋可能なコーティング組成物(K)は、一般に従来の溶媒および/または水をさらに含むが、100%システムと呼ばれるものとして、実質上または完全に溶媒を含まず、そして実質上または完全に水を含まずに製剤することもできる。コーティング組成物(K)が溶媒を含む場合、それらは、それぞれの場合においてコーティング組成物(K)の全体質量に基づいて、好ましくは20質量%から70質量%、より好ましくは30質量%から64.5質量%、そして非常に好ましくは40質量%から60質量%の1つ以上の溶媒および/または水、好ましくは1つ以上の有機溶媒を含有する。
【0150】
適切な溶媒は、クリアコート材料で一般に使われるすべてのものであり、特に例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、3−ブトキシ−2−プロパノール、エチルエトキシプロピオネート、ブチルグリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ブチルグリコレート、Shellsol(登録商標)T、松根油90/95、Solventnaphtha(登録商標)、Shellsol(登録商標)A、石油スピリット135/180などのようなアルコール、グリコールエーテル、エステル、エーテルエステルおよびケトン、脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素である。
【0151】
架橋可能なコーティング組成物(K)は、それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づいて、好ましくは20質量%未満、特に10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、非常に好ましくはポリマー飽和成分(KS)を全く含まず、特には熱可塑性ポリマーを全く含まない。
【0152】
その方法に関して、コーティング組成物(K)の製造は、特定の特徴を有しないが、その代わりに、攪拌タンク、攪拌ミル、ニーダー、Ultraturrax、インライン溶解機、静的ミキサー、歯車分散機(toothed−wheel dispersers)。圧力除去ノズルおよび/またはマイクロフルイダイザーのような従来の混合技法および装置を使って、好ましくは化学線なしに上記の成分を混合および均質化することによって行なわれる。
【0153】
透明コーティング組成物は、通常、少なくとも30μm、好ましくは30μmから160μm、より好ましくは40μmから80μmの乾燥フィルム厚と結果としてなるような量で塗布される。
【0154】
顔料含有コーティング組成物(P)
顔料含有コーティング組成物(P)として、物理的または熱的におよび/または化学線照射により硬化可能な顔料含有コーティング組成物(P)が、一般に使用される。そのシステムは、100%システムと呼ばれるものであり、実質上または完全に水および有機溶媒を含まない。しかしながら、好ましくは、使用されるコーティング組成物は、水性または従来,すなわち、有機溶媒含有のものである。
【0155】
通常使用される顔料含有コーティング組成物(P)は、
(I)1つ以上の溶媒および/または水と、
(II)1つ以上の結合剤、好ましくは1つ以上のポリウレタン樹脂および/またはアクリレート樹脂、より好ましくは1つ以上のポリウレタン樹脂と1つ以上のアクリレート樹脂との混合物と、
(III)必要に応じて、1つ以上の架橋剤と
(IV)1つ以上の顔料と、
(V)必要に応じて、1つ以上の通例の補助剤および添加剤とを含んでいる。
【0156】
通例で公知であり、物理的および/または熱的に硬化可能で、従来または水性のベースコート材料(P)(例えば、国際公開WO03/016095A1の10頁15行から14頁22行、特にUS−A−5,030,514の2段63行から6段68行および8段53行から9段10行、およびEP−B−754740の3段37行から6段18行から公知のもの)を使用することが好ましい。
【0157】
非常に好ましくは、熱硬化性水性ベースコート材料(P)の使用である。
【0158】
適切な結合剤は、自動車産業の分野におけるベースコート材料で一般に使われるポリウレタン樹脂およびアクリレート樹脂である。結合剤の柔軟性、特に、そしてそれ故の本発明の方法に対するそれらの適合性は、当業者に公知の手法で、これらの結合剤を製造するために使われる構築ブロック成分の性質および量の選択を介して制御される。詳細については、US−A−5,030,514の2段63行から6段68行および8段53行から9段10行を再び参照とすることができる。
【0159】
さらに、顔料含有コーティング組成物は、好ましくは、架橋剤として少なくとも1つのさらなるアミノ樹脂を含んでいる。原則としてコーティング産業の分野で通常使われるアミノ樹脂は、適合性を有する。顔料含有コーティング組成物の特性は、アミノ樹脂の反応性を介して制御可能である。
【0160】
顔料含有コーティング組成物中の結合剤および適切であればアミノ樹脂の量は、広範囲に変えることができ、それぞれの場合において結合剤とアミノ樹脂との全体質量に基づいて、通常0質量%から70質量%、好ましくは1O質量%から60質量%のポリウレタン樹脂、0質量%から70質量%、好ましくは1O質量%から60質量%のアクリレート樹脂、0質量%から45質量%、好ましくは5質量%から40質量%のアミノ樹脂である。
【0161】
顔料含有コーティング組成物(P)の全体質量に基づいて、結合剤と適切でればアミノ樹脂との画分は、通常、10質量%から50質量%である。
【0162】
顔料含有コーティング組成物(P)は、少なくとも1つの顔料をさらに含む。顔料は、有機および無機、着色、効果、着色およびエフェクト、磁気遮蔽性、導電性、耐腐食性、螢光性およびリン光性の顔料からなる群から好ましくは選択される。着色顔料および/または効果顔料を使用することが、より好ましい。
【0163】
色彩を与えることも可能な適切なエフェクト顔料の例は、市販のアルミニウム青銅、DE3636183A1に従ってクロム化されたアルミニウム青銅および市販のステンレス鋼青銅のような金属フレーク顔料、ならびに、例えば、真珠光沢顔料、干渉顔料、酸化鉄ベースの板状顔料、または液晶効果顔料のような非金属エフェクト顔料である。さらに詳細に関しては、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、1998年、の176頁「効果顔料」ならびに380頁および381頁「金属酸化物−雲母顔料」から「金属顔料」が参照となる。
【0164】
適切な有機および/または無機の着色顔料は、コーティング産業で通常使われる顔料である。
【0165】
コーティング組成物(P)中の顔料の量は、非常に広く変えることができ、そして生じる色彩の深さおよび/またはエフェクトの強さによって、そしてコーティング組成物(P)中の顔料の分散性によって、主に誘導される。好ましくは、顔料含有量は、それぞれの場合においてコーティング組成物(P)に基づいて、0.5質量%から50質量%、好ましくは1質量%から30質量%、より好ましくは2質量%から20質量%、そして特に2.5質量%から10質量%である。
【0166】
上記の顔料のほかに、コーティング組成物(P)は、有機および無機の透明充填剤および不透明充填剤およびナノ粒子のような従来の補助剤および添加剤、ならびにさらなる通例の補助剤および添加剤を、通例の量、好ましくはコーティング組成物(P)に基づいて0質量%から40質量%で含むことができる。
【0167】
顔料含有コーティング組成物(P)は、通常、少なくとも30μm、好ましくは30μmから160μm、より好ましくは50μmから150μmの乾燥フィルム厚と結果としてなるような量で塗布される。
【0168】
熱可塑性支持シート(T)
熱可塑性支持シート(T)は、単層形式にあり、または少なくとも1つのさらなる層を含むことができる。
【0169】
例えば、次のコーティング(B)とその反対側(T2)において、(T)は、少なくとも1つの接着促進層(HS)を含むことができる。しかしながら、好ましくは、支持シートの側面(T2)は、中間膜なしで、プラスチック材料(KM)に直接的に接合される。
【0170】
表面(T1)と次のコーティング(B)との間において、例えば、表面処理層(FS)および/または接着促進層(HS)のような少なくとも1つの(特に1つの)中間層(ZS)を設けることもまた可能である。この場合、表面(T1)と接着促進層(HS)との間におよび/または接着促進層(HS)とコーティング(B)との間に、少なくとも1つの(特に1つの)転移層(UeS)が存在し得る。しかしながら、好ましくは、コーティング(B)は、表面(T1)上において直接、すなわち中間膜なしで配置される。
【0171】
支持シート(T)は、実質上または完全に少なくとも1つの熱可塑性ポリマーで構成される。熱可塑性ポリマーは、直鎖、分岐、星型、櫛型および/またはブロック構造の従来および公知のホモポリマーおよびコポリマーからなる群から好ましくは選択される。ホモポリマーおよびコポリマーは、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラートおよびポリブチレンテレフタレート、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、特にポリメチルメタクリレートおよびポリブチルメタクリレート、耐衝撃性変性ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、特に耐衝撃性変性ポリスチレン、さらにはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、アクリル−スチレン−アクリロニトリルコポリマー(ASA)およびアクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレンコポリマー(A−EPDM)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサイファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル、ならびにこれらのポリマーの混合物からなる群から選択される。
【0172】
ASAは、一般に、耐衝撃性変性スチレン/アクリロニトリルポリマーを意味する。ここで、ポリアルキルアクリレートゴム上でのビニル芳香族化合物(特にスチレン)とシアン化ビニル(特にアクリロニトリル)とのグラフトコポリマーは、特にスチレンおよびアクリロニトリルを含んでいるコポリマーマトリックス中に存在している。
【0173】
特に好ましくは、ASA、ポリカーボネート、ASAとポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレートまたは耐衝撃性改質ポリメチルメタクリレートとの混合物を使用し、特にASAとポリカーボネートとの混合物を好ましくは>40%、特に>50%のポリカーボネート画分で使用する。
【0174】
支持シートのために好ましく使用される材料(T)はまた、特に、DE−A−1O13273の2頁61行から3頁26行に記述された熱可塑性ポリマーである。
【0175】
ホモポリマーおよびコポリマーは、熱可塑性物質の分野における一般的な添加剤を含むことができる。それらは、補強充填剤および繊維を含めた従来の充填剤をさらに含むことができる。特に、それらはまた、効果顔料を含めた顔料、および/または従来の染料を含むことができる。そのため支持シートの色合いを、顔料含有コーティング組成物(P)から得られたコーティングの色合いに適合させることが可能となる。
【0176】
支持シート(T)の層厚は、通常0.5mmを超え、好ましくは0.7から2.0mmの間、より好ましくは0.9から1.2mmの間である。
【0177】
転移層(UeS)として、好ましくは1から50μmの厚さを有する熱可塑性物質(特に上記の熱可塑性ポリマー)の従来の層を使用することは可能である。
【0178】
支持シート(T)とプラスチック材料(KM)との間の接着が不適切である場合、例えば、ポリオレフィンが、(T)または(KM)に対して使用される場合、接着促進層が使われる。接着促進層(HS)として、好ましくは1から100μmの厚さを有する通例の接着促進剤の層を使うことが可能である。これらの層は、従来のものであり、例えば、DE−A−10113273の4頁27から29行に記述されるものである。
【0179】
プラスチック材料(KM)
液体ポリマー材料または柔軟化プラスチック材料(KM)は、好ましくは、少なくとも1つの溶融または柔軟化された熱可塑性ポリマー、特に支持シート(T)との接合において上で記述された少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むか、またはそれらから構成される。
【0180】
繊維を含むポリマー材料を使うことが好ましい。用語「繊維」は、プレートレット形をした製品もまた包含する。適切な繊維の例は、炭素繊維、アラミド繊維、鋼繊維またはガラス繊維およびアルミニウム薄片であり、好ましくはガラス繊維である。
【0181】
例えば、DE−A−10113273の4頁44行から5頁45行に記述されたポリマー材料もまた適切である。
【0182】
この種の溶融または柔軟化された熱可塑性ポリマーが使われる方法のバージョンは、射出成型または圧縮成型による裏打ちと呼ばれる。
【0183】
あるいは、液体ポリマー材料または柔軟化ポリマー材料は、成型または裏打ち型において固体プラスチック材料(KM)を形成する従来の反応性混合物を含むことができる。この場合、プラスチック材料(KM)はまた、支持シート(T)との接合において上記の添加剤を同様に含むことができる。さらに、細孔形成発泡剤を含むプラスチック材料(KM)を使うこともまた可能である。適切な反応性混合物の例は、フォーム裏打ち方法において通常使われる周知の反応性混合物、特にポリウレタン発泡体である。例としては、EP−B−995667、特にEP−B−995667の2段40行から3段14行、5段23から29行、そして8段33から38行に記述される反応性混合物である。
【0184】
この種の反応性混合物または発泡剤を含む混合物(KM)が使われる方法のバージョンはまた、RIM成型(RIM)による発泡バッキングと呼ばれる。
【0185】
保護フィルム(S)
適切な保護フィルム(S)は、単層または多層の形状であり得る一般に使われるすべての保護フィルムである。特にDE−A−10335620の17頁20行から19頁22行に記述される保護が使用される。
【0186】
特に適切な保護フィルム(S)は、ポリエチレン、ポリプロピレンのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマーおよびエチレンプロピレンコポリマーをベースとするものである。
【0187】
好ましくは、保護フィルムは、50μmの層厚を有するように、選択される。その層厚は、230から600nmの波長の紫外線および可視光に対して>70%の透過率を有する。
【0188】
さらに、室温から100℃の温度範囲において少なくとも10Paの貯蔵弾性率E’を有し、23℃において方向性を有する製造方法による保護フィルムの製造中に生じた優先方向に対し縦および横の両方向に>300%破断伸びを有する保護フィルムを使うことが好ましい。特に好ましくは、コーティング(B)に面する保護フィルムの側面は、23℃において<0.06GPaの硬度を有し、原子間力顕微鏡法(AFM)により決定される50μm<30nmからのR値に対応する粗度を有する。
【0189】
非常に好ましくは、保護フィルム(S)は、10から100μm、特に30から70μmの厚さである。
【0190】
本発明による使用のための保護フィルム(S)は、従来のものであり、例えば、商品名GH−X527、GH−X529およびGH−X−535としてBischof+Klein、D−49525 Lengerichによって市販されている。
【0191】
成形部材の製造プロセス
プロセス工程I
顔料含有コーティング組成物(P)は、1つの層または2つ以上の層で、熱可塑性支持シートに塗布することができる。顔料含有コーティング組成物(P)が1つの層のみで塗布される場合、これは、得られた顔料含有コーティングにおいて優先方向への顔料の配置が生じない非方向性塗布法により、好ましくは実行される。言い換えれば、顔料は、コーティング中で等方的に分布する。適切な非方向性塗布法およびそのための装置の例は、WO03/016095A1(20頁4行から23頁25行)によって周知である。特にWO03/016095A1(20頁4行から23頁25行)に記載されているように、圧縮空気噴霧装置または静電噴霧装置が使用される。
【0192】
顔料含有コーティング組成物(P)が2つ以上の層で塗布される場合、第一の層または第一の複数層(全部で2以上の着色層がある場合)が得られた顔料含有コーティングにおいて優先方向での顔料の配置(すなわち、顔料の異方性分布)を生じさせる方向性塗布法により塗布されるように、好ましくは実行される。適切な方向性塗布法の例は、WO03/016095A1の15頁6から19行によって周知である。ナイフコーター、キャスティング装置およびローラーが特に使用される。次いで、最後の着色層が、上記の非方向性塗布法により塗布される。
【0193】
コーティング組成物(K)は、1つ以上の層、好ましくは単一層に、上記の方向性塗布法または非方向性塗布法により、同様に塗布することができる。好ましくは、コーティング組成物(K)は、方向性塗布法により、非常に好ましくはキャストフィルム押出機を使って塗布される。コーティング組成物(K)は、好ましくは、塗布され、そして化学線照射がない場合、さらに処理される。
【0194】
さらに、一般に、顔料含有コーティング組成物(P)の多層塗布の場合、コーティングの一番間近の層は、顔料含有コーティング組成物の次の層が塗布される前に、好ましくは高温で簡単にフラッシュオフ(flashed off)される。同様に、コーティング組成物の塗布(K)前に、あらかじめ塗布された顔料含有コーティング組成物(P)が好ましくは高温で簡単にフラッシュオフされる。このフラッシュオフは、一般的にコンディショニングとも呼ばれる。
【0195】
しかしながら、その塗布の後でプロセス工程IIの前に、塗布されたコーティング組成物(K)が乾燥および/または部分架橋し、まだ完全に架橋していないコーティング(KT)が得られることが不可欠である。
【0196】
こうして得られたコーティング(KT)は、もはや流出せず、または塗布され得る保護フィルムによる跡は付けらない。このことは、それらのシート側の外観に関してクラスA表面に課される要件を満たす成形部材が得られることを保証する。
【0197】
湿潤顔料含有コーティングおよび湿潤透明コーティングの乾燥またはコンディショニングのために、熱的方法および/または対流方法を使うことが好ましい。その場合、トンネルオーブン、NIRおよびIRの放射ヒーター、ファンおよびブローイングトンネルのような従来の装置が使用される。このような装置の組合せもまた使うことができる。
【0198】
通常、透明コーティングの乾燥またはコンディショニングは、コーティングが、周辺温度(通常25℃)において2から30分間フラッシュオフされ、次いで高温(80から140℃の好適な温度)において5から30分間乾燥されるように行なわれる。
【0199】
顔料含有コーティング組成物(P)およびコーティング組成物(K)を塗布および乾燥するために好適に使用されるプロセスに対して、非公開ドイツ国特許出願(出願番号102004010787.4)の16頁4行から25頁8行を参照する。
【0200】
したがって、特に好ましくは、顔料含有コーティング組成物(P)および架橋可能なコーティング組成物(K)の塗布およびコンディショニングは、以下のように行なわれる。
a.顔料含有コーティング組成物(P)は、支持シートに塗布されて湿潤着色層1aを得る。そして、その着色層に基づいてx<10質量%の残余揮発成分含有量に調節され、コンディショニングされた湿潤着色層1bを得る。
b.支持シートおよびコンディショニングされた層1bから構成される組立品は、層1bの表面において、<50℃、好ましくは<35℃の温度に調節される。
c.必要に応じて、第二の顔料含有コーティング組成物(P)または2回目の同じ顔料含有コーティング組成物(P)が、コンディショニングされ、熱処理された層1bに塗布され、湿潤着色層2aを得る。それは、その着色層に基づいてy<10質量%の残余揮発成分含有量に調節され、コンディショニングされた層2bを得る。
d.必要に応じて、支持シートおよびコンディショニングされた層1bおよび2bから構成される組立品は、層2bの表面において、<50℃、好ましくは<35℃の温度に調節される。
e.架橋可能なコーティング組成物(K)は、コンディショニングされ、熱処理された層1bまたは2bに塗布され、湿潤層3aを得る。それは、コーティング組成物(K)の層に基づいてz<5質量%の残余揮発成分含有量に調節され、熱的および/または化学線照射によりコンディショニングされ、硬化可能な変形層3bを得る。
【0201】
特に好ましくは、このプロセスは、
プロセス工程aにおいて、
最初の乾燥セクションにおいて、その塗布された着色層中の揮発成分の全体量に基づいて10から40質量%/分の平均乾燥速度が、その着色層に基づいてx=12から30質量%の残余揮発成分含有量となるまで使用され、
最後の乾燥セクションにおいて、その塗布された着色層中の揮発成分の全体量に基づいて1から6質量%/分の平均乾燥速度が、それぞれの場合においてその着色層に基づいてx<10質量%、より好ましくは<7質量%、特に<5質量%の残余揮発成分含有量となるまで使用され、
および/またはプロセス工程cにおいて、
最初の乾燥セクションにおいて、その塗布された層中の揮発成分の全体量に基づいて10から40質量%/分の平均乾燥速度が、その着色層に基づいてy=12から30質量%の残余揮発成分含有量となるまで使用され、
最後の乾燥セクションにおいて、その塗布着色層中の揮発成分の全体量に基づいて1.5から4質量%/分の平均乾燥速度が、それぞれの場合においてその着色層に基づいてy<10質量%、より好ましくは<7質量%、特に<5質量%の残余揮発成分含有量となるまで使用され、
および/またはプロセス工程eにおいて、
最初の乾燥セクションにおいて、コーティング組成物(K)の塗布層中の揮発成分の全体量に基づいて10から30質量%/分の平均乾燥速度が、コーティング組成物(K)の層に基づいてz=10から15質量%の残余揮発成分含有量となるまで使用される。そして、
最後の乾燥セクションにおいて、コーティング組成物(K)の塗布層中の揮発成分の全体量に基づいて0.5から3質量%/分の平均乾燥速度が、それぞれの場合においてコーティング組成物(K)の層に基づいてz<7質量%、より好ましくは<5質量%、特に<3質量%の残余揮発成分含有量となるまで使用されるように行われる。
【0202】
プロセス工程eにより、好ましくは、まだ完全に架橋していないコーティング(KT)が得られる。
【0203】
本発明の方法の過程で得られる支持シートおよび着色層で構成される組立品は、それぞれの場合において次の層が塗布される前に、別の塗布装置に巻き上げられ、貯蔵され、移送され、供給することができ、前記他の塗布装置において前記次の層でコーティングすることができる。この目的のために、その組立品は、次の層が塗布される前に再び除去される保護フィルムによる裏張りが可能である。
【0204】
しかしながら、好ましくは、本発明の方法は、必要な塗布装置およびコンディショニング用装置のすべてを含む連続設備において実行される。さらに、この連続設備は、顔料含有コーティング組成物および透明コーティング組成物を塗布装置に供給し、コーティング組成物を移送するための以下の従来の装置、支持シートおよび保護フィルム用の巻出機および多層シートF用の巻取機、シートおよび適切あれば塗布装置を運搬用のドライブ、揮発成分用の吸収装置、コンディショニングされたコーティング層の表面温度調節用の冷却ファンおよび/またはチルロール、測定装置および制御装置、ならびに適切であれば、化学線照射遮蔽用の装置を含む。
【0205】
プロセス工程IIからIV
プロセス工程IIの前に、ステージIで製造された上記シート(F)は、好ましくは開放された型、特に深絞り型または熱成形に挿入される。この目的のために、シート(F)は、ロールから巻き上げられ、適切なサイズのセクションに切断できる。その後、シート(F)または切断サイズセクションは、特に深絞り型または熱成形において、予備成型に供することができ、特にバッキング型の形態に適合させることができる。プロセス工程IIにおいて、これらの三次元予備成型されたセクションは、次いで型、特にバッキング型に挿入される。代替可能性は、シート(F)またはシート(F)の切断サイズセクションを直接、すなわち、三次元予備成型なしにプロセス工程IIの型、特にバッキング型または成型中に挿入し、その型において成型を直接実行することである。
【0206】
プロセス工程IIIおいて、型は閉じており、表面(T1)から離れて面している熱可塑性支持シート(T)の側面(T2)は、液体ポリマー材料または柔軟化プラスチック材料(KM)と接触している。その結果として、コーティングされた熱可塑性支持シートは、適切である場合、成型され、プラスチック材料(KM)と堅固に接合する。続いて、プラスチック材料(KM)は硬化される。
【0207】
プロセス工程IVにおいて、ステージIIIで得られた成形部材が、型から取り出される。それは、その後すぐにさらに処理されるか、またはプロセス工程Vが実行されるまで貯蔵しておくことができる。
【0208】
プロセス工程IIからIVは、当業者にとって公知であり、また多くの参照文献にも記述されている。ここでは、DE−A−101 13 273の5頁47行から7頁35行のみ参照することができる。
【0209】
プロセス工程V
プロセス工程Vにおいて、コーティング(KT)は完全に架橋される。これは、プロセスの過程の任意の望ましい時点で行なわれる。架橋はまた、2つ以上の工程で行うことができ、それによれば、適切な1つ以上の部分硬化後に、適切な場合に完全な架橋が行われる。適切な場合、顔料含有コーティング(P)が、架橋または追加的に架橋されることも、このプロセス工程では可能である。
【0210】
透明コーティング(KT)の乾燥に関連して既に記述したように、コーティング(KT)が、まだ完全に架橋していないが、同時に、(KT)は、もはや流動せず、塗布され得る任意の保護フィルムによって跡が付けられないような抵抗性を有することは、本発明にとって不可欠である。
【0211】
まだ完全に架橋していないこのコーティング(KT)は、プロセス工程(I)においておよび/またはプロセス工程(I)の後および/またはプロセス工程(III)においておよび/またはプロセス工程(IV)の後に完全に架橋することができる。
【0212】
しかしながら、まだ完全に架橋していない透明コーティング(KT)は、完全架橋コーティング(KE)より良好な熱成形性を有する。したがって、好ましくは、コーティング(KT)は、変形後、特に、プロセス工程(Il)においてシート(F)が挿入される型の形態にシート(F)が適合した後に、完全に架橋される。しかしながら、まだ完全に架橋していない透明コーティング(KT)の機械的荷重担持力は、完全架橋コーティング(KE)のそれと比較して減少しているので、射出バック成型のときには可能な限り高い荷重支持力が望ましいので、単に通常使用される高圧を理由として、シート(F)への損害を防ぎ、それ故必要とされるクラスA表面を保証するために、射出バック成型前に、言い換えればプロセス工程(III)前に、特にプロセス工程(II)前であるが深絞り後または熱成形後に、完全に架橋を行なうこともまた好ましい。
【0213】
さらなる可能性は、高温において、好ましくは25から150℃の間、特に40から120℃の間、非常に好ましくは50から100℃の間の温度においてプロセス工程Vを実行することである。高温は、特定の加熱により、例えば、IRランプ、加熱空気または他の通例の装置によって達成することができる。しかしながら、代替可能性は、プロセス工程IV直後にプロセス工程Vを実行し、それにより射出バック成型作業によってもたらされた温度上昇を利用することである。
【0214】
コーティング組成物(K)の完全架橋は、高エネルギー放射線、特に紫外線により行うのが好ましい。特に好ましくは、完全架橋は、国際公開WO03/016095A1の27頁19行から28頁24行に記述されているように実行する。代替可能性は、熱的、排他的または放射線硬化に加えて完全架橋を実行することである。その場合、熱による完全架橋は、プロセス工程IVの間および/または直後に好ましくは行われ、射出バック成型操作によってもたらされた温度上昇を利用する。
【0215】
完全架橋は、100から6000mJcm−2、好ましくは200から3000mJcm−2、より好ましくは300から2500mJcm−2、非常に好ましくは500から2000mJcm−2の放射線量を有する放射線を使って実行されることが好ましい。<2000mJcm−2の範囲が、特に好ましい。
【0216】
照射は、酸素欠損雰囲気下で実行することができる。「酸素欠損」は、雰囲気の酸素含有量が、空気の酸素含有量(20.95体積%)より低いことを意味する。原則として、雰囲気はまた、無酸素の可能性もある。言い換えれば、不活性ガスを構成要素とすることができる。しかしながら、酸素の抑制効果がないことに起因して、これは、放射線硬化の急激な加速を引き起こし、おそらく本発明の架橋材料において不均質および応力を導く可能性がある。したがって、雰囲気の酸素含有量は、0体積%にまで下げない方が都合良い。
【0217】
成形部材の使用
本発明の方法によって得られた成形部材は、極めて広い範囲での応用の可能性を有する。例えば、それらは、内装部品または外部車体部品として、船舶および航空機製造のための部品として、鉄道車両のための部品または家庭用器具および電気器具、建物、窓、ドア、家具および任意の種類の日用品のための部品としての優れた効果を発揮させるために使用できる。それらは、特に、自動車、トラックおよびバスのための内装部品もしくは外部車体部品またはモジュールとして好ましくは使用される。
【0218】
成形部材は、それらのシート側の外観において、クラスA表面の要件を満たし、自動車の仕上げ工程に通常課される要件を満たすので、それらは、例えば、ハードトップ、テールゲート、ボンネット、フェンダー、バンパーなどのような自動車車体用の外部装着部品、特に高級車の車体用の部品としての優れた効果に適している。
【0219】
実施例1
ウレタンアクリレートの有機溶液の製造(成分(KK1)の有機溶液)
2−ヒドロキシエチルアクリレート中に水素化ビスフェノールAを60℃において攪拌しながら粗く分散させることにより、下記のビルディングブロック成分からウレタンアクリレートを製造した。この懸濁液に、イソシアネート、ヒドロキノンモノメチルエーテル、1,6−ジ−tert−ブチル−パラ−クレゾールおよびメチルエチルケトンを加えた。ジブチルスズジラウレートを添加した後、混合物は昇温した。反応混合物のNCO値に実質上変化がなくなるまで、75℃の内部温度において攪拌を数時間行なった。適切な場合、反応後に依然存在している遊離イソシアネート基を、少量のメタノールを加えることにより反応させた。
【0220】
104.214gの水素化ビスフェノールA(0.87当量の水酸基に相当)、
147.422g(0.77当量のイソシアネート基に相当)のBASF AG社製Basonat(登録商標)HI100=21.5%から22.5%のNCO含有量を有するヘキサメチレンジイソシアネートの市販イソシアヌレート(DIN EN ISO 11909)、
147.422g(0.77当量のイソシアネート基に相当)のBASF AG社製Basonat(登録商標)HB100=22%から23%のNCO含有量を有するヘキサメチレンジイソシアネートの市販ビウレット(DIN EN ISO 11909)、
124.994g(0.51当量のイソシアネート基に相当)のDegussa社製Vestanat(登録商標)T1890=11.7%から12.3%のNCO含有量を有するイソホロンジイソシアネートの市販イソシアヌレート(DIN EN ISO 11909)
131.378gの2−ヒドロキシエチルアクリレート(1.13当量の水酸基に相当)
0.328gのヒドロキノンモノメチルエーテル(0.05%固体)
0.655gの1,6−ジ−tert−ブチル−パラ−クレゾール(0.1%固体)
メチルエチルケトン (70%固体)
0.066gのジブチルスズジラウレート(0.01%固体)
4.500gのメタノール(0.14当量の水酸基に相当)
このようにして得られた成分 (KK1)は、以下の特徴を有する:
・1分子あたり平均4.6個のエチレン性不飽和二重結合
・1000gのウレタンアクリレート固体あたり1.74molの二重結合という二重結合含有量
・1分子あたり平均2.2個の分岐点
・ウレタンアクリレートの固体含有量に基づいて25質量%の環状構造要素。
【0221】
この成分(KK)を使って、記述に含まれる情報に従って、143.00質量部の成分(KK)の上記有機溶液(メチルエチルケトン中70%)を適切な攪拌容器に充填することにより、混合物(M)を製造した。
【0222】
初期装填に30分間かけて、室温において攪拌しながら以下のものの混合物を添加した:1.0質量部のTinuvin(登録商標)292(市販HALS光安定剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートおよびメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート)の混合物、2.4質量部の市販光安定剤溶液Tinuvin(登録商標)400(市販光安定剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンおよび2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシ−プロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの混合物、1−メトキシ−2−プロパノール中85%強度)、0.8質量部のLucirin(登録商標)TPO−L(市販光開始剤、BASF Aktiengesellschaft製、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート)、2.40質量部のIrgacure(登録商標)184(市販光開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、アセトン中3.0部の80%強度溶液の形で使用、ならびに0.2 質量部の市販ポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン(7/2キシレン/モノフェニルグリコールByk(登録商標)306(Byk Chemie製)中1.7部のポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサンの市販12.5%強度溶液の形で使用)。そして、これを、3−ブトキシ−2−プロパノールで48%の固体含有量に調節した。続いて、得られた混合物を室温で30分間攪拌した。
【0223】
損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比を決定するために、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、Coatema GmbH(Dormagen、ドイツ)製ラインコーターを使ってナイフコーターにより、200μmの湿潤層厚において混合物(M)をナイフコーティングした。次いで、コーティングされたフィルムをフラッシュオフトンネル中に0.2m/分の速度で通す。ここで、それを25℃の温度および65%の相対湿度で20分間滞留する。引き続き、そのコーティングフィルムを119℃のオーブン温度で15分間乾燥する。その後、乾燥したコーティングをスクレーパーによりコートされたフィルムから擦り取り、レオロジー試験のために次に送る。
【0224】
その測定は、10s−1の角振動数および0.1%の振幅を有するPhysica製MCR300装置(プレート/プレート測定システム、直径25mm)を使って行う。レオロジー測定のための加熱速度は、毎分2℃である。
【0225】
このようにして決定される損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比は、20℃の温度において66である。
【0226】
ゴム弾性領域における貯蔵弾性率E(ME)’は、ポリプロピレンに混合物(M)を塗布し、それを完全に架橋することにより決定する。測定のために使われたフリーフィルムの層厚は、一般的に40±10μmである。この場合の加熱速度は、毎分2℃である。測定は、Rheometrics Scientific社製DMTA V装置を使って、1Hzの周波数および0.2%の振幅で行なうことができる。
【0227】
ゴム弾性領域における貯蔵弾性率E(ME)’は、2.5×107.0Paである。
【0228】
UV硬化性コーティング組成物(K1)の製造
上記の混合物(M)をコーティング組成物(K1)として直接使用した。
【0229】
コーティングされた熱可塑性支持シート1の製造
使用された支持シートは、800μmの厚さのLuran(登録商標)S778TE(BASF Aktiengesellschaft製)の熱可塑性フィルムであった。コ−ティングされた支持シートの表面を0.5kwにおけるコロナ前処理に供した。
【0230】
一方の側において金属水性ベースコート材料(色合い:「シルバーメタリック」)でフィルムにコーティングした。37cm幅を有する箱形のコーティングバーを使って、ベースコート材料を0.5m/分のベルトスピードで支持シートに塗布した。0.2m/秒の緩やかな気流、21±1℃の一定の温度および65%の一定の相対湿度で、塗布を行なった。結果として得られた湿潤ベースコート1aの厚さは、100μmであった。湿潤ベースコート1aをこれらの条件下で3分間フラッシュオフし、次いで乾燥し、非公開ドイツ国特許出願(出願番号102004010787.4)の28頁4から23行に記載されているように、ベースコート層に基づいてx=4質量%の残留揮発成分含有量とした。約20μmの厚さを有する結果として得られたコンディショニング済みベースコート層1bを、チルロールを使って<30℃の表面温度に調節した。
【0231】
同じベースコート材料をコンディショニングおよび熱処理済みのベースコート層1bに、
・噴出速度:100ml/分
・気圧:噴霧空気:2.5bar、ホーン空気(horn air):2.5bar
・ノズル移動速度:噴霧ジェットの60%オーバーラップを生じさせるのに十分な高さ
・ノズル−フィルム間の距離:30cm
の条件下で空気圧噴霧塗布のためのシステムを使って塗布した。
【0232】
0.5m/秒の緩やかな気流(フィルム上における水平流衝突)、21±1℃の一定の温度および65±5%の一定の相対湿度で、塗布を行なった。結果として得られた湿潤ベースコート層2aの厚さは、50±2μmであった。ベースコート2aをこれらの条件下で3分間フラッシュオフし、次いで乾燥し、非公開ドイツ国特許出願(出願番号102004010787.4)の29頁12から30行に記載されているように、ベースコート層に基づいてy=4質量%の残留揮発成分含有量とした。ここでの空気温度は90℃であり、大気湿度は10g/分、そして空気の速度は10m/秒であった。約10μmの厚さを有する得られたコンディショニング済みベースコート層2bを、チルロールを使って<30℃の表面温度に調節した。
【0233】
37cm幅を有する箱形のコーティングバーを使って、上述のコーティングされた成分をコンディショニングおよび熱処理済みベースコート層2bに塗布した。0.2m/秒の緩やかな気流、21±1℃の一定の温度および65±5%の一定の相対湿度で、塗布を行なった。結果として得られた湿潤クリアコート3aの厚さは、120μmであった。湿潤クリアコート3aを上記の条件下で6分間フラッシュオフし、次いで乾燥し、未公開のドイツ国特許出願(出願番号102004010787.4)の30頁10から29行に記載されているように、クリアコート層に基づいてz=2.5質量%の残留揮発成分含有量とした。オーブン中の空気温度は、すべての乾燥段階に対して119℃であった。約60μmの厚さを有し、乾燥しているが完全に架橋していない結果として得られたコーティング(KT)を、チルロールを使って<30℃の表面温度に調節し、そしてDE−A−10335620実施例1に記載のポリプロピレン保護フィルム(市販品GH−X527、Bischof+Klein製、Lengerich、ドイツ)でコーティングした。
【0234】
結果として得られた多層シート(F)をロールに巻き、そしてさらに使用する前にその形状で保存した。
【0235】
ポリマー成形部材の製造
多層シート(F)を予め成型した。続いて、まだ完全に架橋していない透明コーティングを、保護フィルムを通して紫外線で部分的に架橋させた。使われたポジティブツール(positive tool)は、立方体であった。結果として得られた前成型部分を射出型に挿入した。型を密閉し、そしてその立方体を液体ポリマー材料でバック射出成型(injection backmolded)した。得られたポリマー成形部材を冷却し、そして型から取り出した。続いて、部分架橋された透明コーティングをUV照射で完全に架橋させた。その後、保護フィルムを取り除いた。
【0236】
このように製造されたポリマー成形部材は、欠損のない高光沢表面を有していた。
【0237】
実施例2
ウレタンアクリレートの有機溶液の製造(成分(KK2)の有機溶液)
4−ヒドロキシブチルアクリレートおよびペンタエリトリトールトリ/テトラアクリレート中に水素化ビスフェノールAを60℃において攪拌しながら粗く分散させることにより、下記の構築ブロック成分からウレタンアクリレートを製造した。この懸濁液に、イソシアネート、ヒドロキノンモノメチルエーテル、1,6−ジ−テルト−ブチル−パラ−クレゾールおよび酢酸ブチルを加えた。ジブチルスズジラウレートを添加した後、混合物は昇温した。反応混合物のNCO値に実質上変化がなくなるまで、75℃の内部温度において攪拌を数時間行なった。適切な場合、反応後に依然存在している遊離イソシアネート基を、少量のメタノールを加えることにより反応させた。
【0238】
227.7gの水素化ビスフェノールA(1.89当量の水酸基に相当)、
178.2gの4−ヒドロキシブチルアクリレート(1.24当量の水酸基に相当)
701.3gのペンタエリトリトールトリ/テトラアクリレート(OH数=110mg(KOH)/g、1.37当量の水酸基に相当)
325.69 g(1.71当量のイソシアネート基に相当)のBASF AG社製Basonat(登録商標)HI100=21.5%から22.5%のNCO含有量を有するヘキサメチレンジイソシアネートの市販イソシアヌレート(DIN EN ISO 11909)、
325.69 g(1.74当量のイソシアネート基に相当)のBASF AG社製Basonat(登録商標)HB100=22%から23%のNCO含有量を有するヘキサメチレンジイソシアネートの市販ビウレット(DIN EN ISO 11909)、
147.38(1.13当量のイソシアネート基に相当)のBayer MaterialScience AG社製Desmodur(登録商標)W=NCO含有量≧31.8%を有する市販ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
0.953gのヒドロキノンモノメチルエーテル(0.05%固体)
1.906gの1,6−ジ−テルト−ブチル−パラ−クレゾール(0.1%固体)
816.84gの酢酸ブチル(70%固体に相当)
0.7624gのジブチルスズジラウレート(0.04%固体)
17.1gのメタノール(0.53当量の水酸基に相当)。
【0239】
このようにして得られた成分(KK2)は、
・1分子あたり平均7.1個のエチレン性不飽和二重結合
・1000gのウレタンアクリレート固体あたり2.92molの二重結合という二重結合含有量
・1分子あたり平均1.5個の分岐点
ウレタンアクリレートの固体含有量に基づいて16質量%の環状構造要素。
という特徴を有する。
【0240】
UV硬化性コーティング組成物(K2)の製造
143.00質量部のウレタンアクリレート(KK2)の上記有機溶液で、適切な攪拌容器を充填した。初期装填に30分間かけて、室温において連続攪拌しながら、1.0質量部のTinuvin(登録商標)292(市販HALS光安定剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートおよびメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートの混合物系)、2.35質量部の市販光安定剤溶液Tinuvin(登録商標)400(市販光安定剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンおよび2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシ−プロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル−1,3,5−トリアジンの混合物の1−メトキシ−2−プロパノール中85%強度溶液)、0.8質量部のLucirin(登録商標)TPO−L(市販光開始剤、BASF Aktiengesellschaft製、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート系)、2.40質量部のIrgacure(登録商標)184(市販光開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン系)、アセトン中3.0部の80%強度溶液の形で使用、ならびに0.40質量部の市販ポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン(=Byk(登録商標)R325、Byk Chemie製市販添加剤)の市販の52%強度溶液からなる混合物を添加した。そして、これを、1−メトキシプロプ−2−イルで51%の固体含有量に調節した。続いて、得られた混合物を室温において30分間攪拌した。
【0241】
2.2.コーティングされた熱成形シート2の製造
UV硬化性コーティング組成物(K2)を実施例1と同様にして使用し、コーティングを有するシートを製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車構造における使用のための成形部材を製造するための方法であって、
I.コーティング(B)を有するシート(F)が、以下のように製造され、その際、熱可塑性支持シート(T)の必要に応じて予め処理された面(T1)に、
1.顔料含有コーティング組成物(P)を塗布し、
2.ラジカル的に架橋可能な成分(KK)を含み、完全架橋した後に透明コーティング(KE)が得られる架橋可能なコーティング組成物(K)を塗布し、
3.ステージ2において塗布されたコーティング組成物(K)を、乾燥および/または部分的に架橋させ、まだ完全に架橋していないコーティング(KT)を得て、
II.ステージIで製造されたシート(F)を、開放された型に挿入し、
III.型を閉じ、面(T1)に面していない熱可塑性支持シート(T)の側(T2)を、液体または柔軟化されたプラスチック材料(KM)と接触させ、そしてポリマー材料を硬化させることができ、
IV.ステージIIIにおいて得られた成形部材を、型から取り出し、
V.架橋可能なコーティング(KT)が、プロセスの過程の任意の時点まで完全に架橋させ、
その際、コーティング組成物(K)は、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)を含有し、該成分は、
(i)1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートを含み、
(ii)1分子あたり平均して1個を超えるエチレン性不飽和二重結合を含み、
(iii)1000から10000g/molの数平均分子量を有し、
(iv)1000gの反応成分(KK)あたり1.0から5.0molの二重結合という二重結合含有量を有し、
(v)1分子あたりに平均して>1個の分岐点を含み、
(vi)それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づいて、5質量%から50質量%の環状構造要素を含み、
(vii)鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族構造要素を含む、成形部材を製造するための方法において、
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、
1.混合物(M)から作り出されたが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)は、5から200の損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比を有し、G(MT)’およびG(MT)"が、毎分2℃の加熱速度および10s−1の角振動数でプレート/プレート測定システムを使ったレオロジー振動測定によって20℃の温度において測定され、
2.混合物(M)から作り出され、完全に架橋している透明コーティング(ME)が、1.0*107.0から8.0*107.0Paの貯蔵弾性率E(ME)’を有し、E(ME)’が、毎分2℃の加熱速度および1Hzの周波数による動的機械熱分析装置により、40μm+/−10μmの層厚を有するフリーの完全架橋フィルム上でゴム弾性領域において測定される
ような量において水素結合形成構造要素を含み、そして
混合物(M)が、メチルエチルケトン中70%で100部の成分(KK)(143部の70%強度溶液に対応)と、
(3.0部の80%強度アセトン溶液の形で使用される)2.4部の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および0.8部のエチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとの1.0部の混合物、および2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの2.0部の混合物(2.4部の85%強度1−メトキシ−2−プロパノール溶液の形で使用)、0.2部のポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン(7/2キシレン/モノフェニルグリコール中の市販の慣例的な溶液の1.7部の溶液として使用、12.5%の不揮発性画分を保有)、および70部の3−ブトキシ−2−プロパノールとを混合することによって製造されることを特徴とする方法。
【請求項2】
熱可塑性支持シート(T)の必要に応じて前処理された面(T1)に、
1.顔料含有コーティング組成物(P)を塗布し、
2.ラジカル的に架橋可能な成分(KK)を含み、完全に架橋した後に透明コーティング(KE)が得られる架橋可能なコーティング組成物を塗布し、
3.コーティング組成物(K)を、乾燥させ、透明であるが、まだ完全に架橋していないコーティング(KT)を得ることで製造できるコーティング(B)を含むシート(F)であって、その際、
架橋可能なコーティング組成物(K)は、ラジカル的に架橋可能な成分(KK)を含有し、その成分が、
(i)1つ以上のオリゴウレタン(メタ)アクリレートおよび/または1つ以上のポリウレタン(メタ)アクリレートを含み、
(ii)1分子あたり平均して1個を超えるエチレン性不飽和二重結合を含み、
(iii)1000から10000g/molの数平均分子量を有し、
(iv)1000gの反応成分(KK)あたり1.0から5.0molの二重結合という二重結合含有量を有し、
(v)1分子あたりに平均して>1個の分岐点を含み、
(vi)それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づいて、5質量%から50質量%の環状構造要素を含み、
(vii)鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族構造要素を含むコーティング(B)を含むシート(F)において、
ようなラジカル的に架橋可能な成分(KK)を含有し、
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、
1.混合物(M)から作り出されたが、まだ完全に架橋していない透明コーティング(MT)は、5から200の損失弾性率G(MT)"に対する貯蔵弾性率G(MT)’の比を有し、G(MT)’およびG(MT)"が、毎分2℃の加熱速度および10s−1の角振動数でプレート/プレート測定システムを使ったレオロジー振動測定によって20℃の温度において測定され、
2.混合物(M)から作り出され、完全に架橋している透明コーティング(ME)が、1.0*107.0から8.0*107.0Pa、貯蔵弾性率E(ME)’を有し、E(ME)’が、毎分2℃の加熱速度および1Hzの周波数による動的機械熱分析装置により、40μm+/−10μmの層厚を有するフリーの完全架橋フィルム上でゴム弾性領域において測定されるような量において水素結合形成構造要素を含み、
混合物(M)が、メチルエチルケトン中70%の100部の成分(KK)(143部の70%強度溶液に対応)と、
(3.0部の80%強度アセトン溶液の形で使用される)2.4部の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および0.8部のエチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートとの1.0部の混合物、および2−(4−((2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−(4−((2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ)−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの2.0部の混合物(2.4部の1−メトキシ−2−プロパノール85%強度溶液の形で使用)、0.2部のポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン(7/2キシレン/モノフェニルグリコール中の市販の慣例的な溶液の1.7部の形で使用、12.5%の不揮発性画分を保有)、および70部の3−ブトキシ−2−プロパノールとを混合することによって得られることを特徴とするコーティング(B)を含むシート(F)。
【請求項3】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、
ウレタン基、ビウレット基、アロファネート基、尿素基、カルバメート基、カルボネート基、アミド基、エーテル基、エステル基、OH基、COOH基および/またはイオン基および/またはイオン形成基からなる群から選択される少なくとも1つの水素結合形成構造単位、好ましくはアロファネート基および/またはビウレット基および/またはカルバメート基および/またはアミドおよび/または尿素基からなる群から選択される少なくとも1つの水素結合形成構造単位と共に少なくとも1つのウレタン基を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法または請求項2に記載のシート。
【請求項4】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、1分子あたり2から10.0個の二重結合を含み、および/またはラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、鎖中に4個および/または5個の炭素原子を有する脂肪族構造要素をさらに含むことを特徴とする請求項1または3のいずれかに記載の方法または請求項2または3のいずれかに記載のシート。
【請求項5】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、環状構造要素として、4から8個の環員を有する単環構造要素、および/または7から18個の環員を有する二環構造要素および/または三環構造要素および/または多環構造要素を含み、および/またはそれらの環状構造要素が置換されていることを特徴とする請求項1、3または4のいずれかに記載の方法または請求項2乃至4のいずれかに記載のシート。
【請求項6】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、環状構造要素として、
(i)環状脂肪族構造要素および/または
(ii)へテロ環状構造要素、特に、1環あたりのヘテロ原子数が1から8個および/またはヘテロ原子が窒素および/または酸素および/または硫黄の群から選択されるヘテロ環状構造要素、
および/または
(iii)芳香族構造要素
を含み、
芳香族構造要素の量は、それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づいて、好ましくは10質量%以下であることを特徴とする請求項1または3乃至5のいずれかに記載の方法または請求項2乃至5のいずれかに記載のシート。
【請求項7】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、環状構造要素として、トリシクロデカン環および/またはシクロヘキサン環および/またはイソシアヌレート環および/またはトリアジン環を含み、適切であれば、それらの環状構造要素を置換することが可能である、請求項1または3から6のいずれかに記載の方法または請求項2乃至6のいずれかに記載のシート。
【請求項8】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)は、鎖中に少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族構造要素として、鎖中に6から18個の炭素原子を有する脂肪族構造要素、特にヘキサメチレン鎖を含むことを特徴とする請求項1または3乃至7のいずれかに記載の方法または請求項2乃至7のいずれかに記載のシート。
【請求項9】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)の分岐点が、2個を超える官能性を有するイソシアネート基の使用を介しておよび/または成分(KK)の合成におけるイソシアヌレート環の使用を介して導入される、請求項1または3乃至8のいずれかに記載の方法または請求項2乃至8のいずれかに記載のシート。
【請求項10】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートおよび/またはメチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)および/またはこれらのイソシアネートの対応するイソシアヌレートおよび/またはビウレットおよび/またはアロファネートを使って、および/またはヒドロキシエチルアクリレートおよび/または4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび/またはペンタエリトリチルトリアクリレートおよび/またはイソプロピリデンジシクロヘキサノールを使って製造されていることを特徴とする請求項1または3乃至9のいずれかに記載の方法または請求項2乃至9のいずれかに記載のシート。
【請求項11】
ラジカル的に架橋可能な成分(KK)が、それぞれの場合において成分(KK)の質量に基づいて、5%未満、好ましくは1%未満の検出可能な遊離イソシアネート基を含み、特に、このようなイソシアネート基を実質上含まないことを特徴とする請求項1または3乃至10のいずれかに記載の方法または請求項2乃至10のいずれかに記載のシート。
【請求項12】
溶媒性または水性のコーティング組成物が、顔料含有コーティング組成物(P)として使用されることを特徴とする、請求項1または3乃至11のいずれかに記載の方法または請求項2乃至11のいずれかに記載のシート。
【請求項13】
顔料含有コーティング組成物(P)は、
(I)1つ以上の溶媒および/または水と、
(II)1つ以上の結合剤、好ましくは1つ以上のポリウレタン樹脂および/またはアクリレート樹脂と、
(III)必要に応じて、少なくとも1つの架橋剤と、
(IV)1つ以上の顔料と、
(V)必要に応じて、1つ以上の通例の補助剤および添加剤とを含むことを特徴とする請求項1または3から12のいずれかに記載の方法または請求項2乃至12のいずれかに記載のシート。
【請求項14】
顔料含有コーティング組成物が、非方向性塗布法により単層のみで塗布され、または2以上の層で塗布され、この場合に、これらの層の最後の層が、非方向性塗布法により塗布され、および/または上記シート(F)が深絞りまたは熱成形されているまたはされることを特徴とする、請求項1または3乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
シート(F)が、プロセス工程IIの前に深絞りまたは熱成形されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プラスチック材料(KM)に、請求項2乃至13のいずれかに記載のシート(F)が設けられていることを特徴とする、多層シートが設けられているプラスチック材料(KM)を含む成形部材。
【請求項17】
内装車体部品もしくは外部車体部品として、船舶もしくは航空機製造のための部品として、または家庭用器具もしくは電気器具のための部品として、請求項1または3乃至15のいずれかに記載の方法により製造される成形部材の使用。

【公表番号】特表2008−520406(P2008−520406A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539485(P2007−539485)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011143
【国際公開番号】WO2006/048109
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】