説明

特定の冷却によるアセトンシアンヒドリンおよびその後続製造物の製造方法

本発明は、全般的には、A.)アセトンとシアン化水素酸を反応器内で接触させて反応混合物を得、前記反応混合物を循環させ、アセトンシアンヒドリンを得る工程と、B.)反応混合物を冷却器の冷却帯に通すことによって反応混合物の少なくとも一部を冷却する工程であって、前記冷却器が1つの冷却エレメントまたは少なくとも2つの冷却エレメントを含む工程と、C.)製造されたアセトンシアンヒドリンの少なくとも一部を反応器から分離する工程とを含む、アセトンシアンヒドリンを製造するための方法であって、冷却器の全内部容量に対する冷却器の冷却帯の容量が、冷却器の冷却エレメントまたは少なくとも2つの冷却エレメントの容量より大きい方法に関する。本発明は、また、メタクリル酸アルキルエステルを製造するための方法、メタクリル酸を製造するための方法、メタクリル酸アルキルエステルを製造するためのデバイス、少なくとも部分的にメタクリル酸アルキルエステルを基礎とするポリマーを製造するための方法、本発明による方法によって得られるメタクリル酸アルキルエステルの化学製造物における使用、および本発明による方法によって得られるメタクリル酸アルキルエステルを基礎とする化学製造物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、アセトンシアノヒドリンを製造するための方法、メタクリル酸アルキルを製造するための方法、メタクリル酸を製造するための方法、メタクリル酸アルキルを製造するための装置、少なくとも部分的にメタクリル酸アルキルをベースとしたポリマーを製造するための方法、本発明による方法から得られるメタクリル酸アルキルの化学製造物における使用、および本発明による方法によって得られるメタクリル酸アルキルを基礎とする化学製造物に関する。
【0002】
アセトンシアノヒドリンは、メタクリル酸およびメタクリル酸アルキルの製造における重要な出発成分の1つである。これらの2つの化合物は、多くのバルクプラスチックに非常に重要であり、これらのバルクプラスチックの使用量がますます増加する結果としてその需要が絶えず増加しているモノマーであり、そのためアセトンシアンヒドリン出発材料もますます多くの量が必要とされる。アセトンシアノヒドリンは、例えば、シアン化水素酸およびアセトンから、さもなければアセトンおよびシアン化水素酸塩から得られる。アセトンと比較して、シアン化水素酸およびシアン化水素酸塩は、多大な注意を払って、すなわち高レベルの技術的安全基準を用いて取り扱わなければならない非常に毒性の強い化合物である。これらの安全基準を商業的に許容される限度内に維持するために、アセトンシアノヒドリンの製造における反応の実施が特に重要である。反応物質濃度を最低限に抑えながら高収率を得ることへの一般的興味に加えて、ここでのさらなる要因は、アセトンシアノヒドリンをこの反応の生成物とすると、さらなる処理のためのアセトンシアノヒドリンの後処理において、この反応の反応物質として最小量のシアン化水素酸が存在するという安全上の興味である。
【0003】
先行技術において、欧州特許第1371632A1号は、例えば、シアン化組成物を使用する、アセトンシアノヒドリンを製造するための方法によって、この安全面に取り組んでいる。この手順は、特に、シアン化水素酸を製造するためのプラントと、アセトンシアノヒドリンを製造するためのプラントとが同一の場所に存在するため、製造されたシアン化水素酸を、アセトンシアノヒドリンを製造するためのプラントに直接供給できる場合のシアン化中間体により不利である。
【0004】
したがって、この文脈において、先行技術による欠点を少なくとも部分的に、またはさらに完全に解消することが一般的に望まれていた。
【0005】
最大限の変換率によって、特にアセトンシアノヒドリンの精製において遵守しなければならない安全基準をできるだけ低く維持することが本発明のさらなる目的であった。
【0006】
最小限の副産物を形成する、アセトンシアノヒドリンを製造するための方法を提供することが本発明のさらなる目的であった。
【0007】
加えて、メタクリル酸またはメタクリル酸アルキルの製造を全体的に向上させることで、それを基礎とするポリマーに至るより安価な経路を得ることが本発明の目的であった。
【0008】
本発明の好適な実施態様を構成するカテゴリー形成請求項、それに従属する下位請求項の主題によって、上記目的の少なくとも1つの解決に貢献する。
【0009】
したがって、本発明は、
A.アセトンとシアン化水素酸を反応器内で接触させて反応混合物を得、反応混合物を循環させてアセトンシアンヒドリンを得る工程と、
B.各々の場合に反応混合物に対して少なくとも数質量%、好ましくは少なくとも10質量%、特に50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%の反応混合物を、冷却器の冷却領域に流すことによって冷却する工程であって、冷却器が1つの冷却エレメントおよび少なくとも2つの冷却エレメントを含む工程と、
C.反応器から得られたアセトンシアノヒドリンの少なくとも一部を排出する工程とを含む、アセトンシアンヒドリンを製造するための方法であって、
冷却器の全内部容量に対する冷却器の冷却領域の容量が、冷却器の冷却エレメントまたは少なくとも2つの冷却エレメント容量より大きい方法に関する。
【0010】
反応混合物を、好ましくは、反応混合物が循環して、好ましくは管系を通じて輸送されるいわゆるループ型反応器で循環させることができる。第1に、ループ型反応器の一部を直接形成する冷却領域によって、反応混合物を冷却領域に流すことができる。しかし、別の実施態様において、ループ型反応器の回路とともに、ループ型反応器内を循環する反応混合物の一部をループ型反応器に平行に流す冷却領域を設けることが可能である。概して、反応混合物は、約30から約700m/hの範囲、好ましくは約100から約500m/hの範囲、より好ましくは約150から約400m/hの範囲の容量流量で循環する。一方、冷却領域を流れる反応混合物の流量は、上記と同じ流量範囲内であってよい。さらに、特定量の反応混合物を約10から50回の範囲、好ましくは約20から40回の範囲、より好ましくは約25から35回の範囲内で冷却領域に流すことが好適であり得る。冷却領域において、反応混合物は、約0から約50℃の範囲、好ましくは約20から45℃の範囲、より好ましくは約30から40℃の範囲の温度になる。反応混合物を実質的に恒温に維持することが望ましい。少なくとも冷却領域において、約0.1から約10バールの範囲、好ましくは約0.5から約5バールの範囲、より好ましくは約0.9から1.5バールの範囲の圧力が存在することも好適である。少なくとも冷却領域において、約5から約9の範囲、好ましくは6から約8の範囲、より好ましくは約6.5から約7.5の範囲のpHが存在することも好適である。
【0011】
概して、冷却領域は、当業者に既知であり、好適であると思われる任意の構成を有することができる。例えば、冷却器の冷却領域は、冷却する媒体と、そこの反応混合物と、冷却エレメントに存在する冷却媒体との間の熱伝達を保証する1つまたは少なくとも2つの冷却エレメントをしばしば有する。冷却器の全内部容量は、一般には、冷却器の製造者によって指定された容量を指す。しばしば、この容量は、熱伝達が生じる領域の容量である。通常、冷却器に至る管および冷却器から離れる管は、冷却機能を有さないため、冷却器の全内部容量の一部ではない。冷却領域の容量は、通常は、冷却領域に設けられた冷却エレメントまたはそこに設けられた複数の冷却エレメントの容量を冷却器の全内部容量から引くことによって求められる。その容量の測定において冷却エレメントの部品も考慮されるため、1つの冷却エレメントの容量は、この冷却エレメントの冷媒容量より一般に大きい。本発明によれば、冷却領域の容量は、冷却器の冷却エレメントまたは複数の冷却エレメントの容量の少なくとも約1.01倍、好ましくは少なくとも約1.1倍、より好ましくは少なくとも約1.5倍であることが好適であり得る。
【0012】
本発明による方法において、少なくとも一部の反応混合物は、少なくとも冷却中に、主流れ方向と異なる冷却器流れ方向に流れることも好適である。主流れ方向は、反応混合物の冷却器への入口点と、反応混合物の冷却器からの出口点との間の軸として求められる。本発明によれば、反応混合物の少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約20%、特に少なくとも約40%が、冷却中に、冷却器内の主流れ方向以外の冷却器流れ方向に流れることが好適であり得る。本発明によれば、冷却領域に供給される反応混合物の好ましくは少なくとも10容量%、特に少なくとも20容量%、より好ましくは少なくとも50容量%の少なくとも1つの部分流を、冷却領域を制限する外壁上を誘導通過させることも可能である。この外壁上を通る誘導通過は、好ましくは、反応混合物の冷却領域への入口から反応混合物の冷却領域からの出口まで好ましくは螺旋形に伸びる循環流によって実施される。これらの流れ状態を、例えば、フクシンなどの染料を糸に加えることによって実際の状況で視覚化することもできるし、好適なコンピュータプログラムおよび数学モデルを利用してシミュレートすることもできる。
【0013】
本発明によれば、反応混合物を偏向させることによって冷却器流れ方向を得ることも好適である。また、ここでは、冷却器に設けられた、または冷却器に接続された1つまたは少なくとも2つの偏向手段によって反応混合物を偏向させることが好適である。概して、これらの偏向手段を冷却器のすべての領域に設けるか、または冷却器に接続することができる。偏向手段を、主として、反応混合物が比較的大きな流速で冷却器に入る冷却器の領域に配置することも好適であり得る。その後、偏向手段の密度は、反応混合物の入口領域から反応混合物の冷却器からの出口領域にかけて減少する。
【0014】
基本的に、有用な偏向手段は、当業者に既知であり、好適であると思われるすべてのデバイスである。本発明による特に好適な偏向手段は、注入エレメント(Einstrahlenelement)、撹拌エレメントもしくは衝突エレメント(Prallelement)、またはそれらの少なくとも2つの組合せである。
【0015】
有用な注入エレメントとしては、当業者に既知であり、反応混合物を注入するすべてのデバイスが挙げられる。これらは、第1に受動性噴流としての反応混合物の圧力により、第2に活性噴流または同様のデバイスにより、反応混合物を冷却領域内に分配することができる。有用な撹拌手段は同様に、パドル撹拌機またはスクリュー撹拌機など、当業者に既知であり、好適であると思われるすべてのデバイスである。有用な衝突エレメントも基本的に当業者に既知のすべての好適なデバイスである。これらは、例えば、混合および分配のための固定ミキサーで知られるプレートなどの特に平坦な内部構造である。偏向手段を冷却領域に設けるのが好適である。したがって、衝突エレメントを冷却領域の壁上、もしくは冷却エレメントの壁上、またはその両方に取りつけることができる。
【0016】
有用な冷却エレメントは、当業者に一般的に既知であり、好適であると思われるすべての冷却エレメントである。ここでは、冷却エレメントを、冷媒の流れを含む長形中空体とすることができる。冷却エレメントは、棒状または板状の構成を有することができる。したがって、管束もしくはプレート冷却器、またはそれら2つの組合せが有用であり、特に管束冷却器が好ましい。管束冷却器において、好ましくは衝突エレメントとして設計された偏向手段が冷却器の外壁上に存在し、冷却領域内に伸びることも好適である。
【0017】
本発明の方法において、アセトンシアノヒドリンへの最大変換率で最小量の副産物が形成されるように、冷却器における反応混合物の滞留時間を選択することも好適である。例えば、冷却器における反応混合物の滞留時間は、約0.1から約2時間の範囲、好ましくは約0.2から約1.5時間の範囲、より好ましくは約0.3から約1時間の範囲である。
【0018】
本発明は、さらに、メタクリル酸アルキルを製造するための方法であって、
a.本発明による方法によってアセトンシアノヒドリンを製造する工程と、
b.アセトンシアノヒドリンと無機酸を接触させて、メタクリルアミドを得る工程と、
c.メタクリルアミドとアルコールを接触させて、メタクリル酸アルキルを得る工程と、
d.メタクリル酸アルキルを場合によって精製する工程とを含む方法に関する。
【0019】
加えて、本発明は、メタクリル酸を製造するための方法であって、
α)本発明による方法によってアセトンシアノヒドリンを製造する工程と、
β)アセトンシアノヒドリンと無機酸を接触させて、メタクリルアミドを得る工程と、
γ)メタクリルアミドと水を反応させて、メタクリル酸を与える工程とを含む方法に関する。
【0020】
本発明は、さらに、流体を誘導する形で互いに接続された、
−アセトンシアノヒドリンを製造するためのプラントエレメントと、その後に
−メタクリルアミドを製造するためのプラントエレメントと、その後に
−メタクリル酸アルキルを製造するためのプラントエレメントと、場合によってその後に
−メタクリル酸アルキルを精製するためのプラントエレメントと、場合によってその後に
−重合のためのプラントエレメントと、場合によってその後に
−仕上げのためのプラント部品とを含む、メタクリル酸アルキルを製造するための装置であって、
アセトンシアノヒドリンを製造するためのプラントエレメントは、冷却器を備えたループ型反応器を含み、冷却器は、そこに流すことができる冷却領域、および冷却エレメントを含む装置に関する。流体を誘導する形で接続されたとは、この文脈において、気体、液体および気体−液体混合物または他の自由流動物質を誘導できることを意味する。冷却器または冷却領域、および冷却エレメントまたは複数の冷却エレメントの好適な実施態様に関しては、本文におけるこの対象に関する記述が参照される。
【0021】
本発明によれば、メタクリル酸アルキルを製造するための本発明による方法を発明の装置で実施することも好適である。
【0022】
本発明は、また、少なくとも一部にメタクリル酸アルキルを基礎とするポリマーを製造するための方法であって、
A1)本発明による方法によってメタクリル酸アルキルを製造する工程と、
A2)メタクリル酸アルキル、および場合によってコモノマーを重合する工程と、
A3)メタクリル酸アルキルを後処理する工程とを含む方法に関する。
【0023】
有用なコモノマーとしては、当業者に既知であり、好適であると思われるすべてのコモノマーが挙げられ、ラジカル重合性モノマーが特に好ましい。これらのなかでは特に、スチレン、アクリル酸ブチルもしくはアクリロニトリル、アクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルが挙げられるべきである。
【0024】
重合を溶液重合、ビーズ重合、乳化重合または懸濁重合として、さもなければ塊状重合として実施することができる。ポリマーは、例えば、沈殿剤としてのポリマーに対する非溶媒中で溶媒含有ポリマーを沈殿させることによって後処理される。例えば、溶媒としてのアセトンおよびポリメタクリル酸メチルを含むポリマーが、メタノールおよび水で構成される沈殿剤中で沈殿され、沈殿剤から分離され、乾燥される。
【0025】
加えて、本発明は、本発明による方法によって得られる超高純度メタクリル酸アルキルの好適な化学製品としての繊維、フィルム、塗料、成形組成物、成形体、製紙助剤、皮革補助剤、凝集剤および穿孔添加剤における使用に関する。
【0026】
加えて、本発明は、本発明による方法によって得られる純メタクリル酸エステルを基礎とする好適な化学製品としての繊維、フィルム、塗料、成形組成物、成形体、製紙助剤、皮革補助剤、凝集剤および穿孔添加剤に関する。
【0027】
基本的に本発明と個々に、あるいは記載の方法エレメントの2つ以上のアンサンブルとして組み合わせることができる様々な方法エレメントおよびプラント部品を以降に説明する。場合によっては、本文中に示されている方法エレメントと本発明とを、それらを全体的に、メタクリル酸のエステルを製造するための方法またはメタクリル酸を製造するための方法が得られるよう組み合わせると有利であり得る。しかし、本発明の主題そのものを別の分野で使用するか、またはここに示されている方法エレメントのいくつかと組み合わせるだけで、有利な効果を通常達成できることも指摘されるべきである。
【0028】
アセトンシアノヒドリンの製造
この方法エレメントにおいて、アセトンシアノヒドリンは、周知の方法によって製造される(例えば、Ullmann‘s Enzyklopaedie der technischen Chemie、4th Edition、Volume 7参照)。反応物質として、アセトンおよびシアン化水素酸がしばしば用いられる。この反応は発熱反応である。この反応で形成されたアセトンシアノヒドリンの分解を防止するために、典型的には、反応熱が好適な装置によって除去される。反応を、基本的に、バッチ方法として、または連続方法として実施することができる。連続方法が好適なときは、反応は、適切に装備されたループ型反応器内でしばしば実施される。
【0029】
所望の製造物を高収率でもたらす方法の主たる特徴は、しばしば、反応生成物を十分な反応時間で冷却させ、反応平衡を反応生成物の方向にシフトさせることである。加えて、出発材料を与えるための後の回収中の分解を防止するために、全体収率に有利になるように、反応生成物を適切な安定剤としばしば混合する。
【0030】
アセトンとシアン化水素酸反応物質の混合を、基本的には、実質的に任意の方法で実施することができる。混合方法は、特に、例えばバッチ反応器におけるバッチ方式が選択されるか、または例えばループ型反応器における連続方式が選択されるかに応じて決まる。
【0031】
基本的に、洗浄塔を有する貯留容器を介したアセトンの反応物への供給が有利であり得る。したがって、アセトンおよびシアン化水素酸を含む廃棄空気を誘導する通気ラインを、例えば、この貯留容器を通じて誘導することができる。貯留容器に取りつけられた洗浄塔において、貯留容器から出る廃棄空気をアセトンで洗浄することができ、それによってシアン化水素酸が廃棄空気から除去され、方法に返送される。この目的のために、例えば、貯留容器から反応物に導入されるアセトンの量の一部が部分流で冷却器を通じて、好ましくはブライン冷却器を通じて、洗浄塔の上部に誘導されるため、所望の結果が達成される。
【0032】
製造される最終産物の量に応じて、アセトンを2つ以上の貯留容器から反応物に供給することが有利であり得る。この文脈において、2つ以上の貯留容器の各々が対応する洗浄塔を有することが可能である。しかし、多くの場合、貯留容器のうち1つのみが対応する洗浄塔を備えていれば十分である。しかし、この場合、廃棄空気を誘導し、アセトンおよびシアン化水素酸を輸送できる、対応するラインを、この容器を通じて、またはこの洗浄塔を通じて誘導することがしばしば望ましい。
【0033】
貯留容器におけるアセトンの温度は、基本的には、アセトンが適温で液体状態であれば、実質的に任意の範囲であってよい。しかし、貯留容器における温度は、有利には、約0から約20℃である。
【0034】
洗浄塔において、洗浄に使用されるアセトンは、ブラインを用いた適切な冷却器、例えば、プレート冷却器によって約0から約10℃の温度まで冷却される。したがって、洗浄塔に入るアセトンの温度は、好ましくは例えば約2から約6℃である。
【0035】
反応に必要とされるシアン化水素酸を液体の形状または気体の形状で反応器に導入することができる。それは、例えば、BMA方法による、またはアンドリュッソー方法による粗製ガスであってよい。
【0036】
例えば適切な冷却ブラインを使用することによって、シアン化水素を例えば液状化することができる。液状化シアン化水素酸の代わりに、コーキングオーブンガスを使用することができる。例えば、シアン化水素含有コーキングオーブンガスを、カリで洗浄後、10%の水を含むアセトンと連続的に逆流させて洗浄し、アセトンシアノヒドリンが得られる反応を縦列接続された2つの気体洗浄カラムにて塩基触媒の存在下で実施することができる。
【0037】
さらなる実施態様において、シアン化水素および不活性ガスを含む気体混合物、特にBMA方法による、またはアンドリュッソー方法による粗製ガスとアセトンとを、気体−液体反応器内で塩基触媒およびアセトンシアノヒドリンの存在下で反応させることができる。
【0038】
ここに記載されている方法において、BMA粗製ガスまたはアンドリュッソー粗製ガスを使用することが好ましい。シアン化水素を製造するための上記の慣習的な方法から得られる気体混合物をそのまま、または酸洗浄後に使用することができる。実質的にシアン化水素酸および水素がメタンおよびアンモニアから形成されるBMA方法による粗製ガスは、典型的には、22.9容量%のHCN、71.8容量%のH2、2.5容量%のNH3、1.1容量%のN2、1.7容量%のCH4を含む。既知のアンドリュッソー方法において、シアン化水素酸および水は、メタンおよびアンモニアおよび大気中の酸素から形成される。アンドリュッソー方法の粗製ガスは、酸素が酸素源として使用されるとき、典型的には、8容量%のHCN、22容量%のH2O、46.5容量%のN2、15容量%のH2、5容量%のCO、2.5容量%のNH3、ならびにそれぞれ0.5容量%のCH4およびCO2を含む。
【0039】
BMA方法またはアンドリュッソー方法による非酸洗浄粗製ガスが使用されると、粗製ガスに存在するアンモニアは、反応のための触媒としてしばしば作用する。粗製ガスに存在するアンモニアは、触媒として必要な量をしばしば超えるため、安定化に使用される硫酸の大きな損失をもたらし得る、そこからアンモニアを除去するため、当該粗製ガスに酸洗浄がしばしば施される。しかし、当該酸洗浄粗製ガスが使用されるときには、好適な塩基触媒を触媒量で反応器に加えることが必要である。基本的に、既知の無機または有機塩基性化合物は、触媒として機能することができる。
【0040】
気体もしくは液体の形状、またはシアン化水素を含む基体混合物の形状のシアン化水素、およびアセトンが、連続式にループ型反応器に継続的に供給される。この場合、ループ型反応器は、アセトンを供給する少なくとも1つの手段または2つ以上の当該手段、液体状もしくは気体状のシアン化水素酸を供給する少なくとも1つの手段または2つ以上の当該手段、および触媒を供給する少なくとも1つの手段を含む。
【0041】
好適な触媒は、基本的には、アセトンシアノヒドリンを得るためのアセトンとシアン化水素酸との反応を触媒できるアンモニア、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液などの任意のアルカリ化合物である。使用する触媒が有機触媒、特にアミンであれば有利であることも判明した。好適な例は、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミンおよびトリ−n−プロピルアミン等の二級または三級アミンである。
【0042】
記載の方法エレメントに使用可能なループ型反応器は、少なくとも1つのポンプまたは2つ以上のポンプ、および少なくとも1つの混合装置または2つ以上の当該混合装置をさらに含む。
【0043】
好適なポンプは、基本的には、ループ型反応器における反応混合物の循環を保証するのに好適なすべてのポンプである。
【0044】
好適な混合装置は、可動のエレメントを備えた混合装置、および不動の流動抵抗が設けられたいわゆる固定ミキサーの両方である。固定ミキサーを使用する場合、好適な例は、機能の有意な制限を伴わずに、動作条件下で少なくとも約10バール、例えば少なくとも約15バールまたは少なくとも約20バールの動作伝達を可能にするミキサーである。適切なミキサーは、プラスチックまたは金属からなっていてもよい。好適なプラスチックは、例えば、PVC、PP;HDPE、PVDF、PVAまたはPTFEである。金属ミキサーは、例えば、ニッケル合金、ジルコニウムおよびチタン等からなっていてもよい。同様に好適なのは、例えば、角形ミキサーである。
【0045】
触媒は、ループ型反応器の好ましくはポンプの下流、およびループ型反応器に存在する混合エレメントの上流に加えられる。記載の反応において、触媒は、例えば、全反応が8を超えないpH、特に約7.5または約7を超えないpHで実施されるような量で使用される。反応におけるpHが約6.5から約7.5、例えば約6.8から約7.2の範囲内であれば好適であり得る。
【0046】
触媒をループ型反応器のポンプの下流および混合装置の上流に加える代わりに、記載の方法において、触媒をアセトンとともにループ型反応器に供給することも可能である。そのような場合、ループ型反応器への供給前のアセトンと触媒の適切な混合の確保が有利であり得る。例えば、移動部品を有するミキサーの使用によって、または固定ミキサーの使用によって、適切な混合を実施することができる。
【0047】
ループ型反応器における連続方法が記載の方法における動作方式として選択されるときは、一時的または継続的な分析によって反応混合物の状態を調査することが適切であり得る。適切な場合有利には、反応混合物における状態の変化に迅速に反応することも可能である。また、したがって、例えば、収率の低下を最小限に抑えるため、反応物質における計量を非常に精密に行うことが可能である。
【0048】
例えば、反応器ループにおけるサンプリングによって対応する分析を実施することができる。好適な分析法は、例えば、pH測定、発熱の測定、好適な分光方法による反応混合物の組成の測定である。
【0049】
特に、変換の監視、品質面および安全性において、反応混合物から除去された熱を介して反応混合物における変換率を測定し、理論的に放出された熱と比較することが有用であることが見いだされた。
【0050】
ループ型反応器が好適に選択される場合は、基本的に、ループ型反応器内に配置された管系内で実際の反応を実施することができる。しかし、反応は発熱反応であるため、収率の低下を回避するために、十分な冷却および反応熱の十分な除去を確実に行うべきである。熱交換器内、好ましくは管束熱交換機内で反応が進行すると有利であることがしばしば見いだされた。製造される製造物の量に応じて、適切な熱交換器の容量を様々に選択することができる。工業規模の方法では、特に約10から約40mの容量を有する熱交換器が、特に好適であることが判明した。好んで使用される管束熱交換器は、液体が流れるジャケット内に液体が流れる管束を有する熱交換器である。チューブ直径、充填密度等に応じて、2つの液体の間の熱交換を適切に調整することができる。基本的には、記載の方法において、反応混合物が、自ら管束における熱交換器を通じて誘導され、反応が管束内で生じて、熱が管束からジャケットの液体へ除去されるように反応を実施することが可能である。
【0051】
しかし、同様に、反応混合物を、熱交換器のジャケットを通じて誘導しながら、冷却に使用する液体をチュ−ブバンドル内で循環させることができ、多くの場合実現可能であることが判明した。多くの場合、より長い滞留時間およびより良好な混合を達成するために、反応混合物を流れ抵抗、好ましくは偏向板によってジャケット内に分配すると有利であることが判明した。
【0052】
ジャケットの容量と管束の容量との比は、反応の設計に応じて、約10:1から約1:10であってよく、ジャケットの容量は、好ましくは、(チューブの内容物に基づく)管束の容量より大きい。
【0053】
反応器からの熱の除去は、反応温度が約25から約45℃、特に約30から約38℃、特に約33から約35℃の範囲内になるように、適切な冷媒、例えば水で調整される。
【0054】
製造物は、ループ型反応器から連続的に除去される。製造物は、上記反応温度内の温度、例えば、約35℃の温度を有する。製造物は、1つ以上の1つ以上の熱交換器によって、特に1つ以上のプレート熱交換器によって冷却される。例えば、ブライン冷却が用いられる。冷却後の製造物の温度は、約0から10℃、特に1から約5℃であるべきである。製造物は、好ましくは、緩衝機能を有する貯蔵容器内に移される。加えて、貯蔵容器内の製造物、例えば、部分流を貯蔵容器から好適な熱交換器、例えばプレート熱交換器に継続的に除去することによってさらに冷却するか、または好適な貯蔵温度に維持することができる。貯蔵容器内で連続的な反応が生じ得ることは全く可能である。
【0055】
製造物を基本的に任意の方法で貯蔵容器内に返送することができる。しかし、場合によっては、貯蔵製造物の対応する混合が貯蔵容器内で生じるように、1つ以上のノズルで構成されたシステムによって製造物を貯蔵容器内に返送するのが有利であることが判明した。
【0056】
製造物は、また、貯蔵容器から安定化容器内に連続的に除去される。製造物は、そこで、好適な酸、例えばH2SO4と混合される。これによって、触媒が不活性化され、反応混合物が約1から約3、特に約2のpHに調整される。好適な酸は、特に硫酸、例えば、H2SO4含有量が約90から約105%、特に約93から約98%の硫酸である。
【0057】
安定化された製造物は、安定化容器から取り出され、精製段階に移される。例えば、1つ以上のノズルで構成されたシステムによって容器の十分な混合が保証されるように、取り出された安定化製造物の一部を安定化容器内に返送することができる。
【0058】
ACHの後処理
本発明に関連して使用することができるさらなる方法エレメントにおいて、前の段階で例えばアセトンとシアン化水素酸の反応から得られたアセトンシアノヒドリンが、蒸留後処理される。安定化された粗製アセトンシアノヒドリンは、対応するカラムによって低沸点成分が除かれる。好適な蒸留方法を、例えば、ただ1つのカラムによって実施することができる。
【0059】
しかし、同様に、粗製アセトンシアノヒドリンの適切な精製において、流下膜式蒸発器とも組み合わされた2つ以上の蒸留カラムの組合せを使用することが可能である。加えて、2つ以上の流下膜式蒸発器、または2つ以上の蒸留カラムを互いに組み合わせることができる。
【0060】
粗製アセトンシアノヒドリンは、一般には約0から約15℃の温度、例えば、約5から約10℃の温度で貯蔵から蒸留に移される。基本的には、粗製アセトンシアノヒドリンをカラムに直接導入することができる。しかし、場合によっては、粗製低温アセトンシアノヒドリンが、熱交換器によって、蒸留により既に精製された製造物の熱の一部を最初に吸収すると有益であることが判明した。したがって、ここに記載の方法のさらなる実施態様において、粗製アセトンシアノヒドリンは、熱交換器によって、約60から80℃の温度に加熱される。
【0061】
アセトンシアノヒドリンは、好ましくは10個を超えるトレイを有する蒸留カラム、あるいは2つ以上の対応する好適な一連の蒸留カラムによる蒸留によって精製される。カラムの底は、好ましくは水蒸気で加熱される。底の温度が140℃の温度を超えなければ有利であることが判明した。底の温度が約130℃を超えないか、または110℃より高くないときに良好な収率および良好な精製が達成された。温度データは、カラムの底の壁温度に基づく。
【0062】
粗製アセトンシアノヒドリンは、カラム本体にカラムの上から3分の1まで供給される。蒸留は、好ましくは減圧下で、好ましくは約50から約900mbar、特に約50から約250mbarの圧力で実施され、50から約150mbarで良好な結果が得られる。
【0063】
カラムの最上部において、気体不純物、特にアセトンおよびシアン化水素酸が除去され、除去された気体物質は、1つの熱交換器、または2つ以上の一連の熱交換器によって冷却される。ここでは、約0から約10℃の温度のブライン冷却を使用することが好ましい。これによって、上記の気体成分に凝縮する機会が与えられる。第1の凝縮段階は、例えば、標準圧力で生じ得る。しかし、この第1の凝縮段階を減圧下で、好ましくは、蒸留において支配的な圧力で実施することも同等に可能であり、場合によっては有利であることが判明した。凝縮物は、冷却された回収容器内に移され、約0から約15℃、特に約5から約10℃の温度で回収される。
【0064】
第1の凝縮工程で凝縮しない気体化合物は、真空ポンプによって減圧チャンバから除去される。基本的に、ここでは任意の真空ポンプを使用することができる。しかし、多くの場合、その設計により、液体不純物をガス流に導入させない真空ポンプを使用するのが有利であることが判明した。したがって、ここでは、例えば乾式運転真空ポンプを使用することが好ましい。
【0065】
ポンプの圧力側で排出されるガス流は、好ましくは、ブラインで約0から約15℃の温度に冷却されたさらなる熱交換器を通じて誘導される。ここで凝縮する成分は、同様に、真空条件下で得られた凝縮物を既に回収した回収容器に回収される。真空ポンプの圧力側で実施される凝縮を、例えば、熱交換器のみならず、縦列または並列に配置された2つ以上の一連の熱交換器で実施することができる。この凝縮工程後に残留する気体物質は、除去され、任意のさらなる利用、例えば熱利用に向けて送られる。
【0066】
同様に、回収された濃縮物を要望に応じてさらに利用することができる。しかし、経済的理由により、凝縮物を、アセトンシアノヒドリンを製造するための反応に返送することが極めて有利であることが判明した。これは、好ましくは、ループ型反応器への出入りを可能にする1つ以上の点において実施される。凝縮物は、それらがアセトンシアノヒドリンの製造を妨害しなければ、基本的に任意の組成を有することができる。しかし、多くの場合、凝縮物の圧倒的な量が、例えば、約2:1から約1:2のモル比、しばしば約1:1の比のアセトンとシアン化水素酸からなる。
【0067】
蒸留カラムの底から得られたアセトンシアノヒドリンは、最初に、第1の熱交換器によって供給された低温粗製アセトンシアノヒドリンによって約40から約80℃の温度に冷却される。続いて、アセトンシアノヒドリンは、少なくとも1つのさらなる熱交換器によって約30から約35℃の温度に冷却され、場合によって中間的に貯蔵される。
【0068】
アミド化
メタクリル酸またはメタクリル酸のエステルの製造に際してしばしば提供されるさらなる方法エレメントにおいて、アセトンシアノヒドリンは、加水分解される。一連の反応後の異なる温度レベルにおいて、これは、製造物としてメタクリルアミドを形成する。
【0069】
該反応は、濃硫酸とアセトンシアノヒドリンの反応によって、当業者に既知の方法で成し遂げられる。該反応は、発熱反応であり、それは、反応熱が系から有利に除去されることを意味する。
【0070】
ここでの反応もバッチ方法または連続方法で実施することができる。後者は、多くの場合に有利であることが判明した。反応が連続方法で実施されるときは、ループ型反応器の使用が有益であることが判明した。反応を例えばただ1つのループ型反応器で実施することができる。しかし、反応を2つ以上の一連のループ型反応器で実施すると有利であり得る。
【0071】
記載の方法において、好適なループ型反応器は、アセトンシアノヒドリンのための1つ以上の供給点、濃硫酸のための1つ以上の供給点、1つ以上のガス分離器、1つ以上の熱交換器および1つ以上のミキサー、ならびにしばしば輸送手段としてのポンプを有する。
【0072】
メタクリルアミドを与えるための硫酸によるアセトンシアノヒドリンの加水分解は、既に記載したように、発熱性である。しかし、収率は、反応における温度の上昇とともに低下するため、反応で生じる反応熱は、少なくとも大部分が系から除去されなければならない。基本的には、適切な熱交換器を用いて反応熱の迅速かつ包括的な除去を達成することが可能である。しかし、熱交換器における適切な交換には十分な熱伝達が必要とされるため、混合物を冷却しすぎるのも不利であり得る。混合物の粘度は、温度の低下とともに大きく上昇するため、第1にループ型反応器における循環および流動が複雑になり、第2に系からの反応エネルギーの十分な除去を保証できなくなる。
【0073】
加えて、反応混合物における極端に低い温度は、熱交換器における反応混合物の成分の結晶化をもたらし得る。これにより熱伝達がさらに悪化し、その結果として、明確な収率の低下が検出され得る。加えて、ループ型反応器に最適な量の反応物質を充填することができないため、方法の効率が全体的に低下する。
【0074】
該方法の一実施態様において、アセトンシアノヒドリン流からの容量流量の一部、好ましくは約3分の2から約4分の3が、第1のループ型反応器に導入される。第1のループ型反応器は、好ましくは、1つ以上の熱交換器、1つ以上のポンプ、1つ以上の混合エレメントおよび1つ以上のガス分離器を有する。第1のループ型反応器を流れる循環流は、好ましくは、約50から650m/hの範囲、好ましくは100から500m/hの範囲、より好ましくは約150から450m/hの範囲である。第1のループ型反応器に続く少なくとも1つのさらなるループ型反応器において、循環流は、好ましくは、約40から650m/hの範囲、好ましくは50から500m/hの範囲、より好ましくは約60から350m/hの範囲である。さらに、熱交換器間の好適な温度差は、約1から20℃であり、約2から7℃が特に好ましい。
【0075】
アセトンシアノヒドリンを基本的には任意の点でループ型反応器に供給することができる。しかし、混合エレメント、例えば移動部分を有するミキサーもしくは固定ミキサーに供給するか、または十分に混合された点に供給すると有利であることが判明した。硫酸は、アセトンシアノヒドリンの添加の上流において有利に供給される。しかし、そうでなければ、硫酸を任意の点でループ型反応器に供給することが同様に可能である。
【0076】
ループ型反応器における反応物質の比は、硫酸が余るよう制御される。余剰の硫酸は、各成分のモル比に対して、第1のループ型反応器では約1.8:1から約3:1であり、第2のループ型反応器では約1.3:1から約2:1である。
【0077】
場合によっては、ループ型反応器における反応を、当該余剰の硫酸を用いて実施することが有利であることが判明した。硫酸は、ここでは、例えば溶媒として機能し、反応混合物の粘度を低く維持することができるため、反応熱のより高度な除去および反応混合物のより低い温度を保証することが可能である。これは、有意な収率上の利点をもたらすことができる。反応混合物における温度は、約90から約120℃である。
【0078】
熱の除去は、ループ型反応器における1つ以上の熱交換器によって保証される。上記の理由により反応混合物の過度に強い冷却を防止するために、熱交換器が、冷却性能を制御するための好適なセンサシステムを有していると有利であることが判明した。例えば、熱交換器または複数の熱交換器における熱伝達を逐一または連続的に測定すること、および熱交換器の冷却性能をそれに合わせて調整することが有利であり得る。例えば、冷媒そのものを介してこれを実施することができる。反応物質の添加の対応する変化およびさらなる反応熱の生成によって、反応混合物の適切な加熱を達成することが同等に可能である。それら2つの可能性の組合せも考えられる。ループ型反応器は、少なくとも1つのガス分離器をさらに有するべきである。1つの方法は、形成された製造物を、ガス分離器を介してループ型反応器から連続的に除去することである。したがって、別の方法は、反応で形成された気体を反応チャンバから除去することである。形成された気体は、主に一酸化炭素である。ループ型反応器から除去された製造物は、好ましくは、第2のループ型反応器内に移される。この第2のループ型反応器において、第1のループ型反応器における反応によって得られた、硫酸およびメタクリルアミドを含む反応混合物を残留するアセトンシアノヒドリンの部分流と反応させる。この場合、第1のループ型反応器からの余剰の硫酸、または余剰の硫酸の少なくとも一部は、アセトンシアノヒドリンと反応して、さらなるメタクリルアミドを形成する。2つ以上のループ型反応器で反応を実施することは、第1のループ型反応器における余剰の硫酸により、反応混合物のポンパビリティが向上し、それにより熱伝達が向上し、最終的に収率が向上するという利点を有する。次に、少なくとも1つの混合エレメント、少なくとも1つの熱交換器および少なくとも1つのガス分離器が、第2のループ型反応器内に配置される。第2のループ型反応器における反応温度も同様に約90から約120℃である。
【0079】
反応混合物のポンパビリティ、熱伝達および最低反応温度の問題は、すべてのさらなるループ型反応器において、第1のループ型反応器と全く同様に生じる。したがって、第2のループ型反応器も、有利には、その冷却性能を適切なセンサシステムによって制御することができる熱交換器を有する。
【0080】
アセトンシアノヒドリンは、再び、好適な混合エレメントで、好ましくは固定ミキサーまたは十分に混合された点に供給される。
【0081】
製造物を第2のループ型反応器の分離器、特にガス分離器から除去し、約130から約180℃の温度に加熱して、反応を完了し、メタクリルアミドを形成する。
【0082】
加熱は、好ましくは、最小限の時間、例えば約1分から約30分の時間、特に約2分から約8分または約3分から約5分の時間で最高温度に到達するように実施される。これを、基本的には、当該温度を当該短時間で達成するための任意の装置で実施することができる。例えば、エネルギーを電気エネルギーまたは水蒸気によって従来の方法で供給することができる。しかし、エネルギーを電磁放射線、例えばマイクロ波によって供給することが同等に可能である。
【0083】
様々な場合において、好ましくは、少なくとも二重の向い合せの配列で存在し得る二段または多段配列の管コイルを備えた熱交換器で加熱工程を実施すると有利であることが判明した。これは、反応混合物を約130から180℃の温度に迅速に加熱する。
【0084】
熱交換器を例えば1つ以上のガス分離器と組み合わせることができる。例えば、反応混合物が熱交換器における第1の管コイルを出た後にガス分離器を通じてそれを誘導することが可能である。これは、例えば、反応中に反応混合物から形成された気体成分を除去することができる。反応混合物が第2のコイルを出た後にそれをガス分離器で処理することが同等に可能である。さらに、反応混合物が第1の管コイルを出た後および第2の管コイルを出た後の両方において、反応混合物をガス分離器で処理するのが有利であることを見いだすことができる。
【0085】
このようにして得られるアミド溶液は、一般には、100℃を超える温度、典型的には約130から180℃の温度を有する。
【0086】
アミド化で得られた気体化合物を、基本的には、任意の方法で処分するか、またはさらなる処理に向けて送ることができる。しかし、場合によっては、適切な気体を連続的に、または必要に応じて、例えば水蒸気圧で場合によって加圧するようにして輸送ラインで混合することで、さらに輸送することができると有利であり得る。
【0087】
エステル化
方法エレメントを構成し、本発明による方法に関連して本発明に使用することができるさらなる工程は、メタクリルアミドのメタクリル酸への加水分解、およびそれに続くメタクリル酸エステルへのエステル化である。この反応を1つ以上の加熱されたタンク、例えば蒸気加熱されたタンクにおいて実施することができる。しかし、多くの場合、エステル化を少なくとも2つの連続タンクのみならず、例えば3つまたは4つ以上の連続タンクにおいて実施すると有利であることが判明した。この場合、メタクリルアミドの溶液が、タンク、または2つ以上のタンクから成る一連のタンクを有する第1のタンクに導入される。
【0088】
対応するエステル化反応を2つ以上の一連のタンクで実施することがしばしば好適である。したがって、以降は専らこの変形に言及する。
【0089】
ここに記載されている方法において、例えば、ここに記載されているアミド化反応から得られるアミド溶液を第1のタンクに供給することが可能である。タンクは、例えば水蒸気で加熱される。供給されるアミド溶液は一般に、以上に示したアミド化反応からのアミド溶液の出口温度に実質的に対応する高温、例えば、約100から約180℃の温度を有する。エステル化に使用できるアルカノールもそれらのタンクに供給される。
【0090】
ここでの好適なアルカノールは、基本的には、直鎖状または分枝状の飽和または不飽和であってよい、1から約4個の炭素原子を有するあらゆるアルカノールであり、メタノールが特に好ましい。これらのアルカノールも同様にメタクリル酸エステルとともに使用でき、それは、特にエステル交換における場合である。
【0091】
タンク内の水の全濃度が約13から約26質量%、特に約18から約20質量%になるようタンクに水も充填される。
【0092】
アミド溶液およびアルカノールの量は、アミドとアルカノールの全モル比が約1:1.4から約1:1.6になるように制御される。第1の反応器におけるモル比が約1:1.1から約1:1.4になり、続く反応段階において、全アミド流に対して、約1:0.05から約1:0.3のモル比が確立されるように、アルカノールをタンク群に分配することができる。エステル交換に供給されるアルカノールは、「新鮮なアルカノール」、ならびに後処理段階の返送流、および必要な場合は製造システムの下流方法の返送流のアルカノールで構成されていてもよい。
【0093】
水が、エステル化反応または下流方法段階に悪影響を与え得る成分を含んでいなければ、基本的には、水が任意の供給源からタンクに供給されるように第1のタンクに水を充填することができる。例えば、脱塩水または湧水をタンクに供給することができる。しかし、例えば、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルの精製で得られた水と有機化合物の混合物をタンクに供給することも同様に可能である。ここに提示する方法の好適な実施態様において、タンクに水と当該有機化合物の混合物が少なくとも部分的に充填される。
【0094】
2つ以上の一連のタンクがエステル化反応に使用されるときは、形成された気体物質、特にメタクリル酸エステルを、基本的には、各タンクから個々に抜き出し、精製に供給することができる。しかし、場合によっては、2つ以上の一連のタンクにおいて、第1のタンクからの気体化合物を直接精製に供給せずに、第1のタンクからの気体製造物を最初に第2の反応容器に供給すると有利であることが判明した。この手順は、第1のタンクにおけるしばしば大規模な泡の発生を複雑な脱泡装置によって抑える必要がないという利点を提供する。気体物質が第1のタンクから第2のタンクに移動する場合は、第1のタンクで形成され、混入された恐れのある泡が、簡単に第2のタンクの反応チャンバにも入る。そこでの泡の形成は、一般には著しく小さいため、脱泡装置を使用する必要がない。
【0095】
次いで、第1に、第1のタンクの下流に配置された第2のタンクが第1のタンクの越流を吸収し、第2に、第1のタンクで形成された、または第1のタンクに存在する気体物質が供給される。第2のタンクおよびあらゆる後続タンクにメタノールが同様に充填される。ここでは、メタノールの量が、各々の場合に前のタンクに対して、タンク毎に少なくとも10%ずつ減少しているのが好適である。第2のタンクおよびさらなるタンクにおける水の濃度は、第1のタンクにおける水の濃度と異なるが、それらの濃度の差は、小さいことが多い。
【0096】
第2のタンクで形成された蒸気は、そのタンクから除去され、蒸留カラムの底に導入される。
【0097】
エステル化が3つ以上の一連のタンクを用いて実施されるときは、第2のタンクの越流は、各々の場合に第3のタンクに移され、第3のタンクの越流は、適切であれば第4のタンクに移される。さらなるタンクも同様に蒸気加熱される。タンク3および適切であればタンク4における温度は、好ましくは、約120から約140℃に調整される。
【0098】
タンクから出る蒸気は、蒸留カラム内に送られ、これは、好ましくは、蒸留カラムの下部領域において実施される。蒸気は、キャリヤ水蒸気とメタクリル酸エステルとアルカノールの共沸混合物を含み、使用されるアルカノールに応じて、約60から約120℃の温度、例えば、メタノールが使用されるときは約70から約90℃の温度を有する。蒸留カラムにおいて、メタクリル酸エステルは、より高い温度で沸騰する蒸気成分から気体の形状で分離される。高沸点フラクション(主にメタクリル酸、ヒドロキシイソ酪酸エステルおよび水)は、第1の反応タンクに返送される。形成されたメタクリル酸エステルは、カラムの最上部で抜き取られ、熱交換器、または2つ以上の一連の熱交換器によって冷却される。場合によっては、メタクリル酸エステルを少なくとも2つの熱交換器によって冷却し、その場合、水を用いた第1の熱交換器が凝縮および約60から約30℃の温度への冷却を実施し、第2のブライン冷却熱交換器が約5から約15℃への冷却を実施すると有益であることが判明した。水冷凝縮物からの部分流を、カラムにおける濃度制御のために還流としてカラムに導入することができる。しかし、形成されたメタクリル酸エステルを3つ以上の一連の熱交換器によって冷却することが同等に可能である。この場合、例えば、最初に、縦列接続された2つの水冷熱交換器によって冷却を実施し、次いで適切なブライン冷却熱交換器によってさらなる冷却を達成することが可能である。
【0099】
例えば、ここに示す方法において、形成されたメタクリル酸を水冷による第1の熱交換器によって気体の状態で冷却することができる。次いで、凝縮物質および非凝縮物質の両方が、第2の熱交換器内に送られ、そこで水冷によるさらなる凝縮が生じる。次いで、この時点で、例えば、気体物質を個別のブライン冷却熱交換器内に移すことが可能である。次いで、このブライン冷却熱交換器における凝縮物は、留出物流に導入され、残留する気体物質をさらに利用するか、または処分に向けて送ることができる。次いで、第2の水冷熱交換器からのメタクリル酸エステル凝縮物は、水冷またはブライン冷却熱交換器で、15℃未満の温度、好ましくは約8から約12℃の温度に冷却される。この冷却工程は、対応する冷却工程を用いない場合よりギ酸の含有量が有意に小さいメタクリル酸エステルを形成させることができる。次いで、冷却された凝縮物は、相分離器に移される。ここで、有機相(メタクリル酸エステル)は、水相から分離される。水とともに、蒸留工程からのある含有量の有機化合物、特にアルカノールをも有することができる水相を、基本的には、要望に応じてさらに使用することができる。しかし、以上に既に述べたように、水と有機化合物とのこの混合物を第1の反応タンク内に供給することによって、エステル化方法に返送することが好適であり得る。
【0100】
除去された有機相は、洗浄器内に供給される。そこで、メタクリル酸エステルが脱塩水で洗浄される。次に、水と有機化合物、特にアルカノールとの混合物を含む分離水相を、基本的には、要望に応じてさらに使用することができる。しかし、経済的理由により、この水相を例えば第1のタンク内に供給することによってエステル化工程に返送することが有利である。
【0101】
メタクリル酸エステルは、重合する傾向が強いため、多くの場合において、メタクリル酸のエステル化に当該重合を防止するよう配慮することが有利である。
【0102】
メタクリル酸またはメタクリル酸エステルを製造するためのプラントにおいて、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルが最初に低流量を有するため、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルと重合開始剤との長時間にわたる接触が確立され得ることで、後に重合をもたらし得る局部的静穏帯が形成され得る場合に重合がしばしば生じる。
【0103】
当該重合挙動を防止するために、第1に、メタクリル酸エステルまたはメタクリル酸の流量が系の実質的にすべての点において、静穏帯の数を最小限にするのに十分なほど大きくなるように物質の流量を最適化することが有利であり得る。また、重合が十分に抑制されるように、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルの流れと好適な安定剤とを混合することが有利であり得る。
【0104】
この目的のために、基本的には、ここに示す方法における流れと安定化剤とを、系そのものにおいて最小レベルの重合が生じるように混合することができる。この目的で、蒸留の最中または後に特にメタクリル酸またはメタクリル酸エステルが高濃度で存在するプラントの部分に適切な安定剤が供給される。
【0105】
例えば、蒸留カラムの最上部において、ここから抜き出されるメタクリル酸エステル流に対する安定剤の供給が可能であることが判明した。また、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルが約20℃を超える温度、好ましくは約20から約120℃の範囲の温度で循環するプラントの部分に、安定剤のメタクリル酸エステル溶液を流すことが有利であることが判明した。例えば、カラム最上部の内部に安定化メタクリル酸エステルまたは安定化メタクリル酸を継続的に噴霧するよう、熱交換器で得られた凝縮物の一部が、好適な安定剤とともに、蒸留カラムの最上部に返送される。これは、好ましくは、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルの重合の危険性があるカラムの最上部に静穏帯が形成され得ないようにして実施される。これに対応して同様に、ここでも静穏帯が形成され得ないようにして、熱交換器自体にメタクリル酸またはメタクリル酸エステルの安定化溶液を充填することができる。
【0106】
ここに示す方法において、例えば、前の方法、特にアミド化工程からの一酸化炭素を含む排ガスを水蒸気とともにエステル化プラントに流すと有利であることも判明した。このように、固体または液体の形状で除去することができる化合物を除去するために気体混合物が再び精製される。第2に、これらを中心点で回収し、さらなる利用または処分に向けて送ることができる。
【0107】
エステル化および後続の予備精製で得られたメタクリル酸エステルもしくはMMA、またはメタクリル酸は、次にさらなる処理に向けて送られる。エステル化は、同様にさらなる利用に向けて送ることができる残留物質としての希硫酸をもたらす。
【0108】
エステルまたは酸の予備精製
ここに示す方法において、本発明の主題を、以下に示す方法エレメントに記載されるように、メタクリル酸またはメタクリル酸エステルを予備精製するための方法と併せて使用することもできる。例えば、非常に純度の高い製造物を得るために、基本的には、粗製メタクリル酸または粗製メタクリル酸エステルにさらなる精製を施すことができる。さらなる方法エレメントを構成する当該精製は、例えば、一段階であり得る。しかし、多くの場合において、当該精製が少なくとも2つの段階を含み、その場合に、製造物の低沸点成分がここに記載される第1の予備精製で除去されると有利であることが判明した。この目的で、粗製メタクリル酸エステルまたは粗製メタクリル酸は、最初に、低沸点成分および水を除去することができる蒸留カラム内に移される。この目的で、粗製メタクリル酸エステルは、蒸留カラムに送られ、その場合に、添加は、例えば、カラムの上半分で実施される。カラムの底は、例えば、約50から約120℃の壁温が達成されるようにして水蒸気で加熱される。精製は、減圧下で実施される。カラム内の圧力は、エステルの場合は、好ましくは約100から約600mbarである。カラム内の圧力は、酸の場合は、好ましくは約40から約300mbarである。
【0109】
カラムの最上部において、低沸点成分が除去される。特に、これらは、例えば、エーテル、アセトンおよびギ酸メチルであってよい。次いで、蒸気が、1つ以上の熱交換器によって凝縮される。例えば、場合によっては、最初に、縦列接続された2つの水冷熱交換器によって凝縮を実施することが有益であることが判明した。しかし、この点でただ1つの熱交換器を使用することが同等に可能である。熱交換器は、好ましくは、流量を増加させ、固定層の形成を防止するために、直立状態で動作され、最大の湿潤を得ることが好ましい。水冷熱交換器または複数の水冷熱交換器の下流にブライン冷却熱交換器を接続することができるが、2つ以上の一連のブライン冷却熱交換器を下流に接続することも可能である。一連の熱交換器において、蒸気が凝縮され、安定剤が供給され、例えば、相分離器に供給される。蒸気は水を含みうるため、生じる任意の水相は、処分されるか、またはさらなる利用に向けて送られる。さらなる利用が可能な例は、エステル化反応、例えば上述したエステル化反応への返送である。この場合、水相は、好ましくは、第1のエステル化タンク内に返送される。
【0110】
除去された有機相は、カラムの最上部内に還流として供給される。次に、有機相の一部を使用して、熱交換器の最上部およびカラムの最上部に噴霧することができる。除去された有機相は、安定剤と混合された相であるため、第1に静穏帯の形成を効果的に防止することが可能である。第2に、安定剤の存在は、除去された蒸気の重合傾向のさらなる抑制をもたらす。
【0111】
また、熱交換器から得られた凝縮物流は、好ましくは、相分離器において十分な分離作用を達成できるように脱塩水と混合される。
【0112】
熱交換器群における凝縮後に残留する気体化合物を、好ましくは減圧発生器としての水蒸気エジェクタを利用して、1つ以上のさらなる熱交換器により再度凝縮させることができる。経済的理由により、当該後凝縮が、予備生成からの気体物質の凝縮にとどまらなければ有利であることが判明した。例えば、メタクリル酸エステルの主精製から得られたさらなる気体物質を当該後凝縮に対して供給することが可能である。当該手順の利点は、例えば、主精製段階で凝縮されなかった当該比率のメタクリル酸エステルを、再び相分離器を介して予備精製における精製カラム内に移すことにある。したがって、例えば、収率を最大限にすることができ、メタクリル酸エステルの損失を最小限にすることが保証される。さらに、これらのさらなる熱交換器の設計および動作の好適な選択は、これらの熱交換器を出る排ガスの組成、特に低沸点物の含有量を調整することを可能にする。
【0113】
メタクリル酸エステルの予備精製における水の供給により、エステル化における水の含有量、および粗製メタクリル酸メチルにおける低沸点成分の濃度が全体として連続的に上昇し得る。これを防止するために、系に供給された水の一部を好ましくは連続的に系から排出することが有利であり得る。基本的には、この排出を、例えば、水が予備精製において系に供給される指標で実施することができる。相分離器で分離された水相は、典型的には、ある含有量の有機成分を有する。したがって、この含有量の有機物質を利用するタイプの処理に対してこの水を供給することが有利であり得る。
【0114】
例えば、このように有機物質で汚染された水を硫酸分離方法において燃焼チャンバに供給すると有利であり得る。被酸化性成分により、その発熱量をさらに少なくとも部分的に利用することができる。加えて、有機物質で汚染された水の恐らく高価な処分がこのようにしばしば回避される。
【0115】
メタクリル酸エステルの高度精製
メタクリル酸エステルの高度精製では、予備精製された粗製メタクリル酸エステルに別の蒸留が施される。これは、純粋なメタクリル酸エステルを得るために、蒸留カラムを利用して、粗製メタクリル酸エステルからその高沸点成分を除去する。この目的で、粗製メタクリル酸エステルは、当業者に既知の方法で、蒸留カラムに導入され、ときにはその下半分に導入される。
【0116】
蒸留カラムは、基本的には、当業者に好適であると思われる任意の設計に対応することができる。しかし、得られる製造物の純度については多くの場合において、以下の要件にほぼ対応する1つ以上の充填材とともに蒸留カラムを動作させると有利であることが判明した。
【0117】
第1に、メタクリル酸エステルが流される他のラインと全く同様に、カラム内に形成されるいわゆる「デッドスペース」を最小限のレベルにすべきである。デッドスペースは、メタクリル酸エステルの滞留時間を比較的長くするため、それらの重合が促進される。これは、次に、高価な製造一時停止、およびポリマーで塞がれた適切な部分の清掃をもたらす。デッドスペースの形成を阻止するための1つの方法は、設計およびカラムの十分な動作方式の両方によって、カラム、および充填材などのカラム内部構造物の継続的なフラッシングが達成されるように、常に十分な量の液体をそれらに充填することである。例えば、カラムは、カラム内部構造物の噴霧のために設計された噴霧デバイスを有することができる。加えて、デッドスペースがほとんど、またはより好ましくは全く形成されないように、カラム内部構造物を互いに接続することができる。この目的で、カラム内部構造物を、断続接着継目を介して、互いに、またはカラムに接続することができる。当該接着継目は、1mの接着継目長毎に少なくとも約2個、好ましくは少なくとも約5個、より好ましくは少なくとも約10個の途切れを有する。これらの途切れの長さを、それらが接着継目長の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約50%を占めるが、一般に95%を超えないように選択することができる。別の設計基準は、カラムの内部領域、特にメタクリル酸エステルと接触する領域において、すべての面、約50%未満、好ましくは約25%未満、より好ましくは約10%未満が水平に伸びていることであってよい。例えば、カラムの内部に通じるスタブを円錐形に、または斜面で構成することができる。別の基準は、カラムの動作中に、カラムの底に存在する液体メタクリル酸エステルの量をできるだけ小さく維持し、第2に、蒸発中に中程度の温度および大きな蒸発面にもかかわらずこの量の過熱を防止することにあってよい。この文脈において、カラムの底における液体の量は、カラム内のメタクリル酸エステルの全量の約0.1から15%の範囲、好ましくは約1から10%の範囲を占めることが有利であり得る。このパラグラフにおいて提案されている基準をメタクリル酸の蒸留に用いることもできる。
【0118】
メタクリル酸エステルの精製において、その高沸点成分は、蒸留によって製造物から分離される。この目的で、カラムの底が水蒸気で加熱される。底の温度は、好ましくは約50から約80℃、特に約60から約75℃であり、壁温度は約120℃未満である。
【0119】
カラムの底で得られた物質は、好ましくは、連続的に除去され、熱交換器、またはいくつかの一連の熱交換器によって、約40から約80℃の範囲、好ましくは約40から約60℃、より好ましくは約50から60℃の範囲の温度に冷却される。
【0120】
メタクリル酸エステル、ヒドロキシイソ酪酸エステル、メタクリル酸および安定剤を主として含むこの物質は、続いて、貯蔵容器を介して処分されるか、別の用途に向けて送られる。多くの場合において、カラムの底で得られた物質をエステル化反応に返送すると有利であることが判明した。例えば、カラムの底からの物質は、第1のエステル化タンクに返送される。これは、非常に経済的に見合う方法および非常に高い収率の観点で、カラムの底に存在する比較的高沸点の化合物がエステル化反応に返送されるという利点を生む。
【0121】
カラムの最上部において、蒸留によって精製されたメタクリル酸エステルが除去され、熱交換器または2つ以上の一連の熱交換器によって冷却される。蒸気の熱を水冷熱交換器によって、またはブライン冷却熱交換器によって、またはそれら2つの組合せによって除去することができる。場合によっては、蒸留カラムからの蒸気を、水冷によって動作される並列接続された2つ以上の熱交換器内に移すと有益であることが判明した。水冷熱交換器からの非凝縮フラクションを、例えば、ブライン冷却熱交換器、または縦列もしくは並列に配列されてよい2つ以上の一連のブライン冷却熱交換器に導入することができる。熱交換器から得られる凝縮物は、回収容器に導入され、さらなる熱交換器または2つ以上の一連のさらなる熱交換器を介してポンプによって緩衝容器に送られる。凝縮物流は、例えば、一連の1つまたは2つの水冷熱交換器および1つまたは2つのブライン冷却熱交換器によって、約0から約20℃の範囲、好ましくは約0から約15℃、より好ましくは約2から約10℃の範囲の温度に冷却される。
【0122】
部分流は、凝縮物流から除去され、カラムの最上部を介して蒸留カラムに返送される。凝縮物流を基本的には任意の方法で、例えば分配器を介してカラムの最上部内に供給することができる。しかし、凝縮物流の一部をカラムの最上部の上方の蒸気ラインに供給、例えば噴霧すると有利であり得る。この供給によってカラムの最上部に安定剤を導入することも好適である。
【0123】
カラムに返送することを目的とした凝縮物のさらなる部分流を、例えば、導入前に蒸気ラインに分岐させ、カラムの最上部に直接導入することができる。ここでも、この供給によってカラムの最上部に安定剤を導入することが好適である。例えば、メタクリル酸エステルが重合し得るカラムの最上部に静穏帯が形成され得ないようにカラムの最上部の内部に凝縮物を噴霧するようにして、カラムの最上部への導入を実施することができる。また、重合を防止するための安定剤を、カラムに返送される凝縮物部分流に添加することが有利であり得る。例えば、安定剤としての適切な量の重合防止剤を、カラムの最上部の噴霧を目的とする凝縮物部分流に添加することによって、これを実施することができる。場合によっては、凝縮物部分流における安定剤の非常に均一な分布を達成するために、凝縮物部分流が、安定剤の添加後でカラムの最上部への進入前に、好適な混合装置、好ましくは固定ミキサーを流れると有利であることが判明した。
【0124】
精製方法で得られた非凝縮性気体物質は、例えば、処分に向けて送られる。
【0125】
緩衝容器に存在する粗製物は、ブライン冷却器を利用して、約0から約20℃、好ましくは約0から約15℃、より好ましくは約2から約10℃の範囲の温度に維持される。
【0126】
製造物からのあらゆるさらなる不純物を除去し、超純粋のメタクリル酸アルキルを得るために、製造物に吸収精製段階を施すこともできる。例えば、さらに分子篩を利用して全体としての純粋な製造物または純粋な製造物の少なくとも一部を精製すると有益であることが判明した。したがって、特に酸不純物、特に製造方法で形成されたギ酸を製造物流から簡単に除去することができる。また、場合によっては、製造物に存在するあらゆる固体を除去するために、製造物流が、吸収精製段階を経た後に1つ以上のフィルタをも通ると有利であることが判明した。
【0127】
後処理で得られた流れは、主として重合性化合物を含む。本文において既に2回以上記載したように、静穏帯の形成を防止するために、ここに記載されている方法の場合も、メタクリル酸エステルと接触するプラントの部分にメタクリル酸エステルを継続的に流すと有利であることが判明した。したがって、ここに示される方法のさらなる実施態様において、メタクリル酸エステルの部分流は、蒸留カラムから発生する蒸気を吸収する熱交換器の最上領域に流すために、緩衝容器の下流であるが、吸収精製段階の上流において除去される。
【0128】
続いて、精製段階で得られた製造物は、約−5から約20℃の範囲、好ましくは約0から約15℃、より好ましくは約2から10℃の範囲の温度で精製段階から除去される。
【0129】
使用済酸のストリッピング
ここに示されている方法において、例えば、さらなる方法エレメントにおいて、方法で得られた使用済硫酸を後に方法に返送するために、精製することが賢明であり得る。この場合、例えば、エステル化から得ることができる使用済硫酸を含む流れを浮遊容器において水蒸気と接触させることができる。これを実施するときに、存在する固体の少なくとも一部を液体の表面に堆積させ、これらの堆積固体を分離することができる。続いて、蒸気は、好ましくは水冷の熱交換器で凝縮され、冷却され、エステル化反応に返送される。
【0130】
場合によっては、製造されたメタクリル酸エステルの精製におけるエステル化過程での洗浄によって得られた水と有機化合物の混合物を、熱交換器の最上部にこの混合物を噴霧するようにして熱交換器に導入することによって、熱交換器における腐食を防止し、冷却作用をさらに向上させると有利であることが判明した。熱交換器における腐食低減作用および酸の洗浄に加えて、この手順は、さらなる利点を有する。エステル化から生じる物質(水と主にメタノールの混合物)は、ちょうどこの方法から生じたメタクリル酸およびメタクリル酸エステルとともに、エステル化方法に返送される。ストリッパーにおいて、上記浮遊は、酸と固体の混合物を与える。これらは、除去された後、任意のさらなる用途または処分に向けて送られる。例えば、方法で使用されたエネルギーの一部を回収するために、得られた混合物を分解プラントにて焼却し、それによって再び硫酸を得ることが可能である。
【0131】
ストリッピングで得られた非凝縮性気体化合物は、任意のさらなる用途に向けて送られるか、または処分される。
【0132】
例えば、いずれも動作上の信頼性の理由により、使用済酸から固体を除去し、エステル化方法からの物質を厳密にこの方法に返送するためのここに記載のプラントを実現することもできる。例えば、2つ以上の浮遊容器を、時間をずらせて使用することができる。固体は、これらの容器内で沈降し得るため、特定の浮遊容器が使用されていないときにそれらを除去するのが有利である。
【0133】
次に、非限定的な図面および実施例を参照しながら上記内容を詳細に説明する。概略図は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】メタクリル酸またはメタクリルメチルを製造および処理するためのプラントシステムを示す図である。
【図2】アセトンシアノヒドリンを製造するためのプラントを示す図である。
【図3】アセトンシアノヒドリンの後処理プラントを示す図である。
【図4】アミド化プラントを示す図である。
【図5】エステル化プラントを示す図である。
【図6】エステルを予備精製するためのプラントを示す図である。
【図7】エステルの高度精製プラントを示す図である。
【図8】アセトンシアノヒドリンを製造するためのプラントの部分としての熱交換器を示す図である。
【0135】
図1は、メタクリル酸またはメタクリル酸エステル、およびそれらのさらなる処理製造物を製造するためのプラントシステム1の好適なエレメントを示す。プラントシステム1は、このシステムのエレメントとして、通常は流体を誘導するように互いに接続された様々なプラントを有する。プラントシステムは、アセトンシアノヒドリン製造プラント20と、その後にアセトンシアノヒドリン後処理プラント30と、その後にアミド化プラント40と、その後にエステル化/加水分解プラント50/50aと、その後にエステルまたはメタクリル酸の後処理プラント60と、その後に高度精製プラント70とを含み、その後にエステル、通常はメタクリル酸メチルが存在する。このようにして得られた純粋のエステル/純粋の酸をさらなる処理プラント80に送ることができる。有用なさらなる処理プラント80は、特に、重合装置と、さらなる有機反応のための反応器とを含む。重合反応器ではポリメタクリル酸エステルを製造することができ、有機反応のための反応器では、ここで得られた純粋のモノマーをさらなる有機化合物に変換することができる。さらなる処理プラントまたは複数のさらなる処理プラント80の後に仕上げプラント90が続く。さらなる処理製造物がメタクリル酸またはメタクリル酸エステル、特にメタクリル酸メチルのポリマーであるときは、それらは、繊維、成形組成物、特に顆粒、フィルム、スラブ、自動車部品および他の成形体を得るために、押出機、インフレーション押出機、射出成形機およびスピナレットダイ等の好適な装置によってさらに処理される。加えて、プラントシステム1は、多くの場合、硫酸プラント100を含む。このプラントについては、基本的に、この目的に好適であると当業者に思われるすべての硫酸プラントが有用である。この文脈において、例えば、欧州委員会を介して得られる「Integrated Pollution Prevention and Control−Draft Reference Document on Best Available Techniques for the Manufacture of Large Volume Inorganic Chemicals−Amino Acids and Fertilizers」の第4章、89頁以降が参照される。硫酸プラント10が一連の他のプラントに接続される。例えば、硫酸ライン2を介して、アセトンシアノヒドリン製造プラント20に濃硫酸が供給される。さらに、さらなる硫酸ライン3が、硫酸プラント100とアミド化プラント40の間に存在する。エステル化プラント50(加水分解プラント50a)からの「廃酸」とも呼ばれる希硫酸が、廃硫酸のライン4および5を通じて硫酸プラント100に移される。硫酸プラント100において、希硫酸を回収することができる。希硫酸の回収を、例えば、WO 02/23088 A1またはWO 02/23089 A1に記載されているように実施することができる。概して、プラントは、当業者に周知であり、特定の応力に適すると思われる材料から製造されている。通常、材料は、特に、格別の耐酸性を有していなければならないステンレス鋼である。硫酸、特に濃硫酸を用いて動作されるプラントの領域がセラミック材料またはプラスチックでさらに裏打ちされ、保護される。加えて、メタクリル酸プラント50aで得られたメタクリル酸を、メタクリル酸ライン6を介して予備精製プラント60に供給することができる。「S」で示される安定剤をアセトンシアノヒドリン製造プラント20、アミド化プラント40、エステル化プラント50、加水分解プラント50a、予備精製プラント60および再修正性プラント70に加えることが有益であることも判明した。
【0136】
図2に示されるアセトンシアノヒドリン製造プラント20において、アセトンがアセトン容器21に用意され、シアン化水素酸がシアン化水素酸容器22に用意される。アセトン21は、その上部領域に、1つ以上の冷却エレメント24を有する洗浄塔23を有する。プラントシステム1における様々なプラントから発生する一連の排ガスライン25が洗浄塔23内に通じる。アセトンは、アセトン供給流27を介してループ型反応器26に供給され、シアン化水素酸は、シアン化水素酸供給流28を介して供給される。シアン化水素酸供給流28の下流にポンプ29が配置され、その後に触媒供給流210が配置され、その後に固定ミキサー211が配置される。この後に、一連の流動抵抗213および少なくとも1つの冷却ライン214を有する熱交換器212が続く。ループ型反応器26において、アセトン、シアン化水素酸および触媒からなる反応混合物が、太線で示される回路で多量に誘導される。熱交換器212から、反応混合物が冷却ライン214に沿って流動抵抗を介して誘導され、循環流の一部は、反応生成物を第1に移動状態に維持し、第2に低温に維持する熱交換器219を有する冷却回路218の一部としてノズル217が存在する回収容器216が接続されるさらなる熱交換器215に通される。回収容器216の後に続く排出口220を介して、その中に硫酸供給流222が通じ、そこから粗製アセトンシアノヒドリンが排出口223を通じてアセトンシアノヒドリン後処理プラント30に誘導される安定剤容器221が取りつけられる。
【0137】
図3において、シアノヒドリン製造プラント20から、排出口223が、シアノヒドリン製造プラント20からの流れを加熱する熱交換器31内に通じる。蒸気供給流32が熱交換器31に接続され、カラム33の上部領域内、好ましくは最上部領域内に通じる。カラム33は、通常トレイとして構成される多数の充填材34を有する。カラム33の下部領域には、そこから底部排出口36が熱交換器31内に通じ、排出口223を通じて熱交換器31内に誘導された流れを加熱するカラム底35が配置される。純粋製造物ライン37が熱交換器31に接続され、その下流にアミド化プラント40が続く。カラム33の上部領域には、真空ポンプ310が接続される熱交換器39内に通じ、次に熱交換器311内に通じる上部排出口38が配置される。熱交換器39および熱交換器311はともに、ラインを介して、返送ライン313が接続され、アセトンシアノヒドリン製造プラント20におけるループ型反応器26に接続される冷却容器312に接続される。
【0138】
図4に示されるアミド化プラント40は、第1に、ループ型反応器43内に通じるアセトンシアノヒドリン供給流41および硫酸供給流42を有する。アセトンシアノヒドリン後処理プラント30に接続されたアセトンシアノヒドリン供給流41は、ポンプ44の下流およびミキサー45の上流のループ型反応器43の回路内に通じる。このポンプ44の上流には硫酸供給流42が通じる。ミキサー45の下流に熱交換器46が続き、それが次にガス分離器47内に通じ、そこから第1にガス排出口48およびさらなるループ型反応器410への供給流49が出る。さらなるループ型反応器410または第3のループ型反応器は、第1のループ型反応器43と同等の構造を有する。さらなるループ型反応器410から、供給流411が熱交換器412に入り、その後にガス分離器413が続き、そこから第1にガス排出口414およびアミドライン415が出て、後者は、エステル化/加水分解50/MAAプラント50aに通じる。
【0139】
図5は、水および有機溶媒を誘導する溶媒ライン51、ならびにアミド化プラント40に接続されたアミドライン52が、タンク加熱器54によって加熱可能なタンク53内に通じるエステル化プラント50を示す。加えて、破線で示されるアルコールライン55が、タンク53内に通じる。アルコールライン53は、タンク53の上部領域および下部領域の両方に通じる。破線および点線で示されるエステル蒸気ライン56を介して、さらなるタンク加熱器54’を有するさらなるタンク53’に第1のタンク53が接続される。このさらなるタンク53’も底部および最上部の両方からアルコールライン55に接続される。エステル蒸気ライン56は、タンク53’の上部領域に接続され、カラム58の底57内に通じる。加えて、希硫酸59のラインがタンク53’の上部領域に存在する。点線の楕円形で囲まれたタンクユニット510は、アルコールライン55およびエステル蒸気ライン56を有する加熱可能なタンク53および54から形成される。1つまたは2つ以上の当該タンクユニットが連鎖状に連続して続くことが可能であり、これらのタンク510の各々は、エステル蒸気ライン56を介してカラム58の底57に接続される。水および有機溶媒をエステル化プラントに戻すために、カラム58の底57から、高沸点物ライン511もタンク53に通じる。カラム58の上部領域、好ましくは最上部において、第1の熱交換器512、それに続くさらなる相分離器513が、好適なラインを介して接続される。カラム58の最上部および第1の熱交換器512の両方において、望ましくない重合を防止する抑制剤または安定剤を供給するために、第1の安定剤供給流514(「S」で示される安定剤)およびさらなる安定剤供給流515を設けることができる。その下部領域において溶媒ライン517が出て、熱交換器521を介して溶媒ライン51に通じる洗浄器516がさらなる相分離器513に接続される。洗浄機516の上部から、粗製エステルラインが出て、後処理プラント60内に通じる。タンク53’または最後のタンクユニット510のタンクの上部領域から出る廃酸ライン59は、固体、および廃酸に不溶の成分を除去するための浮遊容器519内に通じる。浮遊容器519から、廃酸排出口520が硫酸プラント100に入り、さらなる後処理および返送のために低沸点成分を誘導する低沸点物蒸気ライン522がエステル化プラントに入る。
【0140】
図6に示されるエステル後処理プラントは、粗製エステルライン61を介してエステル化プラントに接続され、粗製エステル供給流61は、真空蒸留カラム62の中央領域内に通じる。このカラム62は、カラム62の下部領域に配列されたカラム内部構造物63および底部加熱器64を有する。このカラムの底を構成するカラム62の下部領域から、エステル排出口65が出て、エステル高度精製プラント70内に通じ、それによって低沸点物の粗製エステル供給流が高度精製プラントに供給される。カラム62の上部領域、通常は最上部領域において、その後に相分離器69が続く1つのさらなる熱交換器または複数の熱交換器67のように、第1の熱交換器66が排出口を介して接続される。相分離器69において、熱交換器67から発生する流れ68および混合物が有機成分と水性成分に分離され、上部領域における返送ライン611が、相分離器69に接続され、カラム62の上部領域に通じる。分離器の下部領域において、除去された水をエステル化プラントに戻すために、水排出口610が存在し、エステル化プラント50内に通じる。減圧発生器613が、減圧ラインを介して熱交換器66および67に接続される。
【0141】
図7において、エステル後処理プラント60から伸びるエステル排出口65が蒸留カラム71に内に通じる。これは、複数のカラム内部構造物71と、蒸留カラム71の下部領域にカラム底加熱器73とを含む。蒸留カラム71の最上部領域から、純粋エステル蒸気ライン74が第1の熱交換器75に入り、その後に、減圧発生器717に接続される1つ(または複数)のさらなる熱交換器76が続く。さらなる熱交換器76の排出口は、そこから、第1に、エステル返送ライン77が蒸留カラム71の上部領域または最上部領域に通じるラインを有する。エステル返送ライン77は、エステル返送ライン77のミキサー78の上流に配置された安定剤計量点79を有する。第2に、さらなる熱交換器76のラインから、純粋エステル排出口710が出る。さらなる熱交換器711および別の熱交換器712が、これに縦列接続で接続される。これらの後に、分子篩充填材714を有する分子篩容器713が続く。分子篩によってさらに精製された超純粋エステルが、分子篩容器に接続された超純粋エステル排出口を通じてさらなる処理プラント80内に移される。
【0142】
図8は、図2の断面図であるため、図2に対する図説を参照する。加えて、反応混合物は、ノズルとして構成された注入エレメント81を通じて、反応混合物排出口88で縁取られた冷却領域85内に供給される。冷却領域85は、細線部で表され、冷媒導入口214および冷媒排出口82を介して冷媒が流される多数の冷却エレメントの容量を含まない、点線部で表される容量を有する。点線部で表される冷却領域の容量は、細線部で表される冷却領域の容量より大きいことが図8からわかる。バッフル板として構成された偏向エレメントまたは流動抵抗213を、冷却領域85を取り囲む冷却器壁89または冷却エレメント83に設けることができる。注入エレメント81および偏向エレメント213の配列および選択は、点線矢印で示される主流れ方向86から逸れる冷却流れ方向87を達成することができるため、冷却領域85における反応混合物の良好な混合をもたらすことができる。
【0143】
実施例
ループ型反応器26を備えた図8に対応する反応装置において、HCNとアセトンを触媒としてのジエチルアミンの存在下で10℃にて反応させた。反応条件を以下の表に示す。
【0144】
【表1】

【符号の説明】
【0145】
1 プラントシステム、 2 硫酸ライン、 3 さらなる硫酸ライン、 4 廃硫酸ライン−エステル、 5 廃硫酸ライン−酸、 6 メタクリル酸ライン、 20 アセトンシアノヒドリン製造プラント、 30 アセトンシアノヒドリン後処理プラント、 40 アミド化プラント、 50 エステル化プラント、 50a 加水分解プラント、 60 予備精製プラント、 70 高度精製プラント、 80 さらなる処理プラント、 90 仕上げプラント、 100 硫酸プラント、 21 アセトン容器、 22 シアン化水素容器、 23 洗浄塔、 24 冷却エレメント、 25 排ガスライン、 26 ループ型反応器、 27 アセトン供給流、 28 シアン化水素酸供給流、 29 ポンプ、 210 触媒供給流、 210 ミキサー、 212 熱交換器、 213 流動抵抗、 214 冷却ライン、 215 熱交換器、 216 回収容器、 217 ノズル、 218 冷却回路、 219 熱交換器、 220 排出口、 221 安定化容器、 222 硫酸供給流、 223 排出口、 31 熱交換器、 32 蒸気供給流、 33 カラム、 34 充填材、 35 熱交換器を備えたカラム底、 36 添部排出口、 37 純粋製造物ライン、 38 最上部排出口、 39 熱交換器、 310 真空ポンプ、 311 熱交換器、 312 冷却容器、 313 返送ライン、 41 アセトンシアノヒドリン供給流、 42 硫酸供給流、 43 ループ型反応器、 44 ポンプ、 45 ミキサー、 46 熱交換器、 47 ガス分離器、 48 ガス排出口、 49 供給流、 410 さらなるループ型反応器、 411 供給流、 412 熱交換器、 413 ガス分離器、 414 ガス排出口、 415 アミドライン、 51 溶媒ライン、 52 アミドライン、 53 第1のタンク、 54 第1のタンク加熱器、 53’ さらなるタンク、 54’ さらなるタンク加熱器、 55 アルコールライン、 56 エステル蒸気ライン、 57 カラム底、 58 カラム、 59 廃酸ライン、 510 タンクユニット、 511 高沸点物ライン、 512 熱交換器、 513 相分離器、 514 安定剤供給流、 515 さらなる安定剤供給流、 516 抽出カラム、 517 溶媒ライン、 518 粗製エステルライン、 519 浮遊容器、 520 廃酸排出口、 521 熱交換器、 522 低沸点物蒸気ライン、 61 粗製エステルライン、 62 真空蒸留カラム、 63 カラム内部構造物、 64 底部加熱器、 65 エステル排出口、 66 熱交換器、 67 熱交換器、 68 水供給流、 69 相分離器、 610 水排出口、 611 返送ライン、 612 減圧ライン、 613 減圧発生器、 71 蒸留カラム、 72 カラム内部構造物、 73 カラム底加熱器、 74 純粋エステル蒸気ライン、 75 第1の熱交換器、 76 さらなる熱交換器、 77 エステル返送ライン、 78 ミキサー、 79 安定剤計量点、 710 純粋エステル排出口、 711 さらなる熱交換器、 712 他の熱交換器、 713 分子篩容器、 714 分子篩充填材、 715 超純粋エステル排出口、 716 高沸点物ライン、 717 減圧発生器、 81 注入エレメント、 82 冷媒排出口、 83 冷却エレメント、 84 製造物排出口、 85 冷却領域、 86 主流れ方向、 87 冷却流れ方向、 88 反応混合物排出口、 89 冷却器壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.アセトンとシアン化水素酸を反応器内で接触させて反応混合物を与え、反応混合物を循環させてアセトンシアノヒドリンを得る工程と、
B.反応混合物の少なくとも一部を、冷却器の冷却領域に流すことによって冷却する工程であって、冷却器が1つの冷却エレメントまたは少なくとも2つの冷却エレメントを含む工程と、
C.得られたアセトンシアノヒドリンの少なくとも一部を反応器から排出する工程とを含む、アセトンシアノヒドリンを製造するための方法であって、
冷却器の全内部容量に対して、冷却器の冷却領域の容量が、冷却器の冷却エレメントまたは少なくとも2つの冷却エレメントの容量より大きい方法。
【請求項2】
反応混合物の少なくとも一部が、少なくとも冷却中に、主流れ方向と異なる冷却器流れ方向に流れる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
冷却器流れ方向が、反応混合物を偏向させることによって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
偏向が、冷却器に設けられた、または冷却器に接続された偏向手段によって実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
偏向手段が、注入エレメントもしくは衝突エレメント、またはその両方である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
偏向手段が、冷却領域に設けられる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
冷却エレメントが、冷媒を流すことができる長形中空体である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
冷却エレメントが、棒状または板状構成を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
冷却エレメントが、管束である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
冷却器における反応混合物の滞留時間が、約...から...秒の範囲である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
メタクリル酸アルキルを製造するための方法であって、
a.請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法によってアセトンシアノヒドリンを製造する工程と、
b.アセトンシアノヒドリンと無機酸を接触させて、メタクリルアミドを得る工程と、
c.メタクリルアミドとアルコールを接触させて、メタクリル酸アルキルを得る工程と、
d.メタクリル酸アルキルを場合によって精製する工程とを含む方法。
【請求項12】
メタクリル酸を製造するための方法であって、
α)請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法によってアセトンシアノヒドリンを製造する工程と、
β)アセトンシアノヒドリンと無機酸を接触させて、メタクリルアミドを得る工程と、
γ)メタクリルアミドと水を反応させて、メタクリル酸を与える工程とを含む方法。
【請求項13】
流体を誘導する形で互いに接続された、
−アセトンシアノヒドリンを製造するためのプラントエレメントと、その後に
−メタクリルアミドを製造するためのプラントエレメントと、その後に
−メタクリル酸アルキルを製造するためのプラントエレメントと、場合によってその後に
−メタクリル酸アルキルを精製するためのプラントエレメントと、場合によってその後に
−重合のためのプラントエレメントと、場合によってその後に
−仕上げのためのプラント部品とを含む、メタクリル酸アルキルを製造するための装置であって、
アセトンシアノヒドリンを製造するためのプラントエレメントは、冷却器を備えたループ型反応器を含み、冷却器は、そこに流すことができる冷却領域、および冷却エレメントを含む装置。
【請求項14】
冷却器が、偏向手段を有する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
偏向手段が、注入エレメントまたは衝突エレメントである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
偏向手段が、冷却領域に設けられる、請求項13または14に記載の装置。
【請求項17】
冷却エレメントが、冷媒を流すことができる長形中空体である、請求項13から16までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
冷却エレメントが、棒状または板状冷却領域を有する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
冷却エレメントが、管束である、請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
冷却器の全容量に対する冷却器の冷却領域の容量が、冷却器の冷却エレメントまたは複数の冷却エレメントの容量より大きい、請求項13から19までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
請求項13から20までのいずれか一項に記載の装置で実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも部分的にメタクリル酸アルキルを基礎とするポリマーを製造するための方法であって、
a)請求項11または21に記載の方法によってメタクリル酸アルキルを製造する工程と、
b)メタクリル酸アルキルおよび場合によってコモノマーを重合する工程と、
c)メタクリル酸アルキルを後処理する工程とを含む方法。
【請求項23】
重合がラジカル重合によって実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
繊維、フィルム、塗料、成形組成物、成形体、製紙助剤、皮革助剤、凝集剤および穿孔添加剤における、請求項11または21に記載の方法によって得られるメタクリル酸アルキル、あるいは請求項14に記載の方法によって得られるメタクリル酸の使用。
【請求項25】
請求項11または21に記載の方法によって得られるメタクリル酸アルキル、あるいは請求項13により得られるメタクリル酸を基礎とする繊維、フィルム、塗料、成形組成物、成形体、製紙助剤、皮革助剤、凝集剤および穿孔添加剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−513233(P2010−513233A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540672(P2009−540672)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059092
【国際公開番号】WO2008/071463
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】