説明

特性値の推定方法、装置、発光装置、電子機器、および発光装置の駆動方法

【課題】 時間とともに変化する特性値を推定する方法を提供すること、および駆動電流の印加時間から輝度の減衰を推定するとともに、当該推定に基づいて輝度を補正することが可能な発光装置および発光装置の駆動方法を提供すること。
【解決手段】 発光装置の輝度減衰補正機構5に含まれる構成要素が以下の機能を有する。積算部30は、駆動回路60のオン電流印加時間tapを積算する。計算部40は、電流印加時間tapと式L=L0×(D/100)^((tap/TD)^α)とから推定の輝度Lを計算する。駆動電流制御回路50は、輝度Lに基づいて駆動電流をL0/L倍に補正し、駆動回路60は、補正された駆動電流を有機EL素子70に印加する。これにより、有機EL素子70は劣化による輝度減衰なく発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性値の時間変化を推定する方法、および特性値の時間変化を自己補正する装置に関する。また、有機EL素子等の発光素子を備えた発光装置、および当該発光装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)素子を定電流駆動させると、素子の劣化により時間とともに輝度が減衰していく。有機EL素子の発光寿命を延ばすために当該減衰を補正する方法としては、有機EL素子の発光時間に応じて駆動電流量を調整する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、従来この輝度の減衰は指数関数的であるとされていた。よって、上記補正においては、時間tだけ駆動電流を印加された有機EL素子の輝度Lは式L=L0×(1/2)^(t/T0)で表されるとし、当該式に基づいて駆動電流量を調整していた。ここで、L0は初期輝度、T0は輝度の半減期である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−29715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の有機EL素子の輝度は上記式とは異なる挙動を示し、駆動電流の印加時間から輝度の減衰を正確に推定することはできなかった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、時間とともに変化する特性値を推定する方法、および特性値の時間変化を推定することが可能な装置を提供することにある。また、本発明の目的の他の一つは、駆動電流の印加時間から輝度の減衰を推定するとともに、当該推定に基づいて輝度を補正することが可能な発光装置、当該発光装置を備えた電子機器、および当該発光装置の駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による特性値の推定方法は、時間tに依存する特性値Lを、下記式(1)によって推定することを特徴とする。
L=L0×(D/100)^((t/TD)^α)…(1)
ただし、L0は時間t=0における初期特性値、TDは前記特性値Lが前記初期特性値L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【0008】
上記方法によれば、推定する特性値Lに応じてL0,D,TD,αを定めた上記式(1)を用いることによって、指数関数に乗らない特性値Lの時間変化、特に特性値Lの減衰を推定することができる。なお、本稿において記号「^」は、その右側の数を指数とするべき乗を表すものとし、例えば「m^n」はmのn乗を表す。
【0009】
上記方法において、前記特性値Lは定電流駆動された発光装置の輝度であり、前記初期特性値L0は前記発光装置の初期輝度であり、前記時間tは前記定電流の印加時間tapであってもよい。この方法によれば、発光装置の、指数関数に乗らない輝度Lの時間変化、特に輝度Lの減衰を推定することができる。
【0010】
本発明による特性値の推定方法は、積算部および計算部を有する演算装置を用いて、時間tに依存する特性値Lを推定する方法であって、前記積算部が前記時間tを演算し、前記計算部が前記時間tと下記式(1)とを用いて前記特性値Lを計算することを特徴とする。
L=L0×(D/100)^((t/TD)^α)…(1)
ただし、L0は時間t=0における初期特性値、TDは前記特性値Lが前記初期特性値L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。この方法によれば、演算装置を用いて、時間tによる特性値Lの変化、特に特性値Lの減衰を推定することができる。
【0011】
本発明による装置は、与えられた入力を当該入力の値に応じた値の出力に変換する素子と、前記素子が作動された累積の時間tを演算する積算部と、前記時間tと下記式(1)とに基づいて、前記時間tの経過に伴い初期出力値から減衰した前記素子の現出力値Lまたは当該現出力値Lを反映した特性値を推定する推定部とを備えることを特徴とする。
L=L0×(D/100)^((t/TD)^α)…(1)
ただし、L0は時間t=0における初期出力値、TDは前記現出力値Lが前記初期出力値L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【0012】
上記構成の装置は、素子の特性に応じてL0,D,TD,αを定めた上記式(1)に、積算部が演算した時間tを適用することによって、予め参照テーブルなどを備えることなく現出力値Lを推定することができる。
【0013】
上記装置は、前記素子に前記入力を与えて作動させる駆動部と、前記推定部により推定された前記現出力値Lまたは前記特性値に基づいて前記駆動部から前記素子に与えられる入力の値を補正する補正部とをさらに備えていてもよい。このような構成によれば、推定された現出力値Lをもとに入力の値を補正することによって、素子の出力を所望の値とすることができる。
【0014】
本発明による発光装置は、駆動電流の大きさに応じて発光する発光素子と、オン電流またはオフ電流のいずれかの前記駆動電流を前記発光素子に印加する駆動回路と、前記オン電流の印加時間tapを演算する積算部と、前記印加時間tapと下記式(2)とに基づいて定まる輝度Lに応じた補正値を用いて前記駆動電流を補正する駆動電流制御回路とを含む輝度減衰補正機構を備えることを特徴とする。
L=L0×(D/100)^((tap/TD)^α)…(2)
ただし、L0は前記印加時間tapが0の状態の前記発光素子に前記オン電流を印加したときの初期輝度、TDは前記発光素子に前記オン電流を印加した場合に前記輝度Lが前記初期輝度L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【0015】
上記構成の発光装置は、発光素子の特性に応じてL0,D,TD,αを定めた上記式(2)に、積算部が演算したオン電流の印加時間tapを適用することによって、その時点における発光素子の輝度Lを推定する。そして、駆動電流制御回路が、輝度Lに基づいてオン電流を補正する。より詳細には、輝度Lと初期輝度L0との比に応じてオン電流を増加させて発光素子の発光輝度を向上させることにより、劣化による発光装置の発光輝度の減衰を防ぐことができる。以上のように、上記構成の発光装置は、オン電流の印加時間tapから輝度の減衰を推定するとともに、当該推定に基づいて輝度を補正することができる。これにより、発光装置の長寿命化を実現することができる。上記構成は、特に、恒常的に定電流で駆動する発光装置、およびオン電流とオフ電流の2値の駆動電流で駆動する発光装置に適用するのが好ましい。
【0016】
本発明による発光装置は、駆動電流の大きさに応じて発光する発光素子と、オン電流、オフ電流、および前記オン電流と前記オフ電流との間の大きさの電流のいずれかの前記駆動電流を前記発光素子に印加する駆動回路と、前記駆動電流の換算印加時間tc=∫((l(t)/L0)^β)dtを演算する積算部と、前記換算印加時間tcと下記式(3)とに基づいて定まる輝度Lに応じた補正値を用いて前記駆動電流を補正する駆動電流制御回路とを含む輝度減衰補正機構を備えることを特徴とする。
L=L0×(D/100)^((tc/TD)^α)…(3)
ただし、L0は前記印加時間tcが0の状態の前記発光素子に前記オン電流を印加したときの初期輝度、TDは前記発光素子に前記オン電流を印加した場合に前記輝度Lが前記初期輝度L0のD%になるまでに要する時間、l(t)は各時刻tにおける前記発光素子の輝度、αおよびβは定数である。
【0017】
上記構成の発光装置において、積算部は、発光素子への総負荷と、発光素子がオン電流で換算印加時間tcだけ駆動されたとしたときの総負荷とが互いに等しくなるような換算印加時間tcを演算する。ここで、当該積算時に用いる定数βは、1.58とするのが望ましい。
【0018】
そして、発光素子の特性に応じてL0,D,TD,αを定めた上記式(3)に、前記換算印加時間tcを適用することによって、その時点における発光素子の輝度Lを推定する。さらに、駆動電流制御回路が、輝度Lに基づいてオン電流を補正する。より詳細には、輝度Lと初期輝度L0との比に応じてオン電流を増加させて発光素子の発光輝度を向上させることにより、劣化による発光装置の発光輝度の減衰を防ぐことができる。以上のように、上記構成の発光装置は、駆動電流が3値以上の場合であっても、駆動電流の印加時間および輝度l(t)から輝度の減衰を推定するとともに、当該推定に基づいて輝度を補正することができる。これにより、発光装置の長寿命化を実現することができる。
【0019】
上記の発光装置において、前記補正は、前記駆動電流をL0/L倍とする補正であることが望ましい。駆動電流と発光素子の輝度とが略比例関係にある場合、上記補正によって発光輝度を初期輝度L0と略等しい状態に保つことができる。
【0020】
上記の発光装置において、前記発光素子は有機EL素子を含んでいてもよい。この構成によれば、駆動電流の印加時間から輝度の減衰を推定するとともに、当該推定に基づいて輝度を補正することが可能な有機EL発光装置が得られる。
【0021】
上記の発光装置において、前記輝度減衰補正機構は、前記補正を複数の前記発光素子毎に行うものであってもよい。この構成によれば、複数の発光素子の間で印加された駆動電流の履歴が異なっていても、それぞれの発光素子に対して適正な電流補正を行うことができる。よって、輝度ムラのない高品位な発光装置が得られる。
【0022】
本発明による電子機器は、上記の発光装置を備えることを特徴とする。この構成の電子機器は、発光素子の劣化による輝度ムラのない高品位な発光を行うことができる。これにより、電子機器の長寿命化を実現することができる。
【0023】
本発明による発光装置の駆動方法は、駆動回路から印加される駆動電流の大きさに応じて発光する発光素子を備えた発光装置の駆動方法であって、前記駆動電流の一つであるオン電流の印加時間tapを演算する第1のステップと、前記印加時間tapと下記式(2)とに基づいて定まる輝度Lに応じた補正値を用いて前記駆動電流を補正する第2のステップとを有すること特徴とする。
L=L0×(D/100)^((tap/TD)^α)…(2)
ただし、L0は前記印加時間tapが0の状態の前記発光素子に前記オン電流を印加したときの初期輝度、TDは前記発光素子に前記オン電流を印加した場合に前記輝度Lが前記初期輝度L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【0024】
上記駆動方法においては、発光素子の特性に応じてL0,D,TD,αを定めた上記式(2)に、積算部が演算したオン電流の印加時間tapを適用することによって、その時点における発光素子の輝度Lを推定する。そして、輝度Lに基づいてオン電流を補正する。より詳細には、輝度Lと初期輝度L0との比に応じてオン電流を増加させて発光素子の発光輝度を向上させることにより、発光素子の劣化による輝度の減衰を防ぐことができる。以上のように、上記駆動方法によれば、オン電流の印加時間tapから輝度の減衰を推定するとともに、当該推定に基づいて輝度を補正することができる。これにより、発光装置の長寿命化を実現することができる。上記方法は、特に、恒常的に定電流で駆動する発光装置、およびオン電流とオフ電流の2値の駆動電流で駆動する発光装置に適用するのが好ましい。
【0025】
本発明による発光装置の駆動方法は、駆動回路から印加される駆動電流の大きさに応じて発光する発光素子を備えた発光装置の駆動方法であって、前記駆動電流の換算印加時間tc=∫((l(t)/L0)^β)dtを演算する第1のステップと、前記換算印加時間tcと下記式(3)とに基づいて定まる輝度Lに応じた補正値を用いて前記輝度Lに基づいて前記駆動電流を補正する第2のステップとを有することを特徴とする。
L=L0×(D/100)^((tc/TD)^α)…(3)
ただし、L0は前記印加時間tcが0の状態の前記発光素子に前記オン電流を印加したときの初期輝度、TDは前記発光素子に前記オン電流を印加した場合に前記輝度Lが前記初期輝度L0のD%になるまでに要する時間、l(t)は各時刻tにおける前記発光素子の輝度、αおよびβは定数である。
【0026】
上記駆動方法では、第1のステップにおいて、発光素子への総負荷と、発光素子がオン電流で換算印加時間tcだけ駆動されたとしたときの総負荷とが互いに等しくなるような換算印加時間tcを演算する。ここで、当該積算時に用いる定数βは、1.58とするのが望ましい。
【0027】
そして、発光素子の特性に応じてL0,D,TD,αを定めた上記式(3)に、前記換算印加時間tcを適用することによって、その時点における発光素子の輝度Lを推定する。さらに、輝度Lに基づいてオン電流を補正する。より詳細には、輝度Lと初期輝度L0との比に応じてオン電流を増加させて発光素子の発光輝度を向上させることにより、発光素子の劣化による輝度の減衰を防ぐことができる。以上のように、上記駆動方法によれば、駆動電流が3値以上の場合であっても、駆動電流の印加時間および輝度l(t)から輝度の減衰を推定するとともに、当該推定に基づいて輝度を補正することができる。これにより、発光装置の長寿命化を実現することができる。
【0028】
上記の駆動方法において、前記発光装置は、前記第1のステップおよび前記第2のステップを複数の前記発光素子毎に行うものであってもよい。この駆動方法によれば、複数の発光素子の間で印加された駆動電流の履歴が異なっていても、それぞれの発光素子に対して適正な電流補正を行うことができる。よって、輝度ムラのない高品位な発光を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
<A.ラインヘッド>
図1は、本発明の「電子機器」としての露光装置100の模式斜視図である。この露光装置100は、プリンタなどにおいて露光手段として用いられるもので、「発光装置」としてのラインヘッド1と、レンズアレイ110と、感光体ドラム120とを備えている。
【0031】
ラインヘッド1は、制御回路群10によって制御される複数の「発光素子」としての有機EL素子70を備えている。有機EL素子70は、一対の電極の間に有機発光層を備えたもので、当該一対の電極を介して有機発光層に駆動電流が印加されると、当該駆動電流の大きさに応じた輝度で発光する素子である。本実施形態では、オン電流またはオフ電流のいずれかが印加される構成となっており、有機EL素子70は2値表示を行う。すなわち、すべての有機EL素子70は、オン電流を印加されてオン電流の大きさに応じた輝度で発光する状態、またはオフ電流を印加されて発光を行わない状態のいずれかの状態にある。また、これらの中間の輝度は、オン電流のパルス幅を変調して発光時間を調整することによって表現される。各々の有機EL素子70は、レンズアレイ110に向けて発光する。
【0032】
レンズアレイ110は、ラインヘッド1からの光を感光体ドラム120上に結像させる。ラインヘッド1とレンズアレイ110とは、互いにアライメントされた状態で一体的に構成され、これによってラインヘッドモジュール101となっている。感光体ドラム120は、ドラム回転軸120aを中心に回転しながら、表面をラインヘッド1からの光によって順次露光される。図1では、説明のためにラインヘッド1、レンズアレイ110、感光体ドラム120が互いに分離して描かれているが、実際は近接して配置されている。
【0033】
図2は、ラインヘッド1の構成を模式的に示した平面図である。細長い矩形の素子基板80上には、複数の有機EL素子70、制御回路群10、および有機EL素子70に電力を供給する電源線81,82が形成されている。有機EL素子70は、千鳥状に整列配置されている。各々の有機EL素子70は、TFT(Thin Film Transistor)を含む駆動素子701を有している。駆動素子701は、これらを制御する制御回路群10に接続されている。駆動素子701のソース領域には電源線が接続され、ゲート電極に制御回路群10が接続されている。そして、制御回路群10により駆動素子701の動作が制御され、駆動素子701により有機EL素子70の発光層への通電が制御されるようになっている。素子基板80は、有機EL素子70の発光面が感光体ドラム120に対向するように配置されており、その際、有機EL素子70の整列方向が感光体ドラム120のドラム回転軸120aと平行になるように配置されている。
【0034】
<B.輝度減衰の推定方法>
上記有機EL素子70は、駆動電流の印加時間に応じて素子が劣化し、輝度が減衰していくという特徴を有する。本発明によれば、この輝度の減衰を推定することができる。以下、図5を用いて輝度減衰の推定方法について説明する。
【0035】
図5のグラフにおける実線は、有機EL素子70にオン電流を印加して駆動させたときの輝度の変化を表したものである。本発明の発明者は、以下の式(2)によって当該輝度の変化を正確に推定可能であることを見出した。
L=L0×(D/100)^((tap/TD)^α)…(2)
ここで、Lはオン電流を印加時間tapだけ印加したときの有機EL素子70の輝度、L0は印加時間tapが0の状態の有機EL素子70にオン電流を印加したときの初期輝度、TDは有機EL素子70にオン電流を印加した場合に輝度Lが初期輝度L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【0036】
上記式(2)において、各定数に有機EL素子70の特性から決まる値、すなわちL0=3200[Cd/m2],D=50,TD=750[h],α=0.33を代入したときのグラフが図5中の一点鎖線であり、実測値(直線)と非常によく合うことが分かる。ここでαは、実測値の(tap,L)のデータを少なくとも3点取得し、そのいずれもが上記式(2)を満たすような値として決定される。このように、上記式(2)を用いることによって有機EL素子70の輝度の減衰を正確に推定することができる。
【0037】
なお、従来この輝度の減衰は、指数関数的であるとされていた。これは、上記式(2)において、L0=3200[Cd/m2],D=50,TD=750[h],α=1を代入した場合に相当する。このグラフは図5中の破線であり、実測値とは、輝度が半減した一点を除いて合致しない。このように、従来の単純な指数関数では有機EL素子70の輝度の減衰を正確に推定することはできず、この点からも本発明による推定方法の優位性が確認できる。
【0038】
<C.ラインヘッドの駆動方法>
本実施形態のラインヘッド1は、上記式(2)に基づいて有機EL素子70の輝度減衰を補正し、初期の輝度を維持させるための輝度減衰補正機構5(図3参照)を備えている。以下ではこの輝度減衰補正機構5、および輝度減衰補正機構5を利用したラインヘッド1の駆動方法について説明する。
【0039】
図3は輝度減衰補正機構5の電気ブロック図であり、図4は輝度減衰補正機構5を利用したラインヘッド1の駆動方法の工程図である。図3に示すように、輝度減衰補正機構5は、シーケンス制御回路20、積算部30、計算部40、「補正部」の一つである駆動電流制御回路50、駆動回路60、有機EL素子70から構成される。このうち、有機EL素子70を除いたものが上記制御回路群10に相当する。制御回路群10の各構成要素は、電子回路を用いて構成することができる。以下、これら各構成要素の機能について述べながら、ラインヘッド1の駆動方法について説明する。
【0040】
まず、ステップS101では、シーケンス制御回路20は、発光のフレーム周期毎に積算部30に対してフレーム同期信号aを出力する。積算部30は、図示しない不揮発性メモリおよびカウンタ回路を備えており、シーケンス制御回路20から入力されたフレーム同期信号aのうち、オン電流を印加されたフレームに対応するものをカウントして積算し、オン電流印加時間tapとして記憶する。
【0041】
ステップS102では、シーケンス制御回路20は、積算部30によって積算されたオン電流印加時間tapを計算部40に出力する。計算部40は、べき乗の演算処理が可能なCPU(Central Processing Unit)を含んでおり、予めメモリに記憶されたL0,D,TD,αと、シーケンス制御回路20から入力されたオン電流印加時間tapとから、上記式(2)に基づいて有機EL素子70の推定の輝度Lを計算する。計算部40は、デジタルデータとして輝度Lを駆動電流制御回路50に出力する。
【0042】
ステップS103では、駆動電流制御回路50が、初期輝度L0の、計算部40から入力された輝度Lに対する比L0/Lに基づいて参照電圧Vrefを駆動回路60に出力する。ここで、駆動電流制御回路50は、図示しないセレクタ、出力補正テーブル、およびDAコンバータを組み合わせて構成されている。駆動電流制御回路50の上記動作は、詳細には以下の工程を含んでいる。まず、セレクタが、計算部40から入力された輝度Lをセレクタ信号として出力補正テーブルを参照し、得られた参照結果をDAコンバータに出力する。DAコンバータは、当該結果を基準電圧Vcenに基づき参照電圧Vrefに変換して駆動回路60に出力する。
【0043】
続くステップS104では、駆動回路60が有機EL素子70に駆動電流を印加し、有機EL素子70が発光する。駆動回路60は図示しないDAコンバータを含んでおり、シーケンス制御回路20から入力される各種制御信号、クロック信号、発光内容に応じたデジタルデータbと、駆動電流制御回路50から入力される参照電圧Vrefとに基づいたタイミングおよび電流量で駆動電流を出力する。ここで、シーケンス制御回路20から駆動回路60に入力されたデジタルデータbは、推定の輝度Lをもとに得られた参照電圧Vrefに基づいてDAコンバータでアナログ電流信号i(駆動電流)に変換される。換言すれば、同じデジタルデータbを駆動回路60に入力しても、推定の輝度Lに応じて異なる値に補正された駆動電流が有機EL素子70に供給される。
【0044】
より詳細には、当該駆動電流は、補正がない場合の駆動電流のL0/L倍に補正される(遡って、駆動電流制御回路50に含まれる出力補正テーブルには、輝度Lに対し、駆動電流をL0/L倍にするような参照電圧Vrefに対応する参照結果が格納されている)。有機EL素子70は、駆動電流の大きさに略比例した輝度で発光するため、上記のようにL0/L倍に補正された駆動電流によれば、常に初期輝度L0で発光する。有機EL素子70の輝度が劣化によって補正前の駆動電流では輝度Lでしか発光しない状態であっても、電流をL0/L倍に補正することによって初期輝度L0での発光が維持されるためである。以上がステップS104に対応する。
【0045】
以上のように、ラインヘッド1は、式(2)を用いることによって、予め輝度減衰曲線を測定せずとも、また当該測定の結果をメモリー等の記憶装置に持たずともオン電流の印加時間tapから輝度減衰を計算し推定することができる。そして、推定された輝度Lをもとに駆動電流を補正するとともに、これらのステップを繰り返すことによって、有機EL素子70の劣化による輝度減衰のない発光を行うことができる。これにより、ラインヘッド1および露光装置100の長寿命化が実現される。ここで、寿命は、保証された輝度が得られる期間を指す。また、各有機EL素子70に対してそれぞれ上記の駆動電流補正を行えば、有機EL素子70間で発光輝度のムラのない、高品位な発光を行うことができる。ここで、上記のうちステップS101が本発明の「第1のステップ」に、ステップS102からステップS104が本発明の「第2のステップ」に、それぞれ対応する。
【0046】
(第2の実施形態)
第1の実施形態のラインヘッド1は、有機EL素子70にオン電流またはオフ電流のいずれかの駆動電流を印加して発光させる装置であるが、これに代えて、オン電流とオフ電流との間の大きさの電流を印加することで中間調発光が可能なラインヘッドとすることもできる。以下では、上記のように構成されたラインヘッド2について説明する。
【0047】
ラインヘッド2を備えた露光装置200の模式斜視図は図1に、また、ラインヘッド2の模式平面図は図2に、それぞれ示されている。ラインヘッド2および露光装置200の構造は、それぞれ第1の実施形態のラインヘッド1および露光装置100と同様である。第1の実施形態と異なる点は、各々の有機EL素子70に、オン電流、オフ電流、およびオン電流とオフ電流との間の大きさの電流のいずれかの駆動電流が印加される点である。
【0048】
こうしたラインヘッド2においては、各々の有機EL素子70に、大きさが逐次変化する駆動電流が印加され、有機EL素子70は様々な輝度(階調)で発光する。ところで、有機EL素子70の劣化の速さは、発光時間とともに発光輝度にも依存し、具体的には、発光輝度を半減させると、有機EL素子70にかかる負荷は約1/3となる。このため、ラインヘッド2においては、単純に駆動電流の印加時間から上記式(2)を用いて輝度減衰を推定することはできない。
【0049】
そこで、本実施形態では、式(2)中のオン電流印加時間tapを換算印加時間tcに置き換えた下記式(3)を用いて輝度減衰の推定を行う。
L=L0×(D/100)^((tc/TD)^α)…(3)
ここで、tcはtc=∫((l(t)/L0)^β)dt(記号「∫」は積分記号を表す)で表され、l(t)は各時刻tにおける有機EL素子70の輝度、L0は有機EL素子70の初期輝度、βは定数である。tcは、各時刻tにおける輝度l(t)の初期輝度L0に対する比を、劣化の輝度依存性を表す定数βでべき乗計算し、これを時間について足し合わせて得られる換算印加時間である。換言すれば、輝度l(t)で表される駆動履歴を持つ有機EL素子70の総負荷は、発光輝度L0で時間tcだけ発光したときの総負荷に等しくなる。よって、tcを用いた式(3)によれば、複雑な駆動履歴をもつ有機EL素子70の輝度減衰を推定することができる。定数βは、有機EL素子70の発光輝度を半減させると負荷が約1/3となることから、1.58(=log1/2(1/3))とするのが好ましい。
【0050】
ラインヘッド2は、上記の推定方法に基づいて有機EL素子70の輝度減衰を補正し、初期の輝度を維持するための輝度減衰補正機構6(図6参照)を備えている。以下ではこの輝度減衰補正機構6、および輝度減衰補正機構6を利用したラインヘッド2の駆動方法について、図6の電気ブロック図、および図7の工程図を用いて説明する。
【0051】
図6に示すように、輝度減衰補正機構6において、シーケンス制御回路20は、駆動回路60とともに積算部30にも発光内容に応じたデジタルデータbを出力し、また、積算部30は、駆動電圧印加時間とデジタルデータbとから換算印加時間tcを計算する。輝度減衰補正機構6の構成および機能は、これらの点以外は第1の実施形態の輝度減衰補正機構5と共通するため、相違点を中心に説明する。
【0052】
まず、ステップS201では、シーケンス制御回路20は、積算部30に対して発光のフレーム周期毎に、フレーム同期信号aおよび発光内容に応じたデジタルデータbを出力する。積算部30は、図示しないCPU、不揮発性メモリおよびカウンタ回路を備えており、前記フレーム同期信号aおよびデジタルデータbから上述の式(3)を用いて換算印加時間tcを計算する。tcの計算に際しては、デジタルデータbに含まれる階調データを輝度l(t)として使用する。
【0053】
ステップS202では、シーケンス制御回路20は、積算部30によって計算された換算印加時間tcを計算部40に出力する。計算部40は、予め入力されたL0,D,TD,αと、換算印加時間tcとから、上記式(3)に基づいて有機EL素子70の推定の輝度Lを計算する。計算部40は、デジタルデータとして輝度Lを駆動電流制御回路50に出力する。
【0054】
ステップS203では、駆動電流制御回路50が、入力された輝度Lに応じた参照電圧Vrefを駆動回路60に出力する。ステップS203の詳細な工程は、第1の実施形態のステップS103と同様である。
【0055】
続くステップS204では、駆動回路60が有機EL素子70に参照電圧Vrefに基づいてL0/L倍に補正された駆動電流を出力し、有機EL素子70は劣化のない状態と同等の輝度で発光する。ステップS204の詳細な工程は、第1の実施形態のステップS104と同様である。
【0056】
以上のように、ラインヘッド2は、上記式(3)を用いることによって、有機EL素子70が中間調発光を含む複雑な駆動履歴をもっていても、換算印加時間tcから輝度減衰を計算し推定することができる。そして、推定された輝度Lをもとに駆動電流を補正するとともに、これらのステップを繰り返すことによって、有機EL素子70の劣化による輝度減衰のない発光を行うことができる。これにより、ラインヘッド2および露光装置200の長寿命化が実現される。また、各有機EL素子70に対してそれぞれ上記の駆動電流補正を行えば、有機EL素子70間で発光輝度のムラのない、高品位な発光を行うことができる。ここで、上記のうちステップS201が本発明の「第1のステップ」に、ステップS202からステップS204が本発明の「第2のステップ」に、それぞれ対応する。
【0057】
(第3の実施形態)
上述の第1および第2の実施形態は、本発明をラインヘッドに適用した例であるが、これに代えて、有機EL表示パネルに適用することもできる。
【0058】
図8に、本発明の「発光装置」としての有機EL表示パネル3の構成を概略的に示すブロック図を示す。この有機EL表示パネル3は、駆動回路60としてのデータ線駆動回路601および走査線駆動回路602と、複数の有機EL素子70を備えている。データ線駆動回路601にはn本のデータ線91が、また、走査線駆動回路602にはm本の走査線92が、それぞれ接続されている。
【0059】
有機EL素子70は、データ線91および走査線92の交差に対応してマトリクス状に配置されており、全体として表示領域90を構成している。有機EL素子70の各々は、データ線駆動回路601および走査線駆動回路602からデータ線91および走査線92を介して印加される駆動電流に応じて発光する。ここで、本実施形態の有機EL素子70は、第2の実施形態と同様に、中間調発光が可能に構成されている。有機EL表示パネル3は、表示領域90において有機EL素子70の発光の集合によって表示を行う装置である。
【0060】
図8には示されていないが、有機EL表示パネル3は、第2の実施形態のラインヘッド2と同様の輝度減衰補正機構6を備えている(図6参照)。図6における駆動回路60が、図8中のデータ線駆動回路601および走査線駆動回路602に相当する。有機EL表示パネル3は、既に詳述した輝度減衰補正機構6の機能により、有機EL素子70が中間調発光を含む複雑な駆動履歴をもっていても、換算印加時間tcから輝度減衰を計算し推定することができる。そして、推定された輝度Lをもとに駆動電流を補正するとともに、これらのステップを繰り返すことによって、有機EL素子70の劣化による輝度減衰のない発光を行うことができる。これにより、有機EL表示パネル3の長寿命化が実現される。また、各有機EL素子70に対してそれぞれ上記の駆動電流補正を行えば、有機EL素子70間で発光輝度のムラのない、高品位な表示を行うことができる。
【0061】
図9は、有機EL表示パネル3を搭載した「電子機器」としての携帯電話機300の模式斜視図である。携帯電話機300は、表示部310および操作ボタン320を有している。表示部310は、内部に組み込まれた有機EL表示パネル3によって、操作ボタン320で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報を表示することができる。携帯電話機300は、輝度減衰を補正可能な有機EL表示パネル3を用いることによって、長寿命化が実現されるとともに、劣化による輝度減衰や表示ムラのない高品位な表示を行うことができる。
【0062】
本実施形態の有機EL表示パネル3は、携帯電話機300の他にも、パーソナルコンピュータ、携帯型電子端末、時計等を始めとする種々の電子機器に適用することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0064】
(変形例1)
上述の各実施形態は、本発明の特性値の推定方法を発光素子の発光輝度に適用した例であるが、本発明の実施にあたってはこれに限定されず、種々の特性値の推定に用いることができる。具体的には、各種素子の材料が、通電、電場の印加、電磁波(X線、紫外線、可視光、赤外線等を含む)、熱などの影響を受けて劣化したときの、その材料の特性に起因する出力の経時的な減衰の推定に用いることができる。例えば、TFT素子の劣化によるオン電圧の変化の推定、液晶の劣化による閾値電圧の変化の推定、電池の劣化による充電容量の変化の推定などに適用することができる。
【0065】
また、上述の各実施形態において発光素子は有機EL素子70であるとしたが、本発明の実施にあたってはこれに限定されず、この他にもLED(Light Emitting Diode)、半導体レーザー、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)、PDP(Plasma Display Panel)等にも適用することができる。
【0066】
(変形例2)
上述の各実施形態では、計算部40によって計算された推定の輝度Lを駆動電流の補正に用いていたが、これに代えて、種々の処理に利用することができる。例えば、駆動電圧の補正や、発光装置の残り使用可能期間の推定などにも用いることができる。
【0067】
(変形例3)
上述した第1の実施形態では、2値表示の発光装置としてラインヘッド1について説明したが、本発明はこの他にも様々な発光装置に適用することができる。例えば、7セグメント型表示装置、バックライトおよびフロントライト等の補助光源として用いられる発光装置、警告ランプ等に用いられる単一の発光素子からなる発光装置、プロジェクタのランプに代表されるような各種電子機器中の光源などにも適用することができる。
【0068】
(変形例4)
上述の各実施形態において、積算部30、計算部40、駆動電流制御回路50はそれぞれ独立した構成要素となっているが、こうした構成に限定する趣旨ではない。上記構成に代えて、積算部30、計算部40、駆動電流制御回路50のうちの2つ、またはすべての構成要素の機能を併せ持った回路を用いた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1および第2の実施形態の露光装置の模式斜視図。
【図2】第1および第2の実施形態のラインヘッドの平面図。
【図3】第1の実施形態の輝度減衰補正機構の電気ブロック図。
【図4】第1の実施形態の発光装置の駆動方法の工程図。
【図5】有機EL素子の劣化による輝度変化の実測値および推定値を示すグラフ。
【図6】第2および第3の実施形態の輝度減衰補正機構の電気ブロック図。
【図7】第2および第3の実施形態の発光装置の駆動方法の工程図。
【図8】第3の実施形態の有機EL表示パネルの構成を概略的に示すブロック図。
【図9】第3の実施形態の携帯電話機を示す模式斜視図。
【符号の説明】
【0070】
1,2…「発光装置」としてのラインヘッド、3…「発光装置」としての有機EL表示パネル、5,6…輝度減衰補正機構、10…制御回路群、20…シーケンス制御回路、30…積算部、40…計算部、50…「補正部」の一つである駆動電流制御回路、60…駆動回路、70…「発光素子」としての有機EL素子、100,200…「電子機器」としての露光装置、300…「電子機器」としての携帯電話機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間tに依存する特性値Lを、下記式によって推定することを特徴とする特性値の推定方法。
L=L0×(D/100)^((t/TD)^α)
ただし、L0は時間t=0における初期特性値、TDは前記特性値Lが前記初期特性値L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【請求項2】
請求項1に記載の特性値の推定方法であって、
前記特性値Lは定電流駆動された発光装置の輝度であり、前記初期特性値L0は前記発光装置の初期輝度であり、前記時間tは前記定電流の印加時間tapであることを特徴とする特性値の推定方法。
【請求項3】
積算部および計算部を有する演算装置を用いて、時間tに依存する特性値Lを推定する方法であって、
前記積算部が前記時間tを演算し、
前記計算部が前記時間tと下記式とを用いて前記特性値Lを計算することを特徴とする特性値の推定方法。
L=L0×(D/100)^((t/TD)^α)
ただし、L0は時間t=0における初期特性値、TDは前記特性値Lが前記初期特性値L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【請求項4】
与えられた入力を当該入力の値に応じた値の出力に変換する素子と、
前記素子が作動された累積の時間tを演算する積算部と、
前記時間tと下記式とに基づいて、前記時間tの経過に伴い初期出力値から減衰した前記素子の現出力値Lまたは当該現出力値Lを反映した特性値を推定する推定部と
を備えることを特徴とする装置。
L=L0×(D/100)^((t/TD)^α)
ただし、L0は時間t=0における初期出力値、TDは前記現出力値Lが前記初期出力値L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記素子に前記入力を与えて作動させる駆動部と、
前記推定部により推定された前記現出力値Lまたは前記特性値に基づいて前記駆動部から前記素子に与えられる入力の値を補正する補正部と
をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
駆動電流の大きさに応じて発光する発光素子と、
オン電流またはオフ電流のいずれかの前記駆動電流を前記発光素子に印加する駆動回路と、
前記オン電流の印加時間tapを演算する積算部と、
前記印加時間tapと下記式とに基づいて定まる輝度Lに応じた補正値を用いて前記駆動電流を補正する駆動電流制御回路と
を含む輝度減衰補正機構を備えることを特徴とする発光装置。
L=L0×(D/100)^((tap/TD)^α)
ただし、L0は前記印加時間tapが0の状態の前記発光素子に前記オン電流を印加したときの初期輝度、TDは前記発光素子に前記オン電流を印加した場合に前記輝度Lが前記初期輝度L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【請求項7】
駆動電流の大きさに応じて発光する発光素子と、
オン電流、オフ電流、および前記オン電流と前記オフ電流との間の大きさの電流のいずれかの前記駆動電流を前記発光素子に印加する駆動回路と、
前記駆動電流の換算印加時間tc=∫((l(t)/L0)^β)dtを演算する積算部と、
前記換算印加時間tcと下記式とに基づいて定まる輝度Lに応じた補正値を用いて前記駆動電流を補正する駆動電流制御回路と
を含む輝度減衰補正機構を備えることを特徴とする発光装置。
L=L0×(D/100)^((tc/TD)^α)
ただし、L0は前記印加時間tcが0の状態の前記発光素子に前記オン電流を印加したときの初期輝度、TDは前記発光素子に前記オン電流を印加した場合に前記輝度Lが前記初期輝度L0のD%になるまでに要する時間、l(t)は各時刻tにおける前記発光素子の輝度、αおよびβは定数である。
【請求項8】
請求項6または7に記載の発光装置であって、
前記補正は、前記駆動電流をL0/L倍とする補正であることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項6または7に記載の発光装置であって、
前記発光素子は有機EL素子を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項6または7に記載の発光装置であって、
前記輝度減衰補正機構は、前記補正を複数の前記発光素子毎に行うことを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか一項に記載の発光装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
駆動回路から印加される駆動電流の大きさに応じて発光する発光素子を備えた発光装置の駆動方法であって、
前記駆動電流の一つであるオン電流の印加時間tapを演算する第1のステップと、
前記印加時間tapと下記式とに基づいて定まる輝度Lに応じた補正値を用いて前記駆動電流を補正する第2のステップとを有すること特徴とする発光装置の駆動方法。
L=L0×(D/100)^((tap/TD)^α)
ただし、L0は前記印加時間tapが0の状態の前記発光素子に前記オン電流を印加したときの初期輝度、TDは前記発光素子に前記オン電流を印加した場合に前記輝度Lが前記初期輝度L0のD%になるまでに要する時間、αは定数である。
【請求項13】
駆動回路から印加される駆動電流の大きさに応じて発光する発光素子を備えた発光装置の駆動方法であって、
前記駆動電流の換算印加時間tc=∫((l(t)/L0)^β)dtを演算する第1のステップと、
前記換算印加時間tcと下記式とに基づいて定まる輝度Lに応じた補正値を用いて前記駆動電流を補正する第2のステップとを有することを特徴とする発光装置の駆動方法。
L=L0×(D/100)^((tc/TD)^α)
ただし、L0は前記印加時間tcが0の状態の前記発光素子に前記オン電流を印加したときの初期輝度、TDは前記発光素子に前記オン電流を印加した場合に前記輝度Lが前記初期輝度L0のD%になるまでに要する時間、l(t)は各時刻tにおける前記発光素子の輝度、αおよびβは定数である。
【請求項14】
請求項12または13に記載の発光装置の駆動方法であって、
前記第1のステップおよび前記第2のステップを複数の前記発光素子毎に行うことを特徴とする発光装置の駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−349504(P2006−349504A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176029(P2005−176029)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】