説明

現像ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】各層間の密着性を向上させると同時に、トナーの固着ムラを抑制した現像ローラを提供する。
【解決手段】導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の外周面に弾性層および表面層が順次積層された構造の現像ローラにおいて、核部と該核部から放射状に伸びる4本の針状結晶部とからなる酸化亜鉛が該弾性層と該表面層との界面に存在している現像ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ及びそれを用いたプロセスカートリッジ等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられている現像ローラは、トナー供給部材から感光体表面までトナーを搬送し、また摺擦によってトナーを帯電する役割を有している。さらに現像ローラ自身が他部材からの押圧により、凹みが生じるとその凹み部分において、トナーの薄膜形成が上手く行われないため、画像に影響を及ぼす。そのため、凹み量を抑える必要もある。これらのように、現像ローラは多岐に亘る特性を満たすために、複数の層の積層構成として、機能分離を図ることが提案されている。ここで、複数層の積層構成とする場合、それらの界面での密着性が非常に重要となる。界面の密着性が低すぎると、摺擦によって剥れが生じる場合がある。特許文献1には、下層として使用されているシリコーンゴム層の表面を粗すことによって、上層のフッ素系高分子物質との密着性を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−081135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献1に係る方法では、層間の密着性は未だ十分ではなかった。また、下層の表面を粗面化させることで、上層の膜厚の均一性が損われる場合があり、上層の膜厚ムラは、現像ローラの表面に形成されるトナー層の膜厚ムラの原因となることがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、良好なトナー搬送性能を有し、かつ、耐久性に優れた積層構造を有する現像ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る現像ローラは、導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の外周面に弾性層および表面層が順次積層された構造の現像ローラにおいて、核部と該核部から放射状に伸びた4本の針状結晶部とからなる酸化亜鉛が該弾性層と該表面層の両層の界面に存在していることを特徴とする現像ローラである。
【0007】
本発明に係るプロセスカートリッジは、現像ローラを備えた、電子写真装置に着脱可能な電子写真プロセスカートリッジにおいて、該現像ローラが前記現像ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジである。
【0008】
本発明に係る電子写真装置は、回転可能な感光体に接触させて該感光体の表面に電荷を供給する帯電部材と、該感光体の表面に画像情報を記録する露光手段と、該感光体に接触させて該感光体の表面にトナーを供給する現像ローラと、該トナーを記録媒体に転写する転写部材と、定着部材と、該定着部材とニップ部を形成し該ニップ部により該記録媒体を圧接して搬送する加圧部材と、を具備する電子写真装置において、該現像ローラが前記現像ローラであることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各層間での密着性を十分に有し、かつ現像ローラ表面でのトナーの固着具合にムラが生じにくい現像ローラを提供することが出来る。またこの利点から、プロセスカートリッジ及び電子写真装置における現像ローラとして用いた場合には、長期間に亘って高品位な画像を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る現像ローラの説明図である。
【図2】本発明で用いられる導電性軸芯体への弾性材料の塗布装置である。
【図3】本発明に係る電子写真装置である。
【図4】本発明に係るプロセスカートリッジである。
【図5】本発明で用いられる表面形成用材料の塗布装置である。
【図6】本発明で用いられる現像ローラの評価装置である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明の製造方法で製造した現像ローラの概略図を図1に示す。図1は現像ローラの長手方向に平行な断面を表す。図1の現像ローラは、導電性軸芯体11の外周面上に、弾性層12および表面層13が順次積層された構造である。また、核部と該核部から放射状に伸びる4本の針状結晶部とからなる酸化亜鉛14が弾性層12および表面層13の界面に存在している。
【0013】
<導電性軸芯体>
導電性軸芯体は、弾性層を支持可能な強度を有し、かつ導電性を有すればいずれであってもよい。
【0014】
<弾性層>
弾性層を構成する材料としては、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴムが挙げられる。これらの材料は単独、又は複数種を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの材料の発泡体を弾性層に用いても良い。
【0015】
弾性層に用いられる弾性材料を導電化する手段として、イオン導電機構、または電子導電機構による導電付与剤を弾性材料に添加することにより導電化する手法が広く知られている。これらイオン導電機構、電子導電機構による導電付与剤は、単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。この中でも、電子導電機構を有するカーボンブラックは導電性の制御が容易であり、また経済的であるなどの観点から好ましい。
【0016】
上記弾性層に用いる弾性材料の体積抵抗率は1×104Ω・cm乃至1×1011Ω・cmの範囲にあることが好ましい。弾性材料の体積抵抗率が上記範囲であれば、現像ローラの弾性層として使用した際にトナーを適切に帯電することができる。弾性材料の体積抵抗率は以下の方法で求めることができる。
【0017】
抵抗計としてデジタル超高抵抗/微少電流計(商品名:8340A、アドバンテスト社製)を用い、以下の条件で測定を行う。
測定モード:プログラムモード5(チャージ及びメジャー30秒、ディスチャージ10秒)、印加電圧:100(V)、
試料箱:レジスティビティ・チェンバTR42(アドバンテスト社製)、
主電極:直径22mm厚さ10mmの金属、
ガードリング電極:内径41mm、外径49mm、厚さ10mmの金属。
【0018】
測定サンプルは以下の手順で作成する。まず、弾性材料をシート状にし、成型条件と同条件で弾性材料を硬化して、厚みを2.0mmのテストピースを作製する。次にこのテストピースから直径56mmの試験片を切り出す。試験片の一方の面には、その面全体にPt−Pd蒸着を行うことで蒸着膜電極(裏面電極)を設ける。また試験片の他方の面には同じくPt−Pd蒸着膜により、直径25mmの主電極膜と、内径38mm、外径50mmのガードリング電極膜を同心状に設ける。なお、Pt−Pd蒸着膜を形成する際には、マイルドスパッタE1030(日立製作所製)を用い、電流値15mAにて蒸着操作を2分間行う。蒸着操作を終了したものを測定サンプルとする。
【0019】
測定時には、直径22mmの主電極を、直径25mmの主電極膜からはみ出さないように置く。また、内径41mmのガードリング電極を、内径38mmで外径50mmのガードリング電極膜からはみ出さないように、該電極膜の上に置いて測定する。測定は、温度23℃、湿度55%RHの環境下で行う。測定前に測定サンプルを同環境に24時間以上放置しておく。
【0020】
以上の状態で、試験片の体積抵抗値(Ω)を測定する。次に、測定した体積抵抗値をRM(Ω)、試験片の厚さをt(cm)とするとき、試験片の体積抵抗率RR(Ω・cm)を、以下の式によって求める。
RR(Ω・cm)=π×1.25×1.25×RM(Ω)÷t(cm) 。
【0021】
弾性層には、上記組成の機能を阻害しない範囲で、その他必要に応じて可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、架橋剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0022】
<表面層>
本発明では現像ローラに求められる帯電付与性能や耐磨耗性を向上させるために、弾性層の表面に表面層が設けられている。使用可能な表面材料や導電化手段としては、弾性層についての記載した材料や手法を同様に用いることが出来る。表面層の厚みは、5〜40μmが好ましい。表面層の厚みがこの範囲であれば、弾性層の弾性率などの物理的特性を活かしつつ、帯電付与性能や耐磨耗性の特性を高めることが可能である。
【0023】
<酸化亜鉛>
本発明に係る現像ローラの弾性層と表面層との界面には、核部と該核部から放射状に伸びた4本の針状結晶部とからなる酸化亜鉛が存在している。この酸化亜鉛の針状結晶部は、異なる4軸方向に伸び、かつ両層にまたがることによってくさび効果を発揮し、弾性層と表面層の密着性を向上させる。核部から放射状に伸びる針状結晶部の長さの目安としては、表面層の厚みに対して、0.30倍以上、0.80倍以下である。針状部の長さをこの範囲とすることで、表面層の厚みに対して食い込む酸化亜鉛の針状結晶部の長さが適度なものとなり、良好なくさび効果を発揮し、密着性向上の効果をより確実に享受し得る。
【0024】
<現像ローラの製造>
図2は、本発明で弾性層を形成する際に使用可能なリング成型法を用いた装置を示す概略図である。図2に示すように架台201の上に略垂直にコラム202が取り付けられ、さらに架台201とコラム202の上部に精密ボールネジ203が略垂直に取り付けられている。214はガイドであり精密ボールネジ203と平行に2本がコラム202に取り付けられている。
【0025】
ステージ204はガイド214と精密ボールネジ203と連結し、サーボモータ205よりプーリ206を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。
【0026】
コラム202には導電性軸芯体の外周面に弾性層形成用の材料を吐出するためのリング形状の塗工ヘッド208が取り付けられている。
【0027】
さらにステージ204にブラケット207が取り付けられ、ブラケット207には、前記導電性軸芯体11を保持し固定するワーク下保持軸209が略垂直に取り付けられている。また、逆側の導電性軸芯体11を保持するワーク上保持軸210の中心軸がブラケット207の上部に取り付けられ、ワーク上保持軸はワーク下保持軸209に対向して略同心となるように配置して導電性軸芯体11を保持している。さらにリング形状の塗工ヘッド208の中心軸はワーク下保持軸209とワーク上保持軸210の移動方向と平行になるようにそれぞれに支持されている。また、ワーク下保持軸209およびワーク上保持軸210が昇降移動時において塗工ヘッド208の内側に開口した環状スリットになっている吐出口の中心軸と、ワーク下保持軸209およびワーク上保持軸210の中心軸が略同心となるように調節してある。このような構成により塗工ヘッド208の環状スリットになっている吐出口の中心軸を軸芯体の中心軸に略同心に合わせることができ、リング形状の塗工ヘッドの内周面と前記導電性軸芯体11の外周面との間に均一な隙間が形成される。
【0028】
また、弾性層形成用の材料供給口211は、材料搬送用の配管212を介して材料供給弁213に接続されている。材料供給弁213は、その手前に混合ミキサー、材料供給ポンプ、材料定量吐出装置、材料タンク等を備え、塗膜形成中に弾性層形成用の材料を連続的に定量(単位時間当たりの量が一定)吐出できる構成になっている。
【0029】
このようにリング形状の塗工ヘッドを用いると、導電性軸芯体に直接弾性層形成用の材料を適用して塗膜を形成することが可能である。弾性層形成用材料塗布の際、塗布される導電性軸芯体と塗工ヘッドの中心軸は常に重なるように、図2のような装置で固定されている。このため、導電性軸芯体の外周面に直交する方向に均一な塗膜形成を行うことができ、形状精度に優れる塗膜付きローラを得ることができる。
【0030】
本発明では、上記工程によって得られた塗膜付きローラに対し、核部と該核部から放射状に伸びた4本の針状結晶部とからなる酸化亜鉛をまぶすことによって、酸化亜鉛の針状結晶部の一部分を塗膜付きローラへ埋め込むことができる。塗膜付きローラに対して、酸化亜鉛をまぶす方法は、特に限定されないが、容易な方法としては以下の方法が挙げられる。例えば、酸化亜鉛を直接塗膜付きローラに吹き付ける方法、または、酸化亜鉛を揮発性の溶媒(例えば、エタノールなど)に分散し、その分散液を塗膜付きローラ表面上に噴霧した後、溶媒を揮発させる方法がある。その際、溶媒には塗膜を溶かさないものを選択する必要がある。
【0031】
本発明に係る酸化亜鉛が有する4本の針状結晶部は、核部から放射状に伸びているため、全ての針状結晶部が塗膜に埋め込まれる可能性は低いと考えられる。そして、まぶされる際の酸化亜鉛の方向によって少なくとも1本の針状結晶部が塗膜に埋め込まれると共に、他の1〜3本の針状結晶部は、塗膜からは露出した状態で塗膜表面に存在していると考えられる。そこで、次に塗膜を硬化させて弾性層を形成する。こうすることで、酸化亜鉛が弾性層に埋め込まれ、弾性層に固定されてなる弾性ローラが得られる。
【0032】
弾性層や表面層の形成時の塗膜の硬化工程に用いられる加熱装置としては、熱風乾燥炉などの既知の加熱装置を用いることが可能であるが、短時間で昇温可能な手段として、赤外線による加熱手段が好ましい。加熱手段として、赤外線を用いることで、上述したリング成型法を用いて形状精度よく形成された塗膜付きローラの形状を変化させることなく短時間で加熱し、硬化することが可能である。
【0033】
また、弾性層の外周面に表面層形成用材料を塗布する方法としては、ディッピング法、ロール塗工法、リングコート法およびスプレー塗工法など一般に知られている塗工法を用いることが出来る。その中でも、厚みを制御しやすいなどの理由からディッピング法を用いることが好ましい。以上のように、酸化亜鉛の4本の針状結晶部のうちの1〜3本が埋め込まれた弾性ローラに、表面層形成用材料を塗布し、硬化させることで、弾性層に埋め込まれていない酸化亜鉛の針状結晶部が、表面層で覆われる。こうすることで、4本の針状結晶部が弾性層と表面層の各々に入り込んだ状態となり、そのくさび効果によって弾性層と表面層との層間密着性が高まった本発明に係る現像ローラが得られる。
【0034】
<プロセスカートリッジ及び電子写真装置>
本発明の現像ローラは、電子写真装置に着脱可能な電子写真プロセスカートリッジにおいて用いることができる。
【0035】
また、回転可能な感光体に接触させて該感光体の表面に電荷を供給する帯電部材と、該感光体の表面に画像情報を記録する露光手段と、該感光体に接触させて該感光体の表面にトナーを供給する現像ローラと、該トナーを記録媒体に転写する転写部材と、定着部材と、該定着部材とニップ部を形成し該ニップ部により該記録媒体を圧接して搬送する加圧部材と、を具備する電子写真装置において、本発明の現像ローラを用いることができる。
【0036】
次に、本発明の現像ローラが用いられる一般的な電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真装置について説明する。
【0037】
一般的に電子写真装置は、回転可能な感光体及び以下の部材を具備する。
・該感光体に接触し、該感光体表面を一様に帯電するための帯電部材、
・該感光体表面に画像情報を記録する(静電潜像を形成する)ための露光手段、
・該感光体に接触して該感光体表面にトナーを現像ローラにより供給して、静電潜像を現像してトナー像とするための現像部材、
・該トナー像を記録媒体に転写するための転写部材、
・該転写部材上に転写したトナー像を定着するための定着部材、
・該定着部材とニップ部を形成し、該ニップ部により該転写材を圧接して搬送する加圧部材。
【0038】
一例として、図3に、本発明の現像ローラを具備した電子写真プロセスカートリッジを用いた電子写真画像形成装置の概略構成を示す。
【0039】
図3に示す電子写真画像形成装置は、黒、シアン、マゼンタ及びイエローの画像を形成するタンデム型のカラー画像形成装置であり、それぞれの色に対応して電子写真プロセスカートリッジが設けられている。なお、電子写真プロセスカートリッジは、それぞれの色に対応して仕様等に違いがあるものの基本構成は同じである。以下においては、これら共通する構成について説明する。図4は、電子写真プロセスカートリッジの概略断面図を示したものである。
【0040】
現像ローラ301を備えた現像装置305は、現像ローラ301、トナー供給ローラ302、トナー303及びトナー量規制部材304からなっている。そして、電子写真画像形成装置に着脱可能な電子写真プロセスカートリッジは、現像装置305に加え、感光体306、クリーニングブレード307、廃トナー収容容器308及び帯電部材309も含めて形成される。しかし、使用する電子写真画像形成装置によっては、現像装置以外の部材は電子写真画像形成装置側に備え付けられており、電子写真プロセスカートリッジは現像装置305単体からなる場合もある。電子写真プロセスカートリッジは、ある一定回数画像出力を行うことによって、寿命を迎える。その後、電子写真プロセスカートリッジは新しいものに交換され、電子写真画像形成装置は再び画像出力が可能になる。
【0041】
現像装置305は、トナー303を収容した現像容器と、現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光体306と対向設置された現像ローラ301とを備え、感光体306上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0042】
トナー供給ローラ302としては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体上にレーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造とすることが、現像ローラ301へのトナー供給及び未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。例えば、軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた弾性ローラを用いることができる。
【0043】
ここで、画像出力までの画像形成プロセスの概略を説明する。感光体306は矢印方向に回転し、感光体306を帯電処理するための帯電部材309によって一様に帯電される。次に感光体306に静電潜像を書き込む露光手段310(例えばレーザー光)により、静電潜像が形成される。静電潜像は、感光体306に対して接触配置される現像装置305によってトナーが付与され、トナー像として可視化(現像)される。
【0044】
可視化された感光体306上のトナー像は、感光体306の回転に同期して送られてくる記録紙312に転写部材311によって転写される。トナー像が転写された記録紙312は、定着部材313により定着処理され、装置外に排紙され一連の画像形成プロセスは終了する。なお、記録紙312は搬送ベルト上に担持され、トナー像の形成に同期して搬送されている。そして、該記録紙312には、各色のトナー像が順次積層されてカラーのトナー像が形成される。最後の画像形成装置でトナー像が重畳転写された後、搬送ベルトから剥離され、定着部材313へ送られ、一括定着処理がされ、カラー画像が形成される。
【0045】
一方、記録紙に転写されずに感光体306表面に残存したトナーは、クリーニングブレード307により掻き取られ、掻き取られたトナーは廃トナー収容容器308に収納される。一方、クリーニングされた感光体306は次の画像形成に備える。
【実施例】
【0046】
〔実施例1〕
以下の手順により、本発明の現像ローラを製造した。
【0047】
1.酸化亜鉛の準備
核部と該核部から放射状に伸びた4本の針状結晶部とからなる酸化亜鉛(商品名:パナテトラWZ−501、株式会社アムッテク社製)を用意した。エタノール100質量部に対し、この酸化亜鉛30質量部を分散し、この分散液を金網(目開き0.020mmの635メッシュ)に通した後、エタノールを揮発させることで残った酸化亜鉛を使用した。この酸化亜鉛の針状結晶部の長さについて、各酸化亜鉛について、2本ずつ光学顕微鏡で測定した。100個の酸化亜鉛について測定して得られたデータ200個の相加平均を針状部の長さとした。その結果を表1に示す。
【0048】
2.弾性ローラの作製
分子量100000の液状シリコーンゴム100質量部にカーボンブラック(商品名:トーカブラック#4400、東海カーボン社製)を14質量部加えた配合物を準備した。上記の配合物をプラネタリーミキサーによって30分間混合脱泡し、ベース材料を得た。さらにこのベース材料100質量部に対して、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金含有量3質量%)0.02質量部を加えて混合物Aとした。また、ベース材料100質量部に対して、粘度10cpsのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH含有量1質量%)1.5質量部を加えて混合し混合物Bとした。この混合物A及び混合物Bを塗工機に付随した2つの原材料タンクにそれぞれセットし、圧送ポンプを使用してスタチックミキサーに送り出し混合物Aと混合物Bを1:1の質量比率で混合し、弾性層形成用の材料を得た。
【0049】
この弾性層形成用の材料を図2に示した装置を使用し、塗膜の形成を行った。先ず、直径6mmのSUS304製の芯金を導電性軸芯体としてワーク保持軸部に配置し、上保持軸と下保持軸でクランプした後、導電性軸芯体を塗工開始位置まで下降して停止させた。ついで、リング形状の塗工ヘッド(内径12.6mm)を用いて、前記弾性層形成用材料の吐出を開始した。導電性軸芯体をリング形状の塗工ヘッド内に長手方向に20mm/secで通過させることによって、前記弾性層形成用材料の塗膜形成を行い、塗膜付きローラを得た。
【0050】
別途準備しておいた酸化亜鉛を再度エタノールに分散させ、その分散液を塗膜付きローラ表面に噴霧した後、室温においてエタノールを揮発させることで、表面に酸化亜鉛をまぶした塗膜付きローラを得た。
【0051】
このローラを30rpmで回転させながら、赤外線ヒータ(ハイベック社製HYL25:ワークヒータ距離60mm、出力780W)によって1分間、加熱して塗膜を硬化させた。その後、弾性層材料中の反応残渣及び未反応低分子分を除去する等を目的として、温度200℃で2時間の熱処理を行い、弾性層の形成を行い、弾性ローラを得た。このとき、弾性ローラの外径は12mmであった。
【0052】
3.表面層の形成
表面層形成用材料として、以下の材料にMEKを50質量部加え、撹拌モーターで混合撹拌を700rpm、1時間の条件下で行った混合溶液を用意した。
・ポリオール(商品名:タケラックTE5060、三井武田ケミカル社製)100質量部、
・イソシアネート(商品名:コロネート2521、日本ポリウレタン株式会社製)77質量部、
・カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製)24質量部。
【0053】
続いて、上記混合溶液を横型分散機(商品名:NVM-03、アイメックス社製)で周速7m/sec、流量1.7cm3/s、分散液温度15℃の条件下で2時間均一分散し、分散液を得た。この分散液にさらにMEKを加え、固形分を20質量%に調製した。続いて、この溶液を380メッシュの網でろ過して表面層用の塗料を調合した。
【0054】
本実施例で表面層形成用材料の塗布に用いた塗布装置の概略図を図5に示す。塗布装置には、浸漬槽51が設けられる。浸漬槽51は弾性ローラの外径よりわずかに大きな内径と、弾性ローラの軸方向長より長い深さを備えた円筒形を有し、軸方向を垂直方向にして設置される。その上端部外周には環状の液受が設けられ、液受け部はその底面に接続される管により、攪拌タンク53に接続される。一方、浸漬槽51の底部は管を介して表面層形成用塗料を循環させる液送ポンプ52に接続され、更に、液送ポンプ52と攪拌タンク53を接続する管によって攪拌タンク53に接続される。攪拌タンク53には内部に収納する表面層用の塗料を攪拌するための攪拌翼が設けられる。
【0055】
この塗布装置には、浸漬槽の上部において昇降板を浸漬槽の軸方向に昇降させる昇降装置54が設けられ、昇降板に懸架される弾性ローラを浸漬槽中に進入、後退可能となっている。
【0056】
浸漬槽内に前記弾性ローラを侵入速度100mm/sで浸漬させた。弾性ローラ全体を浸漬させた状態で、10 秒間停止させた後に、初速300mm/s、終速200mm/sの条件で引き上げて室温において10分間、指触乾燥させた。次いで、温度140℃にて2時間加熱処理することで塗膜を硬化させて、本発明の現像ローラを得た。
【0057】
4.表面層の厚み測定
現像ローラを温度25℃、湿度45%RHの環境に24時間放置した。その後、同環境下において、現像ローラの長手方向両端から20mm内側部分および、中央部分の合計3箇所から、鋭利な剃刀を使用して、現像ローラ長手方向の中心軸に対する垂直面と平行に切り込みを入れて、扇形状のサンプルを切り出した。これら3個のサンプルの断面を、光学顕微鏡によって、倍率2000倍に拡大し、各サンプルについて表面層の厚みをランダムに10点測定した。これら測定によって得られた30点の厚みを相加平均し、表面層の厚みとした。
【0058】
5.密着性の評価
電子写真プロセスカートリッジ(商品名:トナーカートリッジ311(マゼンタ)、キヤノン株式会社製)内部のトナーを全部抜きとったものを使用し、本発明の現像ローラを組み込んだ。この電子写真プロセスカートリッジを温度10℃、湿度10%RHの環境に24時間以上放置し、十分にエージングを行った。放置後、同環境下において、電子写真プロセスカートリッジを電子写真画像形成装置本体(商品名:LBP5300、キヤノン株式会社製)に搭載し、ベタ白画像を100枚出力した。
【0059】
その後、この電子写真プロセスカートリッジから現像ローラを取り出し、弾性層端部近傍の表面層を観察し、下記基準で評価を行った。
A:表面層の剥離がない。
B:表面層に若干の剥離が見られる。
C:表面層に剥離が見られる。
これらの評価結果を表1に示す。
【0060】
6.固着ムラの評価
電子写真プロセスカートリッジ(商品名:トナーカートリッジ311(マゼンタ)、キヤノン株式会社製)に本発明の現像ローラを組み込んだ。この電子写真プロセスカートリッジを継続して使用し、温度10℃、湿度10%RHの環境に24時間以上放置し、十分にエージングを行った。同環境下において電子写真画像形成装置本体(商品名:LBP5300、キヤノン株式会社製)に搭載し、印字率2%のドット画像の出力を続け、カートリッジ交換の表示が出た後、さらに500枚画像出力を行った。
【0061】
画像出力終了後、電子写真プロセスカートリッジより現像ローラを回収した。この現像ローラに対し、エアーを吹き付け、現像ローラ表面上のトナーを除去した。その後、現像ローラ表面の長手方向に粘着テープ(商品名:メンディングテープ810−3−12、住友スリーエム株式会社製)を貼り付けた。この現像ローラを図6のように直径20mmの金属ローラ61上に配置し、導電性軸芯体の両端にそれぞれ2.94Nの荷重をかけて、金属ローラ61と圧接させた。このとき、現像ローラ62は金属ローラ61に従属して回転可能な状態であり、かつ粘着テープ63で覆われている面は上向きとなるよう配置した。この状態から現像ローラを20rpmの速度で4回転させ、現像ローラと金属ローラの圧接により粘着テープを貼り付けた。その後、現像ローラを5分間放置した後、現像ローラ表面に対して垂直方向に20mm/secの速度で粘着テープを剥すことによって、現像ローラ表面の固着物を剥がした。
【0062】
粘着テープを剥した後、その粘着テープを光学顕微鏡によって観察し、トナーの固着ムラについて下記基準で評価を行った。
A:トナー固着自体が少ない、もしくはトナー固着がほぼ均一に付いている。
B:トナー固着にわずかにムラが見られる。
C:トナー固着にムラが見られる。
これらの評価結果を表1に示す。
【0063】
〔実施例2〜13〕
各実施例において、以下に記載の条件を採用した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを製造し、評価した。製造条件および評価結果を表1に示す。
1.酸化亜鉛
実施例2、5、7、11及び12では核部と該核部から放射状に伸びた4本の針状結晶部とからなる酸化亜鉛(商品名:パナテトラWZ−501)をメッシュを通さずに用いた。実施例8では、針状結晶部の長さ20μm酸化亜鉛(商品名:パナテトラWZ−501)を用いた。また、実施例3及び13では、針状結晶部の長さ20μmの酸化亜鉛(商品名:パナテトラWZ−501L)を用いた。尚、これらの実施例3、8及び13の酸化亜鉛は分散液を金網(目開き0.043mmの325メッシュ)に通したものである。
2.表面層の形成
表面層用の塗料の固形分濃度(質量%)を表1に示す値とした。また、実施例3、5、8及び11では、指触乾燥後に、同条件で再度塗料を塗工し、次いで、温度140℃にて2時間加熱処理した。
【0064】
〔比較例1〜5〕
各比較例において、以下に記載の条件を採用した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを製造し、評価した。製造条件および評価結果を表1に示す。
【0065】
比較例1では、弾性ローラの製造工程において、酸化亜鉛をまぶす工程を省いた。
【0066】
比較例2では、弾性ローラの製造工程において、酸化亜鉛をまぶす工程を省き、また、表面層の形成条件は実施例2と同じ条件にした。
【0067】
比較例3では、弾性ローラの製造工程において、酸化亜鉛をまぶす工程を省き、また、表面層の形成条件は実施例5と同じ条件にした。
【0068】
比較例4では、弾性ローラの製造工程において、酸化亜鉛をまぶす工程を省き、また、表面層の形成条件は実施例3と同じ条件にした。
【0069】
比較例5では、酸化亜鉛として、直径5μmの球形の酸化亜鉛(商品名:LPZINC−11、堺化学工業株式会社製)を使用した。
【0070】
〔評価結果〕
上記実施例1〜13と比較例1〜5の結果から以下のことが確認された。
まず、本発明の酸化亜鉛が、弾性層と表面層の両層にまたがった状態で存在することによって、両層の密着性が飛躍的に向上していることが確認された。また、比較例5では、球形の酸化亜鉛を使用しているが、本発明の酸化亜鉛ほどの効果は得られなかった。球形では、摺擦方向に対しての楔効果が小さいため、密着性の向上が限定的だったと推測される。
【0071】
さらに、本発明の酸化亜鉛では、針状結晶部分が表面層内部に存在しても表面層の厚み方向に占める酸化亜鉛の体積比率は非常に小さくて済む。そのため、表面層の物性にムラが出来にくく、トナーの固着ムラが見られなかった。しかし、球形の酸化亜鉛を使用した際には、表面層の厚み方向に占める酸化亜鉛の割合が大きいため、場所によって表面層の物性にムラが発生し、その結果トナーの固着ムラが確認された。
【0072】
さらに、針状結晶部の長さが表面層の膜厚に対して小さすぎる場合(実施例9及び11)には、楔効果の低減によって、密着性の低下が見られた。逆に針状結晶部の長さが表面層の膜厚に対し、大きすぎる場合(実施例12及び13)には、画像出力の繰り返しによって耐久試験終盤の画像に現像ローラに付随する周期で小さい斑点が軽微に確認された。これは、画像出力を繰り返す間に表面層が摩耗して、針状結晶部の先端が表面層から飛び出し、その部分でトナー薄膜形成が上手く行われなくなって画像に表れたのではないかと推測される。
【0073】
【表1】

【符号の説明】
【0074】
11 導電性軸芯体
12 弾性層
13 表面層
14 核部から放射状に伸びる4本の針状結晶部を有する酸化亜鉛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体と、該導電性軸芯体の外周面に弾性層および表面層が順次積層された構造の現像ローラにおいて、核部と該核部から放射状に伸びた4本の針状結晶部とからなる酸化亜鉛が該弾性層と該表面層の両層の界面に存在していることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
現像ローラを備えた、電子写真装置に着脱可能な電子写真プロセスカートリッジにおいて、該現像ローラが請求項1に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項3】
回転可能な感光体に接触させて該感光体の表面に電荷を供給する帯電部材と、該感光体の表面に画像情報を記録する露光手段と、該感光体に接触させて該感光体の表面にトナーを供給する現像ローラと、該トナーを記録媒体に転写する転写部材と、定着部材と、該定着部材とニップ部を形成し該ニップ部により該記録媒体を圧接して搬送する加圧部材と、を具備する電子写真装置において、該現像ローラが請求項1記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−47972(P2012−47972A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189905(P2010−189905)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】