説明

現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】リサイクル工場にて現像装置がリサイクルされる場合等であっても、現像装置単体で現像ローラの磨耗劣化の程度を容易に把握することができる、現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】1成分現像方式の現像装置に設置される現像ローラ13aであって、帯電トナーが担持される表面層13a1と、表面層13a1の内周面に内接する表面下層13a2と、を備える。そして、表面下層13a2は、表面層13a1が他部材との摺接により磨滅したときに、その状態を視認するための識別マークHが上面に発現するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置における1成分現像方式の現像装置に設置される現像ローラと、それを備えた現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、トナーのみからなる1成分現像剤(添加剤等を添加する場合も含むものとする。)を用いて現像工程をおこなう1成分現像方式の現像装置が知られている(例えば、特許文献1〜4等参照。)。
【0003】
このような1成分現像剤を用いた現像装置には、感光体ドラム(像担持体)に対向する位置(又は、摺接する位置)に、現像ローラ(現像スリーブ)が設置されている。この現像ローラの表面層は、帯電トナーを担持して感光体ドラム上の潜像を良好に現像するために、特定の導電性樹脂材料で形成されている。また、この現像ローラの外周面には、現像ローラ上に担持されたトナーを薄層化するためのドクターブレード等の他部材が摺接するように構成されている。そのため、現像装置の長時間の稼働によって、現像ローラの表面層が徐々に磨耗劣化していくことが知られている。
【0004】
一方、特許文献1には、画像形成装置本体に設置された反射光量検知装置を用いて現像ローラの表面の磨耗度を検知する技術が開示されている。
また、特許文献2には、現像ローラの磨耗にともない現像能力が低下するように現像ローラを構成して、画像形成装置にて出力された画像品質から現像ローラの磨耗の程度を判断する技術が開示されている。
また、特許文献3、4等には、画像形成装置の稼働時間やプリントモード等の情報から現像装置等の交換ユニットの交換時期を予測判断して、ユーザーに報知する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の技術では、画像形成装置を実際に扱うユーザーやサービスマンは、現像装置の現像ローラの磨耗劣化を認識することができるが、リサイクル工場にて現像装置を単体で扱う作業者は現像ローラの磨耗の程度を容易に把握することができなかった。
詳しくは、現像装置の現像ローラは、画像品質の良否を決定するキーパーツである反面、高価な部品であるために、現像装置のリサイクル時において、現像ローラの表面層に磨耗劣化が生じていない場合にはそのまま再使用して、磨耗劣化が生じている場合にのみ新品のものに交換・設置することが望ましい。しかし、リサイクル工場には、画像形成装置から取出された現像装置のみが単体で回収される場合が少なくない。そのような場合には、ユーザーのもとで画像形成装置に設置された状態で現像ローラの磨耗劣化が認識されても、その情報が現像装置とともにリサイクル作業者に正確かつ確実に伝達されない限り、リサイクル作業者はその情報に基づいて現像ローラの交換の要否を判断することができなかった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、リサイクル工場にて現像装置がリサイクルされる場合等であっても、現像装置単体で現像ローラの磨耗劣化の程度を容易に把握することができる、現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の請求項1記載の発明にかかる現像ローラは、1成分現像方式の現像装置に設置される現像ローラであって、その外周面に帯電したトナーが担持される表面層と、前記表面層の内周面に内接するように積層された表面下層と、を備え、前記表面下層は、前記表面層の一部又は全部が他部材との摺接により磨滅したときに、その状態を視認するための識別マークが上面に発現するように形成されたものである。
【0008】
また、請求項2記載の発明にかかる現像ローラは、前記請求項1に記載の発明において、前記表面下層は、少なくともその上面に顕色剤と発色剤とが分散して含有され、前記表面層が前記他部材との摺接により磨滅したときに前記他部材との摺接により前記顕色剤と前記発色剤とが混ざり合って前記発色剤が発色して前記識別マークが発現するように形成されたものである。
【0009】
また、請求項3記載の発明にかかる現像ローラは、前記請求項2に記載の発明において、前記顕色剤と前記発色剤とは、それぞれ、マイクロカプセルに包含された状態で前記表面下層に含有されたものである。
【0010】
また、請求項4記載の発明にかかる現像ローラは、前記請求項3に記載の発明において、前記マイクロカプセルは、光又は/及び空気に直接的に接触することにより破包するものである。
【0011】
また、請求項5記載の発明にかかる現像ローラは、前記請求項2〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記表面下層は、前記発色剤が前記識別マークに対応した形状及び位置にて含有され、前記顕色剤が前記発色剤の周囲に近接して含有されるように形成されたものである。
【0012】
また、請求項6記載の発明にかかる現像ローラは、前記請求項1に記載の発明において、前記表面下層は、少なくともその上面にトナーとの相互作用によって発色する化学物質が含有され、前記表面層が前記他部材との摺接により磨滅したときに前記化学物質がトナーと混ざり合って前記化学物質が発色して前記識別マークが発現するように形成されたものである。
【0013】
また、請求項7記載の発明にかかる現像ローラは、前記請求項1に記載の発明において、前記表面下層は、その上面に前記識別マークが予めマーキングされ、前記表面層が前記他部材との摺接により磨滅したときに前記識別マークが発現するように形成されたものである。
【0014】
また、請求項8記載の発明にかかる現像ローラは、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記表面下層は、酸化剤が含有されたものである。
【0015】
また、請求項9記載の発明にかかる現像ローラは、前記請求項1〜請求項8のいずれかに記載の発明において、前記表面下層は、その上面に前記識別マークが発現した状態で、前記識別マークが形成された部分の電気抵抗値と、前記識別マークが形成されていない部分の電気抵抗値と、が異なるように形成されたものである。
【0016】
また、この発明の請求項10記載の発明にかかる現像装置は、画像形成装置の装置本体に対して着脱自在に設置されるとともに、像担持体上に形成された潜像を現像する1成分現像方式の現像装置であって、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の現像ローラが設置されたものである。
【0017】
また、この発明の請求項11記載の発明にかかるプロセスカートリッジは、画像形成装置の装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、請求項10に記載の現像装置と前記像担持体とが一体化されたものである。
【0018】
また、この発明の請求項12記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項10に記載の現像装置と前記像担持体とを備えたものである。
【0019】
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電部と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像部(現像装置)と、像担持体上をクリーニングするクリーニング部とのうち、少なくとも1つと、像担持体とが、一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置されるユニットと定義する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、現像ローラの表面層が他部材との摺接により磨滅したときに、その状態を視認するための識別マークが表面層の内周面に内接する表面下層の上面に発現するように、現像ローラを形成している。そのため、リサイクル工場にて現像装置がリサイクルされる場合等であっても、現像装置単体で現像ローラの磨耗劣化の程度が容易に把握される、現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】作像部を示す構成図である。
【図3】現像ローラの構成を示す斜視図である。
【図4】現像ローラの表面層が摩滅していく状態を示す概略図である。
【図5】発色剤と顕色剤との混合前の配置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0023】
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、3は原稿Kを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿Kの画像情報を読み込む原稿読込部、7は転写紙等の記録媒体Pが収容される給紙部、9は記録媒体Pの搬送タイミングを調整するレジストローラ、10Y、10M、10C、10BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のプロセスカートリッジ、14は各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上に形成されたトナー像を記録媒体P上に重ねて転写する転写バイアスローラ(1次転写バイアスローラ)、を示す。
【0024】
また、16は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング部、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上のカラートナー像を記録媒体P上に転写するための2次転写バイアスローラ、20は記録媒体P上の未定着画像を定着する定着装置、を示す。
ここで、図2を参照して、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKは、それぞれ、像担持体としての感光体ドラム11、帯電部としての帯電ローラ12、現像部としての現像装置13、クリーニング部15が一体化されたものであって、画像形成装置本体1に対して着脱自在(交換自在)に設置される。また、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの現像装置13(現像部)には、各色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)のトナー(1成分現像剤)が収容されている。
なお、各プロセスカートリッジ(作像部)はほぼ同一構造であるために、図2にてプロセスカートリッジは符号のアルファベット(Y、C、M、BK)を除して図示する。
【0025】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。なお、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上でおこなわれる作像プロセスについては、図2をも参照することができる。
まず、原稿Kは、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Kの画像情報が光学的に読み取られる。
【0026】
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Kの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Kにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Kのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0027】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光L(図2を参照できる。)が、それぞれ、対応する感光体ドラム11上に向けて発せられる。
【0028】
一方、それぞれの感光体ドラム11は、図1の反時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11の表面は、帯電ローラ12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11表面は、それぞれのレーザ光Lの照射位置に達する。
書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光Lが各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0029】
イエロー成分に対応したレーザ光は、図1の紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ10Yの感光体ドラム11表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電ローラ12にて帯電された後の感光体ドラム11上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0030】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ10Mの感光体ドラム11表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ10Cの感光体ドラム11表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目のプロセスカートリッジ10BKの感光体ドラム11表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0031】
その後、各色の静電潜像が形成された各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11表面は、それぞれ、現像装置13との対向位置に達する。そして、各現像装置13から感光体ドラム11上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように転写バイアスローラ14が設置されている。そして、転写バイアスローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10BKの感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0032】
そして、転写工程後の感光体ドラム11表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム11における一連の作像プロセスが終了する。
【0033】
他方、各色の感光体ドラム11上の各色のトナーが重ねて転写(担持)された中間転写ベルト17は、図中の時計方向に走行して、2次転写バイアスローラ18との対向位置に達する。そして、2次転写バイアスローラ18との対向位置で、記録媒体P上に中間転写ベルト17上に担持されたカラーのトナー像が転写される(2次転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17表面は、中間転写ベルトクリーニング部16の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上に付着した未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部16に回収されて、中間転写ベルト17における一連の転写プロセスが終了する。
【0034】
ここで、中間転写ベルト17と2次転写バイアスローラ18との間(2次転写ニップである。)に搬送される記録媒体Pは、給紙部7からレジストローラ9等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送された記録媒体Pが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達した記録媒体Pは、タイミングを合わせて、2次転写ニップに向けて搬送される。
【0035】
そして、フルカラー画像が転写された記録媒体Pは、搬送ベルトによって定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ベルトと加圧ローラとのニップにて、カラー画像が記録媒体P上に定着される。
そして、定着工程後の記録媒体Pは、排紙ローラによって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0036】
次に、図2にて、画像形成装置における作像部について詳述する。
図2に示すように、プロセスカートリッジ10は、像担持体としての感光体ドラム11、帯電ローラ12(帯電部)、現像装置13(現像部)、クリーニング部15、等で構成される。
像担持体としての感光体ドラム11は、負帯電の有機感光体であって、装置本体1側に設置された駆動モータ(不図示である。)から駆動力を受けて図2の反時計方向に回転駆動される。
【0037】
帯電ローラ12(帯電部)は、芯金上に、ウレタン樹脂、導電性粒子としてのカーボンブラック、硫化剤、発泡剤等を処方した中抵抗の発泡ウレタン層をローラ状に形成した弾性を有するローラ部材である。帯電部12の中抵抗層の材質としては、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムや、イソプレンゴム等に抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材や、またこれらを発泡させたものを用いることもできる。なお、本実施の形態では、感光体ドラム11に対して帯電ローラ12が接触するように構成しているが、感光体ドラム11に対して帯電ローラ12が接触しないように構成することもできる。
クリーニング部15は、感光体ドラム11に摺接するクリーニングブレード15aが設置されていて、感光体ドラム11上の未転写トナーを機械的に除去・回収する。
【0038】
現像装置13(現像部)は、現像剤担持体としての現像ローラ13aが感光体ドラム11に接触するように配置されていて、双方の部材の間には現像領域(現像ニップ部)が形成される。現像装置13内には、トナー(1成分現像剤)が収容されている。そして、現像装置13は、感光体ドラム11上に形成される静電潜像を現像する(トナー像を形成する。)。
【0039】
以下、現像装置13(現像部)について詳述する。
図2を参照して、本実施の形態における現像装置13は、1成分現像方式の現像装置であって、現像ローラ13a(現像剤担持体)、供給ローラ13b、薄層化部材としてのドクターブレード13c、撹拌部材13d、アジテータ13e、トナー供給口13f、シール部材13g、等で構成されている。また、現像装置13には、トナー収容部B1とトナー供給部B2とが設けられている。
【0040】
現像ローラ13aは、ステンレスや鉄等からなる芯金13a5上に、弾性層13a4、中間層13a3、表面下層13a2、表面層13a1が順次積層されたローラ部材である(図3を参照できる。)。弾性層13a4は、ウレタンゴム、シリコンゴム、NBR等の弾性材料にて、JIS−A硬度が50度以下に、電気抵抗値が103〜1010Ωになるように形成されていて、感光体ドラム11に接触する現像ローラ13aの状態を安定させるためのものである。中間層13a3は、導電性樹脂材料で形成されていて、現像ローラ13a全体の電気抵抗等の電気特性を最適化するためのものである。表面層13a1は、耐摩耗性を有するとともにトナーの極性とは逆の極性に帯電しやすい導電性樹脂材料にて、表面粗さ(Ra)が0.2〜2.0μmになるように形成されていて、その外周面に帯電したトナー(帯電トナー)を担持するためのものである。表面下層13a2は、表面層13a1の内周面に内接するように積層されていて(表面層13a1と中間層13a3との間に積層されていて)、マーカー剤として機能する発色剤と顕色剤とが含有されている。この表面下層13a2については、後で詳しく説明する。
現像ローラ13aは、不図示の高圧電源から所定の現像バイアスが印加されながら、不図示の駆動モータからギア列を介して駆動力が伝達されて図2の時計方向に回転駆動される。
【0041】
供給ローラ13bは、芯金上にセル構造の発泡材料が被覆されたローラ部材であって、電気抵抗値が103〜1014Ωになるように形成されていて、現像ローラ13aとの摺接部でトナーを摩擦帯電させながら現像ローラ13a上にトナーを供給する。
供給ローラ13bは、不図示の高圧電源から所定のバイアスが印加されながら、不図示の駆動モータからギア列を介して駆動力が伝達されて図2の時計方向に回転駆動される。なお、本実施の形態において、供給ローラ13bに印加されるバイアスはトナーと同極性のバイアスであって、これにより供給ローラ13b側から現像ローラ13a側にトナーが静電気的に移行することになる。
【0042】
ドクターブレード13cは、ステンレス(例えば、SUS304CSPやSUS301CSPである。)やリン青銅等からなる板バネ部材であって、その自由端側が現像ローラ13aに10〜100N/mの押圧力で当接する。ドクターブレード13cによって、現像ローラ13a上に担持されたトナーが薄層化・均一化されながら摩擦帯電された後に、現像領域の位置に搬送されることになる。なお、本実施の形態では、ドクターブレード13cにトナーと同極性のバイアスが印加されていて、これにより現像ローラ13a側からドクターブレード13c側へのトナーの移動が静電気的に制限されるとともに、トナーの摩擦帯電が促進されることになる。
【0043】
撹拌部材13dは、トナー供給部B2内に収容されたトナーの凝集を防止するためのものであって、図2の矢印方向に回転する。
アジテータ13eは、トナー収容部B1内に収容されたトナーの凝集を防止するためのものであって、図2の矢印方向に回転する。
トナー供給口13fは、トナー収容部B1内に収容されたトナーをトナー供給部B2内に向けて適宜に供給するためのものである。トナー供給口13fによってトナー供給部B2内に収容されるトナー量が制限されることで、トナー供給部B2内に収容されるトナーが凝集しにくくなる。
シール部材13gは、現像領域に対して現像ローラ13aの回転方向下流側の位置で現像ローラ13aに当接するように設置されていて、現像装置13から外部へのトナーの漏出を防止している。
【0044】
このように構成された現像装置13は、次のように動作する。
まず、トナー収容部B1からトナー供給口13fを介してトナー供給部B2内に供給され収容されたトナーの一部が、供給ローラ13bに担持される。供給ローラ13bに担持されたトナーは、現像ローラ13aとの圧接部で摩擦帯電された後に、現像ローラ13a上に移動して担持される。その後、現像ローラ13a上に担持されたトナーは、ドクターブレード13cの位置で、薄層化・均一化された後に、感光体ドラム11との当接位置(現像領域)に達する。そして、この位置で、現像領域に形成された電界(現像電界)によって、感光体ドラム11上に形成された潜像にトナーが吸着される。
なお、上述したように、本実施の形態における現像装置13では、現像ローラ13a(表面層13a1)に摺接する他部材が、感光体ドラム11、供給ローラ13b、ドクターブレード13cの3つの部材となっている。
【0045】
以下、本実施の形態における現像装置13において特徴的な、現像ローラ13aの構成・動作について説明する。
先に説明したように、図3を参照して、本実施の形態における現像ローラ13aには、表面層13a1の下側に表面下層13a2が形成されている。この表面下層13a2は、表面層13a1の一部又は全部が他部材(感光体ドラム11、供給ローラ13b、ドクターブレード13cである。)との摺接により磨滅したときに、その状態を視認するための識別マークHが上面(表面)に発現するように形成されている。
詳しくは、表面下層13a2は、少なくともその上面に顕色剤と発色剤とが分散して含有されている。そして、表面層13a1が他部材11、13b、13cとの摺接により磨滅したときに、他部材11、13b、13cとの摺接により顕色剤と発色剤とが混ざり合って発色剤が発色して識別マークHが発現することになる。本実施の形態において、識別マークHは、「交換時期」という文字であって、他の表面下層13a2の部分とは異なる色にて発色する。
顕色剤と発色剤とは、いわゆる「マーカー剤」として用いられるものであって、それぞれが離れて存在する場合には発色剤が無色のままであって、それぞれが混ざり合うと発色剤が特定の色に発色する性質を有する。発色剤としてはロイコ色素化合物等を用いることができ、顕色剤としてはフェノール誘導体、サリチル誘導体、尿素誘導体等を用いることができる。
【0046】
さらに詳しくは、図4(A1)及び図4(B1)に示すように、新品状態(又は、磨耗劣化していない状態)の現像ローラ13aは、表面下層13a2上に表面層13a1があるために、表面下層13a2が露呈していない。
そして、画像形成装置本体1における現像装置13の長期間の稼動にともない現像ローラ13aの表面層13a1の磨耗が進んでくると、図4(A2)及び図4(B2)に示すように、やがて表面層13a1が摩滅して表面下層13a2が露呈してくる。表面下層13a2が露呈する瞬間には、表面下層13a2の上面に発色剤によって形成された識別マークHが無色の状態である。
しかし、表面下層13a2が露呈して、表面下層13a2が直接的に他部材11、13b、13cに摺接すると、発色剤(識別マークH)の周囲に離れて含有されていた顕色剤が他部材11、13b、13cによって相対的に引きずられるように徐々に発色剤の位置に移動して発色剤と混ざり合う。これにより、図4(A3)及び図4(B3)に示すように、発色剤が無色から有色に発色して、「交換時期」の文字が識別マークHとして浮かびあがることになる。
なお、図4(A1)、図4(A2)、図4(A3)は現像ローラ13aの断面を示す断面図であって、図4(B1)、図4(B2)、図4(B3)は現像ローラ13aを長手方向にみた正面図である。
【0047】
図5は、表面下層13a2に形成される識別マークH(発色する前の状態のものである。)の一部を拡大して示す図である。
図5に示すように、表面下層13a2において、発色剤Xは識別マークHに対応した形状及び位置にて含有され、顕色剤Yは発色剤Xの周囲(図5中の破線で示す領域である。)に近接して含有されている。
【0048】
このように構成することにより、リサイクル作業者は、リサイクル工場に画像形成装置1から取出された現像装置13(又は、プロセスカートリッジ10)が単体で回収されてきた場合であっても、現像ローラ13aの表面を目視で確認するだけで、現像ローラ13aの交換の要否を判断することができる。すなわち、現像ローラ13aの表面を目視で確認して、現像ローラ13a上に識別マークH(「交換時期」の文字)が視認できた場合には、表面層13a1の磨耗劣化が進んでいるものとして、現像ローラ13aの交換がおこなわれる。これに対して、現像ローラ13a上に識別マークHが視認できない場合には、表面層13a1の磨耗劣化が進んでいないものとして、現像ローラ13aの交換はおこなわずに、既設の現像ローラ13aがそのまま再使用される。
【0049】
ここで、表面下層13a2は、その上面に識別マークHが発現した状態で、識別マークHが形成された部分の電気抵抗値と、識別マークHが形成されていない部分の電気抵抗値と、が異なるように形成されることが好ましい。
具体的に、発色剤と顕色剤とは、それぞれが離れて存在する場合には、表面下層13a2のいずれの箇所(発色剤や顕色剤が含有されている箇所においても、含有されていない箇所においてもである。)においても電気抵抗値が均一となるように形成されている。これに対して、発色剤と顕色剤とが混合された場合には、その箇所(識別マークHが形成された箇所である。)の電気抵抗値が、表面下層13a2のその他の箇所(識別マークHが形成されない箇所である。)の電気抵抗値よりも極端に小さくなるように形成されている。
このように構成することで、現像ローラ13aの磨耗劣化が進行していない状態(図4(A1)及び図4(B1)の状態である。)では、表面下層13a2が現像ローラ13a全体の物理的特性(特に、電気的特性である。)に影響を与えることがないため、画像形成プロセスにおいて現像装置13によって良好な現像工程がおこなわれることになる。これに対して、現像ローラ13aの磨耗劣化が進行した状態(図4(A3)及び図4(B3)の状態である。)では、表面層13a1の摩滅によって画像形成プロセスにおいて現像装置13によって良好な現像工程がおこなわれなくなることに加えて、さらに表面下層13a2の識別マークHが現像ローラ13aの一部の物理的特性(特に、電気的特性である。)に大きく影響を与えるため画像形成プロセスにおいて現像装置13によって良好な現像工程がおこなわれなくなる。具体的に、この状態で出力された画像上に、識別マークHの位置及び形状に対応した濃度不良が生じる。したがって、画像形成装置1を操作するユーザー又はサービスマンは、その出力画像の画質から、現像ローラ13aの磨耗劣化を認識することができる。
【0050】
なお、本実施の形態において、上述した顕色剤と発色剤とは、それぞれ、マイクロカプセルに包含された状態で表面下層13a2に含有させることもできる。そのような場合には、通常時(表面層13a1が摩滅していないときである。)において、顕色剤と発色剤とをマイクロカプセルによって確実に隔絶することができる。また、表面層13a1が摩滅したときには、マイクロカプセルは他部材11、13b、13cとの摺接により容易に破包して、顕色剤と発色剤との混合によって識別マークHが発現することになる。
また、このようにして用いられるマイクロカプセルは、光や空気に直接的に接触することにより破包するものを用いることが好ましい。これにより、表面層13a1が摩滅して、マイクロカプセルが他部材11、13b、13cと摺接しても破包しにくい場合であっても、表面層13a1の露呈にともないマイクロカプセルが露呈して光や空気に直接的に接触することにより、マイクロカプセルが確実に破包することになる。
【0051】
また、本実施の形態において、表面下層13a2に、酸化剤を含有させることもできる。
このような場合には、表面層13a1が摩滅して、表面層13a1が露呈したときに、表面下層13a2に含有された酸化剤が空気に直接的にさらされて、表面下層13a2やその他の層13a3、13a4の酸化による劣化が生じてそれらの物理的特性が変化するため、画像形成装置1を操作するユーザー又はサービスマンは、その出力画像の画質劣化から、現像ローラ13aの磨耗劣化を認識することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態では、現像ローラ13aの表面層13a1が他部材11、13b、13cとの摺接により磨滅したときに、その状態を視認するための識別マークHが表面層13a1の内周面に内接する表面下層13a2の上面に発現するように形成している。そのため、リサイクル工場にて現像装置13(プロセスカートリッジ10)がリサイクルされる場合等であっても、現像装置13(プロセスカートリッジ10)単体で現像ローラ13aの磨耗劣化の程度を容易に把握することができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、マーカー剤として機能する顕色剤と発色剤とによって表面層13a1の摩滅によって識別マークHが発現するように構成した。これに対して、表面下層13a2の少なくともその上面(識別マークHを形成したい位置である。)に、トナーとの相互作用によって発色する化学物質を含有させることもできる。このような場合であっても、表面層13a1が他部材11、13b、13cとの摺接により磨滅したときに、その化学物質がトナーと混ざり合って発色して識別マークHが発現することになり、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、マーカー剤として機能する顕色剤と発色剤とによって表面層13a1の摩滅によって識別マークHが発現するように構成した。これに対して、表面下層13a2の上面に識別マークHを予めマーキングしておいてもよい。このような場合であっても、表面層13a1が他部材11、13b、13cとの摺接により磨滅したときに、その識別マークHが発現することになり、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、このような場合には、表面下層13a2の上面に予め形成しておく識別マークHが、通常時に形成される出力画像の画質に影響しないように、識別マークHが形成された部分の電気的特性が他の表面下層13a2の部分のものと同等になるように形成することが好ましい。
【0055】
また、本実施の形態では、識別マークHとして「交換時期」との文字を用いたが、識別マークとして他の文字や記号や図柄等を用いることもできる。また、識別マークの数や位置や範囲は、本実施の形態のものに限定されることはない。
また、本実施の形態では、現像ローラ13aを3層構造(表面層13a1、表面下層13a2、中間層13a3である。)で構成したが、現像ローラ13aを2層構造とすることもできるし、4層以上の構造とすることもできる。
また、本実施の形態では、感光体ドラム11に対して現像ローラ13aが接触するように構成したが、感光体ドラム11に対して現像ローラ13aが所定のギャップをあけて対向するように構成することもできる。その場合、現像ローラ13aに摺接する他部材は、供給ローラ13bとドクターブレード13cとになる。
これらの場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、本実施の形態においては、現像装置13がプロセスカートリッジ化されている画像形成装置に対して、本発明を適用した。これに対して、現像装置13が単体で画像形成装置本体に着脱されるユニットして構成されている画像形成装置に対しても、当然に本発明を適用することができる。
【0057】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
10、10Y、10C、10M、10BK プロセスカートリッジ、
11 感光体ドラム(像担持体)、
13 現像装置(現像部)、
13a 現像ローラ、
13a1 表面層、 13a2 表面下層、
13a3 中間層、 13a4 弾性層、 13a5 芯金、
13b 供給ローラ(他部材)、
13c ドクターブレード(薄層化部材、他部材)、
H 識別マーク、 X 発色剤、 Y 顕色剤。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開平8−82993号公報
【特許文献2】特開平8−44191号公報
【特許文献3】特開2006−126606号公報
【特許文献4】特開2001−356655号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1成分現像方式の現像装置に設置される現像ローラであって、
その外周面に帯電したトナーが担持される表面層と、
前記表面層の内周面に内接するように積層された表面下層と、
を備え、
前記表面下層は、前記表面層の一部又は全部が他部材との摺接により磨滅したときに、その状態を視認するための識別マークが上面に発現するように形成されたことを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
前記表面下層は、少なくともその上面に顕色剤と発色剤とが分散して含有され、前記表面層が前記他部材との摺接により磨滅したときに前記他部材との摺接により前記顕色剤と前記発色剤とが混ざり合って前記発色剤が発色して前記識別マークが発現するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記顕色剤と前記発色剤とは、それぞれ、マイクロカプセルに包含された状態で前記表面下層に含有されたことを特徴とする請求項2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記マイクロカプセルは、光又は/及び空気に直接的に接触することにより破包することを特徴とする請求項3に記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記表面下層は、前記発色剤が前記識別マークに対応した形状及び位置にて含有され、前記顕色剤が前記発色剤の周囲に近接して含有されるように形成されたことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記表面下層は、少なくともその上面にトナーとの相互作用によって発色する化学物質が含有され、前記表面層が前記他部材との摺接により磨滅したときに前記化学物質がトナーと混ざり合って前記化学物質が発色して前記識別マークが発現するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項7】
前記表面下層は、その上面に前記識別マークが予めマーキングされ、前記表面層が前記他部材との摺接により磨滅したときに前記識別マークが発現するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項8】
前記表面下層は、酸化剤が含有されたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項9】
前記表面下層は、その上面に前記識別マークが発現した状態で、前記識別マークが形成された部分の電気抵抗値と、前記識別マークが形成されていない部分の電気抵抗値と、が異なるように形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項10】
画像形成装置の装置本体に対して着脱自在に設置されるとともに、像担持体上に形成された潜像を現像する1成分現像方式の現像装置であって、
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の現像ローラが設置されたことを特徴とする現像装置。
【請求項11】
画像形成装置の装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項10に記載の現像装置と前記像担持体とが一体化されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
請求項10に記載の現像装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−107355(P2011−107355A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261473(P2009−261473)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】