現像剤収容装置および画像形成装置
【課題】装置の大型化を招くことなく、軸受部分における熱の発生を効率良く抑制することのできる構造を備える現像剤収容装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】搬送スクリュー軸14が回転した場合、連通溝21を通じて外部空間13B側の空気が閉空間20に向かって流れ込む状態となる。また、閉空間20は加圧された状態となるために、閉空間20内の空気は、連通路23を通じて外部空間13Bに流れ出る状態となる。これにより、搬送スクリュー軸14と軸受19との間において発生する熱を外部空間13Bの空気を循環させることにより直接外部に排出することができる。
【解決手段】搬送スクリュー軸14が回転した場合、連通溝21を通じて外部空間13B側の空気が閉空間20に向かって流れ込む状態となる。また、閉空間20は加圧された状態となるために、閉空間20内の空気は、連通路23を通じて外部空間13Bに流れ出る状態となる。これにより、搬送スクリュー軸14と軸受19との間において発生する熱を外部空間13Bの空気を循環させることにより直接外部に排出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式により画像を形成する画像形成工程において使用される現像剤収容装置、およびこの現像剤収容装置を有する画像形成装置に関する。なお、画像形成装置は、カラー、モノクロを問わず、コピア、FAX、プリンタなどの記録機器、表示装置などを含む。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、その画像形成プロセスに対応して、像担持体を一様に帯電するための帯電装置、像担持体の表面の電荷を静電潜像化するための像露光装置、静電潜像を現像剤によって可視像にするための現像装置、像担持体上の可視像を記録媒体(紙等)に電気的・機械的に転移させるための転写装置、像担持体上に転写装置による転移動作において残留した現像剤(トナー等)を除去するための清掃装置、記録材上の可視化された現像剤を熱や圧力によって永久に定着させる定着装置を含んでいる。
【0003】
このような構成を備える画像形成装置において、像担持体、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、および清掃装置によりプロセスユニットが構成される。また、全ての画像形成装置において用いられているわけではないが、一般的には、像担持体、帯電装置、清掃装置、および転写装置を一体としたプロセスユニットが用いられている。
【0004】
近年、上述したプロセスに対応した各装置は、特にフルカラーによる出力を特徴とした画像形成装置の普及に伴い、画像形成装置の小型化、印刷速度の高速化が求められるとともに、さらに、画像形成装置の長寿命化、高信頼性化、高画質化、および低価格化が求められている。
【0005】
たとえば、現像装置には、現像剤を収容する現像剤収容装置が設けられている。この現像剤収容装置においては、現像剤の外部への漏れを防止するために、隙間が生じる部分(例えば、現像剤搬送用の回転軸とその軸受部分との間等)にシール部材(軸シール部材等)が設けられている。
【0006】
また、画像形成装置において、印刷速度の高速化の要求に応じるため記録媒体の搬送速度が速くなる結果、軸受部分で高い熱が発生する。この軸受部分での熱の発生によって、現像剤が溶け、その後シール部材に固着する等により、シール部材によるシール不良、軸受部分への現像剤の固着による回転軸の回転不良等が発生する。これらの不良に起因する記録媒体への画像形成不良の課題が、下記特許文献1から3で指摘され、この課題を改善する提案が種々なされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−140968号公報
【特許文献2】特開2000−019919号公報
【特許文献3】特開2003−057927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、現像装置・画像形成装置が開示されている。この現像装置では、現像剤搬送用の回転軸を中空構造にして、この回転軸の中に流体を流し込むことで軸受部分を冷却し、軸受部分での熱の発生を抑制している。
【0009】
しかし、現像剤搬送軸の中に流体を流し込むためのポンプや、流体に対する熱交換装置が別途必要となる。その結果、現像装置の大型化、コスト上昇が懸念される。さらに、軸受部分で発生した熱は回転軸を通じて流体に伝達されるため、熱が流体に放熱される前に現像剤を加熱し、現像剤を溶かすおそれがある。
【0010】
特許文献2には、クリーニング装置とこのクリーニング装置を備えた画像形成装置が開示されている。この装置においては、回転軸を延長した放熱軸およびその放熱軸に設けられる放熱フィンが採用されている。しかし、放熱軸および放熱フィンを別途設けることにより、装置の大型化が懸念される、また、軸受部分で発生した熱は放熱軸側だけでなく、回転軸側(現像剤の収容側)にも伝達されるため、回転軸により現像剤が加熱され、現像剤を溶かすおそれがある。
【0011】
特許文献3には、現像装置およびこの現像装置を備えるプロセスカートリッジ、ならびに画像形成装置が開示されている。この装置においては、現像装置端部に放熱のために通気孔を有する空間を設ける構成や、この空間に送風補助部材を設ける構成が開示されている。しかし、別途通気孔を有する空間を設けることにより、装置の大型化が懸念される。
【0012】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであって、装置の大型化を招くことなく、軸受部分における熱の発生を効率良く抑制することのできる構造を備える、現像剤収容装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に基づいた現像装置においては、現像剤を収容する現像剤収容装置であって、外部空間と上記現像剤を収容する内部空間とを仕切る仕切り壁と、上記仕切り壁に設けられる軸受と、上記軸受に保持され、上記外部空間から上記内部空間に延びる回転軸と、上記内部空間側に設けられ、一端側が上記仕切り壁側に固定され他端側が上記回転軸の表面に接することで、上記軸受を上記内部空間から区切るシール部材と、上記回転軸の表面に設けられ、上記外部空間と上記シール部材により上記内部空間から区切られた閉空間とを連通する連通溝と、上記仕切り壁に設けられ、上記外部空間と上記閉空間とを連通する連通路と、を備える。
【0014】
上記連通溝は、上記回転軸の回転により軸方向に沿う風を上記連通溝の表面に生じさせる溝形状を有する。
【0015】
上記発明の他の局面においては、上記連通溝は、上記回転軸の軸方向に対して傾斜している。
【0016】
上記発明の他の局面においては、上記連通溝は、上記軸受に対向する軸表面に第1溝および第2溝を有し、上記第1溝および上記第2溝は、上記軸方向に対して傾斜しており、上記第1溝および上記第2溝のそれぞれ傾斜方向は、上記軸方向に対して線対称である。
【0017】
上記発明の他の局面においては、上記仕切り壁は、当該現像剤収容装置の外壁である。
上記発明の他の局面においては、上記回転軸は、当該現像剤収容装置の現像剤搬送スクリューが設けられる搬送スクリュー軸である。
【0018】
この発明に基づいた画像形成装置においては、上述したいずれかの現像剤収容装置を有している。
【発明の効果】
【0019】
この発明に基づいた現像剤収容装置および画像形成装置によれば、装置の大型化を招くことなく、軸受部分における熱の発生を効率良く抑制することのできる構造を備える現像剤収容装置および画像形成装置を提供することを可能とする。その結果、画像形成装置において、記録媒体への画像形成不良を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態における現像剤収容装置を採用した画像形成装置の内部の構成を示す縦断面図である。
【図2】実施の形態における現像剤収容装置を採用した現像装置の外観構成を示す斜視図である。
【図3】実施の形態における現像剤収容装置を採用した現像装置の内部構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図4】実施の形態における仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図である。
【図5】図4中のV−V線矢視断面図である。
【図6】実施の形態における回転軸に設けられる連通溝の構造を示す部分拡大斜視図である。
【図7】図6に示す連通溝によって生じる風の流れを示す模式断面図である。
【図8】実施の形態における回転軸に設けられる他の連通溝の構造を示す部分拡大斜視図である。
【図9】図8に示す連通溝によって生じる風の流れを示す模式断面図である。
【図10】実施の形態の他の形態における仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図である。
【図11】実施例における現像剤収容装置を採用した現像装置の外観構成を示す斜視図である。
【図12】実施例における現像剤収容装置を採用した現像装置の内部構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図13】(A)および(B)は、実施例における連通溝の形状を示す斜視図である。
【図14】実施例における仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図である。
【図15】(A)および(B)は、実施例における他の連通溝の形状を示す斜視図である。
【図16】図15に示す連通溝によって生じる風の流れを示す模式断面図である。
【図17】実施例におけるさらに他の連通溝の形状を示す斜視図である。
【図18】実施例におけるさらに他の連通溝の形状を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に基づいた実施の形態および実施例における現像剤収容装置および画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態および実施例において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0022】
なお、以下の説明では、画像形成装置の一例として、一般的なフルカラー電子写真方式を採用している画像形成装置1000について説明しているが、本発明は、フルカラー電子写真方式にのみ限定されるものではなく、モノクロ画像のみを形成する1種(ブラック等)の画像形成ユニットを採用している画像形成装置への適用も可能である。
【0023】
(画像形成装置1000)
以下、図1から図5を参照して、本実施の形態における画像形成装置1000および現像装置4について説明する。なお、図1は、現像剤収容装置を採用した画像形成装置1000の内部の構成を示す縦断面図、図2は、現像剤収容装置を採用した現像装置4の外観構成を示す斜視図、図3は、現像剤収容装置を採用した現像装置4の内部構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図を示す。また、図4は、仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図、図5は、図4中のV−V線矢視断面図である。
【0024】
まず、図1を参照して、本実施の形態における画像形成装置1000は、一般的なフルカラー電子写真方式を採用している。画像形成装置1000は、各色(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)に対応した4種の画像形成ユニット100が所定の位置に配設されている。
【0025】
各画像形成ユニット100は、感光体といわれる像担持体1と、像担持体1の表面を一様に帯電し電位を形成するための帯電装置2と、帯電装置2によって所望の電位まで帯電された電位に、所定の静電潜像を形成するために光を照射するための像露光装置3と、静電潜像が形成された領域に現像剤を電界などによって付着させて鏡像化するための現像装置4と、転写ベルト5と、一次転写装置6と、二次転写装置7と、定着装置8と、像担持体1上の残留した残留粉体を像担持体1上から電気的・機械的に除去するための清掃装置9および徐電装置12とを有する。
【0026】
一次転写装置6では、鏡像化された像担持体1上の粉体が、順次中間転写体といわれる転写ベルト5上へ電界・電圧によって移動する。二次転写装置7では、紙等の記録媒体11上へ、転写ベルト5上の粉体が電界・電圧によって移動する。定着装置8では、記録媒体P上に移動した粉体を、熱や圧力によって永久的に記録媒体Pに固定する。
【0027】
一方、一次転写装置6において転写ベルト5上の粉体が完全に移動せず、像担持体1上に僅かながら粉体が残存する場合がある。この場合には、像担持体1上に残留した粉体を像担持体1上から、清掃装置9および徐電装置12を用いて電気的・機械的作用により粉体を除去する。
【0028】
また、転写ベルト5上に形成された鏡像画像は、二次転写装置7において粉体が完全に移動せず、転写ベルト5上に僅かながら粉体が残存する場合がある。この場合には、転写ベルト清掃装置10によって、電気的・機械的作用により粉体を除去する。
【0029】
現像剤は、トナーからなる粉体、またはトナーおよびキャリアを含む粉体を意味する。したがって、キャリアを含まない一成分現像剤においては、キャリアを含まない粉体が現像剤であり、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤においては、トナーからなる粉体またはトナーおよびキャリアからなる粉体を現像剤という。
【0030】
また、画像形成装置1000に使用される現像剤の具体例は、現像装置4に収容されている一成分現像剤または二成分現像剤、現像装置4に補給されるトナー、清掃装置9において回収されるトナー、清掃装置9から現像装置4にリサイクルされるトナー等は、すべて現像剤である。
【0031】
(現像装置4の構造)
次に、図2および図3を参照して、現像装置4の構造について説明する。現像装置4は、現像剤を収容するための箱型の収容部13、この収容部13に収容され現像剤を循環搬送(図3中の矢印で示す方向)するための回転軸としての搬送スクリュー軸14、現像剤を像担持体1に鏡像化させるための現像ローラ15、現像ローラ15の表面の現像剤量を一定に規制する規制板30、搬送スクリュー軸14および現像ローラ15に、外部に設けられたモータ等からの回転駆動力を伝達するための複数のギヤ16、および、収容部13から外部への現像剤の漏れを防止するためのシール部材18を有する。
【0032】
搬送スクリュー軸14は、2本並行に配置され、それぞれの搬送スクリュー軸14の外表面には、それぞれの現像剤の搬送方向が逆となるように、スクリュー14Sが設けられている。また、各搬送スクリュー軸14および現像ローラ15は、ギヤ16を介して連結され、相互に連動して回転する。
【0033】
(現像剤収容装置4A)
ここで、現像装置4のうち、収容部13、搬送スクリュー軸14、およびシール部材18を現像剤収容装置4Aと称して、この現像剤収容装置4Aの具体的構成について、図4から図9を参照して説明する。また、2本設けられる搬送スクリュー軸14のうち一方の搬送スクリュー軸14について説明する。
【0034】
図4を参照して、箱型に形成された収容部13は、外部空間13Bと現像剤を収容する内部空間13Aとを仕切る仕切り壁13Sを有する。この仕切り壁13Sには、軸受19が設けられる。この軸受19には、外部空間13Bから内部空間13Aに延びる回転軸として搬送スクリュー軸14の一端側が保持される。搬送スクリュー軸14の一端側は、仕切り壁13Sから外部空間13B側に突出している。
【0035】
搬送スクリュー軸14の一端には、ギヤ16が設けられている。ギヤ16は、外部空間13Bに位置し、スクリュー14Sは内部空間13Aに位置している。収容部13、スクリュー14Sを含む搬送スクリュー軸14、軸受19、およびギヤ16は樹脂成形品等が用いられる。
【0036】
内部空間13A側には、外面が円錐型の筒形状のシール部材18が、搬送スクリュー軸14の一端側を覆うように設けられている。シール部材18には、ゴム、エラストマ樹脂等が用いられる。シール部材18の大径側の一端側18aは仕切り壁13Sに固定され、小径側の他端側18bは搬送スクリュー軸14の表面に圧接している。これにより、軸受19を内部空間13Aから区切り、内部空間13A内に閉空間20を規定する軸シール構造が形成される。この軸シール構造により、内部空間13A側からの現像剤の外部空間13B側への漏れが抑止される。
【0037】
図示しない搬送スクリュー軸14の他端側においては、ギヤ16は設けられないものの、同様の軸シール構造が採用され、内部空間13A内にはシール部材18が設けられ、軸受19を内部空間13Aから区切り、内部空間13A内に閉空間20を形成している。なお、搬送スクリュー軸14の他端側においては、仕切り壁13Sが、収容部13の外壁つまり現像剤収容装置4A自体の外壁を構成する。
【0038】
図4および図5を参照して、軸受19に支持される領域の搬送スクリュー軸14の表面には、外部空間13Bと閉空間20とを連通する連通溝21が設けられている。連通溝21は、外部空間13Bと閉空間20とを連通していることから、軸を含む断面で見た場合、連通溝21の長さ(W2)は、仕切り壁13Sの幅(W1)よりも長く、連通溝21内に、仕切り壁13Sが含まれた状態となっている。
【0039】
本実施の形態では、搬送スクリュー軸14の表面において、180度対向する位置に連通溝21が、2箇所設けられている。この連通溝21の詳細形状については、後述する。なお、連通溝21は2箇所に限らず、1箇所、または、3箇所以上設けることも可能である。
【0040】
仕切り壁13Sには、外部空間13Bと閉空間20とを連通する連通路23が設けられている。本実施の形態では、搬送スクリュー軸14の周りに周方向に沿って90度ピッチで連通路23が4箇所設けられている。また、各連通路23は、円弧形状を有している。なお、連通路23は4箇所に限らず、1箇所から3箇所、または、5箇所以上設けることも可能である。
【0041】
(連通溝21の形状)
次に、図6から図9を参照して、連通溝21の形状、および、連通溝21と連通路23との送風機能について説明する。なお、図6は、連通溝21の構造を示す部分拡大斜視図、図7は、図6に示す連通溝21によって生じる風の流れを示す模式断面図、図8は、他の連通溝21の構造を示す部分拡大斜視図、図9は、図8に示す連通溝によって生じる風の流れを示す模式断面図である。
【0042】
まず、図6および図7を参照して、図6に示す連通溝21は、搬送スクリュー軸14の回転方向Rの下流側(後側)に起立壁21aを有し、また、外部空間13B側から内部空間13A側に向かって溝深さが浅くなる底面21bを有している。この溝形状において、搬送スクリュー軸14が回転方向Rに回転した場合、軸方向(A)方向に沿って外部空間13B側から内部空間13A側に向かう風(エアーフロー)B1が連通溝21の表面に生じる。
【0043】
その結果、図7に示すように、搬送スクリュー軸14が回転した場合、連通溝21を通じて外部空間13B側の空気が閉空間20に向かって流れ込む状態となる。また、閉空間20は加圧された状態となるために、閉空間20内の空気は、連通路23を通じて外部空間13Bに流れ出る状態となる。
【0044】
また、図8および図9を参照して、他の形状を有する連通溝21、および、連通溝21と連通路23との送風機能について説明する。図8に示す連通溝21は、搬送スクリュー軸14の回転方向Rの下流側(後側)に起立壁21aを有し、また、内部空間13A側から外部空間13B側に向かって溝深さが浅くなる底面21cを有している。この溝形状において、搬送スクリュー軸14が回転方向Rに回転した場合、軸方向(A)方向に沿って内部空間13A側から外部空間13B側に向かう風(エアーフロー)B2が連通溝21の表面に生じる。
【0045】
その結果、図9に示すように、搬送スクリュー軸14が回転した場合、連通溝21を通じて内部空間13A側の空気が閉空間20から外部空間13B側に向かって流れ出る状態となる。また、閉空間20は減圧された状態となるために、連通路23を通じて外部空間13Bから閉空間20に空気が流入する状態となる。
【0046】
このように、図7および図9に示すように、閉空間20内の空気を外部に流出させる流れを生じさせることで、搬送スクリュー軸14と軸受19との間において発生する熱を、外部空間13Bの空気を循環させることにより直接外部に排出することができる。その結果、搬送スクリュー軸14と軸受19との間の軸受部分に直接外部の空気を当て、効率良く軸受部分を冷却することが可能となる。
【0047】
これにより、軸受部分で現像剤が溶け、その後シール部材に付着する等により、シール部材によるシール不良、軸受部分への現像剤の固着による搬送スクリュー軸14の回転不良等の発生を回避することが可能となる。
【0048】
また、シール部材18を設ける軸シール構造に改変を加えることなく、他の冷却のための装置構成を付加することもないため、現像剤収容装置4Aを大型化することない。その結果、現像剤収容装置4Aを採用する現像装置4、および、この現像装置4を採用する画像形成装置1000が大型化することはない。
【0049】
また、現像剤収容装置4Aにおけるシール不良、搬送スクリュー軸14の回転不良の発生が回避されることから、画像形成装置1000における記録媒体11への画像形成不良が回避され、画像形成装置1000の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0050】
なお、連通溝21の溝形状は、図6および図8に示す溝形状に限定されるものではない。搬送スクリュー軸14の回転により軸方向(A)に沿う風を連通溝21の表面に生じさせる溝形状であればどのような溝形状であってもかまわない。他の溝形状については、後述する。
【0051】
なお、上記実施の形態においては、外面が円錐型の筒形状のシール部材18を用いる構成について説明したが、この構成に限定されるものではない。たとえば、図10の断面図に示すように、環状形状のシール部材18Aを採用し、外周縁18c側を仕切り壁13S側に固定し、内周面18d側に搬送スクリュー軸14を貫通させるようにして、軸シール構造を構成することも可能である。シール部材18Aには、ゴム、エラストマ樹脂等が用いられる。なお、図10は、本実施の形態の他の形態における仕切り壁13Sに設けられるシール部材18Aを含む領域の部分拡大断面図である。
【0052】
(実施例)
以下、現像装置4の具体的な実施例について、図11から図14を参照して説明する。図11は、実施例における現像剤収容装置を採用した現像装置4の外観構成を示す斜視図、図12は、実施例における現像剤収容装置を採用した現像装置の内部構成を示すであり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【0053】
また、図13は、実施例における連通溝の形状を示す斜視図であり、(A)は右側から見た斜視図、(B)は左側から見た斜視図である。また、図14は、実施例における仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図である。上記実施の形態における現像装置4と同一または相当部分には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない。なお、基本的構成は、図10に示す軸シール構造と同じである。
【0054】
図13に示すように、搬送スクリュー軸14の一端部分には、連通溝21が2箇所設けられている。本実施例における連通溝21は、いずれも同じ溝形状を有し、搬送スクリュー軸14の軸方向(A)に対して左側に傾斜(約15度)するように設けられている。
【0055】
また、連通路23は、仕切り壁13Sの搬送スクリュー軸14の周りに周方向に沿って90度ピッチで4箇所に設けられている。搬送スクリュー軸14が回転方向Rに回転した場合、軸方向(A)方向に沿って外部空間側から内部空間側に向かう風(エアーフロー)が連通溝21の表面に生じる。
【0056】
その結果、図14に示すように、搬送スクリュー軸14が回転した場合、連通溝21を通じて外部空間側の空気が閉空間20に向かって流れ込む状態となる。また、閉空間20は加圧された状態となるために、閉空間20内の空気は、連通路23を通じて外部空間13Bに流れ出る状態となる。
【0057】
ここで、搬送スクリュー軸14の回転数が600rpmにおいて(回転方向は、図13中のR方向)、連通溝21と連通路23とを設けない従来構造の閉空間20内の温度と、連通溝21と連通路23とを設けた場合の本実施例の構造における閉空間20内の温度とを測定した。閉空間20内の温度の測定には、J型熱電対を用いた。その結果、従来構造の閉空間20内の温度上昇は、約35.0度であったのに対して、本実施例における構造の閉空間20内の温度上昇は、約25.0度であった。
【0058】
このように、閉空間20内の空気を外部に流出させる流れを生じさせる。搬送スクリュー軸14と軸受19との間において発生する熱を、上記のように外部空間の空気を循環させることにより直接外部に排出することができる結果、搬送スクリュー軸14と軸受19との間の軸受部分に直接外部の空気を当て、効率良く軸受部分を冷却することが可能となる。
【0059】
これにより、軸受部分で現像剤が溶け、その後シール部材に付着する等により、シール部材によるシール不良、軸受部分への現像剤の固着による搬送スクリュー軸14の回転不良等の発生を回避することが可能となる。
【0060】
なお、本実施例において設けた2つの連通溝21は、いずれも同じ溝形状を有し、搬送スクリュー軸14の軸方(A)に対して同一方向に傾斜(約15度)するように設けられているが、図15に示す溝形状の連通溝21を設けることも可能である。この連通溝21は、軸方向(A)に対して傾斜しており、2つの連通溝21のそれぞれ傾斜方向は、軸方向(A)に対して線対称となるように設けられている。
【0061】
この構成を例えば、図4に示す実施の形態における軸シール構造に採用した場合には、図16に示すように、搬送スクリュー軸14が回転することにより、一方の連通溝21においては、軸方向(A)方向に沿って外部空間側から内部空間側に向かう風(エアーフロー)を連通溝21の表面に生じさせ、他方の連通溝21においては、軸方向(A)方向に沿って内部空間側から外部空間側に向かう風(エアーフロー)を連通溝21の表面に生じさせることになる。その結果、閉空間20内の空気流れを掻き乱すことが可能となり、閉空間20内での冷却効果の向上を期待することができる。
【0062】
また、搬送スクリュー軸14に設ける他の溝形状としては、図17に示すような、螺旋形状の連通溝21の採用、または、図18に示すような、軸方向に平行な直線状の溝形状の連通溝21を採用することも可能である。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 像担持体、2 帯電装置、3 像露光装置、4 現像装置、4A 現像剤収容装置、5 転写ベルト、6 一次転写装置、7 二次転写装置、8 定着装置、9 清掃装置、11 記録媒体、12 徐電装置、13 収容部、13A 内部空間、13B 外部空間、13S 仕切り壁、14 搬送スクリュー軸、14S スクリュー、15 現像ローラ、16 ギヤ、18,18A シール部材、18a 一端側、18b 他端側、18c 外周縁、18d 内周面、19 軸受、21 連通溝、21a 起立壁、21b,21c 底面、23 連通路、30 規制板、100 画像形成ユニット、1000 画像形成装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式により画像を形成する画像形成工程において使用される現像剤収容装置、およびこの現像剤収容装置を有する画像形成装置に関する。なお、画像形成装置は、カラー、モノクロを問わず、コピア、FAX、プリンタなどの記録機器、表示装置などを含む。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、その画像形成プロセスに対応して、像担持体を一様に帯電するための帯電装置、像担持体の表面の電荷を静電潜像化するための像露光装置、静電潜像を現像剤によって可視像にするための現像装置、像担持体上の可視像を記録媒体(紙等)に電気的・機械的に転移させるための転写装置、像担持体上に転写装置による転移動作において残留した現像剤(トナー等)を除去するための清掃装置、記録材上の可視化された現像剤を熱や圧力によって永久に定着させる定着装置を含んでいる。
【0003】
このような構成を備える画像形成装置において、像担持体、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置、および清掃装置によりプロセスユニットが構成される。また、全ての画像形成装置において用いられているわけではないが、一般的には、像担持体、帯電装置、清掃装置、および転写装置を一体としたプロセスユニットが用いられている。
【0004】
近年、上述したプロセスに対応した各装置は、特にフルカラーによる出力を特徴とした画像形成装置の普及に伴い、画像形成装置の小型化、印刷速度の高速化が求められるとともに、さらに、画像形成装置の長寿命化、高信頼性化、高画質化、および低価格化が求められている。
【0005】
たとえば、現像装置には、現像剤を収容する現像剤収容装置が設けられている。この現像剤収容装置においては、現像剤の外部への漏れを防止するために、隙間が生じる部分(例えば、現像剤搬送用の回転軸とその軸受部分との間等)にシール部材(軸シール部材等)が設けられている。
【0006】
また、画像形成装置において、印刷速度の高速化の要求に応じるため記録媒体の搬送速度が速くなる結果、軸受部分で高い熱が発生する。この軸受部分での熱の発生によって、現像剤が溶け、その後シール部材に固着する等により、シール部材によるシール不良、軸受部分への現像剤の固着による回転軸の回転不良等が発生する。これらの不良に起因する記録媒体への画像形成不良の課題が、下記特許文献1から3で指摘され、この課題を改善する提案が種々なされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−140968号公報
【特許文献2】特開2000−019919号公報
【特許文献3】特開2003−057927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、現像装置・画像形成装置が開示されている。この現像装置では、現像剤搬送用の回転軸を中空構造にして、この回転軸の中に流体を流し込むことで軸受部分を冷却し、軸受部分での熱の発生を抑制している。
【0009】
しかし、現像剤搬送軸の中に流体を流し込むためのポンプや、流体に対する熱交換装置が別途必要となる。その結果、現像装置の大型化、コスト上昇が懸念される。さらに、軸受部分で発生した熱は回転軸を通じて流体に伝達されるため、熱が流体に放熱される前に現像剤を加熱し、現像剤を溶かすおそれがある。
【0010】
特許文献2には、クリーニング装置とこのクリーニング装置を備えた画像形成装置が開示されている。この装置においては、回転軸を延長した放熱軸およびその放熱軸に設けられる放熱フィンが採用されている。しかし、放熱軸および放熱フィンを別途設けることにより、装置の大型化が懸念される、また、軸受部分で発生した熱は放熱軸側だけでなく、回転軸側(現像剤の収容側)にも伝達されるため、回転軸により現像剤が加熱され、現像剤を溶かすおそれがある。
【0011】
特許文献3には、現像装置およびこの現像装置を備えるプロセスカートリッジ、ならびに画像形成装置が開示されている。この装置においては、現像装置端部に放熱のために通気孔を有する空間を設ける構成や、この空間に送風補助部材を設ける構成が開示されている。しかし、別途通気孔を有する空間を設けることにより、装置の大型化が懸念される。
【0012】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであって、装置の大型化を招くことなく、軸受部分における熱の発生を効率良く抑制することのできる構造を備える、現像剤収容装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に基づいた現像装置においては、現像剤を収容する現像剤収容装置であって、外部空間と上記現像剤を収容する内部空間とを仕切る仕切り壁と、上記仕切り壁に設けられる軸受と、上記軸受に保持され、上記外部空間から上記内部空間に延びる回転軸と、上記内部空間側に設けられ、一端側が上記仕切り壁側に固定され他端側が上記回転軸の表面に接することで、上記軸受を上記内部空間から区切るシール部材と、上記回転軸の表面に設けられ、上記外部空間と上記シール部材により上記内部空間から区切られた閉空間とを連通する連通溝と、上記仕切り壁に設けられ、上記外部空間と上記閉空間とを連通する連通路と、を備える。
【0014】
上記連通溝は、上記回転軸の回転により軸方向に沿う風を上記連通溝の表面に生じさせる溝形状を有する。
【0015】
上記発明の他の局面においては、上記連通溝は、上記回転軸の軸方向に対して傾斜している。
【0016】
上記発明の他の局面においては、上記連通溝は、上記軸受に対向する軸表面に第1溝および第2溝を有し、上記第1溝および上記第2溝は、上記軸方向に対して傾斜しており、上記第1溝および上記第2溝のそれぞれ傾斜方向は、上記軸方向に対して線対称である。
【0017】
上記発明の他の局面においては、上記仕切り壁は、当該現像剤収容装置の外壁である。
上記発明の他の局面においては、上記回転軸は、当該現像剤収容装置の現像剤搬送スクリューが設けられる搬送スクリュー軸である。
【0018】
この発明に基づいた画像形成装置においては、上述したいずれかの現像剤収容装置を有している。
【発明の効果】
【0019】
この発明に基づいた現像剤収容装置および画像形成装置によれば、装置の大型化を招くことなく、軸受部分における熱の発生を効率良く抑制することのできる構造を備える現像剤収容装置および画像形成装置を提供することを可能とする。その結果、画像形成装置において、記録媒体への画像形成不良を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態における現像剤収容装置を採用した画像形成装置の内部の構成を示す縦断面図である。
【図2】実施の形態における現像剤収容装置を採用した現像装置の外観構成を示す斜視図である。
【図3】実施の形態における現像剤収容装置を採用した現像装置の内部構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図4】実施の形態における仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図である。
【図5】図4中のV−V線矢視断面図である。
【図6】実施の形態における回転軸に設けられる連通溝の構造を示す部分拡大斜視図である。
【図7】図6に示す連通溝によって生じる風の流れを示す模式断面図である。
【図8】実施の形態における回転軸に設けられる他の連通溝の構造を示す部分拡大斜視図である。
【図9】図8に示す連通溝によって生じる風の流れを示す模式断面図である。
【図10】実施の形態の他の形態における仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図である。
【図11】実施例における現像剤収容装置を採用した現像装置の外観構成を示す斜視図である。
【図12】実施例における現像剤収容装置を採用した現像装置の内部構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図13】(A)および(B)は、実施例における連通溝の形状を示す斜視図である。
【図14】実施例における仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図である。
【図15】(A)および(B)は、実施例における他の連通溝の形状を示す斜視図である。
【図16】図15に示す連通溝によって生じる風の流れを示す模式断面図である。
【図17】実施例におけるさらに他の連通溝の形状を示す斜視図である。
【図18】実施例におけるさらに他の連通溝の形状を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に基づいた実施の形態および実施例における現像剤収容装置および画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態および実施例において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0022】
なお、以下の説明では、画像形成装置の一例として、一般的なフルカラー電子写真方式を採用している画像形成装置1000について説明しているが、本発明は、フルカラー電子写真方式にのみ限定されるものではなく、モノクロ画像のみを形成する1種(ブラック等)の画像形成ユニットを採用している画像形成装置への適用も可能である。
【0023】
(画像形成装置1000)
以下、図1から図5を参照して、本実施の形態における画像形成装置1000および現像装置4について説明する。なお、図1は、現像剤収容装置を採用した画像形成装置1000の内部の構成を示す縦断面図、図2は、現像剤収容装置を採用した現像装置4の外観構成を示す斜視図、図3は、現像剤収容装置を採用した現像装置4の内部構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図を示す。また、図4は、仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図、図5は、図4中のV−V線矢視断面図である。
【0024】
まず、図1を参照して、本実施の形態における画像形成装置1000は、一般的なフルカラー電子写真方式を採用している。画像形成装置1000は、各色(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)に対応した4種の画像形成ユニット100が所定の位置に配設されている。
【0025】
各画像形成ユニット100は、感光体といわれる像担持体1と、像担持体1の表面を一様に帯電し電位を形成するための帯電装置2と、帯電装置2によって所望の電位まで帯電された電位に、所定の静電潜像を形成するために光を照射するための像露光装置3と、静電潜像が形成された領域に現像剤を電界などによって付着させて鏡像化するための現像装置4と、転写ベルト5と、一次転写装置6と、二次転写装置7と、定着装置8と、像担持体1上の残留した残留粉体を像担持体1上から電気的・機械的に除去するための清掃装置9および徐電装置12とを有する。
【0026】
一次転写装置6では、鏡像化された像担持体1上の粉体が、順次中間転写体といわれる転写ベルト5上へ電界・電圧によって移動する。二次転写装置7では、紙等の記録媒体11上へ、転写ベルト5上の粉体が電界・電圧によって移動する。定着装置8では、記録媒体P上に移動した粉体を、熱や圧力によって永久的に記録媒体Pに固定する。
【0027】
一方、一次転写装置6において転写ベルト5上の粉体が完全に移動せず、像担持体1上に僅かながら粉体が残存する場合がある。この場合には、像担持体1上に残留した粉体を像担持体1上から、清掃装置9および徐電装置12を用いて電気的・機械的作用により粉体を除去する。
【0028】
また、転写ベルト5上に形成された鏡像画像は、二次転写装置7において粉体が完全に移動せず、転写ベルト5上に僅かながら粉体が残存する場合がある。この場合には、転写ベルト清掃装置10によって、電気的・機械的作用により粉体を除去する。
【0029】
現像剤は、トナーからなる粉体、またはトナーおよびキャリアを含む粉体を意味する。したがって、キャリアを含まない一成分現像剤においては、キャリアを含まない粉体が現像剤であり、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤においては、トナーからなる粉体またはトナーおよびキャリアからなる粉体を現像剤という。
【0030】
また、画像形成装置1000に使用される現像剤の具体例は、現像装置4に収容されている一成分現像剤または二成分現像剤、現像装置4に補給されるトナー、清掃装置9において回収されるトナー、清掃装置9から現像装置4にリサイクルされるトナー等は、すべて現像剤である。
【0031】
(現像装置4の構造)
次に、図2および図3を参照して、現像装置4の構造について説明する。現像装置4は、現像剤を収容するための箱型の収容部13、この収容部13に収容され現像剤を循環搬送(図3中の矢印で示す方向)するための回転軸としての搬送スクリュー軸14、現像剤を像担持体1に鏡像化させるための現像ローラ15、現像ローラ15の表面の現像剤量を一定に規制する規制板30、搬送スクリュー軸14および現像ローラ15に、外部に設けられたモータ等からの回転駆動力を伝達するための複数のギヤ16、および、収容部13から外部への現像剤の漏れを防止するためのシール部材18を有する。
【0032】
搬送スクリュー軸14は、2本並行に配置され、それぞれの搬送スクリュー軸14の外表面には、それぞれの現像剤の搬送方向が逆となるように、スクリュー14Sが設けられている。また、各搬送スクリュー軸14および現像ローラ15は、ギヤ16を介して連結され、相互に連動して回転する。
【0033】
(現像剤収容装置4A)
ここで、現像装置4のうち、収容部13、搬送スクリュー軸14、およびシール部材18を現像剤収容装置4Aと称して、この現像剤収容装置4Aの具体的構成について、図4から図9を参照して説明する。また、2本設けられる搬送スクリュー軸14のうち一方の搬送スクリュー軸14について説明する。
【0034】
図4を参照して、箱型に形成された収容部13は、外部空間13Bと現像剤を収容する内部空間13Aとを仕切る仕切り壁13Sを有する。この仕切り壁13Sには、軸受19が設けられる。この軸受19には、外部空間13Bから内部空間13Aに延びる回転軸として搬送スクリュー軸14の一端側が保持される。搬送スクリュー軸14の一端側は、仕切り壁13Sから外部空間13B側に突出している。
【0035】
搬送スクリュー軸14の一端には、ギヤ16が設けられている。ギヤ16は、外部空間13Bに位置し、スクリュー14Sは内部空間13Aに位置している。収容部13、スクリュー14Sを含む搬送スクリュー軸14、軸受19、およびギヤ16は樹脂成形品等が用いられる。
【0036】
内部空間13A側には、外面が円錐型の筒形状のシール部材18が、搬送スクリュー軸14の一端側を覆うように設けられている。シール部材18には、ゴム、エラストマ樹脂等が用いられる。シール部材18の大径側の一端側18aは仕切り壁13Sに固定され、小径側の他端側18bは搬送スクリュー軸14の表面に圧接している。これにより、軸受19を内部空間13Aから区切り、内部空間13A内に閉空間20を規定する軸シール構造が形成される。この軸シール構造により、内部空間13A側からの現像剤の外部空間13B側への漏れが抑止される。
【0037】
図示しない搬送スクリュー軸14の他端側においては、ギヤ16は設けられないものの、同様の軸シール構造が採用され、内部空間13A内にはシール部材18が設けられ、軸受19を内部空間13Aから区切り、内部空間13A内に閉空間20を形成している。なお、搬送スクリュー軸14の他端側においては、仕切り壁13Sが、収容部13の外壁つまり現像剤収容装置4A自体の外壁を構成する。
【0038】
図4および図5を参照して、軸受19に支持される領域の搬送スクリュー軸14の表面には、外部空間13Bと閉空間20とを連通する連通溝21が設けられている。連通溝21は、外部空間13Bと閉空間20とを連通していることから、軸を含む断面で見た場合、連通溝21の長さ(W2)は、仕切り壁13Sの幅(W1)よりも長く、連通溝21内に、仕切り壁13Sが含まれた状態となっている。
【0039】
本実施の形態では、搬送スクリュー軸14の表面において、180度対向する位置に連通溝21が、2箇所設けられている。この連通溝21の詳細形状については、後述する。なお、連通溝21は2箇所に限らず、1箇所、または、3箇所以上設けることも可能である。
【0040】
仕切り壁13Sには、外部空間13Bと閉空間20とを連通する連通路23が設けられている。本実施の形態では、搬送スクリュー軸14の周りに周方向に沿って90度ピッチで連通路23が4箇所設けられている。また、各連通路23は、円弧形状を有している。なお、連通路23は4箇所に限らず、1箇所から3箇所、または、5箇所以上設けることも可能である。
【0041】
(連通溝21の形状)
次に、図6から図9を参照して、連通溝21の形状、および、連通溝21と連通路23との送風機能について説明する。なお、図6は、連通溝21の構造を示す部分拡大斜視図、図7は、図6に示す連通溝21によって生じる風の流れを示す模式断面図、図8は、他の連通溝21の構造を示す部分拡大斜視図、図9は、図8に示す連通溝によって生じる風の流れを示す模式断面図である。
【0042】
まず、図6および図7を参照して、図6に示す連通溝21は、搬送スクリュー軸14の回転方向Rの下流側(後側)に起立壁21aを有し、また、外部空間13B側から内部空間13A側に向かって溝深さが浅くなる底面21bを有している。この溝形状において、搬送スクリュー軸14が回転方向Rに回転した場合、軸方向(A)方向に沿って外部空間13B側から内部空間13A側に向かう風(エアーフロー)B1が連通溝21の表面に生じる。
【0043】
その結果、図7に示すように、搬送スクリュー軸14が回転した場合、連通溝21を通じて外部空間13B側の空気が閉空間20に向かって流れ込む状態となる。また、閉空間20は加圧された状態となるために、閉空間20内の空気は、連通路23を通じて外部空間13Bに流れ出る状態となる。
【0044】
また、図8および図9を参照して、他の形状を有する連通溝21、および、連通溝21と連通路23との送風機能について説明する。図8に示す連通溝21は、搬送スクリュー軸14の回転方向Rの下流側(後側)に起立壁21aを有し、また、内部空間13A側から外部空間13B側に向かって溝深さが浅くなる底面21cを有している。この溝形状において、搬送スクリュー軸14が回転方向Rに回転した場合、軸方向(A)方向に沿って内部空間13A側から外部空間13B側に向かう風(エアーフロー)B2が連通溝21の表面に生じる。
【0045】
その結果、図9に示すように、搬送スクリュー軸14が回転した場合、連通溝21を通じて内部空間13A側の空気が閉空間20から外部空間13B側に向かって流れ出る状態となる。また、閉空間20は減圧された状態となるために、連通路23を通じて外部空間13Bから閉空間20に空気が流入する状態となる。
【0046】
このように、図7および図9に示すように、閉空間20内の空気を外部に流出させる流れを生じさせることで、搬送スクリュー軸14と軸受19との間において発生する熱を、外部空間13Bの空気を循環させることにより直接外部に排出することができる。その結果、搬送スクリュー軸14と軸受19との間の軸受部分に直接外部の空気を当て、効率良く軸受部分を冷却することが可能となる。
【0047】
これにより、軸受部分で現像剤が溶け、その後シール部材に付着する等により、シール部材によるシール不良、軸受部分への現像剤の固着による搬送スクリュー軸14の回転不良等の発生を回避することが可能となる。
【0048】
また、シール部材18を設ける軸シール構造に改変を加えることなく、他の冷却のための装置構成を付加することもないため、現像剤収容装置4Aを大型化することない。その結果、現像剤収容装置4Aを採用する現像装置4、および、この現像装置4を採用する画像形成装置1000が大型化することはない。
【0049】
また、現像剤収容装置4Aにおけるシール不良、搬送スクリュー軸14の回転不良の発生が回避されることから、画像形成装置1000における記録媒体11への画像形成不良が回避され、画像形成装置1000の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0050】
なお、連通溝21の溝形状は、図6および図8に示す溝形状に限定されるものではない。搬送スクリュー軸14の回転により軸方向(A)に沿う風を連通溝21の表面に生じさせる溝形状であればどのような溝形状であってもかまわない。他の溝形状については、後述する。
【0051】
なお、上記実施の形態においては、外面が円錐型の筒形状のシール部材18を用いる構成について説明したが、この構成に限定されるものではない。たとえば、図10の断面図に示すように、環状形状のシール部材18Aを採用し、外周縁18c側を仕切り壁13S側に固定し、内周面18d側に搬送スクリュー軸14を貫通させるようにして、軸シール構造を構成することも可能である。シール部材18Aには、ゴム、エラストマ樹脂等が用いられる。なお、図10は、本実施の形態の他の形態における仕切り壁13Sに設けられるシール部材18Aを含む領域の部分拡大断面図である。
【0052】
(実施例)
以下、現像装置4の具体的な実施例について、図11から図14を参照して説明する。図11は、実施例における現像剤収容装置を採用した現像装置4の外観構成を示す斜視図、図12は、実施例における現像剤収容装置を採用した現像装置の内部構成を示すであり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【0053】
また、図13は、実施例における連通溝の形状を示す斜視図であり、(A)は右側から見た斜視図、(B)は左側から見た斜視図である。また、図14は、実施例における仕切り壁に設けられるシール部材を含む領域の部分拡大断面図である。上記実施の形態における現像装置4と同一または相当部分には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない。なお、基本的構成は、図10に示す軸シール構造と同じである。
【0054】
図13に示すように、搬送スクリュー軸14の一端部分には、連通溝21が2箇所設けられている。本実施例における連通溝21は、いずれも同じ溝形状を有し、搬送スクリュー軸14の軸方向(A)に対して左側に傾斜(約15度)するように設けられている。
【0055】
また、連通路23は、仕切り壁13Sの搬送スクリュー軸14の周りに周方向に沿って90度ピッチで4箇所に設けられている。搬送スクリュー軸14が回転方向Rに回転した場合、軸方向(A)方向に沿って外部空間側から内部空間側に向かう風(エアーフロー)が連通溝21の表面に生じる。
【0056】
その結果、図14に示すように、搬送スクリュー軸14が回転した場合、連通溝21を通じて外部空間側の空気が閉空間20に向かって流れ込む状態となる。また、閉空間20は加圧された状態となるために、閉空間20内の空気は、連通路23を通じて外部空間13Bに流れ出る状態となる。
【0057】
ここで、搬送スクリュー軸14の回転数が600rpmにおいて(回転方向は、図13中のR方向)、連通溝21と連通路23とを設けない従来構造の閉空間20内の温度と、連通溝21と連通路23とを設けた場合の本実施例の構造における閉空間20内の温度とを測定した。閉空間20内の温度の測定には、J型熱電対を用いた。その結果、従来構造の閉空間20内の温度上昇は、約35.0度であったのに対して、本実施例における構造の閉空間20内の温度上昇は、約25.0度であった。
【0058】
このように、閉空間20内の空気を外部に流出させる流れを生じさせる。搬送スクリュー軸14と軸受19との間において発生する熱を、上記のように外部空間の空気を循環させることにより直接外部に排出することができる結果、搬送スクリュー軸14と軸受19との間の軸受部分に直接外部の空気を当て、効率良く軸受部分を冷却することが可能となる。
【0059】
これにより、軸受部分で現像剤が溶け、その後シール部材に付着する等により、シール部材によるシール不良、軸受部分への現像剤の固着による搬送スクリュー軸14の回転不良等の発生を回避することが可能となる。
【0060】
なお、本実施例において設けた2つの連通溝21は、いずれも同じ溝形状を有し、搬送スクリュー軸14の軸方(A)に対して同一方向に傾斜(約15度)するように設けられているが、図15に示す溝形状の連通溝21を設けることも可能である。この連通溝21は、軸方向(A)に対して傾斜しており、2つの連通溝21のそれぞれ傾斜方向は、軸方向(A)に対して線対称となるように設けられている。
【0061】
この構成を例えば、図4に示す実施の形態における軸シール構造に採用した場合には、図16に示すように、搬送スクリュー軸14が回転することにより、一方の連通溝21においては、軸方向(A)方向に沿って外部空間側から内部空間側に向かう風(エアーフロー)を連通溝21の表面に生じさせ、他方の連通溝21においては、軸方向(A)方向に沿って内部空間側から外部空間側に向かう風(エアーフロー)を連通溝21の表面に生じさせることになる。その結果、閉空間20内の空気流れを掻き乱すことが可能となり、閉空間20内での冷却効果の向上を期待することができる。
【0062】
また、搬送スクリュー軸14に設ける他の溝形状としては、図17に示すような、螺旋形状の連通溝21の採用、または、図18に示すような、軸方向に平行な直線状の溝形状の連通溝21を採用することも可能である。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1 像担持体、2 帯電装置、3 像露光装置、4 現像装置、4A 現像剤収容装置、5 転写ベルト、6 一次転写装置、7 二次転写装置、8 定着装置、9 清掃装置、11 記録媒体、12 徐電装置、13 収容部、13A 内部空間、13B 外部空間、13S 仕切り壁、14 搬送スクリュー軸、14S スクリュー、15 現像ローラ、16 ギヤ、18,18A シール部材、18a 一端側、18b 他端側、18c 外周縁、18d 内周面、19 軸受、21 連通溝、21a 起立壁、21b,21c 底面、23 連通路、30 規制板、100 画像形成ユニット、1000 画像形成装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容する現像剤収容装置であって、
外部空間と前記現像剤を収容する内部空間とを仕切る仕切り壁と、
前記仕切り壁に設けられる軸受と、
前記軸受に保持され、前記外部空間から前記内部空間に延びる回転軸と、
前記内部空間側に設けられ、一端側が前記仕切り壁側に固定され他端側が前記回転軸の表面に接することで、前記軸受を前記内部空間から区切るシール部材と、
前記回転軸の表面に設けられ、前記外部空間と前記シール部材により前記内部空間から区切られた閉空間とを連通する連通溝と、
前記仕切り壁に設けられ、前記外部空間と前記閉空間とを連通する連通路と、
を備える、現像剤収容装置。
【請求項2】
前記連通溝は、前記回転軸の回転により軸方向に沿う風を前記連通溝の表面に生じさせる溝形状を有する、請求項1に記載の現像剤収容装置。
【請求項3】
前記連通溝は、前記回転軸の軸方向に対して傾斜している、請求項2に記載の現像剤収容装置。
【請求項4】
前記連通溝は、前記軸受に対向する軸表面に第1溝および第2溝を有し、
前記第1溝および前記第2溝は、前記軸方向に対して傾斜しており、
前記第1溝および前記第2溝のそれぞれ傾斜方向は、前記軸方向に対して線対称である、請求項3に記載の現像剤収容装置。
【請求項5】
前記仕切り壁は、当該現像剤収容装置の外壁である、請求項1から4のいずれかに記載の現像剤収容装置。
【請求項6】
前記回転軸は、当該現像剤収容装置の現像剤搬送スクリューが設けられる搬送スクリュー軸である、請求項1から5のいずれかに記載の現像剤収容装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の現像剤収容装置を有する、画像形成装置。
【請求項1】
現像剤を収容する現像剤収容装置であって、
外部空間と前記現像剤を収容する内部空間とを仕切る仕切り壁と、
前記仕切り壁に設けられる軸受と、
前記軸受に保持され、前記外部空間から前記内部空間に延びる回転軸と、
前記内部空間側に設けられ、一端側が前記仕切り壁側に固定され他端側が前記回転軸の表面に接することで、前記軸受を前記内部空間から区切るシール部材と、
前記回転軸の表面に設けられ、前記外部空間と前記シール部材により前記内部空間から区切られた閉空間とを連通する連通溝と、
前記仕切り壁に設けられ、前記外部空間と前記閉空間とを連通する連通路と、
を備える、現像剤収容装置。
【請求項2】
前記連通溝は、前記回転軸の回転により軸方向に沿う風を前記連通溝の表面に生じさせる溝形状を有する、請求項1に記載の現像剤収容装置。
【請求項3】
前記連通溝は、前記回転軸の軸方向に対して傾斜している、請求項2に記載の現像剤収容装置。
【請求項4】
前記連通溝は、前記軸受に対向する軸表面に第1溝および第2溝を有し、
前記第1溝および前記第2溝は、前記軸方向に対して傾斜しており、
前記第1溝および前記第2溝のそれぞれ傾斜方向は、前記軸方向に対して線対称である、請求項3に記載の現像剤収容装置。
【請求項5】
前記仕切り壁は、当該現像剤収容装置の外壁である、請求項1から4のいずれかに記載の現像剤収容装置。
【請求項6】
前記回転軸は、当該現像剤収容装置の現像剤搬送スクリューが設けられる搬送スクリュー軸である、請求項1から5のいずれかに記載の現像剤収容装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の現像剤収容装置を有する、画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−257703(P2011−257703A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134218(P2010−134218)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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