説明

現像剤担持体、現像装置、及び画像形成装置

【目的】 画像形成装置を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体に画像データを現像させても、現像ローラ表面における充填部と露出部の間の抵抗値及び表面電位の差異が小さい状態で画像データを記録媒体に現像させることにより、記録媒体に現像した印刷画像に発生する放置横帯現象及びカブリ現象を抑制できる現像剤担持体、現像装置、及び画像形成装置の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明の現像剤担持体は、静電潜像が形成される像担持体に当接し前記像担持体に現像剤層を形成する現像剤担持体において、前記現像剤担持体の表面1mmの位置からコロナ放電により6000Vの電圧を印加して前記現像剤担持体の表面を帯電させたとき、帯電後0.15秒後の前記現像剤担持体の表面電位をV[V]とし、表面電位がVからV/eになる緩和時間をτ[sec]とすると、2.0≦V≦10、及び0<τ≦0.20を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に当接し現像剤層を形成する現像剤担持体、上記現像剤担持体を有し記録媒体にトナー画像を現像する現像装置、上記現像装置を有し入力された画像データを一定の制御に基づいて記録媒体に現像して出力する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、及び電子写真カラー記録装置等の画像形成装置においては、帯電ローラにより一様に帯電させた感光体ドラムの表面に、露光源によって画像情報に基づく静電潜像を形成した後に、現像剤担持体により現像剤であるトナーを付着させてトナー像を形成している。当該トナー像が記録媒体に転写された後に定着器を用いて記録媒体に定着させることで、記録媒体にトナー画像が形成される。
【0003】
ここで、画像形成装置に設けられる現像剤担持体について、現像剤担持体に起因して記録媒体に現像した印刷画像に発生する放置横帯現象及びカブリ現象の低減、且つ、現像剤担持体の長期保存性を向上させるために、現像剤担持体表面に形成されたウレタン弾性層をイソシアネート溶液で表面処理するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-148470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の構成では、現像剤担持体の表面の静電容量が大きいため、画像形成装置を稼動させて記録媒体に画像データを連続して現像する場合には、現像剤担持体の表面に電荷が蓄積し易い。
【0006】
このため、現像剤担持体の表面が外気に触れる露出部においては、主に外気から吸湿することにより現像剤担持体の表面に蓄積された電荷が放出され易い。一方、バルク状態のトナーに接触している充填部では、トナーから吸湿するものの、現像剤担持体の表面に蓄積された電荷は放出され難い。従って、画像形成装置を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体に画像データを現像させると、現像剤担持体の表面において、充填部と露出部の間の帯電量が大きく異なることから、記録媒体に現像した印刷画像に放置横帯現象やカブリ現象が発生する問題があった。
【0007】
そこで、本発明は前述の技術的な課題に鑑み、現像剤担持体の誘電特性を抑制することにより、記録媒体に現像した印刷画像に放置横帯現象やカブリ現象が発生することを防止できる現像剤担持体、現像装置、及び画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決すべく、本発明に係る現像剤担持体は、静電潜像が形成される像担持体に当接し前記像担持体に現像剤層を形成する現像剤担持体において、前記現像剤担持体の表面1mmの位置からコロナ放電により6000Vの電圧を印加して前記現像剤担持体の表面を帯電させたとき、帯電後0.15秒後の前記現像剤担持体の表面電位をV[V]とし、表面電位がVからV/eになる緩和時間をτ[sec]とすると、2.0≦V≦10、及び0<τ≦0.20を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る帯電量を抑制した現像剤担持体によれば、当該現像剤担持体を設けた現像装置及び画像形成装置において、画像形成装置を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体に画像データを現像させても、現像剤担持体の表面における充填部と露出部の間の抵抗値及び表面電位の差異が小さい状態で、画像データを記録媒体に現像できる。従って、記録媒体に現像した印刷画像に発生する放置横帯現象及びカブリ現象を抑制できる。また、現像剤担持体の表面をウレタン処理することにより、イソシアネート処理を施した現像剤担持体と比較して、印刷枚数の増加による現像剤担持体の経時的な抵抗値変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の画像形成装置を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の現像装置を示す構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の現像装置に係る現像ローラ近傍を示す構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の現像ローラに係る抵抗値の測定を示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の現像ローラに係る抵抗値の測定を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の現像ローラの表面電位に係る誘電緩和特性の測定を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の現像ローラに係る表面電位の経時測定を示す模式図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の現像ローラの誘電特性が高い場合における現像ローラの表面抵抗値及び表面電位の推移を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の現像ローラの誘電特性が低い場合における現像ローラの表面抵抗値及び表面電位の推移を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の現像剤担持体、現像装置、及び画像形成装置に係る好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の現像剤担持体、現像装置、及び画像形成装置は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。
【0012】
[第1の実施形態]
第1の実施形態における現像剤担持体は、現像剤担持体の表面1mmの位置からコロナ放電により6000Vの電圧を印加して前記現像剤担持体の表面を帯電させたとき、帯電後0.15秒後の前記現像剤担持体の表面電位をV[V]とし、表面電位がVからV/eになる緩和時間をτ[sec]とすると、2.0≦V≦10、及び0<τ≦0.20を満たすことで、画像形成装置を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体に画像データを現像させても、現像剤担持体の表面における充填部と露出部の間の抵抗値及び表面電位の差異が小さい状態で、画像データを記録媒体に現像することを特徴とする。
【0013】
まず、本実施形態の画像形成装置1について説明する。図1に画像形成装置1の構成図を示す。画像形成装置1は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、及びブラック色の各色に対応する画像情報に基づいて記録媒体4に印刷する現像装置2C、2M、2Y、及び2Kと、給紙カセット5を始点として画像情報を印刷した記録媒体4が排出されるスタッカ17を終点とする略S字状の用紙搬送経路3を備えている。
【0014】
画像形成装置1内の現像装置2は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、及びブラック色の各色に対応する画像情報を現像する現像装置2C、2M、2Y、及び2Kから成るが、互いに略同一の構成であるため、以下の説明においては現像装置2と称す。現像装置2の詳細は後述する。
【0015】
画像形成装置1内の用紙搬送経路3は、記録媒体4を収納した給紙カセット5を始点としホッピングローラ6、レジストローラ7、レジストローラ8、アイドルローラ11、転写ローラ9、転写ベルト10、ドライブローラ12、定着器13、排出ローラ16を経て、スタッカ17を終点とする経路から構成される。以下、用紙搬送経路3に含まれる各構成部材等について、図1を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
記録媒体4は、モノクロ又はカラーの画像情報を現像させるための所定寸法の記録用紙であり、一般的には、再生紙、光沢紙、及び上質紙のような紙、若しくはOHPフィルムからなる。また、給紙カセット5は、複数枚の記録媒体4を収納しておき、印刷動作が開始されると記録媒体4を画像記録装置1内に供給するためのものである。なお、給紙カセット5は、画像記録装置1から脱着可能なように構成されている。また、ホッピングローラ6は、給紙カセット5に収納した記録媒体4に対して圧接した状態で回転することにより給紙カセット5から1枚ずつ取り出した記録媒体4を、レジストローラ7及びレジストローラ8に供給するためのものである。また、レジストローラ7及びレジストローラ8は、ホッピングローラ6から供給された記録媒体4を斜行させずスクリュー取り等を行い転写ベルト10に搬送する。
【0017】
転写ローラ9は、後述する感光体ドラム21表面に形成されたトナー像を記録媒体4に転写する転写部材であり、感光体ドラム21の下方に位置し、転写ローラ9と感光体ドラム21で記録媒体4と挟むように当接した状態で回転可能に設けられている。この様な転写ローラ9は、発泡性の弾性体から構成されている。また、転写ベルト10は、記録媒体4を現像装置2内に搬送して画像情報を現像するための搬送手段であり、転写ベルト10の周面上に現像剤であるトナー24による画像を保持するとともに、記録媒体4を吸着できるようにした無端状のベルトである。また、アイドルローラ11は転写ベルト10の駆動を安定化させ、ドライブローラ12は転写ベルト10を駆動する。なお、アイドルローラ11及びドライブローラ12は、無端状に形成された転写ベルト10の両端に設けられ、転写ベルト10に一定の張力を与えている。この様なアイドルローラ11及びドライブローラ12は、高摩擦の抵抗部材で形成されている。なお、アイドルローラ11及びドライブローラ12を図示せぬ駆動系によって回転させると、転写ベルト10が連動して駆動する。
【0018】
定着器13は、定着ローラ14と加圧ローラ15から構成される。定着ローラ14と加圧ローラ15は転写ベルト10によって搬送された記録媒体4を挟むように配置され、現像装置2で記録媒体4に現像されたトナー画像を記録媒体4に定着させる。具体的には、定着ローラ14内部に配設された図示しないハロゲンランプ等の熱源から供給された熱を用いて記録媒体4上に付着したトナー画像を溶解した上で、加圧ローラ15の加圧力によりトナー画像を記録媒体4に定着させる。また、排出ローラ16は、定着器13によりトナー画像を定着させた記録媒体4をスタッカ17に排出するためのものである。また、スタッカ17は、画像情報を現像され排出された記録媒体4を積載する積載スペースである。
【0019】
次に、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、及びブラック色の各色に対応する画像情報に基づいて記録媒体4にトナー画像を印刷する現像装置2について説明する。図2に現像装置2の構成図を示す。以下、現像装置2を構成する各構成部材について詳細に説明する。
【0020】
現像装置2は、画像情報に基づく静電潜像を担持する感光体ドラム21と、感光体ドラム21の表面に電荷を蓄えさせる帯電部材22と、画像情報に対応した光を感光体ドラム21の表面に照射する露光源23と、現像剤であるトナー24と、トナー24を収容するトナーカートリッジ25と、トナーカートリッジ25内のトナー24を攪拌する攪拌部材26と、トナー24を供給するためのトナー供給ローラ27と、感光体ドラム21表面の静電潜像をトナー24によって現像する現像ローラ28と、トナー24の厚みが均一となるように規制する現像ブレード29と、感光体ドラム21に残留したトナー24を掻き落とすクリーニングブレード30と、クリーニングブレード30により掻き落としたトナー24を搬送するクリーニングスパイラル31と、クリーニングスパイラル31により搬送されたトナー24を収納する廃棄トナー収容部32とを有する。また、現像装置2は画像形成装置1に対して着脱可能に配設されている。以下、現像装置2に含まれる各構成部材について、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
感光体ドラム21は、現像剤像が形成される像担持体であり、画像情報に基づく静電潜像を担持するために表面に電荷を蓄えることが可能なように構成されている。なお、感光体ドラム21は、円筒形状部からなり、回転可能なように設けられている。この様な感光ドラム21は、例えば外径30mm及び厚さ0.75mmのアルミ管上に電荷発生層及び電荷輸送層を形成している。電荷輸送層は例えばバインダー樹脂としてポリカーボネートを使用し、膜厚は例えば5μmから30μmである。なお、上記の条件の場合、感光体ドラム21の周速度は0.178m/secである。また、帯電部材22は、図示せぬ電源を用いて感光体ドラム21の表面に所定の正電圧又は負電圧を印加することにより、感光体ドラム21の表面に対して一様に電荷を蓄えさせるためのものである。帯電ローラ22は、帯電部材であり、一定の圧力で感光体ドラム21の表面に接触しながら回転可能なように設けられている。この様な帯電ローラ22は、導電性の金属シャフトにシリコーン等の半導電性ゴムを被覆することで構成されている。なお、上記の条件の場合、帯電ローラ22の周速度は0.178m/secである。
【0022】
また、露光源23は、画像情報に対応した光を感光体ドラム21の表面に照射して感光ドラム21の表面に静電潜像を形成することが可能なように構成されており、感光体ドラム21の上方に設けられている。この様な露光源23は、複数のLED素子、レンズアレイ、及びLED駆動素子を組み合わせたものから構成されている。また、トナー24は、現像剤であり、感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像に付着させることで画像情報を可視化することができる。なお、トナー24は、例えば粉砕法で製造された体積平均粒径5.7μm、フローオフ帯電量−43μC/g、及び円形度0.950の一成分非磁性の仕様である。また、トナーカートリッジ25は、トナー24を収容する収容器であり、トナー供給ローラ27の上方に配置されている。トナーカートリッジ25は、側面部が略長方形で記録媒体4の搬送方向と垂直方向に長い矩形状部の下部に側面部が略円形で記録媒体4の搬送方向と垂直方向に長い円筒形状部を接合するように形成されている。なお、接合部は開口しているため、矩形状部と円筒形状部は一室から形成されており、トナー24を収容する。トナーカートリッジ25は、トナー24が消耗した時に交換できるように、画像形成装置1に対して着脱自在に構成されている。また、攪拌部材26は、トナーカートリッジ25内に回転可能に設けられ、トナー24を攪拌させる。なお、攪拌部材26は、硬質材料から成り、例えば側面部が略円形の棒状部から形成され、もしくは側面部が略長方形の板状部から形成される。
【0023】
トナー供給ローラ27は、回転しながら現像ローラ28に当接することで、現像ローラ28にトナー24を供給できるように設けられている。この様なトナー供給ローラ27は、例えば導電性を有する金属シャフトに発泡剤が添加されたゴムを被覆することで構成されている。この様なトナー供給ローラ27は、例えば外径6mmのSUS材から成る金属シャフトに、アスカーF硬度が50度から60度のシリコーンゴムスポンジを4.75mmの厚さで被覆することにより構成されている。従って、トナー供給ローラ27の外径は15.5mmである。なお、上記の条件の場合、トナー供給ローラ27の周速度は0.138m/secである。また、トナー供給ローラ27を構成するシリコーンゴムスポンジは、例えば未加硫のシリコーンゴムコンバウンドを押し出し等の方法で成形し、過熱により加硫発泡させることで形成される。また、トナー供給ローラ27表面の発泡により生じた微細な孔であるセル径は、例えば200μmから500μmである。また、現像ローラ28に当接したトナー供給ローラ27の圧縮量を示すニップ量は例えば1mmである。
【0024】
現像ローラ28は、現像剤担持体であり、一定の圧力で感光体ドラム21の表面に接触しながら回転可能なように構成されている。なお、現像ローラ28は本発明に係る重要な部材であるため、以下、より詳細に説明する。現像ローラ28は、回転しながらトナー24を感光体ドラム21に搬送し、感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像をトナー24によって現像する。この様な現像ローラ28は、例えば導電性を有する外径10mmのSUS材から成る金属シャフトに、例えばアスカーC硬度が76度のポリエーテル系ウレタン弾性層を被覆することにより構成されている。
【0025】
具体的には、弾性層は、ポリエーテル系ポリオール及び脂肪族系イソシアネートをベースポリマーとして形成した。また、弾性層の抵抗値調整のために、導電材として例えばアセチレンブラック及びケッチェンブラック等のカーボンブラックを添加する。当該添加量は、ウレタン成分100重量部に対して5重量部以下とする。なお、弾性層の抵抗値は、金属シャフト及び弾性層における抵抗値で規定すると1×10Ωであり、1×10Ωから11×10Ωの範囲が好ましい。また、現像ローラ28は、例えば外径10mmのSUS材から成る金属シャフトに、ウレタン弾性層を2.95mmの厚さで被覆していることから、現像ローラ28の外径は15.9mmである。なお、現像ローラ28の所定の外径寸法にするために、弾性層表面を粗研磨磨及びフィニッシャー研磨等を行う。上記の研磨後における現像ローラ28の表面粗さは、JISB0601−1994に基づく検査方法において、現像ローラ28表面の円周方向の10点平均粗さ精度Rzが2μmから6μmの精度を満たす。なお、上記の条件の場合、現像ローラ28の周速度は0.212m/secである。
【0026】
また、トナー24を現像ローラ28表面に適切に担持させるために、現像ローラ28の弾性層にイソシアネート処理を施すことにより現像ローラ28に表面層を形成する。なお、イソシアネート処理は、弾性層の表面を後述するイソシアネート処理液に30秒間浸漬させた後、100℃のオーブンで10時間加熱を行い乾燥させる処理方法である。イソシアネート処理液は、イソシアネート化合物を酢酸エチル等の有機溶剤に酢酸エチル100重量部に対してイソシアネート化合物20重量部の比率で溶解させた後に、アセチレンブラック及びケッチェンブラック等のカーボンブラックを添加したものである。イソシアネート化合物には、例えば4.4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、及び2,6−トリレンジイソシアネートを用いる。なお、ウレタン弾性層が乾燥した後、イソシアネート処理層の表面抵抗を高くするとトナー24の帯電特性が向上する。このため、現像ローラ28の表面を有機溶剤のイソプロピルアルコールに漬けた布等で払拭することにより、弾性体の表面にイソプロピルアルコールを含浸させる。上述の処理を行うと、弾性層表面のカーボン連鎖が伸縮するため、現像ローラ28表面の帯電特性を均一に向上させることができる。
【0027】
現像ブレード29は、その先端部が現像ローラ28の表面に僅かに当接するように設けられ、トナー供給ローラ27から現像ローラ28の表面に供給された内、一定量を越えたトナー24を掻き取ることで、現像ローラ28の表面に形成されるトナー24の厚みを常に均一となるように規制する。この様な現像ブレード29は、ステンレス等の板状弾性部材で形成されている。クリーニングブレード30は、感光体ドラム21上に形成されたトナー画像を記録媒体4に転写した後に、感光体ドラム21に残留したトナー24を払い落とすように構成されている。この様なクリーニングブレード30は、板状に形成されており、帯電ローラ22よりも感光体ドラム21の回転方向における上流側に配設され、感光体ドラム21表面に対して一定圧力を付加した状態で当接されている。また、クリーニングブレード30によって感光体ドラム21から掻き落としたトナー24は、クリーニングスパイラル31により、廃棄トナー収容部32の奧に搬送される。この様なクリーニングスパイラル31によって、トナー24が廃棄トナー収容部32の入口近傍に固着して詰まることを防ぐ。また、廃棄トナー収容部32は、クリーニングスパイラル31により搬送されたトナー24を収納する。廃棄トナー収容部32は、側面部が略長方形で記録媒体4の搬送方向と垂直方向に長い矩形状部から形成されている。なお、廃棄トナー収容部32は、トナーカートリッジ25のうち側面部が略長方形で記録媒体4の搬送方向と垂直方向に長い矩形状部と並列する様に設けられている。
【0028】
次に、現像ローラ28に起因して記録媒体4に現像した印刷画像に生じる放置横帯現象について具体的に説明する。図3に現像装置2に係る現像ローラ28近傍の構成図を示す。
【0029】
現像ローラ28は、一定の圧力で感光体ドラム21表面に当接しながら回転することで、現像ローラ28表面に担持したトナー24を感光体ドラム21表面に転写する。ここで、現像ブレード29、現像ローラ28、トナー漏れ防止シール33、及びトナーカートリッジ25の筐体内壁部25Aに包囲された領域において、トナー24は薄層化されていないバルクの状態で収容される。上記の領域と現像ローラ28表面が接触する箇所を、現像ローラ28表面に係る充填部28Cと規定する。また、現像ブレード29、感光体ドラム21、及びトナー漏れ防止シール33に包囲された領域において、トナー24は薄膜化された状態で現像ローラ28表面に担持される。上記の領域と現像ローラ28表面が接触する箇所を、現像ローラ28表面に係る露出部28Dと規定する。ここで、画像形成装置1を一定時間を越えて稼動させない場合、トナー24が薄層化されていないバルクの状態で接触している充填部28Cと、トナー24が薄膜化された状態で接触している充填部28Cでは、現像ローラ28表面の帯電量が異なる。従って、現像ローラ28表面において、充填部28Cと露出部28Dでは帯電量に差異が生じる。
【0030】
具体的には、現像ローラ28表面が外気に触れる露出部28Dにおいては、主に外気から吸湿することにより現像ローラ28表面に蓄積された電荷が放出され易い。一方、バルク状態のトナー24に接触している充填部28Cでは、トナー24から吸湿するものの、現像ローラ28表面に蓄積された電荷は放出され難い。従って、画像形成装置1を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体4に画像データを現像させると、現像ローラ28表面において、充填部28Cと露出部28Dの間の帯電量が大きく異なることから、記録媒体4に現像した印刷画像に帯状の濃度ムラが発生する。このような濃度ムラを放置横帯という。
【0031】
なお、現像ローラ28表面から電荷が放出されると、現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位が下がる。このため、現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位を測定することで、現像ローラ28に係る帯電特性についての情報を得ることができる。なお、本発明に係る現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位は、以下の様に測定した。
【0032】
まず、現像ローラ28の抵抗値の測定について説明する。図4及び図5に現像ローラ28の抵抗値の測定に係る模式図を示す。
【0033】
現像ローラ28の抵抗値は、現像ローラ28の表層部28Aの抵抗値と軸芯部28Bの抵抗値の差分を測定することにより算出する。現像ローラ28の抵抗値は抵抗測定器35で測定した。なお、抵抗測定器35には、ヒューレット・パッカード株式会社製の型式ハイレジスタンスメータ4339Bを用いた。具体的には、抵抗値の測定は、現像ローラ28の軸芯部28Bに抵抗測定器35のテストリード35Aを接続し、現像ローラ28の表層部28Aに抵抗測定器35のテストリード35Bに接続した測定部35Cを20gfの圧力で当接した状態で、現像ローラ28を回転させることにより行った。また、測定部35Cは、直径6.0mm及び幅2.0mmの円柱形状から形成されたSUS材からなるボールベアリングであり、現像ローラ28の表層部28Aに対して測定部35Cの幅2.0mmの部分を当接させた。なお、測定部35Cは、現像ローラ28の表層部28Aに係る測定箇所P1から測定箇所P6に、計6個配設した。上述した測定条件において、現像ローラ28を回転させた上で、測定箇所P1乃至測定箇所P6のそれぞれの測定箇所において、現像ローラ28が一回転する間に各100ポイントの抵抗値を測定した。ここで、現像ローラ28の抵抗値は、計600ポイントの抵抗値の平均値と規定した。また、現像ローラ用電源52から現像ローラ28に印加した駆動電圧は100Vである。
【0034】
次に、現像ローラ28の表面電位に係る誘電緩和特性の測定について説明する。図6に現像ローラ28の表面電位に係る誘電緩和特性の測定に係る模式図を示す。
【0035】
現像ローラ28の誘電緩和特性は、現像ローラ28の表層部28Aの電圧値と軸芯部28Bの電圧値の差分を経時測定することにより測定する。現像ローラ28の誘電緩和特性は誘電緩和特性測定器36で測定した。なお、誘電緩和特性測定器36には、
Quality Engineering Associates社製の型式DRA−2000Lを用いた。具体的には、誘電緩和特性の測定は、現像ローラ28の軸芯部28Bに誘電緩和特性測定器36のテストリード36Aを接続し、現像ローラ28の表層部28Aに誘電緩和特性測定器36のテストリード36Bに接続した測定部36Cを近接した上で行った。なお、測定部36Cは、コロナ放電器36Dと表面電位計36Eから構成され、コロナ放電器36Dの先端が現像ローラ28の表層部28Aに近接している。上述した測定条件において、まず、測定部36Cを現像ローラ28上の任意の位置に対し、コロナ放電器36Dの先端と現像ローラ28の表層部28A間の距離が1mmとなるように測定部36Cを駆動する。次に、コロナ放電器36Dの先端から現像ローラ28の表層部28Aに対して6000Vの電圧を印加することにより帯電させて、当該放電箇所に表面電位計36Eのプローブを0.15秒で走査した後、電圧値を経時測定する。
【0036】
なお、現像ローラ28の表面電位に係る誘電緩和特性について具体的に説明する。図7に現像ローラ28の表面電位の経時測定に係る模式図を示す。
【0037】
コロナ放電器36Dの先端から現像ローラ28の表層部28Aに対して6000Vの電圧を印加することにより帯電させて、当該放電箇所に表面電位計36Eのプローブを0.15秒で走査した直後における、現像ローラ28の表面電位を、V(V)とする。同様に、現像ローラ28の表面電位がV/e(V)に低下するのに要する時間を緩和時間τ(sec)とする。eは自然対数の底で2.71828である。なお、図7において、緩和時間τはS2からS1を引いた時間である。同様に、現像ローラ28の表面電位の減衰飽和電圧値をVとし、減衰飽和電圧値Vに到達するまでに要する時間を減衰飽和時間t(sec)とする。なお、図7において、減衰飽和時間t(sec)はS3からS1を引いた時間である。
【0038】
次に、現像ローラ28の誘電特性が現像ローラ28の表面抵抗値及び表面電位に与える影響について説明する。図8に現像ローラの誘電特性が高い場合における現像ローラの表面抵抗値及び表面電位の推移を示し、図9に現像ローラの誘電特性が低い場合における現像ローラの表面抵抗値及び表面電位の推移を示す。
【0039】
なお、感光体ドラム21と当接する現像ローラ28表面近傍に係る誘電率が低いことを誘電特性が低いとして説明し、感光体ドラム21と当接する現像ローラ28表面近傍に係る誘電率が高いことを誘電特性が高いとして説明する。
【0040】
現像ローラ28の誘電特性が低い方が、現像ローラ28の充填部28Cと露出部28D間で、抵抗値及び表面電位に大きな差異が発生しない。このため、現像ローラ28の誘電特性が低い場合には、画像形成装置1を一定期間を越えて動作させなかった後に、記録媒体4に画像データを現像した場合でも放置横帯が発生し難い。従って、記録媒体4に現像した印刷画像は良好な画像品質となる。以下、現像ローラ28の誘電特性が現像ローラ28の表面抵抗値及び表面電位に与える影響について、現像ローラ28の誘電特性が高い場合と、現像ローラ28の誘電特性が低い場合に場合分けして、具体的に説明する。
【0041】
まず、現像ローラ28の誘電特性が高い場合における、現像ローラ28の誘電特性が現像ローラ28の表面抵抗値及び表面電位に与える影響について、図8を参照しながら説明する。画像形成装置1を連続的に稼動させて記録媒体4に画像データを現像すると、現像ローラ28が加熱することから、現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位が上昇する。印刷終了後、現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位は徐々に降下する。しかし、図3を用いて上述した様に、現像ローラ28の露出部28Dと現像ローラ28の充填部28Cでは帯電特性が異なる。このため、現像ローラ28の露出部28Dと充填部28Cでは抵抗値及び表面電位の降下する速度が異なり、露出部28Dと比較して充填部28Cでは抵抗値及び表面電位の降下速度が遅い。具体的には、現像ローラ28表面が外気に触れる露出部28Dでは主に外気から吸湿することで、現像ローラ28表面に蓄積した電荷は放出され易い。一方、バルク状態のトナー24に接触している充填部28Cでは、トナー24から吸湿するものの現像ローラ28表面に蓄積した電荷は放出され難い。このため、画像形成装置1を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体4に画像データを現像させると、現像ローラ28表面において、充填部28Cと露出部28Dの間の抵抗値及び表面電位の差異が大きい状態で、画像データを記録媒体4に現像することになる。従って、記録媒体4に現像した印刷画像に放置横帯が発生することで画像品質が低下する。
【0042】
次に、現像ローラ28の誘電特性が低い場合における、現像ローラ28の誘電特性が現像ローラ28の表面抵抗値及び表面電位に与える影響について、図9を参照しながら説明する。画像形成装置1を連続的に稼動させて記録媒体4に画像データを現像すると、現像ローラ28が加熱することから、現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位が上昇する。しかし、現像ローラ28の誘電特性が低いため、現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位の上昇は抑制される。印刷終了後、現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位は徐々に降下する。露出部28Dと比較して充填部28Cでは抵抗値及び表面電位の降下速度が遅いが、印刷時に現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位の上昇は抑制されていたことから、露出部28Dと充填部28C間の抵抗値及び表面電位の差異は小さい。このため、画像形成装置1を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体4に画像データを現像させても、現像ローラ28表面において、充填部28Cと露出部28Dの間の抵抗値及び表面電位の差異が小さい状態で、画像データを記録媒体4に現像できる。従って、記録媒体4に現像した印刷画像に放置横帯が発生することはなく画像品質を維持できる。
【0043】
上述した様に、現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位は、現像ローラ28の誘電特性に強く依存する。このため、現像ローラ28表面の抵抗値及び表面電位の変動を抑制するためには、現像ローラ28の誘電特性を低くすることが必要である。
【0044】
なお、現像ローラ28表面における充填部28Cと露出部28Dの間の抵抗値及び表面電位の差異が大きい場合には、記録媒体4に現像した印刷画像に放置横帯が発生するが、当該放置横帯に加えて、印刷画像の画像品質を劣化させるカブリ現象も発生する。そこで、カブリ現象に係る検証も実施した。
【0045】
カブリ現象は、現像ローラ28の抵抗値が一定値以上になるとトナー24の帯電許容値を超えることから感光体ドラム21表面にトナー24が付着することをいう。ここで、カブリ現象に係る検証は、記録媒体4に対して面積密度が0%となるようなテストパターンを印刷し、感光ドラム21表面の現像部から転写部に係る箇所にメンディングテープを付着して剥がし取った後、未使用のメンディングテープと剥がし取ったメンディングテープを株式会社沖データ製のエクセレントホワイト紙に貼り付けて色差△Eを測定することにより行った。なお、感光体ドラム21表面にカブリ現象が発生した場合には、剥がし取ったメンディングテープにカブリ現象に起因するトナー24が付着する。
【0046】
本発明に係る現像ローラ28は、現像ローラ28の誘電特性を低くすることにより、放置横帯現象及びカブリ現象を抑制する効果を有する。以下、放置横帯現象及びカブリ現象の抑制に係る検証結果について、表1を参照しながら具体的に説明する。
【0047】
まず、現像ローラ28に係る検証条件について説明する。検証は、画像形成装置1を用いてA4版の記録媒体4に対して面積密度が0. 3%となるようなテストパターンを計1000枚連続印刷した後、一旦、画像形成装置1の電源を切り1日間放置した。1日間経過後、画像形成装置1の電源を入れて再起動させた上で、記録媒体4にテストパターンを印刷した。なお、画像形成装置1の再起動後に印刷したテストパターンは、600dpiの印刷濃度において2×2のドットを2ドット間隔で印刷するパターンを用いた。上記の検証方法により画像形成装置1の再起動後に記録媒体4に印刷したテストパターンを用いて、放置横帯現象の発生の有無を判定した。また、感光ドラム21表面におけるカブリ現象の有無は、前述した方法によりメンディングテープに付着したトナー24の色差△Eを測定することで判定した。
【0048】
次に、現像ローラ28に係る放置横帯現象及びカブリ現象の検証結果について、具体的に説明する。表1に検証結果を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
まず、表1に記載した略語について説明する。I処理はイソシアネート処理を略したものであり、CB重量部はカーボンブラック重量部を略したものである。次に、表1に記載した記号○及び記号×の基準について説明する。放置横帯現象については、2By2パターンの印刷モードにより現像ローラ28に起因した帯状の濃度ムラが記録媒体4に発生しなかった場合には○と規定し、帯状の濃度ムラが記録媒体4に発生した場合には×と規定した。同様に、トナー24のカブリ現象については、△E<1.5を満たす条件により記録媒体4に現像した印刷画像にカブリ現象が認識できなかった場合には○と規定し、△E≧1.5の条件で記録媒体4に現像した印刷画像にカブリ現象が認識できた場合には×と規定した。
【0051】
表1に示した検証結果によれば、放置横帯現象については、緩和時間τが0.20secより長い比較例3から比較例5において判定が×となった。なお、現像ローラ28の誘電特性が高い程、緩和時間τの値が長くなり、放置横帯現象が顕著に発生する。同様に、カブリ現象については、表面電位Vが2.0Vより小さい比較例1及び比較例2において判定が×となった。なお、表面電位Vが30.0V以上の比較例4及び比較例5においてはカブリ現象の判定は○であったが、トナー24の帯電量が一定値を越えているため、テストパターンに汚れが発生した。従って、表面電位Vは、トナー24の帯電特性と相関が有り、Vの値が一定値に満たないとカブリ現象が発生し、一定値を超えると汚れが発生する。また、現像装置2を、50℃、55%の環境下で一カ月保存した後において、全ての比較例及び全ての実施例で、現像ローラ28表面へのトナー24の固着及び感光ドラム21表面の汚染等は確認されなかった。なお、各比較例及び各実施例における現像ローラ28は、カーボンブラックの添加量を同一にして製作したが、現像ローラ28の製造誤差に起因して現像ローラ28の抵抗値にばらつきが発生している。しかし、当該抵抗値のばらつきの範囲は検証に影響を与えるものではない。
【0052】
また、本実施形態においては、トナー24に、体積平均粒径が5.7μm、及びフローオフ帯電量が−43μC/gの一成分非磁性粉砕の仕様を用いたが、体積平均粒径が5.3から6.1μm、及びフローオフ帯電量が−40μC/gから−60μC/gの範囲における一成分非磁性粉砕の仕様品においても、カブリ現象及び放置横帯現象に関して同様の抑制効果を得た。なお、単位重量当たりのトナー24の表面積は、体積平均粒径に律速するため、体積平均粒径を大きくするとQ/ Mが大きくなる。このため、トナー24の粒径が小さいほどトナー24の帯電量が高くなることから、放置横帯が発生し易くなる。また、体積平均粒径が8μm、及びフローオフ帯電量が−20μC/gの一成分非磁性粉砕の仕様のトナー24では、放置横帯現象が発生しなかった。
【0053】
なお、図1を参照しながら前述した画像形成装置1の制御について説明する。図10に画像形成装置1の構成を示すブロック図を示す。
【0054】
画像形成装置1は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等から構成される印刷制御部41を設けており、この印刷制御部41から指令を出すことで画像情報を記録媒体4に現像する一連のプロセスを制御する。
【0055】
印刷制御部41は、図示せぬ上位装置からのデータ及び制御コマンドの受信を制御するインターフェイス制御部42と、インターフェイス制御部42に入力された印刷データを記憶する受信メモリ43と、印刷データを編集処理したイメージデータを記憶する画像データ編集メモリ44と、操作者が画像形成装置1を操作するための操作部45と、画像形成装置1の動作状態を監視するセンサ群46と、帯電ローラ22に電力を供給する帯電ローラ用電源51と、現像ローラ28に電力を供給する現像ローラ用電源52と、トナー供給ローラ27に電力を供給するトナー供給ローラ用電源53と、転写ローラ9に電力を供給する転写ローラ用電源54と、LEDヘッド23を制御するLEDヘッド駆動制御部55と、定着器13を制御する定着器制御部56と、用紙搬送モータ58を制御する用紙搬送モータ制御部57と、感光体ドラム駆動モータ60を制御する感光体ドラム駆動モータ制御部59と、感光体ドラム21の回転数を計測するドラムカウンタ47と、印刷ドット数を計測するドットカウンタ48と、相互に接続する。
【0056】
この様な印刷制御部41は、上位装置から受信したデータ及び制御コマンドに基づき、画像形成装置1全体のシーケンスを制御することで印刷動作を実行する。以下、印刷制御部41と相互に接続している各構成部材について、図10を参照しながら具体的に説明する。但し、図1及び図2を参照しながら前述した構成部材については説明を省く。
【0057】
インターフェイス制御部42は、印刷制御部41からの指令に基づき、図示せぬ上位装置からのデータ及び制御コマンドの受信を制御するためのセクションである。また、受信メモリ43は、印刷制御部41からの指令に基づき、図示せぬ上位装置からインターフェイス制御部42に入力された印刷データを、一時的に記憶する読み書き可能な揮発性メモリである。また、画像データ編集メモリ44は、印刷制御部41からの指令に基づき、受信メモリ43に記憶された印刷データを受け取り、印刷データを編集処理することで形成したイメージデータを、一時的に記憶する読み書き可能な揮発性メモリである。また、操作部45は、画像形成装置1を操作するためのものであり、画像形成装置1の動作状態を表示するための表示部と、操作者が画像形成装置1を操作するためのスイッチとを備えている。また、センサ群46は、画像形成装置1の動作状態を経時的に監視するための各種センサであり、例えば、用紙位置検出センサ、温度センサ、湿度センサ、及び濃度センサ等から構成される。
【0058】
帯電ローラ用電源51は、帯電電源部であり、印刷制御部41の指令によって、帯電ローラ22に所定の電圧を印加することで感光体ドラム21の表面を帯電させる。具体的には、帯電ローラ22の導電部12Bの貫通穴12Cの近傍、導電部12Bの端部F、及び端部Gから感光体ドラム21表面に対して放電が生じることで感光体ドラム21表面が帯電される。また、現像ローラ用電源52は、印刷制御部41の指令によって、感光体ドラム21表面に形成された静電潜像にトナー24を付着させる現像ローラ28に所定の電圧を印加するためのものである。また、トナー供給ローラ用電源53は、印刷制御部41の指令によって、現像ローラ28にトナー24を供給するトナー供給ローラ27に所定の電圧を印加するためのものである。また、転写ローラ用電源54は、印刷制御部41の指令によって、感光体ドラム21に形成されたトナー像を記録媒体4に転写する転写ローラ9に所定の電圧を印加するためのものである。なお、転写ローラ9には感光体ドラム21に供給される電圧と逆のバイアス電圧が供給される。
【0059】
LEDヘッド駆動制御部55は、印刷制御部41の指令によって、画像データ編集メモリ44に記憶されたイメージデータをLEDヘッド23に取り込んだ後、感光体ドラム21の表面に照射して感光ドラム11の表面に静電潜像を形成するLEDヘッド23を駆動する。また、定着器制御部56は、印刷制御部41の指令によって、定着ローラ14と加圧ローラ15から構成される定着器13を制御するためのものである。また、用紙搬送モータ制御部57は、印刷制御部41の指令によって、搬送ローラ32、33、34、及び37を駆動する用紙搬送モータ58を制御することで、画像形成装置1内で記録媒体4を搬送若しくは停止させる。また、感光体ドラム駆動モータ制御部59は、印刷制御部41の指令によって、感光体ドラム21を駆動する感光体ドラム駆動モータ60を制御して感光体ドラム21に形成されたトナー像を記録媒体4に現像するためのものである。また、ドラムカウンタ47は、印刷制御部41の指令によって、ドットカウンタ48でイメージデータのドット数を計測するのに関連して、感光体ドラム21の累計回転数を計測するためのものである。また、ドットカウンタ48は、印刷制御部41の指令によって、画像データ編集メモリ44で形成された記録媒体4の1枚分に相当するイメージデータのドット数を計測するためのものである。
【0060】
以上、第1の実施形態における現像ローラ28は、現像ローラ28の表面1mmの位置からコロナ放電により6000Vの電圧を印加して前記現像剤担持体の表面を帯電させたとき、帯電後0.15秒後の前記現像剤担持体の表面電位をV[V]とし、表面電位がVからV/eになる緩和時間をτ[sec]とすると、2.0≦V≦10、及び0<τ≦0.20を満たす。また、この様な現像ローラ28を設けた現像装置2及び画像形成装置1では、画像形成装置1を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体4に画像データを現像させても、現像ローラ28表面における充填部28Cと露出部28Dの間の抵抗値及び表面電位の差異が小さい状態で、画像データを記録媒体4に現像できる。従って、記録媒体4に現像した印刷画像に発生する放置横帯現象及びカブリ現象を抑制できる。また、現像ローラ28の表面をイソシアネート処理することにより、現像装置2及び画像形成装置1を一定期間を越えて動作させなかった場合でも、感光体ドラム21と当接した現像ローラ28のニップ部位におけるトナー24の固着を抑制できることから、現像装置2及び画像形成装置1の保存性が向上する。
【0061】
[第2の実施形態]
第2の実施形態における現像ローラは、現像ローラの表面をウレタン処理することにより、イソシアネート処理を施した第1の実施形態に係る現像ローラと比較して、印刷枚数の増加による現像ローラの経時的な抵抗値変化を抑制することを特徴とする。また、第1の実施形態における現像ローラと同様に、画像形成装置を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体に画像データを現像させても、現像ローラ表面における充填部と露出部の間の抵抗値及び表面電位の差異が小さい状態で、画像データを記録媒体に現像することを特徴とする。
【0062】
以下、本発明の第2の実施形態に係る現像ローラについて説明する。なお、本実施形態において現像ローラ以外の現像装置2及び画像形成装置1に係る構成は、第1の実施形態で述べた現像装置2及び画像形成装置1の構成と同様である。そこで、本実施形態では、簡単のため重複した説明は省略し、現像ローラについてのみ説明する。以下、現像ローラについて、表2を参照しながら詳細に説明する。
【0063】
第2の実施形態に係る現像ローラは、現像ローラの表面層を、ウレタン処理することで形成した。当該ウレタン処理は、酢酸エチル100重量部に対してイソシアネート化合物20重量部の比率で配合したイソシアネート溶液にウレタンプレポリマーを添付して反応させたウレタン溶液を現像ローラ表面に30秒間浸漬した後、100℃のオーブンで10時間加熱を行い、乾燥させるものである。
【0064】
次に、現像ローラに係る放置横帯現象及びカブリ現象の検証結果について、具体的に説明する。表2に検証結果を示す。なお、検証方法及び判定基準は、第1の実施形態で説明した方法と同一である。また、表2に記載したU処理はウレタン処理を、I量はイソシアネート量を、及びCB量はカーボンブラック量をそれぞれ略したものである。
【0065】
【表2】

【0066】
表2に示した検証結果によれば、放置横帯現象については、緩和時間τが0.20secより長い比較例9において判定が×となった。なお、現像ローラ28の誘電特性が高い程、緩和時間τの値が長くなり、放置横帯現象が顕著に発生する。同様に、カブリ現象については、表面電位Vが2.0Vより小さい比較例6、比較例7、及び比較例8において判定が×となった。なお、表面電位Vが30.0V以上の比較例9においてはカブリ現象の判定は○であったが、トナー24の帯電量が一定値を越えているため、テストパターンに汚れが発生した。従って、表面電位Vは、トナー24の帯電特性と相関が有り、Vの値が一定値に満たないとカブリ現象が発生し、一定値を超えると汚れが発生する。なお、各比較例及び各実施例における現像ローラ28は、イソシアネート量及びカーボンブラックの添加量を同一にして製作したが、現像ローラ28の製造誤差に起因して現像ローラ28の抵抗値にばらつきが発生している。しかし、当該抵抗値のばらつきの範囲は検証に影響を与えるものではない。
【0067】
また、本実施形態においては、トナー24に、体積平均粒径が5.7μm、及びフローオフ帯電量が−43μC/gの一成分非磁性粉砕の仕様を用いたが、体積平均粒径が5.3から6.1μm、及びフローオフ帯電量が−40μC/gから−60μC/gの範囲における一成分非磁性粉砕の仕様品においても、カブリ現象及び放置横帯現象に関して同様の抑制効果を得た。なお、単位重量当たりのトナー24の表面積は、体積平均粒径に律速するため、体積平均粒径を大きくするとQ/ Mが大きくなる。このため、トナー24の粒径が小さいほどトナー24の帯電量が高くなることから、放置横帯が発生し易くなる。また、体積平均粒径が8μm、及びフローオフ帯電量が−20μC/gの一成分非磁性粉砕の仕様のトナー24では、放置横帯現象が発生しなかった。
【0068】
また、 ウレタン処理を施した現像ローラは、イソシアネート処理を施した現像ローラと比較して、印刷枚数の増加に伴う現像ローラの抵抗値の上昇が少ない。具体的には、記録媒体4に画像データを10000枚印刷した後の現像ローラの抵抗値は、イソシアネート処理を施した現像ローラの場合には初期の表面電位に対して2から3桁上昇するのに対し、ウレタン処理を施した現像ローラの場合には初期の表面電位に対して1桁の上昇に留まる。上述した効果は、ウレタン処理の場合、イソシアネート処理と比較して、現像ローラの彈性層への処理液の染み込み深さが浅いことに起因すると考えられる。すなわち、ウレタン処理液の弾性層への染み込みによるカーボンブラックの導電ストラクチャの切断の程度が軽微であるため、現像ローラの経時的な抵抗値変化を抑制することができると考えられる。従って、ウレタン処理を施した現像ローラはイソシアネート処理を施した現像ローラに比べて、経時的な抵抗値変化を抑制することができる。
【0069】
以上、第2の実施形態における現像ローラは、現像ローラの表面1mmの位置からコロナ放電により6000Vの電圧を印加して前記現像剤担持体の表面を帯電させたとき、帯電後0.15秒後の前記現像剤担持体の表面電位をV[V]とし、表面電位がVからV/eになる緩和時間をτ[sec]とすると、2.0≦V≦10、及び0<τ≦0.20を満たす。また、この様な現像ローラ28を設けた現像装置2及び画像形成装置1では、画像形成装置1を一定期間を越えて動作させなかった後に記録媒体4に画像データを現像させても、現像ローラ表面における充填部と露出部の間の抵抗値及び表面電位の差異が小さい状態で、画像データを記録媒体4に現像できる。従って、記録媒体4に現像した印刷画像に発生する放置横帯現象及びカブリ現象を抑制できる。また、現像ローラの表面をウレタン処理することにより、イソシアネート処理を施した現像ローラと比較して、印刷枚数の増加による現像ローラの経時的な抵抗値変化を抑制することができる
【0070】
なお、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態においては、画像形成装置を印刷装置として説明したが、本実施形態の画像形成装置を複写機、ファクシミリ装置、MFP装置などに設けても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 画像形成装置
2,2C,2M,2Y,2K 現像装置
3 用紙搬送経路
4 記録媒体
5 給紙カセット
6 ホッピングローラ
7 レジストローラ
8 レジストローラ
9 転写ローラ
10 転写ベルト
11 アイドルローラ
12 ドライブローラ
13 定着器
14 定着ローラ
15 加圧ローラ
16 排出ローラ
17 スタッカ
21 感光体ドラム
22 帯電ローラ
23 LEDヘッド
24 トナー
25 トナーカートリッジ
25A 筐体内壁部
26 攪拌部材
27 トナー供給ローラ
28 現像ローラ
28A 表層部
28B 軸芯部
28C 充填部
28D 露出部
29 現像ブレード
30 クリーニングブレード
31 クリーニングスパイラル
32 廃棄トナー収容部
33 トナー漏れ防止シール
35 抵抗測定器
35A テストリード
35B テストリード
35C 測定部
36 誘電緩和特性測定器
36A テストリード
36B テストリード
36C 測定部
36D コロナ放電器
36E 表面電位計
41 印刷制御部
42 インターフェイス制御部
43 受信メモリ
44 画像データ編集メモリ
45 操作部
46 センサ群
47 ドラムカウンタ
48 ドットカウンタ
51 帯電ローラ用電源
52 現像ローラ用電源
53 トナー供給ローラ用電源
54 転写ローラ用電源
55 LEDヘッド駆動制御部
56 定着器制御部
57 用紙搬送モータ制御部
58 用紙搬送モータ
59 感光体ドラム駆動モータ制御部
60 感光体ドラム駆動モータ
P1,P2,P3,P4,P5,P6 測定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体に当接し前記像担持体に現像剤層を形成する現像剤担持体において、
前記現像剤担持体の表面1mmの位置からコロナ放電により6000Vの電圧を印加して前記現像剤担持体の表面を帯電させたとき、
帯電後0.15秒後の前記現像剤担持体の表面電位をV[V]とし、
表面電位がVからV/eになる緩和時間をτ[sec]とすると、
2.0≦V≦10、及び0<τ≦0.20を満たすことを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
前記現像剤担持体の表面がイソシアネート溶液で処理されていることを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記現像剤担持体の表面がウレタン溶液で処理されていることを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の現像剤担持体を有することを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−53342(P2011−53342A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200580(P2009−200580)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】