説明

現像方法

【課題】高温高湿下での機内昇温時においても、現像スリーブ上の二成分系現像剤の搬送性を安定化させ、高温高湿下での機内昇温前後でも、充電効率を維持し、白抜け画像を発生しない現像方法を提案する。
【解決手段】現像剤担持体8、11表面のJIS B0601(1994年)に基づく凹凸の平均間隔Smが60μm以上200μm以下であり、十点平均粗さRz(μm)が5.0μm以上25.0μm以下であり、且つ、トナーは、40℃,95%RH、72時間放置後の示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温1度目のTg1(℃)と、降温後、昇温2度目のTg2(℃)との関係が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
0.0≦Tg2−Tg1≦5.0 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法において、電子写真感光体、或いは静電記録誘導体である静電潜像担持体上に形成された静電潜像を二成分系現像剤で現像して、静電潜像担持体上にトナー像を形成する現像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真法に用いられる二成分系現像剤を用いた現像方法は、オフィスユースの加速度的なカラーシフト、グラフィック市場対応の高精彩化、軽印刷対応の高速化といった市場ニーズを満たす必要がある。このため、性能面での更なる高画質、高安定性が求められている。
【0003】
二成分系現像方法としては、次のような方法が知られている。磁石を内包した現像剤担持体(現像スリーブ)上に非磁性トナーと磁性キャリアを有する二成分系現像剤の磁気ブラシを形成し、該磁気ブラシを現像剤層厚規制部材(現像ブレード)により所定の層厚にコートした後、静電潜像担持体(感光ドラム)に対向する現像領域へと搬送する。そして、該現像領域においては、感光ドラムと現像スリーブの間に所定の現像バイアスを印加しながら、該磁気ブラシを感光ドラム表面に近接/又は接触させることによって、上記静電潜像をトナー像として顕像化する、といった方法である。
【0004】
二成分系現像方法を用いたデジタル複合機やフルカラー複写機においては、近年の高画質化及び高安定化に伴い、それに対応するべく現像装置及び二成分系現像剤において、種々の工夫が為されている。
【0005】
特に、二成分系現像方法においては、長期に渡って高画質、高安定性といった耐久に関わる課題に対して、現像スリーブ上の二成分系現像剤の搬送量を安定化するための提案が為されている(特許文献1)。この提案は、二成分系現像剤に含まれる磁性キャリアの平均粒径と現像スリーブ表面の凹凸の平均間隔Smを規定し、二成分系現像剤の搬送量を長期に渡って安定化させるというものである。現像スリーブ表面の凹凸の平均間隔Smは、通常長期に渡って使用すると、磨耗により大きくなる傾向がある。そのため、磁性キャリアの平均粒径とSmの値が好ましい範囲にあることが、磨耗による二成分系現像剤の搬送変化を抑制し得るといった提案である。このような従来の好ましいSmの値は、通常60μm以下に設定されている。しかし、現像スリーブ上の二成分系現像剤の耐久前後の搬送量の変化を考慮すると、実際はSmの値は大きい方が、二成分系現像剤の搬送性の変化も少なくなり、長期に渡って感光ドラムの潜像電位に対して、十分に充電可能なトナーを現像するだけの二成分系現像剤を搬送することができる。
【0006】
しかし、従来Smを大きくした場合は、次のような課題があった。特に、高耐久性を求められるデジタル複合機やフルカラー複写機の場合、高温高湿下での機内昇温時おいて、現像スリーブ表面へのトナーの付着や融着によっても、Smの値が変化してしまうという現象である。例えば、二成分系現像剤に使用されるトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有するものが広く使用されている。この結着樹脂の特性や、結着樹脂と離型剤の相溶性により、高温高湿下での機内昇温時のトナーの可塑化が発生し、現像スリーブ表面へのトナーの付着や融着の原因となってしまう。その結果、この付着や融着したトナーによって、現像スリーブ表面の表面粗さが変化してしまうというものである。
【0007】
一方で、高温高湿下での機内昇温でトナーの硬化が発生する場合である。これは、トナーの特性として、水分を吸着しやすい場合である。高温高湿下での機内昇温時は、水分を吸着したトナーは水分を放出すると考えられる。これにより、トナーの硬化現象が起こり、現像スリーブ上の搬送量は低下することなく、感光ドラムの潜像に対する充電効率も良好に推移する。しかし、この場合、耐久放置後、機内の雰囲気湿度が周囲の環境に戻ると、やはり水分を吸着してしまい、トナーの可塑化が発生し、耐久中と、耐久放置後のトナーの帯電性が大きく変化し、充電効率が低下することによる白抜け画像が発生しやすくなってしまう。尚、白抜け画像とは、感光ドラム上の潜像電位に対して、充電可能なトナーの帯電量が不足し、ドット毎に白く抜けてしまう画像であり、トナー帯電量の不足と現像スリーブの搬送量低下により発生し易くなる。
【0008】
よって、現像スリーブ表面の凹凸の平均間隔Smが大きい場合、高温高湿下での耐久性に関わる課題に対しては、未だ検討が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−062725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、現像スリーブ表面の凹凸の平均間隔Smが大きい場合、高温高湿下での機内昇温によっても、耐久によってSmが変化せず、現像スリーブ上の二成分系現像剤の搬送性を安定化させ、且つ高温高湿下での機内昇温前後でも、充電効率を維持し、白抜け画像を発生しない現像方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、下記の本発明の構成により達成される。
【0012】
即ち、本発明は、[1]現像剤担持体によって、トナーと磁性キャリアを有する二成分系現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へと担持、搬送し、現像剤規制部材で規制し、該静電潜像担持体上に形成された潜像を二成分系現像剤により現像する現像方法であって、
該現像剤担持体表面のJIS B0601(1994年)に基づく凹凸の平均間隔Smが60μm以上200μm以下であり、十点平均粗さRz(μm)が5.0μm以上25.0μm以下であり、
且つ、該トナーは、40℃,95%RH、72時間放置後の示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温1度目のTg1(℃)と、降温後、昇温2度目のTg2(℃)との関係が、下記式(1)を満たすことを特徴とする現像方法に関する。
0.0≦Tg2−Tg1≦5.0 (1)
[2]該Tg1と該Tg2との関係が、下記式(2)を満たすことを特徴とする[1]に記載の現像方法に関する。
0.0≦Tg2−Tg1≦3.0 (2)
[3]該トナーは、少なくともポリエステルユニットを有する結着樹脂、着色剤及び炭化水素系ワックスを含有し、
該炭化水素系ワックスのDSCにより測定される最大吸熱ピーク温度が50℃以上120℃以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の現像方法に関する。
[4]該結着樹脂が、2種以上の樹脂を含有し、それぞれの樹脂が少なくともポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の現像方法に関する。
[5]該現像剤規制部材の先端角度αが25度以上50度以下であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の現像方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の現像方法を用いた現像装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の現像方法を用いた現像装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に用いる現像スリーブの表面加工装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明の現像方法は、現像剤担持体(現像スリーブ)によって、トナーと磁性キャリアを有する二成分系現像剤を静電潜像担持体(感光ドラム)と対向する現像領域へと担持、搬送し、現像剤規制部材(現像ブレード)で規制し、感光ドラム上に形成された潜像を二成分系現像剤により現像する現像方法である。
【0016】
本発明の現像方法における現像スリーブ表面のJIS B0601(1994年)に基づく凹凸の平均間隔Smは60μm以上200μm以下であり、十点平均粗さRz(μm)が5.0μm以上25.0μm以下である。トナーは、40℃、95%RH、72時間放置後の示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温1度目のTg1(℃)と、降温後、昇温2度目のTg2(℃)との関係が、下記式(1)を満たす。
0.0≦Tg2−Tg1≦5.0 (1)
【0017】
現像スリーブ表面の凹凸の平均間隔Sm(μm)及び十点平均粗さRz(μm)がこの範囲にあることで、耐久前後でも現像スリーブ上の二成分系現像剤の搬送量変化を抑制でき、長期に渡って高画質を維持し、高安定な現像方法とすることができる。且つ、トナーが、40℃,95%RH、72時間放置後の示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温1度目のTg1(℃)と、降温後、昇温2度目のTg2(℃)との関係が、式(1)を満たすことにより、高温高湿湿下での機内昇温時における、トナーの可塑化による現像スリーブ表面へのトナーの付着や融着を防止するとともに、機内昇温前後でのトナーの充電効率の変化を抑制することができる。
【0018】
トナーの(Tg2−Tg1)は、トナーの加熱及び水分吸着における可塑化又は硬化の割合を示す値である。(Tg2−Tg1)が0.0未満であると加熱によるトナーの可塑化現象が発生している。(Tg2−Tg1)が0.0を超えると、水分吸着したトナーが加熱により水分を放出する際に硬化現象を発生していると考えられる。
【0019】
よって、(Tg2−Tg1)が0.0未満であると、トナーが可塑化し、現像スリーブ表面にトナーの付着や融着が発生しやすくなることで、現像スリーブ表面のSm及びRzが変化してしまい、二成分系現像剤の搬送量が変わり、長期に渡って、高画質が維持できなくなってしまう。(Tg2−Tg1)が5.0を超えると、機内昇温前後でのトナーの帯電量変化が大きくなることで、充電効率が低下し、感光ドラム上の潜像電位を埋めきれず、白抜け画像を発生しやすくなる。(Tg2−Tg1)のより好ましい範囲は、下記式(2)を満たす範囲である。
0.0≦Tg2−Tg1≦3.0 (2)
【0020】
また、本発明の現像方法は、トナーが、少なくともポリエステルユニットを有する結着樹脂、着色剤及び炭化水素系ワックスを含有し、炭化水素系ワックスのDSCにより測定される最大吸熱ピーク温度が50℃以上120℃以下であることが好ましい。従来、熱によるトナーの可塑化現象は、結着樹脂とワックスの相溶が原因で発生する。本発明では、結着樹脂としてポリエステルを、ワックスとして炭化水素系ワックスを用いることで、結着樹脂とワックスの相溶を防止することができる。炭化水素系ワックスのDSCにより測定される最大吸熱ピーク温度が50℃以上120℃以下であるが、この範囲であることで、現像スリーブ表面にワックスの付着や融着を発生しないので好ましく使用される。吸熱ピーク温度が50℃未満の場合は、高温高湿下での機内昇温時にワックス自体がトナー中から染み出してきてしまう場合がある。吸熱ピーク温度が120℃を超える場合は、トナー中へのワックス分散が不均一となり、トナー表面にワックスが露出されてしまうことで、これまた現像スリーブ表面への付着や融着を発生してしまう場合がある。
【0021】
また、本発明の現像方法は、トナー用結着樹脂が、2種以上の樹脂を含有し、それぞれの樹脂が少なくともポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有することが好ましい。高温高湿下での機内昇温時に発生する、トナーの硬化現象は、主にポリエステル成分の水分吸着によるところが大きい。ビニル系共重合体成分は、ポリエステル成分と比較して水分吸着量は少ない。よって、これら2種以上の樹脂を含有することで、トナーの(Tg2−Tg1)を、所定の範囲にし、本発明の目的を効果的に達成することができる。
【0022】
更に、本発明の現像方法は、現像ブレードの先端角度αが25度以上50度以下であることが好ましい。現像ブレードの先端角度がこの範囲にあることで、現像スリーブ上に搬送された二成分系現像剤の磁気ブラシを規制する際に、局所的なせん断力が加わることなく、徐々に規制することができ、二成分系現像剤の劣化を抑制し、長期に渡って搬送量を安定化することが可能となる。現像ブレードの先端角度αが25度未満の場合、局所的なせん断力が加わるため二成分系現像剤の劣化が促進される。現像ブレードの先端角度αが50度を超える場合、磁気ブラシ全体に加わるせん断力が大きくなるため、これまた現像剤の劣化が促進される。
【0023】
次に、本発明の現像方法を用いた現像装置について説明する。
【0024】
本発明の現像方法を用いた現像装置の一例を図1に示す。現像装置1における現像容器2内に収容された現像剤Tは、まず、像担持体10の回転方向aの上流側に配置された、第一のマグネットローラ8’を内包した第一の現像スリーブ8により担持、搬送される。そして、現像スリーブ8上に近接して配置された現像ブレード9により現像剤層を形成する。ここで、本発明においては、現像スリーブ表面のSm及びRzは所定の粗さに調整される。また、現像ブレードの先端角度は、25度以上50度以下であることが好ましい。その後、現像剤Tは、現像スリーブ8により現像スリーブ8と像担持体10とが対向する第一の現像領域へと搬送される。そして、現像に供され現像領域を通過して、現像スリーブ8と像担持体10の回転方向aの下流側に配置された第二の現像スリーブ11とが対向する領域で、現像スリーブ11へと受け渡される。現像スリーブ11に受け渡された現像剤Tは、現像スリーブ11により担持、搬送され、現像スリーブ11と像担持体とが対向する第二の現像領域へと搬送され、現像に供され現像領域を通過して、現像容器2内に回収される。現像装置の一例として、現像スリーブが2本の例をもって説明したが、現像スリーブは1本でもよく、また複数本であっても良い。
【0025】
また、現像スリーブ表面のSm及びRzを所定の範囲に制御するためには、乾式法であるブラスト装置、湿式法であるホーニング装置、あるいは切削等の精密加工装置等いずれも使用可能である。ブラスト装置やホーニング装置に用いられる砥粒粒子としては、ある程度の硬度を有する固体粒子であれば、適宜に使用される。例えば、ガラスビーズ、シリカ、スチールボール、フェライト粒子、アルミナ粒子、炭化珪素粒子、ジルコニア粒子、アルミナジルコニア粒子、炭化硼素粒子、さらには、アルミナ−酸化チタンのような固溶体粒子、ホウ酸アルミニウムのごとき複合酸化物粒子、また更には、フェノール、メラミン、ナイロンなどの樹脂粒子、および例えばフェノールとフェライトからなる磁性粒子のように、樹脂粒子に各種フィラーを添加したもの等が挙げられる。これら砥粒粒子の大きさを調整することで、現像スリーブ表面の表面粗さは適宜調整可能である。
【0026】
本発明に用いられるトナーとしては、粉砕法、重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法等のいずれの方法で製造されたものであってもよい。また、結着樹脂の主たる成分としては、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、又はハイブリッド樹脂を用いることが好ましい。本発明の目的を効果的に達成するためには、特にハイブリッド樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
結着樹脂としてハイブリッド樹脂を用いる際のポリエステルユニットを生成する場合には、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸エステル等が原料モノマーとして使用できる。
【0028】
具体的には、例えば二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0029】
三価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0030】
2価の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。
【0031】
また、架橋部位を有するポリエステル樹脂を形成するための3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸及び、これらの無水物やエステル化合物等が挙げられる。
【0032】
それらの中でも、特に、下記一般式(イ)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
【0033】
【化1】

【0034】
本発明に使用できるトナーに含有される結着樹脂において、「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合した樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成する樹脂であり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)である。なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系重合体ユニット」とはビニル系重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分であり、ビニル系重合体ユニットとは、ビニル基を有するモノマー成分である。
【0035】
ビニル系共重合体或いはビニル系重合体ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如き不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0036】
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0037】
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
【0038】
本発明に使用できるトナーにおいて、結着樹脂のビニル系共重合体或いはビニル系重合体ユニットは、ビニル基を二個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。
【0039】
この場合に用いられる架橋剤には、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0040】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0041】
ハイブリッド樹脂を製造する際には、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットのいずれか一方又は両方の中に、両樹脂ユニットの成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂ユニットを構成するモノマーのうちビニル系重合体ユニットの成分と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体ユニットを構成するモノマーのうちポリエステルユニットの成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0042】
ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットの反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットのそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応を行うことにより得る方法が好ましい。
【0043】
本発明に使用できるビニル系共重合体或いはビニル系重合体ユニットを製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
【0044】
本発明に使用できるトナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製するための製造方法としては、例えば、以下の(1)乃至(5)に示す製造方法を挙げることができる。
【0045】
(1)ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行ってハイブリッド樹脂を合成する方法。
【0046】
(2)ビニル系重合体を製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸)との反応、及び前記ユニット及びモノマーと必要に応じて添加されるポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0047】
(3)ポリエステル樹脂を製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマーとの反応、及び前記ユニット及びモノマーと必要に応じて添加されるビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0048】
(4)ビニル系重合体及びポリエステル樹脂を製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸)のいずれか一方又は両方を添加し、添加したモノマーに応じた条件の重合反応を行うことにより、ハイブリッド樹脂成分を製造する方法。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0049】
(5)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
【0050】
上記(1)乃至(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットには、分子量や架橋度の異なる複数種の重合体ユニットを使用することができる。
【0051】
なお、本発明におけるビニル系重合体又はビニル系重合体ユニットとは、ビニル系単重合体若しくはビニル系共重合体又はビニル系単重合体ユニット若しくはビニル系共重合体ユニットを意味するものである。
【0052】
本発明に用いられるトナーは、ワックス成分を含有することが好ましい。本発明に用いることができるワックスの一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物等が挙げられる。本発明に用いることができるワックスのDSCにより測定される最大吸熱ピーク温度は、50℃以上120℃以下であることが好ましい。
【0053】
本発明に使用できるトナーに用いられる着色剤としては、公知の染料または/及び顔料が使用される。顔料単独使用でもかまわないが、鮮明度を向上させるという点で、染料と顔料とを併用してもよい。
【0054】
マゼンタトナー用着色顔料しては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペルリン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、150、163、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、254、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35などが挙げられる。
【0055】
マゼンタトナー用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料が挙げられる。
【0056】
シアントナー用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、7、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66;C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45または下記式(へ)で示される構造を有するフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料などが挙げられる。
【0057】
【化2】

〔式中、nは1乃至5の整数を示す。〕
【0058】
イエロー用着色顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74,83、93、95、97,109、110、111、120、127、128、129、147、155、168、174、180、181、185、191、C.I.バットイエロー1、3、20などである。また、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162などの染料も使用することができる。
【0059】
本発明に用いることができる黒色着色剤としてカーボンブラック、酸化鉄粒子、上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用できる。
【0060】
また、本発明に使用できるトナーにおいて、本発明の結着樹脂に予め、着色剤を混合し、マスターバッチ化させたものを用いることが好ましい。そして、この着色剤マスターバッチとその他の原材料(結着樹脂及びワックス等)を溶融混練させることにより、トナー中に着色剤を良好に分散させることが出来る。
【0061】
トナー中における着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して好ましくは0.1乃至15質量部、より好ましくは0.5乃至12質量部、最も好ましくは2乃至10質量部が、色再現性、現像性の点で好ましい。
【0062】
本発明に使用できるトナーには、その帯電性を安定化させるために公知の荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、荷電制御剤の種類や他のトナー粒子構成材料の物性等によっても異なるが、一般に、トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1乃至10質量部含まれることが好ましく、0.1乃至5質量部含まれることがより好ましい。このような荷電制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0063】
負帯電性荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ダイカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が利用できる。正帯電性荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が利用できる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。特に、本発明に使用できるカラートナーでは、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持できる芳香族カルボン酸金属化合物が好ましい。
【0064】
次に本発明に用いられるトナーの製造方法について説明する。
【0065】
まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも樹脂、着色剤を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、Q型ミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0066】
更に、上記の配合で混合したトナー原料を溶融混練して、結着樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。また、連続生産できる等の優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、池貝製作所製PCM型2軸押出機、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0067】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、公知の風力式粉砕機や機械式粉砕機で微粉砕される。粉砕工程では、このように段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。
【0068】
更に、得られた微粉砕品を表面改質工程で表面改質、すなわち、球形化処理を行い、表面改質粒子を得てもよい。その後、必要に応じて表面改質粒子を慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機或いは、風力式篩のハイボルター(新東京機械社製)等の篩分機を用いて分級し、重量平均粒子径3〜11μmのトナーを得る。
【0069】
本発明に使用できるトナーは、粉砕・分級後、又は表面改質後、流動化剤をヘンシェルミキサーの如き混合機で混合させることにより、トナーの流動性を調整して用いることが好ましい。
【0070】
本発明に使用できる無機微粒子としては、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、それらをシラン化合物、及び有機ケイ素化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ等がある。
【0071】
本発明に使用できるシリカとしては、湿式製法シリカ及び乾式製法シリカいずれも使用できる。湿式製法シリカとしては、特にアルコキシシランを水が存在する有機溶媒中において、触媒により加水分解、縮合反応させて得られるシリカゾル懸濁液から、溶媒除去、乾燥して粒子化するゾルゲル法により製造されるシリカ粒子がある。ゾルゲル法により製造されるシリカ粒子は、得られる粒子の粒度分布がシャープであり、且つ概略球状の粒子が得られるとともに、反応時間を変えることにより所望の粒度分布を有する粒子が得られるので、特に好ましく用いられる。
【0072】
また、乾式製法シリカとしては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
【0073】
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
【0074】
また、酸化チタン微粉体であれば、硫酸法、塩素法、揮発性チタン化合物例えばチタンアルコキシド,チタンハライド,チタンアセチルアセトネートの低温酸化(熱分解,加水分解)により得られる酸化チタン微粒子が用いられる。結晶系としてはアナターゼ型,ルチル型,これらの混晶型,アモルファスのいずれのものも用いることができる。
【0075】
そしてアルミナ微粉体であれば、バイヤー法、改良バイヤー法、エチレンクロルヒドリン法、水中火花放電法、有機アルミニウム加水分解法、アルミニウムミョウバン熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法、塩化アルミニウムの火焔分解法により得られるアルミナ微粉体が用いられる。結晶系としてはα,β,γ,δ,ξ,η,θ,κ,χ,ρ型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いられ、α,δ,γ,θ,混晶型,アモルファスのものが好ましく用いられる。
【0076】
上記無機微粉体の疎水化方法としては、無機微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的、または物理的に処理することによって付与される。
【0077】
好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。そのような有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0078】
本発明に使用できる無機微粒子として、前述した湿式法シリカや乾式法シリカを、アミノ基を有するカップリング剤或いは、シリコーンオイルで処理したものを本発明の目的を達成するために必要に応じて用いてもかまわない。また、その添加量は、トナー100質量部に対して流動化剤0.01乃至8質量部、好ましくは0.1乃至4質量部使用するのが良い。
【0079】
次に本発明に用いられる磁性キャリアに関して説明する。本発明に使用できる磁性キャリアは、少なくとも磁性キャリアコアと樹脂被覆層を有することが好ましい。
【0080】
磁性キャリアコアとしては、公知のフェライト粒子、マグネタイト粒子、磁性体分散型樹脂キャリアコア等の磁性キャリアコアが使用できる。
【0081】
磁性キャリアコアは、例えば以下に記載するように製造される。
【0082】
磁性キャリアコアは、磁性体を用いて製造される。磁性体としては、鉄、リチウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ルビジウム、ストロンチウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、及びクロムから選ばれる一種または二種以上の元素を含む磁性フェライト粒子、又はマグネタイト粒子が挙げられる。好ましくは、マグネタイト粒子、又は、銅、亜鉛、マンガン、カルシウム、リチウム及びマグネシウムから選ばれる一種または二種以上の元素を少なくとも有する磁性フェライト粒子である。
【0083】
フェライト用磁性体としては以下のものが挙げられる。Ca−Mg−Fe系フェライト、Li−Fe系フェライト、Mn−Mg−Fe系フェライト、Ca−Be−Fe系フェライト、Mn−Mg−Sr−Fe系フェライト、Li−Mg−Fe系フェライト及びLi−Mn−Fe系フェライトの如き鉄系酸化物のフェライト磁性体。
【0084】
鉄系酸化物のフェライトは、それぞれ金属の酸化物、炭酸塩、硝酸塩を湿式あるいは乾式にて混合し、所望のフェライト組成となるよう仮焼成することにより得られる。次いで、得られた鉄系酸化物のフェライトを、サブミクロンまで粉砕する。粉砕されたフェライトに、粒径を調整するための水を20乃至50質量%加え、結着樹脂として例えばポリビニルアルコール(分子量500乃至10,000)を0.1乃至10質量%加えて、スラリーを調製する。このスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒を行い、焼成することでフェライトコアを得ることができる。
【0085】
また、ポーラス状のフェライトコアを得る場合には、造粒時に、空孔密度をコントロールするための炭酸ナトリウムや炭酸カルシウム、及び各種の有機物の如き空孔調整剤を添加してスラリーを形成し、スプレードライヤーを用いて造粒を行い、焼成することで得ることができる。また、フェライト化反応中の粒子成長を阻害させるような材料を添加することにより、フェライト内部に複雑な空隙を形成することもできる。このような材料としては、シリカ等が挙げられる。
【0086】
また、磁性体分散型樹脂キャリアコアを製造するには、例えばビニル系または非ビニル系の熱可塑性樹脂、および磁性体ならびにその他の添加剤を、混合機により十分に混合する。得られた混合物を、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き混練機を用いて溶融・混練する。冷却された溶融・混練物を粉砕して、さらに分級することにより、磁性体分散型樹脂キャリアコアを得ることができる。得られた磁性体分散型樹脂キャリアコアは、さらに熱又は機械的に球形化してもよい。さらに他の方法としては、磁性体分散型樹脂キャリアコアの結着樹脂を形成するためのモノマーを磁性体存在下で重合して得ることもできる。ここで結着樹脂を形成するためのモノマーとしては以下のものが挙げられる。ビニル系モノマー、エポキシ樹脂を形成するためのビスフェノール類とエピクロルヒドリン;フェノール樹脂を生成するためのフェノール類とアルデヒド類;尿素樹脂を形成するための尿素とアルデヒド類、メラミンとアルデヒド類が含まれる。
【0087】
フェノール類とアルデヒド類からフェノール樹脂を合成する方法が特に好ましく、この場合は、水性媒体に磁性体およびフェノール類とアルデヒド類を添加し、水性媒体中のフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒の存在下で重合させることにより、磁性体分散型樹脂キャリアコアを製造することができる。
【0088】
フェノール樹脂を生成するためのフェノール類は、フェノール(ヒドロキシベンゼン)のほか、フェノール性水酸基を有する化合物であればよい。フェノール性水酸基を有する化合物としては、m−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−プロピルフェノール、レゾルシノール、ビスフェノールAの如きアルキルフェノール類;芳香環(例えばベンゼン環)の水素またはアルキル基の水素の一部または全部が、塩素原子や臭素原子で置換されたハロゲン化フェノール類が挙げられる。
【0089】
フェノール樹脂を生成するためのアルデヒド類としては以下のものが挙げられる。例えばホルマリン、パラホルムアルデヒドのいずれかの形態のホルムアルデヒド、およびフルフラールであり、より好ましくはホルムアルデヒドである。
【0090】
アルデヒド類のフェノール類に対するモル比は1:1乃至1:4であることが好ましく、1:1.2乃至1:3.0であることがより好ましい。アルデヒド類のフェノール類に対するモル比が1より小さいと、粒子が生成しにくかったり、生成したとしても樹脂の硬化が進行しにくいために、生成する粒子の強度が弱くなったりする傾向がある。一方、アルデヒド類のフェノール類に対するモル比が4よりも大きいと、反応後に水系媒体中に残留する未反応のアルデヒド類が増加する傾向がある。
【0091】
フェノール類とアルデヒド類との縮合は、塩基性触媒を用いて行うことができる。該塩基性触媒は通常のレゾール型樹脂の製造に使用されている触媒であればよく、該塩基性触媒の例にはアンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン及びジメチルアミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミンの如きアルキルアミンが含まれる。これら塩基性触媒のフェノール類に対するモル比は1:0.02乃至1:0.3であることが好ましい。
【0092】
次に磁性キャリアコア表面の樹脂被覆層に関して説明する。
【0093】
本発明に用いる樹脂被覆層は少なくとも樹脂成分を含有する。被覆用樹脂成分としては、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。また、樹脂成分としては、一種類の樹脂であってもよく、二種以上の樹脂の組み合わせでもよい。
【0094】
被覆用樹脂成分としての熱可塑性樹脂の例には、ポリスチレン;ポリメチルメタクリレートやスチレン−アクリル酸共重合体等のアクリル樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル;ポリ酢酸ビニル;ポリフッ化ビニリデン樹脂;フルオロカーボン樹脂;パーフロロカーボン樹脂;溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂;ポリビニルアルコール;ポリビニルアセタール;ポリビニルピロリドン;石油樹脂;セルロース;酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;ノボラック樹脂;低分子量ポリエチレン;飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレートといったポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリエーテルケトン樹脂が含まれる。
【0095】
樹脂組成物に含まれる樹脂成分のTHF可溶分の重量平均分子量Mwは、15,000乃至300,000であることが、磁性キャリアコアとの密着性や、被覆する際に特に均一に磁性キャリアコア表面を被覆することができるという点で好ましい。
【0096】
以下に、本発明に関わる測定方法について詳細に述べる。
【0097】
<現像スリーブの表面粗さ(Sm、Rz)測定>
JIS B0601(1994年)に基づく凹凸の平均間隔Sm、十点平均粗さRz(μm)を測定した。測定点は、現像スリーブの軸方向に3点、周方向に2点で、計6点の平均値から求めた。
【0098】
<トナーのTg1、Tg2測定>
トナーのTg1、Tg2測定は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
【0099】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0100】
トナーの前処理条件としては、40℃,95%RH、72時間放置後のサンプルを用いる。
【0101】
まずは、昇温1度目のTg1(℃)測定である。前処理したトナー約10mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ密閉状態とし、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。この1度目の昇温過程で、温度40℃乃至100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度、即ち昇温1度目のTg1(℃)とする。次に、引き続き同条件での測定を行い、2度目の昇温過程で得られる結着樹脂のガラス転移温度を、昇温2度目のTg2(℃)とする。
【実施例】
【0102】
以下、具体的製造例及び実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0103】
<現像スリーブ製造例1>
現像スリーブの基体としては、アルミニウム製の円筒状の素管、図3に示したようなブラスト装置を用いて表面加工を行った。砥粒としては、♯100のガラスビーズ(平均粒径120μm)を用いて行った。砥粒の吐出圧は、0.3MPaとした。得られたブラストスリーブにマグネットロールを挿入後、フランジを装着して、現像スリーブ(S−1)とした。得られた現像スリーブ(S−1)の表面粗さを表1に示す。
【0104】
<現像スリーブ製造例2乃至3>
現像スリーブ製造例1において、ブラストに用いた砥粒を♯250、♯60に代えて製造した以外は、現像スリーブ製造例1と同様にして、現像スリーブ(S−2)、(S−3)を得た。得られた現像スリーブ(S−2)、(S−3)の表面粗さを表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
<トナー用結着樹脂の製造例1>
縮重合系樹脂のモノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン40質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン18質量部、テレフタル酸8質量部、無水トリメリット酸5質量部、フマル酸5質量部及び酸化ジブチル錫を窒素雰囲気下、230℃常圧下にて8時間反応させた後、さらに減圧下で1時間縮重合反応させた。その後、160℃まで冷却した。
【0107】
付加重合系樹脂のモノマーとして、スチレン15質量部及びアクリル酸2−エチルヘキシル4質量部、両反応性モノマーとしてアクリル酸1質量部及び重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキサイドの混合物を160℃で撹拌しながら1時間かけて滴下した。さらに同温度を1時間保持して付加重合反応を行った後、200℃まで昇温し、さらに減圧下で1時間反応させた。その後、反応容器にフマル酸2質量部、無水トリメリット酸2質量部を投入し、常圧下で2時間縮重合反応させ、更に減圧下で1時間反応させて低軟化点樹脂を得た。低軟化点樹脂の軟化点は95℃であった。
【0108】
次に低軟化点樹脂の製造方法と同様にして、縮重合反応を6時間として高軟化点樹脂を得た。高軟化点樹脂の軟化点は135℃であった。
【0109】
得られた低軟化点樹脂と高軟化点樹脂を質量比50:50でブレンドし、結着樹脂(B−1)とした。結着樹脂の構成を表2に示す。
【0110】
<トナー用結着樹脂の製造例2>
縮重合系樹脂のモノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン40質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン18質量部、テレフタル酸8質量部、無水トリメリット酸5質量部、フマル酸5質量部及び酸化ジブチル錫を窒素雰囲気下、230℃常圧下にて8時間反応させた。その後、さらに減圧下で1時間縮重合反応させた後、160℃まで冷却した。
【0111】
付加重合系樹脂のモノマーとして、スチレン15質量部及びアクリル酸2−エチルヘキシル4質量部、両反応性モノマーとしてアクリル酸1質量部及び重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキサイドの混合物を160℃で撹拌しながら1時間かけて滴下した。さらに同温度を1時間保持して付加重合反応を行った後、200℃まで昇温し、さらに減圧下で1時間反応させた。その後、反応容器にフマル酸2質量部、無水トリメリット酸2質量部を投入し、常圧下で4時間縮重合反応させ、更に減圧下で1時間反応させて結着樹脂(B−2)を得た。結着樹脂(B−2)の軟化点は115℃であった。結着樹脂の構成を表2に示す。
【0112】
<トナー用結着樹脂の製造例3>
縮重合系樹脂のモノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン35質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン16質量部、テレフタル酸7質量部、無水トリメリット酸4質量部、フマル酸4質量部及び酸化ジブチル錫を窒素雰囲気下、230℃常圧下にて8時間反応させた。その後、さらに減圧下で1時間縮重合反応させた後、160℃まで冷却した。
【0113】
付加重合系樹脂のモノマーとして、スチレン23質量部及びアクリル酸2−エチルヘキシル6質量部、両反応性モノマーとしてアクリル酸1質量部及び重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキサイドの混合物を160℃で撹拌しながら1時間かけて滴下した。さらに同温度を1時間保持して付加重合反応を行った後、200℃まで昇温し、さらに減圧下で1時間反応させた。その後、反応容器にフマル酸2質量部、無水トリメリット酸2質量部を投入し、常圧下で4時間縮重合反応させ、更に減圧下で1時間反応させて結着樹脂(B−3)を得た。結着樹脂(B−3)の軟化点は116℃であった。結着樹脂の構成を表2に示す。
【0114】
<トナー用結着樹脂の製造例4>
縮重合系樹脂のモノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン45質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン20質量部、テレフタル酸9質量部、無水トリメリット酸6質量部、フマル酸6質量部及び酸化ジブチル錫を窒素雰囲気下、230℃常圧下にて8時間反応させた。その後、さらに減圧下で1時間縮重合反応させた後、160℃まで冷却した。
【0115】
付加重合系樹脂のモノマーとして、スチレン7.5質量部及びアクリル酸2−エチルヘキシル2質量部、両反応性モノマーとしてアクリル酸0.5質量部及び重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキサイドの混合物を160℃で撹拌しながら1時間かけて滴下した。さらに同温度を1時間保持して付加重合反応を行った後、200℃まで昇温し、さらに減圧下で1時間反応させた。その後、反応容器にフマル酸2質量部、無水トリメリット酸2質量部を投入し、常圧下で4時間縮重合反応させ、更に減圧下で1時間反応させて結着樹脂(B−4)を得た。結着樹脂(B−4)の軟化点は114℃であった。結着樹脂の構成を表2に示す。
【0116】
<トナー用結着樹脂の製造例5>
縮重合系樹脂のモノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン25質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン10質量部、テレフタル酸5質量部、無水トリメリット酸3質量部、フマル酸3質量部及び酸化ジブチル錫を窒素雰囲気下、230℃常圧下にて8時間反応させた。その後、さらに減圧下で1時間縮重合反応させた後、160℃まで冷却した。
【0117】
付加重合系樹脂のモノマーとして、スチレン38質量部及びアクリル酸2−エチルヘキシル10質量部、両反応性モノマーとしてアクリル酸2質量部及び重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキサイドの混合物を160℃で撹拌しながら1時間かけて滴下した。さらに同温度を1時間保持して付加重合反応を行った後、200℃まで昇温し、さらに減圧下で1時間反応させた。その後、反応容器にフマル酸2質量部、無水トリメリット酸2質量部を投入し、常圧下で4時間縮重合反応させ、更に減圧下で1時間反応させて結着樹脂(B−5)を得た。結着樹脂(B−5)の軟化点は115℃であった。結着樹脂の構成を表2に示す。
【0118】
<トナー用結着樹脂の製造例6>
下記原料を用いて、スチレン−アクリル樹脂を作製した。
スチレン 82.0質量部
n−ブチルアクリレート 17.0質量部
ジ−tert−ブチルパーオキサイド 1.0質量部
上記原料を、160℃で撹拌しながら加熱したキシレン200質量部中に2時間かけて滴下した。さらにキシレン還流下で重合反応させ、200℃まで昇温し、更に減圧下でさせながら溶媒を留去し、結着樹脂(B−6)を得た。結着樹脂(B−6)の軟化点は117℃であった。結着樹脂の構成を表2に示す。
【0119】
<トナー用結着樹脂の製造例7>
縮重合系樹脂のモノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン50質量部、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン22質量部、テレフタル酸10質量部、無水トリメリット酸9質量部、フマル酸9質量部及び酸化ジブチル錫を窒素雰囲気下、230℃常圧下にて8時間反応させた後、さらに減圧下で1時間縮重合反応させて結着樹脂(B−7)を得た。結着樹脂(B−7)の軟化点は113℃であった。結着樹脂の構成を表2に示す。
【0120】
【表2】

【0121】
<トナー製造例1>
下記の材料を用いて、トナー(T−1)を作製した。
結着樹脂(B−1) 100質量部
C.I.ピグメントブルー15:3 5質量部
ノルマルパラフィンワックス(最大吸熱ピーク:80℃) 7質量部
上記の材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)で混合した後、温度120℃に設定した二軸式押出機(PCM−30型、池貝製)にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー粗砕物を得た。得られたトナー粗砕物を、機械式粉砕機(T−300型、ターボ工業製)を用いて微粉砕した。粉砕条件としては、回転子の回転数を120s-1として粉砕処理した。
【0122】
次に、得られた微粉砕物を表面改質処理装置を用い、分級ローター回転数120s-1で微粒子を除去しながら、分散ローター回転数100s-1(回転周速を130m/sec)で60秒間表面処理を行ってトナー分級品を得た。
【0123】
そして得られたトナー分級品100質量部に、BET比表面積100m2/gのルチル型の酸化チタンを1.0質量部、BET比表面積130m2/gの疎水性シリカ1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)で回転数30s-1、10分間混合して、トナー(T−1)を得た。得られたトナー(T−1)の構成を表3に示す。また、トナー(T−1)のTg2−Tg1は、1.5℃であった。
【0124】
<トナー製造例2乃至12>
トナー製造例1において、用いた材料を表3に示したように代えた以外は、トナー製造例1と同様にして、トナー(T−2)乃至(T−12)を得た。
【0125】
【表3】

【0126】
<磁性キャリア製造例>
下記に示す材料を用いて磁性キャリアコアを作製した。
フェノール 10質量部
ホルムアルデヒド溶液(37質量%水溶液) 6質量部
マグネタイト粒子(個数平均粒径0.3μm) 84質量部
上記材料と、28質量%アンモニア水5質量部、水25質量部をフラスコに入れ、混合しながら30分間で85℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて硬化させた。その後、30℃まで冷却し、更に水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5hPa以下)、60℃の温度で乾燥して、マグネタイト粒子がフェノール樹脂中に分散された磁性微粒子分散型の磁性キャリアコアを得た。
【0127】
次に、下記に示す材料を用いて磁性キャリアを作製した。
上記得られた磁性キャリアコア 100質量部
アクリル樹脂 1.0質量部
まず、アクリル樹脂をトルエンに固形分10%となるように溶解た。続いて、流動層コーティング装置(SFP−01型:パウレック製)を用いてコートし、真空乾燥機にて100℃、4時間加熱乾燥させた後、♯200のメッシュを用いて篩いを行い、磁性キャリアCを得た。
【0128】
<実施例1>
トナー(T−1)と磁性キャリアCを用いて、二成分系現像剤を作製した。トナー濃度が10質量%となるよう、V型ミキサーを用いて混合した。また、補給剤としては、トナー濃度が90質量%となるようにトナー(T−1)と磁性キャリアCとをV型ミキサーを用いて混合した。
【0129】
次に、得られた二成分系現像剤を、図2に示した現像装置に収容した。また、図2に示した現像装置には現像スリーブ(S−1)を装着し、現像ブレードを35度の先端角度になるよう取り付けた。現像装置の構成を表4に示す。この現像装置と、上記補給剤を用いて、キヤノン製複写機imagePRESS C7000VPで画出し評価を行った。評価は、30℃/80%RH(H/H)環境下で、画像の印字比率は30%ととし、5万枚まで耐久を行った。また、5万枚耐久後に3日間放置し、再度評価を行った。評価結果を表5に示す。尚、評価の基準を以下に示す。
【0130】
<評価項目>
[画像濃度]
得られた画像に対して、濃度計X−Rite500型により濃度測定を行い、6点の平均値をとって画像濃度とした。
【0131】
[充電効率]
充電効率は以下のように算出した。
充電効率=(感光ドラム上の潜像電位−トナーを現像した際の表面電位)/(感光ドラム上の潜像電位−現像電位)×100
【0132】
尚、電位を測定するには、表面電位計(TREK製 MODEL 344)とプローブを装着して行った。
【0133】
[白抜け評価]
初期100枚と5万枚耐久後100枚、放置後100枚の画像をチェックして、以下の指標で判断した。
A:白抜け部が3個未満/100枚
B:白抜け部が3個以上、5個未満/100枚
C:白抜け部が5個以上、7個未満/100枚
D:白抜け部が7個以上、10個未満/100枚
E;白抜け部が10個以上
【0134】
<実施例2乃至13、比較例1乃至4>
実施例1において、現像装置の構成を表4に示したように変えた以外は、実施例1と同様にして各評価を行った。得られた評価結果を表5に示す。
【0135】
【表4】

【0136】
【表5】

【符号の説明】
【0137】
1 現像装置、2 現像容器、8 第一の現像スリーブ、10 像担持体、11 第二の現像スリーブ、T 現像剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤担持体によって、トナーと磁性キャリアを有する二成分系現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へと担持、搬送し、現像剤規制部材で規制し、該静電潜像担持体上に形成された潜像を二成分系現像剤により現像する現像方法であって、
該現像剤担持体表面のJIS B0601(1994年)に基づく凹凸の平均間隔Smが60μm以上200μm以下であり、十点平均粗さRz(μm)が5.0μm以上25.0μm以下であり、
且つ、該トナーは、40℃,95%RH、72時間放置後の示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温1度目のTg1(℃)と、降温後、昇温2度目のTg2(℃)との関係が、下記式(1)を満たすことを特徴とする現像方法。
0.0≦Tg2−Tg1≦5.0 (1)
【請求項2】
該Tg1と該Tg2との関係が、下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の現像方法。
0.0≦Tg2−Tg1≦3.0 (2)
【請求項3】
該トナーは、少なくともポリエステルユニットを有する結着樹脂、着色剤及び炭化水素系ワックスを含有し、
該炭化水素系ワックスのDSCにより測定される最大吸熱ピーク温度が50℃以上120℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の現像方法。
【請求項4】
該結着樹脂が、2種以上の樹脂を含有し、それぞれの樹脂が少なくともポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の現像方法。
【請求項5】
該現像剤規制部材の先端角度αが25度以上50度以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の現像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−7857(P2011−7857A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148761(P2009−148761)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】