説明

現像装置、およびそれを備えた画像形成装置

【課題】磁気ローラー82上のトナー濃度の偏りと、それによって生じる画像欠陥(スクリューむら)を解決する。
【解決手段】スクリューフィーダー86のスクリュー形状に対応して、磁気ローラー82上に分布した部分的にトナー濃度の異なる現像剤は、磁気ローラー82の周面に対向配置されたシート部材90に接触する。シート部材90に接触した現像剤は、周囲の現像剤とともに攪拌され、スクリュー形状に応じたトナー濃度の偏りが解消される。また、シート部材90が底部を形成する空間部T(現像剤補助貯留部)では、磁気ローラー82上の現像剤に補助的にトナーが供給されるため、トナー濃度の偏りが更に低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター等の画像形成装置に用いられる現像装置に関し、特に、キャリアおよびトナーを含む2成分現像剤を採用した現像装置、およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンター等の画像形成装置に用いられる現像装置として、特許文献1に記載されているような現像装置が知られている。かかる現像装置は、軸心回りに回転することによりトナーを攪拌するスクリューフィーダー(攪拌部材)と、このスクリューフィーダーに平行に配され、スクリューフィーダーから送り込まれたトナーを軸心回りの回転で感光体ドラムの周面側に供給する磁気ローラーと、先端縁部が磁気ローラーの周面に対向した磁気ローラーの軸心方向に延びる層厚規制部材とが、現像ハウジングに内装されることによって構成されている。
【0003】
ここで、スクリューフィーダーを軸心回りに回転させることにより、筐体内に装填された現像剤は、攪拌されつつ上方へ向かい、スクリューフィーダーに対向配置された圧縮部材とスクリューフィーダーとの間の隙間(以下、現像剤圧縮隙間という)を通って圧縮される。該現像剤は、その後、層厚規制部材と磁気ローラーとの間を通り、所定厚みに設定された状態で磁気ローラーの周面に供給される。この現像剤圧縮隙間によって、現像剤は、層厚規制部材へ向けて圧縮状態が維持されたまま円滑に送り込まれるため、不十分な圧縮状態で層厚規制部材へ向かうような不都合が生じることがない。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、現像ハウジング内の現像剤量が比較的少なく、磁気ローラーから分離され、落下した現像剤が、スクリューフィーダーの下方に入り込んだ後、再度上方に搬送されるような条件下においては、現像剤が現像剤圧縮隙間を通過できるため、効果を有する。しかしながら、現像ハウジング内の現像剤量が比較的多い場合、不具合が生じる。すなわち、現像剤がスクリューフィーダーの上方付近を覆う程度に現像ハウジング内に貯留されている場合、感光体ドラム側に現像剤が供給される現像部の通過後に、磁気ローラーから分離され、落下した現像剤が、スクリューフィーダーの下方に入り込むことができない。このため、スクリューフィーダーの動作に誘発されて前記落下した現像剤が再度磁気ローラーに付着してしまうことがある。前記落下した現像剤と現像ハウジング内の現像剤とではトナーとキャリアとの比率が異なるため、磁気ローラー上にトナー濃度分布が生じ、その結果としてシート上に形成される画像に濃度乱れが発生することがある。このような場合、特許文献1に記載の技術では、分離された現像剤が現像剤圧縮隙間を通過することができないため、磁気ローラー上のトナー濃度の偏りが、解消されにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−322707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、特に、現像ハウジング内の現像剤量が比較的多く、磁気ローラーから分離された現像剤が、スクリューフィーダーのスクリュー形状部の回転力によって、再度磁気ローラーに付着した場合に生じる、スクリュー形状部の外周縁形状に応じた磁気ローラー上のトナー濃度の偏りと、それによって生じる画像欠陥(スクリューむら)を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る現像装置は、現像剤を収容する筐体と、前記筐体内に配置され、回転軸を有し、前記回転軸回りに回転することにより前記現像剤を周面で磁気的に担持する磁気ローラーと、前記筐体内に前記磁気ローラーに対向して配置され、軸心と、該軸心の周囲に配設されたスクリュー形状部とを有し、回転しながら前記現像剤を攪拌および搬送する攪拌部材と、前記磁気ローラーに対向配置され、前記攪拌部材から前記磁気ローラーに供給された前記現像剤の層厚を所定厚みに規制する層厚規制部材と、前記層厚規制部材よりも前記磁気ローラーの回転方向上流側で、前記磁気ローラーの周面に対向し、前記磁気ローラーの回転軸方向に沿って配置される現像剤補助貯留部と、前記磁気ローラーの周面に向かって延設され、前記現像剤補助貯留部における磁気ローラーの回転方向上流側の壁面を形成する板状の可撓性部材と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
本構成によれば、層規制部材の上流側で、磁気ローラー上を搬送される現像剤は、磁気ローラーの周面に向かって延設された可撓性部材に接触する。現像ハウジング内の現像剤量が多い場合には、磁気ローラー上において像担持体側に現像剤を供給する現像部の通過後に、磁気ローラーから分離される現像剤が、攪拌部材の下方に入り込むことができず、攪拌部材のスクリュー形状部の回転力によって、再度磁気ローラーに付着する。この結果、磁気ローラー上では攪拌部材のスクリュー形状に応じたトナー濃度の偏りが生じる。上記の可撓性部材を配設することにより、磁気ローラー上を搬送される現像剤が当該可撓性部材に衝突し、攪拌されることによって、軸方向に分布したトナー濃度の偏りが抑制される。更に、可撓性部材が現像剤補助貯留部における磁気ローラーの回転方向上流側の壁面を形成する。このため、現像剤補助貯留部内の現像剤量に応じて、壁面を形成する可撓性部材が変形し、現像剤補助貯留部に現像剤が流入するギャップが調整される。したがって、現像剤補助貯留部内の現像剤量に応じて、必要な量の現像剤が、現像剤補助貯留部に流入しやすい。この現像剤補助貯留部内に貯留、循環される現像剤は、磁気ローラー上の現像剤と混合される。この際、該現像剤補助貯留部内の現像剤からトナーが磁気ローラー上に補給されるため、上記トナー濃度の偏りが更に低減される。
【0009】
上記の構成において、前記可撓性部材は、前記現像剤補助貯留部の底部を形成することが望ましい。
【0010】
この構成によれば、可撓性部材は現像剤補助貯留部における重力方向下方の壁面(底部)を形成する。このため、現像剤補助貯留部内の現像剤量に応じて、可撓性部材が変形しやすく、現像剤が流入するギャップが調整されやすい。したがって、現像剤補助貯留部内の現像剤量に応じて、必要な量の現像剤が、現像剤補助貯留部に更に流入しやすくなる。
上記の構成において、前記可撓性部材は、前記磁気ローラー内に配設された前記複数の磁極のうち、前記攪拌部材に対向配置され前記攪拌部材から前記磁気ローラー周面に現像剤を汲み上げる汲上極よりも、前記磁気ローラーの回転方向下流側の前記磁気ローラーの周面に向かって延設されることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、可撓性部材は、攪拌部材から前記磁気ローラー周面に現像剤を汲み上げる汲上極よりも、前記磁気ローラーの回転方向下流側の前記磁気ローラーの周面に向かって延設される。したがって、汲上極によって汲み上げられる現像剤は、磁気ローラーの周面において、可撓性部材の上流側に汲み上げられる。ここで、現像剤補助貯留部内の現像剤量に応じて、可撓性部材が湾曲可能であるため、可撓性部材の先端部と磁気ローラー周面とで形成されるギャップ(間隔)が変化する。このため、汲上極によって磁気ローラー周面上に汲み上げられた現像剤のうち、必要とされる量の現像剤が、現像剤補助貯留部内に流入することが可能となる。この結果、現像剤補助貯留部内の現像剤量が安定し、磁気ローラー上のトナー濃度の偏りを抑制することができる。
【0012】
また、上記の構成において、前記可撓性部材は、非磁性材料からなることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、磁気ローラー内の汲上極と可撓性部材との間で、磁界が形成されにくい。このため、可撓性部材の先端部における現像剤の攪拌と、現像剤補助貯留部への現像剤の流入とが妨げられにくく、磁気ローラー上のトナー濃度の偏りを抑制することができる。
【0014】
また、上記の構成において、前記磁気ローラーと前記攪拌部材とは、所定の第1位置において最接近して対向し、互いに逆向きに回転され、前記可撓性部材は、前記第1位置よりも前記攪拌部材の回転方向上流側に位置する第2位置において、前記攪拌部材に対向配置され、該第2位置において、前記スクリュー形状部の外周縁が回転して描く円筒体の接線方向に沿うように、前記磁気ローラーの周面に向かって、延設されることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、現像剤補助貯留部の現像剤量の変化による可撓性部材の湾曲によって、攪拌部材から磁気ローラーへの現像剤の供給路が変化する。攪拌部材から磁気ローラーに供給される現像剤は、延設される可撓性部材に沿うように搬送されるため、供給される現像剤量が、上記湾曲によって調整されることが可能となる。このため、現像剤補助貯留部内の現像剤量が安定し、磁気ローラー上のトナー濃度の偏りを抑制することができる。
【0016】
また、本発明の他の局面に係る画像形成装置は、表面に静電潜像が形成され、当該静電潜像が前記磁気ローラーから供給された現像剤によって、現像剤像に顕在化される像担持体と、上記の何れか1に記載の現像装置と、を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、現像ハウジング内の現像剤量が多い場合に、攪拌部材のスクリュー形状に応じた磁気ローラー上のトナー濃度の偏りを抑制し、当該偏りによって生じる画像濃度のむらを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スクリューフィーダーのスクリュー形状に応じた磁気ローラー上のトナー濃度の偏りと、それによって生じる画像欠陥(スクリューむら)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る現像装置の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る現像装置内の構造を示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係る可撓性部材の作用を示した図である。
【図5】本発明の実施形態に係る可撓性部材の作用を示した図である。
【図6】本発明の実施形態に係る可撓性部材の作用を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造を示す断面図である。ここでは、画像形成装置1として、プリンター機能と複写機能を備えた複合機を例示するが、画像形成装置は、プリンター、複写機、ファクシミリ装置であってもよい。
【0021】
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有する装置本体10と、装置本体10上に配置される自動原稿給送装置20と、装置本体10の右側面10Rの下方に取り付けられた手差しトレイ46とを備える。装置本体10の内部には、複写する原稿画像を光学的に読み取る読取ユニット25と、シートにトナー像を形成する画像形成部30と、前記トナー像をシートに定着させる定着部60と、画像形成部30へ搬送される定型シートを貯留する給紙部40と、定型シートを給紙部40又は手差しトレイ46から画像形成部30及び定着部60を経由してシート排出口10Eまで搬送する搬送経路50と、この搬送経路50の一部を構成するシート搬送路を内部に有する搬送ユニット55とが収容されている。
【0022】
自動原稿給送装置(ADF)20は、装置本体10の上面に回動自在に取り付けられている。ADF20は、装置本体10における所定の原稿読取位置(第1コンタクトガラス241が組み付けられた位置)に向けて、複写される原稿シートを自動給送する。一方、ユーザーが手置きで原稿シートを所定の原稿読取位置(第2コンタクトガラス242の配置位置)に載置する場合は、ADF20は上方に開かれる。ADF20は、原稿シートが載置される原稿トレイ21と、自動原稿読取位置を経由して原稿シートを搬送する原稿搬送部22と、読取後の原稿シートが排出される原稿排出トレイ23とを含む。
【0023】
読取ユニット25は、装置本体10の上面のADF20から自動給送される原稿シートの読取用の第1コンタクトガラス241、又は手置きされる原稿シートの読取用の第2コンタクトガラス242を通して、原稿シートの画像を光学的に読み取る。読取ユニット25内には、光源、移動キャリッジ、反射ミラー等を含む走査機構と、撮像素子とが収容されている(図略)。走査機構は、原稿シートに光を照射し、その反射光を撮像素子に導く。撮像素子は、前記反射光をアナログ電気信号に光電変換する。前記アナログ電気信号は、A/D変換回路でデジタル電気信号に変換された後、画像形成部30に入力される。
【0024】
画像形成部30は、フルカラーのトナー画像を生成しこれをシート上に転写する処理を行うもので、タンデムに配置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各トナー像を形成する4つのユニット32Y、32M、32C、32Bkを含む画像形成ユニット32と、該画像形成ユニット32の上に隣接して配置された中間転写ユニット33と、中間転写ユニット33上に配置されたトナー補給部34とを含む。
【0025】
各画像形成ユニット32Y、32M、32C、32Bkは、感光体ドラム321(像担持体)と、この感光体ドラム321の周囲に配置された、帯電器322と、露光器323と、現像装置324と、一次転写ローラー325及びクリーニング装置326とを含む。
【0026】
感光体ドラム321は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム321としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。帯電器322は、感光体ドラム321の表面を均一に帯電する。露光器323は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム321の周面に、原稿画像の画像データに基づく光を照射して、静電潜像を形成する。
【0027】
現像装置324は、感光体ドラム321上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム321の周面にトナーを供給する。現像装置324は、2成分現像剤用のものであり、スクリューフィーダー(攪拌部材)、磁気ローラー及び現像ローラーを含む。この現像装置324の詳細については、後記で詳細に説明する。
【0028】
一次転写ローラー325は、中間転写ユニット33に備えられている中間転写ベルト331を挟んで感光体ドラム321とニップ部を形成し、感光体ドラム321上のトナー像を中間転写ベルト331上に一次転写する。クリーニング装置326は、クリーニングローラー等を有し、トナー像転写後の感光体ドラム321の周面を清掃する。
【0029】
中間転写ユニット33は、中間転写ベルト331、駆動ローラー332及び従動ローラー333を備える。中間転写ベルト331は、駆動ローラー332及び従動ローラー333に架け渡された無端ベルトであって、該中間転写ベルト331の外周面には、複数の感光体ドラム321からトナー像が、同一箇所に重ねて転写される(一次転写)。
【0030】
駆動ローラー332の周面に対向して、二次転写ローラー35が配置されている。駆動ローラー332と二次転写ローラー35とのニップ部は、中間転写ベルト331に重ね塗りされたフルカラーのトナー像をシートに転写する二次転写部35Aとなる。駆動ローラー332又は二次転写ローラー35のいずれか一方のローラーに、トナー像と逆極性の二次転写バイアス電位が印加され、他方のローラーは接地される。
【0031】
トナー補給部34は、イエロー用トナーコンテナ34Yと、マゼンタ用トナーコンテナ34Mと、シアン用トナーコンテナ34Cと、及びブラック用トナーコンテナ34Bkとを含む。これらトナーコンテナ34Y、34C、34M、34Bkは、それぞれ各色のトナーを貯留するものであり、YMCBk各色に対応する画像形成ユニット32Y、32M、32C、32Bkの現像装置324に、図略の供給経路を通して各色のトナーを供給する。各トナーコンテナ34Y、34C、34M、34Bkには、当該コンテナ内のトナーを図略のトナー排出口へ搬送する搬送スクリュー341が備えられている。この搬送スクリュー341が駆動部(不図示)にて回転駆動されることで、現像装置324内へトナーが補給される。
【0032】
給紙部40は、画像形成処理が施されるシートのうち、シートS1を収容する2段の給紙カセット40A、40Bを備える。これら給紙カセット40A、40Bは、装置本体10の前方から手前方向に引出可能である。
【0033】
給紙カセット40A(40B)は、シートS1が積層されてなるシート束を収納するシート収容部41と、前記シート束を給紙のためにリフトアップするリフト板42とを備える。給紙カセット40A(40B)の右端側の上部には、ピックアップローラー43と、給紙ローラー44とリタードローラー45とのローラー対とが配置されている。ピックアップローラー43及び給紙ローラー44の駆動により、給紙カセット40A内のシート束の最上層のシートS1が1枚ずつ繰り出され、搬送経路50の上流端へ搬入される。
【0034】
装置本体10の右側面10Rには、手差し給紙用の給紙トレイ46が設けられている。給紙トレイ46は、その下端部において装置本体10に対して開閉自在に取り付けられている。ユーザーは、手差し給紙を行う場合、図示の通り給紙トレイ46を開き、その上にシートを載置する。給紙トレイ46に載置されたシートは、ピックアップローラー461及び給紙ローラー462の駆動によって、搬送経路50へ搬入される。
【0035】
搬送経路50は、給紙部40から画像形成部30を経由して定着部60の出口までシートを搬送する主搬送路50Aと、シートに対して両面印刷を行う場合に片面印刷されたシートを画像形成部30に戻すための反転搬送路50Bと、主搬送路50Aの下流端から反転搬送路50Bの上流端へシートを向かわせるためのスイッチバック搬送路50Cと、主搬送路50Aの下流端から装置本体10の左側面10Lに設けられたシート排出口10Eまでシートを水平方向に搬送する水平搬送路50Dとを含む。この水平搬送路50Dの大半は、搬送ユニット55の内部に備えられているシート搬送路で構成されている。
【0036】
定着部60は、シートにトナー像を定着させる定着処理を施す誘導加熱方式の定着装置であって、加熱ローラー61、定着ローラー62、加圧ローラー63、定着ベルト64及び誘導加熱ユニット65を含む。定着ローラー62に対して加圧ローラー63が圧接され、定着ニップ部が形成されている。加熱ローラー61及び定着ベルト64は誘導加熱ユニット65によって誘導加熱され、その熱を前記定着ニップ部に与える。シートが定着ニップ部を通過することで、シートに転写されたトナー像が当該シートに定着される。
【0037】
<現像装置の構成>
続いて、本実施形態の現像装置324について詳細に説明する。図2は、現像装置324の内部構造を概略的に示す垂直方向の断面図である。現像装置324は、該現像装置324の内部空間を画定する現像ハウジング80(筐体)を含む。現像ハウジング80は、その内部に収容される各ローラーを上方から覆う蓋部802と、該蓋部802に連接され、現像ハウジング80の下面部を形成する底部803とを含む。
【0038】
この現像ハウジング80には、非磁性体のトナーおよび磁性体のキャリアを含む現像剤を貯留するキャビティであって、現像剤を攪拌しつつ搬送することが可能とされた現像剤貯留部81が備えられている。また、現像ハウジング80の内部には、現像剤貯留部81の上方に配置された磁気ローラー82(現像剤担持体)と、磁気ローラー82の斜め上方位置で磁気ローラー82に対向配置された現像ローラー83(トナー担持体)と、磁気ローラー82に対向配置された現像剤規制ブレード84(層規制部材)と、現像剤を攪拌及び搬送するスクリューフィーダー85および86(攪拌部材)とが配設されている。
【0039】
現像剤貯留部81は、現像装置324の長手方向に延びる2つの隣り合う現像剤貯留室81aおよび現像剤貯留室81bを含む。現像剤貯留室81aおよび現像剤貯留室81bは、現像ハウジング80の底部803に一体に形成され長手方向に延びる仕切り板801によって互いに仕切られているが、長手方向における両端部において連通路804および連通路805によって互いに連通されている(図3参照)。スクリューフィーダー85および86は、現像剤貯留室81aおよび現像剤貯留室81bにそれぞれ収容され、軸回りに回転することにより現像剤を攪拌及び搬送する。スクリューフィーダー85および86は、図略の駆動機構により回転駆動されるが、軸方向において、現像剤の搬送方向が互いに逆向きとなるように設定されている。これにより現像剤は、図3に矢印D1、D2で示すように、現像剤貯留室81aおよび現像剤貯留室81b間を攪拌されつつ循環搬送される。この攪拌により、トナーとキャリアとが混合され、トナーが例えばマイナスに帯電される。
【0040】
磁気ローラー82は、現像装置324の長手方向に沿って配設されており、図2では反時計方向に回転可能である。磁気ローラー82の内部には、固定式の所謂磁石ロールが配置されている。磁石ロールは複数の磁極を有しており、本実施形態では汲上極821、規制極822及び主極823、更に搬送極824、分離極825を有する。汲上極821は現像剤貯留部81に対向し、規制極822は現像剤規制ブレード84に対向し、主極823は現像ローラー83に対向している。また、搬送極824は、規制極822と主極823との間に配設され、分離極825は、主極823に対して、磁気ローラー82の回転方向下流側に配設されている。
【0041】
磁気ローラー82は、図2の矢印F1に示すように、汲上極821の磁力によって現像剤貯留室81bから現像剤をその周面82A上に磁気的に汲み上げる(受け取る)。汲み上げられた現像剤は、磁気ローラー82の周面82A上に磁気的に現像剤層(磁気ブラシ層)として保持され、磁気ローラー82の回転に伴って現像剤規制ブレード84側に向けて搬送される。現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の回転方向から見て現像ローラー83よりも上流側に配置され、磁気ローラー82の周面82Aに磁気的に付着した現像剤層の層厚を規制する。
【0042】
現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の長手方向に沿って延びる磁性材料からなる板部材であり、現像ハウジング80の適所に固定された支持部材841によって支持されている。また、現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の周面82Aとの間で所定の寸法の規制ギャップGを形成する規制面842(つまり現像剤規制ブレード84の先端面)を有する。本実施形態では、規制ギャップGは0.3mmに設定されている。
【0043】
支持部材841は、断面視で略台形形状を有し、磁気ローラー82の回転軸方向に延設される角柱形状からなる。また、支持部材841はその長手方向の1面であって、現像剤規制ブレード84に当接するとともに、磁気ローラー82に対向する対向面843を有する。対向面843は、現像剤規制ブレード84の規制ギャップGよりも広いギャップをもって、磁気ローラー82の回転周面に対向している。本実施形態では、対向面843と磁気ローラー82とのギャップは、最大で3.0mmに設定されている。
【0044】
ここで、本実施形態では、現像剤規制ブレード84の配置位置よりも、磁気ローラー82の回転方向上流側の位置に、磁気ローラー82の周面に向かって、下方から上方に所定の角度をもって延設されるシート部材90(可撓性部材)が配設されている。シート部材90は、可撓性を有する板状部材であり、本実施形態では、厚さ100ミクロンのPET(ポリエチレンテレフタラート)から構成されている。シート部材90は、その一端が、固定端として、支持部材841の下端面844(対向面843に交差する面)に固定されており、他方が自由端として、磁気ローラー82の周面に向かって延設されている。シート部材90の先端(自由端)は、磁気ローラー82の周面82Aから所定の距離をもって近接配置されており、周面82A上を搬送される現像剤層に接触する。
【0045】
シート部材90と支持部材841との固定には、各種固定方法が採用可能である。本実施形態では、シート部材90の端面と、支持部材841の下端面844とが、磁気ローラー82の回転軸方向に沿って、両面テープで接着されている。その他、磁気ローラー82の回転軸方向に沿って、たとえば複数箇所でネジ止め固定する方法などが採用可能である。現像剤規制ブレード84、対向面843およびシート部材90は、磁気ローラー82の周面82Aとの間で、空間部T(現像剤補助貯留部)を形成している。特に、シート部材90は、現像剤補助貯留部における磁気ローラーの回転方向上流側であって、重力方向下方の壁面(底部)を形成している。
【0046】
汲上極821によって磁気ローラー82の周面82A上に付着した現像剤層は、その一部がシート部材90に接触し、その他は、シート部材90と磁気ローラー82との間を通過しながら、空間部Tに搬送される。更に、空間部Tでは、現像剤が循環、滞留しながら、現像剤規制ブレード84に向かって、搬送される。
【0047】
磁性材料から形成された現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の規制極822によって磁化される。これにより、現像剤規制ブレード84の規制面842と規制極822との間には、すなわち規制ギャップGには、磁路が形成される。磁気ローラー82の回転に伴って、空間部Tから、規制ギャップG内に現像剤が搬送されると、現像剤層の層厚は規制ギャップGにおいて規制される。これにより、周面82A上には所定厚さの均一な現像剤層が形成される。
【0048】
現像ローラー83は、現像装置324の長手方向に沿って、且つ、磁気ローラー82に対して平行に延びるように配設されており、図2では反時計方向に回転可能である。現像ローラー83は、磁気ローラー82の周面82A上に保持された現像剤層に接触した状態で回転しつつ、前記現像剤層からトナーを受け取ってトナー層を担持する周面83Aを有する。現像ローラー83の内部には、磁気ローラー82の主極823に対向する位置に、対向主極831が配設されている。トナーは、主極823と対向主極831との間で、磁界が形成されるとともに、周面82Aと周面83Aとの間(現像部)に所定の電圧が設定されることによって、周面82A上の前記現像剤層から周面83Aに移動する。現像動作が行なわれる現像時には、周面83A上のトナーが感光体ドラム321の周面に供給される。現像ローラー83との対向部を通過した磁気ローラー82上の現像剤は、分離極825によって、周面82Aから剥離され、下方のスクリューフィーダー86が収容される現像剤貯留室81bまで落下し、再び攪拌される。
【0049】
なお、現像ローラー83および磁気ローラー82は、駆動源(不図示)によって回転駆動される。現像ローラー83の周面83Aと磁気ローラー82の周面82Aとの間には、所定の寸法の隙間Sが形成されている。隙間Sは例えば約130μmに設定されている。現像ローラー83は、現像ハウジング80に形成された開口を通して感光体ドラム321に臨むように配置され、周面83Aと感光体ドラム321の周面との間にも所定の寸法の隙間が形成されている。
【0050】
<トナー濃度分布を生じる原因について>
次に、図2および図3を用いて、本実施形態にかかるシート部材90を備えない場合に生じる現像装置内の現象について説明する。図3は、磁気ローラー82の長手方向に亘る現像装置324の内部構造を、上方から示した図である。同図は、図2において、現像ハウジング80の蓋部802を取り外し、磁気ローラー82と、スクリューフィーダー85との間から、スクリューフィーダー86を臨む様子を表している。なお、図3において、現像ローラー83は図示を省略されている。
【0051】
現像ハウジング80の内部において、略水平に隣接されたスクリューフィーダー85および86は、それぞれ磁気ローラー82の回転軸方向において、逆方向に現像剤を搬送する(図3の矢印D2、D1)。更に、これらスクリューフィーダー85および86の軸方向端部における現像剤搬送路は、現像ハウジング80の底部803に設けられた連通路804および805によって連通され、全体として時計回りの現像剤の循環路が形成されている。
【0052】
スクリューフィーダー86の上方には、磁気ローラー82が第1位置(図2のA1)にて対向して配設されている。磁気ローラー82は、図2および図3でR1方向に回転し、スクリューフィーダー86は、第1位置で、磁気ローラー82と逆方向(R2方向)に回転している。磁気ローラー82の周面82Aにスクリューフィーダー86から現像剤の一部が供給され(図2の矢印F1)、残りの現像剤が軸方向に攪拌、搬送される(図3の矢印D1)。また、現像ローラー83へのトナーの移動後、磁気ローラー82の分離極825(図2)によってその周面82Aから剥離された現像剤が再度、スクリューフィーダー86の搬送路に流入する(図2の矢印F2)。
【0053】
ここで、感光体ドラム321に形成される静電潜像に応じて、主極823では、現像ローラー83側に磁気ローラー82上のトナーの一部が消費される。従って、上記の磁気ローラー82から分離され、スクリューフィーダー86に再度流入する現像剤では、二成分現像剤を構成するキャリアに対するトナーの比率(T/C)が低下している。このため、これら磁気ローラー82から分離された現像剤と、スクリューフィーダー86内を矢印D1方向に攪拌、搬送されてきた現像剤とでは、キャリアとトナーの比率(T/C)が、相違する。
【0054】
ただし、現像装置324内の現像剤量が少ない場合であれば、図2の矢印F2に示すように、分離された現像剤が、スクリューフィーダー86の下方へ落下する。その後、当該現像剤は、現像ハウジング80の底部803側に沈むように搬送された後、周囲の現像剤と十分攪拌された上で、磁気ローラー82に再供給される。このため、キャリアとトナーの比率の部分的な不均一性は、問題となりにくい。
【0055】
一方、現像装置324の使用条件において、現像装置324内の現像剤量が多い場合(たとえば、400g)には、この磁気ローラー82から分離された現像剤(分離現像剤)が、スクリューフィーダー86のスクリュー外周縁861(螺旋形状の外周部)の回転力によって、スクリューフィーダー86の下方に入り込むことができない。むしろ当該現像剤は、上方に押し戻され、磁気ローラー82側に再付着しやすい(図2の矢印F3)。なお、このような現象は、現像装置の使用に応じて、トナーのみならずキャリアも補給する、いわゆるトリクル現像方式において、現像剤貯留部81内の現像剤量の変動が大きく、顕著となる。
【0056】
上記の磁気ローラー82への分離現像剤の再付着現象には、スクリューフィーダー86の形状が寄与する。スクリューフィーダー86のスクリュー外周縁861の形状(螺旋形状)に対応して、分離現像剤の再付着の顕著な部分が磁気ローラー82上に周期的に分布することとなる。前記周期的な分布は、スクリューフィーダー86が回転したときにスクリュー外周縁861が描く軌跡を対向面(磁気ローラー82の周面)に投影したラインに近似する。この結果、磁気ローラー82上にトナー濃度の不均一分布が生じる。
【0057】
図3において、磁気ローラー82の周面上に示した点線部Pは、磁気ローラー82の裏側(スクリューフィーダー86に対向する側)での分離現像剤の再付着の分布を表しており、その周期、および分布形状は、対向するスクリューフィーダー86のスクリュー外周縁861(螺旋形状)の形状に対応している。すなわち、磁気ローラー82の周面82Aにおいて、スクリュー外周縁861が対向する位置では、分離現像剤の再付着が顕著であるため、T/C(トナー濃度)が低い現像剤が付着している。一方、スクリューフィーダー86の軸部862に対応する位置では、その半径方向への搬送力が小さいため、分離現像剤は、磁気ローラー82上に再付着しにくい。したがって、磁気ローラー82の周面82Aには、スクリューフィーダー86の下方に入り込み、十分に攪拌された、T/Cの高い現像剤が付着している(図2のF1)。
【0058】
このように、再付着現像剤の分布は、磁気ローラー82とスクリューフィーダー86とが互いに回転した時に、スクリューフィーダー86上のスクリュー外周縁861が描く軌跡を磁気ローラー82の周面上に投影した形状に対応している。なお、図3において実線部P’は、この再付着現像剤が、磁気ローラー82の回転に伴い、磁気ローラー82の周面82Aの上側に搬送された際の分布を示している。
【0059】
また、T/C(トナー濃度)の異なる現像剤は、流動性も異なることがある。従って、上記の磁気ローラー82上に分布した再付着現像剤と、スクリューフィーダー86の下方から供給された、周辺の現像剤とでは、磁気ローラー82の周面82Aに付着する現像剤量のむらを差が生じることがある(周面82A上での現像剤層の高低差)。
【0060】
このような磁気ローラー82上でのT/C(トナー濃度)の偏りや現像剤量のむらは、磁気ローラー82からトナーが移動される現像ローラー83上および、感光体ドラム321上での現像剤像でも残存するため、結果的に画像欠陥につながってしまう。
【0061】
<シート部材について>
この上述の分離現像剤の再付着(再付着現像剤)の問題を解決するために、シート部材90が、磁気ローラー82の下方であって、現像剤規制ブレード84よりも磁気ローラー82の回転方向上流側に配設されている。図4〜図6は、このシート部材90が備えられている場合における磁気ローラー82周辺の現像剤の流れを示した図である。図4(a)は、シート部材90が備えられていない場合の磁気ローラー82およびスクリューフィーダー86との間の現像剤の流れを示し、図4(b)はシート部材90が備えられている場合の現像剤の流れを示している。
【0062】
図4(a)において、磁気ローラー82はR1方向に回転され、スクリューフィーダー86はR2方向に回転される。前述のとおり、好適な現像剤の流れでは、磁気ローラー82から分離された現像剤が、図中矢印F2に示すように、スクリューフィーダー86内に流入し、スクリューフィーダー86内を搬送されてきた他の現像剤(図3中、矢印D1)との間で攪拌される。しかる後、攪拌後の現像剤は、矢印F1に示すように、汲上極821の磁力によって、磁気ローラー82に供給される。一方、現像装置324内の現像剤量が多い場合には、矢印F3に示すように、分離された現像剤は、十分攪拌されることなく、磁気ローラー82に再付着する。
【0063】
これに対し、図4(b)では、磁気ローラー82の内側に配設される汲上極821よりも、磁気ローラー82の回転方向下流側の磁気ローラー82の周面に向かって、シート部材90が延設されている。シート部材90の先端部は、磁気ローラー82上の現像剤層(不図示)に接触するように配設されている。したがって、矢印F1と矢印F3の流れによって、磁気ローラー82上に供給される現像剤が、磁気ローラー82の回転軸方向に周期的に混在する場合であっても、シート部材90の先端部がこれらの現像剤層をかき乱す効果を有し、その周期的な分布が緩和される。
【0064】
ここで、シート部材90は可撓性材料であるPET材料からなる。このため、磁気ローラー82の回転力と、搬送される現像剤の圧力とによって、図5(a)のように、シート部材90の先端が磁気ローラー82の回転方向下流側に撓みやすい。この撓んだシート部材90の先端部と磁気ローラー82の周面82Aとから形成される楔状の空間では、図5(a)の矢印ように現像剤の滞留が生じやすい。したがって、矢印F1および矢印F3(図4(b))の流れによって供給されたそれぞれの現像剤は、この楔状の領域で、互いに攪拌された後に、シート部材90の先端部を越えて、空間部T(現像剤補助貯留部)に流入する。本実施形態では、特に、磁気ローラー82に固定配置される汲上極821よりも、磁気ローラー82の回転方向下流側の位置で、シート部材90が磁気ローラー82の周面82Aに向かって延設されている。このため、汲上極821による現像剤の汲み上げと、シート部材90の先端部による現像剤の攪拌とが、磁気ローラー82の回転方向において順に実行される。したがって、シート部材90の先端部が、汲上極821よる現像剤の汲み上げを妨げることが少ない。
【0065】
また、本実施形態では、シート部材90が、現像剤規制ブレード84の対向面841の最下部から磁気ローラー82の周面82Aに向かって延出している。このシート部材90は、現像剤規制ブレード84よりも磁気ローラー82の回転方向上流側に配設された空間部T(現像剤補助貯留部)の重力方向下方の壁面部(底部)を兼ねている。シート部材90の先端部と磁気ローラー82の周面82Aとの間から、空間部Tに流入した現像剤は、磁気ローラー82の搬送力によって、現像剤規制ブレード84まで移動され、その一部が現像剤規制ブレード84の側面845で規制され、掻き落とされる。このため、空間部Tには、図5(b)において矢印Frに示すような現像剤の循環流が生じる。空間部T内に生じる現像剤の循環流は、磁気ローラー82上を搬送される現像剤に対して、所定の圧力を与えるとともに、トナー濃度が低い部分のキャリア表面に、補助的にトナーを供給する作用を有する。したがって、前述のシート部材90の先端部での攪拌が不十分であった場合でも、残存するトナー濃度の偏りに対して、空間部Tにおいてトナーが補給される。このため、更にトナー濃度分布が抑えられた状態で、現像剤規制ブレード84による層規制が行われる。
【0066】
ここで、空間部T内に循環する現像剤量が少ない場合には、空間部Tからシート部材90に、下方に向かってもたらされる押圧力が小さい。この場合、シート部材90は、可撓性を有するPET材料からなるため、磁気ローラー82の回転力および周面82A上を搬送される現像剤の圧力によって、更に上方に撓みやすくなる(図6(a))。したがって、シート部材90の先端部と、磁気ローラー82の周面82Aとのギャップが拡大され、空間部Tへの現像剤の流入が促進される(矢印F4)。すなわち、シート部材90は、空間部T内に循環する現像剤量が少ない場合に、磁気ローラー82の汲上極821によって汲み上げられた現像剤を、空間部Tに流入させやすい作用を有する。
【0067】
一方、空間部T内に循環する現像剤量が多い場合には、空間部Tからシート部材90に、下方に向かってもたらされる押圧力が大きい。この場合、シート部材90は、磁気ローラー82の回転力および周面82A上を搬送される現像剤の圧力を受けても、上方に撓みにくい。したがって、シート部材90の先端部と、磁気ローラー82の周面82Aとのギャップは、拡大されないため、空間部Tに流入する現像剤量は増えることなく維持される。すなわち、シート部材90は、空間部T内に循環する現像剤量が多い場合に、磁気ローラー82の汲上極821によって汲み上げられた現像剤が、空間部Tに流入する量を規制する作用を有する。
【0068】
更に、空間部T内に循環する現像剤量が多く、その流動性が悪化した場合は、磁気ローラー82の回転停止時に、シート部材90は下方に撓むことが可能である。このため、空間部T内の現像剤の一部が、スクリューフィーダー86側に落下し、空間部T内の現像剤量が調整される(図6(b)の矢印F5)。
【0069】
このように、本実施形態におけるシート部材90は、可撓性を有する材料からなり、空間部T(現像剤補助貯留部)の底部を兼ねるように配置されている。このため、空間部T内を循環する現像剤量に応じて、シート部材90の形状と磁気ローラー82に対する姿勢が変化する。この結果、空間部T(現像剤補助貯留部)に流入する現像剤量が効果的に調整される。
【0070】
更に、本実施形態では、シート部材90が、現像ローラー83と磁気ローラー82とが対向する第1位置よりも、スクリューフィーダー86の回転方向上流側の第2位置(図2のA2)にて、スクリューフィーダー86に対向配置されている。より詳しくは、シート部材90は、スクリューフィーダー86との第2位置において、スクリューフィーダー86のスクリュー形状部の外周縁861が回転し、軌跡として描かれる円筒体の接線方向に沿うように、支持部材841から延設されている。このため、前述のシート部材90の湾曲によって、スクリューフィーダー86から磁気ローラー82への現像剤の供給路が変化し、供給される現像剤量が効果的に調整される。たとえば、急激に空間部T内の現像剤量が減少した場合、シート部材90が上方に湾曲する(図6(a))。このため、スクリューフィーダー86から磁気ローラー82への現像剤の供給路が広がり、速やかに現像剤が補充される。この結果、現像剤補助貯留部内の現像剤量が安定化し、磁気ローラー82上のトナー濃度分布の解消機能が維持されることが可能となる。
【0071】
以上のように、本実施形態にかかるシート部材90によれば、磁気ローラー82上を搬送される現像剤が当該シート部材90に衝突し、攪拌されることによって、軸方向に分布したトナー濃度の偏りが抑制される。更に、シート部材90が底部を形成する空間部T(現像剤補助貯留部)内に貯留、循環される現像剤が、磁気ローラー82上の現像剤に圧力を与え、互いに混合される。この際、空間部T(現像剤補助貯留部)内の現像剤からトナーが磁気ローラー82上に補給されるため、上記トナー濃度の偏りが更に低減される。更に、空間部T内を循環する現像剤量に応じて、シート部材90は、その形状と磁気ローラー82に対する姿勢が変化し、空間部T(現像剤補助貯留部)に流入する現像剤量が効果的に調整される。
【0072】
この結果、現像装置324内の現像剤量が多い場合(たとえば、400mg/mm2)であっても、磁気ローラー82上に分離現像剤が再付着することによって生じる周期的なトナー濃度分布を低減することが可能となる。更に、この周期的なトナー濃度分布によってもたらされる画像欠陥を効果的に抑制することが可能となる。
【0073】
以上、本発明の実施形態に係る現像装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0074】
(1)上記実施形態では、シート部材90についてPET材(樹脂材料)からなる板状部材を用いて説明したが、シート部材90はこれに限られるものではなく、金属材料から構成されることも可能である。ここで、磁気ローラー82に内包される磁極との間で、磁界が形成されないために、シート部材90には非磁性金属材料が選択されることがより好ましい。この場合、シート部材90の先端部における現像剤の攪拌と、空間部T(現像剤補助貯留部)への現像剤の流入が妨げられにくく、磁気ローラー82上のトナー濃度の偏りが効果的に抑制されることが可能となる。
【0075】
(2)また、上記実施形態では、シート部材90が、現像剤規制ブレード84よりも磁気ローラー82の回転方向上流側に配設された空間部T(現像剤補助貯留部)の重力方向下方の壁面部(底部)を兼ねている構成を用いて説明した。シート部材90の配置は、これに限られるものではなく、空間部T(現像剤補助貯留部)における磁気ローラー82の回転方向上流側の壁面を形成さえしていれば、それが側壁などであってもよい。シート部材90が空間部Tの底部を形成する場合に比べて、シート部材90が空間部Tの側壁を形成する場合は、空間部Tの現像剤からシート部材90が受ける荷重が減少する。しかし、この場合であっても、磁気ローラー82の回転力によって、シート部材90は、磁気ローラー82の回転方向下流側に湾曲することができる。したがって、シート部材90の先端部における現像剤の攪拌が実行されるとともに、空間部T内の現像剤からトナーが磁気ローラー上に補給され、磁気ローラー82上のトナー濃度の偏りが低減される。
【実施例】
【0076】
次に、上記の実施形態に係るシート部材90によって、磁気ローラー82上での再付着現像剤の分布が緩和され、プリント画質におけるスクリューむらが効果的に改善した実施例について説明する。
【0077】
なお、実施例及び比較例においては以下の諸元及び条件で画出しを行った。
<装置条件>
・画像形成装置:京セラミタ製 TASKalfa 5550ci
・感光ドラム:直径φ30mm、周速300mm/sec、表面電位(暗電位)300V、明電位10V
・現像ローラーの回転スリーブ:材質アルミニウム、直径φ20mm、周速450mm/sec
・磁気ローラーの回転スリーブ:材質アルミニウム、直径φ20mm、周速675mm/sec
・トナー平均粒径:6.8μm
・キャリア平均粒径:35μm
・トナー/キャリア重量比率:11%
・磁気ローラー82と現像ローラー83との表面同士の最近接設定距離:350μm
・現像ローラー83と感光体ドラム321との表面同士の最近接設定距離:150μm
・現像ローラー印加電圧:Vdc2=300V、Vpp=1.6kV、周波数f=2.7kHz、Duty比=50%
・磁気ローラー印加電圧:Vdc1=400V、現像ローラー印加電圧Vppと同じ周期で逆の位相のVpp=2.8kV、周波数f=2.7kHz、Duty比=70%
【0078】
<シート部材90>
実施例1:下記のシート部材90を備える。
シート部材90の厚さ:100μm
シート部材90の材料:PET
シート部材90の自由端長(支持部材からの突き出し量):3.0mm
磁気ローラー82とシート部材の先端部との間隔:1.5mm
実施例2:下記のシート部材90を備える。
シート部材90の厚さ:1mm
シート部材90の材料:アルミニウム板
シート部材90の自由端長(支持部材からの突き出し量):3.0mm
磁気ローラー82とシート部材の先端部との間隔:1.5mm
実施例3:下記のシート部材90を備える。
シート部材90の厚さ:100μm
シート部材90の材料:磁性ステンレス鋼(SUS403)
シート部材90の自由端長(支持部材からの突き出し量):3.0mm
磁気ローラー82とシート部材の先端部との間隔:1.5mm
比較例1:シート部材90を有さない場合。
比較例2:シート部材90を有さない場合。ただし、特開2007−322707号公報記載の圧縮部材を有する。
【0079】
【表1】

【0080】
表1は、スクリューむらの評価結果であって、A3プリント全面に、高濃度画像を作像した際に、スクリューフィーダー86のスクリュー形状で現れるむら(スクリューむら)について目視で評価したものである。○はスクリューむらが現れていないもの、×はスクリューむらが顕著に現れている状態を表すものである。いずれも、現像装置324内の現像剤量を変化させて、スクリューむらが現れるか否かを評価した。
【0081】
表1に示される実施例1、2では比較例1と比較して、現像装置324内の現像剤量が多い状態(375〜400g)においても、スクリューむらの発生が効果的に防止されていることが確認される。また、磁性金属材料を用いた実施例3では、シート部材90の先端と汲上極821との間で磁界が形成されるため、現像剤が空間部Tに流入することを規制していることが考えられるが、現像剤層に対する先端部の攪拌効果を有するため、現像剤量375gの条件で、スクリューむらが改善していることがわかる。一方、特開2007−322707号公報記載の圧縮部材を用いた比較例2では、磁気ローラー82上の現像剤量が低い条件(300mg/cm2)での効果は見られるが、現像剤量が多い条件での改善は見られない。
【0082】
以上のように、シート部材90を採用することで、現像装置324内の現像剤量が多い状態(375〜400g)においても、シート部材90の攪拌効果と、空間部T(現像剤補助貯留部)からのトナー補充によって、スクリューむらの発生が効果的に防止される。
【符号の説明】
【0083】
1 画像形成装置
10 装置本体
30 画像形成部
32 画像形成ユニット
33 中間転写ユニット
321 感光体ユニット
324 現像装置
80 現像ハウジング
802 蓋部
803 底部
81 現像剤貯留部
82 磁気ローラー
821 汲上極
822 規制極
823 主極
824 搬送極
825 分離極
83 現像ローラー
831 対向主極
84 現像剤規制ブレード(層規制部材)
841 支持部材
843 対向面
85 スクリューフィーダー(攪拌部材)
86 スクリューフィーダー(攪拌部材)
90 シート部材(可撓性部材)
T 空間部(現像剤補助貯留部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容する筐体と、
前記筐体内に配置され、回転軸を有し、前記回転軸回りに回転することにより前記現像剤を周面で磁気的に担持する磁気ローラーと、
前記筐体内に前記磁気ローラーに対向して配置され、軸心と、該軸心の周囲に配設されたスクリュー形状部とを有し、回転しながら前記現像剤を攪拌および搬送する攪拌部材と、
前記磁気ローラーに対向配置され、前記攪拌部材から前記磁気ローラーに供給された前記現像剤の層厚を所定厚みに規制する層厚規制部材と、
前記層厚規制部材よりも前記磁気ローラーの回転方向上流側で、前記磁気ローラーの周面に対向し、前記磁気ローラーの回転軸方向に沿って配置される現像剤補助貯留部と、
前記磁気ローラーの周面に向かって延設され、前記現像剤補助貯留部における磁気ローラーの回転方向上流側の壁面を形成する板状の可撓性部材と、
を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記可撓性部材は、前記現像剤補助貯留部の底部を形成することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記磁気ローラーは、内部に固定配置された複数の磁極を有し、
前記可撓性部材は、前記複数の磁極のうち、前記攪拌部材に対向配置され前記攪拌部材から前記磁気ローラー周面に現像剤を汲み上げる汲上極よりも、前記磁気ローラーの回転方向下流側の前記磁気ローラーの周面に向かって延設されることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記可撓性部材は、非磁性材料からなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記磁気ローラーと前記攪拌部材とは、所定の第1位置において最接近して対向し、互いに逆向きに回転され、
前記可撓性部材は、前記第1位置よりも前記攪拌部材の回転方向上流側に位置する第2位置において、前記攪拌部材に対向配置され、該第2位置において、前記スクリュー形状部の外周縁が回転して描く円筒体の接線方向に沿うように、前記磁気ローラーの周面に向かって、延設されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
表面に静電潜像が形成され、当該静電潜像が前記磁気ローラーから供給された現像剤によって、現像剤像に顕在化される像担持体と、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の現像装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−64783(P2013−64783A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202077(P2011−202077)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】