説明

現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】現像装置を継続使用してもトナー劣化を軽減し、転写効率が低下することで発生する所謂ボソ画像を抑制する。
【解決手段】供給ローラ104には粒子が塗布されていて、前記粒子は、供給ローラ104が絶縁性もしくは導電性で現像ローラ106と同電位である場合に、前記粒子を供給ローラ104に塗布した場合の現像ローラ106上における規制ブレード105通過後のトナーの単位面積当り質量m’と、塗布していない場合のトナーの単位面積当り質量mとの関係が、m’<mとなる粒子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材等の記録媒体上に画像を形成する機能を備えた、例えば、複写機、プリンタ、ファクス等などの画像形成装置に関し、特に、これらの装置に備えられる、現像装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式のプリンタや複写機等の画像形成装置においては、帯電プロセス、露光プロセス、現像プロセス、転写プロセス、定着プロセス、を主要なプロセスとする電子写真プロセスによってプリントを行っている。ここで、帯電プロセスは、感光体上に電荷を与えるプロセスである。また、露光プロセスは、感光体上に画像データをもとに静電潜像を形成するプロセスである。また、現像プロセスは、感光体上の静電潜像を現像剤としてのトナーで顕像化するプロセスである。また、転写プロセスは、感光体上のトナー像を記録媒体としての紙などに転写するプロセスである。また、定着プロセスは、記録媒体上のトナー像を熱や圧力などで定着させるプロセスである。
【0003】
現像プロセス方式には様々なものが開発されているが、なかでも小型で安価な現像方式として非磁性一成分現像方式がある。
【0004】
一般的な非磁性一成分現像方式を用いた現像装置は、現像剤担持体としての現像ローラと、供給部材としての供給ローラと、規制部材としての規制ブレードを備えている。ここで、現像ローラは、感光体と接触もしくは近接している部分に現像剤としてのトナーを搬送するものである。また、供給ローラは、現像ローラ上にトナーを供給するものである。また、規制ブレードは、供給ローラによって搬送された現像ローラ上のトナーを均一に規制するものである。
【0005】
一般的に、現像ローラはシリコンゴムなどをベース層として、薄層のウレタンなどからなる表層を設けているものや、単層のヒドリンゴムの表層に表面処理を施したものが用いられる。規制ブレードはリン青銅やSUSなどの金属シートやナイロンやウレタンゴムを貼り付けたシートを所定の圧力で現像ローラに当接するよう構成されている。供給ローラは発泡セルを持つスポンジと芯金で構成されていて、所定の進入量で現像ローラに速度差をもって回転できるようになっている。
【0006】
上記のように供給ローラを発泡スポンジ材料で構成することで、多量のトナーを現像ローラへ搬送することができると同時に、現像されずに現像ローラ上に残ったトナーを剥ぎ取ることができる。この2つの働きにより、感光体に現像されるトナーは安定した比電荷とコート量を保つことができる。しかし、この構成の懸念点として、供給ローラが現像ローラと摺擦しているためトナーが擦られ易く、トナーの母体に外添されている外添剤が埋め込まれたり剥がれたりすることで発生する所謂トナー劣化が発生しやすい。
【0007】
そこでこの問題を解決すべく、特許文献1に記載されているように、供給ローラを現像ローラと非接触に配置した構成などが考案されている。
【特許文献1】特開平11−327291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように非接触に配置した供給ローラを用いた場合は、現像ローラ上のトナーを剥ぎ取る能力を別途設ける必要があるため、配置の精度が要求される
ためコストアップしやすいといった問題点がある。
【0009】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、現像装置を継続使用してもトナー劣化を軽減し、転写効率が低下することで発生する所謂ボソ画像を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
現像剤担持体と、
前記現像剤担持体上に現像剤を搬送する供給部材と、
前記供給部材から搬送された前記現像剤担持体上の現像剤を規制する規制部材と、
を備えた現像装置において、
前記供給部材には粒子が予め塗布されており、
前記粒子は、
前記供給部材が絶縁性若しくは導電性で前記現像剤担持体と同電位である場合に、
前記粒子を前記供給部材に塗布した場合の前記現像剤担持体上における前記規制部材通過後の現像剤の単位面積当りの質量m’と、
前記粒子を前記供給部材に塗布していない場合の前記現像剤担持体上における前記規制部材通過後の現像剤の単位面積当りの質量mと、
の関係がm’<mとなる粒子である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、現像装置を継続使用してもトナー劣化を軽減し、転写効率が低下することで発生する所謂ボソ画像を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0013】
(画像形成装置)
図2は、画像形成装置1の概略断面図である。図3はプロセスカートリッジの概略断面図である。
【0014】
図2において、画像形成装置1はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像を各々に形成する4つのプロセスカートリッジ2を有し、これが記録材(記録媒体)3の搬送経路上流側から順に着脱可能に配置されている。プロセスカートリッジ2には、図3に示すように、感光ドラム4と帯電ローラ5とクリーニング装置6と現像装置100が含まれる。各種バイアスは、図示しない高圧電源からプロセスカートリッジ2に印加される。
【0015】
以下に、画像形成装置1の動きについて説明する。
【0016】
給送部から給送ローラと給送パッドによって搬送された記録材3は転写ベルト7上に吸着され、上方に向かって排出部9まで搬送される。
【0017】
その間、各色の感光ドラム4上に形成されたトナー像が転写バイアスによって転写される。本実施の形態では、マイナスの極性を帯びる性質の現像剤としてのトナー101であ
る所謂負極性トナーを用いているため、転写ベルト7には感光ドラム4の表面電位に対してトナー101を引き付けるようなプラスのバイアスを印加する必要がある。転写バイアスにひきつけられたトナーは記録材3の上に付着し、次の色の転写部へ搬送される。
【0018】
このようにして順次色が重ねられ、カラーのトナー像が形成される。尚、各色の感光ドラム4上に転写されずに残った所謂転写残トナーは、感光ドラム4上に配置されたクリーニングブレード6aによって感光ドラム4から引き剥がされて、廃トナー容器6bに回収される。
【0019】
カラーのトナー像が形成された記録材3は、定着装置8に搬送される。定着装置8では、定着ニップ部において所定の温度に温調されたローラ対によってトナー像が挟まれ、熱と圧力を同時に受ける。このとき、トナー101が融けて記録材繊維表面に絡みつき、定着ニップ部を通過して冷やされるとそのまま固まり定着する。トナー像が定着した記録材3は排出部9に排出され、ここで一つの画像形成プロセスが完了する。連続して画像形成する場合は、上記のプロセスが順次繰り返される。
【0020】
(プロセスカートリッジ)
図3におけるプロセスカートリッジ2は、現像装置100、感光ドラム4、帯電ローラ5、クリーニング装置6で構成されている。
【0021】
感光ドラム4は、アルミ素管の基層上に形成された20〜25μm程度の半導体薄膜から構成されている。感光ドラム4の表面には帯電ローラ5が押圧配置され従動回転している。感光ドラム4を均一な電位に帯電するためには、帯電ローラ5にバイアスを印加して感光ドラム4の導電基層との電位差により放電を発生させればよい。
【0022】
帯電ローラ5は芯金のまわりに導電性の発泡スポンジ層を設け、その上に発泡スポンジよりも抵抗が高いウレタン等のゴムチューブからなる層を設けている。さらに、その表面をフッ素配合した薄いゴムで覆い、クリーニングブレード6aをすり抜けたトナー101やトナーから遊離した外添剤が付着し難いような構成になっている。
【0023】
帯電ローラ5によって帯電された感光ドラム4は回転駆動されることにより、露光部に進入する。露光部では、露光装置10からの露光により感光ドラム4の表面電位が部分的に低くなり、600dpi(dot/inch)や1200dpiの静電潜像が順次形成される。
【0024】
露光装置10は、半導体レーザを光源としていて、高速回転しているポリゴンミラーにレーザ光を反射させることによって感光ドラム上を走査する構成となっている。
【0025】
クリーニング装置6は、クリーニングブレード6aとその支持板金と廃トナー容器6bから構成されている。クリーニングブレード6aは硬質のウレタン、シリコンなどのゴムや樹脂材料からできていて、感光ドラム4に所定の角度と圧力で当接されている。クリーニングブレード6aは転写残トナーを感光ドラム4上から剥ぎ取り、廃トナー容器6bに収容する機能がある。
【0026】
(現像装置)
図1は、本発明を適用可能な現像装置100の概略断面図である。
【0027】
静電潜像をトナー像として顕像化することが現像装置100の機能である。現像装置100には、トナー101が満たされるトナー容器部102があり、回転駆動される撹拌羽103によって供給部材としての供給ローラ104付近へトナー101を搬送しつつ撹拌
する。撹拌羽103によって搬送されたトナー101を感光ドラム4上の潜像を形成するための部材としては、供給ローラ104と、規制部材としての規制ブレード105と、現像剤担持体としての現像ローラ106がある。
【0028】
供給ローラ104は、イオン導電や電子導電の導電性を有するウレタンフォーム等のスポンジとその回転中心にある芯金によって構成された所謂弾性スポンジローラである。ウレタン以外の材料としては、発泡シリコンなどを用いても良い。供給ローラ104には、電圧印加手段としての電源Vcから供給バイアス(供給ローラバイアス)を印加できるようになっている。供給ローラ104の抵抗値は、2×10の3乗〜5×10の9乗Ω程度が好ましい。抵抗値の測定方法は後述する現像ローラ106とほぼ同じである。
【0029】
後述する実施例及び比較例では、供給ローラ104に粒子を塗布する。
【0030】
図4は後述の実施例及び比較例で用いた供給ローラ104の概略断面図である。SUS(ステンレス鋼)の芯金にウレタンゴムを発泡させて直径16mmのローラ状に作製した。発泡セルはお互いに通じていてもよい。
【0031】
図5は供給ローラ104に粒子Pを塗布した状態の概略図である。供給ローラ104上に粒子Pがほぼ隙間なく付着していればトナー101が付着することはできなくなる。供給ローラ104と粒子Pと現像ローラ106の間で、トナー104の滑りが良くなるような粒子Pを選択することがトナー劣化の良化につながる。
【0032】
規制ブレード105は、厚さ約50〜200μm程度のリン青銅、SUSなどの金属シートであり、板金で支持され現像装置筐体に固定されている。規制ブレード105表面は、JIS B0601に基づいて測定した十点平均粗さRzが2μm以下が好ましい。図1中では規制ブレード105は現像ローラ106の回転方向に対して逆方向の力が発生する所謂カウンター方向に支持されていて、支持されていない側の端は自由端となっている。規制ブレード105には電源Vbから規制ブレードバイアスを印加することができる構成になっているが、絶縁性の材質を使用してもかまわない。
【0033】
現像ローラ106は、ステンレス等の金属からなる芯金のまわりに適度な導電性をもたせた1層以上のゴム材料で構成されている。ゴム材料は、シリコンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、天然ゴム、EPDMなど一般的に用いられるゴムである。抵抗値は、カーボンやカーボン樹脂粒子、金属粒子、イオン導電剤などを分散させることで得ることができる。現像ローラ106は電源Vaからバイアスを印加できる構成になっている。
【0034】
現像ローラ106の抵抗値は2×10の4乗〜5×10の8乗Ωが好ましい。この範囲以下になると弾性層に流れる電流が多くなり、必要な電気容量が大きくなってしまう。また、この範囲以上になると現像時に流れる電流を阻害されやすくなる。
【0035】
図6は、現像ローラ106及び供給ローラ104の抵抗値の測定方法を示した概略図である。図6では、測定対象であるローラと、ステンレス鋼からなる円筒部材50と、測定回路51を表している。円筒部材50は直径30mmで約48mm/sの速度で回転する。このとき、測定対象であるローラは円筒部材50の回転にともなって従動回転する。測定対象であるローラの端部には円筒部材50への進入量を現像ローラ106なら50μm、供給ローラ104なら1.5mm(現像装置に組み込んだ時の進入量で測定する。)に規制する端部コロ52を装着される。
【0036】
端部コロ52は、測定対象であるローラの外径よりも小さい円筒形状をしている。測定対象であるローラの両端部に印加される荷重は片側500g重ずつ、計1kg重の荷重に
より円筒部材50に押圧される。測定回路51は、電源Ein、抵抗Ro2、電圧計Eout2からなる。本測定では、Ein2の電圧を300Vとした。抵抗Ro2は100Ω〜10MΩが使用可能である。これらの測定システムにより、ローラの抵抗値Rbは次式により算出される。
Rb=Ro2{(Ein/Eout)−1}
【0037】
現像ローラ106の表面粗さの指標である算術平均粗さRaの測定は、JIS B0601に基づいて小坂研究所(株)製の表面粗さ試験機SE−30を使用した。測定点は、長手方向の左右端部に近い部分と中央部の3点を周方向に3点測定し、その合計9点の平均値を本発明における表面粗さとした。表面粗さは実施例及び比較例で様々な値を持つようにしている。
【0038】
現像ローラ106の硬度は、ASKER Cゴム硬度計を用いた。硬すぎても柔らかすぎても問題が発生するので、30〜90°が好ましい。特に、金属の規制ブレード105と硬度が90°を超える現像ローラとの組み合わせにおいては、トナー101の規制が上手くいかないうえに抵抗値の制御が難しいため電位差を設けたときに電流リークが発生して画像の乱れを引き起こす。
【0039】
供給ローラ104と現像ローラ106は進入量が0.5〜2mmになるように配置されるのが好ましい。そして、供給ローラ104と現像ローラ106は、接触部分(以下、供給ニップとする。)では、お互いの表面(周面)が逆向き(反対方向)に回転する方向に回転(移動)している。そのため、供給ローラ104付近のトナー101は供給ローラ104によって現像ローラ106上に搬送されると同時に、現像されずに現像ローラ106上に残っているトナー101は剥ぎ取られる。
【0040】
供給ローラ104によって現像ローラ106上に供給されたトナー101は、現像ローラ106の回転によって規制部に進入し、規制ブレード105で1〜3層程度の均一なトナー層になるように規制される。トナー規制時には、トナーが規制ブレード105と現像ローラ106との摺擦を受けるため、電荷を持つことができる。
【0041】
規制ブレード105によって形成された現像ローラ106上の均一なトナー層は、現像部において感光ドラム4上の静電潜像を現像する。本実施の形態では接触現像方式を想定しているので、現像ローラ106は感光ドラム4に押圧されているが、本発明は非接触現像方式においても有効である。また、現像ローラ106は感光ドラム4に対して1.3倍程度の周速比をもって回転している。現像ローラには、感光ドラム4上の露光部と非露光部の中間ぐらいの電位を電源Vaから印加することで電荷をもっているトナー101を感光ドラム4上に移行させ、潜像を現像することができる。
【0042】
(トナー)
本実施の形態で用いられるトナー101は、重合法、粉砕法等で製造されたスチレン−アクリル、ポリエステル等を結着樹脂として各色に対応する着色剤や荷電制御剤などが入った体積平均粒径が5〜10μm程度の母体に、所謂外添剤を外添したものである。ここで、外添剤は、ナノ〜ミクロンオーダーのシリカや金属酸化物や帯電しやすい樹脂などである。外添剤として、外添済みのトナーと逆極性の帯電性をもつ粒子を外添することで、トナーに凝集性を持たせたり、トナーの帯電性を安定させたりすることができる。
【0043】
作成したトナー101の体積平均粒径の測定は、(株)コールター社製のコールターカウンターTA−II型で行った。測定装置は、体積平均粒径及び個数平均粒径の出力装置とパーソナルコンピュータに接続されている。コールターカウンターによる測定は、まず1%塩化ナトリウム電解液に測定するトナーを数g分散させ、界面活性剤を数滴加える。超
音波洗浄器を用いると良い分散状態ができる。その後、100μmアパーチャーを用いてトナー101の粒径を測定した後、コンピュータによる処理を行い、粒度分布と体積平均粒径を算出する。
【0044】
トナー101の形状については、画像解析装置で測定した形状係数SF−1の値が100〜140であり、形状係数SF−2の値が100〜130であることが好ましい。また、上記の条件を満たしつつ、(SF−2)/(SF−1)の値を1.0以下にすることで、トナー101の諸特性のみならず、画像解析装置とのマッチングが極めて良好なものになる。
【0045】
上記形状係数SF−1及びSF−2は次に示すようなパラメータである。それは、まず日立製作所製FE−SEM(S−800)を用い、倍率500倍に拡大したトナー像を100個無作為抽出する。そして、その画像情報をインターフェースを介してニコレ社製画像解析装置(Luzex3)に導入して解析を行い、次式より算出して得られた値によって定義されるパラメータである。
SF−1={(MXLNG)/AREA}×(π/4)×100
SF−2={(PERI)/AREA}×(1/4π)×100
AREA:トナー投影面積
MXLNG:絶対最大長
PERI:周長
【0046】
形状係数SF−1はトナー粒子の丸さの度合いを示し、値が大きいほど球形から不定形となる。形状係数SF−2はトナー粒子の凹凸度合いを示し、値が大きいほどトナー表面の凹凸が顕著になる。特に転写性や画質面でSF−1が100〜140でSF−2が100〜130のトナーを用いると本発明の効果が底上げされる。
【0047】
上記のような構成において、各種実験をした。
【0048】
[実験1]
実験は、シアンの現像装置のみを用いて、図4、図5に示したような供給ローラ104を用いて行った。本実験では、供給ローラ104のスポンジ層の抵抗値のみ異なるものを用意した。導電性のスポンジを有する供給ローラを導電性供給ローラ(抵抗値2.0×10Ω)とし、絶縁性の供給ローラを絶縁性供給ローラとする。まず、各種粒子Pを供給ローラ104に塗布した。表1は、供給ローラ104に塗布した粒子Pと導電性及び絶縁性供給ローラの組み合わせリストである。
【0049】
【表1】



【0050】
・粒子塗布例1:体積平均粒径が0.4μmのハイドロタルサイトを導電性供給ローラに
塗布した。
・粒子塗布例2:粒子塗布例1の粒子を絶縁性供給ローラに塗布した。
・粒子塗布例3:体積平均粒径が0.4μmの酸化スズを導電性供給ローラに塗布した。・粒子塗布例4:体積平均粒径が0.5μmの酸化亜鉛を導電性供給ローラに塗布した。・粒子塗布例5:本実施の形態で説明したトナー(粒径7μm)を導電性供給ローラに塗布した。ここで、粒子塗布例5は、トナーを塗布しているために、使用初期の問題点を解消する以外は実質的に何も塗布していないことと同じである。
・粒子塗布例6:体積平均粒径0.4μmのポリエステルの樹脂粒子を導電性供給ローラに塗布した。ポリエステルの樹脂粒子にはトナーと同じ負極性になるような所謂電荷付与剤が添加してある。
【0051】
尚、粒子Pの粒径の測定には、(株)島津製作所製SALD−2000を用いた。
【0052】
供給ローラ104への塗布方法は、各粒子Pを平坦な面に適量なるべく均一にばら撒いた上に供給ローラ104を数回転がして充分に塗布した後、供給ローラ104に付着しきれなかった粒子Pをエアーで吹き飛ばす方法を採った。エアーでの吹き飛ばしが不十分だと粒子Pが供給ローラ104から遊離して現像装置内でトナー101と混ざり、トナーの物性が変化してしまう。これを防止するために、実験用の現像装置100とは別の現像装置を準備し、まずこれにあらかじめ粒子Pを塗布した供給ローラ104を装着し、約50枚のベタ画像を通紙したあとに供給ローラ104を取り出す。取り出した供給ローラ104をもう一度エアーで飛ばし、実験用の現像装置100に入れてから各種実験を行った。
【0053】
本実施の形態において、現像ローラ106上における、規制ブレード105通過後のトナーの単位面積当りの質量は、所謂吸引式ファラデーケージ法を使用して求めた。この吸引式ファラデーケージ法は、直径12mm程度の吸引口が付いた吸引部材と、吸引したトナーを採取するフィルタ部と、フィルタ部の吸引部材と反対の側から吸引する吸引装置から構成されている。吸引口を現像ローラ106に傷をつけない程度に軽く押しつけて、一定面積上のすべてのトナー101を吸引し、フィルタに採集してフィルタの重量増加分より現像ローラ106の単位面積当りの重量を計算することができる。それと同時に、外部から静電的にシールドされたフィルタに蓄積された電荷量を測定することによって、現像ローラ上の単位面積当りの電荷量を求めることもできる。
【0054】
図7は、実験結果を示すグラフである。横軸は供給ローラ104に印加する電圧Vcと現像ローラ106に印加する電圧Vaの差(Vc−Va)である供給バイアスを表している。縦軸は、上記吸引式ファラデーゲージ法で測定した単位面積当りの質量M/S[mg/cm]を表している。
【0055】
尚、規制ブレード105に印加する電圧Vbと印加現像ローラ106に印加する電圧Vaとの差(Vc−Vb)である規制ブレードバイアスは、Vc−Vb=−200Vとした。
【0056】
粒子塗布例1,3,4は供給ローラ104へのバイアスがない状態(供給バイアス0V)の時は、現像部における現像ローラ上トナー層のM/Sが低かった。しかし、供給バイアスを上げていくとトナー101を塗布した比較例よりも高いM/Sを得ることができた。また、粒子塗布例2については、供給ローラが絶縁性であるために供給バイアスにはほとんど反応しなかった。
【0057】
上記のような結果になった理由は次のように考えられる。
【0058】
粒子塗布例1〜4の粒子Pを供給ローラ104上に塗布したことでトナー101及び現
像ローラ106との摩擦が低減できたため、供給ローラ104から現像ローラ106へのトナー101の供給量が下がったためにM/Sが低下した。また、粒子塗布例1,3,4において、供給ローラ104への供給バイアスを高くしていくとM/Sが高くなっていくのは、供給ローラ周辺における摺擦で帯電したトナーが現像ローラに押し付けられる方向の電界によって動きやすくなったためと考えられる。粒子塗布例2においては、供給ローラ104が絶縁性であるために上記電界がかからなかったためM/Sのアップには至らなかった。
【0059】
一方、粒子塗布例6では、バイアスを印加していないときでも粒子塗布例5よりも濃度が上がっていて、バイアスによりさらにM/Sが高くなった。
【0060】
上記のように、導電性の供給ローラ104を使うことで、適切なバイアスを印加すれば現像ローラ106へのトナー供給量を増やすことができる。よって、供給ローラ104に粒子Pを塗布した場合のM/Sの低下を補う必要があるなら、供給バイアスをトナー101と同極性側に大きくすればよい。
【0061】
[実験2]
各粒子Pを塗布した供給ローラ104を使用して同条件で継続使用したときにトナー劣化がどうなるかを測定した。トナー劣化は、トナー劣化との相関が強い転写効率をその指標とする。トナー101を150g充填したシアンの現像装置100を用いて印字率1%で、途中転写効率を算出するためのサンプルをとりながら2枚ごと(2ページ/1ジョブ)の間欠耐久試験を行った。
【0062】
尚、規制ブレードバイアスは実験1と同様にVc−Vb=−200Vとした。
【0063】
転写効率の測定方法は、まずベタ画像形成中に画像形成装置1の電源を切り、感光ドラム4上の転写残トナーを透明なテープで剥がし取る。そのテープと何も付着していない状態のテープを同じ白い記録材上に貼り付ける。この2種類のテープの濃度を測定し、その差分をとることで転写残トナーが数値化される。この値をAとする。
【0064】
他方、記録材上に転写されたトナー101は、ベタ画像と記録材の濃度を測定し、その差分をとることで数値化される。この値をBとする。転写効率をこれらA,Bを使って表すと、転写効率=B×100/(A+B)となる。尚、濃度の測定にはいずれも、X−Rite社製の分光濃度計/色彩計500シリーズを用いた。
【0065】
表2は、粒子塗布例と供給バイアスを組み合わせて作製した実施例と比較例の内容である。
【0066】
【表2】



【0067】
<実施例1>粒子塗布例1において、供給バイアス(Vc−Va)を−200Vとした。<実施例2>粒子塗布例1において、供給バイアス(Vc−Va)を0Vとした。
<実施例3>粒子塗布例2において、供給バイアス(Vc−Va)を−200Vとした。<実施例4>粒子塗布例3において、供給バイアス(Vc−Va)を−200Vとした。<実施例5>粒子塗布例4において、供給バイアス(Vc−Va)を−200Vとした。<比較例1>粒子塗布例5において、供給バイアス(Vc−Va)を−200Vとした。<比較例2>粒子塗布例6において、供給バイアス(Vc−Va)を−200Vとした。
【0068】
図8は、各種粒子Pを塗布した供給ローラ104を使用した結果を通紙枚数と転写効率の関係で示したグラフである。横軸は通紙枚数[枚]、縦軸は転写効率[%]を示している。
【0069】
本実験では、塗布粒子P及びバイアス条件を変えて、実施例及び比較例の合計7種類の継続使用による耐久試験を行い、転写効率の推移を調べた。
【0070】
図8から、実施例1〜5は比較例1とくらべて転写効率が落ちにくいことがわかる。一方、比較例2は比較例1とくらべて早い段階で転写効率が落ち、転写効率が80%前後になると所謂ボソ画像が発生した。転写効率の低下とトナー101の劣化には強い関連性があるので、実施例1〜5は比較例1〜2とくらべてトナー劣化が進んでいるといえる。これは、実施例1〜5で塗布した粒子Pによるトナー劣化の抑制効果によるものであると考えられる。
【0071】
実施例1と実施例2の違いは、供給バイアスである。実験1から、実施例2は供給バイアスが印加されていない分、現像ローラ上のトナー量M/S[mg/cm]が低い。また、実施例3は供給バイアスが印加されているが、供給ローラ104に絶縁性のスポンジを使用しているため実質的なバイアスの効果はほとんど無くM/Sが低い。
【0072】
これら実施例1〜3の結果から、現像ローラ上のトナー量と転写効率にはほぼ相関がないとみなすことができる。したがって、粒子Pを供給ローラ104に塗布したことで画像濃度が不充分である場合には導電性の供給ローラ104を使用して、トナーと同極性側に大きなバイアスを供給バイアスとして印加すればよい。画像濃度が充分である場合には、導電性の供給ローラの電位を現像ローラ106と等電位にしたり、絶縁性の供給ローラを使用しても、転写効率への影響はほとんど無い。
【0073】
このように、供給ローラ104が絶縁性、もしくは導電性で供給バイアスが0Vの場合に、次のような粒子を選択することで、トナー劣化を抑制することができる。即ち、供給ローラ104にトナー101以外の粒子Pを塗布した時の現像ローラ上のトナー量M/S[mg/cm]が、粒子Pとしてトナー101を塗布した時のM/Sよりも低くなるようなトナー以外の粒子Pを選択することで、トナー劣化を抑制できる。
【0074】
耐久性については供給バイアスで変化するものではないので、不必要であれば供給バイアスを印加しなくとも良い。M/S[mg/cm]が低いためにプリントした画像濃度が低い場合には、供給ローラ104に現像ローラ106に対してトナー101と同極性側に大きく印加することによりトナー劣化を抑制しつつ画像濃度を高くすることができる。
【0075】
尚、実施例中では供給ローラ104に同時に塗布する粒子Pは1種類としたが、2種類以上を混ぜて使用しても良い。その際、比較例で使用した粒子と混ぜて使用することで、雑な塗布方法でも実施例の粒子の過剰塗布を防止し、流動性のない実施例の粒子でも塗布しやすくできる効果がある。
【0076】
上記の実験結果より、供給ローラ104にあらかじめ粒子Pを塗布した時に現像ローラ106上の単位面積当りのトナー層重量M/Sが低下する特性のある粒子Pは、現像装置100の継続使用により進行するトナー劣化を抑制する。
【0077】
よって、転写効率が高い状態を維持できるため、転写効率の低下による所謂ボソ画像を抑制することができる。粒子を塗布することによる画像濃度低下は、供給ローラにバイアスを印加することで解決できる。また、供給バイアスと実施例の粒子を組み合わせることで、M/Sをより高くコントロールすることもできる。
【0078】
以上説明したように本実施の形態では、供給ローラ104に塗布する粒子として、供給ローラ104に塗布した場合の現像部における単位面積当り質量m’と、塗布していない場合の単位面積当り質量mの関係が、m’<mとなる粒子を塗布している。特定の粒子を供給ローラ104に塗布した場合に、m’<mとなる理由は、供給ローラ104とトナー及び現像ローラ106との摩擦が軽減され、供給ローラ104から現像ローラ106へトナーを搬送する能力が低下したためである。これは、単に粒径が小さい粒子が部材同士の接触面積を減らす所謂スペーサー効果だけではなく、粒子のもつ特性が大きく効いていると考えられる。
【0079】
本実施の形態における実験により、トナーを搬送する能力が低下する粒子を塗布した場合のほうが、よりトナー劣化を抑制できることがわかった。
【0080】
また、単位面積当りの質量m’が低下した場合、導電性の供給ローラ104に所定のバイアスを印加することで、低下した単位面積当りの質量m’を高めることができる。これは、供給ローラ104と現像ローラ106との摺擦などにより摩擦帯電したトナーが電界によって現像ローラ106上へ搬送されやすくなったためであると考えられる。また、供給ローラ104に塗布した粒子がトナーと逆極性に帯電しやすい場合は、電界によって供給ローラ104に引き寄せられ、継続使用時に脱落しにくくなると考えられる。
【0081】
また、複数種類の粒子を混ぜてから供給ローラ104に塗布することにより、塗布のしやすさを高めることができる。
【0082】
また、粒径と付着力の観点から考えて、トナーよりも粒子のほうが供給ローラ104に付着しやすくなるため、供給ローラ104に粒子を塗布した方がより高い効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】現像装置を示した概略断面図である。
【図2】画像形成装置を示した概略断面図である。
【図3】プロセスカートリッジを示した概略断面図である。
【図4】供給ローラの概略断面図である。
【図5】供給ローラの拡大断面図である。
【図6】ローラの抵抗測定方法を示した概略図である。
【図7】単位面積当りのトナー層重量と供給バイアスの関係を示した図である。
【図8】転写効率と通紙枚数の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0084】
1 画像形成装置
2 プロセスカートリッジ
100 現像装置
101 トナー
104 供給ローラ
105 規制ブレード
106 現像ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤担持体と、
前記現像剤担持体上に現像剤を搬送する供給部材と、
前記供給部材から搬送された前記現像剤担持体上の現像剤を規制する規制部材と、
を備えた現像装置において、
前記供給部材には粒子が予め塗布されており、
前記粒子は、
前記供給部材が絶縁性若しくは導電性で前記現像剤担持体と同電位である場合に、
前記粒子を前記供給部材に塗布した場合の前記現像剤担持体上における前記規制部材通過後の現像剤の単位面積当りの質量m’と、
前記粒子を前記供給部材に塗布していない場合の前記現像剤担持体上における前記規制部材通過後の現像剤の単位面積当りの質量mと、
の関係がm’<mとなる粒子である
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記供給部材が導電性であって、
前記供給部材に電圧を印加可能な電圧印加手段を備え、
前記電圧印加手段は、前記現像剤担持体に印加される電圧よりも、現像剤の帯電極性側に大きい電圧を前記供給部材に印加する
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記供給部材に塗布する粒子の主成分が、ハイドロタルサイトと、酸化錫と、酸化亜鉛とのうちのいずれかである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記供給部材に塗布する粒子が、2種類以上の粒子を混ぜたものである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記粒子の体積平均粒径が、現像剤の体積平均粒径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記供給部材と前記現像剤担持体とは、それぞれ回転可能に設けられ、互いの周面が接触して反対方向に回転する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の現像装置を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−139431(P2008−139431A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323850(P2006−323850)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】