説明

現像装置および画像形成装置

【課題】画像が濃くなるのに伴い現像剤のトナーの供給量が増加してもトナーの帯電量低下が抑えられる現像装置を提供する。
【解決手段】現像装置において、静電潜像が表面に形成される被現像体の表面に現像剤を供給する現像剤供給部と、現像剤供給部に収容されている現像剤を現像剤供給部から入手し、入手した現像剤を第1搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を現像剤供給部に戻す第1攪拌部と、現像剤供給部に収容されている現像剤を現像剤供給部から入手し、その入手した現像剤を、第1搬送路と並行した第2搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を現像剤供給部に戻す、入手してから戻すまでの現像剤の攪拌量が第1攪拌部における攪拌量よりも多い第2攪拌部と、第1攪拌部の動作と第2攪拌部の動作を、被現像体に形成される静電潜像における画像としての濃さに応じた動作に制御する動作制御部とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、帯電されたトナーを含んだ現像剤で静電的な潜像を現像することでトナー像を形成する画像形成装置や、その画像形成装置に用いられる現像装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、感光体にトナーを供給する現像スリーブと、この現像スリーブにトナーを供給する現像剤収納部とを備え、現像剤の消費量に応じて現像剤収容部の底板部の傾斜角度を変化させる構成が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、現像剤を攪拌しつつ現像スリーブに現像剤を搬送する攪拌・搬送手段と、この攪拌・搬送手段に供給される現像剤を攪拌する攪拌手段とを備え、印字率に応じて攪拌手段の回転量を制御する構成が示されている。
【0005】
また、特許文献3には、トナーコンテナから補給口を通じてトナーが補給される現像装置において、補給口の開口面積を印字率に応じて可変するシャッタを備えた構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−194957号公報
【特許文献2】特開2006−235271号公報
【特許文献3】特開2008−241954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、画像の濃さの変化に伴うトナーの帯電量の変動が抑えられる現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る現像装置は、
静電潜像が表面に形成されこの静電潜像が現像剤で現像される被現像体のこの表面にこの現像剤を供給する、この現像剤を内部に収容した現像剤供給部と、
上記現像剤供給部に収容されている現像剤をこの現像剤供給部から入手し、その入手した現像剤を第1搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を上記現像剤供給部に戻す第1攪拌部と、
上記現像剤供給部に収容されている現像剤をこの現像剤供給部から入手し、その入手した現像剤を、上記第1搬送路と並行した第2搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を上記現像剤供給部に戻す、入手してから戻すまでの現像剤の攪拌量が上記第1攪拌部における攪拌量よりも多い第2攪拌部と、
上記第1攪拌部の動作と上記第2攪拌部の動作を、上記被現像体に形成される静電潜像における画像としての濃さに応じた動作に制御する動作制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る現像装置は、上記第1攪拌部および上記第2攪拌部のそれぞれが、棒の回りに螺旋状の羽根が設けられ、回転によって上記現像剤を、搬送するとともに攪拌する攪拌部材を有するものであり、
上記第2攪拌部が有する攪拌部材の羽根の外径が、上記第1攪拌部が有する攪拌部材の羽根の外径より大きいことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る現像装置は、上記第1攪拌部および上記第2攪拌部のそれぞれが、棒の回りに螺旋状の羽根が設けられ、回転によって上記現像剤を、搬送するとともに攪拌する攪拌部材を有するものであり、
上記第2攪拌部が有する攪拌部材の羽根の螺旋のピッチが、上記第1攪拌部が有する攪拌部材の羽根の螺旋のピッチより狭いことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る画像形成装置は、
静電潜像が表面に形成されこの静電潜像が現像剤で現像される被現像体と、
上記被現像体の上記表面に上記現像剤を供給する、この現像剤を内部に収容した現像剤供給部と、
上記現像剤供給部に収容されている現像剤をこの現像剤供給部から入手し、その入手した現像剤を第1搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を上記現像剤供給部に戻す第1攪拌部と、
上記現像剤供給部に収容されている現像剤をこの現像剤供給部から入手し、その入手した現像剤を、上記第1搬送路と並行した第2搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を上記現像剤供給部に戻す、入手してから戻すまでの現像剤の攪拌量が上記第1攪拌部における攪拌量よりも多い第2攪拌部と、
上記第1攪拌部の動作と上記第2攪拌部の動作を、上記被現像体に形成される静電潜像における画像としての濃さに応じた動作に制御する動作制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る現像装置および請求項4に係る画像形成装置は、第2攪拌部および動作制御部を有していない場合と比較して、像の濃さの変化に伴うトナーの帯電量の変化が抑えられる。
【0013】
請求項2および請求項3に係る現像装置は、本構成を有していない場合と比較してより簡潔な構造で第2攪拌部における攪拌量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置の第1実施形態であるプリンタの概略構成図である。
【図2】図1に示す現像器をレーザ露光器側から透視した透視図である。
【図3】図2に示す現像器の3−3線に沿った断面を示す断面図である。
【図4】図2に示す現像器を、現像ロール側とは反対側から透視した透視図である。
【図5】図4に示す現像器において、第2攪拌部33に切換えがなされた状態を示す透視図である。
【図6】中央制御部による現像器の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の現像装置および画像形成装置に対する具体的な実施形態を、以下図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、画像形成装置の第1実施形態であるプリンタの概略構成図である。
【0017】
図1に示すプリンタ1は、矢印A方向に回転する感光体10と、この感光体10の表面に電荷を付与する帯電器11と、外部から送信されてきた画像データに基づいたレーザ光を生成するレーザ露光器12とを備えている。これら帯電器11とレーザ露光器12によって感光体10の表面に静電的な潜像が形成される。感光体10は像を保持する像保持体の機能を有し、帯電器11およびレーザ露光器12は潜像形成部の機能を有する。
【0018】
図1に示すプリンタ1は更に、トナーを含む現像剤を内部に収容し、感光体10表面の潜像をその現像剤中のトナーで現像することでトナー像を形成する現像器30と、現像器30にトナーを補給する補給器20とを備えている。この現像器30は、本発明の現像装置の一実施形態に相当する。また、現像器30によって表面が現像される感光体10は、本発明にいう被現像体の一例に相当する。現像器30は、現像剤を表面に保持し、感光体10に対向して回転することで現像剤を感光体10との間に搬送する現像ロール311を有している。この現像ロール311は、感光体10の表面に沿って延びていて、現像剤を、その延びた方向に交わる方向へと搬送する。この現像器30に収容されている現像剤には、トナーの他に、このトナーとの摩擦によりトナーを摩擦帯電させる電荷付与粒子であり磁性粒子でもある磁性キャリアも含まれている。さらに現像剤には、トナーの帯電性を制御する帯電制御剤等というような外添剤も含まれている。
【0019】
更に、プリンタ1は、記録用紙を収容した用紙カセット16と、用紙カセット16から記録用紙を引き出して矢印B方向に搬送する用紙搬送装置17と、搬送されてきた記録用紙上に感光体10上のトナー像を転写する転写ロール14と、記録用紙上のトナー像を加熱および加圧することでその記録用紙上にそのトナー像を定着させる定着器15とを備えている。
【0020】
更にまた、プリンタ1は、プリンタ1内の各部の動作を制御する中央制御部100と、感光体ロール10の表面から不要なトナーなどを除去するクリーニング装置50とを備えている。クリーニング装置50は、感光体ロール10表面の、トナー像の転写を終えた部分に対向した位置、即ち、矢印Aの向きの回転における転写ロール14よりも下流側、かつ帯電器11よりも上流側の位置に配備されており、クリーニングブレード51と付着物収容箱52を有している。クリーニングブレード51は、感光体10の回転中心に沿った全幅にわたって先端が感光体10表面に接触していて、トナーや紙粉などといった付着物を掻き取って感光体10表面から除去するものであり、付着物収容箱52は、除去された付着物を収容するものである。中央制御部100は、本発明にいう、動作制御部の一例に相当する。
【0021】
ここで、このプリンタ1における画像形成の動作の流れを簡単に説明する。
【0022】
図1に示すプリンタ1では、感光体10の表面に帯電器11により電荷が付与され、電荷が付与された感光体10の表面に、外部から送信されてきた画像データに基づいたレーザ光がレーザ露光器12により照射される。この照射により、感光体10の表面に付与された電荷の一部が除電されて、感光体10の表面に静電的な潜像が形成される。
【0023】
現像器30に収容されている現像剤は現像ロール311によって、現像器30と感光体10との間の領域に運ばれ、運ばれた現像剤中のトナーが感光体10の表面の潜像に静電的に付着することでこの潜像は現像される。この現像により得られたトナー像が、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写ロール14によって転写される。そして、記録用紙上のトナー像が定着器15により加熱および加圧されることによって溶融されて記録用紙上に定着される。
【0024】
このような動作によってプリンタ1は記録用紙上に画像を形成する。なお、このプリンタ1は、モノクロ画像専用機であるが、本発明は、カラー画像機に適用されてもよい。
【0025】
以下、現像器30の詳細構造について説明する。
【0026】
図2は、図1に示す現像器をレーザ露光器側から透視した透視図である。また図3は、図2に示す現像器の3−3線に沿った断面を示す断面図である。
【0027】
現像器30は、現像剤供給部31と、第1攪拌部32と、第2攪拌部33とを備えている。
【0028】
[現像剤供給部]
現像剤供給部31は、感光体10の表面に現像剤を供給する、現像剤を内部に収容した部位であり、上述した現像ロール311と、現像剤を収容し搬送する供給搬送路312と、供給搬送路312の内部で現像剤を攪拌しながら搬送する攪拌搬送部材313とを備えている。
【0029】
図3に示すように、現像ロール311は、矢印C方向に回転する円筒部材311Aと、この円筒部材311Aの内部に、この円筒部材311Aとは独立に固定された永久磁石ロール311Bとを有している。永久磁石ロール311Bは、円筒部材311Aの周回方向に複数の磁極が配列されたものであり、現像剤の吸着および解放を規定する磁力分布を有している。現像ロール311は、供給搬送路312から一部が露出した状態に保持されており、円筒部材311Aはモータ311M(図2参照)に駆動されて回転するのに伴って、供給搬送路312の内部と外部とを交互に通過する。また、円筒部材311Aには、永久磁石ロール311Bの磁力分布により、供給搬送路312内を通過中に表面に現像剤が供給され、この供給された現像剤を、現像ロール311と感光体10との対面箇所へと搬送する。
【0030】
図2に示すように、供給搬送路312および攪拌搬送部材313は、現像ロール311の回転軸が延びる幅方向Wに延びている。攪拌搬送部材313は、螺旋状の羽根(フィン)313Bが棒313Aの周囲に備えられた構造を有している。この棒313Aに、モータ313Mによって回転駆動力が加えられることで攪拌搬送部材313は棒313Aを中心として回転する。攪拌搬送部材313が回転することで、供給搬送路312内の現像剤は、幅方向Wに沿って矢印Dに示す向きに搬送される。現像剤は、供給搬送路312内を搬送される途中でその一部が現像ロール311に供給される。現像剤は、攪拌搬送部材313によって搬送されながら攪拌もされる。
【0031】
[第1攪拌部]
第1攪拌部32および第2攪拌部33のそれぞれは、現像剤供給部31に収容されている現像剤を現像剤供給部31から入手し、その入手した現像剤を攪拌しながら搬送して、現像剤供給部31に戻す。これら2つの攪拌部のうち、第2攪拌部33は、予め定めた値よりも高い画像密度を有する高画像密度の画像の現像で使用されるものであり、第1攪拌部32は、高画像密度以外の通常の画像密度の画像の現像で使用されるものである。現像器30内の現像剤は、現像剤供給部31内を矢印Dに下流側まで搬送された後、第1攪拌部32または第2攪拌部33を経由して供給搬送路312の上流側に戻され、現像器30内を循環するように移動する。
【0032】
第1攪拌部32は、供給搬送路312および攪拌搬送部材313を挟んで、現像ロール311の反対側に設けられている。第1攪拌部32は、第1搬送路322および攪拌搬送部材323を有する。
【0033】
第1搬送路322および攪拌搬送部材323は、現像剤供給部31の供給搬送路312および攪拌搬送部材313と並行して幅方向Wに延びている。供給搬送路312と第1搬送路322とは、幅方向Wに延びた立壁34によって仕切られている。ただし、立壁34の幅方向Wにおける両端は開放され2つの通路34a,34bが形成されている。
【0034】
第1攪拌部32の攪拌搬送部材323は、現像剤供給部31の攪拌搬送部材313と同様に、螺旋状の羽根(フィン)323Bが棒323Aの周囲に備えられた構造を有しており、中央制御部100(図1参照)の制御を受けるモータ323Mによって回転駆動力が加えられることで、棒323Aを中心として回転する。攪拌搬送部材323は、第1搬送路322内の現像剤を攪拌しながら搬送する。攪拌搬送部材323は、第1搬送路322内の現像剤を、供給搬送路312内とは反対の、矢印Eに示す向きに搬送するよう回転する。
【0035】
[第2攪拌部]
第2攪拌部33は、現像剤供給部31および第1攪拌部32よりも下に配置されている。
【0036】
図4は、図2に示す現像器を、現像ロール311側とは反対側から透視した透視図である。図4には、第1攪拌部32の下にある第2攪拌部33が示されている。図2〜4を参照して説明を続ける。
【0037】
第2攪拌部33は、第2搬送路332および攪拌搬送部材333を有する。
【0038】
第2搬送路332および攪拌搬送部材333は、第1攪拌部32の第1搬送路322および攪拌搬送部材323と並行して幅方向Wに延びている。すなわち、第2攪拌部33の第2搬送路332および攪拌搬送部材333、第1攪拌部32の第1搬送路322および攪拌搬送部材323、ならびに現像剤供給部31の供給搬送路312および攪拌搬送部材313は、互いに並行して現像ロール311の回転軸が延びる幅方向Wに延びている。
【0039】
[第2搬送路のゲート]
第2搬送路332と、第1搬送路322および供給搬送路312とは、第1搬送路322の底板35によって仕切られている。ただし、底板35のうち、第2搬送路332の幅方向Wにおける両端には、2つの穴35a,35bが形成されている。これら2つの穴35a,35bは、立壁34の幅方向Wにおける両端に設けられた、第1搬送路322と供給搬送路312との間を繋ぐ通路34a,34bの付近に配置されている。
【0040】
第2搬送路332に向けて開口した2つの穴35a,35bのそれぞれには、各穴35a,35bを閉鎖および開放する各ゲート部材36a,36bが設けられている。ゲート部材36a,36bは板状の部材であり、中央制御部100(図1参照)の制御を受けるソレノイド駆動装置361a,361bで駆動されることで、穴35a,35bを塞ぐ位置と、開放する位置との間でスライドする。図4には、ゲート部材36a,36bが穴35a,35bを塞いだ状態が示されている。
【0041】
第2攪拌部33の攪拌搬送部材333は、螺旋状の羽根(フィン)333Bが棒333Aの周囲に備えられた構造を有しており、中央制御部100(図1参照)の制御を受けるモータ333Mによって回転駆動力が加えられることで、棒333Aを中心として回転する。攪拌搬送部材333は、第2搬送路332内の現像剤を攪拌しながら搬送する。攪拌搬送部材313は、第2搬送路332内の現像剤を、第1搬送路322内と略同じ、矢印Fに示す向きに搬送するよう回転する。
【0042】
[攪拌量の差]
ここで、図4に示すように、第2攪拌部33の攪拌搬送部材333は、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323と同様に、螺旋状の羽根333Bを有しており、また、幅方向Wの長さもほぼ等しい。しかし、第2攪拌部33の攪拌搬送部材333は、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323に比べて、螺旋状の羽根333Bの外径dが大きく、また、羽根333Bの螺旋のピッチpが小さい。
【0043】
羽根333Bの外径dがより大きい第2攪拌部33の攪拌搬送部材333は、仮に第1攪拌部32の攪拌搬送部材323と同じ回転数で回転した場合に、羽根333Bの外周付近の移動速度が、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323の場合に比べて早い。このため、羽根333Bで攪拌される現像剤の攪拌量がより多い。
【0044】
また、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323と比べ、螺旋のピッチpがより小さい第2攪拌部33の攪拌搬送部材333は、回転数あたりの現像剤の搬送距離が小さい。このことに対応して、第2攪拌部33の攪拌搬送部材333は、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323と同等の、時間当たり距離を搬送する程度に、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323より速い回転速度で回転する。このため、現像剤の攪拌量は第1攪拌部32の攪拌搬送部材323より多い。
【0045】
[現像器30内の現像剤の全体的な流れ − 第1攪拌部による攪拌]
現像器30内の現像剤の流れを説明する。まず、図4に示すように、ゲート部材36a,36bが穴35a,35bを塞いだ状態で、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323が動作し、第2攪拌部33の攪拌搬送部材333が停止している場合について説明する。
【0046】
この場合、第1攪拌部32は、現像剤供給部31内を矢印Dで示す向きに搬送された現像剤を、通路34aを介して現像剤供給部31から入手し、その入手した現像剤を第1攪拌部32の第1搬送路322上で攪拌しながら搬送する。第1搬送路322の上流部分には、補給器20(図1参照)から続くトナー補給管21aが接続されており、トナーが補給される。第1攪拌部32は、補給されたトナーを攪拌搬送部材313によって攪拌しながら矢印Eで示す向きに搬送する。攪拌搬送部材313によってトナーと磁性キャリアとが攪拌されることで、第1搬送路322の内部でトナーがマイナス帯電し、磁性キャリアはプラス帯電する。このため、マイナス帯電したトナーは磁性キャリアに静電的に付着する。これにより、第1搬送路322の内部では、トナーと磁性キャリアが渾然一体となっている。
【0047】
第1攪拌部32は、攪拌後の現像剤を、通路34bを介して、現像剤供給部31の矢印D(図2参照)で示す方向の搬送における上流に戻す。現像剤供給部31では、現像剤が、現像ロール311を介して感光体10に供給され、現像剤中のトナーが感光体10に付着して消費される。現像剤供給部31の下流には、トナーの濃度が薄くなった現像剤が搬送されてくる。このようにして、現像剤が、現像剤供給部31と第1攪拌部32とを循環するように移動する。
【0048】
補給器20によるトナーの補給量は、現像によって消費されたトナーを補う量になるように、上述した中央制御部100によって制御されている。具体的には、図示を省略した濃度センサによって現像器30内のトナー濃度が検知されていて、このトナー濃度が目標濃度に一致するように補給量が制御されている。画像の画像密度が高いほど、現像によって消費されるトナーの量が増加し、より多くのトナーが補給器20から現像器30に補給される。
【0049】
現像器30に補給されたトナーは、第1攪拌部32で、通路34aから入手された現像剤と混合され、攪拌搬送部材323によって現像剤中の磁性キャリアとともに攪拌されることで帯電し、現像剤供給部31に戻される。ここで、現像器30に補給される、帯電していないトナーの量が増加すると、攪拌量が相対的に不足し、第1攪拌部32によって攪拌されても、帯電量が不足したトナーが増加するという問題が生じる。また、第1攪拌部32では、帯電量が極端に不足したトナーや、逆極化した逆極トナーも混在した状態となり得る。その理由としては次のように考えられる。画像密度の低い画像形成が長く続き、新たなトナーの補給があまり行われない状況も続くと、既存のトナーと磁性キャリアとの度重なる攪拌により、トナー表面の外添剤がトナー表面に対して埋没あるいは離脱することとなり、現像器内部のトナーの帯電性能の劣化が早まる。帯電性能が劣化したトナーは、磁性キャリアと摩擦されても帯電量の上昇は鈍い。ここで例えば高画像密度の画像形成が行われると、多量の新たなトナーが供給されることとなる。供給される新たなトナーは、帯電性能が劣化トナーよりも高く、未だ帯電されていないトナーである。このため、現像器30に収容されている劣化したトナーが有する電荷は、新たに供給されてきたトナーに急速に奪い取られる。そして、現像器30内の現像剤は、新たに供給されてきたトナーに電荷を奪われた上に、劣化のために磁性キャリアとの摩擦によっても帯電量の上昇が鈍い低帯電トナーと、電荷を奪われたことで逆極化した逆極トナーも混在した状態となる。
【0050】
このように現像剤供給部31に戻されるトナーの帯電量が不足すると、感光体10上の静電潜像に付着せず、白抜けと称する画像欠陥が生じ、画像の品質が低下する可能性が生じる。また、逆極性に転じた逆極トナーは、感光体10の表面に形成された潜像以外の部分である背景領域に付着してカブリの原因となり、画像の品質が低下する可能性が生じる。
【0051】
ここで、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323の回転を単純に高速にした場合には、攪拌搬送部材323による現像剤の搬送の速度が速くなり、攪拌搬送部材323による搬送量すなわち攪拌搬送部材323に戻される現像剤の時間当たりの量は増加するものの、攪拌搬送部材323による現像剤の攪拌量は変わらない。むしろ攪拌搬送部材323を短い時間で通過するため却って帯電量が減少するおそれもある。
【0052】
本実施形態の現像器30では、第1攪拌部32の動作と第2攪拌部33の動作が、静電潜像における画像としての濃さに応じた動作に制御される。ここで、画像としての濃さとは、現像によって形成されたトナー像あるいは記録用紙上に形成される画像のうちトナーの部分の割合を示す画像密度であり、静電潜像については、レーザ露光器12による潜像形成時に光が照射される部分の割合である。画像密度は、形成される画像に応じて異なり、例えば、記録用紙上の、画像を形成し得る領域全体がトナーで黒く塗りつぶされる場合(ベタ)が最も高い。静電潜像における画像としての濃さ、すなわち画像密度は、中央制御部100によって画像データから把握される。
【0053】
[第2攪拌部33による攪拌]
図5は、図4に示す現像器において、第2攪拌部33に切換えがなされた状態を示す透視図である。
【0054】
本実施形態の現像器30では、感光体10に形成される静電潜像の画像としての濃さが濃い場合には、補給器20から受けたトナーの攪拌を担う攪拌部が、中央制御部100の制御によって、第1攪拌部32から第2攪拌部33に切り換えられる。具体的には、図4に示したゲート部材36a,36bが退避して、図5に示すように穴35a,35bを開放する。また、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323が停止し、第2攪拌部33の攪拌搬送部材333が動作する。
【0055】
この場合、第2攪拌部33は、現像剤供給部31内(図2参照)を矢印Dで示す向きに搬送された現像剤を、穴35aを介して現像剤供給部31から入手する。具体的には、現像剤が、穴35aから重力によって第2攪拌部33の第2搬送路332に落下してくる。第2攪拌部33は、入手した現像剤を第2搬送路332上で攪拌しながら搬送する。第2搬送路332の上流部分には、補給器20(図1参照)から続くトナー補給管21b(図3参照)が接続されており、トナーが補給される。第2攪拌部33は、補給されたトナーを攪拌搬送部材333によって攪拌しながら矢印Fで示す向きに搬送する。攪拌搬送部材333によってトナーと磁性キャリアとが攪拌されることで、第2搬送路332の内部でトナーおよび磁性キャリアが帯電する。
【0056】
第2攪拌部33は、攪拌後の現像剤を、穴35bを介して現像剤供給部31の、矢印D(図2参照)で示す搬送の方向の上流に戻す。より詳細には、第2攪拌部33によって矢印Fで示す方向に搬送された現像剤が穴35bを通って押し上げられ、現像剤供給部31に戻される。このようにして、現像剤が、現像剤供給部31と第2攪拌部33とを循環するように移動する。
【0057】
第2攪拌部33の攪拌搬送部材333は、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323に比べて羽根の螺旋のピッチが狭い分だけ速く回転している。例えば、第2攪拌部33における攪拌搬送部材333の羽根の螺旋のピッチが、第1攪拌部32における攪拌搬送部材323の羽根の螺旋のピッチに対し20%狭い場合、回転速度は20%増しとする。これで、現像剤が第2攪拌部33を通過する時間と第1攪拌部32を通過する時間とが合わせられる。
【0058】
第2攪拌部33の攪拌搬送部材333は、先に説明したように、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323に比べて、螺旋状の羽根333Bの外径dが大きく、また、羽根333Bの螺旋のピッチpが小さい。このため、第2攪拌部33の攪拌搬送部材333は、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323に比べて、現像剤を入手してから戻すまでの現像剤の攪拌量が多い。
【0059】
攪拌を担う攪拌部が、第1攪拌部32から第2攪拌部33に切り換えられることによって、高画像密度の画像の形成に伴い多量の新たなトナーが供給されても、トナーの攪拌量が増加するので、第1攪拌部32で攪拌される場合に比べ、帯電量の低下が少ない。したがって、画像欠陥が生じることが抑えられる。また、新たなトナーの供給が少量に戻った場合には、攪拌を担う攪拌部が第2攪拌部33から第1攪拌部32に切り換えられることによってトナーの攪拌量が減少するので、トナーの過剰な帯電やトナーの摩耗による帯電性能の劣化が少ない。
【0060】
[現像器の制御]
図6は、中央制御部による現像器の制御を示すフローチャートである。
【0061】
中央制御部100は、外部から画像データが送信されてくると、図6に示す一連の処理を実行する。
【0062】
外部から画像データが送信されてくると、中央制御部100は、まず現像剤供給部31の動作を開始させる(ステップS11)。より詳細には、現像ロール311および攪拌搬送部材313をそれぞれ回転させる。
【0063】
次に、中央制御部100は、外部から送信されてきた画像データを解析し、画像データの像密度が予め定めた値以上か否か、すなわち、レーザ露光器12(図1参照)によって感光体10表面に形成させる潜像の画像としての濃さが予め定めた濃さ以上に濃いか否かを判別する(ステップS12)。ここでは、像密度が20%以上か否か判別される。
【0064】
像密度が20%以上の場合(ステップS12でYes)、中央制御部100は、像密度が予め定めた値以上の画像を、予め定めた枚数以上連続して形成するか否かを判別する(ステップS13)。ここでは、像密度が20%以上の画像を連続して50枚以上の用紙に形成するか否か判別される。
【0065】
像密度が20%以上の画像を連続して50枚以上の用紙に形成する場合(ステップS13でYes)、現像によって多量のトナーが消費され、消費量に相当する多量の新たなトナーが現像器30に補給されることになる。したがって、この場合、中央制御部100は、高画像密度用攪拌部材である第2攪拌部33の攪拌搬送部材333の回転を開始させ(ステップS14)、また、ゲート部材36a,36bを、穴35a,35bを開放(オープン)する位置に移動させる(ステップS15)。
【0066】
この後、画像形成の処理を行う(ステップS16)。現像器30に関しては、感光体10の表面に形成された潜像を現像剤で現像させる。この処理では、像密度が20%以上となる画像の潜像を用紙50枚分以上連続して現像する。このため、多量のトナーが現像で消費され、消費量に相当する多量の新たなトナーが現像器30に補給されてくる。この新たなトナーは、トナーの攪拌量が第1攪拌部32よりも多い第2攪拌部33によって攪拌されるため、第1攪拌部32で攪拌される場合に比べ、帯電量の低下が小さい。この結果、用紙に形成される画像において、白抜けと称する画像欠陥が少ない。
【0067】
画像形成の処理が終了すると、中央制御部100は、ゲート部材36a,36bを、穴35a,35bを塞ぐ(クローズ)位置に移動させる(ステップS17)。つまり、ゲート部材36a,36bは、初期位置(デフォルト)において、穴35a,35bを塞ぐ位置となっており、必要とされる場合にのみ(ステップS15)開放位置に移動している。
【0068】
この後、中央制御部100は、回転している攪拌搬送部材および現像ロール311の動作を停止し(ステップS18)、一連の処理を終了する。
【0069】
上記ステップS12,S13の処理で、像密度が20%以上の画像を50枚以上の用紙に連続して形成するのでない場合(ステップS12でNoまたはS13でNo)、中央制御部100は、通常画像密度用攪拌部材である第1攪拌部32の攪拌搬送部材323の回転を開始させ(ステップS19)、画像形成の処理を行う(ステップS20)。この場合には、現像で消費されるトナーは、ステップS16の処理で説明した場合に比べ少ない。消費に対応して供給される新たなトナーは、トナーの攪拌量が第2攪拌部33よりも少ない第1攪拌部32によって攪拌されるが、新たなトナーの供給量も少ないため、第1攪拌部32の攪拌によって、現像に必要な帯電量が得られる。また、トナーの過剰な帯電や、現像で消費されずに現像器30内に残るトナーの、摩耗による劣化が少ない。
【0070】
なお、上述した実施形態では、本発明の現像装置の例として、穴を開閉するシャッタを備え、このシャッタに現像剤を案内させる構成を示したが、本発明の現像装置はこれに限られるものではなく、例えば、現像装置はシャッタを備えておらず、攪拌搬送部材の回転の制御のみによって、現像剤の流れを案内させるものであってもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、本発明の動作制御部の例として、現像剤の攪拌を担う攪拌部を第1攪拌部32と第2攪拌部33との間で切り換える処理を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば動作制御部は、第1攪拌部32と第2攪拌部33を完全に切り替えるのではなく、いずれも回転させ、回転速度の差を変化させるものであってもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、本発明の第2攪拌部が有する攪拌搬送部材の例として、第1攪拌部32の攪拌搬送部材323と比べ、螺旋状の羽根333Bの外径dが大きく、羽根333Bの螺旋のピッチpが小さい第2攪拌部33の攪拌搬送部材333を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、第2攪拌部が有する攪拌搬送部材は、第1攪拌部の攪拌搬送部材と比べて羽根の外径が大きいか、または羽根の螺旋のピッチが小さいかのいずれであってもよい。またさらに、第2攪拌部が有する攪拌搬送部材は、例えば第1攪拌部の攪拌搬送部材と比べて羽根の外径も羽根の螺旋のピッチもほぼ等しいものであって、第1攪拌部よりも長い曲がった経路に配置された、第1攪拌部の攪拌搬送部材よりも長い全長を有するものであってもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、静電潜像における画像としての濃さに応じた動作に制御する動作制御部の例として、画像密度に応じた動作に制御する中央制御部を示したが、本発明はこれに限られず、例えば、動作制御部は、トナーが付着すべき領域に付着する量である濃度に応じて動作を制御するものであってもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では、画像形成装置の例としてプリンタを示したが、本発明にいう画像形成装置はプリンタに限られず、例えば、複写機やファクシミリであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 プリンタ
10 感光体
100 中央制御部
30 現像器
31 現像剤供給部
311 現像ロール
312 供給搬送路
313 攪拌搬送部材
32 第1攪拌部
322 第1搬送路
323 攪拌搬送部材
323A 棒
323B 羽根
332 第2搬送路
33 第2攪拌部
333 攪拌搬送部材
333A 棒
333B 羽根
34a,34b 通路
35a,35b 穴
36a,36b ゲート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が表面に形成され該静電潜像が現像剤で現像される被現像体の該表面に該現像剤を供給する、該現像剤を内部に収容した現像剤供給部と、
前記現像剤供給部に収容されている現像剤を該現像剤供給部から入手し、その入手した現像剤を第1搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を前記現像剤供給部に戻す第1攪拌部と、
前記現像剤供給部に収容されている現像剤を該現像剤供給部から入手し、その入手した現像剤を、前記第1搬送路と並行した第2搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を前記現像剤供給部に戻す、入手してから戻すまでの現像剤の攪拌量が前記第1攪拌部における攪拌量よりも多い第2攪拌部と、
前記第1攪拌部の動作と前記第2攪拌部の動作を、前記被現像体に形成される静電潜像における画像としての濃さに応じた動作に制御する動作制御部とを備えたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記第1攪拌部および前記第2攪拌部のそれぞれは、棒の回りに螺旋状の羽根が設けられ、回転によって前記現像剤を、搬送するとともに攪拌する攪拌部材を有するものであり、
前記第2攪拌部が有する攪拌部材の羽根の外径が、前記第1攪拌部が有する攪拌部材の羽根の外径より大きいことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記第1攪拌部および前記第2攪拌部のそれぞれは、棒の回りに螺旋状の羽根が設けられ、回転によって前記現像剤を、搬送するとともに攪拌する攪拌部材を有するものであり、
前記第2攪拌部が有する攪拌部材の羽根の螺旋のピッチが、前記第1攪拌部が有する攪拌部材の羽根の螺旋のピッチより狭いことを特徴とする請求項1または2記載の現像装置。
【請求項4】
静電潜像が表面に形成され該静電潜像が現像剤で現像される被現像体と、
前記被現像体の前記表面に前記現像剤を供給する、該現像剤を内部に収容した現像剤供給部と、
前記現像剤供給部に収容されている現像剤を該現像剤供給部から入手し、その入手した現像剤を第1搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を前記現像剤供給部に戻す第1攪拌部と、
前記現像剤供給部に収容されている現像剤を該現像剤供給部から入手し、その入手した現像剤を、前記第1搬送路と並行した第2搬送路上で攪拌しながら搬送し、攪拌後の現像剤を前記現像剤供給部に戻す、入手してから戻すまでの現像剤の攪拌量が前記第1攪拌部における攪拌量よりも多い第2攪拌部と、
前記第1攪拌部の動作と前記第2攪拌部の動作を、前記被現像体に形成される静電潜像における画像としての濃さに応じた動作に制御する動作制御部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−133148(P2012−133148A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285382(P2010−285382)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】