説明

現像装置および画像形成装置

【課題】現像ローラーから剥離した現像剤を確実に攪拌し,画像の濃度ムラを抑制できる現像装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】現像部14は,現像ローラー41と供給スクリュー42との間の位置で,ハウジング45の内面から突出して形成された遮蔽部材55を有する。現像ローラー41は,剥離極P2を含む複数の極を有するマグネットローラー51と,マグネットローラー51を内包して回転する現像スリーブ52とを有するものであり,供給スクリュー42は,回転軸61と,回転軸61の外周に形成されたスクリュー羽根62,63とを有するものであり,遮蔽部材55は,現像スリーブ52の表面における剥離極P2の上方の位置である剥離箇所Qから見て,剥離箇所Qと供給スクリュー42の回転軸61の軸心61aとを含む面Rとハウジング45の内面45aとで囲まれる角度範囲を遮蔽する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置及びそれに用いられる現像装置に関する。さらに詳細には,複数の磁石を配置した固定マグネットローラーを内包する現像スリーブを有する現像装置であって,トナーとキャリアーとを含む二成分現像剤を使用する現像装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,コピー機,プリンター等の画像形成装置として,トナーとキャリアーとを含む二成分現像剤を使用するものがある。そして,二成分現像剤を用いて現像を行う現像装置として,固定マグネットローラーと現像スリーブとを有する現像ローラーを備えるものが知られている。さらに,感光体へトナーを供給した後に現像ローラーから剥離した現像剤を,貯留されている他の現像剤と混合・攪拌して次回の現像に供する供給スクリューを有しているものがある。供給スクリューとしては,例えば,回転軸に1条または2条の螺旋状の羽根が取り付けられたものがある。
【0003】
ここで,現像ローラーから剥離した現像剤は,トナーが消費されたものであるので,貯留している現像剤よりトナー濃度が低い。この現像剤を,混合・攪拌が不十分なまま再び現像ローラーに供給してしまうと,画像の濃度ムラ等の原因となる。特に,回収と供給とを同一のスクリューで行うタイプの現像装置では,攪拌が不十分なまま供給されることがあり得る。
【0004】
そのため従来より,攪拌が不十分な現像剤をそのまま供給してしまうことのないように,さまざまな工夫がなされてきた。例えば,特許文献1には,現像ローラーからの現像剤の剥離位置を,供給スクリューの回転範囲の鉛直上方の外側に位置させた現像装置が開示されている。また,特許文献2には,現像ローラーからの現像剤の剥離位置の下方に,現像剤が滞留する空間を設けた現像装置が開示されている。これらの文献によれば,現像ローラーから剥離した現像剤が,すぐにそのまま現像ローラーへ供給されることを防止し,濃度ムラの発生を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−143231号公報
【特許文献2】特開2007−139896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来の文献ではいずれも,現像ローラーから剥離する現像剤は,現像ローラーの剥離極から離れた後,重力によって単に下方へ落ちるものとされている。そして,単に剥離極の配置やその下方のスペースの形状を選択することにより,攪拌性を向上させることができるとされている。しかしながら,現像ローラーから剥離した現像剤の進行方向は必ずしも真下ではなく,また,現像剤の流動性や現像ローラーの回転速度等によってやや異なる。
【0007】
そして,現像剤の流動性は,環境の温度や湿度によって変化する。また近年,現像ローラーの回転速度は高速化する傾向にある。さらに,印刷対象の用紙厚等に応じて,現像ローラーの回転速度を変更するように制御する現像装置もある。つまり,現像ローラーから剥離した現像剤の進行方向は,一定ではなく,正確に予測できるものでもない。特に近年の現像装置の高速化の影響で,現像ローラーや供給スクリューの回転速度の変更可能幅が大きくなりつつあり,さらに進行方向の振れ幅が大きくなってきている。
【0008】
もし剥離した現像剤の進行方向が限定できるのであれば,その位置に攪拌スペースを設ければよい。しかし,上記の事情により,現像剤の進行方向にはかなりの振れ幅がある。現像剤が,剥離した現像剤を受けて他の現像剤と攪拌する供給スクリューの回転範囲より外へ進行した場合には,現像剤の充分な攪拌がなされないおそれがある。
【0009】
本発明は,前記した従来の現像装置および画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,現像ローラーから剥離した現像剤を確実に攪拌し,画像の濃度ムラを抑制できる現像装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の現像装置は,2成分現像剤を収容する現像剤収容部と,現像剤収容部内に配置されて現像剤を攪拌するとともに搬送する供給スクリューと,供給スクリューから供給を受けた現像剤を現像に供する現像ローラーと,供給スクリューの下方と現像ローラーの下方とを連続的に覆うとともに内部に現像剤収容部を形成しているハウジングとを有する現像装置であって,現像ローラーと供給スクリューとの間の位置で,ハウジングの内面から突出して形成された遮蔽部材を有し,現像ローラーは,剥離極を含む複数の極を有する固定マグネットローラーと,固定マグネットローラーを内包して回転する現像スリーブとを有するものであり,供給スクリューは,回転軸と,回転軸の外周に形成されたスクリュー羽根とを有するものであり,遮蔽部材は,現像スリーブの表面における剥離極の上方の位置である剥離箇所から見て,剥離箇所と供給スクリューの回転軸の軸心とを含む面とハウジングの内面とで囲まれる角度範囲を遮蔽するものである。
【0011】
本発明の現像装置では,現像剤は,現像ローラーによって現像に供され,その残りが剥離箇所から剥離される。ここで,現像ローラーと供給スクリューとの間に遮蔽部材が設けられているので,剥離箇所から剥離された現像剤の進行方向の振れ幅のうち,遮蔽部材によって遮蔽されている範囲に現像剤が直接進行することはない。そして,遮蔽部材によって遮蔽されている範囲は,剥離箇所から見て,剥離箇所と供給スクリューの回転軸の軸心とを含む面とハウジングの内面とで囲まれる角度範囲である。つまり,剥離された現像剤が,供給スクリューに触れずにハウジングの内壁へ直接到達することは,遮蔽部材によって防止されている。従って,剥離箇所から剥離された現像剤は,供給スクリューによって適切に攪拌される。これにより,現像ローラーから剥離した現像剤を確実に攪拌し,画像の濃度ムラを抑制できる現像装置となっている。
【0012】
さらに本発明では,遮蔽部材は,少なくとも,現像スリーブの画像形成領域に対向する範囲に渡って形成されていることが望ましい。
このようになっていれば,軸方向に画像形成領域のいずれの箇所から剥離された現像剤でも適切に遮蔽される。
【0013】
また,本発明は,感光体と,感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と,静電潜像形成部によって形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像部とを有する画像形成装置であって,現像部は,2成分現像剤を収容する現像剤収容部と,現像剤収容部内に配置されて現像剤を攪拌するとともに搬送する供給スクリューと,供給スクリューから供給を受けた現像剤を現像に供する現像ローラーと,供給スクリューの下方と現像ローラーの下方とを連続的に覆うとともに内部に現像剤収容部を形成しているハウジングとを有するものであり,現像ローラーと供給スクリューとの間の位置で,ハウジングの内面から突出して形成された遮蔽部材を有し,現像ローラーは,剥離極を含む複数の極を有する固定マグネットローラーと,固定マグネットローラーを内包して回転する現像スリーブとを有するものであり,供給スクリューは,回転軸と,回転軸の外周に形成されたスクリュー羽根とを有するものであり,遮蔽部材は,現像スリーブの表面における剥離極の上方の位置である剥離箇所から見て,剥離箇所と供給スクリューの回転軸の軸心とを含む面とハウジングの内面とで囲まれる角度範囲を遮蔽する画像形成装置にも及ぶ。
【0014】
さらに本発明の画像形成装置においても,遮蔽部材は,少なくとも,現像スリーブの画像形成領域に対向する範囲に渡って形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の現像装置および画像形成装置によれば,現像ローラーから剥離した現像剤を確実に攪拌し,画像の濃度ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本形態の画像形成装置の概略構成図である。
【図2】現像部の内部構成を示す断面図である。
【図3】現像部の下部ハウジングを示す斜視図である。
【図4】遮蔽部材の配置を示す説明図である。
【図5】供給スクリューの配置を示す説明図である。
【図6】下部ハウジングの別の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,2成分現像剤を用いて画像を形成する画像形成装置に本発明を適用したものである。
【0018】
本形態の画像形成装置1は,図1に示すように,各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが,中間転写ベルト20に沿って並べられた,いわゆるタンデムタイプの画像形成装置である。各画像形成部は,それぞれ,感光体11,帯電部12,露光部13,現像部14,1次転写部15,クリーナー部16を有している。さらに,各画像形成部の図中の下部には,給紙部21が配置されている。また,本形態の画像形成装置1はそのほかに,2次転写部22,ベルトクリーナー部23,定着部24,各色のトナーホッパー25等を有している。
【0019】
本形態の画像形成装置1による画像形成時には,各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kにおいて,各色のトナー像がそれぞれの感光体11上に形成される。すなわち,感光体11は帯電部12によって一様に帯電される。次に,露光部13によって感光体11の表面に静電潜像が形成される。次に,現像部14によって静電潜像に現像剤が供給され,トナー像が形成される。さらに,各色のトナー像は,1次転写部15によって中間転写ベルト20に転写され,重ね合わされる。この重ねられたトナー像は,給紙部21から給紙されたシートに2次転写部22によって転写され,定着部24によってシートに定着される。
【0020】
本形態の現像部14は,図2に示すように,現像ローラー41,供給スクリュー42,攪拌スクリュー43を有している。これらは,ハウジング45の内部に,互いに平行に配置されている。ハウジング45の内部には,現像剤が収納されている。現像剤は,供給スクリュー42および攪拌スクリュー43によって攪拌されるとともに,それぞれの軸方向(図中奥行き方向)に搬送される。ハウジング45には,軸方向の両端部を除いて,内側に隔壁46が形成されている。
【0021】
本形態の現像部14に収容されている現像剤は,磁性粒子であるキャリアーと非磁性のトナーとを含む2成分現像剤である。画像形成によって,このうちのトナーのみが消費される。そのため,本形態の現像部14は,トナーホッパー25(図1参照)からハウジング45の内部にトナーを適宜補給することにより,現像剤中のトナー濃度を適正な範囲内に保つように制御されている。
【0022】
本形態の現像ローラー41は,図2に示すように,固定して配置されたマグネットローラー51とその外周で回転可能な現像スリーブ52とを有している。本形態のマグネットローラー51は,P1〜P5の5つの磁極をそれぞれ固定して有しているものである。磁極P1は,この箇所に対向して配置されている感光体11(図1参照)へトナーを供給する現像主極を構成する。また,磁極P2が剥離極であり,磁極P3がキャッチ極である。本形態では,磁極P1と磁極P4がN極であり,磁極P2と磁極P3と磁極P5はS極である。この図2では,便宜上全ての極を同程度の大きさや間隔に示しているが,実際には必ずしも同程度の大きさや間隔とは限らない。なお,図中で空欄の箇所(磁極P2と磁極P3との間)には磁極が配置されていない。
【0023】
現像スリーブ52は,図2中に矢印で示すように,図中で時計回りの向きに回転する。そして,現像スリーブ52に担持されていた現像剤は,剥離箇所Qにおいて剥離する。剥離箇所Qとは,剥離極P2に対向する現像スリーブ52の表面上の箇所である。より詳しくは,剥離箇所Qは,剥離極P2の径方向への磁束密度が頂点をなす位置に対向する箇所である。剥離箇所Qは,現像ローラー41の軸方向に平行な直線状である。現像スリーブ52から剥離した現像剤は,重力と現像スリーブ52の回転による慣性とによって,おおむね供給スクリュー42の方へ向かって進行する。
【0024】
本形態の供給スクリュー42は,回転軸61に,2条の螺旋状のスクリュー羽根62,63が設けられたものである。図2に示した回転軸61に垂直な断面図では,スクリュー羽根62,63の断面がそれぞれ見えている。軸方向の1箇所における供給スクリュー42の断面では,供給スクリュー42の回転につれて,スクリュー羽根62,63が回転移動する。
【0025】
本形態の現像部14には,図2に示すように,現像ローラー41の剥離箇所Qから見て,ハウジング45と供給スクリュー42の回転軸61の軸心61aとで挟まれる角度範囲を遮蔽する遮蔽部材55が設けられている。遮蔽部材55は,樹脂やセラミックス等の非磁性の材質による板状の部材である。遮蔽部材55は,剥離箇所Qと供給スクリュー42との間の位置でハウジング45の内壁45aから突出して形成されている。
【0026】
本形態の現像部14のハウジング45の斜視図を図3に示す。この図は,図2中に含まれている現像ローラー41や各スクリュー42,43を取り外し,ハウジング45のみを示したものである。図2のハウジング45は,図3のハウジング45のA−A断面に相当する。そして,図3中で両端部に見えている凹部66,66が,現像ローラー41が取り付けられる箇所である。また,図中で右側の端部には,各スクリュー42,43の回転軸61,67が取り付けられる取りつけ箇所68,69が見えている。
【0027】
そして,遮蔽部材55は,図3に示すように,現像ローラー41や供給スクリュー42の軸方向に平行に,供給スクリュー42と同等の長さで配置されている。遮蔽部材55は,その長手方向について,少なくとも現像ローラー41の画像形成領域に相当する範囲に渡って形成されている。
【0028】
この遮蔽部材55は,剥離箇所Qから剥離した現像剤が,供給スクリュー42の回転範囲内に入ることなく直接に,ハウジング45の上まで落ちることを防止するものである。そのために,図4に示すように,遮蔽部材55は,剥離箇所Qから見て,剥離箇所Qと供給スクリュー42の軸心61aとを含む面Rとハウジング45の内壁45aとで囲まれる範囲(図中に斜線で示した範囲U)を完全に遮蔽する大きさに形成されている。このようになっていれば,剥離箇所Qから剥離した現像剤が直接,この範囲Uに進入するということはない。
【0029】
通常,剥離箇所Qから離れた現像剤は,重力と現像スリーブ52の回転による慣性とによって,剥離箇所Qにおける現像スリーブ52の回転方向について前方よりの斜め下向き(図4中で左下向き)に向かう。この現像剤の進行方向や進行速度は,現像スリーブ52の回転速度や動作環境等によって異なる。本形態では遮蔽部材55が設けられているので,剥離した現像剤は,供給スクリュー42の回転範囲内に進行する。従って,剥離した現像剤は,スクリュー羽根62,63の回転によって,ハウジング45に既に収容されている現像剤と混合される。
【0030】
なお,遮蔽部材55は,ハウジング45と同じ材質であっても良い。ハウジング45が製造される際に,初めから遮蔽部材55を含む形状に形成されるものとしても良いし,後から付け加えるものとしても良い。また,ここでは板状のものを図示したが,断面が三角,半円,半楕円等の柱状であっても良い。あるいは,遮蔽部材55の現像ローラー41側の面は,現像ローラー41の外形に沿う凹面状としてもよい。
【0031】
なお,本形態の画像形成装置1では,図2に示すように,供給スクリュー42の設置位置は,現像ローラー41の鉛直下方ではなく,やや斜めに下方の位置になっている。ここでいう鉛直は,各部材を画像形成装置1に組み込み,画像形成装置1を水平に設置した場合に鉛直となる向きのことである。
【0032】
そして,本形態の画像形成装置1では,図5に示すように,現像ローラー41の軸心41aを通る鉛直面W1と,現像ローラー41の軸心41aと供給スクリュー42の軸心61aとを含む面W2とのなす角度θが10°〜40°の範囲内となるように,供給スクリュー42の配置が決定されている。なお,面W2は,鉛直面W1に対して,現像スリーブ52の回転方向について前方に配置されている。
【0033】
この角度θが10°を下回っていると,剥離箇所Qから剥離した現像剤が,攪拌されずにそのまま現像ローラー41のキャッチ極に再キャッチされやすい。そのため,画像濃度ムラがおきやすいという問題がある。また,この角度θが40°を超えていると,遮蔽部材55上に現像剤が溜まりやすいという問題点がある。ここに溜まった現像剤は,現像ローラー41のキャッチ極にそのまま再キャッチされやすく,画像濃度ムラの原因となる。あるいは,遮蔽部材55上に溜まった現像剤が,現像ローラー41側に溢れるおそれがあるという問題点もある。
【0034】
なお,本形態の供給スクリュー42は,パドルを有していないものである。パドルを有する供給スクリューは,パドルを有しないものに比較して,一般に攪拌性が高い。その一方で回転トルクが大きくなりがちである。そのため,装置の高速化に反するものとなる。本形態の画像形成装置1では,遮蔽部材55を有しているので,パドルを有していなくても,充分な攪拌性が得られる。ただし,パドルを有していてはいけないということではない。
【0035】
本発明者は,本発明の効果を確認するための実験を行った。この実験では,現像部の遮蔽部材のみが異なる3種類の画像形成装置(実施例1,比較例1,比較例2)を用いて,画像濃度ムラの発生の程度を比較した。実施例1,比較例1,比較例2に共通の各部の構成は以下の通りである。
【0036】
現像ローラー41:外径16mmの円柱状である。サンドブラスト表面処理された回転自在のアルミニウム製の現像スリーブ52を有し,その内部に,同極性である剥離極とキャッチ極とを含む5極のマグネットローラー51を内包するものである。現像スリーブ52の回転数は,520rpm(高速)と120rpm(低速)との2段階から,いずれかが選択される。また本実験における,現像ローラー41上の現像剤担持量は,230g/m2程度である。
【0037】
供給スクリュー42:外径14mmであり,回転軸61のシャフト径は6mmである。回転軸61に2条のスクリュー羽根62,63が,ピッチ12.5mmで形成されているものである。この実験で用いた供給スクリュー42は,パドルを備えていない。供給スクリュー42の回転数は,480rpm(高速)と110rpm(低速)との2段階から,いずれかが選択される。
【0038】
なお,供給スクリュー42の回転速度と現像スリーブ52の回転速度とは,1対1の対応関係にあり,高速と高速,または,低速と低速の組み合わせで選択される。すなわち,この実験では,回転速度については,供給スクリュー42と現像スリーブ52とがともに高速回転の場合と,供給スクリュー42と現像スリーブ52とがともに低速回転の場合との2種類について実験した。
【0039】
攪拌スクリュー43:外径14mmであり,シャフト径は6mmである。回転軸に1条のスクリュー羽根がピッチ25mmで形成されており,スクリュー羽根の間にパドルが設けられている。攪拌スクリュー43の現像剤の搬送方向は,供給スクリュー42の搬送方向とは逆向きである。攪拌スクリュー43は,供給スクリュー42の軸心を含む水平面に対し,供給スクリュー42の軸心から見て約40°下方に配置されている。
【0040】
現像剤:以下の2成分を含む現像剤170gを用いた。トナー濃度は7%とした。本形態では,負帯電性の現像剤を使用しており,現像バイアスは負極性の電圧である。
キャリアー:フェライトコアをアクリル系樹脂でコーティングしたもの(体積平均粒径は33μm)
トナー:スチレン−アクリル樹脂を乳化重合法により作成したもの(体積平均粒径は6.5μm)
【0041】
そして,実施例1,比較例1,比較例2の違いは遮蔽部材55だけであり,それ以外はいずれも同じ装置である。これらの違いは,以下の通りである。
実施例1:軸方向に現像ローラー41と同じ長さ範囲に,本形態の遮蔽部材55を設けた。
比較例1:遮蔽部材を設けなかった。
比較例2:ハウジング45からの突出高さが実施例1の遮蔽部材55の半分である以外は実施例1と同様の遮蔽部材を設けた。
【0042】
実験は以下のように行った。現像バイアス値を複数水準に変更してそれぞれ,A3全面にマゼンダのトナーによるベタ画像を形成し,ベタ画像の画像濃度を反射濃度計によって測定した。なお,全面ベタ画像とは,濃度最大で全面を塗りつぶした画像のことである。さらに,形成した画像の画像濃度ムラの発生レベルを目視で判断した。判断の基準は,以下の通りである。
○:目視では画像濃度ムラを発見できないもの
△:うっすらとムラが分かるもの
×:明らかに画像濃度ムラが発生しているもの
【0043】
なお,供給スクリュー42と現像スリーブ52との回転速度が高速の場合と低速の場合とのそれぞれにおいて,高温高湿環境(気温30℃,湿度85%)と低温低湿環境(気温10℃,湿度15%)とで実験を行った。すなわち,回転速度と環境とによる前提条件は,計4種類である。さらに,各条件ごとに,現像バイアス値の絶対値を300〜650(V)の範囲内で50Vおきに設定し,実施例1では8通り,比較例1と比較例2ではそれぞれ7通りの条件で実験を行った。
【0044】
一般に,現像バイアス値の絶対値が大きいと,感光体へのトナーの付着量が大きく,画像濃度は大きいものとなる。そのため,現像バイアス値の絶対値が大きいほど,トナーの消費量が大きく,画像に濃度ムラが発生しやすい。なお通常は,画像濃度が1.2程度となるように,現像バイアス値の大きさを制御する。また本形態で用いている現像剤は,高温高湿環境における場合に比較して低温低湿環境において,流動性がやや高いものである。
【0045】
【表1】

【0046】
まず,高速回転,かつ,高温高湿環境下における実験結果を表1に示す。この表に示すように,現像バイアス値の絶対値を大きくするほど,画像濃度は大きくなった。そして,実施例1では,少なくともこの表に示した現像バイアス値の絶対値が300〜650(V)の範囲内では,目視でそれと分かる画像濃度ムラは発生しなかった。比較例1では,現像バイアス値の絶対値が300Vでは,濃度ムラは発生しなかったが,同絶対値350V以上では,濃度ムラが発生した。比較例2では,現像バイアス値の絶対値が300〜350(V)では,濃度ムラは発生しなかったが,同絶対値400V以上では,濃度ムラが発生した。
【0047】
【表2】

【0048】
次に,高速回転,かつ,低温低湿環境下での実験の結果を表2に示した。この表2と表1との比較から分かるように,低温低湿環境では,高温高湿環境下よりやや濃度ムラが発生しやすい。これは,低温低湿環境では,高温高湿環境に比較して現像剤の流動性が高いため,剥離現像剤が飛翔しやすいことが原因であると考えられる。それでも,実施例1は,実用上問題となるような濃度ムラは発生しなかった。
【0049】
【表3】

【0050】
表3に示したのは,低速回転,かつ,高温高湿環境下における実験結果である。この条件が,4条件中で最も現像剤の流動性が小さく,画像濃度ムラが発生しにくい条件である。それでも,比較例1や比較例2では,現像バイアス値の絶対値が400V程度までしか,濃度ムラのない画像は得られなかった。それに対して,実施例1では,この実験の現像バイアスの範囲内ではいずれも,良好な結果が得られた。
【0051】
【表4】

【0052】
表4に示したのは,低速回転,かつ,低温低湿環境下における実験結果である。この場合にも,実施例1では,目視で見分けられる濃度ムラは発生しなかった。従って,いずれの条件下においても,遮蔽部材55を設けることによって,画像濃度ムラが防止できることが確認できた。また,高さの不十分な遮蔽部材では,画像濃度ムラを防止する効果も不十分であることも確認された。
【0053】
以上詳細に説明したように本形態の画像形成装置によれば,現像ローラー41と供給スクリュー42との間に,遮蔽部材55が設けられている。さらに,遮蔽部材55は,現像ローラー41の剥離箇所Qと供給スクリュー42の回転軸61の軸心61aとを含む面Rと,ハウジング45との間の範囲を完全に遮蔽している。従って,現像ローラー41の回転速度や環境等にかかわらず,剥離箇所Qから剥離した現像剤が,供給スクリュー42に触れることなくハウジング45の底まで落下することは防止されている。そして,回収された現像剤は,供給スクリュー42の回転によって,貯蔵されている現像剤と適切に攪拌される。これにより,画像濃度ムラの発生は適切に抑止されている。従って,現像ローラーから剥離した現像剤を確実に攪拌し,画像の濃度ムラを抑制できる現像装置および画像形成装置となっている。
【0054】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,供給スクリューとして,スクリュー羽根とパドルとを有するものを用いてもよい。またあるいは,半月状のスクリュー羽根を多数備えた供給スクリューとしてもよい。またあるいは,図6に示すように,軸方向の一端部に遮蔽部材55の設けられていない範囲があっても良い。あるいは,軸方向の両端部に遮蔽部材55の設けられていない範囲があっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置
10Y,10M,10C,10K 画像形成部
11 感光体
14 現像部
41 現像ローラー
42 供給スクリュー
45 ハウジング
51 マグネットローラー
52 現像スリーブ
55 遮蔽部材
61 回転軸
62,63 スクリュー羽根
P2 剥離極
Q 剥離箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分現像剤を収容する現像剤収容部と,前記現像剤収容部内に配置されて現像剤を攪拌するとともに搬送する供給スクリューと,前記供給スクリューから供給を受けた現像剤を現像に供する現像ローラーと,前記供給スクリューの下方と前記現像ローラーの下方とを連続的に覆うとともに内部に前記現像剤収容部を形成しているハウジングとを有する現像装置において,
前記現像ローラーと前記供給スクリューとの間の位置で,前記ハウジングの内面から突出して形成された遮蔽部材を有し,
前記現像ローラーは,
剥離極を含む複数の極を有する固定マグネットローラーと,
前記固定マグネットローラーを内包して回転する現像スリーブとを有するものであり,
前記供給スクリューは,
回転軸と,
前記回転軸の外周に形成されたスクリュー羽根とを有するものであり,
前記遮蔽部材は,前記現像スリーブの表面における前記剥離極の上方の位置である剥離箇所から見て,前記剥離箇所と前記供給スクリューの前記回転軸の軸心とを含む面と前記ハウジングの内面とで囲まれる角度範囲を遮蔽するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置において,
前記遮蔽部材は,少なくとも,前記現像スリーブの画像形成領域に対向する範囲に渡って形成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
感光体と,前記感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と,前記静電潜像形成部によって形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像部とを有する画像形成装置において,
前記現像部は,2成分現像剤を収容する現像剤収容部と,前記現像剤収容部内に配置されて現像剤を攪拌するとともに搬送する供給スクリューと,前記供給スクリューから供給を受けた現像剤を現像に供する現像ローラーと,前記供給スクリューの下方と前記現像ローラーの下方とを連続的に覆うとともに内部に前記現像剤収容部を形成しているハウジングとを有するものであり,
前記現像ローラーと前記供給スクリューとの間の位置で,前記ハウジングの内面から突出して形成された遮蔽部材を有し,
前記現像ローラーは,
剥離極を含む複数の極を有する固定マグネットローラーと,
前記固定マグネットローラーを内包して回転する現像スリーブとを有するものであり,
前記供給スクリューは,
回転軸と,
前記回転軸の外周に形成されたスクリュー羽根とを有するものであり,
前記遮蔽部材は,前記現像スリーブの表面における前記剥離極の上方の位置である剥離箇所から見て,前記剥離箇所と前記供給スクリューの前記回転軸の軸心とを含む面と前記ハウジングの内面とで囲まれる角度範囲を遮蔽するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において,
前記遮蔽部材は,少なくとも,前記現像スリーブの画像形成領域に対向する範囲に渡って形成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3475(P2013−3475A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136842(P2011−136842)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】