説明

現像装置及びそれを用いた静電記録装置

【課題】本発明は、印刷速度が速く高画質の印刷を行うに際しても、印刷濃度の低下やキャリア飛びの発生がない現像装置及びそれを用いた静電記録装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、2成分現像剤の磁性粉体の平均粒径を65μm以下で飽和磁化を60emu/g以上とし、静電像担持体の移動方向の上流側に位置する現像ローラを静電像担持体の移動方向に対して逆方向に回転させると共に、前記静電像担持体の移動方向の下流側に位置する現像ローラを静電像担持体の移動方向に対して順方向に回転させるように構成し、かつ前記上流側に位置する現像ローラへの印加電圧を、前記下流側に位置する現像ローラへの印加電圧よりも、前記静電像担持体の帯電電圧に接近する値に設定したのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式のプリンタや複写機等の現像装置及びそれを用いた静電気録装置に係り、特に、トナーと磁性粉体とからなる2成分現像剤を用いる現像装置及びそれを用いた静電気録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンタや複写機等の静電気録装置は、感光体と称される静電像担持体を所定電位に帯電させた後、画像情報に応じて露光して静電潜像を形成し、この状態で現像装置からトナーを静電像担持体に供給することで可視像を形成し、その後、静電像担持体上の可視像を記録媒体に転写定着して印刷している。そして、前記現像装置内には、トナーと、このトナーを帯電させて搬送するキャリアと称される磁性粉体とを所定の混合比で混ぜ合わせた2成分現像剤を内臓している。
【0003】
上記現像装置を備えた静電記録装置においては、高画質化の要求に伴い、キャリアを小粒径化することが進められている。即ち、キャリアを小粒径化することにより、現像ローラに保持されて静電像担持体の表面を摺動する2成分現像剤の穂が緻密になるため、静電潜像をより忠実に現像することが可能となり、ざらつきのない良好な画像を得ることができるのである。
【0004】
しかし、キャリアを小粒径化すると、現像ローラでのキャリアの磁気的保持力が弱くなるために、キャリア飛びが発生しやすくなると云う新たな問題が生じる。この小粒径キャリアのキャリア飛びを抑制するためには、磁気ブラシの長さを短くして磁気的保持力を磁気ブラシの先端部まで利かせる必要がある。そのためには、現像ローラと静電像担持体との対向間隔、云い代えれば現像隙間を狭くする必要がる。
【0005】
このような現像隙間を狭くする構成に対し、特許文献1に記載の現像装置は、現像剤の付着量を規制する現像剤規制部材(ドクタブレード)と現像ローラとの隙間、所謂ドクタギャップを狭くしている。しかしながら、ドクタギャップを狭くすると、部品の僅かな加工誤差や組立誤差が直ちにドクタギャップのばらつきとなって現れ、現像剤の搬送量を一定に調整することが困難となる。
【0006】
また、現像ローラを構成するスリーブローラ上の現像剤吸着量が適正値を超える場合には、キャリアの磁気ブラシ先端部に行くにしたがい磁気的保持力が弱くなるので、現像の際、スリーブローラに磁気ブラシ先端部のキャリアを保持しきれずに、静電像担持体へキャリアが飛散して付着し易くなるほか、現像ローラ上の現像剤が静電像担持体と接触して現像を行う現像部での現像剤充填率が高くなるので、磁気ブラシによる機械的な掻き取り力が大きくなって静電像担持体上の画像にキャリアの掃き筋等が生じる。
【0007】
さらに、現像ローラを構成するスリーブローラ上の現像剤吸着量が適正値に満たない場合には、静電像担持体上の画像濃度が薄くなったり、不均一になったりすると云う問題があり、このために、小粒径キャリアを用いて狭い現像隙間で現像を行う静電気録装置においては、ドクタギャップの変動に対してスリーブローラ上の現像剤吸着量の変化を少なくする必要がある。
【0008】
このほか、ドクタギャップを狭くすると、現像剤を通過させる際に、現像剤は圧縮されるので機械的負荷を付与され、これが長期に亘って画質を維持することを妨げるので、ドクタギャップでの現像剤への機械的負荷を小さくする必要がある。
【0009】
上記問題点を解消する手段として、特許文献2に記載の現像装置のように、現像ローラの磁石に対向する位置に現像剤規制部材(ドクタブレード)を配置する構成が存在する。このような構成とすることで、比較的広いドクタギャップでも現像剤の搬送量を少なくなるように規制することが可能となる。その結果、ドクタギャップのばらつきによる現像剤搬送量の変動を小さくでき、ドクタギャップを通過する現像剤に対する機械的負荷も小さくできるので、長期間安定して高画質の印刷を行うことができる。
【0010】
【特許文献1】特開2000−112226号公報
【特許文献2】特開平2−79878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、印刷速度の速い装置でも高画質化の要求が高まっており、より小粒径のキャリアを使用できる現像装置の出現が望まれている。しかしながら、印刷速度を早くすると、当然ながら現像ローラの回転速度も早くする必要があるが、現像ローラの高速回転化によりキャリア飛び量が増加する問題が生じる。特に、カラー印刷を行う静電記録装置においては、印刷密度の高い印刷が行われるのでトナーの消費量が多くなるので、2成分現像剤中のトナー量が低下すると、印刷濃度の低下やキャリア飛びが発生しやすくなる。
【0012】
このように、従来の現像装置においては、印刷速度が速く高画質の印刷を行うに際し、印刷濃度の低下やキャリア飛びが発生するので、その改善が望まれていた。
【0013】
本発明の目的は、印刷速度が速く高画質の印刷を行うに際しても、印刷濃度の低下やキャリア飛びの発生がない現像装置及びそれを用いた静電記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために、円周上に配置された複数の磁石とその外周部に回転可能に配置されたスリーブローラとを有し静電像担持体に対向して配置された少なくとも2つの現像ローラと、これら現像ローラの前記磁石に対向する位置に設置されトナーと磁性粉体とからなる2成分現像剤の前記現像ローラへの吸着量を規制する現像剤規制部材と、前記現像ローラ側に2成分現像剤を搬送する現像剤搬送手段と、この現像剤搬送手段にトナーを供給するトナー供給手段とを備え、かつ、前記現像ローラのうち、前記静電像担持体の移動方向の上流側に位置する現像ローラを静電像担持体の移動方向に対して逆方向に回転させると共に、前記静電像担持体の移動方向の下流側に位置する現像ローラを静電像担持体の移動方向に対して順方向に回転させるように構成した現像装置において、前記磁性粉体の体積平均粒径を65μm以下とすると共に前記磁性粉体の飽和磁化を60emu/g以上とし、前記逆方向に回転する現像ローラへの印加電圧を、順方向に回転する現像ローラへの印加電圧よりも、前記静電像担持体の帯電電圧に接近する値に設定したのである。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、静電像担持体の移動方向の上流側に位置する現像ローラを静電像担持体の移動方向に対して逆方向に回転させると共に、前記静電像担持体の移動方向の下流側に位置する現像ローラを静電像担持体の移動方向に対して順方向に回転させるように構成し、2成分現像剤のキャリア粒径を65μm以下とし、前記逆方向に回転する現像ローラの印加電圧を静電像担持体の帯電電圧に接近させ、さらに、現像ローラ側に2成分現像剤を搬送する現像在搬送手段に対してトナーを規定量供給するトナー供給手段とによって、印刷速度が速く高画質の印刷を行うに際しても、印刷濃度の低下を防止することができる。
【0016】
また、前記可逆回転する現像ローラと、飽和磁化が60emu/g以上のキャリアと、前記順方向に回転する下流側の現像ローラの印加電圧を静電像担持体の帯電電圧との電位差が大きくなるようにし、さらに、現像ローラ側に2成分現像剤を搬送する現像在搬送手段に対してトナーを規定量供給するトナー供給手段とによって、印刷速度が速く高画質の印刷を行うに際しても、キャリア飛びを防止することができる。
【0017】
更に、特別な装置や部品を付属させる必要がないので、装置を大型化することなく、また価格を上昇させることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明による現像装置の実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。
【0019】
現像装置1は、静電気録装置(図示せず)に設けられた感光体である静電像担持体2に対向して設けられている。そして現像装置1は、前記静電像担持体2に対向して軸支された2つの現像ローラ3,4を備えている。前記静電像担持体2の移動方向Aの上流側に位置する現像ローラ3は、前記静電像担持体2の移動方向Aに対して逆方向Bに静電像担持体2の周速の1.1〜2.0倍の周速で駆動され、前記静電像担持体2の移動方向Aの下流側に位置する現像ローラ4は、前記静電像担持体2の移動方向Aに対して順方向Cに静電像担持体2の周速の1.1〜2.0倍の周速で駆動されている。これら現像ローラ3,4は、夫々円周上に回転方向に倣ってS1極,N1極,S2極,N2極,N3極の順に着磁した磁石5と、その外周部に回転可能に支持されたスリーブローラ6とを備えている。前記磁石5のN1極は前記静電像担持体2に対向させて位置させており、このN1極は対向するスリーブローラ6表面の飽和磁束密度が0.07テスラの磁力を有するように着磁されている。一方、残る磁極は、対向するスリーブローラ6表面の飽和磁束密度が0.04〜0.06テスラとなるように着磁されている。尚、本実施の形態においては、2つの現像ローラ3,4を備えた現像装置1であるが、例えば現像ローラ3の上流側及び/又は現像ローラ4の下流側に複数本の現像ローラを備えてもよい。
【0020】
前記現像ローラ3,4の間には、現像ローラ3,4と所定間隔G1,G2をもって対向するドクタブレード7(現像剤規制部材)が配置されており、現像ローラ3,4に吸着される2成分現像剤8の吸着量を規制している。
【0021】
また、静電像担持体2の移動方向最下流側の現像ローラ4に接近した位置には、2成分現像剤8を規定量保持し、そこから現像ローラ3,4側に2成分現像剤8を汲み上げる汲み上げパドル9が設けられている。この汲み上げパドル9は、前記現像ローラ3,4と平行に軸支されており、矢印F方向に回転駆動されることで周辺に保持された2成分現像剤8を現像ローラ3,4側に汲み上げるものである。ところで、2成分現像剤8は、トナーとこのトナーを帯電させて搬送するキャリアと称される磁性粉体とを所定の混合比で汲み上げパドル9部で撹拌されて混ぜ合わせたものであり、トナーは2成分現像剤8の全重量の2〜10%の重量比で混合されている。
【0022】
前記2成分現像剤8を構成するキャリアは回収されるが、トナーは、現像ローラ3,4を介して静電像担持体2へ転写されて消費されるので重量比が減少する。このトナー量の減少を補充するために、汲み上げパドル9側へ規定量のトナー8Tを供給するトナー供給装置10が設けられている。そして、トナー供給装置10と汲み上げパドル9との間には、供給された規定量のトナー8Tを汲み上げパドル9に搬送してキャリアと混合させるための搬送部材(現像剤搬送手段)11,12が設置されている。これら搬送部材11,12は、前記現像ローラ3,4の軸方向と同方向に延在する互いに逆回転するスクリュー構成をしており、搬送部材11は矢印D方向に回転することでトナー8Tを紙面奥側から手前側に搬送し、搬送部材12は矢印E方向に回転することでトナー8Tを紙面手前側から奥側に搬送して汲み上げパドル9側のキャリアと撹拌混合している。これによってトナー8Tは、キャリアと摩擦して−10〜−30μc/gに帯電される。このように所定のトナー重量比及び帯電量に調整された2成分現像剤8は、前記現像ローラ3,4の近傍の汲み上げパドル9に導かれる。
【0023】
ところで、2成分現像剤8のキャリアの粒径は、図3に示すように、印刷画像のざらつき感に関係し、キャリアを小粒径にするほど、静電像担持体2の表面を摺動する2成分現像剤8の穂が緻密になって静電潜像をより忠実に現像できる。キャリアの小粒径化によるざらつき感の改善効果は、65μm以下の粒径で大きく、65μm以上の粒径では改善効果が小さくなる。したがって、本実施の形態で用いるキャリア粒径は、65μm以下の粒径のキャリアを用いている。
【0024】
また、互いに逆方向に回転する2本の現像ローラ3,4に、同一の電圧を印加した際のキャリア粒径とキャリア飛びの関係を見ると、図4に示す関係になる。尚、図4中、破線Laは飽和磁化が約60emu/gのキャリアを示し、実線Lbは飽和磁化が約8060emu/gのキャリアを示している。この線図から明らかなように、キャリアを小粒径にするほど、キャリア飛びが多くなる傾向にある。しかし、飽和磁化が高いキャリア(実線Lb)は、小粒径にしてもキャリア飛びが抑えられている。これは、飽和磁化が高いキャリアのほうが、現像部での磁気的保持力が強くなるので、キャリア飛びが少なくなるものと考えられる。ただ、磁気的保持力が強くなると、現像の際に画像を擦る力が強くなるので、キャリアによる掃き筋が目立つと云う新たな問題が生じるので、即、飽和磁化が約8060emu/gのキャリアを用いることはできない。
【0025】
そこで、互いに逆方向に回転する2本の現像ローラ3,4を用いた現像装置1で、飽和磁化の小さい小粒径のキャリアを用いた場合の画像へのキャリアの付着状態を検討したところ、特に問題となったのは、先に現像を行う、云い代えれば静電像担持体2の移動方向の上流側となる現像ローラ3において、2成分現像剤8が画像を現像した後に背景電位部である静電像担持体2へ接触する状況での付着であることが確認された。これは、先に現像を行う現像ローラ3において、トナー濃度の低下した2成分現像剤、云い代えればキャリア表面のトナーが少なくなってキャリアが静電像担持体2へ直接接触し易くなった状態で、現像ロータ3とトナーを付着させない背景部電位(静電像担持体2の帯電電位)とで形成される強い電場に曝されるために、キャリアが静電像担持体2に付着するものと予想される。
【0026】
以上から、互いに逆方向に回転する2本の現像ローラ3,4を用いた現像装置1においては、先に現像を行う現像ローラ3の電位と静電像担持体2の帯電電位との電位差を小さくすることで、飽和磁化の低い(図4の実線Lb)小粒径のキャリアを使用しても、キャリア飛びを少なくすることができる。
【0027】
ところで、現像ローラ3の電位を静電像担持体2の帯電電位に接近させると、通常被りが増加して画質の低下を招く。しかし、本願発明者らの検討の結果、互いに逆方向に回転する2本の現像ローラ3,4を近接配置した現像装置1において、先に現像を行う現像ローラ3が静電像担持体2に接触した2成分現像剤8を静電像担持体2の移動方向とは逆方向に回転させることと、現像ローラ3の電位を後に現像を行う現像ローラ4よりも静電像担持体2の帯電電位に接近させることで、先に現像を行う現像ローラ3による静電像担持体2へのキャリア付着を低減でき、かつ、後に現像を行う現像ローラ4で静電像担持体2へ付着した被りトナーを掃き取ることができ、結果として、飽和磁化が低く小粒径のキャリアを用いても、キャリア付着量を低減して静電像担持体2へのトナーの被りを抑制できることが確認された。
【0028】
上記2成分現像剤8を用いて静電気録装置(図示せず)を作動させると、現像装置1の現像ローラ4の近傍にある2成分現像剤8は、現像ローラ4のマグネット5の磁極N3によってスリーブローラ6の表面に吸着され、スリーブローラ6の回転に伴ってドクタブレード7に対向した磁極S1まで搬送される。搬送された2成分現像剤8は、磁極N1における現像部の容積に対して20〜40%の容積比となるように、ドクタブレード7とスリーブローラ6との間隔G2で、搬送量が規制される。このとき、ドクタブレード7での規制により余剰となった2成分現像剤8は、現像ローラ3のマグネット5の磁極S1によってスリーブ6の表面に吸着され、スリーブ6の回転に伴って、ドクタブレード7とスリーブローラ6との間隔G1で規制された後、現像ローラ3の現像部である磁極N1に導かれる。
【0029】
現像ローラ3,4の現像部で2成分現像剤8は磁極N1によって穂立ちをし、静電像担持体2の表面と摺動する。現像ローラ3,4には、上述のように、異なる電圧設定で現像バイアス電圧が印加される。因みに、本実施の形態においては、現像ローラ3には−400V、現像ローラ4には−300Vの電圧を印加している。
【0030】
その後、現像ローラ3,4に吸着された2成分現像剤8のトナーが静電像担持体2の表面の静電潜像に転写され、トナーによる可視画像が形成される。
【0031】
現像部である静電像担持体2と現像ローラ3,4との対向部を通過した2成分現像剤8は、夫々磁極N2,N3間の反発磁界によって現像ローラ3,4から剥離され、再び汲み上げパドル9に戻って同様な動作を繰り返す。
【0032】
尚、静電像担持体2の表面に形成された可視画像は、図示しない転写部によって記録用紙(図示せず)に転写印刷された後、図示しない定着部で記録用紙上に定着される。
【0033】
以上説明した本発明による実施形態の現像装置1と、比較例として同方向に回転する複数本の現像ローラの上流側現像ローラで現像に用いた2成分現像剤を下流側現像ローラに受け渡して用いる現像装置とを比較実験をしたところ、本発明による実施形態の現像装置の方が約30%高い現像性能を得ることができた。
【0034】
また、本実施の形態によれば、静電像担持体2に対して2本の現像ローラ3,4が互いに逆方向に回転して摺動するので、摺動方向に起因する画像の方向性(先端欠け又は後端欠け)がない良好な画像を得ることができた。
【0035】
さらに、現像ローラ3に印加される電圧を、静電像担持体2の帯電電圧、即ち、現像を行わない背景電圧に接近させたことにより、現像でトナーを消費したキャリアが画像後端部を通過する際の背景電位差が小さく、しかもキャリアに作用する静電気力が弱くなるためにキャリア付着の発生を抑制することができた。
【0036】
さらにまた、現像ローラ4に印加される電圧を、現像ローラ3に印加される電圧よりも多きくしているので、現像ローラ3での現像時に発生したトナー被りを清掃することができ、現像ローラ4を通過した後の画像は2本の現像ローラに同一の電圧を印加した場合の画像と同等にすることができた。
【0037】
ところで、現像速度が300mm/s程度では、現像ローラが1本の現像装置でも所望の現像性能を得ることができると共に、画像の方向性も許容レベルの画像を得ることができる。しかし、300mm/sを超える現像速度では、現像ローラが1本では所望の現像性能を得ることは難しくなる。そこで、300mm/sを超える現像速度で現像ローラが1本でも所望の現像性能を得るには、静電像担持体の移動速度に対して現像ローラの周速の比率を高くすることが考えられるが、周速の比率を高くすると、2成分現像剤の穂による静電像担持体表面への擦りが強くなって良好な画像を得ることが困難になる。しかし、本発明による実施の形態によれば、互いに逆方向に回転する2本の現像ローラ3,4を用いることで、300mm/sを超える現像速度でも良好な画質を得ることができた。
【0038】
また、現像速度が速いと、現像時のトナー消費が早くなるので、印刷開始時点で高画質印刷が行えても、連続印刷しているとトナー濃度が低下して印刷濃度の低下やキャリア飛びが発生することがある。特に、フルカラー機のように高密度の印刷を多頁連続して印刷を行う装置では不都合が発生しやすい。これは、印刷によるトナー消費量に対し、現像剤搬送手段から現像ローラに供給されるトナー量が少なかったり、不均一になったりすることが原因である。
【0039】
しかし、本実施の形態のように、搬送部材11,12で軸方向に2成分現像剤8を撹拌した後、現像剤搬送手段9によって現像ローラ3,4に供給するようにした現像装置1では、印刷速度(静電像担持体の移動速度)をV(cm/s)、前記現像ローラで2成分現像剤が搬送されるローラ幅方向寸法をL(cm)、前記静電像担持体のトナー量をM(g/cm)としたとき、現像剤搬送手段9で搬送される2成分現像剤8に混入されるトナー8Tの軸方向の流量W(g/c)を、
10・V・L・M<W
とすること、つまり、印刷時に単位時間当たりに消費されるトナー量の10倍以上のトナーを供給することで解決できることが判明した。
【0040】
ただ、トナーの供給量が単位時間当たりのトナー消費量の40倍を超えると、搬送するトナーの帯電量が適正範囲から外れてしまってトナー被りなどの画質上の不具合が発生したり、2成分現像剤の劣化が早まって長期的に画質を維持することが困難となったりするので、トナー8Tの現像剤搬送手段9による軸方向の流量W(g/c)は、
10・V・L・M<W<40・V・L・M
の範囲が好ましいことがわかった。
【0041】
尚、本実施の形態において、印刷速度が700mm/sの記録装置でも、高画質の印刷が行え、キャリア飛びなどの不具合もなく、長期的に安定した画像が得られることを確認している。
【0042】
また、前記2成分現像剤のキャリアとして、マグネタイト、Mn−Mgフェライト、Mgフェライト、Cu−Znフェライト等のキャリア心材の表面を絶縁性樹脂により均一な厚さに被覆し、表面の絶縁性樹脂にトナーとの適正な摩擦帯電特性を持たせたものも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による現像装置の一実施の形態を示す概略縦断面図。
【図2】図1の現像ローラ近傍の拡大図。
【図3】キャリアの平均粒径と印刷物のざらつき感との関係を示す線図。
【図4】キャリアの平均粒径とキャリア飛びとの関係を示す線図。
【符号の説明】
【0044】
1…印刷装置、2…静電像担持体、3,4…現像ローラ、5…磁石、6…スリーブローラ、7…ドクタブレード、8…2成分現像剤、8T…トナー、9…汲み上げパドル、10…トナー供給装置、11,12…搬送部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周上に配置された磁石とその外周部に回転可能に配置されたスリーブローラとを有し静電像担持体に対向して配置された少なくとも2つの現像ローラと、これら現像ローラの前記磁石に対向する位置に設置されトナーと磁性粉体とからなる2成分現像剤の前記現像ローラへの吸着量を規制する現像剤規制部材と、前記現像ローラ側に2成分現像剤を搬送する現像剤搬送手段と、この現像剤搬送手段に規定量のトナーを供給するトナー供給手段とを備え、かつ、前記現像ローラのうち、前記静電像担持体の移動方向の上流側に位置する現像ローラを静電像担持体の移動方向に対して逆方向に回転させると共に、前記静電像担持体の移動方向の下流側に位置する現像ローラを静電像担持体の移動方向に対して順方向に回転させるように構成した現像装置において、前記磁性粉体の平均粒径を65μm以下とすると共に前記磁性粉体の飽和磁化を60emu/g以上とし、前記逆方向に回転する現像ローラへの印加電圧を、順方向に回転する現像ローラへの印加電圧よりも、前記静電像担持体の帯電電圧に接近する値にしたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像ローラの少なくとも一つの磁石の最大磁束密度を、0.07テスラ以上としたことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記静電像担持体の移動速度をV(cm/s)、前記現像ローラで2成分現像剤が搬送されるローラ幅方向寸法をL(cm)、前記静電像担持体のトナー量をM(g/cm)としたとき、前記現像剤搬送手段でのトナー流量W(g/s)を、
10・V・L・M<W<40・V・L・M
としたことを特徴とする請求項1又は2記載の現像装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3記載の現像装置を用いたことを特徴とする静電気録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−235328(P2006−235328A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51007(P2005−51007)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】