説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】シート70の両表面と現像スリーブ41、43及び感光ドラム1との摺擦抵抗を低減して、シート70の耐久寿命の低下を抑える。
【解決手段】現像スリーブ41、43の端部にシート70を配置する。このシート70の両表面の形状を凹凸に形成する。これにより、シート70の両表面と現像スリーブ41、43及び感光ドラム1とが接触した場合に、両表面の形状を凹凸に形成していない構成よりも接触面積を小さくできる。そして、両表面と現像スリーブ41、43及び感光ドラム1との摺擦抵抗を低減し、シート70の耐久寿命の低下を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成された潜像に現像剤を付着させて可視像化するための現像装置、及び、この現像装置を備えた、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機及びレーザービームプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置は、一般的に像担持体であるドラム状の感光体の表面を、帯電器により一様に帯電させ、帯電した感光体を露光装置によって画像情報に応じて露光し、感光体上に静電潜像を形成する。感光体に形成された静電潜像は、現像装置を用いて現像剤であるトナーによって、トナー像として顕像化される。そして、顕像化された画像は転写装置によって記録材へ転写される。その後、記録材上に転写されたトナー像を定着装置によって熱及び圧力で記録材Sへと溶融定着する。
【0003】
このような現像装置として、現像剤である非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とを備えた2成分現像剤を使用するものがある。この2成分現像剤を使用する現像装置は、現像容器内でトナーとキャリアを撹拌しつつ搬送し、現像剤担持体である現像スリーブに現像剤を担持する。現像スリーブに担持された現像剤は現像剤規制部材である規制ブレードにより担持量を規制される。その後、現像スリーブと感光体との間に現像バイアスを印加することにより、トナーのみが感光体表面に形成された静電潜像に転移し、感光体表面に静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0004】
また、感光体に対する現像スリーブの露出面積を大きくするために、現像スリーブを2本使用するツインスリーブ方式の現像装置も知られている。このようなツインスリーブ方式の現像装置の場合、現像スリーブの露出面積を大きくできるため、現像スリーブが1本の構造よりも、高速化、高画質化を実現できる。
【0005】
但し、ツインスリーブ方式の場合、現像スリーブの露出面積が大きいため、飛散トナー量が多くなってしまう。例えば、互いにカウンタ方向に回転する2本の現像スリーブ間から現像剤が噴出し易い。また、現像スリーブは、中間部の表面に凹凸を形成して現像剤を担持し易くする一方、両端部(金環部)の表面粗さを中間部よりも小さくして、現像剤が両端部に担持されることを抑えているが、この金環部に多量のトナーがはみ出してしまう場合がある。このような金環部へのトナーのはみ出しは現像スリーブが1本の構造でも起こりうる。何れにしても、飛散トナーが多いと、機内汚染や画像不良が生じ易くなるため好ましくない。
【0006】
このような飛散トナーを抑制するために、現像スリーブの感光ドラムと対向する一部を封止する技術が、従来から知られている(例えば、特許文献1ないし5参照)。特許文献1ないし5には、現像スリーブの端部におけるトナーの漏れ出しを抑制すべく、現像容器の開口部端部の非現像域をシートでシールする構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−268379号公報
【特許文献2】特開2007−232815号公報
【特許文献3】特開2008−129140号公報
【特許文献4】特開平2−101486号公報
【特許文献5】特開平9−319215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のようにトナーの飛散を防止するためのシートは、現像スリーブと感光ドラムとの間に配置される。現像スリーブと感光ドラムとは近接対向して(ギャップを介して)配置されるため、このギャップに配置されるシートの両表面は、現像スリーブと感光ドラムとにそれぞれ近接又は接触する状態となる。このような状態で画像形成を行うべく、現像スリーブ及び感光ドラムを回転させると、シートの両表面が現像スリーブ及び感光ドラムと摺擦し、シートが回転方向に引っ張られる。したがって、シートの両表面と現像スリーブ及び感光ドラムとの摺擦抵抗が大きいと、シートが強く引っ張られてしまい、このシートが弛んで更に摺擦抵抗が大きくなったり、更にはシートが破損してしまう可能性がある。シートが破損するとトナーの飛散を十分に抑制できなくなり、機内汚染や画像不良が生じ易くなる。
【0009】
特に、高温高湿環境下のようにシートの腰が弱くなった場合などには、摺擦抵抗にシート剛性が負けて、このシートがダメージを受け易くなる。また、シートが現像スリーブの表面に巻き付くように接触する構成、シートの自重により現像スリーブに接触する構成の場合には、現像スリーブとの摺擦による影響が大きくなる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、シートなどのカバー部材の両表面と現像剤担持体及び像担持体との摺擦抵抗を低減して、カバー部材の耐久寿命の低下を抑えられることができる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、非磁性のトナーと磁性を有するキャリアとから構成される2成分現像剤を収容する現像容器と、前記現像容器の像担持体に対向する位置に配置され、前記現像剤を担持搬送する現像剤担持体と、前記現像容器から前記現像剤が漏れることを抑制するために、前記現像剤担持体の前記像担持体と対向する一部を覆うように配置されるカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、両表面の形状を凹凸に形成することにより、前記両表面の前記現像剤担持体及び前記像担持体に対する接触時の摺擦抵抗を低減した、ことを特徴とする現像装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カバー部材の両表面の形状を凹凸に形成することにより、両表面と現像剤担持体及び像担持体とが接触した場合に、両表面を凹凸に形成していない構成よりも接触面積を小さくできる。そして、両表面と現像剤担持体及び像担持体との接触時の摺擦抵抗を低減し、カバー部材の耐久寿命の低下を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】本実施形態に係る現像装置を示す、(A)は一部を感光ドラム側から見た図、(B)は、現像スリーブの回転軸に直交する断面図。
【図3】現像剤の動きを説明するために、現像装置を切断して示す概略構成図。
【図4】(A)は現像装置の一部を切断して感光ドラム側から見た図、(B)は、現像スリーブ及び磁性シールを取り出して示す、回転軸に直交する断面図。
【図5】本実施形態に係るシートを示す、(A)は概略平面図、(B)は一部を拡大した断面図、(C)及び(D)は、それぞれ表面形状が異なる別例を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図1ないし図5を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略について、図1を用いて説明する。なお、以下の説明では、画像形成装置の1例として、フルカラーの画像を形成するタンデム型の画像形成装置について説明するが、本発明が、その他の画像形成装置にも適用できることは言うまでもない。
【0015】
[画像形成装置]
図1に示すように、画像形成装置100は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色について、各ステーションPY、PM、PC、PKが備えられている。各ステーションはいずれもほぼ同様の構成であり、フルカラー画像においては、それぞれY、M、C、Kの各色の画像を形成する。図1では、各ステーションの各構成の符号にY、M、C、Kを添えて示しているが、以下の説明では添え字を省略する。したがって、例えば、現像装置4とあれば、Y、M、C、K各ステーションにおける現像装置4Y、現像装置4M、現像装置4C、現像装置4Kを共通して指すものとする。
【0016】
像担持体である感光ドラム1は回転自在に設けられており、その感光ドラム1の表面を、コロナ帯電器(帯電ローラの場合もある)である一次帯電器2の放電に伴う荷電粒子によって一様に帯電する。その後一様に帯電された感光ドラム1の表面上を、例えばレーザのような潜像形成手段としての発光素子3によって情報信号に応じて変調された光で露光して暗部電位を放電させ、感光ドラム1の表面に静電潜像を形成する。こうして形成された静電潜像は、現像装置4によってトナー像として感光ドラム1上に可視像化する。
【0017】
次に、そのトナー像を、一次転写手段である一次転写ローラ5に電源D1から一次転写バイアスを印加することによって、一次転写部Tで中間転写体である中間転写ベルト25に転写する。この際、中間転写ベルト25が回転することにより、順次各ステーションでトナー像を重ねるように堆積させる。そして、各色が重ねられたトナー像が二次転写部T2まで搬送され、二次転写内ローラ23と二次転写外ローラ14との間で、電源D2から二次転写バイアスを印加する。この際、二次転写部T2にトナー像とタイミングを合わせて搬送された記録材Pに全色を一括して二次転写する。
【0018】
トナー画像が載った記録材Pは定着装置7に搬送され、定着装置7よってトナー像が記録材Pに定着される。一方、感光ドラム1上の転写残トナーはクリーニング装置6により、中間転写ベルト25上の転写残トナーはベルトクリーニング装置26により、それぞれ除去される。また、画像形成で消費されたトナーはトナー補給槽から現像装置4に補給される。
【0019】
また、記録材Pは、給紙カセット10からピックアップローラ11により引き出され、給紙分離装置12で1枚ずつに分離されて、レジストローラ13へ送り出される。レジストローラ13は、停止状態で記録材Pを受け入れて待機させ、中間転写ベルト25に担持されたトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送り出す。中間転写ベルト25は、テンションローラ21、駆動ローラ22、及び二次転写内ローラ23に掛け渡して支持され、駆動ローラ22に駆動されて矢印R2方向に回転する。
【0020】
[現像装置]
次に、図2ないし図5により本実施形態の現像装置4について説明する。現像装置4は、図2に示すように、現像容器40と、それぞれが現像剤担持体を構成する現像剤担持部材である現像スリーブ41、43と、カバー部材であるシート70とを備える。現像容器40は、非磁性のトナーと磁性を有するキャリアとから構成される2成分現像剤を収容する。また、現像容器40は、区画された供給室47及び撹拌室48を有し、供給室47内には供給スクリュー45が、撹拌室48内には撹拌スクリュー46が、それぞれ配置されている。これら各スクリュー45、46は、それぞれ回転駆動され、現像剤を撹拌しつつ互いに逆方向に搬送する。
【0021】
本実施形態の場合、供給室47と撹拌室48とが上下に並ぶように配置され、下側の撹拌室48に補充用の現像剤(主としてトナー、キャリアが含まれる場合もある)が供給される現像剤供給口50を設けている。また、上側の供給室47に現像剤吐出口49を設けている。また、両室47、48の両端部を連通させ、これら両室で現像剤の受け渡しが行われるようにし、現像剤の循環経路を構成している。
【0022】
また、現像スリーブ41、43は、現像容器40の両室47、48よりも感光ドラム1側に回転駆動可能に配置され、現像容器40の開口部40aから両スリーブ41、43の表面の一部が露出するようにしている。これら1対の現像スリーブ41、43は、互いに回転軸が平行となるように、且つ、感光ドラム1の回転方向に関して隙間をあけて配置されている。即ち、1対の現像スリーブ41、43は、感光ドラム1の回転方向に沿って上下に並ぶように、互いに隙間をあけて配置される。また、現像スリーブ41、43の回転軸は、感光ドラム1の回転軸と平行に配置される。
【0023】
また、現像スリーブ41、43内には、それぞれ多極磁石であるマグネット42、44を配置している。これらマグネット42、44は、現像容器40に回転不能に固定されている。また、マグネット42、44は、現像スリーブ41、43の回転方向に複数のN極とS極とを交互に並べ、感光ドラム1と対向する面と反対側の一部には磁極を有さない構成としている。
【0024】
このように構成される現像装置4は、図3に示すように、撹拌スクリュー46の搬送方向上流側に位置する現像容器40の端部に配置された現像剤供給口50を通じて、トナー比率を高めた補充用の現像剤が撹拌室48に供給される。撹拌スクリュー46は、現像剤を軸方向に搬送して供給室47へ循環させる過程で、循環する現像剤に、現像剤供給口50を通じて供給された補充用の現像剤を混合する。また、同時に、現像後に残った下側の現像スリーブ43から分離して撹拌室48に戻った現像剤を、循環する現像剤に取り込んで混合する。供給スクリュー45は、現像剤を軸方向に搬送して撹拌室48へ循環させる過程で、帯電した現像剤を上側の現像スリーブ41の長手方向に渡って一様に供給する。供給スクリュー45の搬送方向下流側に位置する現像容器40の端部に配置された現像剤吐出口49を通じて、循環する現像剤の一部を帯電性能の低下したものとして溢れ出させて排出している。
【0025】
現像装置4による感光ドラム1上に形成された静電潜像の現像は、次のように行う。まず、供給スクリュー45及び撹拌スクリュー46によって、現像剤を図3の紙面と垂直な方向に搬送しつつ撹拌して、非磁性トナーを負極性に、磁性キャリアを正極性にそれぞれ帯電させる。帯電した2成分現像剤は、マグネット42、44の周囲で回転する現像スリーブ41、43に、穂立ち状態で担持されて、感光ドラム1を摺擦する。電源D4は、負極性の直流電圧Vdc(例えば−350V)に、例えば、周波数8.0kHz、ピーク間電圧Vpp=1.8kVの矩形波の交流電圧を重畳した振動電圧を現像スリーブ41、43に印加する。これにより、直流電圧Vdcによって現像スリーブ41、43よりも相対的に正極性となった感光ドラム1の静電潜像へ、負極性に帯電したトナーが移動して、感光ドラム1の静電潜像が反転してトナー現像される。
【0026】
このときの現像剤niの動きについて図3により説明する。現像スリーブ41によって感光ドラム1との対向面へ搬送された現像剤ni中のトナーは、感光ドラム1の静電潜像と現像スリーブ41との電位差によって電気力を受け、現像スリーブ41から感光ドラム1へ向かって飛翔する。詳しく説明すれば、現像スリーブ41に印加された交流電圧によってトナーは、現像スリーブ41と感光ドラム1との対向間隔(ギャップ)を往復運動する。負極性に帯電したトナーは、往復運動をしながら、現像スリーブ41にかかる直流電圧Vdcと静電像との電位差に従って移動する。これにより、暗部電位VDの領域ではトナーが現像スリーブ41に戻り、明部電位VLの領域では電位差に応じた量のトナーが感光ドラム1に付着する。
【0027】
上側の現像スリーブ41に担持された現像剤niは、この現像スリーブ41と下側の現像スリーブ43との対向領域に形成されたマグネット42、44の磁気力線に沿って下側の現像スリーブ43に移動する。マグネット42のN3磁極よりも回転方向の下流には磁極がないため、この部分で2成分現像剤niが現像スリーブ41から剥落する。剥落した2成分現像剤niは、マグネット44のS3磁極に吸着されて現像スリーブ43に載せ替えられる。
【0028】
現像スリーブ43によって感光ドラム1との対向面へ再び搬送された現像剤niのトナーは、感光ドラム1の静電像と現像スリーブ43との電位差によって電気力を受け、現像スリーブ43から感光ドラム1へ向かって飛翔する。トナーは、現像スリーブ43に印加された交流電圧によって感光ドラム1との対向間隔を往復運動して、現像スリーブ43にかかる直流電圧Vdcと静電像との電位差に応じた量が感光ドラム1に付着する。現像によってトナーの一部が消費された現像剤niは、現像スリーブ43に担持されて回転し、再び現像容器40に回収されて撹拌室48へ戻される。
【0029】
[現像スリーブの表面性状]
上述のように現像剤を担持搬送する現像スリーブ41、43は、軸方向中間部に現像剤を担持する担持部41a、43aを、軸方向両端部に担持部41a、43aよりも現像剤を担持しにくくした非担持部41b、43bをそれぞれ設けている。担持部41a、43aは、例えば、アルミニウム合金やステンレスなどの金属により円筒状に形成された現像スリーブ41、43の表面にブラスト加工を施すことなどにより、この表面に凹凸を形成した部分である。現像剤はこの凹凸部分に保持されることにより、現像スリーブ41、43に担持される。非担持部41b、43bは、上述のようなブラスト加工を施さず、担持部41a、43aよりも表面粗さを小さくした部分(金環部)である。
【0030】
非担持部41b、43bには凹凸が形成されていないため、現像剤を保持しにくく、マグネット42、44により現像剤が吸着されたとしても、現像スリーブ41、43の回転によりこの現像剤が担持されずに非担持部41b、43bから殆ど離れてしまう。なお、非担持部41b、43bは、感光ドラム1の画像形成領域から外れた非画像形成領域に配置されている。現像スリーブ41、43は、このように担持部41a、43a、非担持部41b、43bを有することにより、担持部41a、43aにより積極的に現像剤を搬送し、非担持部41b、43bでは現像剤が搬送されないようにしている。
【0031】
[磁性シール]
また、本実施形態の現像装置4は、現像スリーブ41、43の軸方向両端部に、磁性シール51、52をそれぞれ配置している。この部分の構成について図4を用いて説明する。磁性シール51、52は、図4(B)に示すように、表面に磁極を配置した帯状の磁石部材を湾曲させたものである。このような磁性シール51、52は、それぞれ、現像スリーブ41、43の軸方向両端部の非担持部41b、43bの感光ドラム1と対向する側と反対側を覆うように配置されている。
【0032】
図4(A)に示すように、現像スリーブ41の端部に配置された磁性シール51は、表面に現像剤の磁気穂Hを形成して、磁性シール51と現像スリーブ41との隙間を埋めている。これにより、磁性シール51と現像スリーブ41の隙間を通じて軸方向へ2成分現像剤が移動して、現像スリーブ41の端部に現像剤が付着したり、現像容器40から漏れ出すことを抑制している。
【0033】
このように磁性シール51に形成された磁気穂Hによって、現像スリーブ41における現像剤の担持領域A1{図2(A)、図4(A)の斜線で示す部分}が長手方向(軸方向)に限界付けられる。担持領域A1に担持された現像剤は、その後、感光ドラム1に対向する現像領域A2{図2(A)、図4(A)の斜格子で示す部分}を経て、現像スリーブ41と現像スリーブ43の隙間G1に搬送される。隙間G1では、現像スリーブ41に形成された磁気穂Hが引き抜かれて現像スリーブ43へ乗り移るように現像剤が移動する。
【0034】
このとき、表面がカウンタ方向に移動する現像スリーブ41と現像スリーブ43との間で急激な方向転換を伴って現像剤が移動するため、現像スリーブ41と現像スリーブ43の隙間G1では、現像剤が外側へ少し拡散する。このため、現像スリーブ43における現像剤の担持領域A3{図2(A)、図4(A)の斜線で示す部分}は、現像スリーブ41における現像剤の担持領域A1よりも長手方向の外側(端部側)へ広くなる。担持領域A3に担持された現像剤は、その後、感光ドラム1に対向する現像領域A4{図2(A)、図4(A)の斜格子で示す部分}に搬送される。
【0035】
また、隙間G1では、急激な方向転換を伴って現像剤が移動するため、ごく少量の現像剤が隙間G1に沿って2成分現像剤の担持領域の長手方向外側の隙間G2へ飛散する。そして、隙間G2内の2成分現像剤の一部が、回転する現像スリーブ43により、隙間G2から感光ドラム1側へ向かって飛散することになる。
【0036】
一方、現像スリーブ43の端部に配置された磁性シール52も、図4(A)に示すように、表面に現像剤の磁気穂Hを形成して、マグネット44が磁極を持たない範囲を摺擦して現像スリーブ43に連れ回る現像剤を除去する。また、磁性シール52と現像スリーブ43との隙間を磁気穂Hで埋めて、現像スリーブ43の端部に向かって軸方向へ現像剤が移動するのを妨いでいる。図4(B)に示すように、現像スリーブ41、43の隙間G2に近い側の磁性シール51、52の端部は、下流側のマグネット44の隙間G2と対向するS3磁極と同一極性の磁極としている。これにより、磁性シール52の隙間G2側の端部とマグネット44のS3磁極との間に反発磁界を形成して、現像スリーブ43に連れ回る現像剤が現像スリーブ41、43の隙間G2へ搬送されることを抑制している。
【0037】
このように磁性シール51、52を設けることにより、現像容器40内から2成分現像剤が、担持領域A1、A2の外側の隙間G2を通じて漏れ出すことを抑制している。但し、現像容器40内から現像剤が隙間G2を通じて漏れ出すことを抑制する磁気的な対策は、このような磁極配置には限定されない。
【0038】
しかし、このように磁性シール51、52を設けても、担持領域A1、A3の外側の現像スリーブ41、43の隙間G2から現像剤が漏れ出すことを十分には防止できない。本実施形態では、このために、シート70を設けるが、仮に、このシート70を設けなかった場合について説明する。
【0039】
長期間に渡って大量の画像形成を行うと、図3に示すように現像装置4が搭載されたガイド部材53上で、現像スリーブ41、43の担持領域A1、A3の外側の直下位置に、現像剤niが蟻塚のように堆積する。堆積した現像剤niは、帯電電荷が減衰すると、非磁性トナーと磁性キャリアとに分離する。このため、例えば、トナーカートリッジとして現像装置4を画像形成装置100に対して着脱自在とした場合、現像装置4を引き出す際に生じる僅かな風で微粒子の非磁性トナーが周囲に飛び散ってしまう。そして、堆積した現像剤は長手方向の内側に向かって広がり、中間転写ベルト25に落下して画像を汚してしまう。
【0040】
また、感光ドラム1の回転に伴って運ばれたトナーは、図1に示すクリーニング装置6へ到達し、クリーニングブレードよりも長手方向外側の領域を汚してしまう。このため、クリーニングブレードの外側に設置されたサイドシールにせき止められて落下し、クリーニング装置6を搭載したガイド部材上で、蟻塚のように堆積する。そして、ここでも、ガイド部材上を長手方向の内側に向かって広がり、中間転写ベルト25に落下して画像を汚してしまう。さらに、トナーの一部は、クリーニング装置6をすり抜けて一次帯電器2まで達し、帯電器2のシールド板やグリッドを汚して、メンテナンス頻度を高める結果となる。
【0041】
また、図4(A)に示したように、担持領域A1、A3の外側の隙間G2からは、担持領域A1、A3の隙間G1からよりも多く、2成分現像剤が感光ドラム1側へ飛散する。そして、2成分現像剤の漏れ出しに起因する非磁性トナーが感光ドラム1に連れ回って、感光ドラム1の端部の周囲に不必要なトナー汚染を引き起す可能性もある。
【0042】
[シート]
本実施形態では、現像容器40から現像剤が漏れることを抑制するために、現像スリーブ41、43の現像剤の担持領域A1、A3の外側をカバー部材であるシート70で覆って、隙間G2から漏れ出す現像剤を現像装置4内に閉じ込めるようにしている。隙間G2から漏れ出す現像剤をシート70で捕捉した後、現像スリーブ43の回転を利用して現像容器40へ回収する。
【0043】
このようなシート70について、図2及び図5により詳しく説明する。カバー部材であるシート70は、ポリウレタンなどの樹脂材料をフィルム状に形成したもので、現像スリーブ41、43の感光ドラム1と対向する一部を覆うように配置される。配置状態でシート70の両表面は、これら現像スリーブ41、43及び感光ドラム1と近接又は接触する。本実施形態の場合、シート70は、少なくとも1対の現像スリーブ41、43の非担持部同士の隙間G2を覆うように配置されている。
【0044】
具体的には、現像容器40の感光ドラム1と対向する開口部40aのうち、現像スリーブ41、43の非担持部41b、43bが存在する、軸方向両端部を覆うようにシート70を固定している。このためにシート70を所定の長さを有する帯状に形成し、長手方向両端部を、現像容器40を構成する、現像スリーブ41の上側の上枠40b1と、現像スリーブ43の下側の下枠40b2とに固定している。したがって、シート70は、上枠40b1と下枠40b2とに掛け渡されるように配置され、開口部40aのうち、これら両枠40b1、40b2との間部分を覆う。
【0045】
また、現像スリーブ41、43の感光ドラム1と対向する部分は、開口部40aよりも僅かに突出している。したがって、シート70は、現像スリーブ41、43の感光ドラム1と対向する部分に巻き付けられるように、且つ、一部が自重により接触するように配置されている。このためにシート70の長さは、この巻き付き角を考慮した長さとしている。
【0046】
また、シート70の現像容器40の端部側の側部70aは、現像容器40の軸方向両端部を構成する横枠40b3を覆うようにしている。そして、このシート70の側部70aの少なくとも現像スリーブ41、43の間に位置する部分を、横枠40b3に接着などにより固定している。これにより、シート70が、現像スリーブ41、43に対して所定の巻き付き角を保持して弛まないようにすると共に、側部70a全体が横枠40b3に密着し易くしている。なお、側部70a全体を横枠40b3に接着しても良い。一方、シート70の現像容器40の中央側の側部70bは、現像スリーブ41から現像スリーブ43への現像剤の受け渡しに伴って外側へ拡散した現像剤の担持領域A3に接触しない範囲で、できるだけ近付けて位置決めされている。
【0047】
このようなシート70は、両表面の形状をそれぞれ凹凸(シボ)に形成し、図5(A)に示すように、それぞれの表面を梨地状としている。言い換えれば、シート70の両表面の表面粗さを粗くしている。この凹凸の高さは、図5(B)に示すように、両表面のそれぞれの凹凸の平均の高さの合計tが、例えば、100μm以下となるようにしている。
【0048】
また、シート70の両表面の凹凸は、感光ドラム1と対向する面71の方が、現像スリーブ41、43と対向する面72よりも接触時の摺擦抵抗が小さくなるように形成されている。具体的には、シート70の感光ドラム1と対向する面71を、現像スリーブ41、43と対向する面72よりも表面粗さを粗くしている。このために、例えば、面71に形成する凹凸の高さを面72に形成する凹凸の高さよりも大きくすると共に、面71の凹凸の数を面72の凹凸の数を少なくする。
【0049】
このように面71を面72よりも摺擦抵抗を小さくするのは、次のような理由による。即ち、現像スリーブ41、43は、アルミニウム合金やステンレスなどの金属製であるため、樹脂材料であるシート70とは、金属と樹脂との接触となり、摺擦抵抗は比較的小さくなる。これに対して、感光ドラム1は、例えばアルミニウム合金製の管の表面に樹脂コーティングを施しているため、シート70とは、樹脂と樹脂との接触となり、摺擦抵抗が比較的大きくなる。したがって、本実施形態では、比較的摺擦抵抗が大きくなるシート70の感光ドラム1と対向する面71の表面粗さを大きくし、感光ドラム1との接触面積を小さくすることにより、摺擦抵抗の低減を図っている。
【0050】
上述のように、シート70の表面に凹凸を形成するためには、例えば次のような方法がある。即ち、表面の形状を凹凸に形成していない薄手(例えば厚さ100μm程度)の樹脂フィルムの表面に、表面の形状凹凸に形成した厚手の紙などのシートを密着させ、圧をかけることにより厚手のシートに形成した凹凸を樹脂フィルの表面に転写する。或は、表面の形状を凹凸に形成した金属や十分な剛性を有する合成樹脂製のローラに樹脂フィルムの表面を密着させ、対向するローラとの間でこのフィルムを挟持しつつ回転させることにより、ローラの表面の凹凸を樹脂フィルムの表面に転写する。何れにしても、厚手のシートやローラの表面に、シート70の表面の形状を形成すべき所望の凹凸を有するように形成し、この凹凸を薄手の樹脂フィルムに転写することにより、所望の表面性状を有するシート70が得られる。
【0051】
なお、シート70の表面に形成する凹凸は、前述の図5(A)に示すような梨地状以外とすることもできる。例えば、図5(C)に示すように、シート70の長手方向と平行に凹凸を形成しても良いし、図5(D)に示すように、網目状に形成することもできる。何れにしても、相手部材に対する接触面積が小さくなるような形状であれば良い。また、凹凸を構成する突部の先端の形状もできるだけ尖るようにして、接触面積を小さくすることが好ましい。
【0052】
また、本実施形態の場合、シート70の現像スリーブ41、43と対向する面72に、予めトナーを塗布している。これにより、シート70の面72に形成した凹凸にトナーを担持させ、シート70を現像容器40の所定位置に配置した状態で、現像スリーブ41、43とシート70との間にトナーが介在するようにしている。なお、シート70が対向するのは現像スリーブ41、43の非担持部41b、43bであるため、この非担持部41b、43bにも予めトナーを塗布するようにしても良い。また、このように塗布するトナーとしては、使用されるステーションの色に応じたものとすることが好ましいが、トナーを塗布する段階でどのステーションに使用されるかが分からない場合には、無色のクリアトナーを使用することが好ましい。
【0053】
[実施形態の効果]
上述のように構成される本実施形態の場合、シート70を、現像スリーブ41、43の現像剤担持領域A1、A3の軸方向外側で隙間G2を含む部分を覆って配置されるため、隙間G2から漏れ出す現像剤がシート70により外部に飛散することを抑えられる。隙間G2から飛び出す現像剤は、シート70にぶつかり、下側の現像スリーブ43の回転方向に沿って現像容器40へ案内される。ここで、シート70は、図2(B)に示すように、現像スリーブ41、43の回転方向に垂直な輪郭に沿って出入りするように、スリーブ41、43に巻き付くように配置されている。また、シート70の側部70aは横枠40b3に密着している。したがって、上述のように隙間G2から飛び出す現像剤が、現像容器40の外部に漏れ出すことを十分に抑制できる。
【0054】
また、シート70は、上述のように現像スリーブ41、43に巻き付くように配置され、しかも感光ドラム1と近接対向している。現像スリーブ41、43と感光ドラム1との間の隙間は、例えば、300〜500μm程度であり、この隙間に配置されるシート70の厚さは100μm程度である。このため、シート70と感光ドラム1とはほぼ接触する。画像形成時には、上下の現像スリーブ41、43及び感光ドラム1はそれぞれR3、R1の方向に回転しているため、シート70は現像スリーブ41、43及び感光ドラム1によって恒常的に回転方向へ引っ張られている。シート70は特に上側のスリーブ41への巻き付き角が大きい。
【0055】
これに対して本実施形態の場合には、シート70の両表面の形状を凹凸に形成することにより、両表面と現像スリーブ41、43及び感光ドラム1とが接触した場合に、両表面の形状凹凸に形成していない構成よりも接触面積を小さくできる。そして、両表面と現像スリーブ41、43及び感光ドラム1との接触時の摺擦抵抗を低減し、シート70の耐久寿命の低下を抑えられる。
【0056】
また、シート70の両表面の形状を凹凸に形成することにより、現像装置4の稼動時に現像スリーブ41、43の金環部(非担持部41b、43b)に付着するトナー粉を、この凹凸部分でホールド(担持)できる。これにより、現像スリーブ41、43とシート70との間にトナーを介在させて、シート70と現像スリーブ41、43とが直接接触する機会を減らすことができ、シート70と現像スリーブ41、43との摺擦抵抗をより低減できる。
【0057】
また、本実施形態の場合、予めシート70にトナーを塗布して、現像スリーブ41、43とシート70との間にトナーを介在させているため、上述のように現像装置4の稼動により金環部に付着するトナーが少ない初期状態でも、摺擦抵抗を低減できる。即ち、初期状態(製品出荷時など)では、トナーが非担持部41b、43bとシート70との間にまで搬送されないため、トナーを塗布していなければ、この間部分にトナーがない状態で運転されることになる。そして、現像スリーブ41、43とシート70との摺擦抵抗が大きくなって、シート70が受けるダメージが大きくなってしまう。これに対して、本実施形態のように初期状態でトナーが存在すれば、このようなシート70のダメージを低減できる。
【0058】
なお、上述のようにシート70に形成する凹凸を、現像スリーブ41、43の金環部側に形成することも考えられるが、金環部に凹凸を形成すると現像剤漏れや画像不良が生じる可能性がある。即ち、前述したように、現像スリーブ41、43の中間部外周面には、現像剤を担持搬送するための形状(ブラスト加工)が既に施してある。現像剤は現像スリーブ41、43の外周部ブラスト凹凸面が回転することによって搬送される。一方、現像スリーブ41、43の端部の非画像域に対応する金環部にはブラスト加工を施さないことで、スリーブ表面の現像剤搬送性をなくしている。したがって、金環部にまでブラスト加工を施してしまうと、現像剤を積極的に搬送して現像剤漏れや画像不良を招いてしまう可能性がある。
【0059】
[実施形態の別例]
上述の実施形態では、ツインスリーブ方式の現像装置に本発明を適用したが、本発明は、現像スリーブが1本の構造にも適用可能である。この場合、この1本の現像スリーブで現像剤担持体を構成する。即ち、現像容器に回転駆動可能に支持された1本の現像スリーブの軸方向両端部の金環部に対向する位置にカバー部材であるシートを設け、このシートの両表面の形状を凹凸に形成する。
【0060】
また、シートを設ける位置は、現像剤担持体の両端部に対向する位置だけではなく、その他、現像容器から現像剤が漏れ出す可能性がある位置に配置することもできる。要は、現像剤担持体と像担持体とが対向する一部をシートにより覆って、現像剤が現像容器から漏れ出すことを抑制できれば良い。
【符号の説明】
【0061】
1・・・感光ドラム(像担持体)、4・・・現像装置、40・・・現像容器、41,43・・・現像スリーブ(現像剤担持部材、現像剤担持体)、41a、43a・・・担持部、41b、43b・・・非担持部、70・・・シート(カバー部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性のトナーと磁性を有するキャリアとから構成される2成分現像剤を収容する現像容器と、
前記現像容器の像担持体に対向する位置に配置され、前記現像剤を担持搬送する現像剤担持体と、
前記現像容器から前記現像剤が漏れることを抑制するために、前記現像剤担持体の前記像担持体と対向する一部を覆うように配置されるカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、両表面の形状を凹凸に形成することにより、前記両表面の前記現像剤担持体及び前記像担持体に対する接触時の摺擦抵抗を低減した、
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記カバー部材の前記像担持体と対向する面の方が、前記現像剤担持体と対向する面よりも摺擦抵抗が小さくなるように前記凹凸を形成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤担持体は、軸方向中間部に前記現像剤を担持する担持部と、軸方向両端部に前記担持部よりも表面粗さを小さくして前記現像剤を担持しにくくした非担持部と、を有し、
前記カバー部材は、前記非担持部を覆うように配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記カバー部材の前記現像剤担持体と対向する面にトナーを塗布した、
ことを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体は、互いに平行に、且つ、前記像担持体の回転方向に関して隙間をあけて配置された1対の現像剤担持部材から構成され、
前記1対の現像剤担持部材は、それぞれ前記担持部と前記非担持部とを有し、
前記カバー部材は、少なくとも前記1対の現像剤担持体の非担持部同士の隙間を覆うように配置されている、
ことを特徴とする、請求項3又は4に記載の現像装置。
【請求項6】
像担持体と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置と、を備えた画像形成装置において、
前記現像装置が、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の現像装置である、
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−237714(P2011−237714A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110888(P2010−110888)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】