説明

現在位置検出装置

【課題】 路面温度を予測し、より正確に走行距離を補正する。
【解決手段】 車両の走行距離に対する車速パルスの距離係数を学習し、学習した距離係数を用いて車両の現在位置を検出する現在位置検出装置(1)において、外気温度、日射状態、降雨状態のパラメータのうち少なくとも2つのパラメータに基づいて路面温度を算出する路面温度算出手段(13)と、算出した路面温度に基づいて距離係数を補正する距離係数補正手段(12)と、補正した距離係数を用いて走行距離を算出する走行距離算出手段(14)とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車速パルスを検出して走行距離を求め、車両の現在位置を検出する現在位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のナビゲーションシステムにおいて、距離の分かっている区間を車両が走行したときのタイヤの回転数を車速パルスで計測し、車速パルス計測値と距離との関係より距離係数をあらかじめ求め、実際走行したときに計測した車速パルスと距離係数とから走行距離を算出して現在地の検出を行っている。しかし、車速パルス信号は、タイヤの回転数に比例した信号であるため、タイヤの径が変化すると走行距離に誤差が発生する。この誤差を少なくするために、タイヤ径の変化を光学センサ、圧力センサ、温度センサ等により測定し、タイヤ径の変化に応じて車両の走行距離を補正するようにしたものが提案されている(特許文献1)。この提案においては、タイヤの空気圧変動に起因するタイヤ径の変化の検出は、温度センサにより外気温度を計測することにより行っている。
【特許文献1】特開平10−239092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、タイヤの空気圧変動に起因するタイヤ径の変化を温度センサにより外気温度を計測して行っている。しかし、実際のタイヤの空気圧変動は、外気温度よりも、路面温度に影響される。しかし、外気温度と路面温度とは通常比例関係にはなく、同じ外気温度でも日射状態や降雨状態などの天候により、路面温度は大きく変化するため、外気温度によっては正確な走行距離の補正を行うことはできない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、外気温度、日射量等の日射状態、降雨量等の降雨状態の少なくとも2つのパラメータを用いて路面温度を予測し、より正確に走行距離を補正することを目的とする。
そのために本発明は、車両の走行距離に対する車速パルスの距離係数を学習し、学習した距離係数を用いて車両の現在位置を検出する現在位置検出装置において、外気温度、日射状態、降雨状態を表すパラメータのうち少なくとも2つのパラメータに基づいて路面温度を算出する路面温度算出手段と、算出した路面温度に基づいて距離係数を補正する距離係数補正手段と、補正した距離係数を用いて走行距離を算出する走行距離算出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、外気温度、日射状態、降雨状態のうち少なくとも2つのパラメータによりタイヤと直接接触する路面温度を算出するようにしているので、より正確にタイヤ径の変化に応じて走行距離を補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施形態の現在位置検出装置の構成を示すブロック図、図2は外気温度、降雨状態、日射量と路面温度との関係を示すデータの説明図、図3は算出した路面温度と距離補正係数の関係を示すデータの説明図である。
ナビゲーション装置の重要なパーツとして車両に搭載される現在位置検出装置1は、走行距離に対する車速パルスの距離係数を学習する学習手段11を有していて、距離の分かっている区間やGPS(Groval Positioning System )により距離が分かる直線区間等を走行したときのタイヤの回転数を車速パルスで計測し、車速パルス計測値と距離との関係から距離係数を学習している。
【0007】
距離係数補正手段12は、路面温度によりタイヤの径が変化したときの距離係数を補正するためのものであり、本実施形態では外気温度センサ2、日射量センサ3、雨滴センサ4から求めた外気温度、日射状態、降雨状態から路面温度算出手段13により路面温度を算出して距離係数を補正する。
【0008】
例えば、外気温度を低温(例、10℃以下)、中温(例、10〜30℃)、高温(例30〜50℃)、降雨状態を弱(例、霧雨や小雨でワイパーを間欠駆動する程度)、中(例、通常の降雨状態で、ワイパーを連続駆動する程度)、強(例、土砂降りで、ワイパーを高速駆動する程度)、日射状態を日射量センサの出力に基づき弱(例、曇りの状態で日射量小)、中(例、晴れの状態で日射量中)、強(例、快晴の状態で日射量大)としたときの路面温度を、予め実験データとして、図2に示すように求めて記憶しておき、走行時にこれら3つのパラメータを測定してその時の路面温度を、図2のデータを参照して算出する。もちろん、路面温度の実験データは、外気温度、日射状態、降雨状態をより詳細に区分して求めておけば、走行時に外気温度、日射状態、降雨状態を測定することにより、より正確な路面温度が求められる。
【0009】
路面は直接タイヤと接触するため、路面の温度変化によりタイヤの空気圧が変化してタイヤ径が変化すると、タイヤ1回転当たりの走行距離が変化する。その結果、車速パルスと走行距離の関係、すなわち、距離係数が変化することになる。そこで、距離係数補正手段12により、実際の車両走行時に、図3に示すような路面温度と距離補正係数との関係をテーブルとして求め、この補正テーブルを用いて、走行距離算出手段14により走行距離を算出する。
【0010】
上記したように路面は直接タイヤと接触するため、路面温度変化とタイヤの空気圧変化はかなりの程度比例関係にあると考えられるので、路面温度と距離補正係数の関係を求めることにより、単に、外気温度のみからタイヤの空気圧変化を予測するものに比して、正確に走行距離を算出することが可能となる。
【0011】
次に、図4〜図6により本実施形態における走行距離の算出方法について説明する。
図4は路面温度補正テーブル(図3に示した路面温度と距離補正係数との関係を示すテーブル)を更新するフローを示す図である。
ステップS1は、未だ実測データが無い状態を示しており、学習回数n=0、補正データは無効の状態にある。ステップS2では、車速パルスの距離計算が終了したか否か判断する。ここでの判断は、例えば、図5に示す道路を矢印に示すように走行したとき、一定以上の角度の分岐点Pから、その次の一定以上の角度の分岐点Qまでの距離が既知、或いはGPSで距離測定可能な場合に、車速パルスを計数して距離計数を学習する。ステップS2におけるN(計算未終了)は、車両が分岐点PQ間を走行している最中であることを示しており、Y(計算終了)は分岐点Qを通過したことを示している。
【0012】
次いで、ステップS3において、平均路面温度を算出する。すなわち、分岐点PQ間を走行している時、例えば、所定時間間隔で外気温度、日射状態、降雨状態を検出し、図2に示した実験データを参照し、これに基づいて所定時間間隔で路面温度を求め、これら求めた路面温度の平均値を算出する。ステップS4においては、算出した平均路面温度に基づいて、路面温度補正データを更新する。路面温度補正データの更新とは、図3に示すような路面温度に対する距離補正係数を求めることである。
【0013】
次いで、ステップS5において、学習回数を1回増やし、ステップS6において、学習回数nが所定値Nを超えたか否か判断し、超えていれば補正データ=有効のフラグが立ち、超えていない場合は有効のフラグは立たない。そして、学習回数nが所定値Nを超えた場合も、超えていない場合もステップS2に戻り、この処理は無限ループで行われて常時路面温度に対する距離補正係数の更新が行われる。なお、上記ステップS1において、初期値がある場合には、補正データは最初から有効であり、ステップS2以下の処理で有効な補正データを補正していくことになる。
【0014】
図6は、補正データが有効な場合に走行距離を算出する処理フローを示す図である。
ステップS11において、補正データが有効か否か判断し、有効でなければ走行距離の算出は行わず、有効な場合には、ステップS12において外気温度、日射状態、降雨状態を検出して、図2のデータを参照し、これに基づいて路面温度を算出する。次いで、ステップS13において図3のテーブルを参照して距離補正係数を算出し、ステップS14により距離補正係数を用いて走行距離を算出する。
【0015】
なお、上記の例に限らず、例えば、気温が極めて低く、日射状態が曇りの場合には距離係数の学習を停止するようにしてもよい。気温が極めて低く(例、5℃以下)、日射状態が曇りの場合、路面が凍っている場合が考えられる。路面が凍っている場合にはタイヤのスリップ等で正確な距離係数の学習ができない(タイヤが回転して車速パルスは発生するが、実際は距離が進んでいないため距離係数に誤差が生じる)ため、気温が極めて低く、日射状態が曇りの場合には距離係数の学習を一時的に停止することで誤学習を防止することができる。
【0016】
また、図1に示したようなセンサを使わず、気温、日射状態、降雨量情報を、情報センタから通信で入手するようにしてもよい。現在位置検出装置に図示しない情報受信装置を備え、外部の天気情報センタから現在地周辺の気温、日射状態、降雨量情報を通信で入手することにより、センサを使わなくても各種情報を得ることが可能である。この際、情報受信のタイミングとしては定期的に受信(例:10分毎に受信)及び車両の移動に伴い一定距離移動する毎に受信(例:2km走行毎に受信)を行えばよい。
【0017】
また、上記の例においては、外気温度、日射状態、降雨状態の3つのパラメータから路面温度を算出するようにしたが、全パラメータが取得できない場合には、2つのパラメータを使用して補正するようにしてもよい。また、降雨状態を雨滴センサにより検出することに代えて、ワイパーの動作状態を用いるようにしてもよいし、日射量センサにより日射状態を検出することに代えて光センサで車両周辺の明るさを測定して日射状態を検出してもよく、これらのように外気温度、日射状態、降雨状態を検出する方法は前述の例以外の方法を代用してもよい。
【0018】
また、タイヤ径の変化は路面温度だけでなく、走行速度による遠心力によっても変化するので、路面温度に対して距離補正係数を求めるのに加えて、さらに走行速度を加味して距離補正係数を求めるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば、より正確にタイヤ径の変化に対する走行距離の補正を行うことができるので産業上の利用価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の現在位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】外気温度、降雨状態、日射量と路面温度の関係を示す図である。
【図3】算出した路面温度と距離補正係数の関係を示す図である。
【図4】路面温度補正テーブルを更新するフローを示す図である。
【図5】距離係数の学習を説明する図である。
【図6】走行距離を算出する処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1…現在位置検出装置、11…距離係数学習手段、12…距離係数補正手段、13…路面温度算出手段、2…外気温度センサ、3…日射量センサ、4…雨滴センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行距離に対する車速パルスの距離係数を学習し、学習した距離係数を用いて車両の現在位置を検出する現在位置検出装置において、
外気温度、日射状態、降雨状態のパラメータのうち少なくとも2つのパラメータに基づいて路面温度を算出する路面温度算出手段と、
算出した路面温度に基づいて距離係数を補正する距離係数補正手段と、
補正した距離係数を用いて走行距離を算出する走行距離算出手段と、
を備えたことを特徴とする現在位置検出装置。
【請求項2】
前記降雨状態は、ワイパーの動作状態により表すことを特徴とする請求項1記載の現在位置検出装置。
【請求項3】
前記距離係数補正手段は、さらに走行速度を加えて距離係数を補正することを特徴とする請求項1記載の現在位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−343219(P2006−343219A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169216(P2005−169216)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】