説明

球状体吸着ヘッドおよび球状体搭載装置

【課題】搭載対象体に対して球状体を確実に搭載させる。
【解決手段】先端部21a側に開口部42aを有する箱状に形成された本体部21と、互いに重ね合わせた状態で開口部42aを閉塞するように本体部21に配設される2つの多孔質体22a,22bと、球状体を整列させる挿通孔51が形成されて多孔質体22aの外面側に配設された整列シート23とを備えて、本体部21と多孔質体22a,22bとによって形成される内部空間42が減圧されたときに多孔質体22a,22bを介して行われる吸気によって挿通孔51の形成部位に球状体を吸着可能に構成され、整列シート23に隣接する多孔質体22aは、その平均空孔径が多孔質体22bの平均空孔径よりも短くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状体を吸着する球状体吸着ヘッド、およびその球状体吸着ヘッドを備えて球状体を搭載対象体に搭載する球状体搭載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の球状体吸着ヘッドとして、特許第3228131号公報に開示された導電性ボールの搭載装置に備えられている搭載ヘッドが知られている。この搭載ヘッドは、本体、多孔質体および穴開きプレートを備えて構成されている。この場合、本体の下面側には、下部が開口した真空吸引空間が形成され、本体の中央部には、真空吸引空間に連通する吸引孔が形成されている。また、多孔質体は、板状に構成され、本体に形成されている真空吸引空間の開口部を閉塞するように本体部に装着されている。また、穴開きプレートは、多孔質体の下面に装着されている。この搭載ヘッドでは、吸引孔を介して真空吸引空間が真空吸引されたときに、多孔質体の微細な連通孔を通して吸気が行われ、これによって穴開きプレートに形成されている穴に導電性ボールが吸着される。また、真空吸引を停止することにより、導電性ボールの吸着が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3228131号公報(第2−3頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の搭載ヘッドには、以下の問題点があることを本願発明者は見出した。すなわち、この搭載ヘッドでは、真空吸引空間を真空吸引することにより、真空吸引空間の開口部を閉塞するように装着された板状の多孔質体を通して行われる吸気によって導電性ボールを吸着している。この場合、この搭載ヘッドでは、板状の多孔質体が1つの大きな真空吸引空間の開口部を閉塞するように装着されている。このため、真空吸引空間が真空吸引されて負圧となったときには、多孔質体に加わる外部の大気圧により、真空吸引空間の内部側に向けて中央部が凹むようにして多孔質体が変形(湾曲)するおそれがある。このように多孔質体が変形したときには、導電性ボールが収容されている容器の上方に搭載ヘッドを位置させて導電性ボールの吸着を行わせる際に、穴開きプレートの中央部が導電性ボールから離間し、これに起因して、中央部の穴に導電性ボールが吸着されないおそれがある。また、中央部の穴に導電性ボールが吸着されたとしても、搭載対象体(ワーク)の上部に搭載ヘッドを位置させた状態において、穴開きプレートの中央部が基板から離間することとなるため、吸着を解除したときに、中央部に吸着されていた導電性ボールが、搭載対象体における電極の上に正しく落下しないおそれもある。したがって、この搭載ヘッドを用いて導電性ボールの搭載を行ったときには、搭載対象体における電極の一部に導電性ボールが搭載されない欠陥が生じるおそれがある。この場合、多孔質体を厚く形成して剛性を高め、これによって多孔質体の変形を少なく抑える方法も考えられる。しかしながら、この方法では、多孔質体の厚みが厚くなる分、連続気泡の長さが長くなるため、多孔質体を介して行われる吸気の際の抵抗が大きくなり、これに起因して吸引力が低下する結果、導電性ボールの吸着が困難となるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、搭載対象体に対して球状体を確実に搭載させ得る球状体吸着ヘッドおよび球状体搭載装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の球状体吸着ヘッドは、先端部側に開口部を有する箱状に形成された本体部と、前記開口部を閉塞するように前記本体部に配設された板状の多孔質体と、球状体を整列させる挿通孔が形成されて前記多孔質体の外面側に配設された整列シートとを備えて、前記本体部と前記多孔質体とによって形成される内部空間が減圧されたときに当該多孔質体を介して行われる吸気によって前記挿通孔の形成部位に前記球状体を吸着する球状体吸着ヘッドであって、互いに重ね合わせた状態で配設された複数の前記多孔質体を備え、前記各多孔質体のうちの整列シートに隣接する多孔質体は、当該多孔質体の平均空孔径が他の前記多孔質体の平均空孔径よりも短くなるように形成されている。
【0007】
また、請求項2記載の球状体吸着ヘッドは、請求項1記載の球状体吸着ヘッドにおいて、前記他の多孔質体のうちの少なくとも1つは、当該多孔質体の厚みが前記整列シートに隣接する多孔質体の厚みよりも厚くなるように形成されている。
【0008】
また、請求項3記載の球状体吸着ヘッドは、請求項1または2記載の球状体吸着ヘッドにおいて、前記多孔質体を2つ備え、前記整列シートに隣接する一方の前記多孔質体は、当該一方の多孔質体の平均空孔径が他方の前記多孔質体の平均空孔径よりも短く、かつ前記一方の多孔質体の厚みが前記他方の多孔質体の厚みよりも薄くなるように形成されている。
【0009】
また、請求項4記載の球状体吸着ヘッドは、請求項1から3のいずれかに記載の球状体吸着ヘッドにおいて、前記各多孔質体はセラミックスでそれぞれ形成されている。
【0010】
また、請求項5記載の球状体搭載装置は、請求項1から4のいずれかに記載の球状体吸着ヘッドと、前記球状体を吸着させる吸着位置に前記球状体吸着ヘッドを搬送すると共に前記球状体を吸着している前記吸着ヘッドを搭載対象体の配置位置まで搬送する搬送装置とを備えて、前記球状体を前記搭載対象体に搭載する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の球状体吸着ヘッドによれば、互いに重ね合わせた状態で配設された複数の多孔質体を備えたことにより、整列シートに隣接する多孔質体の平均空孔径を短く規定して十分な通気性を確保し、その多孔質体を除く他の多孔質体の平均空孔径を長く規定して十分な剛性を確保することで、各多孔質体によって十分な吸引力および十分な剛性の双方を確保することができる。このため、この吸着ヘッドによれば、本体部の内部空間の減圧に伴って大気圧が加わったときの中央部分が凹むような多孔質体の変形を十分に少なく抑え、かつ十分な吸引力での吸引を行わせることができる。したがって、この吸着ヘッドによれば、多孔質体の変形によって中央部が吸着対象の球状体が収容されている収容容器から離間することに起因して整列シートにおける中央部の挿通孔の形成部位に球状体が吸着されない事態を防止して、整列シートにおける全ての挿通孔の形成部位に球状体を確実に吸着させることができる。また、この球状体吸着ヘッドによれば、多孔質体の変形が十分に少なく抑えられているため、整列シートにおける全ての挿通孔の形成部位に球状体が吸着されている球状体吸着ヘッドを搭載対象体としての基板の端子に向けて降下させた際に、全ての球状体を各端子に対して十分に近接させることができる。したがって、この球状体吸着ヘッドによれば、全ての球状体が各端子の上に正しく落下して、全ての端子に球状体を確実に搭載することができる。
【0012】
また、請求項2記載の球状体吸着ヘッドによれば、整列シートに隣接する多孔質体を除く他の多孔質体のうちの少なくとも1つの厚みが整列シートに隣接する多孔質体の厚みよりも厚くなるように形成したことにより、整列シートに隣接する多孔質体の通気性をより高めることができると共に、他の多孔質体の剛性をより高めることができる。このため、この球状体吸着ヘッドによれば、これら複数の多孔質体によって一層十分な吸引力および一層十分な剛性を確保することができる結果、搭載対象体としての基板の端子の全てに球状体を一層確実に搭載することができる。
【0013】
また、請求項3記載の球状体吸着ヘッドによれば、2つの多孔質体を備え、整列シートに隣接する一方の多孔質体の平均空孔径が他方の多孔質体の平均空孔径よりも短く、かつ一方の多孔質体の厚みが他方の多孔質体の厚みよりも薄くなるように形成したことにより、一方の多孔質体の通気性を十分に高めて、他方の多孔質体の剛性を十分に高めることができるため、多孔質体を2つだけ備えた簡易な構成でありながら、十分な吸引力および十分な剛性の双方を確保することができる。このため、この球状体吸着ヘッドによれば、搭載対象体としての基板の端子の全てに対する球状体の確実な搭載をコストを低減しつつ実現することができる。
【0014】
また、請求項4記載の球状体吸着ヘッドによれば、各多孔質体をセラミックスでそれぞれ形成したことにより、樹脂等で多孔質体を形成する構成と比較して、多孔質体の剛性をさらに高めることができるため、多孔質体の変形をさらに少なく抑えることができる結果、搭載対象体としての基板の端子の全てに球状体をより確実に搭載することができる。
【0015】
また、請求項5記載の球状体搭載装置によれば、上記の球状体吸着ヘッドを備えたことにより、上記球状体搭載装置が有する効果と同様の効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】半田ボール搭載装置1の構成を示す構成図である。
【図2】吸着ヘッド11の構成を示す斜視図である。
【図3】図2における面Aで切断した吸着ヘッド11の断面図である。
【図4】半田ボール300の直径L1、挿通孔51の直径L2、規制用プレート61の厚みL3、および挿通孔62の直径L4の関係を説明する説明図である。
【図5】挿通孔51の直径L2、多孔質体22aにおける通気経路Haの平均空孔径Da、および多孔質体22bにおける通気経路Hbの平均空孔径Dbの関係を説明する説明図である。
【図6】整列シート23の挿通孔51、および多孔質体22aにおける通気経路Haの開口部の位置関係を説明する説明図である。
【図7】吸着ヘッド11の分解斜視図である。
【図8】半田ボール300の搭載工程を説明する第1の説明図である。
【図9】半田ボール300の搭載工程を説明する第2の説明図である。
【図10】半田ボール300の搭載工程を説明する第3の説明図である。
【図11】半田ボール300の搭載工程を説明する第4の説明図である。
【図12】半田ボール300の搭載工程を説明する第5の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、球状体吸着ヘッドおよび球状体搭載装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
最初に、図1に示す半田ボール搭載装置1の構成について説明する。半田ボール搭載装置1は、球状体搭載装置の一例であって、同図に示すように、吸着ヘッド11、吸引機構12、収容容器13、搬送装置14および制御部15を備え、球状体の一例としての微小な球状粒体である半田ボール(マイクロボール)300(図4参照)を搭載対象体としての基板400の端子401に搭載可能に構成されている。この場合、半田ボール300は、直径L1(同図参照)が80μm程度の球状に構成されている。また、半田ボール300は、半田ボール搭載装置1によって基板400の端子401に搭載された後に加熱溶融されることにより、基板400上にボールグリッドアレイ(BGA)を構成する。
【0019】
吸着ヘッド11は、球状体吸着ヘッドの一例であって、図2,3に示すように、全体として直方体状に形成され、半田ボール300を吸着可能に構成されている。具体的には、吸着ヘッド11は、図3,7に示すように、本体部21、2つ(複数の一例)の多孔質体22a,22b、および整列シート23を備えて構成されている。
【0020】
本体部21は、図3,7に示すように、側壁部31a〜31d(以下、区別しないときには「側壁部31」ともいう)、および基端部側壁部32を備えて、開口部42aを有する箱状に形成されている。また、開口部42aの縁部には、本体部21における先端部21a側の端面(両図における上側の端面)との間で段差を有すると共に、多孔質体22a,22bを位置決めし、かつ多孔質体22a,22bの外周縁部を支持する機能を有する段部41が形成されている。
【0021】
また、図3,7に示すように、基端部側壁部32の中央部には、本体部21と多孔質体22aとによって形成される内部空間42に連通して、内部空間42内の空気を排出するための排気孔32bが形成されている。
【0022】
多孔質体22a,22bは、図3,7に示すように、互いに同じ(ほぼ同じ)大きさの長方形の薄板状に構成されている。また、多孔質体22a,22bは、図3に示すように、本体部21の開口部42aを閉塞するようにして、多孔質体22aの内面72aと多孔質体22bの外面71bとを当接させて互いに重ね合わせた状態で、本体部21の先端部21a側に配設されている。この場合、多孔質体22a,22bは、本体部21の段部41にはめ込まれるように配設されている。この多孔質体22a,22bが本体部21に配設された状態では、同図に示すように、段部41の上面が、多孔質体22bの内面72bに当接した状態となり、これにより、多孔質体22b、および多孔質体22bに重ね合わされている多孔質体22aが段部41によって支持されている。また、この状態では、段部41の側面41aに多孔質体22a,22bの端面が当接(または近接)しており、これにより、多孔質体22a,22bが本体部21に対して位置決めされると共に、平面方向への多孔質体22a,22bの移動が規制されている。
【0023】
また、多孔質体22a,22bは、一例として、連続気泡構造のセラミックスによって形成されている。この場合、整列シート23に隣接する多孔質体22aは、図5,6に示すように、内部に形成されている通気経路(連続気泡)Haの直径の平均値である平均空孔径Daが、後述する整列シート23の挿通孔51の直径L2(例えば、40μm)よりも短くなるように(一例として、5μm〜20μm程度となるように)形成されている。また、多孔質体22aは、図6に示すように、多孔質体22aの外面71aにおける各通気経路Haの開口部同士の間隔が、平均空孔径Daの1/2〜2倍程度となるように形成されている。
【0024】
また、多孔質体22aよりも本体部21の基端部21b側に位置する多孔質体22b(整列シートに隣接する多孔質体を除く他の多孔質体の一例)は、図5に示すように、内部に形成されている通気経路Hbの直径の平均値である平均空孔径Dbが、多孔質体22aの平均空孔径Daよりも長くなるように(一例として、50μm〜200μm程度となるように)形成されている。つまり、この吸着ヘッド11では、整列シート23に隣接する多孔質体22aの平均空孔径Daが他の多孔質体22bの平均空孔径Dbよりも短くなるように形成されている。なお、図3,7,8,11では、通気経路Ha,Hbの図示を省略する。
【0025】
また、この例では、同図に示すように、整列シート23に隣接する多孔質体22aの厚みTaが、本体部21の基端部21b側に位置する多孔質体22b(整列シートに隣接する多孔質体を除く他の多孔質体の少なくとも1つの一例)の厚みTbよりも薄くなるように(一例として、厚みTaが厚みTbの厚みの1/2程度となるように)形成されている。
【0026】
ここで、セラミックス製のこの種の多孔質体は、ケイ素や金属の酸化物、ケイ素や金属の炭化物、およびケイ素や金属の窒化物などを主成分とする原料粒子を焼成(焼結)して作製される。このようにして作製される多孔質体は、原料粒子の平均粒径が長いほど平均空孔径が長く、原料粒子の平均粒径が短いほど平均空孔径が短く形成される。また、このようにして作製される多孔質体は、原料粒子の平均粒径が長いほど剛性が高く(ヤング率が大きく)、原料粒子の平均粒径が短いほど剛性が低く(ヤング率が小さく)形成される。つまり、この種の多孔質体は、平均空孔径が長いほど剛性が高く形成され、平均空孔径が短いほど剛性が低く形成される。
【0027】
一方、後述するように、整列シート23に形成されている全ての挿通孔51の形成部位において半田ボール300を吸着させるには(図4参照)、図5,6に示すように、整列シート23に隣接する多孔質体22aの外面71aにおける多孔質体22aの通気経路Haの開口部の少なくとも1つ(または、その一部)を整列シート23の挿通孔51に対向させ、この通気経路Haの開口部を通して吸気を行わせる必要がある。このためには、平均空孔径Daを短く(例えば、上記したように、挿通孔51の直径L2よりも短い5μm〜20μm程度に)規定した通気経路Haが高い密度で隣接するように(例えば、上記したように、隣接する通気経路Ha同士の間隔が、平均空孔径の1/2〜2倍程度となるように)多孔質体22aを形成する必要があり、この結果、多孔質体22aの剛性が低下する。
【0028】
この場合、多孔質体を1つだけ備えた構成では、多孔質体の厚みを厚くすることで剛性を高める方法も考えられるが、この方法では、連続気泡の平均空孔径が短くかつその連続気泡長が長くなるため、多孔質体を介して行われる吸気の際の抵抗が大きくなり、これに起因して吸引力が低下することとなる。これに対して、この吸着ヘッド11では、2つの多孔質体22a,22bを備えているため、整列シート23に隣接する多孔質体22aの平均空孔径Daを短く規定すると共に多孔質体22aの厚みTaを薄く形成して十分な通気性を確保し、本体部21の基端部21b側に配設される多孔質体22bの平均空孔径Dbを長く規定すると共に多孔質体22bの厚みTbを厚く形成して十分な剛性を確保することで、2つの多孔質体22a,22bによって十分な吸引力および十分な剛性の双方を確保することができる。
【0029】
整列シート23は、図3,7に示すように、多孔質体22a,22bよりも大きい長方形の薄板状に形成され、図3に示すように、多孔質体22aを覆うようにして多孔質体22aの外面71a側に配設されている。また、整列シート23は、搭載対象体としての基板400における端子401の配列と同じ配列で形成されて、半田ボール300を整列させる機能を有する複数の挿通孔51を備えている。この場合、図4に示すように、挿通孔51の直径L2は、半田ボール300の直径L1(この例では、80μm)よりも短い40μm程度に規定されている。また、整列シート23は、一例として、樹脂シートで形成されている。
【0030】
この吸着ヘッド11では、本体部21と多孔質体22a,22bとによって形成される内部空間42が排気によって減圧され、それに伴って多孔質体22a,22bを介して行われる吸気により、多孔質体22aの外面71a側に配設されている整列シート23における挿通孔51の形成部位に半田ボール300を吸着する(この例では、挿通孔51の縁部に吸着する:図4参照)と共に、内部空間42が常圧に復帰したとき(減圧が解除されたとき)に半田ボール300の吸着を解除することが可能となっている。
【0031】
吸引機構12は、配管を介して吸着ヘッド11の排気孔32bに接続された図外の真空ポンプおよび電磁弁等を備えて構成され、制御部15の制御に従って吸着ヘッド11の内部空間42の空気を吸引する。
【0032】
収容容器13は、図8に示すように、半田ボール300を収容可能に構成されている。また、収容容器13は、図外の給気機構からの空気の供給によって収容している半田ボール300を浮遊させることが可能となっている。また、収容容器13の上部には、吸着ヘッド11による余剰な半田ボール300の吸着を規制するための(規制作用を有する)規制用プレート61が取り付けられている。この場合、規制用プレート61は、その厚みL3(図4参照)が半田ボール300の直径L1(この例では、80μm)よりも薄い75μm程度に規定された板状に構成されている。
【0033】
また、規制用プレート61には、吸着ヘッド11における整列シート23を規制用プレート61に近接(または、接触)させた状態(図8参照)において、吸着ヘッド11における整列シート23の各挿通孔51に対向する位置に挿通孔62が形成されている。この場合、挿通孔62の直径L4は、図4に示すように、半田ボール300の直径L1(この例では、80μm)よりも長く、かつ直径L1の2倍よりも短い100μm程度となるように形成されている。
【0034】
搬送装置14は、制御部15の制御に従い、収容容器13の配置位置(吸着位置)、および基板400の配置位置に吸着ヘッド11を搬送する。
【0035】
制御部15は、半田ボール搭載装置1を構成する各構成要素を制御する。具体的には、制御部15は、搬送装置14を制御して吸着ヘッド11を収容容器13の配置位置、およびに基板400の配置位置に搬送させる。また、制御部15は、吸引機構12を制御して吸着ヘッド11の内部空間42の空気を吸引させる。
【0036】
次に、半田ボール搭載装置1を用いて半田ボール300を基板400の端子401に搭載する方法、およびその際の半田ボール搭載装置1の動作について、図面を参照して説明する。なお、この例では、吸着ヘッド11における本体部21の先端部21a側を下向きにした状態で半田ボール300を吸着するものとする。
【0037】
この半田ボール搭載装置1では、開始操作がされたときに、制御部15が、搬送装置14を制御して、吸着ヘッド11を収容容器13の上方に搬送させ、次いで、図8示すように、吸着ヘッド11における整列シート23と収容容器13の規制用プレート61とが近接(または、接触)するように吸着ヘッド11を降下させる。続いて、制御部15は、吸引機構12を制御して、吸着ヘッド11の内部空間42の空気を吸引させる。この際に、内部空間42が減圧され、これに伴って多孔質体22a,22b内の連続気泡を通って多孔質体22aの外面71a側の空気が吸引(吸気)される。
【0038】
ここで、この吸着ヘッド11では、2つの多孔質体22a,22bを備え、整列シート23に隣接する多孔質体22aの平均空孔径Daを短く規定すると共に多孔質体22aの厚みTaを薄く形成して十分な通気性を確保し、本体部21の基端部21b側に配設される多孔質体22bの平均空孔径Dbを長く規定すると共に多孔質体22bの厚みTbを厚く形成して十分な剛性を確保することで、2つの多孔質体22a,22bによって十分な吸引力および十分な剛性の双方を確保している。このため、この吸着ヘッド11では、本体部21の内部空間42の減圧に伴って大気圧が加わったときの中央部分が凹むような多孔質体22a,22bの変形が十分に少なく抑えられ、かつ十分な吸引力での吸引が行われる。
【0039】
次いで、制御部15は、図外の給気機構から収容容器13内に空気を供給させる。この際に、空気の供給によって収容容器13に収容されている半田ボール300が浮遊させられる。また、図9に示すように、収容容器13内で浮遊している半田ボール300が、吸着ヘッド11の多孔質体22a,22bを介して行われる吸気に伴う吸引力によって多孔質体22aの外面71a側に引き寄せられて、収容容器13の規制用プレート61に形成されている挿通孔62を通って吸着ヘッド11の整列シート23における挿通孔51の形成部位(挿通孔51の縁部)に吸着される。
【0040】
この場合、この吸着ヘッド11では、上記したように、本体部21の内部空間42が減圧されている状態における中央部分が凹むような多孔質体22a,22bの変形が十分に少なく抑えられ、かつ十分な吸引力での吸引が行われる。このため、この吸着ヘッド11では、多孔質体22a,22bの変形によって中央部が収容容器13の規制用プレート61から離間し、これに起因して整列シート23における中央部の挿通孔51の形成部位に半田ボール300が吸着されない事態が防止されて、整列シート23における全ての挿通孔51の形成部位(挿通孔51の縁部)に半田ボール300が確実に吸着される。
【0041】
一方、半田ボール300が微小なため、半田ボール300同士が互いに引き合う力が重量に対して相対的に大きく、この結果、図9に示すように、整列シート23における挿通孔51の形成部位に吸着された半田ボール300(以下、この半田ボール300を「搭載対象の半田ボール300」ともいう)に他の半田ボール300(以下、この半田ボール300を「余剰の半田ボール300」ともいう)が付着する。
【0042】
続いて、制御部15は、収容容器13に対する空気の供給を停止させることにより、半田ボール300の浮遊を停止させる。次いで、制御部15は、搬送装置14を制御して、図10に示すように、吸着ヘッド11を上方に移動させる。この際に、吸着ヘッド11の整列シート23が収容容器13の規制用プレート61から離間するため、挿通孔51の形成部位に吸着されている搭載対象の半田ボール300と余剰の半田ボール300との間に介在している規制用プレート61の規制作用により、余剰の半田ボール300が搭載対象の半田ボール300から引き離される結果、同図に示すように、余剰の半田ボール300が自重によって落下する。
【0043】
続いて、制御部15は、搬送装置14を制御して、図11に示すように、基板400の配置位置の上方に吸着ヘッド11を移動させ、次いで、図12に示すように、吸着ヘッド11に吸着されている半田ボール300の先端部が基板400の端子401に近接する位置に吸着ヘッド11を降下させる。続いて、制御部15は、吸引機構12を制御して、吸引を停止させる。これにより、吸着ヘッド11の内部空間42が常圧に復帰し(減圧が解除される)、多孔質体22a,22bを介して行われる吸気が停止する結果、吸着ヘッド11による半田ボール300の吸着が解除される。
【0044】
この場合、この吸着ヘッド11では、上記したように、多孔質体22a,22bの変形が十分に少なく抑えられているため、基板400の端子401に向けて吸着ヘッド11を降下させた際に、吸着ヘッド11によって吸着されている全ての半田ボール300が各端子401に対して十分に近接する。このため、全ての半田ボール300が各端子401の上に正しく落下して、全ての端子401に半田ボール300が確実に搭載される。
【0045】
次いで、制御部15は、搬送装置14を制御して、同図に示すように、吸着ヘッド11を上方に移動させた後に初期位置に搬送させる。以上により、基板400の端子401への半田ボール300の搭載が完了する。
【0046】
なお、この半田ボール搭載装置1および吸着ヘッド11では、平均空孔径Daが異なる複数種類の多孔質体22aを予め用意すると共に、挿通孔51の直径L2が異なる複数種類の整列シート23を予め用意し、半田ボール300の直径L1に応じて多孔質体22aや整列シート23を交換することで、直径L1の異なる複数種類の半田ボール300の吸着を行うことができる。
【0047】
このように、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、互いに重ね合わせた状態で配設された2つ(複数)の多孔質体22a,22bを備えたことにより、整列シート23に隣接する多孔質体22aの平均空孔径Daを短く規定して十分な通気性を確保し、多孔質体22aを除く他の多孔質体としての多孔質体22bの平均空孔径Dbを長く規定して十分な剛性を確保することで、2つの多孔質体22a,22bによって十分な吸引力および十分な剛性の双方を確保することができる。このため、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、本体部21の内部空間42の減圧に伴って大気圧が加わったときの中央部分が凹むような多孔質体22a,22bの変形を十分に少なく抑え、かつ十分な吸引力での吸引を行わせることができる。したがって、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、多孔質体22a,22bの変形によって中央部が収容容器13の規制用プレート61から離間し、これに起因して整列シート23における中央部の挿通孔51の形成部位に半田ボール300が吸着されない事態を防止して、整列シート23における全ての挿通孔51の形成部位に半田ボール300を確実に吸着させることができる。また、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、多孔質体22a,22bの変形が十分に少なく抑えられているため、整列シート23における全ての挿通孔51の形成部位に半田ボール300が吸着されている吸着ヘッド11を基板400の端子401に向けて降下させた際に、全ての半田ボール300を各端子401に対して十分に近接させることができる。したがって、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、全ての半田ボール300が各端子401の上に正しく落下して、全ての端子401に半田ボール300を確実に搭載することができる。
【0048】
また、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、整列シート23に隣接する多孔質体22aを除く他の多孔質体としての多孔質体22bの厚みTbが多孔質体22aの厚みTaよりも厚くなるように形成したことにより、多孔質体22aの通気性をより高めることができると共に、多孔質体22bの剛性をより高めることができる。このため、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、2つの多孔質体22a,22bによって一層十分な吸引力および一層十分な剛性を確保することができる結果、全ての端子401に半田ボール300を一層確実に搭載することができる。
【0049】
また、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、2つの多孔質体22a,22bを備え、整列シート23に隣接する一方の多孔質体22aの平均空孔径Daが他方の多孔質体22bの平均空孔径Dbよりも短く、かつ一方の多孔質体22aの厚みTaが他方の多孔質体22bの厚みTbよりも薄くなるように形成したことにより、多孔質体22aの通気性を十分に高めて、多孔質体22bの剛性を十分に高めることができるため、多孔質体22a,22bを2つだけ備えた簡易な構成でありながら、十分な吸引力および十分な剛性の双方を確保することができる。このため、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、全ての端子401に対する半田ボール300の確実な搭載をコストを低減しつつ実現することができる。
【0050】
また、この吸着ヘッド11および半田ボール搭載装置1によれば、各多孔質体22a,22bをセラミックスでそれぞれ形成したことにより、樹脂等で多孔質体22a,22bを形成する構成と比較して、多孔質体22a,22bの剛性をさらに高めることができるため、多孔質体22a,22bの変形をさらに少なく抑えることができる結果、全ての端子401に半田ボール300をより確実に搭載することができる。
【0051】
なお、球状体吸着ヘッドおよび球状体搭載装置は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、連続気泡構造のセラミックスで形成された多孔質体22a,22bを備えた構成例について上記したが、連続気泡構造の樹脂(例えば、ポリエチレン)や、連続気泡構造の金属(例えば、ステンレス、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム、およびこれらの合金)で形成された多孔質体22a,22bを備えた構成を採用することもできる。
【0052】
また、2つの多孔質体22a,22bを備えた構成例について上記したが、3つ以上の多孔質体を備え、これらの各多孔質体を互いに重ね合わせた状態で配設した構成を採用することもできる。この場合、3つ以上の多孔質体を備えたときには、整列シート23に隣接する多孔質体22aを除く他の多孔質体のうちの1つ以上の厚みが多孔質体22aの厚みTaよりも厚く、残りの多孔質体の厚みが多孔質体22aの厚みTa以下となる構成を採用することもできる。
【0053】
また、整列シート23に隣接する多孔質体22aを除く他の多孔質体の厚み(上記の例では、多孔質体22bの厚みTb)が多孔質体22aの厚みTaよりも厚くなるように形成した例について上記したが、整列シート23に隣接する多孔質体22aの厚みTaが他の多孔質体の厚みよりも厚い構成を採用することもできる。
【0054】
また、挿通孔51の直径L2が半田ボール300の直径L1よりも短く規定され、挿通孔51の縁部で半田ボール300を吸着する構成例について上記したが、挿通孔51の直径L2を半田ボール300の直径L1よりも長く規定して、挿通孔51内(挿通孔51の形成部位の他の一例)で半田ボール300を吸着する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 半田ボール搭載装置
11 吸着ヘッド
14 搬送装置
21 本体部
21a 先端部
22a,22b 多孔質体
23 整列シート
42 内部空間
42a 開口部
51 挿通孔
71a 外面
300 半田ボール
400 基板
401 端子
Da,Db 平均空孔径
Ha,Hb 通気経路
Ta,Tb 厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部側に開口部を有する箱状に形成された本体部と、前記開口部を閉塞するように前記本体部に配設された板状の多孔質体と、球状体を整列させる挿通孔が形成されて前記多孔質体の外面側に配設された整列シートとを備えて、前記本体部と前記多孔質体とによって形成される内部空間が減圧されたときに当該多孔質体を介して行われる吸気によって前記挿通孔の形成部位に前記球状体を吸着する球状体吸着ヘッドであって、
互いに重ね合わせた状態で配設された複数の前記多孔質体を備え、
前記各多孔質体のうちの整列シートに隣接する多孔質体は、当該多孔質体の平均空孔径が他の前記多孔質体の平均空孔径よりも短くなるように形成されている球状体吸着ヘッド。
【請求項2】
前記他の多孔質体のうちの少なくとも1つは、当該多孔質体の厚みが前記整列シートに隣接する多孔質体の厚みよりも厚くなるように形成されている請求項1記載の球状体吸着ヘッド。
【請求項3】
前記多孔質体を2つ備え、
前記整列シートに隣接する一方の前記多孔質体は、当該一方の多孔質体の平均空孔径が他方の前記多孔質体の平均空孔径よりも短く、かつ前記一方の多孔質体の厚みが前記他方の多孔質体の厚みよりも薄くなるように形成されている請求項1または2記載の球状体吸着ヘッド。
【請求項4】
前記各多孔質体はセラミックスでそれぞれ形成されている請求項1から3のいずれかに記載の球状体吸着ヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の球状体吸着ヘッドと、前記球状体を吸着させる吸着位置に前記球状体吸着ヘッドを搬送すると共に前記球状体を吸着している前記吸着ヘッドを搭載対象体の配置位置まで搬送する搬送装置とを備えて、前記球状体を前記搭載対象体に搭載する球状体搭載装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−228712(P2012−228712A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98393(P2011−98393)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】