環境障壁コーティングに加わる熱又は機械的応力を軽減するための特徴体
物品は、マトリックス材及び強化材を含む基材、その基材上に形成された層、その層上に形成された特徴体の配列、並びにその層及び特徴体のその配列上に形成されたコーティングを備えることができる。この物品は、層上に形成された特徴体の配列を備えていない物品と比較して熱及び/又は機械的応力耐性を改善していると思われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境障壁コーティングでコーティングされた物品が受ける熱応力を軽減するための技術を対象とする。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガス・タービン・エンジンなどの、高温になる機械システムのコンポーネントは、過酷な環境において動作しなければならない。例えば、商用航空機エンジン内の高温ガスに曝される燃焼器ライナは、典型的には、最大約1150℃から約1400℃までのコーティング表面温度の効果を受ける。
【0003】
高温になる機械システムのいくつかのコンポーネントは、セラミック若しくはセラミック・マトリックス複合材料(CMC)ベースの基材を含む。基材は、環境障壁コーティング(EBC)でコーティングされ、これにより、水蒸気又は酸素などの環境化学種への基材の表面の曝露を低減することができる。環境障壁コーティングは、セラミック・トップコートを含むことができ、下に配置する金属若しくはセラミック・ボンド・コートによって基材に固着させることができる。
【0004】
コンポーネントは、動作中、また動作が停止されたときに、さまざまな異なる温度に曝される可能性がある。これらのさまざまな異なる温度は、EBCに著しい熱応力を及ぼし、最後には、基材からのEBCの破砕に至ることが考えられる。応力は、例えば、異なる熱膨張率を有する基材/ボンド・コート(bond coat)及びEBC、又は温度勾配により異なる温度の効果を受ける基材/ボンド・コート及びEBCにより、生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、本開示は、環境障壁コーティング(EBC)でコーティングされたセラミック又はセラミック・マトリックス複合材料(CMC)を含む物品内の熱及び/又は機械的応力を軽減するための技術を対象とする。熱及び/又は機械的応力を軽減することで、EBCの耐用寿命(例えば、EBCでコーティングされた物品が退役させられるか、又はEBCを修理するために修復されるまでのEBCの寿命)を延ばすことができる。いくつかの実施例では、EBCは、ボンド・コートによって基材に固着される。他の実施例では、EBCは、基材上に直接形成されうる。いくつかの場合において、基材/ボンド・コート及びEBCは、異なる熱膨張率を有し、そのため、物品の温度が変化したときに異なる量の熱膨張及び/又は収縮を被る可能性がある。それに加えて、EBCはある異種の断熱性を基材にもたらすため、基材及びEBCは異なる温度の効果を受ける可能性があり、これは基材及びEBCが受ける相対的な量の膨張及び/又は収縮に影響を及ぼしうる。これは、ボンド・コート/EBCの界面のところ、又はそれより上のところに熱応力を引き起こし、これは時間の経過とともにEBC内に亀裂を形成し、亀裂を成長させることにつながりうる。EBCによる例えば破片の影響から生じる外部負荷は、機械的応力を引き起こし、結果としてEBC内に亀裂を形成しうる。最終的に、亀裂が十分なサイズにまで成長すると、EBCは基材から剥離する可能性がある。
【0006】
亀裂の原因に関係なく、基材からのEBCの剥離により、基材又はボンド・コートにとって有害でありうる、水蒸気若しくは酸素などの環境化学種に曝露される基材又はボンド・コートの領域が残されうる。本開示は、亀裂の伝播及び基材又はボンド・コートからEBCの剥離を軽減するための技術を提示する。
【0007】
一態様では、本開示は、マトリックス材及び強化材を含む基材、その基材上に形成された層、その層上に形成された特徴体の配列、並びにその層及び特徴体のその配列上に形成された環境障壁コーティングを備える物品を対象とする。
【0008】
他の態様では、本開示は、マトリックス材及び強化材を含む基材を備える物品を対象とする。物品は、基材上に形成された層、その層上の第1の位置に形成された特徴体の第1の配列、及びその層上の第2の位置に形成された特徴体の第2の配列も備える。本開示のこの態様によれば、第1の配列は、第1のパターンを備え、第2の配列は、第1のパターンと異なる第2のパターンを備える。物品は、基材、特徴体の第1の配列、及び特徴体の第2の配列上に形成された環境障壁コーティングも備える。
【0009】
さらなる態様では、本開示は、基材上に層を形成すること、層の表面上に特徴体の配列を形成すること、並びに層及び特徴体のその配列上に環境障壁コーティングを形成することを含む方法を対象とする。本開示のこの態様によれば、基材は、マトリックス材及び強化材を備える。
【0010】
さらなる態様では、本開示は、基材上に層を形成することを含む方法を対象とする。基材は、マトリックス材と強化材とを含むものとしてよい。本開示のこの態様では、方法は、層の表面上の第1の位置に特徴体の第1の配列を形成することと、層の表面上の第2の位置に特徴体の第2の配列を形成することとをさらに含む。特徴体の第1の配列は、第1のパターンを備えることができ、特徴体の第2の配列は、第1のパターンと異なる第2のパターンを備えることができる。本開示のこの態様によれば、方法は、層、特徴体の第1の配列、及び特徴体の第2の配列上に環境障壁コーティングを形成することをさらに含む。
【0011】
1つ又は複数の実例の詳細は、添付図面及び以下の説明で述べられる。他の特徴、目的、及び利点は、説明と図面、さらには特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガス・タービン・エンジンのタービン動翼の一実例の断面図である。
【図2】中に特徴体が形成され、上に環境障壁コーティングが形成された、層でコーティングされた基材の一実例を示す断面図である。
【図3】中に特徴体が形成され、上にボンド・コートが形成された、上張層でコーティングされた基材及びボンド・コート上に形成された環境障壁コーティングの一実例を示す断面図である。
【図4】基材、その基材上に形成され中に形成された特徴体を含む層、その層上に形成された環境障壁コーティング、その環境障壁コーティング上に形成された熱障壁コーティング、及びその熱障壁コーティング上に形成されたカルシア・マグネシア・アルミニウム・シリカ耐性層を備える物品の一実例を示す断面図である。
【図5A】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5B】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5C】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5D】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5E】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5F】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5G】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5H】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図6A】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6B】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6C】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6D】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6E】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6F】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6G】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図7】基材、その基材上に形成された上張層、上張層内に形成された特徴体の配列、並びにその上張層及び特徴体のその配列上に形成されたボード・コート及び環境障壁コーティングを備える物品を形成するための例示的な技術の流れ図である。
【図8】基材、その基材上に形成されたボンド・コート、そのボンド・コート内に形成された特徴体の配列、並びにそのボンド・コート及び特徴体のその配列上に形成された環境障壁コーティングを備える物品を形成するための例示的な技術の流れ図である。
【図9A】特徴体の第1の配列及び第2の配列がそれぞれ基材の第1の位置及び第2の位置に形成されている例示的な層の概念図である。
【図9B】特徴体の第1の配列及び第2の配列がそれぞれ基材の第1の位置及び第2の位置に形成されている例示的な層の概念図である。
【図9C】特徴体の第1の配列及び第2の配列がそれぞれ基材の第1の位置及び第2の位置に形成されている例示的な層の概念図である。
【図9D】特徴体の第1の配列及び第2の配列がそれぞれ基材の第1の位置及び第2の位置に形成されている例示的な層の概念図である。
【図10】第1の位置に特徴体の第1の配列と第2の位置に特徴体の第2の配列とを備える物品を形成する例示的な技術の流れ図である。
【図11】基材、その基材上に形成された特徴体の配列を含む層、及び特徴体の配列を含む層の上に形成された摩耗性コーティング(abradable coating)を備える例示的な物品の断面図である。
【図12】基材、その基材上に形成された特徴体の配列を含む層、及び特徴体の配列を含む層の上に形成された摩耗性コーティングを備える例示的な物品の断面図である。
【図13】基材、その基材上に形成された特徴体の配列を含む層、特徴体の配列を含む層上に形成されたボンド・コート、ボンド・コート上に形成された環境障壁コーティング、その環境障壁コーティング上に形成された熱障壁コーティング、その熱障壁コーティング上に形成されたCMAS耐性層、及びそのCMAS耐性層上に形成された摩耗性コーティングを備える例示的な物品の断面図である。
【図14】基材の上に配設される多層摩耗性コーティング及び特徴体の配列を含む層を備える物品の一実例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般に、本開示は、環境障壁コーティング(EBC)でコーティングされた物品内の熱及び/又は機械的応力を軽減するための技術を対象とする。いくつかの実施例では、本明細書で説明されている技術は、EBCの寿命を延ばすことができる。上で説明されているように、ガス・タービン・エンジンの動翼などの物品は、使用時に大きく変化する温度の効果を受けうる。これらの温度変化は、異なる熱膨張率を有する2つの層及び/又は温度勾配により異なる温度の効果を受ける2つの層の間の界面において熱応力を引き起こしうる。例えば、物品は、基材上に形成されるボンド・コート及びそのボンド・コート上に形成されるEBCでコーティングされうる。いくつかの実施例において、基材/ボンド・コート及びEBCは、異なる熱膨張率を有し、そのため、物品の温度が変化したときに異なる量の熱膨張及び/又は収縮を被る可能性がある。それに加えて、又は代替えとして、EBCは、基材/ボンド・コートにある種の断熱効果をもたらし、その結果、EBC及び基材/ボンド・コートは異なる温度の効果を受ける可能性がある。これは、ボンド・コート及びEBC又は基材及びEBCの界面のところ、又はそれより上のところに熱応力を引き起こし、これは時間の経過とともにEBC内に亀裂を形成し、亀裂を成長させることにつながりうる。最終的に、亀裂が十分なサイズにまで成長すると、EBCの一部が基材/ボンド・コートから剥離する可能性がある。これは、基材又はボンド・コートにとって有害な作用を及ぼしうる、水蒸気などの、環境化学種に曝される基材若しくはボンド・コートの領域を残しうる。いくつかの実施例では、EBCは、EBCを損傷し、EBCにおける亀裂の原因となりうる、破片の影響を受ける可能性がある。これは、基材/ボンド・コートからのEBCの層剥離、及び水蒸気などの、環境化学種への基材/ボンド・コートの曝露も引き起こしうる。
【0014】
本明細書で開示されるのは、EBCにおける亀裂の成長の効果を低減するか、最小にするための技術である。これらの技術は、オーバーレイ又はボンド・コートなどの、基材上に形成される層の表面内に特徴体を形成することを含む。これらの特徴体は、表面の相対的平面性を乱し、亀裂成長若しくは亀裂伝播を遅らせる。特に、亀裂がEBC内に形成され、基材の表面に実質的に平行な平面内で伝播し始めるときに、特徴体は亀裂が成長する必要のある2つの材料間の界面、例えば、EBCとボンド・コート又はボンド・コートと基材との間の界面を与えることによってさらなる亀裂成長を妨げるものとして機能する。実質的に、これらの特徴体は、基材及びEBCを複数のより小さな領域に分離する。亀裂成長は、個別の領域内に発生しうるが、これらの特徴体は、隣接する領域の間の亀裂成長を隠す。
【0015】
いくつかの実施例では、これらの特徴体は、第1の配列の第1の位置に、第2の配列の第2の位置に形成されうる。第1の配列のパターン、第2の配列のパターン、第1の位置、及び第2の位置は、それぞれ第1の位置及び第2の位置で基材が受ける熱若しくは機械的応力の予測値に基づき選択されうる。例えば、基材は、より高い温度、より激しい温度変化の効果を受け、及び/又は第2の位置に比べて第1の位置において破片の影響を受ける可能性がより高い。これに基づき、特徴体の第1の配列のパターンは、特徴体の第2の配列のパターンと異なるように選択されうる。例えば、特徴体の第1の配列は、より密集して相隔てて並ぶ特徴体を備えるか、異なる形状を有するか、又は特徴体の第2の配列に比べて優れた、機械的応力及び/又は熱応力の軽減をもたらす別の特性を備えることができる。
【0016】
図1は、本開示の技術によりコーティングが配設されうるタービン動翼10の例示的な翼12の断面を示す図である。タービン動翼10は、一般的に、柄(図示せず)に取り付けられた翼12を備える。翼12は、前縁16、後縁18、圧力側壁20、及び吸引側壁14を備える。圧力側壁20は、後縁18及び前縁16のところで吸引側壁14に接続される。
【0017】
本開示ではタービン動翼の表面内に形成された特徴体についてもっぱら説明しているけれども、本開示の技術は、ガス・タービン・エンジンなどの、高温になる機械システムの他のコンポーネントにも応用することができる。例えば、本明細書で説明されている技術は、ガス・タービン・エンジン動翼、静翼、動翼トラック(blade tracks)、又は燃焼器ライナに応用することができる。
【0018】
図1に示されている実施例において、タービン動翼10は、第1の空洞22a、第2の空洞22b、第3の空洞22c、及び第4の空洞2d(「空洞22」と総称する)も備える。空洞22は、比較的冷たい空気を動翼10の内部に通して循環させることによって動翼10の動作中にタービン動翼10を冷却するのを補助することができる。いくつかの実施例では、動翼10が備える空洞22は4つより多くも、4つより少なくてもよい。
【0019】
タービン動翼10、及びより具体的には翼12は、複数の後縁出口スロット24も備えることができる。後縁出口スロット24のうちの少なくとも1つは、第4の空洞22dに流体的に接続される。後縁出口スロット24は、第4の空洞22dを貫流する比較的冷たい空気のための出口を構成する。
【0020】
翼12は、複数のフィルム冷却孔26をさらに備える。第1のフィルム冷却孔26aは、第1の空洞22aと流体的に連通しているが、第2のフィルム冷却孔26b及び第3のフィルム冷却孔26cは、それぞれ、第2の空洞22b及び第3の空洞22cと流体的に連通している。いくつかの実施例では、複数のフィルム冷却孔26は、動翼10の先端部に最も近い位置に配置されうる。他の実施例では、複数のフィルム冷却孔26は、翼12の長さ部分の少なくとも一部を通して配列されうる。いくつかの実施例では、翼12は、3つよりも多いフィルム冷却孔26を備えることができる。
【0021】
上で簡単に説明したように、タービン動翼10は、ガス・タービン・エンジンなどの、高温になる機械システムの一コンポーネントであるものとしてよい。高温になる機械システムで使用される場合、動翼10は、高温の効果を受け、及び/又は水蒸気攻撃により陥凹する傾向を有する場合がある。したがって、タービン動翼10は、水蒸気攻撃又は他の環境化学種による攻撃の動翼10に対する効果を低減するか、又は実質的になくす保護コーティングを備えることができる。例えば、前縁16、後縁18、圧力側壁20、及び吸引側壁14は、環境保護対策となる、また適宜、動翼10の外面に対する断熱効果をもたらすセラミックコーティングである、EBCでコーティングすることができる。
【0022】
EBCは、翼12の外面を画成し、そのため、ガス・タービン・エンジンを通るガスに曝されうる。ガスは、ときには、破片を含むこともあり、これは、ガスがガス・タービン・エンジンの中を通り、翼12を通り過ぎるときにEBCに影響を及ぼしうる。破片は、EBCに影響を及ぼし、EBCに対して亀裂又は他の損傷を誘発しうる。いくつかの実施例では、EBCに対する亀裂又は損傷は、最終的に、EBCの一部の層剥離をもたらし、下にあるボンド・コート又は基材の一部が露出することがある。EBCを保護しないと、下にあるボンド・コート又は基材の露出部分が、ガス・タービン・エンジンの中を通るガス中に存在する環境化学種の有害な作用を受ける可能性がある。例えば、水蒸気は、ボンド・コート又は基材の陥凹を引き起こしうる。
【0023】
上で説明されているように、翼12は、EBC上に、又はEBCと下にある基材若しくはボンド・コートとの界面のところに熱応力を及ぼす温度変化を受ける可能性がある。これらの熱応力は、EBCと基材又はボンド・コートとの界面のところ、又はそれより上のところに亀裂の形成及び成長も引き起こしうる。
【0024】
本開示の態様によれば、翼12は、基材上に形成された層を含みうる。層は、中に形成された3次元の特徴体を備えるものとしてよく、これは層及びEBCを複数のより小さな領域内に分離する機能を持つ。いくつかの実施例では、層は、ボンド・コートを含みうるが、他の実施例では、層は、セラミック・マトリックス複合材料(CMC)のマトリックス材などの、基材内に封じ込められた材料を含みうる。これらの特徴体は、例えば、溝、凹部、隆起部、突起部、又は同様のものを含みうる。
【0025】
図2は、図1に示されているガス・タービン動翼10などのガス・タービン動翼の一実例の一部の断面図である。タービン動翼10は、基材32、基材32上に形成された層34、及び層34上に形成されたEBC36を備える。
【0026】
基材32は、セラミック又はセラミック・マトリックス複合材料(CMC)を含みうる。基材32がセラミックを含む実施例では、セラミックは実質的に均質であってよく、また実質的に単一の相の材料を含みうる。いくつかの実施例では、セラミックを含む基材32は、例えば、シリカ(SiO2)、炭化ケイ素(SiC)、又は窒化ケイ素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、アルミノケイ酸塩、又は同様のものなどのシリコン含有セラミックを含むことができる。他の実施例では、基材32は、モリブデン・シリコン合金(例えば、MoSi2)又はニオブ・シリコン合金(例えば、NbSi2)などの、シリコンを含む金属合金を含みうる。
【0027】
基材32がCMCを含む実施例では、基材32は、マトリックス材38及び強化材40を含みうる。マトリックス材38は、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、又は同様の物質を含む、セラミック材料を含みうる。CMCは、所望の強化材40をさらに含むことができ、強化材40は、連続強化材又は不連続強化材を含みうる。例えば、強化材40は、不連続のホイスカ、プレートレット、又は微粒子を含むことができる。他の実例として、強化材40は、連続単繊維又は多繊維織物を含むことができる。
【0028】
強化材40の組成、形状、サイズ、及び同様のものは、基材32に望ましい特性を付与するように選択されうる。例えば、強化材40は、脆いマトリックス材38の強靭性を高めるように選択されうる。強化材40は、基材32の熱伝導率、電気伝導率、熱膨張率、堅さ、又は同様の特性を変更するようにも選択されうる。
【0029】
いくつかの実施例では、強化材40の組成は、マトリックス材38の組成と同じであってもよい。例えば、炭化ケイ素を含むマトリックス材38が、炭化ケイ素ホイスカを含む強化材40を囲むものとしてよい。他の実施例では、強化材40は、アルミナマトリックス中のアルミノケイ酸塩繊維、又は同様のものなどの、マトリックス材38の組成と異なる組成を備えるものとしてよい。基材32の一組成として、炭化ケイ素を含むマトリックス材38中に埋め込まれた炭化ケイ素連続繊維を含む強化材40が挙げられる。
【0030】
基材32に使用することができるいくつかの例示的なCMCとして、マトリックス材38アルミナ又はアルミノケイ酸塩及びNEXTEL(商標)Ceramic Oxide Fiber 720(3M Co.(ミネソタ州セントポール所在)から入手可能)を含む強化材40などの、SiC又はSi3N4及び酸窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素アルミニウム、及び酸化物−酸化物セラミックスの組成物が挙げられる。
【0031】
いくつかの実施例では、強化材40は、基材32の表面のところで確実に露出されないことが望ましい場合がある。そのような実施例では、層34は、基材32の表面42上に形成されうる。層34があれば、強化材40の実質的にどれもが、特徴体46が形成される表面44のところで露出されない可能性が高まりうる。
【0032】
いくつかの実施例では、層34は、基材32のマトリックス材38と同じ材料を含みうる。層34は、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、シリカ、又は同様の物質を含みうる。このようにして、層34は、基材32の厚さを増やす働きをし、また基材32内の強化材40の上にマトリックス材38の一種の緩衝層を形成することができる。いくつかの実施例では、層34は、基材32の形成時に基材32の表面42上に形成されうる。他の実施例では、層34は、別の製造工程において基材32の表面42上に形成されうる。
【0033】
他の実例では、層34は、基材32のマトリックス材38と異なる材料を含みうる。例えば、層34は、ボンド・コートであってよく、これは基材32とEBC36との間の接着力を向上させる働きをする。ボンド・コートを含む場合、層34は、セラミック、又は基材32と親和性のある他の材料を含むものとしてよい。例えば、層34は、ムライト(ケイ酸アルミニウム、Al6Si2O13)、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、又は同様のものを含むことができる。層34は、Lu(ルテチウム)、Yb(イッテルビウム)、Tm(ツリウム)、Er(エルビウム)、Ho(ホルミウム)、Dy(ジスプロシウム)、Tb(テルビウム)、Gd(ガドリニウム)、Eu(ユウロピウム)、Sm(サマリウム)、Pm(プロメチウム)、Nd(ネオジム)、Pr(プラセオジム)、Ce(セリウム)、La(ランタン)、Y(イットリウム)、及びSc(スカンジウム)のケイ酸塩を含む希土類ケイ酸塩などの、他のセラミックスをさらに含むことができる。ボンド・コートとして機能する層34のいくつかの好ましい組成は、シリコン、ムライト、及びケイ酸イッテルビウムを含む。層34の特定の組成は、基材32及びEBC36の化学組成及び相組成を含む、多くの考慮事項に基づくものとしてよい。
【0034】
EBC36は、層34及び基材32を環境劣化から保護する材料を含みうる。例えば、EBC36は、酸化又は水蒸気攻撃に耐性のある材料を備え、及び/又は水蒸気安定性、化学安定性、及び環境耐久性の少なくとも1つを基材32に付与することができる。EBC36として、例えば、アルミナ・ケイ酸バリウム・ストロンチウム(BaOx−SrO1−x−Al2O3−2SiO2、BSAS)、アルミナ・ケイ酸バリウム(BaO−Al2O3−2SiO2、BAS)、アルミナ・ケイ酸カルシウム(CaO−Al2O3−2SiO2、CAS)、アルミナ・ケイ酸ストロンチウム(SrO−Al2O3−2SiO2、SAS)、アルミナ・ケイ酸リチウム(Li2O−Al2O3−2SiO2、LAS)、及びアルミナ・ケイ酸マグネシウム(2MgO−2Al2O3−5SiO2、MAS)、希土類ケイ酸塩、又は同様のものなどの、ガラス・セラミックスが挙げられる。EBC36は、プラズマ溶射、電子ビーム物理気相成長(EB−PVD)、及び指向性蒸着(DVD)を含む物理気相成長(PVD)、化学蒸着(CVD)、陰極アーク蒸着、スラリー・ディッピング、ゾル・ゲル・コーティング、電気泳動析出、及び同様のものなどの、さまざまな技術によって施され、EBC36の少なくとも一部は、実質的に非多孔性の構造として蒸着されるものとしてよく、これにより、水蒸気若しくは他のガスが基材32に接触する可能性が低減されるか、又は実質的に防止される。いくつかの実施例では、EBC36は、約0.025mm(0.001インチ)から約2.54mm(0.1インチ)までの範囲の厚さを備えることができる。いくつかの好ましい実施例では、EBC36は、約0.076mm(0.003インチ)から約1.27mm(0.05インチ)までの範囲の厚さを備えることができる。
【0035】
図2に示されている実施例では、層34の表面44に、5つの特徴体46a、46b、46c、46d、及び46e(「特徴体46」と総称する)が形成される。特徴体46は、表面44内に形成された溝、隆起部、凹部、又は突起部を備えることができ、これは、例えば、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、レーザー・クラッディング、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。図2に示されている実例では、特徴体46は、層34の表面44上に形成された隆起部若しくは突起部を備えることができる。
【0036】
特徴体46のそれぞれは、表面44の相対的平面性を乱す、例えば、特徴体46のそれぞれは、表面44内に不連続部を形成する。特徴体46は、表面44に対して平行な平面内でのEBC36内の亀裂成長を妨げることができる。特定の理論によって拘束されるものではないが、特徴体46は、結果として、層34とEBC36との間の界面を形成し、この界面上で亀裂は伝播し表面44のプラトー部分の上に配置されたEBC36の一部から層34内に形成された特徴体46のうちの1つまで成長する必要がある。異種材料間の、例えば、層34とEBC36との間の遷移は、これら2つの材料の界面上の亀裂成長を妨げることができ、単一の領域、例えば、層34のプラトー部の上に配置されているEBC36の一部又は特徴体46のうちの1つの上に配置されているEBC36の一部への亀裂成長を含むことができる。したがって、EBC36の一部が基材32からの層剥離を起こす程度にまで亀裂が成長した場合、層剥離するEBC36の部分は、特徴体46のうちの1つの上の部分又は表面44のプラトー部の上の部分に限定されうる。
【0037】
いくつかの実施例では、ガス・タービン動翼10などの、物品は、図2に示されていない少なくとも1つの追加の層を含みうる。例えば、図3に示されているように、ガス・タービン動翼50は、基材32、基材32の表面42上に形成された上張層52、上張層52の表面56上に形成されたボンド・コート54、及びボンド・コート54上に形成されたEBC36を備えることができる。
【0038】
図2に関して上で説明されているように、基材32は、いくつかの実施例において、マトリックス材38及び強化材40を含むCMCを備えることができる。マトリックス材38は、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、又は同様の物質を含む、セラミック材料を含みうる。いくつかの実施例では、強化材40の組成は、マトリックス材38の組成と同じであってもよい。例えば、炭化ケイ素を含むマトリックス材38が、炭化ケイ素ホイスカを含む強化材40を囲むものとしてよい。他の実施例では、強化材40は、アルミナマトリックス中のアルミノケイ酸塩繊維、又は同様のものなどの、マトリックス材38の組成と異なる組成を備えるものとしてよい。基材32の一組成として、炭化ケイ素を含むマトリックス材38中に埋め込まれた炭化ケイ素連続繊維を含む強化材40が挙げられる。
【0039】
上張層52は、基材32のマトリックス材38と同じ組成を備えることができる。例えば、上張層52は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、又は同様の物質を含みうる。このようにして、上張層52は、基材32の厚さを増やす働きをし、また基材32内の強化材40の上にマトリックス材38の一種の緩衝層を形成することができる。いくつかの実施例では、上張層52は、基材32の形成時に基材32の表面42上に形成されうる。他の実施例では、上張層52は、別の製造工程において基材32の表面42上に形成されうる。
【0040】
ボンド・コート54は、上張層52とEBC36との間の接着力を改善する材料を備えることができる。ボンド・コート54は、セラミック、又は上張層52と親和性のある他の材料を含むものとしてよい。例えば、ボンド・コート54は、ムライト、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、又は同様のものを含むことができる。ボンド・コート54は、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、及びScのケイ酸塩を含む希土類ケイ酸塩などの、他のセラミックスをさらに含むことができる。ボンド・コート54のいくつかの好ましい組成物として、シリコン、ムライト、及びケイ酸イッテルビウムが挙げられる。ボンド・コート54の特定の組成は、上張層52及びEBC36の化学組成及び相組成を含む、多くの考慮事項に基づくものとしてよい。
【0041】
図3に示されている実例では、特徴体58a、58b、58c(「特徴体58」と総称する)は、上張層52の表面56内に形成された凹部若しくは溝を備える。特徴体58は、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、レーザー・クラッディング、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。
【0042】
図4は、EBC36の上に形成される追加の層を含む、ガス・タービン・タービン動翼60の別の実例の断面図である。ガス・タービン動翼60は、基材32、基材32の表面42上に形成された層34、層34の表面44上に形成されたEBC36、EBC36上に形成された熱障壁コーティング(TBC)62、及びTBC62上に形成されたカルシア・マグネシア・アルミナ・ケイ酸塩(CMAS)耐性層64を備える。TBC62及びCMAS耐性層64が一緒に利用されているように示されているが、いくつかの実施例は、TBC62を含むが、CMAS耐性層64を含まないか、又はCMAS耐性層64を含むが、TBC62を含まないものとしてよい。
【0043】
TBC62は、比較的低い熱伝導率を有するさまざまな材料のうちの少なくとも1つを含むことができ、TBC62の熱伝導率をさらに下げ、断熱性を基材32に付与するために多孔性構造又は柱状構造として形成することができる。いくつかの実施例では、TBC62は、例えば、イットリア安定化ジルコニア、イットリア安定化ハフニア、希土類酸化物安定化ジルコニア、希土類酸化物安定化ハフニア、希土類ケイ酸塩、ジルコン酸塩、ハフニウム酸塩、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0044】
イットリア安定化ジルコニアは、わずかの量の酸化イットリウム(Y2O3)を混ぜたジルコニア(ZrO2)を含む。例えば、一イットリア安定化ジルコニア組成物は、約7質量%から約8質量%の酸化イットリウムによって安定化されたジルコニアを含む。いくつかの実施例では、イットリア安定化ジルコニアは、別の希土類酸化物をさらに含みうる。
【0045】
TBC62で使用される希土類酸化物としては、例えば、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Tb、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、Sc、及びこれらの組み合わせの酸化物が挙げられる。同じ希土類元素も、希土類ケイ酸塩、希土類酸化物安定化ジルコニア、希土類酸化物安定化ハフニア、希土類ハフニウム酸塩、又は希土類ジルコン酸塩として存在する場合に有益であると思われる。TBC62は、例えば、プラズマ溶射、DVD又はEB−PVDなどのPVD、CVD、及び同様のものを含む、有用な技術によって施されうる。
【0046】
コーティングがTBC62を含むかどうかに関係なく、CMAS耐性層64をTBC62又はEBC36に隣接して、又はその上に載るように構成し、TBC62及び/又はEBC36を、TBC62及び/又はEBC36の微細孔内へのCMASの浸透から保護することができる。CMAS耐性層64は、コーティング上に存在するCMASと反応し、反応層(図示せず)を形成しうる。CMAS耐性層64と反応層は、TBC62及び/又はEBC36の微細孔内へのCMASの浸透を低減するか、又は防ぐための障壁を形成することができる。CMAS耐性層64は、例えば、プラズマ溶射、物理気相成長、化学気相成長、及び同様のものを含む有用な方法を使用してTBC62又はEBC36に施すことができる。
【0047】
CMAS耐性層64は、CMASと反応して固体の、又は非常に粘稠な反応生成物(つまり、ガス・タービン・エンジン60が曝される温度で固体であるか、又は非常に粘稠である反応生成物)を形成する元素を含むものとしてよい。反応生成物は、CMASに比べて著しく高い(例えば、約1200〜1250℃より高い)溶融温度を有するものとしてよい。固体の、又は非常に粘稠の反応生成物が望ましいのは、CMAS耐性層64がCMASと反応して反応層を形成するにつれ消費されるからである。例えば、CMAS耐性層64とCMASとの反応生成物が比較的粘性の低い液体であった場合、その比較的粘性の低い液体は、CMAS耐性層64が反応によって消費された後、EBC36及び/又はTBC62の微細孔に浸透する可能性がある。
【0048】
しかし、反応生成物が固体であるか、又は非常に粘稠である場合、反応層がCMAS耐性層64の表面上に形成され、CMASとCMAS耐性層64との反応速度が低下することになる。つまり、固体の、又は非常に粘稠の反応層がCMAS耐性層64の表面上に形成された後、CMAS耐性層64とCMASとの間の反応が遅くなるが、それは、さらなる反応が生じるのに、CMASが反応層を通って拡散してCMAS耐性層64に遭遇するか、又はCMAS耐性層64の成分が反応層を通って拡散しCMASと遭遇する必要があるからである。いずれの場合も、CMAS又はCMAS耐性層64の成分のいずれかが拡散することは、拡散が最も遅いプロセスであるため固体反応層がCMAS耐性層64の表面上に形成された後の反応における制限工程となることが予想される。
【0049】
CMAS耐性層64は、少なくとも1つの希土類酸化物を含む。有用な希土類酸化物は、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせを含む、希土類元素の酸化物が挙げられる。いくつかの実施例では、CMAS耐性層64は、ジルコニア及びハフニアを本質的に含まない。つまり、これらの実施例では、コーティングは、例えば、市販の希土類酸化物中に存在する量など、せいぜい微量のジルコニア及びハフニアを含むだけである。
【0050】
CMAS耐性層64は、少なくとも1つの希土類酸化物に加えて、アルミナ及び/又はシリカも含みうる。例えば、CMAS耐性層64は、アルミナと少なくとも1つの希土類酸化物、シリカと少なくとも1つの希土類酸化物、又はアルミナ、シリカ、及び少なくとも1つの希土類酸化物を含みうる。アルミナ及び/又はシリカをCMAS耐性層64に添加して、例えば、層64とCMASとの化学反応性、反応生成物の粘性、熱膨張率、層64とEBC36又はTCB 62との化学的適合性、並びに同様の特性などの、CMAS耐性層64の1つ又は複数の特性を調整することができる。
【0051】
さらに、いくつかの実施例では、CMAS耐性層64は、適宜、例えば、Ta2O5、TiO2、HfSiO4、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、又はこれらの混合物などの、他の添加剤成分を含むことができる。添加剤成分をCMAS耐性層64に添加して、層64の1つ又は複数の望ましい特性を変えることができる。例えば、添加剤成分は、CMAS耐性層64とCMASとの反応速度を加減することができ、CMASとCMAS耐性層64との反応からの反応生成物の粘性を変えることができ、TBC62又はEBC36へのCMAS耐性層64の接着力を高めることができ、CMAS耐性層64の化学的安定性を高めたり、低くしたりすることができ、又は同様のことを行うことができる。
【0052】
図2〜4は、基材32上に形成された層の異なる組み合わせを含む実例を示しているが、図示されている層の組み合わせが唯一であるわけではない。例えば、CMAS耐性層64は、TBC62の代わりにEBC36上に形成されうるか、又は物品は、上張層52、ボンド・コート54、EBC36、及びTBC62を備えうる。層の他の組み合わせも企図され、本開示の対象となっている。
【0053】
図2〜4は、一般的に矩形の断面形状を有する特徴体46、58を示している。他の実施例では、特徴体46、58は、他の断面形状を備えることもできる。特徴体46、58の他の断面形状のいくつかの実例は、図5A〜5Hに示されている。例えば、図5A及び5Bは、一般的に湾曲した断面形状を備える、凹部又は溝72と突起部又は隆起部74をそれぞれ示している(例えば、円の一部分の断面を有する溝若しくは隆起部、又は球形の一部分の形状を有する凹部若しくは突起部)。図5C及び5Dは、三角形の断面形状を備える、凹部又は溝76及び突起部又は隆起部78をそれぞれ示している。例えば、凹部76又は突起部78は、円錐形又はピラミッド形の形状を備えることができる。図5E及び5Fは、一般的に矩形の断面形状を有する、凹部又は溝80及び突起部又は隆起部82をそれぞれ示している。最後に、図5G及び5Hは、一般的に正方形の断面形状を有する、凹部又は溝84及び突起部又は隆起部86をそれぞれ示している。そのような断面形状は単なる実例にすぎず、他の断面形状も可能であり、これは当業者には明らかなことであろう。一般に、特徴体72、74、76、78、80、82、84、86は、2.54mm(0.1インチ)未満、又は2.54mm(0.1インチ)に実質的に等しい幅、及びEBC36の厚さより小さい、又はEBC36の厚さに実質的に等しい深さ若しくは高さを備えるものとしてよい。(例えば、図2を参照)
【0054】
特徴体46、58、72、74、76、78、80、82、84、86(「特徴体46」と総称する)は、複数の特徴体46を備える配列内の層34に形成されうる。図6A〜6Fは、多数の例示的な特徴体46及び特徴体46の配列を示している。例えば、図6Aは、複数の溝若しくは隆起部94を備える特徴体92の配列が層34内に形成されていることを示している。溝若しくは隆起部94は、実質的に互いに平行に配向されている。このような配置構成では、層34(及び層34上に形成されたEBC36)を複数の領域に分離し、それぞれの領域は隣接する溝94と溝との間に配置されうる。上で説明されているように、これにより、層34上に形成されたEBC36の熱若しくは機械的応力への抵抗性を改善することができる。
【0055】
いくつかの実施例では、溝94は、図6Aに示されているように、ほぼ同じ幅Wであるものとしてよい。他の実施例では、1つ又は複数の溝94は、溝94のうちの別の溝と異なる幅Wを有するものとしてよい。いくつかの実施例では、溝94のうちのそれぞれの溝の幅Wは、2.54mm(0.1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54mm(0.1インチ)に等しいものとしてよい。他の実施例では、溝94のうちのそれぞれの溝の幅Wは、約0.102mm(0.004インチ)から約1.016mm(0.040インチ)までの範囲内としてよい。
【0056】
隣接する溝94は、実質的に均等な間隔で並べられるか、又は異なる距離で相隔てて並ぶものとしてよい。隣接する溝94の間の距離Dは、ピッチと称することができ、いくつかの実施例では、約25.40mm(1インチ)程度であってよい。いくつかの実施例では、ピッチは、約1.27mm(0.05インチ)から約6.35 mm(0.25インチ)までの範囲内である。いくつかの実施例では、ピッチは、単調増加若しくは単調減少するものとしてよい。他の実施例では、ピッチは増加し次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。さらに他の実施例では、図6Aに示されているように、ピッチはほぼ一定であってよい。
【0057】
溝若しくは隆起部94は、図2〜4及び5A〜5Hに例示されているように、例えば、アーチ形(つまり、円の一部)、矩形、又は三角形の断面を含む、さまざまな断面形状を有することができる。溝94のそれぞれは、同じ断面形状を有するか、又は溝94のうちの少なくとも1つは、溝94のうちの別の1つの溝と異なる断面形状を有することができる。溝94のうちのそれぞれの溝の深さは、EBC36の厚さと同じ程度であってよい(例えば、図2を参照)。いくつかの実施例では、溝94のうちのそれぞれの溝の深さは、EBC36の厚さの約20%から約80%までの範囲内としてよい。絶対寸法に関して、いくつかの実施例では、溝のそれぞれの深さは、約0.0051mm(0.0002インチ)から約2.54mm(0.1インチ)までの範囲内としてよい。他の実施例では、溝は、約0.0152mm(0.0006インチ)から約1.02mm(0.04インチ)までの範囲内とすることができる。幅Wと同様に、溝94のうちのそれぞれの溝の深さは、おおよそ同じであるか、又は溝94のうちの少なくとも1つの溝の深さは、溝94のうちの少なくとも1つの他の溝と異なっていてもよい。いくつかの実施例では、溝94の深さは、単調増加若しくは単調減少するか、増加して次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。
【0058】
図6Bは、互いに実質的に平行になるように形成された第1の複数の溝若しくは隆起部及び互いに実質的に平行になるように、且つ第1の複数の溝若しくは隆起部に実質的に垂直になるように形成された第2の複数の溝若しくは隆起部によって形成されたグリッド98を備える特徴体96の配列を示している。グリッド98が溝を含む場合、グリッド98は、層34内に凹部を形成し、層34内に複数のプラトー部100を画成する。或いは、グリッド98が隆起部を含む場合、グリッド98は、層34内に突起部を形成し、層34内に複数のプラトー部100を画成する。このようにして、グリッド98は、層34(及び層34上に形成されたEBC36)を複数の領域に分離し、亀裂が一方の領域から隣接する領域へと成長するのを阻止する。
【0059】
他の実施例では、図6Cに例示されているように、特徴体102の配列は、正弦波状の溝若しくは隆起部104のグリッドを備えることができる。グリッド102は、層内に凹部又は突起部を形成し、層34内に複数のプラトー部106を画成する。このようにして、グリッド104は、層34(及びEBC36)を複数の領域に分離し、亀裂が一方の領域から隣接する領域へと成長するのを阻止する。
【0060】
いくつかの実施例では、図6B及び6Cにおいて実質的に水平方向に配向されている溝若しくは隆起部のそれぞれは、第1の幅W1を有することができ、図6B及び6Cにおいて実質的に垂直方向に配向されている溝若しくは隆起部のそれぞれは、第2の幅W2を有することができる。いくつかの実施例では、第1の幅W1は、第2の幅W2と同じであってもよいが、他の実施例では、第1の幅W1は、第2の幅W2と異なっていてもよい。それに加えて、いくつかの実施例では、グリッド98又は104内の少なくとも1つの垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の幅は、グリッド98又は104内の別の垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の幅と異なっていてもよい。同様に、グリッド98内の少なくとも1つの水平方向に配向された溝若しくは隆起部の幅は、グリッド98又は104内の別の水平方向に配向された溝若しくは隆起部の幅と異なっていてもよい。いくつかの実施例では、グリッド98内の水平方向若しくは垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の幅は、単調増加若しくは単調減少するが、他の実施例では、グリッド98又は104内の水平方向若しくは垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の幅は、増加し次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のうちのそれぞれの幅(W1又はW2)は、2.54mm(0.1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54mm(0.1インチ)に等しいものとしてよい。他の実施例では、グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のうちのそれぞれの幅(W1又はW2)は、約0.102mm(0.004インチ)から約1.016mm(0.040インチ)までの範囲内であるものとしてよい。
【0061】
グリッド98又は104内の隣接する平行な溝若しくは隆起部は、ほぼ均等な間隔で相隔てて並ぶか、又は異なる距離で相隔てて並ぶものとしてよい。いくつかの実施例では、グリッド98又は104内の隣接する溝若しくは隆起部の間の距離D1又はD2(ピッチと称する)は、2.54cm(1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54cm(1インチ)に等しいものとしてよい。いくつかの実施例では、距離D1又はD2は、約1.27mm(0.05インチ)から約6.35mm(0.25インチ)までの範囲内とすることができる。いくつかの実施例では、ピッチは、単調増加若しくは単調減少するものとしてよい。他の実施例では、ピッチは増加し次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。さらに他の実施例では、図6B及び6Cに示されているように、ピッチはほぼ一定であってよい。それに加えて、いくつかの実施例では、第1の方向の隣接する溝若しくは隆起部の間の距離D1は、第2の方向の隣接する溝若しくは隆起部の間の距離D2と異なっていてもよい。いくつかの実例では、一方の方向におけるピッチは、グリッド98内で増加又は減少しうるが、第2の方向におけるピッチは、ほぼ一定であるものとしてよい。
【0062】
グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のそれぞれは、図2〜4及び5A〜5Hに例示されているように、例えば、アーチ形、矩形、又は三角形の断面を含む、さまざまな断面形状を有することができる。グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のそれぞれは、同じ断面形状を有するか、又はグリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のうちの少なくとも1つは、グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のうちの別の1つと異なる断面形状を有することができる。溝若しくは隆起部のそれぞれの深さ又は高さは、それぞれ、EBC36の厚さより小さいか、又は実質的に等しいものとしてよい。いくつかの実施例では、溝若しくは隆起部のうちのそれぞれの深さ又は高さは、EBC36の厚さの約20%から約80%までの範囲内としてよい。絶対寸法に関して、いくつかの実施例では、溝のそれぞれの深さは、約0.0051mm(0.0002インチ)から約2.54mm(0.1インチ)までの範囲内としてよい。他の実施例では、溝は、約0.0152mm(0.0006インチ)から約1.02mm(0.04インチ)までの範囲内とすることができる。幅Wと同様に、グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のそれぞれの溝の深さ又は高さは、おおよそ同じであるか、又は溝若しくは隆起部の少なくとも1つの溝の深さ又は高さは、溝若しくは隆起部のうちの他の少なくとも1つと異なっていてもよい。溝若しくは隆起部の深さ又は高さは、単調増加若しくは単調減少するか、又は増加して次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。いくつかの実例では、第1の方向、例えば図6B及び6Cにおいて実質的に垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の深さ又は高さは、第2の方向、例えば図6B及び6Cにおいて実質的に水平方向に配向された溝若しくは隆起部の深さ又は高さと異なっていてもよい。それに加えて、一方の方向に配向された溝若しくは隆起部の深さ又は高さは、グリッド58内で変化しうるが、グリッド58内で第2の方向に配向された溝若しくは隆起部の深さ又は高さは、ほぼ一定であってもよい。
【0063】
いくつかの実施例では、層34は、実質的に連続する特徴体の配列の代わりに離散する特徴体の配列を備えることができる。例えば、図6Dは、層34内に形成された複数の円形の凹部若しくは突起部110を備える特徴体108の配列を示している。同様に、図6Eは、層34内に形成された複数の六角形の凹部若しくは突起部114を備える特徴体112の配列を示しており、図6Fは、層34内に形成された複数の楕円形の凹部若しくは突起部118を備える特徴体116の配列を示している。凹部又は突起部110、114、118(「凹部又は突起部110」と総称する)の例示されているパターン及び形状は、単なる実例にすぎず、凹部又は突起部110の他のパターン及び形状も本開示により企図されている。それに加えて、特徴体の配列は、円形、六角形、又は楕円形の形状(図9Dを参照)などの、異なる形状の凹部又は突起部110を備えることができる。
【0064】
上で説明されているように、凹部又は突起部110のそれぞれは、直径若しくは幅Wを有することができる。いくつかの実施例では、図6D〜6Fに示されているように、凹部又は突起部110の直径若しくは幅Wは、実質的に一定であるものとしてよい。いくつかの実施例では、凹部又は突起部110の直径若しくは幅Wは、単調増加若しくは単調減少するものとしてよいが、他の実施例では、凹部又は突起部110の直径若しくは幅Wは、増加し次いで減少するか、又は減少し次いで増加するものとしてよい。凹部又は突起部110のうちのそれぞれの直径又は幅Wは、2.54mm(0.1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54mm(0.1インチ)に等しい範囲内であるものとしてよい。いくつかの実施例では、凹部又は突起部110のうちのそれぞれの直径若しくは幅Wは、約0.102mm(0.004インチ)から約1.016mm(0.040インチ)までの範囲内としてよい。
【0065】
凹部又は突起部110は、ほぼ均等な間隔で相隔てて並ぶか、又は図6Bに示されているグリッド98の溝若しくは隆起部と同様に、異なる距離で相隔てて並ぶものとしてよい。隣接する凹部又は突起部110の間の距離Dは、2.54cm(1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54cm(1インチ)に等しいものとしてよい。いくつかの実施例では、隣接する凹部又は突起部110の間の距離Dは、約1.27mm(0.05インチ)から約6.35mm(0.25インチ)までの範囲内とすることができる。ピッチは、単調増加若しくは単調減少するか、増加して次いで減少するか、減少して次いで増加するか、又はほぼ一定のままであるものとしてよい。それに加えて、第1の方向の隣接する凹部若しくは突起部110の間の距離Dは、第2の方向の隣接する凹部若しくは突起部110の間の距離Dと異なっていてもよい。いくつかの実例では、一方の方向におけるピッチは、増加又は減少しうるが、第2の方向におけるピッチは、ほぼ一定であるものとしてよい。他の実例では、2つの実質的に垂直な方向のピッチは、それぞれ変化する、例えば、両方向に増加するか、両方向に減少するか、又は第1の方向に増加し、第2の方向に減少するものとしてよい。
【0066】
凹部若しくは突起部110のそれぞれは、図2〜4及び5A〜5Hに例示されているように、例えば、アーチ形、矩形、又は三角形の断面を含む、さまざまな断面形状のうちの1つを有することができる。凹部若しくは突起部110のそれぞれの断面形状は同じであるか、又は特徴体108、112、若しくは116の配列内で異なっていてもよい。凹部若しくは突起部110のそれぞれの深さは、EBC36の厚さより小さいか、又は実質的に等しいものとしてよい。いくつかの実施例では、凹部若しくは突起部110のそれぞれの深さは、EBC36の厚さの約20%から約80%までの範囲内としてよい。絶対寸法に関して、いくつかの実施例では、溝のそれぞれの深さは、約0.0051mm(0.0002インチ)から約2.54mm(0.1インチ)までの範囲内としてよい。他の実施例では、溝は、約0.0152mm(0.0006インチ)から約1.02mm(0.04インチ)までの範囲内とすることができる。それに加えて、特徴体108、112、若しくは116の配列内の凹部若しくは突起部110の深さは、ほぼ同じであるか、又は凹部若しくは突起部110のうちの少なくとも1つの深さは、凹部若しくは突起部110のうちの他の少なくとも1つと異なっていてもよい。凹部若しくは突起部110の深さは、単調増加若しくは単調減少するか、増加して次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。いくつかの実施例では、凹部若しくは突起部110の深さは、特徴体108、112、若しくは116の配列内で一方向にそって変化しうるが、凹部若しくは突起部110の深さは、特徴体108、112、若しくは116の配列内で第2の実質的に垂直な方向にそって変化しても、変化しなくてもよい。
【0067】
溝若しくは隆起部94などの、実質的に連続する特徴体、及び円形の凹部若しくは突起部110などの離散的な特徴体は、別々に説明されているけれども、いくつかの実施例では、連続する特徴体及び離散的な特徴体は、一緒に使用することもできる。例えば、図6Gは、複数の溝若しくは隆起部94及び複数の円形の凹部若しくは突起部110を備える特徴体120の配列を示している。溝若しくは隆起部94は、互いに実質的に平行に配向され、凹部若しくは突起部110の柱状部の間の層34内に形成される。このような配置構成では、層34を複数の領域に分離し、それぞれの領域は隣接する溝と溝との間に配置されうる。上で説明されているように、これにより、層34上に形成されたEBC36の熱若しくは機械的応力への抵抗性を改善することができる。
【0068】
凹部若しくは突起部110及び溝若しくは隆起部94は、上で説明されているのと同様の、深さ若しくは高さ、ピッチ、幅、及び/又は断面形状を含む、特性を有することができる。いくつかの実例では、凹部及び隆起部若しくは溝及び突起部は、層34内に一緒に形成することができる。凹部、突起部、溝、及び隆起部の他の組み合わせも本開示により企図されている。
【0069】
図6A〜6Gに示されている特徴体の配列は、実質的に均一なものであるとして図示され、説明されているけれども、いくつかの実施例では、特徴体の配列は、不均一であるか、又はランダムであってもよい。例えば、配列内の特徴体の1つ又は複数の特性が、その配列全体を通して実質的にランダムに変化してもよい。例えば、形状、断面形状、サイズ、ピッチ、深さ、又は同様の特性のうちの少なくとも1つが、その配列全体を通して実質的にランダムに変化してもよい。
【0070】
図7は、中に形成された複数の特徴体を有する上張層を基材上に形成することを含む物品を形成する例示的な技術の流れ図である。わかりやすくするため、図7の技術は、図3に示されているガス・タービン動翼50を参照しつつ説明されるが、図7の技術は、例えば、タービン動翼トラック、タービン・シール・セグメント、翼、又は同様のものなどの、高温になる機械システムの別のコンポーネント上で利用することができることは理解されるであろう。
【0071】
最初に、上張層52が、基材32上に形成される(122)。上張層52は、基材32のマトリックス材38と同じ材料を備える。上張層52は、基材32の形成時に基材32上に形成されうるか、又はその後の蒸着工程において基材32上に形成されうる。基材32の形成時に基材32上に形成される場合、上張層52は、例えば、化学蒸気浸透法、化学気相成長法、溶解浸透法、ポリマー前駆物質プロセス、又は同様の方法によって蒸着されうる。上張層52の形成は、強化材40の実質的に完全なカプセル封入が確実になされるように強化材40が覆われた後、追加量のマトリックス材38を蒸着することを含みうる。
【0072】
基材32の形成後に基材32上に形成される場合、上張層52は、例えば、CVD、ポリマー前駆物質プロセス、ゾル・ゲル・プロセス、スラリー・プロセス、プラズマ溶射、PVD、又は同様の方法によって蒸着されうる。上で説明されているように、上張層52は、上張層52内に形成された特徴体58の深さ又は高さより大きい厚さを備えるように形成され、これにより、特徴体が上張層52内に形成されたときに強化材40が露出しない可能性を高めるか、又は確実に露出しないようにすることができる。
【0073】
上張層52が、基材32上に形成された(122)後、特徴体58の配列が上張層52内に形成される(124)。配列は、例えば、直線的な溝若しくは隆起部、正弦波状の溝若しくは隆起部、直線的な、若しくは正弦波状の溝若しくは隆起部によって形成されたグリッド、円形の凹部若しくは突起部、六角形の凹部若しくは突起部、楕円形の凹部若しくは突起部、矩形の凹部若しくは突起部、又はこれらの特徴体58の組み合わせなどの複数の特徴体58を備えることができる。特徴体58が凹部又は溝を備える場合、特徴体58は、例えば、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。化学エッチング及びフォトリソグラフィでは、上張層52の一部分が、上張層52と反応する化学薬品に曝され、上張層52から材料が取り除かれる。化学薬品によってエッチングされる場所及び上張層52が化学薬品に曝される時間の長さを制御することによって、特徴体58の深さ及び形状を制御することができる。エッチングされる場所は、化学エッチング液に関して不活性である材料の層で、エッチングされるべきでない上張層52の部分を被覆することによって制御されうる。
【0074】
レーザー加工では、エキシマー・レーザーなどの電磁エネルギーの発生源を使用して、上張層52によって吸収される波長の一連の電磁パルスを発生する。パルスは、エネルギーを吸収する上張層52の部分を蒸発させるのに十分な強さのものである。上張層52の異なる部分の順序曝露を使用して、上張層52の一部又はいくつかの部分を蒸発させて、特徴体58を形成することができる。
【0075】
特徴体58を形成する他の方法として、例えば、加圧水流、研磨剤、研磨剤を混ぜた水、又は上張層52を変形するか、若しくは上張層52から材料を取り除くのに十分に硬いツールによって、上張層52のいくつかの部分を機械的に取り除く方法が挙げられる。
【0076】
特徴体58が隆起部若しくは突起部を備える実施例では、特徴体58は、例えば、レーザー・クラッディングによって形成されうる。レーザー・クラッディングでは、レーザー又は他の電磁エネルギー源が上張層52上に蒸着された材料の領域上に合焦され、これにより、材料を溶融するか、又は焼結し、特徴体58を形成する。上張層52に相対的なレーザー及び追加された材料の位置及び移動を制御することによって、上張層52上に特徴体58の所望の形状を形成するためにレーザー・クラッディングが使用されうる。
【0077】
特徴体58の配列が上張層52内に形成された(124)後、ボンド・コート54は、適宜、特徴体58の配列を含む、層52上に蒸着されうる(126)。上で説明されているように、ボンド・コート54は、上張層52とEBC36との間の接着力を改善する材料を備えることができる。ボンド・コート54は、セラミック、又は上張層52と親和性のある他の材料を含むものとしてよい。例えば、ボンド・コート54は、ムライト、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、希土類ケイ酸塩、又は同様のものを含むことができる。ボンド・コート54は、例えば、プラズマ溶射、PVD、CVD、スラリー・ディッピング、又は同様のものによって層52上に形成されうる。ボンド・コート54は、特徴体58を含む、層52の幾何学的形状を実質的に再現することができる。
【0078】
ボンド・コート54のオプションの蒸着の後、EBC36がボンド・コート54上(又はボンド・コート54が存在していない場合には、層52上)に形成されうる(128)。EBC36は、層52及び基材32を環境劣化から保護する材料を含みうる。例えば、EBC36は、酸化又は水蒸気攻撃に耐性のある材料を備え、及び/又は水蒸気安定性、化学安定性、及び環境耐久性の少なくとも1つを基材32に付与することができる。EBC36は、例えば、BSAS、BAS、CAS、SAS、LAS、MASなどのガラス・セラミックス、希土類ケイ酸塩、又は同様のものを含みうる。EBC36は、プラズマ溶射、EB−PVD又はDVDなどのPVD、CVD、陰極アーク蒸着、スラリー・ディッピング、ゾル・ゲル・コーティング、電気泳動析出、及び同様のものなどの、さまざまな技術によって施され、コーティングの少なくとも一部に対して実質的に非多孔性の構造として蒸着されるものとしてよく、これにより、水蒸気若しくは他のガスが基材32に接触する可能性が低減されるか、又は実質的に防止される。EBC36は、特徴体58を実質的に再現する。
【0079】
いくつかの実施例では、上張層52を基材32上に形成し、特徴体58を上張層52内に形成する代わりに、ボンド・コート54を基材32上に直接形成することができ、特徴体46をボンド・コート54内に形成することができる(図2及び付随する説明を参照)。図8は、そのような物品を形成するための例示的な技術の流れ図である。
【0080】
最初に、ボンド・コート54が、基材32上に形成される(132)。ボンド・コート54は、例えば、金属又はセラミックなどの、基材32とEBC36との間の接着力を改善する材料を備えることができる。例えば、ボンド・コート54は、ムライト、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、希土類ケイ酸塩、又は同様のものを含むことができる。ボンド・コート54は、例えば、プラズマ溶射、PVD、CVD、又は同様のものによって層32上に形成されうる。
【0081】
ボンド・コート54が、基材32上に形成された(132)後、特徴体46の配列がボンド・コート54内に形成される(134)。配列は、例えば、直線的な溝若しくは隆起部、正弦波状の溝若しくは隆起部、直線的な、若しくは正弦波状の溝若しくは隆起部によって形成されたグリッド、円形の凹部若しくは突起部、六角形の凹部若しくは突起部、楕円形の凹部若しくは突起部、矩形の凹部若しくは突起部、又はこれらの特徴体46の組み合わせなどの複数の特徴体46を備えることができる。特徴体46が凹部又は溝を備える場合、特徴体46は、例えば、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。特徴体46が隆起部若しくは突起部を備える場合、特徴体46は、例えば、レーザー・クラッディングによって形成されうる。
【0082】
特徴体46の配列が、ボンド・コート54内に形成された(134)後、EBC36は、ボンド・コート54上に、且つ特徴体の配列の上に形成される(128)。EBC36は、例えば、BSAS、BAS、CAS、SAS、LAS、MASなどのガラス・セラミックス、希土類ケイ酸塩、又は同様のものなどの、ボンド・コート54及び基材32を環境劣化から保護する材料を含みうる。EBC36は、プラズマ溶射、EB−PVD又はDVDなどのPVD、CVD、陰極アーク蒸着、スラリー・ディッピング、ゾル・ゲル・コーティング、電気泳動析出、及び同様のものなどの、さまざまな技術によって施され、コーティングの少なくとも一部に対して実質的に非多孔性の構造として蒸着されるものとしてよく、これにより、水蒸気若しくは他のガスが基材32に接触する可能性が低減されるか、又は実質的に防止される。EBC36は、ボンド・コート54内に形成された特徴体46を実質的に再現する。このようにして、複数の領域が、EBC36内に形成され、EBC36内の亀裂伝播を防ぎ、EBC36の機械的及び/又は熱応力耐性を改善する働きをする。
【0083】
いくつかの実施例では、TBC62(図4)は、適宜、EBC36上に形成されうる(136)。上で説明されているように、TBC62は、比較的低い熱伝導率を有するさまざまな材料のうちの少なくとも1つを含むことができ、歪み耐性を高め、及び/又はTBC62の熱伝導率をさらに下げ、断熱性を基材32に付与するために多孔性構造又は柱状構造として形成することができる。いくつかの実施例では、TBC62は、例えば、イットリア安定化ジルコニア、イットリア安定化ハフニア、希土類酸化物安定化ジルコニア、希土類酸化物安定化ハフニア、希土類ケイ酸塩、希土類ジルコン酸塩、希土類ハフニウム酸塩、又はこれらの組み合わせを含むことができる。TBC62は、例えば、プラズマ溶射、DVD又はEB−PVDなどのPVD、CVD、及び同様のものを含む、有用な技術によってEBC36上に蒸着されうる。
【0084】
いくつかの実施例では、TBC62がEBC36上に形成されたかどうかに関係なく、CMAS耐性層64は、EBC36の上に蒸着されうる(138)(つまり、TBC62が存在していなければEBC36上に直接、又は存在していればTBC62上に)。CMAS耐性層64は、TBC62又はEBC36に隣接して、又はその上に載るように構成され、TBC62及び/又はEBC36を、TBC62及び/又はEBC36の微細孔内へのCMASの浸透から保護することができる。
【0085】
CMAS耐性層64は、CMASと反応して固体の、又は非常に粘稠な反応生成物(つまり、ガス・タービン・エンジン60が曝される温度で固体であるか、又は非常に粘稠である反応生成物)を形成する元素を含むものとしてよい。反応生成物は、CMASに比べて著しく高い(例えば、約1200〜1250℃より高い)溶融温度を有するものとしてよい。例えば、CMAS耐性層64は、少なくとも1つの希土類酸化物を含む。有用な希土類酸化物は、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせを含む、希土類元素の酸化物が挙げられる。いくつかの実施例では、CMAS耐性層64は、ジルコニア及びハフニアを本質的に含まない。つまり、これらの実施例では、コーティングは、例えば、市販の希土類酸化物中に存在する量など、せいぜい微量のジルコニア及びハフニアを含むだけである。いくつかの実施例では、CMAS耐性層64は、適宜、アルミナ、シリカ、Ta2O5、TiO2、HfSiO4、アルカリ酸化物、及び/又はアルカリ土類酸化物を含みうる。
【0086】
CMAS耐性層64は、例えば、プラズマ溶射、物理気相成長、化学気相成長、及び同様のものを含む有用な方法を使用してTBC62又はEBC36に施すことができる。
【0087】
前記の説明は、CMC基材上の層内に特徴体の単一の配列を形成することをもっぱら目的としているが、他の技術も、物品の熱及び/又は機械的応力への抵抗性を改善するために使用されうる。例えば、物品は、基材の第1の位置に形成された特徴体の第1の配列と基材の第2の位置に形成された特徴体の第2の配列とを備えることができる。第1及び第2の位置のそれぞれは、第1及び第2の位置が使用中に受けることが予測される熱及び/又は機械的応力に基づき選択されうる。予測される熱及び/又は機械的応力は、実験データ、例えば、以前に使用された、若しくは試験されたコンポーネントから集められたデータに基づき決定されうるか、又はコンポーネント上の熱応力の理論的モデリング(例えば、有限要素解析)によって予測されうる。
【0088】
例えば、図9A〜9Dは、物品の第1及び第2の位置で受ける予測された熱及び/又は機械的応力に基づき物品の層34内に形成された特徴体の第1及び第2の配列のさまざまな実例を示す概念図である。図9Aは、層34の第1の位置142に形成された特徴体114の第1の配列146と層34の第2の位置に形成された特徴体114の第2の配列148とを有する層34を示している。図9Aに示されている実施例では、特徴体114のそれぞれは六角形の凹部を備える。他の実施例では、特徴体114のそれぞれは、別の形状の凹部、任意の形状の突起部、直線状若しくは正弦波状の溝、及び/又は直線状若しくは正弦波状の隆起部を備えることができる。
【0089】
いくつかの実施例では、第1の位置142における予測される熱及び/又は機械的応力は、第2の位置144における予測される熱及び/又は機械的応力よりも大きいものとしてよい。第1の位置142及び第2の位置144で受ける熱及び/又は機械的応力は、それぞれ、層34及び層34上に形成されたEBC(図9Aに示されていない)の熱膨張及び/又は収縮を引き起こす温度変化によるものであるか、又はEBCによる破片の物理的衝撃によるものとすることができる。第1の位置142は、例えば、高温になる機械システム内の第1の位置142の位置により、より大きな熱及び/又は機械的応力を受けうるが、第2の位置144は、高温になる機械システム内のその位置のせいでより低い熱応力を受けうる。
【0090】
したがって、第1の位置142では、第2の位置144に形成された特徴体114の第2の配列148に比べて大きい熱及び/又は機械的応力の軽減をもたらしうる、特徴体114の第1の配列146を中に形成していてもよい。例えば、図9Aに示されている実施例において、第1の配列146内の特徴体114は、第2の配列内の特徴体114に比べて密集したパターンで形成される。このようなパターンは、層34をより小さな領域に分割し、第2の配列148内の特徴体114のより広い間隔に比べて熱及び/又は機械的応力のよりよい軽減をもたらしうる。第2の配列148は、それでも、層34の第2の位置144に対して熱及び/又は機械的応力の軽減をもたらしうる。
【0091】
図9Aの特徴体114は、サイズ及び形状が均一であるものとして示されているけれども、いくつかの実施例では、単一の配列146又は148は、複数の形状、サイズ、及び/又は深さを含む特徴体114のパターンを含みうる。異なる形状を備える配列の一実例は、図9Dに示されている。いくつかの実施例では、特徴体114のサイズ、形状、及び/又は深さは、配列146若しくは148内の1つ又は2つの垂直方向の次元で単調増加しうるか、又は配列146若しくは148内の1つ又は2つの垂直方向の次元で増加し次いで減少しうる。それに加えて、いくつかの実施例では、配列146及び/又は148は、配列146及び/又は148内で特徴体114の不均一な、又はランダムな分布を含みうる。
【0092】
図9Bに示されているように、いくつかの実施例では、層34は、特徴体114の遷移配列160を含む遷移領域154を備えることができる。遷移領域154は、特徴体114の第1の配列158を備える、第1の位置152と特徴体114の第2の配列162を備える、第2の位置156との間に配置される。遷移配列160内では、隣接する特徴体114の間の間隔、つまりピッチは、第1の配列158内の特徴体114の間隔から第2の配列162内の特徴体114の間隔まで実質的に連続して変化しうる。
【0093】
例えば、第1の配列158から第2の配列162に遷移するために、遷移配列内のそれぞれのその後の行は、より少ない特徴体114、及びその行内の隣接する特徴体114の間の増加した間隔を含む。このようにして、遷移配列は、第1の配列158から第2の配列162への遷移を円滑にすることができる。遷移配列160は、第1の配列158と第2の配列162との中間にある熱及び/又は機械的応力の軽減をもたらし、遷移配列160内の特徴体114若しくは特徴体114の間隔が変化すると変化する。例えば、遷移配列160によってもたらされる熱応力の軽減は、第2の配列162に近い位置にある遷移配列160によってもたらされる熱応力の軽減に比べて第1の配列158に近い位置ではより大きいものとしてよい。
【0094】
図9Bは、遷移配列160内で変化する特徴体114のピッチのみを示しているけれども、他の実施例では、特徴体114のサイズ、深さ、又は形状は、第1の配列158内の特徴体114に類似していることから第2の配列162内の特徴体114に類似していることに変わりうる。いくつかの実施例では、特徴体114の2つ若しくはそれ以上の特性、例えば、サイズ、形状、深さ、又はピッチは、遷移配列160内で変化しうる。
【0095】
図9Cは、層34の第1の位置172のところに形成された層34内の平行な溝若しくは隆起部94を備える特徴体の第1の配列178を備える層34を示している。層34は、層34の第2の位置176のところに形成された溝若しくは隆起部94の第2の配列182、及び層34の遷移領域174内に形成された溝若しくは隆起部94の遷移配列180も備える。第1の配列178は、隣接する溝若しくは隆起部94の間の第1の間隔を備え、第2の配列182は、隣接する溝若しくは隆起部94の間の第2の間隔を備える。遷移配列180は、第1の配列178内の溝若しくは隆起部94の間の間隔に類似していることから第2の配列182内の溝若しくは隆起部94の間の間隔に類似していることに変わる隣接する溝若しくは隆起部94の間の間隔を備える。このようにして、遷移配列180は、第1の配列178内の溝若しくは隆起部94のパターンから第2の配列182内の溝若しくは隆起部94のパターンへの実質的に連続する遷移をもたらす。
【0096】
図9A〜9Cは、類似の特徴体46を含む特徴体46の第1及び第2の配列を示しているが、いくつかの実施例では、第1及び第2の配列は、図9Dに示されているように、異なる特徴体46を含んでいてもよい。図9Dにおいて、層34は、層34の第1の位置192のところに形成された六角形の凹部若しくは突起部114及び楕円形の凹部若しくは突起部118を備える第1の配列196及び層34の第2の位置194のところに形成された円形の凹部若しくは突起部110の第2の配列198を具備する。
【0097】
第1の配列196は、六角形の凹部若しくは突起部114及び楕円形の凹部若しくは突起部118を備える。他の実施例では、特徴体の他の組み合わせを、単一の配列、例えば、第1の配列196内で使用することができ、また2つより多い特徴体を単一の配列内で使用することができる。六角形の凹部若しくは突起部114及び楕円形の凹部若しくは突起部118は、図9Dでは、特徴体の1つの組み合わせの一実例としてのみ示されている。それに加えて、第1の配列196内の隣接する特徴体114、118の間のピッチは、実質的に均一であるとして示されているが、他の実施例では、ピッチは、第1の配列196内で変化しうる。
【0098】
特徴体のピッチ及び形状は、両方とも、第1の配列196と第2の配列198との間で変わる。ここでもう一度、円形の凹部若しくは突起部110は、例示的なものにすぎず、第2の配列198内では特徴体の任意の形状が使用されうる。
【0099】
いくつかの実施例では、特徴体の形状及び/又はピッチが第1の配列196と第2の配列198との間で変わる代わりに、特徴体の形状及び/又はピッチは変わらず、特徴体のサイズ及び/又は深さが第1の配列196と第2の配列198との間で変わりうる。実際、特徴体の特性の任意の組み合わせ、例えば、サイズ、形状、ピッチ、深さ、断面形状、又は同様のものは、第1の配列196と198との間で変わることも変わらないこともある。
【0100】
図9A〜9Dには示されていないけれども、いくつかの実施例では、特徴体の第1の配列は、実質的に連続する特徴体(例えば、図6Aの溝94)を含むことができるが、特徴体の第2の配列は、離散的な特徴体(例えば、図6Dの円形の凹部若しくは突起部110)を含む。特徴体及び特徴体の配列の他の組み合わせは、当業者には明らかであろう。
【0101】
それに加えて、また適宜、いくつかの実施例では、基材32の上に形成された層の構造は、第1の位置(例えば、第1の位置192)と第2の位置(例えば、第2の位置194)とで異なっていてもよい。例えば、より低い熱応力を受けることが予測される物品の位置では、TBCは利用されず、物品は、上張層52、ボンド・コート54、及びEBC36を含むコーティングを備えることができる。その一方で、より大きな熱応力を受けることが予測される物品の位置では、TBCは、上張層52、ボンド・コート54、及びEBC36に加えて使用されうる。もちろん、本開示全体を通して説明されているように、層の他の組み合わせも使用することができる。いくつかの実施例では、2つより多い層構造を単一の物品内で使用することもできる。層の構造は、単一の物品の異なる位置における変更された熱及び/又は機械的応力の軽減をもたらすように特徴体の配列と組み合わせて選択されうる。
【0102】
図10は、物品の第1の位置に特徴体の第1の配列と物品の第2の位置に特徴体の第2の配列とを備える物品を形成するための例示的な技術の流れ図である。図10に示されている技術は、便宜のため図9Aを参照しつつ説明されるが、層内に形成された特徴体の第1の配列及び第2の配列を含む他の実施例にも適用可能であると理解されるであろう。
【0103】
最初に、特徴体の第1の配列146は、層34上の第1の位置142に形成される(172)。特徴体は、図9Aに例示されているように、六角形の凹部若しくは突起部114を備えることができるか、又は、例えば、直線的な溝若しくは隆起部、正弦波状の溝若しくは隆起部、直線的な、若しくは正弦波状の溝若しくは隆起部によって形成されたグリッド、円形の凹部若しくは突起部、楕円形の凹部若しくは突起部、又はこれらの特徴体の組み合わせを含みうる。これらの特徴体は、例えば、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、レーザー・クラッディング、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。
【0104】
上で説明されているように、第1の位置142は、層34を備える物品が使用中に受ける熱及び/又は機械的応力の予測に基づき選択若しくは決定されうる。熱及び/又は機械的応力の予測は、層34(及び基材32)が受ける作用と似た状態の下で類似の層を使用しているときに収集されたデータなどの、実験的証拠若しくは実験データに基づき行うことができる。いくつかの実施例では、熱及び/又は機械的応力の予測は、基材32、層34、ボンド・コート54(もし存在すれば、図3を参照)、及び/又はEBC36(図2を参照)の材料特性に基づく応力理論計算結果に基づき行うことができる(例えば、有限要素解析)。
【0105】
第1の配列146が層34内に形成された(172)後、特徴体(例えば、六角形の凹部若しくは突起部114)の第2の配列148が、層34の第2の位置144に形成されうる(174)。第1の配列146を形成するために使用されるものと似たプロセスが、第2の配列148を形成するために使用されうる。いくつかの実施例では、第2の配列148は、第1の配列146と実質的に同時に形成されうる。他の実施例では、第2の配列148は、第1の配列146の後に形成されうる。
【0106】
第1の位置142と同様に、第2の位置144は、層34を備える物品が使用中に受ける熱及び/又は機械的応力の予測に基づき選択若しくは決定されうる。熱応力の予測は、層34(及び基材32)が受ける作用と似た状態の下で類似の層を使用しているときに収集されたデータなどの、実験的証拠若しくは実験データに基づき行うことができる。いくつかの実施例では、熱及び/又は機械的応力の予測は、基材32、層34、ボンド・コート54(もし存在すれば、図3を参照)、及び/又はEBC36(図2を参照)の材料特性に基づく応力理論計算結果に基づき行うことができる(例えば、有限要素解析)。
【0107】
上で説明されているように、第1の配列146及び第2の配列148は、それぞれ、特徴体の第1のパターン及び第2のパターンを備えることができる。これらのパターンは、特徴体の形状、サイズ、深さ、ピッチ、又は断面形状によって画成されうる。いくつかの実施例では、これらの特性のうちの1つのみが、第1の配列146と第2の配列148との間で変わりうるが、他の実施例では、これらの特性のうちの2つ又はそれ以上が、第1の配列146と第2の配列148との間で変わりうる。それに加えて、又は代替えとして、いくつかの実施例では、第1の配列146及び第2の配列148のうちの少なくとも1つは、特徴体の不均一な、又はランダムな分布を含みうる。
【0108】
図10には示されていないけれども、いくつかの実施例では、この技術は、適宜、層34内の遷移配列(例えば、遷移配列160、図9B)を形成することを含むことができる。上で説明されているように、遷移配列は、第1の配列146に近い第1の配列146内のパターンに類似していること及び第2の配列148に近い第2の配列148に類似していることから遷移するパターンを含みうる。遷移配列は、第1の配列146及び/又は第2の配列148を形成するために使用されるプロセスのどれかによって形成されうる。いくつかの実施例では、遷移配列は、第1の配列146及び/又は第2の配列148と実質的に同時に形成されうる。他の実施例では、遷移配列は、第1の配列146及び/又は第2の配列148と順次的に形成されうる。
【0109】
第1の配列146、第2の配列148、及び適宜、遷移配列が層34内に形成された後、第1の配列146及び第2の配列148内の特徴体を含めて、EBC36(図2)を層34上に形成することができる(176)。上で説明されているように、EBC36は、層34及び基材32を環境劣化から保護する材料を含みうる。例えば、EBC36は、BSAS、BAS、CAS、SAS、LAS、MASなどのガラス・セラミックス、希土類ケイ酸塩、又は同様のものを含みうる。EBC36は、プラズマ溶射、EB−PVD及びDVDを含むPVD、CVD、陰極アーク蒸着、スラリー・ディッピング、ゾル・ゲル・コーティング、電気泳動析出、及び同様のものなどの、さまざまな技術によって施され、コーティングの少なくとも一部に対して実質的に非多孔性の構造として蒸着されうる。
【0110】
前記の実例は、主にガス・タービン動翼に関して説明されているけれども、他の実例では、本明細書で説明されている技術は、高温になる機械システムの他のコンポーネントに応用することができる。例えば、ガス・タービン・エンジンの動翼トラック又はガス・タービン・エンジンの動翼シュラウドは、CMC基材、その基材の上に形成された層、及びその層内に形成された特徴体の配列を備えることができる。同様に、前記の実例は特徴体の配列を含む層の上に形成されたEBCに関して主に説明されているが(単独で、又は他の層と組み合わせて)、いくつかの実例では、摩耗性コーティングが、特徴体の配列を含む層の上に形成されうる。
【0111】
摩耗性コーティングとして、例えば、ガス・タービン動翼などの、第2のコンポーネントによって摩耗するように構成されているコーティングが挙げられる。いくつかの実例において、摩耗性コーティングが少なくとも1つの多孔性層とともに形成され、それらの微細孔は、例えば第2のコンポーネントとの接触などからの十分な機械的力にコーティングが曝されたときに摩耗性コーティングが比較的小さな断片に分かれる傾向を高めることができる。
【0112】
いくつかの実例では、摩耗性コーティングは、ガス・タービン・エンジンの動翼トラック又はガス・タービン・エンジンの動翼シュラウドとガス・タービン動翼との間にシールを形成することができる。例えば、ガス・タービン・エンジンの動翼トラック若しくはガス・タービン・エンジンの動翼シュラウド及びガス・タービン動翼の相対的サイズは、動翼が摩耗性コーティングの少なくとも一部と意図的に接触し、摩耗させるように選択されうる。いくつかの実例では、動翼とシュラウド又はトラックとの間の接触の結果、タービン動翼の経路に対応する摩耗性コーティング内の溝を形成しうる。摩耗性コーティングの摩耗性により、タービン動翼を比較的自由に回転させながらもタービン動翼と摩耗性コーティングとの間の接触を可能にすることができる。それに加えて、摩耗性コーティングは、ゴム若しくは他のポリマー・シールが劣化する可能性のある高温になるシステムにおいてシールとして有用な場合がある。
【0113】
特徴体の配列を備える層の上に形成された摩耗性コーティングを具備する物品の一実例は、図11に示されている。図11に示されている実例では、物品180は、基材32、基材32上に形成された層34、及び層34上に形成された摩耗性コーティング182を備える。それに加えて、層34は、その上に形成された特徴体46の配列を備えることができる。
【0114】
上で説明されているように、基材32は、セラミック若しくはCMCを含みうる。いくつかの実施例では、セラミックを含む基材32は、例えば、シリカ(SiO2)、炭化ケイ素(SiC)、又は窒化ケイ素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、アルミノケイ酸塩、又は同様のものなどのシリコン含有セラミックを含むことができる。他の実施例では、基材32は、モリブデン・シリコン合金(例えば、MoSi2)又はニオブ・シリコン合金(例えば、NbSi2)などの、シリコンを含む金属合金を含みうる。
【0115】
基材32がCMCを含む実施例では、基材32は、マトリックス材38及び強化材40を含みうる。マトリックス材38は、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、又は同様の物質を含む、セラミック材料を含みうる。CMCは、所望の強化材40をさらに含むことができ、強化材40は、連続強化材又は不連続強化材を含みうる。例えば、強化材40は、不連続のホイスカ、プレートレット、又は微粒子を含むことができる。他の実例として、強化材40は、連続単繊維又は多繊維織物を含むことができる。
【0116】
いくつかの実施例では、強化材40の組成は、マトリックス材38の組成と同じであってもよい。他の実施例では、強化材40は、アルミナマトリックス中のアルミノケイ酸塩繊維、又は同様のものなどの、マトリックス材38の組成と異なる組成を備えるものとしてよい。
【0117】
いくつかの実施例では、強化材40は、基材32の表面のところで確実に露出されないことが望ましい場合がある。そのような実施例では、層34は、基材32の表面42上に形成されうる。層34があれば、強化材40の実質的にどれもが、特徴体46が形成される表面44のところで露出されない可能性が高まりうる。
【0118】
いくつかの実施例では、層34は、基材32のマトリックス材38と同じ材料を含みうる。他の実例では、層34は、基材32のマトリックス材38と異なる材料を含みうる。例えば、層34は、ボンド・コートであってよく、これは基材32と摩耗性コーティング182との間の接着力を向上させる働きをする。ボンド・コートを含む場合、層34は、セラミック、又は基材32と親和性のある他の材料を含むものとしてよい。例えば、層34は、ムライト、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、又は同様のものを含むことができる。層34は、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、又はScのケイ酸塩を含む希土類ケイ酸塩などの、他のセラミックスをさらに含むことができる。
【0119】
層34は、層34の表面44内に形成される特徴体46を備える。特徴体46は、表面44内に形成された溝、隆起部、凹部、又は突起部を備えることができ、これは、例えば、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、レーザー・クラッディング、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、又は同様のものによって形成されうる。図11に示されている実例では、特徴体46は、層34の表面44上に形成された隆起部若しくは突起部を備えることができる。表面44内に形成されうる特徴体の他の実例は、図3〜6及び9A〜9Dに示されている。それに加えて、特徴体46に対するサイズ、深さ、ピッチ、及び同様のものの範囲の実例は、上記の図3〜6及び9A〜9Dに関して説明されている。
【0120】
物品180は、層34と特徴体46の上に形成された摩耗性コーティング182をさらに備えることができる。摩耗性コーティング182は、耐浸食性、摩耗性、耐食性、耐熱衝撃性、製造性、及び高温性能のうちの少なくとも1つを有する材料を含みうる。例えば、摩耗性は、十分な物理的力に曝されたときに比較的小さな断片に分かれる傾向を含むものとしてよい。摩耗性は、破壊靱性及び破壊メカニズム(例えば、脆性破壊)、さらには摩耗性コーティング182の多孔性などの、摩耗性コーティング182の材料特性の影響を受ける可能性がある。いくつかの実例では、耐熱衝撃性及び高温能力は、摩耗性コーティング182が、高い動作温度からガス・タービン・エンジンが動作していないときの低い環境温度まで広い温度変動に曝されるガス・タービン・エンジン内で使用するうえで重要である場合がある。いくつかの実例では、摩耗性コーティング182は、例えば、約30体積%から約45体積%までの範囲など、最大約50体積パーセント(体積%)までの多孔性を備えるものとしてよい。
【0121】
いくつかの実例では、摩耗性コーティング182は、少なくとも1つの希土類ケイ酸塩を含みうる。希土類ケイ酸塩は、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、又はScのうちの少なくとも1つのケイ酸塩を含むものとしてよい。希土類ケイ酸塩は、化学式がRE2O3−SiO2、若しくは同等のものであるRE2SiO5であり、REは希土類元素である、希土類一ケイ酸塩を含むか、又は化学式がRE2O3−2SiO2、若しくは同等のものであるRE2Si2O7であり、REは希土類元素である、希土類二ケイ酸塩を含むか、又は希土類一ケイ酸塩及び希土類二ケイ酸塩の両方の混合物を含みうる。希土類一ケイ酸塩は、シリカ1分子と希土類酸化物1分子との間の化学反応によって形成され、希土類二ケイ酸塩は、シリカ2分子と希土類酸化物1分子との間の化学反応によって形成されうる。
【0122】
いくつかの実施例では、摩耗性コーティング182は、希土類一ケイ酸塩と希土類二ケイ酸塩の混合物を含みうる。例えば、摩耗性コーティング182は、希土類酸化物及びシリカが約1:1のモル比で存在している場合に希土類一ケイ酸塩を主に含みうるが、それでも、いくつかの希土類二ケイ酸塩を含みうる。同様に、摩耗性コーティング182は、希土類酸化物及びシリカが約1:2のモル比で存在している場合に希土類二ケイ酸塩を主に含みうるが、それでも、いくつかの希土類一ケイ酸塩を含みうる。
【0123】
それに加えて、摩耗性コーティング182は、希土類酸化物分子に付随しないシリカ(SiO2)分子、シリカ分子に付随しない希土類酸化物分子、又はその両方をさらに含むことができる。
【0124】
いくつかの実例において、摩耗性コーティング182は、希土類二ケイ酸塩を含むか、又は本質的に希土類二ケイ酸塩からなる(例えば、希土類一ケイ酸塩を実質的にいっさい含みえない)第1の副層と、希土類一ケイ酸塩を含むか、又は本質的に希土類一ケイ酸塩からなる(例えば、希土類二ケイ酸塩を実質的にいっさい含みえない)第2の副層とを備えることができる。いくつかの実例では、第2の副層は、第1の副層上に形成されうる。いくつかの実例では、摩耗性コーティング182は、第1の副層と第2の副層との間に組成的に傾斜した遷移層をさらに含みうる(例えば、第1の副層との界面のところで二ケイ酸塩対一ケイ酸塩の比が高く、第2の副層との界面のところで二ケイ酸塩対一ケイ酸塩の比が低い希土類二ケイ酸塩と希土類一ケイ酸塩との混合物)。
【0125】
摩耗性コーティング182は、他の、オプションの、添加剤要素若しくは化合物をさらに含むことができる。添加剤要素又は化合物は、例えば、摩耗性コーティングの熱膨張率、又は摩耗性コーティング182と層34などの、隣接する層との化学的又は機械的親和性などの、摩耗性コーティング182の機械的及び/又は化学的特性を変えることができる。添加剤要素としては、例えば、アルミナ、Ta2O5、TiO2、HfSiO4、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0126】
いくつかの実例では、図11に示されているように、摩耗性層182は、層34内に形成された特徴体46の形状を実質的に再現することができる。上で説明されているように、特徴体46は、摩耗性層182を複数のより小さな領域に分離することができる。亀裂成長は、個別の領域内に発生しうるが、特徴体46は、隣接する領域の間の亀裂成長を隠す。
【0127】
他の実例では、図12に示されているように、物品190は、層34内に形成された特徴体46の形状を実質的には再現しない摩耗性層182を備えることができる。いくつかの実装では、これは、摩耗性層182の比較的滑らかな表面184が摩耗性層182とガス・タービン動翼の先端部との間の封止を円滑にすることができるか、又は摩耗性層182の空力的特性を改善することができるか、又は同様のことにより、好ましいと思われる。いくつかの実装において、滑らかな表面は、研磨によって形成することができる。
【0128】
いくつかの実例では、物品は、摩耗性層182と組み合わせた他の層を備えることができる。例えば、図13に示されているように、物品200は、基材32、層34、及び摩耗性層182を備えることができる。それに加えて、物品200は、適宜、ボンド・コート54、EBC36、TBC62、及び/又はCMAS耐性層64のうちの少なくとも1つを備えることができる。ボンド・コート54、EBC36、TBC62、及びCMAS耐性層64は、本明細書で説明されている組成を有することができ、好適な技術を使用して蒸着することができ、好適な厚さになるように形成することができる。それに加えて、ボンド・コート54、EBC36、TBC62、及びCMAS耐性層64は、基材32の上に任意の順序で形成されうる。例えば、EBC36がTBC62の上に形成されうるか、又はTBC62がEBC36の上に形成されうる。他の実例も企図され、本開示の範囲の対象となっている。
【0129】
いくつかの実例では、図13に示されているように、摩耗性層182は、物品190の一番外側の層である。他の実例では、別の層が、例えば、CMAS耐性層64などの、物品200の一番外側の層を形成することができる。
【0130】
図12に関して上で説明されているように、いくつかの実例では、摩耗性層182は、特徴体46の形状を実質的に再現することはありえず、その代わりに、比較的滑らかな外面184を画成することができる。
【0131】
摩耗性層182は、例えば、熱溶射技術、例えば、プラズマ溶射などを使用して、基材32、層34、EBC36、TBC62、又はCMAS耐性層64の上に、蒸着するか、又は直接蒸着することができる。摩耗性層182の多孔性は、コーティング材料の添加剤及び/又は処理技術を使用して所望の多孔性を生じさせることによって制御することができる。いくつかの実施例では、実質的に密閉された微細孔が望ましいことがある。
【0132】
例えば、コンポーネントの使用温度で溶融するか、若しくは焼けるコーティング材料の添加剤を、摩耗性層182を形成するコーティング材料中に組み込むことができる。コーティング材料の添加剤としては、例えば、グラファイト、六方晶窒化ホウ素、又はポリエステルなどのポリマーが挙げられ、これは、摩耗性層182を形成するために層34、EBC36、TBC62、CMAS耐性層64の上にコーティング材料を蒸着する前にコーティング材料中に組み込むことができる。いくつかの実施例では、コーティング材料のスプレー・パウダー処理のときに添加剤をコーティング材料中に組み込むことができる。次いで、コーティング材料の添加剤が、蒸着後熱処理において、若しくはガス・タービン・エンジンの運転中に溶融するか、又は燃焼して、摩耗性層182内に微細孔を形成することができる。蒸着後熱処理は、CMC若しくは他のセラミックを含む基材32を有するコンポーネントに対して最高約1500℃までの温度で実行することができる。
【0133】
コーティング材料の添加剤にさまざまな処理技術を施し、熱溶射後に摩耗性層182内に取り込まれたまま残る添加剤の量を改善することができる。いくつかの実施例では、コーティング材料及びコーティング材料の添加剤に対してボールミル破砕を実行し、コーティング材料の添加剤の粒子をコーティング材料の粒子に付着させることができる。他の実施例では、コーティング材料の添加剤を、例えば、ナトリウム又は炭素も含有しうる、セルラー炭酸メチル(cellular methyl carbonate)などの、有機結合剤でコーティング材料に付着させることができる。熱溶射の後に摩耗性層182内に取り込まれたまま残る添加剤の量を改善するための使用若しくは処理技術は、摩耗性層182における多孔性の程度及び多孔性の均一さのうちの少なくとも一方を改善することができる。
【0134】
摩耗性層182の多孔性は、2つの放射状粉末供給注入ポートでプラズマ流にコーティング材料及びコーティング材料の添加剤を供給する共噴霧プロセス技術(co−spray process technique)を使用してコーティング材料にプラズマ溶射を行うことによって形成され、及び/又は制御されうる。コーティング材料及びコーティング材料の添加剤の供給圧力及び流量は、直接的な90度の角度の注入を使用してプラズマプルームの外縁上に材料を注入するように調整されうる。これは、コーティング材料の粒子を柔らかくするが、完全に溶融させることはせず、またコーティング材料の添加剤を燃焼させず、むしろ、摩耗性層182に接着する十分な柔らかさにすることができる。
【0135】
いくつかの実施例では、摩耗性層182の多孔性は、摩耗性層182の少なくとも一部を通して変化するように制御されうる。例えば、摩耗性層の多孔性は、層34の表面44に隣接する位置に比べて外面184に隣接する位置でより高くなるように制御されうる。
【0136】
上で簡単に説明されているように、摩耗性層182は、さまざまな考慮事項に応じた厚さの範囲に合わせて蒸着することができる。考慮すべき一点は、タービン・エンジンが最高動作温度で動作していないときに1つ又は複数の低い動作温度でコンポーネント(例えば、タービン動翼及びタービン・シュラウド又はトラック)の予測されるサイズ変化とすることができる。例えば、タービン動翼が熱膨張すると、タービン動翼の先端部と基材32との間の距離が短くなることが予想されうる。この実例では、摩耗性層182の厚さは、低い動作温度及び高い動作温度において動翼先端部と基材32との間の距離の予測される差に実質的に等しいか、又はそれ以上になるように選択されうる。これにより、実質的にすべての動作温度において動翼先端部と動翼トラック又は動翼シュラウドとを接触させ、それらの間にシールを形成することができ、その動作温度範囲全体にわたってガス・タービン・エンジンの効率を改善することができる。
【0137】
いくつかの実施例では、摩耗性層182は、最大約2.5mm(0.1インチ)までの厚さに蒸着することができる。他の実施例では、摩耗性層182は、約0.76mm(約0.030インチ)から約1.5mm(約0.060インチ)までの範囲の厚さに蒸着することができる。いくつかの実施例では、摩耗性層182は、所望の最終の厚さにおおよそ等しいか、又はそれ以上である厚さに蒸着することができ、また所望の最終の厚さに合わせて機械加工することができる。
【0138】
いくつかの実例では、物品は、単層摩耗性コーティングの代わりに多層摩耗性コーティングを備えることができる。図14は、基材32及び層34の上に蒸着された多層摩耗性コーティング212を備える物品210の実例を示している。図14にされている実施例では、多層摩耗性コーティング212は、層34の上に蒸着された第1の層214及び第1の層214の上に蒸着された第2の層216を備える。第1の層214は、第1の材料を含むものとしてよく、第2の層216は、第1の材料と異なる第2の材料を含むものとしてよい。
【0139】
他の実施例では、多層摩耗性コーティング212は、例えば、第1の層214と第2の層216との複数の対などの、2つより多い層214及び216を備えることができる。例えば、多層摩耗性コーティング212は、交互配置された層内に配列された第1の層214と第2の層216の2つの対を備えることができる(例えば、第1の層214、第2の層216、第1の層214、第2の層216)。多層摩耗性コーティング212は、第1の層214と第2の層216との多数の対を備えることができる。
【0140】
第1の層214は、摩耗性層182を参照しつつ上で説明されているものと同様に、希土類ケイ酸塩を含むか、又は本質的に希土類ケイ酸塩からなるものとしてよい。第1の層214は、例えば、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、Sc、及び同様のもののうちの少なくとも1つの一ケイ酸塩、二ケイ酸塩、又はその両方を含むものとしてよい。いくつかの実施例では、第1の層214は、希土類ケイ酸塩に加えて存在しうる、シリカ又は希土類酸化物のうちの少なくとも1つも含みうる。第1の層214は、アルミナ、Ta2O5、TiO2、HfSiO4、アルカリ酸化物、及びアルカリ土類酸化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0141】
第2の層216は、安定化ジルコニア若しくは安定化ハフニアを含むか、又は本質的に安定化ジルコニア若しくは安定化ハフニアからなるものとしてよい。安定化ジルコニア及び安定化ハフニアのそれぞれは、1つ又は複数の添加剤要素若しくは化合物を含めることによって安定化されたベース酸化物(例えば、ジルコニア若しくはハフニア)を含む。例えば、安定化ジルコニア又は安定化ハフニアは、ジルコニア又はハフニアに組み込まれている希土類酸化物を含みうる。希土類酸化物は、ハフニア若しくはジルコニアの相安定性、熱伝導率、若しくは別の特性を変えるか、又は改善することができる。
【0142】
図14は、第1の層214の上に蒸着されるように第2の層216を示しているが、他の実施例では、第2の層216(例えば、層は安定化ジルコニア又は安定化ハフニアを含む)は、層34の上に蒸着されるか、又は層34上に直接蒸着されうる。第1の層214(例えば、層は希土類ケイ酸塩を含む)は、第2の層216の上に蒸着されるか、又は第2の層216上に直接蒸着されうる。ここでもう一度、摩耗性コーティング212は、第1の層214と第2の層216との複数の層の対を備えることができる。
【0143】
基材の表面内に形成されたさまざまな特徴体及び特徴体の配列は異なる実施例において説明されているが、例示されている実施例は、基材32の上に形成された特徴体及び配列又は層の組み合わせ及び構成を制限するものではないと理解されるであろう。例えば、異なる断面形状が主に図5A〜5Hに関して説明されているが、本明細書で説明されている特徴体又は配列はどれも、任意の断面形状を備えうることは理解されるであろう。本明細書で説明されている特徴体、配列、及び層の他の組み合わせは、当業者には明らかであり、以下の請求項の範囲内に収まる。
【0144】
さまざまな実施例が説明されている。これら及び他の実施例は、以下の特許請求の範囲の範囲内に収まる。
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境障壁コーティングでコーティングされた物品が受ける熱応力を軽減するための技術を対象とする。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガス・タービン・エンジンなどの、高温になる機械システムのコンポーネントは、過酷な環境において動作しなければならない。例えば、商用航空機エンジン内の高温ガスに曝される燃焼器ライナは、典型的には、最大約1150℃から約1400℃までのコーティング表面温度の効果を受ける。
【0003】
高温になる機械システムのいくつかのコンポーネントは、セラミック若しくはセラミック・マトリックス複合材料(CMC)ベースの基材を含む。基材は、環境障壁コーティング(EBC)でコーティングされ、これにより、水蒸気又は酸素などの環境化学種への基材の表面の曝露を低減することができる。環境障壁コーティングは、セラミック・トップコートを含むことができ、下に配置する金属若しくはセラミック・ボンド・コートによって基材に固着させることができる。
【0004】
コンポーネントは、動作中、また動作が停止されたときに、さまざまな異なる温度に曝される可能性がある。これらのさまざまな異なる温度は、EBCに著しい熱応力を及ぼし、最後には、基材からのEBCの破砕に至ることが考えられる。応力は、例えば、異なる熱膨張率を有する基材/ボンド・コート(bond coat)及びEBC、又は温度勾配により異なる温度の効果を受ける基材/ボンド・コート及びEBCにより、生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、本開示は、環境障壁コーティング(EBC)でコーティングされたセラミック又はセラミック・マトリックス複合材料(CMC)を含む物品内の熱及び/又は機械的応力を軽減するための技術を対象とする。熱及び/又は機械的応力を軽減することで、EBCの耐用寿命(例えば、EBCでコーティングされた物品が退役させられるか、又はEBCを修理するために修復されるまでのEBCの寿命)を延ばすことができる。いくつかの実施例では、EBCは、ボンド・コートによって基材に固着される。他の実施例では、EBCは、基材上に直接形成されうる。いくつかの場合において、基材/ボンド・コート及びEBCは、異なる熱膨張率を有し、そのため、物品の温度が変化したときに異なる量の熱膨張及び/又は収縮を被る可能性がある。それに加えて、EBCはある異種の断熱性を基材にもたらすため、基材及びEBCは異なる温度の効果を受ける可能性があり、これは基材及びEBCが受ける相対的な量の膨張及び/又は収縮に影響を及ぼしうる。これは、ボンド・コート/EBCの界面のところ、又はそれより上のところに熱応力を引き起こし、これは時間の経過とともにEBC内に亀裂を形成し、亀裂を成長させることにつながりうる。EBCによる例えば破片の影響から生じる外部負荷は、機械的応力を引き起こし、結果としてEBC内に亀裂を形成しうる。最終的に、亀裂が十分なサイズにまで成長すると、EBCは基材から剥離する可能性がある。
【0006】
亀裂の原因に関係なく、基材からのEBCの剥離により、基材又はボンド・コートにとって有害でありうる、水蒸気若しくは酸素などの環境化学種に曝露される基材又はボンド・コートの領域が残されうる。本開示は、亀裂の伝播及び基材又はボンド・コートからEBCの剥離を軽減するための技術を提示する。
【0007】
一態様では、本開示は、マトリックス材及び強化材を含む基材、その基材上に形成された層、その層上に形成された特徴体の配列、並びにその層及び特徴体のその配列上に形成された環境障壁コーティングを備える物品を対象とする。
【0008】
他の態様では、本開示は、マトリックス材及び強化材を含む基材を備える物品を対象とする。物品は、基材上に形成された層、その層上の第1の位置に形成された特徴体の第1の配列、及びその層上の第2の位置に形成された特徴体の第2の配列も備える。本開示のこの態様によれば、第1の配列は、第1のパターンを備え、第2の配列は、第1のパターンと異なる第2のパターンを備える。物品は、基材、特徴体の第1の配列、及び特徴体の第2の配列上に形成された環境障壁コーティングも備える。
【0009】
さらなる態様では、本開示は、基材上に層を形成すること、層の表面上に特徴体の配列を形成すること、並びに層及び特徴体のその配列上に環境障壁コーティングを形成することを含む方法を対象とする。本開示のこの態様によれば、基材は、マトリックス材及び強化材を備える。
【0010】
さらなる態様では、本開示は、基材上に層を形成することを含む方法を対象とする。基材は、マトリックス材と強化材とを含むものとしてよい。本開示のこの態様では、方法は、層の表面上の第1の位置に特徴体の第1の配列を形成することと、層の表面上の第2の位置に特徴体の第2の配列を形成することとをさらに含む。特徴体の第1の配列は、第1のパターンを備えることができ、特徴体の第2の配列は、第1のパターンと異なる第2のパターンを備えることができる。本開示のこの態様によれば、方法は、層、特徴体の第1の配列、及び特徴体の第2の配列上に環境障壁コーティングを形成することをさらに含む。
【0011】
1つ又は複数の実例の詳細は、添付図面及び以下の説明で述べられる。他の特徴、目的、及び利点は、説明と図面、さらには特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガス・タービン・エンジンのタービン動翼の一実例の断面図である。
【図2】中に特徴体が形成され、上に環境障壁コーティングが形成された、層でコーティングされた基材の一実例を示す断面図である。
【図3】中に特徴体が形成され、上にボンド・コートが形成された、上張層でコーティングされた基材及びボンド・コート上に形成された環境障壁コーティングの一実例を示す断面図である。
【図4】基材、その基材上に形成され中に形成された特徴体を含む層、その層上に形成された環境障壁コーティング、その環境障壁コーティング上に形成された熱障壁コーティング、及びその熱障壁コーティング上に形成されたカルシア・マグネシア・アルミニウム・シリカ耐性層を備える物品の一実例を示す断面図である。
【図5A】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5B】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5C】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5D】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5E】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5F】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5G】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図5H】層内に形成された特徴体の実例を示す断面図である。
【図6A】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6B】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6C】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6D】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6E】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6F】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図6G】特徴体が層内に形成される層の実例を示す概念図である。
【図7】基材、その基材上に形成された上張層、上張層内に形成された特徴体の配列、並びにその上張層及び特徴体のその配列上に形成されたボード・コート及び環境障壁コーティングを備える物品を形成するための例示的な技術の流れ図である。
【図8】基材、その基材上に形成されたボンド・コート、そのボンド・コート内に形成された特徴体の配列、並びにそのボンド・コート及び特徴体のその配列上に形成された環境障壁コーティングを備える物品を形成するための例示的な技術の流れ図である。
【図9A】特徴体の第1の配列及び第2の配列がそれぞれ基材の第1の位置及び第2の位置に形成されている例示的な層の概念図である。
【図9B】特徴体の第1の配列及び第2の配列がそれぞれ基材の第1の位置及び第2の位置に形成されている例示的な層の概念図である。
【図9C】特徴体の第1の配列及び第2の配列がそれぞれ基材の第1の位置及び第2の位置に形成されている例示的な層の概念図である。
【図9D】特徴体の第1の配列及び第2の配列がそれぞれ基材の第1の位置及び第2の位置に形成されている例示的な層の概念図である。
【図10】第1の位置に特徴体の第1の配列と第2の位置に特徴体の第2の配列とを備える物品を形成する例示的な技術の流れ図である。
【図11】基材、その基材上に形成された特徴体の配列を含む層、及び特徴体の配列を含む層の上に形成された摩耗性コーティング(abradable coating)を備える例示的な物品の断面図である。
【図12】基材、その基材上に形成された特徴体の配列を含む層、及び特徴体の配列を含む層の上に形成された摩耗性コーティングを備える例示的な物品の断面図である。
【図13】基材、その基材上に形成された特徴体の配列を含む層、特徴体の配列を含む層上に形成されたボンド・コート、ボンド・コート上に形成された環境障壁コーティング、その環境障壁コーティング上に形成された熱障壁コーティング、その熱障壁コーティング上に形成されたCMAS耐性層、及びそのCMAS耐性層上に形成された摩耗性コーティングを備える例示的な物品の断面図である。
【図14】基材の上に配設される多層摩耗性コーティング及び特徴体の配列を含む層を備える物品の一実例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般に、本開示は、環境障壁コーティング(EBC)でコーティングされた物品内の熱及び/又は機械的応力を軽減するための技術を対象とする。いくつかの実施例では、本明細書で説明されている技術は、EBCの寿命を延ばすことができる。上で説明されているように、ガス・タービン・エンジンの動翼などの物品は、使用時に大きく変化する温度の効果を受けうる。これらの温度変化は、異なる熱膨張率を有する2つの層及び/又は温度勾配により異なる温度の効果を受ける2つの層の間の界面において熱応力を引き起こしうる。例えば、物品は、基材上に形成されるボンド・コート及びそのボンド・コート上に形成されるEBCでコーティングされうる。いくつかの実施例において、基材/ボンド・コート及びEBCは、異なる熱膨張率を有し、そのため、物品の温度が変化したときに異なる量の熱膨張及び/又は収縮を被る可能性がある。それに加えて、又は代替えとして、EBCは、基材/ボンド・コートにある種の断熱効果をもたらし、その結果、EBC及び基材/ボンド・コートは異なる温度の効果を受ける可能性がある。これは、ボンド・コート及びEBC又は基材及びEBCの界面のところ、又はそれより上のところに熱応力を引き起こし、これは時間の経過とともにEBC内に亀裂を形成し、亀裂を成長させることにつながりうる。最終的に、亀裂が十分なサイズにまで成長すると、EBCの一部が基材/ボンド・コートから剥離する可能性がある。これは、基材又はボンド・コートにとって有害な作用を及ぼしうる、水蒸気などの、環境化学種に曝される基材若しくはボンド・コートの領域を残しうる。いくつかの実施例では、EBCは、EBCを損傷し、EBCにおける亀裂の原因となりうる、破片の影響を受ける可能性がある。これは、基材/ボンド・コートからのEBCの層剥離、及び水蒸気などの、環境化学種への基材/ボンド・コートの曝露も引き起こしうる。
【0014】
本明細書で開示されるのは、EBCにおける亀裂の成長の効果を低減するか、最小にするための技術である。これらの技術は、オーバーレイ又はボンド・コートなどの、基材上に形成される層の表面内に特徴体を形成することを含む。これらの特徴体は、表面の相対的平面性を乱し、亀裂成長若しくは亀裂伝播を遅らせる。特に、亀裂がEBC内に形成され、基材の表面に実質的に平行な平面内で伝播し始めるときに、特徴体は亀裂が成長する必要のある2つの材料間の界面、例えば、EBCとボンド・コート又はボンド・コートと基材との間の界面を与えることによってさらなる亀裂成長を妨げるものとして機能する。実質的に、これらの特徴体は、基材及びEBCを複数のより小さな領域に分離する。亀裂成長は、個別の領域内に発生しうるが、これらの特徴体は、隣接する領域の間の亀裂成長を隠す。
【0015】
いくつかの実施例では、これらの特徴体は、第1の配列の第1の位置に、第2の配列の第2の位置に形成されうる。第1の配列のパターン、第2の配列のパターン、第1の位置、及び第2の位置は、それぞれ第1の位置及び第2の位置で基材が受ける熱若しくは機械的応力の予測値に基づき選択されうる。例えば、基材は、より高い温度、より激しい温度変化の効果を受け、及び/又は第2の位置に比べて第1の位置において破片の影響を受ける可能性がより高い。これに基づき、特徴体の第1の配列のパターンは、特徴体の第2の配列のパターンと異なるように選択されうる。例えば、特徴体の第1の配列は、より密集して相隔てて並ぶ特徴体を備えるか、異なる形状を有するか、又は特徴体の第2の配列に比べて優れた、機械的応力及び/又は熱応力の軽減をもたらす別の特性を備えることができる。
【0016】
図1は、本開示の技術によりコーティングが配設されうるタービン動翼10の例示的な翼12の断面を示す図である。タービン動翼10は、一般的に、柄(図示せず)に取り付けられた翼12を備える。翼12は、前縁16、後縁18、圧力側壁20、及び吸引側壁14を備える。圧力側壁20は、後縁18及び前縁16のところで吸引側壁14に接続される。
【0017】
本開示ではタービン動翼の表面内に形成された特徴体についてもっぱら説明しているけれども、本開示の技術は、ガス・タービン・エンジンなどの、高温になる機械システムの他のコンポーネントにも応用することができる。例えば、本明細書で説明されている技術は、ガス・タービン・エンジン動翼、静翼、動翼トラック(blade tracks)、又は燃焼器ライナに応用することができる。
【0018】
図1に示されている実施例において、タービン動翼10は、第1の空洞22a、第2の空洞22b、第3の空洞22c、及び第4の空洞2d(「空洞22」と総称する)も備える。空洞22は、比較的冷たい空気を動翼10の内部に通して循環させることによって動翼10の動作中にタービン動翼10を冷却するのを補助することができる。いくつかの実施例では、動翼10が備える空洞22は4つより多くも、4つより少なくてもよい。
【0019】
タービン動翼10、及びより具体的には翼12は、複数の後縁出口スロット24も備えることができる。後縁出口スロット24のうちの少なくとも1つは、第4の空洞22dに流体的に接続される。後縁出口スロット24は、第4の空洞22dを貫流する比較的冷たい空気のための出口を構成する。
【0020】
翼12は、複数のフィルム冷却孔26をさらに備える。第1のフィルム冷却孔26aは、第1の空洞22aと流体的に連通しているが、第2のフィルム冷却孔26b及び第3のフィルム冷却孔26cは、それぞれ、第2の空洞22b及び第3の空洞22cと流体的に連通している。いくつかの実施例では、複数のフィルム冷却孔26は、動翼10の先端部に最も近い位置に配置されうる。他の実施例では、複数のフィルム冷却孔26は、翼12の長さ部分の少なくとも一部を通して配列されうる。いくつかの実施例では、翼12は、3つよりも多いフィルム冷却孔26を備えることができる。
【0021】
上で簡単に説明したように、タービン動翼10は、ガス・タービン・エンジンなどの、高温になる機械システムの一コンポーネントであるものとしてよい。高温になる機械システムで使用される場合、動翼10は、高温の効果を受け、及び/又は水蒸気攻撃により陥凹する傾向を有する場合がある。したがって、タービン動翼10は、水蒸気攻撃又は他の環境化学種による攻撃の動翼10に対する効果を低減するか、又は実質的になくす保護コーティングを備えることができる。例えば、前縁16、後縁18、圧力側壁20、及び吸引側壁14は、環境保護対策となる、また適宜、動翼10の外面に対する断熱効果をもたらすセラミックコーティングである、EBCでコーティングすることができる。
【0022】
EBCは、翼12の外面を画成し、そのため、ガス・タービン・エンジンを通るガスに曝されうる。ガスは、ときには、破片を含むこともあり、これは、ガスがガス・タービン・エンジンの中を通り、翼12を通り過ぎるときにEBCに影響を及ぼしうる。破片は、EBCに影響を及ぼし、EBCに対して亀裂又は他の損傷を誘発しうる。いくつかの実施例では、EBCに対する亀裂又は損傷は、最終的に、EBCの一部の層剥離をもたらし、下にあるボンド・コート又は基材の一部が露出することがある。EBCを保護しないと、下にあるボンド・コート又は基材の露出部分が、ガス・タービン・エンジンの中を通るガス中に存在する環境化学種の有害な作用を受ける可能性がある。例えば、水蒸気は、ボンド・コート又は基材の陥凹を引き起こしうる。
【0023】
上で説明されているように、翼12は、EBC上に、又はEBCと下にある基材若しくはボンド・コートとの界面のところに熱応力を及ぼす温度変化を受ける可能性がある。これらの熱応力は、EBCと基材又はボンド・コートとの界面のところ、又はそれより上のところに亀裂の形成及び成長も引き起こしうる。
【0024】
本開示の態様によれば、翼12は、基材上に形成された層を含みうる。層は、中に形成された3次元の特徴体を備えるものとしてよく、これは層及びEBCを複数のより小さな領域内に分離する機能を持つ。いくつかの実施例では、層は、ボンド・コートを含みうるが、他の実施例では、層は、セラミック・マトリックス複合材料(CMC)のマトリックス材などの、基材内に封じ込められた材料を含みうる。これらの特徴体は、例えば、溝、凹部、隆起部、突起部、又は同様のものを含みうる。
【0025】
図2は、図1に示されているガス・タービン動翼10などのガス・タービン動翼の一実例の一部の断面図である。タービン動翼10は、基材32、基材32上に形成された層34、及び層34上に形成されたEBC36を備える。
【0026】
基材32は、セラミック又はセラミック・マトリックス複合材料(CMC)を含みうる。基材32がセラミックを含む実施例では、セラミックは実質的に均質であってよく、また実質的に単一の相の材料を含みうる。いくつかの実施例では、セラミックを含む基材32は、例えば、シリカ(SiO2)、炭化ケイ素(SiC)、又は窒化ケイ素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、アルミノケイ酸塩、又は同様のものなどのシリコン含有セラミックを含むことができる。他の実施例では、基材32は、モリブデン・シリコン合金(例えば、MoSi2)又はニオブ・シリコン合金(例えば、NbSi2)などの、シリコンを含む金属合金を含みうる。
【0027】
基材32がCMCを含む実施例では、基材32は、マトリックス材38及び強化材40を含みうる。マトリックス材38は、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、又は同様の物質を含む、セラミック材料を含みうる。CMCは、所望の強化材40をさらに含むことができ、強化材40は、連続強化材又は不連続強化材を含みうる。例えば、強化材40は、不連続のホイスカ、プレートレット、又は微粒子を含むことができる。他の実例として、強化材40は、連続単繊維又は多繊維織物を含むことができる。
【0028】
強化材40の組成、形状、サイズ、及び同様のものは、基材32に望ましい特性を付与するように選択されうる。例えば、強化材40は、脆いマトリックス材38の強靭性を高めるように選択されうる。強化材40は、基材32の熱伝導率、電気伝導率、熱膨張率、堅さ、又は同様の特性を変更するようにも選択されうる。
【0029】
いくつかの実施例では、強化材40の組成は、マトリックス材38の組成と同じであってもよい。例えば、炭化ケイ素を含むマトリックス材38が、炭化ケイ素ホイスカを含む強化材40を囲むものとしてよい。他の実施例では、強化材40は、アルミナマトリックス中のアルミノケイ酸塩繊維、又は同様のものなどの、マトリックス材38の組成と異なる組成を備えるものとしてよい。基材32の一組成として、炭化ケイ素を含むマトリックス材38中に埋め込まれた炭化ケイ素連続繊維を含む強化材40が挙げられる。
【0030】
基材32に使用することができるいくつかの例示的なCMCとして、マトリックス材38アルミナ又はアルミノケイ酸塩及びNEXTEL(商標)Ceramic Oxide Fiber 720(3M Co.(ミネソタ州セントポール所在)から入手可能)を含む強化材40などの、SiC又はSi3N4及び酸窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素アルミニウム、及び酸化物−酸化物セラミックスの組成物が挙げられる。
【0031】
いくつかの実施例では、強化材40は、基材32の表面のところで確実に露出されないことが望ましい場合がある。そのような実施例では、層34は、基材32の表面42上に形成されうる。層34があれば、強化材40の実質的にどれもが、特徴体46が形成される表面44のところで露出されない可能性が高まりうる。
【0032】
いくつかの実施例では、層34は、基材32のマトリックス材38と同じ材料を含みうる。層34は、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、シリカ、又は同様の物質を含みうる。このようにして、層34は、基材32の厚さを増やす働きをし、また基材32内の強化材40の上にマトリックス材38の一種の緩衝層を形成することができる。いくつかの実施例では、層34は、基材32の形成時に基材32の表面42上に形成されうる。他の実施例では、層34は、別の製造工程において基材32の表面42上に形成されうる。
【0033】
他の実例では、層34は、基材32のマトリックス材38と異なる材料を含みうる。例えば、層34は、ボンド・コートであってよく、これは基材32とEBC36との間の接着力を向上させる働きをする。ボンド・コートを含む場合、層34は、セラミック、又は基材32と親和性のある他の材料を含むものとしてよい。例えば、層34は、ムライト(ケイ酸アルミニウム、Al6Si2O13)、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、又は同様のものを含むことができる。層34は、Lu(ルテチウム)、Yb(イッテルビウム)、Tm(ツリウム)、Er(エルビウム)、Ho(ホルミウム)、Dy(ジスプロシウム)、Tb(テルビウム)、Gd(ガドリニウム)、Eu(ユウロピウム)、Sm(サマリウム)、Pm(プロメチウム)、Nd(ネオジム)、Pr(プラセオジム)、Ce(セリウム)、La(ランタン)、Y(イットリウム)、及びSc(スカンジウム)のケイ酸塩を含む希土類ケイ酸塩などの、他のセラミックスをさらに含むことができる。ボンド・コートとして機能する層34のいくつかの好ましい組成は、シリコン、ムライト、及びケイ酸イッテルビウムを含む。層34の特定の組成は、基材32及びEBC36の化学組成及び相組成を含む、多くの考慮事項に基づくものとしてよい。
【0034】
EBC36は、層34及び基材32を環境劣化から保護する材料を含みうる。例えば、EBC36は、酸化又は水蒸気攻撃に耐性のある材料を備え、及び/又は水蒸気安定性、化学安定性、及び環境耐久性の少なくとも1つを基材32に付与することができる。EBC36として、例えば、アルミナ・ケイ酸バリウム・ストロンチウム(BaOx−SrO1−x−Al2O3−2SiO2、BSAS)、アルミナ・ケイ酸バリウム(BaO−Al2O3−2SiO2、BAS)、アルミナ・ケイ酸カルシウム(CaO−Al2O3−2SiO2、CAS)、アルミナ・ケイ酸ストロンチウム(SrO−Al2O3−2SiO2、SAS)、アルミナ・ケイ酸リチウム(Li2O−Al2O3−2SiO2、LAS)、及びアルミナ・ケイ酸マグネシウム(2MgO−2Al2O3−5SiO2、MAS)、希土類ケイ酸塩、又は同様のものなどの、ガラス・セラミックスが挙げられる。EBC36は、プラズマ溶射、電子ビーム物理気相成長(EB−PVD)、及び指向性蒸着(DVD)を含む物理気相成長(PVD)、化学蒸着(CVD)、陰極アーク蒸着、スラリー・ディッピング、ゾル・ゲル・コーティング、電気泳動析出、及び同様のものなどの、さまざまな技術によって施され、EBC36の少なくとも一部は、実質的に非多孔性の構造として蒸着されるものとしてよく、これにより、水蒸気若しくは他のガスが基材32に接触する可能性が低減されるか、又は実質的に防止される。いくつかの実施例では、EBC36は、約0.025mm(0.001インチ)から約2.54mm(0.1インチ)までの範囲の厚さを備えることができる。いくつかの好ましい実施例では、EBC36は、約0.076mm(0.003インチ)から約1.27mm(0.05インチ)までの範囲の厚さを備えることができる。
【0035】
図2に示されている実施例では、層34の表面44に、5つの特徴体46a、46b、46c、46d、及び46e(「特徴体46」と総称する)が形成される。特徴体46は、表面44内に形成された溝、隆起部、凹部、又は突起部を備えることができ、これは、例えば、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、レーザー・クラッディング、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。図2に示されている実例では、特徴体46は、層34の表面44上に形成された隆起部若しくは突起部を備えることができる。
【0036】
特徴体46のそれぞれは、表面44の相対的平面性を乱す、例えば、特徴体46のそれぞれは、表面44内に不連続部を形成する。特徴体46は、表面44に対して平行な平面内でのEBC36内の亀裂成長を妨げることができる。特定の理論によって拘束されるものではないが、特徴体46は、結果として、層34とEBC36との間の界面を形成し、この界面上で亀裂は伝播し表面44のプラトー部分の上に配置されたEBC36の一部から層34内に形成された特徴体46のうちの1つまで成長する必要がある。異種材料間の、例えば、層34とEBC36との間の遷移は、これら2つの材料の界面上の亀裂成長を妨げることができ、単一の領域、例えば、層34のプラトー部の上に配置されているEBC36の一部又は特徴体46のうちの1つの上に配置されているEBC36の一部への亀裂成長を含むことができる。したがって、EBC36の一部が基材32からの層剥離を起こす程度にまで亀裂が成長した場合、層剥離するEBC36の部分は、特徴体46のうちの1つの上の部分又は表面44のプラトー部の上の部分に限定されうる。
【0037】
いくつかの実施例では、ガス・タービン動翼10などの、物品は、図2に示されていない少なくとも1つの追加の層を含みうる。例えば、図3に示されているように、ガス・タービン動翼50は、基材32、基材32の表面42上に形成された上張層52、上張層52の表面56上に形成されたボンド・コート54、及びボンド・コート54上に形成されたEBC36を備えることができる。
【0038】
図2に関して上で説明されているように、基材32は、いくつかの実施例において、マトリックス材38及び強化材40を含むCMCを備えることができる。マトリックス材38は、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、又は同様の物質を含む、セラミック材料を含みうる。いくつかの実施例では、強化材40の組成は、マトリックス材38の組成と同じであってもよい。例えば、炭化ケイ素を含むマトリックス材38が、炭化ケイ素ホイスカを含む強化材40を囲むものとしてよい。他の実施例では、強化材40は、アルミナマトリックス中のアルミノケイ酸塩繊維、又は同様のものなどの、マトリックス材38の組成と異なる組成を備えるものとしてよい。基材32の一組成として、炭化ケイ素を含むマトリックス材38中に埋め込まれた炭化ケイ素連続繊維を含む強化材40が挙げられる。
【0039】
上張層52は、基材32のマトリックス材38と同じ組成を備えることができる。例えば、上張層52は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、又は同様の物質を含みうる。このようにして、上張層52は、基材32の厚さを増やす働きをし、また基材32内の強化材40の上にマトリックス材38の一種の緩衝層を形成することができる。いくつかの実施例では、上張層52は、基材32の形成時に基材32の表面42上に形成されうる。他の実施例では、上張層52は、別の製造工程において基材32の表面42上に形成されうる。
【0040】
ボンド・コート54は、上張層52とEBC36との間の接着力を改善する材料を備えることができる。ボンド・コート54は、セラミック、又は上張層52と親和性のある他の材料を含むものとしてよい。例えば、ボンド・コート54は、ムライト、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、又は同様のものを含むことができる。ボンド・コート54は、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、及びScのケイ酸塩を含む希土類ケイ酸塩などの、他のセラミックスをさらに含むことができる。ボンド・コート54のいくつかの好ましい組成物として、シリコン、ムライト、及びケイ酸イッテルビウムが挙げられる。ボンド・コート54の特定の組成は、上張層52及びEBC36の化学組成及び相組成を含む、多くの考慮事項に基づくものとしてよい。
【0041】
図3に示されている実例では、特徴体58a、58b、58c(「特徴体58」と総称する)は、上張層52の表面56内に形成された凹部若しくは溝を備える。特徴体58は、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、レーザー・クラッディング、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。
【0042】
図4は、EBC36の上に形成される追加の層を含む、ガス・タービン・タービン動翼60の別の実例の断面図である。ガス・タービン動翼60は、基材32、基材32の表面42上に形成された層34、層34の表面44上に形成されたEBC36、EBC36上に形成された熱障壁コーティング(TBC)62、及びTBC62上に形成されたカルシア・マグネシア・アルミナ・ケイ酸塩(CMAS)耐性層64を備える。TBC62及びCMAS耐性層64が一緒に利用されているように示されているが、いくつかの実施例は、TBC62を含むが、CMAS耐性層64を含まないか、又はCMAS耐性層64を含むが、TBC62を含まないものとしてよい。
【0043】
TBC62は、比較的低い熱伝導率を有するさまざまな材料のうちの少なくとも1つを含むことができ、TBC62の熱伝導率をさらに下げ、断熱性を基材32に付与するために多孔性構造又は柱状構造として形成することができる。いくつかの実施例では、TBC62は、例えば、イットリア安定化ジルコニア、イットリア安定化ハフニア、希土類酸化物安定化ジルコニア、希土類酸化物安定化ハフニア、希土類ケイ酸塩、ジルコン酸塩、ハフニウム酸塩、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0044】
イットリア安定化ジルコニアは、わずかの量の酸化イットリウム(Y2O3)を混ぜたジルコニア(ZrO2)を含む。例えば、一イットリア安定化ジルコニア組成物は、約7質量%から約8質量%の酸化イットリウムによって安定化されたジルコニアを含む。いくつかの実施例では、イットリア安定化ジルコニアは、別の希土類酸化物をさらに含みうる。
【0045】
TBC62で使用される希土類酸化物としては、例えば、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Tb、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、Sc、及びこれらの組み合わせの酸化物が挙げられる。同じ希土類元素も、希土類ケイ酸塩、希土類酸化物安定化ジルコニア、希土類酸化物安定化ハフニア、希土類ハフニウム酸塩、又は希土類ジルコン酸塩として存在する場合に有益であると思われる。TBC62は、例えば、プラズマ溶射、DVD又はEB−PVDなどのPVD、CVD、及び同様のものを含む、有用な技術によって施されうる。
【0046】
コーティングがTBC62を含むかどうかに関係なく、CMAS耐性層64をTBC62又はEBC36に隣接して、又はその上に載るように構成し、TBC62及び/又はEBC36を、TBC62及び/又はEBC36の微細孔内へのCMASの浸透から保護することができる。CMAS耐性層64は、コーティング上に存在するCMASと反応し、反応層(図示せず)を形成しうる。CMAS耐性層64と反応層は、TBC62及び/又はEBC36の微細孔内へのCMASの浸透を低減するか、又は防ぐための障壁を形成することができる。CMAS耐性層64は、例えば、プラズマ溶射、物理気相成長、化学気相成長、及び同様のものを含む有用な方法を使用してTBC62又はEBC36に施すことができる。
【0047】
CMAS耐性層64は、CMASと反応して固体の、又は非常に粘稠な反応生成物(つまり、ガス・タービン・エンジン60が曝される温度で固体であるか、又は非常に粘稠である反応生成物)を形成する元素を含むものとしてよい。反応生成物は、CMASに比べて著しく高い(例えば、約1200〜1250℃より高い)溶融温度を有するものとしてよい。固体の、又は非常に粘稠の反応生成物が望ましいのは、CMAS耐性層64がCMASと反応して反応層を形成するにつれ消費されるからである。例えば、CMAS耐性層64とCMASとの反応生成物が比較的粘性の低い液体であった場合、その比較的粘性の低い液体は、CMAS耐性層64が反応によって消費された後、EBC36及び/又はTBC62の微細孔に浸透する可能性がある。
【0048】
しかし、反応生成物が固体であるか、又は非常に粘稠である場合、反応層がCMAS耐性層64の表面上に形成され、CMASとCMAS耐性層64との反応速度が低下することになる。つまり、固体の、又は非常に粘稠の反応層がCMAS耐性層64の表面上に形成された後、CMAS耐性層64とCMASとの間の反応が遅くなるが、それは、さらなる反応が生じるのに、CMASが反応層を通って拡散してCMAS耐性層64に遭遇するか、又はCMAS耐性層64の成分が反応層を通って拡散しCMASと遭遇する必要があるからである。いずれの場合も、CMAS又はCMAS耐性層64の成分のいずれかが拡散することは、拡散が最も遅いプロセスであるため固体反応層がCMAS耐性層64の表面上に形成された後の反応における制限工程となることが予想される。
【0049】
CMAS耐性層64は、少なくとも1つの希土類酸化物を含む。有用な希土類酸化物は、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせを含む、希土類元素の酸化物が挙げられる。いくつかの実施例では、CMAS耐性層64は、ジルコニア及びハフニアを本質的に含まない。つまり、これらの実施例では、コーティングは、例えば、市販の希土類酸化物中に存在する量など、せいぜい微量のジルコニア及びハフニアを含むだけである。
【0050】
CMAS耐性層64は、少なくとも1つの希土類酸化物に加えて、アルミナ及び/又はシリカも含みうる。例えば、CMAS耐性層64は、アルミナと少なくとも1つの希土類酸化物、シリカと少なくとも1つの希土類酸化物、又はアルミナ、シリカ、及び少なくとも1つの希土類酸化物を含みうる。アルミナ及び/又はシリカをCMAS耐性層64に添加して、例えば、層64とCMASとの化学反応性、反応生成物の粘性、熱膨張率、層64とEBC36又はTCB 62との化学的適合性、並びに同様の特性などの、CMAS耐性層64の1つ又は複数の特性を調整することができる。
【0051】
さらに、いくつかの実施例では、CMAS耐性層64は、適宜、例えば、Ta2O5、TiO2、HfSiO4、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、又はこれらの混合物などの、他の添加剤成分を含むことができる。添加剤成分をCMAS耐性層64に添加して、層64の1つ又は複数の望ましい特性を変えることができる。例えば、添加剤成分は、CMAS耐性層64とCMASとの反応速度を加減することができ、CMASとCMAS耐性層64との反応からの反応生成物の粘性を変えることができ、TBC62又はEBC36へのCMAS耐性層64の接着力を高めることができ、CMAS耐性層64の化学的安定性を高めたり、低くしたりすることができ、又は同様のことを行うことができる。
【0052】
図2〜4は、基材32上に形成された層の異なる組み合わせを含む実例を示しているが、図示されている層の組み合わせが唯一であるわけではない。例えば、CMAS耐性層64は、TBC62の代わりにEBC36上に形成されうるか、又は物品は、上張層52、ボンド・コート54、EBC36、及びTBC62を備えうる。層の他の組み合わせも企図され、本開示の対象となっている。
【0053】
図2〜4は、一般的に矩形の断面形状を有する特徴体46、58を示している。他の実施例では、特徴体46、58は、他の断面形状を備えることもできる。特徴体46、58の他の断面形状のいくつかの実例は、図5A〜5Hに示されている。例えば、図5A及び5Bは、一般的に湾曲した断面形状を備える、凹部又は溝72と突起部又は隆起部74をそれぞれ示している(例えば、円の一部分の断面を有する溝若しくは隆起部、又は球形の一部分の形状を有する凹部若しくは突起部)。図5C及び5Dは、三角形の断面形状を備える、凹部又は溝76及び突起部又は隆起部78をそれぞれ示している。例えば、凹部76又は突起部78は、円錐形又はピラミッド形の形状を備えることができる。図5E及び5Fは、一般的に矩形の断面形状を有する、凹部又は溝80及び突起部又は隆起部82をそれぞれ示している。最後に、図5G及び5Hは、一般的に正方形の断面形状を有する、凹部又は溝84及び突起部又は隆起部86をそれぞれ示している。そのような断面形状は単なる実例にすぎず、他の断面形状も可能であり、これは当業者には明らかなことであろう。一般に、特徴体72、74、76、78、80、82、84、86は、2.54mm(0.1インチ)未満、又は2.54mm(0.1インチ)に実質的に等しい幅、及びEBC36の厚さより小さい、又はEBC36の厚さに実質的に等しい深さ若しくは高さを備えるものとしてよい。(例えば、図2を参照)
【0054】
特徴体46、58、72、74、76、78、80、82、84、86(「特徴体46」と総称する)は、複数の特徴体46を備える配列内の層34に形成されうる。図6A〜6Fは、多数の例示的な特徴体46及び特徴体46の配列を示している。例えば、図6Aは、複数の溝若しくは隆起部94を備える特徴体92の配列が層34内に形成されていることを示している。溝若しくは隆起部94は、実質的に互いに平行に配向されている。このような配置構成では、層34(及び層34上に形成されたEBC36)を複数の領域に分離し、それぞれの領域は隣接する溝94と溝との間に配置されうる。上で説明されているように、これにより、層34上に形成されたEBC36の熱若しくは機械的応力への抵抗性を改善することができる。
【0055】
いくつかの実施例では、溝94は、図6Aに示されているように、ほぼ同じ幅Wであるものとしてよい。他の実施例では、1つ又は複数の溝94は、溝94のうちの別の溝と異なる幅Wを有するものとしてよい。いくつかの実施例では、溝94のうちのそれぞれの溝の幅Wは、2.54mm(0.1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54mm(0.1インチ)に等しいものとしてよい。他の実施例では、溝94のうちのそれぞれの溝の幅Wは、約0.102mm(0.004インチ)から約1.016mm(0.040インチ)までの範囲内としてよい。
【0056】
隣接する溝94は、実質的に均等な間隔で並べられるか、又は異なる距離で相隔てて並ぶものとしてよい。隣接する溝94の間の距離Dは、ピッチと称することができ、いくつかの実施例では、約25.40mm(1インチ)程度であってよい。いくつかの実施例では、ピッチは、約1.27mm(0.05インチ)から約6.35 mm(0.25インチ)までの範囲内である。いくつかの実施例では、ピッチは、単調増加若しくは単調減少するものとしてよい。他の実施例では、ピッチは増加し次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。さらに他の実施例では、図6Aに示されているように、ピッチはほぼ一定であってよい。
【0057】
溝若しくは隆起部94は、図2〜4及び5A〜5Hに例示されているように、例えば、アーチ形(つまり、円の一部)、矩形、又は三角形の断面を含む、さまざまな断面形状を有することができる。溝94のそれぞれは、同じ断面形状を有するか、又は溝94のうちの少なくとも1つは、溝94のうちの別の1つの溝と異なる断面形状を有することができる。溝94のうちのそれぞれの溝の深さは、EBC36の厚さと同じ程度であってよい(例えば、図2を参照)。いくつかの実施例では、溝94のうちのそれぞれの溝の深さは、EBC36の厚さの約20%から約80%までの範囲内としてよい。絶対寸法に関して、いくつかの実施例では、溝のそれぞれの深さは、約0.0051mm(0.0002インチ)から約2.54mm(0.1インチ)までの範囲内としてよい。他の実施例では、溝は、約0.0152mm(0.0006インチ)から約1.02mm(0.04インチ)までの範囲内とすることができる。幅Wと同様に、溝94のうちのそれぞれの溝の深さは、おおよそ同じであるか、又は溝94のうちの少なくとも1つの溝の深さは、溝94のうちの少なくとも1つの他の溝と異なっていてもよい。いくつかの実施例では、溝94の深さは、単調増加若しくは単調減少するか、増加して次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。
【0058】
図6Bは、互いに実質的に平行になるように形成された第1の複数の溝若しくは隆起部及び互いに実質的に平行になるように、且つ第1の複数の溝若しくは隆起部に実質的に垂直になるように形成された第2の複数の溝若しくは隆起部によって形成されたグリッド98を備える特徴体96の配列を示している。グリッド98が溝を含む場合、グリッド98は、層34内に凹部を形成し、層34内に複数のプラトー部100を画成する。或いは、グリッド98が隆起部を含む場合、グリッド98は、層34内に突起部を形成し、層34内に複数のプラトー部100を画成する。このようにして、グリッド98は、層34(及び層34上に形成されたEBC36)を複数の領域に分離し、亀裂が一方の領域から隣接する領域へと成長するのを阻止する。
【0059】
他の実施例では、図6Cに例示されているように、特徴体102の配列は、正弦波状の溝若しくは隆起部104のグリッドを備えることができる。グリッド102は、層内に凹部又は突起部を形成し、層34内に複数のプラトー部106を画成する。このようにして、グリッド104は、層34(及びEBC36)を複数の領域に分離し、亀裂が一方の領域から隣接する領域へと成長するのを阻止する。
【0060】
いくつかの実施例では、図6B及び6Cにおいて実質的に水平方向に配向されている溝若しくは隆起部のそれぞれは、第1の幅W1を有することができ、図6B及び6Cにおいて実質的に垂直方向に配向されている溝若しくは隆起部のそれぞれは、第2の幅W2を有することができる。いくつかの実施例では、第1の幅W1は、第2の幅W2と同じであってもよいが、他の実施例では、第1の幅W1は、第2の幅W2と異なっていてもよい。それに加えて、いくつかの実施例では、グリッド98又は104内の少なくとも1つの垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の幅は、グリッド98又は104内の別の垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の幅と異なっていてもよい。同様に、グリッド98内の少なくとも1つの水平方向に配向された溝若しくは隆起部の幅は、グリッド98又は104内の別の水平方向に配向された溝若しくは隆起部の幅と異なっていてもよい。いくつかの実施例では、グリッド98内の水平方向若しくは垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の幅は、単調増加若しくは単調減少するが、他の実施例では、グリッド98又は104内の水平方向若しくは垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の幅は、増加し次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のうちのそれぞれの幅(W1又はW2)は、2.54mm(0.1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54mm(0.1インチ)に等しいものとしてよい。他の実施例では、グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のうちのそれぞれの幅(W1又はW2)は、約0.102mm(0.004インチ)から約1.016mm(0.040インチ)までの範囲内であるものとしてよい。
【0061】
グリッド98又は104内の隣接する平行な溝若しくは隆起部は、ほぼ均等な間隔で相隔てて並ぶか、又は異なる距離で相隔てて並ぶものとしてよい。いくつかの実施例では、グリッド98又は104内の隣接する溝若しくは隆起部の間の距離D1又はD2(ピッチと称する)は、2.54cm(1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54cm(1インチ)に等しいものとしてよい。いくつかの実施例では、距離D1又はD2は、約1.27mm(0.05インチ)から約6.35mm(0.25インチ)までの範囲内とすることができる。いくつかの実施例では、ピッチは、単調増加若しくは単調減少するものとしてよい。他の実施例では、ピッチは増加し次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。さらに他の実施例では、図6B及び6Cに示されているように、ピッチはほぼ一定であってよい。それに加えて、いくつかの実施例では、第1の方向の隣接する溝若しくは隆起部の間の距離D1は、第2の方向の隣接する溝若しくは隆起部の間の距離D2と異なっていてもよい。いくつかの実例では、一方の方向におけるピッチは、グリッド98内で増加又は減少しうるが、第2の方向におけるピッチは、ほぼ一定であるものとしてよい。
【0062】
グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のそれぞれは、図2〜4及び5A〜5Hに例示されているように、例えば、アーチ形、矩形、又は三角形の断面を含む、さまざまな断面形状を有することができる。グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のそれぞれは、同じ断面形状を有するか、又はグリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のうちの少なくとも1つは、グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のうちの別の1つと異なる断面形状を有することができる。溝若しくは隆起部のそれぞれの深さ又は高さは、それぞれ、EBC36の厚さより小さいか、又は実質的に等しいものとしてよい。いくつかの実施例では、溝若しくは隆起部のうちのそれぞれの深さ又は高さは、EBC36の厚さの約20%から約80%までの範囲内としてよい。絶対寸法に関して、いくつかの実施例では、溝のそれぞれの深さは、約0.0051mm(0.0002インチ)から約2.54mm(0.1インチ)までの範囲内としてよい。他の実施例では、溝は、約0.0152mm(0.0006インチ)から約1.02mm(0.04インチ)までの範囲内とすることができる。幅Wと同様に、グリッド98又は104内の溝若しくは隆起部のそれぞれの溝の深さ又は高さは、おおよそ同じであるか、又は溝若しくは隆起部の少なくとも1つの溝の深さ又は高さは、溝若しくは隆起部のうちの他の少なくとも1つと異なっていてもよい。溝若しくは隆起部の深さ又は高さは、単調増加若しくは単調減少するか、又は増加して次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。いくつかの実例では、第1の方向、例えば図6B及び6Cにおいて実質的に垂直方向に配向された溝若しくは隆起部の深さ又は高さは、第2の方向、例えば図6B及び6Cにおいて実質的に水平方向に配向された溝若しくは隆起部の深さ又は高さと異なっていてもよい。それに加えて、一方の方向に配向された溝若しくは隆起部の深さ又は高さは、グリッド58内で変化しうるが、グリッド58内で第2の方向に配向された溝若しくは隆起部の深さ又は高さは、ほぼ一定であってもよい。
【0063】
いくつかの実施例では、層34は、実質的に連続する特徴体の配列の代わりに離散する特徴体の配列を備えることができる。例えば、図6Dは、層34内に形成された複数の円形の凹部若しくは突起部110を備える特徴体108の配列を示している。同様に、図6Eは、層34内に形成された複数の六角形の凹部若しくは突起部114を備える特徴体112の配列を示しており、図6Fは、層34内に形成された複数の楕円形の凹部若しくは突起部118を備える特徴体116の配列を示している。凹部又は突起部110、114、118(「凹部又は突起部110」と総称する)の例示されているパターン及び形状は、単なる実例にすぎず、凹部又は突起部110の他のパターン及び形状も本開示により企図されている。それに加えて、特徴体の配列は、円形、六角形、又は楕円形の形状(図9Dを参照)などの、異なる形状の凹部又は突起部110を備えることができる。
【0064】
上で説明されているように、凹部又は突起部110のそれぞれは、直径若しくは幅Wを有することができる。いくつかの実施例では、図6D〜6Fに示されているように、凹部又は突起部110の直径若しくは幅Wは、実質的に一定であるものとしてよい。いくつかの実施例では、凹部又は突起部110の直径若しくは幅Wは、単調増加若しくは単調減少するものとしてよいが、他の実施例では、凹部又は突起部110の直径若しくは幅Wは、増加し次いで減少するか、又は減少し次いで増加するものとしてよい。凹部又は突起部110のうちのそれぞれの直径又は幅Wは、2.54mm(0.1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54mm(0.1インチ)に等しい範囲内であるものとしてよい。いくつかの実施例では、凹部又は突起部110のうちのそれぞれの直径若しくは幅Wは、約0.102mm(0.004インチ)から約1.016mm(0.040インチ)までの範囲内としてよい。
【0065】
凹部又は突起部110は、ほぼ均等な間隔で相隔てて並ぶか、又は図6Bに示されているグリッド98の溝若しくは隆起部と同様に、異なる距離で相隔てて並ぶものとしてよい。隣接する凹部又は突起部110の間の距離Dは、2.54cm(1インチ)未満であるか、又は実質的に2.54cm(1インチ)に等しいものとしてよい。いくつかの実施例では、隣接する凹部又は突起部110の間の距離Dは、約1.27mm(0.05インチ)から約6.35mm(0.25インチ)までの範囲内とすることができる。ピッチは、単調増加若しくは単調減少するか、増加して次いで減少するか、減少して次いで増加するか、又はほぼ一定のままであるものとしてよい。それに加えて、第1の方向の隣接する凹部若しくは突起部110の間の距離Dは、第2の方向の隣接する凹部若しくは突起部110の間の距離Dと異なっていてもよい。いくつかの実例では、一方の方向におけるピッチは、増加又は減少しうるが、第2の方向におけるピッチは、ほぼ一定であるものとしてよい。他の実例では、2つの実質的に垂直な方向のピッチは、それぞれ変化する、例えば、両方向に増加するか、両方向に減少するか、又は第1の方向に増加し、第2の方向に減少するものとしてよい。
【0066】
凹部若しくは突起部110のそれぞれは、図2〜4及び5A〜5Hに例示されているように、例えば、アーチ形、矩形、又は三角形の断面を含む、さまざまな断面形状のうちの1つを有することができる。凹部若しくは突起部110のそれぞれの断面形状は同じであるか、又は特徴体108、112、若しくは116の配列内で異なっていてもよい。凹部若しくは突起部110のそれぞれの深さは、EBC36の厚さより小さいか、又は実質的に等しいものとしてよい。いくつかの実施例では、凹部若しくは突起部110のそれぞれの深さは、EBC36の厚さの約20%から約80%までの範囲内としてよい。絶対寸法に関して、いくつかの実施例では、溝のそれぞれの深さは、約0.0051mm(0.0002インチ)から約2.54mm(0.1インチ)までの範囲内としてよい。他の実施例では、溝は、約0.0152mm(0.0006インチ)から約1.02mm(0.04インチ)までの範囲内とすることができる。それに加えて、特徴体108、112、若しくは116の配列内の凹部若しくは突起部110の深さは、ほぼ同じであるか、又は凹部若しくは突起部110のうちの少なくとも1つの深さは、凹部若しくは突起部110のうちの他の少なくとも1つと異なっていてもよい。凹部若しくは突起部110の深さは、単調増加若しくは単調減少するか、増加して次いで減少するか、又は減少し次いで増加しうる。いくつかの実施例では、凹部若しくは突起部110の深さは、特徴体108、112、若しくは116の配列内で一方向にそって変化しうるが、凹部若しくは突起部110の深さは、特徴体108、112、若しくは116の配列内で第2の実質的に垂直な方向にそって変化しても、変化しなくてもよい。
【0067】
溝若しくは隆起部94などの、実質的に連続する特徴体、及び円形の凹部若しくは突起部110などの離散的な特徴体は、別々に説明されているけれども、いくつかの実施例では、連続する特徴体及び離散的な特徴体は、一緒に使用することもできる。例えば、図6Gは、複数の溝若しくは隆起部94及び複数の円形の凹部若しくは突起部110を備える特徴体120の配列を示している。溝若しくは隆起部94は、互いに実質的に平行に配向され、凹部若しくは突起部110の柱状部の間の層34内に形成される。このような配置構成では、層34を複数の領域に分離し、それぞれの領域は隣接する溝と溝との間に配置されうる。上で説明されているように、これにより、層34上に形成されたEBC36の熱若しくは機械的応力への抵抗性を改善することができる。
【0068】
凹部若しくは突起部110及び溝若しくは隆起部94は、上で説明されているのと同様の、深さ若しくは高さ、ピッチ、幅、及び/又は断面形状を含む、特性を有することができる。いくつかの実例では、凹部及び隆起部若しくは溝及び突起部は、層34内に一緒に形成することができる。凹部、突起部、溝、及び隆起部の他の組み合わせも本開示により企図されている。
【0069】
図6A〜6Gに示されている特徴体の配列は、実質的に均一なものであるとして図示され、説明されているけれども、いくつかの実施例では、特徴体の配列は、不均一であるか、又はランダムであってもよい。例えば、配列内の特徴体の1つ又は複数の特性が、その配列全体を通して実質的にランダムに変化してもよい。例えば、形状、断面形状、サイズ、ピッチ、深さ、又は同様の特性のうちの少なくとも1つが、その配列全体を通して実質的にランダムに変化してもよい。
【0070】
図7は、中に形成された複数の特徴体を有する上張層を基材上に形成することを含む物品を形成する例示的な技術の流れ図である。わかりやすくするため、図7の技術は、図3に示されているガス・タービン動翼50を参照しつつ説明されるが、図7の技術は、例えば、タービン動翼トラック、タービン・シール・セグメント、翼、又は同様のものなどの、高温になる機械システムの別のコンポーネント上で利用することができることは理解されるであろう。
【0071】
最初に、上張層52が、基材32上に形成される(122)。上張層52は、基材32のマトリックス材38と同じ材料を備える。上張層52は、基材32の形成時に基材32上に形成されうるか、又はその後の蒸着工程において基材32上に形成されうる。基材32の形成時に基材32上に形成される場合、上張層52は、例えば、化学蒸気浸透法、化学気相成長法、溶解浸透法、ポリマー前駆物質プロセス、又は同様の方法によって蒸着されうる。上張層52の形成は、強化材40の実質的に完全なカプセル封入が確実になされるように強化材40が覆われた後、追加量のマトリックス材38を蒸着することを含みうる。
【0072】
基材32の形成後に基材32上に形成される場合、上張層52は、例えば、CVD、ポリマー前駆物質プロセス、ゾル・ゲル・プロセス、スラリー・プロセス、プラズマ溶射、PVD、又は同様の方法によって蒸着されうる。上で説明されているように、上張層52は、上張層52内に形成された特徴体58の深さ又は高さより大きい厚さを備えるように形成され、これにより、特徴体が上張層52内に形成されたときに強化材40が露出しない可能性を高めるか、又は確実に露出しないようにすることができる。
【0073】
上張層52が、基材32上に形成された(122)後、特徴体58の配列が上張層52内に形成される(124)。配列は、例えば、直線的な溝若しくは隆起部、正弦波状の溝若しくは隆起部、直線的な、若しくは正弦波状の溝若しくは隆起部によって形成されたグリッド、円形の凹部若しくは突起部、六角形の凹部若しくは突起部、楕円形の凹部若しくは突起部、矩形の凹部若しくは突起部、又はこれらの特徴体58の組み合わせなどの複数の特徴体58を備えることができる。特徴体58が凹部又は溝を備える場合、特徴体58は、例えば、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。化学エッチング及びフォトリソグラフィでは、上張層52の一部分が、上張層52と反応する化学薬品に曝され、上張層52から材料が取り除かれる。化学薬品によってエッチングされる場所及び上張層52が化学薬品に曝される時間の長さを制御することによって、特徴体58の深さ及び形状を制御することができる。エッチングされる場所は、化学エッチング液に関して不活性である材料の層で、エッチングされるべきでない上張層52の部分を被覆することによって制御されうる。
【0074】
レーザー加工では、エキシマー・レーザーなどの電磁エネルギーの発生源を使用して、上張層52によって吸収される波長の一連の電磁パルスを発生する。パルスは、エネルギーを吸収する上張層52の部分を蒸発させるのに十分な強さのものである。上張層52の異なる部分の順序曝露を使用して、上張層52の一部又はいくつかの部分を蒸発させて、特徴体58を形成することができる。
【0075】
特徴体58を形成する他の方法として、例えば、加圧水流、研磨剤、研磨剤を混ぜた水、又は上張層52を変形するか、若しくは上張層52から材料を取り除くのに十分に硬いツールによって、上張層52のいくつかの部分を機械的に取り除く方法が挙げられる。
【0076】
特徴体58が隆起部若しくは突起部を備える実施例では、特徴体58は、例えば、レーザー・クラッディングによって形成されうる。レーザー・クラッディングでは、レーザー又は他の電磁エネルギー源が上張層52上に蒸着された材料の領域上に合焦され、これにより、材料を溶融するか、又は焼結し、特徴体58を形成する。上張層52に相対的なレーザー及び追加された材料の位置及び移動を制御することによって、上張層52上に特徴体58の所望の形状を形成するためにレーザー・クラッディングが使用されうる。
【0077】
特徴体58の配列が上張層52内に形成された(124)後、ボンド・コート54は、適宜、特徴体58の配列を含む、層52上に蒸着されうる(126)。上で説明されているように、ボンド・コート54は、上張層52とEBC36との間の接着力を改善する材料を備えることができる。ボンド・コート54は、セラミック、又は上張層52と親和性のある他の材料を含むものとしてよい。例えば、ボンド・コート54は、ムライト、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、希土類ケイ酸塩、又は同様のものを含むことができる。ボンド・コート54は、例えば、プラズマ溶射、PVD、CVD、スラリー・ディッピング、又は同様のものによって層52上に形成されうる。ボンド・コート54は、特徴体58を含む、層52の幾何学的形状を実質的に再現することができる。
【0078】
ボンド・コート54のオプションの蒸着の後、EBC36がボンド・コート54上(又はボンド・コート54が存在していない場合には、層52上)に形成されうる(128)。EBC36は、層52及び基材32を環境劣化から保護する材料を含みうる。例えば、EBC36は、酸化又は水蒸気攻撃に耐性のある材料を備え、及び/又は水蒸気安定性、化学安定性、及び環境耐久性の少なくとも1つを基材32に付与することができる。EBC36は、例えば、BSAS、BAS、CAS、SAS、LAS、MASなどのガラス・セラミックス、希土類ケイ酸塩、又は同様のものを含みうる。EBC36は、プラズマ溶射、EB−PVD又はDVDなどのPVD、CVD、陰極アーク蒸着、スラリー・ディッピング、ゾル・ゲル・コーティング、電気泳動析出、及び同様のものなどの、さまざまな技術によって施され、コーティングの少なくとも一部に対して実質的に非多孔性の構造として蒸着されるものとしてよく、これにより、水蒸気若しくは他のガスが基材32に接触する可能性が低減されるか、又は実質的に防止される。EBC36は、特徴体58を実質的に再現する。
【0079】
いくつかの実施例では、上張層52を基材32上に形成し、特徴体58を上張層52内に形成する代わりに、ボンド・コート54を基材32上に直接形成することができ、特徴体46をボンド・コート54内に形成することができる(図2及び付随する説明を参照)。図8は、そのような物品を形成するための例示的な技術の流れ図である。
【0080】
最初に、ボンド・コート54が、基材32上に形成される(132)。ボンド・コート54は、例えば、金属又はセラミックなどの、基材32とEBC36との間の接着力を改善する材料を備えることができる。例えば、ボンド・コート54は、ムライト、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、希土類ケイ酸塩、又は同様のものを含むことができる。ボンド・コート54は、例えば、プラズマ溶射、PVD、CVD、又は同様のものによって層32上に形成されうる。
【0081】
ボンド・コート54が、基材32上に形成された(132)後、特徴体46の配列がボンド・コート54内に形成される(134)。配列は、例えば、直線的な溝若しくは隆起部、正弦波状の溝若しくは隆起部、直線的な、若しくは正弦波状の溝若しくは隆起部によって形成されたグリッド、円形の凹部若しくは突起部、六角形の凹部若しくは突起部、楕円形の凹部若しくは突起部、矩形の凹部若しくは突起部、又はこれらの特徴体46の組み合わせなどの複数の特徴体46を備えることができる。特徴体46が凹部又は溝を備える場合、特徴体46は、例えば、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。特徴体46が隆起部若しくは突起部を備える場合、特徴体46は、例えば、レーザー・クラッディングによって形成されうる。
【0082】
特徴体46の配列が、ボンド・コート54内に形成された(134)後、EBC36は、ボンド・コート54上に、且つ特徴体の配列の上に形成される(128)。EBC36は、例えば、BSAS、BAS、CAS、SAS、LAS、MASなどのガラス・セラミックス、希土類ケイ酸塩、又は同様のものなどの、ボンド・コート54及び基材32を環境劣化から保護する材料を含みうる。EBC36は、プラズマ溶射、EB−PVD又はDVDなどのPVD、CVD、陰極アーク蒸着、スラリー・ディッピング、ゾル・ゲル・コーティング、電気泳動析出、及び同様のものなどの、さまざまな技術によって施され、コーティングの少なくとも一部に対して実質的に非多孔性の構造として蒸着されるものとしてよく、これにより、水蒸気若しくは他のガスが基材32に接触する可能性が低減されるか、又は実質的に防止される。EBC36は、ボンド・コート54内に形成された特徴体46を実質的に再現する。このようにして、複数の領域が、EBC36内に形成され、EBC36内の亀裂伝播を防ぎ、EBC36の機械的及び/又は熱応力耐性を改善する働きをする。
【0083】
いくつかの実施例では、TBC62(図4)は、適宜、EBC36上に形成されうる(136)。上で説明されているように、TBC62は、比較的低い熱伝導率を有するさまざまな材料のうちの少なくとも1つを含むことができ、歪み耐性を高め、及び/又はTBC62の熱伝導率をさらに下げ、断熱性を基材32に付与するために多孔性構造又は柱状構造として形成することができる。いくつかの実施例では、TBC62は、例えば、イットリア安定化ジルコニア、イットリア安定化ハフニア、希土類酸化物安定化ジルコニア、希土類酸化物安定化ハフニア、希土類ケイ酸塩、希土類ジルコン酸塩、希土類ハフニウム酸塩、又はこれらの組み合わせを含むことができる。TBC62は、例えば、プラズマ溶射、DVD又はEB−PVDなどのPVD、CVD、及び同様のものを含む、有用な技術によってEBC36上に蒸着されうる。
【0084】
いくつかの実施例では、TBC62がEBC36上に形成されたかどうかに関係なく、CMAS耐性層64は、EBC36の上に蒸着されうる(138)(つまり、TBC62が存在していなければEBC36上に直接、又は存在していればTBC62上に)。CMAS耐性層64は、TBC62又はEBC36に隣接して、又はその上に載るように構成され、TBC62及び/又はEBC36を、TBC62及び/又はEBC36の微細孔内へのCMASの浸透から保護することができる。
【0085】
CMAS耐性層64は、CMASと反応して固体の、又は非常に粘稠な反応生成物(つまり、ガス・タービン・エンジン60が曝される温度で固体であるか、又は非常に粘稠である反応生成物)を形成する元素を含むものとしてよい。反応生成物は、CMASに比べて著しく高い(例えば、約1200〜1250℃より高い)溶融温度を有するものとしてよい。例えば、CMAS耐性層64は、少なくとも1つの希土類酸化物を含む。有用な希土類酸化物は、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びこれらの組み合わせを含む、希土類元素の酸化物が挙げられる。いくつかの実施例では、CMAS耐性層64は、ジルコニア及びハフニアを本質的に含まない。つまり、これらの実施例では、コーティングは、例えば、市販の希土類酸化物中に存在する量など、せいぜい微量のジルコニア及びハフニアを含むだけである。いくつかの実施例では、CMAS耐性層64は、適宜、アルミナ、シリカ、Ta2O5、TiO2、HfSiO4、アルカリ酸化物、及び/又はアルカリ土類酸化物を含みうる。
【0086】
CMAS耐性層64は、例えば、プラズマ溶射、物理気相成長、化学気相成長、及び同様のものを含む有用な方法を使用してTBC62又はEBC36に施すことができる。
【0087】
前記の説明は、CMC基材上の層内に特徴体の単一の配列を形成することをもっぱら目的としているが、他の技術も、物品の熱及び/又は機械的応力への抵抗性を改善するために使用されうる。例えば、物品は、基材の第1の位置に形成された特徴体の第1の配列と基材の第2の位置に形成された特徴体の第2の配列とを備えることができる。第1及び第2の位置のそれぞれは、第1及び第2の位置が使用中に受けることが予測される熱及び/又は機械的応力に基づき選択されうる。予測される熱及び/又は機械的応力は、実験データ、例えば、以前に使用された、若しくは試験されたコンポーネントから集められたデータに基づき決定されうるか、又はコンポーネント上の熱応力の理論的モデリング(例えば、有限要素解析)によって予測されうる。
【0088】
例えば、図9A〜9Dは、物品の第1及び第2の位置で受ける予測された熱及び/又は機械的応力に基づき物品の層34内に形成された特徴体の第1及び第2の配列のさまざまな実例を示す概念図である。図9Aは、層34の第1の位置142に形成された特徴体114の第1の配列146と層34の第2の位置に形成された特徴体114の第2の配列148とを有する層34を示している。図9Aに示されている実施例では、特徴体114のそれぞれは六角形の凹部を備える。他の実施例では、特徴体114のそれぞれは、別の形状の凹部、任意の形状の突起部、直線状若しくは正弦波状の溝、及び/又は直線状若しくは正弦波状の隆起部を備えることができる。
【0089】
いくつかの実施例では、第1の位置142における予測される熱及び/又は機械的応力は、第2の位置144における予測される熱及び/又は機械的応力よりも大きいものとしてよい。第1の位置142及び第2の位置144で受ける熱及び/又は機械的応力は、それぞれ、層34及び層34上に形成されたEBC(図9Aに示されていない)の熱膨張及び/又は収縮を引き起こす温度変化によるものであるか、又はEBCによる破片の物理的衝撃によるものとすることができる。第1の位置142は、例えば、高温になる機械システム内の第1の位置142の位置により、より大きな熱及び/又は機械的応力を受けうるが、第2の位置144は、高温になる機械システム内のその位置のせいでより低い熱応力を受けうる。
【0090】
したがって、第1の位置142では、第2の位置144に形成された特徴体114の第2の配列148に比べて大きい熱及び/又は機械的応力の軽減をもたらしうる、特徴体114の第1の配列146を中に形成していてもよい。例えば、図9Aに示されている実施例において、第1の配列146内の特徴体114は、第2の配列内の特徴体114に比べて密集したパターンで形成される。このようなパターンは、層34をより小さな領域に分割し、第2の配列148内の特徴体114のより広い間隔に比べて熱及び/又は機械的応力のよりよい軽減をもたらしうる。第2の配列148は、それでも、層34の第2の位置144に対して熱及び/又は機械的応力の軽減をもたらしうる。
【0091】
図9Aの特徴体114は、サイズ及び形状が均一であるものとして示されているけれども、いくつかの実施例では、単一の配列146又は148は、複数の形状、サイズ、及び/又は深さを含む特徴体114のパターンを含みうる。異なる形状を備える配列の一実例は、図9Dに示されている。いくつかの実施例では、特徴体114のサイズ、形状、及び/又は深さは、配列146若しくは148内の1つ又は2つの垂直方向の次元で単調増加しうるか、又は配列146若しくは148内の1つ又は2つの垂直方向の次元で増加し次いで減少しうる。それに加えて、いくつかの実施例では、配列146及び/又は148は、配列146及び/又は148内で特徴体114の不均一な、又はランダムな分布を含みうる。
【0092】
図9Bに示されているように、いくつかの実施例では、層34は、特徴体114の遷移配列160を含む遷移領域154を備えることができる。遷移領域154は、特徴体114の第1の配列158を備える、第1の位置152と特徴体114の第2の配列162を備える、第2の位置156との間に配置される。遷移配列160内では、隣接する特徴体114の間の間隔、つまりピッチは、第1の配列158内の特徴体114の間隔から第2の配列162内の特徴体114の間隔まで実質的に連続して変化しうる。
【0093】
例えば、第1の配列158から第2の配列162に遷移するために、遷移配列内のそれぞれのその後の行は、より少ない特徴体114、及びその行内の隣接する特徴体114の間の増加した間隔を含む。このようにして、遷移配列は、第1の配列158から第2の配列162への遷移を円滑にすることができる。遷移配列160は、第1の配列158と第2の配列162との中間にある熱及び/又は機械的応力の軽減をもたらし、遷移配列160内の特徴体114若しくは特徴体114の間隔が変化すると変化する。例えば、遷移配列160によってもたらされる熱応力の軽減は、第2の配列162に近い位置にある遷移配列160によってもたらされる熱応力の軽減に比べて第1の配列158に近い位置ではより大きいものとしてよい。
【0094】
図9Bは、遷移配列160内で変化する特徴体114のピッチのみを示しているけれども、他の実施例では、特徴体114のサイズ、深さ、又は形状は、第1の配列158内の特徴体114に類似していることから第2の配列162内の特徴体114に類似していることに変わりうる。いくつかの実施例では、特徴体114の2つ若しくはそれ以上の特性、例えば、サイズ、形状、深さ、又はピッチは、遷移配列160内で変化しうる。
【0095】
図9Cは、層34の第1の位置172のところに形成された層34内の平行な溝若しくは隆起部94を備える特徴体の第1の配列178を備える層34を示している。層34は、層34の第2の位置176のところに形成された溝若しくは隆起部94の第2の配列182、及び層34の遷移領域174内に形成された溝若しくは隆起部94の遷移配列180も備える。第1の配列178は、隣接する溝若しくは隆起部94の間の第1の間隔を備え、第2の配列182は、隣接する溝若しくは隆起部94の間の第2の間隔を備える。遷移配列180は、第1の配列178内の溝若しくは隆起部94の間の間隔に類似していることから第2の配列182内の溝若しくは隆起部94の間の間隔に類似していることに変わる隣接する溝若しくは隆起部94の間の間隔を備える。このようにして、遷移配列180は、第1の配列178内の溝若しくは隆起部94のパターンから第2の配列182内の溝若しくは隆起部94のパターンへの実質的に連続する遷移をもたらす。
【0096】
図9A〜9Cは、類似の特徴体46を含む特徴体46の第1及び第2の配列を示しているが、いくつかの実施例では、第1及び第2の配列は、図9Dに示されているように、異なる特徴体46を含んでいてもよい。図9Dにおいて、層34は、層34の第1の位置192のところに形成された六角形の凹部若しくは突起部114及び楕円形の凹部若しくは突起部118を備える第1の配列196及び層34の第2の位置194のところに形成された円形の凹部若しくは突起部110の第2の配列198を具備する。
【0097】
第1の配列196は、六角形の凹部若しくは突起部114及び楕円形の凹部若しくは突起部118を備える。他の実施例では、特徴体の他の組み合わせを、単一の配列、例えば、第1の配列196内で使用することができ、また2つより多い特徴体を単一の配列内で使用することができる。六角形の凹部若しくは突起部114及び楕円形の凹部若しくは突起部118は、図9Dでは、特徴体の1つの組み合わせの一実例としてのみ示されている。それに加えて、第1の配列196内の隣接する特徴体114、118の間のピッチは、実質的に均一であるとして示されているが、他の実施例では、ピッチは、第1の配列196内で変化しうる。
【0098】
特徴体のピッチ及び形状は、両方とも、第1の配列196と第2の配列198との間で変わる。ここでもう一度、円形の凹部若しくは突起部110は、例示的なものにすぎず、第2の配列198内では特徴体の任意の形状が使用されうる。
【0099】
いくつかの実施例では、特徴体の形状及び/又はピッチが第1の配列196と第2の配列198との間で変わる代わりに、特徴体の形状及び/又はピッチは変わらず、特徴体のサイズ及び/又は深さが第1の配列196と第2の配列198との間で変わりうる。実際、特徴体の特性の任意の組み合わせ、例えば、サイズ、形状、ピッチ、深さ、断面形状、又は同様のものは、第1の配列196と198との間で変わることも変わらないこともある。
【0100】
図9A〜9Dには示されていないけれども、いくつかの実施例では、特徴体の第1の配列は、実質的に連続する特徴体(例えば、図6Aの溝94)を含むことができるが、特徴体の第2の配列は、離散的な特徴体(例えば、図6Dの円形の凹部若しくは突起部110)を含む。特徴体及び特徴体の配列の他の組み合わせは、当業者には明らかであろう。
【0101】
それに加えて、また適宜、いくつかの実施例では、基材32の上に形成された層の構造は、第1の位置(例えば、第1の位置192)と第2の位置(例えば、第2の位置194)とで異なっていてもよい。例えば、より低い熱応力を受けることが予測される物品の位置では、TBCは利用されず、物品は、上張層52、ボンド・コート54、及びEBC36を含むコーティングを備えることができる。その一方で、より大きな熱応力を受けることが予測される物品の位置では、TBCは、上張層52、ボンド・コート54、及びEBC36に加えて使用されうる。もちろん、本開示全体を通して説明されているように、層の他の組み合わせも使用することができる。いくつかの実施例では、2つより多い層構造を単一の物品内で使用することもできる。層の構造は、単一の物品の異なる位置における変更された熱及び/又は機械的応力の軽減をもたらすように特徴体の配列と組み合わせて選択されうる。
【0102】
図10は、物品の第1の位置に特徴体の第1の配列と物品の第2の位置に特徴体の第2の配列とを備える物品を形成するための例示的な技術の流れ図である。図10に示されている技術は、便宜のため図9Aを参照しつつ説明されるが、層内に形成された特徴体の第1の配列及び第2の配列を含む他の実施例にも適用可能であると理解されるであろう。
【0103】
最初に、特徴体の第1の配列146は、層34上の第1の位置142に形成される(172)。特徴体は、図9Aに例示されているように、六角形の凹部若しくは突起部114を備えることができるか、又は、例えば、直線的な溝若しくは隆起部、正弦波状の溝若しくは隆起部、直線的な、若しくは正弦波状の溝若しくは隆起部によって形成されたグリッド、円形の凹部若しくは突起部、楕円形の凹部若しくは突起部、又はこれらの特徴体の組み合わせを含みうる。これらの特徴体は、例えば、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、レーザー・クラッディング、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、又は同様のものによって形成されうる。
【0104】
上で説明されているように、第1の位置142は、層34を備える物品が使用中に受ける熱及び/又は機械的応力の予測に基づき選択若しくは決定されうる。熱及び/又は機械的応力の予測は、層34(及び基材32)が受ける作用と似た状態の下で類似の層を使用しているときに収集されたデータなどの、実験的証拠若しくは実験データに基づき行うことができる。いくつかの実施例では、熱及び/又は機械的応力の予測は、基材32、層34、ボンド・コート54(もし存在すれば、図3を参照)、及び/又はEBC36(図2を参照)の材料特性に基づく応力理論計算結果に基づき行うことができる(例えば、有限要素解析)。
【0105】
第1の配列146が層34内に形成された(172)後、特徴体(例えば、六角形の凹部若しくは突起部114)の第2の配列148が、層34の第2の位置144に形成されうる(174)。第1の配列146を形成するために使用されるものと似たプロセスが、第2の配列148を形成するために使用されうる。いくつかの実施例では、第2の配列148は、第1の配列146と実質的に同時に形成されうる。他の実施例では、第2の配列148は、第1の配列146の後に形成されうる。
【0106】
第1の位置142と同様に、第2の位置144は、層34を備える物品が使用中に受ける熱及び/又は機械的応力の予測に基づき選択若しくは決定されうる。熱応力の予測は、層34(及び基材32)が受ける作用と似た状態の下で類似の層を使用しているときに収集されたデータなどの、実験的証拠若しくは実験データに基づき行うことができる。いくつかの実施例では、熱及び/又は機械的応力の予測は、基材32、層34、ボンド・コート54(もし存在すれば、図3を参照)、及び/又はEBC36(図2を参照)の材料特性に基づく応力理論計算結果に基づき行うことができる(例えば、有限要素解析)。
【0107】
上で説明されているように、第1の配列146及び第2の配列148は、それぞれ、特徴体の第1のパターン及び第2のパターンを備えることができる。これらのパターンは、特徴体の形状、サイズ、深さ、ピッチ、又は断面形状によって画成されうる。いくつかの実施例では、これらの特性のうちの1つのみが、第1の配列146と第2の配列148との間で変わりうるが、他の実施例では、これらの特性のうちの2つ又はそれ以上が、第1の配列146と第2の配列148との間で変わりうる。それに加えて、又は代替えとして、いくつかの実施例では、第1の配列146及び第2の配列148のうちの少なくとも1つは、特徴体の不均一な、又はランダムな分布を含みうる。
【0108】
図10には示されていないけれども、いくつかの実施例では、この技術は、適宜、層34内の遷移配列(例えば、遷移配列160、図9B)を形成することを含むことができる。上で説明されているように、遷移配列は、第1の配列146に近い第1の配列146内のパターンに類似していること及び第2の配列148に近い第2の配列148に類似していることから遷移するパターンを含みうる。遷移配列は、第1の配列146及び/又は第2の配列148を形成するために使用されるプロセスのどれかによって形成されうる。いくつかの実施例では、遷移配列は、第1の配列146及び/又は第2の配列148と実質的に同時に形成されうる。他の実施例では、遷移配列は、第1の配列146及び/又は第2の配列148と順次的に形成されうる。
【0109】
第1の配列146、第2の配列148、及び適宜、遷移配列が層34内に形成された後、第1の配列146及び第2の配列148内の特徴体を含めて、EBC36(図2)を層34上に形成することができる(176)。上で説明されているように、EBC36は、層34及び基材32を環境劣化から保護する材料を含みうる。例えば、EBC36は、BSAS、BAS、CAS、SAS、LAS、MASなどのガラス・セラミックス、希土類ケイ酸塩、又は同様のものを含みうる。EBC36は、プラズマ溶射、EB−PVD及びDVDを含むPVD、CVD、陰極アーク蒸着、スラリー・ディッピング、ゾル・ゲル・コーティング、電気泳動析出、及び同様のものなどの、さまざまな技術によって施され、コーティングの少なくとも一部に対して実質的に非多孔性の構造として蒸着されうる。
【0110】
前記の実例は、主にガス・タービン動翼に関して説明されているけれども、他の実例では、本明細書で説明されている技術は、高温になる機械システムの他のコンポーネントに応用することができる。例えば、ガス・タービン・エンジンの動翼トラック又はガス・タービン・エンジンの動翼シュラウドは、CMC基材、その基材の上に形成された層、及びその層内に形成された特徴体の配列を備えることができる。同様に、前記の実例は特徴体の配列を含む層の上に形成されたEBCに関して主に説明されているが(単独で、又は他の層と組み合わせて)、いくつかの実例では、摩耗性コーティングが、特徴体の配列を含む層の上に形成されうる。
【0111】
摩耗性コーティングとして、例えば、ガス・タービン動翼などの、第2のコンポーネントによって摩耗するように構成されているコーティングが挙げられる。いくつかの実例において、摩耗性コーティングが少なくとも1つの多孔性層とともに形成され、それらの微細孔は、例えば第2のコンポーネントとの接触などからの十分な機械的力にコーティングが曝されたときに摩耗性コーティングが比較的小さな断片に分かれる傾向を高めることができる。
【0112】
いくつかの実例では、摩耗性コーティングは、ガス・タービン・エンジンの動翼トラック又はガス・タービン・エンジンの動翼シュラウドとガス・タービン動翼との間にシールを形成することができる。例えば、ガス・タービン・エンジンの動翼トラック若しくはガス・タービン・エンジンの動翼シュラウド及びガス・タービン動翼の相対的サイズは、動翼が摩耗性コーティングの少なくとも一部と意図的に接触し、摩耗させるように選択されうる。いくつかの実例では、動翼とシュラウド又はトラックとの間の接触の結果、タービン動翼の経路に対応する摩耗性コーティング内の溝を形成しうる。摩耗性コーティングの摩耗性により、タービン動翼を比較的自由に回転させながらもタービン動翼と摩耗性コーティングとの間の接触を可能にすることができる。それに加えて、摩耗性コーティングは、ゴム若しくは他のポリマー・シールが劣化する可能性のある高温になるシステムにおいてシールとして有用な場合がある。
【0113】
特徴体の配列を備える層の上に形成された摩耗性コーティングを具備する物品の一実例は、図11に示されている。図11に示されている実例では、物品180は、基材32、基材32上に形成された層34、及び層34上に形成された摩耗性コーティング182を備える。それに加えて、層34は、その上に形成された特徴体46の配列を備えることができる。
【0114】
上で説明されているように、基材32は、セラミック若しくはCMCを含みうる。いくつかの実施例では、セラミックを含む基材32は、例えば、シリカ(SiO2)、炭化ケイ素(SiC)、又は窒化ケイ素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、アルミノケイ酸塩、又は同様のものなどのシリコン含有セラミックを含むことができる。他の実施例では、基材32は、モリブデン・シリコン合金(例えば、MoSi2)又はニオブ・シリコン合金(例えば、NbSi2)などの、シリコンを含む金属合金を含みうる。
【0115】
基材32がCMCを含む実施例では、基材32は、マトリックス材38及び強化材40を含みうる。マトリックス材38は、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、アルミノケイ酸塩、シリカ、又は同様の物質を含む、セラミック材料を含みうる。CMCは、所望の強化材40をさらに含むことができ、強化材40は、連続強化材又は不連続強化材を含みうる。例えば、強化材40は、不連続のホイスカ、プレートレット、又は微粒子を含むことができる。他の実例として、強化材40は、連続単繊維又は多繊維織物を含むことができる。
【0116】
いくつかの実施例では、強化材40の組成は、マトリックス材38の組成と同じであってもよい。他の実施例では、強化材40は、アルミナマトリックス中のアルミノケイ酸塩繊維、又は同様のものなどの、マトリックス材38の組成と異なる組成を備えるものとしてよい。
【0117】
いくつかの実施例では、強化材40は、基材32の表面のところで確実に露出されないことが望ましい場合がある。そのような実施例では、層34は、基材32の表面42上に形成されうる。層34があれば、強化材40の実質的にどれもが、特徴体46が形成される表面44のところで露出されない可能性が高まりうる。
【0118】
いくつかの実施例では、層34は、基材32のマトリックス材38と同じ材料を含みうる。他の実例では、層34は、基材32のマトリックス材38と異なる材料を含みうる。例えば、層34は、ボンド・コートであってよく、これは基材32と摩耗性コーティング182との間の接着力を向上させる働きをする。ボンド・コートを含む場合、層34は、セラミック、又は基材32と親和性のある他の材料を含むものとしてよい。例えば、層34は、ムライト、シリカ、ケイ素化合物、シリコン、又は同様のものを含むことができる。層34は、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、又はScのケイ酸塩を含む希土類ケイ酸塩などの、他のセラミックスをさらに含むことができる。
【0119】
層34は、層34の表面44内に形成される特徴体46を備える。特徴体46は、表面44内に形成された溝、隆起部、凹部、又は突起部を備えることができ、これは、例えば、化学エッチング、フォトリソグラフィ、レーザー加工、レーザー・クラッディング、電解加工、放電加工、微細加工、バイブロピーニング、超音波加工、ウォーター・ジェット加工、機械的加工、又は同様のものによって形成されうる。図11に示されている実例では、特徴体46は、層34の表面44上に形成された隆起部若しくは突起部を備えることができる。表面44内に形成されうる特徴体の他の実例は、図3〜6及び9A〜9Dに示されている。それに加えて、特徴体46に対するサイズ、深さ、ピッチ、及び同様のものの範囲の実例は、上記の図3〜6及び9A〜9Dに関して説明されている。
【0120】
物品180は、層34と特徴体46の上に形成された摩耗性コーティング182をさらに備えることができる。摩耗性コーティング182は、耐浸食性、摩耗性、耐食性、耐熱衝撃性、製造性、及び高温性能のうちの少なくとも1つを有する材料を含みうる。例えば、摩耗性は、十分な物理的力に曝されたときに比較的小さな断片に分かれる傾向を含むものとしてよい。摩耗性は、破壊靱性及び破壊メカニズム(例えば、脆性破壊)、さらには摩耗性コーティング182の多孔性などの、摩耗性コーティング182の材料特性の影響を受ける可能性がある。いくつかの実例では、耐熱衝撃性及び高温能力は、摩耗性コーティング182が、高い動作温度からガス・タービン・エンジンが動作していないときの低い環境温度まで広い温度変動に曝されるガス・タービン・エンジン内で使用するうえで重要である場合がある。いくつかの実例では、摩耗性コーティング182は、例えば、約30体積%から約45体積%までの範囲など、最大約50体積パーセント(体積%)までの多孔性を備えるものとしてよい。
【0121】
いくつかの実例では、摩耗性コーティング182は、少なくとも1つの希土類ケイ酸塩を含みうる。希土類ケイ酸塩は、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、又はScのうちの少なくとも1つのケイ酸塩を含むものとしてよい。希土類ケイ酸塩は、化学式がRE2O3−SiO2、若しくは同等のものであるRE2SiO5であり、REは希土類元素である、希土類一ケイ酸塩を含むか、又は化学式がRE2O3−2SiO2、若しくは同等のものであるRE2Si2O7であり、REは希土類元素である、希土類二ケイ酸塩を含むか、又は希土類一ケイ酸塩及び希土類二ケイ酸塩の両方の混合物を含みうる。希土類一ケイ酸塩は、シリカ1分子と希土類酸化物1分子との間の化学反応によって形成され、希土類二ケイ酸塩は、シリカ2分子と希土類酸化物1分子との間の化学反応によって形成されうる。
【0122】
いくつかの実施例では、摩耗性コーティング182は、希土類一ケイ酸塩と希土類二ケイ酸塩の混合物を含みうる。例えば、摩耗性コーティング182は、希土類酸化物及びシリカが約1:1のモル比で存在している場合に希土類一ケイ酸塩を主に含みうるが、それでも、いくつかの希土類二ケイ酸塩を含みうる。同様に、摩耗性コーティング182は、希土類酸化物及びシリカが約1:2のモル比で存在している場合に希土類二ケイ酸塩を主に含みうるが、それでも、いくつかの希土類一ケイ酸塩を含みうる。
【0123】
それに加えて、摩耗性コーティング182は、希土類酸化物分子に付随しないシリカ(SiO2)分子、シリカ分子に付随しない希土類酸化物分子、又はその両方をさらに含むことができる。
【0124】
いくつかの実例において、摩耗性コーティング182は、希土類二ケイ酸塩を含むか、又は本質的に希土類二ケイ酸塩からなる(例えば、希土類一ケイ酸塩を実質的にいっさい含みえない)第1の副層と、希土類一ケイ酸塩を含むか、又は本質的に希土類一ケイ酸塩からなる(例えば、希土類二ケイ酸塩を実質的にいっさい含みえない)第2の副層とを備えることができる。いくつかの実例では、第2の副層は、第1の副層上に形成されうる。いくつかの実例では、摩耗性コーティング182は、第1の副層と第2の副層との間に組成的に傾斜した遷移層をさらに含みうる(例えば、第1の副層との界面のところで二ケイ酸塩対一ケイ酸塩の比が高く、第2の副層との界面のところで二ケイ酸塩対一ケイ酸塩の比が低い希土類二ケイ酸塩と希土類一ケイ酸塩との混合物)。
【0125】
摩耗性コーティング182は、他の、オプションの、添加剤要素若しくは化合物をさらに含むことができる。添加剤要素又は化合物は、例えば、摩耗性コーティングの熱膨張率、又は摩耗性コーティング182と層34などの、隣接する層との化学的又は機械的親和性などの、摩耗性コーティング182の機械的及び/又は化学的特性を変えることができる。添加剤要素としては、例えば、アルミナ、Ta2O5、TiO2、HfSiO4、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0126】
いくつかの実例では、図11に示されているように、摩耗性層182は、層34内に形成された特徴体46の形状を実質的に再現することができる。上で説明されているように、特徴体46は、摩耗性層182を複数のより小さな領域に分離することができる。亀裂成長は、個別の領域内に発生しうるが、特徴体46は、隣接する領域の間の亀裂成長を隠す。
【0127】
他の実例では、図12に示されているように、物品190は、層34内に形成された特徴体46の形状を実質的には再現しない摩耗性層182を備えることができる。いくつかの実装では、これは、摩耗性層182の比較的滑らかな表面184が摩耗性層182とガス・タービン動翼の先端部との間の封止を円滑にすることができるか、又は摩耗性層182の空力的特性を改善することができるか、又は同様のことにより、好ましいと思われる。いくつかの実装において、滑らかな表面は、研磨によって形成することができる。
【0128】
いくつかの実例では、物品は、摩耗性層182と組み合わせた他の層を備えることができる。例えば、図13に示されているように、物品200は、基材32、層34、及び摩耗性層182を備えることができる。それに加えて、物品200は、適宜、ボンド・コート54、EBC36、TBC62、及び/又はCMAS耐性層64のうちの少なくとも1つを備えることができる。ボンド・コート54、EBC36、TBC62、及びCMAS耐性層64は、本明細書で説明されている組成を有することができ、好適な技術を使用して蒸着することができ、好適な厚さになるように形成することができる。それに加えて、ボンド・コート54、EBC36、TBC62、及びCMAS耐性層64は、基材32の上に任意の順序で形成されうる。例えば、EBC36がTBC62の上に形成されうるか、又はTBC62がEBC36の上に形成されうる。他の実例も企図され、本開示の範囲の対象となっている。
【0129】
いくつかの実例では、図13に示されているように、摩耗性層182は、物品190の一番外側の層である。他の実例では、別の層が、例えば、CMAS耐性層64などの、物品200の一番外側の層を形成することができる。
【0130】
図12に関して上で説明されているように、いくつかの実例では、摩耗性層182は、特徴体46の形状を実質的に再現することはありえず、その代わりに、比較的滑らかな外面184を画成することができる。
【0131】
摩耗性層182は、例えば、熱溶射技術、例えば、プラズマ溶射などを使用して、基材32、層34、EBC36、TBC62、又はCMAS耐性層64の上に、蒸着するか、又は直接蒸着することができる。摩耗性層182の多孔性は、コーティング材料の添加剤及び/又は処理技術を使用して所望の多孔性を生じさせることによって制御することができる。いくつかの実施例では、実質的に密閉された微細孔が望ましいことがある。
【0132】
例えば、コンポーネントの使用温度で溶融するか、若しくは焼けるコーティング材料の添加剤を、摩耗性層182を形成するコーティング材料中に組み込むことができる。コーティング材料の添加剤としては、例えば、グラファイト、六方晶窒化ホウ素、又はポリエステルなどのポリマーが挙げられ、これは、摩耗性層182を形成するために層34、EBC36、TBC62、CMAS耐性層64の上にコーティング材料を蒸着する前にコーティング材料中に組み込むことができる。いくつかの実施例では、コーティング材料のスプレー・パウダー処理のときに添加剤をコーティング材料中に組み込むことができる。次いで、コーティング材料の添加剤が、蒸着後熱処理において、若しくはガス・タービン・エンジンの運転中に溶融するか、又は燃焼して、摩耗性層182内に微細孔を形成することができる。蒸着後熱処理は、CMC若しくは他のセラミックを含む基材32を有するコンポーネントに対して最高約1500℃までの温度で実行することができる。
【0133】
コーティング材料の添加剤にさまざまな処理技術を施し、熱溶射後に摩耗性層182内に取り込まれたまま残る添加剤の量を改善することができる。いくつかの実施例では、コーティング材料及びコーティング材料の添加剤に対してボールミル破砕を実行し、コーティング材料の添加剤の粒子をコーティング材料の粒子に付着させることができる。他の実施例では、コーティング材料の添加剤を、例えば、ナトリウム又は炭素も含有しうる、セルラー炭酸メチル(cellular methyl carbonate)などの、有機結合剤でコーティング材料に付着させることができる。熱溶射の後に摩耗性層182内に取り込まれたまま残る添加剤の量を改善するための使用若しくは処理技術は、摩耗性層182における多孔性の程度及び多孔性の均一さのうちの少なくとも一方を改善することができる。
【0134】
摩耗性層182の多孔性は、2つの放射状粉末供給注入ポートでプラズマ流にコーティング材料及びコーティング材料の添加剤を供給する共噴霧プロセス技術(co−spray process technique)を使用してコーティング材料にプラズマ溶射を行うことによって形成され、及び/又は制御されうる。コーティング材料及びコーティング材料の添加剤の供給圧力及び流量は、直接的な90度の角度の注入を使用してプラズマプルームの外縁上に材料を注入するように調整されうる。これは、コーティング材料の粒子を柔らかくするが、完全に溶融させることはせず、またコーティング材料の添加剤を燃焼させず、むしろ、摩耗性層182に接着する十分な柔らかさにすることができる。
【0135】
いくつかの実施例では、摩耗性層182の多孔性は、摩耗性層182の少なくとも一部を通して変化するように制御されうる。例えば、摩耗性層の多孔性は、層34の表面44に隣接する位置に比べて外面184に隣接する位置でより高くなるように制御されうる。
【0136】
上で簡単に説明されているように、摩耗性層182は、さまざまな考慮事項に応じた厚さの範囲に合わせて蒸着することができる。考慮すべき一点は、タービン・エンジンが最高動作温度で動作していないときに1つ又は複数の低い動作温度でコンポーネント(例えば、タービン動翼及びタービン・シュラウド又はトラック)の予測されるサイズ変化とすることができる。例えば、タービン動翼が熱膨張すると、タービン動翼の先端部と基材32との間の距離が短くなることが予想されうる。この実例では、摩耗性層182の厚さは、低い動作温度及び高い動作温度において動翼先端部と基材32との間の距離の予測される差に実質的に等しいか、又はそれ以上になるように選択されうる。これにより、実質的にすべての動作温度において動翼先端部と動翼トラック又は動翼シュラウドとを接触させ、それらの間にシールを形成することができ、その動作温度範囲全体にわたってガス・タービン・エンジンの効率を改善することができる。
【0137】
いくつかの実施例では、摩耗性層182は、最大約2.5mm(0.1インチ)までの厚さに蒸着することができる。他の実施例では、摩耗性層182は、約0.76mm(約0.030インチ)から約1.5mm(約0.060インチ)までの範囲の厚さに蒸着することができる。いくつかの実施例では、摩耗性層182は、所望の最終の厚さにおおよそ等しいか、又はそれ以上である厚さに蒸着することができ、また所望の最終の厚さに合わせて機械加工することができる。
【0138】
いくつかの実例では、物品は、単層摩耗性コーティングの代わりに多層摩耗性コーティングを備えることができる。図14は、基材32及び層34の上に蒸着された多層摩耗性コーティング212を備える物品210の実例を示している。図14にされている実施例では、多層摩耗性コーティング212は、層34の上に蒸着された第1の層214及び第1の層214の上に蒸着された第2の層216を備える。第1の層214は、第1の材料を含むものとしてよく、第2の層216は、第1の材料と異なる第2の材料を含むものとしてよい。
【0139】
他の実施例では、多層摩耗性コーティング212は、例えば、第1の層214と第2の層216との複数の対などの、2つより多い層214及び216を備えることができる。例えば、多層摩耗性コーティング212は、交互配置された層内に配列された第1の層214と第2の層216の2つの対を備えることができる(例えば、第1の層214、第2の層216、第1の層214、第2の層216)。多層摩耗性コーティング212は、第1の層214と第2の層216との多数の対を備えることができる。
【0140】
第1の層214は、摩耗性層182を参照しつつ上で説明されているものと同様に、希土類ケイ酸塩を含むか、又は本質的に希土類ケイ酸塩からなるものとしてよい。第1の層214は、例えば、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Tb、Gd、Eu、Sm、Pm、Nd、Pr、Ce、La、Y、Sc、及び同様のもののうちの少なくとも1つの一ケイ酸塩、二ケイ酸塩、又はその両方を含むものとしてよい。いくつかの実施例では、第1の層214は、希土類ケイ酸塩に加えて存在しうる、シリカ又は希土類酸化物のうちの少なくとも1つも含みうる。第1の層214は、アルミナ、Ta2O5、TiO2、HfSiO4、アルカリ酸化物、及びアルカリ土類酸化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0141】
第2の層216は、安定化ジルコニア若しくは安定化ハフニアを含むか、又は本質的に安定化ジルコニア若しくは安定化ハフニアからなるものとしてよい。安定化ジルコニア及び安定化ハフニアのそれぞれは、1つ又は複数の添加剤要素若しくは化合物を含めることによって安定化されたベース酸化物(例えば、ジルコニア若しくはハフニア)を含む。例えば、安定化ジルコニア又は安定化ハフニアは、ジルコニア又はハフニアに組み込まれている希土類酸化物を含みうる。希土類酸化物は、ハフニア若しくはジルコニアの相安定性、熱伝導率、若しくは別の特性を変えるか、又は改善することができる。
【0142】
図14は、第1の層214の上に蒸着されるように第2の層216を示しているが、他の実施例では、第2の層216(例えば、層は安定化ジルコニア又は安定化ハフニアを含む)は、層34の上に蒸着されるか、又は層34上に直接蒸着されうる。第1の層214(例えば、層は希土類ケイ酸塩を含む)は、第2の層216の上に蒸着されるか、又は第2の層216上に直接蒸着されうる。ここでもう一度、摩耗性コーティング212は、第1の層214と第2の層216との複数の層の対を備えることができる。
【0143】
基材の表面内に形成されたさまざまな特徴体及び特徴体の配列は異なる実施例において説明されているが、例示されている実施例は、基材32の上に形成された特徴体及び配列又は層の組み合わせ及び構成を制限するものではないと理解されるであろう。例えば、異なる断面形状が主に図5A〜5Hに関して説明されているが、本明細書で説明されている特徴体又は配列はどれも、任意の断面形状を備えうることは理解されるであろう。本明細書で説明されている特徴体、配列、及び層の他の組み合わせは、当業者には明らかであり、以下の請求項の範囲内に収まる。
【0144】
さまざまな実施例が説明されている。これら及び他の実施例は、以下の特許請求の範囲の範囲内に収まる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
マトリックス材と強化材とを含む基材と、
前記基材上に形成された層と、
前記層上に形成された特徴体の配列と、
前記層及び特徴体の前記配列上に形成されたコーティングとを備える物品。
【請求項2】
前記コーティングは、環境障壁コーティングを含む請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記コーティングは、摩耗性コーティングを含む請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記摩耗性コーティングは、最大約50体積%までの多孔率を有する請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記コーティングは、前記層上に形成された環境障壁コーティング及び前記環境障壁コーティング上に形成された摩耗性コーティングを含む請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記層は、前記マトリックス材を備える上張層を含む請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記上張層及び特徴体の前記配列上に形成されたボンド・コートをさらに備え、前記コーティングは、前記ボンド・コート上に形成される請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記層は、ボンド・コートを含む請求項1に記載の物品。
【請求項9】
特徴体の前記配列は、溝、凹部、隆起部又は突起部のうちの少なくとも1つの配列を含む請求項1に記載の物品。
【請求項10】
特徴体の前記配列は、第1の特徴体及び第2の特徴体を含み、前記第1の特徴体と前記第2の特徴体との間の距離は、約2.54cm(1インチ)未満である請求項1に記載の物品。
【請求項11】
特徴体の前記配列は、溝又は凹部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝若しくは前記凹部の深さは、前記コーティングの厚さより小さいか、又はおおよそ等しい請求項1に記載の物品。
【請求項12】
特徴体の前記配列は、隆起部又は突起部のうちの少なくとも1つを含み、前記隆起部若しくは前記突起部の高さは、前記コーティングの厚さより小さいか、又はおおよそ等しい請求項1に記載の物品。
【請求項13】
特徴体の前記配列は、溝、隆起部、凹部、又は突起部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝、前記隆起部、前記凹部、又は前記突起部の幅は、約2.54mm(0.1インチ)未満である請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記コーティング上に形成された熱障壁コーティングをさらに備える請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記コーティング上に形成されたカルシア・マグネシア・アルミナ・ケイ酸塩耐性コーティングをさらに備える請求項1に記載の物品。
【請求項16】
特徴体の前記配列は、第1の特徴体及び第2の特徴体を含み、前記第1の特徴体は、第1の特性を備え、前記第2の特徴体は、前記第1の特性と異なる第2の特性を備える請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記特性は、深さ、サイズ、又は形状のうちの少なくとも1つを含む請求項16に記載の物品。
【請求項18】
特徴体の前記配列は、第1の特徴体、第2の特徴体、第3の特徴体、及び第4の特徴体を含み、前記第1の特徴体と前記第2の特徴体との間の第1のピッチは、前記第3の特徴体と前記第4の特徴体との間の第2のピッチと異なる請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記層上に形成された特徴体の前記配列は、
前記層上の第1の位置に形成された特徴体の第1の配列であって、第1のパターンを含む第1の配列と、
前記層の表面上の第2の位置に形成された特徴体の第2の配列であって、前記第1のパターンと異なる第2のパターンを含む前記第2の配列とを含む請求項1に記載の物品。
【請求項20】
特徴体の前記第1の配列又は特徴体の前記第2の配列のうちの少なくとも1つは、第1の特徴体及び第2の特徴体を含み、前記第1の特徴体と前記第2の特徴体との間の距離は、約1.27mm(0.05インチ)から6.35mm(0.25インチ)までの範囲内である請求項19に記載の物品。
【請求項21】
特徴体の前記第1の配列又は特徴体の前記第2の配列のうちの少なくとも1つは、溝若しくは凹部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝若しくは前記凹部の深さは、前記コーティングの厚さの約20パーセントから約80パーセントまでの範囲内である請求項19に記載の物品。
【請求項22】
特徴体の前記第1の配列又は特徴体の前記第2の配列のうちの少なくとも1つは、隆起部若しくは突起部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝若しくは前記凹部の高さは、前記コーティングの厚さの約20パーセントから約80パーセントまでの範囲内である請求項19に記載の物品。
【請求項23】
特徴体の前記第1の配列又は特徴体の前記第2の配列のうちの少なくとも1つは、溝、隆起部、凹部、又は突起部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝、前記隆起部、前記凹部、又は前記突起部の幅は、約0.102mm(0.004インチ)から約1.02mm(0.04インチ)までの範囲内である請求項19に記載の物品。
【請求項24】
前記第1のパターンは、前記特徴体の深さ、前記特徴体のサイズ、前記特徴体の間のピッチ、又は前記特徴体の形状のうちの少なくとも1つを含み、前記第2のパターンは、前記特徴体の深さ、前記特徴体のサイズ、前記特徴体の間のピッチ、又は前記特徴体の形状のうちの少なくとも1つを含む請求項19に記載の物品。
【請求項25】
マトリックス材及び強化材を含む基材上に層を形成することと、
前記層の表面上に特徴体の配列を形成することと、
前記層及び特徴体の前記配列上にコーティングを形成することとを含む方法。
【請求項26】
前記コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することは、環境障壁コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することは、摩耗性コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記摩耗性コーティングは、最大約50体積%までの多孔率を有する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することは、環境障壁コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することと、摩耗性コーティングを前記環境障壁コーティング上に形成することとを含む請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティング上にカルシア・マグネシア・アルミナ・ケイ酸塩耐性コーティングを形成することをさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記層を前記基材上に形成することは、前記マトリックス材を備える上張層を前記基材上に形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記上張層及び特徴体の前記配列上にボンド・コートを形成することをさらに含み、前記コーティングを形成することは、前記ボンド・コート上に前記コーティングを形成することを含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記層を前記基材上に形成することは、ボンド・コートを前記基材上に形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項34】
特徴体の前記配列を形成することは、溝、凹部、隆起部、又は突起部のうちの少なくとも1つの配列を形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記コーティング上に熱障壁コーティングを形成することをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項36】
特徴体の前記配列を前記層の表面上に形成することは、
前記層の表面上の第1の位置に、第1のパターンを含む特徴体の第1の配列を形成することと、
前記層の前記表面上の第2の位置に、前記第1のパターンと異なる第2のパターンを含む特徴体の第2の配列を形成することとを含む請求項25に記載の方法。
【請求項37】
特徴体の前記第1の配列は、溝、凹部、隆起部、又は突起部のうちの少なくとも1つの配列を含み、特徴体の前記第2の配列は、溝、凹部、隆起部、又は突起部のうちの少なくとも1つの配列を含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のパターンは、前記特徴体の深さ、前記特徴体のサイズ、前記特徴体の間のピッチ、又は前記特徴体の形状のうちの少なくとも1つを含み、前記第2のパターンは、前記特徴体の深さ、前記特徴体のサイズ、前記特徴体の間のピッチ、又は前記特徴体の形状のうちの少なくとも1つを含む請求項36に記載の方法。
【請求項1】
物品であって、
マトリックス材と強化材とを含む基材と、
前記基材上に形成された層と、
前記層上に形成された特徴体の配列と、
前記層及び特徴体の前記配列上に形成されたコーティングとを備える物品。
【請求項2】
前記コーティングは、環境障壁コーティングを含む請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記コーティングは、摩耗性コーティングを含む請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記摩耗性コーティングは、最大約50体積%までの多孔率を有する請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記コーティングは、前記層上に形成された環境障壁コーティング及び前記環境障壁コーティング上に形成された摩耗性コーティングを含む請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記層は、前記マトリックス材を備える上張層を含む請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記上張層及び特徴体の前記配列上に形成されたボンド・コートをさらに備え、前記コーティングは、前記ボンド・コート上に形成される請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記層は、ボンド・コートを含む請求項1に記載の物品。
【請求項9】
特徴体の前記配列は、溝、凹部、隆起部又は突起部のうちの少なくとも1つの配列を含む請求項1に記載の物品。
【請求項10】
特徴体の前記配列は、第1の特徴体及び第2の特徴体を含み、前記第1の特徴体と前記第2の特徴体との間の距離は、約2.54cm(1インチ)未満である請求項1に記載の物品。
【請求項11】
特徴体の前記配列は、溝又は凹部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝若しくは前記凹部の深さは、前記コーティングの厚さより小さいか、又はおおよそ等しい請求項1に記載の物品。
【請求項12】
特徴体の前記配列は、隆起部又は突起部のうちの少なくとも1つを含み、前記隆起部若しくは前記突起部の高さは、前記コーティングの厚さより小さいか、又はおおよそ等しい請求項1に記載の物品。
【請求項13】
特徴体の前記配列は、溝、隆起部、凹部、又は突起部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝、前記隆起部、前記凹部、又は前記突起部の幅は、約2.54mm(0.1インチ)未満である請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記コーティング上に形成された熱障壁コーティングをさらに備える請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記コーティング上に形成されたカルシア・マグネシア・アルミナ・ケイ酸塩耐性コーティングをさらに備える請求項1に記載の物品。
【請求項16】
特徴体の前記配列は、第1の特徴体及び第2の特徴体を含み、前記第1の特徴体は、第1の特性を備え、前記第2の特徴体は、前記第1の特性と異なる第2の特性を備える請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記特性は、深さ、サイズ、又は形状のうちの少なくとも1つを含む請求項16に記載の物品。
【請求項18】
特徴体の前記配列は、第1の特徴体、第2の特徴体、第3の特徴体、及び第4の特徴体を含み、前記第1の特徴体と前記第2の特徴体との間の第1のピッチは、前記第3の特徴体と前記第4の特徴体との間の第2のピッチと異なる請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記層上に形成された特徴体の前記配列は、
前記層上の第1の位置に形成された特徴体の第1の配列であって、第1のパターンを含む第1の配列と、
前記層の表面上の第2の位置に形成された特徴体の第2の配列であって、前記第1のパターンと異なる第2のパターンを含む前記第2の配列とを含む請求項1に記載の物品。
【請求項20】
特徴体の前記第1の配列又は特徴体の前記第2の配列のうちの少なくとも1つは、第1の特徴体及び第2の特徴体を含み、前記第1の特徴体と前記第2の特徴体との間の距離は、約1.27mm(0.05インチ)から6.35mm(0.25インチ)までの範囲内である請求項19に記載の物品。
【請求項21】
特徴体の前記第1の配列又は特徴体の前記第2の配列のうちの少なくとも1つは、溝若しくは凹部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝若しくは前記凹部の深さは、前記コーティングの厚さの約20パーセントから約80パーセントまでの範囲内である請求項19に記載の物品。
【請求項22】
特徴体の前記第1の配列又は特徴体の前記第2の配列のうちの少なくとも1つは、隆起部若しくは突起部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝若しくは前記凹部の高さは、前記コーティングの厚さの約20パーセントから約80パーセントまでの範囲内である請求項19に記載の物品。
【請求項23】
特徴体の前記第1の配列又は特徴体の前記第2の配列のうちの少なくとも1つは、溝、隆起部、凹部、又は突起部のうちの少なくとも1つを含み、前記溝、前記隆起部、前記凹部、又は前記突起部の幅は、約0.102mm(0.004インチ)から約1.02mm(0.04インチ)までの範囲内である請求項19に記載の物品。
【請求項24】
前記第1のパターンは、前記特徴体の深さ、前記特徴体のサイズ、前記特徴体の間のピッチ、又は前記特徴体の形状のうちの少なくとも1つを含み、前記第2のパターンは、前記特徴体の深さ、前記特徴体のサイズ、前記特徴体の間のピッチ、又は前記特徴体の形状のうちの少なくとも1つを含む請求項19に記載の物品。
【請求項25】
マトリックス材及び強化材を含む基材上に層を形成することと、
前記層の表面上に特徴体の配列を形成することと、
前記層及び特徴体の前記配列上にコーティングを形成することとを含む方法。
【請求項26】
前記コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することは、環境障壁コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することは、摩耗性コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記摩耗性コーティングは、最大約50体積%までの多孔率を有する請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することは、環境障壁コーティングを前記層及び特徴体の前記配列上に形成することと、摩耗性コーティングを前記環境障壁コーティング上に形成することとを含む請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティング上にカルシア・マグネシア・アルミナ・ケイ酸塩耐性コーティングを形成することをさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記層を前記基材上に形成することは、前記マトリックス材を備える上張層を前記基材上に形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記上張層及び特徴体の前記配列上にボンド・コートを形成することをさらに含み、前記コーティングを形成することは、前記ボンド・コート上に前記コーティングを形成することを含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記層を前記基材上に形成することは、ボンド・コートを前記基材上に形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項34】
特徴体の前記配列を形成することは、溝、凹部、隆起部、又は突起部のうちの少なくとも1つの配列を形成することを含む請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記コーティング上に熱障壁コーティングを形成することをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項36】
特徴体の前記配列を前記層の表面上に形成することは、
前記層の表面上の第1の位置に、第1のパターンを含む特徴体の第1の配列を形成することと、
前記層の前記表面上の第2の位置に、前記第1のパターンと異なる第2のパターンを含む特徴体の第2の配列を形成することとを含む請求項25に記載の方法。
【請求項37】
特徴体の前記第1の配列は、溝、凹部、隆起部、又は突起部のうちの少なくとも1つの配列を含み、特徴体の前記第2の配列は、溝、凹部、隆起部、又は突起部のうちの少なくとも1つの配列を含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のパターンは、前記特徴体の深さ、前記特徴体のサイズ、前記特徴体の間のピッチ、又は前記特徴体の形状のうちの少なくとも1つを含み、前記第2のパターンは、前記特徴体の深さ、前記特徴体のサイズ、前記特徴体の間のピッチ、又は前記特徴体の形状のうちの少なくとも1つを含む請求項36に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−516552(P2013−516552A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549002(P2012−549002)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/020849
【国際公開番号】WO2011/085376
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512182267)ロールス−ロイス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/020849
【国際公開番号】WO2011/085376
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512182267)ロールス−ロイス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
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