説明

環状化合物、フォトレジスト基材、フォトレジスト組成物、微細加工方法及び半導体装置

【課題】新規な環状化合物及び塗布溶媒への溶解性、レジストパターン強度及び基板との密着性が向上したフォトレジスト基材を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される環状化合物。


[式中、同一の芳香環上に存在する2つのRのうち、一方が水素であり、他方が溶解性調整基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な環状化合物、特に感放射線性化合物に関する。また、本発明は、半導体等の電気・電子分野や光学分野等で用いられるフォトレジスト基材、特に超微細加工用フォトレジスト基材に関する。
【背景技術】
【0002】
極端紫外光(Extream Ultra Violet Light:以下、EUVLと表記する場合がある)又は電子線によるリソグラフィーは、半導体等の製造において、高生産性、高解像度の微細加工方法として有用であり、それに用いる高感度、高解像度のフォトレジストが求められている。フォトレジストは、所望する微細パターンの生産性、解像度等の観点から、その感度を向上させることが欠かせない。
【0003】
EUVLによる超微細加工の際に用いられるフォトレジストとしては、例えば、他のレジスト化合物と比較して光酸発生剤の濃度が高い化学増幅ポジ型フォトレジストを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、実施例のフォトレジストは、ラインエッジラフネスの観点から、電子線を用いた場合で例示された100nmまでの加工が限界であると考えられる。これは基材として用いる高分子化合物の集合体又は各々の高分子化合物分子が示す立体的形状が大きく、該作製ライン幅及びその表面粗さに影響を及ぼすことがその主原因と推定される。
【0004】
本発明者は既に高感度、高解像度のフォトレジスト材料としてカリックスレゾルシナレン化合物を提案している(特許文献2及び3参照)。また、特許文献4には、カリックスレゾルシナレン化合物が開示されているが、これらの化合物は一部溶解性が不十分と考えられる上、フォトレジスト基材としてではなく、公知の高分子からなるフォトレジスト基材に対する添加剤として加えることを特徴とする用途のみしか記載されていない。一方、フォトレジスト基材は現行の半導体製造工程では、溶媒に溶解させて製膜工程に進めるため、塗布溶媒に対する高い溶解性が求められている。従って、本発明者は、塗布溶媒溶解性を改良したカリックスレゾルシナレン化合物も提案している(特許文献5参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−055457号公報
【特許文献2】特開2004−191913号公報
【特許文献3】特開2005−075767号公報
【特許文献4】米国特許6093517号
【特許文献5】特開2007−197389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術により塗布溶媒への溶解性を改良し、加工性が向上したものの、さらなるレジストパターンの微細加工をするためには、レジストパターン強度の向上、及び基板との密着性に改良が求められていた。
また、塗布溶媒への溶解性のさらなる向上も求められていた。
本発明の目的は、塗布溶媒への溶解性、レジストパターン強度及び基板との密着性が向上したフォトレジスト基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の環状化合物、フォトレジスト基材等が提供される。
1.下記式(I)で表される環状化合物。
【化5】

[式中、Rはそれぞれ下記式(II)で表される基である。
【化6】

(式中、Arは炭素数の6〜10のアリーレン基;炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基;又は炭素数6〜10のアリーレン基と、アルキレン基及びエーテル基の少なくとも一方を、それぞれ一つ以上組み合わせた基であり、Aは単結合、アリーレン基、アルキレン基、エーテル基、又は、アリーレン基、アルキレン基、エーテル結合のいずれかをそれぞれ2つ以上組み合わせた基である。
はそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、シリル基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル基、炭酸エステル基又はエーテル基がそれぞれ一つ以上結合してなる基)が結合した基である。
xは1〜5の整数、yは0〜3の整数である。
複数のR、Ar及びAはそれぞれ同じでも異なってもよい。)
同一の芳香環上に存在する2つのRのうち、一方がRで表される基であり、他方が溶解性調整基である。
はそれぞれ水素、水酸基、ORで表される基、OR(Rは溶解性調整基である)で表される基、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族基又は酸素原子を含む基である。]
2.Rが水素である1記載の環状化合物。
3.ORが酸解離性溶解抑止基である1又は2記載の環状化合物。
4.前記酸解離性溶解抑止基が、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する分子量が15以上2000以下の置換基である3記載の環状化合物。
5.ORが、下記式(III)〜(VI)のいずれかである1又は2記載の環状化合物。
【化7】

(上記式(III)〜(VI)において、
Aは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、分岐を有する置換もしくは無置換の炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
Bは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する三級炭素を基点としてなる置換基である。
Cは、芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造、又は、芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造のいずれか最低1種類の構造が、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基と組み合わさってなる置換基である。
Dは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、分岐を有する置換もしくは無置換の炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。)
6.ORが、下記式に示される基のいずれかである1又は2記載の環状化合物。
【化8】


(式中、rはそれぞれ上記式で表される置換基の内、rを有さない置換基のいずれかを表す。)
7.R及びRの溶解性調整基が、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、シリル基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル基、炭酸エステル基又はエーテル基がそれぞれ1つ以上結合してなる基)が結合した基である1〜6のいずれか記載の環状化合物。
8.1〜7のいずれか記載の環状化合物を含有するフォトレジスト基材。
9.8記載のフォトレジスト基材及び溶剤を含有するフォトレジスト組成物。
10.さらに光酸発生剤を含有する9記載のフォトレジスト組成物。
11.さらに塩基性有機化合物をクエンチャーとして含有する9又は10記載のフォトレジスト組成物。
12.9〜11のいずれか記載のフォトレジスト組成物を用いた微細加工方法。
13.12記載の微細加工方法により作製した半導体装置。
14.13に記載の半導体装置を備えた装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の環状化合物は、水酸基が1つの芳香環上にあるため、水素結合による分子間相互作用が強化されるとともに、溶解性調整基が芳香環上にあるため、溶剤に溶けやすくなる。
従って、本発明の環状化合物を用いてフォトレジスト基材として微細パターンを作成した際に、パターン強度と基板との密着性が向上する。同時に、溶剤に溶けやすくなる。
さらに、本発明の環状化合物が酸解離性溶解抑止基を備える場合に、各分子の構造が同一になるため、酸解離性溶解抑止基の脱離反応が生じた際の各分子の溶解性変換が均質になり、結果として微細パターンの末端部が均質になり、従来よりも凸形状を細くできるため、微細なレジストパターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明を実施するための最良の形態について説明する。
尚、発明を実施するための最良の形態は、本発明の一実施形態に過ぎず、発明を実施するための最良の形態の記載により、本発明の技術的範囲が制限されるものではない。
本実施形態に係る環状化合物は下記式(I)で表される構造を有する。
【化9】

【0010】
式(I)において、Rはそれぞれ下記式(II)で表される基である。
【化10】

【0011】
式(II)のArは炭素数の6〜10のアリーレン基;炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基;又は炭素数6〜10のアリーレン基と、アルキレン基及びエーテル基(−O−)の少なくとも一方を、それぞれ1つ以上組み合わせた基である。例えば、フェニレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、トリメチルフェニレン基、テトラメチルフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、オキシジフェニレン基が好ましい。
なかでもフェニレン基、ビフェニレン基、オキシジフェニレン基が好ましい。
【0012】
は単結合、アリーレン基、アルキレン基、エーテル基、又は、アリーレン基、アルキレン基とエーテル結合のいずれかをそれぞれ2つ以上組み合わせた基である。アルキレン基、エーテル基、又は、アルキレン基とエーテル結合を2つ以上組み合わせた基が好ましい。
アリーレン基としては、上記Arと同様な基が挙げられる。
アルキレン基としては、メチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等、炭素数1〜4のものが好ましい。
アルキレン基とエーテル基を2つ以上組み合わせた基としては、オキシメチレン基、オキシジメチルメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。
【0013】
は単結合又はオキシメチレン基(−O−CH−)であることが好ましい。
【0014】
はそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、シリル基、又はこれらの基と二価の基が結合した基である。
【0015】
炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が好ましい。
炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基としては、t−ブチル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましい。
炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基としては、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビアダマンチル基、ジアマンチル基等が好ましい。
炭素数6〜10の芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましい。
アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、アダマンチルオキシメチル基等が好ましい。
シリル基としては、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等が好ましい。
尚、上記の各基は置換基を有していてもよく、具体的には、メチル基、エチル基等のアルキル基、ケトン基、エステル基、アルコキシル基、ニトリル基、ニトロ基、水酸基等が挙げられる。
【0016】
は、上記の各基と二価の基が結合した構造を有する基でもよい。
二価の基としては、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル基(−CO−)、炭酸エステル基(−CO−)、エーテル基(−O−)がそれぞれ1つ以上結合してなる基が挙げられる。
アルキレン基としてはメチレン基、メチルメチレン基等が好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
【0017】
二価の基を2以上結合してなる基としては、下記の構造が好ましい。
【化11】

(式中、R’はそれぞれH又はアルキル基を示す。)
【0018】
ORは、好ましくは酸解離性溶解抑止基であり、さらに好ましくは芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する分子量が15以上2000以下の置換基である。
【0019】
さらに、ORが、下記式(III)〜(VI)のいずれかである環状化合物が好ましい。
【化12】

上記式(III)〜(VI)において、
Aは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、分岐を有する置換もしくは無置換の炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
Bは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する三級炭素を基点としてなる置換基である。
Cは、芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造、又は、芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造のいずれか最低1種類の構造が、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基と組み合わさってなる置換基である。
Dは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、分岐を有する置換もしくは無置換の炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
【0020】
尚、式(II)のyが1であることが好ましい。また、式(II)のxが1であることも好ましい。
さらに、Arがフェニル基であることが好ましい。Aが単結合であることが好ましい。
【0021】
酸解離性溶解抑止基(OR)の具体例として、下記式に示される基を挙げられる。
【化13】


(式中、rはそれぞれ上記式で表される置換基の内、rを有さない置換基のいずれかを表す。)
【0022】
xは1〜5の整数であり、1〜3の整数であることが好ましい。
yは0〜3の整数であり、1又は2であることが好ましい。
尚、式(I)の中にRは複数存在するが、Rを構成する各R、Ar、A、x及びyは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
本発明においては、式(II)が下記式で表されるいずれかであることが好ましい。
【化14】

(式中、Rは式(II)と同様な基を表し、xは1〜5の整数である。)
【0024】
式(I)において、同一の芳香環上に存在する2つのRのうち、一方がRで表される基であり、他方が溶解性調整基である。
2つのRのうち、Rで表される基であるRの好適例は、Rの好適例と同様であり、Rに存在するRが全て水素である場合と、Rに存在するRが水素と酸解離性溶解抑止基が共存して成る場合が特に好ましい。酸解離性溶解抑止基の具体例は上記と同様である。
【0025】
溶解性調整基は、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、シリル基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル基、炭酸エステル基、エーテル基がそれぞれ1つ以上結合してなる基)が結合した基である。
溶解性調整基の各基の好適例は、上述したRと同様である。
【0026】
はそれぞれ水素、水酸基、ORで表される基、OR(Rは溶解性調整基である)で表される基、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族基又は酸素原子を含む基である。
【0027】
炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基及び炭素数6〜10の芳香族基の好適例は、上述したRと同様である。溶解性調整基の好適例は、上述したRと同様である。
酸素原子を含む基としては、ORで表される基、OR(Rは溶解性調整基である)で表される基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基等が好ましい。
好ましくはRは水素である。
【0028】
尚、式(I)内に複数あるR、R、及びRは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
酸解離性溶解抑止基は、EUVL及び電子線に対し、高い反応性を有するため、感度の面で優れており、かつエッチング耐性の面でも優れる。そのため、環状化合物が酸解離性溶解抑止基を含むと、超微細加工用のフォトレジスト基材として好適に使用できる。
【0030】
本実施形態に係る環状化合物は、例えば、公知の方法により、酸触媒存在下、対応する構造のアルデヒド化合物と、溶解性調整基と水酸基を併せ持つ芳香族化合物との縮合環化反応により、カリックスレゾルシナレン誘導体(前駆体)を合成し、R等の基に対応する化合物を、エステル化反応、エーテル化反応、アセタール化反応等により前駆体に導入することで合成できる。具体例は、後述する実施例で説明する。
【0031】
本実施形態に係る環状化合物はフォトレジスト基材、特に、極端紫外光(波長15nm以下)や電子線等のリソグラフィーによる超微細加工の際に用いるフォトレジスト基材として有用である。
また、本実施形態に係る環状化合物では、ORで表される部位に水酸基を1つ、溶解性調整基を1つ有するため、即ち、水酸基を1つの芳香環上に1つ、1分子中に4つ、立体的に離れた位置に有するため、分子内水素結合が生じ難く、分子間相互作用の水素結合による強化が期待でき、微細パターンの強度、基板との密着強度が向上する。
【0032】
本実施形態に係る環状化合物をフォトレジスト基材に用いるとき、精製して塩基性不純物(例えば、アンモニア、Li、Na、K等のアルカリ金属イオン、Ca、Ba等のアルカリ土類金属イオン等)等を除くことが好ましい。具体的には、塩基性不純物の含有量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは2ppm以下である。
【0033】
精製方法としては、例えば、酸性水溶液洗浄、イオン交換樹脂、又は超純水を用いた再沈殿で処理する方法が挙げられる。これらの洗浄方法を組み合わせて精製してもよい。例えば、酸性水溶液として酢酸水溶液を用いて洗浄処理した後に、イオン交換樹脂処理又は超純水を用いる再沈殿処理をする。
【0034】
本発明の環状化合物は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解度が増大するので、アルカリ可溶性基を含有することが好ましい。
【0035】
アルカリ可溶性基としては水酸基、スルホン酸基、フェノール基、カルボキシル基、ヘキサフルオロイソプロパノール基〔−C(CFOH〕等が挙げられる。好ましくはフェノール基、カルボキシル基、ヘキサフルオロイソプロパノール基であり、さらに好ましくはフェノール基、カルボキシル基である。
【0036】
酸解離性溶解抑止基は、上記にあげたアルカリ可溶性基中のOHの水素原子に代わる置換基であり、−C(R11a)(R12a)(R13a)、−C(R14a)(R15a)(OR16a)、−CO−OC(R11a)(R12a)(R13a)が好ましい。
【0037】
ここで、R11a〜R13aは、それぞれ独立して、置換又は無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。R14a及びR15aは、それぞれ独立して、水素原子又は置換又は無置換のアルキル基を表す。R16aは、置換又は無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。尚、R11a、R12a、R13aのうちの2つ、又はR14a、R15a、R16aのうちの2つが結合して環を形成してもよい。
【0038】
11a〜R16aにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基は、置換基としてシクロアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、オキソ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基等を含んでいてもよい。
【0039】
11a〜R13a、R16aにおけるアリール基、アルケニル基は、置換基としてアルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、オキソ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基等を含んでいてもよい。
【0040】
11a〜R16aのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基は、それぞれ途中にエーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、スルホニル基、スルホン基を有していてもよい。
【0041】
酸解離性溶解抑止基は総炭素数が4以上であるものが好ましく、より好ましくは6以上のもの、さらに好ましくは8以上のものである。
また、酸解離性溶解抑止基中に脂環構造又は芳香環構造を含むことが好ましい。脂環構造としてはシクロペンタン残基、シクロヘキサン残基、ノルボルナン残基、アダマンタン残基等が挙げられる。芳香環構造としてはベンゼン残基、ナフタレン残基、アントラセン残基等が挙げられる。
これら脂環構造、芳香環構造は任意の位置に置換基を有していてもよい。
【0042】
以下に酸解離性溶解抑止基の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【化15】


(式中、rはそれぞれ上記式で表される置換基の内、rを有さない置換基のいずれかを表す。)
【0043】
上記の環状化合物は、極端紫外光や電子線等のリソグラフィーによる超微細加工の際に用いるフォトレジスト基材として用いることができる。
【0044】
本発明のフォトレジスト組成物は、上記のフォトレジスト基材と溶剤を含有する。
環状化合物の配合量は、溶剤を除く全組成物中好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは75〜95重量%である。環状化合物をフォトレジスト基材として用いるとき、一種単独で用いてもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲で、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0045】
本発明のフォトレジスト組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル(PE)等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0046】
組成物中の溶剤以外の成分、即ちフォトレジスト固形分の量は所望のフォトレジスト層の膜厚を形成するために適する量とするのが好ましい。具体的にはフォトレジスト組成物の全重量の0.1〜50重量%が一般的であるが、用いる基材や溶剤の種類、あるいは、所望のフォトレジスト層の膜厚等に合わせて規定できる。溶剤は全組成物中好ましくは50〜99.9重量%配合する。
【0047】
本発明のフォトレジスト組成物は、本発明の環状化合物からなるフォトレジスト基材及び溶剤から実質的になっていてもよく、また、これら成分のみからなっていてもよい。「実質的になる」とは、上記組成物がフォトレジスト基材及び溶剤のみからなり、これら成分の他に以下の添加剤を含む得ることである。
【0048】
本発明のフォトレジスト組成物は、基材の分子が、EUV及び/又は電子線に対して活性なクロモフォアを含み単独でフォトレジストとしての能力を示す場合には特に添加剤は必要としないが、フォトレジストとしての性能(感度)を増強する必要がある場合は、必要に応じて、クロモフォアとして光酸発生剤(PAG)等を含むことが一般的である。
【0049】
光酸発生剤としては、特に限定されず、化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
このような酸発生剤としては、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類等のジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤等多種のものが知られている。
【0050】
オニウム塩系酸発生剤としては、下記式(b−0)で表される酸発生剤が例示できる。
【化16】

[式中、R51は、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、又は直鎖、分岐鎖又は環状のフッ素化アルキル基を表し;R52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖又は分岐鎖状のハロゲン化アルキル基、又は直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基であり;R53は置換基を有していてもよいアリール基であり;u’’は1〜3の整数である。]
【0051】
式(b−0)において、R51は、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、又は直鎖、分岐鎖又は環状のフッ素化アルキル基を表す。
前記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、炭素数4〜12であることが好ましく、炭素数5〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また、フッ化アルキル基のフッ素化率(アルキル基中全水素原子の個数に対する置換したフッ素原子の個数の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。
51は、直鎖状のアルキル基又はフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
【0052】
52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、直鎖、又は分岐鎖状のハロゲン化アルキル基、又は直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基である。
52において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
52において、アルキル基は、直鎖又は分岐鎖状であり、その炭素数は好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、最も好ましくは1〜3である。
52において、ハロゲン化アルキル基は、アルキル基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。ここでのアルキル基は、前記R52における「アルキル基」と同様のものが挙げられる。置換するハロゲン原子としては上記「ハロゲン原子」について説明したものと同様のものが挙げられる。ハロゲン化アルキル基において、水素原子の全個数の50〜100%がハロゲン原子で置換されていることが望ましく、全て置換されていることがより好ましい。
52において、アルコキシ基としては、直鎖状又は分岐鎖状であり、その炭素数は好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、最も好ましくは1〜3である。
52は、これらの中でも水素原子が好ましい。
【0053】
53は置換基を有していてもよいアリール基であり、置換基を除いた基本環(母体環)の構造としては、ナフチル基、フェニル基、アントラセニル基等が挙げられ、本発明の効果やArFエキシマレーザー等の露光光の吸収の観点から、フェニル基が望ましい。
置換基としては、水酸基、低級アルキル基(直鎖又は分岐鎖状であり、その好ましい炭素数は5以下であり、特にメチル基が好ましい)等を挙げることができる。
53のアリール基としては、置換基を有しないものがより好ましい。
【0054】
u’’は1〜3の整数であり、2又は3であることが好ましく、特に3であることが望ましい。
【0055】
式(b−0)で表される酸発生剤の好ましいものとしては、以下の化学式で表されるものを挙げることができる。
【化17】

【0056】
式(b−0)で表される酸発生剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。
式(b−0)で表される酸発生剤の他のオニウム塩系酸発生剤としては、例えば下記式(b−1)又は(b−2)で表される化合物が挙げられる。
【化18】

[式中、R”〜R”,R”,R”は、それぞれ独立に、置換又は無置換のアリール基又はアルキル基を表し;R”は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を表し;R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R”及びR”のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
【0057】
式(b−1)中、R”〜R”はそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基又はアルキル基を表す。R”〜R”のうち、少なくとも1つは置換又は無置換のアリール基を表す。R”〜R”のうち、2以上が置換又は無置換のアリール基であることが好ましく、R”〜R”の全てが置換又は無置換のアリール基であることが最も好ましい。
【0058】
”〜R”のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部又は全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0059】
前記アリール基の置換基であるアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n‐ブチル基、tert‐ブチル基が最も好ましい。
前記アリール基の置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記アリール基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0060】
”〜R”のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デカニル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
これらの中で、R”〜R”は全てフェニル基であることが最も好ましい。
【0061】
”は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基を表す。
前記直鎖又は分岐のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、前記R”で示したような環式基であって、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また。該フッ化アルキル基のフッ素化率(アルキル基中のフッ素原子の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。
”としては、直鎖又は環状のアルキル基、又はフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
【0062】
式(b−2)中、R”及びR”はそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基又はアルキル基を表す。R”及びR”のうち、少なくとも1つは置換又は無置換のアリール基を表す。R”及びR”の全てが置換又は無置換のアリール基であることが好ましい。
”〜R”の置換又は無置換のアリール基としては、R”〜R”の置換又は無置換のアリール基と同様のものが挙げられる。
”〜R”のアルキル基としては、R”〜R”のアルキル基と同様のものが挙げられる。
これらの中で、R”〜R”は全てフェニル基であることが最も好ましい。
式(b−2)中のR”としては上記式(b−1)のR”と同様のものが挙げられる。
【0063】
式(b−1)、(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル(1−(4−メトキシ)ナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネート又はそのノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。また、これらのオニウム塩のアニオン部がメタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネートに置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0064】
また、前記式(b−1)又は(b−2)において、アニオン部を下記式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオン部に置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は(b−1)又は(b−2)と同様)。
【化19】

[式中、X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基を表し;Y”,Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0065】
X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは炭素数3〜5、最も好ましくは炭素数3である。
Y”,Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。
【0066】
X”のアルキレン基の炭素数又はY”,Z”のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶剤への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
【0067】
また、X”のアルキレン基又はY”,Z”のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、即ちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0068】
本発明において、光酸発生剤として以下の式(30)〜(35)で示される化合物も使用できる。
【化20】

【0069】
式(30)中、Qはアルキレン基、アリーレン基又はアルコキシレン基であり、R15はアルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基又はハロゲン置換アリール基である。
【0070】
前記式(30)で示される化合物は、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)フタルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(n−オクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(1−ナフタレンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(1−ナフタレンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]へプト−5−エンー2,3−ジカルボキシイミド及びN−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミドからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0071】
【化21】

式(31)中、R16は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、任意に置換された直鎖、分枝又は環状アルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたヘテロアリール基又は任意に置換されたアラルキル基である。
【0072】
前記式(31)で示される化合物は、ジフェニルジスルフォン、ジ(4−メチルフェニル)ジスルフォン、ジナフチルジスルフォン、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフォン、ジ(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフォン、ジ(3−ヒドロキシナフチル)ジスルフォン、ジ(4−フルオロフェニル)ジスルフォン、ジ(2−フルオロフェニル)ジスルフォン及びジ(4−トルフルオロメチルフェニル)ジスルフォンからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0073】
【化22】

式(32)中、R17は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、任意に置換された直鎖、分枝又は環状アルキル基、任意に置換されたアリール基、任意に置換されたヘテロアリール基又は任意に置換されたアラルキル基である。
【0074】
前記式(32)で示される化合物は、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−4−メチルフェニルアセトニトリル及びα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−ブロモフェニルアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0075】
【化23】

式(33)中、R18は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、1以上の塩素原子及び1以上の臭素原子を有するハロゲン化アルキル基である。ハロゲン化アルキル基の炭素原子数は1〜5が好ましい。
【0076】
【化24】

【0077】
式(34)及び(35)中、R19及びR20はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1〜3のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素原子数1〜3のアルコキシル基、又はフェニル基、トルイル基、ナフチル基等のアリール基、好ましくは、炭素原子数6〜10のアリール基である。
19及びL20はそれぞれ独立に1,2−ナフトキノンジアジド基を有する有機基である。1,2−ナフトキノンジアジド基を有する有機基としては、具体的には、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−6−スルホニル基等の1,2−キノンジアジドスルホニル基を好ましいものとして挙げることができる。特に、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基及び1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基が好ましい。
pは1〜3の整数、qは0〜4の整数、かつ1≦p+q≦5である。
19は単結合、炭素原子数1〜4のポリメチレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、下記式(34a)で表わされる基、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合又はエーテル結合を有する基である。
19はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基であり、X20は、それぞれ独立に下記式(35a)で示される基である。
【0078】
【化25】

式(35a)中、Z22はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、R22はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアルコキシル基であり、rは0〜3の整数である。
【0079】
その他の酸発生剤として、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルアゾメチルスルホニル)デカン等のビススルホニルジアゾメタン類、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−(ビストリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−(ビストリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等のハロゲン含有トリアジン誘導体等が挙げられる。
【0080】
これらの光酸発生剤の中で、特に好ましくは活性光線又は放射線の作用により有機スルホン酸を発生する化合物が好ましい。
【0081】
PAGの配合量は、溶剤を除く全組成物中0〜40重量%、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
【0082】
本発明においては、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(クエンチャー)をフォトレジスト組成物に配合してもよい。この様な酸拡散制御剤を使用することにより、フォトレジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が向上するとともに、電子線照射前の引き置き時間、電子線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0083】
このような酸拡散制御剤としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デカニルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミン、等の窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の電子線放射分解性塩基性化合物が挙げられる。酸拡散制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0084】
クエンチャーの配合量は、溶剤を除く全組成物中0〜40重量%、好ましくは0.01〜15重量%である。
【0085】
本発明においては、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、増感剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、顔料等を適宜、添加含有させることができる。
【0086】
溶解制御剤は、環状化合物のアルカリ現像液に対する溶解性が高すぎる場合に、その溶解性を低下させて現像時の溶解速度を適度にする作用を有する成分である。
【0087】
溶解制御剤としては、例えば、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、アセナフテン等の芳香族炭化水素類;アセトフェノン、ベンゾフェノン、フェニルナフチルケトン等のケトン類;メチルフェニルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン等のスルホン類等を挙げることができる。さらに、例えば、酸解離性官能基が導入されたビスフェノール類、t−ブチルカルボニル基が導入されたトリス(ヒドロキシフェニル)メタン等をも挙げることができる。これらの溶解制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。溶解制御剤の配合量は、使用する環状化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜50重量%が好ましく、0〜40重量%がより好ましく、0〜30重量%がさらに好ましい。
【0088】
増感剤は、照射された放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、レジストの見掛けの感度を向上させる成分である。このような増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ビアセチル類、ピレン類、フェノチアジン類、フルオレン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。増感剤の配合量は、固形成分全重量の0〜50重量%が好ましく、0〜20重量%がより好ましく、0〜10重量%がさらに好ましい。
【0089】
界面活性剤は、本発明のフォトレジスト組成物の塗布性やストリエーション、レジストとしての現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系あるいは両性のいずれでも使用することができる。これらのうち、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤は、フォトレジスト組成物に用いる溶剤との親和性がよく、より効果がある。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類等の他、以下商品名で、エフトップ(ジェムコ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業社製)、フロラード(住友スリーエム社製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子社製)、ペポール(東邦化学工業社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社油脂化学工業社製)等の各シリーズ製品を挙げることができるが、特に限定はされない。界面活性剤の配合量は、固形成分全重量の0〜2重量%が好ましく、0〜1重量%がより好ましく、0〜0.1重量%がさらに好ましい。
【0090】
また、染料あるいは顔料を配合することにより、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できる。さらに、接着助剤を配合することにより、基板との接着性を改善することができる。
【0091】
酸拡散制御剤を配合した場合の感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸又はその誘導体を含有させることができる。尚、これらの化合物は、酸拡散制御剤と併用することもできるし、単独で用いてもよい。有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が好適である。リンのオキソ酸又はその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸又はそれらのエステル等の誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸又はそれらのエステル等の誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸及びそれらのエステル等の誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
【0092】
レジストパターンを形成するには、まず、シリコンウェハー、ガリウムヒ素ウェハー、アルミニウムで被覆されたウェハー等の基板上に本発明のフォトレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。
【0093】
必要に応じて、基板上に表面処理剤を予め塗布してもよい。表面処理剤としては、例えばヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤(重合性基を有する加水分解重合性シランカップリング剤等)、アンカーコート剤又は下地剤(ポリビニルアセタール、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等)、これらの下地剤と無機微粒子とを混合したコーティング剤が挙げられる。
【0094】
必要に応じて、大気中に浮遊するアミン等が侵入するのを防ぐために、レジスト膜に保護膜を形成してもよい。保護膜を形成することにより、放射線によりレジスト膜中に発生した酸が、大気中に不純物として浮遊しているアミン等の酸と反応する化合物と反応して失活し、レジスト像が劣化し感度が低下することを防止できる。保護膜用の材料としては水溶性かつ酸性のポリマーが好ましい。例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸等が挙げられる。
【0095】
高精度の微細パターンを得るため、また露光中のアウトガスを低減するため、放射線照射前(露光前)に加熱するのが好ましい。その加熱温度は、フォトレジスト組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜150℃である。
【0096】
次いで、KrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、フォトレジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。本発明においては、高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後(露光後)に加熱するのが好ましい。露光後加熱温度(PEB)は、フォトレジスト組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは40〜150℃である。
【0097】
次いで、露光されたレジスト膜をアルカリ現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成できる。前記アルカリ現像液としては、例えば、モノ−、ジ−あるいはトリアルキルアミン類、モノ−、ジ−あるいはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物の1種以上を溶解した、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%のアルカリ性水溶液を使用する。アルカリ現像液には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や前記界面活性剤を適量添加することもできる。これらのうちイソプロピルアルコールを10〜30重量%添加することが特に好ましい。尚、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を用いた場合は、一般に、現像後水で洗浄する。
【0098】
本発明のフォトレジスト基材の場合は、KrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光することにより、酸解離性溶解抑止基が脱離ないし、構造が変化することにより、アルカリ現像液に溶解するようになる。一方、パターンの露光されていない部分はアルカリ現像液に溶解しないことにより、結果として微細パターンが形成されることをもって、フォトレジスト基材としての目的が達成される。即ち、本発明で規定する平均置換率で酸解離性溶解抑止基を有するフォトレジスト基材、もしくはフォトレジスト基材からなる薄膜は、アルカリ現像液に溶解しないことが望ましい。
【0099】
アルカリ現像液に対する非溶解性については、形成するパターンのサイズ、使用するアルカリ現像液の種類等の現像条件により、好ましい非溶解性が異なるため一概に規定することはできないが、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をアルカリ現像液として用いる場合、フォトレジスト基材からなる薄膜の現像液溶解速度で表される非溶解性としては、1ナノメートル/秒未満が好ましく、0.5ナノメートル/秒未満が特に好ましい。
【0100】
尚、場合によっては上記アルカリ現像後、ポストベーク処理を含んでもいいし、基板とのレジスト膜の間には有機系又は無機系の反射防止膜を設けてもよい。
【0101】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングは、プラズマガスを使用するドライエッチング、アルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等を用いるウェットエッチング等公知の方法で行うことができる。レジストパターンを形成した後、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっき等のめっき処理を行うこともできる。
【0102】
エッチング後の残留レジストパターンは、有機溶剤やアルカリ現像液より強アルカリ性の水溶液で剥離することができる。上記有機溶剤としては、PGMEA、PGME、EL、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、強アルカリ水溶液としては、例えば、1〜20重量%の水酸化ナトリウム水溶液、及び1〜20重量%の水酸化カリウム水溶液が挙げられる。剥離方法としては、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。またレジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0103】
本発明のフォトレジスト組成物を用いてレジストパターンを形成した後、金属を真空蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶離する方法、即ちリフトオフ法により配線基板を形成することもできる。
【0104】
本実施形態に係るフォトレジスト組成物を用いて極端紫外光や電子線のリソグラフィーによる超微細加工を行うことができる。本実施形態に係る微細加工方法により、例えば、ULSI、大容量メモリデバイス、超高速ロジックデバイス等の半導体装置を製造することができる。
【0105】
本発明の微細加工方法により、上述のULSI、大容量メモリデバイス、超高速ロジックデバイス等の性能を飛躍的に向上させることができる。さらに、本発明のフォトレジスト組成物を用いて作製した半導体装置を部品として組み込むことにより、情報家電機器、コンピューター機器、USBメモリ等のメモリデバイス機器、ディスプレー機器等の半導体組込製品の性能を飛躍的に向上させることができる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例について説明する。
尚、実施例の記載により本発明の技術的範囲は限定されない。
【0107】
[実施例1]
窒素気流下、容量200ミリリットルの丸底フラスコに、3−メトキシフェノール10.0g(81ミリモル)、4−ホルミル安息香酸メチル13.2g(80.6ミリモル)、脱水ジクロロメタン100ミリリットルを加え、−78℃に冷却した。この混合物に対して、3フッ化ホウ素エーテル付加体30.8ミリリットル(250ミリモル)を滴下した後、室温まで昇温して8時間撹拌を継続した。反応溶液を−78℃まで冷却し、析出した固体をジクロロメタン80ミリリットル、水200ミリリットル、エタノールで洗浄し、環状化合物(1)を収量20.5g(収率94%)で得て、H−NMR測定の結果(図1)、下記の構造であることを確認した。
【化26】

【0108】
[実施例2]
窒素気流下、実施例1で得られた環状化合物(1)0.8g(0.74ミリモル)、水酸化ナトリウム0.74g(18.5ミリモル)、水10ミリリットルを加え、90℃、5時間加熱撹拌を行った後、放冷した。希塩酸水溶液を加え反応溶液を酸性にし、析出した白色沈殿をろ別し水洗することにより環状化合物(2)を収量0.68g(収率90%)で得て、H−NMR測定の結果(図2)、下記の構造であることを確認した。
【化27】

【0109】
[実施例3]
窒素気流下、実施例2で得られた環状化合物(2)3.0g(2.93ミリモル)、炭酸ナトリウム1.64g(15.5ミリモル)、ジメチルホルムアミド100ミリリットルの混合物へ、2−ブロモ酢酸tert−ブチル5.04g(15.5ミリモル)を滴下した後、80℃で5時間加熱撹拌を行った。反応混合物を放冷し、水を加えることにより析出した白色沈殿をろ別することにより、環状化合物(3)を収量1.96g(収率45%)で得て、H−NMR測定の結果(図3)、下記の構造であることを確認した。
【化28】

【0110】
得られた環状化合物(3)は、ORが全て水酸基である化合物、4つのORのうち1つが酸解離性溶解抑止基が置換した化合物、及び4つのORのうち2つが酸解離性溶解抑止基が置換した化合物の混合物であった。この混合物のORにおける水酸基と酸解離性溶解抑止基の存在比(水酸基:酸解離性溶解抑止基)は54.6:45.4であった。
【0111】
[実施例4]
窒素気流下、実施例2で得られた環状化合物(2)10g(9.8ミリモル)、炭酸水素ナトリウム3.36g(40ミリモル)、ジメチルホルムアミド120ミリリットルの混合物へ、2−ブロモ酢酸tert−ブチル7.8g(40ミリモル)を滴下した後、65℃で8時間加熱撹拌を行った。反応混合物を放冷した後、イオン交換水に投入し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出液は濃縮してヘキサンに投入して析出した固体をろ別することにより、環状化合物の合成中間体(4’)を収量8.0g(収率60%)で得て、H−NMR測定の結果(図4)、下記の構造であることを確認した。
【化29】

【0112】
得られた合成中間体(4’)は、OR’が水酸基である合成中間体とOR’が酸解離性溶解抑止基である合成中間体の混合物であり、OR’が水酸基である合成中間体とOR’が酸解離性溶解抑止基である合成中間体の混合比は、50:50であった。
【0113】
窒素気流下、得られた合成中間体(4’)を8.0g(5.5ミリモル)、炭酸水素ナトリウム0.20g(0.34ミリモル)、ジメチルホルムアミド80ミリリットルの混合物へ、2−ブロモ酢酸tert−ブチル0.46g(0.34ミリモル)を滴下した後、65℃で4時間加熱撹拌を行った。反応混合物を放冷し、反応混合物を放冷した後、イオン交換水に投入し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出液は濃縮してヘキサンで再沈し、析出した固体をろ別することにより、環状化合物(4)を収量5.0g(収率58%)で得て、H−NMR測定の結果(図5)、下記の構造であることを確認した。
【化30】

【0114】
[実施例5]
窒素気流下、実施例2で得られた環状化合物(2)3.73g(3.6ミリモル)、トリエチルアミン3.65g(36.1ミリモル、ジメチルホルムアミド100ミリリットルの混合物へ、2−クロロメトキシアダマンタン3.62g(18.1ミリモル)を氷水浴で冷やしながら滴下し、室温で6時間撹拌を行った。反応混合物へ水を加え析出した沈殿をろ別することにより、環状化合物(5)を収量4.33g(収率71%)で得て、H−NMR測定の結果(図6)、下記の構造であることを確認した。
【化31】

【0115】
[実施例6]
窒素気流下、実施例2で得られた環状化合物(2)1.00g(0.98ミリモル)、トリエチルアミン0.99g(9.75ミリモル)、ジメチルホルムアミド30ミリリットルの混合物へ、ベンジルクロロメチルエーテル0.77g(4.9ミリモル)を氷水浴で冷やしながら滴下し、室温で6時間撹拌を行った。反応混合物へ水を加えることにより析出した沈殿をろ別することにより、環状化合物(6)を収量0.63g(収率43%)で得て、H−NMR測定の結果(図7)、下記の構造であることを確認した。
【化32】

【0116】
[実施例7]
窒素気流下、実施例2で得られた環状化合物(2)5.03g(4.88ミリモル)、炭酸水素ナトリウム1.86g(21.95ミリモル)、N−メチル−2−ピロリドン100ミリリットルの混合物へ、2−ブロモ酢酸1−エチルシクロヘキシル6.23g(21.95ミリモル)を滴下した後80℃、8時間加熱撹拌を行った。反応混合物を放冷し、酢酸エチル/水で抽出した。有機層は濃縮をしてヘキサンで再沈し、析出した固体をろ別することにより、環状化合物(7)を収量5.68g(収率69%)で得て、H−NMR測定の結果(図8)、下記の構造であることを確認した。
【化33】

【0117】
[評価例]
フォトレジスト溶液を作製し、電子線を使用してシリコンウェハにパターンを形成した。
基材として、実施例3〜7にて合成した環状化合物(3)〜(7)、及び、比較例として、下記式(8)に示す環状化合物を、それぞれ87重量部使用し、PAGとしてトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート10重量部、クエンチャーとして1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン3重量部を使用した。これらの固体成分の濃度が5重量%となるようにプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解することにより、環状化合物(3)〜(8)を基材として用いたフォトレジスト溶液を製造した。
【0118】
これらのフォトレジスト溶液を、それぞれ、HMDS処理を施したシリコンウェハ上にスピンコートし、100℃で180秒加熱することにより薄膜を形成させた。次いで、この薄膜を有する基板に対して電子線描画装置(加速電圧50kV)を用いて描画し、100℃で60秒ベークした後、濃度が2.38重量%のテトラブチルアンモニウム水溶液で60秒間現像処理し、純水にて60秒洗浄、その後、窒素気流により乾燥した。
【0119】
結果として、環状化合物(3)〜(7)を基材として用いたフォトレジスト溶液を用いた場合では、いずれも100nmのラインアンドスペースパターンが、パターン倒れ、パターン剥がれ等の欠陥が一切なく、矩形性、直線性良く得ることができた。
【0120】
さらに、環状化合物(3)を基材として用いたフォトレジスト溶液を用いた場合では、30nmのラインアンドスペースパターンを、パターン倒れ、パターン剥がれ等の大きな欠陥なく、20マイクロクーロン/cmという高感度で得ることができた。環状化合物(4)を基材として用いたフォトレジスト溶液を用いた場合では、35nmのラインアンドスペースパターンを、パターン倒れ、パターン剥がれ等の大きな欠陥なく、20マイクロクーロン/cmという高感度で得ることができた。環状化合物(5)〜(7)を基材として用いたフォトレジスト溶液を用いた場合では、30nmのラインアンドスペースパターンを、30マイクロクーロン/cmという高感度で、パターン倒れ、パターン剥がれ等の大きな欠陥なく得ることができた。
【0121】
一方、比較例である環状化合物(8)を基材として用いたフォトレジスト溶液を用いた場合では、矩形性、直線性良く100nmのラインアンドスペースパターンが得られたが、パターン倒れ、パターン剥がれが観測された。
【0122】
上記のフォトレジスト薄膜を有する基板に対して、電子線描画装置に替えてEUV露光装置を用いてEUV光(波長:13.5nm)を照射した。その後、100℃で90秒ベークし、2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間、イオン交換水で30秒間リンスすることでパターンを形成した。
走査型電子顕微鏡にて観察したところ、電子線描画装置の場合と同様、環状化合物(3)〜(7)を基材として用いたフォトレジスト溶液を用いた場合では、30nmのラインアンドスペースパターンが、パターン倒れ、パターン剥がれ等の欠陥が一切なく、矩形性、直線性良く得ることができた。一方、比較例である環状化合物(8)を基材として用いたフォトレジスト溶液を用いた場合では、電子線描画装置を用いた場合と同様、矩形性、直線性良く100nmのラインアンドスペースパターンが得られたが、パターン倒れ、パターン剥がれが観測された。
【0123】
【化34】

【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の環状化合物は、フォトレジスト基材又は組成物、特に極端紫外光用及び/又は電子線用フォトレジスト基材又は組成物に好適に使用できる。また、本発明の環状化合物は、溶解度調整のための添加剤としても使用できる。本発明のフォトレジスト基材及びその組成物は、半導体装置等の電気・電子分野や光学分野等において好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】実施例1で合成した化合物(1)のH−NMRスペクトルである。
【図2】実施例2で合成した化合物(2)のH−NMRスペクトルである。
【図3】実施例3で合成した化合物(3)のH−NMRスペクトルである。
【図4】実施例4で合成した中間体(4’)のH−NMRスペクトルである。
【図5】実施例4で合成した化合物(4)のH−NMRスペクトルである。
【図6】実施例5で合成した化合物(5)のH−NMRスペクトルである。
【図7】実施例6で合成した化合物(6)のH−NMRスペクトルである。
【図8】実施例7で合成した化合物(7)のH−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される環状化合物。
【化1】

[式中、Rはそれぞれ下記式(II)で表される基である。
【化2】

(式中、Arは炭素数の6〜10のアリーレン基;炭素数6〜10のアリーレン基を2つ以上組み合わせた基;又は炭素数6〜10のアリーレン基と、アルキレン基及びエーテル基の少なくとも一方を、それぞれ一つ以上組み合わせた基であり、
は単結合、アリーレン基、アルキレン基、エーテル基、又は、アリーレン基、アルキレン基、エーテル結合のいずれかをそれぞれ2つ以上組み合わせた基である。
はそれぞれ水素、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、シリル基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル基、炭酸エステル基又はエーテル基がそれぞれ一つ以上結合してなる基)が結合した基である。
xは1〜5の整数、yは0〜3の整数である。
複数のR、Ar及びAはそれぞれ同じでも異なってもよい。)
同一の芳香環上に存在する2つのRのうち、一方がRで表される基であり、他方が溶解性調整基である。
はそれぞれ水素、水酸基、ORで表される基、OR(Rは溶解性調整基である)で表される基、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族基又は酸素原子を含む基である。]
【請求項2】
が水素である請求項1記載の環状化合物。
【請求項3】
ORが酸解離性溶解抑止基である請求項1又は請求項2記載の環状化合物。
【請求項4】
前記酸解離性溶解抑止基が、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する分子量が15以上2000以下の置換基である請求項3記載の環状化合物。
【請求項5】
ORが、下記式(III)〜(VI)のいずれかである請求項1又は請求項2記載の環状化合物。
【化3】

(上記式(III)〜(VI)において、
Aは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、分岐を有する置換もしくは無置換の炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。
Bは、三級脂肪族構造、芳香族構造、単環状脂肪族構造又は複環状脂肪族構造を有する三級炭素を基点としてなる置換基である。
Cは、芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造、又は、芳香族構造、単環状脂肪族構造、複環状脂肪族構造のいずれか最低1種類の構造が、炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基と組み合わさってなる置換基である。
Dは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、分岐を有する置換もしくは無置換の炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基である。)
【請求項6】
ORが、下記式に示される基のいずれかである請求項1又は請求項2記載の環状化合物。
【化4】


(式中、rはそれぞれ上記式で表される置換基の内、rを有さない置換基のいずれかを表す。)
【請求項7】
及びRの溶解性調整基が、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜12の分岐を有する脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数6〜10の芳香族基、アルコキシアルキル基、シリル基、又はこれらの基と二価の基(置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のシリレン基、これらの基が2以上結合してなる基、又はこれらの基とエステル基、炭酸エステル基又はエーテル基がそれぞれ一つ以上結合してなる基)が結合した基である請求項1〜6のいずれか記載の環状化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の環状化合物を含有するフォトレジスト基材。
【請求項9】
請求項8記載のフォトレジスト基材及び溶剤を含有するフォトレジスト組成物。
【請求項10】
さらに光酸発生剤を含有する請求項9記載のフォトレジスト組成物。
【請求項11】
さらに塩基性有機化合物をクエンチャーとして含有する請求項9又は10記載のフォトレジスト組成物。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか記載のフォトレジスト組成物を用いた微細加工方法。
【請求項13】
請求項12記載の微細加工方法により作製した半導体装置。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置を備えた装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−269901(P2009−269901A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158769(P2008−158769)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】