説明

生きている組織の特性を測定するための装置および方法

【解決手段】 生きている組織内のグルコースレベルを測定するための装置は、検体に接触される電極(5、6)と、所定の周波数範囲内でAC電圧を生成するための信号源としての電圧制御発振器(31)を有する。電極間の電圧は、処理回路(37、38)に供給される。処理回路は、この電圧を較正データを用いてグルコースレベルへと変換する。電圧制御発振器(31)は、少ない供給電圧で大きな周波数範囲内で小さな歪の信号を生成するために可変の増幅率を有する対称の構造を有する。処理回路は、ソフトウェアに基づいた補正を施された簡単な整流ネットワークを具備する。電極(5、6)は、対称の形態を有し、生物学的に互換性を持つよう最適化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年12月2日に出願された国際特許出願PCT/CH03/00795の優先権を主張する。この出願の開示は、全て参照として本明細書に組み込まれる。本発明は、生きている組織の特性、より詳しくは組織のグルコースレベルを測定するための装置、およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生きている組織内のグルコースレベルは、患者の皮膚に電極を配置し、適切な電気信号に対する電極配列の応答を測定することによって、体内への侵入を伴うことなく(non-invasively)、行うことができることが知られている。このような技術は、WO 02/069791に記載されており、これの開示内容は本明細書に全て包含される。
【0003】
このタイプの装置は、検体に付される電極配列と、所定の周波数範囲内でのAC電圧を生成するための信号源としての電圧制御発振器とを備えている。AC電圧は、電極配列に印加される。電極配列の、組織の誘電特性に応じた電極配列上の電圧等の応答は、処理回路に供給される。
【0004】
この装置が、グルコースを満足に観察できるとしても、慎重な較正が必要であり、高精度の測定結果を得るために明確な条件下で実施される必要がある。
【0005】
WO 02/069791の装置は、生きている組織のパラメータを測定するための装置の一例である。同様のタイプの装置が、組織の電気AC場への応答に影響を与える、誘電定数またはイオン濃度等の他の特性を測定するために用いられることができる。
【0006】
このタイプの装置には、高精度が求められる。また、携帯装置では、低電力消費および低供給電圧が求められる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の第1の側面においては、低供給電力を有するこのタイプの装置を提供することを目的とする。
【0008】
そこで、これ、および本明細書の記載が進むに従ってより容易に明確になるであろう本発明のさらなる目的を実現するために、請求項1の装置が用いられる。
【0009】
本発明のこの側面に従った装置では、電圧制御発振器(VCO)は、増幅率制御信号によって増幅率を設定可能な少なくとも1つの電圧制御増幅器を具備する。VCOは、VCOの動作の周波数を決定する電圧制御キャパシタを伴った少なくとも1つのタンク回路をさらに具備する。この装置は、電圧制御キャパシタの両端のDC電圧がゼロに近いときに、増幅率が増加するように増幅率制御信号を制御するよう適合されている。
【0010】
このことは、損失が大きくなるDC電圧がゼロに近いときの電圧制御キャパシタの動作を可能とする。これにより、適度の供給電圧および電力消費で、広範囲の周波数を生成できる。
【0011】
本発明の第2の側面においては、簡単な回路で正確な測定を可能とする上記のタイプの装置を提供することを目的とする。
【0012】
この第2の側面は、請求項7の装置により達成される。
【0013】
この側面の装置によれば、処理回路は、AC入力電圧を整流して整流された信号を生成する少なくとも1つのダイオードを、この信号を平滑にするための積分器に加えて具備する。整流され、平滑にされた信号(またはこれらから得られた信号)は、A/Dコンバータに供給され、デジタル値へと変換される。このデジタル値は、入力電圧のAC振幅に、比例ではないが、依存する。したがって、それは、入力電圧のAC振幅に実質的に比例する信号値へと、例えば較正関数または参照表によって変換される。実質的に比例という文言は、信号値が、デジタル値よりもAC振幅により比例し、少なくとも近似においては、AC振幅に正確に比例する値を必要とする計算のために用いられることができることを指す。
【0014】
この方法では、アナログ回路は、正確さを失うことなく簡略化される。具体的には、アナログ回路は、入力電圧のAC振幅に正確に比例する信号を供給する必要はない。
【0015】
本発明の第2の側面では、利用可能なデータを有効に活用する正確な測定を可能にする、上記したタイプの装置、および対応する測定方法を提供することである。
【0016】
この第2の側面は、請求項14の装置および請求項29の方法によって達成される。
【0017】
本発明のこの側面では、一連の周波数fのAC電圧が生成され、電極配列を介して検体に印加される。各周波数fにおける対応する一連の測定値Mが求められる。各測定値Mは、対応する周波数における検体の誘電特性に依存する。パラメータb乃至bを用いた関数M(f,b,・・・・,b)が、与えられた周波数fまたはこれらから得られた値を介して測定値mに対してフィッティングされ、よってb乃至bが決定される。b乃至bの少なくとも一部は、次いで、所望の特性を求めるために、例えば先の較正測定による較正データを用いて、用いられる。
【0018】
関係するフィッティング処理が、用いられる全ての測定値からの情報を利用し、統計的なばらつきによる影響を補償するので、このようにして得られた結果は、高い精度を有する。
【0019】
本発明の第3の側面では、正確な測定を可能とする上記のタイプの装置を提供することを目的とする。
【0020】
この第2の側面は、請求項19の装置によって達成される。
【0021】
この側面は、外部電極の非対称の構成が、より強固で、より信頼性の高い信号を提供するという発見に基づいている。
【0022】
本発明の最後の側面では、生理学上の互換性を有する上記のタイプの装置を提供することを目的とする。
【0023】
この最後の側面は、請求項22の装置によって達成される。ここで、電極への全てのスルーコンタクトは、生物学的に不活性な材料で覆われている。スルーコンタクトは、有害またはアレルギー誘発性の物質の生成源であることが発見された。よって、スルーコンタクトを覆うことによって、装置の生物学的な互換性(biocompatibility)を上げることができる。
【0024】
様々な側面に従った装置の要素は、個別にまたは組み合わせて用いられることができることに留意されねばならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明、および上記した以外の目的ついての以下の詳細な説明を熟考することにより、本発明はより良く理解され、上記以外の目的は明確となるであろう。このような説明は、添付の図面を参照している。
【0026】
装置の基本的な設定
図1は、対象のグルコースレベルを測定するための装置100の断面図を示している。しかしながら、同じタイプの装置が、上記のように電気AC場を印加される組織の応答に影響する生きている組織の他のあらゆるパラメータを測定可能であることに留意されなければならない。グルコースレベルとは別に、このような特性は、例えば組織の電解質レベルであり得る。
【0027】
図1の装置は、電極板2によって一方を封止された筐体を具備する。ディスプレイ3は、電極板2と反対側に配置される。電子回路が、電極板2とディスプレイ3との間に配置される。
【0028】
電極板2は、平坦な、電気的に絶縁性の基板4を具備する。ストリップ電極5は、絶縁基板4の外側7上に配置されている。ストリップ電極5は、絶縁層5aおよび、外部の環状電極6によって覆われている。環状電極は、ストリップ電極5の少なくとも一部を、またはこれを完全に囲む。絶縁基板4の内側8は接地電極9により覆われている。複数のスルーコンタクト10は、外側電極6を接地電極9に接続する。さらなるスルーコンタクト11は、ストリップ電極5の一端を内面8上に配置されたコンタクトパッド12に接続する。
【0029】
第1の温度センサ15が、接地電極9上に、直接に熱的接触して配置されている。スルーコンタクト10の多数は、接地電極9が外側電極6の温度、従って検体の温度に追随することを保証する。検体の表面は、点線16により示されている。
【0030】
リードまたはバネ18が設けられて、接地電極9、コンタクトパッド12、第1の温度センサ15を電気部品の組み立て品を形成するプリント回路基板19上に配置された電子回路に接続する。プリント回路基板19が、有利な形態としては、本装置の電極板2の実質的に反対側に配置される。回路に電源を供給するバッテリー21が、プリント回路基板19と電極板2との間に配置される。
【0031】
第2の温度センサ22が、プリント回路基板19上に、直接に熱的接触して配置される。
【0032】
装置100の回路構成は、WO 02/069791に記載されているものとすることができる。使用可能な他の回路が、図2のブロック回路部に示されている。この回路は、選択可能な周波数ωのサイン波信号VVCOまたは他の周期的信号を生成するための信号源としての電圧制御発振器(VCO)を具備する。この信号は、増幅器32に供給される。増幅器32の出力は、抵抗R1を介して信号点34と測定回路37の第1の入力u1に接続される。また、増幅器32の出力は、測定回路37の第2の入力u2に直接供給される。共振回路35は、インダクタンスLおよびキャパシタCを具備し、信号点34と接地との間に接続される。
【0033】
測定回路37の動作が、以下に説明される。測定回路37の出力は、例えば入力u1、u2でのAC電圧の振幅および(または)相対的な位相であり、マイクロプロセッサ38に供給される。マイクロプロセッサ38は、VCO31の動作も制御する。
【0034】
マイクロプロセッサ38は、第1、第2の温度センサ15、22からの第1、第2の温度信号T1、T2をサンプル化する。マイクロプロセッサ38は、また、ディスプレイ装置3、使用者が制御可能な入力装置40、外部コンピュータへのインターフェース41を制御する。メモリ42が、較正パラメータ、測定結果、さらなるデータ、マイクロプロセッサ38のためのファームウェアを格納するために設けられる。メモリ42の少なくとも一部は、不揮発性である。
【0035】
図2の装置のインダクタンスLは、コイル、および(または)キャパシタCのリードと電極によって生成されることができる。インダクタンスの値は、適度な正確さで一般的に求められる。
【0036】
図2の装置のキャパシタCは、ストリップ電極5と外側電極6との間に形成され、検体のプローブのために用いられる。この目的のために、電極が、図1に示すように対象の皮膚16上に配置される。
【0037】
対象の皮膚に良好で永続的に接触するために、本装置は、有利な形態としては腕または脚に取り付けられ、適当なホルダまたはリストバンド43が設けられる。
【0038】
まとめると、図1および図2に示す装置は、
所定の周波数範囲内でAC電圧を生成するための電圧制御発振器と、
電極5、6を具備する電極配列と、
電極配列の電気信号に対する応答を測定し、これからグルコースレベルまたは他のパラメータを導き出すための要素31乃至33、37、38を含む処理回路と、
を具備する。
【0039】
また、この装置は、少なくとも2つの温度センサ15、22を具備してもよい。これらのセンサの信号は、体の皮膚温度、環境温度に、異なる形態で依存する。これらの温度の一方、または有利な形態として両方が、グルコースレベルを求める際に考慮に入れることができる。
【0040】
操作方法
本装置の動作の基本原理は、WO 02/069791に記載されている。
【0041】
患者の体液内のグルコース濃度を測定するために、マイクロプロセッサ38は、例えば、VCO1の周波数掃引からなる測定サイクルを開始することができる。この掃引は、共振回路35の予想される共振周波数f0を超えた周波数fmaxから開始し、共振周波数f0未満の周波数fminまで変化する(またはこの逆)。この掃引の間、共振回路の電気的特性は変化する。測定回路Aによって決定された振幅は、WO 02/069791に記載されているように、特性周波数f0にいて最小A0まで減少する。同様に位相シフトphiはゼロを通過する。
【0042】
マイクロプロセッサ38は、測定対象者の血液、体液、組織の生理学的な状態を示す入力値として、A0および(または)f0、または本装置の周波数応答を示す他のパラメータを測定する。A0および(または)f0の入力値に加えて、マイクロプロセッサ38は、さらなる入力値として温度値T1、T2を測定する。適当な較正データを用いて、グルコースレベルが、これらの入力値から求められることができる。
【0043】
このような較正データは、当業者に知られている方法を用いて直接的に、入力値の範囲に亘る較正測定値から決定されることができる。
【0044】
一般に、マイクロプロセッサ38は、以下のタイプの公式
g=F(s,s,・・・s,a,a,・・・a) (1)
を用いてN個の測定された入力値s,s,・・・s(N>0)からグルコースレベルg(またはこれを示すパラメータ)を求める。関数Fは、M+1個のパラメータa,a,・・・a(M≧0)を有する。これらの幾つかは較正測定値から求められなければならない。
【0045】
測定された入力値sは、例えば振幅A0、対応する周波数f0、温度T1、T2から直接的にまたは間接的に求められる。入力値は、例えば、最新の測定値または時間平均値または所定数の最新の測定値のメジアンとすることができる。使用可能な入力値については、後述の「未加工の信号のさらなる処理」の項で説明する。
【0046】
関数Fは、経験的なものであっても良いし、関係するメカニズムの物理的性質を記述するモデルに少なくとも一部が基づいていても良い。
【0047】
グルコースレベルgと測定値sとの関係が、近似では線形であるとすると、
g=a+a・s+a・s+・・・a・s (2a)
を得る。ここで、M=Nである。
【0048】
等式(2a)はパラメータaだけでなく入力値sにおいても線形である利点を有する。これにより、評価だけでなく較正もが簡略化される。しかしながら、より精緻なモデルももちろん用いることができる。
【0049】
パラメータa,a,・・・aを求めるために、少なくともN+1回の一連の較正測定が実行されなければならない。各較正測定は、入力値Sと、例えば侵入性の(invasive)方法等の従来の手段によって測定された参照グルコースレベルgを求めることを具備する。
【0050】
最も簡便な手法では、パラメータaが、次いで、較正測定に最も適する等式(2)または(2a)を発見するためにパラメータaを変化させる従来の最小2乗フィッティングアルゴリズムから求められることができる。適切なアルゴリズムは、当業者に知られており、例えばCambridge University Pressの1992年の第2版、15章のPress, Teukolsky, Vetterling, Flanneryによる“Numerical Recipes in C”に記載されている。
【0051】
パラメータaが得られたら、グルコースレベルgが、等式(2)または(2a)から、入力値Sの測定値に基づいて求められることができる。
【0052】
パラメータの少なくとも一部の再較正を、規則的な間隔で、または検体から装置100を取り外した後で、行うことが望ましいかもしれない。
【0053】
以下では、本装置の様々な有利な面が、詳細に説明される。
【0054】
電圧制御発振器
原則として、様々な形態の電圧制御発振器が、本発明中で用いられることに適している。そのようなものの1つが、WO 02/069791の図9に示されている。しかしながら、以下に、電圧制御発振器の有利な実施形態が記載される。この電圧制御発振器は、小さな供給電圧で動作し、消費電力が少なく、広い範囲の周波数で発振し、少ない歪でサイン波信号を生成する。
【0055】
図3の電圧制御発振器31は、インダクタンスL1、L2の2つの対称的なタンク回路と、電圧制御キャパシタ(バラクターダイオード)D1、D2を具備する。電圧制御キャパシタD1、D2の容量は、周波数制御電圧または周波数制御信号V1によって制御される。また、VCO31は、2つの増幅器を具備する。2つの増幅器は、それぞれ、デュアルゲートFETT1、T2から構成される。トランジスタT1、T2の増幅率は、増幅率制御電圧または増幅率制御信号V2によって制御される。要素L1、D1、L2、D2、T1、T2は、T1、T2のドレインの電圧が位相180°ずれてタンク回路の共振周波数において共振するように接続されている。トランジスタT1、T2のドレイン、したがって増幅器の出力は、キャパシタC1、C2、変圧器TRの一次巻線を介して相互に接続されている。変圧器TRの二次巻線は、アナログ接地AGND(ほぼ2.5ボルトである)に対する出力電圧VVCOを生成する。
【0056】
VCO31の周波数は、周波数制御電圧V1を介して選択されることができる。周波数制御電圧V1は、例えば、マイクロプロセッサ38によって生成されることができる。典型的には、周波数制御電圧V1は、−10乃至+5ボルトの範囲に亘る。しかしながら、+5ボルトに近づくと、D1、D2の両端のDC電圧は減少し、したがってD1、D2の損失が増加する。これらの損失を補償するために、増幅器の増幅率は、周波数制御電圧V1に応じて較正される。これは、電圧制御キャパシタD1、D2の両端のDC電圧がゼロに近いときに増幅制御信号V2、したがって増幅器増幅率を上げることによって行われる。
【0057】
増幅率制御電圧V2は、マイクロプロセッサ38によって生成されることができる。例えば、マイクロプロセッサ38は、RAM/ROM42内の較正データにアクセスすることができる。このデータは、周波数制御電圧V1の各値についての、増幅率制御電圧V2またはそれから得られる変数の適切な値を供給する。
【0058】
有利な形態として、増幅率制御電圧V2は、出力電圧VVCOまたは測定回路37の第2の入力u2での信号を監視し且つ増幅率制御電圧V2の振幅を一定値に保つよう制御するフィードバックループによって生成される。このことは、電圧制御キャパシタD1、D2の両端のDC電圧がゼロに近づいたときに増幅率制御電圧V2を増加させることに繋がる。
【0059】
電圧V2をフィードバックループ内で制御することは、出力電圧が、VCO31の動作パラメータが、例えば温度および(または)回路の経年によって変動したとしても、実質的に一定に保たれるという利点を有する。このことは、測定回路37が所定の電圧範囲でのみ最適に動作するように設計されている場合に特に重要であり、このことによって、印加された電場に対する体の応答が非線形であることが測定された信号に影響を与えないことが保証される。
【0060】
V2を制御するためのフィードバックループは、アナログ回路を用いて、またはマイクロプロセッサ38の補助の下に、実行されることができる。マイクロプロセッサ38を用いると回路設計が簡略化されるため有利である。しかしながら、フィードバックループを実施することが本装置の電力消費を不要に増加させないように配慮されなければならない。
【0061】
したがって、フィードバックループを有利に実施するには、V2の適切な値を発見するためにVCOが不要に長時間に亘って動作することを避けるべきである。上記のように、マイクロプロセッサ38は、VCO31の周波数掃引からなる測定サイクルを開始することができる。この掃引は、例えば、周波数fmaxで開始して周波数fminまで達し、また所定の一連の周波数fにおいて繰り返し測定することからなる。有利な実施形態では、RAM/ROM42は、各周波数fについての、導関数d(f)=dV2/df|f=fiの計算を可能とする較正データを保持する。このデータを用いて、以下のステップが取られて電圧V2の値が制御される。
【0062】
周波数f=fmaxでの最初の測定サイクルにおいて、V2の値は、マイクロプロセッサ38によって、電圧u2が所定の値u2opt(例えば500mV)になるまで変化させられる。これに対応するV2の値は、V2(f)である。
【0063】
2番目の測定サイクルでは、V2(f)の値が、V2(f)から、導関数d(f)(または(f)またはd(f)とd(f)との間の値)、例えばV2(f)=V2(f)+(f−f)・d(f)を用いた一次補外によって計算される。
【0064】
続く測定サイクルでは、V2(fi+1)が、再び一次補外によってV2(f)から計算される。しかし、一次補外された値は、補正によって補正される。補正の値は、周波数fにおける電圧u2が所望値u2optを超えていたかあるは未満であったかに依存する。周波数fにおける電圧u2がu2optを超えていた場合、V2(fi+1)の補正は、周波数fi+1での電圧u2が減少するように設定される。逆の場合も同様である。例えば、V2(fi+1)=V2(f)+k・(f−fi+1)・d(f)という関係が、周波数fにおけるu2のu2optとの比較に応じてkを9/8または7/8として用いられることができる。または、k’を1より若干大きいか小さいとしたV2(fi+1)=k’・(V2(f)+(f−fi+1)・d(f))が用いられることができる。これによって、電圧u2が所定の範囲内で最適値u2optの周辺に維持されることが保証される。
【0065】
よって、一般に、少なくとも幾つかの測定サイクルiにおいて、VCO31の出力電圧(または、同様に、電圧u2のようなそれらから得られる電圧)が最適値(u2opt)と比較される。次の測定サイクルi+1の電圧V2が、次いで、比較の結果に応じて補正される。
【0066】
電圧V2についてのフィードバックループの代わりにまたはこれとの組み合わせで、RAM/ROM42は、異なる周波数および温度における電圧V2の適切な値を計算するための温度依存の較正データを保持し、温度センサ22によって測定された温度が、適切な較正データを選択するために用いられることができる。
【0067】
2つの増幅器T1、T2と、および180°の位相シフトで動作する2つのタンク回路L1、D1、L2、D2とでVCO31が対称の構造であること、および出力電圧VVCOが増幅器の出力の電圧降下から得られるという事実は、サイン波が非常に小さな歪であることに繋がる。これは、本装置が1:2を超える周波数範囲に亘って動作するものである場合に特に重要である。測定回路37の設計に応じては、より高い高調波が付加的な信号を生じ、これが誤った結果に繋がる。
【0068】
図3に示すような周波数制御発振器の典型的な周波数範囲は、+5乃至−10ボルトの周波数制御電圧V1について20乃至60MHzである。増幅率制御電圧V2の値は、+5ボルトに近い電圧V1に対しては約+4ボルトに、+5ボルトよりはるかに小さいV1に対しては約+3ボルトへと、選択される。
【0069】
図3から分かるように、両方の制御電圧は、VCO31の動作範囲内でのあらゆる周波数を遮るフィルタとして振舞うキャパシタC3、C4によって平滑化され、これにより発振器信号をより良い正弦形状にする。同じ目的のために、増幅率制御電圧V2と接続されたゲートは、フィルタキャパシタC5を介してFETのソースと接続される。また、同じ目的のために、0VとトランジスタT1、T2のソースとの間に接続され且つほぼ電流源として振舞う抵抗R1は、キャパシタC6と並列に配置される。キャパシタC6は、VCO31の周波数の範囲における抵抗電圧のあらゆる発振を抑制する。
【0070】
測定回路37
一般に、測定回路37は、入力u1またはu2における信号の絶対的なまたは相対的なAC振幅を測定可能なあらゆる回路とすることができる。
【0071】
測定回路の有利な実施形態が図4に示されている。この回路は、2つの入力u1、u2における信号を処理するための2つの同一のチャネルを具備する。このため、以下、入力u1のための1つ目のチャネルについて説明する。
【0072】
第1の入力u1における信号は、増幅器A10に供給される。増幅器A10の出力は2つのダイオードD10、D11に印加される。各ダイオードは、それぞれ点P10、P11において整流された信号を生成する。整流された信号は、キャパシタC10またはC11、および抵抗R10またはR11に、それぞれ接続される。キャパシタC10、C11、抵抗R10、R11は、積分器またはローパスフィルタとして機能し、発振器周波数fよりはるかに小さい周波数のみを通過させる。これによって、整流された信号を平滑化する。上側のダイオードD10は、上側のフィルタC10、R10と直列接続されており、上側のフィルタC10、R10は第1の電圧(例えば+5V)に接続される。それらは、AC信号の最小値に依存する電圧を点P10において発生する。下側のダイオードD11は、下側のフィルタC11、R11と直列に接続され、下側のフィルタC11、R11は、第2の電圧(例えば0V)に接続される。第2の電圧は、第1の電圧より小さい。それらは、AC信号の最大値に依存する電圧を点P11において発生する。
【0073】
入力u1での電圧が
U(t)=U0+x・sin(2πft+φ) (3)
であり、したがって上側ダイオードD10を経た点P10での電圧がk・(U−x)+uであるとする。ここで、kは増幅器A10の増幅率であり、uは、所定の周波数および温度でのダイオードD10の順方向電圧である。下側ダイオードD11を経た点P11での電圧は、k・(U+x)−uである。
【0074】
点P10、P11での電圧は、機器増幅器A11に供給される。機器増幅器A11は、その出力において、その入力における電圧の差に等しい電圧または比例する電圧を生み出す。A/Dコンバータは、この電圧をデジタル値o1へと変換する。このデジタル値は、全ての装置の応答が線形であるとすると、u−k・xに比例する。
【0075】
一般に、幾つかの素子の応答が線形でなく、順方向電圧u等の回路の幾つかのパラメータが温度T、および(または)周波数ω、および(または)振幅xに依存するとすると、
o1=H(x,ω,T) (4)
のデジタル値o1を得る。ここで、応答関数Hは、2つの異なる温度T、T’について定性的に図5に示される。
【0076】
さらなる処理ステップにおいて、AC振幅xに比例する値が必要となる。よって、関数Hの逆関数を計算するために、マイクロプロセッサ38が用いられる。この目的のために、応答関数Hが、較正測定中に決定されることができ、その逆関数が、例えば複数の温度T、周波数f、AC振幅xについて、RAM/ROM42内の表に較正データとして格納されることができる。各測定にあたって、マイクロプロセッサ38は、デジタル値o1、(例えば第2の温度検出器T22を用いて)温度T、現在の周波数ω(マイクロプロセッサ38は、周波数制御電圧V1を用いてVCO31の動作を制御しているため、周波数ωを知得している)を得る。値o1、ω、Tが知得されたら、xの値が、RAM/ROM42内に格納されている表から補間により決定される。
【0077】
独立した温度検出器T22を用いる代わりに、温度が、一方または両方のダイオードD10、D11の温度依存する順方向電圧udから決定されても良い。この目的のために、VCO31はオフされ、この場合、デジタル値o1は、実質的に2・u(uは周波数ゼロにおける順方向電圧であり、温度Tに依存する)に等しい。
【0078】
2つのダイオードD10、D11を用いる代わりに、1つのダイオードおよびこれに対応する抵抗C11、R11でも良い。この場合、機器増幅器A11またはA21を取り除くか1つの単純な増幅器によって置換することができる。しかしながら、図1の回路は、2倍の高さの信号を生成する利点を有する。また、対称の構成は、より正確な結果をもたらす。
【0079】
未加工の信号のさらなる処理
続くステップのために、電極配列5、6が、ゼロでない第1のインピーダンスZ1(図2の実施形態では、Z1=R1であるが、Z1は誘導性、または容量性、または混合のインピーダンスでもあり得る)を介してVCO31の出力と接続されているとする。したがって電極配列5、6での電圧は、測定される検体の誘電特性に依存し、VCO31からの出力電圧VVCOにも依存する。入力u1でのAC電圧は、電極配列5、6での電圧から導かれるか、これに等しい。よって、入力u1でのAC電圧は、測定される検体の特性に依存し、VCO31からの出力電圧VVCOに線形に依存する。
【0080】
入力u2は、第2のインピーダンスZ2を介して、VCO31の出力に接続される。Z2は、(図2の実施形態でのように)ゼロであり得るし、または非ゼロであり得る。入力u2でのAC電圧は、少なくとも良好な近似では、測定される検体の誘電特性に依存せず、VCO31からの出力電圧VVCOに線形に依存する。
【0081】
WO 02/069791に記載されているように、入力u1、u2でのAC電圧間の相対的な振幅が、好ましくはさらなる処理のために用いられる。なぜなら、このような相対的な振幅は、VCO31の出力電圧VVCOの絶対的な振幅に依存しないからである。この相対的な振幅Aは、
A=x1/x2 (5)
である。ここで、x1は入力u1でのAC振幅であり、x2は入力u2でのAC振幅である。同様に、逆数値x2/x1が用いられてもよい。
【0082】
上記のように、マイクロプロセッサ38は、VCO1の周波数掃引からなる測定サイクルを開始することができる。この掃引は、共振回路35の予想される共振周波数f0を超える周波数fmaxで開始し、共振周波数f0を下回る周波数fminまで達する。この周波数掃引の間、上記の回路を用いて所定の一連の周波数において値x1、x2が繰り返し測定される。各測定iにおいて、少なくとも1つの測定値mが決定される。典型的には、種百回の測定が、各測定サイクルで実行される。
【0083】
測定値mは、一般的に、振幅x1、x2の一方または両方の関数
=g(x1,x2) (6)
である。ここで、x1、x2は、周波数fにおける測定iでの測定されたx1、x2の値である。好ましくは、上記した理由により、mは相対的な振幅Aのみ、すなわち振幅x1、x2の比から求められるべきである。すなわち、
=G(x1/x2) (7)
である。Gは、あらゆる適切な関数であり、恒等関数を含む。例えば、測定値mについての以下の定義が用いられることができる。
【0084】
=x1/x2−1 (8a)
または
=x1/x2 (8b)
でもよい。図2の共振回路35のインピーダンスが共振周波数において最小になるので、典型的な一連の測定値mは、図6に示すようになる。
【0085】
等式(1)、(2a)の入力値Sの一部は、測定値mから導かれることとなる。簡単な手法では、WO 02/069791に記載されているように、用いることができる入力値は周波数f0である。ここで、x1/x2は、最小であり、対応する最小値A0である。
【0086】
しかしながら、有利な実施形態では、以下の手順が用いられる。
【0087】
最初のステップでは、パラメータb1乃至bkを用いた理論的なまたは経験的な関数M(f,b0,・・・,bk)が点m(f)を介してフィッティングされる。適切なアルゴリズムが当業者によって知られており、たとえば、上記したPress et al.の標準的な教科書に記載されている。
【0088】
処理費用を減じ、および(または)測定の精度を上げるために、測定値mは、フィッティングに先立って、例えば異常値を除去したり数的に平滑化したりすることによって前処理される。この場合、実際のフィッティング処理は、未加工の値mおよびfを用いず、これらから導き出された値を用いる。
【0089】
フィッティング処理においてパラメータbを決定した後、入力値sのうちの少なくとも幾つかがパラメータbのうちの少なくとも幾つかから導き出される。例えば、s1は、bに設定されることができ、sはbに設定されることができる。または、b乃至bが用いられて共振周波数fおよび周波数fにおける関数Mの値を計算し、このようにして得られた2つの値がそれぞれ入力値s1、s2として用いられることができる。
【0090】
簡便な実施形態では、3次の多項式が関数Mについて用いられる。すなわち、
M(f,b0,・・・,b)=b+b・f+b・f+b・f (9)
が用いられる。多項式の程度RがR>3またはR=2も用いることができる。しかしながら、程度のより低い多項式がデータが対称性であり得ることを十分に記載せず、利用可能なデータが4つを超えるパラメータを決定するのに十分な情報を提供しないことが見出されている。
【0091】
当業者に知られ、上記のPress et al.の本中の「General Linear Least Squares」の章に記載されているように、等式(9)のような、パラメータbにおいて線形な関数をデータ郡へとフィッティングすることは、行列等式
(A・A)・b=A・m (10)
を解くことによって実行することができる。ここで、等式(9)について、Aは行列
ij=f (11)
であり、bはパラメータ{b・・・b}のベクトルであり、mは、値{m・・・m}のベクトルである。一般に、Mが、χを周波数fの任意の関数として
【数3】

【0092】
の形態を取るとき、行列Aijは、
ij=χ(f) (13)
によって与えられる(等式(11)、(13)は、全ての測定の測定誤差が等しいことを仮定している。そうでない場合は、これらの等式は、Press et al.の教科書の15.4章内の記載のように補正されなければならない。以下および請求の範囲では、等式(11)、(13)の簡単な形態が用いられるが、誤り補正された式は、これらと同等であるとみなされる)。
【0093】
分かるように、行列Aは、測定値mに依存せずに、周波数fのみに依存する。同じ周波数fが各掃引で用いられる場合、行列(A・A)だけでなく行列Aおよびその逆行列を予め計算し、前もって保存することができる。これにより、各周波数掃引について計算する必要性を未然に防ぎ、マイクロプロセッサ38から計算の負担を取り除くことができる。これにより、掃引の回数を増やし、また(または)電力消費を減ずることが可能となる。好ましくは、(A・A)−1・Aが予め計算され、保存されるが、予め計算された行列Aを記述する他のあらゆる適切なデータを保存することも可能である。
【0094】
電極配列
電極5、6の構成は、これらによって生成される電気AC場が測定される組織内に達するように選択される。有利な形態として、キャパシタの電極のうちの少なくとも1つが、抵抗および容量性負荷としてモデル化され得る体に取り付けられたキャパシタCが、主に容量性負荷となるように電気的に絶縁される。この容量性負荷の容量および損失は、VCO1の周波数における検体の電気特性(すなわち、応答)に依存する。
【0095】
本センサの電極5、6の配置は、WO 02/069791の図2、4を参照して記載されたものに対応することができる。WO 02/069791の記載は、本明細書に参照として組み込まれる。
【0096】
しかしながら、有利な実施形態では、図7に示す電極配列が用いられる。この図では、ハッチングを施された領域は、絶縁層5aによって覆われた領域に対応し、点を付された領域は、電極5、6により覆われた領域に対応する。
【0097】
図から分かるように、外側電極6は、ストリップ電極5に実質的に平行な2つの水平部6a、6bを有する長方形状である。部分6bは、部分6aよりも幅が広い。外側電極6の内部の縁6cは、実質的に長方形の中央領域50を囲む。ストリップ電極5は、中央領域50の実質的に中央に配置される。
【0098】
絶縁層5aは、中央領域50の実質的に全て、および外側電極6の幅広の水平部6bの一部を覆う。
【0099】
検体と接触する可能性のある、電極のあらゆる表面は、金、または生物学的に最良な互換性であるための他の貴金属であるべきである。図7の実施形態では、少なくとも外側電極6は、有利な形態としては、金の層によって覆われている。
【0100】
同じ理由により、少なくとも絶縁層5aによって覆われていないスルーコンタクト10は、ガラス、セラミック、プラスチック、貴金属の層または他の生物学上、不活性な金属で覆われているべきである。よって、図1の実施形態では、スルーコンタクト10は、ガラス51の粒によって覆われている。
【0101】
注記
上記の説明では、共振回路35の両端の電圧は、入力u1において測定された。しかしながら、電極配列のインピーダンスに依存する他の電圧または電流を測定することも可能であることに留意されなければならない。具体的には、共振回路35の両端の電圧の代わりに抵抗R1またはインダクタンスL1の両端の電圧効果を測定することが可能である。
【0102】
あらゆる場合において、処理回路37、38は、電極配列の、印加された電気信号への応答を測定する必要がある。すなわち、測定された値は、電極における検体の誘電特性に依存している必要がある。
【0103】
また、共振回路35は、インダクタンスに直列に配置されたキャパシタを有する代わりに、インダクタンスと並列なキャパシタによって実現されてもよい。
【0104】
最後に、図1、図7に示す電極配列は、様々な可能な実施形態のうちの1つに過ぎない。例えば、外側電極6は、本装置の電極面に達する装置100の(金属の)筐体1の一部によって置換されてもよい。この場合、金属の筐体1は、電極配列の一部を構成する。
【0105】
本発明の好ましい実施形態が本明細書において示されまた記載されたが、本発明はこれらに限定されず、請求の範囲の範疇内で他の様々な形態で実現され且つ実施され得ることに留意されなくてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、グルコースレベルを測定するための装置の断面図である。
【図2】図2は、本装置のブロック回路図である。
【図3】図3は、電圧制御発振器の有利な実施形態の回路図である。
【図4】図4は、測定回路の有利な実施形態の回路図である。
【図5】図5は、入力u1におけるAC振幅への、出力o1におけるデジタル値の依存性である。
【図6】典型的な一連の測定値m(点)とこれらの値を介してフィッティングされた曲線である。
【図7】図1の装置の底面の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている組織の特性、特に前記組織のグルコースレベルを測定するための装置であって、
前記組織に付するための電極配列(5、6)と、
前記電極配列(5、6)に印加される所定の周波数範囲内のAC電圧(VVCO)を生成するための電圧制御発振器(31)と、
前記組織の誘電特性に応じた前記電極配列(5、6)の応答を測定するための処理回路(37、38)と、
を具備し、前記電圧制御発振器(31)は、
増幅率に影響を与える増幅率制御信号(V2)のための入力を有する少なくとも1つの増幅器(T1、T2)と、
前記電圧制御発振器(31)の動作の周波数を決定する周波数制御信号(V1)のための入力を有する少なくとも1つの電圧制御キャパシタ(D1、D2)を具備する少なくとも1つのタンク回路(L1、D1、L2、D2)と、
を具備し、
前記装置は、前記少なくとも1つの電圧制御キャパシタ(D1、D2)の両端のDC電圧がゼロに近いとき前記増幅率を増加させるために前記増幅率制御信号(V2)を制御するよう適合されている、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電圧制御キャパシタ(D1、D2)が、バラクターダイオードである、請求項1の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの増幅器(T1、T2)が2つのゲートを有する少なくとも1つのデュアルゲートFETであって、前記デュアルゲートFETのゲートの1つが前記増幅率制御信号(V2)と接続されている、先行する請求項のいずれかの装置。
【請求項4】
前記電圧制御発振器(31)が、それぞれが増幅出力を有する2つの増幅器(T1、T2)と、180°の位相シフトで動作する2つのタンク回路(L1、D1、L2、D2)と、を具備し、前記電圧制御発振器(31)の出力電圧が前記増幅出力での電圧降下から導かれる、先行する請求項のいずれかの装置。
【請求項5】
変圧器をさらに具備し、前記変圧器の1つの巻線が前記増幅出力の間に配置されている、請求項4の装置。
【請求項6】
前記周波数制御電圧および前記増幅率制御電圧の一方または両方におけるAC要素を抑制するための少なくとも1つのフィルタ(C3乃至C6)をさらに具備する、先行する請求項のいずれかの装置。
【請求項7】
前記電圧制御発振器(31)の出力電圧を所望の値の範囲に維持するように前記制御信号(V2)を制御するためのフィードバックループを具備する、先行する請求項のいずれかの装置。
【請求項8】
前記装置が連続する測定サイクルiを実行するよう適合されており、前記フィードバックループが少なくとも幾つかの前記測定サイクルiにおいて前記電圧制御発振器(31)の前記出力電圧を最適値(u2opt)と比較し、且つ前記比較の結果に応じて次の測定サイクルi+1の前記制御信号(V2)を補正するよう構成されている、請求項7の装置。
【請求項9】
生きている組織の特性、特に前記組織のグルコースレベルを測定するための装置であって、
前記組織に付するための電極配列(5、6)と、
前記電極配列(5、6)に印加される、所定の周波数範囲内で選択可能な周波数のAC電圧(VVCO)を生成するための信号源(31)と、
前記組織の誘電特性に応じた前記電極配列(5、6)の応答を測定するための処理回路(37、38)と、
を具備し、前記処理回路(37、38)は、
入力(u1、u2)からの入力電圧を整流し、整流信号を生成するための少なくとも1つのダイオード(D10、D11、D20、D21)と、
前記整流信号を平滑化するためのフィルタ(C10、C11、C20、C21)と、
前記整流信号または前記整流信号から得られる信号を、前記入力電圧のAC振幅(x)に比例はしないが依存するデジタル値(o1、o2)に変換するためのADコンバータ(A/D)と、
前記デジタル値(o1、o2)を前記入力電圧のAC振幅(x)に実質的に比例する信号値へと変換するプロセッサ(38)と、
を具備する、装置。
【請求項10】
前記プロセッサ(38)が、較正データを用いて前記デジタル値(o1、o2)を前記信号値へと変換するよう適合されている、請求項9の装置。
【請求項11】
前記較正データが、前記デジタル値(o1、o2)の異なる複数の周波数(f)における前記信号値への変換を記述し、前記プロセッサ(38)が、前記信号源の現在の周波数に属性付けられた較正データを用いるよう適合されている、請求項9または10の装置。
【請求項12】
前記較正データが、前記デジタル値(o1、o2)の異なる複数の温度(T)における前記信号値への変換を記述し、前記プロセッサ(38)が、前記信号源の現在の温度に属性付けられた較正データを用いるよう適合されている、請求項9乃至11のいずれかの装置。
【請求項13】
前記入力電圧の最小値に依存する第1の電圧を生成するための第1のダイオード(D10、D20)および第1のフィルタ(C10、R10、C20、R20)、および前記入力電圧の最大値に依存する第2の電圧を生成するための第2のダイオード(D11、D21)および第2のフィルタ(C11、R11、C21、R21)と、
前記第1、第2の電圧の間の差を求めるための手段(A11、A21)と、
を具備する、請求項9乃至12のいずれかの装置。
【請求項14】
前記第1のダイオードが前記第1のフィルタと直列接続されており、前記第1のフィルタが第1の固定電圧と接続されており、前記第2のダイオードが前記第2のフィルタと直列接続されており、前記第2のフィルタが第2の固定電圧と接続されており、前記第1の固定電圧が前記第2の固定電圧より高い、請求項13の装置。
【請求項15】
前記処理回路(37)が、2つの入力(u1、u2)を具備し、第1の入力(u1)が前記電極配列(5、6)と接続されており、第2の入力(u2)が前記AC電圧(VAC)と接続されている、請求項9乃至12のいずれかの装置。
【請求項16】
特に先行する請求項のいずれかにおいて、生きている組織の特性、特に前記組織のグルコースレベルを、測定するための装置であって、
前記組織に付するための電極配列(5、6)と、
前記電極配列(5、6)に印加される、所定の周波数範囲内での一連の周波数(f)でのAC電圧(VVCO)を生成するための信号源(31)と、
処理回路(37、38)と、
を具備し、
前記処理回路は、
それぞれが1つの周波数における前記組織の誘電特性に依存する、一連の周波数(f)での一連の測定値(m)を測定するための測定手段と、
パラメータb乃至bを有する関数M(f,b,・・・,b)をそれぞれの所定の周波数(f)での測定値(m)へと、またはそれぞれの所定の周波数(f)での測定値から得られる値に対してフィッティングすることにより、前記パラメータb乃至bを決定するためのフィッティング手段と、
前記特性を決定するために前記パラメータb乃至bの少なくとも一部を用いるための手段と、
を具備する、装置。
【請求項17】
前記処理回路(37、38)が、前記特性および前記AC電圧に依存する入力値のための第1の入力(u1)および前記AC電圧に依存するが前記特性から実質的に独立の入力値のための第2の入力(u2)を有する測定回路(37)を具備し、前記測定値(m)が前記第1、第2の入力値間の比から導き出される、請求項16の装置。
【請求項18】
前記関数M(f,b,・・・,b)が、
M(f,b,・・・,b)=b+b・f+・・・+b・f
の形態であり、特にR=3である、請求項16または17の装置。
【請求項19】
前記関数M(f,b,・・・,b)が、
【数1】

の形態であり、前記フィッティング手段が、複数の一連の測定値をフィッティングするために、予め計算された行列Aおよび前記予め計算された行列Aから得られたデータの一方または両方を格納し、前記行列A=Aijが、
ij=χ(f
によって定義される、請求項16乃至18のいずれかの装置。
【請求項20】
前記フィッティング手段が、行列(A・A)−1・Aを格納するよう適合されている、請求項19の装置。
【請求項21】
特に先行する請求項のいずれかにおいて、生きている組織の特性、特に前記組織のグルコースレベルを測定するための装置であって、
前記組織に付するための電極配列(5、6)と、
前記電極配列(5、6)に印加される、所定の周波数範囲内のAC電圧(VVCO)を生成するための信号源(31)と、
前記組織の誘電特性に応じた前記電極配列(5、6)の応答を測定し、前記応答を前記特性へと変換するための処理回路(37、38)と、
を具備し、前記電極配列は、
前記体に対して配置されるストリップ電極(5)と、
前記体に対して配置され、実質的に平行で且つ前記ストリップ電極の反対側で延びる2つの水平部分(6a、6b)を具備する、外側電極(6)と、
を具備し、前記部分の第1(6b)は、前記部分の第2(6a)より幅が広い、装置。
【請求項22】
前記ストリップ電極(5)および前記外側電極(6)の前記第1の部分(6b)の少なくとも一部を覆う絶縁層(5a)をさらに具備する。
【請求項23】
前記外側電極(6)が環状である、請求項21または22の装置。
【請求項24】
特に先行する請求項のいずれかにおいて、生きている組織の特性、特に前記組織のグルコースレベルを測定するための装置であって、
前記組織に付するための電極配列(5、6)と、
前記電極配列(5、6)に印加される、所定の周波数範囲内のAC電圧(VVCO)を生成するための信号源(31)と、
前記組織の誘電特性に応じた前記電極配列(5、6)の応答を測定し、前記応答を前記特性へと変換するための処理回路(37、38)と、
を具備し、前記電極配列は、
電気的に絶縁性の基板(4)の外側に配置された少なくとも1つの電極(5、6)と、
前記基板(4)を貫き、前記少なくとも1つの電極(5、6)と接続される少なくとも1つのスルーコンタクト(10、11)と、
を具備し、前記スルーコンタクトのそれぞれの外側は生理的に不活性の物質によって覆われている、装置。
【請求項25】
前記スルーコンタクトのそれぞれの外側が、ガラス、セラミック、プラスチック、貴金属からなる群から選択された材料で覆われる、請求項24の装置。
【請求項26】
前記電極配列が、前記体と直接に接触させられる少なくとも1つの第1の電極を具備し、前記第1の電極の表面が貴金属から構成される、請求項24または25の装置。
【請求項27】
前記第1の電極の前記表面が金から構成される、請求項26の装置。
【請求項28】
前記電極配列が共振回路の一部であって、特に前記共振回路の共振周波数が前記所定の周波数範囲内に収まっている、先行する請求項のいずれかの装置。
【請求項29】
前記電極配列が、キャパシタ(C)を構成し、インダクタンス(L)と直列または並列に配置され、前記キャパシタ(C)およびインダクタンス(L)が、前記共振回路を構成する、請求項28の装置。
【請求項30】
前記電極配列(5、6)が、平坦な基板(4)上に配置されている、先行する請求項のいずれかの装置。
【請求項31】
生きている組織の特性、特に前記組織のグルコースレベルを測定するための方法であって、
前記組織に電極配列(5、6)を付する工程と、
所定の周波数範囲内の一連の周波数(f)のAC電圧(VVCO)を生成し、前記AC電圧を前記電極配列(5、6)に印加する工程と、
それぞれが1つの周波数における前記組織の誘電特性に依存する、前記周波数(f)での一連の測定値(m)を測定する工程と、
パラメータb乃至bを有する関数M(f,b,・・・,b)をそれぞれの周波数(f)での前記測定値(m)に対して、またはそれぞれの周波数(f)での前記測定値から得られた値を介してフィッティングすることにより、前記パラメータb乃至bを求める工程と、
前記パラメータb乃至bの少なくとも一部を用いて前記特性を決定する工程と、
を具備する、方法。
【請求項32】
前記特性および前記AC電圧に依存する第1の入力値(x)を測定する工程と、
前記AC電圧に依存するが前記特性から実質的に独立した第2の入力値(x)を測定する工程と、
前記第1、第2入力値間の比から前記測定値(m)を導く工程と、
を具備する請求項31の方法。
【請求項33】
前記関数M(f,b,・・・,b)が、
M(f,b,・・・,b)=b+b・f+・・・+b・f
の形態であり、特にR=3である、請求項31または32の方法。
【請求項34】
前記関数M(f,b,・・・,b)が、
【数2】

の形態であり、前記方法が、
予め計算された行列Aおよび前記予め計算された行列Aから得られたデータの一方または両方を格納する工程と、
複数の一連の測定値をフィッティングするために、行列Aおよび前記予め計算された行列Aから得られたデータの一方または両方を用いる工程と、
を具備し、行列A=Aijが、Aij=χ(f)によって定義される、請求項31乃至33のいずれかの方法。
【請求項35】
前記行列(A・A)−1・Aを格納する工程を具備する、請求項34の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−514474(P2007−514474A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541776(P2006−541776)
【出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000077
【国際公開番号】WO2005/053523
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506176799)ソリアニス・ホールディング・アーゲー (8)
【氏名又は名称原語表記】Solianis Holding AG
【住所又は居所原語表記】c/o Ernst & Young AG Bundesplatz 1  CH−6301 Zug Switzerland
【Fターム(参考)】