説明

生ごみの処理システム

【課題】 生ごみを、系外に悪臭を排出せずかつ省エネルギーで乾燥処理するシステムを提供する。
【解決手段】 前処理工程1で微細化、脱水された生ごみ2は脱水生ごみGa1として生ごみ乾燥処理システムに投入される。即ち、乾燥機6に投入され、この乾燥機6に供給される100℃以上の温風HAにより乾燥され、乾燥された生ごみは乾燥生ごみGa2として排出され、ガス化炉8において揮発分が改質装置9を経て燃料ガスGとして排出され、この燃料ガスGによりガスエンジン10を駆動させ、発電機11により発電する。一方乾燥機6において飽和状態まで水分を吸収した排気LA1は熱交換器7、凝縮器15を経て気液分離器16において気液分離され、水分が除去された乾燥空気LA3はガスエンジン10からの高温排気WGにより加熱され前記温風HAとして乾燥機6に供給されることにより、乾燥用の空気は閉回路を循環流動することにより悪臭を系外に漏らさない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生ごみの処理システムに係り、特に高いエネルギー効率で生ごみを乾燥処理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品残渣を中心とする生ごみは環境汚染防止、衛生上の観点等から投棄、埋め立て等の安価な廃棄処分は事実上困難である。また含水量の多い生ごみを直接焼却する処分方法の場合には多量の燃料を必要とし、かつ低温燃焼による公害物質の発生等問題が多い。
このため生ごみの処理に当たっては熱回収、堆肥化等何らかの形で生ごみを有効利用(リサイクル)する処理方法が多く実施されようになってきている。
【0003】
生ごみのリサイクルとしては堆肥化・飼料化処理、乾燥処理、ガス化処理およびこれらの処理を組み合わせたシステムが提案されている。
ここで、先ず堆肥化・飼料化にあっては、生ごみの含水率が80%以上であるのに対して、堆肥化の前提としてこの含水率を60%程度に、また飼料化させるには含水量を20%以下にする必要がある。このため熱エネルギーを用いた乾燥、水分調整剤の添加等のために少なからぬ経費が必要となる。また、生ごみ自体は主として都市部で発生するのに対して、リサイクル品としての堆肥や飼料の消費は郊外の農家で行なわれるため、輸送コストも発生し、生ごみリサイクルシステムとしては不経済なものとならざるを得ない。
【0004】
何れにしても上記リサイクルシステムにおいては生ごみの含水量を、所定のリサイクルシステムに対応した値に低減する乾燥処理の実施が前提となる。
生ごみをリサイクルする場合には、その有用性を保持する必要上生ごみの有する成分を保持したまま水分を除去する必要がある。例えば揮発成分(可燃性ガス)が飛散してしまう炭化や、飼料としての栄養分が分解されてしまうバイオ処理による乾燥は不適格である。上記の点を考慮すれば生ごみリサイクルに適した乾燥方法として120℃以下の低温乾燥、或いは有機成分を分解してしまわない短時間のバイオ処理が考えられる。
【0005】
低温乾燥としては真空乾燥や前記短時間のバイオ乾燥が考えらる。このうち真空乾燥は装置自体の価格、装置運転のランニングコストが高く不経済である。
またバイオ乾燥は菌の発熱作用を利用するため加熱用熱源の費用は大幅に低減できるが、菌が有効に働く環境を設定するため一定の含水率を維持する必要があって装置が大型化しかつ運転経費が高くなる。
【0006】
生ごみの処理に関しては上記方法の欠点、利点を踏まえて例えば以下のような発明が提案されている。
【特許文献1】特開2003−154331
【特許文献2】特開2005−211719
【0007】
上記特許文献記載の発明によれば生ごみの乾燥を省エネ化できたり、乾燥の効率を高めることができる等、一定の効果が期待できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献含めて各システムにはそれぞれの長所があるが、共通する短所として処理過程で発生する悪臭の問題がある。
生ごみの乾燥過程で排出される排気は悪臭を帯びるため、排気を加熱して熱分解したり或いは脱臭剤等を用いて脱臭する等の脱臭対策が欠かせず、この脱臭対策が生ごみの乾燥システムの経済性を低下させる大きな原因となっている。また上記のような脱臭対策を行なっても臭気そのものを完全に除去できるものではなく、排気中の臭い成分が法定の値以下とすることを以て脱臭工程を終了しているに過ぎない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑み構成されたものであって、生ごみの乾燥を加熱空気等の加熱気体により行なうことを前提とし、かつこの加熱気体の流動経路を閉経路とすることによりこの加熱気体が系内を循環流動して、系外に排出することがないように構成しする。これにより基本的に脱臭手段を廃止して乾燥システムを小型簡素化する。また気体の流動経路にエンジン等から排出される廃熱と熱交換する手段、気液分離手段を配置して加熱気体の湿度を調整する。
【発明の効果】
【0010】
生ごみを乾燥する熱源として加熱空気等の加熱気体を用い、かつこの加熱気体は閉回路を循環流動して、基本的に系外に排出することがないので、臭気を熱分解したり吸着する脱臭手段を設ける必要がなく、本システムを構成する装置を小型かつ安価に提供することができる。
【0011】
また乾燥した生ごみをガス化し、このガスを燃料とするエンジンにより発電を行ない、これによりこの電気を用いてシステムの制御を行なうことが可能であり、この点からも省エネルギー化を図ることができる。
【実施例1】
【0012】
以下本発明の実施例を図面を参考に説明する。
図1において1は本システムに至る前の生ごみの前処理工程を示し、本システムはこの前処理工程1に後続して設置される。
【0013】
まず前処理工程1の概略を説明し、続いて本発明に係るシステムについて説明する。
生ごみ2は微細化機構3により微細化されかつ脱水機(シリンダプレス機等)4により脱水される。例えば微細化機構3を、回転する刃により生ごみを剪断微細化する装置とし、かつ脱水機4をシリンダプレス機とした場合、これら微細化機構3と脱水機4が必要とする動力は1000kg/時間で10kw(8600kcal相当)程度である。
【0014】
例えば生ごみ2の含水率が80%であり、かつこの含水率を微細化機構3と脱水機4を経由して70%に低下させたとすると、1000kgの生ごみ2の脱水量は330kgとなる。この場合生ごみ2を全く脱水せずに加熱により乾燥させると、乾燥に必要な熱量はほぼ620kcal/kgであるから、同量の水分330kgを脱水するのに必要な熱量は以下の式のとおりとなる。
330×620=204,600kcal
同量の水分の脱水を微細化機構3と脱水機4で行なう場合には前述のとおり8600kcalであるからその熱量の差は196,000kcalとなり、前処理工程1を設置することにより生ごみの乾燥において大幅な省エネを達成することができる。
【0015】
次に、前処理工程1において脱水機4に後続して排水処理装置5が設置されている。
この前処理工程1において脱水された排水は高濃度の汚染物質を含んでいるため、排水処理装置5において排水処理を行なう。排水の処理方法としては生物膜を用いた微生物による分解処理が安定的かつ低価格で実現可能であり、後述する生ごみの乾燥処理工程を含めて全処理工程のコストを低く押さえることができる。
【0016】
前処理工程1において水分を低減した生ごみ(以下「脱水生ごみ」とする)Ga1は、キルン式の乾燥機6に投入され乾燥される。なお、この乾燥のための熱源は当該乾燥機6に供給される温風HAであるが、説明の都合上温風HAの生成工程は後述し、先ず温風HAにより脱水生ごみGa1が乾燥される状態から説明する。
【0017】
投入口6aを経て乾燥機6に投入された乾燥生ごみGa1は、この乾燥機6に供給される温風HAにより乾燥される。具体的には当該乾燥機6に供給された温風HAは乾燥機6内の脱水生ごみGa1から蒸発する蒸気を、飽和水蒸気量まで吸収すると共に温度低下し、排気LA1として乾燥機6から排出され、熱交換器7に至る。この排気LA1が後述するように閉回路を巡って再度温風HAとして乾燥機6に供給されることにより、この乾燥用の空気は閉回路を循環流動する構成となっている。また温風HAは120℃或いはそれ以下の温度の空気とする。
【0018】
上記閉回路で空気を加熱、冷却するとにより以下のように水分を除去する。
例えば加熱空気HAの温度を100℃とするとその飽和蒸気量は564.1g/m3であり、かつ30℃であればその飽和蒸気量は30.4g/m3であるから、気水分離しかつ100℃に加熱した温風HAを乾燥機6に供給し、かつ乾燥機6から排出された排気LA1を30℃に冷却すれば約534g/m3の水分を除去することができ、空気の加熱・冷却を順次行なうことにより閉回路を巡回する空気により生ごみの乾燥が可能となる。
【0019】
乾燥され乾燥機6の排出口6aから排出された乾燥生ごみGa2はガス化炉8において揮発成分が燃料ガスとして回収される。即ち、本システムでは乾燥機6おいては生ごみは揮発成分を含有する状態で前述のように比較的低温で乾燥され、かつ後段のガス化炉8でこの揮発成分を燃料用のガスとして回収する構成となっている。
【0020】
即ち、上記の方式によるガスの回収は乾燥生ごみを加熱して揮発成分を回収するものであるため、装置を小型かつ単純化することができる。
例えば微生物を用いたバイオガス化方式に比較すると装置を非常に小型に形成でき、かつ装置の運転に微妙な制御を必要としない。また炭化方式によるガス化は揮発成分を熱分解により放出させ、かつこのガスの燃焼を熱分解の熱源とするものであるが、熱分解により最終的に残る残渣は炭素分のみとなる。然し、生ごみ由来の炭素分は組成が粗く粉状となってしまうため一般的な燃料としては利用できない。
【0021】
次に、ガス化炉8から排出された生成ガスG´は改質装置9において燃料に適した改質ガスGとなってジーゼル方式等のガスエンジン10に供給され、ガスエンジン10は改質ガスGを燃料として運転され、発電機11を駆動して発電を行なう。
なお、ガス化炉8において揮発分が抽出された残渣Ga3は無臭でかつガス抽出過程の高温により事実上滅菌されているため、以後の取り扱いは容易かつ安全である。
【0022】
ガスエンジン10から排出される高温の排気ガスWGは温風発生機12の一部を成すヒータ13に至り、後述する気液分離された空気を加熱した後排ガス処理手段14を経て系外に排出される。
【0023】
一方乾燥機6の水分を吸収してほぼ飽和蒸気量に達した排気LA1は熱交換器7において後述する気液分離された空気(以下「乾燥空気」とする)LA3と熱交換する。熱交換器7を出た空気LA2は凝縮器15において冷却され、これにより飽和蒸気量が低下して含有する水分が凝結する。気液分離装置16において空気LAの水分が除去され乾燥空気LA3となり、この乾燥空気LA3は前述のとおり熱交換器7を経て温風発生機12に至り、前記高温の排気ガスWGと熱交換することにより例えば120℃程度の高温かつ乾燥した温風HAとなって再度乾燥機6に供給される。
【0024】
上述のように生ごみを乾燥するための熱源としての温風HAを含めた空気は閉鎖された回路を循環流動し、系外に排出されることはない。
ここで、悪臭等の臭気成分は空気を媒体として拡散するため、悪臭を含む空気が外部に流出しなければシステム外部に悪臭が漏出するのをほぼ完全に防止することができる。
また循環流動する気体を空気に代えて窒素ガスなどの不活性ガスとすれば、気体の流動経路で万一異常な昇温があっも発火等の心配がない。窒素ガスは空気と相違して購入する必要があるが、一旦経路内に供給すれば事実上補給を必要としないので経済的な負担は小さいものである。
【実施例2】
【0025】
図2は第2の実施例を示す。
気液分離器16には水位センサ17が配置され、このセンサ17から出力された水位データは制御装置18に出力される。19は温風発生機12の温風排出部近傍に配置された温度センサであって、この温度センサ19により計測された空気温度データも前記制御装置18に出力される。
【0026】
上記の構成において、制御装置18は、水位センサ17から、気液分離器16内の水位が所定値以上になった信号を受けた場合には排水管路に設けられた弁20を開として、前記排気LA2から気液分離された水分Wを排出する。排出された水分Wは前処理工程1の排水処理装置5に至り、この装置で無害化処理される。
【0027】
一方温度センサ19は温風発生機12から排出される温風HAの温度を常時監視し、計測温度が予め設定された温度以下となった場合には、発電機11と接続する電源回路に配置されたスイッチSWを閉として電力Eを補助熱源としての電気ヒータ21に供給し、温風HAの温度を設定値まで昇温させる。なお、これらの制御は比較的単純なものであるため、制御装置18としては通常のパーソナルコンピュータで充分である。
【0028】
以上に説明したシステムは微生物バイオ方式、焼却方式等に比較してシステムを構成する要素の熱的な負荷が小さく、かつ微生物バイオ方式のような大型の施設を必要としないので、システム全体を運搬可能な一つの装置として構成することが可能となり、例えば冷凍食品、レトルト食品等の食品を製造する工場等、生ごみを排出する事業所毎に設置することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
上述のようにシステムを一つの装置としてコンパクトに形成することが可能である反面、各要素を大容量、大型化してプラントとして構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施例を示す生ごみ乾燥システムの系統図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す生ごみ乾燥システムの系統図である。
【符号の説明】
【0031】
1 前処理工程
2 生ごみ
3 微細化機構
4 脱水装置
5 排水処理装置
6 乾燥機
7 熱交換器
8 ガス化炉
9 ガス改質手段
10 ガスエンジン
11 発電機
12 温風発生機
13 (エンジン廃熱)ヒータ
14 排ガス処理手段
15 凝縮器
16 気液分離器
17 水位センサ
18 制御装置
19 温度センサ
20 弁
21 電気ヒータ
E 電気(電力)
G 改質済み燃料ガス
G´ 燃料ガス
Ga1 脱水生ごみ
Ga2 乾燥生ごみ
Ga3 (乾燥生ごみの)炭素分
HA 温風
LA1、LA2 排気
LA3 乾燥空気
WG (ガスエンジンの)排気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ごみを乾燥処理するシステムであって、前工程において水分を低減した脱水生ごみを乾燥する乾燥機に対して熱源及び水分搬出手段として温風が供給され、温風としての気体は、閉回路を構成する経路を循環流動するよう構成され、当該循環経路には乾燥機から排出された気体を冷却して気体中の水分を除去する気液分離器と、この気液分離器から排出された乾燥気体を加熱して前記温風とする手段が配置され、当該気体が閉回路を循環流動することにより脱水生ごみを乾燥処理することを特徴とする生ごみの処理システム。
【請求項2】
乾燥機に後続してガス化炉が配置され、ガス化炉にはこのガス化炉から排出されたガスを燃料とするガスエンジンが接続し、ガスエンジンから排出された排ガスは気体加熱手段である温風発生機において前記循環流動する気体を加熱するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の生ごみの処理システム。
【請求項3】
前記ガスエンジンには発電機が接続していることを特徴とする請求項2記載の生ごみの処理システム。
【請求項4】
温風発生機には補助加熱手段として電気ヒータが設けられ、かつ当該電気ヒータはガスエンジンに接続した発電機が発電した電力が供給されるよう構成したことを特徴とする請求項3記載の生ごみの処理システム。
【請求項5】
温風発生機には温度センサが配置され、当該温度センサにより検知された温風の温度に対応して、当該温風の温度が予め設定された温度となるよう電気ヒータに対する電源の回路を適宜開閉するよう構成したことを特徴する請求項4記載の生ごみの処理システム。
【請求項6】
気液分離器には水位センサが配置され、かつ当該気液分離器には排水管路が接続し、かつこの排水管路は前処理工程の一部を成す排水処理装置に接続し、当該排水管路には弁が設けられ、水位センサにより検知された水位信号に対応して弁の開閉を行なうことにより気液分離器内の水位が一定範囲内となるよう構成したことを特徴すとる請求項1記載の生ごみの処理システム。
【請求項7】
前記制御を制御装置により自動制御するよう構成したことを特徴とする請求項5又は6記載の生ごみの処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−20060(P2011−20060A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167747(P2009−167747)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(594171931)
【出願人】(509202156)ロハスサポート株式会社 (2)
【Fターム(参考)】