説明

生ゴミ処理方法及び生ゴミ処理装置

【課題】生ゴミの乾燥が過度となって発火、燃焼したり、逆に、乾燥が不充分な状態で停止したりしないようにする。
【解決手段】
ハウジング12内の生ゴミにマグネトロン24からマイクロ波を照射して乾燥処理をする生ゴミ処理方法において、ハウジング内の温度あるいは湿度のいずれか一方または両方をパラメータにしてマグネトロン停止点を予め設定し、ハウジング内の温度あるいは湿度が上記マグネトロン停止点に達したときにマグネトロン24を停止させるとともに、その後は、ハウジング12内に供給した温風で生ゴミを乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生ゴミをマイクロ波にて加熱乾燥させる生ゴミ処理方法及び生ゴミ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミをマイクロ波にて加熱乾燥させる生ゴミ処理装置として、図1に示したものは、例えば特許文献1で公知である。
この生ゴミ処理装置は、ハウジング1内に設けられた箱形のマイクロ波遮蔽室2の上面開口を、ハウジング1に回動自在に設けた電磁遮蔽上蓋3にて開閉できるようになっている。マイクロ波遮蔽室2は、マイクロ波を反射するステンレス等の金属板4にて上面以外の面を囲繞されている。生ゴミはマイクロ波を透過する有底の処理容器5に収容する。この処理容器5は、マイクロ波遮蔽室2内に着脱自在にセットされ、収容した生ゴミを撹拌するため回転される。処理容器5内の底部には、生ゴミを切断するため、処理容器5外から回転される回転カッターが装着されている。
【0003】
マイクロ波遮蔽室2内には、ハウジング1内に設置されたマグネトロンからのマイクロ波がマイクロ波遮蔽室2の側壁外部から照射される。
また、ハウジング1内に設置された吸気ファンにて機外から吸気してマグネトロンの冷却に供された風が、電磁遮蔽上蓋3の内面(下面)に設けられた金属製の送風ガイド6にて案内されて処理容器5内へ送風される。さらに、マイクロ波遮蔽室2の側壁上部には排気口7が設けられ、ハウジング1内の下部に設置された排気ファンにて処理容器5内を吸気することにより、ハウジング1外へ強制排気できるようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、上記のような構造の生ゴミ処理装置において、処理容器からの排気の温度を温度センサで検出し、その検出温度を監視して、検出温度が直線的な緩やかな上昇推移から急激な上昇になったとき、マグネトロンによる乾燥処理を自動終了させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3939585号公報
【特許文献2】特開2004−66053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにした従来の処理方法および処理装置のいずれにおいても、マグネトロンのみによって、処理容器内の生ゴミを乾燥させるようにしている。
しかし、マグネトロンを用いた処理方法および処理装置では、生ゴミ内の水分が少なくなったとき、その生ゴミの温度が急上昇してしまうが、この急上昇を放置しておくと生ゴミが燃焼してしまう。
しかし、生ゴミの完全乾燥を目的としたときには、それが燃焼する直前でマグネトロンを停止させるのが理想であるが、燃焼直前でマグネトロンを停止するのは危険性が高いので、従来では、生ゴミの温度が急上昇し始めた時点でマグネトロンを停止するようにしていた。
【0007】
このように生ゴミの温度が急上昇し始めた時点でマグネトロンを停止する構成にしたとしても、温度上昇が急上昇し始めると短時間に燃焼温度まで達してしまうので、停止ポイントでマグネトロンを確実に停止させる制御は極めて困難であり、その制御を誤ると、生ゴミが燃焼してしまう。
【0008】
一方、安全性を考慮して、温度が急上昇する前でマグネトロンを停止させることも考えられるが、このときには生ゴミが完全乾燥できない。この点は図2に示した実験結果からも明らかである。
図2は、処理装置のハウジング内の温度と湿度との経時変化を表わしたものである。但し、実線が温度、一点鎖線が湿度を表わしている。
この図2に示すように、ハウジング内の温度が急上昇する温度の変化点はP1であるが、この温度変化点P1に対応する湿度はM3である。このように温度の変化点P1では、ハウジング内の湿度がゼロになっていないので、生ゴミも完全に乾燥していないことが容易に推測できる。
【0009】
このように温度の急上昇ポイントである温度変化点P1においても生ゴミが完全に乾燥しているわけではないので、安全性を考慮して温度変化点P1の前でマグネトロンを停止してしまうと、生ゴミの完全乾燥はほとんど不可能である。
このようにマグネトロンは乾燥能力が極めて高いが、安全制御が難しく、従来の処理方法もしくは処理装置では、生ゴミの完全乾燥と安全性とを同時に満足させることはできなかった。
【0010】
なお、上記図2は、米飯、野菜,卵殻、コーヒー滓、貝類が混在した残飯4.7(kg)を乾燥させたときの実験データであって、このときの残留率、すなわち、処理後重量÷処理前重量が23%であった。
【0011】
この発明の目的は、生ゴミの完全乾燥と安全性とを同時に満足させた処理方法および処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明の生ゴミ処理方法は、ハウジング内の生ゴミにマグネトロンからマイクロ波を照射して乾燥処理をする生ゴミ処理方法において、マグネトロン停止点をハウジング内の温度あるいは湿度のいずれか一方または両方をパラメータにして予め設定し、ハウジング内の温度あるいは湿度が上記停止点に達したときにマグネトロンを停止させるとともに、その後は、ハウジング内に温風を供給し、生ゴミを乾燥させることを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、上記マグネトロン停止点を、生ゴミにマイクロ波の照射を開始した後に上記ハウジング内の湿度が上昇傾向から急激に減少し始める湿度変化点から、上記ハウジング内の温度勾配が緩慢な上昇から急上昇に変化する温度変化点までの間の温度または湿度を基準に設定したことを特徴とする。
【0014】
第3の発明の生ゴミ処理装置は、マグネトロンによってマイクロ波を照射してハウジング内の生ゴミを乾燥させる生ゴミ処理装置において、乾燥時に生ゴミから排出される水蒸気を排出する排気手段と、ハウジング内に温風を供給するための温風供給手段と、ハウジング内の温度を検出する温度センサあるいはハウジング内の湿度を検出する湿度センサの少なくともいずれか一方のセンサと、これら温度センサあるいは湿度センサのいずれか一方あるいは両方に接続し、上記マグネトロン及び温風供給手段を制御する制御回路とを備え、この制御回路は、上記温度センサからの検出温度あるいは湿度センサからの検出湿度が、温度あるいは湿度をパラメータとして予め設定されたマグネトロン停止点に達したとき、マグネトロンを停止させ、その後、温風供給手段を制御して温風を供給する機能を有することを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、上記マグネトロン停止点が、生ゴミにマイクロ波の照射を開始した後、上記ハウジング内の湿度が上昇傾向から急激に減少し始める湿度変化点から、上記ハウジング内の温度勾配が緩慢な上昇から急上昇に変化する温度変化点までの間の温度あるいは湿度を基準に設定したことを特徴とする。
第5の発明は、上記温風供給手段がヒーターを備え、上記制御回路は、マグネトロンを停止した後、上記ヒーターを作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1〜第5の発明では、予め設定したマグネトロン停止点で、マグネトロンを停止して、温風による乾燥処理に切り替えるようにしている。
マイクロ波による誘導加熱方式では、マイクロ波は水分に吸収されて水分が加熱され、水蒸気となって次第に蒸発するため、図2に示すように、生ゴミの水分が高いうちは、温度上昇は緩慢な勾配(温度がT1となる時点H1まで)である。しかし、水分が低下すると、水蒸気の発生が少なくなり、その分、空気が暖められて温度勾配が急になり、空気の比熱は水の1/500程度であるため、水分があるところまで低下すると、温度上昇がある時点で急勾配に転ずる。この時点を温度変化点P1と称すると、そのままマイクロ波照射による乾燥を続ければ、温度上昇の急勾配はさらに続き、発火、燃焼に至る。
【0017】
そこで、この発明では、マイクロ波照射による乾燥処理は、乾燥した生ゴミが発火、燃焼に至る前のマグネトロン停止点で止め、それ以後は、温風による乾燥処理に移行するもので、生ゴミ中の水分が多い間は、マイクロ波照射によってある程度まで急速乾燥をさせ、マグネトロンの停止後は、温風による緩やかな乾燥処理を続ける。
従って、マイクロ波照射による乾燥が過度になって生ゴミが、焦げ付いたり、発火したりすることを防止できるだけでなく、マグネトロン停止後も温風乾燥によって生ゴミを十分に乾燥させることができる。つまり、高速乾燥が可能なマイクロ波を利用して、完全乾燥と安全性とを両立できる。
【0018】
第2及び第4の発明では、ハウジング内の湿度が急降下し始めてから温度が急上昇するまでの間にマグネトロン停止点を設定することによって、マイクロ波照射による過度の乾燥を防止しながら、より効率的に十分な乾燥状態を得ることができる。
第5の発明では、ヒーターを制御することによって、温風による乾燥処理を適切な条件で効率よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来例の構成図である。
【図2】マイクロ波照射による温度及び湿度の経時変化を示す実験結果である。
【図3】この発明の実施例1の構成図である。
【図4】実施例2の構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、この発明の好ましい形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図3は実施例1の構成図を示す。
実施例1の生ゴミ処理装置Aは、マイクロ波透過可能な有底円筒形の処理容器11を用い、これを、ハウジング12内に設けられた箱形のマイクロ波遮蔽室13内において回転受け台14上に着脱自在に搭載し、回転受け台14と共に回転させるようになっている。処理容器11には把手(図示せず)が胴部外面に設けられている。処理容器11は、ポリプロピレン等のマイクロ波透過材料に、耐熱性を持たせるためにタルク等のセラミックスを混合して一体成型されている。
【0022】
処理容器11内でその底部上には回転カッター15が装着され、処理容器11を回転受け台14上に搭載すると、この回転カッター15が、マイクロ波遮蔽室13の外側下部に設置されたカッター用モータ16に、従来と同様にクラッチ17を介して連結され、カッター用モータ16にて回転されるようになっている。回転受け台14は、マイクロ波遮蔽室13の外側下部に設置された撹拌用モータ18にて回転される。
【0023】
マイクロ波遮蔽室13は、マイクロ波を反射するステンレス等の金属板にて正面以外の面を囲繞され、その正面開口は、ハウジング12に設けた図示しない電磁遮蔽前扉にて開閉でき、この電磁遮蔽前扉を開いてマイクロ波遮蔽室13の正面開口から処理容器11を出し入れできるようになっている。
ハウジング12とマイクロ波遮蔽室13との間であって、マイクロ波遮蔽室13の外部上側には水平な上部循環路19a、外部一側には垂直な側部循環路19b、外部他側には垂直な排気脱臭路19cが形成され、上部循環路19aと側部循環路19bとは連通している。
【0024】
ハウジング12に形成された吸気口12aの内側には、吸気ファン20が設置されており、この吸気ファン20により吸気された外気が上部循環路19aの一端から導入される。上部循環路19a内の他端には温度センサ21及び湿度センサ22が設置され、また、上部循環路19a内の中間には電熱式ヒーター23が設置されている。
【0025】
側部循環路19b内には、その中途にマグネトロン24、これより下方に循環ファン25が設置されている。マグネトロン24からのマイクロ波は、マイクロ波遮蔽室13の側壁中途から処理容器11の周壁を透過して処理容器11内へ照射される。循環ファン25は、処理容器11からマイクロ波遮蔽室13内にいったん入った空気や水蒸気やガスを、側部循環路19bを通じて再び循環させる。
【0026】
排気脱臭路19c内には、その下部にこの発明の排気手段である排気ファン26、これより上方に脱臭用触媒27が設置され、また、脱臭用触媒27の設置位置より上方に、ハウジング12外へ開口する外部排気口28が形成され、これらで排気脱臭部29が構成されている。排気ファン26は、マイクロ波遮蔽室13内に入った空気や水蒸気やガスを、脱臭用触媒27を通じて外部排気口28からハウジング12外へ強制排出する。脱臭用触媒27は、図示しない触媒加熱用ヒーターにて200℃程度に加熱される。
【0027】
回転受け台14上に搭載した処理容器11は、その上面開口を上蓋30で閉じられる。この上蓋30には吸気口31と排気口32とが形成され、吸気口31は、その上部に形成される吸気側連通室33を介して上部循環路19aと連通する。排気口32の上部には、マイクロ波遮蔽のため多孔構造またはメッシュ構造とした仕切り壁34にて排気側連通室35が形成され、排気口32は、この排気側連通室35を介してマイクロ波遮蔽室13内と連通する。排気側連通室35を形成する仕切り壁34、及び上記吸気側連通室33を形成する仕切り壁36,37はマイクロ波遮蔽室13の天井部に設けられている。
【0028】
このような構造の生ゴミ処理装置Aは、生ゴミを収容した処理容器11を回転受け台14上に搭載して次のように動作する。
電源をオンにすると、回転受け台14上の処理容器11が撹拌用モータ18にて回転されるとともに、処理容器11内の回転カッター15がカッター用モータ16にて回転されながら、マグネトロン24からのマイクロ波が処理容器11の周壁を透過して処理容器11内に照射される。また、吸気ファン20にて外気が吸気されて上蓋30の吸気口31から処理容器11内に入るとともに、処理容器11からの排気(空気の他に生ゴミから蒸発した水蒸気や発生したガス)が、上蓋30の排気口32から排気側連通室35を通ってマイクロ波遮蔽室13内にいったん入ってから、循環ファン25により側部循環路19b及び上部循環路19aを通って処理容器11内へと再び循環する。これと同時に、マイクロ波遮蔽室13内に入った処理容器11からの排気の一部は、排気ファン26により脱臭用触媒27にて脱臭されながら外部排気口28からハウジング12外へ排出される。
【0029】
側部循環路19b及び上部循環路19aを通って循環する処理容器11からの排気は、温度センサ21にて温度を検出されるとともに、湿度センサ22にて湿度を検出され、その検出温度及び検出湿度に従って、マグネトロン24、ヒーター23、吸気ファン20、循環ファン25、排気ファン26、触媒加熱用ヒーターなどがCPU(中央演算装置)を含む制御回路(図示せず)にて制御される。
【0030】
温度センサ21による検出温度は、図2に実線のグラフで示すように、マイクロ波による生ゴミの加熱乾燥が進むに従い時間の経過とともに上昇し、その温度上昇は、生ゴミの水分が高いうちは緩慢な勾配(温度がT1となる時点H1まで)であるが、水分が低下すると、水蒸気の発生が少なくなり、その分、空気が暖められて温度勾配が急になる。そして、空気の比熱は水の1/500程度であるため、水分があるところまで低下すると、温度上昇がある時点H4で急勾配に転ずる。このような経時変化する温度や湿度の値は、生ゴミの種類や量、マグネトロンの出力、排気能力などによって異なるが、温度の変化傾向は何れの場合もほとんど変わらない。
【0031】
この発明では、この時点H4での温度曲線上のポイントをこの発明の温度変化点P1として捉え、この温度変化点P1を、実験による統計的平均値から、マグネトロン24の熱量と処理容器11への空気量と処理容器11の容量に従って決定する。そして、このときの温度T3を制御回路に設定する。制御回路は、上記温度センサ21による検出温度を監視し、検出温度が上記温度変化点の温度T3に達する1度〜数度前である時点H3でマグネトロン24を停止させる。それ以後は、上部循環路19a及び側部循環路19bを通る温風の温度を温度センサ21で検出しながら、その温風温度が設定温度を維持するようにヒーター23を制御し、設定時間だけ作動させる。つまり、この実施例1では、上記ヒーター23、吸気ファン20及び循環ファン25がこの発明の温風供給手段を構成している。
【0032】
従って、マグネトロン24が停止した後は、ヒーター23で加熱された温風が、循環ファン25によって上蓋30の吸気口31から処理容器11内に送られ、マグネトロン24の低地時点では発火温度に達していないし、完全乾燥していない生ゴミが上記温風で乾燥される。
なお、上記温風の設定温度は、生ゴミが発火しない範囲なら何度に設定してもかまわない。温風温度が高ければそれだけ乾燥時間を短くできるが、マイクロ波照射によってある程度乾燥してから切り替えるので、温風温度をそれほど高温にしなくても十分な乾燥が可能である。
そして、処理容器11からの排気は、上蓋30の排気口32から排気側連通室35を通ってマイクロ波遮蔽室13内に一旦入ってから、循環ファン25により側部循環路19b及び上部循環路19aを通ってヒーター23により再び加熱され、処理容器11内へと再び循環する。マイクロ波遮蔽室13内に入った処理容器11からの排気の一部は、この間も、排気ファン26により脱臭用触媒27にて脱臭されながら外部排気口28からハウジング12外へ排出される。
【0033】
また、処理容器11からの排気は、吸気ファン20によって供給される空気の他に生ゴミから蒸発した水蒸気や生ゴミから発生したガスを含んでいるため、これら水蒸気やガスを効率よく排出するために、上記循環ファン25の風量を、吸気ファン20の風量より多くし、排気ファン26の風量はさらに多くする必要がある。例えば、上記循環ファン25の風量を吸気ファン20の2倍程度とし、排気ファン26の風量は吸気ファン20の3倍程度とする。
【0034】
なお、この実施例1では、制御回路に温度変化点P1の温度T3を設定しているが、制御回路には、上記温度変化点P1の温度T3を設定せずに、この温度T3より1度から数度低いマグネトロン停止点の温度T2を直接設定するようにしてもよい。
また、マグネトロン停止点は、生ゴミが発火点に達するよりも前でマイクロ波照射による発火や燃焼を防止できる時点であればいつでもよいが、乾燥中の生ゴミは部分的に高温になっている場合もあり、実際には発火直前にマグネトロンを停止することは困難である。そこで、この実施例1では、上記温度センサ21の検出値が急上昇し始める温度変化点P1より手前にマグネトロン停止点を設定するようにしている。
【0035】
このように、実験的に決定した温度変化点P1以前にマグネトロン停止点を設定すれば、処理対象である生ゴミの量や種類に多少のばらつきがあっても、発火、燃焼を確実に防止できる。
そして、この実施例1では、マグネトロン停止点は温度をパラメータにして設定された値であり、温度センサ21がマグネトロン停止点を監視するセンサである。
一方、マグネトロンの停止ポイントが早すぎた場合には、その時点での生ゴミの含水量が多すぎて、温風乾燥時間を長くしなければ十分な乾燥状態が得られない。従って、発火、燃焼を防止しながら、短時間の完全乾燥を実現するためには、マグネトロン停止点を上記温度変化点P1よりあまり前に設定しない方がよい。
【0036】
また、実施例1では上記湿度センサ22は、マグネトロン停止点の検出には利用されないが、上記制御回路は、ハウジング内の湿度によって生ゴミの乾燥処理が効率的に行なわれるように、カッター用モータ16を制御することもできる。
その制御は、次のとおりである。
ところで、上記側部循環路19bに設けた湿度センサ22の検出値は、生ゴミ処理装置Aの運転時間に伴って図2の一点鎖線で示すグラフのように推移する。つまり、運転開始直後から、生ゴミから発生する水蒸気によってハウジング内の湿度は、時点H2まで上昇を続け、湿度M1まで上昇するが、その後、生ゴミから排出された水蒸気がハウジング内の空気とともに排気され、生ゴミ中の水分も低下すると湿度は減少傾向に転ずる。
そして、この湿度の変化傾向が転換するポイントをこの発明の湿度変化点P2とする。
【0037】
上記のように、湿度変化P2になるまでの間は、生ゴミの水分が活発に蒸発して、ハウジング12内の湿度は上昇するはずであるが、乾燥処理が終了していないのに、この間で湿度が上昇しない場合には、生ゴミから水分が蒸発していないことが考えられる。温度が上昇しているのに、生ゴミから水分が蒸発難い状態は、生ゴミが塊になっていて内部に水分が閉じ込められている可能性がある。
【0038】
そこで、上記制御回路は、湿度センサ22によって湿度の変化傾向を監視し、湿度が上昇すべき範囲内、すなわち上記湿度変化点より手前で上昇しない場合には、カッター用モータ16を制御して回転カッター15によって生ゴミの塊を粉砕する。
上記制御回路は、カッター用モータ16を駆動して生ゴミをある程度粉砕したらカッター用モータ16を一端停止させる。水分を保った生ゴミの塊が粉砕された状態で過熱されれば、内部の水分が放出されるので湿度は上昇するが、湿度の上昇傾向が続く間は、カッター用モータ16を停止状態に維持する。そして、湿度の上昇傾向が止まったことを検出したら、制御回路は再度カッター用モータ16を駆動する。
【0039】
このように、湿度変化に応じてカッター用モータ16を断続的に駆動すれば、生ゴミ内部の水分を素早く蒸発させ、効率よく乾燥させることができる。
また、回転カッター15を連続回転させると、粘着性の物質がかえって凝集してしまうことがあるが、上記のように必要時のみにカッター用モータ16を駆動することによって、凝集も防止できるし、エネルギーの節約もできる。
【実施例2】
【0040】
図4は実施例2の構成図を示す。
実施例2の生ゴミ処理装置Bでは、マイクロ波遮蔽室13の上面を開口させて電磁遮蔽上扉38にて開閉し、処理容器11をマイクロ波遮蔽室13の上面開口から出し入れする。また、マイクロ波遮蔽室13とハウジング12との間に、往循環路39と復循環路40とを並行して形成するとともに、復循環路40に連通する排気路41を形成している。
【0041】
電磁遮蔽上扉38には、処理容器11の上面開口を閉じる上蓋30と仕切り壁42〜45とにより、吸気室46と往循環室47と復循環室48とが形成されている。ハウジング12に形成された吸気口12aの内側には吸気ファン20が設置されており、吸気ファン20により吸気された外気が吸気室46を通じて処理容器11内へ導入される。
マイクロ波遮蔽室13内で回転受け台14上に搭載した処理容器11が撹拌用モータ18にて回転されること、処理容器11内の回転カッター15がカッター用モータ16にて回転されること、マグネトロン24からのマイクロ波が処理容器11の周壁を透過して処理容器11内へ照射されることは、実施例1と同様である。
【0042】
往循環路39内には循環ファン25が設置され、また、復循環路40内には電熱式ヒーター23が設置されており、処理容器11からの排気は、循環ファン25の作用により、往循環室47を通じて往循環路39に入り、さらに復循環路40を通ってヒーター23にて加熱され、復循環室48から再び処理容器11内へ循環する。その際、ヒーター23が実施例1と同様に作動しているときは、温風となって循環する。
処理容器11からの排気の温度を検出する温度センサ21は、往循環室47と往循環路39との間に設置され、この温度センサ21の検出温度が制御回路により監視されて、マグネトロン24やヒーター23等が実施例1と同様に制御される。
【0043】
排気路41内には、排気ファン26と脱臭用触媒27とが設置されて排気脱臭部29が構成されており、処理容器11からの排気の一部は、復循環路40から排気路41を通ってハウジング12外へ開口する外部排気口28から機外へ排出される。
そして、この実施例2においても、排気ファン26が排気手段を構成し、ヒーター23、吸気ファン20及び循環ファン25が温風供給手段を構成している。
【0044】
なお、実施例1、実施例2のいずれの場合も、排気脱臭部29をハウジング12内に設けたが、ハウジング12とは独立した外付け構造、つまり、ハウジング12の外側でこれに接続する構造としてもよい。
また、マグネトロン停止点までの間にも温風を供給し、マイクロ波による乾燥と温風乾燥とを併用してもかまわない。要するに、この発明の生ゴミ処理方法及び装置としては、発火、燃焼に至らないように、生ゴミが完全乾燥する前にマグネトロンを停止し、マグネトロン停止後は温風乾燥に切り替えるものであればよい。
【実施例3】
【0045】
上記実施例1,実施例2では、マグネトロン停止点を、温度をパラメータにして設定しているが、マグネトロン停止点は湿度をパラメータにして設定してもよい。
以下には、湿度をパラメータにしてマグネトロン停止点を設定する実施例3の生ゴミ処理方法について説明する。
なお、この実施例3の生ゴミ処理方法は、図3に示す実施例1の生ゴミ処理装置Aを用いるものとする。
そして、上記湿度センサ22によって検出したハウジング12内の湿度は、図2の一点鎖線で示すグラフである。すなわち、ハウジング12内の湿度は、上記したように、生ゴミ中の水分が高い間は上昇傾向を維持し、ある時点H2である湿度変化点P2から急激に減少し始める。
【0046】
このように、ハウジング12内の湿度は、湿度変化点P2より前では上昇傾向であり、湿度変化点P2以降では減少傾向となるが、湿度変化点P2以降では、同時点における温度と湿度とは1対1で対応している。そこで、この実施例3では、上記実施例1で設定したマグネトロン停止点T2に対応する湿度M2をマグネトロン停止点として制御回路に設定する。
このマグネトロン停止点M2は、ハウジング内に設けた温度センサ21と湿度センサ22の検出値の変化曲線を求める実験により予め設定する。
【0047】
そして、生ゴミ処理装置Aの制御回路は、マグネトロン24を駆動したら、湿度センサ22の検出値を監視し、湿度の上昇傾向が続いて湿度変化点P2に達したことを検出した後に、湿度M2を検出した時点でマグネトロン24を停止させる。その後は、上記他の実施例と同様に、ヒーター23を制御して温風乾燥に切り替える。温風のみによる乾燥処理では、生ゴミが発火、燃焼するまで急激に温度が上昇することはないので、運転時間の管理をしておけば、ヒーター23の温度を厳密に制御しなくも生ゴミの発火、燃焼を防止できる。また、運転時間の設定もそれほど厳密にする必要はない。
但し、湿度センサ22を備えた装置においては、温風乾燥に切り替えた後も、湿度を検出し、湿度がほぼ0(%)になったとき、運転を停止するようにしてもよい。
【0048】
なお、実施例1〜実施例3のいずれにおいても、マグネトロン停止点を温度変化点P1の直前に設定しているが、マグネトロン停止点は生ゴミが発火しない時点ならどこでもかまわない。
発火しない時点でマグネトロンを停止したときに、生ゴミ中の水分量が非常に多い状態であったとしても、マグネトロン停止後は温風による緩やかな乾燥に切り替えて、乾燥処理を続けるものならば、この発明の目的は達成される。
【実施例4】
【0049】
上記したように、温度変化点P1より手前にマグネトロン停止点を設定すれば、生ゴミの種類などの影響を考慮しても、厳密な設定無しに安全性を確保できる。
しかし、生ゴミ中の水分が非常に多い状態でマグネトロンを停止させたのでは、マグネトロンを停止してから後の温風乾燥に時間がかかりすぎてしまい、マグネトロンを用いたメリットが少なくなってしまう。
そこで、以下には、より効率的に完全乾燥が実現できるようにマグネトロン停止点を設定する実施例4の生ゴミ処理方法について説明する。
なお、この実施例4の生ゴミ処理方法も図3に示す実施例1の生ゴミ処理装置Aを用いるものとする。
【0050】
そして、この実施例4では、マグネトロン停止点を、上記湿度変化点P2から上記温度変化点P1までの間に設定する。
なお、このマグネトロン停止点は、温度を基準に設定してもよいし、湿度を基準に設定してもよい。温度を基準に設定した場合には、上記温センサ21によってマグネトロン停止点に達したことを検出し、湿度を基準に設定した場合には、上記湿度センサ22によってマグネトロン停止点に達したことを検出する。
【0051】
以下に、この実施例4においてマグネトロン停止点を上記湿度変化点P1から温度変化点P2までの間に設定した理由を説明する。
マグネトロンによって生ゴミにマイクロ波を照射しているハウジング12内の湿度は、図2の一点鎖線で示すように、マイクロ波照射から徐々に上昇し、湿度変化点P2で急激に減少する。つまり、湿度変化点P2以前では、生ゴミの温度が上昇するのに従って、生ゴミ内部からどんどん水分が排出され、ハウジング内の湿度が上がり続けているのである。そのため、を湿度変化点P2よりも前にマグネトロン停止点を設定したのでは、マグネトロンを停止した時点での生ゴミの水分量が多すぎて、非常に長い時間温風乾燥を続けなければ、十分な乾燥状態にはならない。
【0052】
しかし、図2のグラフでは、上記湿度変化点P2を過ぎれば、湿度は急激に低下して、生ゴミ内の水分量が急激に減少することを示している。従って、湿度変化点P2以降にマグネトロン停止点を設定すれば、マグネトロン停止点までのマイクロ波照射によって、短時間で生ゴミ中の水分量を急激に低下させることができる。このように、生ゴミの水分をある程度少なくしてから、温風乾燥に切り替えれば、完全乾燥までの時間を短くできる。
また、上記マグネトロン停止点は、この実施例4でも温度が急上昇し始める温度変化点P1よりも前に設定するので、上記他の実施例と同様に発火、燃焼に至ることがないように、安全性も確保できる。
従って、この実施例4では安全性と完全乾燥との両立を、より効率的に実現できる。
【0053】
実施例1〜4では、温風乾燥のための温風をハウジング12内に設けたヒーター23によって生成するようにしているが、ハウジング12内に供給する温風は、ハウジング外部で生成したものでもかまわないし、その生成方法もどのようなものでもよい。また、外気の温度が高ければ、ハウジング12内に供給する空気を特に加熱しなくてもかまわない。
【符号の説明】
【0054】
A 実施例1の生ゴミ処理装置
11 処理容器
12 ハウジング
12a 吸気口
13 マイクロ波遮蔽室
14 回転受け台
15 回転カッター
16 カッター用モータ
17 クラッチ
18 撹拌用モータ
19a 上部循環路
19b 側部循環路
19c 排気脱臭路
20 吸気ファン
21 温度センサ
22 湿度センサ
23 ヒーター
24 マグネトロン
25 循環ファン
26 排気ファン
27 脱臭用触媒
28 外部排気口
29 排気脱臭部
30 上蓋
31 吸気口
32 排気口
33 吸気側連通室
34 仕切り壁
35 排気側連通室
36,37 仕切り壁
B 実施例2の生ゴミ処理装置
38 電磁遮蔽上扉
39 往循環路
40 復循環路
41 排気路
42〜45 仕切り壁
46 吸気室
47 往循環室
48 復循環室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内の生ゴミにマグネトロンからマイクロ波を照射して乾燥処理をする生ゴミ処理方法において、マグネトロン停止点をハウジング内の温度あるいは湿度のいずれか一方または両方をパラメータにして予め設定し、ハウジング内の温度あるいは湿度が上記停止点に達したときにマグネトロンを停止させるとともに、その後は、ハウジング内に温風を供給し、生ゴミを乾燥させる生ゴミの処理方法。
【請求項2】
上記マグネトロン停止点を、生ゴミにマイクロ波の照射を開始した後に上記ハウジング内の湿度が上昇傾向から急激に減少し始める湿度変化点から、上記ハウジング内の温度勾配が緩慢な上昇から急上昇に変化する温度変化点までの間の温度または湿度を基準に設定する請求項1に記載の生ゴミの処理方法。
【請求項3】
マグネトロンによってマイクロ波を照射してハウジング内の生ゴミを乾燥させる生ゴミ処理装置において、乾燥時に生ゴミから排出される水蒸気を排出する排気手段と、ハウジング内に温風を供給するための温風供給手段と、ハウジング内の温度を検出する温度センサあるいはハウジング内の湿度を検出する湿度センサの少なくともいずれか一方のセンサと、これら温度センサあるいは湿度センサのいずれか一方あるいは両方に接続し、上記マグネトロン及び温風供給手段を制御する制御回路とを備え、この制御回路は、上記温度センサからの検出温度あるいは湿度センサからの検出湿度が、温度あるいは湿度をパラメータとして予め設定されたマグネトロン停止点に達したとき、マグネトロンを停止させ、その後、温風供給手段を制御して温風を供給する機能を有する生ゴミ処理装置。
【請求項4】
上記マグネトロン停止点は、生ゴミにマイクロ波の照射を開始した後、上記ハウジング内の湿度が上昇傾向から急激に減少し始める湿度変化点から、上記ハウジング内の温度勾配が緩慢な上昇から急上昇に変化する温度変化点までの間の温度あるいは湿度を基準に設定した請求項3に記載の生ゴミ処理装置。
【請求項5】
上記温風供給手段はヒーターを備え、上記制御回路は、マグネトロンを停止した後、上記ヒーターを作動させる請求項3または4に記載の生ゴミ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−149111(P2010−149111A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270158(P2009−270158)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(301022493)株式会社ジャパン・エンジニアリング・サプライ (5)
【Fターム(参考)】