説明

生体情報処理装置

【課題】
生体信号を環境変化に強く、理論値に近い値で抽出することのできる生体情報処理装置を提供する。
【解決手段】
被験者の生体信号をセンサにより検出する生体信号検出手段と、この生体信号検出手段の信号から呼吸数と心拍数を抽出する信号処理手段とを備える生体情報処理装置を、前記生体信号をエアマットに接続された中空チューブを介しマイクロフォン並び圧力センサで検出するエアマット式生体信号検出手段と、前記エアマット式生体信号検出手段で検出した信号をデジタル信号に変換するデジタル変換手段と、前記デジタル変換手段のデジタル信号を、抽出した前記呼吸数、前記心拍数に応じてフィルタ係数を設定しながら繰り返し処理するフィードバック型デジタルフィルタにより呼吸数並びに心拍数を抽出するデジタル信号処理手段とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体にセンサーを直接取り付けない無拘束状態で呼吸数並びに心拍数を抽出する生体情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1に開示されているように、生体信号を抽出する生体情報処理装置がある。この特許文献には被験者の生体振動を検出する圧力検出手段と、この圧力検出手段の出力信号から心拍信号や呼吸信号等の生体信号を抽出する信号処理手段とを備える生体信号測定装置であって、前記圧力検出手段は、可撓性および弾性を有する材質からなる中空のチューブと、このチューブに接続された微差圧センサ(低周波数用コンデンサマイクロフォン)とからなる全体信号検出装置が記載されている。特許文献2には、特殊センサ内の気圧センサの出力信号はデータ収集装置内の心拍フィルタ,呼吸フィルタ,イビキフィルタを通すことによって、心拍信号,呼吸信号,イビキ信号として、また特殊センサ内の圧力センサの出力信号は体動フィルタを通すことによって、体動信号として被験者の生体信号が取り出されることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−058653
【特許文献2】特開2001−258859
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例では、アナログ回路技術を用いてローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタを構成して有用な成分を抽出しているが、理論値とのずれがあり、信号解析能力に限界がある。また、構成素子の固体誤差、温度、湿度などの環境変化に対する依存性が有り、装置の性能向上の妨げになっていた。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたもので、生体信号を環境変化に強く、理論値に近い値で抽出することのできる生体情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、被験者の生体信号をセンサにより検出する生体信号検出手段と、この生体信号検出手段の信号から呼吸数と心拍数を抽出する信号処理手段とを備える生体情報処理装置を、前記生体信号をエアマットに接続された中空チューブを介しマイクロフォン並び圧力センサで検出するエアマット式生体信号検出手段と、前記エアマット式生体信号検出手段で検出した信号をデジタル信号に変換するデジタル変換手段と、前記デジタル変換手段のデジタル信号を、抽出した前記呼吸数、前記心拍数に応じてフィルタ係数を設定しながら繰り返し処理するフィードバック型デジタルフィルタにより呼吸数並びに心拍数を抽出するデジタル信号処理手段とで構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エアマットとフィードバック型デジタルフィルタを用いることにより、被験者の呼吸数や心拍数を無拘束状態で、ノイズが少なく、かつ、正確な周期検出ができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0009】
本発明の実施の形態について、以下、図1から図8の図面を参照しながら述べる。図1は、本発明の生体情報処理装置の全体構成を示す図面である。本発明では、生体信号の検出は、生体の音として、心拍信号、呼吸信号、イビキ信号を、生体の動きとして離床、体位転換などを検出するものとする。また、利用形態として、病院や介護施設などを想定して、以下説明する。
【0010】
図1において、被験者を無拘束で生体信号を検出するエアマット10があり、このエアマット10には、信号を精度良く検出するために、等間隔に配置された貫通する穴10aがある。エアマット10からは、中空チューブ20を介して、センサ検出部30に接続されている。センサ検出部30の信号は、デジタル信号処理装置40に入力され、デジタル処理により、呼吸数や心拍数などが計算される。
【0011】
センサ検出部30は、中空チューブ20を介して検出する。すなわち、生体の音として、心拍信号、呼吸信号、イビキ信号をマイクロフォン30aで検出し、体位の動きは圧力センサ30bで検出する。マイクロフォン30a信号は、増幅器OPAMP1:40aで増幅され音信号40bに、圧力センサ30b信号は、増幅器OPAMP2:40hで増幅され、圧力信号40iとして出力される。
【0012】
音信号40bは、2チャンネルのA/D変換器40cにより、心拍デジタル信号40eと呼吸デジタル信号40fに変換出力される。一方、いびき音は、従来のバンドパスフィルタ40dでフィルタリングされ、いびき信号40gとして出力される。
【0013】
以上述べた各信号は組み込み型コンピュータCPU40jに入力され、ソフトウエアで全てデジタル処理される。CPU40jのバス40qには、プログラムを格納するメモリROM40k、計算結果を一時記憶するメモリRAM40l、アラーム用通信デバイスSIO40m、通信デバイスLAN40oが接続されている。アラーム用通信デバイスSIO40m、通信デバイスLAN40oは通信線40n、40pを有して上位コンピュータ(図示せず)に接続される。なお、上位コンピュータは健康管理センターに置かれ、患者データを集中的に管理し、異常監視が行われる。従って、患者はエアマットに横たわっているのみで、心拍数や呼吸数が自動で測定監視ができるので、患者負担が少なく、かつ、高性能な生体情報処理装置を提供できる。
【0014】
図2は、本発明で用いるデジタルフィルタの構成を示したもので、従続構成の2次の無限インパルス応答(IIR)フィルタ(Biquad形式)のブロック構成図である。ここで、Z−1は遅延器、a1,a2、b0、b1,b2は乗算器、X[n]は、n時点の入力信号、Y[n]は、n時点の出力信号を示す。なお、差分方程式は図2に示す通りである。このフィルタの方式は高速で、かつ、高精度に演算ができ、また、コンパクトなプログラムサイズであることが特徴である。
【0015】
図3は、本発明の概念であるフィードバック型デジタルフィルタを説明するための図で、実際には前述の組み込み型コンピュータCPU40jでソフトウエア的に処理される。A/D変換器40cの心拍信号40eは、まず、デジタルフィルタ処理で心拍成分抽出40j10を行う。この結果から心拍数(回/分)を離散フーリエ変換(FFT)により算出40j20する。心拍数からフィルタ係数を設定40j30し、再度、心拍成分抽出を行う。これを絶えず繰り返しながら処理することにより、ノイズが少なく、かつ、安定した心拍数が抽出することができる。
【0016】
次に、呼吸信号40fは、デジタルフィルタ処理で呼吸成分抽出40j50を行う。図2で前述のようにデジタルフィルタ構成は、従続構成にするため、心拍数40j40も呼吸成分抽出処理40j50に加えている。呼吸成分抽出処理40j50の結果から呼吸数(回/分)をFFTにより算出する。ここでも同様に、呼吸数からフィルタ係数を設定40j70し、再度、呼吸成分抽出を行う。最後に、心拍・呼吸波形を演算し、および、出力40j80する。
【0017】
図4は、心拍数を求めるフローチャートである。最初に、A/D変換器のデータを読み込み、このデータを格納する(ステップ400)。次に、デジタルフィルタ係数K1を設立して、「心拍」のデジタルフィルタ計算処理を行い、処理結果を格納する(ステップ410)。次に、FFT計算時期かどうか判定し(ステップ420)、真であれば、FFT計算処理(データ数:例えば512個)を行い、心拍数を求める(ステップ430)。最後に、このFFTの計算結果から「フィルタ」係数K2を求め、これを新係数として設定する(ステップ440)。デジタルフィルタ係数の推移は、フローチャートの右側のテーブルの通りである。呼吸数を求めるフローチャートも同様な処理により求めることができる。
【0018】
図5は、心拍数の時間的推移を示したもので、心拍数に応じてフィルタの周波数F特性の係数が、K1〜K4に変化していることを表している。
【0019】
図6は、デジタルフィルタのゲイン特性を示したもので、係数K1〜K4に応じて、周波数特性とゲイン特性が変化していること示している。
【0020】
以上示したように、本発明のデジタルフィルタ処理は、抽出した心拍数、呼吸数に応じてフィルタ係数を設定しながら繰り返し処理するフィードバック型デジタルフィルタである。
【0021】
図7は、実際の呼吸数を従来のアナログ処理と本発明のデジタル処理の違いをシミュレータにより求めた波形である(波形(a)〜波形(c)は連続している)。この図で明らかのように、アナログ処理の波形は、ノイズが重畳されているのに対して、デジタル処理は、位相は遅れるものの、きれいに求まっている(呼吸数:18回/分)。
【0022】
図8は、実際の心拍数を従来のアナログ処理と本発明のデジタル処理の違いをシミュレータにより求めた波形である(波形(a)〜波形(c)は連続している)。この図で明らかのように、アナログ処理の波形は、ノイズが重畳されているのに対して、デジタル処理は、位相は遅れるものの、きれいに求まっている(心拍数:90回/分)。
【0023】
上記実施例では、呼吸数、心拍数の抽出を中心に説明したが、このデータ以外に、いびきについても、デジタルフィルタ処理することにより同様な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の生体情報処理装置の全体構成を示す図面。
【図2】本発明で用いるデジタルフィルタの構成図。
【図3】本発明の概念であるフィードバック型デジタルフィルタを説明するための図。
【図4】心拍数を求めるフローチャート。
【図5】心拍数の時間的推移図。
【図6】デジタルフィルタのゲイン特性を示す図。
【図7】実際の呼吸数を従来のアナログ処理と本発明のデジタル処理の違いをシミュレータにより求めた波形図。
【図8】実際の心拍数を従来のアナログ処理と本発明のデジタル処理の違いをシミュレータにより求めた波形図。
【符号の説明】
【0025】
10…エアマット
20…中空チューブ
30…センサ検出部
40…デジタル信号処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の生体信号をセンサにより検出する生体信号検出手段と、この生体信号検出手段の信号から呼吸数と心拍数を抽出する信号処理手段とを備える生体情報処理装置において、
前記生体信号検出手段は、前記生体信号をエアマットに接続された中空チューブを介しマイクロフォン並び圧力センサで検出するエアマット式生体信号検出手段と、前記エアマット式生体信号検出手段で検出した信号をデジタル信号に変換するデジタル変換手段と、で構成され、
前記信号処理手段は、前記デジタル変換手段のデジタル信号を、抽出した前記呼吸数、前記心拍数に応じてフィルタ係数を設定しながら繰り返し処理するフィードバック型デジタルフィルタにより呼吸数並びに心拍数を抽出するデジタル信号処理手段で構成したことを特徴とする生体情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−102013(P2006−102013A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290860(P2004−290860)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリングサービス (276)
【Fターム(参考)】