説明

生体情報測定装置および生体情報測定方法

【課題】音響光学効果を利用した生体情報測定装置において、適切な解像度による測定を可能とする技術を提供する。
【解決手段】生体情報測定装置は、被検体に光を照射する光源107と被検体内の測定位置を通過した光を検出する光検出器120とを有し、超音波による音響光学効果を利用して測定位置の情報を取得する。この生体情報測定装置は、互いに異なる方向の超音波ビームを送信する複数のトランスデューサアレイ105、106と、複数の超音波ビームが測定位置においてそれぞれ集束し、且つ、互いに交わるようにトランスデューサアレイを制御する重畳領域制御部114と、測定位置と各トランスデューサアレイとの間の距離に応じて、複数の超音波ビームの測定位置における音圧比を制御する音圧比制御部116と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響光学効果を利用して生体内部の光学特性を測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生体イメージングの技術領域において、光を用いて生体内部を画像化する試みがなされている。光を用いることにより、X線イメージングにおいて問題となる被曝を避けることができる。生体組織の分光情報を取得し、分光情報を基に生体構成成分の構成比率・濃度分析を行うことで機能イメージングが可能となる。
【0003】
光を用いた生体内部のイメージングでは、生体による吸収が比較的少ない近赤外領域の光を用いている。しかし、光は生体組織による散乱の影響を強く受ける。生体に侵入した光の大部分は数ミリメートル程度で直進性を失い、その後は散乱される。数センチメートルの厚さの生体では、光は非常に多くの散乱(多重散乱)を受けるため、検出された光の伝搬経路を特定することが難しい。このため、光によって生体内の局所的な分光特性を得ることは困難である。
【0004】
光の伝搬経路を特定し、検出光から生体内の局所的な分光情報を得るために、光と超音波の相互作用である音響光学効果を利用した手法が提案されている。この測定方法はAOT(Acousto-Optical Tomography:音響光学トモグラフィー)として知られている。光に比べて生体による吸収・散乱が小さい超音波を生体内部に集束させ、音響光学効果を利用して集束領域の光のみを超音波により変調することによって識別できるようにする。このように、超音波によって特定領域を識別できるようにすることを「タグ付けする」と呼ぶことにする。検出された光の中からタグ付けされた光(音響光信号)のみを抽出することで、超音波の集束領域を通過した光を特定することができる。タグ付けされた光を分析することで、生体内の局所領域の分光情報を取得することができる可能性がある。超音波の集束領域の位置と大きさを適切に設定することにより、所望の解像度を得ることができる。
【0005】
特許文献1では、音響光信号による測定を用いて酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度に関する情報を取得している。特許文献2では、パルス超音波により生じる音響光信号により、物体内の吸収体を検出している。
【特許文献1】米国特許第6738653号明細書
【特許文献2】米国特許第6815694号明細書
【非特許文献1】Sava Sakadzic and L.V.Wang, “Ultrasonic modulation of multiply scattered coherent light: An analytical model for anisotropically scattering media”, Phys. Rev. E66, 026603 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
音響光信号による測定の解像度は、音響光学効果が生じる超音波集束領域の大きさに依存する。超音波はトランスデューサにより発生し、超音波集束領域の大きさはトランスデューサの駆動周波数、開口径、トランスデューサ−集束点間距離に依存する。
【0007】
図5〜図7に超音波集束領域の一例を示す。図5はトランスデューサの構成例を示している。図5において、トランスデューサの振動面はx−y平面上にあり、振動面の中心は原点Oに一致している。音圧最大点は座標(x、y、z)=(0[mm]、0[mm]、26
[mm])にある。トランスデューサの開口は円形で、その径は20[mm]である。図6は、図5に示した系における連続超音波による音場(超音波ビーム)の計算例を示す。音場の計算では、駆動周波数を1[MHz]、媒質音速を1480[m/s]とした。図7は、図6の超音波ビームの半値領域を示したものである。半値領域とは、最大音圧の半値以上の音圧を持つ領域である。
【0008】
ここで半値領域を超音波集束領域と呼ぶと、超音波集束領域の超音波進行方向に垂直な方向の幅(横集束サイズ、若しくは超音波ビームの集束点における幅、と呼ぶ)に比べ、超音波進行方向に沿った長さ(縦集束サイズと呼ぶ)は大きいことがわかる。音響光学効果による測定解像度は超音波集束領域の大きさに対応しているので、横集束サイズを測定解像度に対応させた場合、超音波進行方向の測定解像度が所望の解像度よりも低くなる。逆に縦集束サイズを測定解像度に対応させた場合、超音波進行方向に垂直な方向(幅方向と呼ぶ)の測定解像度が所望の解像度よりも高くなる。
【0009】
このような理由から、単一のトランスデューサによる音響光学測定は、所望の測定解像度を得ることが困難な場合が生じるという課題を有する。この課題のために、例えば被検体内からある大きさ以上の異物を検出する測定において、検出精度の低下や測定の長時間化が生じる。異物サイズに比べて測定解像度が低い場合は、異物の見落としが起こり得るため、検出精度が低下する。一方で、異物サイズに比べて測定解像度が高すぎる場合は、不必要な(過剰な)測定点が増えるため、測定時間が長くなる。
【0010】
また特許文献1では、音響光信号による測定を行う際に、超音波強度を確保するために複数の超音波を測定位置に集束させ重畳している。以下、複数の超音波の合成音場における超音波集束領域を重畳領域と呼ぶ。この構成において、トランスデューサアレイの電子スキャンにより重畳領域を移動させると、その位置ごとに重畳領域の形状やサイズが変化してしまう。これは、生体内の測定位置ごとに測定解像度が変化し、測定の信頼性にばらつきが生じる可能性があることを意味する。
【0011】
図11〜図16を参照して、位置に応じて重畳領域の形状やサイズが変化することを説明する。図11はトランスデューサの配置例を示す。トランスデューサアレイ105の振動面はx−y平面上にある。トランスデューサアレイ105の開口は円形で、その径は20[mm]である。開口の中心は原点Oに一致している。トランスデューサアレイ106の振動面はy−z平面に平行である。トランスデューサアレイ106の開口は円形で、その径は20[mm]である。開口の中心の座標は(x、y、z)=(45[mm]、0[mm]、14.5[mm])である。トランスデューサアレイ105とトランスデューサアレイ106の音圧最大点の座標は共に(x、y、z)=(0[mm]、0[mm]、14.5[mm])で、それぞれの超音波ビームは互いの音圧最大点で重畳される。図12は、図11に示した系における連続超音波による音場(超音波ビーム)の計算例を示す。音場の計算では、駆動周波数を1[MHz]、媒質音速を1480[m/s]とした。また、トランスデューサアレイ105とトランスデューサアレイ106の音圧最大値の比は、1対1とした。図13は、図12の音場の半値領域、つまり重畳領域を示している。z方向の集束サイズに比べてx方向の集束サイズが大きいことがわかる。
【0012】
図14はトランスデューサの別の配置例を示す。トランスデューサアレイ105の開口の中心の座標は(x、y、z)=(30.5[mm]、0[mm]、0[mm])であり、トランスデューサアレイ106の開口の中心の座標は(x、y、z)=(45[mm]、0[mm]、45[mm])である。トランスデューサアレイ105とトランスデューサアレイ106の音圧最大点の座標は共に(x、y、z)=(30.5[mm]、0[mm]、45[mm])で、それぞれの超音波ビームは互いの音圧最大点で重畳される。図15は、図14に示した系における連続超音波による音場の計算例を示す。音場の計算では、駆動周波数を1
[MHz]、媒質音速を1480[m/s]とした。また、トランスデューサアレイ105とトランスデューサアレイ106の音圧最大値の比は、1対1とした。図16は、図15の音場の半値領域、つまり重畳領域を示している。x方向の集束サイズに比べてz方向の集束サイズが大きいことがわかる。
【0013】
図13と図16に示すように、特許文献1で提案された手法や装置では、測定位置に依存してx方向とz方向それぞれの重畳領域の大きさが変化してしまう。このため、生体内の測定対象領域全域にわたって、所望の測定解像度で測定を行うことが困難であった。
【0014】
特許文献2では、パルス超音波を用いて音響光信号による測定を行っている。パルス長を制御することにより、超音波進行方向の測定解像度を所望の値に設定することが可能である。しかし、パルス長が極めて短いために、以下で説明する問題が生じ得る。
【0015】
図21は、ある時間におけるパルス超音波の音圧波形の模式図である。トランスデューサの応答特性等のために、パルス超音波には、振幅が増大する立ち上がり領域2102、振幅が一定する定常領域2101、振幅が減少する立ち下り領域2103が生じる。このようなパルス超音波による測定では、音響光学効果により変調される光の割合が時間的に一定ではないので、光信号の解析が煩雑になることが考えられる。解析が煩雑になると、計算時間の長時間化や計算誤差の増加が生じる。しかし、解析を簡単にするために領域2102と2103の音圧を一定と仮定すると、測定精度が低下する。よって、パルス長全体に占める領域2102と2103の割合を小さくすることが望ましい。とはいえ、例えば1MHzの超音波を用いてパルス長を5mmに設定すると、パルス長は4波長程度となる。
このようにパルス長が極めて短い場合、領域2102と2103の割合を小さくすることは難しい。したがって、特許文献2に記載の手法や装置では、連続超音波を用いる場合と同等の測定精度を保ちながら、解像度に関する前記課題を解決することは困難である。
【0016】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、音響光学効果を利用した生体情報測定装置において、適切な解像度による測定を可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。
【0018】
本発明の生体情報測定装置は、被検体に光を照射する光源手段と前記被検体内の測定位置を通過した光を検出する光検出手段とを有し、超音波による音響光学効果を利用して前記測定位置の情報を取得する生体情報測定装置において、互いに異なる方向の超音波ビームを送信する複数の超音波発生手段と、前記複数の超音波発生手段から送信される複数の超音波ビームが前記測定位置においてそれぞれ集束し、且つ、互いに交わるように前記超音波発生手段を制御する集束制御手段と、前記測定位置と各超音波発生手段との間の距離に応じて、前記複数の超音波ビームの前記測定位置における音圧比を制御する音圧比制御手段と、を備える。
【0019】
本発明の生体情報測定方法は、被検体に光を照射する光源手段と前記被検体内の測定位置を通過した光を検出する光検出手段と互いに異なる方向の超音波ビームを送信する複数の超音波発生手段とを有し、超音波による音響光学効果を利用して前記測定位置の情報を取得する生体情報測定装置における、生体情報測定方法であって、前記複数の超音波発生手段から送信される複数の超音波ビームが前記測定位置においてそれぞれ集束し、且つ、互いに交わるように前記超音波発生手段を制御する工程と、前記測定位置と各超音波発生手段との間の距離に応じて、前記複数の超音波ビームの前記測定位置における音圧比を制御する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、音響光学効果を利用した生体情報測定装置において、適切な解像度による測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0022】
[第一の実施形態]
(装置構成)
図1は、本発明を適用できる第一の実施形態での生体情報測定装置の概略構成図である。この生体情報測定装置は、被検体101に光を照射する光源手段である光源107と、被検体内の測定位置を通過した光を検出する光検出手段である光検出器120とを備え、超音波による音響光学効果を利用して測定位置の情報を取得する装置である。測定位置の情報としては、当該測定位置における局所的な光学特性(光吸収散乱特性など)を得ることができる。生体情報測定装置は、互いに異なる方向の超音波ビームを送信する複数(この例では2つ)の超音波発生手段であるトランスデューサアレイ105,106と、その超音波発生手段を制御するためのトランスデューサアレイ制御部118とを備える。トランスデューサアレイ制御部118は、概略、集束制御手段である重畳領域制御部114、音圧比制御手段である音圧比制御部116、位相制御手段である位相制御部117を有する。重畳領域制御部114は、複数の超音波ビームが測定位置においてそれぞれ集束し、且つ、互いに交わる(重なる)ように各トランスデューサアレイを制御する機能である。位相制御部117は、超音波ビームの位相が測定位置において同位相となるよう制御する機能である。音圧比制御部116は、測定位置と各トランスデューサアレイとの間の距離に応じて、複数の超音波ビームの測定位置における音圧比を制御する機能である。
【0023】
被検体101は測定容器102に収められている。被検体101と測定容器102の間は、マッチング材103で均一に満たされる。マッチング材103には、光と超音波を効率的に伝達させるために、被検体101と導光手段104との光学的整合、被検体101と導光手段121との光学的整合、及び、被検体101とトランスデューサアレイ105、106との音響的整合をとることができる材料を用いることが望ましい。
【0024】
光源手段である光源107は、レーザ等を用いることができる。光源107からの射出光は、導光手段104により導光され被検体101に入射する。導光手段104には、光ファイバ等を用いることができる。
【0025】
超音波発生手段であるトランスデューサアレイ105と106は、それぞれトランスデューサ移動装置108と109に取り付けられており、測定容器102内を移動することができる。以下で用いられる「トランスデューサ」という表現は、トランスデューサアレイ105と106を示すものである。
【0026】
本実施形態のトランスデューサは、被検体101に対して連続超音波を送信する。トランスデューサは、被検体101内の所望の位置に単一超音波集束領域110と111を形成することができる。単一超音波集束領域110はトランスデューサアレイ105により形成され、単一超音波集束領域111はトランスデューサアレイ106により形成される。単一とは、1つのトランスデューサアレイにより形成されるという意味である。ここでは、半値領域(音圧最大値の半値以上の音圧を持つ領域)を超音波集束領域として扱う。単一超音波集束領域の形成は、遅延制御部112によりトランスデューサの各素子の遅延量を制御し、所望の位置に集束する合成波面を作ることで行う。また、位置制御部113によりトランスデューサ移動装置108と109を駆動することで、トランスデューサは
測定容器102内を移動することができる。すなわち単一超音波集束領域110と111の移動は、トランスデューサの素子の遅延量制御による電子スキャンによっても可能であるし、トランスデューサの移動によっても可能である。
【0027】
集束制御手段である重畳領域制御部114は、遅延制御部112と位置制御部113を制御して単一超音波集束領域110と111を移動させ、それぞれの音圧最大点が一致するように重畳し、重畳領域119を形成する。ここで、重畳領域119とは、複数の超音波ビームにより形成された合成音場において、音圧が所定値(本実施形態では音圧最大値の半値)よりも高い領域をいう。
【0028】
距離算出手段である距離算出部115は、重畳領域119とトランスデューサアレイ105と106それぞれとの間の距離を算出する。この距離は、遅延制御部112が設定している単一超音波集束領域110と111の位置情報から算出することができる。
【0029】
音圧比制御手段である音圧比制御部116は、トランスデューサアレイ105と106へ供給する電圧をそれぞれ変化させ、各トランスデューサアレイの送信音圧を変化させることができる。これにより、重畳領域119の測定位置における単一超音波集束領域110と111の音圧比を制御し、重畳領域119の大きさを所望の測定解像度に一致させることができる。
【0030】
位相制御手段である位相制御部117は、重畳領域119内の少なくとも一部において、トランスデューサアレイ105と106が発生する超音波を同位相にすることができる。これにより重畳領域119内の少なくとも一部では、2つの超音波音圧が加算される。
【0031】
トランスデューサアレイ制御部118は、重畳領域制御部114と遅延制御部112と位置制御部113と距離算出部115と音圧比制御部116と位相制御部117とからなる。トランスデューサアレイ制御部118は、例えば電気回路により構成することもできるし、マイクロプロセッサに実装されたプログラムにより構成することもできる。
【0032】
単一超音波集束領域110と111が重畳された領域、すなわち重畳領域119においては、他の領域に比べて音圧が大きいので媒質屈折率変動と光散乱体変動が大きい。それゆえ、重畳領域119を通過した光は大きな位相変調を受ける。この位相変調により、光検出手段である光検出器120において超音波周波数に等しい光変調信号が観測される。
【0033】
光検出器120は、導光手段121を通して、前記の変調された変調光と、変調を受けていない非変調光を検出する。光検出器120には、フォトマルチプライヤ、CCD、CMOSなどの光電変換素子を適用可能である。
【0034】
信号解析部122は、光検出器120からの信号を解析し、非変調光の光強度I(非変調成分)と、変調光の光強度I(変調成分)から、I/Iを算出する。この比を変調度Mと呼ぶ。
【0035】
非特許文献1によると、光検出器120において検出される光の自己相関関数G(τ)は、式(4)で表される。
【数1】

【0036】
式(4)で表される自己相関関数を、式(5)のようにフーリエ変換することで得られる0次成分と1次成分の比が、前述した変調度Mとなる。
【数2】

【0037】
測定値IとIから変調度Mを算出し、式(4)、(5)の関係を用いて解析することで、測定点における生体の光吸収散乱特性を取得することができる。
【0038】
重畳領域119は超音波集束領域、すなわち測定点に対応しているので、重畳領域119を被検体101内部で走査し各測定点における光信号を解析することで、被検体101の光吸収散乱特性分布を得ることができる。
【0039】
表示装置123は、被検体1内部の光吸収散乱特性分布を測定点の位置と対応させて表示する。インターフェイス124は、ユーザが測定位置や測定対象領域を指定し、またユーザに被検体の光吸収散乱特性に関する情報を提示する。
【0040】
(測定処理)
第一の実施形態における測定のフローを図2に示す。以下では、図2の各ステップについて説明する。
【0041】
ステップ101:
被検体101内部において、測定されていない測定中心点125を決定する。測定中心点は、図3に示すように、その点においてトランスデューサアレイ105とトランスデューサアレイ106の幾何学的中心軸126が互いに直交するように決定されることが望ましい。幾何学的中心軸とは、トランスデューサアレイ配列面の中心から配列面と直交する方向に伸びる直線軸である。
【0042】
ステップ102:
トランスデューサアレイ105とトランスデューサアレイ106の幾何学的中心軸が、
ステップ101で決定した測定中心点125において互いに直交するように、トランスデューサアレイ105と106を配置する。
【0043】
ステップ103:
測定点127を決定する。測定点には、図4に示すように、トランスデューサアレイ105と106が発生する超音波ビームの進行方向軸128が互いにできる限り直交するような点を選ぶことが望ましい。測定点の位置は、トランスデューサアレイの電子スキャンにより変えることができる。ステップ102で決定した測定中心点125に対し、測定点127は電子スキャンを用いて複数の位置にとることができる。
【0044】
ステップ104:
重畳領域制御部114により、単一超音波集束領域110と111の音圧最大点を測定点(測定位置)127に設定し、測定点127に重畳領域119を形成するように設定する。
【0045】
ステップ105:
距離算出部115により、測定点127とトランスデューサの間の距離を算出する。
【0046】
ステップ106:
測定点127においてトランスデューサアレイ105による超音波の位相とトランスデューサアレイ106による超音波の位相を一致させる。ステップ105で算出した距離を基に、位相制御部117で位相を調節することにより位相を一致させる。
【0047】
ステップ107:
測定点127において、重畳領域119の大きさが測定解像度に対応するように、単一超音波集束領域110と111の音圧最大点での音圧比を調整する。具体的には、音圧比制御部116は、要求されている測定解像度と、ステップ105で算出した各トランスデューサアレイの距離を基に音圧比を決定し、決定した音圧比に従って各トランスデューサアレイ105、106へ供給する電圧を制御する。この時、重畳領域119における音圧最大値が生体への安全強度となる範囲内で、単一超音波集束領域110と111の音圧比を決定することが好ましい。
【0048】
ステップ108:
被検体101に光を照射する。
【0049】
ステップ109:
被検体101に超音波を照射する。
【0050】
ステップ110:
光検出器120により光信号を検出し、検出した値を測定点127の座標と対応させて保存する。
【0051】
ステップ111:
被検体101への光と超音波の照射を止める。
【0052】
ステップ112:
ステップ103で示した測定点の条件を満たし、かつ測定されていない測定点がある場合、電子スキャンによる測定を用いてステップ103からステップ111を繰り返す。そうでない場合、ステップ113へ進む。
【0053】
ステップ113:
被検体101内の測定対象領域の全ての測定点の測定が完了していない場合、ステップ101からステップ112を繰り返す。測定対象領域の全ての測定が完了した場合、ステップ114へ進む。
【0054】
ステップ114:
ステップ110で保存した全ての測定点ごとの光信号を信号解析部122において解析し、被検体101の光吸収散乱特性分布を算出する。
ステップ115:
ステップ114で取得した被検体101内部の光吸収散乱特性分布を、測定点と対応付けて表示装置123により表示する。
【0055】
(本実施形態の利点)
以上により、被検体101内部の測定の解像度を改善することができることを説明する。
【0056】
図8〜図10に本実施形態の超音波集束領域の一例を示す。図8はトランスデューサアレイの配置を示している。トランスデューサアレイ105の振動面はx−y平面上にある。トランスデューサアレイ105の開口は円形で、その径は20[mm]である。開口の中心は原点Oに一致している。トランスデューサアレイ106の振動面はy−z平面に平行である。トランスデューサアレイ106の開口は円形で、その径は20[mm]である。開口の中心の座標は(x、y、z)=(26[mm]、0[mm]、26[mm])である。トランスデューサアレイ105とトランスデューサアレイ106の音圧最大点の座標は共に(x、y、z)=(0[mm]、0[mm]、26[mm])で、それぞれの超音波ビームは互いの音圧最大点で重畳される。
【0057】
図9は、図8に示した系における連続超音波による音場の計算例を示す。音場の計算では、駆動周波数を1[MHz]、媒質速度を1480[m/s]、トランスデューサアレイ105の音圧最大値とトランスデューサアレイ106の音圧最大値の比は1対1とした。
【0058】
図10は、図9の音場の半値領域を示したものである。図10によると、トランスデューサアレイを単独で用いる場合である図7と比べて超音波集束領域(ここでは半値領域で評価)がより小さくなっている。このように、2つのトランスデューサアレイの音場を最大音圧点で重畳することにより、超音波集束領域を縮小することができる。よって、単一のトランスデューサを用いた従来構成に比べて、音響光信号の測定解像度を改善することができる。
【0059】
第一の実施形態においては、超音波として連続超音波を用いることで、安定した定常状態での測定が可能である。特許文献2では、パルス超音波のパルス長を極めて短くすることにより超音波進行方向の測定解像度を向上させている。しかし、この方法では、トランスデューサの立ち上がりと立ち下がりの応答特性が影響するため、安定した測定が難しい。また、光と超音波の相互作用時間が短いため、検出される光信号のSN比が悪化することも考えられる。これに対して、第一の実施形態のように連続超音波を用いることにより、パルス超音波による音響光信号測定の上記問題点を回避しながら所望の測定解像度を得ることができる。
【0060】
ステップ106において、距離算出部115で算出したトランスデューサと測定点127との間の距離に対応させて、トランスデューサアレイ105と106に供給する電圧比を制御する。これにより、測定点127の位置が変化しても、重畳領域119に対応する超音波集束領域の大きさを制御して測定解像度を所望の値に設定することが容易となる。
音圧比の制御と測定解像度の関係を以下で説明する。
【0061】
トランスデューサアレイ105と測定点127との間の距離をd1、トランスデューサアレイ106と測定点127との間の距離をd2とする。またトランスデューサアレイ105の音圧最大値をS1、トランスデューサアレイ106の音圧最大値をS2とする。図11に示すように、d1<d2となるようにトランスデューサアレイ105と106を配置し、音圧最大点における音圧比S1対S2=1対1で超音波を重畳すると、図12及び図13に示すように、重畳領域のx方向集束サイズが大きくなる。一方、図14に示すように、d1>d2となるようにトランスデューサアレイ105と106を配置すると、図15及び図16に示すように、z方向集束サイズが大きくなる。なお図8〜図10に示すように、d1=d2の場合は、x方向とz方向の集束サイズが等しく且つ十分に小さな重畳領域が得られる。これらの例から、重畳領域の形状及びサイズは、測定点の位置(具体的には、d1とd2の比)に応じて変化することがわかる。このように重畳領域の形状やサイズが変化すると、測定対象領域の全域にわたって測定精度を保証することが難しい。
【0062】
そこで第一の実施形態では、距離d1、d2に応じて、トランスデューサアレイ105、106それぞれから送信された超音波ビームの音圧最大点における音圧比S1対S2を調整することにより、重畳領域の形状及びサイズの変化を可及的に小さくする。具体的には、測定点までの距離が短いトランスデューサアレイから送信された超音波ビームのほうが測定点までの距離が長いトランスデューサアレイから送信された超音波ビームよりも音圧が大きくなるように、それぞれの送信音圧を制御する。つまり、d1<d2の場合はS1>S2、d1>d2の場合はS1<S2に設定するのである。これにより、重畳領域の形状を改善することができる。
【0063】
このとき、距離d1、d2の大きさに応じて、超音波の減衰(伝播減衰と吸収減衰)の補正を行うことも好ましい。さらに好ましくは、測定点の位置によらず重畳領域の大きさがほぼ一定となるように音圧比を設定するとよい。これにより、測定対象領域全域にわたってほぼ均一の精度で測定を行うことが可能となる。
【0064】
なお、距離d1、d2ごとの音圧比の値については、各トランスデューサアレイの音圧分布の関係と要求される測定解像度とから算出することができる。音圧比の値は、測定時にリアルタイムに算出してもよいし、予め算出した値を格納するデータテーブルから取得してもよい。
【0065】
図17は、図11の配置において、トランスデューサアレイ105と106の音圧最大点での音圧比を1.05対1に設定した場合の重畳領域(半値領域)を示している。図13(音圧比1対1)に比べて、x方向の大きさの変化が抑制され、十分に小さい重畳領域が形成されていることがわかる。また、図18は、図14の配置において、トランスデューサアレイ105と106の音圧最大点での音圧比を0.9対1に設定した場合の重畳領域(半値領域)を示している。図16(音圧比1対1)に比べて、z方向の大きさの変化が抑制され、十分に小さい重畳領域が形成されていることがわかる。
【0066】
また本実施形態では、ステップ101とステップ102とステップ103において、幾何学的中心軸126や超音波進行方向軸128をできる限り直交させている。これは、一方の超音波ビームの縦集束サイズを、他方の超音波ビームの横集束サイズで改善する効果を最も得やすいからである。しかし、超音波の重畳による測定解像度の改善が見込めるのであれば、前記幾何学的中心軸や、前記超音波進行方向軸を直交させることは、必ずしも必要ではない。
【0067】
測定のステップ102で設定したトランスデューサアレイ105と106の位置のまま
で、トランスデューサの電子スキャンにより測定点127を変えてステップ103からステップ111を繰り返す。電子スキャンのみでは被検体101内を測定しきれなくなった場合、トランスデューサを移動し、新たな移動先で再び電子スキャンによる測定を行う。このようにしてトランスデューサアレイの移動を減らすことができ、測定時間をより短く改善することができる。トランスデューサアレイが被検体に対して小径であるために電子スキャンのみでは被検体の全領域を測定することが難しく、トランスデューサアレイの移動が伴う場合に有効である。また、超音波進行方向軸128を互いにある角度、例えばできるだけ直角に交差させる等の条件がある場合に有効である。電子スキャンだけでは被検体内の全領域で前記条件を満たすことが難しい場合でも、トランスデューサアレイの移動を組み合わせることで前記条件を満足することが容易となる。
【0068】
ステップ112とステップ113において、被検体の全体を測定対象領域に設定してもよいし、光吸収散乱特性を得たい一部の領域のみに測定対象領域を限定してもよい。
【0069】
本実施形態においてはトランスデューサアレイが2つの場合について説明したが、トランスデューサアレイを3つ以上用いてもよい。重畳する超音波ビームを増やすことで、重畳領域の音圧のみを音場全体に対してより高めることができる。これにより、解像度の基準として用いた半値を、より厳しい条件、例えば自然対数の逆数(1/e、e:自然対数)等に設定することが可能となる。
【0070】
[第二の実施形態]
図19は、本発明を適用できる第二の実施形態での生体情報測定装置の概略構成図である。第二の実施形態の測定装置は、パルス超音波を用いた場合の、測定精度を保ったまま測定解像度を改善することが難しいという課題を解決することができる。
【0071】
図19において、装置の構成要素201から225のうち、トランスデューサアレイ205と206、単一パルス超音波210と単一パルス超音波211、相対遅延制御部225以外の構成要素は、第一の実施形態における同名の構成要素と同じである。以下で用いられる「トランスデューサ」という表現は、トランスデューサアレイ205と206を示す。
【0072】
本実施形態のトランスデューサは、被検体201に対してパルス超音波を送信する。トランスデューサは、被検体201内の所望の位置に単一パルス超音波210と211を形成することができる。単一パルス超音波210はトランスデューサアレイ205により形成され、単一パルス超音波211はトランスデューサアレイ206により形成される。単一とは、1つのトランスデューサアレイにより形成されるという意味である。単一パルス超音波は、遅延制御部212によりトランスデューサの各素子の遅延量を制御することで、所望の位置に集束させることができる。
【0073】
位置制御部213によりトランスデューサ移動装置208と209を駆動することで、トランスデューサは測定容器202内を移動することができる。すなわち単一パルス超音波210と211の移動は、トランスデューサの素子の遅延量制御による電子スキャンによっても可能であるし、トランスデューサの移動によっても可能である。
【0074】
第二の実施形態の測定装置は、相対遅延制御手段である相対遅延制御部225を備える。相対遅延制御部225は、各トランスデューサアレイから送信されたパルス超音波が被検体201内の測定位置に同じタイミングで到達するように、トランスデューサアレイ205と206の間の相対的な遅延時間(超音波発生タイミング)を制御する。
【0075】
(測定処理)
第二の実施形態における測定のフローを図20に示す。以下では、図20の各ステップについて説明する。
【0076】
ステップ201〜206:
第一の実施形態におけるステップ101〜106と同じなので省略する。
【0077】
ステップ207:
測定点127において、重畳領域219の大きさが測定解像度に対応するように、単一パルス超音波210と211の音圧最大点での音圧比を調整する。具体的には、音圧比制御部216は、要求されている測定解像度と、ステップ205で算出した各トランスデューサアレイの距離を基に音圧比を決定し、決定した音圧比に従って各トランスデューサアレイ205、206へ供給する電圧を制御する。音圧比の具体的な決定方法は、第一の実施形態と同様の方法を用いる。
【0078】
ステップ208:
ステップ105で算出した測定点127とトランスデューサそれぞれの間の距離を基に、単一パルス超音波210と211が同時刻に測定点127に到達するようにトランスデューサ間の相対的な遅延時間を設定する。相対的な遅延時間の設定は、相対遅延制御手段である相対遅延制御部225により行う。
【0079】
ステップ209:
光検出器220の露光を開始する。
【0080】
ステップ210:
ステップ208で決定した相対的な遅延時間に基づき、被検体201にパルス超音波を照射する。トランスデューサの応答特性により、パルス超音波には、振幅が増大する立ち上がり領域と、振幅がほぼ一定する定常領域と、振幅が減少する立ち下り領域が含まれる。
【0081】
ステップ211:
単一パルス超音波210と211それぞれの定常領域同士が重畳している期間だけ光源207から光を照射し、光検出器220により光信号を検出する。
【0082】
ステップ212:
光検出器210の露光を停止し、ステップ211で検出した光信号の値を測定点127の座標と対応させて保存する。
【0083】
ステップ213:
単一パルス超音波210と211が被検体201を通過し終えるまで待つ。
【0084】
ステップ214:
ステップ203で示した測定点の条件を満たし、かつ測定されていない測定点がある場合、電子スキャンによる測定を用いてステップ203からステップ213を繰り返す。そうでない場合、ステップ215へ進む。
【0085】
ステップ215:
被検体201の測定したい領域全ての測定が完了していない場合、ステップ201からステップ214を繰り返す。測定したい領域全ての測定が完了した場合、ステップ216へ進む。
【0086】
ステップ216:
ステップ212で保存した全ての測定点ごとの光信号を信号解析部218において解析し、被検体201の光吸収散乱特性分布を算出する。
【0087】
ステップ217:
ステップ216で取得した被検体201内部の光吸収散乱特性分布を、測定点と対応付けて表示装置223により表示する。
【0088】
(本実施形態の利点)
ステップ208とステップ210により、測定点127において単一パルス超音波210と211を重畳させることができる。ステップ207において単一パルス超音波間の音圧比を調節することで、重畳領域の大きさを一定に保つことができる。これらにより、第一の実施形態と同様に測定解像度を一定に保つことができる。光相互作用時間を長く設定して測定のSN比を向上させるために、パルス超音波のパルス長を長くする場合等に有効である。
【0089】
次に、本実施形態の構成により、上述したパルス超音波に特有の課題を解決できることを説明する。
【0090】
ステップ211において、単一パルス超音波210と211それぞれの定常領域が重畳されている時間と、光を照射する時間とを同期させている。図22は、単一パルス超音波210と211の伝搬位置と光照射時間の関係を示す。光を照射している間、定常領域2202と2205は重畳し、立ち上がり領域2201と2204、立ち下がり領域2203と2206は重畳していない。単一パルス超音波210と211それぞれの定常領域が重畳されている場合の、音圧波形模式図を図23に示す。定常領域のみが重畳されているため、重畳された定常領域2304に対する立ち上がり領域2302と立ち下がり領域2303の相対的な音圧を、重畳前の定常領域2301の場合よりも低くすることができる。これにより、領域2302と2303の音響光学信号への寄与を小さくすることができ、測定精度の改善を図ることができる。
【0091】
パルス超音波と光の同期検出には、本実施形態で用いた方法以外の方法を適用することができる。例えば、光検出器220にPMT等の高速検出器を用いる手法が考えられる。この手法では、光検出器220を常時露光しておき光信号を時系列で保存する。測定終了後に、パルス超音波の定常領域が重畳されている時間の信号を抽出して解析に用いる。
【0092】
第一の実施形態同様、重畳領域219を被検体201内で走査する際、トランスデューサの電子スキャンとトランスデューサの移動を組み合わせることができる。また、被検体全体を測定対象領域に設定することもできるし、光吸収散乱特性を得たい一部の領域のみに測定対象領域を限定してもよい。また、トランスデューサの幾何学的中心軸や超音波進行方向軸はできる限り直交させることが好ましいが、超音波の重畳による測定解像度の改善が見込めるのであれば、幾何学的中心軸や超音波進行方向軸を直交させなくてもよい。また、3つ以上のトランスデューサを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第一の実施形態における生体情報測定装置の概略構成図
【図2】第一の実施形態における測定のフロー
【図3】トランスデューサアレイの幾何学的な配置の概略図
【図4】トランスデューサアレイによる超音波の電子スキャンと測定点の関係概略図
【図5】図6の音場計算に用いた座標系
【図6】単一のトランスデューサにより形成される音場
【図7】図6の音場の半値領域
【図8】図9の音場計算に用いた座標系
【図9】2つのトランスデューサの超音波ビームを集束点で重畳したときに形成される音場
【図10】図9の音場の半値領域
【図11】トランスデューサアレイ105に測定点が近い場合のトランスデューサ配置
【図12】図11のトランスデューサ配置で最大音圧比を1:1とした時に形成される音場
【図13】図12の音場の半値領域
【図14】トランスデューサアレイ106に測定点が近い場合のトランスデューサ配置
【図15】図14のトランスデューサ配置で最大音圧比を1:1とした時に形成される音場
【図16】図15の音場の半値領域
【図17】図11のトランスデューサ配置で最大音圧比を調節した時の半値領域
【図18】図14のトランスデューサ配置で最大音圧比を調節した時の半値領域
【図19】第二の実施形態における生体情報測定装置の概略構成図
【図20】第二の実施形態における測定のフロー
【図21】パルス超音波の音圧波形模式図
【図22】パルス超音波の伝搬位置と光照射時間の関係
【図23】パルス超音波の定常領域を重畳した際の音圧波形模式図
【符号の説明】
【0094】
101、201 被検体
105、106、205、206 トランスデューサアレイ(超音波発生手段)
107、207 光源(光源手段)
114、214 重畳領域制御部(集束制御手段)
116、216 音圧比制御部(音圧比制御手段)
117、217 位相制御部(位相制御手段)
119、219 重畳領域
120、220 光検出器(光検出手段)
225 相対遅延制御部(相対遅延制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に光を照射する光源手段と前記被検体内の測定位置を通過した光を検出する光検出手段とを有し、超音波による音響光学効果を利用して前記測定位置の情報を取得する生体情報測定装置において、
互いに異なる方向の超音波ビームを送信する複数の超音波発生手段と、
前記複数の超音波発生手段から送信される複数の超音波ビームが前記測定位置においてそれぞれ集束し、且つ、互いに交わるように前記超音波発生手段を制御する集束制御手段と、
前記測定位置と各超音波発生手段との間の距離に応じて、前記複数の超音波ビームの前記測定位置における音圧比を制御する音圧比制御手段と、
を備えることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
前記音圧比制御手段は、前記測定位置までの距離が短い超音波発生手段から送信された超音波ビームのほうが前記測定位置までの距離が長い超音波発生手段から送信された超音波ビームよりも前記測定位置における音圧が大きくなるように、各超音波発生手段の送信音圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記複数の超音波ビームが重畳されることによって、前記測定位置に、音圧が所定値よりも高い領域である重畳領域が形成され、
前記音圧比制御手段は、前記測定位置によらず前記重畳領域の大きさが一定となるように、各超音波発生手段の送信音圧を制御することを特徴とする請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記複数の超音波ビームの位相が前記測定位置において同位相となるように前記超音波発生手段を制御する位相制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記超音波発生手段は、連続超音波を送信することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記超音波発生手段は、パルス超音波を送信することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
各超音波発生手段から送信されたパルス超音波が前記測定位置に同じタイミングで到達するように、各超音波発生手段の相対的な遅延時間を制御する相対遅延制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
前記パルス超音波の波形は、振幅が増大する立ち上がり領域、振幅が一定する定常領域、及び、振幅が減少する立ち下り領域を含んでおり、
前記光検出手段は、各超音波発生手段から送信されたパルス超音波の定常領域同士が重畳している期間の光を検出することを特徴とする請求項7に記載の生体情報測定装置。
【請求項9】
前記光源手段は、各超音波発生手段から送信されたパルス超音波の定常領域同士が重畳している期間にのみ光を照射することを特徴とする請求項8に記載の生体情報測定装置。
【請求項10】
被検体に光を照射する光源手段と前記被検体内の測定位置を通過した光を検出する光検出手段と互いに異なる方向の超音波ビームを送信する複数の超音波発生手段とを有し、超音波による音響光学効果を利用して前記測定位置の情報を取得する生体情報測定装置における、生体情報測定方法であって、
前記複数の超音波発生手段から送信される複数の超音波ビームが前記測定位置においてそれぞれ集束し、且つ、互いに交わるように前記超音波発生手段を制御する工程と、
前記測定位置と各超音波発生手段との間の距離に応じて、前記複数の超音波ビームの前記測定位置における音圧比を制御する工程と、
を含むことを特徴とする生体情報測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−115414(P2010−115414A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292127(P2008−292127)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】