説明

生体認証装置および生体認証方法

【課題】本発明は、生体認証装置において、取得する指掌紋情報および静脈情報の精度の向上を図ることを目的とする。また、生体情報として取得された情報が生体以外の物から取得された情報であるか否かを容易に判定することを目的とする。
【解決手段】指掌紋情報と、静脈情報とを用いて、本人認証をおこなう生体認証装置は、人の所定部位から指掌紋情報を取得する指掌紋情報取得部と、人の所定部位から静脈情報を取得する静脈情報取得部と、人の所定部位と接触し、所定部位による押圧の程度に応じた信号を出力する検出センサと、検出センサからの信号に応じて、所定部位の状態が指掌紋情報および静脈情報を取得すべき状態であるか否かを判定し、判定結果に応じて、指掌紋情報および静脈情報を取得するように指掌紋情報取得部および静脈情報取得部を制御する制御部と、指掌紋情報および静脈情報を用いて、本人認証をおこなう本人認証部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指掌紋情報および静脈情報を用いて本人認証をおこなう生体認証装置と、生体認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、指紋、顔、声紋などの生体情報を複数用いて本人認証をおこなうマルチモーダル生体認証技術が知られている。マルチモーダル生体認証技術に関して、1つのイメージセンサーにより2つの生体情報を取得する技術が知られている(特許文献1)。また、生体情報ごとに取得する際の光源を変える技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−234040号
【特許文献2】特開2005−168627号
【特許文献3】特開2006−277341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、利用者から指紋や掌紋などの生体的特徴を表す指掌紋情報や、静脈の生体的特徴を表す静脈情報を取得する際に、精度の高い情報を取得する技術ついてなお向上の余地があった。また、従来から、生体情報として取得された情報が生体以外の物から取得された情報であるか否かを容易に判定する技術に対しての社会的要望があった。
【0005】
本発明は、上記した従来の課題の少なくとも一部を解決するためになされた発明であり、生体認証装置において、取得する指掌紋情報および静脈情報の精度の向上を図ることを目的とする。また、生体情報として取得された情報が生体以外の物から取得された情報であるか否かを容易に判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[第1の適用例]
指紋や掌紋の生体的特徴を表す指掌紋情報と、静脈の生体的特徴を表す静脈情報とを用いて、本人認証をおこなう生体認証装置であって、人の所定部位から前記指掌紋情報を取得する指掌紋情報取得部と、前記人の所定部位から前記静脈情報を取得する静脈情報取得部と、前記人の所定部位と接触し、前記所定部位による押圧の程度に応じた信号を出力する検出センサと、前記検出センサからの信号に応じて、前記所定部位の状態が前記指掌紋情報および前記静脈情報を取得すべき状態であるか否かを判定し、前記判定結果に応じて、前記指掌紋情報および前記静脈情報を取得するように前記指掌紋情報取得部および前記静脈情報取得部を制御する制御部と、前記指掌紋情報および前記静脈情報を用いて、本人認証をおこなう本人認証部と、を備える生体認証装置。
【0008】
この適用例によれば、制御部は、所定部位の状態が指掌紋情報および静脈情報を取得すべき状態か否かを判定し、指掌紋情報取得部および静脈情報取得部は、制御部による判定結果に応じて指掌紋情報および静脈情報を取得するため、取得する取得指掌紋情報および静脈情報の精度の向上を図ることができる。
【0009】
[第2の適用例]
第1の適用例に記載の生体認証装置において、前記制御部は、前記所定部位による前記押圧の程度が所定値より大きい場合に、前記所定部位の状態が前記指掌紋情報を取得すべき状態であると判定し、前記所定部位による前記押圧の程度が前記所定値より小さい場合に、前記所定部位の状態が第1の前記静脈情報を取得すべき状態であると判定する生体認証装置。この適用例によれば、押圧の程度が所定値より大きい状態の所定部位から指掌紋情報を取得し、押圧の程度が所定値より小さい状態の所定部位から静脈情報を取得するため、取得する取得指掌紋情報および静脈情報の精度の向上を図ることができる。
【0010】
[適用例3]
適用例2に記載の生体認証装置において、前記制御部は、前記所定部位による前記押圧の程度が前記所定値より大きい場合に、前記所定部位の状態が第2の前記静脈情報を取得すべき状態であると判定する生体認証装置。この適用例によれば、取得した第2の静脈情報を用いて、第1の静脈情報および第2の静脈情報が生体以外の物から取得された情報であるか否かを容易に判定することができる。
【0011】
[第4の適用例]
適用例3に記載の生体認証装置において、前記制御部は、前記第1の静脈情報と、前記第2の静脈情報と、を比較することにより、前記第1の静脈情報および前記第2の静脈情報を取得した前記所定部位が生体であるか否かを判定する生体認証装置。この適用例によれば、第1の静脈情報と、第2の静脈情報と、を比較することにより、第1の静脈情報および第2の静脈情報を取得した所定部位が生体以外の物から否かを容易に判定することができる。
【0012】
[適用例5]
適用例1に記載の生体認証装置はさらに、利用者に操作案内を通知する通知部を備え、前記制御部は、前記所定部位の状態が前記指掌紋情報もしくは前記静脈情報を取得すべき状態ではないと判定すると、前記通知部を制御して、前記所定部位の状態が前記指掌紋情報もしくは前記静脈情報を取得すべき状態となるための操作案内を前記利用者に通知する生体認証装置。この適用例によれば、利用者に対して、所定部位の状態を前記指掌紋情報もしくは前記静脈情報を取得すべき状態とするための操作案内を通知することができるため、取得する取得指掌紋情報および静脈情報の精度の向上を図ることができる。
【0013】
[適用例6]
人の所定部位から指紋や掌紋の生体的特徴を表す指掌紋情報を取得する指掌紋情報取得部と、前記人の所定部位から静脈の生体的特徴を表す静脈情報を取得する静脈情報取得部と、を備える生体認証装置を用いて、本人認証をおこなう生体認証方法であって、前記人の所定部位による押圧の程度に応じた信号を出力する工程と、前記信号に応じて、前記所定部位の状態が指掌紋情報および前記静脈情報を取得すべき状態であるか否かを判定し、前記判定結果に応じて前記指掌紋情報および前記静脈情報を取得するように前記指掌紋情報取得部および前記静脈情報取得部を制御する工程と、前記指掌紋情報および前記静脈情報を用いて、本人認証をおこなう工程と、を備える生体認証方法。
【0014】
[適用例7]
適用例1に記載の生体認証装置において、前記指掌紋情報取得部は、前記人の所定部位が置かれる載置面を有し、前記静脈情報取得部は、前記指掌紋情報取得部の前記載置面との間で段差を有する第1の部分と、前記載置面と同じ高さの第2の部分とを有しており、前記人の所定部位が前記指掌紋情報取得部の前記載置面上に静止した状態で、前記静脈情報として、前記第1の部分における第1の静脈情報と、前記第1と第2の部分の境界の近傍部分における第2の静脈情報と、を取得し、前記本人認証部は、前記第1の静脈情報が鮮明であり、前記第2の静脈情報が鮮明でない場合には、前記人の所定部位が生体由来のものと判定し、前記第1の静脈情報及び前記第2の静脈情報のいずれもが鮮明である場合には、前記人の所定部位が生体由来のものでないと判定する第1の判定処理を実行する、生体認証装置。
この適用例によれば、第2の静脈情報の鮮明さにより人の所定部位が生体由来のものか、人の所定部位が生体由来のものでないもの(人造のもの)か、を判断できるので、人造物による認証を抑制できる。
【0015】
[適用例8]
適用例7に記載の生体認証装置において、前記静脈情報取得部は、前記人の所定部位が、前記載置面の第1の位置に置かれた時と、前記第1の位置よりも予め定められた以上手前の位置である第2の位置に置かれた時、のそれぞれにおいて前記第1、第2の静脈情報を取得し、前記本人認証部は、前記第1の判定処理において前記人の所定部位が生体由来のものと判断した場合であっても、第2の判定処理を実行し、前記本人認証部は、前記第2の判定処理において、前記第1の位置において取得した前記第2の静脈情報が不鮮明であり、前記第2の位置において取得した前記第1の静脈情報の一部であって、前記人の部位の中の、前記第1の位置において取得した前記第2の静脈情報に対応する部位における前記第1の静脈情報の一部が鮮明である場合には、前記人の所定部位が生体由来のものと判断し、前記第1の位置において取得した前記第2の静脈情報が不鮮明であり、前記第2の位置において取得した前記第1の静脈情報の一部であって、前記人の部位の中の、前記第1の位置において取得した前記第2の静脈情報に対応する部位における前記第1の静脈情報の一部も不鮮明である場合には、前記人の所定部位が生体由来のものでないと判定する、生体認証装置。
人の所定部位が生体由来であれば、前記人の所定部位が配置される位置が変わり押圧範囲が変われば所定部位に流れる血流量が変わり観測される静脈情報が変わる。したがって、この適用例によれば、第2の静脈情報による判定を欺瞞するように精巧に人に所定部位が作られていても、第1の位置における第2の静脈情報と、第2の位置における第1の静脈情報の一部が同じ場合には、所定部位に流れる血流量が変わっていないことになり、人の所定部位が生体由来のものでないと判断することが可能となる。
【0016】
[適用例9]
適用例7または適用例8に記載の生体認証装置において、前記静脈情報取得部は、前記検出センサの出力に応じて前記第2の静脈情報を取得するための前記第1と第2の部分の境界の近傍部分の大きさを変更し、前記所定部位による押圧が大きいほど前記近傍部分の大きさを広くする、生体認証装置。
所定部位による押圧が大きいほど所定部位に血流が流れにくくなる。この適用例によれば、所定部位による押圧に応じて、第2の範囲の大きさを変えることにより、人の所定部位が生体由来のものか否かの判断を容易にすることが可能となる。
【0017】
なお、本発明は、上記以外の種々の形態で実現することが可能であり、例えば、生体認証方法、生体認証方法または生体認証装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記憶媒体等の形態で実現することができる。また、本発明に係る生体認証装置は、適宜、他の部材と組み合わせて適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例としての生体認証装置を適用したATMの外観を例示した説明図である。
【図2】生体情報取得部の構成を例示した説明図である。
【図3】ATM100の内部構成を示すブロック図である。
【図4】ATMにおいて実行される本人認証処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。
【図6】指先検知センサおよび指元検知センサの出力と指掌紋情報取得部および静脈情報取得部による撮像との対応関係を例示した説明図である。
【図7】取得対象情報判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】両生体情報取得判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。
【図10】指紋情報取得判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】静脈情報取得判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。
【図13】タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。
【図14】タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。
【図15】弱圧時静脈情報を例示した説明図である。
【図16】強圧時静脈情報を例示した説明図である。
【図17】第2実施例の生体認証装置の構成を示す説明図である。
【図18】生体に由来する指について取得される生体情報を示す説明図である。
【図19】生体に由来しない人造の指について取得される生体情報を示す説明図である。
【図20】第2の実施例の変形例を説明する説明図である。
【図21】本実施例における生体情報の登録処理を示すフローチャートである。
【図22】本実施例における認証処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0020】
A.第1実施例
A1.全体構成:
図1は、本発明の一実施例としての生体認証装置を適用したATMの外観を例示した説明図である。このATM100は、タッチパネル106と、生体情報取得部200と、スピーカSPと、を備えている。タッチパネル106は、メニュー画面や各種操作案内を表示するとともに、ユーザによるタッチ入力を受け付ける。
【0021】
生体情報取得部200は、後述する指掌紋情報取得部や静脈情報取得部を含み、生体情報取得部200に置かれた手(指)を撮像し、生成した画像から生体情報として、静脈の生体的特徴を表す静脈情報と、指紋や掌紋の生体的特徴を表す指掌紋情報を抽出する。ここで、静脈情報および指掌紋情報とは、例えば、静脈パターンや、指紋や掌紋(以後「指掌紋」とも呼ぶ)のパターンであってもよいし、静脈や指掌紋の模様の特徴を表す場所に設定される特徴点の位置に関する情報や、静脈や指掌紋の特徴を表す量である特徴量の関する情報であってもよい。また、静脈情報および指掌紋情報には、指紋や指掌紋を撮像した画像自体も含まれる。本実施例では、指の静脈パターンおよび指紋パターンを静脈情報および指掌紋情報として説明する。
【0022】
スピーカSPは、ATM100についての操作案内を音声出力する。本実施例におけるタッチパネル106、もしくは、スピーカSPの少なくとも一方が特許請求の範囲における「通知部」に該当する。
【0023】
ATM100では、利用者が現金の払い戻しを行う場合や振込みを行う場合などに本人認証が行われる。具体的には、タッチパネル106に表示された操作案内に従って利用者が手を生体情報取得部200に置くと、生体情報取得部200において指の静脈情報および指掌紋情報が抽出される。そして、抽出された静脈情報および指掌紋情報が予め登録されている本人の静脈情報および指掌紋情報と一致すると、本人認証が成功して、ユーザは、払い戻しや振込みなどの処理を引き続き行うことができる。
【0024】
図2は、生体情報取得部の構成を例示した説明図である。生体情報取得部200は、指掌紋情報取得部102と、静脈情報取得部130と、指先検知センサ104と、指元検知センサ105と、を備えている。指掌紋情報取得部102は、指の指紋を撮像し、指紋の画像(以後、「指紋画像」とも呼ぶ)を生成する。具体的には、指掌紋情報取得部102は、保護膜102fを備え、保護膜102fと接触した指の指紋の凹凸に応じて指紋画像を生成する。本実施例では、指掌紋情報取得部102は、保護膜の下に複数の電極を備え、保護膜に指紋の凹凸が接触することよる各電極の電荷の変化量に基づいて指紋画像を生成する半導体式が採用されている。なお、指紋撮影部は、半導体方式に限定されず種々の方式を採用することができる。例えば、光を照射する光源部と、受光した光の量(指紋による陰影)に応じて電荷を生じるイメージセンサーとを備え、光源部から指(指紋)に照射された光の反射光をイメージセンサーが受光することにより指紋画像を生成する光学式が採用されていてもよい。また、指掌紋情報取得部102は、指紋画像から指掌紋情報を抽出する。指掌紋情報の抽出は公知の技術によりおこうことができる。
【0025】
静脈情報取得部130は、指の静脈を撮像し、静脈の画像(以後、「静脈画像」とも呼ぶ)を生成する。具体的には、静脈情報取得部130は、近赤外線LED132を含む指照射光源部131と、赤外カメラ133と、を備えている。近赤外線LED132は、生体情報取得部200に配置される手(指)の上方に配置され、手に対して近赤外光を照射する。赤外カメラ133は、生体情報取得部200に配置される手(指)の下方に配置され、近赤外線LED132から照射されて手(指)を透過した近赤外光を受光し、受光量(静脈による陰影)に応じて静脈画像を生成する。また、静脈情報取得部130は、静脈画像から静脈情報を抽出する。静脈情報の抽出は公知の技術によりおこうことができる。
【0026】
指先検知センサ104は、指掌紋情報取得部102の下方において、指掌紋情報取得部102と接触する位置に配置され、指先による押圧の程度を検出するとともに、押圧の程度に応じた信号を出力する。指元検知センサ105は、指の根元である指元と接触する位置に配置され、指元の押圧の程度を検出するとともに、押圧の程度に応じた信号を出力する。ここで、信号とは、押圧の程度の値を表すデジタル信号に限られず、アナログ信号や、押圧の程度に応じて大きくなる電圧値なども含まれる。本実施例では、信号は電圧値であり、指先検知センサ104および指元検知センサ105は、押圧の程度が大きいほど出力が大きくなるセンサとして説明する。
【0027】
なお、本実施例では、指先検知センサ104は、指掌紋情報取得部102の下方に配置されているが、指先検知センサ104の位置は、指掌紋情報取得部102の下方に限られず、これ以外の位置に配置されていてもよい。例えば、指先検知センサ104は、指掌紋情報取得部102と隣接した位置に配置され、指先と直接接触する態様であってもよい。また、指先検知センサ104および指元検知センサ105は、指の押圧を受け、受けた力に基づいて信号の出力をおこなっているが、押圧の程度に応じた信号の出力が可能であれば、必ずしも受けた力に基づいた信号の出力をおこなう必要はなく、例えば、押圧の程度に応じて押し下げられる指の位置(高さ)や、押圧による指の変色の程度に基づいた信号の出力をおこなう態様であってもよい。
【0028】
さらに、押圧による指の静脈特徴の量や密度の変化の程度を静脈情報取得部130で撮像した静脈画像から静脈として分類される画素数の変化から測定し、出力をおこなう態様であってもよい。もしくは静脈情報取得部130で撮像した静脈画像から抽出して照合時に生成する静脈特徴量から量や密度を測定し、出力をおこなう態様であってもよい。また、図3に記載の生体情報格納部113に格納され、ID情報に対応する静脈情報である対応登録生体情報が1つの場合には、生体認証照合部111で静脈特徴量と対応登録生体情報の照合を行い、その一致率を表す照合スコアから押圧の程度の出力をおこなう態様であってもよい。対応登録生体情報は適切な押圧で取得されていると想定されるので、押圧が高くなり静脈パターンが消えると対応登録生体情報との差異が大きくなることが予想され、一致率が低くなり、結果として照合スコアが悪くなる。そのため照合スコアから押圧の程度の出力をおこなうことが可能となる。
【0029】
図3は、ATM100の内部構成を示すブロック図である。ATM100は、上述した指掌紋情報取得部102と、静脈情報取得部130と、指先検知センサ104と、指元検知センサ105と、タッチパネル106と、スピーカSPと、の他に、さらに、本人認証部110と、制御部101と、を備えている。本人認証部110は、生体認証照合部111と、生体情報検索部112と、生体情報格納部113と、を含んでいる。生体情報格納部113には、各口座の利用者について予め登録された指掌紋情報および静脈情報が格納されている。生体情報検索部112は、生体情報格納部113を制御し、利用者から入力されたID情報等に基づいて、ID情報と対応する指掌紋情報および静脈情報を生体情報格納部113から検索する。生体認証照合部111は、指掌紋情報取得部102および静脈情報取得部130により取得された指掌紋情報および静脈情報と、生体情報検索部112により検索された指掌紋情報および静脈情報とを照合し、本人認証をおこなう。
【0030】
制御部101は、図示しないCPUやメモリを備え、バスを介して指掌紋情報取得部102と、静脈情報取得部130と、指先検知センサ104と、指元検知センサ105と、タッチパネル106と、本人認証部110と、互いに接続されている。制御部101は、ATM100の全体の動作を制御するほか、種々のデータについての処理を行う。制御部101は、CPUがメモリに格納されているプログラムを処理することにより、後述する本人認証処理を実行する。本実施例では、制御部101は、CPUがプログラムを処理することにより実現されるソフトウェア的な態様で示されているが、集積回路等により実現されるハードウェア的な態様としてもよい。なお、ATM100は、上記の他に、ATM100に投入された金銭をATM100内部の図示しない金庫に収めたり、この金庫から必要な金銭を払い出したりする入出金機構部や、ATM100に挿入されるキャッシュカードから口座番号を読み出したり、ATM100に挿入される通帳に記帳を行うカード/通帳処理機構部や、ATM100をネットワークに接続するためのインタフェースを備えていてもよい。
【0031】
A2.本人認証処理:
図4は、ATMにおいて実行される本人認証処理の手順を示すフローチャートである。利用者が、現金の払い戻しを行うために、タッチパネル120において払い戻しのメニューを選択すると、ATM100において本人認証処理が実行される。制御部101は、利用者にID情報の入力を要求する(ステップS301)。具体的には、制御部101は、タッチパネル106にID情報を入力する旨の操作案内をタッチパネル106に表示する。利用者にID情報を入力する旨の操作案内は、タッチパネル106に表示してもよいし、スピーカSPによる音声によりおこなってもよい。また、利用者のID情報は、利用者からの入力に限られず、例えば、制御部101は、ATM100に挿入されたキャッシュカードからID情報を取得してもよい。
【0032】
制御部101は、ID情報が入力されたか否かを判定する(ステップS302)。ステップS302においてID情報が入力されたと判定した場合には、制御部101は、入力されたID情報を用いて、生体情報格納部113から、ID情報に対応する指掌紋情報および静脈情報「以後、「対応登録生体情報」とも呼ぶ」を生体情報格納部113から検索する(ステップS303)。
【0033】
制御部101は、生体情報取得部200に指を設置するように利用者に要求する(ステップS304)。図5は、タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。制御部101は、生体情報取得部200に指を設置する旨の操作案内が表された操作案内画像W1をタッチパネル106に表示する。なお、生体情報取得部200に指を設置する旨の操作案内は、タッチパネル106に表示してもよいし、スピーカSPによる音声によりおこなってもよい。
【0034】
制御部101は、指が生体情報取得部200に設置されたか否かを判定する(ステップS306)。ステップS306において生体情報取得部200に指が設置されたと判定した場合には、取得対象情報判定処理を実行する(ステップS307)。取得対象情報判定処理とは、生体情報取得部200に設置された指の設置状態に応じて、取得する生体情報を選択する処理である。具体的には、指先検知センサ104および指元検知センサ105からの信号に応じて、生体情報取得部200に設置された指の状態が指掌紋情報もしくは静脈情報を取得すべき状態か否かを判定する処理である。
【0035】
図6は、指先検知センサおよび指元検知センサの出力と指掌紋情報取得部および静脈情報取得部による撮像との対応関係を例示した説明図である。ここでは、指先検知センサ104および指元検知センサ105からの出力をそれぞれ出力の強弱に応じて3段階(強、中、弱)に分類する。具体的には、検知センサからの出力Gと、4つの閾値L1、L2、L3、L4(L1>L2>L3>L4)との関係で、L1>G≧L2であれば、検知センサの出力レベルをレベルA(強)と表し、L2>G≧L3であれば、出力レベルをレベルB(中)と表し、L3>G≧L4であれば、出力レベルをレベルC(弱)で表す。また、指先検知センサ104の出力レベルをF1で表し、指元検知センサ105の出力レベルをF2で表す。すなわち、本実施例では、指先検知センサ104の出力Gが、L1>G≧L2であれば、指先検知センサ104の出力レベルF1はレベルAであり、単に「F1=A」とも表す。なお、指先検知センサ104および指元検知センサ105の閾値は同じ値である必要はなく、それぞれ異なる値であってもよい。なお、特許請求の範囲における「所定値」とは、指先検知センサの出力レベルがレベルBとなる範囲における指先の押圧の程度を表している。
【0036】
制御部101は、指先検知センサ104および指元検知センサ105からの出力レベルがそれぞれ所定の条件を満たす場合に、指の状態が指掌紋情報もしくは静脈情報を取得すべき状態であると判定する。すなわち、制御部101は、指先検知センサ104および指元検知センサ105からの出力の組み合わせにより、指が指掌紋情報もしくは静脈情報を取得する状態か否かを判定する。
【0037】
具体的には、指紋情報については、指先検知センサ104の出力レベルF1がレベルA(F1=A)である場合に取得をおこなう。指紋が明瞭に表された指紋画像を撮像するためには、指先を指掌紋情報取得部102に強く押しつけた状態において撮像することが望ましいためである。指紋が明瞭に表された指紋画像を取得することで、精度の高い指紋情報を抽出することができる。
【0038】
静脈情報については、指先検知センサ104の出力レベルF1および指元検知センサ105の出力レベルF2がそれぞれレベルC(F1=F2=C)である場合に取得をおこなう。静脈が明瞭に表された静脈画像を撮像するためには、指の血流が抑制されていない状態において撮像することが望ましいためである。静脈の撮像は、血液中のヘモグロビンが近赤外光を吸収する特性を利用しているため、指先もしくは指根元において押圧された状態では、血流が抑制され、明瞭な静脈が表された静脈画像を取得することができないためである。指紋が明瞭に表された指紋画像を取得することで、精度の高い指紋情報を抽出することができる。
【0039】
取得対象情報判定処理の具体的な処理手順について説明する。図7は、取得対象情報判定処理の手順を示すフローチャートである。制御部101は、生体情報取得部200に設置されている手についての指掌紋情報を既に取得しているか否かを判定し(ステップS401)、指掌紋情報を取得していない場合には(ステップS401:NO)、生体情報取得部200に設置されている手についての静脈情報を既に取得しているか否かを判定する(ステップS402)。静脈情報についても取得していない場合には(ステップS402;NO)、両生体情報取得判定処理をおこなう。両生体情報取得判定処理は、生体情報取得部200に設置された指の設置状態に応じて指掌紋情報もしくは静脈情報を取得すべき状態であるか否か判定する処理である。
【0040】
図8は、両生体情報取得判定処理の手順を示すフローチャートである。制御部101は、検知センサの出力を取得する(ステップS501)。具体的には、指先検知センサ104および指元検知センサ105のそれぞれの出力から出力レベルを取得する。制御部101は、指先検知センサ104の出力レベルF1がレベルAであるか否かを判定し(ステップS502)、出力レベルF1がレベルAである場合には(ステップS502:YES)、指掌紋情報の取得は可能と判定する(ステップS503)。以後、この判定を「指掌紋情報取得可能判定」と呼ぶ。指紋情報取得可能判定をすると、両生体情報取得判定処理は終了する。
【0041】
出力レベルF1がレベルAではない場合には(ステップS502:NO)、制御部101は、指先検知センサ104の出力レベルF1および指元検知センサ105の出力レベルF2がそれぞれレベルCであるか否かを判定する(ステップS504)。出力レベルF1および出力レベルF2がそれぞれレベルCである場合には(ステップS504:YES)、制御部101は、静脈情報の取得は可能と判定する(ステップS505)。以後、この判定を「静脈情報取得可能判定」と呼ぶ。静脈情報取得可能判定をすると、両生体情報取得判定処理は終了する。
【0042】
出力レベルF1および出力レベルF2がそれぞれレベルCではない場合には(ステップS504:YES)、制御部101は、生体情報取得部200に指先を強く押しつけるように利用者に要求する(ステップS506)。図9は、タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。制御部101は、生体情報取得部200に指先を強く押しつける旨の操作案内が表された操作案内画像W2をタッチパネル106に表示する。なお、生体情報取得部200に指先を強く押しつける旨の操作案内は、タッチパネル106に表示してもよいし、スピーカSPによる音声によりおこなってもよい。制御部101は、生体情報取得部200に指先を強く押しつけるように利用者に要求したのち、再度、ステップS501に戻り、検知センサの出力を取得する。以上が両生体情報取得判定処理である。
【0043】
図7に戻り、ステップS402において、静脈情報を既に取得している場合には(ステップS402;YES)、指掌紋情報取得判定処理をおこなう(ステップS404)。指掌紋情報取得判定処理は、生体情報取得部200に設置された指の設置状態に応じて指掌紋情報を取得すべき状態であるか否か判定する処理である。
【0044】
図10は、指紋情報取得判定処理の手順を示すフローチャートである。制御部101は、検知センサの出力を取得する(ステップS601)。具体的には、指先検知センサ104および指元検知センサ105のそれぞれの出力から出力レベルを取得する。制御部101は、指先検知センサ104の出力レベルF1がレベルAであるか否かを判定し(ステップS602)、出力レベルF1がレベルAである場合には(ステップS602:YES)、指紋情報取得可能判定をおこなう(ステップS603)。指紋情報取得可能判定をすると、指紋情報取得判定処理は終了する。
【0045】
出力レベルF1がレベルAではない場合には(ステップS602:NO)、制御部101は、生体情報取得部200に指先を強く押しつけるように利用者に要求する(ステップS604)。図9に示すように、制御部101は、生体情報取得部200に指先を強く押しつける旨の操作案内が表された操作案内画像W2をタッチパネル106に表示する。なお、生体情報取得部200に指先を強く押しつける旨の操作案内は、タッチパネル106に表示してもよいし、スピーカSPによる音声によりおこなってもよい。制御部101は、生体情報取得部200に指先を強く押しつけるように利用者に要求したのち、再度、ステップS601に戻り、検知センサの出力を取得する。以上が指紋情報取得判定処理である。
【0046】
図7に戻り、ステップS401において、指掌紋情報を既に取得している場合には(ステップS401;YES)、静脈情報取得判定処理をおこなう(ステップS405)。静脈情報取得判定処理は、生体情報取得部200に設置された指の設置状態に応じて静脈情報を取得すべき状態であるか否か判定する処理である。
【0047】
図11は、静脈情報取得判定処理の手順を示すフローチャートである。制御部101は、検知センサの出力を取得する(ステップS701)。具体的には、指先検知センサ104および指元検知センサ105のそれぞれの出力から出力レベルを取得する。制御部101は、指先検知センサ104の出力レベルF1および指元検知センサ105の出力レベルF2がそれぞれレベルCであるか否かを判定し(ステップS702)、出力レベルF1および出力レベルF2がそれぞれレベルCである場合には(ステップS702:YES)、静脈情報取得可能判定をおこなう(ステップS703)。静脈情報取得可能判定をすると、静脈情報取得判定処理は終了する。
【0048】
出力レベルF1および出力レベルF2がそれぞれレベルCではない場合には(ステップS702:NO)、制御部101は、出力レベルF1がレベルCであるか否かを判定する(ステップS704)、出力レベルF1がレベルCではない場合(ステップS704:YES)、制御部101は、生体情報取得部200に指先を軽く接触させるように利用者に要求する(ステップS705)。図12は、タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。制御部101は、生体情報取得部200に指先を軽く接触させる旨の操作案内が表された操作案内画像W3をタッチパネル106に表示する。なお、生体情報取得部200に指先を軽く接触させる旨の操作案内は、タッチパネル106に表示してもよいし、スピーカSPによる音声によりおこなってもよい。制御部101は、生体情報取得部200に指先を軽く接触させるように利用者に要求したのち、出力レベルF2がレベルCであるか否かを判定する(ステップS706)。また、ステップS704において、出力レベルF1がレベルCである場合(ステップS704:NO)についても、出力レベルF2がレベルCであるか否かを判定する(ステップS706)。
【0049】
制御部101は、出力レベルF2がレベルCではない場合(ステップS706:YES)、制御部101は、生体情報取得部200に指根元を軽く接触させるように利用者に要求する(ステップS707)。図13は、タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。制御部101は、生体情報取得部200に指根元を軽く接触させる旨の操作案内が表された操作案内画像W4をタッチパネル106に表示する。なお、生体情報取得部200に指根元を軽く接触させる旨の操作案内は、タッチパネル106に表示してもよいし、スピーカSPによる音声によりおこなってもよい。制御部101は、生体情報取得部200に指根元を軽く接触させるように利用者に要求したのち、再度、ステップS701に戻り、検知センサの出力を取得する。また、出力レベルF2がレベルCである場合(ステップS706:NO)についても、再度、ステップS701に戻る。以上が静脈情報取得判定処理である。上記の両生体情報取得判定処理、指紋情報取得判定処理、静脈情報取得判定処理を含む取得対象情報判定処理が実行されると、制御部101により、指紋情報取得可能判定もしくは静脈情報取得可能判定のいずれか一方の判定がなされる。
【0050】
図4に戻り、制御部101は、取得対象情報判定処理において、指紋情報取得可能判定をおこなった場合には(ステップS308:YES)、指の指紋の撮像をおこなう(ステップS309)。制御部101は、指の指紋の撮像により指紋画像を生成し、指紋画像から指掌紋情報を抽出する。また、制御部101は、指の静脈の撮像をおこなう(ステップS310)。制御部101は、指の静脈の撮像により静脈画像を生成し、静脈画像から静脈情報を抽出する。このステップS310において抽出された静脈情報は、指先が押圧された状態(F1=A)において撮像された静脈画像から抽出されているため、以後、「強圧時静脈情報」と呼ぶ。強圧時静脈情報は、後述する生体真偽判定において用いられる。強圧時静脈情報は、特許請求の範囲における「第2の静脈情報」に該当する。
【0051】
制御部101は、取得対象情報判定処理において、指紋情報取得可能判定をおこなっていない場合には(ステップS308:NO)、静脈情報取得可能判定をおこなっている。この場合、制御部101は、指の静脈の撮像をおこなう(ステップS311)。制御部101は、指の静脈の撮像により静脈画像を生成し、静脈画像から静脈情報を抽出する。このステップS311において抽出された静脈情報は、指先および指根元が押圧されていない、もしくは、押圧が弱い状態(F1=F2=C)において撮像された静脈画像から抽出されているため、以後、「弱圧時静脈情報」とも呼ぶ。弱圧時静脈情報は、特許請求の範囲における「第1の静脈情報」に該当する。
【0052】
制御部101は、指掌紋情報および静脈情報の両方を取得するまでステップS307〜ステップS311の処理を繰り返す(ステップS312:NO)。制御部101は、指掌紋情報および静脈情報の両方を取得すると(ステップS312:YES)、生体情報取得部200から指を離すように利用者に要求する(ステップS313)。図14は、タッチパネルに表示される操作案内画像を例示した説明図である。制御部101は、生体情報取得部200から指を離す旨の操作案内が表された操作案内画像W5をタッチパネル106に表示する。なお、生体情報取得部200から指を離す旨の操作案内は、タッチパネル106に表示してもよいし、スピーカSPによる音声によりおこなってもよい。
【0053】
制御部101は、生体情報取得部200から指を離すように利用者に要求したのち、ステップS309において抽出した指掌紋情報およびステップS311において抽出した静脈情報と、ステップ303において検索した対応登録生体情報とを照合する(ステップS314)。具体的には、制御部101は、ステップS309において抽出した指掌紋情報およびステップS311において抽出した静脈情報と、ステップ303において検索した対応登録生体情報である指掌紋情報および静脈情報とをそれぞれ照合する。照合方法としては、例えば、取得した指掌紋情報および静脈情報に含まれる静脈パターンおよび指紋パターンからそれぞれ特徴点を抽出し、抽出した特徴点と、対応登録生体情報として予め設定されている特徴点との距離(差異)に基づいて算出した照合スコアが所定値より高いか低いかによりおこなうことができる。
【0054】
照合スコアが所定値より低い場合、抽出した指掌紋情報および静脈情報と、対応登録生体情報である指掌紋情報および静脈情報との一致率が高いことを表す。なお、特徴点照合スコアは、特徴点同士の距離(距離)に基づいて算出するほかに、例えば、静脈パターンおよび指紋パターンの画素値等の特徴量と、対応登録生体情報に含まれる特徴量との差分に基づいて算出してもよい。
【0055】
制御部101は、抽出した静脈情報および指掌紋情報と、対応登録生体情報との照合の後、指の生体真偽判定をおこなう(ステップS315)。生体真偽判定は、指掌紋情報および静脈情報の抽出に用いられた指掌紋画像および静脈画像を撮像した指が生体であるか否かを判定する処理である。具体的には、制御部101は、ステップS310において抽出した強圧時静脈情報と、ステップS311において抽出した弱圧時静脈情報とを照合することにより、指掌紋情報および静脈情報を取得した指が生体であるか否かを判定する。ここで、指が生体であるためには、指に血流がある必要があり、生体の一部であっても、生体と分断されて血流のない指はここでいう生体には含まれない。
【0056】
図15は、弱圧時静脈情報を例示した説明図である。図16は、強圧時静脈情報を例示した説明図である。弱圧時静脈情報Iweは、指先検知センサ104の出力レベルF1および指元検知センサ105の出力レベルF2がともにレベルCの状態(F1=F2=C)において撮影されているため、指の血流が抑制されていない状態で静脈が撮像されている。よって、図15に示すように、弱圧時静脈情報には、明瞭な静脈パターンPtが現れている。
【0057】
一方、強圧時静脈情報は、指先検知センサ104の出力レベルF1がレベルAの状態(F1=A)において撮影されているため、指先の血流が抑制された状態で静脈が撮像されている。よって、指根元についても血流が抑制された状態(F1=F2=A)であれば、図16(a)に示すように、強圧時静脈情報Ist1には、静脈パターンが現れていない、もしくは、全体的に明瞭ではない静脈パターンが現れている。また、指根元については血流が抑制されていない状態(F1=A,F2=C)であれば、図16(b)に示すように、強圧時静脈情報Ist2には、指先付近が明瞭ではない静脈パターンPtが現れている。
【0058】
制御部101は、弱圧時静脈情報に現れている静脈パターンと、強圧時静脈情報に現れている静脈パターンとを照合して、指掌紋情報および静脈情報を取得した指が生体であるか否かを判定する。具体的には、例えば、弱圧時静脈情報に現れている静脈パターンおよび強圧時静脈情報に現れている静脈パターンからそれぞれ特徴量を抽出し、抽出した特徴量の差分に基づいて算出した照合スコアが所定の値より高いか否かにより判定することができる。特徴量としては、例えば、静脈パターン画像の画素値を採用することができる。
【0059】
生体の指は、指への押圧状態の違いにより血流状態が異なる。そのため、指が生体であれば、弱圧時静脈情報に現れている静脈パターンの特徴量と強圧時静脈情報に現れている静脈パターンの特徴量に差異が生じる。一方、指が生体ではない場合、静脈として表されている物体は、押圧状態の違いに関わらず同様に撮像画像に表れるため、弱圧時静脈情報に現れている静脈パターンの特徴量と強圧時静脈情報に現れている静脈パターンの特徴量に差異が生じない。よって、弱圧時静脈情報に現れている静脈パターンの特徴量と強圧時静脈情報に現れている静脈パターンの特徴量との差分に基づいて算出した照合スコアは、指が生体の場合には、指が生体ではない場合と比べて高い値となる。よって、制御部101は、照合スコアが所定の値より高い場合、指は生体であると判定し、照合スコアが所定の値より低い場合、指は生体ではないと判定する。これにより、指が生体か否かを容易に判定することができる。
【0060】
なお、指が生体か否かについて判定は、ステップS314における照合方法と同様に、静脈パターンの特徴点同士の距離(差異)に基づいて算出した照合スコアを用いて判定することもできる。また、強圧時静脈情報に現れている静脈パターンの特徴量と、対応登録生体情報に含まれる特徴量との差分に基づいて算出した照合スコアを用いて判定することもできる。また、生体の指は、指への押圧状態の違いにより指表面の色が変化する。そのため、指が押圧されている状態における指表面の画像と、押圧されていない状態の指表面の画像の画素値の差分に基づいて算出した照合スコアを用いて判定することもできる。
【0061】
制御部101は、本人認証をおこなう(ステップS316)。具体的には、制御部101は、ステップS314における照合結果と、ステップS315における判定結果を用いて本人認証をおこなう。すなわち、制御部101は、ステップS314において、算出した照合スコアが所定値より低く、ステップS315において指が生体であると判定したときに、生体情報取得部200に指を設置した利用者は、入力されたID情報に対応する人物であると判定する。これは、生体情報取得部200から抽出した指掌紋情報および静脈情報と、入力されたID情報と対応する登録された指掌紋情報および静脈情報との一致率が高く、かつ、生体情報取得部200に設置された指が生体である場合には、本人以外の人物が本人になりすまして取引をおこなっている可能性がきわめて低いためである。
【0062】
制御部101は、本人認証の結果を表示する(ステップS317)。制御部101は、本人認証が成功すると、本人認証が成功した旨をタッチパネル106に表示し、引き続き現金払い戻しや振込などの処理を実行する。一方、制御部101は、本人認証が失敗すると、本人認証が失敗した旨と、再度認証をおこなうためのリトライボタンおよび取引を止めるための中止ボタンをタッチパネル106に表示する。利用者によりリトライボタンが選択されると(ステップS318:YES)、制御部101は、再度、ステップ304に戻り、生体情報取得部200に指を設置するように利用者に要求する(ステップS304)。一方、利用者により中止ボタンが選択されると(ステップS318:NO)、本人認証処理を終了するとともに取引を中止する。
【0063】
以上説明した、第1の実施例に係るATM100によれば、検知センサから出力された指の押圧の程度に応じた信号に応じて、生体情報取得部200に設置された指が指掌紋情報および静脈情報を取得すべき状態か否かを制御部101が判定し、指掌紋情報取得部102および静脈情報取得部130は、制御部101による判定結果に応じて指掌紋情報および静脈情報を取得するため、取得する取得指掌紋情報および静脈情報の精度の向上を図ることができる。具体的には、指掌紋情報および静脈情報は、指紋画像および静脈画像を撮像する際の指の押圧の程度の違いにより情報の精度が変化する。そのため、指の押圧状態が指紋画像もしくは静脈画像の撮像に適した状態か否かを判定し、それぞれの画像について撮像に適した状態時において撮像することで、精度の高い指掌紋情報および静脈情報を抽出することができる。
【0064】
第1の実施例に係るATM100によれば、制御部101は、指の押圧の程度が所定より大きい場合(F1=A)に、指は指掌紋情報を取得すべき状態であると判定し、指の押圧の程度が所定より小さい場合(F1=F2=C)に、指は静脈情報を取得すべき状態であると判定するため、取得する取得指掌紋情報および静脈情報の精度の向上を図ることができる。具体的には、指紋画像の撮像は、指紋の凹凸を指掌紋情報取得部102に強く押しつけた状態が望ましいため、指先が強く押しつけられた状態で撮像することで、指紋が明瞭に表された指紋画像を取得でき、精度の高い指紋情報を抽出することができる。
【0065】
また、静脈画像の撮像は、指先および指根元が強く押圧されていない状態が望ましいためである。静脈の撮像は、血液中のヘモグロビンが近赤外光を吸収する特性を利用しているため、指先もしくは指根元において押圧された状態では、血流が抑制され、明瞭な静脈が表された静脈画像を取得することができないためである。指先および指根元が強く押圧されていない状態で撮像することにより、指紋が明瞭に表された指紋画像を取得でき、精度の高い指紋情報を抽出することができる。
【0066】
第1の実施例に係るATM100によれば、制御部101は、弱圧時静脈情報と強圧時静脈情報とを照合することにより、静脈情報もしくは指掌紋情報を取得した指が生体であるか否かを容易に判定することができる。具体的には、生体の指は、指への押圧状態の違いにより血流状態が異なるため、指が生体であれば、弱圧時静脈情報に表されている静脈パターンの特徴量と強圧時静脈情報に表されている静脈パターンの特徴量に差異が生じる。一方、指が生体ではない場合、静脈として表されている物体は、押圧状態の違いに関わらず同様に撮像画像に表れるため、弱圧時静脈情報に表されている静脈パターンの特徴量と強圧時静脈情報に表されている静脈パターンの特徴量に差異が生じない。よって、弱圧時静脈情報に表されている静脈パターンの特徴量と強圧時静脈情報に表されている静脈パターンの特徴量との差分に基づいて照合スコアを算出し、照合スコアと所定値とを比較することにより、静脈情報もしくは指掌紋情報を取得した指が生体であるか否かを容易に判定することができる。
【0067】
第1の実施例に係るATM100によれば、制御部101は、指の状態が、指掌紋情報もしくは静脈情報を取得すべき状態ではないと判定すると、タッチパネル106もしくはスピーカSPを制御して、指の状態が指掌紋情報もしくは静脈情報を取得すべき状態となるための操作案内を利用者に通知するため、取得する取得指掌紋情報および静脈情報の精度の向上を図ることができる。具体的には、制御部101は、指の状態が、指掌紋情報もしくは静脈情報を取得すべき状態ではないと判定した場合には、タッチパネル106に図9、図12、図13、に示すような操作案内画像を表示し、利用者に指の状態を変更するように促すため、指紋画像もしくは静脈画像を撮像するにあたって最適な指の押圧状態においてそれぞれの画像を撮像することができる。また、スピーカSPにより音声で同様の操作案内をおこなうことができるため、スピーカSPによってもタッチパネル106と同様の効果を奏することができる。
【0068】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0069】
B1.変形例1:
本実施例では、ATM100は、生体情報検索部112および生体情報格納部113を備えているが、ATM100は、生体情報検索部112および生体情報格納部113を備えない態様であっても実現することができる。例えば、ATM100とネットワークを介して接続されている図示しないホストコンピュータが生体情報検索部112および生体情報格納部113を備え、ATM100からの要求に応じて、対応登録生体情報をATM100に送信する構成とすることで上記実施例と同様の処理を実現することができる。
【0070】
B2.変形例2:
本実施例では、利用者の指から指掌紋情報および静脈情報を取得しているが、利用者の指以外の部位から指掌紋情報および静脈情報を取得してもよい。例えば、利用者の手のひらや、足などから指掌紋情報および静脈情報を取得してもよい。また、指掌紋情報と静脈情報を利用者の異なる部位から取得する構成としてもよい。例えば、利用者の指から指掌紋情報を取得し、利用者の手のひらから静脈情報を取得してもよい。
【0071】
B3.変形例3:
本実施例では、ATM100は、タッチパネル106を備えているが、利用者との間で取引が可能となるように、ボタンなどの入力部と、スピーカSPなどの出力部があれば、タッチパネル106を備えていない構成でも実現することができる。また、ATM100は、スピーカSPを備えているが、タッチパネル106などの出力部を有していれば、スピーカSPを備えていない構成でも実現することができる。
【0072】
B4.変形例4:
本実施例では、ATM100は、本人認証処理に生体真偽判定が含まれているが、本人認証処理は生体真偽判定を含まない構成であっても実現することができる。すなわち、ステップS314における照合結果のみに基づいて本人認証をおこなえば、生体真偽判定をおこなわずに本人認証処理をおこなうことができる。この場合、強圧時静脈情報を取得する必要はない。
【0073】
B5.変形例5:
本実施例では、出力レベルF1がレベルAの時に指掌紋情報を取得し、出力レベルF1およびF2がレベルCのときに静脈情報を取得しているが、指掌紋情報および静脈情報を取得する条件はそれぞれ任意に設定可能であり、例えば、出力レベルF1がレベルAまたはレベルBの時に指掌紋情報を取得する構成としてもよいし、出力レベルF1がレベルBの時に静脈情報を取得する構成としてもよい。また、図6に示すように、本実施例では、指先検知センサ104および指元検知センサ105からの出力を3段階に分類しているが、段階数は例示であり、4段階や2段階など、3段階以外の数に分類してもよい。
【0074】
また、本実施例では、検知センサからの出力Gが、L1>G≧L2であれば、出力レベルをレベルA(強)と表し、L3>G≧L4であれば、出力レベルをレベルC(弱)で表しているが、G≧L2であれば、出力レベルをレベルAとし、レベルAに上限を設定しない態様であってもよい。また、L3>Gであれば、出力レベルをレベルCとし、レベルCに下限を設定しない態様であってもよい。
【0075】
C.第2実施例
図17は、第2実施例の生体認証装置の構成を示す説明図である。第2実施例の構成は、図2に示す第1実施例の構成とほぼ同じであるが、以下の点が異なっている。指掌紋情報取得領域201において、保護膜102fと接触した指の色を取得するためのカメラ150を備えている。また、静脈情報取得部130が静脈情報を取得する静脈情報取得領域202の範囲が、第1実施例よりも広くなっており、指掌紋情報取得領域201と一部重なっている。静脈情報取得領域202のうち、指掌紋情報取得領域201と重なっていない領域を第1の領域202A、重なっている領域を第2の領域202Bと呼ぶ。第1実施例では、第2の領域202Bについては、静脈情報が取得されない。また、第1実施例では説明しなかったが、指掌紋情報取得領域201と、第1の領域202Aとの間には段差が形成されている。すなわち、指は第1の領域202Aには接触せず、指と第1の領域202Aの間には、空間が形成される。
【0076】
図18は、生体に由来する指について、取得される生体情報を示す説明図である。指掌紋情報取得部102と重なる部分では、指の指紋が取得される。静脈情報取得領域202は、上述したように、第1の領域202Aと、第2の領域202Bと、に分けられるが、さらに、第1の領域202Aと第2の領域202Bとの境界部分を第3の領域202Cと呼ぶ。なお、本実施例では、第3の領域202Cは、第1の領域202Aの中の最も第2の領域202Bに近い部分である。
【0077】
第1の領域202A〜第3の領域202Cにおいて取得される静脈情報について説明する。第2の領域202Bでは、指紋取得のため、指が指掌紋情報取得部102に押しつけられている。そのため、当該部分における指の内部では、血管が圧迫され、血液が流れにくくなっている。したがって、第2の領域202Bでは、静脈を検出することが困難である。一方、第1の領域では、指と第1の領域202Aの間には、空間が形成されるため、当該部分における指の内部では、血管が圧迫されていない。したがって、血液は流れにくくなってはおらず、第1の領域202Aでは、静脈の形状を鮮明に検出することができる。第3の領域202Cにおいては、第2の領域202Bほどではないが、当該部分における指の内部では、血管が圧迫され、血液が流れにくくなっている。そのため、静脈の形状が不鮮明、あるいは、第2の領域202Bの場所によっては静脈を検出することができない状態になっている。
【0078】
ここで、静脈の形状が鮮明か否かの判断について説明する。制御部101は、静脈画像から、特徴点を抽出する。特徴点としては、静脈の線が始まっている点「開始点」と止まっている点「終止点」、線が分かれる点「分岐点」と線が交わる点「接合点」が挙げられる。特徴点の抽出は、静脈画像が鮮明であれば容易であるが、不鮮明であれば容易でない。また、鮮明であれば、数多くの特徴点を抽出することが出来る。したがって、抽出した特徴点の数や、特徴点の抽出時間に基づいて、静脈の形状が鮮明か否かを判断することが可能である。
【0079】
図19は、生体に由来しない人造の指について、取得される生体情報を示す説明図である。なお、本実施例では、生体に由来しない場合であっても、生体認証装置で取得される情報を生体情報と呼ぶこととする。生体に由来しない人造の指を用いて静脈認証を欺瞞する場合には、静脈中の血液が吸収する波長と同じ波長の光を吸収する物質で静脈の形状を模造することが行われる。この欺瞞技術を実行する場合、人造指の第1の領域202Aに対応する部分に、静脈の形状を模造し、第2の領域202Bに対応する部分には、静脈の形状を模造しない。しかし、第3の領域202Cについては、静脈の形状を模造することは困難である。例えば、第3の領域202Cについても静脈の形状を鮮明に形成した場合、本来不鮮明に見えるはずの静脈が、図19に示すように鮮明に見えてしまう。かかる場合には、制御部101(図3)は、生体認証装置に挿入されている指が人造のものであると判断することができる。
【0080】
以上、第2の実施例によれば、制御部101は、第1の領域202Aにおける静脈情報が鮮明であり、第3の領域202Cにおける静脈情報が鮮明でない場合には、指が生体由来のものと判断し、第1の領域202Aにおける静脈情報及び第3の領域202Cにおける静脈情報のいずれもが鮮明である場合には、指が生体由来のものでないと判断することができる。
【0081】
図20は、第2の実施例の変形例を説明する説明図である。この変形例では、指の位置を移動させて、2カ所で静脈情報を取得する。図20(A)は第1の位置において取得される生体情報を示している。第1の位置は、便宜上、図18における位置と同じにしているが、異なってもよい。図18では、第3の領域202Cにおいて、静脈の形状が不鮮明である。しかし、第3の領域202Cにおいて、静脈の形状が不鮮明であることは、挿入された指が生体由来のものであることについて必要条件ではあるが、十分条件ではない。すなわち、第3の領域202Cに対応する指部分203おいて、静脈の形状が不鮮明であるように静脈の形状を模造した場合には、制御部101が、当該指が生体由来のものである、と誤認するおそれがある。
【0082】
図20(B)(C)は、第2の位置において取得される生体情報を示している。ここで、図20(B)は、指が生体由来のものである場合、図20(C)は、指が生体由来の物でない場合、すなわち、人造の場合を示している。第2の位置は、第1の位置よりも手前であり、予め定められた以上離れている。図20(A)〜(C)を比較すれば分かるように、指部分203に対応する位置における静脈の形状は、図20(B)では鮮明であるが、図20(A)、(C)では不鮮明である。図20(A)だけでは、指部分203に対応する位置における静脈の形状が不鮮明である原因が十分に明確ではないが、第2の位置における指部分203の静脈の形状の結果(図20(B)または(C)のいずれか)と比較すれば、指部分203に対応する位置における静脈の形状が不鮮明である原因が十分に明確となる。
【0083】
例えば、第2の位置における指部分203の静脈の形状が図20(B)に示すものである場合、図20(A)で不鮮明であった静脈が、図20(B)では鮮明になっている。かかる場合は、図20(A)の状態では、指部分203が第3の領域202Cにあったために、指に圧力がかかり、血管が圧迫され、血液が流れにくくなっており、図20(B)の状態では、指部分203が、圧力がかかる指掌紋情報取得部101から離れたため、血管の圧迫が緩和され、指部分203に血流が流れ、その結果、静脈が鮮明になったと判断することが可能である。すなわち、指は生体由来のものであると判断することができる。
【0084】
一方、第2の位置における指部分203の静脈の形状が図20(C)に示すものである場合、図20(A)で不鮮明であった静脈が、図20(C)でも不鮮明になっている。かかる場合は、図20(C)に示す状態では、指部分203が第3の領域202Cから外れている。そのため、指に圧力がかかることにより血管が圧迫されることはなく、血液は流れる。したがって、上述のように、指が生体由来であれば、静脈がある程度鮮明に見えるはずである。しかしながら、静脈が鮮明に見えないというのは、元々の指部分203において血流が無かったものと判断することが可能である。すなわち、指は生体由来ではなく、人造であると判断することが可能である。
【0085】
上述した第2の実施例では、人造の指を極めて精巧に作成し、かつ、この人造の指を生体認証装置に配置する際に極めて注意深く配置した場合には、確率的には極めて低いが、人造の指を生体由来のものと誤判断する可能性があった。しかし、この変形例によれば、静脈情報取得部130が、第1の位置に指が配置されたときの第3の領域202Cの静脈情報を取得し、第1の位置よりも手前の位置である第2の位置に指が配置されたときの第1の領域202Aの静脈情報を取得し、制御部101は、第1の位置において取得した前記第3の領域202Cの静脈情報が不鮮明であり、第2の位置において取得した第1の領域202Aの静脈情報の一部であって、指部分203対応する位置における静脈情報の一部が鮮明である場合には、指が生体由来のものと判断し、第1の位置において取得した前記第3の領域202Cの静脈情報が不鮮明であり、第2の位置において取得した第1の領域202Aの静脈情報の一部であって、指部分203対応する位置における静脈情報の一部も不鮮明である場合には、指が生体由来のものでないと判断することができる。
【0086】
なお、本変形例では、最初に指を配置する第1の位置よりも2回目に指を配置する第2の位置の方が手前としているが、第1と、第2の位置は、ある程度離れていれば、どちらの位置が奥であってもよい。
【0087】
図21は、本実施例における生体情報の登録処理を示すフローチャートである。電源投入後、ステップS800では、ATM100は、生体情報取得部200を初期化する。初期化後、生体情報取得部200は、指が挿入されるのを待機する。ステップS800において指を検知すると、生体情報取得部200は、処理をステップS820に移行する。指の検知手段としては、例えば、指先検知センサ104や、指元検知センサ105を用いることができる。
【0088】
ステップS820では、指掌紋情報取得部102および静脈情報取得部130が指から指紋画像、及び静脈画像を取得する。この指紋画像、静脈画像の取得は、第1の実施例と同様に行うことが出来る。ステップS830では、制御部101は、指紋画像、及び静脈画像から、以降の本人認証、登録、生体検知に活用可能な静脈、指紋情報の特徴抽出を行う。
【0089】
ステップS840では、指の色の変化を用いて、指が生体由来のものか、否かを判断する。具体的には、指が保護膜102fに押さえつけられたときの指の色の変化を、カメラ150が取得する。一般に生体であれば、指が保護膜102fを抑えると、当該部分において血流が少なくなるため、赤みが薄くなる。したがって、この色の変化を検知することにより、制御部101は、指が生体由来のものか、否かを一次的に判断することができる。ここで、指が生体でないと判断された場合には、制御部101は、処理をステップS810に移行し、新たな指が挿入されるのを待機する。なお、制御部101は、ステップS840を飛ばして実行しなくてもよい。
【0090】
ステップS840において、指が生体由来のものであると一次的に判断された場合には、次のステップS850において、静脈情報を用いて本当に指が生体由来のものであるか、否かを判断する。制御部101は、上述した第2の実施例あるいは、その変形例の方法を用いることにより、この判断を行うことが可能である。ここで、指が生体でないと判断された場合には、制御部101は、処理をステップS810に移行し、新たな指が挿入されるのを待機する。
【0091】
ステップS850で指が生体由来のものであると判断された場合には、ステップS860で、制御部101は、指紋情報及び静脈情報を生体情報格納部113(図2)に登録する。また、ステップS870では、制御部101は、指紋情報及び静脈情報を上位のサーバー(図示せず)に送信する。この指紋情報、静脈情報は、他のATMに送られ、当該他のATMにおける認証に用いることができる。
【0092】
図22は、本実施例における認証処理を示すフローチャートである。図22に示すフローチャートは、図21に示すフローチャートとほぼ同じ処理であり、ステップS960とステップS970の処理が異なっているだけである。したがって、ステップS960とステップS970について説明する。なお、図22では、対応する図21の各ステップに付与した符合S8**に、100を加えた符合番号S9**となっている。
【0093】
ステップS960では、制御部101は、本人認証を行う。具体的には、制御部101は、ステップS930で取得した指紋情報、静脈情報の特徴点と、生体情報格納部113に格納されている各指紋情報、静脈情報の特徴点とを比較することにより、ステップS930で取得した指紋情報、静脈情報が登録されているか、否か、を判断し、そして、登録されている場合には、具体的に誰の指紋情報、静脈情報なのか、本人特定を行う。
【0094】
ステップS970では、制御部101は、認証結果を上位のサーバーに送信する。なお、指紋情報、静脈情報の登録数が多くなると、各ATMで指紋情報、静脈情報を管理することは困難になるので、ステップS960において、制御部101は、ステップS930で取得した指紋情報、静脈情報の特徴点情報を上位のサーバーに送り、上位のサーバーに本人認証を実行させて、結果のみをサーバーから受信するように構成してもよい。この場合、上位のサーバーは認証結果を持っているので、ステップS970は、不要となる。
【0095】
上記のように、本実施例では、指紋情報、静脈情報を登録する際においても、制御部101は、指が生体由来のものであるか、否かを判断している(例えばステップS850)。一般に、生体認証では、登録時の指紋情報、静脈情報と、認証時の指紋情報、静脈情報とを比較することにより実行される。登録時において、指が、生体由来のものか、否かを判断しないと、人造の指における情報等の欺瞞された情報が、正当な情報として、生体情報格納部113に格納されるおそれがある。かかる場合において、認証時に、認証時に同じ人造の指を用いられた場合、正当な認証がされてしまうという問題が起こり得る。しかし、本実施例では、登録時においても、指が生体由来のものであるか、否かを判断しているので、人造の指における情報等の欺瞞された情報の登録を抑制することができる。
【0096】
本実施例において、指が生体由来のものであるか、否かを判断(ステップS840、850)と、生体情報(指紋情報、静脈情報)の取得(ステップS820)を同時に行ってもよい。例えば、指が保護膜102fに押さえつけられたときに、指掌紋情報取得部102は指紋情報を取得する。このときに、カメラ150が同時に指の色の変化を取得してもよい。また、静脈情報取得部130が静脈情報を取得するときに、第1〜第3の領域202A〜202Cに分けて取得することにより、静脈情報の取得と、静脈情報を用いた、指が生体由来のものか否かの判断を同時に行うことが出来る。これら同時実行は、登録時、認証時いずれでも実行可能である。
【0097】
本実施例では、指が保護膜102fに押さえつけられたときに、指紋情報や静脈情報を取得している。ここで、指が保護膜102fに押さえつけられたときの圧力は、指先検知センサ104により、その大きさを検知することができる。このとき、この圧力の大きさにより、第3の領域202Cの大きさを変えてもよい。すなわち、圧力が大きい場合には、血管がより圧迫されるので、静脈が鮮明に検知されない領域が大きくなる。したがって、指先検知センサ104が検知する圧力が大きいほど、第3の領域202Cを大きくしてもよい。
【0098】
また、第2の実施例の変形例では、指が配置される位置を変えさせているが、その代わりに、指が保護膜102fに押さえつけられる圧力を変えさせてもよい。生体由来の指であれば、圧力の大きさにより、静脈が鮮明に検知されない領域の大きさが変わるので、圧力変化にともなう、静脈が鮮明に検知されない領域の大きさの変化を検知することにより、制御部は、その指が、生体由来のものであるか、否か、を判断することが可能となる。
【0099】
なお、本発明は、上記以外の種々の形態で実現することが可能であり、例えば、生体認証方法、生体認証方法または生体認証装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記憶媒体等の形態で実現することができる。また、本発明に係る生体認証装置は、適宜、他の部材と組み合わせて適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
100…ATM
101…制御部
102…指掌紋情報取得部
102f…保護膜
104…指先検知センサ
105…指元検知センサ
106…タッチパネル
110…本人認証部
111…生体認証照合部
112…生体情報検索部
113…生体情報格納部
120…タッチパネル
130…静脈情報取得部
131…指照射光源部
133…赤外カメラ
150…カメラ
200…生体情報取得部
201…指掌紋情報取得領域
202…静脈情報取得領域
202A〜202C…第1〜第3の領域
203…指部分
LED132…近赤外線
SP…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋や掌紋の生体的特徴を表す指掌紋情報と、静脈の生体的特徴を表す静脈情報とを用いて、本人認証をおこなう生体認証装置であって、
人の所定部位から前記指掌紋情報を取得する指掌紋情報取得部と、
前記人の所定部位から前記静脈情報を取得する静脈情報取得部と、
前記人の所定部位と接触し、前記所定部位による押圧の程度に応じた信号を出力する検出センサと、
前記検出センサからの信号に応じて、前記所定部位の状態が前記指掌紋情報および前記静脈情報を取得すべき状態であるか否かを判定し、前記判定結果に応じて、前記指掌紋情報および前記静脈情報を取得するように前記指掌紋情報取得部および前記静脈情報取得部を制御する制御部と、
前記指掌紋情報および前記静脈情報を用いて、本人認証をおこなう本人認証部と、を備える生体認証装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体認証装置において、
前記制御部は、前記所定部位による前記押圧の程度が所定値より大きい場合に、前記所定部位の状態が前記指掌紋情報を取得すべき状態であると判定し、前記所定部位による前記押圧の程度が前記所定値より小さい場合に、前記所定部位の状態が第1の前記静脈情報を取得すべき状態であると判定する生体認証装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生体認証装置において、
前記制御部は、前記所定部位による前記押圧の程度が前記所定値より大きい場合に、前記所定部位の状態が第2の前記静脈情報を取得すべき状態であると判定する生体認証装置。
【請求項4】
請求項3に記載の生体認証装置において、
前記制御部は、前記第1の静脈情報と、前記第2の静脈情報と、を比較することにより、前記第1の静脈情報および前記第2の静脈情報を取得した前記所定部位が生体であるか否かを判定する生体認証装置。
【請求項5】
請求項1に記載の生体認証装置はさらに、
利用者に操作案内を通知する通知部を備え、
前記制御部は、前記所定部位の状態が前記指掌紋情報もしくは前記静脈情報を取得すべき状態ではないと判定すると、前記通知部を制御して、前記所定部位の状態が前記指掌紋情報もしくは前記静脈情報を取得すべき状態となるための操作案内を前記利用者に通知する生体認証装置。
【請求項6】
人の所定部位から指紋や掌紋の生体的特徴を表す指掌紋情報を取得する指掌紋情報取得部と、前記人の所定部位から静脈の生体的特徴を表す静脈情報を取得する静脈情報取得部と、を備える生体認証装置を用いて、本人認証をおこなう生体認証方法であって、
前記人の所定部位による押圧の程度に応じた信号を出力する工程と、
前記信号に応じて、前記所定部位の状態が指掌紋情報および前記静脈情報を取得すべき状態であるか否かを判定し、前記判定結果に応じて前記指掌紋情報および前記静脈情報を取得するように前記指掌紋情報取得部および前記静脈情報取得部を制御する工程と、
前記指掌紋情報および前記静脈情報を用いて、本人認証をおこなう工程と、を備える生体認証方法。
【請求項7】
請求項1に記載の生体認証装置において、
前記指掌紋情報取得部は、前記人の所定部位が置かれる載置面を有し、
前記静脈情報取得部は、
前記指掌紋情報取得部の前記載置面との間で段差を有する第1の部分と、前記載置面と同じ高さの第2の部分とを有しており、
前記人の所定部位が前記指掌紋情報取得部の前記載置面上に静止した状態で、前記静脈情報として、前記第1の部分における第1の静脈情報と、前記第1と第2の部分の境界の近傍部分における第2の静脈情報と、を取得し、
前記本人認証部は、前記第1の静脈情報が鮮明であり、前記第2の静脈情報が鮮明でない場合には、前記人の所定部位が生体由来のものと判定し、前記第1の静脈情報及び前記第2の静脈情報のいずれもが鮮明である場合には、前記人の所定部位が生体由来のものでないと判定する第1の判定処理を実行する、生体認証装置。
【請求項8】
請求項7に記載の生体認証装置において、
前記静脈情報取得部は、前記人の所定部位が、前記載置面の第1の位置に置かれた時と、前記第1の位置よりも予め定められた以上手前の位置である第2の位置に置かれた時、のそれぞれにおいて前記第1、第2の静脈情報を取得し、
前記本人認証部は、前記第1の判定処理において前記人の所定部位が生体由来のものと判断した場合であっても、第2の判定処理を実行し、
前記本人認証部は、前記第2の判定処理において、
前記第1の位置において取得した前記第2の静脈情報が不鮮明であり、前記第2の位置において取得した前記第1の静脈情報の一部であって、前記人の部位の中の、前記第1の位置において取得した前記第2の静脈情報に対応する部位における前記第1の静脈情報の一部が鮮明である場合には、前記人の所定部位が生体由来のものと判断し、
前記第1の位置において取得した前記第2の静脈情報が不鮮明であり、前記第2の位置において取得した前記第1の静脈情報の一部であって、前記人の部位の中の、前記第1の位置において取得した前記第2の静脈情報に対応する部位における前記第1の静脈情報の一部も不鮮明である場合には、前記人の所定部位が生体由来のものでないと判定する、生体認証装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の生体認証装置において、
前記静脈情報取得部は、前記検出センサの出力に応じて前記第2の静脈情報を取得するための前記第1と第2の部分の境界の近傍部分の大きさを変更し、前記所定部位による押圧が大きいほど前記近傍部分の大きさを広くする、生体認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−103113(P2011−103113A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144809(P2010−144809)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】