説明

生体認証装置及び画像処理装置

【課題】 標準的に内蔵されている記憶部の記憶容量が比較的小さい場合であっても、十分な件数の照合データを登録することができるようにする。
【解決手段】 複数の照合データが記憶される記憶部220と、複数の照合データを記憶可能な記憶媒体300と直接的又は間接的に接続するための接続部230と、認証情報入力部210から入力された生体認証情報と記憶部220または記憶媒体300に記憶されている照合データとを比較して生体認証を行う認証部240と、接続部230における記憶媒体300との接続の有無により、登録される照合データの精度を変更する精度変更部250と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証装置及びこれを備えた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複合機、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置等の画像処理装置に、指紋認証をはじめとした生体認証が導入されたものが提案されている。画像処理装置等に備えられる生体認証装置としては、予め照合データを登録しておき、入力された生体認証情報と照合データとを比較するものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、低解像度でも高解像度でも認証可能な生体認証装置が開示されている。
【0003】
この種の画像処理装置には、指紋センサ等の生体認証入力部が内蔵または外部から接続され、生体認証後に、印刷、複写、ファクシミリ操作等が許容されるようになっている。これにより、機密文書が印刷、複写等されてしまったり、ファックス機能が不正に使用されないようになっている。
【特許文献1】特開2004−21491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複合機等の画像処理装置においては、標準で内蔵されている記憶部がSRAM、SDRAM等のように記憶容量が比較的小さい場合がある。この場合、登録用の照合データへ割り当て可能な記憶領域も小さくなり、十分な件数の照合データを登録することができず、利便性が悪いという問題点があった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、標準的に内蔵されている記憶部の記憶容量が比較的小さい場合であっても、十分な件数の照合データを登録することのできる生体認証装置及びこれを備えた画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決する本発明によれば、複数の照合データが記憶される記憶部と、複数の照合データを記憶可能な記憶媒体と直接的又は間接的に接続するための接続部と、認証情報入力部から入力された生体認証情報と前記記憶部または前記記憶媒体に記憶されている前記照合データとを比較して生体認証を行う認証部と、前記接続部における前記記憶媒体との接続の有無により、登録される前記照合データの精度を変更する精度変更部と、を備えたことを特徴とする生体認証装置が提供される。
【0007】
尚、ここでいう「直接的に接続」とは、例えばメインボード等に規格品のメモリを挿して接続する形態を含み、装置内部の回路に記憶媒体を直接接続することをいう。また、「間接的に接続」とは、例えばインターフェース部にメモリを含むネットワークオプションボードを接続する形態を含み、装置内部の回路に記憶媒体を他の要素を介して接続することをいう。
【0008】
この発明によれば、接続部に記憶媒体が接続されていない状態では、精度変更部は、記憶部に記憶可能な照合データの件数が多くなるように、照合データの精度を比較的低い状態とする。そして、接続部に記憶媒体が接続された状態では、記憶部の記憶領域に加えて記憶媒体の記憶領域も利用可能となり、1件あたりのデータ量が大きくとも十分な件数の照合データが記憶できることから、精度変更部は照合データの精度を比較的高い状態とする。
これにより、標準的に内蔵されている記憶部の記憶容量が比較的小さい場合であっても、記憶部の負荷を軽減するとともに十分な件数の照合データを登録することができる。また、他の記憶媒体が接続された場合には、照合データの精度を高めて高度なセキュリティ機能を発揮させることができる。
【0009】
上記生体認証装置において、前記接続部は、複数種類の前記記憶媒体と接続可能であり、前記精度変更部は、前記記憶媒体の種類に応じて前記照合データの精度を決定する構成とすることができる。
【0010】
この構成によれば、記憶媒体の種類に応じて照合データに割り当てる記憶領域が設定されることとなる。例えば記憶媒体がハードディスク等のように比較的大容量のものである場合は、記憶媒体接続時の照合データの精度が比較的高く設定され、例えば記憶媒体がSDRAM等のように比較的小容量のものである場合は、記憶媒体接続時の照合データの精度が比較的低く設定される。これにより、記憶媒体の種類に応じてきめ細やかに登録される照合データの精度を設定することができる。
また、例えば、複合機等のように、メインボードに接続可能な記憶媒体の仕様が1つであって、インターフェース部に接続可能なネットワークオプションボードに搭載されている記憶媒体の仕様も1つである場合など、製品において接続される記憶媒体の仕様がある程度定まっている場合には、この構成は極めて便利である。
【0011】
上記生体認証装置において、前記精度変更部は、前記記憶媒体の記憶容量に応じて前記照合データの精度を決定する構成とすることができる。
【0012】
この構成によれば、記憶容量の異なる記憶媒体が接続された場合に容量に応じて登録される照合データの精度を変化させることができ、記憶容量に応じてきめ細やかに照合データの精度を設定することができる。
【0013】
上記生体認証装置において、前記精度変更部は、前記照合データを2種類の精度で登録可能なよう構成され、前記接続部における前記記憶媒体との接続が有る場合は前記照合データを高精度とし、前記接続部における前記記憶媒体との接続が無い場合は前記照合データを低精度とする構成とすることができる。
【0014】
この構成によれば、照合データの精度を2段階とし、記憶媒体の接続の有無で精度が切り替えられるようにしたので、精度の変更制御を簡単且つ的確に行うことができる。
【0015】
上記生体認証装置において、前記接続部における前記記憶媒体の接続の有無を判断し、前記記憶媒体の接続が有ると判断した場合において、低精度の前記照合データが前記記憶部又は前記記憶媒体に既登録であるときに、利用者に対して低精度の前記照合データが既登録であることを報知する報知部を備えた構成とすることができる。
【0016】
この構成によれば、装置の使用途中において記憶媒体が追加された場合に、利用者が低精度の照合データが既登録であることを知ることができ、不要な低精度の照合データを消去しても支障は生じない。これに加え、記憶媒体が追加されるとともに、低精度の照合データが消去されて大きくなった記憶容量を有効に活用して、高精度な指紋認証を行うことができる。
【0017】
上記生体認証装置において、前記接続部における前記記憶媒体の接続の有無を判断し、前記記憶媒体の接続が無いと判断した場合において、高精度の前記照合データが前記記憶部に既登録であるときに、既登録の前記照合データを低精度のものに変換する処理を行うデータ変換部を備えた構成とすることができる。
【0018】
この構成によれば、記憶媒体の接続が無い場合に、照合データが高精度から低精度へ自動的に変換されるため、利用者は照合データを再登録することなく引き続き認証を行うことができる。これにより、外付けの記憶媒体の取り外しに対応することができ利便性が向上する。
【0019】
上記生体認証装置において、前記精度変更部と独立して前記照合データの精度を設定可能な設定入力部を備えた構成とすることができる。
【0020】
この構成によれば、管理者等は、装置の用途、目的等に応じて照合データの制度を適宜変更することができる。これにより、例えば、装置利用者が少数で照合データの登録件数が少なくてもよい場合には、登録される照合データの記憶領域が大きく確保できずとも、照合データの精度を高くしてセキュリティ機能を優先させることができる。また、例えば、認証処理や登録処理等の情報の取り扱いに要する時間の短縮を優先させる場合には、照合データの記憶領域が大きく確保されていても、照合データの精度を低くして登録される照合データ及び入力される生体認証情報のデータ量を小さくすることも可能となる。
【0021】
上記生体認証装置において、前記生体認証情報は指紋に関する情報である構成とすることができる。
【0022】
この構成によれば、生体認証情報が指紋に関する情報であることから、認証情報入力部を他の生体認証方式よりも比較的安価に製造することができるとともに、生体認証情報及び照合データのデータ量を比較的小さくすることができ、実用に際して極めて有利である。
【0023】
以上、本発明の構成について説明したが、本発明はこれに限られず様々な態様を含む。たとえば、本発明によれば、上記生体認証装置を備え、前記認証部は、前記生体認証情報と前記照合データとが一致したと判断すると、所定の画像処理を許可することを特徴とする画像処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、標準的に内蔵されている記憶部の記憶容量が比較的小さい場合であっても、十分な件数の照合データを登録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0026】
図1は本発明の一実施形態を示す画像処理装置の機能ブロック図である。
図1に示すように、画像処理装置100は、原稿の画像を読み取って読取画像データを出力する読取部110と、入力された画像データに基づいて画像の印刷を行う印刷部120と、公衆回線網を通じて他のファクシミリ装置とファクシミリ通信を行うファクシミリ通信部130と、LAN等のネットワークを通じてパーソナルコンピュータ等の外部端末と通信を行うネットワーク通信部140と、予め登録されている照合データと入力された生体認証情報とを比較して生体認証を行う生体認証装置200と、を有する複合機である。また、画像処理装置100は、内部機器を動作させるための主電源スイッチを含む操作入力部150と、液晶等により内部機器の作動状態を表示する表示部160と、を有している。
【0027】
すなわち、画像処理装置100は、ネットワーク通信部140により、外部のPCから受信した印刷データに基づいて印刷を実行するPCプリント機能、及び/又は、読取部110が出力した読取画像データを外部のPCに転送(送信)するPCスキャン機能が可能となる。そして、例えば、印刷部120は、読取部110が出力した読取画像データに基づいて印刷を実行したり、或いは、ネットワーク通信部140が受信した印刷データに基づいて印刷を実行したりする。そして、印刷、コピーなどに際して機密文書を取り扱う場合や、ファクシミリ機能等の不正利用を防止するために、生体認証装置200は、照合データと生体認証情報とが同一人物のものか否かを判別する。
【0028】
図1に示すように、生体認証装置200は、生体認証情報が入力される認証情報入力部210と、複数の照合データが記憶される記憶部220と、複数の照合データを記憶可能な記憶媒体300と直接的又は間接的に接続するための接続部230と、生体認証情報と照合データとを比較して生体認証を行う認証部240と、を備えている。本実施形態においては、記憶部220は、揮発性メモリであり、記憶媒体300よりも記憶容量が小さい。認証部240は、生体認証情報と照合データとが一致したと判断すると、画像処理装置100における所定の画像処理を許可する。また、生体認証装置200は、接続部230における記憶媒体300との接続の有無により、登録される照合データの精度を変更する精度変更部250を備えている。さらに、生体認証装置200は、精度変更部250と独立して照合データの精度を設定可能な設定入力部260を備えている。
【0029】
また、生体認証装置200は、接続部230における記憶媒体300の接続の有無を判断し、記憶媒体300の接続が有ると判断した場合において、低精度の照合データが記憶部220又は記憶媒体300に既登録であるときに、利用者に対して低精度の照合データが既登録であることを報知する報知部270を備えている。さらに、生体認証装置200は、接続部230における記憶媒体300の接続の有無を判断し、記憶媒体300の接続が無いと判断した場合において、高精度の照合データが記憶部220に既登録であるときに、既登録の照合データを低精度のものに変換する処理を行うデータ変換部280を備えている。ここで、本実施形態において、主電源スイッチがオン状態となることをトリガとして、接続部230における記憶媒体300の接続の有無を判断する。尚、トリガは主電源スイッチがオン状態になることに限定されるものでない。
【0030】
この生体認証装置200の各構成要素は、画像処理装置100に内蔵されているCPU、メモリ、各構成要素を実現するプログラム、このプログラムを格納する記憶ユニット、ネット接続用インターフェースを中心にハードウェアとソフトウェアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。図1には、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0031】
また、具合的には、本実施形態において、生体認証装置200は図2に示すハードウェア構成を有する。図2は生体認証装置のハードウェア構成の一例を示す概略構成ブロック図である。図2に示すように、生体認証装置200は、CPU410と、ROM420と、SRAM430と、SDRAM440と、インターフェース部450と、指紋センサ460と、が電気的に接続されて構成されている。
【0032】
CPU410は、ROM420に記憶されたソフトウェアを実行することで、バスに接続された各構成部を総括的に制御する。すなわち、CPU410は、所定の処理シーケンスに従って、各プログラムをROM420から読み出して実行することにより、生体認証装置200の各部を制御する。
【0033】
また、揮発性メモリとしてのSRAM430には、CPU410が各プログラムを実行する上で一時的に必要とされるプログラム、データが格納される。また、比較的少数ながら照合データも記憶可能となっている。
一方、揮発性メモリとしてのSDRAM440には、主として照合データが記憶される。ここで、SDRAM440は、画像処理装置100に標準的に内蔵されているメモリである。
尚、SRAM430及びSDRAM440は、主電源がオフ状態となってもバックアップされており、揮発性メモリでありながら格納された情報が保持されるよう構成されている。
【0034】
指紋センサ460は、指紋の隆線を読み取るセンサであり、登録される照合データの読み取りと、生体認証を行う際に入力する情報の読み取りを行う。具体的に、指紋センサ460は、略四角形状のセンサ部分に載置された指紋の隆線を、例えば反射光により読み取ることで画像化する。ここで、指紋センサ460の方式は、反射光を用いた光学式以外のもの、例えば、静電容量式、電界式、感熱式、感圧式のいずれであってもよい。また、画像の読み取り方式は、1回の押印で指紋全体の画像を得るエリア・センサ方式であっても、移動する指の画像を連続的に取得して複数の画像を連結して指紋全体の画像を得るライン・センサ方式であってもよい。
【0035】
本実施形態においては、照合データと生体認証情報の照合にはマニューシャ方式が用いられる。マニューシャ方式とは、図3に示すように、各特徴点(分岐点、端点、三角州等)の位置と隆線の方向を指紋の特徴として利用する照合方式である。ここで、図3は指紋画像から特徴点を抽出する一例を示す説明図である。この方式は各特徴点の位置と方向という情報を用いるため、照合指紋の回転ずれに対して角度の補正が容易であることから、他の方式に比べ回転ずれに強いという利点がある。
【0036】
本実施形態においては、精度変更部250は、特徴点として分岐点のみを扱う低精度と分岐点及び端点を扱う高精度の2種類の精度で照合データを登録可能に構成されている。図3の指紋画像を例とすると、分岐点の特徴点は6点であり、端点の特徴点は10点となっており、低精度ではデータは6点、高精度ではデータは16点となる。登録された照合データと入力された生体認証情報の照合は、図4に示すように、特徴点の属性とそれらの相対的な位置関係を比較することにより行われる。ここで、図4は、マニューシャ方式における認証情報の照合方法を概念的に示した説明図である。
【0037】
図5は、SDRAMを増設した状態を示す生体認証装置の概略構成ブロック図である。
図5に示すように、生体認証装置200には、標準で装備されているSDRAM440とは別個にSDRAM470を増設可能となっている。このSDRAM470にも、主として照合データが記憶され、主電源がオフ状態となってもバックアップされるよう構成されている。
【0038】
図6は、ネットワークオプションボードを接続した状態を示す生体認証装置の概略構成ブロック図である。
さらに、図6に示すように、生体認証装置200のインターフェース部450には、ネットワークオプションボード500を接続可能となっている。図6に示すように、ネットワークオプションボード500には、生体認証装置200に装備されているものとは別個に、CPU510、ROM520、SRAM530及びSDRAM540が備えられる。さらに、ネットワークオプションボード500には、例えば、コンパクトフラッシュ(登録商標)、SDカード等のような不揮発性メモリのカードメモリ550が接続可能となっている。本実施形態においては、ネットワークオプションボード500のSDARM540及びカードメモリ550にも照合データを記憶可能となっている。また、SDRAM540は、主電源がオフ状態となってもバックアップされるよう構成されている。
【0039】
以上のように構成された生体認証装置200の動作について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
図7に示すように、主電源スイッチがオン状態となると(ステップS10)、図1に示す記憶媒体300が接続されているか否かを判別する(ステップS20)。すなわち、標準装備されているSDRAM440の他に、図5に示すSDRAM470がメインボードに増設されているか、図6に示すネットワークオプションボード500が接続されているか、さらには図8に示すようにSDRAM470及びネットワークオプションボード500の両方が接続されているか否かを判別する。ここで、図8は、SDRAMを増設するとともにネットワークオプションボードを接続した状態を示す生体認証装置の概略構成ブロック図である。
【0040】
ステップS20にて記憶媒体300が接続されていると判別されると、登録される照合データを高精度の設定とし(ステップS30)、低精度の照合データが既登録である場合は報知部270により利用者に対してその旨を報知し、照合データの再登録を促して(ステップS40)、既登録の照合データを消去する(ステップS50)。尚、報知部270を、利用者に対して、照合データの再登録をするか否かを問い合わせるよう構成することも可能である。
【0041】
ステップS20にて記憶媒体300が接続されていないと判別されると、登録される照合データを低精度の設定とし(ステップS60)、高精度の照合データが既登録である場合は既登録の照合データを低精度に変換する処理を行う(ステップS70)。本実施形態においては、マニューシャの特徴点を分岐点及び端点から分岐点のみにすることにより低精度に変換される。ここで、本実施形態においては、低精度へ自動的に変換されるが、一旦ユーザに変換の要否を問い合わせた後に、ユーザの変換指示に基づいて変換を実行するようにしてもよい。
【0042】
ステップS50及びステップS70の後、設定入力部260から精度の設定入力があるか否かを判別する(ステップS80)。このとき、精度の設定入力がなければ登録される照合データの精度を維持し(ステップS90)、精度の設定入力があれば照合データの精度を入力されたものに設定する(ステップS100)。
【0043】
ステップS90及びステップS100の後、主電源スイッチがオフ状態であるか否かを判別し(ステップS110)、オフ状態であれば処理を終了する。ステップS110にて主電源スイッチがオフ状態でないと判別するとステップS20へ進んで、引き続き記憶媒体300の接続状態に応じた精度の設定処理を行う。
【0044】
このように、本実施形態の生体認証装置200によれば、接続部230に記憶媒体300が接続されていない状態では、精度変更部250は、記憶部220に記憶可能な照合データの件数が多くなるように、照合データの精度を比較的低い状態とする。そして、接続部230に記憶媒体300が接続された状態では、記憶部220の記憶領域に加えて記憶媒体300の記憶領域も利用可能となり、1件あたりのデータ量が大きくとも十分な件数の照合データが記憶できることから、精度変更部250は照合データの精度を比較的高い状態とする。
これにより、標準的に内蔵されている記憶部220の記憶容量が比較的小さい場合であっても、記憶部220の負荷を軽減するとともに十分な件数の照合データを登録することができる。また、他の記憶媒体300が接続された場合には、照合データの精度を高めて高度なセキュリティ機能を発揮させることができる。
【0045】
また、本実施形態の生体認証装置200によれば、登録される照合データの精度を2段階とし、記憶媒体300の接続の有無で精度が切り替えられるようにしたので、精度の変更制御を簡単且つ的確に行うことができる。
【0046】
また、本実施形態の生体認証装置200によれば、報知部270を設けたので、装置の使用途中において記憶媒体300が追加された場合に、利用者が低精度の照合データが既登録であることを知ることができ、不要な低精度の照合データを消去しても支障は生じない。これに加え、記憶媒体300が追加されるとともに、低精度の照合データが消去されて大きくなった記憶容量を有効に活用して、高精度な指紋認証を行うことができる。
【0047】
また、本実施形態の生体認証装置200によれば、データ変換部280を設けたことにより、記憶媒体300の接続が無い場合に、照合データが高精度から低精度へ自動的に変換される。これにより、利用者は照合データを再登録することなく引き続き認証を行うことができる。従って、外付けの記憶媒体300の取り外しに対応することができ利便性が向上する。
【0048】
また、本実施形態の生体認証装置200によれば、設定入力部260を備えたので、管理者等は、装置の用途、目的等に応じて照合データの制度を適宜変更することができる。これにより、例えば、装置利用者が少数で照合データの登録件数が少なくてもよい場合には、登録される照合データの記憶領域が大きく確保できずとも、照合データの精度を高くしてセキュリティ機能を優先させることができる。また、例えば、認証処理や登録処理等の情報の取り扱いに要する時間の短縮を優先させる場合には、照合データの記憶領域が大きく確保されていても、照合データの精度を低くして登録される照合データ及び入力される生体認証情報のデータ量を小さくすることも可能となる。
【0049】
また、本実施形態の生体認証装置200によれば、生体認証情報が指紋に関する情報であることから、認証情報入力部210を他の生体認証方式よりも比較的安価に製造することができるとともに、生体認証情報及び照合データのデータ量を比較的小さくすることができ、実用に際して極めて有利である。
【0050】
尚、前記実施形態においては、画像処理装置100として複合機を例示したが、画像処理装置は複写機、ファクシミリ装置、プリンタ装置等であってもよいことは勿論である。また、生体認証装置200が画像処理装置100に備えられて所定の画像処理を許可する用途で生体認証が行われるものを示したが、生体認証装置200は他の装置に備えられたり他の用途で用いられるものであってもよく、例えば、商品購入時の本人確認や、所定場所への入場における生体認証に用いられるものであってもよい。
【0051】
また、前記実施形態においては、記憶媒体300が接続されているか否かにより、登録される照合データの精度を切り替えるものを示したが、記憶媒体300の記憶容量に応じて精度を変更してもよい。この場合、記憶容量の異なる記憶媒体300が接続された場合に容量に応じて登録される照合データの精度を変化させることができ、記憶容量に応じてきめ細やかに照合データの精度を設定することができる。
【0052】
さらには、記憶媒体300の種類に応じて精度を変更してもよい。この場合、例えば記憶媒体300がハードディスク等のように比較的大容量のものである場合は、記憶媒体接続時の照合データの精度が比較的高く設定され、例えば記憶媒体300がSDRAM等のように比較的小容量のものである場合は、記憶媒体接続時の照合データの精度が比較的低く設定される。これにより、記憶媒体の種類に応じてきめ細やかに登録される照合データの精度を設定することができる。
また、例えば、前記実施形態の画像処理装置100において、メインボードに接続可能なSDRAM470の仕様が1つであってインターフェース部450に接続可能なネットワークオプションボード500の仕様も1つである場合など、製品において記憶媒体300の仕様がある程度定まっている場合には、この構成は極めて便利である。
【0053】
また、前記実施形態においては、照合データと生体認証情報の照合にマニューシャ方式を用いたものを示したが、パターン・マッチング方式、周波数解析方式等を用いてもよいことは勿論である。他の方式を用いた際の照合データの精度の変更は、例えば、取得画像の領域を変更したり、取得画像の解像度を変更して行われる。尚、マニューシャ方式において、特徴点の増減に加え、画像領域、解像度等を変更すれば、細かい精度の変更が可能となる。
【0054】
また、前記実施形態においては、照合データの精度を変更する際に、指紋画像の分岐点と端点に基づいて2段階で精度を切り替えるものを示したが、指紋画像の三角州等をも加味して3段階以上で精度を切り替えるようにしてもよい。
【0055】
また、前記実施形態においては、精度変更部250が、低精度で分岐点のみを扱い、高精度で分岐点及び端点を扱うようにするものを示したが、低精度及び高精度で分岐点及び端点の両方を扱うようにし、照合点数(特徴点)の数で精度を変更するようにしてもよい。例えば、図3の指紋画像において、高精度では前記実施形態と同様に分岐点の特徴点を6点、端点の特徴点を10点の計16点とし、低精度では分岐点の特徴点を3点、端点の特徴点を5点の計8点とするようにしてもよい。
【0056】
さらに,特徴点間を横切る隆線の数を特徴としてとらえた「マニューシャ・リレーション方式」や、検出された特徴点周辺の画像を特徴としてパターン・マッチングを行う「チップ・マッチング方式」を用いて精度を変更するようにしてもよい。通常の「マニューシャ方式」に比べ、「マニューシャ・リレーション方式」、「チップ・マッチング方式」等が高精度となることから、方式を切り替えることにより精度の変更が可能となる。
【0057】
また、前記実施形態においては、生体認証情報を指紋に関する情報としたものを例示したが、例えば、虹彩、顔、掌形、声紋、網膜、静脈等のような他の生体に関する情報としてもよいことは勿論である。また、画像処理装置100が指紋センサ460を有するものを示したが、指紋センサ460を外部からUSBケーブル等により接続したものであってもよい。さらに、記憶媒体300は、ハードディスク、ネットワーク上のファイルサーバ等であってもよいし、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態を示す画像処理装置の機能ブロック図である。
【図2】生体認証装置のハードウェア構成の一例を示す概略構成ブロック図である。
【図3】指紋画像から特徴点を抽出する一例を示す説明図である。
【図4】マニューシャ方式における認証情報の照合方法を概念的に示した説明図である。
【図5】SDRAMを増設した状態を示す生体認証装置の概略構成ブロック図である。
【図6】ネットワークオプションボードを接続した状態を示す生体認証装置の概略構成ブロック図である。
【図7】生体認証装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】SDRAMを増設するとともにネットワークオプションボードを接続した状態を示す生体認証装置の概略構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
100 画像処理装置
110 読取部
120 印刷部
130 ファクシミリ通信部
140 ネットワーク通信部
150 操作入力部
160 表示部
200 生体認証装置
210 認証情報入力部
220 記憶部
230 接続部
240 認証部
250 精度変更部
260 設定入力部
270 報知部
280 データ変換部
300 記憶媒体
410 CPU
420 ROM
430 SRAM
440 SDRAM
450 インターフェース部
460 指紋センサ
470 SDRAM
500 ネットワークオプションボード
510 CPU
520 ROM
530 SRAM
540 SDRAM
550 カードメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の照合データが記憶される記憶部と、
複数の照合データを記憶可能な記憶媒体と直接的又は間接的に接続するための接続部と、
認証情報入力部から入力された生体認証情報と前記記憶部または前記記憶媒体に記憶されている前記照合データとを比較して生体認証を行う認証部と、
前記接続部における前記記憶媒体との接続の有無により、登録される前記照合データの精度を変更する精度変更部と、を備えたことを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
前記接続部は、複数種類の前記記憶媒体と接続可能であり、
前記精度変更部は、前記記憶媒体の種類に応じて前記照合データの精度を決定することを特徴とする請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記精度変更部は、前記記憶媒体の記憶容量に応じて前記照合データの精度を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記精度変更部は、前記照合データを2種類の精度で登録可能なよう構成され、前記接続部における前記記憶媒体との接続が有る場合は前記照合データを高精度とし、前記接続部における前記記憶媒体との接続が無い場合は前記照合データを低精度とすることを特徴とする請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記接続部における前記記憶媒体の接続の有無を判断し、前記記憶媒体の接続が有ると判断した場合において、低精度の前記照合データが前記記憶部又は前記記憶媒体に既登録であるときに、利用者に対して低精度の前記照合データが既登録であることを報知する報知部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記接続部における前記記憶媒体の接続の有無を判断し、前記記憶媒体の接続が無いと判断した場合において、高精度の前記照合データが前記記憶部に既登録であるときに、既登録の前記照合データを低精度のものに変換する処理を行うデータ変換部を備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記精度変更部と独立して前記照合データの精度を設定可能な設定入力部を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の生体認証装置。
【請求項8】
前記生体認証情報は指紋に関する情報であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の生体認証装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項の生体認証装置を備え、
前記認証部は、前記生体認証情報と前記照合データとが一致したと判断すると、所定の画像処理を許可することを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−18168(P2007−18168A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197690(P2005−197690)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】