説明

生分解性ポリエステル組成物

【課題】透明性、生分解性、加工性及び耐熱性のような他の主要な特性を維持しながらも高い衝撃強度を有する生分解性ポリエステル組成物を提供する。
【解決手段】優れた透明性と衝撃強度を有する生分解性ポリエステル組成物、特に、ポリ乳酸及び衝撃改質剤としてのアルキルスルホン酸金属を含む生分解性ポリエステル組成物、及び、生分解性ポリエステル組成物の作製に有益なマスターバッチ組成物、及び、それからなるフィルム、シート、プロフィル又は成形品を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた透明性と衝撃強度を有する生分解性ポリエステル組成物、特に、ポリ乳酸及び衝撃改質剤としてのアルキルスルホン酸金属を含む生分解性ポリエステル組成物、及び、前記生分解性ポリエステル組成物の調製に有益なマスターバッチ組成物、及び、それからなるフィルム、シート、プロフィル又は成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレート等の石油系合成プラスチックは、包装、構造物、又は電子材料等の各種分野において多くの利用が見いだされており、それらにとって不可欠である。
【0003】
しかしながら、石油のような化石資源の利用制限、引き起こされる原料価格の上昇、及び、環境保全と二酸化炭素排出削減の必要性についての人々の意識の向上により、商業的及び生態的に有望な、従来の石油系プラスチックの代替品を見つける必要性がますます重要となっている。
【0004】
長い間、生分解性物質及び再生可能な資源をベースとする材料を含むバイオプラスチックは、標準的な石油系ポリマーに比べコストが高く利用が限られており、最終用途の特性が悪かった。従って、それらのより良い環境影響性にもかかわらず、標準的なプラスチックの代替品としての使用は、概して、むしろ制限されてきた。
【0005】
最近になって初めて、その優れた機械的性質、とりわけ透明性と光沢によって、ポリエチレンテレフタレート等の標準的なプラスチックの天然代替品であるポリ乳酸(以下、PLAと呼ぶ)を含むいくつかが、石油系ポリマーの代替品として適切であるということが示された。
【0006】
しかしながら、PLAの1つの主な欠点は、他のポリマー、特にPETに比べ、衝撃強度が不足しており、切削抵抗が乏しいことである。このことは、切断時に割れ目が出るだろうシートや、ダイス切断工程を通して所望の形状に型押しする必要のある熱成形品にとっては特に問題である。これは、熱成形されたPLAトレイの運搬時における破損、衝撃等の機械的ストレスに晒された時のPLAボトルの破損、又は食品包装トレイ等の製品に格納されている部品の破壊にさえつながる恐れがある。
【0007】
従って、PLAは未だ広く受け入れられておらず、大抵の場合、なおも従来の材料が好ましい。
【0008】
例えば、エラストマーコアとアクリルシェルからなる、コア・シェル衝撃改質剤の付加により、脆性材料の衝撃強度を著しく改良できることが知られている。しかしながら、それらは、通常、透明度の著しい低下が伴い、及び/又は、(5〜10%等の)高い充填量を必要とする。さらに、このようなコア・シェル添加剤は通常高価であり、経済的に不向きである。さらに、このようなコア・シェル衝撃改質剤は、通常、それ自身が生分解性ではないために、堆肥化可能な製品製造用の生分解性ポリマーに使用することは無意味であるように思われる。それらは、最終生成物における最小限の充填が5%であることにより、堆肥化可能な製品には非生分解性添加剤を1%までしか容認しないという、DIN EN 規格 13432(「包装材料−堆肥化及び生分解を通して再生可能な包装材料に対する必要条件−包装材料の最終承認のための検査制度及び評価基準」)に従う厳しい用件を満たせず、最終生成物が堆肥化可能であるという認証がなされないこととなる。
【0009】
脂肪族・芳香族コポリエステル、でんぷん又はセルロース系ポリマー等の他の生分解性ポリマー、又は、アクリルコポリマー又はエチレンコポリマーのような非生分解性の石油系ポリマーは、PLAの柔軟性と脆弱性を改善するのに効果的であると思われる。しかしながら、これらは、通常、PLAの透明度の変化を引き起こし、非常に濁った、ほとんど不透明なものとする。
【0010】
PLAの柔軟性と脆弱性を改良することにより、PLAに対する可塑剤として機能するポリカプロラクトンは、PLAのガラス転移温度の低下を引き起こし、柔らかさを増し、製品の変形に至る可能性がある。
【0011】
他の公知の生分解性ポリエステル組成物には、例えば、生分解性ポリエステル樹脂としてのPLA、グリセリンモノステアレート、及びアルキルスルホン酸ナトリウムの組み合わせがあり(EP 1388562 B1)、その良好な帯電防止特性で知られている。しかしながら、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸誘導体は、ポリエステルの大部分に対し可塑剤として機能するため、ベースのポリマーのガラス転移温度を下げ、それによりそれから製造された製品の熱たわみ温度を下げ、それらの最終用途を限定する。さらに、グリセリン脂肪酸誘導体は、内部潤滑剤としても機能する恐れがあり、担体の溶融粘度の減少をもたらし、それにより、シートの製造又は高い溶融強度が必要とされる押出しブロー成形工程等において、加工が困難となる可能性がある。さらに、これらを付加することにより、食品の包装利用を目的とする場合、最終用途品の食品接触認可及び官能特性にとって非常に有害な、ポリマー・マトリックスからの添加剤の移動を強める恐れもある。さらに、最終品の表面への添加剤の移動は、ポリマーの表面エネルギーを減らし、ひいては、最終用途品の印刷適性を劣化させる恐れがある。グリセリンモノステアレートなしの比較例だけが、非常に低い帯電防止特性とまあまあの透明性を示した。
【0012】
アルキルスルホン酸塩は、生分解性樹脂とでんぷん系充填剤との混合物(EP 1 097 967)、又はポリエステルグラフト化でんぷん誘導体(EP 0 814 092)におけるように、分散剤としてポリマーに加えられることが知られている。しかしながら、極めて大量のでんぷんが存在することにより、透明性を壊し又は低減してしまい、その用途を限定する。
【0013】
アルキルスルホン酸塩は、帯電防止剤として他のポリマーに加えられることが知られているが、とりわけ加工温度が非常に高いポリマーにおいて、気泡や変色に特徴付けられるポリマー分解の原因となる。この分解及び加工上の問題は、有機リン酸系安定剤又は有機キレート剤を添加することにより克服された(US 5,045,580)。アルキルスルホン酸塩はまた、積層ポリエステル(US 6,110,578)、ポリブチレンサクシネート等の生分解性ポリエステル樹脂(EP 1 605 017)、又はポリブチレンテレフタレート等の標準的なポリエステル樹脂(EP 0 357 896)において、帯電防止剤の候補として開示されている。しかしながら、これら固有の非常に速い結晶化性質のため、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートは不透明で、それゆえ、包装材用途のように透明性が求められる用途には適さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記に鑑みて、透明性、生分解性、加工性及び耐熱性のような他の主要な特性を維持しながらも高い衝撃強度を有する生分解性ポリエステル組成物の必要性が、なおも大きいことは明らかである。
【0015】
出願者らは、生分解性ポリエステル樹脂及び衝撃改質剤としてのアルキルスルホン酸塩を含む生分解性ポリエステル組成物が、優れた透明性、及び耐熱性、印刷適性、生分解性、堆肥化可能性、及び加工性を維持しながらも高い衝撃強度を示すことによって、従来技術の欠点を克服可能であることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様において、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸塩を含む生分解性ポリエステル組成物(但し、グリセリン脂肪酸エステルは該組成物から除外される)を提供する。本発明の組成物は、優れた透明性、及び耐熱性、印刷適性、生分解性、堆肥化可能性、及び加工性を維持しつつも、高い衝撃強度を有することを特徴とする。
【0017】
1つの具体的な実施形態において、前記生分解性ポリエステル樹脂は、(i)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される生分解性ポリエステル、(ii)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される、少なくとも2つの生分解性ポリエステルのブレンド、又は、(iii)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される生分解性ポリエステルと、ポリエステル以外のさらなる生分解性ポリマーとのブレンドである。
【0018】
他の具体的な実施形態において、前記生分解性ポリエステル樹脂は、ポリ乳酸を、単独、又は1以上のさらなる生分解性ポリエステルと組み合わせたブレンドの形で、又は、ポリエステル以外の1以上の生分解性ポリマーと組み合わせたブレンドの形で含む。
【0019】
さらに別の実施形態において、前記アルキルスルホン酸塩は、C(6〜24)スルホン酸金属、又は、その混合物、すなわち、異なるアルキル鎖長を有するアルキルスルホン酸塩の混合物である。
【0020】
好ましくは、前記アルキルスルホン酸塩の配合量は、全組成物重量の0.1〜5重量%であり、前記生分解性ポリエステル樹脂の配合量は、全組成物重量の95〜99.9重量%である。
【0021】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、実質的には生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸塩からなる、生分解性ポリエステル組成物を提供する。
【0022】
さらなる実施形態において、本発明の生分解性ポリエステル組成物は、本発明で主張する衝撃強度の改良に影響を及ぼさない方法で、さらに、付加的なポリマー、染料、顔料、蛍光増白剤、充填剤、抗菌剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃添加剤、発泡剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、つや消し剤、溶融粘度増強剤、分岐剤、造核剤、可塑剤、離型剤、スリップ剤、潤滑剤、粘着防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、及びこれらの混合物を含んでもよい。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸塩を含むポリエステルマスターバッチ組成物(但し、グリセリン脂肪酸エステルは該組成物から除外される)を提供する。
【0024】
1つの具体的な実施形態において、前記マスターバッチ組成物の生分解性ポリエステル樹脂は、(i)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される生分解性ポリエステル、(ii)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される、少なくとも2つの生分解性ポリエステルのブレンド、又は、(iii)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される生分解性ポリエステルと、ポリエステル以外のさらなる生分解性ポリマーとのブレンドである。
【0025】
他の具体的な実施形態において、前記マスターバッチ組成物の生分解性ポリエステル樹脂は、ポリ乳酸を、単独、又は1以上のさらなる生分解性ポリエステルと組み合わせたブレンドの形で、又は、ポリエステル以外の1以上の生分解性ポリマーと組み合わせたブレンドの形で含む。
【0026】
さらに別の実施形態において、前記アルキルスルホン酸塩は、C(6〜24)スルホン酸金属、又は、その混合物、すなわち、異なるアルキル鎖長を有するアルキルスルホン酸塩の混合物である。
【0027】
さらなる実施形態において、本発明のポリエステルマスターバッチ組成物は、本発明で主張する衝撃強度の改良に影響を及ぼさない方法で、さらに、付加的なポリマー、染料、顔料、蛍光増白剤、充填剤、抗菌剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃添加剤、発泡剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、つや消し剤、溶融粘度増強剤、分岐剤、造核剤、可塑剤、離型剤、スリップ剤、潤滑剤、粘着防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、及びこれらの混合物を含んでもよい。
【0028】
好ましい実施形態において、本発明は、ポリ乳酸及びアルキルC(6〜24)スルホン酸ナトリウムを、アルキルスルホン酸塩に対するポリ乳酸の割合が、全組成物重量に関する重量で、1/1〜1/20となるように含む、ポリエステルマスターバッチ組成物を提供する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、本発明の生分解性ポリエステル組成物の製造のために、本発明のポリエステルマスターバッチ組成物を使用することを目的とする。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリエステルマスターバッチ組成物を生分解性ポリエステル樹脂と混合する工程を含む、生分解性ポリエステル組成物の製造方法を提供する。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、フィルム、シート、共押出し多層フィルム又はシート、プロフィル、コーティング、熱成形品及び成形品の製造に、本発明の組成物を使用することを目的とする。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、本発明の生分解性ポリエステル組成物から成るフィルム、シート、プロフィル、又は成形品を提供する。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリエステルマスターバッチと生分解性ポリエステル樹脂とを混合する工程を含む、フィルム、シート、プロフィル、又は成形品の製造方法を提供する。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂に、衝撃改質剤としてアルキルスルホン酸塩を使用することを目的とする。
【0035】
これらの態様及び他の態様は、以下の詳細な説明から、より明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
第1の態様において、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸塩を含む生分解性ポリエステル組成物(但し、グリセリン脂肪酸エステルは該組成物から除外される)を提供する。本発明の組成物は、優れた透明性、及び耐熱性、印刷適性、生分解性、堆肥化可能性、及び加工性を維持しつつ、高い衝撃強度を有することを特徴とする。
【0037】
本明細書で用いられる、優れた透明性とは、75%より大きい透明度、好ましくは80%より大きい透明度、より好ましくは85%より大きい透明度を意味し、又/あるいは、25%より低いヘイズ、好ましくは20%より低いヘイズ、より好ましくは15%より低いヘイズを意味する。最も好ましい実施形態において、優れた透明性とは、90%より大きい透明度、及び/又は、10%より低いヘイズを意味する。
【0038】
従って、好ましい実施形態において、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸金属を含む、優れた衝撃強度を有する生分解性ポリエステル組成物であって、75%を超える透明度、及び/又は、25%未満のヘイズを示す生分解性ポリエステル組成物(但し、グリセリン脂肪酸エステルは該組成物から除外される)を目的とする。
【0039】
光透過率という用語は、フィルムを通り抜ける入射光のパーセンテージである。本明細書で用いられるヘイズという用語は、本明細書中のポリマー試料を通り抜ける際、前方散乱によって、入射ビームから2.5°を超えてそれた透過光のパーセンテージである。
【0040】
すべてのプラスチック及びガラス材料は、透過損失の観点から、ヘイズとして測定できる、又は測定できない、ある程度の光散乱を有する可能性があると理解されている。さらに、吸収及びヘイズはともに、実質的には、厚みの増加とともに線形的に増加するため、試料の厚みと関連して測定されなければならない。
【0041】
本明細書で用いられる、前記生分解性ポリエステル樹脂は、1つ以上の、脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート等の公知の生分解性ポリエステル等(これらのブレンド及び共重合体を含む)を含む。
【0042】
好ましくは、前記組成物中に存在する生分解性ポリエステル樹脂(すなわち、ポリマー、共重合体、又はポリマーブレンド)の総量が、全生分解性ポリエステル組成物の95重量%〜99.9重量%、好ましくは、98重量%〜99.9重量%である。生分解性脂肪酸ポリエステルの具体例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−プロピオラクトン)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−co−アジペート)、ポリ(ヘキサメチレンサクシネート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(エチレンオキサレート)、ポリ(ブチレンオキサレート)、ポリ(ネオペンチルオキサレート)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリ(ヘキサメチレンセバケート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で用いられる脂肪族・芳香族ポリエステルという用語は、1以上のグリコールと、1以上の芳香族ジカルボン酸と1以上の脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応から得られるポリマーを意味する。グリコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、及び、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール又はこれらの共重合体等のポリメリックグリコールが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸及びイソフタル酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、及びフマル酸が挙げられる。
【0044】
生分解性脂肪族・芳香族ポリエステルの具体例としては、ポリ(エチレンアジペート−co−テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート−co−テレフタレート)、ポリ(プロピレンアジペート−co−テレフタレート)、ポリ(エチレンサクシネート−co−テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−テレフタレート)、ポリ(エチレンセバケート−co−テレフタレート)、及びポリ(ブチレンセバケート−co−テレフタレート)が挙げられる。
【0045】
ポリヒドロキシアルカノエートの具体例としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−4−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシカプロアート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3−ヒドロキシカプロアート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノアート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)、及びポリ(3−ヒドロキシデカノエート)が挙げられる。
【0046】
好ましくは、前記生分解性ポリエステル樹脂は、PLA、そのブレンド及び共重合体を含む。
【0047】
PLAは、そのモノマー単位である乳酸のキラル性のため、いくつかの異型で存在することが知られている。本明細書で用いられるPLAには、乳酸の構造単位がL−乳酸であるホモポリマーのポリ(L−乳酸)、乳酸の構造単位がD−乳酸であるホモポリマーのポリ(D−乳酸)、乳酸の構造単位L−乳酸とD−乳酸を様々な割合で含む混合物であるポリ(DL−乳酸)を含む。
【0048】
PLAは、当技術分野で公知の任意の方法によって得ることができる。通常使用される方法には、ラクチドモノマーの開環重合、乳酸の直接重縮合、及び、乳酸の脱水縮合が含まれる。
【0049】
開環重合法では、通常、PLAを得るために、オクタン酸スズ等の触媒存在下で、必要であれば、重合調整剤存在下で、乳酸の環状二量体であるラクチドが使用される。ラクチドは、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、及び、L−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドを含むため、所望の組成及び結晶化度(cristallinity)を有するPLAを得るためには、これらの異性体が任意に混合及び重合される。
【0050】
PLAの分子量を増やすためには、必要に応じて、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、又は酸無水物等の鎖延長剤を使用することができる。PLAの重量平均分子量は、通常、60,000〜1,000,000の範囲内である。
【0051】
重縮合法では、例えば、L−乳酸、D−乳酸、又はこれらの混合物を、直接、脱水重縮合(polydehydrocondensation)反応させ、それによって、所望の組成を有するポリ乳酸を得ることができる。
【0052】
乳酸の脱水縮合(共沸重縮合としても知られている)においては、重合が、精製されたL−乳酸の直接縮合を経て再び起こり、それにより、縮合反応から製造された水が蒸留除去される。
【0053】
さらなる実施形態において、本発明は、少なくとも2つの生分解性ポリエステル樹脂のブレンド及びアルキルスルホン酸金属を含む、生分解性ポリエステル組成物を提供する。特に、本発明は、PLA、アルキルスルホン酸金属、及び、さらなる生分解性ポリエステル樹脂を含む、生分解性ポリエステル組成物を提供する。
【0054】
好ましいブレンドは、PLAと、ポリ(グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−アジペート)、ポリ(ブチレンアジペート−co−テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−テレフタレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバリレート)、及び/又は、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−4−ヒドロキシバリレート)から選択される(が、これらに限定されない)、1以上のさらなる脂肪族、又は、脂肪族・芳香族生分解性ポリエステルとのブレンドを含む。
【0055】
さらなる実施形態において、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂とポリエステル型ではないさらなる生分解性ポリマーとのブレンドと、アルキルスルホン酸金属とを含む生分解性ポリエステル組成物を提供する。特に、本発明は、PLAと、ポリエステル型でないさらなる生分解性ポリマーとのブレンドと、アルキルスルホン酸金属とを含む、生分解性ポリエステル組成物を提供する。
【0056】
好ましいブレンドは、PLAと、オレフィンオリゴマー、天然ゴム、リグニン、でんぷん又はセルロース等の多糖、ゼラチン、カゼイン、絹、又は木等のタンパク質、ポリエステルアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酸無水物、ポリアミド、ポリ尿素、ポリ(アミン−エナミン)、ポリウレタン、及び、ポリホスファゼンから選択される(が、これらに限定されない)、1以上のポリエステル以外の生分解性ポリマーとのブレンドを含む。
【0057】
好ましくは、PLAと、少なくとも1つのさらなる生分解性ポリエステル、及び/又は、少なくとも1つのポリエステル以外のさらなる生分解性ポリマーとのブレンドは、PLAを、全組成の50重量%〜100重量%、より好ましくは75重量%〜100重量%、最も好ましくは90重量%〜100重量%含む。
【0058】
さらなる実施形態において、本発明による生分解性ポリエステル樹脂はまた、少なくとも2つの異なるモノマーを含む、生分解性ポリエステル共重合体を含む。
【0059】
従って、1つの具体的な実施形態において、本発明は、生分解性コポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸金属を含む、生分解性ポリエステル組成物を提供する。特に、本発明は、乳酸と、少なくとも1つの乳酸以外のさらなる共重合性モノマーとの共重合体、及び、アルキルスルホン酸金属を含む、生分解性ポリエステル組成物を提供する。
【0060】
好ましくは、前記ポリエステル樹脂は、主要成分が乳酸で、少なくとも1つの、乳酸以外の共重合性モノマーは少量である、乳酸の共重合体であり、例えば、乳酸以外のモノマーを50重量%未満、好ましくは多くて30重量%、より好ましくは多くて10重量%含む乳酸の共重合体である。
【0061】
好ましい共重合体は、乳酸と、グリコール酸、カプロラクトン、3−ヒドロキシ酪酸、及び、3−ヒドロキシ吉草酸との共重合体を含むが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用される「アルキルスルホン酸塩」という用語は、任意のアルキルスルホン酸金属でよい。好ましい実施形態において、アルキルスルホン酸金属中の金属は、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属、及び、カルシウム、バリウム及びマグネシウム等の土類金属を含む。
【0063】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖又は分岐の(C6〜24)アルキル、より好ましくは(C8〜20)アルキル、最も好ましくは(C10〜18)アルキルを示す。
【0064】
アルキルスルホン酸塩の混合物とは、異なる鎖長のアルキル基を有する、2以上のアルキルスルホン酸塩の組み合わせである。
【0065】
アルキルスルホン酸金属の好ましい例としては、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−へプチルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウム、n−ノニルスルホン酸ナトリウム、n−デシルスルホン酸ナトリウム、n−ウンデシルスルホン酸ナトリウム、n−ドデシルスルホン酸ナトリウム、n−トリデシルスルホン酸ナトリウム、n−テトラデシルスルホン酸ナトリウム、n−ペンタデシルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、n−ヘプタデシルスルホン酸ナトリウム、n−オクタデシルスルホン酸ナトリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明は、アルキル(C6〜24)スルホン酸ナトリウム、より好ましくは、アルキル(C8〜20)スルホン酸ナトリウム、アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムに関する。
【0067】
好ましくは、前記アルキルスルホン酸金属の配合量は、前記生分解性ポリエステル組成物中に、全組成物重量の0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜2重量%、最も好ましくは1〜1.25重量%である。ポリエステル樹脂に対するアルキルスルホン酸金属の好ましい割合は、重量で1/1000〜1/20、より好ましくは1/200〜1/50、最も好ましくは1/100〜1/80である。
【0068】
さらなる好ましい実施形態において、本発明は、実質的に、生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸塩からなる生分解性ポリエステル組成物を提供する。
【0069】
具体的な実施形態において、本発明は、高い衝撃強度と優れた透明性を示す生分解性ポリエステル組成物を提供し、前記生分解性ポリエステル樹脂は、任意で、さらなる生分解性ポリマーとアルキルスルホン酸塩を組み合わせたPLAである(但し、グリセリン脂肪酸エステルは該組成物から除外される)。
【0070】
本発明の組成物は、衝撃改質剤としてアルキルスルホン酸塩を加えたことにより、優れた衝撃強度を示す。例えば、アルキルスルホン酸塩がないと、PLAは非常に脆弱で、衝撃強度が非常に低いことが知られている(比較例CE1、表1を参照)。PLAの衝撃強度は、1%程度のアルキルスルホン酸塩を充填すると著しく改良することができ、純粋なPLAに比べ、試料を貫くのに必要な全エネルギーが10倍増加することが観察された(実施例E1、及びCE1、表2を参照)。2%の充填というように、アルキルスルホン酸ナトリウムをさらに増やすと、PLA組成物の衝撃強度をさらに改良することができる(実施例E2、表2を参照)。
【0071】
さらに、試料の損傷モードを決定するため、厚さ1mmのフィルムに衝撃抵抗試験(ダートドロップ試験)を行った。損傷モードを次のように定義した。試料が完全に粉砕された場合は脆弱、いくらか形を変えられる(yielding)が試料中に多くの伝播放射状亀裂があれば脆性−延性(BD)損傷モード、いくらか放射状亀裂はあるが大抵が貫通前に阻まれていれば延性−脆性(DB)損傷モードと定義し、延性損傷モードでは放射状亀裂が観察されなかった。望ましい損傷モードは、特定の条件での完全な延性である。通常、純粋なPLAフィルムは脆弱な損傷を被るが、1%のアルキルスルホン酸塩を含むPLAフィルムは、主に延性損傷、又は延性−脆性な損傷との混合であり、2%のアルキルスルホン酸塩を含むPLAフィルムは、常に、延性モードの損傷を示した。
【0072】
以上に示したように、本発明の組成物は、優れた衝撃強度を示すが、同時に優れた透明性を維持することができる。ASTM D1003に従って行った光透過実験は、PLAと2%までの量のアルキルスルホン酸塩を含む組成物のみが、PLA100%のものに比べてのヘイズの低下がわずかであったことを示した(実施例E1、E2及びCE1、表1を参照)。比較実験は、PLAと、PLAの所望の衝撃強度改良を得るために推奨されている濃度で、他の市販の最新のPLA用衝撃改質剤(脂肪族・芳香族ポリエステル系の)を含む組成物とを用いて行ったが、試料のほぼ完全な不透明さを示した(実施例CE2、CE3、表2を参照)。本発明の組成物は、フィルム押し出し機で製造した厚さ0.5mmのフィルムにおいて(実施例E1、E2及びCE1、表1を参照)、射出成形機で製造した厚さ2mmの射出成形部品において(実施例E5、E6、E7及びCE6、表4を参照)、及びインフレーションフィルム押し出し機で製造した厚さ100μmのインフレーションフィルムにおいて(実施例E8、E9及びCE7、表5を参照)、優れた透明性を示した。
【0073】
さらに、本発明の生分解性組成物は、優れた衝撃強度及び透明性に加えて、並外れて良好な切断性を有する。従って、本発明の生分解性組成物から作られたフィルム又はシートは、PLA100%の場合には通常観察される切断時の小さい亀裂を示さなかった。
【0074】
従って、シートの衝撃特性が改良されたことにより、割れる危険性がより少ない状態でトレイを素早く切断でき、破損の危険性がより少ない状態で素早く運べる。このことは、特に、熱成形工程、つまり、例えば、生分解性シートをベースとした熱成形フード・トレイの製造時に大きく、このような最終製品の製造における生産性の上昇をもたらす。
【0075】
PLAの柔軟性を増し、それゆえ衝撃強度を改良できるが、通常PLAのガラス転移の著しい低下を引き起こしてしまう、グリセロールモノステアレート又はポリカプロラクトン等の一般に使用されている可塑剤とは対照的に、ガラス転移温度の低下なしに、本発明の生分解性ポリエステル組成物、及び、特に生分解性PLA組成物の衝撃強度及び切断性の改良が得られた。この改良により、それらは、例えば、高温での変形を避けるために、充分な耐熱性を必要とする用途に極めて適するようになるであろう。
【0076】
本発明の生分解性ポリエステル組成物、及び、特に生分解性PLA組成物は、さらに、試料の不変の優れた加工性を特徴とする。大規模なフィルム押し出し機で行われたフィルム押し出し実験は、衝撃改質添加剤としてアルキルスルホン酸塩を加えることにより、プロセスパラメータの修正のない、又は、プロセス最適化の必要性がないことを示した。それに対し、グリセロールモノステアレート又はポリカプロラクトン等の一般に使用されている可塑剤、又はPLA用の他の衝撃改質添加剤は、PLAの溶融粘度を下げることがわかっており、このことは、たるみをもたらすフィルムやシートの押し出し、又は、高い溶融強度が必要とされる押し出しブロー成形加工にとって不利である。
【0077】
ISO 1133に従っての、選択された組成物の溶解物のメルトフローインデックス、つまり、流れ易さの測定により、生分解性PLA組成物に1又は2パーセントのアルキルスルホン酸ナトリウムを付加しても、全く、又は、たいした影響を及ぼさないことが示された。一方、グリセロールモノステアレート等の可塑剤の付加は、メルトフローインデックスを約50%増加させ、加工特性の低下をもたらした(実施例E3、E4、CE4、CE5を参照)。
【0078】
本発明の生分解性ポリエステル組成物、及び、特に生分解性PLA組成物は、さらに、低い移動性と良好な印刷性を特徴とする。
【0079】
本発明の生分解性ポリエステル組成物、及び、特に生分解性PLA組成物の他の利点は、それらの衝撃強度を大幅に改良するのに必要とされる添加量が低いことである。通常、1%(あるいはそれ以下)のアルキルスルホン酸塩は、衝撃強度を10倍増加するのに十分であると思われる(実施例E1、表1を参照)。従って、本発明の組成物は、単に費用効率が高いだけでなく、堆肥化可能性又は生分解性の認証を得るための厳しい必要条件を満たすのも明らかなはずであり、それゆえ様々な用途に極めて適している。
【0080】
さらなる実施形態において、本発明の生分解性ポリエステル組成物は、本発明で主張する衝撃強度の改良に影響を及ぼさない方法で、さらに、付加的なポリマー、染料、顔料、蛍光増白剤、充填剤、抗菌剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃添加剤、発泡剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、つや消し剤、溶融粘度増強剤、分岐剤、造核剤、可塑剤、離型剤、スリップ剤、潤滑剤、粘着防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、及びこれらの混合物を含んでもよい。
【0081】
従って、特定の実施形態において、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂、アルキルスルホン酸金属、及び1つ以上の添加剤を含む、生分解性ポリエステルを提供する。
【0082】
任意の付加的なポリマーは、任意の適切な種類であってよく、通常、ホモポリマー、コポリマー、インターポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム、及び交互コポリマー又はインターポリマー等であるが、これに限定されない。「ポリマー」という用語には、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びランダム対称を含む物質の可能な幾何学的形状すべてが含まれる。ポリマーの適した種類には、例えば、エチレンのホモポリマー、コポリマー、インターポリマー及びそれらのブレンド等のポリオレフィン、及び、少なくとも3つ、好ましくは3〜10の炭素原子を有する、直鎖又は分岐の、α−モノオレフィンを含む。本発明で使用することができるホモポリマーの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ(1−ブテン)である。適切なコポリマーの代表的な例は、エチレン・プロピレン、エチレン・ブテン、エチレン・ペンテン、エチレン・ヘキセン、エチレン・ヘプテン、及びエチレン・オクテンコポリマーである。ポリエチレンの適切な種類は、高圧低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)を含むが、これに限定されない。使用可能な他のホモポリマー、コポリマー及びインターポリマーの例としては、ポリエチレンテレフタレート及びポリブテンテレフタレートを含むポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー等のビニルポリマー、エチレンメチルアクリル酸コポリマー(アイオノマー)、エチレン・スチレンインターポリマー、ポリアルキレンオキシドポリマー、及びポリカーボネイトが挙げられる。ブレンドの代表例は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のホモポリマーとエチレン・ブテン又はエチレン・オクテン等のコポリマーとのブレンド、及びコポリマー同士のブレンドである。
【0083】
さらなる実施形態において、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂、アルキルスルホン酸金属、及び、衝撃強度の改良と組成物の透明度に影響を及ぼさない方法で、粘着防止剤又はスリップ剤から選択される1以上の添加剤を含む、生分解性ポリエステルを提供する。スリップ剤及び粘着防止剤は、例えば、積み重ねたトレイ、シート又は容器、又は巻いたフィルムの場合に直面する可能性のある、製品の互いとのくっつきを防止することで知られている。スリップ剤と粘着防止剤はともに、実質的には、プラスチック製品の表面で有効であるが、異なるモードにより機能する。スリップ剤は、通常、表面での移動を介してプラスチック製品の摩擦係数を減らし、それにより潤滑効果を介して滑りを促進する脂肪製品である。粘着防止剤は、通常、プラスチック製品の表面にでこぼこを作り、接触する2つの製品の表面の間の接触面を減らし、同様に、それらの間の粘着性を減らす固体の無機又は有機粒子である。スリップ剤の具体例としては、ステアリン酸等のカルボン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム又はオレイン酸ナトリウム等のカルボン酸の金属塩、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ペンタエリトリトールのエステル、ソルビタンモノオレート、又はモンタンワックスエステル等のエステルワックス、エルカ酸アミド、エチレンビスオレアミド、エチレンビスステアリン酸アミド、オレイルパルミチン酸アミド、オレイルステアリン酸アミド、ステアリルステアリン酸アミド、タロウアミド、又はステアリルエルカ酸アミド等の脂肪酸アミドワックス、ポリジメチルシロキサン、パラフィンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、又はエチレン・プロピレンコポリマーワックス等のポリマーワックスが挙げられる。
【0084】
無機粘着防止剤の具体例としては、天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ドロマイト、石灰石、ゼオライト、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス・ビーズ、セラミック・ビーズ、沈降非晶質シリカ、ヒュームドシリカ、シリカ・フューム、珪藻土、石英、ノバキュライト、長石、霞石閃長岩、水酸化アルミニウム(aluminium trihydroxyde)、水酸化マグネシウム(magnesium dihydroxyde)、タルク、カオリン、粘土、グラファイト、炭素繊維、カーボン・ナノチューブ、珪灰石、雲母、及びクリストバライトが挙げられる。
【0085】
具体的な有機粘着防止剤には、架橋シリコン粒子、架橋アクリル粒子、及びポリテトラフルオロエチレン粒子が含まれる。
【0086】
好ましくは、スリップ剤及び粘着防止剤の配合量は、それぞれ、全組成物重量の0.1〜1重量%、より好ましくは、全組成物重量の0.1〜0.3重量%である。
【0087】
さらなる特定の実施形態において、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂、アルキルスルホン酸金属、及び紫外線安定剤を含む、生分解性ポリエステル組成物を提供する。紫外線安定剤は、紫外線放射からポリマー自身、及び/又はポリマーで作られた製品に入れられた内容物を守るため、例えば紫外線に対し敏感な飲み物を劣化から防ぐために、付加することができる。
【0088】
具体的な紫外線安定剤は、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、立体障害アミン、ペンタエリトリトールのシアノアクリレート、有機ニッケル化合物、サリチル酸塩、桂皮酸誘導体、レソルシノールモノベンゾアート、オキサニリド、及びp−ヒドロキシベンゾエートを含む。紫外線安定剤をさらに含む生分解性ポリエステル組成物を、紫外線バリアの役割を果たすフィルム又は他の製品において使用する場合、紫外線安定剤の配合量は、全組成物重量の0.1〜1重量%であるのが好ましい。
【0089】
ポリマー自身を紫外線放射から守りその耐久性を向上させるために、生分解性ポリエステル組成物に紫外線安定剤が存在する場合、紫外線安定剤の配合量は、全組成物重量の1〜5重量%であるのが好ましい。
【0090】
上記で示したように、アルキルスルホン酸金属を生分解性ポリエステルマトリックスに組み込む方法は、非常に多様である。選択したアルキルスルホン酸金属を、フィルム、シート又は成形品等の最終製品の製造中に直接加えてもよいし、あるいは、選択したアルキルスルホン酸金属を、生分解性ポリエステル中に予め分散させておいて、マスターバッチ又は化合物を介して、最終製品の製造中に加えてもよい。さらに別の方法として、選択したアルキルスルホン酸金属を、重合工程中又は重合工程直後に、ポリマー・マトリックスに直接加えてもよい。最終用途の衝撃性能及び透明性にとって決定的である、最適な分散を確実にするため、本発明のアルキルスルホン酸金属は、好ましくは、マスターバッチを介して、最終製品の製造中に加えられる。
【0091】
本明細書で用いられる「マスターバッチ」という用語は、ポリマー・マトリックス中に高濃度の添加剤を密で均一に分散させた、ポリマー担体の顆粒を意味する。マスターバッチは、通常、わずかなパーセントの充填で、最終製品の製造中に加えられ、対象とする用途と同じか又は異なるポリマー担体、好ましくは同じポリマー担体をベースにしている。
【0092】
アルキルスルホン酸金属のマスターバッチへの組み込みは、好ましくは、溶融混合装置で行われる。前記マスターバッチの製造に適する具体的な溶融混合装置としては、単軸押し出し機、同方向回転又は異方向回転二軸押し出し機、多軸押し出し機、又はコニーダーが挙げられる。好ましくは、使用する溶融混合装置は、直径が少なくとも27mm、直径に対する長さの割合(L/D)が少なくとも40であるスクリューを備えた、二軸同方向回転押し出し機である。このスクリューは、好ましくは、ポリマー・マトリックス中のアルキルスルホン酸金属の最適で一様な分散を確実にするために、混練及び混合部材を装備している。
【0093】
マスターバッチの一定で一様な品質を確保するため、その成分は、好ましくは、重量測定投与装置付の二軸押し出し機に投与される。優先的に、ポリマー担体はメインホッパーを通して押し出し機に加え、アルキルスルホン酸金属添加剤は、サイドフィーダを通してポリマー溶解物に組み入れる。
【0094】
その後、得られた溶融均質物質を、好ましくは、ストランド・ペレタイジングする。ストランド・ペレタイジングは、優先的に、ストランドの冷却、例えば、水槽を通り抜けた後、回転ナイフ又は水中造粒装置を用いて行われる。当技術分野で公知の他の製造方法も同様に適用できる。
【0095】
マスターバッチ押し出し中に適用されるべき加工条件は、使用されるポリマー担体によって決まる。ポリマー担体がPLAである好ましい場合においては、加工温度は、180〜240℃の範囲であり、さらに好ましくは200〜220℃の範囲である。
【0096】
さらなる添加剤が本発明の組成物で使用される場合、通常、これらの添加剤は、別のマスターバッチ、又は本発明のアルキルスルホン酸塩を含む同じマスターバッチを介して、最終製品又は半完成製品の製造中に直接加えられる。
【0097】
従って、本発明のさらなる態様は、生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸塩を含むポリエステルマスターバッチ(但し、グリセリン脂肪酸エステルは該組成物から除外される)を提供する。
【0098】
本発明の生分解性ポリエステル組成物同様に、本発明のポリエステルマスターバッチ組成物は、生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエート、及び同類のもの(これらのブレンド及び共重合体を含む)から選択された1以上の生分解性ポリエステルをベースとすることができる。
【0099】
本発明のマスターバッチは、ポリエステル以外のさらなる生分解性ポリマーを付加的に含んでもよい。
【0100】
成分の性質を定義するため以上に使用したすべての定義はまた、ポリエステルマスターバッチ組成物の成分の性質にも適用される。
【0101】
好ましい実施形態において、本発明のマスターバッチは、ポリ乳酸(ポリ乳酸と1以上の他の生分解性ポリマーとのブレンド、及びポリ乳酸の共重合体を含む)を含む。
【0102】
好ましくは、組成物中に存在する生分解性ポリエステル樹脂(すなわち、ポリマー、共重合体、又はポリマーブレンド)の総量は、全生分解性ポリエステル組成物の50重量%〜95重量%の間、好ましくは70重量%〜80重量%、より好ましくは75重量%〜80重量%である。
【0103】
好ましい実施形態において、ポリエステルマスターバッチ組成物中のアルキルスルホン酸金属の配合量は、全組成物重量の5重量%〜50重量%、より好ましくは10重量%〜30重量%、さらにより好ましくは20重量%〜25重量%である。
【0104】
好ましい実施形態において、本発明は、ポリ乳酸及びアルキルC(6〜24)スルホン酸ナトリウムを、アルキルスルホン酸塩に対するポリ乳酸の割合が、全組成物重量に関する重量で、1/1〜1/20となるように含む、ポリエステルマスターバッチ組成物を提供する。
【0105】
前記ポリエステルマスターバッチは、さらに、付加的なポリマー、染料、顔料、蛍光増白剤、充填剤、抗菌剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃添加剤、発泡剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、つや消し剤、溶融粘度増強剤、分岐剤、造核剤、可塑剤、離型剤、スリップ剤、潤滑剤、粘着防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、又はこれらの混合物から選択された1以上の添加剤を含んでもよい。
【0106】
好ましくは、添加剤の配合量は、全組成物重量の0.1重量%〜70重量%である。
【0107】
任意の付加的なポリマーは、任意の適切な種類であってよく、通常、ホモポリマー、コポリマー、インターポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム、及び交互コポリマー又はインターポリマー等であるが、これらに限定されない。「ポリマー」という用語には、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びランダム対称を含む物質の可能な幾何学的形状すべてが含まれる。適切なポリマーの種類は、例えば、エチレンのホモポリマー、コポリマー、インターポリマー及びそれらのブレンド等のポリオレフィン、及び、少なくとも3つ、好ましくは3〜10の炭素原子を有する、直鎖又は分岐のα−モノオレフィンを含む。本発明で使用することができるホモポリマーの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ(1−ブテン)である。適切なコポリマーの代表的な例は、エチレン・プロピレン、エチレン・ブテン、エチレン・ペンテン、エチレン・ヘキセン、エチレン・ヘプテン、及びエチレン・オクテンコポリマーである。適切なポリエチレンの種類は、高圧低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)を含むが、これらに限定されない。使用可能な他のホモポリマー、コポリマー及びインターポリマーの例として、ポリエチレンテレフタレート及びポリブテンテレフタレートを含むポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルコポリマー、及びエチレン−ビニルアルコールコポリマー等のビニルポリマー、エチレンメチルアクリル酸コポリマー(アイオノマー)、エチレン・スチレンインターポリマー、ポリアルキレンオキサイドポリマー、及びポリカーボネイトが挙げられる。ブレンドの代表例は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のホモポリマーとエチレン・ブテン又はエチレン・オクテン等のコポリマーとのブレンド、及びコポリマー同士のブレンドである。
【0108】
好ましくは、本発明のマスターバッチは、生分解性ポリエステル樹脂、アルキルスルホン酸金属、及び、1以上のスリップ剤及び/又は粘着防止剤を含む。
【0109】
好ましくは、前記スリップ剤及び/又は粘着防止剤の配合量は、それぞれ、全マスターバッチ組成物重量の1重量%〜5重量%である。
【0110】
他の好ましい実施形態において、本発明のマスターバッチは、生分解性ポリエステル樹脂、アルキルスルホン酸金属、及び1以上の紫外線安定剤を含む。
【0111】
さらなる態様において、本発明は、本発明のマスターバッチを生分解性ポリエステル樹脂と混ぜる工程を含む、生分解性ポリエステル組成物の製造方法を提供する。
【0112】
従って、本発明はまた、本発明の生分解性ポリエステル組成物の製造のために、本発明のポリエステルマスターバッチ組成物を使用することを目的とする。
【0113】
前記マスターバッチ及び生分解性ポリエステル樹脂からなる顆粒混合物は、好ましくは、それ自体、最終用途品の製造のために使用されるが、最終製品の製造に使用する均質の顆粒を形成するために、押し出し機で加工することもできる。
【0114】
生分解性ポリエステル樹脂の非晶質性又は半結晶性により、顆粒を結晶化することができる。好ましくは、顆粒は使用前に乾燥させる。生分解性ポリエステルがPLAである好ましい場合、非晶質顆粒は、通常、30〜50℃で数時間乾燥させ、結晶性顆粒は、通常、90℃で数時間乾燥させる。
【0115】
他の態様において、本発明は、本発明による組成物から作られる製品に関する。本発明による組成物から作られる製品の具体的な例は、押し出しフィルム、シート、プロフィル、コーティング、熱成形品及び成形品を含むが、これらに限定されない。フィルムの具体例は、薄膜、一軸又は二軸延伸フィルム、単層又は多層共押出しフィルム、インフレーション(blown)フィルム及びラミネートを含む。シートの具体例は、単層又は多層シート、ツインウォールシート又は発泡シートを含む。成形品の具体例は、押し出しブロー成形、インジェクションブロー成形、又は射出廷伸ブロー成形により得られるボトル又は容器、又は射出成形により得られるその他の成形品を含む。
【0116】
さらなる特定の実施形態において、本発明は、1以上の層が本発明による組成物を有する、多層共押出しフィルム又はシートに関する。より好ましくは、本発明は、2つの外層が本発明による生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸金属を含み、内層が生分解性ポリエステル樹脂を含む、共押出し多層フィルム又はシートに関する。
【0117】
さらなる態様において、本発明は、生分解性ポリエステル組成物中、及び、本発明で主張する生分解性ポリエステル組成物からなる製品の製造において、衝撃改質剤としてアルキルスルホン酸塩を使用することを目的とする。
【0118】
本明細書で主張される組成物のすべては、本開示に照らして、過度の実験なしに作成し達成することができる。本発明の要旨を逸脱しない範囲で、本発明に変形形態を適用してもよいことは、当該技術者には明らかであろう。本明細書で提供された実施例は、説明のためのものであり、包括的ではないゆえ、決して本発明を限定するものと見なされてはならない。
【実施例】
【0119】
原材料及び方法:
以下に示した衝撃強度のデータは、キャストフィルム押出し機で製造した(押出量300kg/時間、加工温度190〜210℃)厚さ0.5mmのフィルムに、室温で行われるDIN EN ISO 6603−2(落下重錘2kg、落下高さ1mm)により測定した全貫通エネルギーである。
【0120】
透過率及びヘイズは、同じ0.5mm試料に対し、ASTM D1003により測定した。
【0121】
メルトフローインデックスについては、ISO 1133により、210℃の温度、3.18gの負荷で測定した。
【0122】
アルキルスルホン酸塩として、Atmer 190(アトマー(登録商標)、クローダ製)を使用した。
【0123】
比較例CE1:
比較例として、100%PLA(NatureWorksTM PLA 2002D、(ネイチャーワークス、商標))を用いた。乾燥させたPLAを使用して、190〜210℃の温度で、単軸押出し機にて0.5mmのフィルムを製造した。
【0124】
比較例CE2:
98%PLA+2%脂肪族・芳香族ポリエステルを、190〜210℃に含まれる温度で、二軸押出し機にて加工・造粒した。得られた顆粒を乾燥させ、190〜210℃の温度で、単軸フィルム押し出し機にて0.5mm厚さに加工した。
【0125】
比較例CE3:
95%PLA+5%ポリ(ブチレンアジペート−co−テレフタレート)を、190〜210℃に含まれる温度で、二軸押出し機にて加工・造粒した。得られた顆粒を乾燥させ、190〜210℃の温度で、単軸フィルム押し出し機にて0.5mm厚さに加工した。
【0126】
比較例CE4:
100%PLAを、190〜210℃に含まれる温度で、二軸押出し機にて加工・造粒した。
【0127】
比較例CE5:
99%PLA+1%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウム+1%グリセリンモノステアレートを、190〜210℃に含まれる温度で、二軸押出し機にて加工・造粒した。アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムは、25%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムと75%PLAを含む予備乾燥マスターバッチを介して加えた。グリセリンモノステアレートは、10%グリセリンモノステアレートと90%PLAを含む予備乾燥マスターバッチを介して加えた。
【0128】
比較例CE6:
100%PLAを、金型温度20℃、190〜210℃に含まれる温度で、射出成形機にて2mm厚の射出成形試料に加工した。
【0129】
比較例CE7:
100%PLAを、190〜210℃に含まれる温度で、インフレーションフィルム押し出し機にて100μm厚のインフレーションフィルムに加工した。
【0130】
実施例E1:99%PLA+1%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムの作製。
0.5mm厚さのフィルムを、PLA96%と、25%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムと75%PLAとを含むマスターバッチ4%の予備乾燥混合物を用いて、190〜210℃の温度で、単軸押出し機にて得た。マスターバッチは、予め、190〜210℃の温度で、二軸押出し機にて作製した。
【0131】
実施例E2:98%PLA+2%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムの作製。
これから作られる組成物及びフィルムは、実施例E1と類似の方法で作成した。
【0132】
実施例E3:99%PLA+1%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムの作製。
99%PLA+1%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムを、190〜210℃に含まれる温度で、二軸押出し機にて加工・造粒した。アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムは、25%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムと75%PLAを含む予備乾燥マスターバッチを介して加えた。
【0133】
実施例E4:98%PLA+2%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムの作製。
組成物は、実施例E3と類似の方法で作成した。
【0134】
実施例E5:99%PLA+1%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムの作製。
2mm厚さの射出成形部品を、PLA96%と、25%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムと75%PLAを含むマスターバッチ4%との予備乾燥混合物を用いて、金型温度20℃、190〜210℃の温度で、射出成形機にて得た。マスターバッチは、予め、190〜210℃の温度で、二軸押出し機にて作製した。
【0135】
実施例E6:98%PLA+2%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムの作製。
組成物は、実施例E5と類似の方法で作成した。
【0136】
実施例E7:97%PLA+3%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムの作製。
組成物は、実施例E5と類似の方法で作成した。
【0137】
実施例E8:99%PLA+1%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムの作製。
100μm厚さのインフレーションフィルムを、PLA96%と、25%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムと75%PLAを含むマスターバッチ4%との予備乾燥混合物を用いて、190〜210℃の温度で、インフレーションフィルム押出し機にて得た。マスターバッチは、予め、190〜210℃の温度で、二軸押出し機にて作製した。
【0138】
実施例E9:98%PLA+1%アルキル(C10〜18)スルホン酸ナトリウムの作製。
組成物は、実施例E8と類似の方法で作成した。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
【表4】

【0143】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸金属を含む、優れた衝撃強度及び透明性を有する生分解性ポリエステル組成物であって、前記アルキルスルホン酸金属の配合量が、全組成物重量の0.1〜5重量%である生分解性ポリエステル組成物(但し、グリセリン脂肪酸エステルは前記組成物から除外される)。
【請求項2】
75%を超える透明度、及び/又は、25%未満のヘイズを示す、請求項1に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項3】
前記生分解性ポリエステル樹脂は、(i)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される生分解性ポリエステル、(ii)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される、少なくとも2つの生分解性ポリエステルのブレンド、又は、(iii)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される生分解性ポリエステルと、ポリエステル以外のさらなる生分解性ポリマーとのブレンドである、請求項1又は2に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記生分解性ポリエステルがポリ乳酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記生分解性ポリエステル樹脂の配合量が、全組成物重量の95〜99.9重量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記アルキルスルホン酸金属が、アルキルC(6〜24)スルホン酸ナトリウム又はその混合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項7】
前記アルキルスルホン酸塩の配合量が、全組成物重量の0.5〜2重量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項8】
実質的に、生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸塩からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項9】
1以上の添加剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項10】
前記1以上の添加剤は、付加的なポリマー、染料、顔料、蛍光増白剤、充填剤、抗菌剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃添加剤、発泡剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、つや消し剤、溶融粘度増強剤、分岐剤、造核剤、可塑剤、離型剤、スリップ剤、潤滑剤、粘着防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、又はこれらの混合物から選択される、請求項9に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項11】
前記1以上の添加剤は、粘着防止剤、スリップ剤及び/又は紫外線安定剤である、請求項9に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項12】
1以上の粘着防止剤及び/又はスリップ剤の配合量が、それぞれ、全組成物重量の0.1〜1重量%、1以上の紫外線安定剤の配合量が全組成物重量の0.1〜5重量%である、請求項9に記載の生分解性ポリエステル組成物。
【請求項13】
生分解性ポリエステル樹脂及びアルキルスルホン酸金属を含むポリエステルマスターバッチ組成物であって、アルキルスルホン酸金属の配合量が、全組成物重量の5〜50重量%であるポリエステルマスターバッチ組成物(但し、グリセリン脂肪酸エステルは前記組成物から除外される)。
【請求項14】
前記生分解性ポリエステル樹脂は、(i)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される生分解性ポリエステル、(ii)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される、少なくとも2つの生分解性ポリエステルのブレンド、又は、(iii)生分解性脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族ポリエステル、又はポリヒドロキシアルカノエートから選択される生分解性ポリエステルと、ポリエステル以外のさらなる生分解性ポリマーとのブレンドである、請求項13に記載のポリエステルマスターバッチ組成物。
【請求項15】
前記生分解性ポリエステルがポリ乳酸である、請求項13又は14に記載のポリエステルマスターバッチ組成物。
【請求項16】
生分解性ポリエステル樹脂の配合量が、全組成物重量の50〜95重量%である、請求項13〜15のいずれか1項に記載のポリエステルマスターバッチ組成物。
【請求項17】
前記アルキルスルホン酸塩が、アルキルC(6〜24)スルホン酸ナトリウム又はその混合物である、請求項12〜14に記載のポリエステルマスターバッチ組成物。
【請求項18】
前記生分解性ポリエステル樹脂に対するアルキルC(6〜24)スルホン酸ナトリウムの割合が、全組成物重量に関する重量で1/1〜1/20の間に含まれる、請求項13〜17に記載のポリエステルマスターバッチ組成物。
【請求項19】
1以上の添加剤をさらに含む、請求項13〜18のいずれか1項に記載のポリエステルマスターバッチ組成物。
【請求項20】
前記1以上の添加剤は、付加的なポリマー、染料、顔料、蛍光増白剤、充填剤、抗菌剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃添加剤、発泡剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、つや消し剤、溶融粘度増強剤、分岐剤、造核剤、可塑剤、離型剤、スリップ剤、潤滑剤、粘着防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、又はこれらの混合物から選択される、請求項13〜19に記載のポリエステルマスターバッチ組成物。
【請求項21】
前記1以上の添加剤は、粘着防止剤、スリップ剤及び/又は紫外線安定剤である、請求項19に記載のポリエステルマスターバッチ組成物。
【請求項22】
1以上の添加剤の配合量が、全組成物重量の0.1〜70重量%である、請求項19に記載のポリエステルマスターバッチ組成物。
【請求項23】
請求項1〜12に記載の生分解性ポリエステル組成物の製造のための、請求項13〜22に記載のポリエステルマスターバッチ組成物の使用。
【請求項24】
生分解性ポリエステル樹脂を、請求項13〜22に記載のポリエステルマスターバッチ組成物と混合する工程を含む、請求項1〜12に記載の生分解性ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項25】
フィルム、シート、共押し出し多層フィルム又はシート、プロフィル、コーティング、熱成形品及び成形品の製造における、請求項1〜12に記載の生分解性ポリエステル組成物の使用。
【請求項26】
請求項1〜12に記載の生分解性ポリエステル組成物からなるフィルム、シート、プロフィル、コーティング、熱成形品及び成形品。
【請求項27】
1以上の層が請求項1〜12に記載の生分解性ポリエステル組成物からなる、共押出し多層フィルム又はシート。
【請求項28】
生分解性ポリエステル樹脂を、請求項13〜22に記載のマスターバッチと混合する工程を含む、請求項26に記載のフィルム、シート、プロフィル又は成形品、又は請求項27に記載の共押出し多層フィルム又はシートの製造方法。
【請求項29】
請求項1〜12に記載の生分解性ポリエステル組成物での、衝撃改質剤としてのアルキルスルホン酸塩の使用。
【請求項30】
前記アルキルスルホン酸塩は、C(6〜24)スルホン酸ナトリウム又はその混合物である、請求項29に記載の使用。


【公開番号】特開2009−144152(P2009−144152A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−304539(P2008−304539)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(508353396)スカノ マネージメント+サービシーズ アーゲー (1)
【Fターム(参考)】