説明

生分解性マクロマー

生体適合性組成物を製造する方法が提供される。生体適合性組成物は、溶媒および触媒を用いずに製造される脂肪族ポリエステルマクロマーを含む。得られる脂肪族ポリエステルマクロマーは、ポリイソシアネートと反応させて、末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーを形成させてもよく、次に、ポリオールと反応させて、ポリウレタンを形成させてもよい。次に、ポリウレタンは、第2のポリイソシアネートと反応させて、イソシアネート官能性ポリウレタンを製造してもよい。本開示の方法によって調製される組成物は、医療的/外科的用途のための接着剤または封止剤として用いられてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マトリックスを形成することができる生体適合性ポリマーを製造する方法、生体適合性ポリマーそれ自体、外科用接着剤または封止剤としてのこれらのポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、縫合糸を接着ボンドに置き換えることまたは接着ボンドによって縫合糸を補強することへの関心の高まりが見られる。この関心の高まりの理由には、(1)修復が達成され得る潜在的な速度;(2)結果として流動体の浸潤を妨げるような完全な閉鎖をもたらす結合物質の能力;(3)組織を過剰に変形させずに結合を形成する可能性が挙げられる。
【0003】
しかしながら、この領域における研究によって、外科用接着剤が外科医に受け入れられるようにするためには、それらの接着剤は多数の特性を持たなければならないことが示されている。それらは、初期の高い粘着力、並びに生体組織に急速に結合する能力を示さなければならない;この結合強度は、結合破壊前に組織破壊を引き起こすには十分に高くなければならない;この接着は、ブリッジ、典型的には透過性のある弾力性ブリッジを形成しなければならない;この接着ブリッジおよび/またはその代謝産物は、局所的な組織毒性または発癌効果を引き起こしてはならない。
【0004】
組織接着剤または組織封止剤として有用であるいくつかの材料が、現在利用可能である。現在利用可能である1タイプの接着剤は、シアノアクリレート接着剤である。しかしながら、シアノアクリレート接着剤は分解して、ホルムアルデヒドなどの望ましくない副産物を生じる可能性がある。シアノアクリレート接着剤を用いた場合の別の不都合は、それらが、それらの有用性を制限し得る高い曲げ弾性率を有する場合があるということである。
【0005】
現在利用可能である別のタイプの組織封止剤は、ウシおよび/またはヒト供給源から誘導される成分を利用する。例えば、フィブリン封止剤が利用可能である。しかしながら、いずれかの天然材料と同様に、多くの場合、その材料におけるばらつきが観察され、この封止剤が天然のタンパク質由来であるため、ウイルス伝染という問題があり得る。
【0006】
合成生体適合性接着剤および/または封止剤の開発が進行している。上述した天然材料と比較した、これらの材料の利点は、それらの堅さ(consistency)であり、ウイルス伝染の危険性が減少していることである。これらの接着剤および/または封止剤を製造する方法は、多くの場合、溶媒および触媒の使用を必要とし、次に、使用前にこのような溶媒および触媒を取り除く精製工程を必要とする。このようにして、これらの触媒および溶媒の使用は、これらの接着剤および/または封止剤を製造するために必要とされる時間、並びにそれらの製造と関連したコストを増す。したがって、より経済的となるように、これらの合成生物学的接着剤および/または封止剤を製造する改善された方法を開発することが望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、生体適合性組成物を製造する方法を提供し、次に、この生体適合性組成物は、医療および/または外科的処置および手法において接着剤または封止剤として利用することができる。この組成物は、溶媒および触媒を使用しないで製造することができる。
【0008】
ある態様では、本開示の方法は、ポリアルキレンオキシドと脂肪族ジカルボン酸とを約0.5時間〜約120時間の間接触させて、混合物を形成させ、その混合物を約−70℃〜約85℃の温度で維持し、混合物から脂肪族ポリエステルマクロマーを回収することを含んでもよく、ここで、脂肪族ポリエステルマクロマーは溶媒残基および触媒残基を持たない。
【0009】
ある態様では、本開示の方法は、ポリアルキレンオキシドと脂肪族ジカルボン酸とを約1時間〜約72時間の間接触させて、混合物を形成させ、その混合物を約−10℃〜約80℃の温度で維持し、混合物から、溶媒残基および触媒残基を持たない脂肪族ポリエステルマクロマーを回収し、脂肪族ポリエステルマクロマーと、芳香族、脂肪族および脂環式ジイソシアネートを含む第1のイソシアネートとを接触させ、イソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーを製造し、このイソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーとポリオールとを反応させて、生体適合性組成物としてポリウレタンを製造することを含んでもよい。
【0010】
いくつかの態様では、このようにして得られた脂肪族ポリエステルマクロマーは、ポリイソシアネートと反応させて、末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーを形成させてもよく、次に、ポリオールと反応させて、ポリウレタンを製造させてもよい。次に、ポリウレタンは、第2のポリイソシアネートと反応させて、イソシアネート官能性ポリウレタンを製造させてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、組織接着剤または封止剤として用いることができる生体吸収性組成物を形成するために適した化合物に関する。
【0012】
本開示の方法は、ヒドロキシ末端化したポリアルキレンオキシド系エステル類、オリゴエステル類および/またはポリエステル類を製造するために利用されてもよく、それらの製造のための方法である。ある態様では、これらのエステル類、オリゴエステル類および/またはポリエステル類は、本明細書では脂肪族ポリエステルマクロマーと称されることもあり、触媒および溶媒を用いずに縮合反応を経由して製造されてもよい。
【0013】
次に、このようにして製造される脂肪族ポリエステルマクロマーは、第1のジイソシアネートと反応させて、イソシアネート末端キャップしたマクロマーを製造してもよい。次に、イソシアネート末端キャップしたマクロマーは、ポリオールと反応させて、ポリウレタンを製造してもよい。次に、得られるポリウレタンは、第2のポリイソシアネートと反応させて、イソシアネート官能性ポリウレタンを製造してもよい。ポリウレタンまたはイソシアネート官能性ポリウレタンは、インビボにおいて、接着剤、封止剤、薬物送達デバイスなどとして利用されてもよい。
【0014】
本開示の組成物は、使用中に遭遇する温度では固体ではないが、むしろ、流動性を有する。流動性材料は測定可能な粘性を有する。例えば、本化合物は、約0℃〜約40℃の温度では、約1,000〜約300,000センチポアズ(「cP」)の粘性を有する。
【0015】
ある態様では、ポリアルキレンオキシドを利用して、脂肪族ポリエステルマクロマーを形成してもよい。脂肪族ポリエステルマクロマーを形成するために使用することができる適切なポリアルキレンオキシドには、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、BASF Corporation(Mt.Olive,NJ)からPLURONICS(登録商標)として市販されているトリブロックPEO−PPO共重合体を含むポリエチレンオキシド(PEO)とポリプロピレンオキシド(PPO)とのブロックまたはランダム共重合体が挙げられる。ある態様では、ポリエチレングリコール(「PEG」)は、ポリアルキレンオキシドとして利用されてもよい。分子量が約200〜約1000、ある態様では約400〜約900であるPEGを利用することが望ましい場合がある。適切なPEGには、記号表示PEG200、PEG400、PEG600およびPEG900の様々な供給源から市販されているものが挙げられる。
【0016】
他の態様では、適切なポリアルキレンオキシドには、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体が含まれる。いくつかの態様では、Dow Chamical(Unicon Carbide)からUCON 75H450として市販されている、約17モルのポリエチレングリコール/約6モルのポリプロピレンを含む共重合体が利用されてもよい。
【0017】
上記のポリアルキレンオキシドは、脂肪族ジカルボン酸またはそれらの反応性誘導体と組み合わせて、本開示の脂肪族ポリエステルマクロマーを形成してもよい。適切な脂肪族ジカルボン酸には、約2〜約8個の炭素原子を有するもの、例えば、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の適切な誘導体には、例えば、塩化オキサリル、塩化マロニル、塩化スクシニル、塩化グルタリル、塩化アジポイル、塩化スベロイル、塩化ピメロイル、塩化セバコイル、および/またはそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書中で使用するとき、脂肪族ジカルボン酸には、上記される二塩基酸とそれらの誘導体の両方が含まれる。
【0018】
脂肪族ポリエステルマクロマーを形成するために用いられるポリアルキレンオキシドおよび脂肪族ジカルボン酸の量は、ある態様では、得られる組成物の所望の特性、例えば、接着剤、封止剤、薬物送達デバイスなどの形成に利用されるべきかどうかに依存してもよい。脂肪族ポリエステルマクロマーを形成するために利用されるポリアルキレンオキシドの量は、ポリアルキレンオキシドと脂肪族ジカルボン酸が約2.2〜約1.1のモル比、ある態様では、ポリアルキレンオキシドと脂肪族ジカルボン酸が約2.0〜約1.4のモル比であってもよい。
【0019】
ポリアルキレンオキシドと脂肪族ジカルボン酸は、いずれかの順番で合わせられてもよい。いくつかの態様では、これらの成分は、一度に合わせられてもよい;他の態様では、これらの成分は、ある期間にわたって、例えば、約10秒〜約8時間、ある態様では約10分〜約3時間の間にわたって、1つの成分を他方に滴下することによって合わせられてもよい。
【0020】
2つの成分の組み合わせは、適した温度、ある態様では約−70℃〜約85℃、ある態様では約−10℃〜約80℃、他の態様では約20℃〜約75℃、約0.5時間〜約120時間、ある態様では約1時間〜約72時間にわたって保持されてもよい。いくつかの態様では、2つの成分は、適した温度で約0.5時間〜約5時間の間にわたって保持されてもよい。
【0021】
いくつかの態様では、ポリアルキレンオキシドと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせを助けるために機械的撹拌を利用することが望ましい場合がある。当業者の範囲内にあるいずれかの方法が利用されてもよく、例えば、配合、混合、撹拌等が挙げられる。配合、混合、撹拌等は、約1時間〜約72時間、ある態様では約12時間〜約24時間の間にわたって、約20℃〜約75℃、ある態様では約30℃〜約60℃の温度で行われてもよい。混合および/または配合および/または撹拌は、約50回転/分(rpm)〜約1000rpm、ある態様では約150rpm〜約600rpmの速度で生じてもよい。
【0022】
ある態様では、2つの成分は、窒素などの不活性ガスの存在下、または不活性な雰囲気下で合わせられてもよい。
【0023】
いくつかの態様では、撹拌しながら2つの成分を加熱し、それらを窒素に供することにより、結果として、約0〜約2の開始pHから約3〜約7、ある態様では約4〜約6の最終pHまでの反応混合物のpHの増加をもたらす場合がある。ある態様では、窒素などの不活性ガスによって、撹拌しながら2つの成分をバブリングしてもよい。
【0024】
いくつかの態様では、酸スカベンジャーが、反応混合物のpHの上昇を助けるために添加されてもよい。適切な酸スカベンジャーには、例えば、キトサン、中性および塩基性アルミナ、架橋ポリスチレン−アミノメチル化されたイオン交換レジン、活性炭、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0025】
次に、得られる脂肪族ポリエステルマクロマーは、ろ過、遠心分離などの当業者の範囲内のいずれかの方法を利用して、反応混合物から取り出すことができる。例えば、ある態様では、反応混合物をろ過して、いずれかの酸スカベンジャーを除去してもよい。他の態様では、脂肪族ポリエステルマクロマーは、エチルエーテルまたは石油エーテルなどのエーテルの添加によって、反応混合物から沈殿させ、その後、デカンティング、ろ過などを含むことができる適切な手段によって回収されてもよい。本化合物の回収に適した他の方法は、当業者に明らかである。
【0026】
ある態様では、得られる脂肪族ポリエステルマクロマーは、アルミナを用いた処理によって約7のpHに中和されてもよく、それは、中性または塩基性のいずれであってもよい。必要ではないが、この処置は、溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、イソプロパノール、メタノール、アセトニトリルなどの存在下で生じてもよく、中和された生産物は、ろ過、溶媒蒸発(溶媒が利用されている場合)、および/または例えば石油エーテルもしくはジエチルエーテルを含むエーテル中での沈殿後に回収される。次に、得られる脂肪族ポリエステルマクロマーは、洗浄、真空乾燥によるなどの乾燥に供されてもよい。
【0027】
本開示に従えば、脂肪族ポリエステルマクロマーは、触媒および溶媒を用いずに形成させてもよい。このようにして、本開示の組成物は、触媒および溶媒を利用するプロセスを含む従来のプロセスが必要とする場合がある、費用が嵩み、時間のかかる精製工程に供される必要がない。得られる脂肪族ポリエステルマクロマーは、このような溶媒および/または触媒の残基を欠失しているので、本開示の化合物は、触媒および/または溶媒を利用する従来の方法によって製造される化合物と比較して、インビボで用いられる場合に炎症を生じる可能性が少ない。
【0028】
利用されるポリアルキレンオキシドは、脂肪族ポリエステルマクロマーの約60重量%〜約95重量%、ある態様では脂肪族ポリエステルマクロマーの約80重量%〜約93重量%の量で存在してもよい。このようにして、脂肪族もしくは芳香族のジカルボン酸またはそれらの反応誘導体は、脂肪族ポリエステルマクロマーの約5重量%〜約40重量%、ある態様では脂肪族ポリエステルマクロマーの約7重量%〜約20重量%の量で存在してもよい。
【0029】
いくつかの態様では、脂肪族ポリエステルマクロマーは、塩化アジポイルを、PEG600などのPEGまたはポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体と組み合わせることによって形成させてもよい。
【0030】
ある態様では、得られる脂肪族ポリエステルマクロマーは、下式:
HO−−(R−A)−R−−OH (I)
で表され、式中、Aは、脂肪族ジカルボン酸または誘導体から誘導された基であり;Rは、各々の場合で同一であるかまたは異なっていてもよく、ポリアルキレンオキシドから誘導される基であり;nは、約1〜約10、ある態様では約2〜約7である。ある態様では、A基は、アジピン酸またはその誘導体、例えば塩化アジポイルから誘導することができ、Rは、約1,000未満の分子量を有するポリエチレングリコールから誘導することができる。他の態様では、A基は、アジピン酸またはその誘導体、例えば塩化アジポイルから誘導することができ、Rは、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体から誘導することができる。
【0031】
これらの化合物の分子量および粘度は、用いられる特定の二塩基酸、用いられる特定のポリアルキレンオキシド、存在する繰り返し単位の数などの多数の因子に依存する。一般に、これらの化合物の粘度は、25℃で約100〜約10,000cPであり、約3秒−1〜約25秒−1の剪断速度であってもよい。
【0032】
これらの化合物は、多数の用途に有用であり得る。例えば、それらを用いて、優れた組織接着剤または封止剤として機能を果たすゲルマトリックスを形成するために架橋することができる化合物を製造することができる。
【0033】
接着剤または封止剤の用途については、反応末端基を付与するために、上記の脂肪族ポリエステルマクロマーを末端キャップすることが望ましい場合がある。適切な反応末端基には、アミン反応末端基、例えばイソシアネート基、イソチオシアネート類、ジイミダゾール類、イミドエステル類、ヒドロキシスクシンイミドエステル類、およびアルデヒド類が挙げられる。反応末端基を付与するために、脂肪族ポリエステルマクロマーを末端キャップするする方法は、当業者の範囲内である。
【0034】
例えば、脂肪族ポリエステルマクロマーは、脂肪族または芳香族ジイソシアネートと反応させて、ジイソシアネート官能性化合物を製造してもよい。脂肪族ポリエステルマクロマーを末端キャップするのに適したイソシアネート類には、芳香族、脂肪族および脂環式イソシアネート類が含まれる。例えば、限定されないが、芳香族ジイソシアネート類、例えば2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)またはテトラメチルキシリレンジイソシアネート;脂肪族ジイソシアネート類、例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート類、例えばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチル1,3−フェニレンジイソシアネート、あるいはBayer Material Scienceから市販されているDESMODURS(登録商標)、並びに前述のジイソシアネート類の組み合わせが挙げられる。
【0035】
ジイソシアネートと脂肪族ポリエステルマクロマーの比は、約1:1〜約10:1のモル比、ある態様では約2:1〜約6:1のモル比であってもよい。いくつかの態様では、ジイソシアネートと脂肪族ポリエステルマクロマーの比は、約2:1〜約4:1であり得る。
【0036】
本開示に従えば、ジイソシアネートおよび脂肪族ポリエステルマクロマーを組み合わせることができ、末端キャッピング反応を進めることが可能である。ジイソシアネートおよび脂肪族ポリエステルマクロマーは、混合および/または撹拌を含む、当業者の範囲内の任意の手段によって組み合わせることができる。ある態様では、ジイソシアネートおよび脂肪族ポリエステルマクロマーは、約1時間〜約24時間、ある態様では約2時間〜約18時間、他の態様では約3時間〜約8時間の間、撹拌することによって組み合わせてもよい。
【0037】
ジイソシアネートおよび脂肪族ポリエステルマクロマーを約40℃〜約140℃、ある態様では約50℃〜約130℃、他の態様では約60℃〜約120℃に加熱して、末端キャッピング反応の速度を高めることができる。
【0038】
いくつかの態様では、ジイソシアネートおよび脂肪族ポリエステルマクロマーは、窒素など不活性な雰囲気下で混合されてもよい。
【0039】
1を超える異なる脂肪族ポリエステルマクロマーが単一の反応で末端キャップされ得ることは理解されなければならない。例えば、nが3である上述した式(I)で表される脂肪族ポリエステルマクロマーを調製し、別々に調製した、nが5である上述した式(I)で表される脂肪族ポリエステルマクロマーと組み合わせることができる。次に、脂肪族ポリエステルマクロマーの混合物は、単一の反応で反応基を処理するマクロマーを付与するために末端キャップされてもよい。得られる製造物は、上記で示される式で表されるジイソシアネート官能性化合物の混合物となる。
【0040】
本開示の得られるジイソシアネート官能性化合物は、下式:
OCN−−X−−HNCOO−−(R−A)−R−−OOCNH−−X−−NCO (II)
で表すことができ、式中、Xは、脂環式、脂肪族または芳香族基であり;Aは、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体から誘導される基であり;Rは、各々の場合で同一であるかまたは異なっていてもよく、ポリアルキレンオキシドから誘導される基であり;nは、約1〜約10、ある態様では約2〜約7である。いくつかの態様では、Xは、トルエン、ヘキサメチレン、テトラメチレン、リジン、エチル化されたリジンイソホロン、キシレン、ジフェニルメタン、ジフェニル(diphenyi)ジメチルメタン、ジベンジルジイソシアネート、オキシビス(フェニルイソシアネート)、テトラメチルキシリレンもしくは任意にそれらの混合物、またはそれらの組み合わせから誘導されてもよい。ジイソシアネート官能性化合物のNCO含有量は、約2%〜約10%、ある態様では約3%〜約6%変化することができる。これらのジイソシアネート官能性化合物の粘度は、用いられる特定のジイソシアネート、用いられる特定の二塩基酸、用いられる特定のポリアルキレンオキシド、存在する繰り返し単位の数などの多数の因子に依存する。ある態様では、これらの化合物の粘度は、25℃で約500〜約50,000cPであってもよい。
【0041】
次に、上記のイソシアネート官能性化合物を利用して、接着剤または封止剤としての使用に適した本開示の化合物を形成してもよい。
【0042】
他の態様では、末端キャッピング反応が起こった後、ポリオールを添加し、ジイソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーの遊離イソシアネート基(単数または複数)と反応させることができる。ジイソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーの遊離イソシアネートと反応し得る適切なポリオールには、限定されないが、多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(「PEG」)、PEGアジペート、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(「PPG」)、テトラエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリラクチドトリオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、シクロヘキサンジメタノール、フランジメタノール、ペンタエリトリトール、グルコース、スクロース、ソルビトール、シクロデキストリン、このようなポリオールとプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドとの反応製造物など挙げられる。利用されてもよい他のポリオールには、ポロキサマー、例えばポリプロピレンオキシド(PPO)を有するポリエチレンオキシド(PEO)共重合体、例えば、BASF Corporation(Mt.Olive,NJ)からPLURONICS(登録商標)として市販されているトリブロックPEO−PPO共重合体が挙げられる。前述のポリオール類の組み合わせは、ある態様において利用されてもよい。この反応の結果物は、ポリウレタンである。
【0043】
ポリオールは、約50〜約5000、ある態様では約100から約3000の範囲の重量平均分子量を有し、官能性が約2〜約6である。
【0044】
他の態様では、ポリエチレングリコールは、ポリオールとして利用されてもよい。ポリオールとして利用されるポリエチレングリコールの分子量は、生体適合性組成物の意図された最終用途、即ち、接着剤または封止剤に依存して変化してもよい。いくつかの態様では、ポリオールとして利用されるPEGの分子量は、約100〜約20,000、ある態様では約500〜約10,000、他の態様では約1,000〜約5,000であってもよい。
【0045】
ジイソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーとポリオールとのモル比は、約1:1〜約50:1、ある態様では約2:1〜約25:1、他の態様では約3:1〜約20:1であってもよい。
【0046】
一態様では、ポリオールおよびイソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーは、約1〜約360時間、ある態様では約2〜約240時間、他の態様では約3〜約168時間の間、撹拌することによって組み合わせることができる。
【0047】
ポリオールおよびイソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーは、約40℃〜約100℃、ある態様では約50℃〜約85℃、他の態様では約55℃〜約75℃の温度で加熱して、官能化反応の速度を高めることができる。
【0048】
ある態様では、ポリオールは、イソシアネートとの反応に適した複数のヒドロキシル基を有し、分岐剤として機能することができる。ある態様では、別々の分岐剤が添加されてもよい。このような分岐剤は、当業者の範囲内である。
【0049】
当業者は、様々な程度の官能性を有する化合物の混合物が、ジイソシアネート官能性化合物とポリオールとの反応に由来し得ることを認識する。例えば、1つのジイソシアネート官能性化合物は、ポリオールと反応して、単一のイソシアネート官能性を有する化合物を提供してもよい;または、2つのジイソシアネート官能性化合物は、単一のポリオールと反応して、2つのイソシアネート官能性を有する化合物を提供してもよい;または、3つのジイソシアネート官能性化合物は、単一のポリオールと反応して、3つのイソシアネート官能性を有する化合物を提供してもよい;または、2つのポリオールは、単一のジイソシアネート官能性化合物と反応して、イソシアネート官能性を持たない化合物を提供してもよい。当業者は、形成する可能性がある他の可能な反応製造物を想像する。
【0050】
1を超えるジイソシアネート官能性化合物が単一の反応でポリオールと反応され得ることは理解されなければならない。例えば、nが3である上述した式(I)で表される脂肪族ポリエステルマクロマーを調製し、別々に調製した、nが5である上述した式(I)で表される脂肪族ポリエステルマクロマーと組み合わせることができる。次に、脂肪族ポリエステルマクロマーの混合物は、単一の反応で反応基を付与するために末端キャップすることができる。その後、ジイソシアネート官能性化合物の得られる混合物は、ポリオールと反応され得る。別の例として、nが3である上述した式(I)で表される脂肪族ポリエステルマクロマーを調製し、末端キャップし、nが5である上述した式(I)で表される脂肪族ポリエステルマクロマーを別々に調製し、末端キャップすることができる。次に、2つのジイソシアネート官能性化合物を混合することができる。その後、ジイソシアネート官能性化合物の得られる混合物は、単一の反応でポリオールと反応され得る。
【0051】
得られるポリウレタンは、接着剤、封止剤、医療用デバイス、薬物送達デバイスなどとして利用されてもよい。
【0052】
ある態様では、ポリオールとジイソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーの遊離イソシアネートとの反応後、第2のポリイソシアネートを得られるポリウレタンに添加し、ポリウレタン上のポリオールの遊離ヒドロキシル末端基と反応させるようにしてもよい。これらのポリウレタンの遊離ヒドロキシ末端基との反応によって、それらのポリウレタンをさらに官能化するために、第2のポリイソシアネートとして利用されてもよい適切なイソシアネートには、イソシアネート官能性の脂肪族ポリエステルマクロマーを製造するために上述されたものが含まれる。ある態様では、ジイソシアネート、例えばトルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)を第2のイソシアネートとして利用し、これらのヒドロキシ末端基をさらに官能化してもよい。脂肪族ジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートは、いくつかの態様において有用であり得る。
【0053】
第2のジイソシアネートとポリウレタンとの比は、約2:1〜約20:1、ある態様では約2.25:1〜約10:1、他の態様では約2.5:1〜約4:1であってもよい。
【0054】
ある態様では、第2のジイソシアネートおよびポリウレタンは、約1時間〜約24時間、他の態様では約2時間〜約18時間、さらに他の態様では約3時間〜約8時間の間撹拌することによって組み合わせられてもよい。
【0055】
第2のジイソシアネートおよびポリウレタンは、約40℃〜約140℃、ある態様では約50℃〜約120℃、他の態様では約60℃〜約100℃の温度で加熱して、末端キャッピング反応の速度を高めることができる。
【0056】
いくつかの場合では、ポリウレタンを形成させるためのポリオールとイソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマー上の遊離イソシアネートとの反応、ポリウレタンと追加のポリイソシアネートとの反応は、少なくとも部分的には同時に起こる。
【0057】
得られるイソシアネート官能性ポリウレタンは直鎖状であってもよく、または分岐もしくは星型の形状を有してもよい。イソシアネート官能性ポリウレタンの分子量は、約500〜約50,000、ある態様では約1000〜約20,000、他の態様では約2000〜約10,000であってもよい。
【0058】
次に、得られるイソシアネート官能性ポリウレタンを利用して、接着剤または封止剤を形成してもよい。
【0059】
ある態様では、また、ポリウレタンまたは脂肪族ポリエステルマクロマーは、得られる化合物の分解プロフィールを変更するために、少なくとも1つの生体吸収性基を有することができる。存在してもよい生体吸収性基には、例えば、グリコリド、グリコール酸、ラクチド、乳酸、カプロラクトン、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、およびそれらの組み合わせから誘導される基が含まれる。例えば、一態様では、ポリオールには、ジオキサノンおよびグリコリドと組み合わせたトリメチロールプロパンが含まれてもよい。生体吸収性基を付加する方法は、当業者の範囲内である。
【0060】
インサイチュ(in situ)で組織に投与されると、上述されるポリウレタンおよび/または官能化化合物は架橋されて、優れた組織接着剤または封止剤として機能し得るゲルマトリックスを形成することができる。ある態様では、架橋反応は、約20℃〜約40℃の温度で、約15秒〜約20分、ある態様では約1分〜約10分間行われてもよい。
【0061】
上述される化合物は、単独で用いられてもよく、または組成物に調合されてもよい。組成物を形成するために利用される成分の濃度は、多数の因子に依存して変化し、その因子には、用いられる特定の成分の型および分子量、生体適合性組成物の所望の最終用途、例えば接着剤または封止剤が含まれる。ある態様では、組成物は、前述の官能化されたポリエステルマクロマーの約0.5%〜約100%を含んでもよい。官能化されたポリエステルマクロマーを分岐剤と反応させた場合、組成物は、約0.1重量%〜約15重量%の分岐剤を含んでもよい。
【0062】
従来の方法は、類似の材料の形成に溶媒および/または触媒を利用してもよい(例えば、全体の開示が参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2006/0253094号を参照されたい)が、本開示に従う接着剤および/または封止剤は、任意の付加的な溶媒および触媒を用いずに調製され得る。
【0063】
いくつかの態様では、また、水が組成物に添加されて、硬化時間を減少させてよい。添加されると、水は、組成物の使用時または使用時の近くで導入され、望ましくないまたは時期尚早の架橋を避けなければならない。一般に、水の量は、全組成物を基準にして、約1〜約50重量パーセントであってもよい。
【0064】
また、様々な任意成分は、本開示の生体適合性組成物、例えば、限定されないが、生物活性剤、薬剤などに添加されてもよい。いくつかの態様では、本組成物は、場合により、1以上の生物活性剤を含んでもよい。用語「生物活性剤」とは、本明細書中で使用するとき、その最も広い意味で用いられ、臨床用途を有する任意の物質または物質の混合物が含まれる。結果として、生物活性剤は、それ自体薬理活性を有してもよくまたは有さなくてもよく、例えば色素が挙げられる。あるいは、生物活性剤は、治療効果または予防効果を付与する任意の薬物、組織成長、細胞増殖、細胞分化に影響を与えるかまたは関与する化合物、免疫応答などの生物作用を引き起こすことができる場合がある化合物であり得て、または1以上の生物学的プロセスにおいて任意の他の役割を果たすことができる。
【0065】
本開示に従って利用されてもよい生物活性剤の種類の例には、抗菌剤、鎮痛剤、解熱剤、麻酔剤、抗癲癇剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、心臓脈管薬、診断用薬剤、交感神経興奮剤、コリン様作用剤、抗ムスカリン剤、抗けいれん剤、ホルモン剤、増殖因子、筋肉弛緩剤、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、抗新生物剤、免疫原、免疫抑制剤、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類および酵素が挙げられる。また、生物活性剤の組み合わせを用いてよいことが意図される。
【0066】
本組成物に含まれる生物活性剤として含まれてもよい適切な抗菌剤には、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしても知られているトリクロサン、クロルヘキシジンおよびその塩、例えば酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンおよび硫酸クロルヘキシジン、銀およびその塩、例えば酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク質およびスルファジアジン銀、ポリミキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド類、例えばトブラマイシンおよびゲンタマイシン、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン類、例えばオキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン、エノキサシンおよびシプロフロキサシン、ペニシリン類、例えばオキサシリンおよびピプラシル、ノノキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン類およびそれらの組み合わせが含まれる。さらに、ウシまたはrh−ラクトフェリンおよびラクトフェリシンBなどの抗菌性タンパク質およびペプチドは、本組成物に含まれる生物活性剤として含まれてもよい。
【0067】
本組成物に含まれる生物活性剤として含まれてもよい他の生物活性剤には、局所麻酔剤;非ステロイド系避妊薬;副交感神経興奮剤;精神治療薬;精神安定剤;充血除去剤;催眠鎮静薬:ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用薬;ワクチン;ビタミン;抗マラリア剤;抗片頭痛剤;抗パーキンソン病薬、例えばL−ドーパ;鎮痙剤;抗コリン剤(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張剤;心臓血管作動薬、例えば冠拡張剤およびニトログリセリン;アルカロイド;鎮痛剤;麻薬性鎮痛剤、例えばコデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、モルヒネなど;非麻薬性鎮痛剤、例えばサリチル酸エステル類、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなど;オピオイド受容体拮抗剤、例えばナルトレキソンおよびナロキソン;抗癌剤;抗けいれん剤;制吐剤;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤、例えばホルモン剤、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなど;プロスタグランジン類および細胞毒;エストロゲン類;抗菌剤;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝血剤;抗けいれん剤;抗うつ剤;抗ヒスタミン剤;免疫剤が挙げられる。
【0068】
本組成物に含まれてもよい適切な生物活性剤の他の例には、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、類似体、突然変異タンパク質、それらの活性フラグメント、例えば免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンフォカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(ベータ−IFN、(アルファ−IFNおよびガンマ−IFN)、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制剤、血中タンパク質、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモン類似体(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍性、細菌性およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;増殖因子(例えば、神経成長因子、インスリン様増殖因子);タンパク質阻害剤、タンパク質拮抗剤、およびタンパク質作動剤;核酸、例えばアンチセンス分子、DNAおよびRNA;オリゴヌクレオチド;およびリボザイムが挙げられる。
【0069】
天然に存在するポリマー、例えばコラーゲンなどのタンパク質、天然に存在する、グリコサミノグリカンなどの様々な多糖の誘導体は、場合により、生物活性剤として本開示の組成物に組み込むことができる。
【0070】
また、造影剤、例えば、ヨウ素もしくは硫酸バリウム、またはフッ素は、本開示の組成物と併用されて、X線、MRI、およびCATスキャン装置を含む撮像装置の使用を通じて外科的領域の視覚化を可能にする。
【0071】
さらに、酵素は、本開示の生体適合性組成物の分解速度を増加させるためにこの組成物に添加されてもよい。適切な酵素には、例えば、ペプチド加水分解酵素、例えばエラスターゼ、カテプシンG、カテプシンE、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、トリプシン、ペプシン、キモトリプシン、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(γ−GTP)など;糖鎖加水分解酵素、例えばホスホリラーゼ、ノイラミニダーゼ、デキストラナーゼ、アミラーゼ、リゾチーム、オリゴサッカラーゼなど;オリゴヌクレオチド加水分解酵素、例えばアルカリホスファターゼ、エンドリボヌクレアーゼ、エンドデオキシリボヌクレアーゼなどが含まれる。いくつかの態様では、酵素が添加される場合、酵素は、酵素の放出速度を制御するためにリポソームまたはミクロスフェアに含まれて、本開示の接着剤組成物の分解速度を制御してもよい。リポソームおよび/またはミクロスフェアに酵素を取り込む方法は、当業者の範囲内である。
【0072】
さらに、加水分解または酵素により分解され得る少なくとも1つの連結は、イソシアネート官能性ポリウレタンに組み込まれてもよい。加水分解で分解される連結には、限定されないが、エステル、無水物、およびリン酸エステルが含まれる。酵素により分解される連結には、限定されないが、アミノ酸残基、例えば−Arg−、−Ala−、−Ala(D)−、−Val−、−Leu−、−Lys−、−Pro−、−Phe−、−Tyr−、−Glu−など;2マー〜6マーのオリゴペプチド、例えば−Ile−Glu−Gly−Arg−、−Ala−Gly−Pro−Arg−、−Arg−Val−(Arg)−、−Val−Pro−Arg−、−Gln−Ala−Arg−、−Gln−Gly−Arg−、−Asp−Pro−Arg−、−Gln(Arg)−、Phe−Arg−、−(Ala)−、−(Ala)−、−Ala−Ala(D)−、−(Ala)−Pro−Val−、−(Val)−、−(Ala)−Leu−、−Gly−Leu−、−Phe−Leu−、−Val−Leu−Lys−、−Gly−Pro−Leu−Gly−Pro−、−(Ala)−Phe−、−(Ala)−Tyr−、−(Ala)−His−、−(Ala)−Pro−Phe−、−Ala−Gly−Phe−、−Asp−Glu−、−(Glu)−、−Ala−Glu−、−Ile−Glu−、−Gly−Phe−Leu−Gly−、−(Arg)−;D−グルコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルマンノサミンまたはそれらのオリゴ糖;オリゴデオキシリボ核酸、例えばオリゴデオキシアデニン、オリゴデオキシグアニン、オリゴデオキシシトシン、およびオリゴデオキシチミジン;オリゴリボ核酸、例えばオリゴアデニン、オリゴグアニン、オリゴシトシン、オリゴウリジンなどが含まれる。当業者は、酵素により分解される連結をイソシアネート官能性ポリウレタンに組み込むための反応スキームを容易に想像する。
【0073】
単一の生物活性剤が本組成物に添加されてもよく、または、代替の態様では、生物活性剤の任意の組み合わせが本組成物に添加されてもよい。
【0074】
上述される官能化された化合物の存在に起因して、本組成物は架橋して、優れた組織接着剤または封止剤として機能するゲルマトリックスを形成する。通常、架橋反応は、約20℃〜約40℃の温度で、約15秒〜約20分、ある態様では約30秒〜約10分間行われてもよい。本開示の組成物の架橋を達成するための正確な反応条件は、様々な因子、例えば化合物の官能性、末端キャッピングの程度、官能化の程度などに依存する。
【0075】
これらの方法によって製造される組成物は、生体適合性であり、非免疫原性である。生体適合性組成物は、ヒトを含む動物の生体組織および/または肉体に適用することができる。
【0076】
科学団体では、用語「肉体」と「組織」との用法の間にある種の区別がなされることがあるが、本明細書において、これらの用語は、医療分野内で患者の治療のために本生体吸収性組成物が利用されると当業者が理解する一般的な基材に言及させて、互換的に用いられる。本明細書中で使用するとき、「組織」には、限定されないが、皮膚、骨、神経、軸索、軟骨、血管、角膜、筋肉、筋膜、脳、前立腺、胸部、子宮内膜、肺、膵臓、小腸、血液、肝臓、精巣、卵巣、頸部、結腸、胃、食道、脾臓、リンパ節、骨髄、腎臓、末梢血、胚および/または腹水(ascite)の組織が含まれる。
【0077】
本開示の生体適合性組成物は、多数の異なるヒトおよび動物の医療用途に用いることができるが、例えば、限定されないが、創縫合(外科的切開および他の創傷を含む)、医療用デバイス(インプラントを含む)を組織に接着させるための接着剤、封止剤および空隙充填剤、並びに塞栓剤が挙げられる。接着剤を用いて、縫合糸、ステープル、テープおよび/または包帯の代替物として、またはそれらを補足するものとして、ともに組織に結合することができる。接着剤としての生体適合性組成物の使用は、現に実施中に通常要求される縫合糸の数を排除するかまたは実質的に減少させることができ、ステープル、およびある種の縫合糸を除去するその後の必要性を排除する。このようにして、接着剤として開示されている生体適合性組成物は、注意を要する組織との使用に特に適し、この場合、クランプまたは他の従来の組織閉塞機器は、更なる組織障害を引き起こすことがある。
【0078】
更なる用途には、外科的処置中および処置後の血液または他の流体の漏れを妨げるかまたは制御するために、組織を封止するための封止剤としての生体適合性組成物の使用が挙げられる。また、組成物は、縫合糸またはステープルラインでの血液または他の流体の漏れを妨げるかまたは制御するために用いられてもよい。さらに、本開示の組成物は、肺外科と関連した空気の漏れを妨げるために適用することができる。本明細書中の化合物は、組織のいずれかの欠陥を封止し、いずれかの流体または空気の動きを封止するのに少なくとも十分な量で所望の領域に直接的に適用されてもよい。
【0079】
別の態様では、生体適合性組成物は、再建外科中に皮膚移植片を付着させ、組織片を配置するために用いることができる。さらに別の態様では、生体適合性組成物を用いて、歯根膜手術における組織片を密閉することができる。
【0080】
2つの組織端の接合を達成させるために、2つの端を接近させ、本開示の生体適合性組成物、即ち、イソシアネート官能性脂肪族ポリエステルマクロマー、および/またはイソシアネート官能性ポリウレタンをそこに適用してもよい。次に、組成物を架橋する。この場合、本開示の生体適合性組成物を接着剤として用いて、外科的切開を含む創傷を密閉することができる。このようにして、本開示の生体適合性組成物は、創傷に適用され、設置して、創傷を密閉することが可能である。
【0081】
本開示の組成物の適用は、任意の従来手段によって行うことができる。これらには、滴下、ブラッシング、または組織表面への組成物の他の直接的な操作、または表面への組成物の噴霧が含まれる。また、生体適合性組成物は、従来の接着剤ディスペンサーから分注されてもよい。観血療法では、素手、鉗子などによる応用が意図される。内視鏡手術では、組成物は、ロカールのカニューレを通じて送達され、当該技術分野において知られている任意のデバイスによってその部位で広げることができる。
【0082】
他の態様では、とりわけ、本開示の組成物が、動物の生体にある欠陥を充填するために空隙充填剤または封止剤として利用されるべき場合には、架橋の条件および程度をより精確に制御することは利点となり得る。例えば、動物組織の空隙を充填するために使用する前に組成物を部分的に架橋することが望ましい場合もある。このような場合に、本開示の組成物は、空隙または欠陥に適用され、設置され、この空隙または欠陥をそれによって充填することができる。
【0083】
他の態様では、本開示は、医療用デバイスを組織に接着させるために本開示の化合物を用いる方法に関する。医療用デバイスには、インプラントが含まれてもよい。他の医療用デバイスには、限定されないが、ペースメーカー、ステント、シャントなどが挙げられる。一般に、動物の組織の表面にデバイスを接着させるために、本開示の組成物は、デバイス、組織表面、またはその両方に塗布されてもよい。次に、デバイスおよび組織表面は、両者間のその場所で本組成物と接触される。組成物が架橋され、設置されると、デバイスおよび組織表面は、互いに効果的に接着される。
【0084】
また、本組成物は、手術後の接着を防止するために用いることができる。このような応用では、本開示の組成物が、治癒プロセス中の外科部位での接着形成を防止するために、内部組織の表面上の層を形成させるために適用され、治癒される。
【0085】
生体適合性組成物が薬物またはタンパク質の送達ために意図される場合、本開示の化合物の量が調整され、生体吸収性組成物に含まれる薬物またはポリマーの初期保持、その後の放出を促進することができる。このような調整を行う方法および手段は、当業者に容易に明らかとなる。
【0086】
封止剤として用いる場合、本開示の生体適合性組成物が外科に用いられ、外科的処置中およびその後の両方で、出血または流体の漏れを防止するかまたは阻害することができる。また、肺外科と関連した空気漏れを防止するために適用することができる。イソシアネート官能性ポリウレタンは、組織中の何らかの欠陥を封止し、何らかの流体または空気の動きを封止するのに少なくとも必要な量で所望の領域に直接的に適用されてもよい。
【0087】
本開示の方法によって調製される組成物は、多数の有利な特徴を有する。生体適合性組成物は、急速に複雑なゲルマトリックスを形成し、所望の位置において組織端または移植された医療用デバイスの静止位置を確実にし、全体で要求される手術/塗布時間を短縮させる。生体適合性組成物は、ゲルマトリックス形成による低い膨張を示し、したがって、整列された組織端および/または医療用デバイスの位置の一貫性を保持する。
【0088】
本開示の生体適合性組成物は、強力な粘着結合を形成する。優れた機械的性能および強度を示すが、生体組織を接着させるために必要な柔軟性を保持している。この強度および柔軟性は、外科的組織端をシフトすることなしに、ある程度の組織の動きを可能にする。さらに、生体適合性組成物は生分解性であり得て、この場合、加水分解による生体吸収性基または酵素的連結が含まれ、分解成分が対象の生体を安全に通過するのを可能にする。
【0089】
本開示の得られる生体適合性組成物は安全であり、組織への高められた接着性を有し、高められた安全性を有し、生体適合性であり、止血の潜在能力を有し、低コストであり、調製および使用が容易である。ポリマー成分の選択を変化させることによって、ゲル化時間を制御し得るように、生体適合性組成物の強度および弾力性を制御することができる。これらの組成物は、触媒および溶媒なしに調製されるので、本開示の方法は、より少ない成分が生体適合性組成物を製造するために必要であり、精製工程が不要であるため、より費用がかからず、より単純である。さらに、本開示の組成物は、インビボでの使用では、炎症をほとんど生じさせないかまたは全く生じさせない。
【0090】
本開示の組成物は、当業者の範囲内の任意の方法を利用して、精製および/または滅菌することができる。このような方法には、例えば、滅菌技術、例えばガンマ線照射、e−ビーム、低温ガスプラズマ、気相過酸化水素、それらの組み合わせなどが挙げられる。(例えば、Simmonsら、Biomaterials 27(2006),pp.4484−4497を参照されたい。)
当業者が、本明細書に開示されている本開示の特徴をより良好に実施することができるようにするために、下記の実施例が提供され、限定されないが、本開示の特徴を例証する。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
Dow Chemical Companyから入手した約26グラムのUCON(商標)潤滑剤75−H−450であるポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体(約17モルのポリエチレングリコール/約6モルのポリプロピレングリコール(17PEG/6PPG))を250mLのフラスコ内で約3グラムの塩化アジポイル(ClOC(CHCOCl、場合によっては、本明細書ではAdClと呼ばれる)(98%、Sigma Aldrich,St.Louis,Mo.)と組み合わせられた。材料は、約20℃〜約26℃の室温で維持された。AdCLのCOCl末端基のエステルへの変換はほぼすぐに発生し、反応は約2時間進行させるようにした。得られた混合物のNMRは、−CH(CH)−O−CO−基(5.05ppmのピーク)と−CH−O−CO−基(4.2ppmのピーク)の存在を示した。得られた混合物のpHは非常に酸性であり、約1未満であった。
【0092】
約500rpmで撹拌しながら、混合物に約1グラムのキトサンフレーク(Aldrichから得られる中間分子量)を添加し、真空にした。反応は約60〜約72時間進行させるようにした。この時間後、反応混合物のpHは、キトサンがHClスカベンジャーとして作用していてもよいことを指示する、約4に上昇させた。
【0093】
次に、得られる材料のPEG/PPGアジペートを真空吸引負荷によるろ過に供し、それによって回収された材料は、2つの検出器:LS Wyatt DAWNHELEOSおよびRI Wyatt OPTILAB(登録商標)rEX、並びにPLゲル10μm mixed BLSを含む2つの線形カラムを装備したAgilent 1100シリーズのLCシステムにあるゲル透過クロマトグラフィーに供された。さらに、材料は、Bruker 300MHzスペクトロスピンNMR(Bruker Corporation製)の核磁気共鳴(NMR)画像に供された。GPC結果は、Mwが約3108、Mnが2390であることが分かった。NMRデータにより、PEG/PPGアジペートのエステル構造、末端ヒドロキシル基の存在が確かめられた。
【0094】
誘導化手法は、末端ヒドロキシル基を含むウレタン形成へと導くトリクロロアセチルイソシアネートを用いて行われ、結果として、2つのシフト:PEG端を有するウレタン結合におけるメチレンプロトンについての4.45ppmのピーク、PPG端由来のメチルプロトンについての5.2ppmについてのピークをもたらした。この誘導手法は、ヒドロキシル末端基の存在を確認した。バルク中でのポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体とAdClとの縮合は、溶媒および触媒を添加しないで生じた。
【0095】
(実施例2)
約234.15グラムのPEG600(Sigma Aldrich,St.Louis,Mo.)を洗浄された200mLの一口のフラスコに添加された。スターラーバーをPEG600とともにフラスコ内に置き、約65℃の温度でフラスコを油浴に設置し、約200rpmの速度で混合しながら、約1時間、窒素ガスによってPEG600をバブリングした。窒素ガスによる混合およびバブリングは、約12時間〜約24時間の間、継続するようにした。油浴の温度は、約65℃で1時間加熱した後、この時間中に約30℃まで低下させた。
【0096】
次に、PEG600は、付加ロートが取り付けられた500mLの3口フラスコに添加された。静的窒素を付加ロートに連結した。オイルバブラーの出口は、NaOH水溶液を有する大きなトラップに連結された。フラスコを水/氷浴に設置することによって、約10℃の温度に冷却した。約35.71グラムの塩化アジポイル(AdCl)は、1分あたり約30〜約60滴の速度で付加ロートを通じてPEG600に滴下された。AdClの添加は、約30分〜約40分要した。この浴槽を取り外し、反応混合物を約20分間撹拌した。次に、フラスコを約45℃の温度に設定した油浴に設置し、約16〜約24時間の間撹拌しながら、窒素によって反応混合物にバブリングした。得られた材料の一部を水道水に溶解し、pHは約5であった。
【0097】
反応は、ReactIR(商標)4000スペクトロメーター(Mettler−Toledo AutoChem,Columbia,Md.)を用いた赤外線分光学計によって、そのままでモニターした;ReactIRプローブを3口フラスコの口の1つに挿入した;利用されたバックグラウンドは空気であった;IRスペクトルスペクトロメータースキャンによって、1735nm−1でのエステルピークの存在によるPEG−アジペートの形成を確かめた。
【0098】
得られた材料の約95グラムを別のフラスコに注ぎ、約115グラムのテトラヒドロフラン(THF)(J T Baker,Phillipsburg,N.J.)に溶解した。溶解されると、得られた材料は、約900mLのジエチルエーテルに沈殿させた。約3〜約7分の混合後、この材料を250mLの3口フラスコに静かに注いだ。窒素ガスによって、いくぶんのエチルエーテルを取り除くために、混合せずに材料をバブリングした。次に、得られた材料は、真空オーブン中で約60〜約72時間の間乾燥させた。いずれかのサンプリングの前に、約60グラムの材料が残っていることを確かめ、収率は約60%〜約70%であった。
【0099】
約130〜140グラムの材料が初めの500mLフラスコに残っていた。この材料を約575グラムの無水THFに溶解し、その後、1Lフラスコに移した。この溶液に、約85グラムの中性アルミナ(Sigma Aldrich,St.Louis,Mo.)を添加し、約45分間混合した。得られた組成物は、Millipore Corporation(Billerica,MA)製の0.45mmのFluoropore FHLPフィルターを装備した、Cole−Parmer Instrument Co.(Vernon Hills,IL)製の加圧フィルターシステムを用いたろ過に供された。
【0100】
ROTAVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレーター(BUCHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)によりろ過物を濃縮した。約500mlのTHFを除去し、その後、約250mLの残りの材料を約1.2リットルのジエチルエーテルに沈殿させた。材料を静かに注いで、500mLの3口フラスコに移し、次に、真空オーブン中で約60〜約72時間の間乾燥させた。約94グラムの製造物が乾燥後に残り、収率は約65%〜約70%であった。
【0101】
得られた材料であるPEGアジペートは、実施例1において上述された装置を利用して、ゲル透過クロマトグラフィーおよび核磁気共鳴撮像に供した。GPC結果は、Mwが約2903、Mnが2342であることを示した。NMRデータにより、PEG−アジペートのエステル構造(−CH−O−CO−に対する4.2ppmのピーク)、ヒドロキシル末端基の存在が確かめられた。ヒドロキシル末端基を有するウレタン形成へと導くトリクロロアセチルイソシアネートを用いた誘導化は、4.45ppmのシフトをもたらした。このピークは、PEG−ヒドロキシル末端基を有するウレタン結合におけるメチレンプロトンに対するものであった。バルクにおけるPEG600とAdClとの縮合は、溶媒および触媒を添加しないで生じた。
【0102】
(実施例3)
実施例2において製造されたものと同じPEG−アジペートは、PEGとアジペートとのモル比を約3:2にして調製された。
【0103】
約202.15グラムのPEG600(Sigma Aldrich,St.Louis,Mo.)を洗浄した1リットルの3口フラスコに添加した。約41.1グラムの塩化アジポイルを目盛付きの付加ロートに設置した。このフラスコをReactIR(商標)4000スペクトロメーター(Mettler−Toledo AutoChem,Columbia,Md.)に取り付け、付加ロートは、静的窒素の供給源に取り付けた。オイルバブラーの出口は、NaOH水溶液を有する第2のバブラーに連結された。水/氷浴にフラスコを設置することによって、約10℃の温度に冷却した。塩化アジポイルは、約200rpmで材料を急速に撹拌しながら、1分あたり約60滴の速度で付加ロートを通じてPEG600に滴下された。フラスコを最初の5分間、氷浴に保持した。塩化アジポイルの完全な添加には、約30〜約35分を要した。浴槽を取り外し、反応混合物を約45分間撹拌した。次に、フラスコを約45℃の温度に設定された油浴に設置し、約200rpmの機械的スターラーを用いて混合した。窒素によって、約16〜約24時間の間撹拌しながら反応混合物をバブリングした。反応は、ReactIR(商標)4000スペクトロメーター(Mettler−Toledo AutoChem,Columbia,Md.)を用いた赤外線分光学計によって、そのままでモニターした;ReactIRプローブを3口フラスコの口の1つに挿入した;利用されたバックグラウンドは空気であった。
【0104】
次に、約197グラムの得られた材料を1リットルのフラスコに移した。約815mLのテトラヒドロフラン(THF)および140グラムの中性アルミナ(Sigma,Aldrich,St.Louis,Mo.)をそのフラスコに添加した。混合は、約2〜約2.25時間、スターラーバーを用いて約900rpmの速度で生じた。得られた組成物は、Millipore Corporation(Billerica,MA)製の0.5μmのMilliporeフィルターを装備した、Cole−Parmer Instrument Co.(Vernon Hills,IL)製の加圧フィルターシステムを用いたろ過に供された。
【0105】
ROTAVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレーター(BUCHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)によりろ過物を濃縮した。約400mLの残りの材料を約1.2リットルのジエチルエーテルに沈殿させた。材料を約15分間スターラーバーを用いて混合し、その後、材料を静かに注いで、風袋計量された500mLの3口フラスコに移し、次に、真空オーブン中で約12〜約24時間の間乾燥させた。
【0106】
得られた材料であるPEGアジペートは、実施例1において上述された装置を利用して、核磁気共鳴撮像に供した。NMRデータにより、PEG−アジペートのエステル構造(−CH−O−CO−に対する4.2ppmのピーク)、ヒドロキシル末端基の存在が確かめられた。材料の分子量は、NMR結果から示されるように、約2610であった。
【0107】
約124.5グラムの製造物は乾燥後に残り、これを約50.3グラムの4,4‘−メチレンビス(フェニルイソシアネート)MDI)に添加した。
【0108】
次に、このフラスコを約65℃の温度で油浴に、静的窒素下で設置した。フラスコ内の材料が融解すると、その内容物を約150rpmで4.5時間撹拌した。その後、温度を約58℃に下げた。得られた材料であるイソシアネート官能性PEGアジペートは、石油エーテルで7回洗浄し、次に、フラスコを真空下に設置した。
【0109】
次に、このようにして製造されたイソシアネート官能化されたPEGアジペートを一晩、約12時間〜約24時間の間乾燥させ、その後、約48.12グラムの材料を250mLの二口フラスコに添加した。約0.133グラムのトリメチロールプロパン(TMP)をそのフラスコに添加し、その後、約65℃の温度、静的窒素下で油浴に設置され、約50rpmの速度で撹拌された。材料を約72時間、浴槽に置いたままにし、シリンジに設置する前に約30分間脱気した。
【0110】
得られた接着性材料を滴定によってNCO含有量について試験し、約3.67%のNCOを有することが分かった。また、接着性材料は、ブタの胃を用いた重ね剪断試験に供された。要約すると、この重ね剪断試験は、下記のとおり行った。室温のブタの胃組織をパンチを用いて15×45mmにカットした。組織を生理食塩水でリンスし、過剰な水分を取り除くために拭き取った。約200mgの接着性材料を組織片の1つの末端に塗布した。接着性材料を広げて、その組織片の1端の約15×15mmの領域を覆った。別の組織の端は、接着剤によって覆われた領域の上部に設置し、その結果、2つの組織片が反対方向に伸び、接着剤は、2つの重複している端の間に位置していた。
【0111】
20グラムの重りが、約30秒間、接着された領域の上部に設置された。この重りを除去し、接着剤は、約4.5分を超えて硬化させ、全体では約5分の硬化時間であった。1つの組織片の自由端は、接地クランプに設置され、他の組織片の自由端は、カウンターに取り付けられたクランプに設置された。フォースメーターを上部クランプに取り付け、小片を引き離すのに必要とされる力を記録した。
【0112】
重ね剪断試験の結果は、材料が5分で約1462グラムの重ね剪断を有することを示した。
【0113】
(実施例4)
分子量が約600(PEG600)である約959.1グラムのポリエチレングリコールを洗浄し、乾燥させた3000mLの4口フラスコに添加した。フラスコは、機械的撹拌組立品を有し、窒素雰囲気生成装置に置かれ、約65℃の温度で保持された。真空アダプターを介して反応フラスコにPEG600を添加し、約65℃に維持した状態で、平衡にし、1分あたり約400回転(rpm)で撹拌した。PEG600は、一晩、約16〜約24時間、材料を窒素によってバブリングすることによって乾燥させた。フラスコの温度を約20℃に低下させた。
【0114】
約146.2グラムの塩化アジポイルを洗浄し、乾燥させた250mLの付加ロートに添加した。付加ロートは、反応フラスコに取り付け、その中に塩化アジポイルを1分あたり約60〜約80滴の速度でPEG600に添加し、全ての塩化アジポイルが添加された。約2.5時間後、約20℃〜約45℃に温度を上昇させ、次に、一晩、約16〜約24時間、材料を窒素によってバブリングした。
【0115】
次に、反応フラスコの温度を約20℃に下げ、その際、約1.5リットルのテトラヒドロフラン(THF)を反応器に添加し、反応器の内容物を溶解し、約10分後に生じた。その後、得られた溶液を洗浄した4リットルの三角フラスコに移し、約0.5リットルのTHFを添加した。
【0116】
このようにして得られた溶液を約60mL/分〜約70mL/分の速度で、約1,235グラムのアルミナを含むアルミナ充填カラムを通じて送り出され、その後、加圧フィルターを通過させた。全ての溶液がカラムを通過した後、約1リットルの新たなTHFをカラムに通過させた。ろ過した溶液をROTOVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレーター(BUCHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)で濃縮し、約1リットルの体積を有する溶液を得た。
【0117】
次に、約600mLのジエチルエーテルを濃縮した溶液に添加し、激しく振とうした。エーテルを静かに移し、さらにエーテルを添加し、振とうして、このプロセスを繰り返した。再度、エーテルを静かに移し、この溶液をROTOVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレーターに戻し、残っているエーテルの一部を除去し、その際、製造物であるPEGアジペートをガラス製瓶に置き、真空下で乾燥させた。
【0118】
(実施例5)
約40グラムのp−フェニレンジイソシアネート(PDI)を250mlの1口フラスコに添加した。約170グラムのトルエンを添加し、フラスコを約50℃の油浴上で静的窒素下に設置した。約4時間後、フラスコを油浴から取り出し、フラスコの内容物をろ紙によりろ過した。得られた透明な溶液は、ROTOVAPOR(登録商標)ロータリーエバポレーターで乾燥するまで回転蒸発させた(rotaovap)。材料を石油エーテルでリンスし、約72時間、真空オーブン中に設置した。
【0119】
上記の実施例4からの約90.53グラムのPEGアジペートと上述した約16.5グラムの精製したPDIとを250mlの3口フラスコに合わせた。約75℃の温度、静的窒素下、約150rpmの混合速度でフラスコを油浴に設置し、約4時間混合した。温度を約40℃に再設定し、さらに90分間、混合し続けた。
【0120】
次に、約56.475グラムの得られた材料を100mlの2口フラスコに移した。約0.353グラムのTMPを材料に添加した。約65℃の温度、静的窒素下、約50rpmの混合速度で油浴にフラスコを設置した。約25時間後、反応を停止させ、得られた分岐した材料を30ccシリンジに移した。
【0121】
重ね剪断試験は、実施例3において上述されるようにこの材料で行った;5分での重ね剪断は約1605グラムであった。NCO含有量は、実施例3において上述されるように滴定によって測定され、材料は、約3.125%のNCOを有することが分かった。材料の分子量は約4387であった。
【0122】
様々な上記で開示された特徴及び機能、並びに他の特徴および機能、またはその代替物は、多数の他の異なるシステムまたは応用に所望により組み合わせることができることが承認される。また、そこでの種々の現在不測であるかまたは予期せぬ代替、修飾、改変または改良は、下記の特許請求の範囲によって包含されることが意図されることも当業者によって後になされてもよい。請求項に具体的に引用されなければ、特許請求の範囲の工程または成分は、任意の特定の順番、数、位置、大きさ、形状、角度、色、または材料に関して、明細書およびいずれかの他の請求項から暗示され、および取り込まれてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性組成物を製造するための無溶媒、無触媒法であって、
ポリアルキレンオキシドと脂肪族ジカルボン酸とを約0.5時間〜約120時間の間接触させて混合物を形成させ;
前記混合物を約−70℃〜約85℃の温度で維持し;
前記混合物から脂肪族ポリエステルマクロマーを回収すること
を含み、ここで、前記脂肪族ポリエステルマクロマーは、溶媒残基および触媒残基を有さない方法。
【請求項2】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンとのブロック共重合体、およびポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのランダム共重合体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレングリコール、およびポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコールが、約200〜約1000の分子量を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体が、約17モルのポリエチレングリコール/約6モルのポリプロピレングリコールを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪族ジカルボン酸が、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記脂肪族ジカルボン酸が、塩化オキサリル、塩化マロニル、塩化スクシニル、塩化グルタリル、塩化アジポイル、塩化スベロイル、塩化ピメロイル、塩化セバコイル、および/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される脂肪族ジカルボン酸の誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
不活性ガスの存在下、約1時間〜約72時間の間、約20℃〜約75℃の温度で前記混合物を撹拌し、前記混合物のpHを約3〜約7に調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生体適合性組成物を製造するための無溶媒、無触媒法であって、
ポリアルキレンオキシドと脂肪族ジカルボン酸とを約1時間〜約72時間の間接触させて混合物を形成させ;
前記混合物を約−10℃〜約80℃の温度で維持し;
前記混合物から、溶媒残基および触媒残基を有さない脂肪族ポリエステルマクロマーを回収し;
前記脂肪族ポリエステルマクロマーと、芳香族、脂肪族および脂環式ジイソシアネートからなる群から選択される第1のイソシアネートとを接触させて、イソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーを製造し;
前記イソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーとポリオールとを反応させて、生体適合性組成物としてポリウレタンを製造すること
を含む方法。
【請求項10】
前記ポリウレタンと第2のイソシアネートとを反応させて、生体適合性組成物としてイソシアネート官能性ポリウレタンを製造することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体からなる群から選択され、前記脂肪族ジカルボン酸が、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第1のイソシアネートが、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチル1,3−フェニレンジイソシアネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記脂肪族ポリエステルマクロマーと前記第1のジイソシアネートとを反応させる工程が、第1のポリオールおよびジイソシアネートを約40℃〜約140℃の温度で加熱することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリオールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアジペート、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリラクチドトリオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、シクロヘキサンジメタノール、フランジメタノール、ペンタエリトリトール、グルコース、スクロース、ソルビトール、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のイソシアネートが、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジメチルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートまたは2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリメチル1,3−フェニレンジイソシアネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記イソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーと前記ポリオールとの反応が、前記イソシアネート末端キャップした脂肪族ポリエステルマクロマーおよび前記ポリオールを約40℃〜約100℃の温度で加熱することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリウレタンと前記第2のイソシアネートとの反応が、前記ポリウレタンおよび前記第2のイソシアネートを約40℃〜約140℃の温度で加熱することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
不活性ガスの存在下、約1時間〜約72時間の間、約20℃〜約75℃の温度で前記混合物を撹拌し、前記混合物のpHを約3〜約7に調整することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
溶媒残基および触媒残基を有さない、請求項9に記載のプロセスによって作製される生体適合性組成物。
【請求項19】
溶媒残基および触媒残基を有さない、請求項10に記載のプロセスによって作製される生体適合性組成物。

【公表番号】特表2010−525152(P2010−525152A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506410(P2010−506410)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/060971
【国際公開番号】WO2008/134276
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】