説明

生分解性樹脂発泡粒子、生分解性樹脂発泡粒子の製造方法、及び、型内発泡成形体

【課題】安定的に製造できると共に、発泡特性及び耐加水分解性に優れた生分解性樹脂発泡粒子を提供する。
【解決手段】ジカルボン酸単位とジオール単位を構成単位とする生分解性樹脂100重量部に対し、改質剤0.01〜10重量部及び核剤0.001〜10重量部を含有させた生分解性樹脂発泡粒子。又、該核剤が平均粒経0.1〜50μmのタルクであり、該改質剤が、多官能又は単官能の、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシド化合物及びオキサゾリン化合物から成る群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする生分解性樹脂発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂発泡粒子及びその製造方法、並びに、それを用いた型内発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量性、緩衝性、断熱性、成形性等の点に特徴を有するプラスチック発泡体は、その利便性から、主に包装容器、緩衝材等に多量に用いられている。一方、通常プラスチックは分解しないか、分解するとしても長い年月が必要であり、これらが自然界に放置された場合、ごみ散乱などによって自然環境に影響を与える可能性を有しているため、改善が期待されている。
【0003】
このために、自然境環中で微生物により分解処理される生分解性プラスチックが研究され、これまでに脂肪族ポリエステルや、澱粉とポリビニルアルコールとのアロイ等が商品化されている。しかしながら、特許文献1〜2にあるように、これらの生分解性樹脂の発泡体のほとんどは押出発泡体である。
【0004】
発泡体としては、押出発泡体の他、金型成形等で成形される発泡粒子成形体がある。発泡粒子成形体は、所望の形状の成形体にすることが容易にできるといった利点があり、以前より実用性のある生分解性発泡粒子成形体が望まれていが、未だ十分な性能を有するものは提供されていない。
【0005】
具体例を挙げると、生分解性発泡粒子成形体を得るための従来の方法としては、例えば、特許文献3に、高分子量化したウレタン結合を含むポリブチレンサクシネートからなる脂肪族ポリエステル樹脂粒子に、プロパンとペンタンとを発泡剤として含浸させて発泡粒子とした後、該粒子を水蒸気により加熱して予備発泡粒子とした後、これを金型内で加熱成形し、成形体を得る方法が記載されている。
【0006】
また、例えば、特許文献4では、ウレタン結合を含まない高分子量ポリブチレンスクシネートを用いた発泡粒子の製法が記載されている。
さらに、例えば、特許文献5には、生分解性を有する無架橋脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を有機過酸化物を用いて架橋させてゲル分率が少なくとも5%の架橋樹脂粒子を得る工程と、上記架橋樹脂粒子を発泡させて発泡粒子とする工程とにより、生分解性を有しかつ架橋構造を有する脂肪族ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造する方法が記載されている。
【0007】
なお、特許文献6には、脂肪族ポリエステルにカルボジイミド化合物を作用することにより、ポリエステル末端を封止し、耐加水分解性を向上させることが記載されている。
また、特許文献1,2においても、脂肪族ポリエステルの耐加水分解性を向上する目的で押出し発泡体製造時にカルボジイミドを添加することが例示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−352750号公報
【特許文献2】特開2005−60689号公報
【特許文献3】特開平6−248106号公報
【特許文献4】特開2003−082147号公報
【特許文献5】特開平10−324766号公報
【特許文献6】特開平11−80522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3記載の技術により得られるような高分子量のウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルは、汎用プラスチック成形法で成形する場合、条件によっては着色したり、ミクロゲルが発生したりすることがある。また、イソシアナートが高分子鎖中にある場合、分解過程で毒性の強いジアミンが生成し土中に蓄積する虞があった。
【0010】
また、特許文献3,4に記載されている従来の技術は、いずれも発泡粒子製造時において基材樹脂の高分子量体を用いることにより発泡体を得るものであるが、このような技術では、発泡粒子製造時には熱水中での反応により、加水分解が進行し、基材樹脂の分子量が低下することが懸念される。このため、特許文献3,4に記載の技術では、発泡粒子を型内で成形したときに、発泡成形体は得られるものの、気泡を保持するための十分な溶融粘度が得られなくなる虞がある。したがって、発泡特性が十分に高いとはいえないため、良好な気泡状態及び表面状態を有する発泡体を得られず、その結果、成形体の収縮率が大きく実用性に欠けるものとなっていた。
【0011】
さらに、特許文献3,4記載の技術で得られる成形体は、耐加水分解性能が十分に高いものではなかった。これは、発泡特性を改善する技術として提案されていた特許文献5記載の技術においても同様であり、特許文献5記載の技術によって得られる成形体の耐加水分解性についても改善の余地があった。
【0012】
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたもので、安定的に製造できると共に、発泡特性及び耐加水分解性に優れた生分解性樹脂発泡粒子及びその製造方法、並びに、それを用いた型内発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、生分解性樹脂に対して改質剤及び核剤をそれぞれ所定の割合で含有させることにより、安定的な製造を可能にしつつ、発泡特性及び耐加水分解性に優れた生分解性樹脂発泡粒子及びその製造方法、並びに、それを用いた型内発泡成形体を実現することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
即ち、本発明の要旨は、生分解性樹脂100重量部に対し、改質剤0.01〜10重量部及び核剤0.001〜10重量部を含有してなることを特徴とする、生分解性樹脂発泡粒子に存する(請求項1)。
【0015】
このとき、該生分解性樹脂は、ジカルボン酸単位及びジオール単位を構成単位とするものが好ましい(請求項2)。
【0016】
また、該核剤はタルクが好ましく、また、該核剤の平均粒径は0.1〜50μmが好ましい(請求項3)。
【0017】
さらに、該改質剤は、多官能又は単官能の、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシド化合物及びオキサゾリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい(請求項4)。
【0018】
本発明の別の要旨は、生分解性樹脂、改質剤及び核剤を含有する基材樹脂粒子を、熱水中、加熱して還元粘度1.5以上とする工程と、前記の基材樹脂粒子を発泡させて、上記の生分解性樹脂発泡粒子を得る工程とを備えることを特徴とする、生分解性樹脂発泡粒子の製造方法に存する(請求項5)。
【0019】
本発明の更に別の要旨は、上記の生分解性樹脂発泡粒子を型内で加熱成形してなることを特徴とする、型内発泡成形体に存する(請求項6)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安定的に製造できると共に、発泡特性及び耐加水分解性に優れた生分解性樹脂発泡粒子及びその製造方法、並びに、型内発泡成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について例示物等を示して説明するが、本発明は以下の例示物等により何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0022】
[1.生分解性樹脂発泡粒子]
本発明の生分解性樹脂発泡粒子(以下適宜、「本発明の発泡粒子」という)は、生分解性樹脂と、改質剤と、核剤とを含有する。
【0023】
[1−1.生分解性樹脂]
本発明の発泡粒子に用いられる生分解性樹脂に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意の生分解性樹脂を用いることができる。
生分解性樹脂の例を挙げると、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸、ラクトン樹脂、生分解性芳香族共重合ポリエステル、生分解性セルロースエステル、デンプンなどが挙げられる。
なお、生分解性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0024】
ラクトン樹脂としては、例えば、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、エナントラクトンや、4−メチルカプロラクトン、2,2,4−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化ラクトン、などの重合体が挙げられる。
【0025】
また、生分解性芳香族共重合ポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸及びその誘導体と脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体とを含むジカルボン酸成分と、脂肪族ジオールを含むジオール成分とを重縮合してなるものが挙げられる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート共重合体、ポリエチレンテレフタレート/アジペ−ト共重合体、ポリエチレンテレフタレート/セバケート共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ドデカジオネート共重合体、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート共重合体、ポリブチレンテレフタレート/アジペ−ト共重合体、ポリブチレンテレフタレート/セバケート共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ドデカジオネート共重合体、ポリヘキシレンテレフタレート/サクシネート共重合体、ポリヘキシレンテレフタレート/アジペ−ト共重合体、ポリヘキシレンテレフタレート/セバケート共重合体、ポリヘキシレンテレフタレート/ドデカジオネート共重合体等が挙げられる。
【0026】
なお、本発明において使用される生分解性芳香族共重合ポリエステルにおいて、生分解性を発現させるためには芳香族環の合間に脂肪族鎖が存在することが望ましい。そのため、生分解性芳香族共重合ポリエステルである脂肪族−芳香族ポリエステル系共重合体中の芳香族ジカルボン酸単位の量は、脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位との合計に対し、下限が通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上であり、上限が通常50モル%以下、好ましくは48モル%以下である。この量が多すぎると、生分解性が不十分となる虞がある。
【0027】
さらに、生分解性セルロースエステルとしては、酢酸セルロース、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、硝酸酢酸セルロース等が挙げられる。
【0028】
ただし、本発明の発泡粒子に用いる生分解性樹脂としては、脂肪族ポリエステルを用いることが好ましく、特に、ジオール単位及びジカルボン酸単位を必須の構成単位とする脂肪族ポリエステル(以下適宜、「本発明に好適な脂肪族ポリエステル」という)を用いることが好ましい。以下、この本発明に好適な脂肪族ポリエステルについて説明する。
【0029】
[1−1−1.脂肪族ポリエステル]
本発明に好適な脂肪族ポリエステルは、ジオール単位(即ち、ジオール又はその誘導体から形成される構成単位)と、ジカルボン酸単位(即ち、ジカルボン酸又はその誘導体から形成される構成単位)とを必須の構成単位とする。ここで、ジオール単位及びジカルボン酸単位については、それぞれ本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。また、ジオール単位及びジカルボン酸単位は、いずれも、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0030】
ただし、中でも、ジオール単位としては、下記式(I)で表わされるジオール又はその誘導体(以下適宜、ジオール及びその誘導体を「ジオール成分」という)から形成されるものが好ましく、ジカルボン酸単位としては下記式(II)で表わされるジカルボン酸又はその誘導体(以下適宜、ジカルボン酸及びその誘導体を「ジカルボン酸成分」という)から形成されるものが好ましい。
【化1】

(式(I)において、R1は、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表わす。また、式(II)において、R2は、2価の脂肪族炭化水素基を表わし、nは0又は1を表わす。)
【0031】
まず、式(I)で表わされるジオールについて説明する。
式(I)において、R1は、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表わす。
また、R1は、鎖状脂肪族炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。さらに、分岐鎖を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0032】
さらに、R1の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、R1が鎖状脂肪族炭化水素基である場合、R1の炭素数は通常2以上、また、通常10以下、好ましくは6以下である。一方、R1が脂環式炭化水素基である場合、R1の炭素数は通常3以上、また、通常10以下、好ましくは8以下である。
【0033】
さらに、ジオール成分としては、上記の式(I)のジオールの誘導体も好適に用いることができる。その例としては、酢酸とのエステル化合物などが挙げられる。
【0034】
上記式(I)で表されるジオール及びその誘導体の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好適に挙げられる。中でも、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0035】
さらに、式(I)において、R1が鎖中に酸素原子を含有する2価の鎖状脂肪族炭化水素基である場合、R1としては、下記式(III)で表されるジヒドロキシアルキレングリコールの縮合体が好ましい。また、このジヒドロキシアルキレングリコールの縮合体の炭素数は、2〜6であることが好ましい。
【化2】

【0036】
上記式(III)中、R3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表わす。
また、p及びp’は、それぞれ独立に、1〜3の整数を表わす。
さらに、q及びq’は、それぞれ0以上の整数を表わす。但し、qとq’とが同時に0であることは無く、一方が0の場合、他方は2以上の整数である。
【0037】
式(III)で表わされるジヒドロキシアルキレングリコールの縮合体の具体例を挙げると、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等とポリプロピレングリコール等との共重合体、ジブタンジオール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0038】
また、これらの中でも、分子量100〜200万のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等とポリプロピレングリコール等との共重合体、並びに、ポリテトラメチレングリコールが、得られる脂肪族ポリエステルの融点の低下が小さく好適である。
【0039】
次に、式(II)で表わされるジカルボン酸について説明する。
式(II)において、R2は、2価の脂肪族炭化水素基を表わし、nは0又は1を表わす。また、R2は、鎖状脂肪族炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。さらに、R2は、分岐鎖を有していてもよい。
【0040】
さらに、R2の炭素数も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常2以上、また、通常48以下である。
ただし、R2が鎖状脂肪族炭化水素基である場合、R2としては、−(CH2m−で表わされる2価の鎖状脂肪族炭化水素基であることが好ましい。なお、mは通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下の整数である。
また、R2が脂環式炭化水素基である場合、R2の炭素数は、通常3以上、好ましくは4以上、また、通常10以下、好ましくは8以下である。
【0041】
さらに、ジカルボン酸成分としては、上記式(II)のジカルボン酸の誘導体も好適に用いることができる。例えば、上記式(II)のジカルボン酸の低級アルコールエステルや酸無水物などが挙げられる。中でも、ジカルボン酸の誘導体としては、炭素数1〜4の低級アルコールエステル若しくは酸無水物が好ましい。
【0042】
上記式(II)で表されるジカルボン酸及びその誘導体の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、へプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカンニ酸、テトラデカン二酸、ペンタデカンニ酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、マレイン酸、フマル酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の通常、炭素数が2以上48以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、これらの誘導体、例えば、ジメチルエステル、ジエチルエステル等の低級アルコールとのエステル、無水コハク酸、無水アジピン酸等の酸無水物も挙げられる。なかでも、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらの酸無水物、及びこれらの低級アルコールとのエステルが好ましく、特にはコハク酸、無水コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。
【0043】
さらに、本発明に好適な脂肪族ポリエステルには、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記のジオール単位及びジカルボン酸単位の他の構成単位を含有させるようにしてもよい。
ジオール単位及びジカルボン酸単位の他の構成単位としては、例えば、脂肪族オキシカルボン酸単位が挙げられる。この脂肪族オキシカルボン酸単位としては、分子中に1個の水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族オキシカルボン酸及びその誘導体(以下適宜、「脂肪族オキシカルボン酸成分」という)により形成される構成単位であれば特に限定は無く、環状のものも、鎖状のものも使用できる。
【0044】
脂肪族オキシカルボン酸成分としては、例えば、α,ω−ヒドロキシカルボン酸、α−ヒドロキシカルボン酸等が挙げられるが、これらのオキシカルボン酸のエステルやラクトン類、ラクチド、或いはオキシカルボン酸重合体等の誘導体であってもよい。
ラクトン類の具体例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、エナントラクトン等のラクトン;4−メチルカプロラクトン、2,2,4−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等のメチル化ラクトンなどが挙げられる。
【0045】
また、オキシカルボン酸としては、例えば、下記式(IV)で表わされる脂肪族オキシカルボン酸によるものが挙げられる。
【0046】
【化3】

(式(IV)において、R4は、上記の式(II)におけるR2と同様のものを表わす。)
【0047】
また、上記のものの中でも、下記式(V)で表わされる脂肪族オキシカルボン酸から形成されるものが好ましい。
【化4】

(式(V)において、R5は、水素原子又は炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基を表わす。)
【0048】
中でも特に、下記式(VI)で表わされる脂肪族オキシカルボン酸が、重合反応性向上効果が認められる点で好ましい。
【化5】

(式(VI)において、aは、0または1〜10の整数の整数を表わし、好ましくは0または1〜5の整数を表わす。)
【0049】
オキシカルボン酸、特に、脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、4−ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸等も挙げられる。また、更には、これらの低級アルキルエステル、分子内エステルなどの誘導体も挙げられる。
さらに、これらの化合物に光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。
【0050】
これらの中で好ましいのは、乳酸またはグリコール酸であり、特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸である。なお、乳酸の形態としては、30〜95重量%の水溶液が、容易に入手することができるので好ましく使用される。
また、これら脂肪族オキシカルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0051】
本発明に好適な脂肪族ポリエステルに脂肪族オキシカルボン酸単位を含有する場合、その使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、脂肪族ジカルボン酸単位100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは1.0重量部以上、より好ましくは2.0重量部以上、また、通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。上記範囲の下限を下回ると添加効果が現れない虞があり、上限を上回ると本発明の発泡粒子の耐熱性、機械的特性などが不十分となる虞がある。
【0052】
さらに、本発明に好適な脂肪族ポリエステルにおいては、3官能基以上を有する多官能成分単位として、3官能以上の脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位及び脂肪族多価オキシカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の単位を存在させることにより、その脂肪族ポリエステルの発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体の収縮を抑制することができ、好ましい。この収縮抑制の理由は明らかではないが、3官能以上の化合物を用いることによる脂肪族ポリエステルの溶融張力の向上が影響しているものと思われる。なお、多官能成分単位は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0053】
多官能成分単位を形成する3官能の脂肪族多価アルコール単位の具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリンまたはその無水物などによるものが挙げられる。また、4官能の脂肪族多価アルコール単位の具体例としては、ペンタエリスリトール等によるものが挙げられる。
【0054】
また、3個あるいは4個のヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等のポリオールから形成される構成単位も、多官能の脂肪族多価アルコール単位として用いることができる。ポリエーテルポリオールの構成単位としては本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はこれらのランダム共重合体又はブロック共重合体から選ばれる繰り返し単位から構成されるものが好ましい。一方、ポリエステルポリオールの構成単位も本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができるが、例えば、ポリカプロラクトンの繰り返し単位から構成されるものが好ましい。
【0055】
これらのポリオールは、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物を中心化合物として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトンなどの環状エーテルや環状エステルを反応させて得られる。
また、ポリオールの数平均分子量は200以上が好ましい。200未満であると物性改良効果が小さいからである。更に好ましくは、500以上、最も好ましくは1000以上が好ましい。なお、ポリオールの数平均分子量は、水酸基価から算出される。
このようなポリオールを本発明に用いて好適な脂肪族ポリエステル中に導入することによって、重合速度の加速や溶融粘度、溶融張力の向上が達成され、成形加工性が向上する。また、型内発泡成形体の適度な柔軟性、靱性の向上を達成することが可能である。
【0056】
また、多官能成分単位を形成する3官能の脂肪族多価カルボン酸単位の具体例としては、プロパントリカルボン酸またはその無水物等から形成される構成単位が挙げられる。
さらに、多官能成分単位を形成する4官能の脂肪族多価カルボン酸単位の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその無水物等から形成される構成単位が挙げられる。
【0057】
また、多官能成分単位を形成する3官能の脂肪族オキシカルボン酸単位は、(i)カルボキシル基2個とヒドロキシル基1個とを同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基1個とヒドロキシル基2個とを同一分子中に有するタイプとに分かれ、いずれのタイプも使用可能である。(i)のタイプの具体例としてはリンゴ酸等から形成される構成単位が挙げられ、(ii)のタイプの具体例としてグリセリン酸等から形成される構成単位が挙げられる。
【0058】
また、多官能成分単位を形成する4官能の脂肪族オキシカルボン酸単位は、(i)カルボキシル基3個とヒドロキシル基1個とを同一分子中に共有するタイプと、(ii)カルボキシル基2個とヒドロキシル基2個とを同一分子中に共有するタイプと、(iii)ヒドロキシル基3個とカルボキシル基1個とを同一分子中に共有するタイプとに分かれ、いずれのタイプも使用可能である。具体例としてはクエン酸や酒石酸から形成される単位が挙げられる。
【0059】
上記の本発明に好適な脂肪族ポリエステルは、ジオール単位及びジカルボン酸単位という必須単位に対応する化合物、即ち、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、またはその誘導体を所定割合で用い、公知の重合技術により製造することができる。この脂肪族ポリエステルを製造する際の重合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。
【0060】
また、多官能成分単位を使用する場合、その使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、脂肪族ジカルボン酸単位100モルに対し、通常0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、また、通常5モル以下、好ましくは2.5モル以下、より好ましくは1モル以下用いるようにする。この範囲の下限を下回ると添加効果が現れず、上限を上回ると反応中ゲル化する可能性が増大するので好ましくない。
【0061】
さらに、本発明に好適な脂肪族ポリエステルの数平均分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以上、好ましくは30000以上、また、通常200000以下である。数平均分子量が上記範囲の下限を下回ると本発明の発泡粒子が発泡特性に劣る虞があり、他方、上限を上回ると溶融温度や粘度が高くなり発泡粒子の製造が困難になる虞がある。
【0062】
[1−1−2.脂肪族ポリエステルの製造方法]
脂肪族ポリエステルの製造方法は、ポリエステルの製造に関する公知の方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。また、通常は、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行なうことによってさらに重合度を高めることができる。
【0063】
また、脂肪族ポリエステルの製造時に、ジオール単位を形成するジオール成分とジカルボン酸単位を形成するジカルボン酸成分とを反応させる場合には、製造される脂肪族ポリエステルが目的とする組成を有するようにジオール成分及びジカルボン酸成分の使用量を設定する。通常は、ジオール成分とジカルボン酸成分とは実質的に等モル量である。ただし、この際、ジオール成分の使用量は、エステル化反応中の留出があることから、通常は1〜20モル%過剰に用いられる。
【0064】
さらに、本発明に好適な脂肪族ポリエステルに脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位等の必須成分以外の成分(任意成分)を含有させる場合、その脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位もそれぞれ目的とする組成となるように、それぞれに対応する化合物(モノマーやオリゴマー)を反応に供するようにする。
【0065】
このとき、上記の任意成分を反応系に導入する時期及び方法に制限は無く、本発明に好適な脂肪族ポリエステルを製造できる限り任意である。
例えば脂肪族オキシカルボン酸を反応系に導入する時期及び方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合反応以前であれば特に限定されず、例えば、(1)あらかじめ触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、(2)原料仕込み時触媒を系に導入すると同時に混合する方法、などが挙げられる。
また、多官能成分単位を形成する化合物の導入時期は、重合初期の他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込むようにしてもよく、または、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込むようにしてもよいが、他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込むほうが工程の簡略化の点で好ましい。
【0066】
また、本発明に好適な脂肪族ポリエステルは、通常は触媒の存在下で製造される。触媒としては、ポリエステルの製造に用いることのできる触媒を、本発明の効果を著しく損なわない限り任意に選択することができる。その例を挙げると、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
【0067】
触媒として使用できるゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物などが挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
【0068】
また、触媒として使用できるチタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタンなどの有機チタン化合物が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどが好ましい。
また、本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。なお、触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0069】
さらに、触媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、使用するモノマー量に対して、通常0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、また、通常3重量%以下、好ましくは1.5重量%以下である。この範囲の下限を下回ると触媒の効果が現れない虞があり、上限を上回ると製造費が高くなったり得られたポリマーが著しい着色を生じたり耐加水分解性が低下したりする虞がある。
【0070】
また、触媒の導入時期は、重縮合以前であれば特に限定されないが、原料仕込み時に導入しておいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。原料仕込み時に乳酸やグリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸単位を形成するモノマーやオリゴマーと同時に導入するか、または脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましく、特には、重合速度が大きくなるという点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましい。
【0071】
また、本発明に好適な脂肪族ポリエステルを製造する際の温度、重合時間、圧力などの反応条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
ただし、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。また、反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下である。さらに、反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。また、反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは4時間以下である。
【0072】
さらに、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル反応及び/又はエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.01×103Pa以上、好ましくは0.03×103Pa以上、上限が通常1.4×103Pa以下、好ましくは0.4×103Pa以下の真空度下として行なうことが望ましい。また、このときの反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。さらに、反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
【0073】
[1−2.改質剤]
本発明の発泡粒子は、改質剤(カルボキシル基反応性改質剤)を含有する。改質剤は、生分解性樹脂がその炭素鎖の末端に有するカルボキシル基(カルボキシ末端)を封止することが可能な化合物であれば任意のものを用いることができ、例えば、ポリマーのカルボキシル末端の封止剤として用いられているものを任意に用いることができる。この改質剤を用いることにより、耐加水分解性を向上させることができる。
【0074】
また、本発明にかかる改質剤は、樹脂の末端を封止するのみではなく、熱分解や加水分解などで生成する末端カルボン酸や乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封止することができるものが好ましい。さらに、熱分解や加水分解などで生成する酸性低分子化合物中の水酸基末端も封止できる化合物であることがさらに好ましい。
【0075】
さらに、改質剤は、多官能のものであってもよく、単官能のものであってもよい。多官能の改質剤は生分解性樹脂の主鎖が切断した際、溶融張力等の物性を維持できるという利点を有する。また、単官能の改質剤は多官能タイプよりも分子量や立体障害が少ないため、速やかに生分解性樹脂の末端と反応し、封止ができるという利点を有する。
【0076】
このような改質剤としては、例えば、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシド化合物及びオキサゾリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
カルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)であり、このようなカルボジイミド化合物は、例えば、触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用いて、イソシアネート化合物を70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応させることにより合成することができる。
【0077】
上記のカルボジイミド化合物の内、モノカルボジイミド化合物としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等を例示することができる。これらの中では、工業的に入手が容易であるので、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが好ましい。
【0078】
また、ポリカルボジイミド化合物としては、例えば米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、及びChemical Review 1981、81巻、第4号、p.619−621等に記載された方法により製造したものを用いることができる。
【0079】
なお、ポリカルボジイミド化合物の製造原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を挙げることができ、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等を例示することができる。
【0080】
さらに、有機ジイソシアネートの脱炭酸縮合反応に用いられるカルボジイミド化触媒としては、例えば、有機リン系化合物や一般式M(OR)nで示される有機金属化合物(但し、Mはチタン、ナトリウム、カリウム、バナジウム、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、鉛、マンガン、ニッケル、カルシウムやバリウム等の金属原子を、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基を示し、nは金属原子Mが取り得る原子価を示す)が好適である。中でも、有機リン系化合物ではホスフォレンオキシド類が、有機金属化合物ではチタン、ハフニウム、ジルコニウムのアルコシド類が活性が高く好ましい。
【0081】
上記のホスフォレンオキシド類の具体例としては、3−メチル−1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−ホスフォレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−ホスフォレン−1−オキシド、1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスフォレン−1−オキシド、1−メチル−2−ホスフォレン−1−オキシド及びこれらの二重結合異性体などを例示することができる。中でも工業的に入手が容易な3−メチル−1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシドが特に好ましい。
【0082】
これらのポリカルボジイミド化合物の合成時には、モノイソシアネートやその他の末端イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物を用いて、所望の重合度に制御することもできる。このような目的に用いられる化合物としては、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の水酸基含有化合物、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、β−ナフチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアミノ基含有化合物、コハク酸、安息香酸、シクロヘキサン酸等のカルボキシル基含有化合物、エチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等のメルカプト基含有化合物、及び種々のエポキシ基含有化合物等を例示することができる。
【0083】
また、カルボジイミド化合物は単独で使用することもできるが、複数の化合物を混合して使用することもできる。
本発明においては、ポリカルボジイミド化合物を用いることが好ましく、その重合度は、下限が通常2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは、30以下である。重合度が低いと、基材樹脂粒子製造時にカルボジイミド化合物が揮散し効果が低くなる傾向がある。一方、重合度が大きすぎると組成物中における分散性が不十分となり、均一な発泡特性が得られないことがある。
【0084】
なお、工業的に入手可能なポリカルボジイミドとしては、例えば、カルボジライトHMV−8CA(日清紡製)、カルボジライト LA−1(日清紡製)、スタバクゾールP(ラインケミー社製)、スタバクゾールP100(ラインケミー社製)などが例示できる。
【0085】
また、イソシアネート化合物としては、例えば、シクロヘキシルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、2,6ージイソプロピルフェニルイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイノシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルペニルジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0086】
さらに、エポキシド化合物としては、ブチルフェニルグリシジルエーテル、レゾルシングリシジルエーテル、ヒドロキノングリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはノボラック型エポキシ樹脂、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0087】
また、オキサゾリン化合物としては、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。
【0088】
さらに、この他、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物等のエポキシ化合物、オキサジン化合物なども、改質剤として挙げられる。
これらの中でも、エポキシ化合物およびカルボジイミド化合物が好ましい。
なお、上記改質剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0089】
また、本発明の発泡粒子では、使用する用途に応じて適度にカルボキシル末端や酸性低分子化合物の封止を行えばよく、封止の程度はその用途に応じて任意である。具体的なカルボキシル末端や酸性低分子化合物の封止の程度としては、耐加水分解性を向上させる観点から、本発明の発泡粒子中の酸価が、通常40μeq/g以下、好ましくは30μeq/g以下、より好ましくは20μeq/gである。なお、本発明の発泡粒子中の酸価は、本発明の発泡粒子を適当な溶媒に溶解させた後、濃度既知の水酸化ナトリウムなどのアルカリ化合物溶液で滴定することにより測定したり、NMRにより測定したりすることができる。また、「eq」は「mol」を表わす単位である。
【0090】
改質剤の使用量は、生分解性樹脂を100重量部として、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、特に好ましくは0.2重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、特に好ましくは2重量部以下である。この範囲の下限を下回ると末端封止の効果が現れない虞があり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎる虞がある。
【0091】
また、上記の使用量の範囲内において、改質剤は、定量的にポリエステル酸末端を封止する量を加えれば良いが、長期安定性や発泡粒子製造時における発泡剤含浸工程における耐加水分解抑制効果と溶融張力向上効果とを発現するためには、ポリエステル末端に対して改質剤を過剰に存在させることが望ましい。なお、ここで改質剤を過剰に存在させるとは、基材樹脂(即ち、生分解性樹脂及び適宜使用されるその他の樹脂)の酸価以上に改質剤を加えることをいう。
【0092】
本発明の発泡粒子に改質剤を含有させる具体的な方法に制限は無いが、通常は、生分解性樹脂を含む基材樹脂粒子を製造する何れかの工程において、生分解性樹脂と改質剤とを混合して、発泡粒子に改質剤を含有させるようにする。例えば、生分解性樹脂を二軸混練機等で溶融混練する時に改質剤を同時に練り込んでもよいし、また、溶融している生分解性樹脂系に改質剤を混合させてもよい。なお、ここでいう基材樹脂粒子は、本発明の発泡粒子を製造する際に作製されるもので、この基材樹脂粒子を発泡させることにより本発明の発泡粒子が得られるようになっている。
【0093】
溶融混練時に改質剤を練りこむ場合には、混練時温度としては120〜250℃が好ましい。温度が高すぎると、樹脂等の材料が熱劣化する虞があるためである。また、低分子揮発成分を除去する目的から、混練時には、混練機シリンダー途中を真空吸引(ベント吸引)できるようにすることが好ましい。なお、二軸混練機における二本のスクリューの回転方向は、同方向でも異方向でもよい。
【0094】
また、改質剤を高含有で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。含有量が目的濃度となるように混合して希釈することができるためである。
マスターバッチ中の改質剤の含有量に制限は無いが、通常は1重量%以上、また、通常45重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。改質剤の含有量が少なすぎると、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、ゲル化が進行しやすくなる傾向がある。
マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されず、カルボジイミドを含有する市販マスターバッチでもよいが、使用する生分解性樹脂と同様の樹脂を用いて製造されたマスターバッチが好ましい。
【0095】
さらに、生分解性樹脂と改質剤とを混合する際には、改質剤の反応触媒も反応系に共存させることが好ましい。ここで言う反応触媒とは、改質剤と、生分解性樹脂の末端や酸性低分子化合物のカルボキシル基との反応を促進する効果のある化合物である。中でも、少量で反応を促進する効果のある化合物が好ましく、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステルなどが好ましい。なお、この反応触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0096】
上記の反応触媒の使用量は本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意であるが、生分解性樹脂100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上、また、通常1重量部以下、好ましくは0.2重量部以下、より好ましくは0.1重量部以下である。この範囲の下限を下回ると触媒の効果が現れない虞があり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎる虞がある。
【0097】
[1−3.核剤]
本発明の発泡粒子は、核剤を含有する。核剤は、本発明の発泡粒子の製造時に基材樹脂粒子を発泡させるときに核となり気泡径の調節等の目的で用いられるものであり、本発明の効果を著しく損なわないものであれば任意のものを用いることができ、無機系核剤および有機系核剤のいずれをも使用することができる。
【0098】
無機系核剤の具体例としては、タルク、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などを挙げることができる。また、これらの無機系核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていてもよい。
【0099】
一方、有機系核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩;p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩;ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等のカルボン酸アミド;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸等のポリマー;エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー);ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート等のリン化合物金属塩;および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどを挙げることができる。
【0100】
これらの核剤のなかでも、タルクが、気泡が均一で高発泡倍率を有する発泡粒子を与える点から好ましい。
なお、これらの核剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0101】
さらに、上記核剤の平均粒径は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意である。ただし、気泡が均一で高発泡倍率を有する発泡粒子を得ることができ、また、該発泡粒子から機械的強度や柔軟性などにすぐれた発泡成形体を得ることができる点から、通常50μm以下、好ましくは10μm以下であることが望ましい。また、2次凝集や取扱作業性の点から、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であるのが望ましい。上記平均粒径が上記範囲の上限を超える場合には、核剤の粒径が発泡粒子内の気泡壁の膜厚より大きくなって気泡膜が破れ易くなり、好ましくない。また、核剤の平均粒径が上記範囲の下限未満となった場合には、発泡核点になりにくく、成形性が低下する傾向にある。
【0102】
また、核剤の使用量は、生分解性樹脂100重量部に対して、高発泡倍率の発泡粒子を得る点から、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上とする。また、本発明の発泡粒子を成形する際に、すぐれた融着性を発現させ、該発泡粒子から機械的強度や柔軟性などにすぐれた発泡成形体を得る観点から、通常10重量部以下、好ましくは2重量部以下である。この範囲の上限を超えると、本発明の発泡粒子を型内発泡成形体としたときの機械的強度、耐衝撃性などが劣る傾向にある。
【0103】
さらに、これらの核剤は、本発明の発泡粒子の製造時のどの工程において発泡粒子に含有させるようにしてもよいが、通常は、生分解性樹脂を含む基材樹脂粒子を製造する何れかの工程において、生分解性樹脂と核剤とを混合して、発泡粒子に核剤を含有させるようにする。例えば、生分解性樹脂を製造する工程において含有させてもよく、また、基材樹脂粒子の製造時に含有させてもよい。
【0104】
[1−4.その他の成分]
本発明の発泡粒子には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、上記の生分解性樹脂、改質剤及び核剤以外の成分を含有させるようにしてもよい。
例えば、上記の生分解性樹脂以外の樹脂を含有させるようにしてもよく、また、その他の添加剤を含有させるようにしてもよい。
【0105】
[1−4−1.その他の樹脂]
本発明の発泡粒子が含有するその他の樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリブテンなどが挙げられる。また、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0106】
ただし、生分解性樹脂以外の樹脂を併用する場合、その使用量に制限は無いが、本発明の発泡粒子が含有する全樹脂成分に対する生分解性樹脂の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70%以上となるようにする。生分解性樹脂の量が増えれば、本発明の発泡粒子の分解速度が速くなり、また、分解後の崩形性が向上するからである。
【0107】
[1−4−2.その他の添加物]
本発明の発泡粒子が含有する添加剤に制限は無いが、例えば、酸化防止剤等の熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤(耐光剤)、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、離型剤、防曇剤、結晶核剤、可塑剤、着色剤、充填剤、相溶化剤、難燃剤等が挙げられる。
特に、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、相溶化剤、結晶核剤、充填剤の何れか1種類以上の使用剤を10ppm以上含むことが好ましい。なお、本明細書において「ppm」とは、重量を基準とした比率を表わす。
【0108】
<可塑剤について>
可塑剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、脂肪族モノカルボン酸又はジカルボン酸のアルキルエステル、芳香族モノカルボン酸又はジカルボン酸のアルキルエステル、ジペンタエルスリトールのエステル化物、ポリブタジエン水添加物又はその末端変性物、エポキシ化大豆油などが挙げられる。
【0109】
なお、可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、可塑剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。この範囲の下限を下回ると可塑化効果が小さく十分な柔軟性が得られなくなる虞があり、上限を上回ると組成物の耐熱性が劣ったり、可塑剤のブリードアウトが生じたりする虞がある。
【0110】
また、これらの可塑剤は、本発明の発泡粒子の製造時のどの工程において発泡粒子に含有させるようにしてもよいが、通常は、生分解性樹脂を含む基材樹脂粒子を製造する何れかの工程において、生分解性樹脂と可塑剤とを混合して、発泡粒子に可塑剤を含有させるようにする。例えば、生分解性樹脂を製造する工程において含有させてもよく、また、基材樹脂粒子の製造時に含有させてもよい。
【0111】
<熱安定剤について>
熱安定剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、BHT、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド等のヒンダードフェノール系熱安定剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜りん酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジファスファイト等のリン系熱安定剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系熱安定剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。
【0112】
なお、これらの熱安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、熱安定剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、生分解性樹脂に対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。この範囲の下限を下回ると熱安定剤の効果が小さくなる虞があり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、熱安定剤のブリードアウトが生じたりする虞がある。
【0113】
また、これらの熱安定剤は、本発明の発泡粒子の製造時のどの工程において発泡粒子に含有させるようにしてもよいが、通常は、生分解性樹脂を含む基材樹脂粒子を製造する何れかの工程において、生分解性樹脂と熱安定剤とを混合して、発泡粒子に熱安定剤を含有させるようにする。例えば、生分解性樹脂を製造する工程において含有させてもよく、また、基材樹脂粒子の製造時に含有させてもよい。
【0114】
<耐光剤について>
耐光剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、デカンニ酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応性生物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドトキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系安定剤が挙げられる。
【0115】
耐光剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に異なる種類の耐光剤を組み合わせて用いるのが有効であり、さらに、紫外線吸収剤と組み合わせて用いることが有効である。また、中でも、ヒンダードアミン系安定剤と紫外線吸収剤との組み合わせが有効である。
【0116】
さらに、耐光剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、生分解性樹脂に対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。この範囲の下限を下回ると耐光剤の効果が小さくなる虞があり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、組成物の耐熱性が劣ったり、耐光剤のブリードアウトが生じたりする虞がある。
【0117】
さらに、これらの耐光剤は、本発明の発泡粒子の製造時のどの工程において発泡粒子に含有させるようにしてもよいが、通常は、生分解性樹脂を含む基材樹脂粒子を製造する何れかの工程において、生分解性樹脂と耐光剤とを混合して、発泡粒子に耐光剤を含有させるようにする。例えば、生分解性樹脂を製造する工程において含有させてもよく、また、基材樹脂粒子の製造時に含有させてもよい。
【0118】
<紫外線吸収剤について>
紫外線吸収剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等が挙げられる。
【0119】
紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に異なる種類の紫外線吸収剤を組み合わせて用いるのが有効である。
また、紫外線吸収剤の使用量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である。この範囲の下限を下回ると紫外線吸収剤の効果が小さくなる虞があり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、組成物の耐熱性が劣ったり、紫外線吸収剤のブリードアウトが生じたりする虞がある。
【0120】
さらに、これらの紫外線吸収剤は、本発明の発泡粒子の製造時のどの工程において発泡粒子に含有させるようにしてもよいが、通常は、生分解性樹脂を含む基材樹脂粒子を製造する何れかの工程において、生分解性樹脂と紫外線吸収剤とを混合して、発泡粒子に紫外線吸収剤を含有させるようにする。例えば、生分解性樹脂を製造する工程において含有させてもよく、また、基材樹脂粒子の製造時に含有させてもよい。
【0121】
<相溶化剤について>
相溶化剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、脂肪族ポリエステルの末端または主鎖に、エステル基、カルボン酸無水物、アミド基、エーテル基、シアノ基、不飽和炭化水素基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、芳香族炭化水素基などを反応させたものが挙げられる。
【0122】
また、相溶化剤としては、例えば、脂肪族ポリエステルと、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー等の芳香族系ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、SEBS(ポリスチレン−block−ポリ(エチレン−co−ブチレン)−block−ポリスチレン)、SEPS、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン13ナイロン4、ナイロン4-6、ナイロン5-6、ナイロン12・ナイロン10−12、アラミド等のポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール、ポリテトラメレングリコール、変性ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等とのグラフト共重合体、ブロック共重合体、マルチブロック共重合体、ランダム共重合体なども挙げられる。
【0123】
さらに、上記の共重合体以外にも、相溶化剤としては、ブレンドする異なる樹脂の構造の両方を同一分子中に含む化合物も挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、SEBS、SEPS、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン12、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール、ポリテトラメレングリコールのポリマー分子の末端または側鎖に、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アルキル基、アルキレン基と反応可能な官能基を有するポリマーなども挙げられる。
【0124】
なお、相溶化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、本発明の発泡粒子において、基材樹脂(即ち、生分解性樹脂及び適宜使用されるその他の樹脂)が2種以上から構成される場合には、相溶化剤の使用は特に好適である。
【0125】
さらに、相溶化剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、また、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。この範囲の下限を下回ると相溶化剤の効果が小さくなる虞があり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎる虞がある。
【0126】
また、これらの相溶化剤は、本発明の発泡粒子の製造時のどの工程において発泡粒子に含有させるようにしてもよいが、通常は、生分解性樹脂を含む基材樹脂粒子を製造する何れかの工程において、生分解性樹脂と相溶化剤とを混合して、発泡粒子に相溶化剤を含有させるようにする。例えば、基材樹脂粒子の製造時に含有させてもよく、また、あらかじめ押出し機などで生分解性樹脂、改質剤、核剤及びその他の樹脂や添加剤のブレンドを行なう際に含有させてもよい。
【0127】
<充填剤>
充填剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その例としては、滑剤やワックス類、着色するための顔料、耐熱性や剛性を高めるフィラー、さらに発泡成形安定剤などが挙げられる。
【0128】
滑剤やワックス類としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、パラフィン油、固形パラフィン等のパラフィン、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸の金属塩、ステアリン酸ブチル、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル、ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オキシステアリン酸のエチレンジアミド、メチロールアミド、オレイルアミド、エルシルアミド等の脂肪酸アミド等、カルナウバワックス、モンタンワックス等のワックス類などが挙げられる。
【0129】
また、顔料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、無機系の顔料であっても、有機系の顔料であっても良い。無機系の顔料の具体例としえは、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の硫化物、鉄黒、べんがら等の酸化物、群青等のケイ酸塩、又はチャンネルブラック、ローラーブラック、ディスク、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック等を挙げることができる。また、有機系の顔料の具体例としては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、又はフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の多環式顔料等を挙げることができる。
【0130】
なお、充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、充填剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、生分解性樹脂100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、また、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。この範囲の下限を下回ると添加効果が小さくなる虞があり、上限を上回ると発泡特性を悪化させる虞がある。
【0131】
さらに、これらの充填剤は、本発明の発泡粒子の製造時のどの工程において発泡粒子に含有させるようにしてもよいが、通常は、生分解性樹脂を含む基材樹脂粒子を製造する何れかの工程において、生分解性樹脂と充填剤とを混合して、発泡粒子に充填剤を含有させるようにする。
【0132】
<その他>
さらに、上記のように、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、離型剤、防曇剤、結晶核剤、着色剤、難燃剤などを添加剤として用いてもよい。これらはいずれも、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、また、その使用量も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。さらに、これらの添加剤はいずれも、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ただし、帯電防止剤及び結晶核剤は、それぞれ、生分解性樹脂に対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下用いるようにすることが望ましい。この範囲の下限を下回ると添加効果が小さくなる虞があり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、組成物の耐熱性が劣ったり、添加剤のブリードアウトが生じたりする虞がある。
【0133】
[1−5.生分解性樹脂発泡粒子の物性]
本発明の発泡粒子の平均粒径に制限は無く本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、また、通常20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下である。この範囲の下限を下回ると発泡成形体の成形時に、型内に発泡粒子が密に充填されすぎるため、内部への加熱が不十分になる虞があり、上限を上回ると型内に発泡粒子が充分に充填されないため、成形体の外観が悪化する虞がある。
【0134】
さらに、本発明の発泡粒子の耐加水分解性にも制限は無く本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、還元粘度(ηsp/c)で、通常1.5以上、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.0以上、また、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3.5以下である。この範囲の下限を下回ると発泡時に気泡壁が破れ、発泡特性が悪化する虞があり、上限を上回ると粘度が高いために発泡体(発泡粒子)が得られなくなる虞がある。なお、上記の耐加水分解性は、得られた発泡体を50℃、90%RHの状態に4週間保持し、真空乾燥後、それらの還元粘度、酸価、溶融粘度等の初期値に対する保持率で評価できる。
【0135】
また、本発明の発泡粒子は、適宜、後述するようにゲル化させることが好ましい。ゲル化の程度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、また、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。なお、上記のゲル化の程度は、以下のようにして評価することができる。即ち、試料として約1gの発泡粒子(基材樹脂粒子を測定する場合は基材樹脂粒子を、発泡粒子成形体を測定する場合は発泡粒子成形体を試料とする)を精秤して重量(W2)を求める。次に、150mlのフラスコに精秤した重量(W2)の試料と100mlのクロロホルムとを入れ、大気圧下で10時間、62℃で加熱還流した後、得られた加熱処理物を充分に熱い状態のうちに(50℃以上の状態)200メッシュの金網をろ材として吸引濾過する。得られた金網上のろ過処理物を80℃のオーブン中に30〜40トールの減圧条件下にて8時間放置することにより完全に乾燥させる。得られた乾燥物の重量W1を測定する。そして、この重量W1の重量W2に対する重量百分率((W1/W2)×100)重量%をゲル分率とする。
【0136】
[2.生分解性樹脂発泡粒子の製造方法]
本発明の発泡粒子の製造方法に制限はなく、本発明の発泡粒子を得ることができる限り任意であるが、通常は、少なくとも生分解性樹脂、改質剤及び核剤を含有する基材樹脂粒子を作製する基材樹脂粒子作製工程と、基材樹脂粒子を熱水中、加熱して還元粘度1.5以上とする熱水加熱処理工程と、基材樹脂粒子を発泡させて生分解性樹脂発泡粒子を得る発泡工程とを行なう。
以下、この方法について説明する。
【0137】
[2−1.基材樹脂粒子作製工程]
基材樹脂粒子作製工程では、基材樹脂粒子を製造する。この基材樹脂粒子は、生分解性樹脂と、改質剤と、核剤と、適宜使用されるその他の樹脂及び添加剤とを含有する粒子である。
基材樹脂粒子の製造には、従来公知の技術をすべて適用できる。例えば、生分解性樹脂、改質剤、核剤、及び、適宜使用されるその他の樹脂や添加剤を含む組成物を調製し、その組成物を押し出し機で溶融混練し、押し出し、適当な大きさに切断する方法が挙げられる。なお、切断した後の形状に制限は無いが、円柱状、球状が好ましい。また、基材樹脂粒子に含有される各成分は、どのような順序で混合を行なっても良い。
【0138】
基材樹脂粒子の大きさは任意であるが、円柱状であれば、長さは通常0.05mm以上、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、また、通常10mm以下、好ましくは6mm以下、より好ましくは3mm以下である。さらに、直径は、通常0.05mm以上、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、また、通常10mm以下、好ましくは6mm以下、より好ましくは3mm以下である。一方、基材樹脂粒子が球状であれば、平均粒径は、通常0.05mm以上、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、また、通常10mm以下、好ましくは6mm以下、より好ましくは3mm以下である。基材樹脂粒子の大きさが上記範囲の下限未満である場合には、型内に発泡粒子が密に充填されすぎるため、内部への加熱が不充分になる虞がある。また、上記範囲の上限を超える場合には、型内に発泡粒子が充分に充填されないため、成形体の外観が悪化する虞がある。
【0139】
ただし、基材樹脂粒子に含有させる各成分、特に、生分解性樹脂及び適宜使用されるその他の樹脂などの基材樹脂は、予め乾燥させておくことが好ましい。したがって、これらには何らかの乾燥処理を施しておくことが好ましい。乾燥処理に制限は無いが、例えば、熱風乾燥機や除湿式ホッパードライヤーを使用して乾燥を行ない、吸湿量を調整する。
【0140】
基材樹脂粒子に含有させる各成分の吸湿量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常2000ppm以下とすることが好ましい。吸湿量が2000ppmを越えると、基材樹脂粒子に気泡が混入したり、押し出し機で溶融混練する際に生分解性樹脂等の基材樹脂の分子量が低下し、発泡特性が低下する可能性がある。
【0141】
また、押し出し機による溶融混練で基材樹脂粒子を作製する場合、押し出し温度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、基材樹脂の熱劣化が極端に激しくならない温度範囲であることが好ましく、具体的には、通常90〜250℃が好ましい。
さらに、使用する押し出し機についても制限は無い。例えば、ベント付き押し出し機を使用することが可能であり、この場合、真空ポンプにより水分を除去しながら押し出すこともできる。
【0142】
[2−2.熱水加熱処理工程]
熱水加熱処理工程では、上記の基材樹脂粒子作製工程で作製した基材樹脂粒子を熱水中で加熱する。以下適宜、これを熱水加熱処理という。
熱水加熱処理時の水の温度は本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意であるが、基材樹脂粒子の融点をTm(℃)として、通常Tm−30(℃)以上、好ましくはTm−20(℃)以上、より好ましくはTm−10(℃)以上、また、通常Tm+30(℃)以下、好ましくはTm+20(℃)以下、より好ましくはTm+10(℃)以下である。この範囲の下限を下回ると粘度増加効果が得られなくなる虞があり、上限を上回ると基材樹脂粒子同士の融着が生じる虞がある。
【0143】
また、熱水加熱処理を行なう時間も、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意であるが、通常5分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上、また、通常3時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。この範囲の下限を下回ると粘度増加効果が得られなくなる虞があり、上限を上回ると加水分解が進行し、樹脂の分解が促進される虞がある。
【0144】
さらに、熱水加熱処理時には、攪拌を行なってもよい。
また、分散剤、界面活性剤、融着防止剤など、適宜、添加剤を水中に共存させてもよい。
【0145】
熱水加熱処理により、基材樹脂粒子の還元粘度を、通常1.5以上、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.0以上とする。また、上限については特に制限は無いが、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3.5以下とする。還元粘度を上記の範囲とすることにより、発泡特性が良好になるという利点を得ることができる。
【0146】
このように熱水加熱処理を行なうことにより、未反応のカルボン酸末端とカルボジイミド基との反応を完結することができ、基材樹脂の分子量向上とポリエステル酸末端を封止することとができる。
【0147】
[2−3.架橋工程]
さらに、基材樹脂粒子は、最終的に成形型に充填し加熱成形する熱成形材料として適するように、ゲル化させることができる。ゲル化のための方法は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常は、架橋剤及び架橋助剤を用いて基材樹脂粒子中の成分を架橋させるようにする。
【0148】
架橋剤は、基材樹脂粒子の架橋が可能な限り任意であるが、通常は、有機過酸化物を用いる。架橋剤として使用できる有機過酸化物の具体例としては、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステルなどが挙げられる。なお、架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0149】
また、架橋剤とともに、架橋助剤を用いることが好ましい。架橋助剤は、架橋助剤は重合性を有するものである限り任意のものを用いることができる。中でも、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する化合物を用いるのが好ましい。
【0150】
架橋助剤が有する不飽和結合には、2重結合の他、3重結合も包含される。このような架橋助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;スチレン;酢酸ビニル;エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等のアクリレート系又はメタクリレート系の化合物;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌール酸又はイソシアヌール酸のアリルエステル;トリメリット酸トリアリルエステル、トリメシン酸トリアリルエステル、ピロメリット酸トリアリルエステル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸トリアリルエステル、シュウ酸ジアリル、コハク酸ジアリル、アジピン酸ジアリル等のカルボン酸のアリルエステル;N−フェニルマレイミド、N,N−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系化合物;1,2−ポリブタジエン等の2重結合を有するポリマー;フタル酸ジプロバギル、イソフタル酸ジプロバギル、トリメシン酸トリプロバギル、イタコン酸ジプロバギル、マレイン酸ジプロバギル等の2個以上の3重結合を有する化合物などが挙げられる。
なお、架橋助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0151】
なかでも、特に、架橋剤と架橋助剤との組合せとしては、架橋剤である有機過酸化物と、架橋助剤であるジビニル化合物、アクリル酸、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとの組合わせが好ましく、特に、架橋剤であるベンゾイルパーオキサイドと、架橋助剤であるジビニルベンゼン又はメタクリル酸メチルとの組合わせがより好ましい。
【0152】
架橋剤の使用量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、基材樹脂粒子100重量部当り、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。この範囲の下限を下回ると架橋効果が得られなくなる虞があり、上限を上回ると発泡粒子及びその成形体に架橋剤の未反応物や残渣が残る虞がある。
【0153】
また、架橋助剤の使用量にも制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、基材樹脂粒子100重量部当り、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは2重量部以下である。この範囲の下限を下回ると架橋効果が得られなくなる虞があり、上限を上回ると発泡粒子及びその成形体に架橋助剤の未反応物や残渣が残る虞がある。
【0154】
さらに、架橋剤や架橋助剤は、基材樹脂粒子に、発泡前のいずれの段階において共存させるようにしてもよい。例えば、生分解性樹脂の製造工程において生分解性樹脂に含有されるようにしてもよく、基材樹脂粒子の各成分を混合する際に架橋剤及び架橋助剤を混合するようにしてもよく、基材樹脂粒子の作製後に基材樹脂粒子と架橋剤及び架橋助剤とを混合するようにしてもよく、熱水加熱処理工程において混合するようにしてもよい。
【0155】
架橋により基材樹脂粒子をゲル化する場合、通常は、分散媒中において、架橋剤及び適宜使用される架橋助剤の存在下で基材樹脂粒子を加熱する。
分散媒に制限は無く、架橋が可能な限り任意のものを用いることができる。例えば、水、エチレングリコール、メタノール、エタノールなどが挙げられる。なお、分散媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、溶媒として水を用いる場合、上記の熱水加熱処理工程において、加熱時に水中に架橋剤及び架橋助剤を共存させて、同時に架橋を行なうようにしても良い。
【0156】
また、架橋時の温度条件も、架橋が可能である限り任意である。具体的な温度条件は基材樹脂粒子の樹脂の種類により異なり一義的に決めることは困難であるが、通常は、基材樹脂の融点をTm(℃)として、〔Tm−25(℃)〕〜〔Tm+10(℃)〕で行なうことが好ましい。また、この際使用する架橋剤としては、上記の温度範囲において半減期が1時間となるものを用いることが望ましい。分解温度が余りにも高い有機過酸化物(架橋材)を用いると、水中で樹脂粒子を加熱する場合に、その加熱温度が高くなり、また加熱時間も長くなるため、基材樹脂が加水分解する虞があるので好ましくない。
【0157】
さらに、架橋のために加熱を行なう時間についても、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、加熱条件下での長時間の保持は、基材樹脂の加水分解を進行させ、また、ゲル化の効率や樹脂物性を悪化させる虞があることから、反応時間としては3時間未満にすることが好ましい。
【0158】
また、基材樹脂粒子を確実にゲル化させるために、上記の架橋を行なうよりも以前において、上記の加熱温度未満の温度にて架橋剤や架橋助剤を基材樹脂粒子に含浸させる含浸工程を行なうようにすることが好ましい。
含浸時の含浸温度に制限は無く任意である。好適な含浸温度は、基材樹脂の種類により異なり一義的に決めることは困難であるが、架橋剤の20時間の半減期を与える温度から5時間の半減期を与える温度までの範囲とすることが好ましい。
【0159】
また、架橋剤等の含浸時間にも制限は無く任意である。好適な含浸時間は基材樹脂粒子の粒子重量によっても異なってくるが、通常10分以上、また、通常120分以下、好ましくは60分以下である。含浸時間が長すぎると、含浸性が向上する反面、生分解性樹脂等の基材樹脂の加水分解が進行する虞がある。また、含浸時間が短すぎると、得られる発泡粒子内部のゲル分率が低くなる虞がある。
【0160】
上記の含浸温度及び含浸時間の具体例を挙げると、例えば架橋剤として過酸化ベンゾイルを使用した場合には、その含浸温度は通常65℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常85℃以下、好ましくは80℃以下であり、また、含浸時間は通常10分以上、また、通常120分以下、好ましくは60分以下である。
【0161】
また、基材樹脂粒子を密閉容器内で架橋剤及び適宜使用される架橋助剤と共に反応させて架橋を行なう場合、密閉容器内の上部気相空間の酸素濃度を低くすることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、5体積%以下、さらに好ましくは0.5体積%以下である。これにより、酸化劣化を抑制できるという利点を得ることができる。
【0162】
酸素濃度を低くする方法としては、無機ガス、例えば窒素ガス、アルゴンガス、水蒸気等でパージする方法等が挙げられるが、その他どのような方法でも採用できる。
また、これに関連し、使用する分散媒として、溶存酸素濃度が通常9.5mg/L以下、好ましくは8.5mg/L以下のものが望ましい。
なお、発泡粒子のゲル分率は、分散媒中において、架橋剤の存在下で基材樹脂粒子をゲル化処理する際の、そのゲル化条件等により調節することができる。
【0163】
[2−4.発泡工程]
発泡工程では、基材樹脂粒子を発泡させて本発明の発泡粒子を得る。
基材樹脂粒子の発泡方法に制限は無く、本発明の発泡粒子が得られる限り任意である。その例を挙げると、例えば以下の(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
【0164】
(i)基材樹脂粒子を密閉容器内において発泡剤の存在下で分散媒中に分散させるとともに、内容物(基材樹脂粒子、分散媒、発泡剤等)を加熱して基材樹脂粒子を軟化させてその基材樹脂粒子内に発泡剤を含浸させ、次いで、容器の一端を開放し、容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の状態に保ちながら基材樹脂粒子と分散媒とを同時に容器内よりも低圧の雰囲気(通常は大気圧下)に放出して発泡させる方法。
(ii)基材樹脂粒子に密閉容器内で発泡剤を含浸させて発泡粒子を得た後、これを密閉容器から取り出し、その発泡粒子を加熱軟化させて発泡させる方法。
(iii)予め分解型発泡剤を基材樹脂粒子中に練り込んでおき、その基材樹脂粒子を発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させる方法。
【0165】
上記の(i)〜(iii)の方法のうちでも、特に(i)の方法が好ましい。これにより、本発明の発泡粒子をより安定して製造することが可能となる。以下、この(i)の方法について説明する。
【0166】
発泡剤としては従来公知のものを任意に用いることが出来る。その具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、クロロフロロメタン、トリフロロメタン、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1−クロロ−1,1,−ジフロロエタン、1,1−ジフロロエタン,1−クロロ−1,2,2,2−テトラフロロエタン等の揮発性発泡剤や、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の無機ガス系発泡剤が挙げられる。なお、発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0167】
発泡剤の使用量は、本発明の発泡粒子が得られる限り任意であるが、一般的には、所望の発泡粒子の嵩密度と発泡温度との関係から適宜選ばれる。発泡剤として窒素や空気等のガス系以外の発泡剤を使用する場合、その使用量は、基材樹脂粒子100重量部当たり、通常0.5重量部〜50重量部である。一方、窒素や空気等のガス系の発泡剤を使用する場合、その使用量は、密閉容器内の圧力が例えば20kgf/cm2G〜60kgf/cm2Gとなるように圧入すればよい。
【0168】
また、発泡の際に基材樹脂粒子を分散させる分散媒としては、基材樹脂粒子を溶解させないものであれば任意であるが、例えば、水、エチレングリコール、メタノール、エタノール等が挙げられ、通常は水が使用される。なお、分散媒は、1種のものを単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0169】
さらに、基材樹脂粒子を分散媒に分散せしめて加熱するに際し、その基材樹脂粒子同士の融着を防止するために融着防止剤を用いることが出来る。融着防止剤としては、分散媒に溶解せず、加熱によって溶融しないものであれば、無機系、有機系問わずに使用可能であるが、一般には無機系のものが好ましい。その具体例としては、リン酸三カルシウム、カオリン、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の粉体が挙げられる。なお、融着防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0170】
また、その融着防止剤の平均粒径は任意であるが、通常0.001μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは30μm以下である。
さらに、融着防止剤の使用量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、基材樹脂粒子100重量部に対し、通常0.01重量部〜10重量部である。
【0171】
また、分散溶媒中には、分散助剤を共存させることが好ましい。分散助剤に制限は無いが、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤などが挙げられるなお、分散助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、分散助剤の使用量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、基材樹脂粒子100重量部に対し、通常は0.001〜5重量部とすることが好ましい。
【0172】
発泡温度は、本発明の発泡粒子が得られる限り任意である。通常は、生分解性樹脂等の基材樹脂の融点±30℃であるが、特に発泡温度を(生分解性樹脂の融点−5℃)〜(生分解性樹脂の融点−30℃)とすると、発泡粒子のブロッキング防止等の効果を得ることができ、好ましい。
【0173】
なお、(i)の方法にて、生分解性樹脂の溶融張力を保つためには、上述した架橋反応を利用することができる。
また、上述した改質剤を使用したことにより、加水分解を抑制し、かつ分子量を増加させることが可能である。
さらに、核剤を使用したことにより、発泡特性の向上という利点を得ることができる。
【0174】
[2−5.その他の工程]
本発明の発泡粒子を製造するに際しては、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、上記の基材樹脂粒子作製工程、熱水加熱処理工程、架橋工程及び発泡工程の各工程の前、途中、後などにおいて、適宜、その他の工程を行なうようにしても良い。
【0175】
[3.型内発泡成形体]
本発明の発泡粒子は、型内で加熱成形することにより、本発明の型内発泡成形体(以下適宜、「本発明の発泡成形体」という)とすることができる。
上記の如く製造した本発明の発泡粒子を用いた本発明の発泡成形体は、発泡粒子を型に入れて(通常は充填して)加熱することにより製造される。この際、成形用の型としては、従来公知のものを任意に用いることができるが、精密な成形を行なうため、通常は金属製の金型を用いる。
【0176】
本発明の発泡成形体を製造する際には、型内で発泡粒子を加熱する。この加熱により、本発明の発泡粒子は相互に融着し、一体となって、本発明の発泡成形体を形成する。
成形時の加熱手段に制限は無く本発明の発泡成形体が得られる限り任意であるが、通常はスチーム加熱が用いられる。
【0177】
また、加熱温度は発泡樹脂粒子表面が融着する温度であれば任意である。
さらに、型内に入れる発泡粒子に、空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス或いはブタン、プロパン、ペンタン等の脂肪族炭化水素等の有機ガスを圧入し、発泡粒子内の各気泡内に内圧を賦与しておくと、成形性、回復性が向上するため、好ましい。賦与する内圧の程度は任意であるが、通常0〜2kgf/cm2Gの範囲内である。
【0178】
また、本発明の発泡成形体の形状は特に制約されず任意である。例えば、容器状、板状、筒体状、柱状、シート状、ブロック状等の各種形状を挙げることが出来る。
さらに、その用途も任意であり、例えば、カップラーメン等の食品容器、緩衝剤、魚箱、保温又は保冷箱等が挙げられる。
【0179】
[メカニズム]
上記のように、本発明の発泡粒子によれば、生分解性樹脂と、改質剤と、核剤とを、それぞれ所定の割合で含有することにより、発泡特性及び耐加水分解性を向上させることができる。このような優れた利点を得ることができる理由は定かではないが、本発明の発明者が推察するところによれば、生分解性樹脂、改質剤及び核剤を上記の割合で含有させることにより、基材樹脂の主鎖の切断で生じた酸末端を封止し、分子量の低下を抑制できるため、発泡特性を良好にすることができると共に、長期の耐加水分解性を向上させることができたものと推察される。
【実施例】
【0180】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」は重量部を表わす。
【0181】
<酸価(AV値)の測定方法の説明>
用いた測定装置は、自動滴定装置(東亜ディーケーケー(株)オートタイトレーターAUT−50)であった。
試料0.5gを精秤し、ベンジルアルコール25mLが入った試験管中で195℃の加熱浴で9分間加熱し、試料を溶解させる。試料が完全に溶解したことを確認し、氷水中で30秒〜40秒冷却した後、エチルアルコール2mLを加えた。攪拌しながら、試料溶液中にpH電極を入れ、0.01N水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液(10%メタノール液)を用い電位差滴定による中和滴定を開始した。
【0182】
一方、試料が溶解されていないブランクサンプルを調製し、上記方法と同様に滴定を実施し、ブランク値とした。
上記滴定結果より、下記式を用いて酸価(AV値:μeq/g)を計算した。
【数1】

【0183】
<還元粘度(ηsp/c)の測定方法>
実施例及び比較例で得られた試料(樹脂)を、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(1:1重量比)中、30℃、溶液濃度0.5g/dLで測定した溶液粘度から還元粘度(ηsp/c)をもとめた。
【0184】
<融点の測定方法>
パーキン・エルマー(PERKIN ELMER)社製の示差走査熱量計DSC7を用いて融点(Tm(℃))、融解熱(△H(J/g))、結晶化温度(Tc(℃))を測定した。測定条件は試料量10mg、窒素雰囲気下(窒素流量 50mL/min)で室温から80℃/分の条件で150℃まで昇温し、同温度にて10分間保持後、−10℃/分にて50℃まで降温し、同温度にて3分間保持した後、10℃/分の昇温条件下で融解した時のピーク温度をもって融点とした。
【0185】
[製造例1]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量1立方メートルの反応容器に、コハク酸134kg、1,4−ブタンジオール121リットル、酸化ゲルマニウムを予め1重量%溶解させた90%DL乳酸水溶液7.21kgを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下120℃から反応を開始し、1時間40分かけて200℃まで昇温した。引き続き、1時間25分かけて230℃に昇温すると同時に0.07×103Paまで減圧し、230℃、0.07×103Paにて6時間重合を行なった。
【0186】
得られた脂肪族ポリエステルを1H−NMRにより分析した結果、得られたポリマーの組成は、乳酸単位2.1モル%、1,4−ブタンジオール単位48.9モル%、コハク酸単位49.0モル%、数平均分子量Mnは62500であった。
また、得られた脂肪族ポリエステルの融点を測定したところ、110℃であった。
【0187】
[実施例1〜5]
製造例1で得られた生分解性樹脂である脂肪族ポリエステルに、改質剤であるカルボジイミド化合物と、核剤(気泡調整剤)であるタルク(松村産業(株)製、ハイフィラー#12;平均粒径3〜4μm)とを、表1に示した配合にて、190℃において二軸混練機にて溶融混練した後、ストランド状に押出し、次いでこのストランドを切断して、直径約1.7mm、長さ約1.9mm、1個当り約3mgの基材樹脂粒子を得た(基材樹脂粒子作製工程)。
【0188】
なお、実施例1〜3ではカルボジイミド化合物としてカルボジライトHMC−8CA(日清紡製)を用い、実施例4ではカルボジイミド化合物としてカルボジライトLA−1(日清紡製)を用い、実施例5ではカルボジイミド化合物としてスタバックゾールP(ラインケミー社製)を用いた。また、表1において、改質剤の欄ではカッコ「〔〕」内の数値が、カルボジイミド化合物の使用量を表わす。
【0189】
得られた基材樹脂粒子1kgと、純水3kgと、融着防止剤である第3リン酸カルシウム20gと、分散助剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6gとを、内容積5Lの撹拌器付きオートクレーブに入れ、撹拌しながら表1に示す発泡温度まで昇温し、ブタン300gを圧入して、15分間保持した(熱水加熱処理工程)。
【0190】
続いて、オートクレーブ内に窒素を導入してオートクレーブ内の圧力を維持しながら、オートクレーブの一端を開放して内容物を大気圧中に放出し、発泡粒子を得た(発泡工程)。
得られた発泡粒子の嵩密度(g/cm3)、酸価(AV値:μeq/g)、及び還元粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0191】
次いで、得られた発泡粒子を250mm×300mm×50mmの金型に充填し、表1に示す成形温度となるようにスチームで加熱して成形した。得られた型内発泡成形体は大気圧下40℃で48時間養生した。
得られた型内発泡成形体の酸価(AV値:μeq/g))、還元粘度及び嵩密度(g/cm3)を測定した。結果を表1に示す。
【0192】
さらに、上記の型内発泡成形体について、以下のようにして耐加水分解性の評価を行なった。即ち、耐加水分解性評価は、得られた型内発泡成形体を50℃、90%RHの状態に4週間保持した。真空乾燥後、それらの酸価、還元粘度の初期値に対する保持率で評価した。表1では、耐加水分解性が良好なものを「○」で示し、不良なものを「×」で示した。結果を、還元粘度の保持率と合わせて表1にまとめた。
【0193】
[比較例1]
製造例1で得られた生分解性樹脂である脂肪族ポリエステルと、核剤(気泡調整剤)であるタルク(松村産業(株)製、ハイフィラー#12)とを表1に示した配合で用いて基材樹脂粒子を作製した他は、上記の[実施例1〜5]と同様にして、発泡粒子を製造し、嵩密度(g/cm3)、酸価(AV値:μeq/g)、還元粘度を測定した。
また、得られた発泡粒子を用いて型内発泡成形体を製造し、その酸価(AV値:μeq/g)、還元粘度及び嵩密度(g/cm3)を測定し、耐加水分解性評価を行なった。
結果を表1に示す。
【0194】
【表1】

【0195】
[まとめ]
表1から分かるように、改質剤を作用させることにより酸価の低下と分子量の増加が確認でき成形体としたときの耐加水分解性が著しく改善されたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明は、産業上の任意の分野に適用することができ、特に、食品容器、緩衝剤、魚箱、保温又は保冷箱等に用いて好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂100重量部に対し、改質剤0.01〜10重量部及び核剤0.001〜10重量部を含有してなる
ことを特徴とする、生分解性樹脂発泡粒子。
【請求項2】
該生分解性樹脂が、ジカルボン酸単位及びジオール単位を構成単位とする
ことを特徴とする、請求項1記載の生分解性樹脂発泡粒子。
【請求項3】
該核剤がタルクであり、
該核剤の平均粒径が0.1〜50μmである
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の生分解性樹脂発泡粒子。
【請求項4】
該改質剤が、多官能又は単官能の、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシド化合物及びオキサゾリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性樹脂発泡粒子。
【請求項5】
生分解性樹脂、改質剤及び核剤を含有する基材樹脂粒子を、熱水中、加熱して還元粘度1.5以上とする工程と、
前記の基材樹脂粒子を発泡させる工程とを備える
ことを特徴とする、生分解性樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生分解性樹脂発泡粒子を型内で加熱成形してなる
ことを特徴とする、型内発泡成形体。

【公開番号】特開2007−56080(P2007−56080A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240430(P2005−240430)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】