説明

生分解性高吸収性ポリマーヒドロゲルおよびその製造法

本発明は、(i)カルボキシメチルセルロースナトリウム塩およびヒドロキシエチルセルロースの合計3%の水溶液を、酸触媒の存在下に、5%のカルボジイミドで架橋させる工程;(ii)得られたゲルを、極性有機溶媒中で膨潤させることによって、少なくとも1回洗浄する工程;および、(iii)セルロースに対する非溶剤において、転相によってゲルを乾燥させる工程を含んで成る高吸収性ポリマーヒドロゲルの製造法に関する。本発明は、該方法によって得られる高吸収性ヒドロゲル、およびその使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性高吸収性ポリマーヒドロゲル、およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーヒドロゲルは、固体ポリマー格子および格子間水性相から成る物質である。特に、その全重量の95%以上の水を吸収することができるヒドロゲルは、「高吸収性」と定義される。そのような物質のあるものは、乾燥ポリマー1g当たり1L以上もの水を吸収することができる。
【0003】
ヒドロゲル格子を構成する高分子鎖間の架橋、即ち、物理的または化学的結合は、ポリマー−液体系の構造的一体性を保証し、一方で、ポリマーの完全な可溶化を妨げ、他方で、分子網目内への水性相の保持を可能にする。
【0004】
現在入手可能な高吸収性ヒドロゲルは、それらの顕著な吸収特性だけでなく、おそらく高含水量による、それらの生体適合性、および、特に、外部刺激に関してその吸収能力を調節する可能性を特徴とする。従って、そのようなヒドロゲルは、例えば、種々の工業用途用のセンサーまたはアクチュテータの製造における、知的材料として使用しうる。個人衛生吸収性製品分野における吸収性コアとしての従来の用途と共に、より最近の革新的用途が含まれ、そのような用途は、例えば、生物医学分野において、制御放出薬剤、人工筋肉、センサーなどの開発、および、農業および園芸分野において、例えば、乾燥地土壌における水および栄養分の制御放出装置である。
【0005】
しかし、現在入手可能な高吸収性ヒドロゲルの大部分は、アクリル系誘導体を基剤とする製品であり、従って、生分解性でない。
【0006】
近年、環境保護問題への関心が高まっているので、従来の高吸収性ポリアクリル系誘導体と同様の特性を有する生分解性ポリマー基剤高吸収性材料の開発に大きな関心が集まっている。
【0007】
高吸収性ヒドロゲルを得るために使用される生分解性ポリマーの例は、デンプンおよびセルロース誘導体である。
【0008】
1990年にAnbergenおよびOpperman[1]は、専らセルロース誘導体から構成される高吸収性材料の合成法を提示した。特に、彼らは、塩基性溶液中でジビニルスルホンにより化学的に架橋したヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)を使用している。しかし、そのような材料の吸収能力は、現在市販されているアクリル基剤高吸収性材料と比較して、特に高くはない。
【0009】
1996年のEspositoおよび共同研究者[2]は、AnbergenおよびOppermanによって提示された合成法から出発することにより、主に材料の物理的特性に作用することによってゲルの吸収能力を増加させる方法を開発した。基本概念は、毛管現象によって水の吸収および保持を促進するために、ポリマー構造に微孔質を誘発することである。該微孔質は、ポリマーに対する非溶剤中で転相によって行われる乾燥工程の間に誘発され、このようにして得た材料の吸収能力を、空気乾燥によって得た材料の吸収能力と比較している。転相によって乾燥させたゲルの、蒸留水に対する吸収能力は、予想どおり、空気乾燥ゲルよりかなり優れていた。
【0010】
CMCNaは、セルロースに対して二官能価である全ての試薬によって化学的に架橋しうる:AnbergenおよびOppermanによる合成法において使用されているジビニルスルホンの他、エピクロルヒドリン、ホルムアルデヒドおよび種々のジエポキシドの使用も既知であるが、全ての化合物は、未反応状態において高毒性である[3]。
【0011】
それらに代わって、常用されていない架橋剤の中である種のカルボジイミドが知られている。特に、塩形または非塩形カルボキシメチルセルロース(CMC)を架橋するためにカルボジイミドを使用することが開示されている[4]。カルボジイミドは、それ自体は結合に参加しないが、それ自体極めて低い毒性の尿素誘導体に単に転換されて、セルロース高分子間のエステル結合の形成を誘発する[5]。
【0012】
カルボジイミドと、種々の多糖のカルボン酸基との間の複雑な反応機構のより詳しい説明については、NakajimaおよびIkadaによる研究[6]を参照できる。
【0013】
実際には、水溶液中でのCMCNaのカルボジイミド仲介架橋によって得られる生成物は、使用された特定のカルボジイミドに依存して、程度の差はあるがより高い低い粘度を有する「ゼラチン」の外観を有する[4、7]。さらに、水中でのその吸収能力は比較的低く、乾燥状態のポリマーの重量の約50倍である。カルボキシメチルセルロースおよび他の多糖、特にヒアルロン酸に基づき、フィルムの形態で生成され、組織間の術後癒着の予防用の充填剤として医療に一般に使用されている、前記のタイプのゲルは、現在、市販されている[7]。架橋し、次に空気乾燥した後に得られるゼラチン状溶液の単純流延によって、フィルムが得られる。
【0014】
上記に照らして、現在入手可能なヒドロゲルは、生分解性であるという利点を有するにもかかわらず、その低い膨潤能力、および膨潤状態における劣った機械的特性の両方により、従来の高吸収性ポリアクリル系誘導体と競争することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、現在入手可能なポリアクリル系ヒドロゲルに匹敵する、最適吸収能力および膨潤状態における最適機械的特性を有し、同時に、生分解性であり、環境および人に非毒性である、高吸収性ヒドロゲルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、請求の範囲において規定されている高吸収性ヒドロゲルの製造法によって、かつ、該方法を使用して得られる高吸収性ヒドロゲルによって、達成できる。
【0017】
本発明の製造法は、第一工程において、酸触媒の存在下に、架橋剤としてのカルボジイミドを使用して、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの水溶液を架橋することを含み、該水溶液におけるナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースの全濃度は、水の重量に対して少なくとも3wt%であり、該水溶液におけるカルボジイミド濃度は、水の重量に対して少なくとも5wt%である。該第一工程は、好ましくは、室温および大気圧において行われる。
【0018】
第二工程において、得られたゲルを蒸留水での洗浄によって精製し、第三工程において、セルロースに対する非溶剤において転相によって乾燥させる。
【0019】
従って、ポリマー格子を形成するために使用される先駆物質は、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMCNa)およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)である。該先駆物質は、カルボジイミドによって架橋される。CMCNa+HEC、およびカルボジイミドの前記濃度は最適濃度であり、なぜなら、それより低い濃度は、架橋を妨げるか、または極めて劣った機械的特性を有するゲルの形成を生じることが実験的に示されているからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の方法の架橋工程によって得られるヒドロゲルは、生分解性化学ゲルである。ゲルは、網状構造を構成する高分子に属する反応性基間に直接形成された強い共有結合によるか、またはいくつかのポリマー鎖を結合させることができる架橋剤として設計された多官能性分子によって、網状構造が安定化されている化学物質として定義される。従って、化学ゲルは、高分子間の二次結合、例えば、ファン・デア・ワースス相互作用、イオン相互作用または単純な物理的絡み合いによって架橋が生じる物理ゲルと比較して、優れた化学的および機械的安定性を特徴とする。
【0021】
一般に、格子の吸収能力(ポリマーの親水性度、および容単位積当たりの架橋数に主として依存する)は、高分子鎖に結合したイオン基またはイオン化可能基の存在によって特に増加し;この場合、同一荷電間の静電反発力の作用によるポリマー網状構造の増大、およびゲルの内部と外部の間に形成された荷電不均衡の両方によって、吸収が促進され、その結果、「ドナン効果」によって、より多くの水が吸収される。
【0022】
本発明の方法を使用して得られる高吸収性ヒドロゲルにおいて、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩は、いわゆる高分子電解質種である。実際に、カルボキシル官能基の存在は、該基が塩基性加水分解を受けた場合に、陰イオンの形成を可能にする。
【0023】
ヒドロキシエチルセルロースは、ポリマー網状構造を安定化するために使用される。実際に、カルボキシメチルセルロースだけでは、分子間架橋ではなく分子内架橋を形成する傾向があり、それによって、弱いゲル、即ち、劣った機械的特性を有するゲルの形成を生じる。これは、鎖に結合した荷電基によって起こり、該荷電基は、静電反発力によって分子間接触を妨げる。ヒドロキシエチルセルロースは、そのヒドロキシル基の反応性により、分子間結合を形成する傾向によって、ポリマーの三次元網状構造を安定化する。
【0024】
カルボジイミドは架橋剤として使用される。カルボジイドは、セルロース分子に直接結合しない点で、通常の架橋剤ではない。全体的な反応スキームは、2段階に要約しうる。第一段階において、酸性環境において、カルボジイミドが、2つのカルボキシメチルセルロースのカルボキシル基間に、分子間または分子内酸無水物の形成を誘発し、それ自体は、尿素誘導体に転換される。第二段階において、酸無水物がヒドロキシル基と反応し、それによって、セルロース鎖間の架橋として作用するエステル結合を形成する。反応の副生成物として得られる尿素誘導体は、極めて低いレベルではあるが細胞毒性を有する点に注意することが重要である。さらに、前記の点から、カルボジイミドがセルロース架橋剤として作用するために、溶液のpHが酸性、好ましくは3.5〜4.5であることが不可欠なことが明らかである。従って、好適な酸触媒の存在下に、架橋反応を行うことが必須である。いずれかの水性酸溶液、例えば、水性クエン酸溶液を、酸触媒として使用しうる。
次に、架橋反応後に得られたヒドロゲルを洗浄し、乾燥させる。
【0025】
洗浄工程により、あらゆる不純物、未反応化合物、およびカルボジイミド加水分解によって生成された尿素を除去することができる。洗浄は、ゲルを極性有機溶媒、例えばメタノールまたは水に入れることによって行われ、それによって、ゲルが膨潤し、ポリマー網状構造に組み込まれていない全ての物質が放出される。水は、好ましい極性有機溶媒であり、蒸留水がさらに好ましい。最大限のゲル膨潤を得るために、この工程に必要とされる水の量は、ゲル自体の初期量の約10〜20倍である。工業規模においてこの工程で使用される多量の水、ならびに関連する廃物処理および/または再生利用を考慮すれば、本発明に使用されるような非毒性先駆物質を合成工程において使用することの重要性が明らかである。
【0026】
洗浄工程は、使用される極性有機溶媒を必要に応じて変更して、数回繰り返してよい。例えば、メタノールを有機洗浄溶媒として使用し、次に、蒸留水を使用してもよい。
【0027】
次の乾燥工程は、セルロースに対する非溶剤中、転相法を使用して行われる。セルロースに対する非溶剤は、芳香族溶剤、例えばアセトンである。この方法は、毛管現象によってゲルの吸収能力を向上させる微孔質最終構造を得ることを可能にする。さらに、多孔性が連続または開放である場合、即ち、微細孔が相互に連絡している場合、ゲルの吸収/脱離速度も向上する。非溶剤中への完全膨潤ヒドロゲルの浸漬は、それが、白色微粒の形態のガラス質固形物として沈殿するまで、水の排除を伴う転相を生じる。短時間で乾燥ゲルを得るために、非溶剤での濯ぎが必要な場合もある。
【0028】
工程の最後に、あらゆる残留微量非溶剤を除去するために、空気中または炉中で、さらなる乾燥が有用であると考えられる。
【0029】
カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースを含有する初期ポリマー溶液に、分子量800〜1,000,000のポリエチレングリコール(PEG)を添加することによって、さらに向上した吸収特性を有するヒドロゲルを前記の方法によって得ることができる。PEG高分子は、ポリマー網状構造内で分子スペーサとして機能し、それによってその吸収能力を増加させる。
【0030】
本発明の方法を使用して得られるヒドロゲルは、消費製品分野、例えば、個人衛生用の吸収性製品(例えば、赤ちゃん用オムツ、生理用ナプキンなど)および農業(例えば、水および栄養分の制御放出装置)において現在使用されているポリアクリル系ヒドロゲルと比較して、顕著な利点を有する。そのような利点は、生分解性、および製造における非毒性先駆物質の使用に基本的に関係している。本発明の対象である高吸収性ヒドロゲルの生体適合性は、さらに、生物医学分野におけるその適用も可能にする。使用されるカルボキシメチルセルロースの量に関係し、かつゲル構造における微孔質の誘発によって向上される、そのような材料の吸収能力は、ポリアクリル系ゲルの吸収能力に匹敵し、かつ、前記の全ての用途に充分な機械的特性を維持する。
【0031】
従って、水または水溶液を吸収するように適合させ、かつ/または、水および/または水溶液と接触した際に再膨潤するように適合させた製品における吸収材料としての、本発明のポリマーヒドロゲルの使用も、本発明の範囲に含まれる。
【0032】
特に、本発明の高吸収性ヒドロゲルは、下記の分野における吸収材料としての用途を有する:
栄養補助食品分野(例えば、増量剤であって、限定された時間にわたって胃において持続する満腹感を与える低カロリー食用の栄養補助食品における、または、水および低分子量物質栄養補助食品、例えば、無機塩類、ビタミンにおける、または、乾燥または膨潤形態の飲料に含有される、増量剤);
農業用製品分野(例えば、特に、乾燥、砂漠地域における栽培、および頻繁な灌漑作業を行えないあらゆる場合における、水および/または栄養分および/または植物化学物質の制御放出用の装置;植物の根を囲む領域の土壌に、乾燥形態で混合されるそのような製品は、灌漑の間に水を吸収し、水を保持し、栽培に有用な任意の栄養分および植物化学物質と共に、その水をゆっくり放出することができる);
個人衛生吸収性製品分野(例えば、赤ちゃんのオムツ、生理用ナプキンなどにおけるコア吸収材);
玩具および道具分野(例えば、水および水溶液に接触すると、大きさが顕著に変化する製品);および、最後に、
生物医学分野(例えば、生物医学的および/または医学的装置、例えば、潰瘍および/または火傷のような高滲出性創傷の治療用の吸収性包帯)。
【0033】
本発明の方法を使用して得られる高吸収性ヒドロゲルを、吸収性材料として含有する前記の製品も、本発明の範囲に含まれる。
【0034】
以下の実施例は、本発明を例示することを目的とし、本発明の範囲を限定するものと決して見なすべきでない。
【実施例】
【0035】
材料および方法
使用した全ての材料は、Aldrich Italiaから供給され、どのような改質も加えずに使用した。
【0036】
一般的合成用の通常の実験用ガラス器具および換気フードおよび化学作業台に加えて、特性決定に使用した装置は、JEOL JSM-6500F 走査電子顕微鏡(SEM)、Aartorius 10−5g精密はかり、Isco ミキサーおよびARES型レオメータを含む。
【0037】
セルロースゲルは、水溶液中で、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)を架橋剤として使用して、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)とヒドロキシエチルセルロース(HEC)とを架橋させることにより調製した。
【0038】
ゲルの組成は、出発溶液中に存在する試薬の公称量 (nominal amount) によって与えられる。該組成を規定するために使用されるパラメータは、以下の通りである:
(i) 重量によるポリマーの濃度(%) = 溶液中の全ポリマーの質量(CMCNa+HEC)(g) x 100/水の質量(g);
(ii) CMCNa/HECの重量比 = 溶液中のCMCNaの質量(g)/溶液中のHECの質量(g);
(iii) 重量による架橋剤(カルボジイミド)の濃度(%) = 溶液中のWSCの質量(g) x 100/水の質量(g)。
【0039】
熟練した実験者により、3%未満のポリマー濃度、および5%未満のカルボジイミド濃度は、架橋を可能にしないか、または極めて劣った機械的特性を有するゲルを生じることが示されている。
【0040】
CMCNaを高分子電解質種として使用した場合、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩/ヒドロキシエチルセルロース(CMCNa/HEC)の重量比を適切に調節することによって、所望の吸収能力が得られる。CMCNa/HECの重量比が0/1〜5/1、好ましくは1/1〜3/1の範囲であれば、あらゆる場合に、最適吸収能力を有するヒドロゲルを得られることが観察された。
【0041】
ポリマーのwt%およびCMCNa/HECの重量比が相互に異なる3種類のヒドロゲルの合成に関する3つの実施例を、以下に示す。それに対して、カルボジイミドの重量濃度は、3つの全てのヒドロゲルに関して同じであり、5%である。第一ヒドロゲル(ゲルA)は、3%のポリマーを含有し、CMCNa/HEC比は1/1であり;第二ヒドロゲル(ゲルB)は、3%のポリマーを含有し、CMCNa/HEC比は3/1であり;第三ヒドロゲル(ゲルC)は、5%のポリマーを含有し、CMCNa/HEC比は1/1である。従って、ゲルAおよびCはポリマーの量において相互に異なり、ゲルAおよびBは、CMCNa/HEC比において異なる。
【0042】
ゲルAの製造
0.6gのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)および0.6gのヒドロキシエチルセルロース(HEC)を、40mLの蒸留水に添加することによって、ポリマー溶液を調製した。その調製物を、溶液が完全に均質化するまで磁気撹拌機で混合した。次に、2gの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)を、ポリマー溶液に添加し、混合物を1時間にわたって撹拌した。次に、このようにして得た混合物に、最後に、触媒、即ち、クエン酸の1wt%溶液1.6mLを添加した。触媒が均一に混合されるように、溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。
【0043】
撹拌を停止し、ゲルの形成を待つ。24時間後、溶液がゲル化し、得られたゲルを多量の蒸留水に入れて、あらゆる不純物および未反応化合物を除去した。蒸留水を24時間ごとに交換すると、ゲルが5日後に最大再膨潤に達した。
【0044】
次に、吸収能力に関する被験材料の有効性を後に評価しうるように、一旦ゲルを調製し精製したら、ゲルを乾燥させる必要がある。
【0045】
次に、ゲルをアセトン中で乾燥させた:平衡状態に達するまで、量の漸減が観察され、該平衡状態は、収縮する試料からの水の放出後に形成されたアセトン-水混合物の濃度、アセトン中約36%、に相当する。平衡状態に達した際に、アセトン-水混合物を除去し、新しい純アセトンと入れ換える。試料がその中に保持している全ての水を完全に除去して、容器の下部において白色ガラス質粉末になるまで、その工程を繰り返した。次に、粉末を40℃で炉に数分間入れ、それによって残留する微量のアセトンを除去した。
【0046】
このようにして得られたキセロゲル(乾燥状態のゲル)に、ゲルAとラベルした。
【0047】
ゲルBの製造
0.9gのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)および0.3gのヒドロキシエチルセルロース(HEC)を、40mLの蒸留水に添加することによって、ポリマー溶液を調製した。その混合物を、溶液が完全に均質化するまで磁気撹拌機を用いて撹拌した。次に、2gの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)を、ポリマー溶液に添加し、混合物を1時間にわたって撹拌した。このようにして得た混合物に、最後に、1wt%のクエン酸溶液1.6mLを触媒として添加した。触媒が均一に混合されるように、溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。
【0048】
撹拌を停止し、ゲルの形成を待つ。24時間後、溶液が流動しなくなり、得られたゲルを多量の蒸留水に入れて、あらゆる不純物および未反応先駆物質を除去した。蒸留水を24時間ごとに交換すると、ゲルが5日後に最大再膨潤に達した。この時点で、精製ゲルをアセトン中で乾燥させた:平衡状態に達するまで、量の漸減が観察され、該平衡状態は、収縮する試料からの水の放出後に形成されたアセトン-水混合物の濃度、アセトン中約36%、に相当する。平衡状態に達した際に、アセトン-水混合物を除去し、新しい純アセトンと入れ換える。試料がその中に保持している全ての水を完全に除去して、容器の下部において白色ガラス質粉末になるまで、その工程を繰り返した。次に、粉末を40℃で炉に数分間入れ、それによって残留する微量のアセトンを除去した。
【0049】
このようにして得られたキセロゲルに、ゲルBとラベルした。
【0050】
ゲルCの製造
1gのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)および1gのヒドロキシエチルセルロース(HEC)を、40mLの蒸留水に添加することによって、ポリマー溶液を調製した。その調製物を、溶液が完全に均質化するまで磁気撹拌機で混合した。次に、2gの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)を、ポリマー溶液に添加し、混合物を1時間にわたって撹拌した。このようにして得た混合物に、最後に、1wt%のクエン酸溶液1.6mLを触媒として添加した。触媒が均一に混合されるように、溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。
【0051】
撹拌を停止し、ゲルの形成を待つ。24時間後、溶液が完全にゲル化し、得られたゲルを多量の蒸留水に入れて、あらゆる不純物および未反応化合物を除去した。蒸留水を24時間ごとに交換すると、ゲルが5日後に最大再膨潤に達した。この時点で、精製ゲルをアセトン中で乾燥させた:平衡状態に達するまで、量の漸減が観察され、該平衡状態は、収縮する試料からの水の放出後に形成されたアセトン-水混合物の濃度、アセトン中約36%、に相当する。平衡状態に達した際に、アセトン-水混合物を除去し、新しい純アセトンと入れ換える。試料がその中に保持している全ての水を完全に除去して、容器の下部において白色ガラス質粉末になるまで、その工程を繰り返した。次に、粉末を40℃で炉に数分間入れ、それによって残留する微量のアセトンを除去した。
【0052】
このようにして得られたキセロゲルに、ゲルCとラベルした。
【0053】
吸収測定
ヒドロゲルA、BおよびCの吸収能力を試験するために、これらを蒸留水中での吸収測定に付した。行った吸収測定は、乾燥工程の最後に得た乾燥試料を蒸留水に入れて、平衡状態に達するまで該試料を再膨潤させることから基本的に成る。
【0054】
ゲルの吸収能力は、膨潤率(SR)、即ち、膨潤ゲル重量/乾燥ゲル重量の比に基づいて評価される。
【0055】
実験誤差の影響を最小限にするために、各試験を、各ゲルの3つの試料において行い、次に、3試料の平均値を実効値と考えることが好ましい。
【0056】
互いに異なる重さおよび寸法をそれぞれ有する3種類の各被験ゲルから、3つの乾燥試料を採取した。重さを記録した後、試料を室温で多量の蒸留水中で膨潤させた。24時間後に平衡に達した際に、試料を再び秤量して、膨潤率を求めた。
【0057】
機械測定
膨潤状態におけるゲルの機械的特性を、標準ゴム弾性理論に従って一軸圧縮試験、および動的機械測定の両方によって求められる、それらの剪断弾性率に関して評価した。
【0058】
両方の種類の試験を行うために、下記に説明するように、目的とするゲルを薄い円板の形状で架橋させ、圧縮試験については1〜2mmの厚さにし、動的機械試験については7〜8mmの厚さにした。
【0059】
全ての試験を、平行板配置で粘度計を使用し、25℃で行った。さらに、各種類のゲルについて測定を5回繰り返し、それによって実験測定から生じる不確かさを減少させた。
【0060】
一軸圧縮試験
1〜2mmの厚さの薄い膨潤ゲル円板を、装置の平行板の間に注意深く配置した。膨潤状態であるので、ゲルは、圧縮応力に付した際に、水の一部を放出する傾向があるので、円板が薄いことが重要である:実際に、このようにして、ポリマー網状構造から流出する傾向にある水は、ゲルの上面および下面がレオメータ板と接しているので、ゲルの細い側面からしか放出されないと考えられ、薄くすることによって、その現象を無視しうる。
【0061】
装置の板の間の初期間隔を試料の厚さに対して調節した後に、測定をおこない、上板に0.005mm/秒の定速度を与えた。試験中、板の間の間隔の関数として、法線力の傾向を記録した。ゴム弾性論により、一軸圧縮試験から剪断弾性率Gを下記式(8)に従って算出することができる:
【数1】

[式中、
σは、一軸圧縮応力であり;
α=L/Liは、変形率、または、L(圧縮に付した試料の厚さ)とLi(試料自体の初期の厚さ)との比である]。
α=L/Liの関数としてσのグラフを作成することによって、直線が得られ、その勾配はGを表わす。
【0062】
従って、α=L/Liおよびσの値を各試験に関して算出し(後者は、法線力と試料断面積との比として算出)、関連する結果をグラフにプロットした。
【0063】
動的機械試験
動的機械試験において、レオメータ上板によって発生された流れの変化により、板自体の表面を適切に改質しなければ、板の間でゲルが滑る。
【0064】
滑りは、両面接着テープを使用して、3mmの厚さの小さいハニカム形円板を両板に適用することによって防止した。板を加圧した際に、動的機械試験に使用される7〜8mm厚のゲル円板は、それらの厚さの一部が上および下の両方からハニカム構造物によって貫通され、それによって、ゲルは、ねじり変形に付すのに充分に固定される。
【0065】
動的機械試験を行う前に、試験を歪み掃引モード(strain-sweep mode)で行い、これにより、変化する変形でのG'弾性率およびG"弾性率の数値の記録が可能になり、材料の線形粘弾性の領域、従って、次の動的機械試験に適用される変形値を同定しうる。
【0066】
測定は、0.1〜100s−1の間で変化する振動数で0.02に等しい変形において行った。結果を、貯蔵弾性率G'、損失弾性率G"、および損失係数tgδ(G"/G')に関して記録した。
【0067】
結果
種々のタイプの被験ヒドロゲルについて、蒸留水吸収測定の結果を表1に示す。出発溶液におけるポリマーの初期濃度、および、その値が同じ場合は、CMCNa/HECの重量比によって、膨潤率が影響を受けることが観察される(CMCNaは高分子電解質種である)。
【表1】

【0068】
図1および図2は、それぞれ、ゲルAおよびCの試料について、一軸圧縮試験から得た結果を示す。これから算出されたゲルAのG弾性率は2500Paであり、ゲルCは、少し高い弾性率3000Paを有する。
【0069】
図3および図4は、それぞれ、同じ試料AおよびCについて、動的機械試験から得た結果を示す。両ゲルについて、G'弾性率は、振動数に伴ってほとんど変化せず、より高いポリマー濃度を有しているゲルCについて、極僅かに高い:実際に、G'は、ゲルAについて2.2 x 103 Paであり、ゲルCについて2.5 x 103 Paである。さらに、両試料について、G"弾性率は、振動数に伴ってより顕著に変化し、その値は、102Pa付近で変動する。
【0070】
参考文献一覧
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【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】ゲルAの試料について、一軸圧縮試験から得た結果を示すグラフである。
【図2】ゲルCの試料について、一軸圧縮試験から得た結果を示すグラフである。
【図3】試料Aについて、動的機械試験から得た結果を示すグラフである。
【図4】試料Cについて、動的機械試験から得た結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMCNa)およびヒドロキシエチルセルロース(HEC)の水溶液を、酸触媒の存在下に、架橋剤としてのカルボジイミドで架橋させる工程であって、該水溶液におけるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩およびヒドロキシエチルセルロースの全濃度が、水の重量に対して少なくとも3wt%であり、該水溶液におけるカルボジイミドの濃度が、水の重量に対して少なくとも5wt%である工程;
(ii) 得られたゲルを、極性有機溶媒中で膨潤させることによって、少なくとも1回洗浄する工程;および
(iii) セルロースに対する非溶剤中で、転相によりゲルを乾燥させる工程
を含んで成る、高吸収性ポリマーヒドロゲルの製造法。
【請求項2】
該水溶液のpHが3.5〜4.5である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩およびヒドロキシエチルセルロースを、分子スペーサとしてのポリアルキレン-グリコールの存在下に架橋させる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該ポリアルキレン-グリコールが、分子量800〜1,000,000のポリエチレングリコールである請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
該水溶液における、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩対ヒドロキシエチルセルロースの重量比が、0/1〜5/1、好ましくは1/1〜3/1である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
カルボジイミドが、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
極性有機溶媒が、メタノールまたは水、好ましくは蒸留水である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ゲルを、乾燥前に水で洗浄する請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
セルロースに対する非溶剤がアセトンである請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
酸触媒がクエン酸の水溶液である請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法よって得られる高吸収性ポリマーヒドロゲル。
【請求項12】
請求項11に記載の高吸収性ポリマーヒドロゲルの、下記における吸収材料としての使用:
水および/または水溶液を吸収でき、かつ/または水または水溶液と接触した際に膨潤できる製品、特に、栄養補助食品;農業において使用される、水および/または栄養分および/または植物化学物質の制御放出装置;個人衛生用の吸収性製品;水または水溶液と接触した際に、大きさを有意に変化させるように適合された玩具および道具;生物医学装置。
【請求項13】
請求項11に記載のポリマーヒドロゲルを吸収材料として含んで成る製品であって、個人衛生用吸収性製品;栄養補助食品;農業において特に使用される水および/または栄養分および/または植物化学物質の制御放出装置;水または水溶液と接触した際に、大きさを有意に変化させるように適合された玩具および道具;生物医学装置、特に吸収性包帯から成る群から選択される製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−533215(P2008−533215A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548949(P2007−548949)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054412
【国際公開番号】WO2006/070337
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507220877)
【氏名又は名称原語表記】Luigi AMBROSIO
【出願人】(507220888)
【氏名又は名称原語表記】Luigi NICOLAIS
【出願人】(507220866)
【氏名又は名称原語表記】Alessandro SANNINO
【Fターム(参考)】