説明

生物材料およびその使用

【課題】細胞のサイトカイン産生を刺激する方法の提供。
【解決手段】喘息、鼻炎/枯草熱、湿疹およびアナフィラキシーなどの病態であって潜在的なTh2細胞過剰反応性に関係するアレルギー性疾患またはガン病態の予防および治療において、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に由来する10kDaポリペプチドまたは機能的に等価な分子、またはそのフラグメントの使用に関係するもので、免疫応答メディエーター、たとえばサイトカインのインビトロまたはインビボでの産生を刺激する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガン、アレルギー性疾患または免疫亢進病態、とりわけ喘息、および/またはTヘルパー リンパ球2(Th2)−型免疫応答に代表される病態、および/または好
酸球増加症(eosinophilia)に関係する病態の治療において、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)または関係する原核細胞に由来す
るおよそ10kDa ポリペプチド(またはそれをコードする核酸分子) または機能的に等価な分子またはそのフラグメントの使用、ならびに免疫応答メディエーター、たとえばサイトカインのインビトロまたはインビボでの産生を刺激する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫は、「自己」寛容の喪失を反映し、正常細胞または組織の不適切な破壊に至る。多数の病態で自己抗体が見出されるが、疾患の原因というよりも効果を反映するかも知れない。しかしながら、ある疾患では自己抗体が、最初の主要かつ唯一の検出可能な異常であろう。このことに関係している分子の一つの集団は、高度に免疫原性であるシャペロニン(chaperonin)である。シャペロニンは、分子シャペロン(chaperones)と呼ばれるタン白質のグループに属する。分子シャペロンは、ネイティブでないタン白質に結合し、このタン白質がATP−依存性の触媒プロセスで、機能的タン白質に要求される正確な3次元形態に折りたたまれるように、補助する。
【0003】
シャペロニンは単球(monocytes)、マクロファージ、線維芽細胞様の細胞、おそらく他のタイプの細胞およびT細胞を含め、多くのレベルで免疫(器官)系を同時に刺激すると信じられている。哺乳類における免疫防御は、「自然」および「適応」の防御に分けられる。ファゴサイト(phagocytes)、ナチュラルキラー細胞および補体といった既に適所にある細胞は、自然免疫であると見なされる。抗原投与(challenge)の際には、適応免疫がBおよび Tリンパ球の形態で活性化される。シャペロ
ニンは、自然防御メカニズム、具体的にはファゴサイトに直接的に作用することが知られている。シャペロニンは、強力な適応免疫の応答を刺激する。すなわち抗体産生、ならびにある場合には防御的であるTリンパ球の刺激である。特にシャペロニンは、宿主防御に重要と考えられているサイトカイン分泌を誘導する。しかし、ある場合にはシャペロニンの存在が宿主に損害を与えるとも信じられている。
【0004】
Ragnoら(1996) Clin Exp Immunol 103:384−390は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に由来する10
−kDヒートショックタン白質(hsp10)の水溶液が、ラットにおけるアジュバント誘導の関節炎(AA)の発病および重篤化を遅延することを示した。AAは、自己免疫疾患のモデルであり、Th−1細胞の潜在的な過剰反応性に関係している。hsp10が、自己免疫疾患(Th1過剰反応)とは対照的に、Th−2細胞の潜在的な過剰反応性に結びついたアレルギー性疾患、例えば喘息、鼻炎/枯草熱、湿疹、アナフィラキシーなどの治療において有用性があることは何ら示唆されていない。
【0005】
自己免疫疾患におけるシャペロニンの役割は、議論が分れるところである。シャペロニンを含有する生物での感染/免疫は、普遍的であり、健康な人々は、 自己シャペロニン
に対してT細胞応答を示すが、シャペロニン特異的抗体の産生を含め、古典的な自己免疫疾患は、極めて稀である。シャペロニンに対する免疫反応の存在は、偶発的であり重要ではないかも知れない。
【0006】
しかしながら分子的模倣の理論は、自己免疫疾患におけるシャペロニンの関わりを示唆
し、微生物および哺乳類起源のシャペロニン間で、アミノ酸配列の高いレベルの保存性に依拠する。この理論は、広範囲の微生物との感染の間に、微生物および哺乳類との間で共有されるシャペロニンエピトープは、T リンパ球を刺激することを提案する。 この理論によれば、共有されたシャペロニンエピトープによる高レベルのシャペロニン提示が、自己シャペロニンに対する寛容を破壊しおよび自己免疫疾患が発症する。
【0007】
腫瘍から得られるシャペロニンは、これらの腫瘍に対する壊死的効果となることが判った。これは、腫瘍の抗原が免疫認識を増強することにより起こることが示唆されているが、その機構は知られていない。よって、シャペロニンは、細菌感染およびガンに対し防御的な適応免疫を誘導するようである。
【0008】
アレルギー反応、たとえば喘息では、均衡的に不適切である免疫応答か、または対象を誤った免疫応答が関係する。たとえば喘息の蔓延は増大しているが、あらゆるケースを治療する有効な治療法はまだ見出されていない。現在の治療は、往々に免疫抑制のグルココルチコステロイド(glucocorticosteroids)、ベータ・アゴニスト、クロモグリケート(cromoglycate)、ロイコトリエン調節物質(leukotriene modifiers)など、多数の副作用を有するものを使用する。
【0009】
そのようなアレルギー反応においては、IgE レベルが高くなり、またT ヘルパー
リンパ球−2 (Th2) 免疫応答が Thl応答を圧倒し、結果的に炎症性の応答とな
る。Thl 応答は、主に微生物感染に対する防御であると考えられ、サイトカイン、具
体的にはインターロイキン−12 (IL12)、IL−2 および インターフェロン−
γによって促進される。対照的に、Th2応答は、適当な遺伝的基盤においてアレルギー性の有害な組織損傷に関係している。
【0010】
しかしながら、自己免疫疾患、たとえば アジュバント(adjuvant) 関節炎といった他の病態では、過剰 Thl応答が、疾患の原因であることが示唆されている。し
たがってThl応答のTh2への転換またはTh2応答のThlへの転換は、上記疾患を治療する上で有用性がある。
【0011】
L. monocytogenes 、M. bovis および結核菌といった細菌は、Th2応答を Thl応答に転換することができることが知られているが、この転換を担
う分子は同定されていない。
【0012】
しかしながら、当業界における示唆は、Thl応答を誘導できる M. leprae
からのヒートショックタン白質、 hsp65を意味している (Lowrie ら、 1999、 Nature、400、p269−271; Bonatoら、1998、Infect. Immun. 66、P169−175)。
【0013】
結核菌に由来する相同体(homologues)、 hsp65は、前炎症性サイト
カインを産生するようにヒト単球を刺激し、ならびに単球およびヒトの血管系の血管内皮細胞を活性化する能力を有する(Friedland ら、1993、Clin. Exp.Immunol.91、 p5862; Peetermansら、1995、 Inf
ect.Immun.63、p3454−3458; Verdegaalら、1996
、J.Immunol.157、p369−376)。
【発明の開示】
【0014】
驚くことに、別のタン白質も一個体の免疫に影響を及ぼすことができ、しかもそれはガン、アレルギー性疾患、とりわけ喘息、および/またはTh2−型免疫応答に代表される病態、および/または好酸球増加症に関係する病態といった疾患を治療しまたは予防する
ために用い得ることが今やわかっている。
【0015】
この結核菌に由来するタン白質は、驚くべきことに前述した病態の治療において、有利な特性を有していることが発見された。この10kDa分子は、結核菌シャペロニン10
(Mtcpn10)と命名される。
【0016】
シャペロニンであり、ヒートショックタン白質であるCpn10は、cpn60.1および60.2分子に対し、独立した転写制御の下にある。
【0017】
よって、本発明は、ガン、アレルギー反応いった様々な病態および/またはTh2−型免疫応答に代表される病態および/または好酸球増加症に関係する病態を治療しまたは予防することにおいて、増強された性質を持つMycobacterium cpn 10といった分子を提供する。治療および/または予防的応用は、以下に詳細に説明を加えるように核酸分子またはペプチド/タン白質を用いることにより達成することができる。
【0018】
かくして 本発明は、最初の面として核酸分子を含む医薬組成物を提供し、 このものは、
(i) 図1のヌクレオチド配列、または
(ii) (i)の配列に対して66%を超える、たとえば 70%もしくは75%、好ましくは 80% を超える、具体的には90%を超える または 95%の 同一性(後記の
テストによる)を有する配列、あるいは 2 x SSC、65°C (ここで SSC =
0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.2)の条件下で、(i)の配列とハイブリダイズし、図 1のヌクレオチド配列によりコードされる配列に機
能的に等価なタン白質をコードする配列、あるいは
(iii)機能的に等価なタン白質フラグメントをコードする(i)または(ii)配列のいずれかのフラグメント
を含む核酸分子、さらに製剤的に許容される賦型剤、希釈剤または担体を含有する。
【0019】
上述のように、治療および/または予防的効果は、核酸分子またはペプチド/タン白質を用いることにより達成することができる。よって、本発明は、次の局面としてポリペプチドを含む医薬組成物を提供し、このものは、
(i) 図 1のアミノ酸配列 、または
(ii) (i)の配列に対して60%を超える、たとえば65%もしくは70% 、好ましくは 80% を超える、具体的には90%を超える、または95%の同一性(後記のテストによる)を有して、機能的に等価なタン白質を与える配列、あるいは
(iii) (i)または(ii)のいずれかの配列と機能的に等価なフラグメント
を含むポリペプチド、ならびに製剤的に許容される賦型剤、希釈剤または担体を含有する。
【0020】
本発明による「核酸分子」は、1本鎖または2本鎖のDNA、cDNAまたはRNAであってもよく、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)である。機能的に等価なポリペプチドをコードすることができるヌクレオチド配列の誘導体は、技術上、周知である通常の方法を用いて得ることができる。
【0021】
本発明に使用される核酸分子は、図 1に由来する配列(または関連する機能的に等価
な配列)だけからなるものであってもよく、あるいは構造上もしくは機能上の配列、具体的には転写および/または発現(特に哺乳類細胞において)を制御する配列、あるいは、たとえば分泌シグナルとして作用する特異的性質を有する融合タン白質を形成する付加的なタン白質部分のための配列を含む、追加の配列などを包含することができる。かくして、たとえば、上記配列は本明細書で記載した核酸分子を含むベクターの形態にあってもよ
い。好適なベクターとして、プラスミドおよび ウィルスがある。
【0022】
本明細書でいう「ポリペプチド」には、完全長のタン白質とともに、より短い鎖長のペプチド配列、たとえば本明細書で記載するタン白質フラグメントのいずれも含まれる。そうしたポリペプチドは、任意の便利な手段により調製することができる。たとえば原核生物起源からの単離により、あるいは発現制御配列を作動的に結合させた適当な核酸分子を宿主細胞で発現させるか、またはそのような組換えDNA分子を含む組換えDNAクローニングベヒクルもしくはベクターを発現させる組換え手段により、あるいは化学的または生化学的な合成 (細胞外)により調製することができる。
【0023】
ヌクレオチド配列に関連して本明細書でいう「配列同一性」は、クラスタルW(ClustalW)を用いて、以下のパラメーターとともに評価を行なったときに得られる値をいう(Thompsonら、1994、Nucl. Acids Res.22、p4673− 4680):
ペア方式アライメント・パラメータ−方法:accurate
マトリックス: IUB、 Gap open penalty: 15.00、 Gap e
xtension penalty: 6.66;
多重アライメント・パラメーター−マトリックス: IUB、 Gap open penalty: 15.00、 % identity for delay: 30、 Negat
ive マトリックス: no、 Gap extension penalty: 6.66、 DNA transitions weighting: 0.5.
アミノ酸配列に関連して、「配列同一性」は、クラスタルW(ClustalW)を用いて、以下のパラメーターとともに評価を行なったときに得られる値をいう Thomps
onら、1994、上掲):
ペア方式アライメント・パラメーター−方法: accurate
マトリックス: PAM、Gap open penalty: 10.00、Gap ex
tension penalty: 0.10; 多重アライメント・パラメーター−マト
リックス: PAM、Gap open penalty: 10.00、% identi
ty for delay: 30、 Penalize end gaps: on、 Gap
separation distance: 0、Negative マトリックス: n
o、Gap extension penalty: 0.20、Residue−spe
cific gap penalties: on、Hydrophilic gap pe
nalties: on、親水性残基: GPSNDQEKR。特定残基における配列同一性は、簡単に誘導された同一残基を含むようにされている。
【0024】
「機能的に等価な」タン白質またはタン白質フラグメントとは、図1のアミノ酸配列に関係するか、またはそれから誘導されるものであり、そのアミノ酸配列は、単一もしくは複数のアミノ酸 (具体的には 1〜50、たとえば10〜30、 好ましくは1〜5塩基
)の置換、付加および/または欠失により修飾されているが、それにもかかわらず該アミノ酸配列は機能的活性を保持している。たとえば、オボアルブミン誘導好酸球増加症(ovalbumin−induced eosinophilia)を抑制し、具体的には
10 %を超える、好ましくは25%を超える、とくに好ましくは 50%を超える程度まで 好酸球数を減少させ、および/または特定のサイトカイン、具体的にはインターロイ
キン−1β (IL−1β)、IL−2、IL− 6、IL−8、 IL−10、IL−1
2、IL−12レセプター、腫瘍壊死因子a(TNFα)、インターフェロン−γおよび
顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子(GM− CSF)の産生を増加させ、たとえば正常レベルの10倍を超える、好ましくは100倍を超える増加であり、および/またはTh1応答の刺激である。
【0025】
アミノおよび/またはカルボキシル末端融合タン白質またはポリペプチドは、「付加」
変異体の意味の中に含まれ、ポリペプチド配列に融合した、付加的なタン白質またはポリペプチドを含む。
【0026】
とりわけ好ましいのは、生物変異体といった自然界に生じる等価体であり、たとえばアレルの、地理上のまたはアロタイプの変異体および公知の技術を用いて調製される誘導体である。たとえば、機能的に等価なタン白質またはフラグメントは、化学的ペプチド合成、部位特異的突然変異、ランダム突然変異または酵素的開裂および/または核酸の連結といった公知の技術を用いる組換え体の形態のうち、いずれかの方法で調製できる。
【0027】
本発明は、異なる原核生物からの等価体および関係する分子に向けられる。たとえば細菌の属、種または株から、とりわけMycobacterium属、具体的には 結核菌
、M. bovisおよび M. africanumを含む結核菌複合体からの等価体で
ある。そうした配列自体も修飾されていてもよく、特に機能を保持して提供される誘導体化であってよい。
【0028】
タン白質の誘導体は、合成/単離後の修飾あるいはたとえば修飾残基を用いる合成中の修飾、あるいは適切であれば修飾核酸分子の発現により調製できる。
【0029】
本発明の機能的に等価なフラグメントは、切り詰めによるもの(truncation)であってもよく、たとえばNおよび/またはC末端からのペプチドの除去、あるいは適切な活性のあるドメイン領域、たとえば機能を保持しているエピトープ領域の選択による。そのようなフラグメントは、図 1の配列から誘導されてもよく、あるいは図 1に開示されたものと機能的に等価なタン白質から誘導されてもよい。
【0030】
機能的フラグメントが選択される場合、それらのフラグメントは、元の分子に帰される機能を必ずしも示す必要はないことは理解されるであろう。したがって、機能的に等価なタン白質またはフラグメントは、関係のある機能的特性を保持するものであり、そのためフラグメントは、本発明による有用性、具体的には上記のように、好酸球増加症の抑制、特定サイトカイン産生の増加および/またはThl免疫応答の刺激を保持する。好ましくは、上記フラグメントは、鎖長6〜99残基、具体的には15〜99残基、好ましくは6〜30、10〜25、15〜50または15〜30残基である。図1に示す配列のとくに好ましいフラグメントは以下の残基に由来するか、または以下の残基からなる:
1−25
1−58
25−99
51−99
75−99。
【0031】
図 1に掲げられた配列に対し、機能的に等価な核酸の配列/フラグメントは、本発明
の組成物にも使用される。これらの配列は、コードする(上記に定義したように)機能的に等価なタン白質/ペプチドに関して明確にされる。
【0032】
本明細書で使用する「ハイブリダイゼーション」は、非ストリンジェント条件 (6 x
SSC/50% ホルムアミド、室温) で結合し、ならびに高ストリンジェンシーな条
件、すなわち 2 x SSC、 65°C (SSC = 0.15M NaCl、0. 01
5Mクエン酸ナトリウム、 pH7.2)で洗浄される配列である。
【0033】
本明細書で述べる「製剤的に許容される」は、生理学的に許容される賦形剤のみならず、組成物の他の成分と共存できる成分について言う。
【0034】
本発明に基づく医薬組成物は、容易に入手できる成分を用いて、従来の方式で処方することができる。したがって活性のある成分(すなわち、核酸分子またはタン白質/ペプチド)を、必要に応じて他の活性物質ならびに1つ以上の通常使用される担体、希釈剤および/または賦形剤と一緒に含有して、錠剤、ピル、 散剤、トローチ剤、小袋剤、カシェ
剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、 シロップ剤、エアゾル剤 (固体としてまたは液体媒体中に)、軟膏剤、軟および硬ゼラチンカプセル、座薬、無菌注射溶液、無菌包装散剤などといった通常のガレヌス(galenic)製剤を形成することができる。
【0035】
上記のような組成物には前記の核酸分子、ポリペプチドの作用を支援するか、または増強する分子を追加して含んでいてもよい。たとえばサリドマイド(thalidomide)(およびその類縁体)、低用量のシクロホスファミド(cyclophosphamide)、 LPS、 サイトカイン、 ケモカイン(chemokines) CpG オ
リゴデオキシヌクレオチドおよび他の免疫調節薬および/または抗炎症性剤、たとえばサイトカイン・アンタゴニストまたはグルココルチコステロイドである。
【0036】
したがってたとえば上記組成物は、特別の免疫治療のために活性のある成分と一緒に、たとえばガン・ワクチン中で、使用してもよい。本明細書で記載した核酸分子/ポリペプチドを含む、適当な免疫治療用の処置剤/ワクチン製剤には、サブユニット・ワクチンあるいは腫瘍特異的抗原、腫瘍に関係した抗原もしくは抗体または抗イディオタイプ・抗体に基づく処置剤、または治療またはワクチン接種用の細胞全体の調製物が挙げられる。治療またはワクチン接種に使用される場合、本明細書で記載した核酸分子またはポリペプチドは、抗原に対する特定の免疫応答をもたらす該抗原を提供する(またはコードする)ことができ、および/または一般的で非特異的な免疫応答となるかも知れない。後者の場合、他の活性成分を含む組成物を用いる際、本明細書で記載した核酸分子/ポリペプチドは、アジュバントとして作用し、したがってこの目的に使用できる。
【0037】
予防用または治療用製剤は、1つ以上の製剤学的に許容される担体または希釈剤の存在下で1つ以上の好適なアジュバント、たとえば不完全フロインドアジュバント、BCG、モンタニド(Montanide)、水酸化アルミニウム、サポニン、quil A 、またはそれらのさらに精製された形態、ムラミルジペプチド、鉱油または植物油、ノバソーム(Novasome)または非イオン性のブロックコポリマーまたは DEAE デキストランを含むように処方してもよい。好適な担体には、生理食塩水溶液といった液体媒体が含まれる。
【0038】
好適な担体、賦形剤および希釈剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、 リン酸カルシウム、アグ
リネート(aglinates)、トラガカント(tragacanth)、ゼラチン、珪酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、 セルロース、 水シロップ、 水、 水/エタノール、 水/グリコール、 水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、 メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシ
ベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油または脂肪物質、たとえば硬性脂質またはそれらの適当な混合物などが挙げられる。上記組成物は、付加的に、潤滑剤、保湿剤、乳化剤、 懸濁化剤、 保存剤、 甘味剤、 香味剤などを含んでもよい。本発明の組成物は、患者に投与した後、活性成分の迅速な、持続する、または遅延した放出を与えるように公知の手順を使用することにより処方することができる。
【0039】
上記組成物は、適切な投与形態、たとえば、エマルジョン、またはリポソーム、ニオソーム(niosomes)、マイクロスフェア(microspheres)、ナノパーティクル(nanoparticles)などとすることができる。
【0040】
必要なら上記組成物は、活性成分に結合したターゲティング部分を含んでもよい。たとえばリンパ球、単球、マクロファージ、血管内皮細胞、 上皮細胞、血液細胞、 赤血球、血小板、好酸球、好中球、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、脳細胞、心臓細胞、肺細胞、島細胞、腎臓細胞、ガン細胞、ホルモン分泌腺細胞、皮膚、骨、関節、骨髄、胃腸粘膜、リンパ節、パイエル板、大網および他の免疫組織などへのターゲティングといった特定の細胞型または位置へのターゲティングを可能とする、内因性レセプターに特異的かつ選択的に結合するリガンドである。
【0041】
上記組成物は、ガン、アレルギー反応および/またはTh2−型免疫応答に代表される病態、および/または好酸球増加症に関係する病態の治療または予防には有用性がある。
【0042】
よって、本発明の別の面として、たとえば、ガン、アレルギー反応および/またはTh2−型免疫応答に代表される病態および/または好酸球増加症に関係する病態を治療または予防する際に使用される医薬品として、好ましくは免疫抑制剤として、本明細書で記載される医薬組成物が提供される。
【0043】
別の局面から本発明は、前記の医薬組成物を投与された患者において、ガン、アレルギー性応答および/またはTh2−型免疫応答に代表される病態、および/または好酸球増加症に関係する病態を治療するかまたは予防する方法を提供する。
【0044】
さらに、本発明は、ガン、アレルギー疾患および/またはTh2−型免疫応答に代表される病態、および/または好酸球増加症に関係する病態を治療するかまたは予防するための医薬品の調製において、
(i) 図 1のヌクレオチド配列 、 または
(ii) (i)の配列に対して66%を超える、たとえば 70% もしくは 75%、
好ましくは 80% を超える、具体的には90%を超える、または95%の 同一性(前
記のテストによる)を有する配列、あるいは 2 x SSC、65°C (ここで SSC = 0.15M NaCl、 0.015M クエン酸ナトリウム、 pH 7.2)の条件下で、(i)の配列とハイブリダイズし、図 1のヌクレオチド配列によりコードされる配
列に対し機能的に等価なタン白質をコードする配列、あるいは
(iii)機能的に等価なタン白質フラグメントをコードする(i)または(ii)配列のフラグメント;
を含む核酸分子の使用、あるいは
(i) 図 1のアミノ酸配列、または
(ii) (i)の配列に対して60%を超える、たとえば65%もしくは70% 、好ましくは 80% を超える、具体的には90%を超える、または95%の 同一性(前記の
テストによる)を有して、機能的に等価なタン白質を与える配列、あるいは
(iii) (i)または(ii)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含むポリペプチドの使用を提供する。
【0045】
本明細書では、「治療」とは治療前の症状に対して、治療対象である1以上の病態症状を低減させ、軽減させ、または除去することをいう。たとえば、罹患する症状には、好酸球増加症、特定のサイトカイン分泌減少、Th2に偏倚した免疫応答、腫瘍サイズ(具体的には、増殖を休止させる、分化を引き起こす、抗腫瘍性免疫応答を増強または誘導する、あるいは何らかの細胞の死滅を引き起こすことによる)アレルギー応答、自己抗体の存在などが挙げられ、これらは機能的に等価なポリペプチドの機能特性について特に規定されたような効果を達成するように治療される。
【0046】
病態の「予防」とは、前記病態の1以上の症状の発現または程度によって評価されるが、病態の発生を遅らせるか、または予防すること、あるいはその過酷さを軽減することを
いう。
【0047】
治療されるまた予防されるべきガンは、悪性および前悪性のまたは良性の腫瘍が挙げられ、さらには癌腫(carcinomas)、肉腫(sarcomas)、神経膠腫(glioma)、黒色腫(melanoma)およびホジキン病が挙げられ、膀胱、腎臓、膵臓、脳、頭部、頸部、乳房、腸、前立腺、肺および卵巣のガンおよび白血病さらにリンパ腫を含む。
【0048】
治療されるまたは予防されるべきアレルギー病態には、湿疹(eczema)、 皮膚
炎(dermatitis)、アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis
)、アレルギー性結膜炎(allergic conjunctivitis)、アレル
ギー性気道疾患(allergic airway diseases)、過好酸球性症候群(hyper−eosinophilic syndrome)、接触性皮膚炎(co
ntact dermatitis)、食物アレルギーならびに好酸球気道炎症(eos
inophilic airway inflammation)および気道過敏症(airway hyperresponsiveness)に代表される呼吸疾患、これには
、たとえばアレルギー性喘息(allergic asthma)、内因性喘息(int
rinsic asthma)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allerg
ic bronchopulmonary aspergillosis)、好酸球性肺炎(eosinophilic pneumonia)、アレルギー性気管支炎、気管支拡
張症(allergic bronchitis bronchiectasis)、職業性喘息(occupational asthma)、反応性気道疾患症候群(reac
tive airway disease syndrome)、間質性肺疾患(inte
rstitial lung disease)、過好酸球性症候群(hypereosinophilic syndrome)、寄生虫性肺疾患(parasitic lung
disease)などが挙げられる。しかしながら上記組成物は、喘息の治療に好まし
く使用される。さらに好ましい態様において、該組成物は好酸球増加症がある役割を演じている病態、たとえばアレルギー(上記のように、とりわけ喘息)、アトピー性疾患および肺好酸球増加症を治療するために使用される。
【0049】
治療される患者として、限定するものでないが哺乳類、とりわけ霊長類、飼育動物および家畜が含まれる。よって、特に好ましい治療の動物として、マウス、ネズミ、モルモット、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマが挙げられ、 とりわけ好ましくは、ヒトで
ある。
【0050】
すでに述べたように、本発明による方法では核酸分子またはポリペプチドのいずれかが使用される。核酸分子を使用する場合、核酸分子は患者内で発現させる形態で便利に使用され、よって遺伝子治療の形態となる。したがって本明細書で記載された、核酸分子を含む医薬組成物は、遺伝子治療方法において使用することができる。
【0051】
上記核酸分子は、たとえばリポソーム、ミセルまたは関心が向けられた細胞へのターゲティングを可能とするターゲティング部分を含む、他の適当な搬送ベヒクルで提供されてもよい。
【0052】
あるいは、上記分子は、ウィルス、プラスミドまたは 細胞 (とりわけトランスフェクトされた種に適合する細胞)などの他の「ベヒクル」に包含されてもよい。これらは、そうした駐在分子の発現をもたらす目的のために当該技術分野ではいずれも周知である。
【0053】
トランスフェクションのための適切な技術はよく知られており、これには、エレクトロポーレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション(lipofectio
n)、吸着、ウィルス・トランスフェクションおよびプロトプラスト融合などが挙げられる。
【0054】
本発明の組成物の投与は、従来的な任意の経路で行なわれてもよく、具体的には、吸入によるか、経鼻的に、経口的に、経直腸的にあるいは筋肉内、皮下、腹腔内または静脈内の注射といった非経口的による。皮膚に組成物、たとえば軟膏を局所投与することによる治療または予防も可能である。投与は、必要に応じた間隔をおいて行なわれ、たとえば2回またはそれ以上の適用、具体的には毎時間、毎日、週ごとまたは月ごとの間隔で2−4回の適用あるいは1日、3−5日ごとに、または 2週間ごとに、毎月または季ごとの間
隔で数回の適用である。
【0055】
関係する分子cpn60.2について行なわれた研究において、投与経路は生起する免疫応答に影響を及ぼすことが観察されている。たとえば、Mtcpn 60.2が鼻腔内
に投与されると、Th2からThlへのシフトが刺激され、腹腔内に投与されると反対の効果が観察された。このため投与経路は、治療または予防する疾患を考慮に入れるべきである。たとえば自己免疫疾患を治療する際は、腹腔内投与が適切であり、他方、特定のアレルギー性疾患の治療または予防には、たとえば鼻腔内投与が適切である。
【0056】
本発明の予防方法において、投与 (好都合には経口的に、または吸入、あるいは皮下
もしくは筋肉内注射)は、好ましくはもっと長い間隔、具体的には2−12週の間隔で実施される。治療目的には、投与(好都合には経口的に、または吸入、あるいは静脈内注射) 1日にまたは2日にわたって1−4回行なわれる。
【0057】
本発明の組成物中の活性成分は、処方物重量の約0.01重量% 〜約99重量%含有
される。 好ましくは約0.1〜約50%、たとえば10%である。該組成物は好ましく
は投与形態単位で処方され、具体的には各投与単位には約0.01mg〜約1gの活性成分を含有する。たとえば、ヒトに対して0.05mg〜0.5gで、好ましくは1〜100mgである。
【0058】
投与される活性化合物の正確な投与量ならびに治療期間の長さは、たとえば患者の年齢および体重および治療に求められる特別の条件、その重篤度、および投与経路を含む多数の要因にもちろん依存する。しかしながら一般的には、有効用量は、投与する動物、投与形態に応じて、単一の投与として約0.1μg/kg 〜約14mg/kgの範囲内にあ
り、好ましくは 0.1 〜1mg/kg、たとえば1日あたり、約1mg〜1gのポリペプチドである。よってたとえば、成人の1日あたりの適切な用量は、7μg〜1g、たとえば10mg〜lg/日、あるいは25〜500mg/日のポリペプチドである。
【0059】
本明細書に記載された核酸分子を使用するときは、類似のまたはより少ない用量が用いられてもよく、具体的には約0.2ng/kg〜約2.5mg/kg (たとえば 約0.2ng/kg〜約2ng/kgまたは約1.5ng/kg〜約2.5mg/kg)、成人には約14ng〜約175mgである。しかし、核酸分子が細胞またはベクターに包含される場合には、非cpn コードDNAの規模ならびに発現レベルに影響を及ぼす配列に
よっては、より多いかまたはより低い量が相応に必要となるかも知れない。具体的には5− または 10倍多い量である。たとえばベクターに包含された本明細書に記載の核酸分子では、約1.Ong/kg〜約12.5mg/kgで使用することができる。
【0060】
上述のように本明細書で規定したポリペプチドのファミリーおよびそれらをコードする核酸分子は、サイトカイン群の産生を刺激する。それゆえこのことは、治療/予防の状況においてそれが生起するか否かにかかわらず、これらのサイトカイン産生を刺激する発現目的のためにこれらの化合物の使用を許容する。
【0061】
よってさらなる面において、本発明は細胞のサイトカイン産生を刺激する方法を提供する。その方法は、
(i) 図 1のヌクレオチド配列、または
(ii) (i)の配列に対して66%を超える、たとえば 70%もしくは75%、好ましくは 80% を超える、具体的には90%を超える、または95%の 同一性(前記の
テストによる)を有する配列、あるいは 2 x SSC、65°C (ここで SSC =
0.15M NaCl、 0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.2)の条件下で、
(i)の配列とハイブリダイズし、図 1のヌクレオチド配列によりコードされる配列に
機能的に等価なタン白質をコードする配列、あるいは
(iii)機能的に等価なタン白質フラグメントをコードする、(i)または(ii)配列のフラグメント;
を含む核酸分子、あるいは
(i) 図 1のアミノ酸配列、または
(ii) (i)の配列に対して60%を超える、たとえば65%もしくは70% 、好ましくは 80% を超える、具体的には90%を超える、または95%の同一性(前記のテストによる)を有して、機能的に等価なタン白質を与える配列、あるいは
(iii) (i)または(ii)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含むポリペプチド
の上記細胞に対する投与を含む。
【0062】
そのような方法は、インビトロで、すなわち生体外の細胞、組織または器官について実施することができる。具体的にはこの方法論は、本発明の分子、たとえばcpn10 レ
セプター分子と反応するか、それに結合するか、あるいはそれにより活性化される分子もしくは分子群を同定するための研究方法において使用することができる。このような方法に対する1つの帰結として、サイトカイン産生の刺激は、本発明分子の存在を測定するために用いることができる。
【0063】
したがって、別の面から本発明は、 サンプル中に本発明のポリペプチドまたはペプチ
ドの存在または濃度を評価する方法を提供する。その方法では、上記サンプルが細胞に適用されて、1つ以上のサイトカイン産生が測定され、対照サンプルにおけるそ(れら)のサイトカイン産生のレベルと比較される。ここで対照レベルを超える上昇は、当該サンプルにおいて上記ポリペプチドまたはペプチドの存在または濃度との関係を与える。
【0064】
本明細書で用いる「対照」とは、本発明の分子または測定されるサイトカイン(類)の産生を増大させる部分を含まないサンプルを言及するものである。適切であれば、本発明の分子を用いて標準曲線を作成してもよく、これにより該分子の存在または濃度について、定性的評価も可能であるが、定量的評価をなすことを可能とする。この方法は、本発明の分子を同定するためにさらに使用することができる。
【0065】
しかしながら代わりに、特定サイトカインの産生を増強すべく、インビボでサイトカイン産生を刺激する方法が実施されてもよい。このことは治療上または予防上の効果に利点を有するものである。この場合において本発明は、特定のサイトカインを増加させることにより軽減され、克服されるかまたは防止される病態を治療するために使用される上記の核酸分子およびポリペプチドならびにその目的用の医薬製剤の調製のため、そうした分子の使用に拡張される。
【0066】
正常レベルより10倍を超えて、または100倍を超えて増大させるサイトカインは、好ましくは IL−1β、IL−2、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、T
NFα、インターフェロン−γおよびGM−CSFからなる群より選択される。
定義
「自己免疫疾患」
本用語は、自己免疫のプロセスがある疾患の病因に関与することが示され得る場合をカバーすることを意図している。典型的にはそのような病気はT ヘルパー リンパ球−1 (
Th−1) 型免疫応答に関係している。
「アレルギー病態」
本用語は、T ヘルパー リンパ球−2 (Th−2) 型免疫応答に関係する病態をカバーすることを意図している。アレルギー反応において、高いIgEレベルが生起し、Th−2 免疫応答がTh−1応答よりも優勢となり、その結果、炎症性の応答となる。アレル
ギー病態の例として、喘息、鼻炎/枯草熱、(rhinitis/hay fever)
、湿疹(eczema)およびアナフィラキシー(anaphylaxis)が挙げられる。
「アジュバント」
この用語は、抗原と一緒に取り込まれるか、あるいは同時に投与されると免疫応答が増強される物質をいずれもカバーする意図で用いられている。
【0067】
「Mtcpn10」、「cpn10」、「hsp10」、「Pep10」は、図1に示されたアミノ酸配列を言及するため、本明細書中では互いに交換できるように使用される。
【0068】
[実施例]
以下、本発明を下記実施例によって詳細に説明する。本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
物質
シャペロニン10タン白質の発現および精製
M. tuberculosis cpn10は、M. Singh教授 (WHO Co
llaborating Centre、ドイツ)により、通常のクロマトグラフィーを
用いて下記のようにして調製された。
組換え体cpn10の精製
10kDa抗原は、組換えE. coli株(IPTG−誘導)において、商業的に入
手可能なpMAL−cベクター(New England Biolabs)を用いて、マルトース結合タン白質(MBP)との融合タン白質として、発現された。その初期の精製はアミロースアフィニティカラム上で行われた。その後、当該融合タン白質は、因子Xa
で開裂され、10kDa抗原はさらにアニオン交換クロマトグラフィーで精製され、1
0mM重炭酸アンモニウム溶液に対し透析が行なわれ、小分けされ、および凍結乾燥された。
【0069】
タン白質各バッチのLPS汚染については、Limulusアッセイ(Tabona
ら、 1998、 J. Immunol.、161、p1414−1421)を用いてチ
ェックすることにより、充分な注意を払った。もしLPS汚染が検出されたならば、ポリミキシンB(polymyxin B)アフィニティカラム上でそれを除去し、LPSレ
ベルを再びアッセイした。
【0070】
組換え体の低LPS−シャペロニンは、さらにReactive Red カラム上で、汚染するタン白質および ペプチドを除去して精製した(Tabona ら、1998、上記)。
【0071】
ヒトPBMCにおいて、cpn 10による、IL−1β、IL−6、IL−8、IL
−10、IL−12、TNFαおよび GM−CSFの産生へのインビトロ効果を、Ta
bonaら、1998、上記、に記載されたように2−サイトELISAを用いて決定し
た。
【実施例1】
【0072】
マウスにおいてMycobacterium tuberculosis cpn 10は
喘息を抑制する
本実施例では、アレルギー性炎症のげっ歯類モデルにおいてM. tuberculo
sis cpn 10 タン白質が、免疫したマウスの気道への好酸球の動員を阻害したこ
とを初めて示す。これらのデータは、Mtcpn10がマウスの気道炎症を変調させ、これにより、アレルギー疾患の治療および予防について重要な示唆を有することを示す。
方法
炎症のげっ歯類モデル
抗原投与に引き続き、気道における好酸球およびT リンパ球動員の定量を可能とする
アレルギー性炎症のげっ歯類モデルが開発された。さらに現技術水準の肺モニタリングシステムが使用され、これは気管支収縮剤アゴニストに対する肺の機能における変化をインビボで測定することを可能とする。
免疫化プルトコル
C57B1/6 野生型 (地域の供給者)、6−8 週齢マウスは、0日目に、オボア
ルブミンを用いて免疫され (10μg 腹腔内注射; 1 mg 水酸化アルミニウム)、
7日後に繰り返した。14、15および16日目にマウスは、プレキシガラス(plexiglass)容器(12 L)に収容して、霧状にしたオボアルブミン溶液(10 mg/ml; De Vilibiss Ultraneb 90)に曝した。シャム免疫の野生型マウスは、0および7日目に水酸化アルミニウム1mg を注射し、14−16日目に
オボアルブミンで抗原投与した。エアゾール暴露は、毎日3回1時間の間隔で20分間暴露させて行ない、気管支肺胞洗浄、免疫組織化学のため肺の採取および肺力学(lung
mechanics)は、最後のエアゾール投与の後、24時間して行なった。
【0073】
オボアルブミンは、喘息患者によく見られる呼吸性アレルゲンではないが、炎症げっ歯類モデルで観察されるTh2応答は、ハウスダストのダニで免疫した後に見られるものに類似している。これら2つのアレルゲンにより生起されるTh2 サイトカイン・プロフ
ィールは、類似している。このオボアルブミンを用いる利点は、それが容易に入手でき、このアレルゲンの特異的な活性は、バッチ間で変動せず、そこで我々はバッチ間で抗原投与量をコントロールできることである。
BCG処置
オボアルブミン(10μg)で免疫してから6日目に、マウスに経静脈的に BCG (log(BCG viable)単位:−4、−5 および−6)を注入した。 7日目、
マウス は、オボアルブミン(10μg)のブースター(booster)注射を受けた
。13日目、マウス は6日目と同じ投与量で、同一の投与経路にて2度目のBCG投与
を受けた。14日目、マウスは、プレキシガラス容器に収容し、霧状にしたオボアルブミン溶液(1% 溶液)への30分間暴露を1時間間隔で3回行なった。この操作を15お
よび16日目にも繰返した。最後のオボアルブミン暴露の24時間後、マウスを麻酔にかけ好酸球を数えるために気管支肺胞洗浄を行なった。
Cpn 10 処置
動物の同じバッチからのマウスをオボアルブミンで免疫し、Mtcpn 10 (10μg/動物)を気管に直接点滴することにより処置した。マウスはMtcpn 10で、 6日目 および13日目、次いで14、15、および16 日目の抗原投与(challenge)プロトコルの開始の30分前にも処置した(総数5 処置)。
結果
結果が図2に示されている。オボアルブミン投与後、気道への好酸球動員の有意な抑制があった。このことは、喘息におけるMtcpn10(「Pep10」)に対する保護効果を示唆する。
サイトカイン測定
我々は、最後の抗原投与後、24時間して集められた血清および洗浄物中のサイトカイン産生に対するcpn10の効果を調べた。我々は、10μgのcpn10および56μgの60.1で(両方とも治療の5用量スキームで投与される)で処置されたマウスの群から集められたサンプル中のIL−4, IL−5 および INF−γ レベルの測定を行った。
【0074】
最後の抗原投与後24時間した血清中のサイトカインレベルを検出することはできず、ならびにIL5は、この時点でいずれのサンプルでも検出されなかった。BAL中で検出されたIL−4および INF−γのレベルを、図3および図4に示す。
【0075】
cpn10の重要な利点は、それが、急性症状を治療するのに使用される剤とは異なる予防剤を提供することが可能である。換言すれば、cpn10治療は、喘息のようなアレルギー病態を、発生から予防することが可能である。
【0076】
喘息の予防および治療におけるcpn10の使用は、この実施例に記載されている。当業者は、ここで得られた結果が、鼻炎/枯草熱、湿疹、アナフィラキシーなどの他のアレルギー病態に関係することを理解するであろう。これはすべてのアレルギー病態が共通の機作を有している(Th−2細胞の過剰反応性)ためである。本明細書では、cpn10が喘息を抑制可能であれば、それはまた、他のアレルギー性病態をも抑制できるはずである。
【0077】
これらのデータは、喘息のげっ歯類モデルにおいて、Mtcpn10が好酸球性炎症を抑制できることを初めて提示する。これは、このタン白質がマウスの気道炎症を変調させる能力を有しているということを示すものである。このことは、アレルギー性疾患、自己免疫疾患およびガンの治療および予防に対し重要な手がかりとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は結核菌(M. tuberculosis)からのcpn 10のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を示す。
【図2】図2は、オボアルブミン(ovalbumin)で誘導した肺好酸球増加症のマウスにおいてMtcpn 10(「Pep10」)を5用量、投与した後の好酸球レベルの減少を示す。
【図3】図3は、BALで検出されたIL4のレベルを示す。
【図4】図4は、BALで検出されたINF−γのレベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞におけるサイトカイン産生を刺激する方法が、該細胞に対し
(i) 図 1のヌクレオチド配列、または
(ii) (i)の配列に対して66%を超える同一性を有する配列、あるいは2xSS
C、65°C(ここで SSC=0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウ
ム、pH7.2)の条件下で、(i)の配列とハイブリダイズし、図 1のヌクレオチド
配列によりコードされる配列に機能的に等価なタン白質をコードする配列、あるいは
(iii)機能的に等価なタン白質フラグメントをコードする(i)または(ii)配列のフラグメント;
を含む核酸分子、あるいは
(i) 図 1のアミノ酸配列、または
(ii) (i)の配列に対して60%を超える同一性を有して、機能的に等価なタン白
質を与える配列、あるいは
(iii) (i)または(ii)の配列と機能的に等価なフラグメント
を含むポリペプチド
の投与を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記サイトカインの産生が、正常レベルに対し、少なくとも10倍増加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイトカインが、IL−1β、 IL−2、IL−6、 IL−8、 IL−10、 IL−12、 TNFα、インターフェロン−γおよび GM−CSFよりなる群の少なくとも1つから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
サンプル中に、請求項1〜3のいずれかに規定されるポリペプチドまたはペプチドの存在または濃度を評価する方法であって、該サンプルが細胞に適用され、1つ以上のサイトカインの産生が測定され、対照サンプルにおけるそ(れら)のサイトカイン産生のレベルと比較され、ここで対照レベルを超える上昇は、該サンプルにおいて上記ポリペプチドまたはペプチドの存在または濃度との関係を与えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−214347(P2008−214347A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37550(P2008−37550)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【分割の表示】特願2002−542410(P2002−542410)の分割
【原出願日】平成13年11月16日(2001.11.16)
【出願人】(503179171)ヘルパーバイ セラピューティクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】