説明

生産設備の故障発生時の復旧方法

【課題】生産設備に故障が発生した場合に、最適な剛性を有する直動軸受を選定することが可能な生産設備の故障発生時の復旧方法を提供する。
【解決手段】この塗装ロボット10(生産設備)の故障発生時の復旧方法は、故障発生時に直動軸受2および3の変位を実際に測定するステップと、測定された直動軸受2および3の変位に基づいて、直動軸受に加わる荷重と直動軸受の変位との関係を示したグラフを用いて直動軸受2および3に加わる荷重を取得するステップと、取得した直動軸受2および3に加わる荷重に適合する剛性を有する直動軸受を選定するステップと、選定した直動軸受2および3に加わる荷重に適合する剛性を有する直動軸受を、故障の発生した走行台車20の直動軸受2および3と交換するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生産設備の故障発生時の復旧方法に関し、特に、直動軸受を用いて移動可能な走行台車上に設置された生産設備の故障発生時の復旧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直動軸受を用いて移動可能な走行台車上に設置された生産設備が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ガイドレールと、ガイドレール上を直線移動するリニアガイド(可動部)とを有する直動軸受を含む走行台車上に設置された塗装ロボット(生産設備)が開示されている。この特許文献1では、支持部材の壁状に直立した側面に上下一対のガイドレールを平行に設けるとともに、一対の可動部を上下一対のガイドレールとそれぞれ係合させて走行台車を移動可能に構成している。また、塗装ロボットは、支持部材から離れる方向(ガイドレールの延びる移動方向と直交する方向)に張り出すように走行台車上に設置されている。そして、上記特許文献1による塗装ロボットは、走行台車によって支持部材に沿った左右方向に直線移動しながら、塗装対象物に対して塗装作業を行うように構成されている。
【0004】
上記特許文献1に記載の構成を有する塗装ロボットでは、塗装ロボットおよび走行台車の荷重が直動軸受を構成するガイドレールおよび可動部に加わることになる。ここで、一般に、塗装ロボットなどの生産設備に用いる直動軸受の選定は、塗装ロボット(生産設備)および走行台車からの荷重を考慮した負荷条件下において、稼動時に想定される移動動作を実行させた場合に、同一製品のうち略9割が設定した走行距離(寿命)に到達すると考えられるL10寿命を満たすか否かという寿命計算によって行われる。ただし、設計段階で直動軸受に作用する荷重を厳密に解析することは困難である。したがって、通常の寿命計算では、構成要素は全て剛体であると仮定され、各構成要素の変形による影響などは考慮されない。このため、寿命計算に用いられる直動軸受の荷重と、実際に直動軸受に作用する荷重とが相違するという前提の下、所定の安全係数などを乗じて算出された寿命計算に基づいて直動軸受の選定が行われる。また、従来では、塗装ロボット(生産設備)に故障が発生した場合に、どのような性能(剛性)を有する直動軸受を選定すればよいかという指針が得られず、事例の蓄積に基づく経験的な選定を行い、復旧作業を実施していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−343009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本願発明者は、上記特許文献1のように、塗装ロボット(生産設備)が支持部材(直動軸受)から張り出すように設けられることによりガイドレール(案内レール)と可動部とを有する直動軸受に大きな荷重が作用しやすい場合には、L10寿命の確率(同一製品うちの残りの略1割は計算寿命に到達しないこと)を考慮して余分な補償しろを設ける必要があるとともに、このような場合には、塗装ロボット(生産設備)に故障が発生した際に、従来の経験的な直動軸受の選定を行っても、最適な剛性を有する直動軸受を選定することが困難であるという問題点(課題)があることを見出した。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、生産設備に故障が発生した場合に、最適な剛性を有する直動軸受を選定することが可能な生産設備の故障発生時の復旧方法を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために本願発明者が鋭意検討した結果、上記した課題を解決可能な、以下のような復旧方法を見出した。すなわち、この発明の一の局面による生産設備の故障発生時の復旧方法は、案内レールと、案内レール上を直線移動する可動部とを有する直動軸受を用いて移動可能な走行台車上に設置された生産設備の故障発生時の復旧方法であって、故障発生時に直動軸受の変位を実際に測定するステップと、測定された直動軸受の変位に基づいて、直動軸受に加わる荷重と直動軸受の変位との関係を示したグラフを用いて直動軸受に加わる荷重を取得するステップと、取得した直動軸受に加わる荷重に適合する剛性を有する直動軸受を選定するステップと、選定した直動軸受に加わる荷重に適合する剛性を有する直動軸受を、故障の発生した走行台車の直動軸受と交換するステップとを備える。
【0009】
この発明の一の局面による生産設備の故障発生時の復旧方法では、上記のように、故障発生時に直動軸受の変位を実際に測定し、測定された直動軸受の変位に基づいて、直動軸受に加わる荷重と直動軸受の変位との関係を示したグラフを用いて直動軸受に加わる荷重を取得することによって、実際に測定される直動軸受の変位に基づいて直動軸受に加わる荷重が取得されるので、通常の寿命計算では考慮されない変形などの影響が反映された、直動軸受に実際に作用する荷重を取得することができる。そして、取得した直動軸受に加わる荷重に適合する剛性を有する直動軸受を選定することによって、生産設備の直動軸受に実際に作用する荷重に適合する剛性を有する直動軸受を選定することができるので、生産設備に故障が発生した場合に、最適な剛性を有する直動軸受を選定することができる。その結果、復旧時に最適な寿命を有する直動軸受に交換することができる。
【0010】
上記一の局面による生産設備の故障発生時の復旧方法において、好ましくは、直動軸受の変位を実際に測定するステップは、生産設備を走行台車から取り外した状態を変位の基準として、生産設備を走行台車上に設置した状態における直動軸受の変位を測定するステップを含む。このように構成すれば、生産設備の重量に起因する直動軸受の変形(撓み)が発生しない状態を変位の基準として変位測定を行うことができる。これにより、通常の寿命計算では考慮されない生産設備の重量に起因する直動軸受の変形などの影響を変位の測定値に反映させることができるので、測定される直動軸受の変位に基づいて直動軸受に加わる荷重を取得することによって、実際に生産設備の直動軸受に作用する荷重を精度よく取得することができる。
【0011】
上記一の局面による生産設備の故障発生時の復旧方法において、好ましくは、直動軸受の変位を実際に測定するステップは、走行台車上に設置された生産設備の作業動作状態における直動軸受の変位を実際に測定するステップを含む。このように構成することによって、生産設備の実際の作業動作時に発生する慣性力などの影響を直動軸受の変位の測定値に反映させることができるので、測定された直動軸受の変位に基づいて直動軸受に加わる荷重を取得することによって、より正確に、生産設備の作業動作時に実際に直動軸受に作用する荷重を取得することができる。
【0012】
上記一の局面による生産設備の故障発生時の復旧方法において、好ましくは、直動軸受の変位を実際に測定するステップは、直動軸受の可動部の移動方向を軸とした回転方向であるローリング方向の変位を少なくとも測定するステップを含む。ここで、案内レール上を可動部が直線移動する直動軸受では、構造上、ローリング方向に案内レールおよび可動部の変形が発生し易いので、この直動軸受のローリング方向の変位を測定することによって、変位が大きいために影響が大きいと考えられるローリング方向の変位に対応するローリング方向の荷重(モーメント)を取得することができる。
【0013】
上記直動軸受のローリング方向の変位を少なくとも測定する構成において、好ましくは、直動軸受の変位を実際に測定するステップは、直動軸受の可動部の移動方向と直交する横方向を軸とした回転方向であるピッチング方向の変位と、直動軸受の可動部の移動方向と直交する上下方向を軸とした回転方向であるヨーイング方向の変位とをそれぞれ測定するステップをさらに含む。このように構成すれば、測定されたピッチング方向の変位とヨーイング方向の変位とに基づいて、ローリング方向の荷重(モーメント)に加えて、直動軸受に加わるピッチング方向の荷重(モーメント)とヨーイング方向の荷重(モーメント)とを取得することができる。これにより、ローリング方向、ピッチング方向およびヨーイング方向の各方向の実際の荷重(モーメント)に適合する剛性を有する直動軸受を選定することができる。
【0014】
上記直動軸受のローリング方向の変位を少なくとも測定する構成において、好ましくは、直動軸受を選定するステップは、直動軸受の可動部の移動方向と直交する横方向の荷重と、直動軸受の可動部の移動方向と直交する上下方向の荷重との両方に対して略等しい剛性を有する直動軸受を選定するステップを含む。このように構成すれば、ローリング方向の荷重(モーメント)に対する剛性の大きな直動軸受を選定することができる。
【0015】
上記一の局面による生産設備の故障発生時の復旧方法において、好ましくは、直動軸受を選定するステップは、取得した直動軸受に加わる荷重が作用する状態で所定の寿命を得ることが可能な直動軸受を選定するステップを含む。このように構成すれば、測定された直動軸受の変位に基づいて取得した直動軸受に加わる荷重が作用する状態を前提として、設定した寿命を得ることが可能な直動軸受を選定することができる。これにより、選定された直動軸受の寿命計算に用いる荷重を実際に直動軸受に加わる荷重と略一致させることができるので、故障発生時の復旧後には、寿命計算に用いる荷重と実際に直動軸受に加わる荷重との相違に起因して計算された寿命よりも短い期間で故障が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による塗装ロボットの故障発生時の復旧方法を説明するための塗装ロボットを示した模式図である。
【図2】図1に示した一実施形態による塗装ロボットの故障発生時の復旧方法を説明するための塗装ロボットを示した模式図である。
【図3】図1に示した塗装ロボットの直動軸受を説明するための模式図である。
【図4】本発明の一実施形態による塗装ロボットの故障発生時の復旧方法における直動軸受の変位の測定方法を説明するための模式図である。
【図5】本発明の一実施形態による塗装ロボットの故障発生時の復旧方法における直動軸受の変位の測定方法を説明するための模式図である。
【図6】本発明の一実施形態による塗装ロボットの故障発生時の復旧方法における直動軸受の変位の測定方法を説明するための模式図である。
【図7】本発明の一実施形態による塗装ロボットの故障発生時の復旧方法における直動軸受の変位の測定データを説明するためのグラフである。
【図8】直動軸受に加わる荷重と直動軸受の変位との関係の一例を示したグラフである。
【図9】直動軸受に加わるモーメントと直動軸受の変位との関係の一例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図9を参照して、本発明の一実施形態による塗装ロボットの故障発生時の復旧方法について説明する。なお、本実施形態では、自動車の車体の塗装作業を行う塗装ロボットの故障発生時の復旧方法に本発明を適用した例について説明する。
【0019】
まず、図1〜図3を参照して、本実施形態による復旧方法を適用する塗装ロボットについて説明する。図1および図2に示すように、塗装ロボット10は、走行台車20上に設置され、直動軸受2および3を介してC方向(図2参照)に直線移動可能なように構成されている。直動軸受2は、基部1に設けられたレール21と、レール21とC方向に直線移動可能に係合する3つの可動部22a、22bおよび22cとを有している。また、直動軸受3は、基部1に設けられたレール31と、レール31とC方向に直線移動可能に係合する3つの可動部32a、32bおよび32cとを有している。基部1(レール21および31)は、塗装対象物(車体)の搬送経路(C方向の直線経路)と略平行に設けられるとともに、搬送される塗装対象物に伴って塗装ロボット10が直線移動しながら塗装作業を行うことが可能なように構成されている。また、図1に示すように、基部1はL字状の断面形状を有し、基部1の上面にレール21が設けられるとともに、基部1の外側面にレール31が設けられている。なお、塗装ロボット10は、本発明の「生産設備」の一例である。また、レール21および31は、それぞれ、本発明の「案内レール」の一例である。
【0020】
塗装ロボット10は、基部1(レール21および31)の延びる移動方向(C方向)と直交する方向に正面側を向けて、基部1から側方に張り出すように設置されている。塗装ロボット10は、たとえば6軸(6自由度)のロボットアーム11と、塗装ガン(図示せず)が装着される手首部12と、走行台車20に固定的に取り付けられた台座13とを主として備えている。塗装ロボット10は、ロボットアーム11の構造に応じた所定の可動範囲内で任意の位置に手首部12(塗装ガン)を配置することが可能である。たとえば、塗装ロボット10は、L軸14回りの前方に角度α(図1参照)の範囲で回動可能に構成されているとともに、S軸15回りの左右方向にそれぞれ角度β(図2参照)の範囲で回動可能に構成されている。このような構成により、塗装ロボット10は、搬送される塗装対象物に伴って横方向(移動方向)に移動しながら、L軸14およびS軸15を含む各軸回りにロボットアーム11を駆動することによって、塗装作業動作を行うように構成されている。
【0021】
走行台車20は、塗装ロボット10を支持するとともに、2つの直動軸受2および3を用いてC方向に直線移動可能に構成されている。走行台車20には、直動軸受2および3の合計6つの可動部22a、22b、22c、32a、32bおよび32cが設けられている。これにより、走行台車20は、これらの可動部22a〜22cおよび32a〜32cを介して基部1(レール21および31)に直線移動可能に取り付けられている。なお、走行台車20は、図示しないボールネジなどを用いた駆動機構によって、レール21およびレール31に沿ったC方向に直線移動を行うように構成されている。
【0022】
直動軸受2の3つの可動部22a〜22cは、基部1の上面に設けられたレール21とそれぞれ所定の間隔を隔てて係合するように設けられている。また、直動軸受3の3つの可動部32a〜32cは、基部1の外側面に設けられたレール31とそれぞれ所定の間隔を隔てて係合するように構成されている。このため、可動部22a〜22cは、上面が水平方向に対して平行となる状態で配置され、可動部32a〜32cは、上面が鉛直方向(Z方向)に対して平行となる状態で配置されている。
【0023】
図3に示すように、直動軸受2の可動部22aは、レール21の両側面に形成された溝部21aと係合するように構成されている。可動部22aは、レール21に沿ったC方向(アキシアル方向、移動方向)にのみ移動可能に構成されている。可動部22aは環状の溝(図示せず)内に配置された複数のボール(図示せず)を内蔵し、可動部22aの移動時にこれらのボールがレール21と接触しながら環状の溝内で回転移動することにより、摩擦抵抗を軽減するように構成されている。したがって、可動部22aは、移動方向の荷重に対して小さな摩擦抵抗で移動する一方、上下方向(ラジアル方向および逆ラジアル方向、B方向)および横方向(A方向)には移動することなく荷重を受けるように構成されている。なお、直動軸受2の可動部22b、22c、および、直動軸受3の可動部32a〜32c(図2参照)は可動部22aと同一の構造を有するので、説明を省略する。
【0024】
上記の塗装ロボット10の移動機構において、直動軸受2および3(可動部22a〜22cおよび32a〜32c)の選定は、ISOなどの規格により定められた寿命計算(L10寿命)に基づいて行われる。L10寿命は、直動軸受の走行距離を示す数値であって、同一の直動軸受(の製品群)を同一条件下で動作させた場合に、90%の製品が算出された寿命計算値(走行距離)に問題なく到達する値であるとされる。つまり、同一の直動軸受を同一条件で使用した場合、9割の製品は算出されたL10寿命(走行距離)に問題なく到達する一方、残りの1割の製品はL10寿命に到達する前にフレーキング(剥離)などの破損が発生することになる。しかしながら、一般的に寿命計算では、直動軸受を含む構成要素は全て剛体と仮定され、構成要素の変形による影響は考慮されない。また、各機構の取付誤差の影響なども考慮されない。これらの点を検討して、本願発明者は、寿命計算値(L10寿命)に比して顕著に早い段階で故障が発生する場合には、各構成要素(レールおよび可動部)の変形による影響などの一般的な寿命計算では考慮されない要因が影響して、寿命計算に用いられる荷重(負荷条件)よりも大きな荷重が直動軸受2および3(可動部22a〜22cおよび32a〜32c)に作用している可能性があることを見出した。そこで、本願発明者は、本実施形態において、故障発生時に、可動部22a、22c、32aおよび32cの変位を実際に測定し、測定された変位に基づいて可動部22a、22c、32aおよび32cに作用する荷重を取得することにより、取得された荷重に適合する直動軸受を選定し、復旧(交換)を行うこととした。
【0025】
次に、図3〜図6を参照して、可動部22a、22c、32aおよび32cの変位の測定方法について説明する。
【0026】
本実施形態では、図3に示すように、可動部22a、22c、32aおよび32c(図2参照)の変位の測定は、レール21(31)に対する上下方向(B方向(ラジアル方向および逆ラジアル方向))と、レール21(31)に対する横方向(A方向)と、移動方向(C方向)を軸とした回転方向(ローリング方向、M方向)と、移動方向と直交する上下方向(B方向)を軸とした回転方向(ヨーイング方向、M方向)と、移動方向と直行する横方向(A方向)を軸とした回転方向(ピッチング方向、M方向)との各方向の変位について行う。
【0027】
具体的には、図4および図5に示すように、レール21に設けられた可動部22aおよび22cの両側面に、一対のキー(金属板)41および42をそれぞれ可動部22aおよび22c(レール21)と平行(図5参照)に取り付ける。また、一対のキー41および42の間のレール21上の位置にセンサ取付治具44を有するマグネットスタンド43を設けるとともに、センサ取付治具44に3つの変位センサ45をそれぞれ固定する。この際、キー41上面の点P1(P6)および点P2(P7)と、キー42上面の点P3(P8)との3点に対して変位センサ45の測定子を当接させる。なお、点P1(P6)および点P2(P7)は、C方向の直線上に位置する互いに間隔L1を隔てた点であり、点P1(P6)および点P3(P8)は、横方向(A方向)の直線上に位置する互いに間隔L2を隔てた点である。そして、各測定点P1(P6)〜P3(P8)の変位を実際に測定する。これにより、点P1(P6)および点P2(P7)の測定値(変位)と点P1(P6)および点P2(P7)の位置関係とに基づき、可動部22a(22c)のピッチング方向の変位dMを測定するとともに、点P1(P6)および点P3(P8)の測定値(変位)と点P1(P6)および点P3(P8)の位置関係とに基づき、ローリング方向の変位dMを測定することが可能である。また、点P1(P6)〜点P3(P8)の測定値に基づいて、可動部22a(22c)の上下方向の変位dBを測定する。
【0028】
また、可動部22aおよび22cの一方側面にセンサ取付治具47を有するマグネットスタンド46をそれぞれ取り付け、2つの変位センサ48をセンサ取付治具47にそれぞれ固定する。この際、レール21の側面部であって、可動部22aおよび22cの両側の点P4(P9)およびP5(P10)の2点に対して変位センサ48の測定子を当接させる。なお、図5において、これらのマグネットスタンド46、センサ取付治具47および変位センサ48の図示を省略している。また、点P4(P9)および点P5(P10)は、C方向の直線上に位置する互いに間隔L3を隔てた点である。そして、各測定点P4(P9)およびP5(P10)の変位を実際に測定する。これにより、可動部22a(22c)の両側の点P4(P9)および点P5(P10)の測定値(変位)と点P4(P9)および点P5(P10)の位置関係とに基づき、可動部22a(22c)のヨーイング方向の変位dMを測定することが可能である。なお、点P4(P9)およびP5(P10)の測定値に基づいて可動部22a(22c)の横方向の変位dAも測定する。
【0029】
また、図6に示すように、レール31に設けられた可動部32aおよび32cのそれぞれに対しても、同様にキー51および52を設けるとともに、レール31に設置したマグネットスタンド53およびマグネットスタンド53に取り付けたセンサ取付治具54を介して、3つの変位センサ55をそれぞれ固定する。この際、キー51上面側(レール31に対する可動部32aおよび32cの上方向(逆ラジアル方向)側)の点P11(P16)および点P12(P17)と、キー52上面側(逆ラジアル方向側)の点P13(P18)との3点に対して各変位センサ55の測定子を当接させる。なお、点P11(P16)〜点P13(P18)の各点の位置関係は、上記した点P1(P6)〜点P3(P8)の各点の位置関係と同様である。そして、各測定点P11(P16)〜P13(P18)の変位を実際に測定する。これにより、点P11(P16)および点P12(P17)の測定値(変位)と点P11(P16)および点P12(P17)の位置関係とに基づき、可動部32a(32c)のピッチング方向の変位dMを測定するとともに、点P11(P16)および点P13(P18)の測定値(変位)と点P11(P16)および点P13(P18)の位置関係とに基づき、ローリング方向の変位dMを測定することが可能である。また、点P11(P16)〜点P13(P18)の測定値に基づいて、可動部32a(32c)の上下方向の変位dBを測定する。
【0030】
また、可動部32aおよび32cの一方側面にセンサ取付治具57を有するマグネットスタンド56をそれぞれ取り付け、2つの変位センサ58をセンサ取付治具57にそれぞれ固定する。この際、レール31の側面部であって、可動部32aおよび32cの両側の点P14(P19)および点P15(P20)に対してセンサ取付治具57に固定した各変位センサ58の測定子を当接させる。なお、点P14(P19)および点P15(P20)の位置関係は、上記した点P4(P9)および点P5(P10)の位置関係と同様である。そして、各測定点P14(P19)およびP15(P20)の変位を実際に測定する。これにより、点P14(P19)および点P15(P20)の測定値(変位)と点P14(P19)および点P15(P20)の位置関係とに基づき、可動部32a(32c)のヨーイング方向の変位dMを測定することが可能である。また、点P4(P9)およびP5(P10)の測定値に基づいて可動部32a(32c)の横方向の変位dAも測定する。なお、可動部32aおよび32cは基部1の側面側のレール31に取り付けられているので、可動部22aおよび22cと異なり、可動部32aおよび32cの横方向Aは鉛直方向(矢印Z方向)と一致し、可動部32aおよび32cの上下方向(ラジアル方向、逆ラジアル方向)は水平方向と一致する。
【0031】
次に、図1〜図9を参照して、塗装ロボット10の故障発生時の復旧手順について説明する。
【0032】
まず、図4〜図6に示すように、可動部22a、22c、32aおよび32cに対して、上記のキー41、42、51および52をそれぞれ取り付ける。また、マグネットスタンド43、46、53および56を設置し、それぞれセンサ取付治具44、47、54および57を介して変位センサ45、48、55および58を固定する。
【0033】
次に、一旦塗装ロボット10を走行台車20から取り外すとともに、各変位センサ45、48、55および58の測定値を0にリセットする。すなわち、直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に対する荷重を取り除いた状態を変位の基準値として設定する。
【0034】
その後、塗装ロボット10を走行台車20に取り付け、塗装ロボット10に実際の塗装作業動作を実行させながら、直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変位測定を行う。塗装作業動作において、塗装ロボット10は、L軸14回りの前方に角度α(図1参照)の範囲内で上下に回動するとともに、S軸15回りの左右方向にそれぞれ角度β(図2参照)の範囲内で回動(首振り)する。この結果、塗装ロボット10および走行台車20の重量と、塗装ロボット10の慣性力とに起因して、直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に作用する荷重は変化する。この荷重の変化が、荷重を取り除いた状態でリセットした基準値からの各方向における変位となって計測される。このようにして、各変位センサ45、48、55および58の測定値に基づいて、可動部22a、22c、32aおよび32cの上下方向の変位dBと、横方向の変位dAと、ローリング方向の変位dMと、ヨーイング方向の変位dMと、ピッチング方向の変位dMとが、それぞれ計測される。変位計測により、たとえば、ローリング方向の変位dMと、ヨーイング方向の変位dMと、ピッチング方向の変位dMとについて、図7に示す変位データが取得される。この図7に示す変位データでは、ローリング方向の変位dMがヨーイング方向の変位dMおよびピッチング方向の変位dMと比較して大きいことが分かる。
【0035】
各方向の変位が測定されると、図8および図9に示すように、直動軸受に加わる各方向の荷重(モーメント)と変位量との関係を示すグラフ(剛性線図)を用いて、実際に直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に加わる荷重を取得する。この剛性線図は、直動軸受の製品毎に、製造元より提供を受けるか、または実際に直動軸受(同一製品)に対して試験を行うことにより取得する。本実施形態において、可動部22a〜22cおよび32a〜32cについて、図8に示す剛性線図(荷重−変位曲線)では、たとえば、逆ラジアル方向(矢印B1方向、図3参照)に0.01[mm]の変位dBが測定された場合、約2[kN]の荷重が直動軸受の可動部に加わっていることを示している。同様に、横方向(A方向)に0.01[mm]の変位dAが測定された場合、約3[kN]の荷重が直動軸受の可動部に加わっており、ラジアル方向(矢印B2方向、図3参照)に0.01[mm]の変位dBが測定された場合、約7[kN]の荷重が直動軸受の可動部に加わっていることを示している。また、図9に示す剛性線図(モーメント−変位(角度)曲線)では、たとえば、ローリング方向にtanθ=0.005の変位dMが測定された場合、約50[N・m]のモーメントが直動軸受の可動部に加わっていることを示している。同様に、ピッチング方向にtanθ=0.005の変位dMが測定された場合、約400[N・m]のモーメントが直動軸受の可動部に加わっており、ヨーイング方向にtanθ=0.005の変位dMが測定された場合、約600[N・m]のモーメントが直動軸受の可動部に加わっていることを示している。なお、各方向における2点の測定点(たとえば、点P1(P6)および点P2(P7))間の距離L1の場合に、2点の測定点における変位量の差分をxとすれば、tanθ=x/L1である。また、角度変位θが小さいとき、tanθ≒θとみなすことができる。これにより、各方向について実際に計測された変位を生じる場合に、可動部22a、22c、32aおよび32cに作用している荷重(モーメント)が取得される。
【0036】
その後、取得された荷重(モーメント)に基づいて、取得した荷重(モーメント)が作用する状態で設計上の寿命(走行距離)を得ることが可能な直動軸受を選定する。取得された荷重(モーメント)が設計時に想定された負荷条件を上回る場合には、改めて、取得された荷重(モーメント)に基づく寿命計算を行い、設定したL10寿命(走行距離)を得ることが可能な直動軸受を選定する。この際、横方向の荷重と、上下方向(ラジアル方向および逆ラジアル方向)の荷重との両方に対して略等しい剛性(定格荷重)を有する直動軸受(いわゆる4方向等荷重型の直動軸受)を選定する。また、取得された荷重(モーメント)が設計時の寿命計算において想定された荷重と同等の範囲内であれば、今回の故障は確率の問題(すなわち、L10寿命において寿命に到達しない10%の群に含まれること)、または、他の要因により故障に至った可能性がある。
【0037】
直動軸受が選定されると、ロボット装置10の可動部22a〜22cおよび32a〜32cを、選定された新たな直動軸受に交換する復旧作業を行う。以上により、塗装ロボット10の故障時の復旧が完了し、実際の塗装作業においても設計された寿命を得ることが可能な直動軸受に交換される。
【0038】
本実施形態では、上記のように、故障発生時に直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変位を実際に測定し、測定された直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変位に基づいて、直動軸受2および3(可動部22a〜22cおよび32a〜32c)に加わる荷重と直動軸受2および3(可動部22a〜22cおよび32a〜32c)の変位との関係を示したグラフを用いて直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に加わる荷重を取得する。これにより、実際に測定される直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変位に基づいて直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に加わる荷重が取得されるので、通常の寿命計算では考慮されない変形などの影響が反映された、直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に実際に作用する荷重を取得することができる。そして、取得した直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に加わる荷重に適合する剛性を有する直動軸受を選定することによって、塗装ロボット10の直動軸受2および3(可動部22a〜22cおよび32a〜32c)に実際に作用する荷重に適合する剛性を有する直動軸受を選定することができるので、塗装ロボット10に故障が発生した場合に、最適な剛性を有する直動軸受を選定することができる。その結果、復旧時に最適な寿命を有する直動軸受に交換することができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記のように、塗装ロボット10を走行台車20から取り外した状態で測定値を0にリセットして(変位の基準として)、塗装ロボット10を走行台車20上に設置した状態における直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変位を測定することによって、塗装ロボット10の重量に起因する直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変形(撓み)が発生しない状態を変位の基準として変位測定を行うことができる。これにより、通常の寿命計算では考慮されない塗装ロボット10の重量に起因する直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変形などの影響を変位の測定値に反映させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、走行台車20上に設置された塗装ロボット10の作業動作状態における直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変位を実際に測定することによって、塗装ロボット10の実際の作業動作時に発生する慣性力などの影響を直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変位の測定値に反映させることができるので、測定された直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変位に基づいて直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に加わる荷重を取得することによって、より正確に、塗装ロボット10の作業動作時に実際に直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に作用する荷重を取得することができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、可動部22a、22c、32aおよび32cの移動方向(C方向)を軸とした回転方向であるローリング方向(M方向)の変位dMを測定する。ここで、レール21(31)上を可動部22a〜22c(32a〜32c)が直線移動する直動軸受2(3)では、構造上、ローリング方向に直動軸受2および3の変形が発生し易いので、この可動部22a、22c、32aおよび32cのローリング方向の変位dMを測定することによって、変位が大きいために影響が大きいと考えられるローリング方向の変位dMに対応するローリング方向の荷重(モーメント)を取得することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、可動部22a、22c、32aおよび32cの移動方向と直交する横方向(A方向)を軸とした回転方向であるピッチング方向(M方向)の変位dMと、可動部22a、22c、32aおよび32cの移動方向と直交する上下方向(B方向)を軸とした回転方向であるヨーイング方向(M方向)の変位dMとをそれぞれ測定することによって、測定されたピッチング方向の変位dMとヨーイング方向の変位dMとに基づいて、ローリング方向(M方向)の荷重(モーメント)に加えて、可動部22a、22c、32aおよび32cに加わるピッチング方向(M方向)の荷重(モーメント)とヨーイング方向(M方向)の荷重(モーメント)とを取得することができる。これにより、ローリング方向、ピッチング方向およびヨーイング方向の各方向の実際の荷重(モーメント)に適合する剛性を有する直動軸受を選定することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、可動部22a〜22cおよび32a〜32cの移動方向(C方向)と直交する横方向(A方向)の荷重と、可動部22a〜22cおよび32a〜32cの移動方向と直交する上下方向(B方向)の荷重との両方に対して略等しい剛性を有する直動軸受を選定することによって、ローリング方向の荷重(モーメント)に対する剛性の大きな直動軸受を選定することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、取得した直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に加わる荷重が作用する状態で設計上の寿命を得ることが可能な直動軸受を選定することによって、測定された直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)の変位に基づいて取得した直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に加わる荷重が作用する状態を前提として、設計した寿命を得ることが可能な直動軸受を選定することができる。これにより、選定された直動軸受の寿命計算に用いる荷重を実際に直動軸受2および3(可動部22a、22c、32aおよび32c)に加わる荷重と略一致させることができるので、故障発生時の復旧後には、寿命計算に用いる荷重と実際に直動軸受2および3(可動部22a〜22cおよび32a〜32c)に加わる荷重との相違に起因して、計算された寿命よりも短い期間で故障が発生するのを抑制することができる。
【0045】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0046】
たとえば、上記実施形態では、本発明を塗装ロボット10の故障発生時の復旧に適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、案内レールと、案内レール上を直線移動する可動部とを有する直動軸受を用いて移動可能な走行台車上に設置された生産設備であれば、塗装ロボット10以外の他の生産設備の故障発生時の復旧方法として適用可能である。したがって、たとえば、溶接ロボット、組み立てロボットおよびレシプロケータ(往復自動塗装機)などの故障発生時の復旧方法に本発明を適用してもよい。また、本発明の生産設備として、上記実施形態において示した塗装ロボット10以外の塗装ロボットを用いてもよい。すなわち、塗装ロボットは、たとえば7軸(7自由度)以上のロボットアームを有していてもよいし、5軸(5自由度)以下のロボットアームを有していてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、レール21と係合する可動部22a〜22cを上面が水平となるように配置し、レール31と係合する可動部32a〜32cを上面が垂直になるように配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、直動軸受はどのように配置されていてもよい。したがって、可動部22a〜22cおよび32a〜32cを全て上面が水平となるように配置してもよいし、可動部22a〜22cおよび32a〜32cを全て上面が垂直となるように配置してもよい。また、レールを1本または3本以上設けて、それぞれ1または複数の可動部を配置してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、走行台車20に直動軸受2および3の可動部を合計6つ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、直動軸受の可動部を5つ以下または7つ以上設けてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、直動軸受2および3の合計6つの可動部22a〜22cおよび32a〜32cのうち、両端の4つの可動部22a、22c、32aおよび32cの変位を計測した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、6つの可動部全ての変位を計測してもよい。また、5つまたは3つ以下の可動部の変位を計測してもよい。ただし、塗装ロボットの重心位置や塗装ロボットの塗装動作により、各可動部に作用する荷重はそれぞれ異なるので、各直動軸受(可動部)に実際に作用する荷重を精度よく取得するためには、より多くの可動部の変位を計測した方が好ましい。
【0050】
また、上記実施形態では、上下方向(ラジアル方向および逆ラジアル方向、B方向)と、横方向(A方向)と、ローリング方向(M方向)と、ヨーイング方向(M方向)と、ピッチング方向(M方向)との各方向の変位について計測した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ローリング方向、ヨーイング方向およびピッチング方向の3方向(回転方向)についてのみ変位の測定を行ってもよいし、ローリング方向の変位のみを測定してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、一旦塗装ロボット10を走行台車20から取り外して、直動軸受に対する荷重を取り除いた状態を変位の基準値として変位測定を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、塗装ロボットが設置された静止状態を変位の基準として、塗装ロボットの塗装作業動作状態における直動軸受の変位を計測してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、塗装ロボット10に実際の塗装作業動作を実行させながら、直動軸受の変位測定を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、変位測定用の動作を塗装ロボットに実行させて、その変位測定用の動作状態における直動軸受の変位を計測してもよい。変位測定用の動作としては、たとえば塗装ロボットのロボットアームの各軸の可動範囲の限界の位置まで往復駆動するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、横方向の荷重と、上下方向(ラジアル方向および逆ラジアル方向)の荷重との両方に対して略等しい剛性を有する直動軸受(いわゆる4方向等荷重型)を選定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、取得された各方向の荷重(モーメント)に適合する直動軸受を選定すれば、4方向の剛性がそれぞれ異なるタイプの直動軸受を選定してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、変位センサの測定子を各測定位置に直接接触させて直動軸受の変位測定を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、直動軸受(可動部)の各方向の変位を測定することが可能であれば、どのような方法で変位測定を実施してもよい。たとえば、レーザー変位計などを用いて非接触で変位測定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0055】
2、3 直動軸受
10 塗装ロボット(生産設備)
20 走行台車
21、31 レール(案内レール)
22a、22b、22c、32a、32b、32c 可動部
A方向 直動軸受の横方向
B方向 直動軸受の上下方向
C方向 直動軸受の可動部の移動方向
方向 ピッチング方向
方向 ヨーイング方向
方向 ローリング方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、前記案内レール上を直線移動する可動部とを有する直動軸受を用いて移動可能な走行台車上に設置された生産設備の故障発生時の復旧方法であって、
故障発生時に前記直動軸受の変位を実際に測定するステップと、
測定された前記直動軸受の変位に基づいて、前記直動軸受に加わる荷重と前記直動軸受の変位との関係を示したグラフを用いて前記直動軸受に加わる荷重を取得するステップと、
取得した前記直動軸受に加わる荷重に適合する剛性を有する直動軸受を選定するステップと、
選定した前記直動軸受に加わる荷重に適合する剛性を有する直動軸受を、故障の発生した前記走行台車の前記直動軸受と交換するステップとを備えた、生産設備の故障発生時の復旧方法。
【請求項2】
前記直動軸受の変位を実際に測定するステップは、前記生産設備を前記走行台車から取り外した状態を変位の基準として、前記生産設備を前記走行台車上に設置した状態における前記直動軸受の変位を測定するステップを含む、請求項1に記載の生産設備の故障発生時の復旧方法。
【請求項3】
前記直動軸受の変位を実際に測定するステップは、前記走行台車上に設置された前記生産設備の作業動作状態における前記直動軸受の変位を実際に測定するステップを含む、請求項1または2に記載の生産設備の故障発生時の復旧方法。
【請求項4】
前記直動軸受の変位を実際に測定するステップは、前記直動軸受の可動部の移動方向を軸とした回転方向であるローリング方向の変位を少なくとも測定するステップを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生産設備の故障発生時の復旧方法。
【請求項5】
前記直動軸受の変位を実際に測定するステップは、前記直動軸受の可動部の移動方向と直交する横方向を軸とした回転方向であるピッチング方向の変位と、前記直動軸受の可動部の移動方向と直交する上下方向を軸とした回転方向であるヨーイング方向の変位とをそれぞれ測定するステップをさらに含む、請求項4に記載の生産設備の故障発生時の復旧方法。
【請求項6】
前記直動軸受を選定するステップは、前記直動軸受の可動部の移動方向と直交する横方向の荷重と、前記直動軸受の可動部の移動方向と直交する上下方向の荷重との両方に対して略等しい剛性を有する直動軸受を選定するステップを含む、請求項4または5に記載の生産設備の故障発生時の復旧方法。
【請求項7】
前記直動軸受を選定するステップは、取得した前記直動軸受に加わる荷重が作用する状態で所定の寿命を得ることが可能な直動軸受を選定するステップを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生産設備の故障発生時の復旧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−13469(P2012−13469A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148404(P2010−148404)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】