説明

用紙搬送装置、画像形成装置

【課題】 コストアップや装置の大型化を防止又は抑制しつつ、用紙ジャムの検出動作と用紙に穿孔部が形成されている場合にその穿孔部の検出動作とを行うことのできる用紙搬送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】 導電性及び弾力性を有する多数の線材52aを備えて構成されるブラシ状電気切片52を用紙の搬送路上に備え、ブラシ状電気切片52の全ての線材52aに電流が流れる場合と一部の線材52aに電流が流れない場合とを検出することで、用紙ジャムが発生しているか否か、及び原稿に穿孔部が形成されているか否かを検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FAXや複写機等の画像形成装置及び該画像形成装置に搭載される用紙搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばFAXや複写機等には、原稿を画像読取位置に搬送するための原稿搬送装置が搭載されており、この原稿搬送装置内において発生した原稿のジャムを検出する機構として、アクチュエータとフォトインタラプタとを用いた機構が一般的に知られている。図10は、アクチュエータとフォトインタラプタとを用いて用紙ジャムを検出する機構の概念図であり、図10(a)は、該機構の側面図、図10(b)は平面図である。
【0003】
図10(a),(b)に示すように、ジャム検出機構100は、発光器102及び受光器103を備えてなるフォトインタラプタ101と、用紙の搬送路上に突出し、支点Gを中心として揺動可能なアーム部104a及びフォトインタラプタ101の発光器102と受光器103との間の間隙に対して前記アーム部104aの姿勢に応じて進退可能な遮光板104bとが一体形成されたアクチュエータ104とを有する。そして、ジャム検出機構100は、アーム部104aが用紙から所定時間以上押圧力を受け、それにより発光器102と受光器103との間の光の授受が前記遮光板104bで所定時間以上遮断された場合に、用紙のジャムが発生したものと判断するように構成されている。また、従来では、このジャム検出機構100は、用紙の搬送方向に対する幅方向の中央位置に設置され、用紙の幅方向中央位置で用紙ジャムを検出する。
【0004】
ところで、FAXや複写機等による画像の読取り対象の原稿として、例えばルーズリーフのように穿孔部が形成されているものがある。この場合、従来では、穿孔部に対応する部分の画像は黒色で表されるように構成されているが、この穿孔部の存在を反映した黒画像は、ユーザにとって不要なものであることが多い。
【0005】
下記特許文献1には、この穿孔部に係る問題に対処すべく、用紙に形成された穿孔部のパターン(以下、基準パターンという)を予め記憶しておき、用紙から読み取った穿孔部の画像データを前記基準パターンと照合し、それらが一致すると、基準パターンに係る穿孔部の情報にしたがい、穿孔部の画像データを白色の画像データに置換した上で用紙の画像形成動作を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開平7−221969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FAXや複写機等において用紙ジャムが発生した場合、該ジャム用紙を除去しようとしてユーザにより該用紙が引っ張られる結果、そのジャム用紙が破断する場合がある。ここで、ジャム検出機構として前述のジャム検出機構100が採用されている場合を想定したとき、該ジャム検出機構100は、前述したように用紙の搬送方向に対する幅方向の中央位置に設置されているため、ジャム用紙がその中央位置を避ける態様で破断した場合に、ジャム用紙の一部が前記ジャム検出機構の配設位置より用紙の搬送方向下流側(図10(c)で示す基準線Mより左側)に突出しているにも拘わらず、用紙がアクチュエータ104を押圧しないため、当該ジャム検出機構100によって用紙ジャムが発生したものと判断されないこととなる。したがって、従来のジャム検出機構では、このような破断状態の用紙ジャムについてはジャム用紙発生として検出することができなかった。
【0007】
一方、前記特許文献1においては、用紙から読み取った穿孔部の画像データと前記基準パターンとの照合等のデータの解析に時間を要するとともに、予め穿孔部のパターンを記憶したものにしか対応できなかった。
【0008】
さらに、前述のようなジャム検出機能と穿孔部の検出機能との両方をFAXや複写機に搭載することを想定したとき、穿孔部を検出する検出手段と前記ジャム検出機構100とをそれぞれ設ける必要が生じるため、コストアップや装置の大型化を招来することとなる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、コストアップや装置の大型化を防止又は抑制しつつ、用紙ジャムの検出動作と用紙に穿孔部が形成されている場合にその穿孔部の検出動作とを行うことのできる用紙搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、用紙の搬送路を形成する部材の所定位置に設置された電極と、前記搬送路上の所定位置に突出して設けられ、前記電極に接触するときの第1の姿勢と搬送中の用紙から押圧力を受けて前記電極に対して非接触となる第2の姿勢とをとり得るように、弾力性及び導電性を有する複数本の線材が前記搬送路上における用紙の搬送方向と交差する方向に配列されて構成されるブラシ状電気切片と、前記電極及びブラシ状電気切片を含んで構成される電気回路に通電を行う通電部とを備えたことを特徴とする用紙搬送装置である。
【0011】
この発明によれば、弾力性及び導電性を有する複数本の線材が搬送路上における用紙の搬送方向と交差する方向に配列されて構成されるブラシ状電気切片を設け、ブラシ状電気切片と電極とを含んで構成される電気回路に通電を行うようにしたので、用紙の搬送方向に対する幅方向に一様に用紙体が存在する場合と存在しない場合との区別を行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の用紙搬送装置において、前記搬送路上で搬送すべき用紙が載置される用紙載置部と、前記用紙載置部上の用紙の有無を検出する用紙検出センサとを備えるとともに、前記電気回路に流れる電流の状態と前記用紙検出センサの出力信号とを用いて、前記搬送路上の用紙ジャムの有無を判断する判断部を備えることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、電気回路に流れる電流の状態と用紙検出センサの出力信号とを用いて、前記搬送路上の用紙ジャムの有無を判断するようにしたので、用紙の搬送方向に対する幅方向に一様に用紙体が存在しないようなジャム用紙の破損状態であっても、用紙ジャムの検出を行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の用紙搬送装置において、前記判断部は、前記用紙検出センサにより前記用紙載置部上に用紙が載置されていると検出され、且つ前記電気回路に電流が流れていないときに、前記搬送路上に用紙ジャムが発生しているものと判断することを特徴とするものである。
【0015】
この発明によれば、前記搬送路上に用紙ジャムが発生しているものとの判断を行うときの具体的な条件を決めることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の用紙搬送装置と、前記用紙搬送装置による用紙の搬送中に、前記電気回路に流れる電流の状態を用いて前記用紙における穿孔部の形成状態の検出処理を行う穿孔部検出部と、前記用紙搬送装置により搬送された原稿の画像を光電変換処理により読み取る画像読取部と、前記画像データのうち前記穿孔部検出部により検出された穿孔部に対応する部分の画像データを白画像データに置換する処理を施すデータ処理部と、前記データ処理部による処理後の画像データに基づいて、画像を用紙に形成する画像形成部とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0017】
この発明によれば、用紙上の穿孔部を検出すると、読取動作で得られた画像データのうちその穿孔部に対応する部分の画像データを白画像データに置換する処理を施し、その画像データに基づいて画像形成動作を行うようにしたので、穿孔部の存在により不要な黒画像が生成されるのを回避することができる。なお、前記穿孔部の形成状態とは、用紙上の穿孔部の有無だけでもよいし、穿孔部の有無だけでなく穿孔部が存在する場合にその穿孔部の位置やサイズを含むものでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、用紙の搬送方向に対する幅方向に一様に用紙体が存在する場合と存在しない場合との区別を用紙搬送装置で行えるので、該用紙搬送装置を、用紙ジャムの検出動作と用紙に穿孔部が形成されている場合のその穿孔部の検出動作とに兼用することができ、コストアップや装置の大型化を防止又は抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る用紙搬送装置を備えた画像形成装置の一例である複写機の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る複写機の内部構成を示す側面図である。
【0020】
図1に示すように、複写機1は、本体部2と、本体部2の左方に配設されたスタックトレイ3と、本体部2の上部に配設された原稿読取部4と、原稿読取部4の上方に配設された原稿給送部5とを有している。
【0021】
複写機1のフロント部には、操作部6が設けられている。操作部6には、ユーザが印刷の実行指示を入力するためのスタートキー7と、印刷部数等を入力するためのテンキー8と、各種複写動作の操作ガイド情報等を表示し、これら各種設定入力用にタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等からなる表示部9と、表示部9で設定された設定内容等をリセットするリセットキー10と、実行中の印刷(画像形成)動作を停止させるためのストップキー11と、複写機1に搭載される各種機能を切り換えるための機能切り換えキー12とが備えられている。
【0022】
原稿読取部4は、CCD(Charge Coupled Device)センサ及び露光ランプ等からなる
画像読取部13と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台14と、コンタクトガラス15とを備える。画像読取部13は、図略の駆動部によって移動可能に構成されており、原稿台14に載置された原稿を読み取るときは、原稿台14に対向する位置で原稿面に沿って移動し、原稿画像を走査しつつ取得した画像データを制御部56(図7参照)へ出力する。また、画像読取部13は、原稿給送部5により給送された原稿を読み取るときは、コンタクトガラス15と対向する位置に移動し、コンタクトガラス15を介して原稿給送部5による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、その画像データを制御部56へ出力する。
【0023】
原稿給送部5は、原稿を載置するための原稿載置部16と、画像読取済みの原稿を排出するための原稿排出部17と、原稿載置部16に載置された原稿を1枚ずつ繰り出してコンタクトガラス15に対応する位置へ搬送し、原稿排出部17へ排出するための給紙ローラ及び搬送ローラ等からなる原稿搬送機構18とを備える。原稿給送部5は、本発明に係る用紙搬送装置の一例である。
【0024】
原稿給送部5は、その前面側が上方に移動可能となるように本体部2に対して回動自在に設けられている。原稿給送部5の前面側を上方に移動させて原稿台14上面を開放することにより、原稿台14の上面に読み取り原稿、例えば見開き状態にされた書籍等を操作者が載置できるようになっている。
【0025】
本体部2は、複数の給紙カセット19と、給紙カセット19から記録紙を1枚ずつ繰り出して記録部21へ搬送する給紙ローラ20と、給紙カセット19から搬送されてきた記録紙に画像を形成する記録部21とを備える。
【0026】
記録部21(画像形成部)は、原稿読取部4で取得された画像データに基づきレーザ光等を出力して感光体ドラム22を露光する光学ユニット23と、感光体ドラム22上にトナー像を形成する現像部24と、感光体ドラム22上のトナー像を記録紙に転写する転写部25と、トナー像が転写された記録紙を加熱してトナー像を記録紙に定着させる定着部26と、記録部21内の用紙搬送路中に設けられ、記録紙をスタックトレイ3又は原稿排出部27まで搬送する搬送ローラ28(281,282)等とを備える。
【0027】
図2は、原稿給送部5の詳細な構造を示す図である。
【0028】
図2に示すように、原稿給送部5は、トップページを上向きにしてページ順に原稿載置部16に載置される原稿束から1枚ずつ原稿を取り込み、トップページを下向きにしてページ順に原稿排出部17に排出する。
【0029】
原稿載置部16(用紙載置部)は、画像情報を有する原稿Pを積層して載置可能に構成されたものである。原稿載置部16の底部には、原稿載置部16上の原稿Pの有無を検出する原稿セットセンサ29(用紙検出センサ)が設けられている。原稿セットセンサ29は、原稿載置部16上に突出する回転可能なレバー30を備え、原稿載置部16に原稿が載置されていないときには、図2の実線で示す位置に位置する一方、原稿載置部16に原稿が載置されると、図2の破線で示す位置に位置する。このレバー30の位置に応じて原稿セットセンサ29に内蔵される図略のスイッチがオンオフすることで、原稿載置部16上の原稿Pの有無を検出する。すなわち、原稿載置部16上に原稿Pが存在するときには前記スイッチがオンする一方、原稿載置部16上に原稿Pが存在しないときには前記スイッチがオフする。
【0030】
分離給紙部31は、原稿載置部16上に載置された原稿束から1枚ずつ原稿Pを取り込んで第1搬送路32に給紙するものである。この分離給紙部31では、原稿載置部16の上方に配置された前送りローラ33が、原稿載置部16上の原稿Pを給紙ローラ34及び分離コロ35に向かって給紙する。そして、給紙ローラ34が原稿載置部16上の原稿Pを送り出すように回転駆動する一方、この給紙ローラ34に対して摺接状態で配置された分離コロ35が、給紙ローラ34からの圧力に応じた回転抵抗を生じつつ従動回転することにより、原稿載置部16上に載置された原稿束をさばき、その最上位置にある1枚の原稿Pを分離して第1搬送路32に給紙するようになっている。
【0031】
第1搬送路32は、分離給紙部31からレジストローラ対36,37の配設位置に至る搬送路である。第1搬送路32の下流端に配設されたレジストローラ対36,37は原稿
Pの先端揃えを行うものである。第2搬送路38は、レジストローラ対36,37の配設位置から第1搬送ローラ対39,40の配設位置までに至る搬送路であり、第3搬送路41は、第1搬送ローラ対39,40の配設位置から第2搬送ローラ対42,43の配設位置までに至る搬送路であり、第4搬送路44は、第2搬送ローラ対42,43の配設位置から原稿読み取り位置45までに至る搬送路である。第1搬送ローラ対39,40及び第2搬送ローラ対42,43により原稿Pが原稿読み取り位置45に搬送される。
【0032】
第2搬送ローラ対42,43の近傍位置(上流側の位置)にはブラシ状電気切片52(図3、図4参照)が設けられており、該ブラシ状電気切片52は、後述するように原稿Pのジャムの検出等に用いられる。
【0033】
原稿読み取り位置45は、本体部2上面に設けられたコンタクトガラス15とその上方に配置されたガイドローラ46との隙間に形成されており、この原稿読み取り位置45を通過する原稿Pの下側面の画像情報を、所謂流し読み方式によって読み取るものである。原稿読み取り位置45には、本体部2内に、原稿Pに光を照射する露光ランプ、原稿Pからの反射光を導光するレンズ系や反射ミラー、さらに導光された反射光から画像情報を検出する画像読取部13等が備えられている。
【0034】
第5搬送路47は、原稿読み取り位置45から原稿排出部17に至る搬送路である。この第5搬送路47には中間ローラ対48,49が設けられており、中間ローラ対48,49は、原稿Pをさらに第5搬送路47の下流側に搬送する。
【0035】
原稿排出部17は、原稿載置部16の下側に配置されており、画像の読み取りを終えた原稿が、第5搬送路47の出口に設けられた排出ローラ対50,51により、原稿載置部16上に載置された原稿束のページ順通りに排出される部位である。
【0036】
図3は、前記ブラシ状電気切片52の配設状態を示す図、図4は、ブラシ状電気切片52を含む用紙検出機構55の構成を示す図である。図3,図4に示すように、ブラシ状電気切片52は、多数の線材52aが原稿の搬送方向と交差する方向(本実施形態では略直交する方向)に、搬送され得る原稿のうち最大幅を有する原稿のその幅に相当する長さ分は少なくとも有するように並設されてなり、各線材52aの一端部は導電性を有する共通の支持部材(図示せず)に接着され、該支持部材は前記第3搬送路41を構成するフレーム53,54のうち一方のフレーム54に固着されている。これにより、ブラシ状電気切片52の各線材52aは、他方のフレーム53に向けて前記第3搬送路41内に進入する。各線材52aは、例えばカーボンからなり、導電性を有するとともに弾性的に変形するように構成されている。
【0037】
図4に示すように、各線材52aは、電源VDDに接続された抵抗素子R1に対して並列に接続されている。また、各線材52aの自由端側に位置するフレーム53は電極として機能してグランドに接続されており、各線材52aが真っ直ぐに伸びているときには、各線材52aはフレーム53に接触するようになっている。電源VDD、抵抗素子R1、線材52a、前記図略の支持部材及びフレーム53,54により電気回路が形成されており、該電気回路には、微弱な電流、例えば数mA程度の電流が流れるように構成されている。
【0038】
抵抗素子R1の低電位側端子SにはトランジスタQ1のベース端子が接続されている。トランジスタQ1のコレクタ端子には抵抗素子R2を介して電源VDDが接続されており、エミッタ端子はグランドに接続されている。トランジスタQ1のコレクタ端子は、当該複写機1の動作を制御する制御部56(通電制御部58 図7参照)に接続されており、トランジスタQ1から前記制御部56にコレクタ電圧が出力される。
【0039】
複数の線材52aのうち所定数以上の線材がフレーム53に対して非接触となると、抵抗素子R1の低電位側端子における電圧が所定電圧より大きくなり、トランジスタQ1のベース電圧が高くなるため、トランジスタQ1には電流が流れず、コレクタ端子からL(ロー)の出力信号が出力されるようになっている。
【0040】
ブラシ状電気切片52の配設位置に用紙Pが搬送されていないときには、ブラシ状電気切片52における略全ての線材52aの先端部とフレーム53とが接触した状態となる。このとき、電源VDDから抵抗素子R1、各線材52a及びフレーム53等を介してグランドに電流が流れる。また、これに伴って、トランジスタQ1のベース電圧がL(ロー)となるため、該トランジスタQ1のコレクタ電圧はH(ハイ)となる。
【0041】
また、ブラシ状電気切片52の配設位置に用紙Pが搬送され用紙Pがブラシ状電気切片に当接すると、ブラシ状電気切片52の一部の線材52aは、その用紙Pから押圧力を受けて先端側がフレーム53から離間するように湾曲し、その湾曲した線材52aの先端部とフレーム53とが非接触の状態となる。このとき、抵抗素子R1、前記線材52a及びフレーム53には電流が流れないため、トランジスタQ1のベース電圧がH(ハイ)となり、該トランジスタQ1のコレクタ電圧はL(ロー)となる。
【0042】
本実施形態では、ブラシ状電気切片52とフレーム53との接触/非接触状態に応じた電気的な導通/非導通状態を検出するとともに、原稿セットセンサ29により原稿載置部16上の原稿Pの有無を検出することにより、第3搬送路41上での原稿Pのジャムを検出するようにしている。
【0043】
すなわち、原稿セットセンサ29内の前記スイッチがオンからオフに切り替わり、原稿載置部16上に原稿Pが無くなった旨の信号が原稿セットセンサ29から所定時間出力されているにも拘わらず、トランジスタQ1のコレクタ電圧はL(ロー)となっている、すなわち一部又は全部の線材52aの先端部とフレーム53とが非接触の状態であると検出された場合、用紙ジャムが発生したものと考えられる。
【0044】
このことから、本実施形態では、原稿載置部16上に原稿Pが無くなった旨の信号が原稿セットセンサ29から所定時間出力され、且つトランジスタQ1のコレクタ電圧はL(ロー)となっているとき、用紙ジャムが発生したものと判断するようにしている。
【0045】
以上の構成に加えて、複写機1においては、前記構成を有するブラシ状電気切片52を用いて、ルーズリーフ等の穿孔部を有する原稿Pの前記穿孔部を検出し、記録部21により形成される画像に該穿孔部による影響が反映されないようにしている。以下、これについて説明する。
【0046】
例えば図5(a)に示すように、複数の同径の穿孔部Pxが一端部に直列に形成されている原稿(ルーズリーフ)Pの画像を複写する場合において、その穿孔部Pxの配列方向と直交する方向(矢印Aの方向)に原稿を搬送することを想定する。図5(b)は、図5(a)の矢印Bで示す部位の拡大図である。また、図6は、図5(b)で示す部位がブラシ状電気切片52の配設位置を通過したときにおけるトランジスタQ1のコレクタ電圧の変化を示すグラフである。
【0047】
図5(b)に示すように、或る線材52aの先端が相対的に矢印Cで示す線状を移動するとき、この線材52aは、原稿Pの一端部X1から縁部X2までを通過する間は、フレーム53に対し非接触状態となり、前記縁部X2からそれと反対側の縁部X3までを通過する間はフレーム53に対して接触状態となり、前記縁部X3から原稿Pの他端部に到達するまで、フレーム53に対し非接触状態となる。
【0048】
これに伴い、トランジスタQ1のコレクタ電圧は、図6に示すように変化する。すなわち、トランジスタQ1のコレクタ電圧は、前記線材52aが前記一端部X1を通過する時刻T=T1でH(ハイ)からL(ロー)に切り替わり、前記線材52aが前記縁部X2を通過する時刻T=T2でL(ロー)からH(ハイ)に切り替わり、前記線材52aが前記縁部X3を通過する時刻T=T3でH(ハイ)からL(ロー)に切り替わる。その後、トランジスタQ1のコレクタ電圧は、前記線材52aが当該原稿Pの前記他端部に到達する時刻T=T4で、L(ロー)からH(ハイ)に切り替わる。
【0049】
そして、線材52aが原稿Pのうち穿孔部Pxに到達するまでの部位の距離L1及び穿孔部Pxを通過する距離L2と、時刻T1からT2までの時間t1及び時刻T2からT3までの時間t3とに比例関係がある。このことから、本実施形態では、前記時間t1及びt2を検出することで、穿孔部Pxの位置(穿孔部Pxのサイズも含む)を検出するようにし、従来では前記穿孔部Pxは黒色の画像として形成される処を白色の画像として形成するようにしている。
【0050】
なお、このように、本実施形態では、ブラシ状電気切片52を用いて穿孔部Pxを検出するため、前記線材52aは、穿孔部Pxを形成する縁部に引っかかることで原稿が破損したり、線材52a同士が接触したりすることがないような硬度に設定されている。
【0051】
図7は、複写機1の電気的構成を示すブロック図である。
【0052】
図7に示すように、複写機1には、装置全体の動作制御を司る制御部56が備えられており、制御部56には、図1にそれぞれ示した原稿読取部4、原稿給送部5、操作部6及び記録部21が接続されている。また、制御部56には、原稿読取部4によって読み取られた画像データ及び当該画像データに設定されている出力形式等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)57が接続されている。
【0053】
用紙検出機構55は、前記ブラシ状電気切片52と、抵抗素子R1,R2と、トランジスタQ1と、電源VDDと、フレーム53とを備えて構成されるものである。
【0054】
制御部56は、機能的に、通電制御部58と、原稿搬送制御部59と、ジャム検出部60と、穿孔部検出部61と、画像処理部62と、露光制御部63とを備える。
【0055】
通電制御部58は、当該複写機1の主電源がオンされると、前記電気回路への電流の供給動作を開始するものである。原稿搬送制御部59は、原稿Pの画像の複写指示がなされると、原稿給送部5に原稿Pの搬送動作を行わせるものである。通電制御部58は、通電部を構成するものである。
【0056】
ジャム検出部60は、原稿セットセンサ29の出力信号と用紙検出機構55の出力信号とに基づき、用紙ジャムが発生しているか否かを検出するものである。すなわち、ジャム検出部60は、原稿載置部16上に原稿Pが無くなった旨の信号が原稿セットセンサ29から所定時間出力され、且つトランジスタQ1のコレクタ電圧はL(ロー)となっている(所定数以上の線材52aがフレーム53に対して非接触である)とき、用紙ジャムが発生しているものと判断する。ジャム検出部60は、判断部に相当するものである。
【0057】
穿孔部検出部61は、原稿Pにおける穿孔部Pxの有無の検出と、穿孔部Pxの存在を検出した場合には前述の時間t1,t2に基づいて当該原稿Pにおける穿孔部Pxの位置(サイズも含む)の検出とを行うものである。
【0058】
画像処理部62は、原稿読取部4によって原稿が読み取られると、原稿読取部4から出力されるアナログ画像信号をデジタル画像に変換し、画質を向上させる画像処理を施すものである。また、画像処理部62は、前記穿孔部検出部64により穿孔部Pxが検出された場合に、全ての穿孔部Pxを含み、該穿孔部Pxの径と同寸の幅を有する帯状領域に相当する部分(図5に示す斜線部分)の画像データを白色の画像データに置換する。画像処理部62は、データ処理部に相当する。
【0059】
露光制御部63は、前記光学ユニット23によるレーザ光出力動作を制御するものであり、前記画像処理部62により生成された画像データに基づいて感光体ドラム22の露光動作を行う。特に、本実施形態では、露光制御部63は、画像処理部62により穿孔部Pxの位置に相当する部分の画像データが白色の画像データに置換された場合には、その置換後の画像データに基づいて感光体ドラム22の露光動作を行う。
【0060】
図8は、複写機1におけるジャム検出処理及び穿孔部対策処理を示すフローチャートである。図8は、1枚の原稿Pを複写する場合における前記各処理を説明したものである。
【0061】
図8に示すように、使用者により複写の開始が指示されると(ステップ♯1でYES)、制御部56は、その時点における用紙検出機構55からの出力信号(トランジスタQ1のコレクタ電圧)がH(ハイ)であるか否かを判断する(ステップ♯2)。その結果、前記検出信号がL(ロー)であるとき(ステップ♯2でNO)、用紙ジャムが発生しているものと判断し(ステップ♯3)、使用者にその旨を表示や音により報知する(ステップ♯10)。一方、前記検出信号がH(ハイ)の場合には(ステップ♯2でYES)、制御部56は、原稿給送部5に給紙動作を行わせる(ステップ♯4)。
【0062】
そして、制御部56は、図6に示すようなL→H→Lの出力信号の変化が発生したか否かを判断し(ステップ♯5)、その出力信号の変化が発生していない場合には(ステップ♯5でNO)、読み取った画像データにしたがって感光体ドラム22の露光動作を前記光学ユニット23に行わせる(ステップ♯6)一方、前記出力信号の変化が発生した場合には(ステップ♯5でYES)、その出力信号に基づいて穿孔部Pxの位置を検出し、読み取った画像データのうち、全ての穿孔部Pxを含み且つ該穿孔部Pxの径と同寸の幅を有する帯状領域に相当する部分の画像データを白画像データに置換した上で、光学ユニット23に感光体ドラム22の露光動作を行わせる(ステップ♯7)。
【0063】
その後、制御部56は、給紙が完了すると(原稿セットセンサ29のスイッチがオフとなったことを検知すると)、用紙検出機構55の出力信号が、前記給紙完了タイミングから所定時間の間継続してLであるか否かを判断し(ステップ♯8)、所定時間の間継続してLである場合には(ステップ♯8でYES)、ジャムが発生しているものと判断し(ステップ♯9)、使用者にその旨を表示や音により報知して(ステップ♯10)一連の処理を終了する一方、前記出力信号が前記所定時間内にH(ハイ)に戻った場合には(ステップ♯8でNO)、一連の処理を終了する。
【0064】
このように、導電性及び弾力性を有する多数の線材52aを備えて構成されるブラシ状電気切片52を用紙の搬送路上に備え、該ブラシ状電気切片52の通電状態に基づいて、用紙の搬送方向に対する幅方向に一様に用紙体が存在する場合と存在しない場合との区別を行うようにしたので、用紙ジャムの検出動作と原稿における穿孔部の有無の検出動作とを1の検出手段(用紙検出機構55)で実現することができる。
【0065】
また、原稿に穿孔部Pxを検出した場合には、全ての穿孔部Pxを含み且つ該穿孔部Pxの径と同寸の幅を有する帯状領域に相当する部分の画像データを白画像データに置換した上で、光学ユニット23に感光体ドラム22の露光動作を行わせるようにしたので、ユーザにとって不要な黒画像が形成されるのが回避され、綺麗な複写原稿を得ることができる。
【0066】
また、原稿セットセンサ29の出力信号と用紙検出機構55の出力信号とに基づき、用紙ジャムの発生の有無を検出するようにしたので、その用紙ジャムの発生の有無を正確に検出することができる。
【0067】
なお、前記実施形態では、検出する穿孔部Pxの大きさは全て一定であるとの前提で説明したが、図9に示すように、各穿孔部Pxのサイズが異なる場合には、全ての穿孔部Pxを含み、且つ最大サイズの穿孔部Pxmaxの径と同寸の幅を有する帯状領域に相当する部分の画像データを白画像データに置換して、光学ユニット23に感光体ドラム22の露光動作を行わせるようにすると、同様に綺麗な複写原稿を得ることができる。
【0068】
また、ブラシ状電気切片52の配設位置は、前述のような原稿給送部5に限られず、ジャムが発生し得る用紙の搬送路上に配設することが想定できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態に係る複写機の内部構成を示す側面図である。
【図2】原稿給送部の詳細な構造を示す図である。
【図3】ブラシ状電気切片の配設状態を示す図である。
【図4】ブラシ状電気切片を含む用紙検出機構の構成を示す図である。
【図5】複数の同径の穿孔部Pxが一端部に直列に形成されている原稿(ルーズリーフ)Pの画像を複写する場合における画像データの置換処理を説明するための図である。
【図6】図5(b)で示す部位がブラシ状電気切片の配設位置を通過したときのトランジスタQ1のコレクタ電圧の変化を示すグラフである。
【図7】複写機の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】複写機におけるジャム検出処理及び穿孔部対策処理を示すフローチャートである。
【図9】各穿孔部Pxのサイズが異なる原稿に対する画像データの置換処理を説明するための図である。
【図10】(a)は、従来のジャム検出機構の側面図、(b)は該機構の平面図である。
【符号の説明】
【0070】
13 画像読取部
16 原稿載置部
17 原稿排出部
18 原稿搬送機構
21 記録部
22 感光体ドラム
23 光学ユニット
29 原稿セットセンサ
30 レバー
39 搬送ローラ対
41 搬送路
52 ブラシ状電気切片
52a 線材
53 フレーム
54 フレーム
55 用紙検出機構
56 制御部
58 通電制御部
59 原稿搬送制御部
60 ジャム検出部
61 穿孔部検出部
62 画像処理部
63 露光制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の搬送路を形成する部材の所定位置に設置された電極と、
前記搬送路上の所定位置に突出して設けられ、前記電極に接触するときの第1の姿勢と搬送中の用紙から押圧力を受けて前記電極に対して非接触となる第2の姿勢とをとり得るように、弾力性及び導電性を有する複数本の線材が前記搬送路上における用紙の搬送方向と交差する方向に配列されて構成されるブラシ状電気切片と、
前記電極及びブラシ状電気切片を含んで構成される電気回路に通電を行う通電部と
を備えたことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記搬送路上で搬送すべき用紙が載置される用紙載置部と、前記用紙載置部上の用紙の有無を検出する用紙検出センサとを備えるとともに、
前記電気回路に流れる電流の状態と前記用紙検出センサの出力信号とを用いて、前記搬送路上の用紙ジャムの有無を判断する判断部を備えることを特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記判断部は、前記用紙検出センサにより前記用紙載置部上に用紙が載置されていると検出され、且つ前記電気回路に電流が流れていないときに、前記搬送路上に用紙ジャムが発生しているものと判断することを特徴とする請求項2に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の用紙搬送装置と、
前記用紙搬送装置による用紙の搬送中に、前記電気回路に流れる電流の状態を用いて前記用紙における穿孔部の形成状態の検出処理を行う穿孔部検出部と、
前記用紙搬送装置により搬送された原稿の画像を光電変換処理により読み取る画像読取部と、
前記画像データのうち前記穿孔部検出部により検出された穿孔部に対応する部分の画像データを白画像データに置換する処理を施すデータ処理部と、
前記データ処理部による処理後の画像データに基づいて、画像を用紙に形成する画像形成部とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−31137(P2007−31137A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221401(P2005−221401)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】