説明

田植機

【課題】土壌条件や植深をリアルタイムで取得できる田植機を提供する。
【解決手段】田植機は、植付部と、土壌反力検出装置と、制御部と、を備える。植付部は、植付爪を駆動することにより苗の植付けを行う。土壌反力検出装置は、植付爪が苗の植え付けを行うごとに土壌から受ける土壌反力を検出する土壌反力検出部と、植付爪の回転位相を検出する回転位相検出部を備えている。前記制御部は、前記土壌反力及び回転位相に基づいて植深値を算出する(S102)。そして制御部は、検出された植深値に基づいて、植付部を昇降制御する(S109)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として田植機に関する。詳細には、田植機による苗の植付け深さを正確に制御するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機において、植付部を上下に昇降制御する構成が公知である(例えば特許文献1)。
【0003】
植付部を上下に昇降制御する目的の一つは、苗の植付け深さを一定に保つことにある。即ち、地面の凹凸、車体のピッチング/ローリング挙動等によって、地面と植付部との距離は常時変動する。従って、仮に植付部の位置が固定されていると、苗の植付け深さがバラバラになるためきれいな植え付けができないばかりでなく、場合によっては浮苗などの不具合が発生し得る。これを防ぐため、地面に追従させて植付部を上下に昇降制御することにより、苗の植付け深さを一定に保つのである。
【0004】
従来の田植機は、特許文献1が開示しているように、植付部が備えるフロートの揺動角度に基づいて、植付部を昇降制御していた。即ち、このフロートは、植付部に対して揺動可能に取り付けられているとともに、地面に接触可能に配置されている。このフロートの揺動角は、植付部が地面に対して上下するのに応じて変化する。従って、フロートの揺動角は、地面に対する植付部の相対位置を示していると考えることができる。フロート揺動角を一定に保つように植付部を昇降制御を行うことで、地面に対する植付部の高さを略一定に保つことができるので、植の植え付け深さ(植深)を略一定に保って植付を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−212059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のようにフロート揺動角に基づいて植付部を昇降する構成では、植深を正確に制御することができないという問題があった。即ち、フロートは、比較的広い面積で地面と接触するように構成されているため、フロートの揺動角に基づいて得られる植付部位置(地面に対する植付部の相対位置)は、いわば平均化されたものである。従って、圃場の凹凸の変化が大きい場合などは、フロートの揺動角による昇降制御では、植付部を精度良く地面に追従させることができなかった。
【0007】
また、特許文献1のようにフロート揺動角に基づいて植付部を昇降する構成は、圃場条件(例えば土壌の硬さなど)の影響を受け易いという問題がある。即ち、フロートの揺動角を一定に保つように植付部を昇降制御したとしても、土壌の硬さ等が異なれば、苗が植え付けられる深さも変化する。従って、従来の田植機で所望の植付け深さを得るためには、土壌条件に応じてオペレータが設定を細かく調整する必要があった。しかし、当該調整作業には経験と勘が必要であり、所望の植付け深さで苗を植え付けることができない場合も多々あったのである。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、土壌条件に応じて適切な植え付けを行うことができる田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の田植機が提供される。即ち、この田植機は、植付部位置取得手段と、制御部と、を備える。前記植付部位置取得手段は、地面の或る一点に対する植付部の相対位置を示す植付部位置を検出するためのものである。前記制御部は、検出された植付部位置に基づいて、前記植付部を昇降制御する。
【0011】
このように、地面のある一点に対する植付部の相対位置に基づいて植付部の昇降制御を行うことにより、地面に対して植付部を正確に追従させることができるので、所望の植付深さで苗を植え付けることができる。
【0012】
上記の田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記植付部位置取得手段は、前記植付部が備えた植付爪が苗の植え付けを行うごとに前記植付部が土壌から受ける土壌反力を検出する土壌反力検出部と、前記植付爪の回転位相を検出する位相検出部と、からなる。前記制御部は、前記土壌反力及び回転位相に基づいて前記植付部位置を検出する。
【0013】
このように、植付爪に生じる土壌反力と、当該土壌反力が生じたときの植付爪の位相と、を検出することにより、リアルタイムで植付部位置を検出することが可能となるので、安定して精度の良い植付を実施可能になる。
【0014】
上記の田植機において、前記制御部は、前記植付部位置の検出値と、植付部位置の目標値と、を比較して、前記昇降制御の感度調整を行うことが好ましい。
【0015】
これにより、従来は圃場条件ごとに手動で行っていた感度調整を、自動で行うことができる。
【0016】
上記の田植機において、前記制御部は、前記植付部位置の検出値と、植付部位置の目標値と、の差が所定の閾値を超えていた場合、異常発生の報知を行うことが好ましい。
【0017】
これにより、オペレータが植付異常をリアルタイムで認知することができる。
【0018】
上記の田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この田植機は、植付部に対して揺動自在に取り付けられるとともに地面に接触可能なフロートと、前記フロートの揺動角を検出するフロートセンサを備える。そして前記制御部は、前記植付部位置の検出値と、前記フロートセンサの出力値と、に基づいて前記植付部を昇降制御する。
【0019】
植付部位置の情報は、植付爪が苗を植え付けたときにしか得られない離散的な情報であるから、当該植付部位置の情報にのみ基づいて制御を行うと制御遅れなどが発生する場合がある。そこで、連続的に情報を得られるフロートセンサの出力を併用することにより、制御遅れなどの問題を回避することができる。
【0020】
上記の田植機において、前記制御部は、前記植付部位置の検出値と、植付部位置の目標値と、を比較した結果に基づいて、前記フロートの揺動角の目標値を調整することが好ましい。
【0021】
これにより、圃場条件の影響を受け易いフロート揺動角による昇降制御を、植付部位置の情報によって補正できるので、連続して安定した植付作業が可能となる。従って、高いロバスト性を実現できる。また、圃場条件に応じて手動でフロート目標角を調整する必要がなくなる。
【0022】
上記の田植機において、前記制御部は、前記植付部位置の検出値に基づいて、前記フロートの揺動角を用いた昇降制御のゲイン調整を行うことが好ましい。
【0023】
このように、フロートの揺動角による昇降制御の制御ゲインを、植付部位置取得手段の検出値に基づいて修正することにより、より一層安定した植付作業が可能となる。
【0024】
また上記の田植機において、前記制御部は、前記植付部位置の検出値に基づいて、前記フロートの田面ならし面からの植付爪の爪出し量、前記フロートの地面に対する押し付け荷重、の少なくとも何れか一方を調整することが好ましい。
【0025】
このように、検出した植付部位置に基づいて、田植機を制御するための各種項目を調整することにより、より高精度に植付作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体的な構成を示す側面図。
【図2】田植機の平面図。
【図3】植付爪の回転軌跡を示す側面図。
【図4】土壌反力検出装置の平面図。
【図5】(a)土壌反力検出装置の出力波形の例を示すグラフ。(b)回転位相検出部及び下死点検出部図が出力する信号を示すグラフ。
【図6】植深値に基づいた昇降制御のフローチャート。
【図7】第2実施形態に係る田植機の植付爪近傍の様子を示す側面図。
【図8】フロート角と植深値とを用いた昇降制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る乗用型の田植機1の側面図である。
【0028】
田植機1は、車体2と、当該車体2の後方に配置された植付部3と、から構成されている。
【0029】
車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5を備えている。また、車体2は、その前後方向で前輪4と後輪5の間に運転座席6を備えている。運転座席6の近傍には、車体2の操向操作を行うためのステアリングハンドル7、車体2の走行速度を調節するための変速ペダル8、その他各種の操作具が配置されている。
【0030】
また、車体2は、図略の制御部を備えている。制御部は例えばマイクロコントローラからなり、田植機1の各部に備えられたセンサ等の信号に基づいて、田植機1の各構成を制御するように構成されている。
【0031】
また運転座席6の周囲には、苗の植付け深さを設定するための図略の植深調整レバーが配置されている。オペレータは、植深調整レバーを操作することにより、苗の植付け深さを設定することができる。また、植深調整レバーの近傍には、当該植深調整レバーの操作位置を検出することができるポジションスイッチが設けられている。ポジションスイッチによって検出された植深調整レバーの操作位置は、制御部に出力される。以下の説明において、オペレータによって設定された苗の植付け深さを、目標植深とよぶ。
【0032】
また、車体2において、運転座席6の下方にはエンジン10が、当該エンジン10の前方にはミッションケース11が、それぞれ配置されている。一方、車体2の後方には、植付部3を取り付けるための昇降リンク機構12、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するためのPTO軸13、植付部3を昇降駆動するための昇降シリンダ14等が配置される。
【0033】
前記植付部3は、植付センターケース15と、植付ベベルケース24と、苗載台17と、を備えている。
【0034】
植付センターケース15内には図略の駆動軸が配設されており、当該駆動軸には前記PTO軸13からの駆動力が入力されている。図2に示すように、本実施形態の田植機は植付ベベルケース24を3つ有している。前記植付ベベルケース24は車体前後方向に沿って配置されており、かつ車体左右方向に並んで配置されている。各植付ベベルケース24内には、図略の駆動軸が配設されており、植付センターケース15からの駆動力が入力されている。
【0035】
各植付ベベルケース24の左右には、それぞれ植付ユニット20が取り付けられている。従って、本実施形態の田植機1は、植付ユニット20を6つ有する6条植えの田植機として構成されている。各植付ユニット20は、回転ケース21に2つの植付爪22を備えるロータリ式植付装置として構成されている。植付ベベルケース24に入力された駆動力は、回転ケース21を回転駆動する。
【0036】
ロータリ式植付装置の構成は公知であるので詳細な説明は省略するが、回転ケース21を回転駆動することにより、植付爪22の先端部が図3に示すようなループ状の軌跡を描きながら上下に駆動されるように構成されている。植付爪22の先端部は、上から下に向かって動くときに、後述の苗載台17に載せられた苗マット25の下端から1株分の苗26を掻き取り、当該苗26の根元を保持したまま下方に動いて地面に植え込むように構成されている。
【0037】
なお本明細書において、植付爪22の先端の下死点から地面までの距離(植付爪22の先端が地面に入り込む距離)のことを、苗を植え付ける深さという意味で「植深」と呼ぶ。
【0038】
苗載台17は、前記植付ベベルケース24の上方に配置されている。この苗載台17は、図略のガイドレール上を車体左右方向に往復摺動可能に支持されている。そして、植付部3は、苗マット25の左右幅の範囲内で苗載台17を左右に往復駆動する図略の横送り機構を備えている。これにより、苗載台17に載せた苗マット25を、植付ユニット20に対して左右に相対運動させることができる。また、苗載台17は、苗マット25を、下方に向かって(即ち、植付ユニット20側に向かって)間欠的に送る苗送りベルト(縦送り機構)を備えている。以上の構成で、横送り機構と縦送り機構とを適切に連動させることにより、各植付ユニット20に対して苗を順次供給し、連続的に植付けを行うことができる。
【0039】
植付センターケース15には、前記昇降リンク機構12が連結されている。この昇降リンク機構12は、トップリンク18、ロワーリンク19等からなる平行リンク構造から構成されており、ロワーリンク19に連結された昇降シリンダ14を駆動することにより、植付センターケース15を上下に昇降駆動可能に構成されている(これにより、植付部3全体を上下に昇降することができる)。
【0040】
昇降シリンダ14の駆動は、制御部によって制御される。制御部は、昇降シリンダ14を駆動して、植付部3を地面の凹凸に追従させて上下に昇降し、オペレータによって設定された目標植深で苗を植え付けることができるように制御を行う。
【0041】
前述のように、従来の田植機はフロートの揺動角に基づいて植付部3を昇降制御していた。しかしながら、前述のように、フロートは地面に対して比較的広い面積で接触して揺動するため、当該フロートの揺動角から得られる植付部位置(地面に対する植付部の相対位置)は正確ではなかった。このため、フロートの揺動角を用いて植付部を昇降制御する従来の田植機では、地面の凹凸に追従させて植付部の高さを一定に保つことが困難であった。
【0042】
そこで本実施形態の田植機1は、地面の或る一点に対する植付部の相対位置(植付部位置)を検出し、検出した植付部位置に基いて植付部3を昇降制御するように構成されている。このように、地面の或る一点に対する植付部3の相対位置に基づいて昇降制御を行うことにより、土壌条件によらず植深を一定に保つ制御が可能になる。
【0043】
以下、詳しく説明する。本実施形態の田植機1は、地面の或る一点に対する植付部3の相対位置を検出するための手段として、土壌反力検出装置(植付部位置取得手段)27を備える。この土壌反力検出装置27は、植付部3が苗を植え付けるときに土壌から受ける反力(土壌反力)を検出するように構成されている。
【0044】
この土壌反力検出装置27は、植付爪22の近傍に配置され、植付爪22と一体的に回転運動するように構成された土壌反力検出部を備えている。図4に示すように、土壌反力検出部は、ロードセル28と、プローブ29と、を備える。
【0045】
ロードセル28は、荷重検出面に掛かる荷重を検出して、当該荷重に応じた検出信号を出力する公知の構成である。ロードセル28の検出信号は、制御部に出力される。なお前述のように、土壌反力検出装置27は植付爪22とともに回転運動するので、ロードセル28から制御部に対する信号はスリップリングを介して出力される。
【0046】
プローブ29は棒状部材であり、その長手方向が植付爪22の長手方向と略平行になるように配置されている。また、プローブ29の先端は、植付爪22と同じ方向を向いており、かつ、地面からの高さが植付爪22の先端とほぼ同じになるように配置されている。プローブ29がこのように配置されているので、回転ケース21が回転駆動されると、プローブ29の先端と植付爪22の先端は、同時にほぼ同じ軌跡を動くことになる。また、プローブ29の他端はロードセル28の荷重検出面に当接している。この構成により、プローブ29の先端に力が加わると、その力がロードセル28によって検出され、当該検出結果が制御部へと出力される。
【0047】
以上のように構成された土壌反力検出装置27において、プローブ29は、植付爪22とほぼ同時に地面に刺さる。従って、植付爪22が土壌から受ける反力(土壌反力)とほぼ同じ荷重がロードセル28で検出される。このように、上記土壌反力検出装置27によって、植付爪22が土壌から受ける反力(土壌反力)を検出することができる。
【0048】
また本実施形態の土壌反力検出装置27は、植付爪22とは別体として設けられている。従って、植付爪22による植付動作が土壌反力検出装置27によって阻害されるおそれはない。また本実施形態において、土壌反力検出装置27は、図2に示すように、車体左右方向で中央近傍の植付ユニットに設けられている。このように配置することにより、車体のローリング挙動が土壌反力検出装置27の検出値に与える影響を少なくすることができる。
【0049】
また、土壌反力検出装置27は、当該土壌反力検出装置部で検出された土壌反力の発生タイミングを取得するため、植付爪22の回転位相を検出する回転位相検出部を備えている。具体的には、植付ベベルケース24内の駆動軸に、当該駆動軸の回転位相を検出するための回転位相検出部(図略)が設けられている。回転位相検出部が検出した結果は、制御部へと出力される。これにより、制御部は植付爪22の回転位相を取得することができる。
【0050】
回転位相検出部は例えばアブソリュート型ロータリエンコーダとしても良いが、本実施形態では安価なピックアップセンサを採用している。ただし、ピックアップセンサは回転数に応じたパルス信号を出力するだけであるので、当該ピックアップセンサの出力だけでは植付爪22の回転位相を正確に検出できない。そこで、本実施形態の田植機1では、植付爪22の下死点を検出する下死点検出部を、植付ベベルケース24内の駆動軸に設けている。この下死点検出部は、植付爪22の先端が下死点に達したときに、パルス信号を制御部に出力するように構成されている。
【0051】
次に、土壌反力検出装置27の検出結果に基づいて、植付部位置を検出する方法について説明する。
【0052】
植付爪22が図3のようなループ状の軌跡を描いて回転駆動されるとき、土壌反力検出装置27からは図5(a)のグラフに示すような検出波形が出力される。即ち、まず、植付爪22が苗マット25から苗26をかき取ったときに、その衝撃が反力として検出される。次に、かき取った苗を保持した植付爪22が下に向かって動き、当該植付爪22の先端が地面に衝突する。このとき植付爪22は地面から反力を受けるので、土壌反力検出装置27が出力する検出波形が立ち上がり、植付爪22が下死点に到達するまで土壌反力が増大していく。植付爪22が下死点を過ぎると、検出される土壌反力は減少に転じる。そして苗26を地面に植え終えた植付爪22は地面から引き抜かれるが、このときは地面の粘着力により引っぱり力(マイナスの反力)が検出される。
【0053】
制御部は、土壌反力検出装置27が出力した土壌反力の検出波形と、植付爪22の回転位相と、に基づいて、苗の植深を算出する。即ち、制御部は、前記回転位相検出部及び下死点検出部の出力を参照して、土壌反力の立ち上がりタイミング時における植付爪22の回転位相を取得する。より詳しくは、制御部は、図5(b)に示すように、土壌反力が立ち上がったとき(植付爪22の先端が地面に衝突したとき)から、下死点検出部がパルスを出力するまで(植付爪22の先端が下死点に達するまで)の間に回転位相検出部(ピックアップセンサ)が出力したパルスの数を数える。
【0054】
これにより、植付爪22の先端が地面に衝突した点と、下死点と、の位相差Δθを取得することができる。植付爪22の先端の移動軌跡は既知であるから、位相差Δθに基づいて、植付爪22によって苗が地面に植えられる深さ(植深)を算出することができる。以上のようにして求めた植深は、地面の或る一点(正確には、植付爪22が地面に突き刺さった地点)に対する植付爪22の下死点の相対位置(つまり、地面から下死点までの距離)を示すものである。従って、以上のようにして求めた植深は、地面の或る一点に対する植付部3の相対位置(植付部位置)を示すものであるといえる。
【0055】
そして制御部は、上記のようにして検出した植深値を用いて、植付部3の昇降制御を行う。これにより、地面に対する植付部3の追従性を向上させ、精度の良い昇降制御を実現することができる。
【0056】
なお、従来の田植機においても、フロートの揺動角に基づいて、地面に対する植付部の相対位置(植付部の高さ)を、或る程度の精度で検出することはできていた。しかしながら前述のように、フロートは地面に対して広い範囲で接触するので、フロートの揺動角で検出できる植付部高さは、平均化されたものである。従って、フロートの揺動角に基づいては、植付部の高さを正確に検出することができなかった。
【0057】
この点、本実施形態の構成によれば、プローブ29は、ある一点で地面に突き刺さるので、ロードセル28で検出されるのは、地面の或る一点からの反力である。従って、本実施形態の土壌反力検出装置27の検出結果に基づけば、地面の或る一点に対する植付部3の相対位置を検出することができる。即ち、広い面積で地面に接触するフロートとは違い、本実施形態の構成によれば、地面に対する植付部3の正確な相対位置(植深)を検出することができる。そして、このようにして得られた植深に基づいて植付部を制御するので、植付部3を地面に対して正確に追従させることができるのである。
【0058】
次に、本実施形態の田植機1における昇降制御の制御の流れを、図6を参照して説明する。
【0059】
ステップS101において、制御部は、土壌反力検出装置27の検出波形を監視している。そして、植付爪22が地面に衝突したときの土壌反力の立ち上がり波形が検出された後、植付爪が下死点まで達すると(即ち、1株分の苗の植え付けが終わると)、上記で説明した方法で苗の植深値を検出する(ステップS102)。このように、苗を植え付けるごとに、植深値を取得することができる。
【0060】
続いて制御部は、植深値の検出値と、オペレータが植深調整レバーによって設定した目標植深値と、の差の絶対値(即ち、植深値の検出値と目標植深値とのズレの大きさ)が所定の閾値を超えているか否かを判定する(ステップS103)。即ち、前記差(の絶対値)が大きくなっているということは、苗の植付深さが浅過ぎる、又は深過ぎる状態であるから、苗の植付異常が発生していると判断できる。そこで制御部は、前記差が所定の閾値を超えている場合、ブザー音を鳴らすなどして、オペレータに対して異常を報知する(ステップS104)。従来の田植機では、苗の植付異常はオペレータが目視で確認する必要があったが、上記構成によれば、オペレータは、苗の植え付けを行いながらリアルタイムで植付異常を認知することができる。
【0061】
次に制御部は、昇降制御の制御ゲインの調整も行う。即ち、植深値の検出値が、目標植深値よりも小さい場合(苗の植付深さが浅い場合)、浮苗などの不具合が発生する可能性がある。そこで、植深値の検出値が、目標植深値よりも小さい場合(ステップS105の判定)、制御部は、制御ゲインを大きくして昇降制御を敏感側にシフトさせる(ステップS106)。これにより植付部3の地面に対する追従性が向上し、浮苗を防止することができる。
【0062】
そして制御部は、検出した植深値に基づいて昇降制御を行う(ステップS109)。即ち、オペレータが植深調整レバーによって設定した目標植深値に対して、検出された植深値が小さい場合(植え付けが浅い場合)、制御部は、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を下降させる。一方、目標植深値に対して、検出した植深値が大きい場合(植え付けが深い場合)、当該制御部は、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を上昇させる。上記制御は、公知のPID制御等によって実現することができる。これにより、所望の植深で苗を植え付けることができる。また上記のように、この昇降制御の制御ゲインは、検出した植深値に基づいて調整されているので、浮苗の不具合を防止した制御が可能になる。
【0063】
なお前述のように、従来の田植機は、フロートの揺動角に基づいて、植付部を昇降制御していた。しかし、フロートの揺動角に基づく昇降制御は土壌条件(土の硬さなど)の影響を受けて植深値を一定に保つことが難しかった。これは、土壌条件によって苗の植え付け深さ(植深)が変動してしまうためである。この点、本実施形態の田植機1は、前述の土壌反力検出装置27によって、植深値を直接的に検出可能である。そして、このようにして検出した植深値に基づいて植付部3を昇降制御するので、土壌条件が変化したとしても、植深値を一定に保つことができる。従って、従来の田植機のように、土壌条件に応じてオペレータが設定を細かく調整する必要もない。
【0064】
また、本実施形態の田植機1は、検出した植深値に基づいて植付部を昇降制御することができるので、従来の田植機が備えていたフロートや、フロートの揺動角を検出するためのフロートセンサ等を省略している。これにより、田植機1をシンプルに構成することができる。
【0065】
ステップS109の処理が終了すると、ステップS101に戻って制御を続ける。なお、植付作業が終了している場合(ステップS110で判断)は、昇降制御を続ける必要はないので、フローを終了する。
【0066】
なお、上記のような植付部3の昇降制御を敏感に行い過ぎると、ハンチングが発生し易くなるという問題がある。このため、昇降制御を敏感に行う必要が無い状況(例えば浮苗が発生するおそれが少ない状況)においては上記の昇降制御を過度に敏感に行わないことが、ハンチング防止の観点からは好ましい。そこで本実施形態では、浮苗のおそれが少ない状況においては、昇降制御を鈍感側にシフトさせるように構成している。
【0067】
具体的には、制御部は、ステップS107の判定において、植深値の検出値が目標植深値よりも大きいか否かを判定している。植深値の検出値が目標植深値よりも大きい場合には、浮苗の心配はないと考えられる。そこで、ステップS107で植深値の検出値が目標植深値よりも大きいと判定された場合、制御部は、制御ゲインを小さくして昇降制御を鈍感側にシフトさせる(ステップS108)。これにより、昇降制御が過度に敏感に行われなくなるので、ハンチング等を防止することができる。
【0068】
以上で説明したように、本実施形態の田植機1は、土壌反力検出装置27と、制御部と、を備える。植付部3は、植付爪22を駆動することにより苗の植付けを行う。土壌反力検出装置27は、地面の或る一点に対する植付部3の相対位置を示す植深を検出するためのものである。そして制御部は、検出された植深値に基づいて、植付部3を昇降制御する。
【0069】
このように、地面のある一点に対する植付部の相対位置に基づいて植付部3の昇降制御を行うことにより、地面に対して植付部を正確に追従させることができるので、所望の植深で苗を植え付けることができる。
【0070】
また本実施形態の田植機1において、土壌反力検出装置27は、植付爪22が苗の植え付けを行うごとに土壌から受ける土壌反力を検出する土壌反力検出部と、植付爪の回転位相を検出する回転位相検出部を備え、前記制御部は、前記土壌反力及び回転位相に基づいて植深を算出している(ステップS102)。
【0071】
このように、植付爪22に生じる土壌反力を検出することにより、リアルタイムで植深値を取得することが可能となるので、安定して精度の良い植付を実施可能になる。
【0072】
また本実施形態の田植機において、前記制御部は、検出した植深値と、植深の目標値と、を比較して、前記昇降制御の感度調整を行っている(ステップS105からS108)。
【0073】
これにより、従来は圃場条件ごとに手動で行っていた感度調整を、自動で行うことができる。
【0074】
また本形態の田植機において、前記制御部は、植深値の検出値と目標値との差が所定の閾値を超えていた場合、異常発生の報知を行っている(ステップS103,S104)。
【0075】
これにより、オペレータが植付異常をリアルタイムで認知することができる。
【0076】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と同一又は類似する構成については、第1実施形態と同一の符号を要素名に付して、説明は省略する。
【0077】
本実施形態の田植機において、土壌反力検出装置は歪みゲージ271として構成されている。図7に示すように、この歪みゲージ271は、植付爪22に直接貼り付けられている。即ち、植付爪22に対して歪みゲージ271を貼り付け、植付爪22に発生した歪みを歪みゲージによって検出することで、植付爪22が地面から受けた土壌反力を直接的に検出することができる。歪みゲージは小型かつ軽量であるから、植付爪22による植付動作を阻害するおそれも少ない。
【0078】
上記第1実施形態では、土壌反力に基づく植深値は、植付爪22が苗を植え付ける毎に取得されることを説明した。逆に言うと、土壌反力に基づいて算出される植深値は、離散的にしか得ることができない。従って、第1実施形態のように植深値を利用して植付部の昇降制御を行う場合、当該昇降制御に遅れが発生する場合がある。
【0079】
この点、従来の田植機は、フロートセンサによってフロートの揺動角を検出し、当該揺動角に基づいて昇降制御を行っていた。このフロートの揺動角は連続的に検出することが可能である。しかしながら、前述のように、フロートの揺動角に基づく昇降制御では、植深値を一定に保つように制御することが難しかった。
【0080】
そこでこの実施形態では、植深値と、フロートの揺動角と、を相補的に用いることで、制御遅れを防止して、かつ植深を一定に保つことができるように構成している。以下、具体的に説明する。
【0081】
本実施形態の田植機は、図7に示すように、土壌反力検出装置271に加えて、フロート16と、フロートセンサ34と、を備えている。このフロート16及びフロートセンサ34の構成は従来の田植機と同様であるが、簡単に説明する。
【0082】
前記フロート16は、3本の植付ベベルケース24それぞれの下方に設けられる。このフロート16は、その下面が地面に接触することができるように配置されている。これにより、地面をならして、植え付けをきれいに行うことができる。
【0083】
フロート16は、揺動支点32を中心に回動可能に構成されている。また、フロート16は、揺動支点32よりも前方の位置において、押圧部材33によって下向きに付勢されている。即ち、フロート16の前端部分が、地面に対して押し付けられるように力が加えられている。このように構成されているので、植付部3が地面から離れるほど、フロート16が前下がりの姿勢となる。即ち、植付部3の高さ(地面から距離)に応じて、フロート16の角度が変化する。
【0084】
側面視において、フロート16の下面(田面ならし面)から植付爪22の下死点までの距離を、爪出量と呼ぶ。爪出量は、苗の植深に影響する重要なパラメータの1つである。本実施形態の田植機1は、オペレータが爪出量を調整するための爪出量レバーを備えている。この爪出量レバーを調整することにより、フロートの揺動支点32を上下に移動させることができるように構成されている。これにより、爪出量を変更することができる。また、爪出量は、フロート16の角度によっても異なる。従って、植付部3の高さを調整することにより、爪出量を調整することができる。
【0085】
複数のフロート16のうち少なくとも何れか一つには、当該フロート16の揺動角(フロート角)を検出するフロートセンサ34が設けられている。このフロートセンサ34は、例えばポテンショメータとして構成されている。フロートセンサ34の検出値は、制御部に出力される。
【0086】
また本実施形態の田植機1は、前記押圧部材33によってフロート16を地面に対して押し付ける力(以下、センシング荷重という)を調整できるように構成されている。
【0087】
次に、本実施形態の田植機における昇降制御の流れを、図8を参照して説明する。
【0088】
本実施形態において、制御部は、フロートセンサ34が検出したフロート角を参照して、植付部3の昇降制御を行う(ステップS201)。即ち、フロート角の検出値が目標値に比べて前上がりになっている場合、地面に対して植付部3が低過ぎるということであるから、制御部は、植付部3を上昇させる。一方、フロート角の検出値が目標値に比べて前下がりになっている場合、地面に対して植付部3が高過ぎるということであるから、制御部は、植付部3を下降させる。なお、この制御は公知のPID制御によって実現することができる。
【0089】
なお、前記の第1実施形態においては、苗を植付ける毎に取得される植深値に基づいて昇降制御を行っていたので、苗の植え付け周期よりも早い周期で制御を行うことができなかった。この点、フロートセンサ34の出力は連続的に得られるので、昇降制御の制御サイクルを短くすることができ、制御遅れを最小限に止めることができる。
【0090】
しかし前述のように、フロート角のみに基づく昇降制御では、所望の植深で苗を植え付けることができない。そこで本実施形態の田植機において、制御部は、土壌反力検出装置271の検出結果から算出した植深値に基づいて、昇降制御の目標値や制御ゲイン等を変更するように構成している。
【0091】
制御部は、フロート角を参照した昇降制御の間において、土壌反力検出装置271の検出波形を監視している。そして、植付爪22が苗を1本植え付け終わると(ステップS202の判定で判断)、土壌反力検出装置271が出力した土壌反力に基づいて植深値を取得する(ステップS203)。制御部は、新たな植深値を取得すると、ステップS204以降の処理に進む。
【0092】
本実施形態の田植機1において、制御部は、植深値が新たに取得されると、植深値又はフロート角の振幅が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS204)。植深値やフロート角が大きく変動している場合、ハンチングが発生している可能性がある。そこで制御部は、植深値又はフロート角の振幅が閾値を超えている場合、制御ゲインを落として昇降制御を鈍感側にシフトさせる(ステップS205)。これにより、植付部3が敏感に上下に昇降されなくなるので、ハンチングを防止することができる。
【0093】
次に制御部は、フロート角の目標値と、制御ゲインの調整を行う。即ち、オペレータが植深調整レバーによって設定した目標植深値に対して、制御部が算出した植深値が小さい場合(植え付けが浅過ぎる場合、ステップS206で判定)、当該制御部は、フロート角の目標値を前上がり側へと変更する(ステップS207)。これにより、植付部3の位置が下がり気味に制御されるようになるので、植深が深くなる。
【0094】
一方、目標植深値に対して、制御部が算出した植深値が大きい場合(植え付けが深過ぎる場合、ステップS208で判定)、当該制御部は、フロート角の目標値を前下がり側へと変更する(ステップS209)。これにより、植付部3の位置が上がり気味に制御されるようになるので、植深が浅くなる。
【0095】
以上の処理が終了すると、ステップS201に戻って制御を続ける。なお、植付作業が終了している場合(ステップS210で判断)は、昇降制御を続ける必要はないので、フローを終了する。
【0096】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、上記ステップS203からS209までの処理と並行し、植付爪22に生じる荷重に応じて制御ゲインを調整している。
【0097】
即ち、植付爪22が苗を1本植え付け終わると(ステップS202の判定で判断)、制御部は、植え付けの際に植付爪22に生じた荷重を算出する(ステップS211)。本実施形態では、歪みゲージとして構成された土壌反力検出装置27によって、植付爪22に生じた土壌反力を直接的に検出するように構成されているので、当該土壌反力に基づいて前記荷重を直接的に検出することができる。
【0098】
次に制御部は、前記荷重が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS212)。植付爪22に過度に大きな荷重がかかっている場合、植付部3の昇降速度が過度に速く行われており、植付爪22に負担がかかっている状態である。従って、植付爪22にかかる荷重が閾値を超えている場合、制御部は、制御ゲインを小さくして、植付部3の昇降速度を抑える(ステップS213)。一方、前記荷重が閾値以下だった場合は、制御ゲインを大きくして昇降制御の追従性を向上させる(ステップS214)。
【0099】
以上、土壌反力に基づいて植深値を取得し、当該植深値に基づいて、フロート角を用いた昇降制御の制御ゲイン及び目標角を修正する構成について説明した。本実施形態の田植機1は、これに加え、植深値に基づいてセンシング荷重や爪出量を調整するように構成されている。
【0100】
例えば、ステップS206で植え付けが浅過ぎると判定された場合、制御部は、植付部3を下降させて爪出量を増大させる。逆にステップS208で植え付けが深過ぎると判定された場合、制御部は、植付部3を上昇させて爪出量を減少させる。これにより、所望の植深で植え付けを行うことができる。
【0101】
また本実施形態の田植機1は、土壌反力に基づいて、土壌硬度、土中夾雑物等に関する情報も取得し、これらの情報に基づいて昇降制御を行うように構成されている。
【0102】
例えば、土壌が硬いほど、植付爪22が土壌から受ける力が大きくなる。従って、植付爪22が土壌に衝突したときの土壌反力の大きさに基づいて、土壌硬度を算出することができる。土壌硬度が高い場合(圃場が硬い場合)、制御部は、センシング荷重を増大させるように調整を行う。これにより、地面に対してフロートを強く押し付けることができ、地面を適切にならすことができる。一方、土壌硬度が低い場合(圃場が軟らかい場合)、制御部は、センシング荷重を減少させるように調整を行う。これにより、地面にフロートの跡が残ってしまうことを防止できる。
【0103】
また制御部は、検出された土壌反力の変化に基づいて、土中の夾雑物(例えば石のかたまりなど)を検出するように構成されている。即ち、土壌中に夾雑物が存在しない場合、土壌反力検出装置27が出力する出力波形は、図5(a)のようになる。ところが土壌中に夾雑物が存在していると、この出力波形の途中で土壌反力が突然大きくなるなど、特有の波形を示す。そこで制御部は、土壌反力検出装置27の検出波形の変化の割合に基づいて、途中で土壌反力が急激に大きくなっている場合に、土中夾雑物を検出するように構成されている。制御部は、夾雑物の有無や、夾雑物の種類に応じて、制御ゲイン等を適切に調整する。
【0104】
また前述のように、植付爪22が地面から引き抜かれる際には、土の粘着力によりマイナスの反力が発生する。そこで制御部は、植付爪22が地面から抜かれるときの土壌反力に基づいて、土の粘着力を算出するように構成されている。制御部は、算出した粘着力に応じて、フロート目標角を前上がり又は前下がりに修正する。これにより、土の粘着力に応じて植え付けを行うことができる。
【0105】
なお、フロートセンサ34の検出値は、車体のピッチングの影響を受ける。そこで本実施形態の田植機は、車体のピッチング角を検出する傾斜センサを備えており、検出したピッチング角に基づいて、フロート目標角を補正するように構成されている。これにより、正確な昇降制御が可能になる。
【0106】
以上のように、本実施形態の田植機1が備える土壌反力検出装置271によれば、苗の植深値に加え、土壌硬度、土中夾雑物の有無、土の粘着力などを検出することができる。もっとも、これらの情報は、第1実施形態の田植機1が備えていたロードセル型の土壌反力検出装置27の検出結果を用いても同様に取得することができる。これらは、従来では田植機を走行させながらリアルタイムに取得することはできなかった情報である。本発明の構成によれば、植付爪22が苗を植え付ける毎に上記情報を取得して、昇降制御に利用することができる。また田植機1は、上記のようにして取得した情報を表示するための表示部を備えている。これにより、オペレータは、制御部が算出した各種情報をリアルタイムに参照できるので、適切に植付作業を行うことができる。
【0107】
以上で説明したように、本実施形態の田植機は、植付部3に対して揺動自在に取り付けられるとともに、地面に接触可能なフロート16を備えている。
【0108】
このフロート16によって土をならすことが可能になり、良好に植付を行うことができる。
【0109】
また本実施形態の田植機1は、フロート16の揺動角を検出するフロートセンサ34を備える。そして制御部は、植深値と、フロートセンサ34の出力値と、に基づいて植付部3を昇降制御する。
【0110】
即ち、植深値は、植付爪22が苗を植え付けたときにしか得られないので、離散的な情報となる。そこで、連続的に情報を得られるフロートセンサ34の出力を併用することにより、制御遅れなどの問題を回避することができる。
【0111】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、検出した植深値と、植深の目標値と、を比較した結果に基づいて、フロート角の目標値を調整している(ステップS207,S209)。
【0112】
これにより、圃場条件の影響を受け易いフロート角による昇降制御を、植深値によって補正できるので、連続して安定した植付作業が可能となる。従って、高いロバスト性を実現できる。また、圃場条件に応じて手動でフロート目標角を調整する必要がなくなる。
【0113】
また本実施形態の田植機1において、制御部は、土壌反力検出装置27の検出値に基づいて、フロート角を用いた昇降制御のゲイン調整を行っている(ステップS213,S214)。
【0114】
このように、フロート角を用いた昇降制御の制御ゲインを、土壌反力検出装置27の検出値に基づいて修正することにより、より一層安定した植付作業が可能となる。
【0115】
また本実施形態の田植機において、制御部は、検出した植深値に基づいて、爪出量、センシング荷重等を調整している。
【0116】
このように、検出した植深値に基づいて、田植機を制御するための各種項目を調整することにより、より高精度に植付作業を行うことができる。
【0117】
また本実施形態の田植機において、制御部は、検出したフロート角、又は検出した植深値の振幅が所定の閾値を超えていた場合、昇降制御の制御ゲインを小さくしている。
【0118】
これにより、ハンチング等の不具合に対してリアルタイムに対応することができる。
【0119】
また本実施形態の田植機において、制御部は、土壌硬度、土の粘着力、及びピッチング情報を取得し、これに応じて、制御ゲイン、フロート目標角、フロートの押し付け荷重、及び爪出量等の項目を調整している。
【0120】
このように、土壌硬度、土の粘着力、及びピッチング情報などの情報に基づいて、田植機を制御するための各種項目を調整することにより、より高精度に圃場条件に適した植付作業が可能になる。
【0121】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は以下のように変更することができる。
【0122】
上記実施形態では、地面のある一点に対する植付部の相対位置を示す情報として、苗の植え付け深さ(植深)を取得している。しかしこれに限らず、地面のある一点に対する植付部の相対位置を何らかの形式で取得し、これに基づいて植付部を昇降制御することができれば、本発明と同等の効果を得ることができる。
【0123】
例えば、植え付け深さに代えて、苗載台17の下端から地面の一点までの距離を取得するように構成することができる。このようにして取得した苗載台17の位置の情報に基づいて植付部3を昇降制御することにより、地面に対する苗載台17の高さを正確に保つことができるので、結果的に植深を一定に保った精度のよい植付を行うことができる。
【0124】
植付部位置取得手段の構成は、上記のものに限らず、地面の或る一点に対する植付部の相対位置を検出可能であれば、どのようなものであっても良い。ただし上記実施形態の土壌反力検出装置のように、地面の或る一点に対して接触可能な部材(上記実施形態ではプローブ又は植付爪)を植付部に設け、当該部材の先端が地面に接触したことを検出するように構成すれば、簡単な構成で、かつ確実に、地面の或る一点に対する植付部の相対位置を検出することができる。
【0125】
土壌反力検出装置の構成は上記のものに限らず、植付爪22が土壌から受ける力を検出可能な構成であれば良い。
【0126】
更に、土壌反力検出装置は、必ずしも植付爪と一体回転する構成でなくても良い。例えば、植付爪とは別に、回転駆動される回転体を設けるとともに、当該回転体とともに回転することで所定のループ状の軌道を描いて地面に突入する突入体を設ける。この突入体に生じる反力を検出することにより、土壌反力を検出することができる。また、この突入体の回転位相を検出するように構成すれば、上記実施形態の土壌反力検出装置と同等の機能を実現することができる。
【0127】
図面では、植付ユニット20が備える2つの植付爪22のうち、一方にのみ土壌反力検出装置を取り付けているが、両方の植付爪22に土壌反力検出装置を取り付けても良い。この場合、土壌反力の情報を二倍の密度で取得することができるので、より細かく制御を行うことができる。
【0128】
上記説明では、左右方向で中央近傍の植付ユニットに土壌反力検出装置を配置するとしたが、これに限らず、何れの植付ユニットに土壌反力検出装置を配置しても良い。また、複数ある植付ユニットのうち何れか一つに土壌反力検出装置を配置しても良いし、全ての植付ユニット20に配置しても良い。
【0129】
目標植深を設定するための設定操作具は、レバーに限らない。例えば、ダイヤル状の部材によって、目標植深を設定するように構成しても良い。
【0130】
上記実施形態では、回転位相検出部及び下死点検出部を、植付ベベルケース内に配置するものとしたが、駆動源から植付爪に至るまでの駆動伝達経路であればどこに配置しても良い。例えば、植付センターケース内に回転位相検出部を配置することもできる。
【符号の説明】
【0131】
1 田植機
3 植付部
21 回転ケース
22 植付爪
27 土壌反力検出装置(植付部位置取得手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面の或る一点に対する植付部の相対位置を示す植付部位置を検出するための植付部位置取得手段と、
検出された植付部位置に基づいて、植付部を昇降制御する制御部と、
を備えることを特徴とする田植機。
【請求項2】
請求項1に記載の田植機であって、
前記植付部位置取得手段は、
前記植付部が備えた植付爪が苗の植え付けを行うごとに前記植付部が土壌から受ける土壌反力を検出する土壌反力検出部と、
前記植付爪の回転位相を検出する位相検出部と、
からなり、
前記制御部は、前記土壌反力及び回転位相に基づいて前記植付部位置を検出することを特徴とする田植機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の田植機であって、
前記制御部は、前記植付部位置の検出値と、植付部位置の目標値と、を比較して、前記昇降制御の感度調整を行うことを特徴とする田植機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の田植機であって、
前記制御部は、前記植付部位置の検出値と、植付部位置の目標値と、の差が所定の閾値を超えていた場合、異常発生の報知を行うことを特徴とする田植機。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の田植機であって、
植付部に対して揺動自在に取り付けられるとともに、地面に接触可能なフロートと、
前記フロートの揺動角を検出するフロートセンサと、
を備え、
前記制御部は、前記植付部位置の検出値と、前記フロートセンサの出力値と、に基づいて前記植付部を昇降制御することを特徴とする田植機。
【請求項6】
請求項5に記載の田植機であって、
前記制御部は、前記植付部位置の検出値と、植付部位置の目標値と、を比較した結果に基づいて、前記フロートの揺動角の目標値を調整することを特徴とする田植機。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の田植機であって、
前記制御部は、前記植付部位置の検出値に基づいて、前記フロートの揺動角を用いた昇降制御のゲイン調整を行うことを特徴とする田植機。
【請求項8】
請求項5から7までの何れか一項に記載の田植機であって、
前記制御部は、前記植付部位置の検出値に基づいて、前記フロートの田面ならし面からの植付爪の爪出し量、前記フロートの地面に対する押し付け荷重の少なくとも何れか一方を調整することを特徴とする田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−249616(P2012−249616A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126685(P2011−126685)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】