説明

画像のぼけ判断方法、その装置及びそのプログラム

【課題】撮影した画像がぼけているか否かを検出する方法を提供する。
【解決手段】前記画像にぼかしフィルタをかけるステップと、前記ぼかしフィルタをかける前の前記画像のコントラストを算出するステップと、前記ぼかしフィルタをかけた後の前記画像のコントラストを算出するステップと、前記ぼかしフィルタをかける前の前記画像のコントラストと前記ぼかしフィルタをかけた後の前記画像のコントラストとを比較するステップと、前記画像のぼかしフィルタをかける前のコントラストと前記画像のぼかしフィルタをかけた後のコントラスとの比較結果に基づいて、前記画像がぼけているか否か判断する判断ステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像がぼけているか否かを判断するための、画像のぼけ判断方法、その装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人は、画像に電子透かしを挿入し、その電子透かしを画像から検出する発明をしてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
次に、この発明の具体例をより詳細に説明する。画像に電子透かしを挿入し、電子透かしが挿入された画像を紙面に印刷をする。そして、携帯電話機のカメラでその画像を撮影する。撮影された画像は、電気通信回線(インターネットなど。以下、同様。)を介して、サーバに送信される。サーバは、送信されてきた画像から電子透かしを検出する。そして、サーバは、検出された電子透かしに対応するデータを、電気通信回線を介して、携帯電話機に送信する。
【特許文献1】特開2004−15396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、携帯電話機で撮影された画像は電気通信回線を介してサーバに送られ、電子透かしはサーバで検出される。しかし、電子透かしの検出は必ずしも成功するわけではなく、撮影された画像がぼけている場合には電子透かしの検出は失敗に終わる。このように、電子透かしの検出が失敗した場合には、サーバから携帯電話機にエラーコードを返す。それを受けた携帯電話機の側では、画像の撮影を再度行い、上述した一巡の動作が再度行われることとなる。このような事態が生ずると、最終的に電子透かしに対応するデータをユーザが得るまでの時間が長引くばかりでなく、余計な通信費が発生してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、撮影した画像がぼけているか否かを検出する方法、その装置及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、画像がぼけているか否かを判断するための、画像のぼけ判断方法であって、前記画像にぼかしフィルタをかけるステップと、前記ぼかしフィルタをかける前の前記画像のコントラストを算出するステップと、前記ぼかしフィルタをかけた後の前記画像のコントラストを算出するステップと、前記ぼかしフィルタをかける前の前記画像のコントラストと前記ぼかしフィルタをかけた後の前記画像のコントラストとを比較するステップと、前記画像のぼかしフィルタをかける前のコントラストと前記画像のぼかしフィルタをかけた後のコントラスとの比較結果に基づいて、前記画像がぼけているか否かを判断する判断ステップと、を備えることを特徴とする、画像のぼけ判断方法が提供される。
【0007】
上記の画像のぼけ判断方法において、前記ぼかしフィルタはガウシアンフィルタ、平均化フィルタ又はローパスフィルタであるようにしてもよい。
【0008】
上記の画像のぼけ判断方法において、前記コントラストは、隣接する画素間の絶対差分を基に算出されたものであるようにしてもよい。
【0009】
上記の画像のぼけ判断方法において、前記比較は、前記画像のぼかしフィルタをかける前のコントラストと前記画像のぼかしフィルタをかけた後のコントラストとの比率に基づいて行うようにしてもよい。
【0010】
上記の画像のぼけ判断方法において、前記判断ステップでは、ぼかしフィルタをかける前のコントラストをぼかしフィルタをかけた後のコントラストで割った値の平均値に基づいて前記画像がぼけているか否かを判断するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮影した画像がぼけているか否かを検出することができるので、撮影後の処理を直ちに開始するか、撮影を再試行するかの判断に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態による、画像のぼけ判断装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1を参照すると、この装置は、カメラ101、原画像メモリ103、ぼかしフィルタ105、ぼけ画像メモリ107、第1のコントラスト算出部109、コントラスト比較部111、第2のコントラスト算出部113及びぼけ判断部115を備える。
【0015】
カメラ101は、被写体を撮影し、原画像データを得る。
【0016】
原画像メモリ103は、原画像データを格納する。
【0017】
ぼかしフィルタ105は、原画像にぼかしをかける。ぼかしフィルタ105は、例えば、2次元のガウシアンフィルタ、2次元の平均化フィルタ又は2次元のローパスフィルタであるが、1次元のガウシアンフィルタ、1次元の平均化フィルタ又は1次元のローパスフィルタであってもよい。
【0018】
ぼけ画像メモリ107は、ぼかしフィルタ105がかけられた、ぼけ画像を格納する。
【0019】
第1のコントラスト算出部109は、原画像のコントラストを算出する。ぼかしフィルタが2次元のガウシアンフィルタ、2次元の平均化フィルタ又は2次元のローパスフィルタである場合には、第1のコントラスト算出部109は、各画素について、上下左右に隣接する4つの画素それぞれとの絶対差分を算出し、それらを画像全体にわたり足し合わせる。また、ぼかしフィルタが2次元のガウシアンフィルタ、2次元の平均化フィルタ又は2次元のローパスフィルタである場合には、第1のコントラスト算出部109は、各画素について、左右に隣接する2つの画素それぞれとの絶対差分を算出し、それらを画像全体にわたり足し合わせてもよいし、各画素について、上下左右及び斜め方向に隣接する合わせて8つの画素それぞれとの絶対差分を算出し、それらを画像全体にわたり足し合わせてもよい。また、ぼかしフィルタが水平方向1次元のガウシアンフィルタ、水平方向1次元の平均化フィルタ又は水平方向1次元のローパスフィルタである場合には、第1のコントラスト算出部109は、各画素について、左右に隣接する2つの画素それぞれとの絶対差分を算出し、それらを画像全体にわたり足し合わせる。
【0020】
第2のコントラスト算出部113は、ぼけ画像のコントラストを算出する。第2のコントラスト算出部113は、第1のコントラスト算出部109と同一の構成を有する。
【0021】
コントラスト比較部111は、第1のコントラスト算出部109から入力する、原画像についてのコントラストと、第2のコントラスト算出部113から入力する、ぼけ画像についてのコントラストとを比較する。比較においては、両コントラストの比を算出する。
【0022】
ぼけ判断部115は、コントラスト比較部111から入力した両コントラストの比較結果を基に原画像がぼけているか否かを判断する。例えば、ぼかしフィルタをかける前のコントラストをぼかしフィルタをかけた後のコントラストで割った値が所定値以下である画素の割合が所定値以上であれば画像がぼけていると判断する。これは、原画像がぼけている場合には、ぼかしフィルタをかけてもかけなくてもコントラストに大差がないのに対し、原画像がぼけていない場合には、ぼかしフィルタをかけなければ、ぼかしフィルタをかけた場合に比べ、コントラストが非常に高いからである。
【0023】
画像のぼけ判断装置は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより構成される。特に、画像のぼけ判断装置は、携帯電話機のハードウェアとそこで稼働するソフトウェアにより構成されていてもよい。
【0024】
次に、図1に示すぼけ判断装置の動作を図1及び図2を参照して説明する。
【0025】
まず、カメラ101が被写体を撮影して原画像を取得する(ステップS201)。
【0026】
次に、原画像メモリ103は、原画像を格納する(ステップS203)。
【0027】
次に、ぼかしフィルタ105は、原画像メモリ103から原画像を読み出し、これに対し、ぼかしをかける(ステップS205)。
【0028】
次に、ぼけ画像メモリ107は、ぼかしをかけられた、ぼけ画像を格納する(ステップS207)。
【0029】
次に、第1のコントラスト算出部109は、原画像を原画像メモリ103から読み出し、原画像のコントラストを算出する(ステップS209)。なお、ステップ209は、ステップS203からステップ213の間であれば、どこで行ってもよい。
【0030】
次に、第2のコントラスト算出部113は、ぼけ画像をぼけ画像メモリ107から読み出し、ぼけ画像のコントラストを算出する(ステップS211)。
【0031】
次に、コントラスト比較部111は、原画像のコントラストとぼけ画像のコントラストとを比較する(ステップS213)。
【0032】
最後に、ぼけ判断部115は、原画像のコントラストとぼけ画像のコントラストとの比較結果と閾値とを比較することにより、原画像がぼけているか否かを判断する(ステップS215)。
【実施例1】
【0033】
実施例1では、機種1の携帯電話機を利用した場合のデータを示す。
【0034】
図3(1)〜(3)は、機種1の携帯電話機を用いて、ぼけのない画像を撮影した場合のグラフである。図3(1)は、ぼかしフィルタをかける前のコントラスト(隣接画素間の絶対差分)のグラフであり、図3(2)は、ぼかしフィルタをかけた後のコントラストのグラフであり、図3(3)は、コントラスト比のグラフである。ここで、コントラストを、注目画素aとそれに隣接する画素bの差分の絶対値を注目画素aとそれに隣接する画素bの和の絶対値で割った値として定義している。すなわち、コントラストを、|a−b|/|a+b|と定義している。また、コントラスト比を、各画素毎にぼかしフィルタをかける前のコントラストをぼかしフィルタをかけた後のコントラストで割ったと定義している。
【0035】
図3(1)及び図3(2)において、横軸は、画像の或るY座標において横に並ぶ画素の番号を示し、縦軸は隣接する画素間の絶対差分値(コントラスト)を表す。グラフの右隣のFとそれに続く番号は、合わせて、画像の番号を表す。番号の左隣にある図形は凡例を示す。
【0036】
図3(3)において、横軸は、画像の或るY座標において横に並ぶ画素の番号を示し、縦軸はコントラスト比を表す。グラフの右隣のFとそれに続く番号は、合わせて、画像の番号を表す。番号の左隣にある図形は凡例を示す。
【0037】
図3(3)から明らかなように、機種1の携帯電話機においては、ぼけがない場合には、コントラスト比が15以上の画素がほとんどであることがわかる。
【0038】
図4(1)〜(3)は、機種1の携帯電話機を用いて、ぼけのある画像を撮影した場合のグラフである。図4(1)〜(3)の読み方は、図3(1)〜(3)の読み方と同様である。
【0039】
図3(3)に示す値の画像毎のコントラスト比の平均値は、25.0から54.8まで分布し、全画像のコントラスト比の平均値は、40.0である。他方、図4(3)に示す値の画像毎のコントラスト比の平均値は、4.84から5.56まで分布し、全画像の平均値は、5.20である。したがって、この機種1では、閾値を10から20程度(例えば、15)にして、コントラスト比の画像全体にわたる平均値が閾値未満であれば画像がぼけていて、コントラスト比の平均値が閾値以上であれば画像がぼけていないと判断すればよいことがわかる。
【実施例2】
【0040】
図5(1)〜(3)は、機種2の携帯電話機を用いて、ぼけのない画像を撮影した場合のグラフである。図5(1)〜(3)の読み方は、図3(1)〜(3)の読み方と同様である。
【0041】
図6(1)〜(3)は、機種2の携帯電話機を用いて、ぼけのある画像を撮影した場合のグラフである。図6(1)〜(3)の読み方は、図3(1)〜(3)の読み方と同様である。
【0042】
図5(3)に示す値の画像毎のコントラスト比の平均値は、22.2から45.8まで分布し、全画像のコントラスト比の平均値は、31.2である。他方、図6(3)に示す値の画像毎のコントラスト比の平均値は、2.61から3.07まで分布し、全画像のコントラスト比の平均値は、2.81である。したがって、この機種2では、閾値を5から20程度(例えば、12)にして、コントラスト比の画像全体にわたる平均値が閾値未満であれば画像がぼけていて、その平均値が閾値以上であれば画像がぼけていないと判断すればよいことがわかる。
【実施例3】
【0043】
図7(1)〜(3)は、機種3の携帯電話機を用いて、ぼけのない画像を撮影した場合のグラフである。図7(1)〜(3)の読み方は、図3(1)〜(3)の読み方と同様である。
【0044】
図8(1)〜(3)は、機種3の携帯電話機を用いて、ぼけのある画像を撮影した場合のグラフである。図8(1)〜(3)の読み方は、図3(1)〜(3)の読み方と同様である。
【0045】
図7(3)に示す値の画像毎のコントラスト比の平均値は、25.6から43.4まで分布し、全画像のコントラスト比の平均値は、35.5である。他方、図8(3)に示す値の画像毎のコントラスト比の平均値は、2.47から11.2まで分布し、全画像のコントラスト比の平均値は、4.81である。したがって、この機種3では、閾値を15から20程度(例えば、17.5)にして、コントラスト比の画像全体にわたる平均値が閾値未満であれば画像がぼけていて、その平均値が閾値以上であれば画像がぼけていないと判断すればよいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、カメラにより撮影された画像がぼけているか否かの判定を必要とする方法や装置のために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態による、画像のぼけ判断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による、画像のぼけ判断装置などにより行われる、画像のぼけ判断方法を示すフローチャートである。
【図3】実施例1を説明するための第1から第3のグラフである。
【図4】実施例1を説明するための第4から第6のグラフである。
【図5】実施例2を説明するための第1から第3のグラフである。
【図6】実施例2を説明するための第4から第6のグラフである。
【図7】実施例3を説明するための第1から第3のグラフである。
【図8】実施例3を説明するための第4から第6のグラフである。
【符号の説明】
【0048】
101 カメラ
103 原画像メモリ
105 ぼかしフィルタ
107 ぼけ画像メモリ
109 第1のコントラスト算出部
111 コントラスト比較部
113 第2のコントラスト算出部
115 ぼけ判断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像がぼけているか否かを判断するための、画像のぼけ判断方法であって、
前記画像にぼかしフィルタをかけるステップと、
前記ぼかしフィルタをかける前の前記画像のコントラストを算出するステップと、
前記ぼかしフィルタをかけた後の前記画像のコントラストを算出するステップと、
前記ぼかしフィルタをかける前の前記画像のコントラストと前記ぼかしフィルタをかけた後の前記画像のコントラストとを比較するステップと、
前記画像のぼかしフィルタをかける前のコントラストと前記画像のぼかしフィルタをかけた後のコントラスとの比較結果に基づいて、前記画像がぼけているか否かを判断する判断ステップと、
を備えることを特徴とする、画像のぼけ判断方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像のぼけ判断方法において、
前記ぼかしフィルタはガウシアンフィルタ、平均化フィルタ又はローパスフィルタであることを特徴とする画像のぼけ判断方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像のぼけ判断方法において、
前記コントラストは、隣接する画素間の絶対差分を基に算出されたものであることを特徴とする画像のぼけ判断方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像のぼけ判断方法において、
前記比較は、前記画像のぼかしフィルタをかける前のコントラストと前記画像のぼかしフィルタをかけた後のコントラストとの比率に基づいて行うことを特徴とする画像のぼけ判断方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像のぼけ判断方法において、
前記判断ステップでは、ぼかしフィルタをかける前のコントラストをぼかしフィルタをかけた後のコントラストで割った値の平均値に基づいて前記画像がぼけているか否かを判断することを特徴とする、画像のぼけ判断方法。
【請求項6】
画像がぼけているか否かを判断するための、画像のぼけ判断装置であって、
前記画像にぼかしフィルタをかける手段と、
前記ぼかしフィルタをかける前の前記画像のコントラストを算出する手段と、
前記ぼかしフィルタをかけた後の前記画像のコントラストを算出する手段と、
前記ぼかしフィルタをかける前の前記画像のコントラストと前記ぼかしフィルタをかけた後の前記画像のコントラストとを比較する手段と、
前記画像のぼかしフィルタをかける前のコントラストと前記画像のぼかしフィルタをかけた後のコントラスとの比較結果に基づいて、前記画像がぼけているか否かを判断する判断手段と、
を備えることを特徴とする、画像のぼけ判断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像のぼけ判断装置において、
前記ぼかしフィルタはガウシアンフィルタ、平均化フィルタ又はローパスフィルタであることを特徴とする画像のぼけ判断装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の画像のぼけ判断装置において、
前記コントラストは、隣接する画素間の絶対差分を基に算出されたものであることを特徴とする画像のぼけ判断装置。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか1項に記載の画像のぼけ判断装置において、
前記比較は、前記画像のぼかしフィルタをかける前のコントラストと前記画像のぼかしフィルタをかけた後のコントラストとの比率に基づいて行うことを特徴とする画像のぼけ判断装置。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の画像のぼけ判断装置において、
前記判断手段は、ぼかしフィルタをかける前のコントラストをぼかしフィルタをかけた後のコントラストで割った値の平均値に基づいて前記画像がぼけているか否かを判断することを特徴とする、画像のぼけ判断装置。
【請求項11】
コンピュータに請求項1乃至5の何れか1項に記載の画像のぼけ判断方法を行わせるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−105637(P2009−105637A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275273(P2007−275273)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】