説明

画像データ出力装置

【課題】端末装置10を移動させる拠点に応じて、画像データの出力先となる最適な画像形成装置20を自動的に選択する。
【解決手段】端末装置10の記憶部は、ユーザ自身が行う予定になっている作業に対応する予定時間と作業位置が入力されたスケジュールDBを記憶している。端末装置の制御部は、自身のタイマ機能により計時される時間が、そのスケジュールDBに記憶された予定時間が示す何れかの時間になると、自端末を携帯するユーザの移動先の位置をその予定時間に対応する作業位置に従って特定する。続いて、ジョブの出力となる画像形成装置20のIPアドレスを格納する領域を制御部11のRAMに確保し、その領域の記憶内容を特定した移動先の位置の近傍に設置された画像形成装置20のIPアドレスへと切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを介して複数のプリンタが接続された端末装置において、画像データの出力先のプリンタを他のプリンタに切り替える装置がある。例えば、特許文献1には、画像データの出力先として指定されたプリンタの状態を取得し、その状態に異常がある場合には、出力先のプリンタを予め定められた代替のプリンタに切り替える仕組みの開示がある。
また、特許文献2には、サーバ装置が利用可能な全てのプリンタの稼動状況とステータス状況とを取得し、端末装置は、サーバ装置から送信されたそれらの情報をモニタに表示し、出力先のプリンタを切り替える操作を受け付ける仕組みの開示がある。
【特許文献1】特開2003−122529号公報
【特許文献2】特開2000−305883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、持ち運びが容易な端末装置であるノート型パーソナルコンピュータ(以下、ノートPCという)を利用するユーザの多くは、煩わしい設定操作を強いられることなく、自身の移動先の近傍にある画像形成装置を用いた画像出力をスマートに行いたいという要望を持っている。しかしながら、これまでに提案されてきたノートPCは、画像データの出力先となる画像形成装置を切り替えるたびに、専用のユーザインターフェース画面を開き、そのインターフェース画面を通じて新たな出力先となる画像形成装置のプリンタドライバやIPアドレスを再設定する、といった煩わしいマニュアル操作をユーザに強いる構成となっており、ノートPCを頻繁に持ち運ぶユーザにとっては使い勝手が極めて悪いものであった。
【0004】
特に、各画像形成装置が同一機種である場合、ユーザに選択を促すべくインターフェース画面に表示されるそれら同一機種の画像形成装置のプリンタアイコンも似寄ったものとなってしまうため、選択の誤りを回避するためにユーザ自らが改めて各プリンタアイコン名を識別可能な名前に変更せざるをえないことも少なくなかった。また、各画像形成装置に対応するプリンタドライバが異なる場合、当然ながら画像形成装置自体のアドレスだけでなくそのプリンタドライバをも手動で変更する必要があった。
上述のように、端末装置を移動させる度にネットワークに接続された画像形成装置の中から移動する拠点近傍の最適な画像形成装置へ出力先を切り替えるのは極めて煩わしい作業となっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ユーザに画像データの出力先となる画像形成装置を切り替える設定操作を強いることなく、移動する拠点に応じて、出力先となる画像形成装置を、最適な画像形成装置に切り替えることができる画像データ出力装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な態様である画像データ出力装置は、ネットワークの拠点となるアクセスポイントをそれぞれ示す各拠点情報と、それらの各拠点情報が示すアクセスポイントを拠点とするネットワークに接続したときに利用し得る一又は複数の画像形成装置のアドレスとを各々対応付けて記憶した第1の記憶手段と、自装置が接続する予定のアクセスポイントを示す拠点情報と、そのアクセスポイントに接続する予定時間を示す予定時間情報とを対応付けて記憶した第2の記憶手段と、時間を計時するタイマと、前記タイマにより計時された時間が前記第2の記憶手段に記憶された予定時間情報が示す予定時間になると、その予定時間情報と対応付けて当該第2の記憶手段に記憶された拠点情報を読み出し、読み出した拠点情報と対応付けて前記第1の記憶手段に記憶された画像形成装置のアドレスへ画像データの出力先のアドレスを切り替える出力先切替手段と、前記切り替えられたアドレスの画像形成装置へ画像データを出力する出力手段とを備える。
【0007】
この態様において、各画像形成装置のアドレスと、それらの各画像形成装置の設置位置を示す位置情報とを対応付けて記憶した第3の記憶手段と、自装置の現在位置を示す位置情報を取得する取得手段とを更に備え、前記出力先切替手段は、前記読み出した拠点情報と対応付けられた複数のアドレスが前記第1の記憶手段に記憶されているとき、それらの各アドレスと対応付けて前記第3の記憶手段に記憶された各位置情報が示す画像形成装置の設置位置と前記取得手段が取得した位置情報が示す自装置の現在位置の間の距離をそれぞれ求め、求めた距離が最も近い位置情報と対応付けて当該第3の記憶手段に記憶されたアドレスへ画像データの出力先を切り替えてもよい。
【0008】
また、前記第3の記憶手段は、各画像形成装置のアドレスと、位置情報と、それら各画像形成装置が解釈可能なデータ形式の画像データの生成手順を示す各プリンタドライバプログラムを識別するプリンタドライバ識別子の各セットを記憶し、前記出力先切替手段は、前記読み出した拠点情報と対応付けられた複数のアドレスが前記第1の記憶手段に記憶されているとき、それら複数のアドレスの各々と自装置にインストール済みのプリンタドライバプログラムのドライバ識別子とをそれぞれ含むセットを前記第3の記憶手段から抽出し、抽出したセットに含まれる各位置情報が示す画像形成装置の設置位置と前記取得手段が取得した位置情報が示す自装置の現在位置の間の距離を求めてもよい。
【0009】
さらに、画像データ出力装置は、画像形成の態様を指示する指示手段を更に備え、前記第3の記憶手段は、各画像形成装置のアドレスと、位置情報と、それら各画像形成装置がサポートしている画像形成の態様を示すサポート態様情報の各セットを記憶し、前記出力先切替手段は、前記読み出した拠点情報と対応付けられた複数のアドレスが前記第1の記憶手段に記憶されているとき、それら複数のアドレスの各々と前記指示手段から指示されたサポート態様情報とをそれぞれ含むセットを前記第3の記憶手段から抽出し、抽出したセットに含まれる各位置情報が示す画像形成装置の設置位置と前記前記取得手段が取得した位置情報が示す自装置の現在位置の間の距離を求めてもよい。
【0010】
また、画像データ出力装置は、自装置が接続する予定のアクセスポイントを示す拠点情報とそのアクセスポイントに接続する予定時間を示す予定時間情報を入力する入力手段と、前記入力された拠点情報と予定時間情報とを対応付けて前記第2の記憶手段に記憶させる記憶制御手段とを更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、端末装置を移動させる拠点に応じて、画像データの出力先となる最適な画像形成装置を自動的に選択させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態>
本発明の実施形態について説明する。
(構成)
図1は、本実施形態にかかる画像出力システムの全体構成を示す概略図である。図1に示すように、この画像出力システムは、建物の1階から5階に一台ずつアクセスポイント30を備え付け、それらアクセスポイント30の無線通信エリアに在圏するノードである端末装置10を無線接続して各階毎の無線通信ネットワークを構成する。また、各階毎のアクセスポイント30と画像形成装置20a、20b、20c、20dとは有線ネットワークで接続され、この有線ネットワークと無線通信ネットワークとを合わせて各階毎のネットワーク(以下、「階別通信ネットワーク」と呼ぶ)を構成してなる。
【0013】
端末装置10の利用者たる各ユーザは、端末装置10を持ったまま各階間を自在に移動し、移動先の階に備え付けられたアクセスポイント30を介してその階の階別通信ネットワークにアクセスする。詳細に説明すると、例えば、端末装置10が別の階に移動され、移動前の階に備え付けられたアクセスポイント30の無線通信エリアから外れると、端末装置10は、無線通信可能なアクセスポイント30からビーコンフレームを受信し、ビーコンフレームを受信したアクセスポイント30と無線通信を行って移動先の階の階別通信ネットワークにアクセスする。なお、端末装置10は、階別通信ネットワークにアクセスする度に、そのネットワークのDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ(図示略)から固有のIPアドレスの割り当てを受けるようになっている。
【0014】
また、図1に示すように、このシステムを備え付けた建物の各階は、第1エリア、第2エリア、第3エリア、第4エリアに区画されており、それらの各エリアには、会議室、応接室、食堂、レクレーションルームなどといった部屋やブースが設けられており、また、各階には、画像形成装置が複数台ずつ設置されている。図1を参照すると、この建物の5階の第1エリアには応接室が、第4エリアには会議室が設けられており、また、5階の各エリアには画像形成装置20a乃至20dがそれぞれ一台ずつ設置されていることが分かる。なお、画像形成装置20a乃至20dを区分する必要がない場合は、総称して「画像形成装置20」と記す。
【0015】
画像形成装置20は、装置全体を制御する制御部、画像データの入力を受ける通信部、入力された画像データに応じた画像を形成する画像形成部、記憶部などを備える。各画像形成装置20の記憶部は、DHCPサーバから各々に割り当てられたIPアドレスや自装置を機種を示すプリンタ名などを記憶する。
【0016】
図2は、端末装置10の構成を示すブロック図である。この端末装置10は、例えば、ノートPCであり、ユーザに持ち運ばれることにより、その位置が移動される。端末装置10は、図2に示すように、制御部11、記憶部12、操作部13、表示部14、無線通信部15などを備える。制御部11は、データを処理するCPU(Central Processing Unit)や各種制御プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、CPUにワークエリアを提供するRAM(Random Access Memory)などから構成される。この制御部11は、時間を計時するタイマ機能を有する。操作部13は、例えば、マウスやキーボードなどで構成されており、ユーザによる操作を受け付ける。表示部14は、例えば、液晶パネルなどであり、制御部11による制御の下、操作を促すメッセージ画面、更には処理状況や処理結果を示す画面などを表示する。
【0017】
無線通信部15は、各階のアクセスポイント30と無線通信を行うネットワークインターフェースである。端末装置10は、この無線通信部15を備えることにより、自装置が位置する階のアクセスポイント30と無線通信を行い、そのアクセスポイント30を含む階別通信ネットワークに接続される。
【0018】
記憶部12は、例えばハードディスクであり、図3に示すように、文書作成アプリケーション12a、プリンタドライバプログラム12b、スケジュールデータベース(以下、「スケジュールDB12c」と記す)、拠点別データベース(以下、「拠点別DB12d」と記す)、プリンタ別データベース(以下、「プリンタ別DB12e」と記す)、及び画像データ出力先切替プログラム12fなどを記憶する。次に、記憶部12の記憶内容について詳細に説明する。
【0019】
文書作成アプリケーション12aは、操作部13を介した各種入力操作による文書の作成、保存、編集を行うためのプログラムである。
プリンタドライバプログラム12bは、文書作成アプリケーション12aにより作成された文書の画像を各種画像形成装置20が解釈可能なページ記述言語のデータ形式(ジョブ)へ変換するための処理手順を記したプログラムである。プリンタドライバプログラム12bは、各画像形成装置20の機種毎にメーカから提供されるものであり、端末装置10は、各画像形成装置20の機種に固有のプリンタドライバプログラム12bを自装置にインストールしなければ、それらの画像形成装置20へのジョブの出力を行うことができないようになっている。
【0020】
図4は、スケジュールDB12cのデータ構造図である。このスケジュールDB12cは、各々が、ユーザにより行われる作業と対応する複数のレコードの集合体である。このスケジュールDB12cを構成するレコードの各々は、「予定時間」、「作業内容」、及び「作業位置」の3つのフィールドを有する。
【0021】
「予定時間」のフィールドには、予定時間情報が記憶される。予定時間情報は、ユーザが作業を行う予定時間を示す情報である。「作業内容」のフィールドには、作業内容情報が記憶される。作業内容情報は、ユーザが行う予定になっている作業の内容を示す情報である。この「作業位置」のフィールドは、「拠点」と「エリア」の2つのサブフィールドに分かれており、「拠点」のフィールドには拠点情報が、「エリア」のサブフィールドにはエリア情報がそれぞれ記憶される。拠点情報は、建物の1階乃至5階の各階層を示す情報である。エリア情報は、各階の第1乃至第4の各エリアを示す情報である。
【0022】
スケジュールDB12cの記憶内容は、端末装置10の表示部14に表示されるスケジュール入力画面(図示略)を通じたユーザからの入力操作を通じて更新される。このスケジュール入力画面には、予定時間、作業内容、拠点、及びエリアの入力を受け付ける各種入力欄が設けられている。例えば、13時に5階の会議室で予算会議を行う予定であるときは、予定時間の入力欄に「13:00」、作業内容の入力欄に「予算会議」と入力した後、拠点の入力欄に「5F」と入力し、更に、会議室を内包するエリアである「第4エリア」をエリアの入力欄に入力する。そのような入力が成されると、制御部11は、「予定時間」のフィールドの記憶内容を「13:00」、作業内容のフィールドの記憶内容を「予算会議」、「拠点」のサブフィールドの記憶内容を「5F」、そして、「エリア」のサブフィールドの記憶内容を「第4エリア」とする新たなレコードをスケジュールDB12cに追加する。
ユーザは、自身が予定する作業の作業内容、その予定時間、及び場所が明らかになるたびに上述した入力操作を行うことで、スケジュールDB12cの記憶内容を順次更新させていく。
【0023】
図5は、拠点別DB12dのデータ構造図である。この拠点別DB12dは、各々が、階別通信ネットワークの構築された1階乃至5階の各階と対応する複数のレコードの集合体である。
この拠点別DB12dを構成するレコードの各々は、「拠点」、「プリンタ」、「ポート」の3つのフィールドを有する。「拠点」のフィールドには、上記スケジュールDB12cと同様に、拠点情報が記憶される。「プリンタ」のフィールドには、プリンタ識別情報が記憶される。プリンタ識別情報は、各画像形成装置20に固有の識別子を示す情報である。「ポート」のフィールドには、DHPCサーバから各画像形成装置20に割り当てられているIPアドレスが記憶される。
【0024】
図6は、プリンタ別DB12eのデータ構造図である。このプリンタ別DB12eは、各々が、個々の画像形成装置20に対応する複数のレコードの集合体である。このプリンタ別DB12eを構成するレコードの各々は、「プリンタ」、「ポート」、「ドライバ」、及び「設置位置」の4つのフィールドを有する。
「プリンタ」のフィールドには、上記拠点別DB12dと同様に、プリンタ識別情報が記憶される。また、「ポート」のフィールドには、上記拠点別DB12dと同様に、DHPCサーバから各画像形成装置20に割り当てられているIPアドレスが記憶される。
【0025】
「ドライバ」のフィールドには、「ドライバ識別情報」が記憶される。「ドライバ識別情報」は、各画像形成装置20に対応するプリンタドライバプログラム12bを識別する情報である。「設置位置」のフィールドは、「拠点」と「エリア」の2つのサブフィールドに分かれており、「拠点」のフィールドには拠点情報が、「エリア」のフィールドには、エリア情報が記憶される。
【0026】
図3において、画像データ出力先切替プログラム12fは、本実施形態に特有の機能を制御部11のCPUに付与するための固有のプログラムである。このプログラムを実行するCPUには以下の2つの機能が付与される。
a移動先特定機能
これは、自端末を携帯するユーザの移動先の位置をスケジュールDB12cの記憶内容に従って特定する機能である。
b出力先切替機能
これは、ジョブの出力となる画像形成装置20のIPアドレスを格納する領域を制御部11のRAMに確保し、その領域の記憶内容を移動先の近傍の画像形成装置20のIPアドレスへと順次切り替える機能である。
【0027】
(動作)
次に、実施形態の動作について説明する。
図7は、本実施形態にかかる画像出力システムの動作を示すフローチャートである。
図に示す一連の処理は、端末装置10の制御部11のタイマ機能により計時される時間がスケジュールDB12c(図4参照)に記憶された予定時間情報が示す時間に至ったことをトリガーとして開始される。
【0028】
端末装置10の制御部11は、自身のタイマ機能により計時される時間がスケジュールDB12cの各レコードに記憶された予定時間情報の何れかが示す時間になると(ステップSA1:YES)、その予定時間情報を「予定時間」のフィールドに記憶したレコードをスケジュールDB12cから特定する(ステップSA2)。
次に、制御部11は、ステップSA2にて特定したレコードと「拠点」のフィールドの記憶内容を同じくするレコードを拠点別DB12dから特定する(ステップSA3)。
【0029】
更に、制御部11は、ステップSA3で特定したレコードの「プリンタ」のフィールドに記憶された一又は複数のプリンタ識別情報を「プリンタ」のフィールドに記憶したレコードをプリンタ別DB12eから順次特定し、特定したレコードの「ドライバ」のフィールドのドライバ識別情報が、自装置にインストールされているプリンタドライバと合致するか判断することにより、ステップSA3で特定したレコードの絞込みを行う(ステップSA4)。つまり、予定時間に移動することになっている階の各画像形成装置20の中から対応するプリンタドライバプログラム12bを自装置にインストール済みであるか画像形成装置20を選定するのである。
【0030】
制御部11は、ステップSA4で絞り込んだレコードが複数に及んでいるときは、ステップSA5に進み、絞り込んだレコードが1つであればステップSA6へ進む。
ステップSA5に進むと、制御部11は、ステップSA2でスケジュールDB12cから特定したレコードの「エリア」のフィールドのエリア情報が示すエリアに最も近いエリアのエリア情報を記憶したレコードをステップSA4で絞り込んだ複数のレコードの中から特定する。
続いて、制御部11は、自らのRAMにジョブの出力先として格納されていたIPアドレスを、ステップSA4又はステップSA5にて特定したレコードの「ポート」のフィールドに記憶されたIPアドレスへと切り替える(ステップSA6)
【0031】
ここで、「予定時間」のフィールドが「13:00」、作業内容のフィールドが「予算会議」、「拠点」のフィールドが「5F」、「エリア」のフィールドが「第4エリア」となっている図4の最上段のレコードが図7のステップSA2で特定されたという具体的なケースを想定し、以降の処理の内容について更に詳述する。
ステップSA2にてレコードが特定されると、続くステップSA3では、そのレコードと同じ「5F」の拠点情報を「拠点」のフィールドに記憶したレコードが拠点別DB12dから特定される。
【0032】
更に、ステップSA4では、ステップSA3で図5のスケジュールDB12cから特定したレコードのプリンタ名のフィールドに記憶されている「P1」、「P2」、「P3」、「P4」のプリンタ識別情報をそれぞれ記憶したレコードが図6に示すプリンタ別DB12eから順次特定され、それらのレコードの「ドライバ」のフィールドのドライバ識別情報が、自装置にインストールされているプリンタドライバ「D1」と合致するかを判断することにより、プリンタ識別情報を「P1」及び「P3」とする2つのレコードに絞り込まれる。
【0033】
このステップSA4ではレコードを1つに絞りきれなかったため、ステップSA5に進む。ステップSA5では、ステップSA2でスケジュールDB12cから特定したレコードと同じ「第4エリア」のエリア情報を記憶したレコード、つまり、プリンタ識別情報を「P3」とするレコードがプリンタ別DB12eから特定される。
そして、最後のステップであるステップSA6では、ステップSA5にてプリンタ別DB12eから特定されたレコードの「ポート」のフィールドから読み出された「aaa.aaa.10.3」のIPアドレスが、新たなジョブの出力先として制御部11のRAMに格納される。
【0034】
このようにしてジョブの出力先のIPアドレスの切り替えがなされた後、文書作成アプリケーション12aを用いて作成した文書の出力が指示されると、制御部11は、プリンタドライバプログラム12bが示す処理手順に従ってその文書の画像のデータ形式を変換し、その変換により得たジョブを、自身のRAMに格納されている画像形成装置20のIPアドレスに宛てて出力する。出力されたジョブは、自端末がアクセスしている階別通信ネットワークのアクセスポイント30を経由してその宛先の画像形成装置20へ送信される。そして、ジョブを受信した画像形成装置20はそのジョブを解釈して得た画像を用紙などの記録材に形成して出力する。
以上説明した本実施形態によると、ユーザが端末装置10を持ち運んで移動する拠点毎に、その端末装置10にジョブの出力先のIPアドレスを自動的に切り替えさせるので、ユーザは自ら出力先のIPアドレスを切り替えるという煩わしい操作を強いられずに済む。
【0035】
<他の実施形態>
本発明は、種々の変形実施が可能である。
上記実施形態において、端末装置10からジョブを受信した画像形成装置20は、そのジョブを解析して得た画像のみを記録材に形成するようになっていた。これに対し、ユーザと共に作業を行なう他のユーザの名称をも併せて形成させ得るようにしてもよい。この変形例は、スケジュールDB12cのデータ構造を図8に示すようにすることで実現可能である。
【0036】
図に示すように、この変形例にかかるスケジュールDB12cの各レコードは、「予定時間」、「作業内容」、「拠点」、「エリア」に加えて、「参加者」のフィールドを有している。この「参加者」のフィールドには、参加者情報が記憶される。参加者情報は、ユーザと共に作業に参加する他のユーザを示す情報である。例えば、図8に示す最上段のレコードを参照すると、「予定時間」のフィールドの記憶内容が「13:00」、「作業内容」のフィールドの記憶内容が「予算会議」、「拠点」のフィールドの記憶内容が「5F」、「エリア」のフィールドの記憶内容が「第4エリア」となっており、「参加者」のフィールドの記憶内容が、「ユーザA、ユーザB、ユーザC」となっている。これは、このスケジュールDB12cの更新主体であるユーザが13時から5階の第4エリアにて予算会議の作業を行い、更にその会議には自身のほかにユーザA、B、Cの3名が参加する予定であることを示している。
【0037】
そして、この変形例では、端末装置10の制御部11のタイマ機能により計時される時間が図8の最上段のレコードに示す「13:00」に至ったことをトリガーとして図7に示す一連の処理が実行されて出力先のIPアドレスが切り替えられた後に文書の出力が指示されると、制御部11は、最上段のレコードの「参加者」のフィールドに記憶された参加者情報をジョブに内包させてそのIPアドレス宛てに送信する。すると、ジョブを受信した画像形成装置20は、自身が画像を形成する用紙の余白部に、「ユーザA、ユーザB、ユーザC」と参加者の連名を印字して出力する。
【0038】
上記実施形態において、端末装置10の制御部11は、図7のステップSA4にてドライバ識別情報を基にプリンタ別DB12eから絞り込んだレコードが複数に及んでいるときは、それらの複数のレコードの「エリア」のフィールドとステップSA2で特定したレコードの同フィールドに記憶されたエリア情報が示すエリアの距離に応じて更なる絞り込みを行うようになっていた(ステップSA5)。これに対し、ステップSA4にて出力先の候補として絞り込まれた各画像形成装置20のセキュリティ保証機能のサポートの有無に応じて更なる絞り込みを行うようにしてもよい。セキュリティ保証機能は、ジョブを解釈して得た画像をセキュリティ認証をパスした特定ユーザにのみ提供する機能である。この変形例は、プリンタ別DB12eのデータ構造を図9に示すようにすることで実現できる。
【0039】
図に示すように、この変形例にかかるプリンタ別DB12eの各レコードは、「プリンタ」、「ポート」、「ドライバ」、「拠点」、「エリア」に加えて、「セキュリティ保証機能」のフィールドを有している。この「セキュリティ保証機能」のフィールドには、セキュリティ保証機能をサポートした画像形成装置20であることを示す「○」、又は、そのような機能をサポートしていない画像形成装置20であることを示す「×」の何れか一方のフラグが記憶される。
【0040】
そして、この変形例では、図7のステップSA4にてプリンタ別DB12eから絞り込んだレコードの数が複数に及ぶときは、それら複数のレコードの「セキュリティ保証機能」のフィールドを参照し、「○」のフラグが記憶されている方のレコードを特定する。以降の一連の処理を経て出力先のIPアドレスが切り替えられた後、閲覧を指示するユーザのIDの入力と併せた文書の出力の指示がなされると、制御部11は、閲覧の指示を許可されたユーザのIDのジョブに内包させてそのIPアドレス宛てに送信する。すると、ジョブを受信した画像形成装置20は、IDの入力を求めるメッセージを自身のユーザインターフェースに表示させ、入力されたIDがジョブに内包されるものと一致したときのみ、そのジョブを解釈して得た画像を記録材に形成して出力する。
【0041】
また、この変形例においては、画像形成装置20に印刷物を出力した枚数を計数する枚数カウンタ機能を設け、この枚数カウンタ機能により計数された枚数がジョブに内包されるIDの数に至ったときに、以降の画像の出力を禁止するようにするとなおよい。これにより、不必要な印刷物を減らすことができる。
【0042】
上述した実施形態の一連の処理は、端末装置10の制御部11のタイマ機能により計時される時間が、スケジュールDB12cに記憶されたの予定時間情報が示す時間に至ったことをトリガーとして開始されたが、端末装置10が画像の形成を開始する時間を示す印刷予約時間と画像データとを予めサーバ装置に送信し、サーバ装置の制御部11のタイマ機能により計時される時間が印刷予約時間に至ったことをトリガーとして開始されてもよい。その場合は、このサーバ装置の制御部11が、ジョブを出力する出力先を切り替えるようにするとなおよい。
【0043】
上記実施形態においては、端末装置10と画像形成装置20の位置を、階別通信ネットワークが個別に形成される建物の各階と、それら各階を区画して得たエリアとにより特定するようになっていた。これに対し、GPS(Global Positioning System)などを用いて特定される3次元座標により端末装置10と画像形成装置20の位置を特定するようにしてもよい。要するに、端末装置10と画像形成装置20の各々の位置を示す「位置情報」が取得されてスケジュールDB12cの「作業位置」のフィールドとプリンタ別DB12eの「設置位置」のフィールドに記憶され得るようにさえなっていれば、その位置の特定手法は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】画像出力システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】端末装置10の構成を示すブロック図である。
【図3】端末装置10の記憶部12の記憶内容を示す図である。
【図4】スケジュールDB12cの構成を示す図である(第1実施形態)。
【図5】拠点別DB12dの構成を示す図である。
【図6】プリンタ別DB12eの構成を示す図である(第1実施形態)。
【図7】画像出力システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】スケジュールDB12cの構成を示す図である(他の実施形態)。
【図9】プリンタ別DB12eの構成を示す図である(他の実施形態)。
【符号の説明】
【0045】
10…端末装置、11…制御部、12…記憶部、12a…文書作成アプリケーション、12b…プリンタドライバプログラム、12c…スケジュールDB、12d…拠点別DB、12e…プリンタ別DB、12f…画像データ出力先切替プログラム、13…操作部、14…表示部、15…無線通信部、20、20a、20b、20c、20d…画像形成装置、30…アクセスポイント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークの拠点となるアクセスポイントをそれぞれ示す各拠点情報と、それらの各拠点情報が示すアクセスポイントを拠点とするネットワークに接続したときに利用し得る一又は複数の画像形成装置のアドレスとを各々対応付けて記憶した第1の記憶手段と、
自装置が接続する予定のアクセスポイントを示す拠点情報と、そのアクセスポイントに接続する予定時間を示す予定時間情報とを対応付けて記憶した第2の記憶手段と、
時間を計時するタイマと、
前記タイマにより計時された時間が前記第2の記憶手段に記憶された予定時間情報が示す予定時間になると、その予定時間情報と対応付けて当該第2の記憶手段に記憶された拠点情報を読み出し、読み出した拠点情報と対応付けて前記第1の記憶手段に記憶された画像形成装置のアドレスへ画像データの出力先のアドレスを切り替える出力先切替手段と、
前記切り替えられたアドレスの画像形成装置へ画像データを出力する出力手段と
を備えた画像データ出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像データ出力装置において、
各画像形成装置のアドレスと、それらの各画像形成装置の設置位置を示す位置情報とを対応付けて記憶した第3の記憶手段と、
自装置の現在位置を示す位置情報を取得する取得手段と
を更に備え、
前記出力先切替手段は、
前記読み出した拠点情報と対応付けられた複数のアドレスが前記第1の記憶手段に記憶されているとき、それらの各アドレスと対応付けて前記第3の記憶手段に記憶された各位置情報が示す画像形成装置の設置位置と前記取得手段が取得した位置情報が示す自装置の現在位置の間の距離をそれぞれ求め、求めた距離が最も近い位置情報と対応付けて当該第3の記憶手段に記憶されたアドレスへ画像データの出力先を切り替える
画像データ出力装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像データ出力装置において、
前記第3の記憶手段は、
各画像形成装置のアドレスと、位置情報と、それら各画像形成装置が解釈可能なデータ形式の画像データの生成手順を示す各プリンタドライバプログラムを識別するプリンタドライバ識別子の各セットを記憶し、
前記出力先切替手段は、
前記読み出した拠点情報と対応付けられた複数のアドレスが前記第1の記憶手段に記憶されているとき、それら複数のアドレスの各々と自装置にインストール済みのプリンタドライバプログラムのドライバ識別子とをそれぞれ含むセットを前記第3の記憶手段から抽出し、抽出したセットに含まれる各位置情報が示す画像形成装置の設置位置と前記取得手段が取得した位置情報が示す自装置の現在位置の間の距離を求める
画像データ出力装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像データ出力装置において、
画像形成の態様を指示する指示手段
を更に備え、
前記第3の記憶手段は、
各画像形成装置のアドレスと、位置情報と、それら各画像形成装置がサポートしている画像形成の態様を示すサポート態様情報の各セットを記憶し、
前記出力先切替手段は、
前記読み出した拠点情報と対応付けられた複数のアドレスが前記第1の記憶手段に記憶されているとき、それら複数のアドレスの各々と前記指示手段から指示されたサポート態様情報とをそれぞれ含むセットを前記第3の記憶手段から抽出し、抽出したセットに含まれる各位置情報が示す画像形成装置の設置位置と前記前記取得手段が取得した位置情報が示す自装置の現在位置の間の距離を求める
画像データ出力装置。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の画像データ出力装置において、
自装置が接続する予定のアクセスポイントを示す拠点情報とそのアクセスポイントに接続する予定時間を示す予定時間情報を入力する入力手段と、
前記入力された拠点情報と予定時間情報とを対応付けて前記第2の記憶手段に記憶させる記憶制御手段と
を更に備えた画像データ出力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−310471(P2007−310471A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136532(P2006−136532)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】