説明

画像パターン形成方法および画像パターン並びに半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルタおよび発光素子

【課題】パターンの粗密や押圧条件、塗布インキの溶液特性によらず、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することが可能な画像パターン形成方法を提供する。
【解決手段】画像パターン形成方法は、転写ブランケット1の主表面1aにインキ材料を塗布するインキ塗布工程と、前記インキ塗布工程を経た前記主表面1aを、インキ親液部5とインキ撥液部4とが所望のパターンで互いに区分された印刷版3に密着させることによって、前記主表面1aに塗布された前記インキ材料のうち前記インキ親液部5に対応する領域に塗布されていたものを前記印刷版3に転写させる部分的インキ除去工程と、前記部分的インキ除去工程を経た前記主表面1aを被印刷基材に密着させることによって、前記主表面1a上に残存している前記インキ材料を前記被印刷基材の表面に転写するインキ転写工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像パターン形成方法および画像パターン並びに半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルタおよび発光素子に関するものである。
【0002】
本発明は、レジスト剤や導電性ペースト材料などといった機能性樹脂材料、あるいは液晶用カラーフィルタ材料などを、印刷法を用いて所望のパターンに形成する際、従来のフォトリソグラフィ品質に近い高精細かつ樹脂表面の平坦性に優れた高品質画像を得るための画像パターン形成方法に関するものである。さらにその画像パターン形成方法により形成された画像パターン、半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルタ、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年の平版オフセット印刷では、印刷版の非画線部をインキに対して撥液性を有する材料、すなわちシリコーンゴムやフッ素化合物などで形成することにより、いわゆる「湿し水」を使用せずにインキを画線部のみに選択的に付着させる水なし平版を用いた平版水なしオフセット印刷が主流となっている。一般的に平版オフセット印刷機は、多くの練りローラーと印刷版面にインキを塗布する付けローラーとを装備しており、インキはローラー間で練り合わせることにより均一に広げられ、付けローラーを介して印刷版面に塗布され、さらに印刷版からブランケット、ブランケットから被印刷基材へと転写されることにより所望の画像パターンが形成される。このとき、インキは両側に引き裂かれて凝集破壊することにより転写しているため、インキ間に糸引き現象が生じる場合がある。そのため、転写後の画像パターンに膜厚ムラや体積ムラが発生し、結果的に画像パターンの解像度や平坦性の劣化の原因となっていた。
【0004】
このような糸引き現象による解像度や平坦性の劣化を解決する方法として、特許第3689536号公報(特許文献1)では、インキ層が塗布形成されたシリコーン樹脂性ブランケットを、所定形状に凸部が形成された凸版印刷版上に転動/接触させることにより、前記凸部に対応する部分のインキのみを全量転写除去し、その後、ブランケット上に残ったインキを被印刷基材に転写することによって、前記糸引き現象を解消する画像パターン形成方法が開示されている。しかしながら、前記特許文献1に記載の画像パターン形成方法では、非画線部/画線部をブランケットと凸版印刷版との接触/非接触によりパターニングしているため、転写時の押圧によるブランケット歪みや凸版印刷版上のパターン粗密の程度によって該ブランケットと該凸版印刷版との誤接触が生じてしまった場合、正確な画像パターンを形成できなくなるおそれがある。この問題を解消するための画像パターン形成方法として、インキに対する親液性/撥液性を利用して非画線部/画線部パターンを形成し、画線部インキのみを分断/転写する画像パターン形成方法が特許文献1および特公平7−80342号公報(特許文献2)に開示されている。
【0005】
さらに、関連する技術が特開2004−249696号公報(特許文献3)に開示されている。
【特許文献1】特許第3689536号公報
【特許文献2】特公平7−80342号公報
【特許文献3】特開2004−249696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている画像パターン形成方法について、図9〜図11を参照して以下に詳細に説明する。
【0007】
まず、図9に示すように、親液性/撥液性パターンが形成された印刷版100上に、キャップコーター、ダイコーター、またはドクターブレードなどを用いてインキ層101を形成する。続いて、表面にインキ撥液性を付与した画像転写シート104をインキ層101を介して印刷版100に対して密着させ、押圧する。
【0008】
その後、印刷版100と画像転写シート104とを引き離すことにより、図10に示すように、インキ親液部102上においてはインキが印刷版100側に残り、インキ撥液部103上にあったインキ101b1,101c1のみが画像転写シート104上に転写される。その後さらに、画像転写シート104を被印刷基材105に密着させ、押圧する。その後、図11に示すように、画像転写シート104と被印刷基材105とを引き離すことにより、画像転写シート104上にあったインキ101b1,101c1が被印刷基材105上に転写される。このようにして、被印刷基材105上に所望の画像パターンが形成される。
【0009】
しかしながら、印刷版100上にインキ層101を形成する際、印刷版100の表面は均質ではなく、印刷版100の表面にはインキ親液部102とインキ撥液部103とが形成されている。そのため、塗布インキの溶液特性によっては、図9に示すようにインキ親液部102にインキが多く偏在してインキ撥液部103上のインキが少なくなり、その結果、インキ層101にインキ厚膜部101aとインキ薄膜部101b,101cとが形成されてしまう。このインキ厚膜部101aとインキ薄膜部101b,101cとの各膜厚は、印刷版100上の画像パターンの粗密により変化し、周辺のインキ親液部が大きいほどインキの偏在が激しく、インキ薄膜部のインキ膜厚がより薄くなってしまう。図9に示した例では、インキ薄膜部101cでの膜厚はインキ薄膜部101bでの膜厚よりも薄くなっている。図10、図11におけるインキ101b1,101c1はそれぞれインキ薄膜部101b,101cから転写されるインキである。
【0010】
このように画像パターンの粗密によってインキの膜厚がばらついてしまうことによって、最終的に被印刷基材105上に形成される画像パターンの膜厚均一性が低下し、平坦性が低下するおそれがある。さらには、インキ溶液特性が極端な場合、特にインキの表面張力が非常に高く、親液/撥液のコントラストが非常に高い場合、具体的にはインキ親液部102に対する接触角が15°以下、かつインキ撥液部103に対する接触角が40°以上という特性を満たす場合には、インキ親液部102へのインキ凝集が激しくなるためにインキ撥液部103にインキが塗布できず、印刷版100上に全域にわたるインキ層101を形成することができないという事態になる。このような事態に陥ると画像パターンを形成することができない。
【0011】
これに対し、特許文献2に開示されている画像パターン形成方法では、まず最初に、親液性/撥液性パターンが形成された印刷媒体(印刷版)ではなく、図12に示すように、不要インキ除去体200を用意し、その表面にインキ層201を形成する。続いて、インキ親液部(インキ受容体部)203およびインキ撥液部204が形成された印刷媒体(印刷版)202をインキ層201を介して前記不要インキ除去体200に密着させて押圧し、その後で印刷媒体(印刷版)202と不要インキ除去体200とを引き離すことにより、図13に示すように、インキ親液部203部分にのみインキ層が転写される。さらに、この印刷媒体(印刷版)202を被印刷基材205に密着させて押圧し、その後で印刷媒体(印刷版)202と被印刷基材205とを引き離すことにより、図14に示すようにインキ親液部203部分のインキが被印刷基材205に転写され、所望の画像パターンが形成される。
【0012】
ここで、特許文献2に開示されている画像パターン形成方法では、不要インキ除去体200の表面は一様な材質からなる面であるので、不要インキ除去体200の表面においては、塗布インキの溶液特性によらず、均一なインキ層201を形成することが可能となる。しかしながら、ガラス基板やプリント基板のような非可撓性の被印刷基材表面への画像パターンの追従を考慮した場合、印刷媒体(印刷版)202はゴムや樹脂などの可撓性材料によって構成されている必要があるため、印刷媒体(印刷版)202上に形成できる親液性/撥液性パターンのパターン精度は、従来のオフセット印刷版材料であるAl基板やガラス基板などのような非可撓性材料上でのパターン精度に比べて、解像度、平坦性ともに大きく低下してしまう。
【0013】
また、特許文献2に開示されている画像パターン形成方法では、インキ転写の際、インキ層を挟んで、印刷媒体(印刷版)202と不要インキ除去体200とが、あるいは、印刷媒体(印刷版)202と被印刷基材205とが、図15(a)に示すように密着する状態となるが、このとき、ゴムや樹脂などの可撓性材料からなる印刷媒体(印刷版)の場合、インキ転写時の押圧圧力により図15(b)に示すように印刷媒体(印刷版)202が伸びてしまう。したがって、この印刷媒体202上に形成された画像パターンも同様に伸びてしまう。すなわち、図15(b)に示すように長さLから長さL′に変化してしまう。印刷媒体202を不要インキ除去体200から離すと、図15(c)に示すようにインキが付着している部分は長さLに戻るが、被印刷基材205に押し当てた際には、図15(d)に示すように印刷媒体202のインキが付着している部分は長さL′に伸びる。その結果、図15(e)に示すように被印刷基材205上に長さL′の画像パターンとして印刷されてしまう。これは、画像パターンの解像度が低下することを意味する。
【0014】
さらに、特許文献2に開示されている画像パターン形成方法では、最終的に印刷媒体(印刷版)上に形成されたインキ親液部(インキ受容体)に残ったインキ層を被印刷基材に転写する必要があるため、被印刷基材表面は前記インキ親液部に比べてさらにインキ親液性を有する材料で構成されていなければならず、被印刷基材の材料がきわめて限定されてしまう、あるいは被印刷基材の表面に表面粗面化などの処理を行なってインキ親液性を予め向上させておく必要が生じるなどの問題がある。さらにまた、インキ親液部からよりインキ親液性の高い被印刷基材への転写であるため、インキの全量転写が困難であり、インキの凝集破壊による糸引き現象が発生するおそれがある。そのため、高精細かつ平坦性に優れた画像を形成することができないという問題をも有する。
【0015】
本発明は上述の諸問題点に鑑みてなされたものであり、パターンの粗密や押圧条件、塗布インキの溶液特性によらず、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することが可能な画像パターン形成方法、およびその方法より製造された画像パターンを提供することを目的とする。さらに、前記画像パターン形成方法により製造された半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルタ、発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に基づく画像パターン形成方法は、転写ブランケットの主表面にインキ材料を塗布するインキ塗布工程と、前記インキ塗布工程を経た前記主表面を、インキ親液部とインキ撥液部とが所望のパターンで互いに区分された印刷版に密着させることによって、前記主表面に塗布された前記インキ材料のうち前記インキ親液部に対応する領域に塗布されていたものを前記印刷版に転写させる部分的インキ除去工程と、前記部分的インキ除去工程を経た前記主表面を被印刷基材に密着させることによって、前記主表面上に残存している前記インキ材料を前記被印刷基材の表面に転写するインキ転写工程とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パターンの粗密や押圧条件、塗布インキの溶液特性によらず、均一なインキ層を形成/転写することができるため、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
(構成)
本発明に基づく実施の形態1における画像パターン形成方法について説明する。画像パターン形成方法は、転写ブランケットの主表面にインキ材料を塗布するインキ塗布工程と、前記インキ塗布工程を経た前記主表面を、インキ親液部とインキ撥液部とが所望のパターンで互いに区分された印刷版に密着させることによって、前記主表面に塗布された前記インキ材料のうち前記インキ親液部に対応する領域に塗布されていたものを前記印刷版に転写させる部分的インキ除去工程と、前記部分的インキ除去工程を経た前記主表面を被印刷基材に密着させることによって、前記主表面上に残存している前記インキ材料を前記被印刷基材の表面に転写するインキ転写工程とを含む。
【0019】
言い換えれば、本発明に基づく画像パターン形成方法は、インキ材料を全面に塗布した転写ブランケットをインキ親液部とインキ撥液部とによる画像パターンが形成された印刷版上に密着させ、該印刷版のインキ親液部に対応する前記転写ブランケット上のインキ材料を印刷版上に転写させることによって除去した後、前記転写ブランケット上に残存しているインキ材料を被印刷基材表面に転写することを特徴としている。
【0020】
(作用・効果)
本実施の形態における画像パターン形成方法によれば、パターンの粗密や押圧条件、塗布インキの溶液特性によらず、均一なインキ層を形成/転写することができるため、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することができる。
【0021】
(実施例1)
図1〜図7を参照して、さらに具体的な実施例について説明する。
【0022】
本実施例では、インキ材料としてCF用インキ(緑)とAgナノ粒子分散インキを用い、塗布膜厚を約1.5μmとし、L/S=20μm/20μmパターンの印刷版を用いてガラス基板上に画像パターンを形成した。「L/S」とは、Line/Spaceの意味であり、最終的な印刷対象物上においてインキを載せるべき部分の幅と空白となるべき部分(インキを載せない部分)の幅との比率である。また、各インキのインキ撥液部4(シリコーン樹脂)および、インキ親液部5(レジスト樹脂)に対する接触角は、CF用インキ(緑)ではそれぞれ5°,35°であり、Agナノ粒子分散インキではそれぞれ10°,55°であった。
【0023】
まず、図1に示すように、シリコーン樹脂製ゴムからなる表面層とウレタン樹脂からなるクッション層との積層体からなる転写ブランケット1の主表面1aの全面にスリットコータを用いてインキ層2を塗布形成した。なお、インキ層2の別の形成方法として、図2に示すように、転写ブランケット1よりもインキ撥液性の高い表面を有するインキ展延シート11上にインキ層2を形成し、図3に示すように前記転写ブランケット1をインキ層2を介してインキ展延シート11と密着させて押圧することにより、図4に示すように転写ブランケット1上に均一なインキ層2を形成することも可能である。
【0024】
また、転写ブランケット1の材質としては、印刷版や被印刷基材の表面形状に追従して密着する必要があるとともに、最終的にインキ材料を被印刷基材に全量転写する必要があるため、シリコーン樹脂製ゴムやフッ素樹脂系ゴムなどの離型性および可撓性に優れた表面層とウレタン樹脂や織布などのクッション層材料との積層体を用いることができる。
【0025】
続いて、図5に示すように、Al薄板からなる支持体上にシリコーン樹脂からなるインキ撥液部4とレジスト樹脂からなるインキ親液部5によって画像パターンが形成された印刷版3にインキ層2を介して転写ブランケット1を密着させる。密着させて押圧した後で剥離することにより、図6に示すように、インキ親液部5上のインキ層だけが印刷版3上に全量転写された状態となり、インキ撥液部4上のインキ層2だけが転写ブランケット1上に全量残留する。すなわち、転写ブランケット1からはインキ層2が部分的に除去された形となる。
【0026】
なお、本実施例で用いた前記印刷版3は、シリコーン樹脂からなるインキ撥液部4とレジスト樹脂からなるインキ親液部5との段差が約0.5μmであって、塗布膜厚1.5μmよりも小さくなっている。この印刷版3は、略平板印刷版である。
【0027】
また、印刷版3の支持体としては、印刷時にかかる荷重に耐え得る材質である必要があるため、一般的にはAl薄板のような金属薄板、ポリエチレンテレフタレートのようなプラスチックフィルム、ゴム、石英ガラスなど、あるいはそれらの複合体を用いることができる。また、インキ撥液部4にはシリコーン樹脂、あるいはフッ素系樹脂を熱硬化させたものを用いることが可能であり、インキ親液部5にはAl、Ti薄膜などの金属薄膜層、あるいはレジスト樹脂やエポキシ樹脂、ゼラチン、ウレタン樹脂などを熱硬化させたものを用いることができる。
【0028】
さらに、図7に示すように、ガラス基板であるところの被印刷基材6に対して前記転写ブランケット1を密着させて押圧した後で剥離することにより、前記転写ブランケット1上に残存するインキ層が被印刷基材6上に転写された。これにより、CF用インキ(緑)とAgナノ粒子分散インキとの両方ともガラス基板上にL/S=20μm/20μmの画像パターンとして形成することができた。その後、各インキ材料に適した焼成処理を行ない、溶媒を蒸発させてインキを固化することにより各インキ材料からなる画像パターンを完成させた。
【0029】
なお、それぞれの画像パターンの膜厚は、CF用インキ(緑)が1.2μmであり、Agナノ粒子分散インキが1.0μmであり、表面平坦性はどちらも約0.1μm以下であった。
【0030】
(比較例1)
比較例1として、インキ撥液部とインキ親液部の間の段差が塗布膜厚よりも大きく、約2.5μmとなっている印刷版を用いて、実施例1と同様の画像パターン形成方法に従って、ガラス基板上に画像パターンを形成した。なお、その他の材料および使用インキなどは全て実施例1と同じものを用いた。
【0031】
本比較例においては、インキ撥液部とインキ親液部との間の段差が約2.5μmと、インキ膜厚の1.5μmよりも大きいため、印刷版と転写ブランケットとを、インキ層2を介して密着させて押圧した際に均一なインキ層が形成されず、転写ブランケット上に残留したインキ撥液部上のインキ層の膜厚が不均一になり、最終的に得られた画像パターンの膜厚均一性が実施例1に比べて大きく低下した。
【0032】
(比較例2)
比較例2として、インキ撥液部、あるいは転写ブランケット表面層に通常の紙印刷などに用いられるNBRゴムを用いて、実施例1と同様の画像パターン形成方法に従って、ガラス基板上に画像パターンを形成した。なお、その他の材料および使用インキなどは全て実施例1と同じものを用いた。
【0033】
本比較例においては、NBRゴムはシリコーン樹脂、あるいはフッ素系樹脂と同等の高撥液性を有するものの離型性が低いため、インキ転写の過程においてインキの全量転写が行なわれず、両側に引き裂かれて凝集破壊することにより部分転写してしまい、転写後の画像パターンに膜厚ムラや体積ムラが発生し、最終的に得られた画像パターンの解像度や平坦性が大きく低下した。
【0034】
(比較例3)
比較例3として、実施例1と同様のインキを用いて、特許文献1に記載の画像パターン形成方法に従って、ガラス基板上に画像パターンを形成した。なお、印刷版の基材、インキ撥液部、インキ親液部および画像転写シートについては実施例1と同じ材料を用いた。
【0035】
本比較例においては、前記CF用インキ(緑)を用いた場合には、ガラス基板上にL/S=20μm/20μmの画像パターンを形成することができ、膜厚1.2μm、表面平坦性は約0.2μmであった。
【0036】
一方、前記Agナノ粒子分散インキを用いた場合には、インキ撥液部(シリコーン樹脂)に対する接触角が10°、インキ親液部(レジスト樹脂)に対する接触角が55°と接触角のコントラストが非常に高いためにインキ親液部にインキが偏在してしまい、印刷版上に均一なインキ層を形成することができず、画像パターンを形成することができなかった。
【0037】
(比較例4)
比較例4として、実施例1と同様のインキを用いて、特許文献2に記載の画像パターン形成方法に従って、ガラス基板上に画像パターンを形成した。なお、不要インキ除去体、および印刷媒体の基材、インキ撥液部、インキ親液部および画像転写シートについては実施例1と同じ材料を用いた。
【0038】
本比較例においては、CF用インキ(緑)、Agナノ粒子分散インキのどちらを用いた場合においても、不要インキ除去体へのインキ層形成工程、印刷媒体(印刷版)インキ親液部へのインキ転写工程に関しては問題なくインキ塗布/転写が行われた。しかしながら、どちらのインキを用いた場合においても、表面処理を施していないガラス基板上に対して部分的にしかインキを転写することができず、転写された画像パターンの膜厚は0.5〜0.6μm程度と非常に薄く、表面平坦性も0.3〜0.4μm以上と非常に劣ったものであった。
【0039】
(作用・効果)
以上のように、本発明に基づく画像パターン形成方法では、まず最初に均一表面である転写ブランケット表面にインキ材料を塗布し、インキに対する親液性/撥液性コントラストにより非画線部/画線部をパターニングし、画像パターンを形成することを特徴としている。したがって、パターンの粗密や押圧条件、塗布インキの溶液特性によらず、均一、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することが可能となる
また、本発明に基づく印刷版は、インキ撥液部とインキ親液部との段差が塗布インキ層膜厚よりも小さい略平板印刷版であるため、転写ブランケット上のインキ層が印刷版の表面形状に追従して全面、かつ均一圧力で密着/押圧されるため、膜厚の面内均一性に優れた画像パターンを形成することができる。さらに、本発明に基づく印刷版は略平板印刷版であるため、インキ撥液部とインキ親液部のインキを分断する際に上下対称に力がかかるので、分断されたインキの断面形状が略長方形となり、従来に比べて高アスペクト比のパターンを形成することが可能となる。
【0040】
また、転写ブランケット表面層がシリコーン樹脂製ゴムやフッ素樹脂系ゴムなどの材料で形成されているが、これらの材料は離型性および可撓性に優れ、かつ印刷版上のインキ親液部よりもインキ撥液性が高く、インキ撥液部よりもインキ親液性が高い材料であるので、被印刷基材としてプラスチック材料、ガラス基板、金属材料など一般的なインキ親液材料を幅広く用いることができると同時に、インキの全量転写が可能となるため、糸引き現象が発生せず、従来に比べて高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することが可能となる。
【0041】
さらに、本発明では、転写ブランケット上ではなく印刷版上にインキ親液性/撥液性パターンを形成しているため、インキ転写時の押圧圧力により転写ブランケットが伸びてしまった場合にも、印刷版上に形成された画像パターンは伸びることはない。その理由は図8(a)〜(e)に示されるとおりである。すなわち、図8(a)に示すように印刷版3上に長さLのインキ撥液部4が形成されているとき、図8(b)に示すように押圧されて伸びたインキ層2がこの長さLのインキ撥液部4に当接することになる。転写ブランケット1を印刷版3から離したときには図8(c)に示すようにインキ層2は長さLではなくより短い長さL′になる。しかし、このインキ層を被印刷基材6に密着させて押圧したときには図8(d)に示すように長さL′であったインキ層は再び伸びて長さLとなるので、図8(e)に示すように、最終的に被印刷基材6には長さLの画像パターンが形成される。すなわち、最終的に印刷版上と同様の解像度、平坦性を有する画像パターンを形成することが可能となる。
【0042】
さらに、インキ転写時のブランケット変形に関しても、親液性/撥液性パターンが変形するブランケット上ではなく印刷版上に形成されているため、特許文献2に記載の画像パターン形成方法のように、画線部の線幅がインキ転写時の押圧圧力によるブランケット変形により増大することがない。
【0043】
本発明によれば、被印刷基材への転写の際、インキ撥液性を有するブランケット表面に残ったインキを被印刷基材へ転写するため、被印刷基材の選択の幅が広がると同時にインキの全量転写が可能となる。これにより、特許文献2に記載の画像パターン形成方法に比べてより多くの被印刷基材に対して、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することが可能となり、半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルタ、発光素子など幅広い応用製品の更なる高性能化、および低コスト化を実現することが可能となる。
【0044】
(さらに好ましい形態)
本実施の形態における画像パターン形成方法のより好ましい条件について説明する。
【0045】
前記インキ塗布工程は、前記転写ブランケットの前記主表面よりもインキ撥液性の高い表面を有するインキ展延材上に全面塗布されたインキ層を前記主表面上に転写する工程を含むことが好ましい。この構成を採用することにより、転写ブランケットが平板形状でなく円筒形状であるような場合においても、転写ブランケット上に均一なインキ層を形成することができる。
【0046】
さらに、前記インキ材料が、前記印刷版のインキ親液部に対する接触角が20°以下であり、かつ前記印刷版のインキ撥液部に対する接触角が40°以上であるようなインキ材料であることが好ましい。このような接触角特性を有するインキ材料、すなわち、特許文献1に記載の方法では印刷版上に均一なインキ層を形成できないような特性のインキ材料においては、本発明を適用することにより均一なインキ層を形成することが可能となり、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することができる。
【0047】
前記印刷版における前記インキ親液部と前記インキ撥液部との段差が、前記転写ブランケットから前記印刷版に転写されることによって塗布された前記インキ材料の膜厚よりも小さくなっていることが好ましい。この構成を採用することにより、均一なインキ層を形成することが可能となり、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することができる。
【0048】
前記印刷版の前記インキ撥液部および前記転写ブランケットの前記主表面がシリコーン樹脂材料からなることが好ましい。この構成を採用することにより、高撥液性と高離型性を併せ持つシリコーン樹脂材料が前記印刷版のインキ撥液部および転写ブランケット表面に用いられているので、インクの全量転写を実現し、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することが可能となる。
【0049】
前記印刷版の前記インキ撥液部および前記転写ブランケットの前記主表面がフッ素化合物樹脂材料からなることが好ましい。この構成を採用することにより、高撥液性と高離型性を併せ持つフッ素系化合物樹脂材料が前記印刷版のインキ撥液部および転写ブランケット表面層に用いられているので、インクの全量転写を実現し、高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することが可能となる。
【0050】
(画像パターン)
本発明に基づく画像パターンは、上述のいずれかの画像パターン形成方法を用いて製造した画像パターンである。このような画像パターンとすることにより、低コストな印刷法により高精細かつ平坦性に優れた画像パターンを形成することが可能となる。したがって、半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルタ、発光素子などの応用製品のさらなる高性能化および低コスト化を実現することができる。
【0051】
本発明に基づく半導体デバイスは、上述のいずれかの画像パターン形成方法を用いて製造された半導体デバイスである。
【0052】
本発明に基づく電気回路は、上述のいずれかの画像パターン形成方法を用いて製造された電気回路である。
【0053】
本発明に基づく表示体モジュールは、上述のいずれかの画像パターン形成方法を用いて製造された表示体モジュールである。
【0054】
本発明に基づくカラーフィルタは、上述のいずれかの画像パターン形成方法を用いて製造されたカラーフィルタである。
【0055】
本発明に基づく発光素子は、上述のいずれかの画像パターン形成方法を用いて製造された発光素子である。
【0056】
これらの製品に関しても上述のいずれかの画像パターン形成方法を用いて製造することによって、容易に均一なインキ層を形成/転写することができるため、高性能化および低コスト化を実現することができる。
【0057】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における画像パターン形成方法の第1の工程の説明図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における画像パターン形成方法の第2の工程の説明図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1における画像パターン形成方法の第3の工程の説明図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における画像パターン形成方法の第4の工程の説明図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における画像パターン形成方法の第5の工程の説明図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態1における画像パターン形成方法の第6の工程の説明図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態1における画像パターン形成方法の第7の工程の説明図である。
【図8】(a)〜(e)は、本発明に基づく実施の形態1における画像パターン形成方法に伴って転写ブランケットが伸びることと最終的に得られる画像パターンとの関係の説明図である。
【図9】従来技術に基づく第1の画像パターン形成方法の第1の工程の説明図である。
【図10】従来技術に基づく第1の画像パターン形成方法の第2の工程の説明図である。
【図11】従来技術に基づく第1の画像パターン形成方法の第3の工程の説明図である。
【図12】従来技術に基づく第2の画像パターン形成方法の第1の工程の説明図である。
【図13】従来技術に基づく第2の画像パターン形成方法の第2の工程の説明図である。
【図14】従来技術に基づく第2の画像パターン形成方法の第3の工程の説明図である。
【図15】従来技術に基づく第2の画像パターン形成方法に伴って転写ブランケットが伸びることと最終的に得られる画像パターンとの関係の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 転写ブランケット、1a 主表面、2 インキ層、3 印刷版、4 インキ撥液部、5 インキ親液部、6,205 被印刷基材、100 印刷版、101 インキ層、101a インキ厚膜部、101b,101c インキ薄膜部、101b1,101c1 インキ、102 インキ親液部、103,204 インキ撥液部、200 不要インキ除去体、201 インキ層、202 印刷媒体(印刷版)、203 インキ親液部(インキ受容体部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写ブランケットの主表面にインキ材料を塗布するインキ塗布工程と、
前記インキ塗布工程を経た前記主表面を、インキ親液部とインキ撥液部とが所望のパターンで互いに区分された印刷版に密着させることによって、前記主表面に塗布された前記インキ材料のうち前記インキ親液部に対応する領域に塗布されていたものを前記印刷版に転写させる部分的インキ除去工程と、
前記部分的インキ除去工程を経た前記主表面を被印刷基材に密着させることによって、前記主表面上に残存している前記インキ材料を前記被印刷基材の表面に転写するインキ転写工程とを含む、画像パターン形成方法。
【請求項2】
前記インキ塗布工程は、前記転写ブランケットの前記主表面よりもインキ撥液性の高い表面を有するインキ展延材上に全面塗布されたインキ層を前記主表面上に転写する工程を含む、請求項1に記載の画像パターン形成方法。
【請求項3】
前記インキ材料が、前記印刷版のインキ親液部に対する接触角が20°以下であり、かつ前記印刷版のインキ撥液部に対する接触角が40°以上であるようなインキ材料である、請求項1または2に記載の画像パターン形成方法。
【請求項4】
前記印刷版における前記インキ親液部と前記インキ撥液部との段差が、前記転写ブランケットから前記印刷版に転写されることによって塗布された前記インキ材料の膜厚よりも小さくなっている、請求項1から3のいずれかに記載の画像パターン形成方法。
【請求項5】
前記印刷版の前記インキ撥液部および前記転写ブランケットの前記主表面がシリコーン樹脂材料からなる、請求項1から4のいずれかに記載の画像パターン形成方法。
【請求項6】
前記印刷版の前記インキ撥液部および前記転写ブランケットの前記主表面がフッ素化合物樹脂材料からなる、請求項1から4のいずれかに記載の画像パターン形成方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の画像パターン形成方法を用いて製造された、画像パターン。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の画像パターン形成方法を用いて製造された、半導体デバイス。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の画像パターン形成方法を用いて製造された、電気回路。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の画像パターン形成方法を用いて製造された、表示体モジュール。
【請求項11】
請求項1から6のいずれかに記載の画像パターン形成方法を用いて製造された、カラーフィルタ。
【請求項12】
請求項1から6のいずれかに記載の画像パターン形成方法を用いて製造された、発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−58330(P2010−58330A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224954(P2008−224954)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】