説明

画像入力装置及び、画像入力方法

【課題】搬送速度の変動が生じても所定の解像度を持つ撮影データが取得できるようにする。
【解決手段】 被写体を搬送するセンサ側搬送ローラ22に形成された速度検出マーク部22bと、指示された光量条件に基づきセンサ側搬送ローラ22に向けて光を照射する照明ユニット8(12,34)と、指示されたスキャン条件に基づき、少なくとも速度検出マーク部22bで反射された反射光を受光してマークデータを出力するラインセンサユニット6(10,32)と、マークデータから被写体の搬送速度の速度変化率を算出して、該速度変化率に基づき光量条件及びスキャン条件を演算して、照明部及びラインセンサ部に出力する画像処理回路30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を一方向に移動させながら被写体の画像を撮像する画像入力装置及び、画像入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体を一方向に移動させながら被写体の画像を撮像する場合、撮影時間中に被写体の搬送速度が変動する問題があった。撮影中に被写体の搬送速度が変化すると、撮影された画像に伸びや縮が生じてしまう。従って、このような画像を用いた画像解析では、分解能が劣化する問題がある。かかる問題は、例えばカラー撮影するような場合には、撮影画像の色ズレとして現れる。
【0003】
また、撮影した画像を用いて、画情報を解析するOCR(OpticalCharacterReader)装置、郵便機械用OCR装置等の場合には、分解能の低下は、装置特性の低下となる。特に郵便機械用OCR装置の場合は、誤認識による誤配送が起きる恐れがある。
【0004】
このような問題に対して、例えば特開平10−79836号公報においては、画像読取装置の搬送ドラムに斜線パターン10bを設けて、原稿の読み取りと同時にパターンを読み取ることにより原稿位置の位置誤差を測定する技術が開示されている。そして、原稿位置の測定値に基づき、撮影された画像位置の補正を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−79836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開平10−79836号公報においては、搬送速度が変化しても、撮影条件自体を変えることがないため、以下のような問題があった。即ち、このような画像読取装置では、被写体に光を照射して、その反射光を受光することにより画像読取が行われる。従って、搬送速度が変動すると、被写体に照射される光量が変動することになる。カラー画像の撮影では、基準となる色を設定する必要があり、通常は白基準が採用されている。ところが、搬送速度が変動したために被写体の受光量が変動すると、所定の光量が照射されているとして、その反射光量から色調整するので、適正な色調整ができなくなる。
【0007】
また、特開平10−79836号公報においては、原稿位置の測定値に基づき、撮影された画像位置の補正を行うため、補正処理に要する負荷が大きくなってしまう。
【0008】
即ち、特開平10−79836号公報においては、簡単な構成で、搬送速度の変動が生じても所定の解像度を持つ撮影データが取得できない。
【0009】
そこで、本発明の主目的は、搬送速度の変動が生じても所定の解像度を持つ撮影データが取得できるようにした画像入力装置及び、画像入力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる画像入力装置は、被写体を搬送するセンサ側搬送ローラに形成された速度検出マーク部と、指示された光量条件に基づきセンサ側搬送ローラに向けて光を照射する照明ユニットと、指示されたスキャン条件に基づき、少なくとも速度検出マーク部で反射された反射光を受光してマークデータを出力するラインセンサユニットと、マークデータから被写体の搬送速度の速度変化率を算出して、該速度変化率に基づき光量条件及びスキャン条件を演算して、照明部及びラインセンサ部に出力する画像処理回路と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、画像入力方法は、指示された光量条件に基づき、速度検出マーク部を備えたセンサ側搬送ローラにより搬送される被写体に向けて光を照射する照明手順と、指示されたスキャン条件に基づき、少なくとも速度検出マーク部で反射された反射光を受光してマークデータを出力する受光手順と、マークデータから被写体の搬送速度の速度変化率を算出して、該速度変化率に基づき光量条件及びスキャン条件を演算して、照明部及びラインセンサ部に出力する手順と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被写体の搬送速度が変動に応じて撮影条件を調整するので、設計値の分解能を持つ撮影が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる画像入力装置の部分側面図である。
【図2】第1の実施形態にかかる画像入力装置の上面図である。
【図3】第1の実施形態にかかる画像入力装置の部分斜視図である。
【図4】第1の実施形態にかかるセンサ側搬送ローラの上面図である。
【図5】第1の実施形態にかかるスキャン開始信号及び撮影データを示すタイミングチャートである。
【図6】第1の実施形態にかかるマークデータの輝度値を搬送方向に展開した図である。
【図7】第1の実施形態にかかるスキャン時間の設定手順を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態にかかるスキャン位置の直前にブラシを配置した画像入力装置の部分側面図である。
【図9】第1の実施形態にかかるスキャン位置の直前にエアーブロアを設けた画像入力装置の部分側面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかる郵便装置の部分斜視図である。
【図11】第2の実施形態にかかる郵便装置の側面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態にかかる画像入力装置の部分側面図である。
【図13】第3の実施形態にかかる画像入力装置の斜視図である。
【図14】第3の実施形態にかかる速度変化曲線を例示した図である。
【図15】第3の実施形態にかかる速度変化曲線の測定方法を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態にかかる複写機等の画像入力装置2Aの部分側面図であり、図2はその上面図である。なお、このような画像入力装置を用いた装置として複写機、ファクシミリ装置、プリンタ装置等が例示できると共に、後述する郵便装置や連続帳票作成装置等が例示できる。
画像入力装置2Aは、搬送ユニット4、ラインセンサ部10、センサ駆動回路32により構成されるラインセンサユニット6、照明部12、照明制御回路34により構成される照明ユニット8、画像処理回路30、を備える。
搬送ユニット4は、ラインセンサ部10の下方に配置されたセンサ側搬送ローラ22、ホッパ部16に近接して設けられたホッパ側ローラ24、スタッカ部18に近接して設けられた排出側ローラ26、センサ側搬送ローラ22と排出側ローラ26との間に設けられた各種のローラ28等を含んでいる。
【0015】
センサ駆動回路32は、図2に示すように、ラインセンサ部10と画像処理回路30とに接続され、照明制御回路34は、照明部12と画像処理回路30とに接続されている。この画像処理回路30は、ラインセンサ部10に接続されると共に、メモリ部36と接続されている。
【0016】
そして、ホッパ部16に載置された被写体Pは、搬送ユニット4により搬送路Kに沿ってホッパ部16からスタッカ部18に搬送される。被写体Pが、センサ側搬送ローラ22を通過する間に、画像が撮影され、その撮影データは画像処理回路30に送られる。画像処理回路30は、撮影データに基づき速度監視信号を生成する。センサ駆動回路32、照明制御回路34は、速度監視信号に基づき、撮影条件を設定して撮影が行われる。以下、詳細に説明する。
【0017】
図3は、センサ側搬送ローラ22とラインセンサ部10等との関係を示した画像入力装置2Aの部分斜視図である。また、図4は、センサ側搬送ローラ22の上面図である。このセンサ側搬送ローラ22は、搬送部22aと速度検出マーク部22bとにより形成されている。速度検出マーク部22bは、黒色の黒マーク22cと白色の白マーク22dとを備える。
【0018】
なお、本発明は黒マーク22cと白マーク22dとの色を限定するものではないが、少なくとも異なる色であることを要件とする。例えば、これらのマークの色として、赤色、緑色、青色等を用いることができる。また、マークの種類(上記例では、白マークと黒マーク)は2色であるとしたが、2色以上のマーク(例えば、赤マーク、緑マーク、青マーク)とすることも可能である。この場合、白レベル補正だけでなく、カラー色バランス補正も可能になる。以下、速度検出マーク部22bは、黒マーク22cと白マーク22dとの2種類により形成されている場合を例に説明する。
【0019】
照明部12は、図示しない光源を備えて、図3に示すように、センサ側搬送ローラ22の上から線状(又は帯状)の光Rをセンサ側搬送ローラ22に向けて照射する。このとき、照射される光Rは、搬送部22a及び速度検出マーク部22bに照射される。
【0020】
ラインセンサ部10は、CCD等のイメージセンサから構成されて、搬送部22aにより搬送される被写体Pで反射された光及び速度検出マーク部22bで反射された光を光電変換して、撮影データとして出力する。この撮影データは、被写体Pで反射された光による被写体データと、速度検出マーク部22bで反射された光によるマークデータとからなる。
【0021】
なお、ラインセンサ部10は、長手方向に複数のセンサが列設されている。1つのセンサは、1つの画素を形成する。長手方向に並ぶセンサから順次信号を出力することをスキャンすると言う。以下、搬送部22aから速度検出マーク部22bに向かう方向をスキャン方向(副走査方向)Dsとする。
【0022】
ホッパ側ローラ24は、ホッパ部16に積載された被写体Pを装置内の搬送路Kに取り込むためのローラ対である。排紙側ローラ26は、画像読み取りが完了した被写体Pをスタッカ部18に送り出すためのローラ対である。
【0023】
画像処理回路30は、ラインセンサ部10で撮影された撮影データにおける被写体データに対して後述する画像処理を行ってメモリ部36に記憶すると共に、マークデータに対して後述する速度監視信号生成処理を行って、その結果を速度監視信号としてセンサ駆動回路32及び照明制御回路34に出力する。なお、メモリ部36に送られた被写体データは、例えばOCR(OpticalCharacterReader)等により利用される。
【0024】
速度監視信号は、スキャン条件と光量条件とが含まれる。スキャン条件とは、画像を撮影している時間であり、光量条件とは撮影中に照射する光量を言う。
【0025】
センサ駆動回路32は、画像処理回路30からの速度監視信号に含まれるスキャン条件に基づき、ラインセンサ部10を制御する。従って、被写体Pの搬送速度が変化しても、この変化に対応したスキャン条件が設定されるため、分解能の低下が防止できる。
【0026】
照明制御回路34は、画像処理回路30からの速度監視信号に含まれる光量条件に基づき照明部12を制御する。従って、被写体Pの搬送速度が変化しても、撮影中に照射される光量が一定量に保たれるため、白色バランスのズレが防止できる。
【0027】
このような構成で、画像入力装置2Aが動作すると、各ローラが所定の方向に回転する。これにより、ホッパ部16にストックされた被写体Pは、ホッパ側ローラ24により一葉ずつ搬送路Kに取り込まれて、図3に示す搬送方向Dtに搬送される。
【0028】
被写体Pがラインセンサ部10の下部領域を通過する際に、照明部12から光Rが被写体Pに向けて照射される。そして、被写体P及び速度検出マーク部22bで反射された光は、ラインセンサ部10により受光される。ラインセンサ部10は、受光した光を光電変換処理して、撮影データとして画像処理回路30に出力する。
【0029】
画像処理回路30は、撮影データを被写体データとマークデータとに区分けし、被写体データに対してノイズ除去やシェーディング補正等の画像前処理を行ってメモリ部36に記憶する。
【0030】
また、画像処理回路30は、マークデータに対して後述する速度監視信号処理を行い、これを速度監視信号としてセンサ駆動回路32及び照明制御回路34に出力する。センサ駆動回路32は、速度監視信号を受信してラインセンサ部10を制御する。照明制御回路34は、速度監視信号を受信して、スキャン条件に関わらず白基準部分に入射する光量が一定量となるように光量条件を設定し、設定された光量条件に基づき照明部12を制御する。
【0031】
次に、画像処理回路30における速度監視信号生成処理を図5及び図6を参照して説明する。分解能は、スキャン時間及び搬送速度をパラメータとする。ここでは、分解能=スキャン時間*搬送速度とする。
【0032】
センサ駆動回路32は、スキャン時間信号に基づきスキャン開始を指示するスキャン開始信号を生成する。図5は、スキャン開始信号及び撮影データを示すタイミングチャートである。図5において、符号R1〜R3は、ラインスキャン(撮影)が行われている期間を示し、この期間の長さがスキャン時間に対応する。また、撮影データは画像処理回路30に転送された撮影データを示し、例えばラインスキャンR1で取得された撮影データは、ラインスキャンR2の領域の撮影データに対応している。
【0033】
ラインスキャンは、スキャン開始信号に同期して開始され、次にスキャン開始信号で撮影が終了し、次の撮影が開始される。撮影データは、撮影終了後に画像処理回路30に出力される。従って、図5においてラインスキャンR1で取得された撮影データは、ラインスキャンR2の間に画像処理回路30に出力されることになる。
【0034】
搬送速度は、先行するラインスキャンにより取得されたマークデータに基づき演算される。なお、先行するラインスキャンとは、ラインスキャンR3を行う際には、ラインスキャンR1とラインスキャンR2をいう。
【0035】
図6は、横軸をスキャン方向Ds、縦軸を搬送方向Dtとして、マークデータの輝度値を搬送方向Dtに展開した図である。図中、点線で囲まれた領域が1つの画素の輝度値を示している。図6においては、説明を容易にするために、スキャン方向Dsに8画素が並んでいる場合を示しているが、本実施形態は、かかる画素数を限定するものではない。また、図7は、スキャン時間の設定手順を示すフローチャートである。
【0036】
ラインセンサ部10は、入射光を検出する(ステップSA1)。このとき、入射光は、8Bit(256階調)で、黒マーク22cで反射された光の輝度値が「0」、白マーク22dで反射された光の輝度値が「200」に設定されているとする。そして、図6におけるハッチング領域は画素の輝度値が「0」、非ハッチング領域は輝度値が「200」であるとする。即ち、ハッチング領域は、黒マークに対応し、非ハッチング領域は白マークに対応している。なお、1画素中にハッチング領域と非ハッチング領域が含まれる場合には、輝度値が「0」と「200」との間であることを示し、その値は、1画素中のハッチング領域の面積比に比例した値とする。
【0037】
次に、画像処理回路30は、マークデータからハッチング領域(又は非ハッチング領域)である画素数を算出する。そして、ハッチング領域の画素数の変化量(画素変化量)を算出する。この画素変化量が搬送速度の変化量に対応する(ステップSA2)。スキャンラインにおけるハッチング領域の面積(画素数)をU1、このラインスキャンの直後におけるハッチング領域の面積をU2とすると、画素変化量ΔUeは、ΔUe=U1−U2で与えられる。
【0038】
画素変化量ΔUeが算出されると、画像処理回路30は、設計された画素変化量ΔUdと、算出された画素変化量ΔUeとの比α(=ΔUe/ΔUd)を速度変化率として算出する(ステップSA3)。
【0039】
その後、画像処理回路30は、速度変化率αを用いてスキャン条件及び光量条件を演算する(ステップSA4,ステップSA5)。
【0040】
搬送速度が設計値より大きくなった場合は、被写体は設計値より早く搬送されるので、スキャン時間を設計値より小さな値にして、撮影時間を短くする必要がある。撮影時間が短くすると、被写体に照射される単位時間当たりの照射光量が少なくなり、白色バランスが崩れる。従って、撮影時間を短くすると照射光量を増やし、撮影時間を長くすると照射光量を少なくする必要がある。これら撮影時間及び照射時間がスキャン条件及び光量条件であり、画像処理回路30は、以下の手順でこれらを算出する。
【0041】
設計値のスキャン時間をTd、搬送速度の変化により調整されたスキャン時間をTとすると、スキャン時間(スキャン条件)Tは、T=Td/αで与えられる。また、設計値の照射光量をEd、調整された照射光量をEとすると、照射光量(光量条件)Eは、E=Ed*αで与えられる。
【0042】
従って、速度変化率αを求めることによりスキャン条件及び光量条件が算出できる。図6においてハッチング領域の領域辺F1,F2が搬送方向Dtとなす角度(領域角と度言う)をθとする。設計においては、この領域角度θは45度に設定されているとする。従って、領域角度θが45度であるとき、先行するスキャンラインにおけるハッチング領域の設計画素変化量ΔUdは、設計画素変化量ΔUd=U2−U1=1となる。
【0043】
一方、搬送速度が変化して、領域角度θが設計値の45度からずれたときの画素変化量ΔUeは、以下のようにして算出する。
【0044】
例えば、図6における第Lラインにおけるハッチング領域は1.5画素分ある。従って、この第Lラインの合計輝度値は、1300(=200*(8−1.5))である。また、第L+1ラインにおけるハッチング領域は2.5画素分ある。従って、この第L+1ラインの合計輝度値は、1100(=200*(8−2.5))である。そして、第Lラインと第L+1ラインとの合計輝度値の差ΔBは、ΔB=200(=1300−1100)となる。輝度値「200」は、1画素分の白マークに相当する。従って、ΔB/200=1となり、第Lラインと第L+1ラインとでは、白マークが1画素分減少(黒マークが1画素分増加)したことになる。
【0045】
このようにして得られた画素数差が画素変化量ΔUeである。依って、速度変化率αはα=1となり、この場合は、搬送速度は設計値と一致していることになる。なお、マークデータは、輝度値のデータであるので、実際は合計輝度値の差ΔBが、マークデータから算出される。
【0046】
もし、第Lラインと第L+1ラインとの合計輝度値の差ΔBが、ΔB=100の場合は、速度変化率αは、α=(100/200)/1=0.5となり、搬送速度が遅くなったことがわかる。従って、スキャン時間TはT=Td/α=Td/0.5、照射光量EはE=Ed*0.5となる。一方、合計輝度値の差ΔBが、ΔB=300の場合は、速度変化率αは、α=(300/200)/1=1.5となり、搬送速度が速くなったことがわかる。よって、スキャン時間TはT=Td/α=Td/1.5、照射光量EはE=Ed*1.5となる。
【0047】
設計画素変化量ΔUdは、予め画像処理回路30に設定されているので、実際の画素変化量ΔUeが算出されると、スキャン条件や光量条件が求まる。
【0048】
分解能δは、スキャン時間Tと搬送速度Vとの積である。設計時の分解能は、δ=Td*Vdである。このVdは、設計において設定された搬送速度である。スキャン時間Tを測定したときの搬送速度Vは、V=Vd*αとなるので、スキャン時間をTとしたときの分解能δ’は、δ’=T*Vd*α=(Td/α)*Vd*α=Td*αとなる。従って、δ=δ’を維持することが可能になる。
【0049】
なお、設計値のスキャン時間Tdや照射光量Edは既知であるので、予め画素変化量ΔUeに対するスキャン時間Tや照射光量Eをテーブル化して記憶する事も可能である。
【0050】
搬送が進むと、図6のハッチング領域の増大から減少を始める(ハッチング領域の領域辺F2の領域が検出され始める)ことが起きる。このような場合には、合計輝度値の差ΔBが負(ΔUeが負)となって、搬送速度の増大、減少の判断が領域辺F1側と、領域辺F2側とで逆転してしまう。
【0051】
そこで、速度検出マーク部22bの両端に対応する画素が共に同じ輝度値になったとき、領域辺F2が観測されと判断して、搬送速度の増大、減少の判断を逆転させる。例えば、図6において、画素G1,G2が速度検出マーク部22bの両端の画素に対応している。無論、画素変化量ΔUeに対するスキャン時間Tや照射光量Eをテーブル化している場合には、負の値の画素変化量ΔUeに対するスキャン時間Tや照射光量Eもテーブルに含めることで、搬送速度の増加減少の判断が不要になる。
【0052】
このようにして求めたスキャン時間は、スキャン条件としてセンサ駆動回路32に送られて、ラインセンサ部10の駆動制御が行われ、照射光量は、光量条件として照明制御部34に送られ、照明部の駆動制御が行われる(ステップSA6)。
【0053】
以上により、マークデータから速度変化率を算出して、これらに基づきスキャン条件や光量条件を設定するので、搬送速度の変動が生じても、目標の分解能を持つ撮影データが取得できるようになる。
【0054】
また、速度検出マーク部を既存のセンサ側搬送ローラに設けたので、パルスエンコーダ等のコストの高い部品を用いることなく、所望する解像度の撮影データを取得することが可能になる。
【0055】
なお、例えば、ラインスキャンにおいて、必ず白マークに対応した画素が存在するように、黒マーク(又は白マーク)の領域角を設定するならば、白マークに対応する輝度値を用いて白レベル補正をリアルタイムで行うことが可能となる。
【0056】
また、センサ側搬送ローラ22が1回転する間に取得されるマークデータの内で、白マークに対応して得られる画素の輝度値で、最大の輝度値を200階調にして、他の画素の輝度値を補正する方法することにより、白レベル補正を行うことも可能である。
【0057】
また、センサ側搬送ローラ22に付着した埃が、搬送速度の検出や白レベル補正に影響を与えることがある。このような場合には、図8に示すように、スキャン位置の直前にブラシ28を配置し、センサ側搬送ローラ22面の埃を除去するようにしてもよい。また、図9に示すように、エアーブロア29を設けて、センサ側搬送ローラ22面の埃を除去するようにしてもよい。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一構成については、同一符号を用い説明を適宜省略する。
【0058】
第1の実施形態においては、複写機等の画像入力装置について説明した。そして、画像入力装置に含まれる画像入力装置は複数の搬送ローラにより被写体を搬送する搬送ユニットを備えていた。
【0059】
これに対して、本実施形態では、例えば郵便物を区分け処理する郵便装置に搭載される画像入力装置に関し、この画像入力装置が含む画像入力装置は、搬送ベルトで被写体を搬送する搬送ユニットを備えている。このような画像入力装置として、郵便装置を例に説明する。
【0060】
図10は、郵便装置の部分斜視図である。また、図11は、その側面図である。画像入力装置2Bは、ラインセンサ部10、照明部12、郵便物の被写体Pと重ならない位置に速度検出マーク部22bが架設された搬送ベルト32、上流側抑ベルト33、下流側抑ベルト34、上流側ガイド36、下流側ガイド37、各ベルトを駆動するローラ31を含む、画像入力装置を備える。
【0061】
速度検出マーク部22bは、黒マーク及び白マークから形成されて、マークの角度や黒部分等の濃さが予め設定されている。上流側抑ベルト33と下流側抑ベルト34とは、所定の間隔を開けて並設されている。この隙間を窓38と記載する。
【0062】
上流側ガイド36及び下流側ガイド37は、被写体Pを搬送ベルト32の方向に抑えながら案内する抑部33b,34b及び、搬送されてきた被写体Pが抑部33b,34bに引っかからないようにする案内部33a,34aを備える。そして、窓38の上流側には上流側抑ベルト33が配置され、下流側には下流側抑ベルト34が配置されている。
【0063】
また、ラインセンサ部10には画像処理回路30とセンサ駆動回路32とが接続され、照明部12には照明制御回路34が接続されている。さらに、センサ駆動回路32と照明制御回路34とは画像処理回路30に接続され、画像処理回路30にはメモリ部36が接続されている。
【0064】
照明部12からの光Rは、窓38から入射して被写体Pに照射され、その反射光がラインセンサ部10で受光される。ラインセンサ部10は、被写体データとマークデータとからなる撮影データを画像処理回路30に出力する。
【0065】
そして、画像処理回路30は、撮影データを被写体データとマークデータとに区分けし、被写体データに対してノイズ除去やシェーディング補正等の画像前処理を行ってメモリ部36に記憶する。また、画像処理回路30は、マークデータに基づき第1の実施形態において説明した手順に従いスキャン条件や光量条件を算出して、これらを速度監視信号としてセンサ駆動回路32、照明制御回路34にそれぞれ出力する。
【0066】
これにより、搬送速度の変動が生じても、目標の分解能を持つ撮影データが取得できるようになる。郵便装置の場合には、軽い被写体Pの後に重い被写体Pが搬送される等が生じ、搬送速度の変化が急激に生じる場合がある。しかし、このような場合であっても、略リアルタイムにスキャン条件や光量条件を算出して制御できるので、撮影データの信頼性が維持できる。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成に関しては、同一符号を用いて説明を適宜省略する。
【0067】
これまで説明した、各実施形態においては、被写体Pは単票等の非連続体であった。しかし、例えば請求書などを作成するダイレクトメール印刷装置等の連続帳票作成装置において、ロール状の用紙に印字したあとの最終段で宛先ごとに用紙をカットすることがある。このような場合には、カット前に印字内容が正しいかどうかを検査することが好ましいが、搬送開始や搬送停止時には搬送速度の大きな変化が生じ、この時間領域での撮影データの解像度が低下する。
【0068】
従って、搬送開始や搬送停止時における時間帯で搬送される被写体Pの印字内容が適正に検査できない場合が生じる。そこで、本実施形態では、搬送開始や搬送停止時に搬送速度が大きく変化しても、所望する解像度で撮影できるようにする。
【0069】
図12は、本発明にかかるダイレクトメール印刷装置等の画像入力装置2Cの部分側面図である。また、図13は、その斜視図である。
【0070】
ロール状の被写体Pは、供給部39から連続的に搬送ベルト48によって搬送される。搬送ベルト48には、図13に示すように、速度検出マーク部22bが設けられている。
【0071】
そして、印字装置40により被写体Pに印字が行われる。被写体Pの印字は撮影されて、撮影データとして画像処理回路30に送られる。
【0072】
画像処理回路30は撮影データに基づき印字内容を確認すると共に、スキャン条件や光量条件を算出して、これらを速度監視信号として出力する。印字内容が読み取られた被写体Pは、カット部42において、一定間隔毎に切断されてスタッカ部43にスタックされる。
【0073】
第1及び第2の実施形態においては、速度変化率αの算出は、先行するラインスキャン時において取得したマークデータに基づき算出した。これに対し、本実施形態では、予め図14に示すような搬送速度変化曲線が速度変化曲線記憶部50に記憶されて、この搬送速度変化曲線を参照して画像処理回路30がスキャン条件や光量条件を算出する。
【0074】
なお、速度変化曲線を記憶するひとつの方法は、初期値とし予め計算してもよい。また、例えば図14に示すような方法により、実験的に求めた値を用いても良い。図15は、搬送方向に対して、所定間隔でパターン58が印字されたテストパタン57を搬送する。そして、このパターン58を検出して、速度変化曲線を取得する方法を示している。
【0075】
図14は、搬送速度変化曲線を示し、横軸は時間、縦軸は搬送速度である。図14における第1ラインスキャンを、スキャン時間を設定して、これから行うラインスキャンとする。そして、第2ラインスキャンは、第1ラインスキャンの直前に行ったラインスキャン、第3ラインスキャンは、第2ラインスキャンの直前に行ったラインスキャンとする。従って、時系列的に、第3ラインスキャン、第2ラインスキャン、第1ラインスキャンが行われたとする。
【0076】
第2ラインスキャンは、スキャン時間T2で撮影され、開始時の搬送速度をV2、開始時刻t2、終了時の搬送速度V1、終了時刻t1であったとする。なお、搬送速度V1及びV2は、これまで説明した速度検出マーク部22bに基づき算出される。そして、第1ラインスキャンを行うために、スキャン時間T1を算出する。
【0077】
これまで説明した実施形態では、第2ラインスキャンにおいて搬送速度がV2からV1に変化したので、スキャン時間T1は、T1=T2*V2/V1に設定される。このことは、第2ラインスキャンにおいて搬送速度の変化は、イレギュラーな原因によるものであるとしている。
【0078】
即ち、第1ラインスキャンのスキャン時間T1を設定する際には、第1ラインスキャンの実行中における搬送速度は、変化しないと仮定して設定している。図14において点A1は、このような仮定により設定された第1ラインスキャン終了後の搬送速度を示している。
【0079】
しかし、図14から解るように、搬送速度は、画像入力装置2Cの運転開始からの時間経過に従い徐々に変化する。そして、速度変化曲線は、スキャン時間T1後の搬送速度は、点A2の速度であることを示している。従って、スキャン時間をT1に設定すると、長すぎることになる。
【0080】
そこで、速度変化曲線を用いて、所望する分解能δを満たすスキャン時間を算出する。具体的には、点A3を求める。このとき算出するスキャン時間をT1’、そのときの搬送速度をV’とする。
【0081】
搬送速度V1から搬送速度Vの速度変化が直線近似できるとすると、スキャン時間T1’は、
T1’=T1*(V’−V1)/(V−V1) …(1)
となる。一方、分解能δは、平均速度(V’+V1)/2を用いると、
δ=T1’*(V’+V1)/2 …(2)
となる。従って、式1,式2からV’を消去することによりスキャン時間T1’が求まる。なお、スキャン時間と搬送速度との積と定義される設計値の分解能δは、予め画像処理回路30に格納されているとする。よって、速度変化曲線からスキャン時間T1としたときの搬送速度Vを読取り、上式に代入することによりスキャン時間T1’が求まる。
【0082】
スキャン時間が求まると、先に説明した手順で、照射時間も設定できる。即ち、第2ラインスキャンを行ったときの照射光量をEとすれば、スキャン時間T1’としたときの照射光量E’は、E’=E*T2/T1’となる。
【0083】
このように画像入力装置2Cの運転開始から時間時間経過に従い徐々に変化する場合であっても、速度変化曲線を用いて所望する分解能を満たすようにスキャン時間を設定することが可能になる。
【0084】
なお、上記説明では、搬送速度V1から搬送速度Vの速度変化が直線近似できるとするとしたが、本実施形態はこれに限定する物ではなく、曲線近似や他の方法を用いても良い。
【符号の説明】
【0085】
2A〜2C 画像入力装置
4 搬送ユニット
6 ラインセンサユニット
8 照明ユニット
10 ラインセンサ部
12 照明部
16 ホッパ部
18 スタッカ部
22 センサ側搬送ローラ
22a 搬送部
22b 速度検出マーク部
22c 黒マーク
22d 白マーク
28 ブラシ
29 エアーブロア
30 画像処理回路
32 センサ駆動回路
32 搬送ベルト
34 照明制御回路
34 照明制御部
40 印字装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を搬送するセンサ側搬送ローラに形成された速度検出マーク部と、
指示された光量条件に基づき前記センサ側搬送ローラに向けて光を照射する照明ユニットと、
指示されたスキャン条件に基づき、少なくとも前記速度検出マーク部で反射された反射光を受光してマークデータを出力するラインセンサユニットと、
前記マークデータから前記被写体の搬送速度の速度変化率を算出して、該速度変化率に基づき前記光量条件及び前記スキャン条件を演算して、前記照明部及び前記ラインセンサ部に出力する画像処理回路と、を備えることを特徴とする画像入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像入力装置であって、
前記速度変化率は、設計値による輝度値の変化量に対する先行するラインスキャンにより得られた前記マークデータの輝度値の変化量の比から算出することを特徴とする画像入力装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像入力装置であって、
前記スキャン条件は、設計値によるスキャン時間を前記速度変化率で割って算出することを特徴とする画像入力装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像入力装置であって、
前記光量条件は、設計値による照射光量と前記速度変化率との積により算出することを特徴とする画像入力装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像入力装置であって、
前記画像処理回路は、前記搬送ユニットの起動時及び停止時における前記被写体の搬送速度の時間変化を示す速度変化曲線及び、設計された被写体の撮影の解像度を記憶する記憶部を備え、
前記速度変化率の算出に用いられた搬送速度と、前記速度変化率を用いて算出されたスキャン条件に対応するラインスキャン終了時の搬送速度を前記速度変化曲線から読取った前記搬送速度と、前記解像度とから前記搬送ユニットの起動時及び停止時における前記被写体の搬送速度の時間変化を取り込んだ前記スキャン時間を算出することを特徴とする画像入力装置。
【請求項6】
指示された光量条件に基づき、速度検出マーク部を備えたセンサ側搬送ローラにより搬送される被写体に向けて光を照射する照明手順と、
指示されたスキャン条件に基づき、少なくとも速度検出マーク部で反射された反射光を受光してマークデータを出力する受光手順と、
前記マークデータから前記被写体の搬送速度の速度変化率を算出して、該速度変化率に基づき前記光量条件及び前記スキャン条件を演算して、前記照明部及び前記ラインセンサ部に出力する手順と、を含むことを特徴とする画像入力方法。
【請求項7】
請求項6に記載の画像入力方法であって、
前記速度変化率は、設計値による輝度値の変化量に対する先行するラインスキャンにより得られた前記マークデータの輝度値の変化量の比から算出する手順を含むことを特徴とする画像入力方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の画像入力方法であって、
前記スキャン条件は、設計値によるスキャン時間を前記速度変化率で割って算出する手順を含むことを特徴とする画像入力方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像入力方法であって、
前記光量条件は、設計値による照射光量と前記速度変化率との積により算出する手順を含むことを特徴とする画像入力方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の画像入力方法であって、
前記搬送ユニットの起動時及び停止時における前記被写体の搬送速度の時間変化を示す速度変化曲線及び、設計された被写体の撮影の解像度を記憶する手順と、
前記速度変化率の算出に用いられた搬送速度と、前記速度変化率を用いて算出されたスキャン条件に対応するラインスキャン終了時の搬送速度を前記速度変化曲線から読取った前記搬送速度と、前記解像度とから前記搬送ユニットの起動時及び停止時における前記被写体の搬送速度の時間変化を取り込んだ前記スキャン時間を算出する手順と、を含むことを特徴とする画像入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−147282(P2012−147282A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4502(P2011−4502)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】