画像処理による渡り線測定装置
【課題】渡り線と背景の切り分けを高精度に行うことが可能な画像処理による渡り線測定装置を提供する。
【解決手段】車両の屋根上に設置されたラインセンサカメラ2と、車両の内部に設置された計測用コンピュータ3とを備えた画像処理による渡り線測定装置において、計測用コンピュータ3が、ラインセンサ画像作成部3aと、標準偏差背景除去処理部3bと、判別分析二値化処理部3cと、ノイズ除去処理部3dと、渡り線部エッジ検出部3eと、渡り線部高さ計算部3fと、渡り線部偏位計算部3gとを備えるようにし、ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行ったうえで二値化処理を行うことにより渡り線と背景との切り分けを行うようにした。
【解決手段】車両の屋根上に設置されたラインセンサカメラ2と、車両の内部に設置された計測用コンピュータ3とを備えた画像処理による渡り線測定装置において、計測用コンピュータ3が、ラインセンサ画像作成部3aと、標準偏差背景除去処理部3bと、判別分析二値化処理部3cと、ノイズ除去処理部3dと、渡り線部エッジ検出部3eと、渡り線部高さ計算部3fと、渡り線部偏位計算部3gとを備えるようにし、ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行ったうえで二値化処理を行うことにより渡り線と背景との切り分けを行うようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理による渡り線の三次元位置測定に関し、特に昼間において背景の明るさ変動にロバストに測定を行う画像処理による渡り線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道の設備としてトロリ線があるが、線路の交差する場所では、このトロリ線も交差させる必要がある。交差するトロリ線のうち、本線と異なって交差する線を「渡り線」と呼ぶ。従来、この渡り線が鉄道車両の走行に支障をきたすことがないように、渡り線の三次元位置の測定が行われている。
【0003】
このような渡り線の三次元位置の測定を行う装置として、車両の屋根上にラインセンサカメラおよび照明装置を設置し、渡り線に照明を当ててラインセンサカメラから取得した画像に対して判別分析法によって二値化を行うことで渡り線のみを白領域として抽出し、渡り線の三次元位置を非接触で求めるものがある(例えば、特許文献1参照)。なお、この特許文献1においては、ナトリウムランプおよびバンドパスフィルタを使用して太陽光などの外乱光を除去し、良好な画像を得ることで昼間において測定を行うことも開示されている。
【0004】
また、トロリ線の測定を行う装置として、ラインセンサカメラから取得した画像に対して二値化処理を行い、トロリ線の太さパラメータより大きい白領域を空の部分として黒領域に反転することによりトロリ線摩耗面のみを抽出しトロリ線の摩耗量を測定するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、あらかじめ設定しておいた濃淡しきい値により背景部分を処理しないようなマスクを設定するようにしたパンタグラフ周辺支障物検出装置もある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−192394号公報
【特許文献2】特開2007−271445号公報
【特許文献3】特開2006−250775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、二値化した際に渡り線部分のみが白領域となり背景部分が黒領域となるようにする必要があるが、昼間においては背景が明るいため背景部分も白領域となり、渡り線と背景とを切り分けることができないおそれがあった。また、ナトリウムランプおよびバンドパスフィルタを別途用意して取り付けることにより昼間でも計測できるようにしているものの、装置を準備するのに費用が掛かり、装置構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0008】
ここで、引用文献1に記載された装置を用いて昼間の計測を行う場合、照明を取り除いた装置構成とすることが考えられる。
このような構成として渡り線を撮影すると、背景が太陽光により明るく写り(二値化すると白領域)、渡り線は太陽光の遮蔽物として黒く映る(二値化すると黒領域)。したがって昼間であっても渡り線と背景とを切り分けることができ、昼間の渡り線三次元位置測定が可能となると考えられる。
【0009】
しかしながら、このような装置によって渡り線の三次元位置測定を行う場合、以下の問題が考えられた。
(1)背景に明るさの斑(天候の変化や雲等による陰影。以下、単に「明るさの斑」という)が存在する場合、特許文献2に開示されているような太さパラメータを用いる方法では明るさの斑を渡り線と誤検出してしまうおそれがある。また、特許文献3に開示されているようなあらかじめ固定の濃淡しきい値を設定する方法では背景部分とそうでない部分とを区別することができないおそれがある。
(2)太陽光が渡り線に強く当たり太陽光反射が発生した場合、渡り線の一部分が極端に明るく撮影されるため、この画像を二値化すると、極端に明るく撮像された部分が背景の白領域となり、渡り線部分の黒領域幅が小さくなって、渡り線幅が実際よりも小さく算出されてしまう。渡り線高さなどの三次元位置は渡り線幅を基に算出されるので、太陽光反射が発生すると、正しい計測が行えない。
【0010】
このようなことから本発明は、渡り線と背景の切り分けを高精度に行うことが可能な画像処理による渡り線測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、車両の屋根上にその走査線方向を車両の進行方向に対して垂直且つ水平に設置されて渡り線を撮影するラインセンサカメラと、前記車両の内部に設置された画像処理手段とを備えた画像処理による渡り線測定装置において、前記画像処理手段が、前記ラインセンサカメラから入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成手段と、入力された画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成する判別分析二値化処理手段と、入力された画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成するノイズ除去処理手段と、入力された画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出する渡り線部エッジ検出手段と、入力された画像に対して前記渡り線と背景との切り分けを行う背景切り分け処理手段と、前記渡り線の両側のエッジ点の位置から前記渡り線の高さを算出する渡り線部高さ計算手段と、前記渡り線の高さから前記渡り線の偏位を算出する渡り線部偏位計算手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第1の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記背景切り分け処理手段が、入力された画像を任意の区間に分割し、各前記区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の前記対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段であることを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第2の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記標準偏差背景除去処理手段が、前記標準偏差背景除去処理を行った前記区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各前記細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記細分化した区間ごとに該区間に前記対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成することを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決するための第4の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、第2の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記任意の区間の大きさが、前記対象物が存在する区間が連続しない大きさであることを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するための第5の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第2ないし第4のいずれか一つの発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の背景を除去した前記背景除去画像を作成し、前記二値化処理手段が前記背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、前記ノイズ除去処理手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、前記渡り線部エッジ検出手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出することを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決するための第6の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第1の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記背景切り分け処理手段が、前記渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、前記入力された画像に対してそれぞれ前記エッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、前記背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともに前記しきい値に基づいて前記入力された画像の前記渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とからなることを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するための第7の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第6の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記判別分析二値化処理手段が前記ラインセンサ画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、前記ノイズ除去手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、前記渡り線部エッジ検出処理手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出し、前記背景輝度平均値算出処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記背景輝度平均値を算出し、前記太陽光反射判定処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記太陽光反射の有無を判定することを特徴とする。
【0018】
上記の課題を解決するための第8の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第6又は第7の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間することを特徴とする。
【0019】
上記の課題を解決するための第9の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第2ないし第5のいずれか一つの発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記画像処理手段が前記背景切り分け処理手段としてさらに、前記渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、前記入力された画像に対してそれぞれ前記エッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、前記背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともに前記しきい値に基づいて前記入力された画像の前記渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とを備え、前記渡り線部高さ計算手段が、前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射無しと判定された場合に前記渡り線の両側のエッジ点の位置から前記渡り線の高さを算出することを特徴とする。
【0020】
上記の課題を解決するための第10の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第9の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間することを特徴とする。
【0021】
上記の課題を解決するための第11の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第9又は第10の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の背景を除去した前記背景除去画像を作成し、前記判別分析二値化処理手段が前記背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、前記ノイズ除去手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、前記渡り線部エッジ検出処理手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出し、前記背景輝度平均値算出処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記背景輝度平均値を算出し、前記太陽光反射判定処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記太陽光反射の有無を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上述した第1の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、車両の屋根上にその走査線方向を車両の進行方向に対して垂直且つ水平に設置されて渡り線を撮影するラインセンサカメラと、車両の内部に設置された画像処理手段とを備えた画像処理による渡り線測定装置において、画像処理手段が、ラインセンサカメラから入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成手段と、入力された画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成する判別分析二値化処理手段と、入力された画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成するノイズ除去処理手段と、入力された画像に対して渡り線の両側のエッジ点を検出する渡り線部エッジ検出手段と、入力された画像に対して渡り線と背景との切り分けを行う背景切り分け処理手段と、渡り線の両側のエッジ点の位置から渡り線の高さを算出する渡り線部高さ計算手段と、渡り線の高さから渡り線の偏位を算出する渡り線部偏位計算手段とを備えるので、渡り線と背景とを切り分けることができ、渡り線の誤検出を低減することができる。
【0023】
また、第2の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、背景切り分け処理手段が、入力された画像を任意の区間に分割し、各区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に対象物が写っていない場合は隣接する区間から対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に対象物が写っている場合は隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段であるので、入力画像中の背景に明るさの斑が存在する場合であっても渡り線を判別することができ、渡り線の誤検出を低減することができる。また、ナトリウムランプやバンドパスフィルタ等の装置を用いる必要がなく安価かつ単純な装置で渡り線の昼間測定を行うことができる。
【0024】
第3の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、標準偏差背景除去処理手段が、標準偏差背景除去処理を行った区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各細分化した区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に対象物が写っていない場合は隣接する区間から対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に対象物が写っている場合は隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成するので、確実に対象物と背景との切り分けを行うことができる。
【0025】
第4の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、任意の区間の大きさが、対象物が存在する区間が連続しない大きさであるので、一度の処理で対象物と背景とを切り分けることができる。
【0026】
第5の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、標準偏差背景除去処理手段がラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行ってラインセンサ画像中の背景を除去した背景除去画像を作成し、二値化処理手段が背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し、ノイズ除去処理手段が二値化画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成し、渡り線部エッジ検出手段がノイズ除去画像に対して渡り線の両側のエッジ点を検出するので、入力画像中の背景に明るさの斑が存在する場合であっても渡り線を明確に判別することができる。
【0027】
第6の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、背景切り分け処理手段が、渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、入力された画像に対してそれぞれエッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともにしきい値に基づいて入力された画像の渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とからなるので、ラインセンサ画像上に太陽光反射の影響が存在する場合であっても正確に渡り線計測を行うことができる。また、ナトリウムランプやバンドパスフィルタ等の装置を用いる必要がなく安価かつ単純な装置で渡り線の昼間測定を行うことができる。
【0028】
第7の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、判別分析二値化処理手段がラインセンサ画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し、ノイズ除去手段が二値化画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成し、渡り線部エッジ検出処理手段がノイズ除去画像に対して渡り線の両側のエッジ点を検出し、背景輝度平均値算出処理手段がラインセンサ画像を用いて背景輝度平均値を算出し、太陽光反射判定処理手段がラインセンサ画像を用いて太陽光反射の有無を判定するので、ラインセンサ画像上に太陽光反射の影響が存在する場合であっても正確に渡り線計測を行うことができる。また、ナトリウムランプやバンドパスフィルタ等の装置を用いる必要がなく安価かつ単純な装置で渡り線の昼間測定を行うことができる。
【0029】
第8の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間するので、太陽光反射による渡り線計測への影響を排除することができる。
【0030】
第9の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、画像処理手段が背景切り分け処理手段としてさらに、渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、入力された画像に対してそれぞれエッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともにしきい値に基づいて入力された画像の渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とを備え、渡り線部高さ計算手段が、太陽光反射判定処理手段において太陽光反射無しと判定された場合に渡り線の両側のエッジ点の位置から渡り線の高さを算出するので、トロリ線摩耗面の誤検出をより低減することができる。
【0031】
第10の発明に係る画像処理による渡り線測定によれば、太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間するので、トロリ線摩耗面の誤検出をより低減することができる。
【0032】
第11の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、標準偏差背景除去処理手段がラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行ってラインセンサ画像中の背景を除去した背景除去画像を作成し、判別分析二値化処理手段が背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し、ノイズ除去手段が二値化画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成し、渡り線部エッジ検出処理手段がノイズ除去画像に対して渡り線の両側のエッジ点を検出し、背景輝度平均値算出処理手段がラインセンサ画像を用いて背景輝度平均値を算出し、太陽光反射判定処理手段がラインセンサ画像を用いて太陽光反射の有無を判定するので、トロリ線摩耗面の誤検出をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1に係る画像処理による渡り線測定装置の設置例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例1に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係る標準偏差背景除去処理の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例1に係る標準偏差背景除去処理の他の例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例1に係るトロリ線摩耗測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例2に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例2に係るトロリ線摩耗測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例2に係るラインセンサ画像の一例を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例2に係る二値化画像の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例2に係るエッジ点近傍の輝度分布の一例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施例3に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施例3に係るトロリ線摩耗測定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る画像処理による渡り線測定装置の詳細を説明する。
【実施例1】
【0035】
(標準偏差背景除去)
図1ないし図5を用いて本発明に係る画像処理による渡り線測定装置の第1の実施例を説明する。本実施例はラインセンサカメラから取得した画像に対してそのまま二値化処理を行うのではなく、前処理として標準偏差を用いて輝度がおおむね一様な領域を判定することにより背景上の明るさの斑の影響を除去し、その後、二値化処理を行って背景と渡り線との切り分けを行うものである。
【0036】
図1に示すように、本実施例において車両1の屋根上にはラインセンサカメラ2が設置され、車両1の車内には画像処理手段としての計測用コンピュータ3と記録装置4とが配設されている。
ラインセンサカメラ2は鉛直上方を撮影するように、且つその走査線方向がレール(図示省略)の枕木方向、換言すると車両1の進行方向に直行する方向となるようにその向きを設定されている。これにより、ラインセンサカメラ2の走査線が本線6と交差する渡り線7を横切るようになっている。
【0037】
また、図2に示すように、計測用コンピュータ3はラインセンサ画像作成手段としてのラインセンサ画像作成部3a、背景切り分け処理手段としての標準偏差背景除去処理部3b、判別分析二値化処理手段としての判別分析二値化処理部3c、ノイズ除去処理手段としてのノイズ除去処理部3d、渡り線部エッジ検出手段としての渡り線部エッジ検出部3e、渡り線部高さ計算手段としての渡り線部高さ計算部3f、および渡り線部偏位計算手段としての渡り線部偏位計算部3gを備えて構成されている。
【0038】
ラインセンサ画像作成部3aはラインセンサ2から入力される走査線の輝度信号を時系列的に並べてラインセンサ画像(平面の画像)を作成する。作成されたラインセンサ画像はメモリM1,M2を経て標準偏差背景除去処理部3bへ入力される。
【0039】
標準偏差背景除去処理部3bは入力されたラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行う。標準偏差背景除去処理部3bによって作成された画像(以下、背景除去画像という)はメモリM2を経て判別分析二値化処理部3cへ入力される。
【0040】
以下に、図3を用いて標準偏差背景除去処理部3bにおける処理について詳細に説明する。本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置において、標準偏差背景除去処理部3bは、図3(a)に示すように、ラインセンサ画像11を任意の区間(本実施例では第一区間12a、第二区間12b、第三区間12c)に分割し、それぞれの区間ごとに標準偏差背景除去処理を行う。
【0041】
まず、第一区間12aに対して標準偏差背景除去処理を施す。図3(a)に示す例においては第一区間12aには対象物としての渡り線7が写っていないため、標準偏差値が低くなり第一区間12a全体が背景であると判断される。このように背景であると判断された第一区間12aはその後の処理に影響を及ぼさないように、塗りつぶし区間として白く塗りつぶされる(図3(b))。
【0042】
続いて、第二区間12bに対して標準偏差背景除去処理を施す。図3(a)に示す例においては第二区間12bには渡り線7が写っているため、標準偏差値が高くなり第二区間12bに何らかの構造物(ここでは渡り線7。以下、写り込み物という)があると判断される。このように写り込み物が写っていると判断された場合、隣接する区間であって標準偏差背景除去処理が終了した区間(ここでは第一区間12a)が塗りつぶし区間であるか否かを判断し、塗りつぶし区間である場合は写り込み物までの領域を背景部分であるとして白く塗りつぶす処理を行う(図3(c))。
【0043】
次に、第三区間12cに対して標準偏差背景除去処理を施す。図3(a)に示す例においては第三区間12cには渡り線7が写っていないため、標準偏差値が低くなり第三区間12c全体が背景であると判断され、第一区間12aと同様、塗りつぶし区間として白く塗りつぶされる。さらに、第一区間12a以外の区間において背景であると判断された区間は、隣接する区間であって標準偏差除去処理が終了した区間(ここでは第二区間12b)が塗りつぶし区間であるか否かを判断し、塗りつぶし区間でない場合はその隣接する区間の写り込み物から第三区間12cまでの領域を背景部分であるとみなして白く塗りつぶす処理を行う(図3(d))。
【0044】
ここで、図4(a)に示すように例えば二つのトロリ線7−1,7−2が撮像されているなど、隣接する区間にいずれも写り込み物が存在する、又は一つの区間に二つの写り込み物が存在することにより、ラインセンサ画像11に写り込み物が二つ以上存在する場合にあっては、上述した処理を行った結果、図4(b)に示すように二つのトロリ線7−1,7−2間が塗りつぶされない状態となる場合がある。このような場合には塗りつぶしを行わなかった領域について、図4(c)に示すように区間を細分化して再度同様の処理を行い、二つの写り込み物間の背景を塗りつぶす処理を行うことにより図4(d)に示すように写り込み物と背景とを切り分けることが可能である。
【0045】
なお、ラインセンサ画像11に二つ以上の写り込み物が撮像された場合の写り込み物間の距離をあらかじめ予測可能な場合は、ラインセンサ画像を任意の区間に分割する際に一つの区間又は隣接する区間に二つ以上写り込み物が存在することのないように区間の大きさを設定するようにすれば、一度の処理で写り込み物と背景とを切り分けることができ、好適である。具体的には、区間の分割サイズをB、写り込み物間の最小距離をLとしたときに、以下の(1)式を満たすように区間を分割すればよい。
B<L/2 ・・・ (1)
【0046】
以上の処理により、背景上の明るさの斑を除去した背景除去画像13が得られる。背景除去画像13はメモリM2を経て判別分析二値化処理部3cに入力される。
【0047】
判別分析二値化処理部3cは入力された背景除去画像に対して、判別分析二値化処理法により二値化処理を行い、二値化画像を作成する。ここで、判別分析二値化処理法とは、二値化処理を行う際に、画像の状態に応じて自動的にしきい値を設定する方法である。作成された二値化画像はメモリM2を経てノイズ除去処理部3dに入力される。
【0048】
ノイズ除去処理部3dは、入力された二値化画像に対して、画像中に含まれる渡り線部の傷や細かな点状のノイズ等を除去してノイズ除去画像を作成する。ノイズ除去画像はメモリM2を介して渡り線部エッジ検出部3eに入力される。
【0049】
渡り線部エッジ検出部3eは入力されたノイズ除去画像に対し、あるラインについて例えば左から探索した場合に、白から黒へ変化する点を左側のエッジ点として検出し、続いて黒から白へ変化する点を右側のエッジ点として検出する処理を行う。この処理を画像の上から下へラインごとに行う。検出したエッジ点の情報(以下、エッジデータという)はメモリM2を経て渡り線部高さ計算部3fに入力される。
【0050】
渡り線部高さ計算部3fは入力されたエッジデータと、パラメータとして入力される左右のエッジ点間の距離、予め既知である渡り線サイズデータ、レンズ焦点距離、センサ幅およびセンサ画素数とから渡り線の高さを計算する。算出された渡り線の高さは渡り線高さデータとしてメモリM2を経て渡り線部偏位計算部3gに入力される。
【0051】
渡り線部偏移計算部3gは入力された渡り線高さデータと、パラメータとして入力される左右のエッジ点の重心位置、ラインセンサカメラ2の設置位置、レンズ焦点距離、センサ幅およびセンサ画素数とから渡り線の偏位量を計算する。算出された渡り線の偏位量は渡り線偏位量データとしてメモリM2を経て記録装置4に記録される。
【0052】
記録装置4には上述した渡り線偏位量データのほか、メモリM1,M2を経てラインセンサ画像、背景除去画像、二値化画像、ノイズ除去画像、エッジデータ、渡り線高さデータ等が記録される。
【0053】
図5を用いて本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータ3における画像処理の流れを説明する。
【0054】
図5に示すように、本実施例において計測用コンピュータ3は、まず、ラインセンサ画像作成部3aにおいて、ラインセンサカメラ2から入力される画像信号を時系列的に並べることによりラインセンサ画像を作成する処理を行い(ステップP1)、続いて、標準偏差背景除去処理部3bにおいてラインセンサ画像に対して上述した標準偏差背景除去処理を行い背景除去画像を作成する(ステップP2)。
【0055】
その後、判別分析二値化処理部3cにおいて背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し(ステップP3)、続いてノイズ除去処理部3dにおいて二値化画像に対してノイズ除去処理を行いノイズ除去画像を作成する(ステップP4)。
【0056】
ステップP4に続いては、渡り線部エッジ検出部3eにおいてノイズ除去画像の背景を示す白色と渡り線7を示す黒色との境界を左右のエッジ点として抽出する処理を行う(ステップP5)。これによりエッジデータが得られる。
【0057】
ステップP5に続いては、渡り線高さ計算処理部3fにおいて、左右のエッジ点間の距離と上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の高さを渡り線高さデータとして算出し(ステップP6)、続いて渡り線偏位計算処理部3gにおいて、渡り線高さデータと上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の偏位量を計算する(ステップP7)。
上述した処理を行うことにより、渡り線の三次元位置を測定することができる。
【0058】
ラインセンサ画像において、背景となる空は雲や青空が写る場合ぼやっとしたメリハリのない空間になるのに対し、測定対象であるトロリ線7はピントが合っていることもありはっきりと明暗が出る。本実施例では、このことを利用して、画像を任意の区間(本実施例では第一区間12a、第二区間12b、第三区間12c)に区切ってその区間内の標準偏差をとり、輝度のばらつき具合を確認する。このとき、区間内の輝度のばらつきが大きい場合は渡り線7が写っていると判断し、輝度のばらつきが小さい場合は背景であると判断する。そして、背景と判断された区間については、その後の処理に影響を及ぼさないように白く塗りつぶす処理を行ってこの区間が背景であることを明確にすることで渡り線7の誤検出を低減する。
【0059】
さらに、塗りつぶしをしない区間において、その隣の区間に対して塗りつぶし処理を行っている場合、その隣の区間から当該区間内の写り込み物までの領域に対しても塗りつぶし処理を行う。このようにすることで、塗りつぶし区間から写り込み物有りと判断された区間の写り込み物までの間にできる空白領域(背景であるが塗りつぶしていない画素)を埋めることができ、より誤検出を低減できる。なお、本実施例では塗りつぶし区間の平均輝度値に比較して輝度差が一定値以上あるピクセルを写り込み物箇所として検出するものとする。
【0060】
上述した本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、背景上に明るさの斑が存在する場合でも、渡り線7と背景とを切り分けることができるため、渡り線7の誤検出を低減することができる。
また、写り込み物有りと判断された区間であっても隣接する区間が塗りつぶし区間であった場合は写り込み物まで塗りつぶすようにしたため、より精密に渡り線と背景の切り分けが行える。
さらに、照明を当てずに撮影し渡り線7が画面上において黒く表示されるようにすることにより、ナトリウムランプおよびバンドパスフィルタなどの装置を用いずに安価かつ単純な装置構成で渡り線7の昼間測定を行うことができる。
【0061】
なお、本実施例では標準偏差背景除去処理部4fにおいて背景とみなした領域を黒く塗りつぶす例を示したが、背景とみなした領域は黒く塗りつぶすことに限定されるものではなく、例えば、背景とみなした領域をマスク画素としてメモリ空間に記憶しておき、このマスク画素を以後の処理を行わない画素とするなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例2】
【0062】
(太陽光反射判定処理)
図6ないし図10を用いて本発明に係る画像処理による渡り線測定装置の第2の実施例を説明する。本実施例は太陽光反射した画像をエラーとして判定する「太陽光反射判定処理」により太陽光反射による渡り線の誤測定を防止するものである。
【0063】
本実施例は図1および2に示し上述した実施例1の標準偏差背景除去処理部3bに変えて、図6に示す背景切り分け処理手段としての背景輝度平均値算出処理部3hおよび太陽光反射判定処理部3iを追加したものである。その他の構成は図1および図2に示し上述した構成とおおむね同様であり、以下、類似する部材には同一の符合を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0064】
図6に示すように、本実施例において計測用コンピュータ3はラインセンサ画像作成部3a、判別分析二値化処理部3c、ノイズ除去処理部3d、渡り線部エッジ検出部3e、背景輝度平均値算出処理部3h、太陽光反射判定処理部3i、渡り線部高さ計算部3f、および渡り線部偏位計算部3gを備えて構成されている。
【0065】
背景輝度平均値算出処理部3hは、入力されたエッジデータとパラメータとして入力される背景輝度集計範囲W(図9参照)とから背景輝度平均値Aを求める。ここで、背景輝度集計範囲Wは渡り線部エッジ検出部3eにおいて求めたエッジ点の渡り線外側方向にあらかじめ設定する一定範囲であり、背景輝度平均値Aは背景輝度集計範囲W内において集計した輝度値の平均値である。算出された背景輝度平均値AはメモリM2を経て太陽光反射判定処理部3iに入力される。
【0066】
太陽光反射判定処理部3iは、太陽光反射箇所は背景に比べて輝度値が大きいことを利用し、入力された背景輝度平均値Aとパラメータとして入力されるあらかじめ設定した設定幅αとの和をしきい値としてエッジ点近傍の輝度分布を比較し、輝度値が突出した箇所があれば太陽光反射箇所有りと判定する。判定結果はメモリM2を経て渡り線部高さ計算処理部3fに入力される。
【0067】
渡り線部高さ計算処理部3fは、入力された判定結果が太陽光反射箇所有りである場合は入力されたエッジデータと、パラメータとして入力される左右のエッジ点間の距離、予め既知である渡り線サイズデータ、レンズ焦点距離、センサ幅およびセンサ画素数とから渡り線の高さを計算する。算出された渡り線の高さは渡り線高さデータとしてメモリM2を経て渡り線部偏位計算部3gに入力される。一方、入力された判定結果が太陽光反射箇所無しである場合は渡り線部の高さの計算を行わず、欠損データとしてメモリM2を介して記録装置4に記録する。
なお、欠損データとなった渡り線は、測定終了後に太陽光反射無しと判定された箇所の正常な渡り線幅データから補間する。
【0068】
記録装置5には、ラインセンサ画像、二値化画像、ノイズ除去画像、背景輝度平均値A、設定幅α、太陽光反射判定処理部における判定結果、エッジデータ、渡り線高さデータ、渡り線偏位量データ等が記録される。
【0069】
図7ないし図10を用いて本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータ4における画像処理の流れを説明する。
【0070】
図7に示すように、本実施例に係る計測用コンピュータ3においては、まず、ラインセンサ画像作成部3aにおいて、ラインセンサカメラ2から入力される画像信号を時系列的に並べることによりラインセンサ画像を作成する処理を行い(ステップP11)、続いて、判別分析二値化処理部3cにおいてラインセンサ画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し(ステップP12)、続いてノイズ除去処理部3dにおいて二値化画像に対してノイズ除去処理を行いノイズ除去画像を作成する(ステップP13)。
【0071】
ステップP13に続いては、渡り線部エッジ検出部3dにおいてノイズ除去画像に対して背景を示す白色と渡り線7を示す黒色との境界を左右のエッジ点9L,9Rとして抽出する処理を行う(ステップP14)。これによりエッジデータが得られる。
ステップP14に続いては、背景輝度平均値算出処理部3hにおいてエッジデータを基に背景輝度平均値を求める(ステップP15)。
【0072】
ここで、図8ないし図10を用いて背景輝度平均値を算出する処理の詳細を説明する。
例えば図8(a)に示すようにラインセンサ画像11に太陽光反射箇所が存在しない場合、背景輝度平均値算出処理部3hでは、図9(a)に示すように、渡り線部エッジ検出部3eにおいて検出されたエッジデータを基に、ラインセンサ画像11上のエッジ点9L,9Rに対応する位置から渡り線7の外側方向の一定範囲である背景輝度集計範囲W内の輝度値を集計してその平均値を求める。
一方、例えば図8(b)に示すようにラインセンサ画像11に太陽光反射箇所8が撮影されている場合、背景輝度平均値算出処理部3hでは、渡り線部エッジ検出部3eにおいて検出されたエッジデータを基に、図9(b)に示すようにラインセンサ画像11上のエッジ点9L,9Rに対応する位置から渡り線7外側方向の一定範囲である背景輝度集計範囲W内の輝度値を集計してその平均値を求める。
以上により背景輝度平均値Aが得られる。
【0073】
ステップP15に続いては、太陽光反射判定処理部3iにおいて背景輝度平均値Aにあらかじめ設定された設定幅αを加算した値をしきい値Sとする一方、ラインセンサ画像11についてラインごとにエッジ点9L,9Rそれぞれの左右のあらかじめ設定する範囲の輝度分布を比較する(ステップP16)。このとき、輝度分布が図10(a)に示すようにしきい値Sを超えない場合は太陽光反射無しと判定する。一方、渡り線の図10(b)に一点鎖線で囲んで示すようにしきい値Sを超える個所が存在する場合は太陽光反射有りと判定する。
【0074】
ステップP16において太陽光反射無と判定された場合は、続いて渡り線高さ計算処理部3fにおいて左右のエッジ点9L,9R間の距離と上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の高さを渡り線高さデータとして算出し(ステップP17)、渡り線偏位計算処理部3gにおいて、渡り線高さデータと上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の偏位量を計算する(ステップP18)。
一方、ステップP16において太陽光反射有りと判定された場合は、渡り線部高さ計算部3f、渡り線部編計算部3gにおける処理を行わず、欠損データとして記録装置4に記録し、測定終了後に太陽光反射無しと判定された個所の渡り線高さデータから渡り線三次元位置を補間する(ステップP19)。
【0075】
以上の処理によって、太陽光反射による誤測定を防止しつつ渡り線の三次元位置を測定することができる。
【0076】
上述した本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、ラインセンサ画像11上に太陽光反射による影響が及んだ場合であっても、高精度に渡り線7の計測を行うことができる。また、照明を用いることなく渡り線7を撮影することで、ラインセンサ画像11上に渡り線7を黒く写すことにより、ナトリウムランプおよびバンドパスフィルタなどの装置を用いずに安価かつ単純な装置構成で渡り線7の昼間測定を行うことができる。
【実施例3】
【0077】
(渡り線計測)
図11および図12を用いて本発明に係る画像処理による渡り線測定装置の第3の実施例の詳細を説明する。本実施例は上述した第1の実施例に第2の実施例において説明した背景輝度平均値算出処理部および太陽光反射判定処理部を追加したものである。その他の構成は図1および図2に示し上述した構成とおおむね同様であり、以下、類似する部材には同一の符合を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0078】
図11に示すように、本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置において、計測用コンピュータは、ラインセンサ画像作成部3a、標準偏差背景除去処理部3b、判別分析二値化処理部3c、ノイズ除去処理部3d、渡り線部エッジ検出部3e、背景輝度平均値算出処理部3h、太陽光反射判定処理部3i、渡り線部高さ計算部3f、および渡り線部偏位計算部3gを備えて構成されている。
【0079】
記録装置4には、ラインセンサ画像、背景除去画像、二値化画像、ノイズ除去画像、エッジデータ、背景輝度平均値、太陽光反射判定処理部における判定結果、渡り線高さデータ、渡り線偏位量データ等が記録される。
【0080】
図12を用いて本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータ4による画像処理の流れを説明する。
【0081】
図12に示すように、本実施例においては、まず、ラインセンサ画像作成部3aにおいて、ラインセンサカメラ2から入力される画像信号を時系列的に並べることによりラインセンサ画像を作成する処理を行い(ステップP21)、続いて、標準偏差背景除去処理部3bにおいてラインセンサ画像に対して上述した標準偏差背景除去処理を行い背景除去画像を作成する(ステップP22)。
【0082】
その後、判別分析二値化処理部3cにおいて背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し(ステップP23)、続いてノイズ除去処理部3dにおいて二値化画像に対してノイズ除去処理を行いノイズ除去画像を作成する(ステップP24)。
【0083】
ステップP24に続いては、渡り線部エッジ検出部3dにおいてノイズ除去画像に対して背景を示す白色と渡り線7を示す黒色との境界を左右のエッジ点として抽出する処理を行う(ステップP25)。これによりエッジデータが得られる。
【0084】
ステップP25に続いては、背景輝度平均値算出処理部3hにおいてエッジデータを基に背景輝度平均値Aを求める(ステップP26)。
【0085】
ステップP26に続いては、太陽光反射判定処理部3iにおいて背景輝度平均値Aにあらかじめ設定された設定幅αを加算した値をしきい値Sとする一方、ラインセンサ画像に対してラインごとにエッジ点近傍の輝度分布を比較する(ステップP27)。
【0086】
ステップP27において太陽光反射無しと判定された場合は、続いて渡り線高さ計算処理部3fにおいて左右のエッジ点間の距離と上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の高さを渡り線高さデータとして算出し(ステップP28)、渡り線偏位計算処理部3gにおいて、渡り線高さデータと上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の偏位量を計算する(ステップP29)。
一方、ステップP27において太陽光反射有りと判定された場合は、渡り線部高さ計算部3f、渡り線部編計算部3gにおける処理を行わず、欠損データとして記録装置4に記録し、測定終了後に太陽光反射無しと判定された個所の渡り線高さデータから渡り線三次元位置を補間する(ステップP30)。
【0087】
上述した処理によって、渡り線の三次元位置を測定することができる。
【0088】
なお、本実施例においては、撮影環境や撮影条件に応じて作業者が標準偏差背景除去処理、標準偏差背景除去処理の要否を選択する(例えば、設定ファイルにて処理のON/OFFを設定する)ことができるようにすれば好適である。
【0089】
また、本発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、上述した実施例1ないし実施例3に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は画像処理による渡り線測定装置に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0091】
1 車両
2 ラインセンサカメラ
3 計測用コンピュータ
3a ラインセンサ画像作成部
3b 標準偏差背景除去処理部
3c 判別分析二値化処理部
3d ノイズ除去処理部
3e 渡り線部エッジ検出部
3f 渡り線部高さ計算部
3g 渡り線部偏位計算部
3h 背景輝度平均値算出処理部
3i 太陽光反射判定処理部
4 記録装置
5 パンタグラフ
6 トロリ線
7 渡り線
8 太陽光反射箇所
11 ラインセンサ画像
12a 第一区間
12b 第二区間
12c 第三区間
13 背景除去画像
A 背景輝度平均値
M1,M2 メモリ
S しきい値
W 背景輝度集計範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理による渡り線の三次元位置測定に関し、特に昼間において背景の明るさ変動にロバストに測定を行う画像処理による渡り線測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道の設備としてトロリ線があるが、線路の交差する場所では、このトロリ線も交差させる必要がある。交差するトロリ線のうち、本線と異なって交差する線を「渡り線」と呼ぶ。従来、この渡り線が鉄道車両の走行に支障をきたすことがないように、渡り線の三次元位置の測定が行われている。
【0003】
このような渡り線の三次元位置の測定を行う装置として、車両の屋根上にラインセンサカメラおよび照明装置を設置し、渡り線に照明を当ててラインセンサカメラから取得した画像に対して判別分析法によって二値化を行うことで渡り線のみを白領域として抽出し、渡り線の三次元位置を非接触で求めるものがある(例えば、特許文献1参照)。なお、この特許文献1においては、ナトリウムランプおよびバンドパスフィルタを使用して太陽光などの外乱光を除去し、良好な画像を得ることで昼間において測定を行うことも開示されている。
【0004】
また、トロリ線の測定を行う装置として、ラインセンサカメラから取得した画像に対して二値化処理を行い、トロリ線の太さパラメータより大きい白領域を空の部分として黒領域に反転することによりトロリ線摩耗面のみを抽出しトロリ線の摩耗量を測定するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、あらかじめ設定しておいた濃淡しきい値により背景部分を処理しないようなマスクを設定するようにしたパンタグラフ周辺支障物検出装置もある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−192394号公報
【特許文献2】特開2007−271445号公報
【特許文献3】特開2006−250775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、二値化した際に渡り線部分のみが白領域となり背景部分が黒領域となるようにする必要があるが、昼間においては背景が明るいため背景部分も白領域となり、渡り線と背景とを切り分けることができないおそれがあった。また、ナトリウムランプおよびバンドパスフィルタを別途用意して取り付けることにより昼間でも計測できるようにしているものの、装置を準備するのに費用が掛かり、装置構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0008】
ここで、引用文献1に記載された装置を用いて昼間の計測を行う場合、照明を取り除いた装置構成とすることが考えられる。
このような構成として渡り線を撮影すると、背景が太陽光により明るく写り(二値化すると白領域)、渡り線は太陽光の遮蔽物として黒く映る(二値化すると黒領域)。したがって昼間であっても渡り線と背景とを切り分けることができ、昼間の渡り線三次元位置測定が可能となると考えられる。
【0009】
しかしながら、このような装置によって渡り線の三次元位置測定を行う場合、以下の問題が考えられた。
(1)背景に明るさの斑(天候の変化や雲等による陰影。以下、単に「明るさの斑」という)が存在する場合、特許文献2に開示されているような太さパラメータを用いる方法では明るさの斑を渡り線と誤検出してしまうおそれがある。また、特許文献3に開示されているようなあらかじめ固定の濃淡しきい値を設定する方法では背景部分とそうでない部分とを区別することができないおそれがある。
(2)太陽光が渡り線に強く当たり太陽光反射が発生した場合、渡り線の一部分が極端に明るく撮影されるため、この画像を二値化すると、極端に明るく撮像された部分が背景の白領域となり、渡り線部分の黒領域幅が小さくなって、渡り線幅が実際よりも小さく算出されてしまう。渡り線高さなどの三次元位置は渡り線幅を基に算出されるので、太陽光反射が発生すると、正しい計測が行えない。
【0010】
このようなことから本発明は、渡り線と背景の切り分けを高精度に行うことが可能な画像処理による渡り線測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、車両の屋根上にその走査線方向を車両の進行方向に対して垂直且つ水平に設置されて渡り線を撮影するラインセンサカメラと、前記車両の内部に設置された画像処理手段とを備えた画像処理による渡り線測定装置において、前記画像処理手段が、前記ラインセンサカメラから入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成手段と、入力された画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成する判別分析二値化処理手段と、入力された画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成するノイズ除去処理手段と、入力された画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出する渡り線部エッジ検出手段と、入力された画像に対して前記渡り線と背景との切り分けを行う背景切り分け処理手段と、前記渡り線の両側のエッジ点の位置から前記渡り線の高さを算出する渡り線部高さ計算手段と、前記渡り線の高さから前記渡り線の偏位を算出する渡り線部偏位計算手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第1の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記背景切り分け処理手段が、入力された画像を任意の区間に分割し、各前記区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の前記対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段であることを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第2の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記標準偏差背景除去処理手段が、前記標準偏差背景除去処理を行った前記区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各前記細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記細分化した区間ごとに該区間に前記対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成することを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決するための第4の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、第2の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記任意の区間の大きさが、前記対象物が存在する区間が連続しない大きさであることを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するための第5の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第2ないし第4のいずれか一つの発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の背景を除去した前記背景除去画像を作成し、前記二値化処理手段が前記背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、前記ノイズ除去処理手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、前記渡り線部エッジ検出手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出することを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決するための第6の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第1の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記背景切り分け処理手段が、前記渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、前記入力された画像に対してそれぞれ前記エッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、前記背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともに前記しきい値に基づいて前記入力された画像の前記渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とからなることを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するための第7の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第6の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記判別分析二値化処理手段が前記ラインセンサ画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、前記ノイズ除去手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、前記渡り線部エッジ検出処理手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出し、前記背景輝度平均値算出処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記背景輝度平均値を算出し、前記太陽光反射判定処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記太陽光反射の有無を判定することを特徴とする。
【0018】
上記の課題を解決するための第8の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第6又は第7の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間することを特徴とする。
【0019】
上記の課題を解決するための第9の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第2ないし第5のいずれか一つの発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記画像処理手段が前記背景切り分け処理手段としてさらに、前記渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、前記入力された画像に対してそれぞれ前記エッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、前記背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともに前記しきい値に基づいて前記入力された画像の前記渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とを備え、前記渡り線部高さ計算手段が、前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射無しと判定された場合に前記渡り線の両側のエッジ点の位置から前記渡り線の高さを算出することを特徴とする。
【0020】
上記の課題を解決するための第10の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第9の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間することを特徴とする。
【0021】
上記の課題を解決するための第11の発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、第9又は第10の発明に係る画像処理による渡り線測定装置において、前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の背景を除去した前記背景除去画像を作成し、前記判別分析二値化処理手段が前記背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、前記ノイズ除去手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、前記渡り線部エッジ検出処理手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出し、前記背景輝度平均値算出処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記背景輝度平均値を算出し、前記太陽光反射判定処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記太陽光反射の有無を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上述した第1の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、車両の屋根上にその走査線方向を車両の進行方向に対して垂直且つ水平に設置されて渡り線を撮影するラインセンサカメラと、車両の内部に設置された画像処理手段とを備えた画像処理による渡り線測定装置において、画像処理手段が、ラインセンサカメラから入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成手段と、入力された画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成する判別分析二値化処理手段と、入力された画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成するノイズ除去処理手段と、入力された画像に対して渡り線の両側のエッジ点を検出する渡り線部エッジ検出手段と、入力された画像に対して渡り線と背景との切り分けを行う背景切り分け処理手段と、渡り線の両側のエッジ点の位置から渡り線の高さを算出する渡り線部高さ計算手段と、渡り線の高さから渡り線の偏位を算出する渡り線部偏位計算手段とを備えるので、渡り線と背景とを切り分けることができ、渡り線の誤検出を低減することができる。
【0023】
また、第2の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、背景切り分け処理手段が、入力された画像を任意の区間に分割し、各区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に対象物が写っていない場合は隣接する区間から対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に対象物が写っている場合は隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段であるので、入力画像中の背景に明るさの斑が存在する場合であっても渡り線を判別することができ、渡り線の誤検出を低減することができる。また、ナトリウムランプやバンドパスフィルタ等の装置を用いる必要がなく安価かつ単純な装置で渡り線の昼間測定を行うことができる。
【0024】
第3の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、標準偏差背景除去処理手段が、標準偏差背景除去処理を行った区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各細分化した区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に対象物が写っている場合であって隣接する区間に対象物が写っていない場合は隣接する区間から対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に対象物が写っている場合は隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成するので、確実に対象物と背景との切り分けを行うことができる。
【0025】
第4の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、任意の区間の大きさが、対象物が存在する区間が連続しない大きさであるので、一度の処理で対象物と背景とを切り分けることができる。
【0026】
第5の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、標準偏差背景除去処理手段がラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行ってラインセンサ画像中の背景を除去した背景除去画像を作成し、二値化処理手段が背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し、ノイズ除去処理手段が二値化画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成し、渡り線部エッジ検出手段がノイズ除去画像に対して渡り線の両側のエッジ点を検出するので、入力画像中の背景に明るさの斑が存在する場合であっても渡り線を明確に判別することができる。
【0027】
第6の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、背景切り分け処理手段が、渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、入力された画像に対してそれぞれエッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともにしきい値に基づいて入力された画像の渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とからなるので、ラインセンサ画像上に太陽光反射の影響が存在する場合であっても正確に渡り線計測を行うことができる。また、ナトリウムランプやバンドパスフィルタ等の装置を用いる必要がなく安価かつ単純な装置で渡り線の昼間測定を行うことができる。
【0028】
第7の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、判別分析二値化処理手段がラインセンサ画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し、ノイズ除去手段が二値化画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成し、渡り線部エッジ検出処理手段がノイズ除去画像に対して渡り線の両側のエッジ点を検出し、背景輝度平均値算出処理手段がラインセンサ画像を用いて背景輝度平均値を算出し、太陽光反射判定処理手段がラインセンサ画像を用いて太陽光反射の有無を判定するので、ラインセンサ画像上に太陽光反射の影響が存在する場合であっても正確に渡り線計測を行うことができる。また、ナトリウムランプやバンドパスフィルタ等の装置を用いる必要がなく安価かつ単純な装置で渡り線の昼間測定を行うことができる。
【0029】
第8の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間するので、太陽光反射による渡り線計測への影響を排除することができる。
【0030】
第9の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、画像処理手段が背景切り分け処理手段としてさらに、渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、入力された画像に対してそれぞれエッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともにしきい値に基づいて入力された画像の渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とを備え、渡り線部高さ計算手段が、太陽光反射判定処理手段において太陽光反射無しと判定された場合に渡り線の両側のエッジ点の位置から渡り線の高さを算出するので、トロリ線摩耗面の誤検出をより低減することができる。
【0031】
第10の発明に係る画像処理による渡り線測定によれば、太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間するので、トロリ線摩耗面の誤検出をより低減することができる。
【0032】
第11の発明に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、標準偏差背景除去処理手段がラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行ってラインセンサ画像中の背景を除去した背景除去画像を作成し、判別分析二値化処理手段が背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し、ノイズ除去手段が二値化画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成し、渡り線部エッジ検出処理手段がノイズ除去画像に対して渡り線の両側のエッジ点を検出し、背景輝度平均値算出処理手段がラインセンサ画像を用いて背景輝度平均値を算出し、太陽光反射判定処理手段がラインセンサ画像を用いて太陽光反射の有無を判定するので、トロリ線摩耗面の誤検出をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1に係る画像処理による渡り線測定装置の設置例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例1に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係る標準偏差背景除去処理の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例1に係る標準偏差背景除去処理の他の例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例1に係るトロリ線摩耗測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例2に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例2に係るトロリ線摩耗測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例2に係るラインセンサ画像の一例を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例2に係る二値化画像の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例2に係るエッジ点近傍の輝度分布の一例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施例3に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施例3に係るトロリ線摩耗測定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る画像処理による渡り線測定装置の詳細を説明する。
【実施例1】
【0035】
(標準偏差背景除去)
図1ないし図5を用いて本発明に係る画像処理による渡り線測定装置の第1の実施例を説明する。本実施例はラインセンサカメラから取得した画像に対してそのまま二値化処理を行うのではなく、前処理として標準偏差を用いて輝度がおおむね一様な領域を判定することにより背景上の明るさの斑の影響を除去し、その後、二値化処理を行って背景と渡り線との切り分けを行うものである。
【0036】
図1に示すように、本実施例において車両1の屋根上にはラインセンサカメラ2が設置され、車両1の車内には画像処理手段としての計測用コンピュータ3と記録装置4とが配設されている。
ラインセンサカメラ2は鉛直上方を撮影するように、且つその走査線方向がレール(図示省略)の枕木方向、換言すると車両1の進行方向に直行する方向となるようにその向きを設定されている。これにより、ラインセンサカメラ2の走査線が本線6と交差する渡り線7を横切るようになっている。
【0037】
また、図2に示すように、計測用コンピュータ3はラインセンサ画像作成手段としてのラインセンサ画像作成部3a、背景切り分け処理手段としての標準偏差背景除去処理部3b、判別分析二値化処理手段としての判別分析二値化処理部3c、ノイズ除去処理手段としてのノイズ除去処理部3d、渡り線部エッジ検出手段としての渡り線部エッジ検出部3e、渡り線部高さ計算手段としての渡り線部高さ計算部3f、および渡り線部偏位計算手段としての渡り線部偏位計算部3gを備えて構成されている。
【0038】
ラインセンサ画像作成部3aはラインセンサ2から入力される走査線の輝度信号を時系列的に並べてラインセンサ画像(平面の画像)を作成する。作成されたラインセンサ画像はメモリM1,M2を経て標準偏差背景除去処理部3bへ入力される。
【0039】
標準偏差背景除去処理部3bは入力されたラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行う。標準偏差背景除去処理部3bによって作成された画像(以下、背景除去画像という)はメモリM2を経て判別分析二値化処理部3cへ入力される。
【0040】
以下に、図3を用いて標準偏差背景除去処理部3bにおける処理について詳細に説明する。本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置において、標準偏差背景除去処理部3bは、図3(a)に示すように、ラインセンサ画像11を任意の区間(本実施例では第一区間12a、第二区間12b、第三区間12c)に分割し、それぞれの区間ごとに標準偏差背景除去処理を行う。
【0041】
まず、第一区間12aに対して標準偏差背景除去処理を施す。図3(a)に示す例においては第一区間12aには対象物としての渡り線7が写っていないため、標準偏差値が低くなり第一区間12a全体が背景であると判断される。このように背景であると判断された第一区間12aはその後の処理に影響を及ぼさないように、塗りつぶし区間として白く塗りつぶされる(図3(b))。
【0042】
続いて、第二区間12bに対して標準偏差背景除去処理を施す。図3(a)に示す例においては第二区間12bには渡り線7が写っているため、標準偏差値が高くなり第二区間12bに何らかの構造物(ここでは渡り線7。以下、写り込み物という)があると判断される。このように写り込み物が写っていると判断された場合、隣接する区間であって標準偏差背景除去処理が終了した区間(ここでは第一区間12a)が塗りつぶし区間であるか否かを判断し、塗りつぶし区間である場合は写り込み物までの領域を背景部分であるとして白く塗りつぶす処理を行う(図3(c))。
【0043】
次に、第三区間12cに対して標準偏差背景除去処理を施す。図3(a)に示す例においては第三区間12cには渡り線7が写っていないため、標準偏差値が低くなり第三区間12c全体が背景であると判断され、第一区間12aと同様、塗りつぶし区間として白く塗りつぶされる。さらに、第一区間12a以外の区間において背景であると判断された区間は、隣接する区間であって標準偏差除去処理が終了した区間(ここでは第二区間12b)が塗りつぶし区間であるか否かを判断し、塗りつぶし区間でない場合はその隣接する区間の写り込み物から第三区間12cまでの領域を背景部分であるとみなして白く塗りつぶす処理を行う(図3(d))。
【0044】
ここで、図4(a)に示すように例えば二つのトロリ線7−1,7−2が撮像されているなど、隣接する区間にいずれも写り込み物が存在する、又は一つの区間に二つの写り込み物が存在することにより、ラインセンサ画像11に写り込み物が二つ以上存在する場合にあっては、上述した処理を行った結果、図4(b)に示すように二つのトロリ線7−1,7−2間が塗りつぶされない状態となる場合がある。このような場合には塗りつぶしを行わなかった領域について、図4(c)に示すように区間を細分化して再度同様の処理を行い、二つの写り込み物間の背景を塗りつぶす処理を行うことにより図4(d)に示すように写り込み物と背景とを切り分けることが可能である。
【0045】
なお、ラインセンサ画像11に二つ以上の写り込み物が撮像された場合の写り込み物間の距離をあらかじめ予測可能な場合は、ラインセンサ画像を任意の区間に分割する際に一つの区間又は隣接する区間に二つ以上写り込み物が存在することのないように区間の大きさを設定するようにすれば、一度の処理で写り込み物と背景とを切り分けることができ、好適である。具体的には、区間の分割サイズをB、写り込み物間の最小距離をLとしたときに、以下の(1)式を満たすように区間を分割すればよい。
B<L/2 ・・・ (1)
【0046】
以上の処理により、背景上の明るさの斑を除去した背景除去画像13が得られる。背景除去画像13はメモリM2を経て判別分析二値化処理部3cに入力される。
【0047】
判別分析二値化処理部3cは入力された背景除去画像に対して、判別分析二値化処理法により二値化処理を行い、二値化画像を作成する。ここで、判別分析二値化処理法とは、二値化処理を行う際に、画像の状態に応じて自動的にしきい値を設定する方法である。作成された二値化画像はメモリM2を経てノイズ除去処理部3dに入力される。
【0048】
ノイズ除去処理部3dは、入力された二値化画像に対して、画像中に含まれる渡り線部の傷や細かな点状のノイズ等を除去してノイズ除去画像を作成する。ノイズ除去画像はメモリM2を介して渡り線部エッジ検出部3eに入力される。
【0049】
渡り線部エッジ検出部3eは入力されたノイズ除去画像に対し、あるラインについて例えば左から探索した場合に、白から黒へ変化する点を左側のエッジ点として検出し、続いて黒から白へ変化する点を右側のエッジ点として検出する処理を行う。この処理を画像の上から下へラインごとに行う。検出したエッジ点の情報(以下、エッジデータという)はメモリM2を経て渡り線部高さ計算部3fに入力される。
【0050】
渡り線部高さ計算部3fは入力されたエッジデータと、パラメータとして入力される左右のエッジ点間の距離、予め既知である渡り線サイズデータ、レンズ焦点距離、センサ幅およびセンサ画素数とから渡り線の高さを計算する。算出された渡り線の高さは渡り線高さデータとしてメモリM2を経て渡り線部偏位計算部3gに入力される。
【0051】
渡り線部偏移計算部3gは入力された渡り線高さデータと、パラメータとして入力される左右のエッジ点の重心位置、ラインセンサカメラ2の設置位置、レンズ焦点距離、センサ幅およびセンサ画素数とから渡り線の偏位量を計算する。算出された渡り線の偏位量は渡り線偏位量データとしてメモリM2を経て記録装置4に記録される。
【0052】
記録装置4には上述した渡り線偏位量データのほか、メモリM1,M2を経てラインセンサ画像、背景除去画像、二値化画像、ノイズ除去画像、エッジデータ、渡り線高さデータ等が記録される。
【0053】
図5を用いて本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータ3における画像処理の流れを説明する。
【0054】
図5に示すように、本実施例において計測用コンピュータ3は、まず、ラインセンサ画像作成部3aにおいて、ラインセンサカメラ2から入力される画像信号を時系列的に並べることによりラインセンサ画像を作成する処理を行い(ステップP1)、続いて、標準偏差背景除去処理部3bにおいてラインセンサ画像に対して上述した標準偏差背景除去処理を行い背景除去画像を作成する(ステップP2)。
【0055】
その後、判別分析二値化処理部3cにおいて背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し(ステップP3)、続いてノイズ除去処理部3dにおいて二値化画像に対してノイズ除去処理を行いノイズ除去画像を作成する(ステップP4)。
【0056】
ステップP4に続いては、渡り線部エッジ検出部3eにおいてノイズ除去画像の背景を示す白色と渡り線7を示す黒色との境界を左右のエッジ点として抽出する処理を行う(ステップP5)。これによりエッジデータが得られる。
【0057】
ステップP5に続いては、渡り線高さ計算処理部3fにおいて、左右のエッジ点間の距離と上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の高さを渡り線高さデータとして算出し(ステップP6)、続いて渡り線偏位計算処理部3gにおいて、渡り線高さデータと上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の偏位量を計算する(ステップP7)。
上述した処理を行うことにより、渡り線の三次元位置を測定することができる。
【0058】
ラインセンサ画像において、背景となる空は雲や青空が写る場合ぼやっとしたメリハリのない空間になるのに対し、測定対象であるトロリ線7はピントが合っていることもありはっきりと明暗が出る。本実施例では、このことを利用して、画像を任意の区間(本実施例では第一区間12a、第二区間12b、第三区間12c)に区切ってその区間内の標準偏差をとり、輝度のばらつき具合を確認する。このとき、区間内の輝度のばらつきが大きい場合は渡り線7が写っていると判断し、輝度のばらつきが小さい場合は背景であると判断する。そして、背景と判断された区間については、その後の処理に影響を及ぼさないように白く塗りつぶす処理を行ってこの区間が背景であることを明確にすることで渡り線7の誤検出を低減する。
【0059】
さらに、塗りつぶしをしない区間において、その隣の区間に対して塗りつぶし処理を行っている場合、その隣の区間から当該区間内の写り込み物までの領域に対しても塗りつぶし処理を行う。このようにすることで、塗りつぶし区間から写り込み物有りと判断された区間の写り込み物までの間にできる空白領域(背景であるが塗りつぶしていない画素)を埋めることができ、より誤検出を低減できる。なお、本実施例では塗りつぶし区間の平均輝度値に比較して輝度差が一定値以上あるピクセルを写り込み物箇所として検出するものとする。
【0060】
上述した本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、背景上に明るさの斑が存在する場合でも、渡り線7と背景とを切り分けることができるため、渡り線7の誤検出を低減することができる。
また、写り込み物有りと判断された区間であっても隣接する区間が塗りつぶし区間であった場合は写り込み物まで塗りつぶすようにしたため、より精密に渡り線と背景の切り分けが行える。
さらに、照明を当てずに撮影し渡り線7が画面上において黒く表示されるようにすることにより、ナトリウムランプおよびバンドパスフィルタなどの装置を用いずに安価かつ単純な装置構成で渡り線7の昼間測定を行うことができる。
【0061】
なお、本実施例では標準偏差背景除去処理部4fにおいて背景とみなした領域を黒く塗りつぶす例を示したが、背景とみなした領域は黒く塗りつぶすことに限定されるものではなく、例えば、背景とみなした領域をマスク画素としてメモリ空間に記憶しておき、このマスク画素を以後の処理を行わない画素とするなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例2】
【0062】
(太陽光反射判定処理)
図6ないし図10を用いて本発明に係る画像処理による渡り線測定装置の第2の実施例を説明する。本実施例は太陽光反射した画像をエラーとして判定する「太陽光反射判定処理」により太陽光反射による渡り線の誤測定を防止するものである。
【0063】
本実施例は図1および2に示し上述した実施例1の標準偏差背景除去処理部3bに変えて、図6に示す背景切り分け処理手段としての背景輝度平均値算出処理部3hおよび太陽光反射判定処理部3iを追加したものである。その他の構成は図1および図2に示し上述した構成とおおむね同様であり、以下、類似する部材には同一の符合を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0064】
図6に示すように、本実施例において計測用コンピュータ3はラインセンサ画像作成部3a、判別分析二値化処理部3c、ノイズ除去処理部3d、渡り線部エッジ検出部3e、背景輝度平均値算出処理部3h、太陽光反射判定処理部3i、渡り線部高さ計算部3f、および渡り線部偏位計算部3gを備えて構成されている。
【0065】
背景輝度平均値算出処理部3hは、入力されたエッジデータとパラメータとして入力される背景輝度集計範囲W(図9参照)とから背景輝度平均値Aを求める。ここで、背景輝度集計範囲Wは渡り線部エッジ検出部3eにおいて求めたエッジ点の渡り線外側方向にあらかじめ設定する一定範囲であり、背景輝度平均値Aは背景輝度集計範囲W内において集計した輝度値の平均値である。算出された背景輝度平均値AはメモリM2を経て太陽光反射判定処理部3iに入力される。
【0066】
太陽光反射判定処理部3iは、太陽光反射箇所は背景に比べて輝度値が大きいことを利用し、入力された背景輝度平均値Aとパラメータとして入力されるあらかじめ設定した設定幅αとの和をしきい値としてエッジ点近傍の輝度分布を比較し、輝度値が突出した箇所があれば太陽光反射箇所有りと判定する。判定結果はメモリM2を経て渡り線部高さ計算処理部3fに入力される。
【0067】
渡り線部高さ計算処理部3fは、入力された判定結果が太陽光反射箇所有りである場合は入力されたエッジデータと、パラメータとして入力される左右のエッジ点間の距離、予め既知である渡り線サイズデータ、レンズ焦点距離、センサ幅およびセンサ画素数とから渡り線の高さを計算する。算出された渡り線の高さは渡り線高さデータとしてメモリM2を経て渡り線部偏位計算部3gに入力される。一方、入力された判定結果が太陽光反射箇所無しである場合は渡り線部の高さの計算を行わず、欠損データとしてメモリM2を介して記録装置4に記録する。
なお、欠損データとなった渡り線は、測定終了後に太陽光反射無しと判定された箇所の正常な渡り線幅データから補間する。
【0068】
記録装置5には、ラインセンサ画像、二値化画像、ノイズ除去画像、背景輝度平均値A、設定幅α、太陽光反射判定処理部における判定結果、エッジデータ、渡り線高さデータ、渡り線偏位量データ等が記録される。
【0069】
図7ないし図10を用いて本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータ4における画像処理の流れを説明する。
【0070】
図7に示すように、本実施例に係る計測用コンピュータ3においては、まず、ラインセンサ画像作成部3aにおいて、ラインセンサカメラ2から入力される画像信号を時系列的に並べることによりラインセンサ画像を作成する処理を行い(ステップP11)、続いて、判別分析二値化処理部3cにおいてラインセンサ画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し(ステップP12)、続いてノイズ除去処理部3dにおいて二値化画像に対してノイズ除去処理を行いノイズ除去画像を作成する(ステップP13)。
【0071】
ステップP13に続いては、渡り線部エッジ検出部3dにおいてノイズ除去画像に対して背景を示す白色と渡り線7を示す黒色との境界を左右のエッジ点9L,9Rとして抽出する処理を行う(ステップP14)。これによりエッジデータが得られる。
ステップP14に続いては、背景輝度平均値算出処理部3hにおいてエッジデータを基に背景輝度平均値を求める(ステップP15)。
【0072】
ここで、図8ないし図10を用いて背景輝度平均値を算出する処理の詳細を説明する。
例えば図8(a)に示すようにラインセンサ画像11に太陽光反射箇所が存在しない場合、背景輝度平均値算出処理部3hでは、図9(a)に示すように、渡り線部エッジ検出部3eにおいて検出されたエッジデータを基に、ラインセンサ画像11上のエッジ点9L,9Rに対応する位置から渡り線7の外側方向の一定範囲である背景輝度集計範囲W内の輝度値を集計してその平均値を求める。
一方、例えば図8(b)に示すようにラインセンサ画像11に太陽光反射箇所8が撮影されている場合、背景輝度平均値算出処理部3hでは、渡り線部エッジ検出部3eにおいて検出されたエッジデータを基に、図9(b)に示すようにラインセンサ画像11上のエッジ点9L,9Rに対応する位置から渡り線7外側方向の一定範囲である背景輝度集計範囲W内の輝度値を集計してその平均値を求める。
以上により背景輝度平均値Aが得られる。
【0073】
ステップP15に続いては、太陽光反射判定処理部3iにおいて背景輝度平均値Aにあらかじめ設定された設定幅αを加算した値をしきい値Sとする一方、ラインセンサ画像11についてラインごとにエッジ点9L,9Rそれぞれの左右のあらかじめ設定する範囲の輝度分布を比較する(ステップP16)。このとき、輝度分布が図10(a)に示すようにしきい値Sを超えない場合は太陽光反射無しと判定する。一方、渡り線の図10(b)に一点鎖線で囲んで示すようにしきい値Sを超える個所が存在する場合は太陽光反射有りと判定する。
【0074】
ステップP16において太陽光反射無と判定された場合は、続いて渡り線高さ計算処理部3fにおいて左右のエッジ点9L,9R間の距離と上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の高さを渡り線高さデータとして算出し(ステップP17)、渡り線偏位計算処理部3gにおいて、渡り線高さデータと上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の偏位量を計算する(ステップP18)。
一方、ステップP16において太陽光反射有りと判定された場合は、渡り線部高さ計算部3f、渡り線部編計算部3gにおける処理を行わず、欠損データとして記録装置4に記録し、測定終了後に太陽光反射無しと判定された個所の渡り線高さデータから渡り線三次元位置を補間する(ステップP19)。
【0075】
以上の処理によって、太陽光反射による誤測定を防止しつつ渡り線の三次元位置を測定することができる。
【0076】
上述した本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置によれば、ラインセンサ画像11上に太陽光反射による影響が及んだ場合であっても、高精度に渡り線7の計測を行うことができる。また、照明を用いることなく渡り線7を撮影することで、ラインセンサ画像11上に渡り線7を黒く写すことにより、ナトリウムランプおよびバンドパスフィルタなどの装置を用いずに安価かつ単純な装置構成で渡り線7の昼間測定を行うことができる。
【実施例3】
【0077】
(渡り線計測)
図11および図12を用いて本発明に係る画像処理による渡り線測定装置の第3の実施例の詳細を説明する。本実施例は上述した第1の実施例に第2の実施例において説明した背景輝度平均値算出処理部および太陽光反射判定処理部を追加したものである。その他の構成は図1および図2に示し上述した構成とおおむね同様であり、以下、類似する部材には同一の符合を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0078】
図11に示すように、本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置において、計測用コンピュータは、ラインセンサ画像作成部3a、標準偏差背景除去処理部3b、判別分析二値化処理部3c、ノイズ除去処理部3d、渡り線部エッジ検出部3e、背景輝度平均値算出処理部3h、太陽光反射判定処理部3i、渡り線部高さ計算部3f、および渡り線部偏位計算部3gを備えて構成されている。
【0079】
記録装置4には、ラインセンサ画像、背景除去画像、二値化画像、ノイズ除去画像、エッジデータ、背景輝度平均値、太陽光反射判定処理部における判定結果、渡り線高さデータ、渡り線偏位量データ等が記録される。
【0080】
図12を用いて本実施例に係る画像処理による渡り線測定装置の計測用コンピュータ4による画像処理の流れを説明する。
【0081】
図12に示すように、本実施例においては、まず、ラインセンサ画像作成部3aにおいて、ラインセンサカメラ2から入力される画像信号を時系列的に並べることによりラインセンサ画像を作成する処理を行い(ステップP21)、続いて、標準偏差背景除去処理部3bにおいてラインセンサ画像に対して上述した標準偏差背景除去処理を行い背景除去画像を作成する(ステップP22)。
【0082】
その後、判別分析二値化処理部3cにおいて背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成し(ステップP23)、続いてノイズ除去処理部3dにおいて二値化画像に対してノイズ除去処理を行いノイズ除去画像を作成する(ステップP24)。
【0083】
ステップP24に続いては、渡り線部エッジ検出部3dにおいてノイズ除去画像に対して背景を示す白色と渡り線7を示す黒色との境界を左右のエッジ点として抽出する処理を行う(ステップP25)。これによりエッジデータが得られる。
【0084】
ステップP25に続いては、背景輝度平均値算出処理部3hにおいてエッジデータを基に背景輝度平均値Aを求める(ステップP26)。
【0085】
ステップP26に続いては、太陽光反射判定処理部3iにおいて背景輝度平均値Aにあらかじめ設定された設定幅αを加算した値をしきい値Sとする一方、ラインセンサ画像に対してラインごとにエッジ点近傍の輝度分布を比較する(ステップP27)。
【0086】
ステップP27において太陽光反射無しと判定された場合は、続いて渡り線高さ計算処理部3fにおいて左右のエッジ点間の距離と上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の高さを渡り線高さデータとして算出し(ステップP28)、渡り線偏位計算処理部3gにおいて、渡り線高さデータと上述した予め設定されたパラメータとから渡り線の偏位量を計算する(ステップP29)。
一方、ステップP27において太陽光反射有りと判定された場合は、渡り線部高さ計算部3f、渡り線部編計算部3gにおける処理を行わず、欠損データとして記録装置4に記録し、測定終了後に太陽光反射無しと判定された個所の渡り線高さデータから渡り線三次元位置を補間する(ステップP30)。
【0087】
上述した処理によって、渡り線の三次元位置を測定することができる。
【0088】
なお、本実施例においては、撮影環境や撮影条件に応じて作業者が標準偏差背景除去処理、標準偏差背景除去処理の要否を選択する(例えば、設定ファイルにて処理のON/OFFを設定する)ことができるようにすれば好適である。
【0089】
また、本発明に係る画像処理による渡り線測定装置は、上述した実施例1ないし実施例3に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は画像処理による渡り線測定装置に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0091】
1 車両
2 ラインセンサカメラ
3 計測用コンピュータ
3a ラインセンサ画像作成部
3b 標準偏差背景除去処理部
3c 判別分析二値化処理部
3d ノイズ除去処理部
3e 渡り線部エッジ検出部
3f 渡り線部高さ計算部
3g 渡り線部偏位計算部
3h 背景輝度平均値算出処理部
3i 太陽光反射判定処理部
4 記録装置
5 パンタグラフ
6 トロリ線
7 渡り線
8 太陽光反射箇所
11 ラインセンサ画像
12a 第一区間
12b 第二区間
12c 第三区間
13 背景除去画像
A 背景輝度平均値
M1,M2 メモリ
S しきい値
W 背景輝度集計範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根上にその走査線方向を車両の進行方向に対して垂直且つ水平に設置されて渡り線を撮影するラインセンサカメラと、前記車両の内部に設置された画像処理手段とを備えた画像処理による渡り線測定装置において、
前記画像処理手段が、
前記ラインセンサカメラから入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成手段と、
入力された画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成する判別分析二値化処理手段と、
入力された画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成するノイズ除去処理手段と、
入力された画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出する渡り線部エッジ検出手段と、
入力された画像に対して前記渡り線と背景との切り分けを行う背景切り分け処理手段と、
前記渡り線の両側のエッジ点の位置から前記渡り線の高さを算出する渡り線部高さ計算手段と、
前記渡り線の高さから前記渡り線の偏位を算出する渡り線部偏位計算手段と
を備えることを特徴とする画像処理による渡り線測定装置。
【請求項2】
前記背景切り分け処理手段が、入力された画像を任意の区間に分割し、各前記区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段である
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項3】
前記標準偏差背景除去処理手段が、前記標準偏差背景除去処理を行った前記区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各前記細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記細分化した区間ごとに該区間に前記対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項4】
前記任意の区間の大きさが、前記対象物が存在する区間が連続しない大きさである
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項5】
前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の背景を除去した前記背景除去画像を作成し、
前記二値化処理手段が前記背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、
前記ノイズ除去処理手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、
前記渡り線部エッジ検出手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出する
ことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項6】
前記背景切り分け処理手段が、
前記渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、前記入力された画像に対してそれぞれ前記エッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、
前記背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともに前記しきい値に基づいて前記入力された画像の前記渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段と
からなることを特徴とする請求項1記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項7】
前記判別分析二値化処理手段が前記ラインセンサ画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、
前記ノイズ除去手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、
前記渡り線部エッジ検出処理手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出し、
前記背景輝度平均値算出処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記背景輝度平均値を算出し、
前記太陽光反射判定処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記太陽光反射の有無を判定する
ことを特徴とする請求項6記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項8】
前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間する
ことを特徴とする請求項6または請求項7記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項9】
前記画像処理手段が前記背景切り分け処理手段としてさらに、
前記渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、前記入力された画像に対してそれぞれ前記エッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、
前記背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともに前記しきい値に基づいて前記入力された画像の前記渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とを備え、
前記渡り線部高さ計算手段が、前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射無しと判定された場合に前記渡り線の両側のエッジ点の位置から前記渡り線の高さを算出する
ことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項10】
前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間する
ことを特徴とする請求項9記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定。
【請求項11】
前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の背景を除去した前記背景除去画像を作成し、
前記判別分析二値化処理手段が前記背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、
前記ノイズ除去手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、
前記渡り線部エッジ検出処理手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出し、
前記背景輝度平均値算出処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記背景輝度平均値を算出し、
前記太陽光反射判定処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記太陽光反射の有無を判定する
ことを特徴とする請求項9または請求項10記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項1】
車両の屋根上にその走査線方向を車両の進行方向に対して垂直且つ水平に設置されて渡り線を撮影するラインセンサカメラと、前記車両の内部に設置された画像処理手段とを備えた画像処理による渡り線測定装置において、
前記画像処理手段が、
前記ラインセンサカメラから入力される画像信号を時系列的に並べてなるラインセンサ画像を作成するラインセンサ画像作成手段と、
入力された画像に対して判別分析二値化処理を行って二値化画像を作成する判別分析二値化処理手段と、
入力された画像に対してノイズ除去処理を行ってノイズ除去画像を作成するノイズ除去処理手段と、
入力された画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出する渡り線部エッジ検出手段と、
入力された画像に対して前記渡り線と背景との切り分けを行う背景切り分け処理手段と、
前記渡り線の両側のエッジ点の位置から前記渡り線の高さを算出する渡り線部高さ計算手段と、
前記渡り線の高さから前記渡り線の偏位を算出する渡り線部偏位計算手段と
を備えることを特徴とする画像処理による渡り線測定装置。
【請求項2】
前記背景切り分け処理手段が、入力された画像を任意の区間に分割し、各前記区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記区間ごとに該区間に対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する標準偏差背景除去処理手段である
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項3】
前記標準偏差背景除去処理手段が、前記標準偏差背景除去処理を行った前記区間において背景とみなされていない領域が存在する場合に、該区間を細分化して再度各前記細分化した区間ごとに標準偏差背景除去処理を行って各前記細分化した区間ごとに該区間に前記対象物が写っているか否かを判断し、該区間に前記対象物が写っている場合であって隣接する区間に前記対象物が写っていない場合は前記隣接する区間から前記対象物までの領域を背景とみなし、また、該区間に前記対象物が写っていない場合であって隣接する区間に前記対象物が写っている場合は前記隣接する区間の対象物から該区間までの領域および該区間を背景とみなす標準偏差背景除去処理を行って背景除去画像を作成する
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項4】
前記任意の区間の大きさが、前記対象物が存在する区間が連続しない大きさである
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項5】
前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の背景を除去した前記背景除去画像を作成し、
前記二値化処理手段が前記背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、
前記ノイズ除去処理手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、
前記渡り線部エッジ検出手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出する
ことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項6】
前記背景切り分け処理手段が、
前記渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、前記入力された画像に対してそれぞれ前記エッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、
前記背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともに前記しきい値に基づいて前記入力された画像の前記渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段と
からなることを特徴とする請求項1記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項7】
前記判別分析二値化処理手段が前記ラインセンサ画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、
前記ノイズ除去手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、
前記渡り線部エッジ検出処理手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出し、
前記背景輝度平均値算出処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記背景輝度平均値を算出し、
前記太陽光反射判定処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記太陽光反射の有無を判定する
ことを特徴とする請求項6記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項8】
前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間する
ことを特徴とする請求項6または請求項7記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項9】
前記画像処理手段が前記背景切り分け処理手段としてさらに、
前記渡り線の両側のエッジ点の位置に基づき、前記入力された画像に対してそれぞれ前記エッジ点を基準とする背景側の一定範囲の輝度値を集計して背景輝度平均値を求める背景輝度平均値算出処理手段と、
前記背景輝度平均値に基づいてしきい値を設定するとともに前記しきい値に基づいて前記入力された画像の前記渡り線の両側のエッジ点を中心とする所定範囲の輝度分布を比較して太陽光反射の有無を判定する太陽光反射判定処理手段とを備え、
前記渡り線部高さ計算手段が、前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射無しと判定された場合に前記渡り線の両側のエッジ点の位置から前記渡り線の高さを算出する
ことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の画像処理による渡り線測定装置。
【請求項10】
前記太陽光反射判定処理手段において太陽光反射有りと判定された場合は測定終了後に前後のデータに基づいて測定結果を補間する
ことを特徴とする請求項9記載の画像処理によるトロリ線摩耗測定。
【請求項11】
前記標準偏差背景除去処理手段が前記ラインセンサ画像に対して標準偏差背景除去処理を行って前記ラインセンサ画像中の背景を除去した前記背景除去画像を作成し、
前記判別分析二値化処理手段が前記背景除去画像に対して判別分析二値化処理を行って前記二値化画像を作成し、
前記ノイズ除去手段が前記二値化画像に対してノイズ除去処理を行って前記ノイズ除去画像を作成し、
前記渡り線部エッジ検出処理手段が前記ノイズ除去画像に対して前記渡り線の両側のエッジ点を検出し、
前記背景輝度平均値算出処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記背景輝度平均値を算出し、
前記太陽光反射判定処理手段が前記ラインセンサ画像を用いて前記太陽光反射の有無を判定する
ことを特徴とする請求項9または請求項10記載の画像処理による渡り線測定装置。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図8】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図8】
【公開番号】特開2013−15337(P2013−15337A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146711(P2011−146711)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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