説明

画像処理装置、原稿読取装置、テストチャート及びカラーモノクロ判定方法

【課題】複数ライン型のCCDで原稿を読み取ったデータに色ズレによる偽色が発生しても、読取原稿のカラーモノクロ判定を高精度で行うことができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】データ解析部44は、入力部12と、カラーモノクロ判定部67と、を備える。入力部12は、読取原稿を走査して、カラー原稿を読取可能な複数ライン型のCCD28により読み取った画像データを入力する。カラーモノクロ判定部67は、入力された画像データに基づき、読取原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かを判定する。カラーモノクロ判定部67は、前記画像データの特定の画像領域において有彩色及び当該有彩色の補色が検出された場合は、前記画像データに係る読取原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かの判定において、検出された当該有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、原稿を読み取った画像データに基づき、読取原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かを判定することが可能な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿読取位置を原稿に対して相対的に移動させることにより原稿を走査して読み取る原稿読取装置においては、読み取った画像データに画歪が発生することがある。画歪とは、前記原稿と原稿読取位置との相対的な移動速度が局所的に変化することにより、生成する画像データに歪みが発生することをいう。この画歪は、自動原稿送り装置(オートドキュメントフィーダ、ADF)によって原稿を搬送する場合に特に起こり易い。これは、例えばADFの複数の搬送ローラの間で原稿が受け渡される瞬間、又は原稿搬送路に配置されたガイド壁等に原稿が接触した瞬間等に、原稿の搬送速度が局所的に変化し易いためである。
【0003】
また、前記原稿読取装置においては、イメージセンサとして3ラインCCDを採用し、モノクロ原稿及びカラー原稿の両方を読取可能としたものが知られている。この3ラインCCDは3原色(RGB)に対応した3つのラインを備え、白色光を原稿に当てて反射させた光を3成分に色分解して読み取ることにより、カラー原稿の読取りを実現している。
【0004】
また、上記のようにモノクロ原稿及びカラー原稿の読取りが可能な原稿読取装置においては、読み取られた原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かを自動的に判別する機能を有する構成が知られている。このカラーモノクロ判定は、例えば、読み取った画像データにおけるカラー画素(有彩色画素)の数を計数し、この計数値が所定の閾値以上であるか否かを調べることにより行うことができる。
【0005】
ところで、前記3ラインCCDにおいて、それぞれの色成分を読み取るためのラインは互いに異なった位置に配置されているので、各ラインは同時刻では原稿の異なる位置を読み取ることになる。
【0006】
この読取位置のズレは、各色成分のデータを一時メモリに蓄積しておき、3色成分のデータを合成して画像データを生成する際に、前記ライン間のギャップに対応するライン数だけ遅延させて読み出すことにより補正することができる(ラインギャップ補正)。しかしながら、上記のように読取速度が局所的に変化して画歪が発生すると、ラインギャップ補正を行った結果、当該画歪の発生箇所で3成分の色の位置が一致しない画像が形成されてしまう。なお、このような3色成分のズレを以下の説明では「色ズレ」と呼ぶ。
【0007】
従って、例えばモノクロ文書原稿において、文字の白と黒の境界を読み取っている時に読取速度が変化した場合、ラインギャップ補正後の画像データには、画歪に基づく有彩色(偽色)がその境界部分に発生してしまう。このため、読取原稿のカラーモノクロ判定において、モノクロ原稿をカラー原稿と誤判定してしまう原因となっていた。
【0008】
この点に関連し、特許文献1は、(原稿搬送速度の変動がギャップ補正に及ぼす悪影響による)ライン状の色付きが生じ易い領域においては、カラーモノクロ判定に用いる条件を変更し、その他の領域とは違う有彩色判定閾値を用いる画像処理装置を開示する。特許文献1は、この構成により、原稿色(カラー原稿/白黒原稿)の識別を的確に行うことができるとする。
【特許文献1】特許第3804548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の構成は、原稿領域ごとに判定閾値を変更することでカラーモノクロ識別の精度を一定程度向上させてはいるものの、例えば偽色による色付きの画素が多数発生した場合にはモノクロ原稿をカラー原稿と誤判定してしまうことを防ぐことは困難である。また、偽色の発生量を正確に予測することは困難であるので、特許文献1の構成では、閾値の設定によっては、カラー原稿をモノクロ原稿と誤判定してしまうことがある。従って、判定精度の一層の向上の観点から改善が求められていた。
【0010】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、偽色の影響を効果的に回避し、読取原稿のカラーモノクロ判定を一層精度良く行うことができる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、以下の構成の画像処理装置が提供される。即ちこの画像処理装置は、入力部と、カラーモノクロ判定部と、を備える。前記入力部は、読取原稿を走査して、カラー原稿を読取可能な複数ライン型のセンサにより読み取った画像データを入力する。前記カラーモノクロ判定部は、前記入力部に入力された画像データに基づき、前記読取原稿又は当該読取原稿の一部がカラーかモノクロかを判定する。また、前記カラーモノクロ判定部は、前記画像データに含まれる各画素の色相を判定する色相判定部を備えている。また前記カラーモノクロ判定部は、前記色相判定部による判定の結果、前記画像データの特定の画像領域である色ズレ見込領域において有彩色の画素及び当該有彩色の補色の画素が検出された場合は、前記カラーモノクロ判定部によるカラーかモノクロかの判定において、当該色ズレ見込領域については他の画像領域と異なる条件で前記判定を行う。
【0013】
即ち、原稿のカラーモノクロ判定を行う場合に、画像データに有彩色の画素が検出された場合であっても、画歪が発生し易い特定の画像領域(色ズレ見込領域)において当該有彩色の画素が補色の画素とともに検出されている場合は、偽色である可能性が高い。この点、上記の構成によれば、色ズレ見込領域において有彩色の画素及びその補色の画素が検出された場合に、当該色ズレ見込領域以外の画像領域とは異なる条件によってカラーモノクロ判定を行うので、偽色の発生によってモノクロ原稿をカラー原稿と誤判定してしまうことを効果的に防止することができる。また、単純に画素の有彩無彩を判定する方法では、判定条件を厳しくし過ぎると逆にカラー原稿をモノクロ原稿と誤判定してしまうこともあったが、上記の構成によれば、色ズレ見込領域以外では厳しい判定条件とする必要が無いため、当該誤判定を防止できる。
【0014】
前記の画像処理装置においては、前記色ズレ見込領域において検出された前記有彩色の画素及び補色の画素を、前記カラーモノクロ判定部によるカラーかモノクロかの判定の材料から除外することが好ましい。
【0015】
これにより、画歪による偽色が発生している可能性が高い画素を、カラーモノクロ判定に用いる情報から除外することができる。従って、モノクロ原稿をカラー原稿と誤判定してしまうことを防止することができる。
【0016】
前記の画像処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記色相判定部は、検出された有彩色の画素が、色空間を色相方向で複数の領域に分割した色相領域の何れに属するかを判定する。前記カラーモノクロ判定部は、色相領域別計数部と、色相領域別色判定部と、判断部と、を更に備える。前記色相領域別計数部は、前記各色相領域ごとに、当該色相領域に属すると判定された画素数を計数する。前記色相領域別色判定部は、前記各色相領域ごとに、計数された前記画素数を所定の閾値と比較し、閾値以上であった場合に当該色相領域の色が存在すると判定する。また、前記色相領域別計数部及び前記色相領域別色判定部は、当該画像データを複数の領域に分割した画像領域ごとに、前記画素数の計数及び前記色の存在の判定を行う。前記判断部は、当該画像データに係る読取原稿又は当該読取原稿の一部がカラーかモノクロかを判断する。また、前記判断部は、前記色ズレ見込領域に含まれる画像領域について、前記色相領域別色判定部によって色が存在すると判定された色相領域が2つ以上あった場合であって、当該各色相領域が、互いに補色の関係にある対の色相領域のみであった場合は、当該画像領域内の画素うち当該対の色相領域の何れかに属すると判定されている各画素を、カラーかモノクロかの判断の材料から除外する。
【0017】
この構成によれば、分割された画像領域のうち前記色ズレ見込領域において、ある色相領域及びその補色の色相領域の双方の色が存在すると判定された場合に、当該画像領域及び当該色相領域の画素を判断の材料から適切に除外することができる。この結果、カラーモノクロ原稿の誤判定を防止することができる。また、色相領域ごとに画素数を計数することによって、どの色相の有彩色が検出されているかの情報を取得して判定に利用することができる。従って、偽色に起因する有彩色とカラー原稿に起因する有彩色を効果的に区別して判定することができる。
【0018】
前記の画像処理装置においては、前記カラーモノクロ判定部は、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素数と当該有彩色の補色の画素数の差が所定の数以下だった場合に、検出された前記有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、画歪により現れる有彩色の画素数及び補色の画素数との間には極端に大きな差は生じないという傾向を考慮して、原稿のカラーモノクロ判定を一層適切に行うことができる。
【0020】
前記の画像処理装置においては、前記カラーモノクロ判定部は、前記色ズレ見込領域において、検出された有彩色の画素数が黒色の画素数に基づいて決定される閾値以下であった場合に、検出された当該有彩色の画素及び当該有彩色の補色の画素を判定の材料から除外することが好ましい。
【0021】
即ち、前記画歪による偽色(有彩色及び補色)がモノクロ原稿の黒色部分の境界に発生する場合、黒部分の一側に隣接する有彩色の画素数は、黒色の画素数以下となる可能性が高い。このため、上記の構成のように有彩色とともに黒色の画素をカウントし、その有彩色の画素数と黒色の画素数に基づいて決定される閾値とを比較することにより、原稿のカラーモノクロ判定を一層正確に行うことができる。また、単純なカウント処理で実現できるため、簡単かつ高速な処理を実現できる。
【0022】
前記の画像処理装置においては、前記カラーモノクロ判定部は、前記色ズレ見込領域において黒色の画素の一側に有彩色の画素が隣接し、他側に前記補色の画素が隣接する場合に、検出された当該有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、前記画歪による偽色としての有彩色及び補色の画素が黒色の画素を挟んで隣接する位置に検出されることを考慮して、原稿のカラーモノクロ判定を一層正確に行うことができる。
【0024】
前記の画像処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記カラーモノクロ判定部は、第1モードと、第2モードと、を切換可能である。前記第1モードでは、前記画像データに係る読取原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かの判定において、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外する。前記第2モードでは、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料に含める。
【0025】
この構成により、状況に応じてカラーモノクロ判定の方法を変更することで、判定を適切に行うことができる。
【0026】
前記の画像処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記入力部は、テストチャート原稿を走査して前記センサにより読み取ったテストチャート画像データを入力可能である。前記カラーモノクロ判定部は、前記テストチャート画像データを解析することにより、前記色ズレ見込領域を設定できる。
【0027】
この構成により、色ズレが発生し易い画像領域が読取装置の個体差等によって異なっていても、テストチャート画像データを解析することにより、色ズレ見込領域を適切に設定することができる。従って、原稿のカラーモノクロ判定を正確に行うことができる。
【0028】
前記の画像処理装置においては、前記カラーモノクロ判定部は、読取原稿の媒体の種類に応じて前記色ズレ見込領域を変更可能であることが好ましい。
【0029】
この構成により、偽色が生じ易い画像領域が原稿の媒体の種類に応じて変化した場合でも、カラーモノクロ判定を正確に行うことができる。
【0030】
本発明の他の観点によれば、読取原稿を走査して、カラー原稿を読取可能な複数ライン型のCCDセンサにより読み取る原稿読取部と、自動原稿送り装置と、前記の画像処理装置と、を備える原稿読取装置が提供される。
【0031】
この構成の原稿読取装置は、原稿読取部のCCDセンサによりモノクロ原稿を読み取った画像データに画歪による偽色が発生しても、カラー原稿と誤判定することを防止することができる。また、自動原稿送り装置によって原稿を搬送して読み取る場合は特定の画像領域に画歪による偽色が生じ易いため、本発明を適用することが特に好適である。
【0032】
前記の原稿読取装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ちこの原稿読取装置は、フラットベッド方式によっても前記カラー原稿を読取可能に構成されている。そして、前記画像処理装置が備える前記カラーモノクロ判定部は、前記原稿送り装置によって前記原稿を搬送して読み取る場合は、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を、前記原稿がカラーかモノクロかの判定の材料から除外する。また前記フラットベッド方式によって前記原稿を読み取る場合には、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を、前記原稿がカラーかモノクロかの判定の材料に含める。
【0033】
即ち、フラットベッド方式によって原稿を読み取る場合は、自動原稿送り装置によって原稿を搬送して読み取る場合に比べて色ズレが発生しにくい。そのため、フラットベッド方式によって原稿を読み取るときにはカラーモノクロの誤判定防止の処理を行わないようにすることで効率的な運用が可能である。
【0034】
前記の原稿読取装置においては、フラットベッド方式によっても前記カラー原稿を読取可能に構成され、前記画像処理装置は、前記自動原稿送り装置によって原稿を搬送して読取を行う場合と、前記フラットベッド方式によって原稿の読取を行う場合と、で異なる前記色ズレ見込領域を記憶して切換可能であることが好ましい。
【0035】
即ち、自動原稿送り装置によって原稿を搬送して読み取る場合と、フラットベッド方式によって原稿を読み取る場合とでは画歪が発生し易い領域が異なるので、これを切換可能とすることにより、原稿を何れの方法で読み取った場合でも適切に対応することができる。
【0036】
本発明の別の観点によれば、余白を除く副走査方向の全域に、薄い色と濃い色の境界を有することを特徴とする、原稿読取装置に読み取らせるためのテストチャートが提供される。
【0037】
このテストチャートを原稿読取装置に読み取らせることにより、色ズレが発生し易い領域において確実に色ズレを発生させ、当該領域を特定させることができる。
【0038】
また本発明の更に別の観点によれば、以下のカラーモノクロ判定方法が提供される。即ち、このカラーモノクロ判定方法は、原稿を、カラー読取可能な複数ライン型のセンサによって読み取ることにより取得した画像データに基づき、当該原稿又は当該原稿の一部がカラーかモノクロかを判定する方法である。そして、当該画像データの特定の画像領域である色ズレ見込領域において、黒色の画素の両側で反対色相の有彩色の画素が発生していることを検出した場合に、当該色ズレ見込領域については他の画像領域と異なる条件で前記判定を行う。
【0039】
この方法によれば、画歪による色ズレを確実に検知し、原稿のカラーモノクロ判定における誤判定を防止することができる。
【0040】
前記のカラーモノクロ判定方法においては、前記判定の材料から当該有彩色の画素を除外することが好ましい。
【0041】
この方法によれば、画歪による偽色が発生している可能性が高い画素の情報をカラーモノクロ判定の材料から除外できるので、前記判定の精度が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るイメージスキャナ装置の全体的な構成を示す正面断面図である。
【0043】
図1に示すように、原稿読取装置としてのイメージスキャナ装置101は、オートドキュメントフィーダ部及びフラットベッド部からなる原稿読取部115を備えている。
【0044】
以下、具体的に説明する。即ち、このイメージスキャナ装置101は、読取原稿を載置するプラテンガラス102が配設された原稿台103と、この読取原稿を前記プラテンガラス上に押圧した状態で保持するための原稿台カバー104と、を備えている。また、イメージスキャナ装置101には、原稿の読取開始等を指示するための図略の操作パネルが備えられている。
【0045】
前記原稿台カバー104には、オートドキュメントフィーダ(自動原稿送り装置)107が配設されている。このオートドキュメントフィーダ107は、原稿台カバー104の上部に設けられた原稿トレイ111と、この原稿トレイ111の下方に設けられた排紙トレイ112と、を備える。
【0046】
図1に示すように、前記原稿台カバー104の内部には、原稿トレイ111と排紙トレイ112とを繋ぐ湾曲状の原稿搬送経路15が構成されている。この原稿搬送経路15には、ピックアップローラ51と、分離ローラ52と、分離パッド53と、搬送ローラ55と、排紙ローラ58と、が配置されている。
【0047】
ピックアップローラ51は原稿トレイ111上の読取原稿を繰り込み、分離ローラ52及び分離パッド53は、繰り込まれた原稿を1枚ずつ分離するように構成されている。搬送ローラ55は、分離された原稿を原稿読取位置15Pに向けて搬送し、排紙ローラ58は、読取後の原稿を排紙トレイ112へ排出するように構成されている。
【0048】
上記の構成で、原稿トレイ111に重ねてセットされた読取原稿は、1枚ずつ分離されて湾曲状の前記原稿搬送経路15に沿って搬送され、原稿読取位置15Pを通過して後述のスキャナユニット21によって読み取られた後、経路ガイド31によって斜め上に経路を変え、排紙トレイ112へ排出される。
【0049】
図1に示すように、前記原稿台103の内部にはスキャナユニット21が備えられる。このスキャナユニット21は、原稿台103の内部で移動可能なキャリッジを備えている。
【0050】
このキャリッジ30は、光源としての蛍光ランプ22と、複数の反射ミラー23と、集光レンズ27と、電荷結合素子(CCD)28と、を備える。蛍光ランプ22は読取原稿に対して光を照射し、読取原稿からの反射光は、複数の反射ミラー23で反射した後、集光レンズ27を通過して収束してCCD28表面に結像する。前記CCD28は、入射された収束光を電気信号に変換して出力する。
【0051】
本実施形態において前記CCD28は3ライン式のカラーCCDとされている。このCCD28は、主走査方向(原稿の幅方向)に細長く延びる一次元ラインセンサが赤、緑、青(RGB)の各色について設けられるとともに、各ラインセンサに対応して異なるカラーフィルタを備えた構成となっている。
【0052】
前記原稿台103の内部には、駆動プーリ47及び従動プーリ48が回転自在に支持される。そして、駆動プーリ47及び従動プーリ48の間に無端状の駆動ベルト49が張架され、この駆動ベルト49の適宜箇所に前記キャリッジ30が固定されている。この構成で、前記駆動プーリ47を図略の電動モータで正逆駆動することにより、キャリッジ30を副走査方向に沿って水平に走行させることができる。
【0053】
この構成で、前記原稿読取位置15Pに対応する位置に前記キャリッジ30を予め移動させた状態で、オートドキュメントフィーダ107を駆動する。すると、原稿搬送経路15を搬送される読取原稿が原稿読取位置15Pにおいて走査され、蛍光ランプ22から照射されて読取原稿で反射した反射光はキャリッジ30内へ導入され、反射ミラー23により集光レンズ27を通してCCD28へ導かれて結像する。この結果、CCD28は読取内容に応じた電気信号を出力することができる。
【0054】
また、フラットベッドスキャナとして使用する場合は、キャリッジ30をプラテンガラス102に沿って一定の速度で移動させながら、当該プラテンガラス102上に載置された読取原稿を走査する。原稿からの反射光は、上記と同様にキャリッジ30内のCCD28へ導かれて結像する。
【0055】
図2はイメージスキャナ装置101のブロック図である。図2に示すように、イメージスキャナ装置101は前記スキャナユニット21のほか、CPU41と、ROM42と、画像処理部43と、イメージメモリ66と、データ解析部(画像処理装置)44と、符号変換部69と、出力制御部70と、を備えている。
【0056】
CPU41は、イメージスキャナ装置101に備えられるスキャナユニット21、データ解析部44、出力制御部70等を制御するための制御部として設けられている。この制御のためのプログラム及びデータ等は、記憶部としてのROM42に格納されている。
【0057】
前記スキャナユニット21はアナログフロントエンド(AFE)63を備えており、このAFE63はCCD28に接続されている。原稿読取時において、CCD28が備えるRGB各色の前記ラインセンサは、原稿内容を主走査方向に走査して1ライン分を読み取り、各ラインセンサの信号は前記AFE63によってアナログ信号からデジタル信号に変換される。この主走査により、1ライン分の画素のデータがRGB各色の階調値としてAFE63から出力される。以上の処理を、原稿又はキャリッジ30を副走査方向に微小距離ずつ送りながら反復することで、原稿全体の画像データをデジタル信号として得ることができる。
【0058】
スキャナユニット21はデータ補正部65を備えており、前記AFE63が出力する画像データのデジタル信号は、このデータ補正部65に入力される。このデータ補正部65は、主走査ごとに1ラインずつ入力される画素データに対しシェーディング補正を行って、スキャナユニット21の光学系に起因する読取ムラの補正を行う。またデータ補正部65は、前記画素データに対し、CCD28におけるRGB各色のラインセンサの配置間隔(ラインギャップ)を原因とする読取位置のズレを矯正する補正を行う。
【0059】
前記イメージメモリ66は、スキャナユニット21で読み取った画像を蓄積するためのものである。スキャナユニット21で読み取られた画像データは、画像処理部43において公知の画像処理(フィルタ処理等)が更に行われた後、イメージメモリ66に入力されて蓄積される。
【0060】
前記データ解析部44は、入力部12と、画像変換部11と、カラーモノクロ判定部67と、を備えている。入力部12はスキャナユニット21からのデジタル画像データを受け取る。画像変換部11は、前記デジタル画像データに対して、公知の色空間変換処理等を行う。カラーモノクロ判定部67は、スキャナユニット21で読み取った画像に係る原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かを識別する。なお、カラーモノクロ判定部67の動作の詳細については後述する。
【0061】
符号変換部69は、イメージメモリ66に保存された画像データに対し、例えばJPEG等の公知の圧縮処理を行って符号化する。
【0062】
出力制御部70は、符号化された画像データを、イメージスキャナ装置101と接続される上位装置としてのパーソナルコンピュータ(図略)に送信する。送信方法は任意であるが、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)を用いる方法、及びユニバーサルシリアルバス(USB)を用いる方法等が考えられる。
【0063】
次に図3から図6を参照して、画歪による偽色の発生について簡単に説明する。図3から図6は、モノクロ読取原稿において副走査方向に白色、黒色、白色と切り換わる部分を3ラインCCDによって走査したRGB信号の様子を概念的に示した説明図である。なお、このRGB信号は、前記データ補正部65によってラインギャップ補正を行った後の信号である。
【0064】
図3は画歪が発生せず、RGBの3成分が色ズレを起こさずに一致しているときの様子を示している。即ち、図3の場合では、読取原稿の黒色部分は黒色画素([R,G,B]=[0,0,0])として読み取られ、白色部分は白色画素([R,G,B]=[255,255,255])として読み取られる。(なお説明の都合上このように述べたが、実際の画像データのRGB値はこのように黒色と白色で最小値及び最大値とはならないこともある。)
【0065】
一方、図4から図6は、読取原稿を走査する際に画歪が発生し、RGBの3成分のうち何れかにズレが発生する場合を示している。
【0066】
図4はR成分にズレが発生したときの様子を示している。図4に示すように、R成分が他の成分(G及びB)に対してズレると、画像データに偽色が発生する。具体的には、読取原稿がモノクロ原稿であった場合、黒色画素の一側に隣接して赤色画素([R,G,B]=[255,0,0])が、他側に隣接して赤色の補色であるシアン色の画素([R,G,B]=[0,255,255])が現れる。このように、読取原稿における黒色と白色との境界に有彩色(偽色)が発生することになる。同様に、G成分がズレた場合は緑色とその補色であるマゼンタ色が現れ(図5)、B成分がズレた場合は青色とその補色である黄色が現れる(図6)。
【0067】
このように、モノクロ原稿であっても画像データの画歪によって有彩色(偽色)が現れる場合があり、この偽色の画素は、本来モノクロ原稿と判定すべきところをカラー原稿であると誤って判定してしまう原因となる。
【0068】
次に、データ解析部44による読取原稿のカラーモノクロ判定について説明する。図2に示すように、前記データ解析部44が備えるカラーモノクロ判定部67は、色領域判定部(色相判定部)71と、色領域別計数部(色相領域別計数部)72と、色相領域別色判定部73と、判断部74と、を備えている。
【0069】
まず、スキャナユニット21によって読み取られた画像データ(RGB色座標系によって記述されている)が画像処理部43の入力部12に入力されると、画像変換部11において前記データをYCbCr色座標系に変換する処理が行われる。なお、以下の説明では、YCbCr色空間における色相に関する2つのパラメータで規定される2次元平面を「色相平面」と称する。この2つのパラメータCr,Cbはそれぞれ赤と青の色差成分であり、−128から127の間の値をとり、0が完全に無彩の色差を表す。
【0070】
この色相平面の概念図を図7に示す。本実施形態では、図7に示すように色相平面を複数の色領域に分割し、1つの無彩領域(K)と6つの色相領域(青B、マゼンタM、赤R、黄Y、緑G、シアンC)が設定されている。6つの前記色相領域(有彩領域)は、有彩色の色空間を色相方向で6つに分割するように定めている。この色相領域は、例えば青Bと黄Yというように、互いに補色の関係となるペアをそれぞれが有するように定められる。
【0071】
前記無彩領域Kは、例えば原点(Cb=0,Cr=0)からの距離が10の範囲内である領域、などと定めてある。この場合、無彩領域は図7の領域Kのように円形となる。もっとも、この無彩領域はどの程度の色をモノクロと判定するかを規定する領域であるので、CCD28の特性等を考慮して適切な範囲を設定することが好ましい。また、ユーザの好みに応じて無彩領域の範囲を変更可能としても良い。
【0072】
カラーモノクロ判定部67は、画像変換部11でYCbCr色座標に変換された読取原稿データを、複数の画素からなる所定のブロック(画像領域)に分割して解析する。具体的には、図8に示すように、画像データを縦横のブロックに格子状に分割する。より具体的に数値を挙げて説明すると、例えば1つのブロックサイズは50×70画素などとする。前記のブロックサイズは、原稿サイズ及び読取解像度等の諸条件によって適宜最適な値が選択される。カラーモノクロ判定部67は、画像全体の解析結果及びそれぞれの前記ブロックの解析結果を総合的に判断することで、カラー原稿かモノクロ原稿かを判定する。なお、以下の説明において、分割された各ブロックを特定するために、主走査方向に並ぶブロックの列を原稿搬送方向先頭側から数えて第1ブロック列、第2ブロック列、・・・と称することがある。また、例えば第nブロック列における各ブロックを、左側から数えて第n−1ブロック、第n−2ブロック、・・・と称することがある。
【0073】
まず、前記カラーモノクロ判定部67が備える色領域判定部71は、あるブロックに含まれる各画素のCbCr値が図7の色相平面の各色領域のうちどの色領域内にあるかを判定する。この色領域判定部71は、画素の色が有彩色であった場合、6つの前記色相領域の何れに属するかを判定することができる。続いて、色領域別計数部72は、それぞれの色領域内に属すると判定された画素数を計数する。
【0074】
なお、6つの色相領域(有彩領域)の何れかに属すると前記色領域判定部71によって判定された画素の数は、別途集計される。これにより、カラーモノクロ判定部67は、画像全体における有彩色の画素数を計算して取得することができる。
【0075】
1つのブロックの解析が終了するごとに、色相領域別色判定部73により、当該ブロックについて色領域別計数部72が行った各色領域ごとの計数結果が調べられる。そして色相領域別色判定部73は、何れかの色相領域において前記計数値が所定の閾値を超えていた場合、有彩色が存在すると判定し、当該ブロックの位置、色が存在すると判定された色領域(色相)及び当該色領域における画素の計数値に関する情報を図略のメモリに記憶する。これにより、当該メモリには、例えば第30−22ブロックにはBとYの色相領域に有彩色が存在し、Bの色相領域の画素の計数値は80個であり、Yの色相領域の画素の計数値は70個である、という情報が記憶される。
【0076】
すべてのブロックについて前記の判定が終了すると、判断部74は、一連の処理結果に応じて、当該原稿がカラー原稿であるかモノクロ原稿であるかを判定する。
【0077】
この判定の方法は、原則的には、画像全体における有彩色の画素数が所定の閾値(第1閾値)以上であればカラー原稿とし、閾値を下回ればモノクロ原稿とすることにより行う。ただし前述したように、画歪による色ズレが発生した場合は画像データに偽色が現れるため、上記の原則的な判定だけでは、本来モノクロ原稿と判定すべきところをカラー原稿と判定してしまう恐れがある。以下、この誤判定を防止する方法について説明する。
【0078】
即ち、前記の画歪は主に、原稿読取時における読取位置の相対速度の瞬間的な変化、原稿の位置又は経路の変化による読取面の振動等によって発生するが、これらはイメージスキャナ装置101の機構的な要因によるものである。そのため、同一の読取条件では画歪の発生箇所は限定的であり、原稿の先端又は後端から一定の位置にだけ発生することが殆どである。このように色ズレが発生し易い領域を、以下色ズレ見込領域と称する。この色ズレ見込領域内では、画像データの他の領域と異なる条件でカラーモノクロ判定を行うことにより、より正確な判定を行うことができる。
【0079】
ところで、画歪は上記のような原因により発生するので、色ズレは主走査方向に対してほぼ平行な略直線上に発生し易い。従って、前記色ズレ見込領域は主走査方向に細長い形状とすることが好適である。本実施形態では、前記ブロックが主走査方向に用紙の一端から他端まで並んだブロック列(図8に示す第1ブロック列、第2ブロック列、・・・)のうち、色ズレが発生し易いブロック列を色ズレ見込領域として特定している(色ズレ見込領域の特定方法については後述する)。例えば、第30ブロック列を色ズレ見込領域として特定する。なお、この色ズレ見込領域には複数のブロック列を指定することができる。
【0080】
数値を挙げてより具体的に説明する。1つのブロックサイズが前記のように50×70画素であるとする。例えばA4サイズの原稿を600dpiで読み込んだときの画像データのサイズは4960×7016画素である。この場合、一つの色ズレ見込領域のサイズ(即ち1つのブロック列のサイズ)は、4960×70画素となる。このように、色ズレ見込領域は主走査方向に細長い形状となる。
【0081】
このような色ズレ見込領域は、例えば原稿搬送方向先端側の所定のブロック列と、後端側の所定のブロック列などが指定される。即ち、原稿の先端側は経路ガイド31に当たって経路が変化するために特に画歪が発生し易く、後端側は搬送ローラ55から抜ける際に瞬間的に搬送速度が変化するため特に画歪が発生し易い。従って、これらの領域に相当するブロック列が前記色ズレ見込領域として指定されることが多い。
【0082】
次に、図9及び図10を参照してカラーモノクロ判定処理について説明する。図9及び図10は、カラーモノクロ判定部67によって実行されるカラーモノクロ判定処理のフローチャートである。
【0083】
まず、画像を図8のように分割したブロックごとに、各画素が無彩領域と6つの色相領域(有彩領域)の何れに属するかを判定し、各色領域ごとに計数する(図9のS101)。また、6つの色相領域(有彩領域)の何れかに分類された画素については別途計数し、画像全体における有彩色の画素数を計算により取得しておく。
【0084】
次に、前記ブロックごとに、それぞれの色相領域の計数値を所定の閾値と比較し、有彩色が存在するか否かを判定する(S102)。有彩色が存在すると判定されたブロック及び色相領域の情報は、メモリに適宜記憶される。
【0085】
次に、読取原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かの仮判定が実行される(S103)。この仮判定は、上記のカラーモノクロ判定の原則に従い、画像全体における有彩色の画素数の総計が所定の閾値(第1閾値)以上であるか否かにより行う。従って、この仮判定の材料(根拠)の少なくとも一部には、前記色ズレ見込領域における有彩色の画素及び補色の画素が含まれている可能性がある。
【0086】
このS103の判断の結果、有彩色の画素数が前記第1閾値を下回る場合は、読取原稿はモノクロ原稿であると仮判定される(S104)。一方、有彩色の画素数が第1閾値を上回る場合は、読取原稿はカラー原稿と仮判定される(S105)。
【0087】
なお、この第1閾値はS102の処理における閾値との関係で適切に定められており、S102の処理でどれか1つのブロックでも有彩と判定された場合には、S103の判断で必ずカラー原稿と仮判定されるようになっている。
【0088】
次に、図10の本判定のフロー(即ち、偽色による誤判定を防止するための処理)が実行される。この本判定のフローでは、最初に前記仮判断の結果が調べられる(S106)。カラー原稿でない(モノクロ原稿である)と仮判定されていた場合は、そのままモノクロ原稿であると本判定し(S111)、処理を終了する。
【0089】
カラー原稿であると仮判定されていた場合は、S102の処理で有彩色が存在すると判定されたブロック(以下、有彩ブロックと称する)が、特定の色ズレ見込領域に含まれるものであるか否を検査する(S107)。そして、色ズレ見込領域に含まれるブロック以外のブロックにおいても有彩色が存在すると判定されている場合は、当該ブロックの有彩色画素は偽色に起因するものではないと考えられるため、カラー原稿であると本判定し(S112)、処理を終了する。
【0090】
一方、画歪が発生し易いブロックである色ズレ見込領域内のブロックにおいてのみ有彩色が存在すると判定されている場合は、モノクロ原稿に偽色が発生している可能性が高い。そこで、S107の判断において前記有彩ブロックがすべて色ズレ見込領域内のブロックであると判定された場合は、更に以下の処理によって詳しく判定を行う。
【0091】
先ず、前記有彩ブロックにおいて色が存在すると判定されている色相領域が、互いに補色の対をなしているか否かを調べる(S108)。即ち、有彩ブロックにおいて色が存在すると判定されている色相領域について、それと補色の関係にある色相領域においても当該ブロックにおいて色が存在すると判定されているかが調べられる。
【0092】
この判断は、色ズレによって原稿の黒部分に偽色が発生する場合は、前述のように、黒部分の両端のエッジに有彩色の画素及びその補色の画素の双方が検出される傾向があることに基づくものである(例えば図4及び図13を参照)。S108の判断において、互いに補色である双方の色相領域に色が存在すると判定され、それ以外の色相領域に色が検出されなかった場合は、モノクロ原稿に色ズレによる偽色が発生していると考えられるので、カラー原稿である旨の仮判定を覆してモノクロ原稿であると本判定し(S111)、処理を終了する。それ以外の場合はS109に進む。
【0093】
なお、S108の判断においては、互いに補色である2つの色相領域における画素の計数値が同数程度であるか否か(言い換えれば、画素の計数値の差が所定の数以下か否か)を更に考慮することもできる。即ち、色ズレによって原稿の黒部分に偽色が発生する場合、黒部分の図形の形状にもよるが、黒部分の両端のエッジに特定色及びその補色の画素が同数程度検出されることが多い。従って、補色の関係にある2つの色相領域に色が存在すると判定された場合であっても、当該2つの色相領域における画素の計数値が極端に違う場合は色ズレによる偽色とは考えにくいため、モノクロ原稿であると本判定せずにS109に進むようにすることができる。
【0094】
また、偽色は上述のように黒部分の両端のエッジに発生するが、この偽色は例えば数ドットの幅でしか現れないため、黒色の画素数よりも偽色の画素数が多い可能性は低い。そこで、ブロックごとに黒色の画素を計数しておき、S108の判断においては、互いに補色の色相領域の対が有彩と判定されている場合には、黒色の画素の計数値が一側の色相領域の画素の計数値以上であった場合にのみ、モノクロ原稿であると判定するようにすることもできる。もっとも、単純に黒色の画素の計数値と色相領域の画素の計数値を比較することに代えて、黒色の画素の計数値が、一側の色相領域の画素の計数値を所定倍(例えば2倍)した値より大きかった場合にのみ、モノクロ原稿であると判定するようにしても良い。また、前記所定倍の倍率は適宜変更可能としても良い。もちろん、例えば黒色の画素の計数値を0.5倍して、一側の色相領域の画素の計数値と比較しても同様の結果を得ることができる。
【0095】
また、モノクロ原稿の黒部分に偽色が発生する場合は、黒色の画素の原稿副走査方向一側に隣接するようにして有彩色の画素が検出され、他側に隣接するようにして当該有彩色の補色の画素が検出される。従って、S108の判断においては、補色の関係にある2つの色相の画素と黒色の画素が上記のような位置関係にあることが検出されれば、モノクロ原稿であると本判定するようにすることもできる。
【0096】
次に、有彩ブロックにおいて、色が存在すると判定された色相領域の数が所定数より多いか否かが調べられる(S109)。例えば6つの色相領域全てに色が存在すると判定されていた場合は、色ズレ見込領域内にあるブロックであるといっても全ての有彩色が偽色によるとは考えにくいので、カラー原稿であると本判定し(S112)、処理を終了する。
【0097】
有彩と判定された色相領域の数が所定以内だった場合、有彩色の画素数総計が所定の閾値(第2閾値)より多いか否かが調べられる(S110)。そして、有彩色の画素数総計が第2閾値以下である場合はモノクロ原稿であると本判定し(S111)、第2閾値を上回る場合はカラー原稿であると本判定する(S112)。その後、処理を終了する。
【0098】
即ち、色ズレによる偽色は例えば1〜数ドットの幅でしか検出されないため、有彩色の画素の総計が極端に多い場合は全部が偽色に起因するものとは考えにくく、カラー原稿の有彩色が含まれていると考えられる。従って、カラー原稿であると本判定するのである。一方、有彩色の画素の総計が一定程度の値以下であれば、全部が偽色によるものと考えられるので、モノクロ原稿であると本判定することになる。
【0099】
なお、S110の判断で用いられる第2閾値は、前述のS103の判断で用いられる第1閾値よりも大きな値とされている。即ち、S110の判断をする段階では有彩色の画素が主に前記色ズレ見込領域内のブロックで検出されていることが判っているので、偽色の発生の可能性を見込んで、カラー原稿と本判定する条件を厳しくするのである。
【0100】
以上の処理により、カラーモノクロ判定の誤りを効果的に防止することができる。このようにしてカラーモノクロ判定が適切に行われた後は、例えば符号変換部69における圧縮方法の選択等、以後の画像データの処理を適切に実行することができる。
【0101】
なお、例えば、原稿のほぼ全域がモノクロであって一部の狭い領域内に黒色の部分と当該黒色を挟んで補色の関係にある有彩色が配置された原稿を、カラー原稿として読み取らせたい場合がある。しかしこの原稿を読み取らせた場合、前記色ズレ見込領域の位置に当該有彩色が検出されたときはモノクロ原稿と判定されてしまう可能性がある。このような場合に備えて、本実施形態では、上記の偽色による誤判定を防止する機能をユーザの指示により一時的に解除し、前記仮判定の結果をそのまま本判定の結果として採用することもできるように構成されている。
【0102】
また、前述のとおり、画像データにおける画歪の発生は、オートドキュメントフィーダ107によって原稿を搬送して読み取る場合に特に起こり易い。このことを考慮して、本実施形態のようにオートドキュメントフィーダ部及びフラットベッド部を備えるイメージスキャナ装置101においては、オートドキュメントフィーダ部による読取時には前述の偽色による誤判定を防止する制御を行い、フラットベッド部による読取時には上記の誤判定防止制御を行わないようにすることもできる。この自動切換により、誤判定防止機能を効果的に発揮させることができる。
【0103】
次に、色ズレ見込領域の特定方法について説明する。前述したように、本実施形態では、色ズレが発生し易いブロック列を色ズレ見込領域として特定している。このようなブロック列の特定方法としては、図11に例示するようなテストチャート原稿130をイメージスキャナ装置101に読み取らせる方法により行う。
【0104】
前記テストチャート原稿130には、図11に示すように、細い線を所定の間隔で繰り返して配置したパターンがモノクロで印刷されている。この線は主走査方向に対して所定の角度で傾斜した直線であるが、階段状のジャギーがある線でも良い。現実的には完全な直線を斜めに印刷することは難しいので、このような階段状の線を印刷する。この線の線幅は、1画素又は数画素程度に相当する幅とすることが好ましい。
【0105】
図11のテストチャート原稿130について数値を挙げて具体的に説明する。このテストチャート原稿130は、例えば適宜のプリンタ等を使用して印刷することにより作成することができる。そのプリンタの解像度が600dpiである場合、テストチャート原稿130を印刷するための画像データは、A4用紙では横4960×縦7016画素となる。
【0106】
テストチャート原稿130では、前述のように、複数の斜線がA4縦方向(副走査方向)に繰り返して配置される。具体的には、A4の領域全体を副走査方向に160画素ごとに分割し、分割された各領域(横4960画素×縦160画素)のそれぞれにおいて対角線が描かれ、これによりチャートパターンが構成されている。
【0107】
プリンタにおけるビットマップ処理の関係上、それぞれの斜線は(線幅が1画素の場合)、主走査方向に黒画素を所定数並べて配置し、並べられた終端の画素から副走査方向に1画素移動し、移動後の位置から更に主走査方向に黒画素を所定数並べて配置し、・・・という処理の繰返しによって表現される。主走査方向に並べられる黒画素の数は、4960/160=31画素となる。即ち、31画素幅の直線が階段状に1画素ずつズレたパターンが用紙全面に繰り返されたテストチャート原稿130が印刷されることになる。このようなテストチャート原稿130には、副走査方向の全域に、黒から白、或いは、白から黒のエッジ(境界)が存在している。
【0108】
前記テストチャート原稿130を読み取り、ラインギャップ補正後の前記テストチャート画像131(図12)に基づいて色ズレ見込領域の特定を行うのであるが、この処理には以下に説明するように前記カラーモノクロ判定部67の構成の一部を流用することができる。これにより、テストチャートの解析のための特別な構成を設ける必要が無いため、安価に装置を構成できる。
【0109】
例えば、画歪が生じた結果、前記テストチャート画像131のある領域Xに、図13の拡大図に示すように有彩色の画素が現れたとする。なお、図13においては、赤色の画素をアルファベットの「R」で示し、シアン色の画素をアルファベットの「C」で示している。
【0110】
すると、カラーモノクロ判定部67において、前記テストチャート画像131を上記のブロックに分割し、それぞれのブロックに対して有彩色の有無が判定される。具体的には、色領域判定部71がそれぞれのブロックに対して、当該ブロックに含まれる各画素が無彩領域(K)と色相領域(青B、マゼンタM、赤R、黄Y、緑G、シアンC)のどちらに属するかが判定される。続いて、色領域別計数部72は、色相領域に属すると判定された画素数を計数する。
【0111】
1つのブロックの解析が終了するごとに、色相領域別色判定部73により、当該ブロックについて色領域別計数部72が行った色相領域の計数結果が調べられる。そして色相領域別色判定部73は、色相領域に属する画素が検出されていた場合は、当該ブロックの位置を図略のメモリに記憶する。即ち、当該テストチャート画像131はモノクロであることが予め分かっているので、色相領域に画素が1つでも計数されていた場合は即座に偽色であると判定できる。そのため、色相領域に属する画素の計数値と比較して有彩色が存在すると判定するための閾値は0とされる。また同様の理由から、補色の関係にある色相領域それぞれに属する画素数を計数して比較したり、黒色の画素と有彩色の画素の位置関係を検査する、といったカラーモノクロ誤判定防止のための機能は作動させる必要がない。
【0112】
もっとも、ユーザの好みにより、色相領域に属する画素の計数値を0以上の所定の閾値(この閾値はカラーモノクロ判定のときの閾値とは異なる場合がある)と比較して、前記計数値が前記閾値を超えていた場合にのみ偽色の発生と判定するように設定可能としても良い。また、前記無彩領域(K)の範囲を通常のカラーモノクロ判定の時とは異なる値として設定可能としても良い。
【0113】
カラーモノクロ判定部67は、色相領域別色判定部73によって有彩色(偽色)の画素を含むと判定されたブロックを、画歪による色ズレが発生し易いブロックであると判断し、当該ブロック(以下、色ズレ見込ブロックと称する)の位置を記憶する。例えば図12の例ように偽色が発生した画素が第30−22ブロックに含まれていた場合、当該ブロックが色ズレ見込ブロックである旨が記憶される。
【0114】
全てのブロックについて偽色の有無の判定が終了すると、カラーモノクロ判定部67は、前記色ズレ見込ブロックがどのブロック列に含まれるかを判定する。そして、前記色ズレ見込ブロックを含むブロック列が、色ズレ見込領域として記憶される。例えば前記の例では第30−22ブロックを含んでいる、第30ブロック列が色ズレ見込領域として記憶される。こうして、色ズレ見込領域の位置を自動的に設定し、この情報を前述のカラーモノクロ判定に利用することができる。
【0115】
なお、前記色ズレ見込ブロックは1つだけとは限らず、そのため色ズレ見込領域も1つとは限らない。例えば第8ブロック列、第15ブロック列、及び第21ブロック列というように、画像データの中に複数存在することもある。この場合、カラーモノクロ判定部67は、複数ある色ズレ見込領域の位置の情報を全て記憶しておく。
【0116】
なお、オートドキュメントフィーダ107によって前記テストチャート原稿130を読み取る場合であって、原稿送り速度を切換可能な場合は、高速でテストチャート原稿130を送り、前記色ズレ見込領域の自動設定を実行することが好ましい。色ズレは原稿送り速度が速いほど起こり易いので、高速でテストチャート原稿130を送ることにより確実に色ズレを発生させ、色ズレ見込領域を正確に特定することができる。
【0117】
更に、画歪による偽色が生じ易いブロックの位置は、装置的な要因にもよるが、(特にオートドキュメントフィーダ107によって原稿を搬送して読み取らせる場合は)読取原稿の腰及び厚み等にも大きく依存する。この点を考慮して、前記テストチャート原稿130は紙の厚さ及び素材等を異ならせたものが複数用意されており、イメージスキャナ装置101にそれぞれを読み取らせることにより、色ズレ見込領域の位置を紙の厚さ等に応じて複数記憶させることができる。そして、原稿読取時には媒体の種類(紙の厚さ等)をユーザに指定させ、それに応じて色ズレ見込領域の位置を切り換えることで、カラーモノクロ判定を状況に応じて正確に行わせることができる。
【0118】
また前記のように、偽色が発生し易いブロックの位置は装置的な要因によって変わるので、一般的には、オートドキュメントフィーダ107とフラットベッド部とで色ズレ見込領域の位置は異なる。この点を考慮して、前記テストチャート原稿130を、オートドキュメントフィーダ107によって原稿を搬送して読み取らせた場合と、フラットベッド部によって読み取らせた場合とで、それぞれ個別に色ズレ見込領域の位置を記憶させることができる。そして、原稿のカラーモノクロ判定を行う際に、オートドキュメントフィーダ107を用いて読み取るかフラットベッド部を用いて読み取るかに応じて、前記色ズレ見込領域を自動的に切換可能に構成されている。
【0119】
以上に示すように、本実施形態のデータ解析部44は、入力部12と、カラーモノクロ判定部67と、を備える。前記入力部12は、読取原稿を走査して、カラー原稿を読取可能な複数ライン型のCCD28により読み取った画像データを入力する。前記カラーモノクロ判定部67は、入力部12に入力された画像データに基づき、前記読取原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かを判定している。また、カラーモノクロ判定部67は、前記画像データに含まれる各画素の色相を判定する色領域判定部71を備えている。またカラーモノクロ判定部67は、色領域判定部71による判定の結果、特定の領域(色ズレ見込領域)において有彩色の画素及び当該有彩色の補色の画素が検出された場合は、カラーモノクロ判定部67によるカラーかモノクロかの判定において、当該色ズレ見込領域については他の画像領域と異なる条件で前記判定を行っている。具体的には、色ズレ見込領域内で有彩色の画素及び当該有彩色の補色の画素が検出された場合は、検出された前記有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外している(図10のS108)。
【0120】
この構成により、色ズレ見込ブロックにおいて有彩色の画素及びその補色の画素が検出された場合に、当該画素をカラーモノクロ判定に用いる情報から除外することができる。これにより、画歪による偽色によってモノクロ原稿をカラー原稿と誤判定することを防止することができる。
【0121】
また、本実施形態のデータ解析部44においては、前記カラーモノクロ判定部67は、色領域判定部71と、色領域別計数部72と、色相領域別色判定部73と、判断部74と、を備える。色領域判定部71は、検出された有彩色の画素が、色空間を色相方向で複数の領域に分割した色相領域の何れに属するかを判定する。色領域別計数部72は、各色相領域ごとに、当該色相領域に属すると判定された画素数を計数する。色相領域別色判定部73は、各色相領域ごとに、計数された画素数を所定の閾値と比較し、閾値以上であった場合に当該色相領域の色が存在すると判定する。また、色領域別計数部72及び色相領域別色判定部73は、当該画像データを複数の領域に分割した画像領域ごとに、画素数の計数及び色の存在の判定を行う。前記判断部74は、当該画像データに係る読取原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かを判断する。そして、前記判断部74は、前記色ズレ見込領域に含まれる画像領域について、前記色相領域別色判定部73によって色が存在すると判定された色相領域が2つ以上あった場合に、当該各色相領域が、互いに補色の関係にある対の色相領域のみであった場合は、当該画像領域内の画素うち当該対の色相領域の何れかに属すると判定されている各画素を、カラーかモノクロかの判断の材料から除外している(図10のS107、S108)。
【0122】
この構成により、分割されたブロックのうち前記色ズレ見込ブロックにおいて、ある色相領域及びその補色の色相領域の双方の色が存在すると判定された場合に、当該ブロック及び当該色相領域の画素を判断の材料から適切に除外することができる。この結果、カラーモノクロ原稿の誤判定を防止することができる。また、色相領域ごとに画素数を計数することによって、どの色相の有彩色が検出されているかの情報を取得して判定に利用することができる。従って、偽色に起因する有彩色とカラー原稿に起因する有彩色を効果的に区別して判定することができる。
【0123】
なお、前記カラーモノクロ判定部67は、図10のS108の判断において、前記色ズレ見込ブロックにおいて検出された有彩色の画素数と当該有彩色の補色の画素数との差が所定の数以下だった場合に、検出された前記有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外するように構成することもできる。
【0124】
この構成により、画歪により現れる有彩色の画素数と補色の画素数との間でそれほど大きな差は生じないという傾向を考慮して、原稿のカラーモノクロ判定を一層適切に行うことができる。
【0125】
また、前記カラーモノクロ判定部67は、図10のS108の判断において、前記色ズレ見込領域において、検出された有彩色の画素数が黒色の画素数に基づいて決定される閾値以下であった場合に、検出された当該有彩色の画素及び当該有彩色の補色の画素を判定の材料から除外するように構成することもできる。
【0126】
即ち、前記画歪による偽色(有彩色及び補色)がモノクロ原稿の黒色部分の境界に発生する場合、黒部分の一側に隣接する有彩色の画素数は、黒色の画素数以下となる可能性が高い。このため、上記の構成のように有彩色とともに黒色の画素をカウントし、その有彩色の画素数と黒色の画素数に基づいて決定される閾値とを比較することにより、原稿のカラーモノクロ判定を一層正確に行うことができる。また、単純なカウント処理で実現できるため、簡単かつ高速な処理を実現できる。
【0127】
また、前記カラーモノクロ判定部67は、図10のS108の判断において、前記色ズレ見込ブロックにおいて黒色の画素の一側に有彩色の画素が隣接し、他側に前記補色の画素が隣接する場合に、検出された当該有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外することもできる。
【0128】
この構成により、前記画歪による偽色としての有彩色及び補色の画素が黒色の画素を挟んで隣接する位置に検出されることを考慮して、原稿のカラーモノクロ判定を一層正確に行うことができる。
【0129】
また、本実施形態のデータ解析部44においては、前記画像データに係る読取原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かの判定において、前記色ズレ見込ブロックにおいて検出された有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外するモード(第1モード)と、当該有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料に含めるモード(第2モード)と、を切換可能に構成されている。
【0130】
この構成により、原稿の内容、読取形態等の状況に応じてカラーモノクロ判定の方法を変更することで、判定を適切に行うことができる。
【0131】
また、本実施形態のデータ解析部44においては、前記入力部12は、テストチャート原稿130を操作してCCD28により読み取ったテストチャート画像131のデータを入力可能である。また、前記カラーモノクロ判定部67は、前記テストチャート画像131のデータを解析することにより、前記色ズレ見込ブロックを自動的に設定できるように構成されている。
【0132】
この構成により、色ズレが発生し易いブロックがイメージスキャナ装置101の個体差等によって異なっていても、テストチャート画像131のデータを解析することにより、色ズレ見込領域を適切に設定することができる。従って、原稿のカラーモノクロ判定を正確に行うことができる。
【0133】
また、本実施形態のデータ解析部44においては、前記カラーモノクロ判定部67は、読取原稿の媒体の種類に応じて前記色ズレ見込ブロックを変更可能である。
【0134】
この構成により、偽色が生じ易い画像領域が原稿の媒体の種類に応じて変化した場合でも、カラーモノクロ判定を正確に行うことができる。
【0135】
また、本実施形態のイメージスキャナ装置101は、読取原稿を走査して、カラー原稿を読取可能な複数ライン型のCCD28により読み取るスキャナユニット21と、オートドキュメントフィーダ107と、前記のデータ解析部44と、を備えている。
【0136】
この構成により、原稿読取部のCCD28によりモノクロ原稿を読み取った画像データに画歪による偽色が発生しても、カラー原稿と誤判定することを防止することができる。また、オートドキュメントフィーダ107によって原稿を搬送して読み取る場合は特定のブロックに画歪による偽色が生じ易いため、本実施形態のカラーモノクロ判定部67を適用することが特に好適である。
【0137】
また、本実施形態のイメージスキャナ装置101は、フラットベッド部によっても前記カラー原稿を読取可能に構成されている。そして、カラーモノクロ判定部67は、オートドキュメントフィーダ107によって前記原稿を搬送して読み取る場合は、色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を、当該原稿がカラーかモノクロかの判定の材料から除外する。またフラットベッド部によって前記原稿を読み取る場合には、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を、当該原稿がカラーかモノクロかの判定の材料に含めるようにすることが可能である。
【0138】
即ち、フラットベッド部によって原稿を読み取る場合は、オートドキュメントフィーダ107によって原稿を搬送して読み取る場合に比べて色ズレが発生しにくい。そのため、フラットベッド部によって原稿を読み取るときにはカラーモノクロの誤判定防止の処理を行わないようにすることで効率的な運用が可能である。
【0139】
また、本実施形態のイメージスキャナ装置101においては、データ解析部44は、オートドキュメントフィーダ107によって原稿を搬送して読取を行う場合と、フラットベッド部によって原稿の読取を行う場合と、で異なる色ズレ見込領域を記憶して切換可能に構成されている。
【0140】
即ち、オートドキュメントフィーダ107によって原稿を搬送して読み取る場合と、フラットベッド部によって原稿を読み取る場合とでは画歪が発生し易い領域が異なるので、これを切換可能とすることにより、原稿を何れの方法で読み取った場合でも適切に対応することができる。
【0141】
また、本実施形態のテストチャート原稿130は、余白を除く副走査方向の全域に、薄い色と濃い色の境界を有する。
【0142】
このテストチャート原稿130を原稿読取装置に読み取らせることにより、色ズレが発生し易い領域において確実に色ズレを発生させ、当該領域を特定させることができる。
【0143】
また本実施形態のカラーモノクロ判定方法は、原稿を、カラー読取可能な複数ライン型のCCD28によって読み取ることにより取得した画像データに基づき、当該原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かを判定する方法である。そして、当該画像データの特定の画像領域である色ズレ見込領域において、黒色の画素の両側で反対色相の有彩色の画素が発生していることを検出した場合に、当該色ズレ見込領域については他の画像領域と異なる条件で前記判定を行っている。具体的には、当該有彩色の画素を前記判定の材料から除外している。
【0144】
この方法によれば、画歪による色ズレを確実に検知し、原稿のカラーモノクロ判定における誤判定を防止することができる。
【0145】
以上に本発明の好適な実施形態とその変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0146】
データ解析部44の機能は、CPU41とは別のハードウェア(例えばASIC)で実現することができるが、CPU41において適宜のソフトウェアを実行することで実現することもできる。
【0147】
また、データ解析部44をイメージスキャナ装置101内に備える構成に代えて、外部機器によって実現しても良い。例えば、出力制御部70に接続されたパーソナルコンピュータ上で適宜のソフトウェアを実行させ、前記データ解析部の機能を実現する構成に変更できる。
【0148】
上記の説明では、原稿全体のカラーモノクロの判定を行うものとして述べたが、原稿の一部の領域のカラーモノクロ判定を行う場合であっても、本発明のカラー誤判定防止の処理を適用することができる。このように原稿の一部に対してカラー誤判定防止処理を行うことにより、例えば、画像データの圧縮方法を決定する際に最適な方法を決定することができる。
【0149】
本実施形態では、図9及び図10の説明において、一旦カラー原稿と仮判定(図9のS105)した後、除外判定(図10のS107からS109の処理)を行っている。この構成に代えて、前記除外判定処理のうち全部又は一部を、個々のブロックが有彩ブロックであるか否かを判定するとき(図9のS102)に行うこともできる。この場合、S105における仮判定の精度は向上する一方、仮判定に掛かる処理時間は長くなる。前記除外判定は、上記のトレードオフの関係を考慮して、適当なタイミングで行うこととすれば良い。
【0150】
テストチャート原稿130のパターンの内容は上記のものに限定されず、副走査方向のほぼ全域(余白は除く)に、濃い色と薄い色の境界(エッジ)を有する特定のパターンによるものであればどのようなものでも良い。また、テストチャート原稿130の読込時においては偽色の発生を検知できれば十分であり、単色(モノクロ)のテストチャート原稿130を使用することが分かっている限り、必ずしも補色の関係にある画素を検知する必要は無い。従って、パターンを細い線で構成することにも限定されない。即ち、副走査方向の全域に、濃い色から薄い色への境界又は薄い色から濃い色への境界の何れかがあれば、これによって偽色の発生を確認できる。また、偽色の発生位置が確認できれば良いので、テストチャート原稿130は白黒の印刷に限定されず、無彩領域(K)内にあると判定される範囲の色で印刷されていれば良い。もっとも、有彩色で印刷されていても良いが、この場合は偽色を判定するための処理が複雑になるため、無彩色で印刷されていることが好ましい。
【0151】
テストチャート原稿130を読み取って色ズレ見込領域を設定する場合、ブロック列内に1つでも有彩のブロックが検出された場合に、当該ブロック列を色ズレ見込領域として設定しても良いし、有彩であったブロック数が所定の閾値よりも多い場合のみ当該ブロック列を色ズレ見込領域として設定しても良い。また、当該閾値は適宜変更可能としても良い。
【0152】
画像変換部11による色座標変換は、YCbCr色座標に限定されず、3次元色空間であって無彩軸を有する他の画像データ表現方法であっても良い。例えばLab、Luv、YIQ等によっても本発明を実現できる。もっとも、RGB画像データ全体を色座標変換することなく個々のRGB画素に対して色相判定を行っても良い。ただしYCbCrはJPEGフォーマットに採用されているので、前記符号変換部69によりデータをJPEG圧縮して扱う場合はYCbCr色座標に予め変換しておけば有利である。
【0153】
色領域の分割方法は図7に示す方法に限られず、例えば有彩色の色空間を色相方向で8つに分割して前記色相領域を定めることができる。
【0154】
画像データをブロックに分割する方法は上記の構成に限られず、例えば前記ブロック列のように主走査方向に細長い領域をブロックの単位とする構成に変更することができる。ただし、色相領域の判定はある程度小さい範囲で行うことが好適である一方、一般的には画歪による偽色は主走査方向のライン全体に発生する。そのため、本実施形態のように格子状のブロックに細かく分割して色相領域の判定を行うとともに、このブロックを主走査方向に並べた細長いブロック列を色ズレ見込領域とすることが、カラー誤判定防止の処理に好適である。
【0155】
また色ズレ見込領域の形状は、上記のようにブロックを主走査方向の一端から他端まで並べたものに限定されず、任意の形状でも良い。ただし、色ズレは主走査方向に細長く発生し易いという観点からは、主走査方向に細長い形状とすることが好適である。
【0156】
画像読取センサはCCDに限定されず、他の形式のセンサでも本発明を適用できる。またセンサのライン数は3ラインに限定されず、2ライン又は4ライン以上からなる画像読取センサからなる原稿読取装置であれば本発明を適用できる。
【0157】
上記のカラー誤判定防止処理は、イメージスキャナ装置101に限らず、他の原稿読取装置、例えばコピー装置、複合機等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の一実施形態に係るイメージスキャナ装置の全体的な構成を示す正面断面図。
【図2】イメージスキャナ装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】モノクロ原稿のRGB成分にズレが発生していない場合を示す説明図。
【図4】モノクロ原稿のR成分にズレが発生した場合を示す説明図。
【図5】モノクロ原稿のG成分にズレが発生した場合を示す説明図。
【図6】モノクロ原稿のB成分にズレが発生した場合を示す説明図。
【図7】色相平面上の色相領域を示す概念図
【図8】原稿データを所定ブロックに分割した様子を示す概念図。
【図9】本実施形態のカラーモノクロ判定処理の前半部を示すフローチャート。
【図10】カラーモノクロ判定処理の後半部を示すフローチャート。
【図11】テストチャート原稿の一例を示す図。
【図12】テストチャート原稿を読み取ったテストチャート画像を示す概念図。
【図13】色ズレによる偽色が発生している様子を示す、図12の領域Xの拡大図。
【符号の説明】
【0159】
12 入力部
28 CCD(CCDセンサ)
44 データ解析部(画像処理装置)
67 カラーモノクロ判定部
71 色領域判定部
72 色領域別計数部
73 色相領域別色判定部
74 判断部
101 イメージスキャナ装置(原稿読取装置)
107 オートドキュメントフィーダ
115 原稿読取部
130 テストチャート原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取原稿を走査して、カラー原稿を読取可能な複数ライン型のセンサにより読み取った画像データを入力する入力部と、
前記入力部に入力された画像データに基づき、前記読取原稿又は当該読取原稿の一部がカラーかモノクロかを判定するカラーモノクロ判定部と、
を備え、
前記カラーモノクロ判定部は、
前記画像データに含まれる各画素の色相を判定する色相判定部を備え、
前記色相判定部による判定の結果、前記画像データの特定の画像領域である色ズレ見込領域において有彩色の画素及び当該有彩色の補色の画素が検出された場合は、前記カラーモノクロ判定部によるカラーかモノクロかの判定において、当該色ズレ見込領域については他の画像領域と異なる条件で前記判定を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記カラーモノクロ判定部は、前記色ズレ見込領域において検出された前記有彩色の画素及び補色の画素を、前記カラーかモノクロかの判定の材料から除外することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記色相判定部は、検出された有彩色の画素が、色空間を色相方向で複数の領域に分割した色相領域の何れに属するかを判定し、
前記カラーモノクロ判定部は、
前記各色相領域ごとに、当該色相領域に属すると判定された画素数を計数する色相領域別計数部と、
前記各色相領域ごとに、計数された前記画素数を所定の閾値と比較し、閾値以上であった場合に当該色相領域の色が存在すると判定する色相領域別色判定部と、
当該画像データに係る読取原稿又は当該読取原稿の一部がカラーかモノクロかを判断する判断部と、
を更に備え、
前記色相領域別計数部及び前記色相領域別色判定部は、当該画像データを複数の領域に分割した画像領域ごとに、前記画素数の計数及び前記色の存在の判定を行うとともに、
前記判断部は、
前記色ズレ見込領域に含まれる画像領域について、前記色相領域別色判定部によって色が存在すると判定された色相領域が2つ以上あった場合であって、
当該各色相領域が互いに補色の関係にある対の色相領域のみであった場合は、当該画像領域内の画素うち当該対の色相領域の何れかに属すると判定されている各画素を、カラーかモノクロかの判断の材料から除外することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の画像処理装置であって、
前記カラーモノクロ判定部は、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素数と当該有彩色の補色の画素数との差が所定の数以下だった場合に、検出された前記有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載の画像処理装置であって、
前記カラーモノクロ判定部は、前記色ズレ見込領域において、検出された有彩色の画素数が黒色の画素数に基づいて決定される閾値以下であった場合に、検出された当該有彩色の画素及び当該有彩色の補色の画素を判定の材料から除外することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項2から5までの何れか一項に記載の画像処理装置であって、
前記カラーモノクロ判定部は、前記色ズレ見込領域において黒色の画素の一側に有彩色の画素が隣接し、他側に前記補色の画素が隣接する場合に、検出された当該有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項2から6までの何れか一項に記載の画像処理装置であって、
前記カラーモノクロ判定部は、
前記画像データに係る読取原稿がカラー原稿かモノクロ原稿かの判定において、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料から除外する第1モードと、
前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を判定の材料に含める第2モードと、
を切換可能であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の画像処理装置であって、
前記入力部は、テストチャート原稿を走査して前記センサにより読み取ったテストチャート画像データを入力可能であり、
前記カラーモノクロ判定部は、前記テストチャート画像データを解析することにより、前記色ズレ見込領域を自動的に設定できることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の画像処理装置であって、
前記カラーモノクロ判定部は、読取原稿の媒体の種類に応じて前記色ズレ見込領域を変更可能であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
読取原稿を走査して、カラー原稿を読取可能な複数ライン型のCCDセンサにより読み取る原稿読取部と、
自動原稿送り装置と、
請求項1から9までの何れか一項に記載の画像処理装置と、
を備えることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項11】
請求項10に記載の原稿読取装置であって、
フラットベッド方式によっても前記カラー原稿を読取可能に構成され、
前記画像処理装置が備える前記カラーモノクロ判定部は、
前記原稿送り装置によって前記原稿を搬送して読み取る場合は、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を、前記原稿がカラーかモノクロかの判定の材料から除外し、
前記フラットベッド方式によって前記原稿を読み取る場合には、前記色ズレ見込領域において検出された有彩色の画素及び補色の画素を、前記原稿がカラーかモノクロかの判定の材料に含めることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項12】
請求項10に記載の原稿読取装置であって、
フラットベッド方式によっても前記カラー原稿を読取可能に構成され、
前記画像処理装置は、前記自動原稿送り装置によって原稿を搬送して読取を行う場合と、前記フラットベッド方式によって原稿の読取を行う場合と、で異なる前記色ズレ見込領域を記憶して切換可能であることを特徴とする原稿読取装置。
【請求項13】
余白を除く副走査方向の全域に、薄い色と濃い色の境界を有することを特徴とする、原稿読取装置に読み取らせるためのテストチャート。
【請求項14】
原稿を、カラー読取可能な複数ライン型のセンサによって読み取ることにより取得した画像データに基づき、当該原稿又は当該原稿の一部がカラーかモノクロかを判定するカラーモノクロ判定方法において、
当該画像データの特定の画像領域である色ズレ見込領域において、黒色の画素の両側で反対色相の有彩色の画素が発生していることを検出した場合に、当該色ズレ見込領域については他の画像領域と異なる条件で前記判定を行うことを特徴とするカラーモノクロ判定方法。
【請求項15】
請求項14に記載のカラーモノクロ判定方法であって、
前記判定の材料から当該有彩色の画素を除外することを特徴とするカラーモノクロ判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−212815(P2009−212815A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53693(P2008−53693)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】