説明

画像処理装置、画像処理システム

【課題】カラーチャートを用いずに2つの印刷物の色調ズレを、校正することができる画像処理装置を提供すること。
【解決手段】第一の出力画像データと、第二の出力画像データの位置合わせを行うための幾何学変換パラメータを求める幾何学変換パラメータ推定手段42と、幾何学変換パラメータにより対応づけられる、第一の出力画像データと前記第二の出力画像データの画素又は画素群の画素値の差分を求めて差分画像データを生成する差分検出手段61と、前記差分画像データの画素値と変換後の画素値を対応づけた変換テーブルを参照し、前記差分画像データの画素値が変換された補正画像データを作成する補正処理手段62と、原稿画像データと前記補正画像データの対応する画素の画素値を算術処理することで前記原稿画像データと前記補正画像データを合成する画像合成手段63と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第一の画像出力手段が原稿画像データを出力した第一の出力結果の色調を、第二の画像出力手段が前記原稿画像データを出力した第二の出力結果において再現する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機やディスプレイなどの画像出力機器では、原稿の画素値に従って印刷されていることが要求される。このため、原稿の画素値と、例えば測色機が印刷物から計測した画素値を比較して、画像出力機器のカラープロファイルを更新する作業が行われることがある。カラープロファイルの更新時には、画像出力機器が、画素値が既知のカラーチャートを出力し、そのカラーチャートをスキャナなどの測色機で測色して、両者を比較し比較結果に基づき画像出力機器のカラープロファイルを更新する方法が広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような作業には大きく次の2つのパターンが考えられる。印刷機を例にして説明する。
a) 標準のカラーチャートに色調を合わせるパターン
標準として規定されたカラーチャートを画像出力機器により印刷し、カラーチャートを構成する各カラーパッチを測色機により測色して、画像出力機器等が、得られた測色値と期待される値との差が所定の範囲に収まるように画像出力機器のプリンタ・プロファイルを更新する。
b)基準の画像出力機器に色調を合わせるパターン
一例として、プルーファ(色調の校正機又は校正機と同等の出力物が得られる印刷機)の出力の色調を、画像出力機器の出力の色調に一致させるケースが挙げられる。この場合、カラーチャートをプルーファと画像出力機器とによりそれぞれ印刷し、ユーザは印刷された2つのカラーチャートの各カラーパッチを測色計により測色する。ユーザは、得られた測色値の差が所定の範囲に収まるようにプルーファのプリンタ・プロファイルを更新する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のカラープロファイルの更新方法は、基準のカラーチャートの印刷物が得られない状況下では遂行できないという問題があった。これは、上述したようにある画像出力機器の出力の色調を別の画像出力機器の色調に合わせる場合、双方が同じカラーチャートを出力する必要があるためである。しかし、現実には、基準となる画像出力機器がカラーチャートを出力できないケースや基準となる画像出力機器がカラーチャートを印刷した印刷物を、カラープロファイルを更新する側の画像出力機器が入手できないケースがある。
【0005】
このケースの一例としては、印刷業者が顧客から印刷業務を受注した際に、顧客のプリンタの出力結果に色調を合わせるように要求されるケースが挙げられる。顧客側でカラーマネージメントが適切に行われていれば、印刷業者はこの様な条件下でも顧客の要求に応えることは可能である。しかしながら、顧客がカラーマネージメントに精通していないケースも少なくない。カラーマネージメントが適切に行われている例としては、画像出力機器のキャリブレーションが定期的に行われていることや、画像データの色がICC(インターナショナル・カラー・コンソーシアム )プロファイルなど標準化された仕組みに基づいて管理されている場合が挙げられる。
【0006】
カラーチャートが利用できず、また、顧客側でカラーマネージメントが適切に行われていない状況下では、印刷業者は手作業により色合わせを行わなければならない。この作業は試行錯誤で行うため、多大な時間を要すると共に、作業者の経験と勘に依存することから熟練が必要とされる。さらに、色合わせの結果は逐次印刷して確認するため、大量の紙を浪費し、印刷業者が損失を被っている(廃棄される紙は「損紙」と呼ばれる)。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、カラーチャートを用いずに2つの印刷物の色調ズレを、校正することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第一の画像出力手段が原稿画像データを出力した第一の出力結果の色調を、第二の画像出力手段が前記原稿画像データを出力した第二の出力結果において再現する画像処理装置であって、読み取り装置が前記第一の出力結果を読み取った第一の出力画像データと前記原稿画像データの位置を合わせる第一の幾何学変換パラメータを推定し、読み取り装置が前記第二の出力結果を読み取った第二の出力画像データと前記原稿画像データの位置を合わせる第二の幾何学変換パラメータを推定する幾何学変換パラメータ推定手段と、前記第一及び第二の幾何学変換パラメータにより対応づけられる、前記第一の出力画像データと前記第二の出力画像データの画素又は画素群の画素値の差分を求めて差分画像データを生成する差分検出手段と、前記差分画像データの画素値と変換後の画素値を対応づけた変換テーブルを参照し、前記差分画像データの画素値が変換された補正画像データを作成する補正処理手段と、前記原稿画像データと前記補正画像データの対応する画素の画素値を算術処理することで前記原稿画像データと前記補正画像データを合成する画像合成手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【発明の効果】
【0009】
カラーチャートを用いずに2つの印刷物の色調ズレを、校正することができる画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施例の色調補正の特徴部を説明する図の一例である。
【図2】色調変換システムの構成図の一例である。
【図3】色調変換システムのハードウェア構成図の一例である。
【図4】コンピュータのハードウェア構成図の一例である。
【図5】色調変換システムを一台のMFPで実現した場合の、MFPのハードウェア構成図の一例である。
【図6】色調変換システム又はMFPの機能ブロック図の一例である。
【図7】色調変換システム又はMFPが色調補正する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図8】幾何学変換の一例を示す図である。
【図9】色調変換システムの構成図の一例である。
【図10】色調補正の特徴部を説明する図の一例である(実施例2)。
【図11】色調変換システム又はMFPの機能ブロック図の一例である(実施例2)。
【図12】色調変換システム又はMFPが色調補正する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図13】色調再現特性推定部がユーザプリンタの色調再現特性を推定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図14】分割数や分割幅を予め決定するケースを説明する図の一例である。
【図15】ヒストグラムによる分割数や分割幅を決定するケースを説明する図の一例である。
【図16】ユーザ画像データと原稿画像データの関係を説明する図の一例である。
【図17】色調変換システム又はMFPの機能ブロック図の一例である(実施例3)。
【図18】色調変換システム又はMFPが色調補正する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図19】重みデータを説明する図の一例である。
【図20】色差分布を説明する図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例の色調補正の特徴部を説明する図の一例である。
左図は、色調合わせの目標となる基準プリンタが原稿画像データを出力した基準画像データである(実際にはスキャナなどで読み取られた画像データ)。
右図は、基準プリンタと色調を同等にしたいユーザプリンタが原稿画像データを出力したユーザ画像データである(実際にはスキャナなどで読み取られた画像データ)。
【0013】
色調変換システムは、基準画像データとユーザ画像データの差分画像データを作成する。ここでは単純に、基準画像データの画素値からユーザ画像データの画素値を減じる。差分画像データは、基準画像データとユーザ画像データの差なので、この差がなくなるようにユーザ画像データが印刷されればよいことになる。
【0014】
そこで、色調変換システムは、差分画像データを原稿画像データに反映させる。しかしながら、単に、原稿画像データに差分画像データを加えても、ユーザプリンタが原稿画像データを出力した際に、ユーザ画像データと基準画像データとは同等にならない。これは、一般に、色調再現特性(入力された色をどのような色として出力するか)は線形ではないため、原稿画像データに差分画像データを加えるという線形な反映方法が、色調再現特性と適合しないためである。
【0015】
このため、本実施例の色調変換システムは、差分画像データを画素毎又は画素群毎に補正する。そこで、予めLUT(後述する補正パラメータ)を用意しておくことにする。
【0016】
例えば、差分画像データのある画素の画素値がcの場合、cに対応づけられた値を補正後の画素値c´とする。
【0017】
補正後の画素値c´に色調変換したと仮定すれば、基準画像データとユーザ画像データの差分に等しくなると期待できる。よって、色調変換システムは、上記の補正を差分画像データの画素毎又は画素群毎に行った補正後の差分画像データ(以下、補正画像データという)を、原稿画像データに加算する。本実施例では、この補正画像データの原稿画像データへの画素値の加算を画像データの合成という。ユーザプリンタが合成後の原稿画像データを出力したユーザ画像データは、基準画像データと同等になることが期待できる。
【0018】
図2は、色調変換システム610の構成図の一例を示す。機器や画像データを以下のように定義する。
・第一の画像出力機器:プリンタ (「基準プリンタ」と呼ぶ)
・第二の画像出力機器:プリンタ (「ユーザプリンタ」と呼ぶ)
・画像読取装置:スキャナ
また、以降で使用する用語を以下のように定義する。
・基準プリンタ:第一の画像出力機器に対応し、色調が合わせられる目標となるプリンタ
・ユーザプリンタ:第二の画像出力機器に対応し、基準プリンタ400に色調を合わせたいプリンタ
・スキャナ:画像読取装置に対応
・原稿画像データ:プリンタが印刷物を出力する際に用いる画像データ
・基準印刷物:原稿画像データを基準プリンタ400で出力した、色調合わせの目標とされる印刷物
・基準画像データ:基準印刷物を画像読取装置で読み取って得られる画像データ
・ユーザ印刷物:原稿画像データをユーザプリンタ200で出力した、基準印刷物に色調を合わせたい印刷物
・ユーザ画像データ:ユーザ印刷物を画像読取装置で読み取って得られる画像データ
本実施形態では、基準印刷物とユーザ印刷物とを用い、ユーザプリンタ200に与える原稿画像データに色調変換を行うことによって、基準印刷物の色調と同等の色調のユーザ印刷物が得られるようにする。
【0019】
色調変換を行う装置は、第二の画像出力機器でもスキャナ300でもよいし、これらとは別体のコンピュータ100でもよい。本実施形態では、コンピュータ100が原稿画像データと補正画像データを合成するものとして説明する。
【0020】
図2に示した色調変換システム610は、ネットワーク500を介して接続された、コンピュータ100、ユーザプリンタ200、及び、スキャナ300を有する。ユーザプリンタ200の代わりにオフセット印刷機やグラビア印刷機などを用いてもよく、また、スキャナ300の変わりに分光測色器やカメラを用いてもよい。基準プリンタ400は、色調変換システム610のユーザ側に存在しないことを想定しているためネットワークに接続されていないが、接続されていてもよい。色調変換システム610のユーザは、基準プリンタ400が基準画像データを出力した基準印刷物をすでに取得しているか、取得することができる。
【0021】
ネットワークは、社内LAN、広域LAN(WAN)、IP−VNP(Virtual Private Network)、インターネットVPN、又は、インターネットなどである。これらが組み合わされたネットワーク等、コンピュータ100、ユーザプリンタ200、及び、スキャナ300が通信可能であればよい。一部に電話回線を含んでいてもよく、また、有線接続か無線接続は問わない。
【0022】
なお、同じ一台のプリンタで過去と現在の色調を合わせる場合など、基準プリンタ400とユーザプリンタ200はそれぞれ異なる装置である必要はない。また、基準プリンタ400及びユーザプリンタ200は、プリンタ機能を有していれば、スキャナ機能、FAX機能及びコピー機能の1つ以上を有していてもよい。同様に、スキャナ300は、スキャナ機能を有していれば、プリンタ機能、FAX機能及びコピー機能の1つ以上を有していてもよい。複数の機能を有する装置はMFP(Multifunction Peripheral)と称されることがある。
【0023】
また、コンピュータ100は、基準印刷物をスキャナ300が読み取った基準画像データ、及び、ユーザプリンタ200が原稿画像データを出力したユーザ印刷物をスキャナ300が読み取ったユーザ画像データから差分画像データを生成し、これを補正した後、原稿画像データに合成する。原稿画像データは、ユーザプリンタ200が予め記憶しておいてもよいし、基準プリンタ400から取得してもよい。コンピュータ100、ユーザプリンタ200、及び、スキャナ300は一台のMFPに搭載することもできる。
【0024】
図3は、色調変換システム610のハードウェア構成図の一例を示す。色調変換システム610は、画像入力部601、画像出力部602、画像記憶部603、画像解析部604、パラメータ記憶部605、及び、画像処理部606を有する。
【0025】
画像入力部601は、画像出力機器により出力された画像を入力するものであり、図2ではスキャナ300が相当する。画像記憶部603は、画像入力部601が入力を受け付けた画像データを記憶するものであり、図2ではコンピュータ100が相当する。画像解析部604は、基準画像データ、ユーザ画像データ、及び、原稿画像データから補正画像データを生成し、補正画像データと原稿画像データを合成して補正済み原稿画像データを生成する。図2ではコンピュータ100が相当する。パラメータ記憶部605は、差分画像データ、補正画像データ、補正済み原稿画像データ、LUT等を記憶するもので、図2ではコンピュータ100が相当する。画像処理部606は、得られた補正済み原稿画像データを画像処理するもので、図2ではユーザプリンタ200が相当する。画像出力部602は、補正済み原稿画像データを出力するもので、図2ではユーザプリンタ200が相当する。
【0026】
図4は、コンピュータ100のハードウェア構成図の一例を示す。コンピュータ100はそれぞれバスで相互に接続されているCPU101、RAM102、ROM103、記憶媒体装着部104、通信装置105、入力装置106、描画制御部107、及び、HDD108を有する。CPU101は、OS(Operating System)やプログラムをHDD108から読み出して実行することで種々の機能を提供すると共に、補正済み原稿画像データの生成処理を行う。
【0027】
RAM102はCPU101がプログラムを実行する際に必要なデータを一時保管する作業メモリ(主記憶メモリ)になり、ROM103はBIOS(Basic Input Output System)やOSを起動するためのプログラム、静的なデータが記憶されている。
【0028】
記憶媒体装着部104には記憶媒体110が着脱可能であり、記憶媒体110に記録されたプログラムを読み込み、HDD108に記憶させる。また、記憶媒体装着部104は、HDD108に記憶されたデータを記憶媒体110に書き込むこともできる。記憶媒体110は例えば、USDメモリ、SDカード等である。
【0029】
入力装置106は、キーボードやマウス、トラックボールなどであり、コンピュータ100へのユーザの様々な操作指示を受け付ける。
【0030】
HDD108は、SSD等の不揮発メモリでもよく、OS、プログラム、画像データなどの各種のデータが記憶されている。
【0031】
通信装置105は、インターネットなどのネットワーク301に接続するためのNIC(Network Interface Card)であり、例えば、イーサネット(登録商標)カードである。
【0032】
描画制御部107は、CPU101がプログラム111を実行してグラフィックメモリに書き込んだ描画コマンドを解釈して、画面を生成しディスプレイ109に描画する。
【0033】
図5は、色調変換システム610を一台のMFP700で実現した場合の、MFP700のハードウェア構成図の一例を示す。MFP700は、コントローラ30、操作部31、ファックス制御ユニット32、プロッタ33、スキャナ34、及び、その他ハードウェアリソース35を有する。コントローラ30は、CPU11,MEM−P12,NB(ノースブリッジ)13、ASIC16,MEM−C14,HDD15(Hard Disk Drive)、及び、PCIバスを介してNB13と接続された周辺機器17を有する。
【0034】
コントローラ30において、ASIC16にはMEM−C14、HDD15、及び、NB13が接続されると共に、NB13にはCPU11とMEM−P12が接続されている。NB13はCPUチップセットの1つであり、CPU11,MEM−P12,ASIC16,及び、周辺機器を接続するためのブリッジである。
【0035】
ASIC16は、画像処理用途向けのICであり各種の画像処理を行う。ASIC16は、AGP、HDD15、及び、MEM−C14をそれぞれ接続するブリッジの役割も果たす。CPU11は、MFP700の全体制御を行うと共にMFP700に実装されている各種アプリケーションを起動して実行させる。
【0036】
MEM−P12は、MFP700のシステムが使用するシステムメモリであり、MEM−C14は、画像処理中の画像データのバッファとして用いられるローカルメモリである。
【0037】
HDD15は、大容量のストレージであり、SSD(Solid State Drive)などを用いてもよい。HDD15には、OS、各種のアプリケーション、フォントデータ等が記憶される。また、HDD15には補正済み原稿画像データの生成処理を行うプログラム23が記憶されている。
【0038】
周辺機器17は、シリアルバス、NIC、USBホスト、IEEE802.11a/b/g/n、IEEE1394、及び、メモリカードI/Fである。シリアルバスには、例えばセントロニクスケーブルが接続される。NICはネットワークを介した通信を制御する。USBホストにはUSBケーブルを介して機器が接続される。IEEE802.11a/b/g/nはこれらの規格に従った無線LAN用のインタフェースであり、無線LANによる通信を制御する。IEEE1394は、高速なシリアル通信を制御するインタフェースである。メモリカードI/Fには各種のメモリカードが装着され、データの読み書きを行う。メモリカードは、例えば、SDカード、マルチメディアカード、xDカード等である。
【0039】
操作部31は、ハード的なキーボードと液晶などの表示手段とを有する。操作部31は、ユーザからの入力操作の受け付け、ユーザに向けた各種の画面の表示をおこなう。操作部31はタッチパネルを搭載しており、表示したソフトキーからユーザ操作を受け付けることもできる。
【0040】
ファックス制御ユニット32は、NCU(Network Control Unit)を介して公衆通信網に接続し、例えばG3、G4規格のファクシミリに対応した通信手順(通信プロトコル)等に従いファクシミリの送受信を行う。ファックス制御ユニット32は、画像データにデータ圧縮や変調等の信号処理を施して送信すると共に、相手先から受信した画像データにデータの伸長やエラー訂正等を施し画像データを復元する。
【0041】
プロッタ33は、例えば、電子写真方式による白黒プロッタ又はカラープロッタであり、印刷対象データやスキャナ34が読み取った画像データに基づき、1ページ毎の画像を形成し、用紙に転写する。例えば、レーザービームを用いた電子写真プロセスを使って、感光ドラム等に形成したトナー画像を用紙に転写し、定着装置により熱と圧力により定着して出力する。また、インク液滴を塗布する形態で印刷してもよい。
【0042】
スキャナ34は、コンタクトガラスに載置された原稿を光学的に走査して、その反射光をA/D変換して公知の画像処理を施し所定の解像度のデジタルデータに変換し画像データを生成する。
【0043】
図5のMFP700では、図3の画像入力部601はスキャナ34が相当し、画像出力部602はプロッタ33が相当し、画像記憶部603はHDD15が相当し、画像解析部604はCPU11が相当し、パラメータ記憶部605はHDD15が相当し、画像処理部606はASIC16が相当する。
【0044】
図6は、本実施例の色調変換システム610又はMFP700の機能ブロック図の一例である。本実施例の色調変換システム610は、画像読み取り部41、幾何学変換パラメータ推定部42、差分検出部61、補正処理部62、及び、画像合成部63を有する。
【0045】
画像読み取り部41は原稿画像データの出力結果である基準印刷物及びユーザ印刷物を読み取り、基準画像データ及びユーザ画像データを生成する。
【0046】
幾何学変換パラメータ推定部42は原稿画像データと基準画像データ、原稿画像データとユーザ画像データのそれぞれの幾何学変換パラメータを推定する。
【0047】
差分検出部61は、基準画像データとユーザ画像データの間の差分を検出し、差分画像データを生成する。
【0048】
補正処理部62は、所定の補正パラメータを用いて差分画像データに補正処理を施し、補正画像データを生成する。補正処理部62は補正パラメータを記憶している。補正パラメータは実際にはHDD108、15に記憶されている。
【0049】
画像合成部63は、原稿画像データと補正画像データとを合成して、補正済み原稿画像データを生成する。
【0050】
〔動作手順〕
図7は、色調変換システム610又はMFP700が色調補正する手順を示すフローチャート図の一例である。
【0051】
画像読み取り部41は、基準印刷物を読み取り、基準画像データを生成する(S110)。
【0052】
ユーザプリンタ200が、原稿画像データを印刷してユーザ印刷物を出力する(S120)。
【0053】
画像読み取り部41が、ユーザ印刷物を読み取り、ユーザ画像データを生成する(S130)。基準印刷物とユーザ印刷物とを同じスキャナで読み取ってもよいし、スキャナのカラープロファイルを用いてデバイス非依存の色空間に変換できるという条件の元で、二つの印刷物を別々のスキャナで読み取ってもよい。
【0054】
次に、幾何学変換パラメータ推定部42は、基準画像データとユーザ画像データとを原稿画像データに位置合わせする(S140)。すなわち、原稿画像データを基準とし、基準画像データとユーザ画像データの幾何学変換パラメータをそれぞれ求め、幾何学変換パラメータを用いて位置合わせを行う。幾何学変換パラメータの例としては、変位量、回転角、変倍率がある。
【0055】
幾何学パラメータの推定には公知の技術を用いればよい。その例としては、マーカーを用いる方法や、マーカーを用いないパターンマッチング法や位相限定相関法などが挙げられる。
a) マーカーを用いる方法
「トンボ」と呼ばれるマーカーを原稿画像データの四隅や各辺の中央に配置したうえで出力し、基準画像データとユーザ印刷物を読み取った際に、このトンボマーカの位置のずれを用いて、変位量や回転角、変倍率を求める。
【0056】
図8(a)はトンボマーカの一例を示す図である。1枚の記録紙に画像データと4つ〜6つのトンボが形成されている。原稿画像データとユーザ画像データとで、トンボと画像データの相対的位置が同じであるとすると、同じ位置の2つのトンボの位置ずれを比較することで、幾何学変換パラメータを求めることができる。なお、例えば紙端からのトンボのおよその位置は既知なので、紙端から所定範囲にトンボの検出処理を施せばトンボの位置を検出できる。
【0057】
図8(b)はトンボマーカの位置のずれについて説明する図の一例である。Pn(nは1以上の整数)は原稿画像データのトンボマーカの特徴点の位置を、qnは基準画像データのトンボマーカの特徴点の位置を、それぞれ示す。位置ずれがなければP1とq1、P2とq2、P3とq3…の点どうしの位置が一致するはずなので、公知の手法により点どうしの対応関係を求めることで、幾何学変換パラメータが得られる。ここで、2つの画像のうち一方の画像に例えばアフィン変換を行うことで2つの点パターンをマッチングさせることが知られている。したがって、幾何学変換パラメータを求めるには、2つの点パターンの各位置が最も近似する最適なアフィンパラメータを探し出せばよい。例えば、P1〜P6にアフィン変換するためのアフィンパラメータの評価関数を定め、評価関数が最小になるときのアフィンパラメータを幾何学変換パラメータとする。
b) パターンマッチング法を用いる方法
変位量のみを推定する方法の一例としては、テンプレートマッチング法が挙げられる。テンプレートマッチング法は一方の画像をテンプレートとし、位置を少しずつずらしながら他方の画像と一致度を求め、最も一致度の高くなる位置を検出するものである。幾何学変換が変位だけに限定できない場合には、回転角を推定する方法(ハフ変換など)や変倍量を推定する方法(マルチスケール解析など)と組み合わせて利用する必要がある。
【0058】
テンプレートマッチングを応用したブロックマッチング法では、一方の画像をブロックに分割し、ブロックごとに他方の画像と最も一致度の高くなる位置を検出することにより変位量を求めることができる。ブロックマッチング法では、ブロックごとの変位量から回転角や変倍率を推定することも可能である。
c) 位相限定相関法を用いる方法
高い精度で変位量や回転角、変倍率を求める方法の例として、位相限定相関法(POC、Phase Only Correlation)や回転不変位相限定相関法(RIPOC、Rotation Invariant Phase Only Correlation)がある。位相限定相関法は、画像に対して離散フーリエ変換をかけて得られる位相画像を用い、比較対象の二枚の画像から得られる二つの位相画像の相関が最も高くなる位置を検出することにより、変位量を求める手法である。また、回転不変位相限定相関法は、上記位相画像を対数極座標変換することにより、回転角と変倍率を変換された位相画像上での変位量として検出できるようにしたものである。
【0059】
なお、原稿画像データと基準画像データ、及び、原稿画像データとユーザ画像データ、それぞれの幾何学変換パラメータが求められると、基準画像データとユーザ画像データも位置合わせされる。
【0060】
また、原稿画像データと基準画像データの幾何学変換パラメータを求め、基準画像データとユーザ画像データの幾何学変換パラメータを求めることで、原稿画像データとユーザ画像データも位置あわせされる。
【0061】
同様に、原稿画像データとユーザ画像データの幾何学変換パラメータを求め、ユーザ画像データと基準画像データの幾何学変換パラメータを求めることで、原稿画像データとユーザ画像データも位置あわせされる。すなわち、幾何学変換パラメータは2つ求めておけば、3つの画像データのうち任意の2つの画像データが位置あわせされる。
【0062】
以上により幾何学変換パラメータが求まったら、幾何学変換パラメータ推定部42は基準画像データ(又はユーザ画像データ)に幾何学変換を実行する。変換に際してサブピクセル精度の移動や何らかの回転、実数値での変倍などにより変換前後の画素が一対一で対応付かないようなケースでは、適宜画素補間手法を用いて画素値を導出すればよい。画素補間手法の例としては、バイリニア法、バイキュービック法などが挙げられる。
【0063】
なお、幾何学変換は必須ではなく、次ステップにおいて原稿画像データと基準画像データ(又はユーザ画像データ)において同じ位置の画素を取得する際に、幾何学変換パラメータを用いて座標変換を行い、同じ位置か否かを判断することによって代替してもよい。後者を換言すれば、各画像の原点を基準とする座標系では異なる座標値を保持していても、幾何学変換の結果、同じ座標値となる画素を「同じ位置の画素」と見なすことになる。
【0064】
原稿画像データを出力して得られた印刷物には画像の周囲に余白が存在するケースが存在する。この様なケースでは、幾何学変換の変位量に余白部分の高さや幅が含まれるため余白部分を参照することはないが、出力画像データにおいて余白部分を排除するように必要な領域を切り出し、各画像における原点の位置を一致させてもよい。
【0065】
図7に戻り、差分検出部61は、ユーザ印刷物を評価する(S150)。そして、ユーザ印刷物が妥当か否かを判定する(S160)。
【0066】
ユーザ印刷物の品質が十分であれば(S160のYes)、処理を終了し、そうでなければ(S160のNo)、次ステップS170に進む。
【0067】
ユーザ印刷物の品質を評価する方法の例としては、基準印刷物との色差を用いる方法がある。他の例としては、色相差を用いる方法や、各色成分の差の絶対値を用いる方法もある。なお、品質の評価は目視で行ってもよい。
a) 色差を用いる評価方法
色差とは、L*a*b*色空間やL*u*v*色空間における二つの色の距離である。本実施例は画像出力機器としてプリンタを用いていることからL*a*b*色空間を用いて説明する。
L*a*b*色空間の色差ΔE*abは以下の式で定義される。
【0068】
【数1】

ここで、(ΔL*, Δa* ,Δb*)はL*a*b*色空間における2色の色度差である。
基準印刷物とユーザ印刷物の色差を求める手順の一例を以下に示す。
(1)基準印刷物をスキャナ300により読み取り基準画像データを得る
(2)ユーザ印刷物を(1)と同じスキャナ300により読み取りユーザ画像データを得る
(3)基準画像データとユーザ画像データとをスキャナ300のカラープロファイルを用いてデバイス非依存の色空間(XYZ色空間など)に変換する
(4)デバイス非依存の色空間に変換された基準画像データとユーザ画像データとをL*a*b*色空間に変換する
(5)上式により画素ごとの色差を求める
基準印刷物とユーザ印刷物とを同じスキャナ300で読み取るとしているが、スキャナ300のカラープロファイルを用いてデバイス非依存の色空間に変換できる条件の元で、二つの印刷物を別々のスキャナ300で読み取ってもよい。
【0069】
スキャナ300を一台のみ使用する場合には、カラープロファイルを用いてデバイス非依存の色空間に変換することは必須ではない。色差の値を定量的に評価するケースでは、絶対的な値が重要であるためデバイス非依存の色空間への変換が必要であるが、色差の値を定性的に評価するケースでは相対的な傾向がつかめればよいためデバイス非依存の色空間への変換を省略してもよい。
【0070】
画素ごとの色差が求まったら、この情報を統計的に分析し、ユーザ印刷物の品質を定量的に評価することができる。分析方法の例としては、色差の平均値、最大値、値の分布、分散などが挙げられる。
【0071】
品質が十分であるか否かの判断は、
・平均色差が所定の値以内に収まっているか否か、
・最大色差が所定の値以内に収まっているか否か、
・分散が所定の値以内に収まっているか否か、
などの基準で判断することができる。なお、ユーザ印刷物の品質を評価する際には、画像データのコンテンツの輪郭部分を除くことが望ましい。これは、
・後の処理で必要な位置合わせにおいて、輪郭部分を完全に合わせることが困難であること、
・プリンタによって輪郭部分の再現性が異なること (色味やシャープなど)
などの理由から、輪郭部分で大きな色差が出現する可能性があるためである。
【0072】
輪郭部分の面積は全印刷物の面積のごく一部であるため、目視による全体的な色調の評価に与える影響は限定的である。一方、定量的な評価においては、上述の輪郭部分の大きな色差が外れ値として評価結果の信頼性を低下させる懸念があることから、輪郭部分のデータを無視する方が高い精度の評価結果が期待できる。
【0073】
輪郭部分を検出する方法の例としては、二値化を用いる方法や、エッジ検出を用いる方法が挙げられる。二値化を用いる方法の一例としては、画像データを所定の閾値で白黒に二値化し、白い領域と黒い領域とが隣接する箇所を輪郭部分として判断する方法がある。エッジ検出を用いる方法の一例としては、画像データからSobel法などを用いてエッジ画像を作成し、これを所定の閾値で二値化して閾値以上の画素を輪郭部分として判断する方法がある。
【0074】
輪郭部分を除去せずに、上記課題を緩和する方法もある。例えば、画像データを平滑化して輪郭部分を滑らかにし、輪郭部分で出現する色差を低減するというものである。平滑化には、平均化フィルタやローパスフィルタなど従来技術を用いればよい。
【0075】
b)色相差を用いる評価方法
L*a*b*色空間の色相差ΔH*abは次式で定義される。
【0076】
【数2】

ここで、ΔE*abは色差、(ΔL*, Δa* ,Δb*)は2色の色度差、ΔC*abはクロマの差ある。クロマC*abは次式で定義される。
【0077】
【数3】

基準印刷物とユーザ印刷物の色相差を求める手順は色差を求める手順と同じであるが、色差ではなく色相差を算出する。また統計的な分析方法や品質の判定方法も同様である。
【0078】
c)各色成分の差の絶対値を用いる評価方法
所定の色空間において、基準印刷物とユーザ印刷物との各色成分の差の絶対値を取り、評価を行う方法である。RGB色空間を例に取れば、R成分値の絶対値の差、G成分値の絶対値の差、B成分値の絶対値の差を用いる。
基準印刷物とユーザ印刷物の各色成分の差の絶対値を求める手順の一例を以下に示す。
【0079】
(1)基準印刷物をスキャナ300により読み取り基準画像データを得る
(2)ユーザ印刷物を(1)と同じスキャナ300により読み取りユーザ画像データを得る
(3)基準画像データとユーザ画像データとをスキャナ300のカラープロファイルを用いてデバイス非依存の色空間(XYZ色空間など)に変換する
(4)変換後の色空間において、画素ごとに各色成分値の差の絶対値を求める。
なお、色差のケースと同様に、スキャナ300のカラープロファイルを用いてデバイス非依存の色空間に変換することは必須ではなく、スキャナ300のデバイス依存の色空間で直接差の絶対値を求めてもよい。また、統計的な分析方法や品質の判定方法は色差のケースと同様である。
【0080】
次に、差分検出部61は、差分画像データを生成する(S170)。すなわち、基準画像データに対するユーザ画像データの画素値の差を画像データ全体に渡って求め、差分画像データを生成する。基準画像データとユーザ画像データとを位置合わせしてれば、同じ座標に存在する画素の画素値の差を取ればよいし、幾何学変換パラメータのみを求めてあるのであれば幾何学変換後の座標が対応する画素の画素値の差を取ればよい。なお、画素値の差は画素単位で求めてもよいし、複数の画素で構成される領域ごとに領域内の平均画素値の差を求めて代替してもよい。また、画素値の差は符号まで含めて記録する。
【0081】
次に、補正処理部62は、差分画像データを補正する(S180)。すなわち、所定の補正パラメータを用いて差分画像データに補正処理を施し、補正画像データを得る。補正パラメータを予め容易しておく方法の例としては、ユーザが任意の値を指定しておく方法と、十分な階調数を持った画像を用いて事前に決定しておく方法がある。後者の方法は、補正パラメータを動的に決定する場合と基本的に同じであるため、実施例2にて説明する。十分な階調数を持った画像を用いる理由は、推定される補正パラメータの精度を高めるためである。カラーチャートも一般に十分な階調数を持っているため、この目的に合致するので、使用してもよい。
【0082】
本実施例では、補正パラメータは、γ補正やルック・アップ・テーブルの形式で予め定められているものとする。したがって、γ補正やルック・アップ・テーブルの変換がそのまま補正処理となる。すなわち、補正パラメータは、ガンマ補正であればガンマの値(出力=入力γとした時のγと、差分画像データの画素値を対応づける)、LUTであればテーブルそのもの(差分画像データの画素値に補正後の差分画像データの値を対応づける)である。
【0083】
また、色調再現特性が線形でないことを考慮して、ユーザ画像データの画素値と差分画像データの画素値を対応づけたLUT又はγを用意しておけば、色調再現特性が非線形であっても対応できる。
【0084】
次に、画像合成部63は、原稿画像データと補正画像データとを合成する (S190)。すなわち、原稿画像データと前ステップにて得られた補正画像データとを合成して、補正済み原稿画像データを得る。補正画像データは符号付きなので、原稿画像データと補正画像データとはそのまま加算してもよいし、重みを重畳して加算してもよい。重みを重畳して加算する例は実施例3にて説明する。
【0085】
色調変換システム610は、色調変換の回数が所定の回数に達したら(S200のYes)、図7の処理を終了する。
【0086】
色調変換の回数が所定の回数に達していないため、継続する場合(S200のNo)、補正済みの原稿画像データを入力としてユーザプリンタ200から印刷し(S110)、処理を継続する。次のループで用いる原稿画像データは全て補正済みものである。
【0087】
なお、図7のフロー図では、終了条件の判定が2つ設定されているが、これら全てを設定しなければならない訳ではない。必要に応じて適宜省略してもよいが、何れか一方は少なくとも設定されることが望ましい。
【0088】
また、本実施例では、スキャナで読み取った際に使用された色空間をそのまま使用しているが、この色空間はデバイス依存の色空間であるため、スキャナのカラープロファイルを用いてデバイス非依存の色空間に変換することが望ましい。デバイス非依存の色空間の例としては、デバイス非依存のRGB色空間、XYZ色空間などが挙げられる。更に、L*a*b*色空間など均等色空間に変換すればなおよい。
【0089】
出力画像データをL*a*b*色空間に色変換した上で処理を行う際には、原稿画像データもL*a*b*色空間に色変換する必要がある。また、色調変換もL*a*b*色空間で行うことになる。但し、色調変換後には元の色空間に戻す必要がある。
【0090】
また、本実施例では、第一の画像出力機器と第二の画像出力機器としてプリンタを、画像読取部としてスキャナを用いたが、プリンタの代わりにオフセット印刷機やグラビア印刷機などを用い、スキャナの代わりに分光測色器やカメラを用いてもよい。
【0091】
また、画像出力機器と画像読取部との他の組合せ例としては、次のようなシステム構成例がある。
図9は、色調変換システム610の構成図の一例を示す。この色調変換システム610は、ネットワークを介して接続された、コンピュータ100、プロジェクタ800、及び、デジタルカメラ900を有する。この場合には、本実施例の説明を以下の通り読み替えればよい。
a)基準プリンタ → 基準ディスプレイ
b)基準印刷物 → 基準表示画面
c)ユーザプリンタ → ユーザプロジェクタ
d)ユーザ印刷物 → ユーザ表示画面
また、本実施例では画像出力装置としてプリンタを採用したため、均等色空間としてL*a*b*色空間を用いたが、画像出力装置としてディスプレイやプロジェクタを採用する場合は、均等色空間としてL*u*v*色空間を用いる。以下の実施例においても色調変換システム610の構成は図2,図5又は図9のいずれでもよい。
【0092】
以上のように、本実施例の色調変換システム610は、ユーザ画像データと基準画像データの差分画像データを生成し、それを補正して原稿画像データと合成することで、カラーチャートを用いずに2つの印刷物の色調ズレを校正することができる。
【実施例2】
【0093】
本実施例では、差分画像データを補正するための補正パラメータを動的に作成する色調変換システム610について説明する。
【0094】
図10は、本実施例の色調補正システム610の特徴部を説明する図の一例である。図10において図1と同一部の説明は省略する。
【0095】
本実施例では予めLUTやγ補正テーブルを用意しておくのでなく、補正パラメータを動的に求めるが、例えば、図10の1/P(a)が補正パラメータである。すなわち、差分画像データのある画素の画素値がcであり、ユーザ画像データの対応する画素の画素値がaである場合、次のように補正する。補正パラメータが大きいと補正量が大きくなるので、補正パラメータは補正量とみなすこともできる。
・補正後の画素値c´=c×1/P(a)
ここで画素値をxとすると、p(x)は非線形な色調変換特性(原稿画像データをユーザ画像データに変換する変換特性)を表す関数式であり、例えば、二次曲線、指数関数、逆関数等がある。P(x)の求め方については後述する。したがって、P(x)の逆数が乗じられた補正後の画素値c´は、色調変換される前の値(原稿画像データの値)に補正されたことになる。
【0096】
補正後の画素値c´に色調変換したと仮定すれば、基準画像データとユーザ画像データの差分に等しくなると期待できる。
【0097】
よって、色調変換システム610は、上記の補正を差分画像データの画素毎又は画素群毎に行った補正画像データを、原稿画像データに合成する。ユーザプリンタ200が補正済み原稿画像データを出力したユーザ画像データは、基準画像データと同等になることが期待できる。
【0098】
図11は、本実施例の色調変換システム610又はMFP700の機能ブロック図の一例である。図11において図6と同一部の説明は省略する。本実施例の色調変換システム610又はMFP700は、画素値対応付け部43、色成分値対応付け部44、色調再現特性推定部45、及び、補正パラメータ決定部64を有する。
【0099】
画素値対応付け部43は、幾何学変換パラメータを用いて、原稿画像データの画素に対応する位置の基準画像データの画素を検出し、それらの画素値を対応付けて画素値対応付けデータを作成する。同様に、幾何学変換パラメータを用いて、原稿画像データの画素に対応する位置のユーザ画像データの画素を検出し、それらの画素値を対応付けて画素値対応付けデータを作成する。
【0100】
色成分値対応付け部44は画素値対応付けデータから、原稿画像データの各色成分の値と基準画像データの各色成分の対応する値を求め、また、原稿画像データの各色成分の値とユーザ画像データの各色成分の対応する値を求め、それらの色成分の値を対応付けて色成分値対応付けデータを作成する。
【0101】
色調再現特性推定部45は、色成分値対応付けデータを用いて、色調再現特性データを推定する。
【0102】
補正パラメータ決定部64は、色調再現特性データを用いて、補正パラメータを決定する。
【0103】
図12は、色調変換システム610又はMFP700が色調補正する手順を示すフローチャート図の一例である。図12において図7と同様のステップの処理は説明を簡略する。
【0104】
画像読み取り部41は、基準印刷物を読み取り、基準画像データを生成する(S110)。
【0105】
ユーザプリンタ200が、原稿画像データを印刷してユーザ印刷物を出力する(S120)。
【0106】
画像読み取り部41が、ユーザ印刷物を読み取り、ユーザ画像データを生成する(S130)。
【0107】
次に、幾何学変換パラメータ推定部42は、基準画像データとユーザ画像データとを原稿画像データに位置合わせする(S140)。
【0108】
次に、色成分値対応付け部44は、ユーザ印刷物を評価する(S150)。そして、ユーザ印刷部が妥当か否かを判定する(S160)。
【0109】
次に、いくつかの処理を経て、色調再現特性推定部45がユーザプリンタ200の色調再現特性を推定する(S160)。
【0110】
色調再現特性の推定について、図13のフローチャート図等を用いて詳細に説明する。
図13は、色調再現特性推定部45がユーザプリンタ200の色調再現特性を推定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【0111】
まず、画素値対応付け部43は、原稿画像データとユーザ画像データとの同じ位置の画素値を対応付ける(S1621)。すなわち、原稿画像データとユーザ画像データの位置合わせが完了したら、二つの画像データにおいて対応する画素の画素値を取得し、これらを対応付けて画素値対応付けデータを作成する。なお、画像データを幾何学変換して位置合わせを行う場合には、「対応する画素」とは「同じ位置にある画素」である。一方、画像データを幾何学変換しない場合には、座標変換によって同じ座標値となる位置を「同じ位置」とし、その位置に存在する画素を「対応する画素」と見なす。
【0112】
画素値を対応付けて記録する方法の例としては、リスト形式で記録する方法や、マトリックス形式で記録する方法がある。原稿画像データとユーザ画像データが両方ともRGB画像で各色成分が256階調であるケースを想定して説明する。
【0113】
a)リスト形式で記録する方法
色成分値のリストへの記録は次の手順で行う。
【0114】
a-1)リストを3枚用意する
a-2)原稿画像データのある座標を選択する
a-3) a-2で選択された原稿画像データの画素のR成分値と、ユーザ画像データの対応する画素のR成分値とを対応づけてR成分用のリストに追加する
a-4)同様に、G成分値はG成分用のリストに、B成分値はB成分用のリストに、それぞれ追加する
a-5)これを原稿画像データの全ての座標について繰り返す
これらのリストは必要に応じて昇順や降順に並び替えてもよい。
【0115】
b) マトリクス形式で記録する方法
色成分値の対応関係のマトリクスへの投票は次の手順で行う。ここでは原稿画像データの値を縦軸に、ユーザ画像データの値を横軸に採るものとする。
【0116】
b-1)256行256列のマトリクスを3枚用意する
b-2)原稿画像データのある座標を選択する
b-3) R成分用のマトリクスにおいて、原稿画像データのa-2)で選択された画素のR成分値の行、ユーザ画像データの対応する画素のR成分値の列とが交差する場所に一票投票する
b-4)同様に、G成分値の対応関係をG成分用のマトリクスに、B成分値の対応関係をB成分用のマトリクスに、それぞれ投票する
b-5)これを原稿画像の全ての座標について繰り返す
具体的には、原稿画像データのある座標の画素の画素値がRGBの順に(128, 130, 132)で、ユーザ画像データの対応する画素の画素値が(132, 130, 126)であれば、上記3枚のマトリクスのうちR成分に対応するマトリクスを選び、その128行132列に一票を投じるという具合である。同様に、G成分に対応するマトリクスの130行130列に一票を、B成分に対応するマトリクスの132行126列に一票を、それぞれ投じる。なお、原稿画像データの値とユーザ画像データの値のどちらを縦軸に割り当て、どちらを横軸に割り当てるかは必要に応じて決定すればよい。
【0117】
リスト形式で記録する方法でも、マトリクス形式で記録する方法でも、処理を簡略化するために、原稿画像データの全ての座標について繰り返すのではなく、特定の範囲に限定したり、所定の刻み幅で座標を移動したりしてもよい。
【0118】
次に、色成分値対応付け部44は、原稿画像データとユーザ画像データで対応する色成分の値を対応付ける (S1622)。すなわち、画素値対応付けデータを用いて、原稿画像データのある色成分値とユーザ画像データのどの色成分値とが対応付くかを求め、色成分値対応付けデータを作成する。
【0119】
原稿画像データとユーザ画像データが両方ともRGB画像で各色成分が256階調であるケースを例に説明する。
a) 画素値対応付けデータがリスト形式である場合
画素値対応付けデータがリストとして記録されている場合には、次の手順で行う。
【0120】
a-1)原稿画像データのある色成分のある値を選択する
a-2)a-1)で選択された色成分に対応するリストを取得する
a-3) a-2)で得られたリストから、a-1)で選択された値に対応するレコードを全て取得する
a-4) a-3)で取得された全レコードのユーザ画像データの色成分値を合成する
a-5) a-1)で選択された原稿画像データの色成分値と、a-4)で合成された値とを対応付けて色成分値対応付けデータとして記録する。
【0121】
a-6)これを各色成分の各値について繰り返す
ステップa-3)において取得されたレコードが一つのみであれば、色成分値対応付け部44はa-4)において、取得されたレコードの値をそのまま利用する。a-3)において取得されたレコードが複数あれば、ユーザ画像データ側の値を合成して一つの値にした上で利用する。複数の値を合成する方法の例としては、平均値を採用する方法、最頻値を採用する方法、中央値を採用する方法が挙げられる。
b) 画素値対応付けデータがマトリクス形式である場合
画素値対応付けデータがマトリクスとして記録されている場合には、次の手順で行う。
【0122】
b-1)原稿画像データのある色成分のある値を選択する
b-2) b-1)で選択された色成分に対応するマトリクスを取得する
b-3) b-2)で得られたマトリクスから、b-1で選択された値に対応する行を抽出する
b-4) b-3)で抽出された行において投票されている列の値を合成する
b-5) 選択された原稿画像データの色成分値と、b-4)で合成された値とを対応付けて色成分値対応付けデータとして記録する
b-6)これを各色成分の各値について繰り返す
b-4)において抽出された行で投票が一つの列のみに存在する場合には、その列番号を合成された値として採用する。b-4)において投票が複数の列に存在する場合には、合成して一つの値にした上で利用する。複数の値を合成する方法の例は、a)と同様である。但し、投票数は列番号の出現回数として使用する。
【0123】
仮に原稿画像データにおいて使用されていない色成分値が存在した場合には、その旨が判別できるように記録しておくことが望ましい。(ここで記録した情報は次ステップで利用することができる)
次に、色調再現特性推定部45は色調変換特性を推定する (S1623)。色成分値対応付けデータのデータ系列を用いて色調変換特性を推定する。色調変換特性は色成分値対応付けデータをそのまま利用してもよいし、色成分値対応付けデータを加工して利用してもよい。データを加工する目的は、極端な値の変動の抑制や、特性曲線の安定性向上である。
【0124】
色成分値対応付けデータを加工して利用する方法の例としては、次のようなものが挙げられる。
a) 移動平均をかける
データ系列において注目するデータとその前後のデータとを加重平均する方法である。前後のデータの参照範囲はデータ系列の値に対する滑らかさの要求に応じて決定すればよい。より滑らかにするためには参照範囲を広く取る必要がある。また、加重平均に用いる重みは全てのデータに対して一定であってもよいし、注目するデータからの距離に反比例させてもよい。
【0125】
移動平均をかける前に、データ系列を昇順か降順に並び替える必要がある。また、原稿画像データにおいて使用されていない色成分値が存在すると、並べ替えた際にデータ系列の要素が欠落するが、この欠落した要素が他のデータに影響を与えないように加重平均から除外する必要がある。要素が欠落しているか否かは、データが連続しているかどうかを確認したり、前ステップで記録した使用されていない色成分値の情報を利用したりすることにより把握できる。
b) 直線や曲線で近似する
データ系列を一次関数、二次関数、スプライン関数、指数関数などを用いて近似する方法である。
c) 階調数を削減した上で直線や曲線で補間や近似する
色成分値対応付けデータのデータ系列の階調数を削減する方法としては、次のような例が考えられる。
【0126】
ア) 階調の値域を等間隔で分割し、これにより統合される各階調のデータを合成する
分割数や分割幅は予め決定しておいてもよいし、動的に決定してもよい。
【0127】
ア−1)分割数や分割幅を予め決定するケース
図14(a)は、分割数や分割幅を予め決定するケースを説明する図の一例である。図13(a)では、0〜255までの256階調を、予め与えられた分割数4で等間隔に分割した例である。0〜63、64〜127、128〜191、192〜255という4つの領域に分割することにより、それぞれ64階調が1つの階調に削減される(1つの変換特性に統合される)ことになる。なお、分割数でなく分割幅を与えても同じ効果が得られる。
【0128】
ア−2)分割数や分割幅を動的に決定するケース
等間隔に分割するケースで、分割数や分割幅を動的に決定する方法の例としては、画素数に比例させる方法がある。例えば、画素数を経験的に決められた所定の数で割った値を分割数とする、などの決定方法が考えられる。
【0129】
イ−1) 階調の値域を不等間隔で分割し、これにより統合される各階調のデータを合成する
各階調に対応する画素値対応付けデータにおける投票数を用いて、合成される階調の得票数が、所定の数となるように分割幅を適応的に決定する。
【0130】
図14(b)は、0〜255までの256階調を不等間隔で4分割した例である。0から(a-1)、aから(b-1)、bから(c-1)、cから255という四つの領域に分割されるが、それぞれ1つの階調に削減される。なお、階調a、b、cをその階調を挟むどちらの階調に統合するかは任意である。
【0131】
不等間隔で分割する際に、統合する階調数を決定する方法の例としては、各階調に属する画素数の累積頻度を等間隔で分割する方法や、各階調に属する画素数の頻度のヒストグラムを用いる方法が挙げられる。
【0132】
i)各階調に属する画素数の累積頻度を用いる方法
各階調に属する画素数の累積頻度を等間隔で区切り、区切り位置に対応する階調で分割する方法である。
【0133】
図14(c)は0〜255までの256階調を不等間隔で4分割する例である。縦軸の累積頻度の最大値を1.0としたときに、区切り位置として0.25、0.50、0.75となる階調を求めることにより、分割位置を決定する。この例では、累積頻度が0.25となる階調a、0.50となる階調b、0.75となる階調cが求まり、上述した四つの領域が決定できる。このような区切り方によれば、各区分でデータ数が同じなので各変換特性が与えられる画素数を等しくできる。
【0134】
ii)各階調に属する画素数の頻度分布を用いる方法
図15(a)は、各階調に属する画素数の頻度のヒストグラムを作成し、極小となる階調e、f、gで分割する方法である。このような区切り方によれば、変換特性が切り替わる画素数を小さくできる。
【0135】
以上のようにして、階調数を削減したら、元の階調数まで戻るように、統合された階調の間を補間したり、統合されたデータを元に直線や曲線で近似したりする。
【0136】
図15(b)は、削減された階調数を直線近似や曲線近似により元の階調数まで戻す例を示す。丸が統合されたデータ、実線の直線が直線近似の例、実線の曲線が曲線近似の例である。近似に利用する関数は、統合されたデータの傾向に合わせて選択することが望ましい。このように補間したり、直線や曲線で近似したりすることで、推定される変換特性から少ない画素数に起因する特異的な変換を除外できる。
【0137】
図12に戻り、補正パラメータ決定部64は、ユーザプリンタ200の色調再現特性から補正パラメータを求める(S164)。補正パラメータは、差分画像データ上のある値を原稿画像データに反映する際の係数と換言することもできるし、その係数を導出するための材料と表現することもできる。
【0138】
差分画像データを原稿画像データにそのまま反映してもよいが、補正処理をかけたほうがよい。この理由について説明する。差分画像データは基準画像データとユーザ画像データとの差分であり、これらの画像データは原稿画像データに各出力画像機器の色調再現特性が重畳されたものである。したがって、補正により原稿画像データ上に生じた画素値の差が、基準画像データとユーザ画像データ上での二つの値の差と同じ大きさでも、その意味が異なってしまう。
【0139】
このため、本実施例では、差分画像データに対して補正パラメータによる補正処理を行い、原稿画像データ上での意味と等価に変換する必要がある。
【0140】
図16は、ユーザ画像データと原稿画像データの関係を説明する図の一例である。図のP(x)は、S162で求められた色調再現特性である。すなわち、原稿画像データの画素値aはユーザ画像データのP(a)に対応付けられる。一般に、色調再現特性は線形ではないため、ユーザ画像データ上のある画素値P(a)近傍の差Δaと別の画素値P(b)近傍での差Δbとでは、原稿画像データ上の意味合いが異なる。図の例だと、差Δaは色調再現特性により差Δbよりも強調されている。このため、差分画像データに行う補正処理は、その元となる基準画像データやユーザ画像データ上での画素値に依存したものである必要がある。
【0141】
原稿画像データのある画素の画素値をx、ユーザ画像データの対応する画素の画素値をyとすると、その画素値に作用させる補正パラメータα(x)を求める方法の例として、以下のようなものが挙げられる。
a)傾きの逆数を用いる方法
色調再現特性関数y=P(x)の傾きP'(x)を全ての階調について求め、その傾きの逆数を用いる方法である。図16(b)は傾きを模式的に説明する図の一例である。色調再現特性関数の傾きは、原稿画像データにおけるある画素値近傍での値の微小な変動(変化量)が、ユーザ画像データにおいてどのように反映されるかを表す(反映される変化量)。補正処理では、差分画像データを原稿画像データに反映するために補正を行うため、ユーザ画像データにおける微小な変動が、原稿画像データにおいてどの程度の変動に相当するかを知る必要がある。これは上記傾きの逆数を取ることにより知ることができる。したがって、この方法での補正パラメータα(x)は次式で表せる。
【0142】
【数4】

b)理想的な直線との比を用いる方法
原稿画像データのある色をユーザ画像データで正確に再現できると、色調再現特性関数は直線y=xと表現できる。図16(c)は直線y=xとP(x)を模式的に説明する図の一例である。実際の色調再現特性関数P(x)とこの直線との値の比を求めることにより、原稿画像データのある画素値がユーザ画像データにおいて、どの程度値として変倍されているかを知ることができる。差分画像データもこの様にして変倍されたと見なせば、この比の逆数を乗算することにより原稿画像データに反映すべき値を知ることができる。したがって、この方法での補正パラメータα(x)は次式で表せる。
【0143】
【数5】

上記で得られた補正パラメータに対して、ガンマ補正などの公知技術を用いて更に調整を加えてもよい。
【0144】
次に、差分検出部61は、差分画像データを生成する(S170)。差分画像データの求め方は実施例1と同様である。
【0145】
次に、補正処理部62は、ステップS164で得られた補正パラメータを用いて差分画像データを補正する(S180)。例えば、ユーザ画像データのある画素が画素値aを持ち、かつその画素に対応する差分画像データの値がcであった時、補正された差分画像データの対応する画素の値c'は、次式のように表せる。
【0146】
【数6】

この処理を差分画像データ全体に渡って行い、補正画像データを作成する。
【0147】
次に、画像合成部63は、原稿画像データと補正画像データとを合成する (S190)。
色調変換システム610は、色調変換の回数が所定の回数に達したら(S200のYes)、図12の処理を終了する。
【0148】
色調変換の回数が所定の回数に達していないため、継続する場合(S200のNo)、補正済みの原稿画像データを入力としてユーザプリンタ200から印刷し(S110)、処理を継続する。次のループで用いる原稿画像データは全て補正済みものである。
【0149】
なお、上記では、ユーザプリンタ200の色調再現特性を元にして補正パラメータを導出しているが、基準プリンタ400の色調再現特性も用いて補正パラメータを導出してもよい。その方法の一例を説明する。
【0150】
S110〜S162までの手順は図12と同じである。S162においてユーザプリンタ200の色調再現特性P2(x)を推定後、同じ手続きで基準プリンタ400の色調再現特性P1(x)の推定を行う。
【0151】
続いて、補正パラメータの推定において、基準プリンタ400の色調再現特性P1(x)とユーザプリンタ200の色調再現特性P2(x)との差Pd(x)を例えば次式で求める。
【0152】
【数7】

次に、差分検出部61がS170で差分画像データを生成した後、補正パラメータ決定部64は差分画像データを補正する(S180)。この際、差分画像データに対して色調再現特性の差Pd(x)の逆関数を次式のように作用させることにより補正処理を行い、補正画像データを作成する。
【0153】
【数8】

S190において画像合成部63が原稿画像データと補正された差分画像データを合成することにより、基準プリンタ400と同等の色調のユーザ画像データが得られる原稿画像データが作成される。
【0154】
つまり、基準画像データとユーザ画像データとの差は、各画像出力機器の色調再現特性の差によって生じたと考え、画像データの差として検出された値に対して、色調再現特性の差の逆変換をかけることにより、原稿画像データ上での差を求める方法である。
【0155】
本実施例によれば、実施例1の効果に加え、差分画像データの補正パラメータを色調再現特性から動的に生成することで、精度良く差分画像データを補正することができる。
【実施例3】
【0156】
本実施例は、実施例1において原稿画像データと補正画像データとを合成する際に、重み付けをして合成する色調変換システム610について説明する。こうすることで、色調変換による、原稿画像データの画素値の変動を抑制することができる。
【0157】
図17は、本実施例の色調変換システム610又はMFP700の機能ブロック図の一例である。図17において図6と同一部の説明は省略する。本実施例の色調変換システム610又はMFP700は、画素対応付け部51、色差取得部52、色空間距離取得部53、及び、合成重み決定部54、を有する。
【0158】
画素対応付け部51は、幾何学変換パラメータを用いて、基準画像データとユーザ画像データの対応する画素を検出し、それらを対応付けて画素対応付けデータを作成する。
【0159】
色差取得部52は、画素対応付けデータを用いて得られる、基準画像データとユーザ画像データの対応する画素の色差を求め色差データを作成する。
【0160】
色空間距離取得部53は、無彩色からの原稿画像データの各色の距離を求め距離データを作成する。無彩色からの、基準画像データ又はユーザ画像データの各色の距離を求めてもよい。基準画像データ又はユーザ画像データでも距離データには同様の傾向があると考えられるためである。
【0161】
合成重み決定部54は、色差データと距離データとから画像データの合成に用いる合成重みを決定する。
【0162】
図18は、色調変換システム610又はMFP700が色調補正する手順を示すフローチャート図の一例である。図18において図7と同様のステップの処理は説明を簡略する。
【0163】
画像読み取り部41は、基準印刷物を読み取り、基準画像データを生成する(S110)。
【0164】
ユーザプリンタ200が、原稿画像データを印刷してユーザ印刷物を出力する(S120)。
【0165】
画像読み取り部41が、ユーザ印刷物を読み取り、ユーザ画像データを生成する(S130)。
【0166】
次に、幾何学変換パラメータ推定部42は、基準画像データとユーザ画像データとを原稿画像データに位置合わせする(S140)。すなわち、原稿画像データを基準とし、基準画像データとユーザ画像データの幾何学変換パラメータをそれぞれ求め、幾何学変換パラメータを用いて位置合わせを行う。
【0167】
また、本実施例では、幾何学変換パラメータが推定されると、画素対応付け部51が、幾何学変換パラメータを用いて、原稿画像データの画素と対応する位置の基準画像データ又はユーザ画像データの画素を検出し、それらを対応付けて画素対応付けデータを作成する。
【0168】
基準画像データとユーザ画像データに幾何学変換を施せば、基準画像データとユーザ画像データは原稿画像データと画像の位置がほぼ一致している。したがって、基準画像データとユーザ画像データの同じ座標の画素は互いに対応していると考えられる。画素対応付け部51はこのように2つの幾何学変換パラメータを求めて基準画像データとユーザ画像データの画素を対応づける。
【0169】
また、ステップS140では、原稿画像データと基準画像データ、及び、原稿画像データとユーザ画像データの幾何学変換パラメータを推定したが、基準画像データとユーザ画像データの間の幾何学変換パラメータを求めてもよい。すなわち、基準画像データとユーザ画像データの画像の位置を一致させるための幾何学変換パラメータを求め、いずれかに幾何学変換パラメータによる変換を施すことで、基準画像データとユーザ画像データの画像の位置をほぼ一致させることができる。
【0170】
なお、幾何学変換は必須ではなく、原稿画像データと基準画像データ(又はユーザ画像データ)において同じ位置の画素を特定するため、幾何学変換パラメータを用いて座標変換を行い、同じ位置か否かを判断することによって代替してもよい。後者を換言すれば、各画像の原点を基準とする座標系では異なる座標値を保持していても、幾何学変換の結果、同じ座標値となる画素を「同じ位置の画素」と見なすことになる。
【0171】
原稿画像データを出力して得られた印刷物には画像の周囲に余白が存在するケースが存在する。この様なケースでは、幾何学変換の変位量に余白部分の高さや幅が含まれるため余白部分を参照することはないが、出力画像データにおいて余白部分を排除するように必要な領域を切り出し、各画像における原点の位置を一致させてもよい。
【0172】
次に、色差取得部52は、ユーザ印刷物を評価する(S150)。そして、ユーザ印刷部が妥当か否かを判定する(S160)。
【0173】
妥当な場合(S160のYes)、次に、色差取得部52は色差データを取得する(S165)。色差取得部52は、基準画像データとユーザ画像データとの色差を画素ごとに求め色差データとする。したがって、色差データは画像データと同じ大きさのマップとして管理され、基準画像データとユーザ画像データの座標と色差のマップの座標とは対応付く。
【0174】
色差の導出方法は実施例1のユーザ印刷物の品質評価にて説明したとおりである。なお、ユーザ印刷物の評価において色差を用いた場合には、そこで求められた画素ごとの色差を利用して、本ステップを省略してもよい。
色差データは以下のように加工してもよい。
a) マップを移動平均により平滑化する
b) マップを低解像度化する(複数の画素の色差を合成した値で代替する)
c) マップから基準画像データやユーザ画像データにおける輪郭部分に対応する領域を除去する
画素ごとに色差を求めると色差データにノイズが乗るケースが存在するため、マップの平滑化や低解像度化をすることが望ましい。また、マップの輪郭部分を除去する場合には、マップが不連続とならないように除去した部分を適宜補間することが望ましい。補間方法には従来技術を用いればよく、例えば線形補間やキュービック補間などのほか、平滑化処理を用いてもよい。
【0175】
次に、色空間距離取得部53は距離データを求める(S166)。すなわち、原稿画像データにおいて利用されている各色の、無彩色からの距離を求め距離データとする。距離データは色差データと同様に画像データと同じ大きさのマップとして管理してもよいし、色と距離を対応付けたリストとして管理してもよい。距離データを求める手順の一例を以下に示す。
(1)原稿画像データの色空間をL*a*b*色空間に変換する
(2)原稿画像データから色を1つ選び無彩色からの距離d*abを求める
(3)これを原稿画像データの全ての色について繰り返す
距離d*abの定義の例としては、次式が挙げられる。
【0176】
【数9】

L*a*b*色空間において、a*値およびb*値がゼロである点が無彩色であり、この無彩色の点からのユークリッド距離を距離d*abとして用いている。
【0177】
次に、合成重み決定部54は、合成重みデータを決定する(S 167)。合成重み決定部54は、色差データと距離データとを用いて合成重みデータを決定する。合成重みデータを求める手順の一例を以下に示す。ここでは色差データと距離データとはマップとして管理されることを前提として説明する。
(1)色差データを色差の閾値thΔEで割った後、最大値を1で飽和させ(1以上の重みを全て1とみなす)、色差重みデータを作成する
(2)距離データを距離の閾値thdで割った後、最大値を1で飽和させ(1以上の重みを全て1とみなす)、距離重みデータを作成する
(3)色差データのある座標における値と、距離データの対応する座標における値とを乗算し、重みを算出する
(4)(3)を全ての座標について繰り返す
上記色差の閾値thΔEや距離の閾値thdは、予めユーザにより設定された値を用いてもよいし、色差データや距離データの平均値や中央値など何らかの統計処理を施した値を用いてもよい。特に距離の閾値thdは、L*a*b*色空間におけるa*成分値とb*成分値の取りうる最大値a*maxおよびb* maxを用いて次式で求めてもよい。
【0178】
【数10】

色差データや距離データを閾値で割る理由は、ゼロから閾値までの重みデータを連続的に変化させるためである。重みデータを連続的に変化させることによって、原稿画像データと補正画像データとの合成後に階調が不連続とならない効果が期待できる。また、最大値を1で飽和させるのは、重みデータの値域を0から1の間に収めるためである。
【0179】
図19(a)は距離の最大値を閾値とした場合の距離重みデータの一例を示す。例えば、距離の閾値thdを上式により求めるケースでは、距離重みデータwdが距離d*abが0から最大値d*maxまで連続的に変化する。最大値d*maxは1である。
【0180】
図19(b)は、距離の閾値thdとしてd*maxよりも小さい値を採用した場合の距離重みデータの一例を示す。図示するように、距離重みデータwdが距離d*abが0からthdまで連続的に変化し、それ以降は1で飽和する。
【0181】
また、色差重みデータや距離重みデータは、図19(a)(b)に例示したような線形的な変化だけでなく、所定の関数を用いて非線形に変化させてもよい。
図19(c)(d)は非線形の関数により求められた距離重みデータ又は色差重みデータの一例を示す。関数の例としては、二次関数や指数関数、逆関数などが挙げられる。また、関数だけでなくルック・アップ・テーブルのように予め決定された情報を用いて色差や距離を重みデータに変換してもよい。
【0182】
図20(a)は色差分布の一例を、図20(b)は色差重みデータの一例をそれぞれ示す。ここでan(nは0以上の整数)はマップのx方向又はy方向の位置を示す。ここでは色差重みデータは、合成時に補正画像データにかかる重みとして説明する。まず、補足図20(a)がある色差データの一部であったとする。位置に応じて色差の値が変化しており、x=a4からx=a5までは色差がゼロである。
【0183】
これに対し図20(b)の色差重みデータは、色差データにおいて値が色差の閾値thΔEより大きい範囲(x=0からx=ath)では1で飽和しており、色差がゼロであるx=a4からx=a5までは重みはゼロとなっている。それらを除く範囲では、色差データの増減に合わせて重みも変動している。
【0184】
なお、図20(b)では色差データや色差重みデータの変動を線形に表現しているが、変動は非線形であってもよいし、不連続な箇所が存在してもよい。また、図の都合上一次元で図示しているが、二次元の分布も同様に色差データに応じて色差重みデータは変動する。更に、ここでは色差データを前提として説明したが、色空間の距離についてもほぼ同様であり、色差を距離と読み替えればよい。
【0185】
合成重み決定部54は、例えば以下のようにして合成重みWを求める。ある画素又は画素群の色差重み付けをWc(0≦Wc≦1)、距離重みをWd(0≦Wd≦1)、とする。
=Wc・Wd
なお、色差重みのみ又は距離重みのみを使用する場合は、それぞれ以下のようになる。
=Wc
=Wd
距離重みが、画素又は画素群毎に求められていない場合、着目している原稿画像データの画素又は画素群の色に対応づけられた距離重みを用いる。合成重み決定部54は、補正画像データと同様に、画像データと同じ大きさのマップとして管理される。
【0186】
次に、差分検出部61は差分画像データを生成する(S170)。
【0187】
また、補正処理部62は差分画像データを補正する(S180)。補正の方法は実施例1又は実施例2のいずれの方法でもよい。
【0188】
次に、画像データ合成部は、原稿画像データと補正画像データとを合成する (S190)。原稿画像データと補正画像データとを合成して補正済み原稿画像データを生成する手順を以下に示す。
(1)原稿画像データからある座標の画素値を取得する
(2)補正画像データから対応する座標の画素値を取得する
(3)重みデータから対応する座標の重みを取得する
(4)得られた二つの画素値を、上記重みを用いて加重平均し、合成後の画素値を決定する
(5)合成後の画素値を用いて原稿画像データの該当画素を更新する
(6)1)から5)を全ての座標について繰り返す
合成後の画素値Gは、例えば以下のようにして求める。ここである画素又は画素群の色差重み付けをWc(0≦Wc≦1)、距離重みをWd(0≦Wd≦1)、原稿画像データの色をO、補正画像データの色をM、とする。
=W・M+(1−W)・O
なお、色差重みのみ又は距離重みのみを使用する場合は、それぞれ以下のようになる。
=Wc・M+(1−Wc)・O
=Wd・M+(1−Wd)・O
上記手順では原稿画像データを補正済み原稿画像データを生成により更新しているが、補正済み原稿画像データを新しい画像データとして作成してもよい。
【0189】
原稿画像データと補正画像データとを合成する際に上述の重みを用いることにより、以下のような効果が期待できる。
a)基準画像データとユーザ画像データとで元々色が一致している箇所を維持することができる
差分画像データに一括で補正処理をかけてしまうと、基準画像データとユーザ画像データとで本来色が一致していたはずの箇所の色も変化してしまい、全体として色の一致度が改善しても、所定の箇所で色の一致度が低下してしまう。
【0190】
これに対し、原稿画像データと補正画像データの合成重みにおいて、基準画像データとユーザ画像データとの色の一致度に基づいて色差重みを決定し合成重みに反映することにより、前記一致度の低下を回避することができる。これは以下のような理由による。
【0191】
・色差重みは前記一致度が高い箇所は原稿画像データの比重が高くなるように制御し、逆に前記一致度が低い箇所は補正画像データの比重が高くなるように制御する
・このため、原稿画像データにおいて前記一致度が高い箇所は変更せず、前記一致度が低い箇所のみ変更を反映することになる
b)原稿画像データで無彩色である箇所に不正に色が付いてしまう問題を緩和することができる
差分画像データに一括で補正処理をかけてしまうと、原稿画像データで無彩色である箇所に色が付いてしまい、該当箇所での一致度が低下してしまう。これに対し、原稿画像データと補正画像データの合成重みにおいて、原稿画像データを構成する各色の無彩色からの距離に基づいて距離重みを決定し合成重みに反映することにより、前記一致度の低下を回避することができる。これは以下のような理由による。
【0192】
・距離重みは無彩色からの距離が短いほど原稿画像データの比重が高くなるように制御し、無彩色からの距離が長いほど補正画像データの比重が高くなるように制御する
・このため、原稿画像データにおいて無彩色に近い箇所は相対的に変化量が小さく、無彩色から遠い箇所は相対的に変化量が大きくなる
色調変換システム610又はMFP700は色調変換の回数が所定の回数に達したら(S200のYes)、図18の処理は終了する。
【0193】
本実施によれば、実施例1の効果に加え、補正画像データに重み付けすることで、補正済み原稿画像データに不要な色変換が生じることを抑制できる。
【符号の説明】
【0194】
41 画像読み取り部
42 幾何学変換パラメータ推定部
43 画素値対応付け部
44 色成分値対応付け部
45 色調再現特性推定部
51 画素対応付け部
52 色差取得部
53 色空間距離取得部
54 合成重み決定部
61 差分検出部
62 補正処理部
63 画像合成部
64 補正パラメータ決定部
100 コンピュータ
200 ユーザプリンタ
300 スキャナ
400 基準プリンタ
500 ネットワーク
601 画像入力部
602 画像出力部
603 画像記憶部
604 画像解析部
605 パラメータ記憶部
606 画像処理部
610 色調変換システム
700 MFP
800 プロジェクタ
900 デジタルカメラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0195】
【特許文献1】特開2009−177790号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の画像出力手段が原稿画像データを出力した第一の出力結果の色調を、第二の画像出力手段が前記原稿画像データを出力した第二の出力結果において再現する画像処理装置であって、
読み取り装置が前記第一の出力結果を読み取った第一の出力画像データと前記原稿画像データの位置を合わせる第一の幾何学変換パラメータを推定し、読み取り装置が前記第二の出力結果を読み取った第二の出力画像データと前記原稿画像データの位置を合わせる第二の幾何学変換パラメータを推定する幾何学変換パラメータ推定手段と、
前記第一及び第二の幾何学変換パラメータにより対応づけられる、前記第一の出力画像データと前記第二の出力画像データの画素又は画素群の画素値の差分を求めて差分画像データを生成する差分検出手段と、
前記差分画像データの画素値と変換後の画素値を対応づけた変換テーブルを参照し、前記差分画像データの画素値が変換された補正画像データを作成する補正処理手段と、
前記原稿画像データと前記補正画像データの対応する画素の画素値を算術処理することで前記原稿画像データと前記補正画像データを合成する画像合成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第二の幾何学変換パラメータを用いて、前記原稿画像データの画素に対応する位置の前記第二の出力画像データの画素を検出し、それらの画素値を対応付けた画素値対応付けデータを作成する画素値対応付け手段と、
前記画素値対応付けデータにより互いに対応づけられた前記原稿画像データの画素の画素値と、前記第二の出力画像データの画素の画素値とを対応付けて色成分値対応付けデータを作成する色成分値対応付け手段と、
前記色成分値対応付けデータにより、前記第二の出力画像データと前記原稿画像データの画素値の一方から他方を推定する色調再現特性データを生成する色調再現特性生成手段と、を有し、
前記補正処理手段は、前記差分画像データの画素の位置に対応する前記第二の出力画像データの画素値を前記色調再現特性データに適用して、前記差分画像データの補正量を算出し、該補正量を用いて前記差分画像データの画素値を補正することで前記補正画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記色調再現特性データを用いて前記第二の出力画像データの第一の変化量から前記原稿画像データの第二の変化量を算出する変化量算出手段、を有し、
前記変化量算出手段は、前記差分画像データの画素の画素値に対応する前記第二の出力画像データの画素の画素値の前記第一の変化量に対する前記第二の変化量を推定し、
前記補正処理手段は、前記差分画像データの画素の画素値を、推定された前記第二の変化量だけ補正して前記補正画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第二の幾何学変換パラメータを用いて、前記原稿画像データの画素に対応する位置の前記第二の出力画像データの画素を検出し、それらの画素値を対応付けた第二の画素値対応付けデータ、及び、前記原稿画像データの画素に対応する位置の前記第一の出力画像データの画素を検出し、それらの画素値を対応付けた第一の画素値対応付けデータ、を作成する画素値対応付け手段と、
前記第二の画素値対応付けデータにより互いに対応づけられた前記原稿画像データの画素の画素値と、前記第二の出力画像データの画素の画素値とを対応付ける第二の色成分値対応付けデータ、及び、前記第一の画素値対応付けデータにより互いに対応づけられた前記原稿画像データの画素の画素値と、前記第一の出力画像データの画素の画素値とを対応付ける第一の色成分値対応付けデータ、を作成する色成分値対応付け手段と、
前記第二の色成分値対応付けデータにより、前記第二の出力画像データと前記原稿画像データの画素値の一方から他方を推定する第二の色調再現特性データ、及び、前記第一の色成分値対応付けデータにより、前記第一の出力画像データと前記原稿画像データの画素値の一方から他方を推定する第一の色調再現特性データ、を生成する色調再現特性推定手段と、を有し、
前記補正処理手段は、前記第一の色調再現特性データから前記第二の色調再現特性データを減じて得られる第三の色調再現特性データに、前記差分画像データの画素値を適用することで、前記差分画像データの画素値を補正し前記補正画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記色成分値対応付け手段は、前記原稿画像データ、及び、前記第二の出力画像データをデバイス非依存の色空間に変換した後、前記色成分値対応付けデータを生成する、
ことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第一及び第二の幾何学変換パラメータにより前記第一の出力画像データと前記第二の出力画像データとの画素の対応関係を求める画素対応付け手段と、
前記対応関係により対応付けられる画素又は画素ブロック毎に、前記第一の出力画像データと前記第二の出力画像データの画素又は画素ブロック毎に色差情報を取得する色差情報取得手段、又は、画素若しくは画素ブロック毎又は色ごとに、前記原稿画像データ、前記第一の出力画像データ又は前記第二の出力画像データの無彩色からの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記補正画像データの画素又は画素ブロック毎に、前記色差情報又は前記距離情報の少なくとも一方による重み値を決定する重み決定手段と、
前記原稿画像データと、前記重み値により重み付けされた前記補正画像データの対応する画素の画素値を算術処理することで前記原稿画像データと前記補正画像データとを合成する画像データ合成手段と、
を有する請求項1〜5いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第一の出力画像データと前記第二の出力画像データとの一致度を数値化し、前記一致度に基づき、色調変換が必要か否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項8】
第一の画像出力手段が第一の出力結果として出力した原稿画像データを、第二の出力結果として出力する第二の画像出力手段と、第一の出力結果及び前記第二の出力結果を読み取る読み取り装置と、画像処理を行う情報処理装置と、を有する画像処理システムであって、
読み取り装置が前記第一の出力結果を読み取った第一の出力画像データと前記原稿画像データの位置を合わせる第一の幾何学変換パラメータを推定し、読み取り装置が前記第二の出力結果を読み取った第二の出力画像データと前記原稿画像データの位置を合わせる第二の幾何学変換パラメータを推定する幾何学変換パラメータ推定手段と、
前記幾何学変換パラメータにより対応づけられる、前記第一の出力画像データと前記第二の出力画像データの画素又は画素群の画素値の差分を求めて差分画像データを生成する差分検出手段と、
前記差分画像データの画素値と変換後の画素値を対応づけた変換テーブルを参照し、前記差分画像データの画素値が変換された補正画像データを作成する補正処理手段と、
前記原稿画像データと前記補正画像データの対応する画素の画素値を算術処理することで前記原稿画像データと前記補正画像データを合成する画像合成手段と、
を有することを特徴とする画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−26693(P2013−26693A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157181(P2011−157181)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】