説明

画像処理装置、画像処理方法、ハーフトーンセル識別方法及びプログラム

【課題】濃度むらやモアレなどの画質欠陥の抑制を低コストで実現することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、まず、画像の注目ラインに含まれる注目画素を決定する。次に、画像処理装置は、注目画素の主走査方向に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。次に、画像処理装置は、注目画素の副走査方向に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを判定し、さらに、当該隣接画素の主走査方向の近傍画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを判定する。画像処理装置は、このようにして、注目ラインと注目ラインの次のラインに含まれる画素について識別処理を行い、注目ラインの全画素の識別を終了したら、当該注目ラインの画素に対して、ハーフトーンセル毎に異なる二値化手法を適用して二値化処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多値画像を二値の網点パターンによって再現する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像処理装置は、濃度階調を有する多値画像情報を、いわゆる網点と呼ばれる着色ドットの大きさによって擬似的に再現する。このような網点画像が印刷されると、濃度むらやモアレなど画質欠陥が発生することがある。このため、画質欠陥を抑制する技術が、種々提案されている。
【0003】
特許文献1では、入力画像を乱数的に読み出してむらを抑制する手法が開示されている。しかしながら、この手法は、むら補正のために発生させた乱数により、ノイズを発生してしまうことがある。
【0004】
特許文献2では、網点同士が接触しないようにオン画素を配置し、網点同士が接触する場合には網点を広い幅で結合させることにより、ドット同士が接近する不安定な領域が発生することを防ぐ手法が開示されている。しかしながら、この手法では、ドット同士が急激に結合されるので、トーンジャンプが発生する場合がある。
【0005】
特許文献3では、網点の周期構造が目立たなくなるように閾値マトリクス(スーパーセル)を設計する手法が開示されている。しかしながら、この手法は、大きなサイズの閾値マトリクスを必要とするので、コストが高くなるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平1−216672
【特許文献2】特開2001−301234
【特許文献3】特開平8−317212
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した背景からなされたものであり、濃度むらやモアレなどの画質欠陥の抑制を低コストで実現することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、画像の注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する識別手段と、前記識別手段により識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された二値化手法を適用して、画像の画素に対して二値化処理を施す二値化手段とを有する。
【0009】
好適には、前記識別手段は、注目画素の副走査方向に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。
好適には、前記識別手段は、注目画素の副走査方向に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属する場合、当該隣接画素の主走査方向の近傍画素が当該ハーフトーンセルに属するか否かを識別する。
【0010】
好適には、前記決定手段は、画像の画素に適用される閾値マトリクスを決定する。
好適には、前記決定手段は、中心位置の異なる複数の閾値マトリクスから閾値マトリクスを選択する。
好適には、前記決定手段は、閾値マトリクスを所定の角度回転する。
【0011】
好適には、前記決定手段により決定された二値化手法を記憶する記憶装置をさらに有し、前記二値化手段は、前記記憶装置に記憶された二値化手法によって二値化を行い、前記記憶装置は、画像の少なくとも2ライン分の画素の二値化手法を記憶する容量を有する。
【0012】
好適には、前記二値化手段は、同一のハーフトーンセルに属する画素に対して、同一の変化が加えられた閾値マトリクスを適用する。
好適には、前記二値化手段は、同一のハーフトーンセルに属する画素の濃度に同一の変化を加える。
【0013】
本発明に係る画像処理方法は、画像の注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別し、前記識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定し、前記決定された二値化手法を適用して、画像の画素に対して二値化処理を施す。
【0014】
また、本発明に係るハーフトーンセル識別方法は、画像の注目画素をライン方向に順に決定し、前記決定された注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。
【0015】
好適には、前記識別することは、画素が属するハーフトーンセルをライン毎に識別する。
好適には、前記識別することは、ラインの法線方向において注目画素に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。
好適には、前記識別することは、ラインの法線方向において注目画素に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属する場合、当該隣接画素のライン方向の近傍画素が当該ハーフトーンセルに属するか否かを識別する。
【0016】
また、本発明に係る第1のプログラムは、コンピュータを有する画像処理装置において、画像の注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する識別ステップと、前記識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定する決定ステップと、前記決定された二値化手法を適用して、画像の画素に対して二値化処理を施す二値化ステップとを前記画像処理装置のコンピュータに実行させる。
【0017】
さらに、本発明に係る第2のプログラムは、コンピュータを含むハーフトーンセル識別装置において、画像の注目画素をライン方向に順に決定する決定ステップと、前記決定された注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する識別ステップとを前記ハーフトーンセル識別装置のコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画像処理装置によれば、濃度むらやモアレなどの画質欠陥の抑制を低コストで実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明の理解を助けるために、本発明の背景及び概略を説明する。
図1は、多値画像の二値化処理を説明する図であって、図1(A)は、入力された多値画像を例示し、図1(B)〜図1(E)は、この多値画像に対して異なる二値化処理が施された二値画像のうち図中のAに示される画像部分に対応する部分を例示する。
図1(A)及び図1(B)に例示するように、入力された多値画像に対して二値化処理を施すと、スクリーン構造が目立つ場合がある。この場合、濃度むら等の画像欠陥が発生することがある。
【0020】
図1(C)及び図1(D)は、二値化処理において、小さな乱数が付加された場合の二値画像を例示する。図1(C)に例示するように、乱数が小さい場合、スクリーン構造は、十分に低減されないことがある。また、図1(D)に例示するように、乱数が大きい場合、強いノイズが発生してしまうことがある。
【0021】
図1(E)は、本発明に係る画像処理方法を適用されて生成された二値画像を例示する。図1(E)に例示するように、本発明に係る画像処理方法が多値画像に対して適用されて二値画像が生成されると、当該二値画像では、強いノイズが発生せず、スクリーン構造も目立たない。このため、本発明に係る画像処理方法が適用されると、画像欠陥の発生が抑止されることができる。
【0022】
次に、本発明に係る画像処理方法の概略を説明する。
図2は、本発明に係る画像処理方法において適用される閾値マトリクスとハーフトーンセルを説明する図である。
図2(A)は、多値画像が二値化された出力画像を例示する。図2(A)に例示するように、出力画像は、黒画素及び白画素からなる二値画像であり、複数の黒画素からなる網点の大きさにより濃度階調を擬似的に表現する。
【0023】
図2(B)は、図2(A)において矢印Aで示される画素であり、本発明に係る画像処理方法において用いられる閾値マトリクスに対応する画像部分を例示する。図2(B)に例示するように、本発明に係る画像処理方法においては、閾値マトリクスは、矩形のマトリクスである。例えば、閾値マトリクスは、連続する34画素分の閾値からなり、34段階の値が、「7,10,14,…,25,16」のように、順に配置されている。
【0024】
多値画像が入力されると、二値化処理対象のラインにおいて、各画素の画素値は、当該画素の多値の階調値と、閾値マトリクスの当該画素に対応する位置の値とに基づいて、黒画素(例えば「1」)及び白画素(例えば「0」)のいずれかに変換される。多値の画素値が、閾値マトリクスの当該画素に対応する位置の値以上である場合、当該画素は黒画素に変換され、当該値未満である場合、当該画素は白画素に変換される。なお、後述するように、本発明に係る画像処理方法においては、複数の閾値マトリクスが適用されるので、各画素の画素値は、複数の閾値マトリクスから選択されたものが適用されて変換される。
【0025】
図2(C)は、図2(A)において矢印Bで示される画素であり、本発明に係る画像処理方法において考慮されるハーフトーンセルに対応する画像部分を例示する。図2(C)に例示するように、ハーフトーンセルは、複数の画素を含む画像部分であり、所定の大きさの1つの網点を含むものである。ここで、ハーフトーンセルに含まれる画素数と、閾値マトリクスに含まれる画素数は、同一であり、本例では34である。ハーフトーンセルは、出力画像において連続的に配置されている。なお、ハーフトーンセルの形状は、本例に限定されず、また、矩形でなくてもよい。
【0026】
図3は、本発明に係る画像処理方法で用いられる閾値マトリクスの詳細を例示する図であって、図3(A)は、二値画像を生成する矩形の閾値マトリクスを示し、図3(B)は、図3(A)に示される矩形の閾値マトリクスが適用される画像の一部(本例では、29画素×34画素の画像領域)を示す。なお、図3(B)の太線は、ハーフトーンセルの形状を示す。
【0027】
図3(A)及び図3(B)に示すように、矩形の閾値マトリクスが、繰り返し適用されることにより、多値画像は、二値画像に変換される。本発明に係る画像処理方法では、まず、多値画像の1行目に対して、図3(A)に示される閾値マトリクスが適用され、次に、多値画像の2行目に対して、当該閾値マトリクスが所定の位置に繰り返し配置されて適用される。このようにして、多値画像は、ライン毎に、当該ラインに含まれる各画素を二値化される。
【0028】
図4は、本発明に係る画像処理方法で適用される複数の閾値マトリクスと、ハーフトーンセル内に形成される網点の中心位置との関係を例示する図である。図4(A)〜図4(D)は、同一の階調値を有する多値画像が、それぞれ異なる閾値マトリクス1〜4を用いて二値化処理を施されて生成された二値画像を例示する。図4(A)〜図4(D)に例示するように、これらの二値画像において、ハーフトーンセルにおける網点の中心位置及び網点の形状の少なくともいずれかは、互いに異なる。
【0029】
例えば、閾値マトリクス1が、多値画像の画素の全てに対して適用された場合、出力画像は、図4(A)に示されるものとなる。また、例えば、閾値マトリクス2が、多値画像の画素の全てに対して適用された場合、出力画像は、図4(B)に示されるものとなる。
【0030】
本発明に係る画像処理方法では、それぞれのハーフトーンセルに対して、複数の閾値マトリクスから1つの閾値マトリクスが決定され、当該決定された閾値マトリクスに基づいて、ハーフトーンセルに属する画素に対して二値化処理が施される。したがって、同一のハーフトーンセルに含まれる画素に対しては、同一の閾値マトリクスが適用される。このため、本発明に係る画像処理方法は、多値画像の各画素が、出力画像における複数のハーフトーンセルのいずれに属するかを識別する。
【0031】
図5及び図6は、本発明に係る画像処理方法において実行されるハーフトーンセル識別方法を説明する図である。図5(A)〜図5(C)及び図6(A)〜図6(D)は、多値画像の各画素を示し、図中の太線は、ハーフトーンセルを示す。
本発明に係るハーフトーンセル識別方法は、注目ライン(図中のL1で示されるライン)の各画素がいずれのハーフトーンセルに属するかを識別する。また、本発明に係るハーフトーンセル識別方法は、注目ラインの各画素を識別するとともに、注目ラインの次のライン(図中のL2で示されるライン)に含まれる各画素を識別する。より具体的には、本発明に係るハーフトーンセル識別方法は、注目ラインにおいて、画像の原点(例えば、左上)からライン方向(例えば、主走査方向)に向かって注目画素を順に決定し、当該決定された注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。
【0032】
また、本発明に係る画像処理方法は、ハーフトーンセル識別処理において識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定する。より具体的には、本発明に係る画像処理方法は、ハーフトーンセルを識別された各画素に対して、閾値マトリクスを一意に識別するインデックス(例えば、1〜4の番号)を付与する。
以降、図5及び図6を参照して、ハーフトーンセル識別処理及び二値化手法決定処理を具体的に説明する。
【0033】
図5(A)に示すように、注目ラインがラインL1であり、注目画素が、図中の矢印Cで示される画素(以降、画素Cともいう)であるとする。なお、ハーフトーンセル識別処理は、注目ラインの左側の画素から行われるので、画素Cの左側の4画素に対しては、ハーフトーンセル識別処理が既に実行されている。
【0034】
画素Cが、未だ識別されていない場合、当該注目画素には、閾値マトリクスのいずれかの識別子(1〜4の番号)が付与される。識別子は、ランダムに決定されて付与されてもよいし、規則的に付与されてもよい。好適には、当該識別子は、隣接するハーフトーンセルに付与された識別子とは異なるものである。本例では、画素Cには、識別子「2」が付与されている。したがって、画素Cに対しては、識別子「2」により識別される閾値マトリクス(例えば、閾値マトリクス2)が適用されることになる。
【0035】
本発明に係るハーフトーンセル識別方法は、この注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。図5(B)に示すように、本例では、ライン方向に隣接する画素(図中の矢印Dで示される画素;画素Dともいう)、及びラインの法線方向(例えば、副走査方向)に隣接する画素(図中の矢印Eで示される画素;画素Eともいう)が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。
【0036】
本例では、画素Dは、ラインL1の一つ前のラインが注目ラインであったときの識別処理で、既に識別子「3」を付与されたハーフトーンセルに属すると識別されている。一方、画素Eは、未だ識別されていないものであり、当該識別処理において画素Cと同一のハーフトーンセルに属すると識別されたものである。したがって、画素Eには、識別子「2」が付与される。
【0037】
本発明に係るハーフトーンセル識別方法は、注目画素に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属する場合、当該隣接画素のライン方向の近傍画素が当該ハーフトーンセルに属するか否かを識別する。ここで、隣接する画素には、ライン方向に隣接する画素(画素D)及びラインの法線方向に隣接する画素(画素E)が含まれる。また、近傍画素には、画素Eと同一のラインに含まれる画素が含まれる。
【0038】
図5(C)に示すように、画素Eは、画素Cと同一のハーフトーンセルに属するので、画素Eの近傍画素に対する識別処理が実行される。図5(C)において、丸印で囲まれる画素は、画素Eの近傍画素(即ち、画素Eと同一のラインに含まれる画素)であって画素Eと同一のハーフトーンセルに属する画素である。このような画素には、画素Eと同一の識別子(本例では「2」)が付与される。
【0039】
このようにして、画素Eのライン方向の近傍画素が当該ハーフトーンセルに属するか否かが識別される。したがって、注目画素(画素C)に隣接する画素(画素E)の近傍画素が、どこまで注目画素と同一のハーフトーンセルに属するかが識別される。
【0040】
次の注目画素は、画素Cとライン方向に隣接する画素(画素Cの右隣の画素)である。当該画素は、既に識別されて「3」を付与されており、当該画素にライン方向並びにラインの法線方向に隣接する両画素もまた、既に識別されて識別子「3」又は「2」を付与されている。したがって、注目画素は、当該画素とライン方向に隣接する画素になる。
【0041】
ここで、注目画素は、図6(A)の矢印Fで示される画素(以降、画素Fともいう)である。画素Fは、既に識別されており識別子「3」が付与されている。また、図6(B)に示すように、画素Fとライン方向に隣接する画素(画素G)は、画素Fと同一のハーフトーンセルに属すると既に識別され、識別子「3」が付与されている。一方、画素Fとラインの法線方向に隣接する画素(画素H)は、まだ識別されていない。画素Hは、画素Fと同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別され、同一のハーフトーンセルに属すると識別されたので、識別子「3」を付与される。
【0042】
さらに、図6(C)に示すように、画素Hの近傍画素が、どこまで注目画素(画素F)と同一のハーフトーンセルに属するかが識別される。このようにして、注目ラインL1において、注目画素がライン方向に順に決定されて、ハーフトーンセル識別処理が行われる。また、ラインL1に対するハーフトーンセル識別処理において、ラインL2の一部の画素は、いずれのハーフトーンセルに属するか否かを識別される。
【0043】
図6(D)に示すように、識別子が、注目ラインL1の全ての画素に対して付与されると、二値化処理が、当該注目ラインL1の各画素に対して施される。各画素は、当該画素に付与された識別子により識別される閾値マトリクスを適用して二値化される。二値化処理が終了すると、注目ラインL1のデータは消去される。その後、ハーフトーンセル識別処理は、注目ラインをラインL2として、同様に実行される。なお、注目ラインL2に対するハーフトーンセル識別処理において、その次のラインL3の一部の画素は、いずれのハーフトーンセルに属するかを識別される。
【0044】
このように、本発明に係るハーフトーンセル識別処理は、画素が属するハーフトーンセルをライン毎に識別する。より具体的には、ハーフトーンセル識別処理では、注目ライン及びその次のラインの画素が属するハーフトーンセルが識別される。よって、必要な記憶容量は、画像の少なくとも2ライン分の画素の二値化手法を記憶する容量である。特に、二値化手法は、インデックスとして記憶される。これにより、全画素分の識別結果が記憶される必要がないので、必要な記憶容量は削減されることができ、必要なコストが削減されることができる。
【0045】
図7は、本発明に係る画像処理方法が適用されて生成された二値画像を説明する図であって、図7(A)は、1種類の閾値マトリクスを用いて生成された二値画像を例示し、図7(B)は、本発明に係る画像処理方法において4種類の閾値マトリクスを用いて生成された二値画像を例示する。図7(A)及び図7(B)に例示するように、本発明に係る画像処理方法では、ハーフトーンセル内において、網点の中心位置が変更されるので、濃度むら等の画像欠陥が抑止されることができる。また、周期的なドット同士の接触が防止されるので、モアレ等の画像欠陥が抑止されることができる。
【0046】
次に、このような画像処理方法及びハーフトーンセル識別方法を実行する本発明の実施形態に係る画像処理装置2を説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る画像処理装置2のハードウェア構成を、制御装置12を中心に示す図である。
図8に示すように、画像処理装置2は、CPU120及びメモリ(記憶装置)122などを含む制御装置12、通信装置14、ハードディスクドライブなどの記録装置16、LCD表示装置あるいはCRT表示装置及びキーボード・ポインティングデバイスなどを含むユーザインターフェース装置(UI装置)18、及びプリントエンジンを含み、制御装置20の制御により画像を印刷するプリンタ装置10を有する。画像処理装置2は、メモリ122又は記録装置16に格納されているデータを、FD、CDあるいはDVDなどの記録媒体160に書き出し、また記録媒体160に格納されているデータを読み出して記録装置16等に格納する。
【0047】
画像処理装置2は、例えば、後述する画像処理プログラム4がインストールされた汎用コンピュータである。画像処理装置2は、印刷対象の画像データを通信装置14等を介して入力し、当該画像データに基づいて画像を描画し、所定の画像処理を施して、プリンタ装置10を介して印刷する。また、画像処理装置2は、プリンタ装置10のスキャナ部(不図示)又は外部のスキャナ(不図示)を介して読み取られた画像データを入力して、所定の画像処理を施して印刷してもよい。
【0048】
図9は、本発明の実施形態に係る画像処理装置2により実行される画像処理方法及びハーフトーンセル識別方法を実現する画像処理プログラム4の機能構成を示す図である。
図9に示すように、画像処理プログラム4は、受付部40、ハーフトーンセル識別部42、二値化手法決定部44及び二値化部46を有する。なお、画像処理プログラム4の全部又は一部の機能は、プリンタ装置10に設けられた例えばASICなどのハードウェアにより実現されてもよい。
【0049】
画像処理プログラム4において、受付部40は、通信装置14又はスキャナ(不図示)を介して入力された多値画像を受け付ける。ここで、多値画像は、所定のページ記述言語に基づいて描画された画像であってもよいし、読み取られた画像であってもよい。また、多値画像は、通信装置14を介して入力された際の解像度より高解像度化された画像であってもよい。例えば、入力画像の解像度が600dpiであり、所定の画像処理が入力画像に施されて解像度が2400dpiになった場合、受付部40は、高解像度化された2400dpiの画像を入力画像として受け付けてもよい。受付部40は、入力画像の注目ライン及びその次のラインの座標値をハーフトーンセル識別部42に対して出力し、注目ラインに含まれる画素の濃度(階調値)を二値化部46に対して出力する。
【0050】
ハーフトーンセル識別部42は、図5及び図6に示したように、画像の注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。より具体的には、ハーフトーンセル識別部42は、画像の注目画素をライン方向に順に決定し、当該決定された注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。好適には、ハーフトーンセル識別部42は、画素が属するハーフトーンセルをライン毎に識別する。また、ハーフトーンセル識別部42は、入力した画像の座標値に基づいて識別処理を行う。なお、ハーフトーンセル識別部42については、後で詳述する。
【0051】
二値化手法決定部44は、図5及び図6に示したように、ハーフトーンセル識別部42により識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定する。より具体的には、二値化手法決定部44は、予め記憶されている複数の閾値マトリクスからハーフトーンセル毎に閾値マトリクスを選択して、画像の画素に適用される閾値マトリクスを決定する。ここで、複数の閾値マトリクスの中心位置は、互いに異なる。なお、閾値マトリクスの中心位置は、当該閾値マトリクスを用いて二値化された画像において、ハーフトーンセルに形成される網点の中心位置である。
【0052】
二値化手法決定部44は、注目ライン並びにその次のラインに含まれる画素に適用される二値化手法を示す識別子(例えば、1〜4の番号のいずれか)を、当該画素に付与する。ここで、二値化手法決定部44は、同一のハーフトーンセルに含まれる画素に対して同一の識別子を付与する。二値化手法決定部44は、各画素に付与した識別情報をハーフトーンセル識別部42に対して出力する。したがって、ハーフトーンセル識別部42は、既に識別子が付与されている画素を認識することができる。
【0053】
二値化手法決定部44は、注目ライン並びにその次のラインに含まれる画素に適用される二値化手法を示す識別子を、メモリ122に格納する。ここで、メモリ122は、二値化手法決定部44により決定された二値化手法(閾値マトリクスの識別子)を記憶する。二値化手法決定部44は、所定の契機で、決定した二値化手法をメモリ122から読み出して、二値化部46に対して出力する。なお、二値化手法決定部44については、後で詳述する。
【0054】
二値化部46は、二値化手法決定部44により決定された二値化手法を適用して、画像の画素に対して二値化処理を施す。より具体的には、二値化部46は、二値化手法決定部44から各画素に適用される閾値マトリクスの識別子を入力し、受付部40から注目ラインの各画素の濃度(階調値)を入力し、当該画素の濃度と、当該画素に適用される閾値マトリクスの当該画素に対応する位置の閾値とに基づいて、多値を二値に変換する。
【0055】
図10は、ハーフトーンセル識別部42の詳細な機能構成を示す図である。
図10に示すように、ハーフトーンセル識別部42は、主走査方向隣接画素識別部420、副走査方向隣接画素識別部422及び副走査方向近傍画素識別部424を有する。ハーフトーンセル識別部42において、主走査方向隣接画素識別部420は、画像の座標値を受付部40から入力し、識別情報を二値化手法決定部44から入力する。主走査方向隣接画素識別部420は、注目画素の主走査方向(例えば、ライン方向)に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。
【0056】
副走査方向隣接画素識別部422は、主走査方向隣接画素識別部420と同様に座標値及び識別情報を入力し、注目画素の副走査方向(例えば、ラインの法線方向)に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。副走査方向近傍画素識別部424は、注目画素の副走査方向に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属する場合、当該隣接画素の主走査方向の近傍画素が当該ハーフトーンセルに属するか否かを識別する。具体的には、副走査方向近傍画素識別部424は、当該隣接画素の近傍画素が、どこまで注目画素と同一のハーフトーンセルに属するかを識別する。
【0057】
図11は、ハーフトーンセル識別部42により実行されるハーフトーンセル識別処理(S10)のフローチャートを示す図である。
図11に示すように、ステップ100(S100)において、ハーフトーンセル識別部42の主走査方向隣接画素識別部420は、画像の注目ラインに含まれる注目画素を決定する。
ステップ102(S102)において、主走査方向隣接画素識別部420は、注目画素の主走査方向に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。
【0058】
ステップ104(S104)において、副走査方向隣接画素識別部422は、注目画素の副走査方向に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを判定する。注目画素と当該隣接画素とが、同一のハーフトーンセルに属さない場合、ハーフトーンセル識別処理は終了する。注目画素と当該隣接画素とが、同一のハーフトーンセルに属する場合、ハーフトーンセル識別処理は、S108の処理に進む。
【0059】
ステップ106(S106)において、副走査方向近傍画素識別部424は、当該隣接画素の主走査方向の近傍画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを判定する。副走査方向近傍画素識別部424は、当該隣接画素に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを判定する。これらの画素が同一のハーフトーンセルに属さない場合、ハーフトーンセル識別処理は終了する。
【0060】
一方、これらの画素が同一のハーフトーンセルに属する場合、ハーフトーンセル識別処理はS108の処理に戻る。したがって、副走査方向近傍画素識別部424は、注目画素と副走査方向に隣接する画素の主走査方向の近傍画素(例えば、図5(C)の丸で囲まれた画素)が、どこまで注目画素と同一のハーフトーンセルに属するかを、繰り返し識別することになる。このようにして、ハーフトーンセル識別部42は、注目ラインの次のラインに含まれる画素であって、注目ラインの注目画素と同一のハーフトーンセルに含まれる画素の範囲を識別する。
【0061】
図12は、二値化手法決定部44の詳細な機能構成を示す図である。
図12に示すように、二値化手法決定部44は、閾値マトリクス選択部440、閾値マトリクス記憶部442、二値化手法記憶部444及び乱数発生部446を有する。二値化手法決定部44において、閾値マトリクス記憶部442は、複数の閾値マトリクスを記憶する。ここで、複数の閾値マトリクスは、例えば図4及び図3に示されるように、中心位置の異なるものである。乱数発生部446は、乱数を発生して閾値マトリクス選択部440に対して出力する。
【0062】
閾値マトリクス選択部440は、閾値マトリクス記憶部442に記憶されている中心位置の異なる複数の閾値マトリクスから閾値マトリクスを選択する。閾値マトリクス選択部440は、注目画素の閾値マトリクスが決定していない場合、乱数発生部446により発生された乱数に基づいて閾値マトリクスを選択する。例えば、乱数発生部446が、1から4までの乱数を発生する場合、閾値マトリクス選択部440は、当該乱数に対応する識別子の閾値マトリクスを選択する。
【0063】
閾値マトリクス選択部440は、注目画素が当該選択された閾値マトリクスを適用して二値化される旨を、二値化手法記憶部444に格納する。閾値マトリクス選択部440は、注目画素の閾値マトリクスが決定している場合、二値化手法記憶部444に記憶されている注目画素と当該注目画素に適用される閾値マトリクスとの関係を参照し、注目画素と同じハーフトーンセルに属する画素が当該閾値マトリクスを適用して二値化される旨を、二値化手法記憶部444に格納する。
【0064】
二値化手法記憶部444は、閾値マトリクス選択部440により選択された二値化手法を記憶する。二値化手法記憶部444は、画像の少なくとも2ライン分の画素の二値化手法を記憶する。二値化手法記憶部444は、メモリ122により実現される。
【0065】
図13は、二値化手法決定部44により実行される二値化手法決定処理(S20)のフローチャートを示す図である。
図13に示すように、ステップ200(S200)において、二値化手法決定部44の閾値マトリクス選択部440は、ハーフトーンセル識別部42から識別情報を入力する。ここで、識別情報は、注目画素と同一のハーフトーンセルに含まれる画素の範囲を示すものである。
【0066】
ステップ202(S202)において、閾値マトリクス選択部440は、当該ハーフトーンセルに含まれる画素に適用される二値化手法(即ち、閾値マトリクス)は既に決定されているか否かを判定する。閾値マトリクス選択部440は、二値化手法が未だ決定されていない場合にはS204の処理に進み、二値化手法が決定済みである場合にはS206の処理に進む。
【0067】
二値化手法が未決定である場合、ステップ204(S204)において、閾値マトリクス選択部440は、当該ハーフトーンセルに含まれる画素に適用される二値化手法を決定する。より具体的には、閾値マトリクス選択部440は、乱数発生部446により発生された乱数に基づいて、閾値マトリクス記憶部442に記憶されている複数の閾値マトリクスから1つの閾値マトリクスを選択する。また、閾値マトリクス選択部440は、選択した閾値マトリクスのインデックスを、ハーフトーンセル識別部42に対して出力する。
【0068】
一方、二値化手法が決定済みである場合、ステップ206(S206)において、閾値マトリクス選択部440は、二値化手法記憶部444を参照し、当該ハーフトーンセルに含まれる画素に適用される二値化手法を取得する。より具体的には、閾値マトリクス選択部440は、二値化手法記憶部444に記憶されている当該ハーフトーンセルの画素に適用される閾値マトリックスのインデックスを取得する。
【0069】
ステップ208(S208)において、閾値マトリクス選択部440は、当該選択又は取得された閾値マトリクスが、ハーフトーンセル識別部42によりハーフトーンセルを識別された各画素に対して適用される旨を、二値化手法記憶部444に格納する。ここで、二値化手法記憶部444には、閾値マトリクスのインデックスが各画素に付与されるようにして、各画素に適用される二値化手法が記憶される。
このように、二値化手法決定部44は、画素に適用される閾値マトリクスを、ハーフトーンセル毎に選択する。ハーフトーンセルは、出力画像において周期的に配置されているので、閾値マトリクスは、二値化処理において周期的に変換されることになる。
【0070】
図14は、本発明の実施形態に係る画像処理装置2による画像処理方法を実現する画像処理プログラム4の全体動作(S20)のフローチャートを示す図である。
図14に示すように、まず、ハーフトーンセル識別処理(図11;S10)が実行される。ここで、注目画素と同一のハーフトーンセルに属する画素の範囲が識別される。なお、最初の注目画素は、画像の原点(例えば、図5及び図6の左上)の画素であり、以降、注目画素は、注目ラインのライン方向に向かって順に選択される。
【0071】
S10の処理の後、二値化手法決定処理(図13;S20)が実行される。ここで、注目画素と同一のハーフトーンセルに属する画素に対して、二値化手法が決定される。
【0072】
S20の処理の後、ステップ300(S300)において、画像処理プログラム4の二値化手法決定部44は、注目ラインに含まれる全画素に対する二値化手法を決定したか否かを判定する。注目ラインに含まれる全画素に対する二値化手法の決定が終了した場合、画像処理プログラム4は、S302の処理に進む。そうでない場合、画像処理プログラム4は、S10の処理に戻って次の注目画素についてハーフトーンセル識別処理及び二値化手法決定処理を行う。
【0073】
ステップ302(S302)において、二値化部46は、二値化手法決定部44から注目ラインの画素それぞれに対して適用される閾値マトリクスに関する情報を受け付け、受付部40から注目ラインの画素それぞれの濃度を受け付け、当該画素それぞれに対して二値化処理を施す。
【0074】
ステップ304(S304)において、二値化部46は、画像に含まれる全ラインの画素に対する二値化処理を終了したか否かを判定する。全ラインの画素に対する二値化処理が終了した場合、画像処理プログラム4は、S306の処理に進む。そうでない場合、画像処理プログラム4は、S10の処理に戻って次のラインを注目ラインとしてハーフトーンセル識別処理及び二値化手法決定処理を行う。
【0075】
ステップ306(S306)において、二値化部46は、二値画像データを出力する。当該二値画像データは、プリンタ装置10に対して出力され、画像が、プリンタ装置10により用紙上に印刷される。なお、二値画像データは、メモリ122に対して出力されて格納されてもよい。
【0076】
このように、本発明の実施形態に係るハーフトーンセル識別処理は、画像の注目画素をライン方向に順に決定し、前記決定された注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する。また、本発明の実施形態に係る画像処理方法は、画像の注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別し、前記識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定し、前記決定された二値化手法を適用して、画像の画素に対して二値化処理を施す。
【0077】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る画像処理装置2は、画像の注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する識別手段と、前記識別手段により識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された二値化手法を適用して、画像の画素に対して二値化処理を施す二値化手段とを有する。これにより、濃度むらやモアレなどの画質欠陥を抑制することができる。
【0078】
画像処理装置2において、前記記憶装置は、画像の少なくとも2ライン分の画素の二値化手法を記憶する容量を有する。これにより、本発明の実施形態に係る画像処理方法では、必要な記憶容量は削減され、低コスト化を図ることができる。例えば、画像が100×100画素であって1画素につき2ビットを要する場合を考える。この場合、全画素を記憶するのに必要な容量は、20,000ビット(100×100×2)であるのに対して、本発明の実施形態に係る画像処理方法では、必要な容量は、600ビット(100×2×(2ビット+1ビット))である。ここで、2ビットに付加された1ビットは、当該画素が識別済みか未識別かを示すビットである。
【0079】
画像処理装置2は、決定された二値化手法を記憶装置に記憶する。これにより、既に決定された二値化手法を用いる場合、二値化手法決定処理を再度事項する必要がなくなるので、二値化処理の高速化を可能とする。
【0080】
また、画像処理装置2は、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定する。ハーフトーンセルは、出力画像において周期的に配置されており、網点は、ハーフトーンセル内に形成されるので、濃度及び周期的なドットの接触により発生するモアレ等の画総欠陥を効果的に抑止することができる。
【0081】
次に、本発明の実施形態に係る画像処理装置2の第1の変形例を説明する。
本発明の実施形態に係る画像処理装置2の第1の変形例は、所定の閾値マトリクスを、所定の角度回転して用いる。閾値マトリクス記憶部442は、1つの閾値マトリクスを記憶している。また、閾値マトリクス選択部440は、閾値マトリクス記憶部442に記憶されている閾値マトリクスを所定の角度回転して用いる。
【0082】
例えば、閾値マトリクス選択部440は、記憶されている閾値マトリクスを、90度、180度及び270度のいずれかの角度回転する。これにより、ハーフトーンセル内で、網点は、4通りの成長パターンで成長する。なお、閾値マトリクス442が、所定の角度回転された複数の閾値マトリクスを記憶していてもよい。
【0083】
図15は、所定の角度回転された閾値マトリクスを例示する。なお、本例においては、理解を容易にするために、ハーフトーンセルの形状と閾値マトリクスの形状とは同一である。
図15(A)〜図15(D)に例示するように、図15(B)〜図15(D)の閾値マトリクスは、図15(A)の閾値マトリクスを所定の角度回転して得られたものである。
【0084】
図16は、図15に示される閾値マトリクスが適用されて二値化処理を施された出力画像を例示する。
図16に例示するように、このような閾値マトリクスが適用されることにより、ドット同士の接触により発生するモアレや濃度むら等の画像欠陥を抑止することができる。
【0085】
なお、閾値マトリクス記憶部442が、1つの閾値マトリクスを記憶しており、閾値マトリクス選択部440が、閾値マトリクス記憶部442に記憶されている当該閾値マトリクスを選択してもよい。この場合、二値化部46は、同一のハーフトーンセルに属する画素に対して、同一の変化が加えられた閾値マトリクスを適用する。例えば、二値化部46は、二値化処理決定部44により選択された閾値マトリクスを受け付けて、ハーフトーンセル毎に、所定の角度回転させた閾値マトリクスを適用して、画素に対して二値化処理を施す。
【0086】
次に、本発明の実施形態に係る画像処理装置2の第2の変形例を説明する。
本発明の実施形態に係る画像処理装置2の第2の変形例は、同一のハーフトーンセルに属する画素の濃度に同一の変化を加える。閾値マトリクス記憶部442は、1つの閾値マトリクスを記憶しており、閾値マトリクス選択部440は、閾値マトリクス記憶部442に記憶されている当該閾値マトリクスを選択する。さらに、二値化部46は、受付部40から入力された濃度について、同一のハーフトーンセルに属する画素の濃度に同一の変化を加えて、変化を加えられた濃度と、選択された閾値マトリクスとに基づいて二値化処理を行う。
【0087】
図17は、画像の濃度に対して変化を加えた上で生成された二値画像を例示する図である。
図17(A)は、閾値マトリクス記憶部442に記憶されている閾値マトリクスを例示する。なお、本例においては、理解を容易にするために、ハーフトーンセルの形状と閾値マトリクスの形状とは同一である。図17(B)は、入力された濃度(例えば、濃度25%)に対して変化を加えられた濃度と、図17(A)に示される閾値マトリクスとに基づいて二値化された画像を例示する図である。
【0088】
図17(A)及び図17(B)に例示するように、本発明の実施形態に係る画像処理装置2の第2の変形例は、同一のハーフトーンセルに属する画素の濃度を、例えば乱数により増減させて、濃度に同一の変化を加えるので、網点の輪郭形状が維持された上で、周期性が除去されることができる。したがって、網点の輪郭部のドットのオン及びオフが不安定になることを防止することができる。これにより、画像むら等の画像欠陥を効果的に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】多値画像の二値化処理を説明する図であって、図1(A)は、入力された多値画像を例示し、図1(B)〜図1(E)は、この多値画像に対して異なる二値化処理が施された二値画像のうち図中のAに示される画像部分に対応する部分を例示する。
【図2】本発明に係る画像処理方法において適用される閾値マトリクスとハーフトーンセルを説明する図である。
【図3】本発明に係る画像処理方法で用いられる閾値マトリクスの詳細を例示する図であって、図3(A)は、二値画像を生成するための矩形の閾値マトリクスを示し、図3(B)は、図3(A)に示される矩形の閾値マトリクスが適用される出力画像の一部を示す。
【図4】本発明に係る画像処理方法で適用される複数の閾値マトリクスと、ハーフトーンセル内に形成される網点の中心位置との関係を例示する図である。
【図5】本発明に係る画像処理方法において実行されるハーフトーンセル識別方法を説明する図である。
【図6】本発明に係る画像処理方法において実行されるハーフトーンセル識別方法を説明する図である。
【図7】本発明に係る画像処理方法が適用されて生成された二値画像を説明する図であって、図7(A)は、1種類の閾値マトリクスを用いて生成された二値画像を例示し、図7(B)は、本発明に係る画像処理方法において4種類の閾値マトリクスを用いて生成された二値画像を例示する。
【図8】本発明の実施形態に係る画像処理装置2のハードウェア構成を、制御装置12を中心に示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る画像処理装置2により実行される画像処理方法及びハーフトーンセル識別方法を実現する画像処理プログラム4の機能構成を示す図である。
【図10】ハーフトーンセル識別部42の詳細な機能構成を示す図である。
【図11】ハーフトーンセル識別部42により実行されるハーフトーンセル識別処理(S10)のフローチャートを示す図である。
【図12】二値化手法決定部44の詳細な機能構成を示す図である。
【図13】二値化手法決定部44により実行される二値化手法決定処理(S20)のフローチャートを示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係る画像処理装置2による画像処理方法を実現する画像処理プログラム4の全体動作(S20)のフローチャートを示す図である。
【図15】所定の角度回転された閾値マトリクスを例示する。
【図16】図15に示される閾値マトリクスが適用されて二値化処理を施された出力画像を例示する。
【図17】画像の濃度に対して変化を加えた上で生成された二値画像を例示する図である。
【符号の説明】
【0090】
2 画像処理装置
4 画像処理プログラム
10 プリンタ装置
12 制御装置
14 通信装置
16 記録装置
18 UI装置
20 制御装置
40 受付部
42 ハーフトーンセル識別部
44 二値化手法決定部
46 二値化部
120 CPU
122 メモリ
160 記録媒体
420 主走査方向隣接画素識別部
422 副走査方向隣接画素識別部
424 副走査方向近傍画素識別部
440 閾値マトリクス選択部
442 閾値マトリクス記憶部
444 二値化手法記憶部
446 乱数発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する識別手段と、
前記識別手段により識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された二値化手法を適用して、画像の画素に対して二値化処理を施す二値化手段と
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記識別手段は、注目画素の副走査方向に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記識別手段は、注目画素の副走査方向に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属する場合、当該隣接画素の主走査方向の近傍画素が当該ハーフトーンセルに属するか否かを識別する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記決定手段は、画像の画素に適用される閾値マトリクスを決定する
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記決定手段は、中心位置の異なる複数の閾値マトリクスから閾値マトリクスを選択する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記決定手段は、閾値マトリクスを所定の角度回転する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記決定手段により決定された二値化手法を記憶する記憶装置をさらに有し、
前記二値化手段は、前記記憶装置に記憶された二値化手法によって二値化を行い、
前記記憶装置は、画像の少なくとも2ライン分の画素の二値化手法を記憶する容量を有する
請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記二値化手段は、同一のハーフトーンセルに属する画素に対して、同一の変化が加えられた閾値マトリクスを適用する
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記二値化手段は、同一のハーフトーンセルに属する画素の濃度に同一の変化を加える
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像の注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別し、
前記識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定し、
前記決定された二値化手法を適用して、画像の画素に対して二値化処理を施す
画像処理方法。
【請求項11】
画像の注目画素をライン方向に順に決定し、
前記決定された注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する
ハーフトーンセル識別方法。
【請求項12】
前記識別することは、画素が属するハーフトーンセルをライン毎に識別する
請求項11に記載のハーフトーンセル識別方法。
【請求項13】
前記識別することは、ラインの法線方向において注目画素に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する
請求項11又は12に記載のハーフトーンセル識別方法。
【請求項14】
前記識別することは、ラインの法線方向において注目画素に隣接する画素が、当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属する場合、当該隣接画素のライン方向の近傍画素が当該ハーフトーンセルに属するか否かを識別する
請求項13に記載のハーフトーンセル識別方法。
【請求項15】
コンピュータを有する画像処理装置において、
画像の注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する識別ステップと、
前記識別された結果に基づいて、ハーフトーンセル毎に、画像の画素に適用される二値化手法を決定する決定ステップと、
前記決定された二値化手法を適用して、画像の画素に対して二値化処理を施す二値化ステップと
を前記画像処理装置のコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項16】
コンピュータを含むハーフトーンセル識別装置において、
画像の注目画素をライン方向に順に決定する決定ステップと、
前記決定された注目画素に隣接する画素が当該注目画素と同一のハーフトーンセルに属するか否かを識別する識別ステップと
を前記ハーフトーンセル識別装置のコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−300298(P2007−300298A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125369(P2006−125369)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】