説明

画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム

【課題】形状や大きさが多様な泡領域を精度良く検出することができる画像処理装置等を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、画像から、記憶部14に格納された泡領域の形状モデルに対応する形状を有する領域を泡候補領域として設定する泡候補領域設定部16と、泡候補領域が有する情報に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する泡領域判定部17とを備える。上記泡候補領域設定部16は、上記画像から円形状又は円弧形状を有する領域を検出する。また、上記泡領域判定部17は、泡候補領域の周縁部に含まれる境界領域、又は、該境界領域の内側に位置する内部領域が有する情報を用いて判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像から泡が映し出された領域を検出する画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者等の被検者の体内に導入されて、生体内を非侵襲に観察する医用観察装置として、内視鏡が広く普及している。近年では、カプセル型の筐体内部に撮像装置及び通信装置等を収容し、撮像装置により撮像された画像データを体外に無線送信する飲み込み型の内視鏡(カプセル内視鏡)も開発されている。このような医用観察装置によって生体の管腔内を撮像した一連の画像(生体内画像)は膨大な数(数万枚以上)に上り、各生体内画像に対する観察及び診断には多くの経験が必要とされる。そのため、医師による診断を補助する医療診断支援機能が望まれている。
【0003】
このような機能を実現する画像認識技術の1つとして、医療診断に当たって観察が不要な領域を生体内画像から自動的に検出して除去する技術が提案されている。ここで、観察が不要な領域とは、生体組織である粘膜以外の領域であり、例えば、管腔内に生じた気泡(以下、単に「泡」ともいう)が映し出された領域(以下、「泡領域」という)が挙げられる。例えば、特許文献1には、画素の勾配強度と、泡画像の特徴に基づいて予め設定された泡モデルとの相関値を算出し、相関値が所定の閾値以上となる領域を泡領域として検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−313119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際の泡領域には様々な形状や大きさのものが存在する。そのため、パターンマッチングにより泡領域を検出する場合、予め多様な泡モデルを多数用意し、1つの画像内の各領域についてこれらの泡モデルとの相関値を算出しなければならず、膨大な量の演算が必要となる。一方、演算量を低減するために、泡モデルの形状や大きさをある程度限定すると共に、相関を評価する際の閾値を低く設定することも考えられるが、この場合、誤検出が生じたり、検出漏れが生じたりすることがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、形状や大きさが多様な泡領域を精度良く検出することができる画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、画像に含まれる泡領域を検出する画像処理装置において、前記画像から、記憶手段に格納された泡領域の形状モデルに対応する形状を有する領域を泡候補領域として設定する泡候補領域設定手段と、前記泡候補領域が有する情報に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する泡領域判定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像処理方法は、画像に含まれる泡領域を検出する画像処理方法において、泡候補領域設定手段により、前記画像から、記憶手段に格納された泡領域の形状モデルに対応する形状を有する領域を泡候補領域として設定する泡候補領域設定ステップと、泡領域判定手段により、前記泡候補領域が有する情報に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する泡領域判定ステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る画像処理プログラムは、画像に含まれる泡領域を検出する画像処理プログラムにおいて、泡候補領域設定手段により、前記画像から、記憶手段に格納された泡領域の形状モデルに対応する形状を有する領域を泡候補領域として設定する泡候補領域設定ステップと、泡領域判定手段により、前記泡候補領域が有する情報に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する泡領域判定ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像から、泡領域の形状モデルを用いて検出された泡候補領域に対し、この泡候補領域が有する情報に基づいて、当該泡候補領域が泡判定であるか否かを判定するので、泡領域を精度良く検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、泡領域の構造を説明する図である。
【図3】図3は、図1に示す画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、生体内画像の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、泡候補領域の内部領域の抽出方法を説明する図である。
【図6】図6は、図1に示す円形状領域検出部の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、図7に示す内部領域抽出部の動作を示すフローチャートである。
【図9】図9は、泡候補領域の内部領域の抽出方法を説明する図である。
【図10】図10は、泡候補領域の内部領域の抽出方法を説明する図である。
【図11】図11は、図7に示す内部領域特徴量算出部の動作を示すフローチャートである。
【図12】図12は、本発明の実施の形態3に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、図12に示す画像処理装置に動作を示すフローチャートである。
【図14】図14は、境界領域の設定方法を説明する図である。
【図15】図15は、図12に示す勾配強度算出部の動作を示すフローチャートである。
【図16】図16は、境界領域の勾配情報の算出方法を説明する図である。
【図17】図17は、境界領域における円弧の連続性を表す特徴量の算出方法を説明する図である。
【図18】図18は、変形例3−2に係る画像処理装置の演算部の構成を示すブロック図である。
【図19】図19は、境界領域におけるエッジ画素の泡候補領域の中心座標についての相対性を表す評価値の算出方法を説明する図である。
【図20】図20は、変形例3−3に係る画像処理装置の演算部の構成を示すブロック図である。
【図21】図21は、境界領域におけるエッジ画素の円形性を表す評価値の算出方法を説明する図である。
【図22】図22は、本発明の実施の形態4に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図23】図23は、図22に示す画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図24】図24は、図22に示す画像処理装置における泡領域の判定方法を説明する図である。
【図25】図25は、本発明の実施の形態5に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図26】図26は、図25に示す画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図27】図27は、図25に示す画像処理装置における泡領域の判定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これら実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0013】
以下に説明する実施の形態に係る画像処理装置は、内視鏡又はカプセル内視鏡等の医用観察装置によって撮像された画像を処理するものであり、具体的には、被検者の生体(管腔)内を撮像した画像から、泡が映された泡領域を検出する処理を行う。以下の説明において、画像処理を施される生体内画像は、例えば、各画素においてR(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分に対する256階調の画素レベル(画素値)を持つカラー画像である。なお、以下の実施の形態においては、一例として生体内画像に対する画像処理について説明するが、本発明に係る画像処理装置は、一般的な画像から泡領域を検出する場合に適用することも可能である。
【0014】
また、以下の実施の形態において検出対象とされる泡領域は、表面張力の作用により、通常、円形状、偏円形状若しくは楕円形状等の類円形状、又はそれらの周の一部の形状(円弧等)の平面外観を有する。そのため、本出願において単に「円形」という場合、真円のみならず、偏円及び楕円等の類円形状を含むものとし、単に「円弧」という場合、真円及び類円の周の一部の形状を含むものとする。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、画像処理装置1は、画像処理装置1全体の動作を制御する制御部10と、画像取得部11と、入力部12と、表示部13と、記憶部14と、演算部15とを備える。
【0016】
画像取得部11は、医用観察装置によって撮像された生体内画像の画像データを取得する。画像取得部11は、医用観察装置を含むシステムの態様に応じて適宜構成される。例えば、医用観察装置がカプセル内視鏡であり、医用観察装置との間の画像データの受け渡しに可搬型の記録媒体が使用される場合、画像取得部11は、この記録媒体を着脱自在に装着し、保存された生体内画像の画像データを読み出すリーダ装置で構成される。また、医用観察装置によって撮像された生体内画像の画像データを保存しておくサーバを設置する場合、画像取得部11は、サーバと接続される通信装置等で構成され、サーバとデータ通信を行って生体内画像の画像データを取得する。或いは、画像取得部11を、内視鏡等の医用観察装置から、ケーブルを介して画像信号を入力するインターフェース装置等で構成しても良い。
【0017】
入力部12は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等によって実現され、入力信号を制御部10に出力する。
表示部13は、LCDやELディスプレイ等の表示装置によって実現され、制御部10の制御の下で、生体内画像を含む各種画面を表示する。
【0018】
記憶部14は、更新記録可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵若しくはデータ通信端子で接続されたハードディスク、又は、CD−ROM等の情報記録媒体及びその読取装置等によって実現される。記憶部14は、画像取得部11によって取得された生体内画像の画像データの他、画像処理装置1を動作させると共に、種々の機能を画像処理装置1に実行させるためのプログラムや、このプログラムの実行中に使用されるデータ等を格納する。具体的には、記憶部14は、生体内画像から泡領域を検出するための画像処理プログラム141を格納する。
【0019】
演算部15は、CPU等のハードウェアによって実現され、画像処理プログラム141を読み込むことにより、生体内画像の画像データを処理して、生体内画像から泡領域を検出するための種々の演算処理を行う。
【0020】
制御部10は、CPU等のハードウェアによって実現され、記憶部14に格納された各種プログラムを読み込むことにより、画像取得部11から入力される画像データや入力部12から入力される操作信号等に従って、画像処理装置1を構成する各部への指示やデータの転送等を行い、画像処理装置1全体の動作を統括的に制御する。
【0021】
ここで、演算部15による画像処理において検出対象としている泡領域について説明する。図2は、泡領域の構造例を説明する図である。図2(a)に示すように、泡100は、空気等の気体を含んだ液体(水分等)が表面張力の作用により丸まったものであり、水分等の膜101と、その内部の気体102とからなる。このような泡100に光を照射して撮像を行うと、図2(b)に示すような泡領域110の画像が得られる。この泡領域110は、外形的には円形状又は円弧形状を有し、内部構造として、膜101の厚み部分に対応し、泡領域110の周縁部に含まれる境界領域111と、その内側に位置する内部領域112と、内部領域112の内側の複数箇所に見られる高輝度領域113とを含む。この内、境界領域111は、照射光が膜101において散乱することにより生じた明るい領域である。一方、内部領域112は、照明光の多くが膜101を透過することにより生じた領域であり、全体的に暗い領域となる。高輝度領域113は、照射光が膜101の表面で鏡面反射することにより光源が映り込んでハレーションが生じた、極めて輝度が高い領域である。
【0022】
次に、演算部15の詳細な構成について説明する。演算部15は、予め記憶部14に格納された泡領域の形状モデル(泡モデル)に対応する形状を有する領域を生体内画像から検出し、この領域を泡候補領域として設定する泡候補領域設定部16と、泡候補領域が有する情報に基づいて当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する泡領域判定部17とを備える。
【0023】
泡候補領域設定部16は、円形状領域検出部161を有する。円形状領域検出部161は、生体内画像から抽出したエッジを泡モデルと比較し、泡モデルとの相関が高いエッジ領域を抽出することにより、円形状又は円弧形状を有する領域を検出する。
【0024】
泡領域判定部17は、内部領域抽出部18と、内部領域特徴量算出部19と、判定部20とを有する。
内部領域抽出部18は、泡候補領域内の所定の領域を内部領域112として抽出する。
【0025】
内部領域特徴量算出部19は、内部領域112における特徴量を算出する。より詳細には、内部領域特徴量算出部19は、内部領域112のテクスチャを表す特徴量として、内部領域112における画素値(例えば輝度値)の分散(参考:CG−ARTS協会、ディジタル画像処理、p.71)を算出するテクスチャ算出部191を有する。
【0026】
判定部20は、内部領域112のテクスチャを表す特徴量(画素値の分散)に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判別する。ここで、上述のとおり、内部領域112は照射光が透過した暗い領域であるが、その内側に高輝度領域113が存在するため、内部領域112の内側全体の明るさの幅は、生体内画像120の他の領域と比べて大きくなる傾向にある。そこで、内部領域112における画素値の分散を所定の閾値と比較することにより、当該泡候補領域が泡領域であるか、それ以外の領域(生体の粘膜領域等)であるかを判別することができる。具体的には、判別部20は、画素値の分散が所定の閾値以上である場合、泡候補領域は泡領域であると判別し、画素値の分散が所定の閾値よりも小さい場合、泡候補領域は泡領域ではないと判別する。
【0027】
次に、画像処理装置1の動作について説明する。図3は、画像処理装置1の動作を示すフローチャートである。また、図4は、カプセル内視鏡によって撮像され、画像処理装置1によって処理される生体内画像の一例を示す模式図である。図4に示すように、生体内画像120には時に、生体の粘膜とは異なる特徴を有する領域122が、粘膜領域121に重なって映し出される場合がある。
【0028】
まず、ステップS10において、画像取得部11は、外部から生体内画像群の入力を受け付け、記憶部14に格納する。演算部15は、記憶部14から処理対象の生体内画像120を読み出して取得する。
【0029】
ステップS11において、円形状領域検出部161は、生体内画像120内から、円形状領域123を検出する。ここで検出される円形状領域123は、完全な円形状を有する領域だけでなく、周の一部が欠けた円弧形状を有する領域あっても良い。なお、円形状領域の検出処理の詳細については後述する。
【0030】
ステップS12において、泡候補領域設定部16は、検出された円形状領域123の中心位置の座標C(x,y)及び半径rOUTを、泡候補領域を表す情報として記憶部14に記憶させる。これにより、円形状領域123が、泡候補領域として設定される。
【0031】
ステップS13において、内部領域抽出部18は、各泡候補領域123から内部領域を抽出する。具体的には、図5に示すように、泡候補領域123よりも半径が小さい同心円を、次式(1)を用いて算出する。
IN=rOUT×K …(1)
式(1)において、rINは同心円の半径であり、Kは所定の係数(0.0<K<1.0)である。
内部領域抽出部18は、半径rINの同心円に内包される領域を内部領域124として抽出する。
【0032】
続くステップS14において、内部領域特徴量算出部19は、各泡候補領域123から抽出された内部領域124における画素値の分散を算出する。この分散の値がテクスチャ特徴量として用いられる。
【0033】
ステップS15において、判定部20は、テクスチャ特徴量を所定の閾値と比較することにより、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判別する。
【0034】
次に、円形状領域の検出処理(ステップS11)について詳しく説明する。図6は、円形状領域検出部161の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS101において、円形状領域検出部161は、生体内画像120の各画素における画素値の勾配強度を算出する(参考:CG−ARTS協会、ディジタル画像処理、p.114〜p.121)。具体的には、各画素に対し、ソーベル(Sobel)フィルタ等の1次微分フィルタや、ラプラシアン(Laplacian)フィルタ等の2次微分フィルタを用いてフィルタリング処理を施す。
【0035】
続くステップS102において、円形状領域検出部161は、勾配強度が所定の閾値以上となる画素の位置をエッジとして抽出する。
【0036】
ステップS103において、円形状領域検出部161は、予め作成された複数の泡モデル(テンプレート)を生体内画像120の各画素位置に適用し、抽出されたエッジと泡モデルとの相関値を算出する。相関値の算出方法としては、NCC(正規化相互相関:Normalized Cross-Correlation)類似度の他、SSD相違度やSAD相違度等、相関の計測が可能であればどのような手法を用いても良い(参考:CG−ARTS協会、ディジタル画像処理、p.203〜p.204)。
【0037】
ステップS104において、円形状領域検出部161は、各画素位置において、相関値が最大(類似度が最大又は相違度が最小)となる泡モデルの半径rMODEL及び相関値を記憶部14に記憶させる。
【0038】
ステップS105において、円形状領域検出部161は、相関値の最大値が所定の閾値以上(相違度の場合、最小値が閾値以下)となる画素位置を抽出する。そして、抽出された画素位置Cと、各画素位置Cにおいて相関値が最大となる泡モデルの半径rMODELとを、円形状領域の中心位置の座標C(x,y)及び半径rOUTとして出力する。
【0039】
なお、上記ステップS101及びS102の代わりに、ケニー(Canny)のエッジ検出アルゴリズム(CG−ARTS協会、ディジタル画像処理、p.208〜p.210)等、既知の方法によってエッジ(輪郭線)検出を行っても良い。また、円形状領域の検出は、上述した泡モデルとの相関値を算出する方法に限らず、既知の様々な方法で行っても構わない。
【0040】
以上説明したように、実施の形態1によれば、泡モデルを用いて検出された円形状又は円弧形状の泡候補領域に対し、この泡候補領域の内部領域の特徴量に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する。このため、泡モデルのみを用いて泡領域を検出する場合と比較して、泡領域の誤検出を低減することが可能となる。また、実施の形態1によれば、後の泡領域の判定ステップを実行するため、泡モデルによる円形状領域の検出ステップにおいては、閾値を低く設定することができる。従って、泡領域の検出漏れを低減することが可能となる。さらに、実施の形態1によれば、泡モデルのみを用いて泡領域を検出する場合よりも、使用する泡モデルの数を低減することができる。この場合、泡領域の検出精度を維持又は向上させつつ、トータルの演算量を低減させることが可能となる。
【0041】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図7に示すように、実施の形態2に係る画像処理装置2は演算部21を備える。その他の構成については、図1に示すものと同様である。
【0042】
演算部21は、泡候補領域設定部16及び泡領域判定部22を備える。この内、泡候補領域設定部16の構成及び動作については、実施の形態1において説明したものと同様である。泡領域判定部22は、泡候補領域設定部16により設定された泡候補領域が泡領域であるか否かを、当該泡候補領域が有する情報に基づいて判定する。実施の形態2においては、その際に用いられる情報が、実施の形態1におけるものとは異なる。
【0043】
泡領域判定部22は、泡候補領域内から内部領域を抽出する内部領域抽出部23と、内部領域の特徴量として、その内側に存在する高輝度領域の画素値に基づいて算出する内部領域特徴量算出部24と、高輝度領域における特徴量に基づいて当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する判定部25とを備える。
【0044】
内部領域抽出部23は、泡候補領域内の画素の輝度値を算出する輝度値算出部231と、この輝度値に基づいて泡候補領域を境界領域と内部領域とに分割する泡候補領域分割部232とを有する。
【0045】
内部領域特徴量算出部24は、内部領域の内側に存在する高輝度領域を抽出する高輝度領域抽出部241と、抽出された高輝度領域の特徴量を算出する高輝度領域特徴量算出部242とを有する。
【0046】
次に、画像処理装置2の動作について説明する。画像処理装置2全体の動作は、図3に示すものと同様であり、ステップS13〜S15における詳細な動作が実施の形態1とは異なる。
【0047】
まず、泡候補領域の内部領域の抽出処理(ステップS13)について説明する。図8は、内部領域抽出部23の動作を示すフローチャートである。また、図9及び図10は、泡候補領域の内部領域の抽出方法を説明する図である。
【0048】
まず、ステップS201において、輝度値算出部231は、泡候補領域123に含まれる各画素のR値(R)、G値(G)、及びB値(B)から、次式(2)を用いて輝度値Yを算出する(参考:CG−ARTS協会、ディジタル画像処理、p.299)。
Y=0.3×R+0.59×G+0.11×B …(2)
【0049】
ステップS202において、泡候補領域分割部232は、泡候補領域123よりも半径が小さい複数の同心円Sn(n=1、2、…)を求める(図9)。ここで、生体内画像における1画素のサイズをδとすると、同心円の半径rnの範囲は、(rOUT−δ)≧rn≧δとなる。
【0050】
ステップS203において、泡候補領域分割部232は、ある同心円Snに内包される領域(内側領域)A、及び同心円Snに内包されない泡候補領域123内の領域(外側領域)Bにおける輝度値Yの平均値をそれぞれ算出する(図10)。ここで、内側領域Aにおける輝度の平均値をYAとし、外側領域Bにおける輝度の平均値をYBとする。
【0051】
ステップS204において、泡候補領域123内において、内側領域Aと外側領域Bとにおける輝度値の差ΔY=YA−YBを算出する。泡候補領域分割部232は、このような輝度値の差ΔYを、ステップS202において求めた各同心円S1、S2、…について算出する。
【0052】
このように半径rnを徐々に変化させながら、同心円Snの内外の輝度値の差ΔYを算出すると、同心円Snの円周が、泡領域の内部領域112と境界領域111との境界(図2参照)と略一致したとき、輝度値の差ΔYが最も大きくなる。そこで、泡候補領域分割部232は、輝度値の差ΔYが最大となるときの内側領域Aを、内部領域124として抽出する(ステップS205)。
【0053】
次に、内部領域における特徴量の算出処理(ステップS14)について説明する。図11は、内部領域特徴量算出部24の動作を示すフローチャートである。
ここで、図2に示すように、内部領域112の一部には、光源が映り込んでハレーションが発生した領域(高輝度領域113)が見られる。このような領域は、非常に高輝度であるという特徴を有する。そこで、内部領域112に高輝度領域が存在するか否かを判定することにより、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判断することができる。
【0054】
まず、ステップS211において、高輝度領域抽出部241は、内部領域124に含まれる各画素の輝度値Yを、上式(2)を用いて算出する。なお、このとき、図8のステップS201において算出した値を利用しても良い。
【0055】
続いて、ステップS212において、高輝度領域抽出部241は、輝度値Yが所定の閾値以上となる画素を抽出することにより、内部領域124の内側に存在する高輝度領域を抽出する。
【0056】
さらに、ステップS213において、高輝度領域特徴量算出部242は、抽出された領域の面積(又は画素数)を算出する。それにより算出された面積(画素数)がテクスチャ特徴量として用いられる。
【0057】
次に、泡候補領域の判定処理(ステップS15)について説明する。
内部領域124の内側から高輝度領域が検出された場合、その輝度値がハレーションによるものか、又はノイズによるものかを判別する必要がある。ここで、ハレーションにより高輝度領域が生じている場合、高輝度領域はある程度の大きさの面積を有する(図2参照)。そこで、判定部25は、高輝度領域として抽出された領域の面積が所定の閾値以上である場合、その領域はハレーションに起因した高輝度領域であり、この場合、当該泡候補領域は泡領域であると判定する。一方、判定部25は、高輝度領域として抽出された領域の面積が所定の閾値より小さい場合、その領域の輝度値はノイズであり、当該泡候補領域は泡領域でないと判定する。
【0058】
以上説明したように、実施の形態2によれば、泡候補領域に含まれる画素の輝度値を用いることにより、その泡候補領域が泡領域であった場合に有する内部構造により対応した内部領域を抽出することができる。従って、泡領域の判定精度をさらに向上させることが可能となる。
【0059】
(変形例)
泡領域の内部領域の内側で見られるハレーションの領域は、高輝度且つ白色という特徴を有している。そこで、内部領域における特徴量として、内部領域124の内側から検出された高輝度領域の色特徴量を算出しても良い。具体的には、高輝度領域特徴量算出部242は、高輝度領域として抽出された画素のR値、G値、及びB値を取得し、色成分毎に平均値(平均R値、平均G値、平均B値)を算出する。また、この場合、判定を行う際に参照する教師データとして、生体内において生じたハレーションの色範囲を表すデータを予め作成して記憶部14に格納しておく。判定部25は、平均R値、平均G値、及び平均B値が上記色範囲に含まれる場合、泡候補領域から抽出された高輝度領域はハレーションに起因するものであり、当該泡候補領域は泡領域であると判定する。一方、判定部25は、平均R値、平均G値、及び平均B値が上記色範囲に含まれない場合、抽出された高輝度領域はノイズであり、当該泡候補領域は泡領域ではないと判定する。
【0060】
或いは、判定部25は、内部領域124の内側から検出された高輝度領域が所定の閾値以上の面積(又は画素数)を有し、且つ、この高輝度領域の色特徴量がハレーションの色範囲に含まれる場合に、当該泡候補領域が泡領域であると判定しても良い。
【0061】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図12に示すように、実施の形態3に係る画像処理装置3は演算部30を備える。その他の構成については、図1に示すものと同様である。
【0062】
演算部30は、泡候補領域設定部16及び泡領域判定部31を備える。泡領域判定部31は、泡候補領域設定部16により設定された泡候補領域123(図4)が泡領域であるか否かを、当該泡候補領域123の境界領域に関する情報を用いて判定する。
【0063】
泡領域判定部31は、境界領域抽出部32と、勾配強度算出部33と、形状特徴量算出部34と、判定部35とを備える。
境界領域抽出部32は、泡候補領域123の境界近傍の所定の領域を抽出し、これを境界領域として設定する。
【0064】
勾配強度算出部33は、境界領域127の勾配情報として、境界領域127に含まれる画素における画素値の勾配強度を算出する。より詳細には、勾配強度算出部33は、画素値の勾配が凸となる方向における勾配強度を算出する凸部勾配強度算出部331と、算出された勾配強度に基づいてエッジを抽出するエッジ抽出部332とを有する。ここで、このようなエッジを抽出するのは、以下の理由による。即ち、泡領域110(図2)であれば、通常、境界領域111内の画素値は内部領域112や泡領域110の外側の画素値よりも大きくなるため、境界領域111内の周方向において画素値のピークが現れる。このため、泡候補領域123に設定された境界領域から、画素値のピークの存在を示す凸の勾配を検出することにより、泡領域の境界領域である可能性が高いエッジを抽出できるからである。
【0065】
形状特徴量算出部34は、泡候補領域123の境界の形状情報を表す特徴量を算出する。より詳細には、形状特徴量算出部34は、そのような特徴量として、境界領域127における勾配強度の連続性を表す評価値を算出する連続性算出部341を有する。
【0066】
判定部35は、泡候補領域123の境界の形状情報を表す特徴量に基づいて、当該泡候補領域123が泡領域であるか否かを判定する。ここで、上述したように、泡領域110は、表面張力の影響から、円形又は円の一部が途切れた円弧形の境界形状を有する。そこで、判定部35は、上記特徴量に基づいて、泡候補領域123の境界領域127から抽出されたエッジが幾何学的に円形状又は円弧形状を有しているか否かを判定し、円形状又は円弧形状を有している場合に、その泡候補領域123は泡領域であるとする判定を行う。
【0067】
次に、画像処理装置3の動作について説明する。図13は、画像処理装置3の動作を示すフローチャートである。なお、図13に示すステップの内、ステップS10〜S12については、実施の形態1において説明したものと同様である。
【0068】
ステップS31において、境界領域抽出部32は、例えば図14に示すように、泡候補領域123の円周126から距離d1の範囲内の領域を抽出し、この領域を境界領域127に設定する。さらに、境界領域抽出部32は、境界領域127に含まれる画素数Nをカウントする。
【0069】
ステップS32において、勾配強度算出部33は、境界領域127の勾配情報を算出する。図15は、勾配強度算出部33の詳細な動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS301において、凸部勾配強度算出部331は、境界領域127に含まれる各画素における画素値の勾配強度を算出する。勾配強度の算出方法としては、1次微分(ソーベルフィルタ等)や2次微分等、既知の様々な手法を用いることができる。例えば、2次微分を用いる場合、凸部勾配強度算出部331は、図16に示すように、座標(x,y)に位置する画素の画素値P(x,y)に対し、次式(3)〜式(6)を用いて、水平方向における2次微分dHと、垂直方向における2次微分dVと、第1の斜め方向における2次微分dD1と、第2の斜め方向における2次微分dD2とを算出する。
【数1】

ここで、パラメータuは整数であり、パラメータu’は、(u/√2)を四捨五入した整数である。これらのパラメータu及びu’は、2次微分算出時の画素範囲を示す。即ち、パラメータuを所望の値に設定することにより、勾配成分の精度を調節することができる。例えば、パラメータuの値を小さくすると、空間周波数の高い勾配成分を算出することができ、パラメータuの値を大きくすると、空間周波数の低い勾配成分を算出することができる。パラメータuの値としては、予め固定値を設定しておいても良いし、生体内画像の特性に応じて動的な値を設定しても良い。或いは、所望の値のパラメータuを外部から与えて処理することとしても良い。
【0070】
続くステップS302において、凸部勾配強度算出部331は、次式(7)を用いて、方向別に算出された2次微分dH、dV、dD1、dD2の内から値が正となる最大値を抽出することにより、勾配が増加する(即ち、周囲の画素に対して勾配が凸となる)方向における勾配強度(凸部勾配強度)g(x,y)を算出する。
【数2】

【0071】
ここで、図2に示すように、泡領域110の場合、境界領域111の画素値は内部領域112や泡領域110の外側の画素値よりも大きくなるため、境界領域111内の径方向に沿って画素値のピークが現れる。そこで、凸部勾配強度gを算出することにより、径方向における画素値の立ち上がりを検出することができる。
【0072】
さらに、ステップS303において、エッジ抽出部332は、各画素について算出された凸部勾配強度g(x,y)を所定の閾値で2値化することにより、エッジ画素を抽出する。図17は、このようにして境界領域127から抽出されたエッジ画素GEを示している。
【0073】
ステップS33において、形状特徴量算出部34は、境界領域127の形状情報の特徴量として、円弧の連続性を表す評価値を算出する。
具体的には、まず、連続性算出部341は、境界領域127において抽出されたエッジ画素GEの個数NEDG1(即ち、エッジの面積に相当)を取得する。
【0074】
続いて、連続性算出部341は、各エッジ画素GEについて、周囲8方向のいずれかに隣接するエッジ画素が存在するか否かを判定し、隣接するエッジ画像が存在するエッジ画素GEの個数NEDG2をカウントする。例えば、図17に示すエッジ画素GE(1)の場合、右斜め上に隣接するエッジ画素が存在するため、カウントされる。一方、エッジ画素GE(2)の場合、周囲8方向には隣接するエッジ画素が存在しないため、カウントされない。
【0075】
連続性算出部341は、これらの値NEDG1及びNEDG2を用いて、次式(8)で与えられる評価値ECONを算出する。
CON=(NEDG1×(1−k)+NEDG2×k)/N …(8)
ここで、Nは、境界領域127に含まれる全画素数であり、評価値を泡候補領域123のサイズで正規化するために用いられる。また、k(0<k<1)は、連続しているエッジ画素を重み付けするための係数(定数)である。
【0076】
ステップS34において、判定部35は、評価値ECONを所定の閾値と比較することにより、泡候補領域123の判定を行う。即ち、評価値ECONが閾値以上である場合、エッジ画素GEの連続性は高く、この場合、泡候補領域123は泡領域であると判定する。一方、評価値ECONが所定の閾値よりも小さい場合、エッジ画素GEの連続性は低く、この場合、泡候補領域123は泡領域ではないと判定する。
【0077】
以上説明したように、実施の形態3によれば、泡候補領域の境界領域の形状情報に基づいて泡候補領域に対する判定を行うので、少ない演算量で精度の良い判定を行うことができる。
【0078】
(変形例3−1)
連続性算出部341は、円弧の連続性を表す評価値として、エッジ画素GEの個数NEDG1及びNEDG2の代わりに、エッジ画素GEの勾配強度を用いて算出しても良い。具体的には、境界領域127において抽出されたエッジ画素GEの最大勾配強度gの合計値SUMEDG1を算出する。また、周囲8方向のいずれかに隣接するエッジ画素が存在するエッジ画素GEを検出し、それらのエッジ画素GEの最大勾配強度gの合計値SUMEDG2を算出する。そして、合計値SUMEDG1及びSUMEDG2を用いて、次式(9)で与えられる評価値ECON’を算出する。
CON’=(SUMEDG1×(1−k)+SUMEDG2×k)/(N×gMAX)…(9)
ここで、gMAXは、エッジ画素GEが取りうる勾配強度の最大値(例えば、255)である。
この評価値ECON’は、高勾配のエッジ画素同士が隣接しているほど大きくなり、円弧を形成するエッジ画素GEの連続性が高いことを示す。
【0079】
(変形例3−2)
図18は、変形例3−2に係る画像処理装置の演算部30−2の構成を示すブロック図である。この演算部30−2において、形状特徴量算出部36は、泡候補領域123の境界の形状情報を表す特徴量として、境界領域127において抽出されたエッジ画素GEの泡候補領域123の中心座標についての相対性を表す評価値を算出する相対性算出部361を備える。
【0080】
ここで、泡領域の境界を示すエッジは、通常、円の中心座標について相対する円周上の位置に現れる。そのため、境界領域127におけるエッジ画素GEの相対性が高い場合、そのエッジ画素GEは泡領域の境界を構成すると判断することができる。ここで、相対性が高いとは、円の中心座標に対して相対する位置に存在するエッジ画素の対が多いことを意味する。
【0081】
泡候補領域123の判定を行う際に、相対性算出部361は、まず、図19に示すように、境界領域127から抽出されたエッジ画素GEの個数NEDG1をカウントする。また、相対性算出部361は、境界領域127において、泡候補領域123の中心座標C(x,y)について相対する位置に別のエッジ画素が存在するエッジ画素GEを抽出し、その数NEDG3をカウントする。例えば図19に示すエッジ画素GE(3)の場合、エッジ画素GE(3)を通る泡候補領域123の直径上に別のエッジ画素GTが存在しているため、カウントされる。相対性算出部361は、これらの値NEDG1及びNEDG3を用いて、次式(10)で与えられる評価値ERELを算出する。
REL=(NEDG1×(1−k)+NEDG3×k)/N …(10)
【0082】
この場合、判定部37は、評価値ERELを所定の閾値と比較することにより、泡候補領域123の判定を行う。即ち、評価値ERELが閾値以上である場合、エッジ画素GEの相対性は高く、泡候補領域123は泡領域であると判定する。一方、評価値ERELが閾値よりも小さい場合、エッジ画素GEの相対性は低く、泡候補領域123は泡領域ではないと判定する。
【0083】
或いは、相対性算出部361は、変形例3−1と同様に、勾配強度を用いて相対性を表す評価値を算出しても良い。即ち、相対性算出部361は、境界領域127から抽出されたエッジ画素GEの最大勾配強度gの合計値SUMEDG1と、境界領域127において、中心座標C(x,y)について相対する位置に別のエッジ画素GTが存在するエッジ画素GEの最大勾配強度gの合計値SUMEDG3とを算出し、次式(11)により与えられる評価値EREL’を算出する。
REL’=(SUMEDG1×(1−k)+SUMEDG3×k)/(N×gMAX) …(11)
この評価値EREL’は、高勾配のエッジ画素同士が相対する位置に存在するほど大きくなり、エッジ画素GEの相対性が高いことを示す。
【0084】
(変形例3−3)
図20は、変形例3−3に係る画像処理装置の演算部30−3の構成を示すブロック図である。この演算部30−3において、形状特徴量算出部38は、泡候補領域123の境界の形状情報を表す特徴量として、境界領域127のエッジ画素の円形性、即ち、幾何学的な円らしさを表す評価値を算出する円形性算出部381を備える。
【0085】
図21は、泡候補領域123の境界領域127の一部を示す模式図である。泡候補領域123の判定を行う際に、円形性算出部381は、まず、境界領域127から抽出されたエッジ画素GEの個数NEDG1をカウントする。また、円形性算出部381は、各エッジ画素GEから泡候補領域123の円周126までの距離LEを算出し、距離LEが所定の閾値以内にあるエッジ画素の個数NGCをカウントする。円形性算出部381は、これらの値NEDG1及びNGCを用いて、次式(12)で与えられる評価値ECIRを算出する。
CIR={NEDG1×(1−k)+NGC×k}/N …(12)
式(12)において、kは0<k<1を満たす係数(定数)である。
この評価値ECIRは、エッジ画素が円形状をなすほど大きな値となる。
【0086】
この場合、判定部39は、評価値ECIRを所定の閾値と比較することにより、泡候補領域123の判定を行う。即ち、評価値ECIRが所定の閾値以上である場合、エッジ画素GEの円形性は高く、泡候補領域123は泡領域であると判定する。一方、評価値ECIRが閾値よりも小さい場合、エッジ画素GEの円形性は低く、泡候補領域123は泡領域ではないと判定する。
【0087】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図22に示すように、実施の形態4に係る画像処理装置4は演算部40を備える。その他の構成については、図1に示すものと同様である。
【0088】
演算部40は、泡候補領域設定部16及び泡領域判定部41を備える。泡領域判定部41は、泡候補領域設定部16により設定された泡候補領域123が泡領域であるか否かを、泡候補領域123の周囲領域に関する情報を用いて判定する。
【0089】
泡領域判定部41は、周囲領域特徴量算出部42及び判定部43を有する。周囲領域特徴量算出部42は、泡候補領域123の周囲に存在する別の泡候補領域(円形状領域)や判定済みの泡領域を検出し、この検出結果に基づく特徴量を算出する。ここで、生体内においては、通常、泡領域は密集して発生する。そのため、ある泡候補領域の周囲に別の泡候補領域や判定済みの泡領域が多数存在する場合、その泡候補領域は泡領域である蓋然性が高い。そこで、泡領域判定部41は、判定対象である泡候補領域123の周囲領域における特徴量を算出することとしている。
判定部43は、この特徴量に基づいて、当該泡候補領域123が泡領域であるか否かを判定する。
【0090】
次に、画像処理装置4の動作について説明する。図23は、画像処理装置4の動作を示すフローチャートである。図23に示すステップの内、ステップS10〜S12については、実施の形態1において説明したものと同様である。
【0091】
ステップS41において、周囲領域特徴量算出部42は、泡領域の判定結果及び/又は泡候補領域の検出結果に基づいて、泡候補領域の周囲領域に関する特徴量を算出する。即ち、周囲領域特徴量算出部42は、図24に示す生体内画像130において、判定対象である泡候補領域131の中心位置C(x,y)から所定距離d2の範囲132内に存在する別の泡候補領域133の個数iと、判定済みの泡領域134の個数jとをカウントする。そして、これらの値i及びjと次式(13)とを用いて、特徴量CHRを算出する。
CHR=i×W1+j×W2 …(13)
式(13)において、W1及びW2は、W2>W1を満たす定数であり、判定済みの泡領域の個数i及びjをそれぞれ重み付けするためのものである。
【0092】
続くステップS42において、判定部43は、特徴量CHRを所定の閾値と比較することにより、泡候補領域131の判定を行う。即ち、特徴量CHRが閾値以上である場合、泡候補領域131の周囲に泡が密集しており、この場合、泡候補領域131も泡領域であると判定する。一方、特徴量CHRが閾値より小さい場合、泡候補領域131の周囲に泡は密集しておらず、この場合、泡候補領域131は泡領域ではないと判定する。
【0093】
以上説明したように、実施の形態4によれば、密集するという泡の特性に基づき、泡候補領域の周囲領域に関する情報を用いて泡領域であるか否かの判定を行うので、泡モデルを用いて円形状の領域を検出する従来の泡領域検出方法に対し、少ない演算量で、判定精度を向上させることが可能となる。
【0094】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図25に示すように、実施の形態5に係る画像処理装置5は演算部50を備える。その他の構成については、図1に示すものと同様である。
【0095】
演算部50は、泡候補領域設定部16及び泡領域判定部17に加えて、さらに、生体内画像を複数の領域に分割する領域分割部51と、各分割領域の全体に泡領域が存在するか否かを判定する領域判定部54とを備える。なお、泡候補領域設定部16及び泡領域判定部17の構成及び動作については、実施の形態1において説明したものと同様である。また、泡領域判定部17の代わりに、実施の形態2〜4において説明した泡領域判定部22、31、41を備えても良い。
【0096】
ここで、生体内画像において、類似した特徴(色やテクスチャ等の特徴)を有する領域同士は、同一のカテゴリー(例えば、粘膜領域、泡領域等)である場合が多い。そこで、実施の形態5においては、生体内画像を色情報等の特徴量に基づいて複数の領域に分割し、個別に泡領域と判定された領域が所定の割合以上を占める場合、その分割領域全体に泡領域が存在するとみなすことにより、個別には泡領域として検出することができなかった泡領域も検出できるようにしている。
【0097】
図26は、画像処理装置5の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS10において、画像処理装置5は生体内画像を取得する。なお、このステップの詳細については実施の形態1において説明したものと同様である。
【0098】
続くステップS51において、領域分割部51は、図27に示すように、生体内画像135を複数の領域136、137に分割する。分割方法としては、既知の様々な方法を用いることができる。例えば、類似した特徴量(画素値、テクスチャ特徴量等)を有し、且つ空間的に近接する画素を集合として領域を分割する領域統合法(参考:CG-ARTS協会、ディジタル画像処理、p.196)や、クラスタリング手法の1つであるK-means法(参考:CG−ARTS協会、ディジタル画像処理、p.232)等を用いることができる。
【0099】
ステップS52において、泡候補領域設定部16は、生体内画像135から円形状領域を検出し、それらの領域を泡候補領域138に設定する。なお、円形状領域の検出方法については、実施の形態1において説明したものと同様である。
【0100】
ステップS53において、泡領域判定部17は、各泡候補領域138が泡領域であるか否かの判定を行う。なお、泡候補領域138の判定方法については、実施の形態1〜4において説明したものと同様である。
【0101】
ステップS54において、領域判定部54は、泡領域の判定結果に基づいて、各分割領域136、137の全体に泡領域が存在するか否かの判定を行う。即ち、領域判定部54は、まず、各分割領域の面積(又は画素数)s1と、各分割領域内において泡領域と判定された領域の総面積(又は画素数)s2とを取得し、分割領域の面積s1に占める泡領域の面積s2の割合(面積率)s2/s1を算出する。この面積率s2/s1が所定の閾値以上である場合、その分割領域全体に泡領域が存在すると判定される。一方、この面積率s2/s1が所定の閾値より小さい場合、その分割領域全体に泡領域が存在するわけではないと判定される。例えば分割領域136の場合、泡領域と判定された領域が占める割合は低い(ゼロ)ので、泡領域は全体には存在しないと判定される。一方、分割領域135の場合、泡候補領域138の全てが泡領域と判定されると、泡領域の占める割合が高くなるため、この場合、分割領域135全体に泡領域が存在すると判定される。
【0102】
以上説明したように、実施の形態5においては、類似する特徴量に基づいて分割された領域の全体に泡領域が存在するか否かを、個別に泡領域と判定された領域が占める割合に基づいて判定する。そのため、円形状領域としては検出されなかった領域であっても、泡領域として抽出することが可能となる。
【0103】
また、実施の形態5においては、円形状領域を検出する際に、使用する泡モデルのサイズを各分割領域のサイズ以下に限定して演算を行うことができるので、演算量を低減することが可能となる。
【0104】
以上説明した実施の形態1〜5に係る画像処理装置は、記録媒体に記録された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータシステムで実行することにより実現することができる。また、このようなコンピュータシステムを、ローカルエリアネットワーク、広域エリアネットワーク(LAN/WAN)、又は、インターネット等の公衆回線を介して、他のコンピュータシステムやサーバ等の機器に接続して使用しても良い。この場合、実施の形態1〜5に係る画像処理装置は、これらのネットワークを介して生体内画像の画像データを取得したり、これらのネットワークを介して接続された種々の出力機器(ビュアーやプリンタ等)に画像処理結果を出力したり、これらのネットワークを介して接続された記憶装置(記録媒体及びその読取装置等)に画像処理結果を格納するようにしても良い。
【0105】
なお、本発明は、実施の形態1〜5及びそれらの変形例に限定されるものではなく、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。例えば、各実施の形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、異なる実施の形態や変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0106】
1〜5 画像処理装置
10 制御部
11 画像取得部
12 入力部
13 表示部
14 記憶部
141 画像処理プログラム
15、21、30、30−2、30−3、40、50 演算部
16 泡候補領域設定部
161 円形状領域検出部
17、22、31、41 泡領域判定部
18 内部領域抽出部
19 内部領域特徴量算出部
191 テクスチャ算出部
20、25、35、37、39、43 判定部
23 内部領域抽出部
231 輝度値算出部
232 泡候補領域分割部
24 内部領域特徴量算出部
241 高輝度領域抽出部
242 高輝度領域特徴量算出部
32 境界領域抽出部
33 勾配強度算出部
331 凸部勾配強度算出部
332 エッジ抽出部
34、36、38 形状特徴量算出部
341 連続性算出部
361 相対性算出部
381 円形性算出部
42 周囲領域特徴量算出部
51 領域分割部
54 領域判定部
100 泡
101 膜
102 気体
110、134 泡領域
111、127 境界領域
112、124 内部領域
113 高輝度領域
120、130、135 生体内画像
121 粘膜領域
122 領域
123 泡候補領域(円形状領域)
126 円周
131、133、138 泡候補領域
132 範囲
136、137 分割領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像に含まれる泡領域を検出する画像処理装置において、
前記画像から、記憶手段に格納された泡領域の形状モデルに対応する形状を有する領域を泡候補領域として設定する泡候補領域設定手段と、
前記泡候補領域が有する情報に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する泡領域判定手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記泡領域判定手段は、前記泡候補領域の周縁部に含まれる境界領域、又は、該境界領域の内側に位置する内部領域が有する情報を用いて判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記泡候補領域設定手段は、前記画像から円形状又は円弧形状を有する領域を検出する円形状領域検出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記泡領域判定手段は、
前記泡候補領域の内部領域を抽出する内部領域抽出手段と、
前記内部領域における特徴量を算出する内部領域特徴量算出手段と、
前記特徴量に基づいて、前記泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記内部領域抽出手段は、
前記泡候補領域に含まれる各画素の輝度値を算出する輝度値算出手段と、
前記泡候補領域内の複数の領域間における輝度値の差に基づいて、前記泡候補領域を前記複数の領域に分割する泡候補領域分割手段と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記内部領域特徴量算出手段は、前記内部領域におけるテクスチャ特徴量を算出するテクスチャ算出手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
テクスチャ特徴量は、前記内部領域における画素値の分散であることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記内部領域特徴量算出手段は、
前記内部領域の内側に存在する高輝度領域を抽出する高輝度領域抽出手段と、
前記高輝度領域の抽出結果に基づいて、前記内部領域の特徴量を算出する高輝度領域特徴量算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記高輝度領域特徴量算出手段は、高輝度領域における色特徴量を算出することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記泡領域判定手段は、
前記泡候補領域の境界領域を抽出する境界領域抽出手段と、
前記境界領域に含まれる画素における画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出手段と、
前記勾配強度に基づいて、前記泡候補領域の形状に関する情報を算出する形状特徴量算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記勾配強度算出手段は、前記境界領域に含まれる各画素について、画素値の勾配が凸となる方向における勾配強度を算出する凸部勾配強度算出手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記勾配強度算出手段は、前記勾配強度に基づいてエッジを抽出するエッジ抽出手段を備えることを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記形状特徴量算出手段は、所定の画素値の勾配強度を有する画素の連続性を表す評価値を算出する連続性算出手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記連続性算出手段は、互いに隣接する前記勾配強度を有する画素を検出し、検出された画素の数又は勾配強度に基づいて前記評価値を算出することを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記形状特徴量算出手段は、所定の画素値の勾配強度を有する画素の前記泡候補領域の中心座標についての相対性を表す評価値を算出する相対性算出手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記相対性算出手段は、前記泡候補領域の中心座標について互いに相対する位置に存在する前記勾配強度を有する画素を検出し、検出された画素の数又は勾配強度に基づいて前記評価値を算出することを特徴とする請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記形状特徴量算出手段は、所定の画素値の勾配強度を有する画素の円形性を表す評価値を算出する円形性算出手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記円形性算出手段は、前記勾配強度を有する画素と所定の円周との間の距離に基づいて前記評価値を算出することを特徴とする請求項17に記載の画像処理装置。
【請求項19】
前記泡領域判定手段は、
前記泡候補領域の周囲の所定範囲内に存在する別の泡候補領域及び/又は判定済みの泡領域を検出し、該検出結果に基づく特徴量を算出する周囲領域特徴量算出手段と、
前記特徴量に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項20】
前記画像を複数の領域に分割する領域分割手段と、
前記泡領域判定手段による判定結果に基づいて、分割された前記複数の領域の各々が泡領域であるか否かを判定する領域判定手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項21】
前記領域分割手段は、色特徴量又はテクスチャ特徴量に基づいて前記画像を分割することを特徴とする請求項20に記載の画像処理装置。
【請求項22】
前記画像は、生体内の管腔を撮像した生体内画像であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項23】
画像に含まれる泡領域を検出する画像処理方法において、
泡候補領域設定手段により、前記画像から、記憶手段に格納された泡領域の形状モデルに対応する形状を有する領域を泡候補領域として設定する泡候補領域設定ステップと、
泡領域判定手段により、前記泡候補領域が有する情報に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する泡領域判定ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項24】
画像に含まれる泡領域を検出する画像処理プログラムにおいて、
泡候補領域設定手段により、前記画像から、記憶手段に格納された泡領域の形状モデルに対応する形状を有する領域を泡候補領域として設定する泡候補領域設定ステップと、
泡領域判定手段により、前記泡候補領域が有する情報に基づいて、当該泡候補領域が泡領域であるか否かを判定する泡領域判定ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−120799(P2012−120799A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276289(P2010−276289)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】