説明

画像処理装置、画像処理方法およびプログラム

【課題】モノクロ画像の色調補正を高精度かつ高効率に実行する技術を提供する。
【解決手段】取得部21は、スキャナ16からの読み取り信号に基づいて、多階調表現でのモノクロ画像データDIを取得する。領域特定部22は、モノクロ画像Iの階調についてのヒストグラムを分析することにより、特定色のベタ領域を特定する。補正用閾値取得部23は、特定色の階調値から1階級ずつずらしながら順に選択される階調値を閾値として、モノクロ画像Iを2値化(白黒化)し、特定色画素の面積と特定色のベタ領域の面積とを比較する。そして、面積比率が基準値t以上となるときの階調値を補正用閾値(下限閾値TCb、上限閾値TCw)として取得する。色調補正部24は、当該補正用閾値に基づいて、モノクロ画像Iの色調補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクロ画像を色調補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マンガ(Manga)は、未彩色(モノクロ)線画の代表的なものである。マンガは、一般的に、欧米のコミック(Comic)とは異なり、日本独自の風合いを持つモノクロ線画である。すなわち、マンガでは、階調(色合い)の表現やキャラクターの感情等が、主に、種々のパターンの網点や、ベタ塗り、効果線並びに輪郭線などの描画線により表現されており、カラー表現が多いコミックとは性質が大きく異なっている。
【0003】
従来より、マンガは紙上に印刷されて市場に供給されているが、カラー印刷コストがかかりすぎる等の理由から、雑誌等の巻頭カラーページ以外はモノクロでしか制作されていなかった。
【0004】
しかし、携帯電話等の端末装置の通信技術の発達により、デジタル化されたマンガを、通信回線を介して購読できるサイトが急増しており、マンガを液晶モニタ等で鑑賞できる機会が増えている。そして、これに伴い、カラー化(彩色、色付け)されたマンガの需要が大きくなっている。また、日本国外においては、モノクロマンガの文化がないため、マンガビジネスを海外展開する上では、モノクロマンガを彩色する必要がある。
【0005】
ここで、マンガのカラー化作業においては、紙上に記載された(または印刷された)アナログ画像に対して作業者がカラーペンなどで直接彩色することもあるが、アナログ画像をスキャナなどで読み取ることによりデジタル化し、オペレータがコンピュータを用いて彩色処理することも多くなっている。
【0006】
このデジタル化の際には、紙質やスキャナの性能などの影響により、得られるデジタル画像が、作業者の意図しないオフセット値(ノイズ成分など)を含むことがある。したがって、彩色にあたっては、画像データからノイズを除去する前処理が作業者により実行される。具体的には、画像の色調補正(カラーバランスの調整や、シャドウ点およびハイライト点の再設定など)が実行される。
【0007】
また、上述の彩色処理を目的とする場合の他にも、例えば、単にモノクロのデジタル画像を供給する場合や、過去に出版したアナログ画像からデジタル画像を取得する場合などにおいても、作業者がアナログ画像からスキャナなどを用いて取得したデジタル画像を色調補正することもある。
【0008】
ところで、この色調補正を作業者が手作業で行う場合には、デジタル画像の読み取り状態の判断を、オペレータの主観に基づいて行うため、色調補正の品質にばらつきが生じるおそれがあった。また、作業者が手作業で行うために、画像処理に時間がかかるという問題もあった。そこで、画像の読み取り状態に応じて色調補正を自動化する技術が、これまでにも提案されている(例えば、特許文献1)。
【0009】
特許文献1では、まず、プリスキャンにより取得される画像データについて、選択画素毎に、選択画素の平均濃度値と、各選択画素周辺の濃度のばらつき(標準偏差)とが求められる。そして、当該ばらつきに応じて決定される重み付け値と平均濃度値とを加重して得られる各階調の画素の度数分布(ヒストグラム)に基づいて、ハイライト点、シャドウ点の基準点が設定される。
【0010】
この技術によれば、重み付け値を適切に設定することで、画像全体のうちから、不適当な画素からハイライト点、シャドウ点が選択されることを抑制できるため、精度良く色調補正を実行できる。
【0011】
また、特許文献1以外にも、市販されている画像処理ソフトには、輝度情報やRGB情報などのヒストグラムに基づき、所定のアルゴリズムに従って自動で色調補正(レベル補正)する機能が備えられている。
【0012】
【特許文献1】特開平11−55517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、特許文献1に記載の技術では、ハイライト点、シャドウ点の基準点設定を高精度に行うために、多数(例えば、50〜100枚程度)のサンプルを予めプリスキャンする必要があり、作業効率が低下するおそれがあった。また、プリスキャンするサンプルによって、品質に差異が生じるおそれもあった。
【0014】
また、特にマンガを含む線画などのモノクロ画像では、各画素の階調の出現度数が描画色および背景色で特に高いなど、自然画像とは異なる性質を持つ。そのため、自然画像の色調補正を得意とする上述の画像処理ソフトでは、モノクロ画像を処理した場合に、十分な効果が得られず、オペレータが手作業により調整を行う必要があった。したがって、色調補正に時間がかかり、また、色調補正後の品質に個体差が生じるおそれもあった。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、モノクロ画像の色調補正を高精度かつ高効率に実行する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、モノクロ画像を色調補正する画像処理装置であって、多階調表現でのモノクロ画像のデータを取得する取得手段と、前記モノクロ画像に基づいて、特定色に対応する特定階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を前記特定色のベタ領域として特定する特定手段と、選択された階調値を閾値として、前記モノクロ画像の前記ベタ領域から抽出される画素集合の面積が、前記ベタ領域の面積との比較に基づいて、所定の面積基準を満たすと判定されるときの階調値を補正用閾値として取得する補正用閾値取得手段と、前記補正用閾値に基づいて、前記モノクロ画像を色調補正する色調補正手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る画像処理装置であって、前記モノクロ画像を空間的に平滑化することにより、平滑化画像を生成する平滑化手段、をさらに備え、前記特定手段は、前記平滑化画像に基づいて、前記ベタ領域を特定することを特徴とする。
【0018】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明に係る画像処理装置であって、前記特定手段は、前記階調値の画素集合をさらに収縮した領域を前記ベタ領域として特定することを特徴とする。
【0019】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明に係る画像処理装置であって、前記特定手段は、前記モノクロ画像に基づいて、描画色に対応する階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を第1ベタ領域として特定するとともに、背景色に対応する階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を第2ベタ領域として特定し、前記補正用閾値取得手段は、前記モノクロ画像の前記第1ベタ領域および前記第2ベタ領域のそれぞれについて、第1補正用閾値および第2補正用閾値を前記補正用閾値として取得し、前記色調補正手段は、前記第1補正用閾値および前記第2補正用閾値に基づいて、前記モノクロ画像を色調補正することを特徴とする。
【0020】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る画像処理装置であって、前記特定手段は、前記モノクロ画像の各階調値の画素の度数分布を分析することにより、描画色の階調側および背景色の階調側のそれぞれから取得されるベタ領域特定用閾値に基づいて、前記第1ベタ領域および前記第2ベタ領域を特定することを特徴とする。
【0021】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る画像処理装置であって、前記特定手段は、前記描画色の階調と前記背景色の階調との間の中間階調から前記描画色の階調側において出現度数の最も高い階調値に対し、前記背景色の階調側へ所定の階級数分だけ偏った第1階調値と、前記中間階調から前記背景色の階調側において出現度数の最も高い階調値に対し、前記描画色の階調側へ所定の階級数分だけ偏った第2階調値と、のそれぞれを、前記ベタ領域特定用閾値とすることを特徴とする。
【0022】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明に係る画像処理装置であって、前記特定手段は、前記モノクロ画像の全領域のうちの所定画素幅の端縁部分を除いた残余領域から、前記ベタ領域を特定することを特徴とする。
【0023】
また、請求項8の発明は、モノクロ画像を色調補正する画像処理方法であって、(a)多階調表現でのモノクロ画像のデータを取得する工程と、(b)前記(a)工程にて取得されるモノクロ画像に基づいて、特定色に対応する特定階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を前記特定色のベタ領域として特定する工程と、(c)選択された階調値を閾値として、前記モノクロ画像の前記ベタ領域から抽出される画素集合の面積が、前記ベタ領域の面積との比較に基づいて、所定の面積基準を満たすと判定されるときの階調値を補正用閾値として取得する工程と、(d)前記(c)工程にて取得される前記補正用閾値に基づいて、前記モノクロ画像を色調補正する工程とを含むことを特徴とする。
【0024】
また、請求項9の発明は、コンピュータが読み取り可能なプログラムであって、前記コンピュータが前記プログラムを読み取り、前記コンピュータのCPUが前記プログラムをメモリにて実行することにより、前記コンピュータを多階調表現でのモノクロ画像のデータを取得する取得手段と、前記モノクロ画像に基づいて、特定色に対応する特定階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を前記特定色のベタ領域として特定する特定手段と、選択された階調値を閾値として、前記モノクロ画像の前記ベタ領域から抽出される画素集合の面積が、前記ベタ領域の面積との比較に基づいて、所定の面積基準を満たすと判定されるときの階調値を補正用閾値として取得する補正用閾値取得手段と、前記補正用閾値に基づいて、前記モノクロ画像を色調補正する色調補正手段とを備える画像処理装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1ないし9に記載の発明によれば、モノクロ画像に基づいて特定色のベタ領域を特定した後に、選択された階調値を閾値として、ベタ領域から抽出される領域の面積が、ベタ領域の面積との比較に基づいて、所定の面積基準を満たすときの階調値を補正用閾値とするため、色調補正に適切な補正用閾値を取得できる。したがって、モノクロ画像の色調補正を高精度かつ効率的に実行できる。
【0026】
また、請求項2に記載の発明によれば、特定手段の処理対象を平滑化画像とすることにより、ベタ領域の特定精度を向上できる。
【0027】
また、請求項3に記載の発明によれば、特定手段が、さらに収縮した領域をベタ領域とするため、効果的にベタ領域を特定できる。
【0028】
また、請求項4に記載の発明によれば、描画色および背景色についてのベタ領域のそれぞれから補正用閾値を決定するため、モノクロ画像に対して適切な色調補正を実行できる。
【0029】
また、請求項5に記載の発明によれば、各階調の画素の度数分布に基づいて、描画色の階調側と背景色の階調側とのそれぞれからベタ領域特定用閾値を取得するため、ベタ領域の特定精度を向上できる。
【0030】
また、請求項6に記載の発明によれば、中間階調よりも特定色側と背景色側とにおいて出現度数の最も高い階調値を基準に、ベタ領域特定用閾値を決定するため、ベタ領域の特定精度を向上できる。
【0031】
また、請求項7に記載の発明によれば、デジタル化処理などにより、ノイズを含みやすいモノクロ画像の端縁部分を補正用閾値取得の対象領域から予め除くことで、色調補正を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0033】
<1. 実施の形態>
<1.1. 画像処理装置100の構成および機能>
[概略構成]
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置100の外観図である。また、図2は、画像処理装置100のハードウェア構成を示す図である。
【0034】
画像処理装置100は、主にCPU10、記憶部11、操作部12、表示部13、ディスク読取部14、通信部15およびスキャナ16を備え、一般的なコンピュータとしての機能を備えている。
【0035】
CPU10は、記憶部11に記憶されているプログラム2に従って動作することによって、各種データの演算や制御信号の生成を実行し、画像処理装置100の各構成を制御する。CPU10によって実現される機能ブロックについては後述する。
【0036】
記憶部11は、CPU10の一時的なワーキングエリアとなるRAMおよびハードディスクや、読み取り専用のROMを備えている(図示せず)。記憶部11は、プログラム2や各種データを記憶する記録媒体としての機能を有する。なお、プログラム2は、記録媒体9からディスク読取部14を介して記憶部11に転送されてもよいし、通信部15を介して記憶部11に転送されてもよい。
【0037】
操作部12は、画像処理装置100に対してユーザの指示を入力するために使用される。すなわち、操作部12は、画像処理装置100における入力装置として機能する。具体的に操作部12は、例えばキーボードおよびマウスや、各種ボタン類などが該当する。
【0038】
表示部13は、各種データを画像として画面に表示する。すなわち表示部13は、画像処理装置100における表示装置として機能する。具体的に表示部13は、例えばCRTモニタや液晶ディスプレイなどが該当するが、タッチパネルディスプレイのように、操作部12の機能を一部有しているものでもよい。
【0039】
ディスク読取部14は、可搬性の記録媒体9に記憶されているデータを読み取って記憶部11に転送する装置である。すなわち、ディスク読取部14は画像処理装置100におけるデータ入力装置として機能する。
【0040】
なお、本実施の形態における画像処理装置100は、ディスク読取部14としてCD−ROMドライブを備えている。しかし、ディスク読取部14はこれに限られるものではなく、例えばFDドライブ、DVDドライブ、MO装置などであってもよい。なお、ディスク読取部14が記録媒体9にデータを記録させる機能を有する場合には、ディスク読取部14に記憶部11の機能の一部を代行させることも可能である。
【0041】
通信部15は、画像処理装置100と図示しない他の装置群との間でネットワークを介した通信を行うための機能を有する。
【0042】
スキャナ16は、画像を光学的に読み取るための読取装置であって、多数のイメージセンサを有しており、紙媒体などに記録されたアナログ画像をデジタルデータとして取得するための機能を有する。
【0043】
図3は、画像処理装置100の機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。図3に示す取得部21、領域特定部22、補正用閾値取得部23、および、色調補正部24は、主にCPU10がプログラム2に従って動作することにより実現される機能ブロックである。
【0044】
[取得部21]
取得部21は、印刷基材(紙など)に記録された画像のスキャナ16での読み取りにより得られる読み取り信号に基づいて、多階調表現(ここでは、256階調(8ビット))でのモノクロ画像データDIを取得し、記憶部11に格納する。
【0045】
ここで、本実施形態における画像処理装置100の処理対象となる画像は、紙などに記載されたアナログ画像(原画)の場合のほか、過去にデジタル化されたデジタル画像であってもよい。
【0046】
また、本実施形態では、画像処理装置100は、モノクロ(単色の濃淡)で表現された画像(モノクロ画像I)を処理対象としている。また、本実施形態では、元画像において、描画線や網点などの描画要素に相当する部分の色(描画色)が「黒色」、紙の地肌色に相当する部分(すなわち、モノクロ画像のうちの無地部分)の色(背景色)が「白色」であるものとして説明する。ただし、これは説明のために便宜的に定義されるものであり、例えば、描画色および背景色の組み合わせは、これに限られるものではない。
【0047】
取得部21は、スキャナ16で読み取った画像に対して、所定の加工処理を施すことにより、多階調表現でのモノクロ画像データDIを生成する。ここで、スキャナ16で読み取るアナログ画像がカラー画である場合や、過去にデジタル化されたデジタル画像がカラー画像である場合には、取得部21により余分なカラー情報が破棄され、モノクロ表現の画像が生成される。
【0048】
[領域特定部22]
領域特定部22は、マスク用閾値決定部221、平滑化部222、および、マスク生成部223を主に備え、モノクロ画像データDIに基づいて、特定色に対応する特定階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を、特定色のベタ領域として特定する。
【0049】
一般的に、元のアナログ画像(元画像)で特定色(例えば、黒色)のベタとなっている領域は、デジタル画像上では、オフセット値の付加などにより、複数階調の画素で構成される。また、アナログ画像上の色とデジタル画像上の色は、必ずしも一致しない。
【0050】
そこで、領域特定部22は、元画像で特定色のベタとなっていると予想される領域を、デジタル画像(モノクロ画像I)に基づいて抽出するため、特定色に対応する特定階調値に対して所定階調範囲を許容範囲とすることにより、元画像にてベタとなっている可能性の高い領域(ベタ領域)を特定する。
【0051】
また、モノクロ画像Iでは、所定の背景色(白)の面上に、描画色(黒)で表現されている。そこで、本実施形態では、領域特定部22は、元画像において描画色(黒)および背景色(白)のベタとなっていると予想される領域を、モノクロ画像Iに基づいて特定する。
【0052】
図4は、領域特定部22が備えるサブブロックをデータの流れとともに示す図である。
【0053】
ヒストグラム分析部221は、モノクロ画像Iの各階調の画素の出現度数を示すヒストグラムを分析することにより(ヒストグラム分析)、ベタ領域特定用閾値(黒側閾値TMbおよび白側閾値TMw)を決定する。そして、ベタ領域特定用閾値を示すデータを記憶部11に格納する。なお、ヒストグラム分析の詳細については後述する。
【0054】
平滑化部222は、モノクロ画像Iを空間的に平滑化することにより、平滑化画像データDIsを生成する。なお、画像を平滑化する手法は、種々提案されており、ここでは詳細を省略するが、例えばフィルタ(平均化フィルタ、ガウシアンフィルタなど)を用いて画素演算を行うことにより実現される。
【0055】
この平滑化処理により、モノクロ画像Iに含まれる比較的細かな描画要素(例えば、網点、細線)が平滑化されるため、領域特定部22は、元画像においてベタとなっている領域のうち、ある程度の広がり(幅)を持つ部分をベタ領域として特定することが可能となっている。
【0056】
マスク生成部223は、2値化部2231および収縮部2232を主に備え、ベタ領域特定用閾値と、平滑化画像データDIsとに基づいて、黒ベタ領域マスクデータDMbおよび白ベタ領域マスクデータDMwを生成する。
【0057】
具体的に、白ベタ領域マスクデータDMwを生成する場合には、マスク生成部223は、2値化部2231により、平滑化画像の白側閾値TMw以上の階調値の画素集合を白色(階調値255)に、白側閾値TMw未満の階調値の画素を黒色(階調値0)に変換する。
【0058】
一方、黒ベタ領域マスクデータDMbを生成する場合には、マスク生成部223は、2値化部2231により、平滑化画像の黒側閾値TMb以下の階調値を持つ画素集合の階調値を黒色(階調値0)に、黒側閾値TMbを越える階調値の画素を白色(階調値255)に変換する。
【0059】
さらに、収縮部2232は、特定色に変換された画素集合の収縮処理を所定回数実行する(すなわち、所定画素数分の収縮を行う)。すなわち、白ベタ領域マスクデータDMwを生成する場合には、2値化部2231により得られたデータの白色の部分を、黒ベタ領域マスクデータDMbを生成する場合には、2値化部2231により得られたデータの黒色の部分を、それぞれ収縮する。収縮して得た各マスクデータは、記憶部11に格納される。
【0060】
このように、領域特定部22は、ヒストグラム分析部221により適当なベタ領域特定用閾値(白側閾値TMw、黒側閾値TMb)を決定することで、平滑化画像データDIsから、元画像において白色のベタ(すなわち、無地部分)であると推定される白ベタ領域(白ベタ領域マスクデータDMwに対応)、および、元画像において黒色のベタであると推定される黒ベタ領域(黒ベタ領域マスクデータDMbに対応)を特定する。
【0061】
[補正用閾値取得部23]
図3に戻って、補正用閾値取得部23は、面積判定部231を主に備え、モノクロ画像Iの特定色のベタ領域から選択される階調値を閾値として、特定色のベタ領域から抽出される領域の面積と、特定色のベタ領域の面積とを比較する。この比較により、抽出された領域の面積が、所定の面積基準を満たすか否かを面積判定部231が判定し、当該所定の面積基準を満たすときの階調値が補正用閾値として取得され、記憶部11に格納される。
【0062】
例えば、元画像での黒色は、デジタル化後において、黒色(階調値0)ではなく、中間調の色(階調値1〜254)に変換されることがある。すなわち、モノクロ画像Iの黒ベタ領域内に存在する画素は、中間調の色であっても、元画像では黒色である可能性が高いため、階調値を「0」に補正するべきである。これと同様に、モノクロ画像Iの白ベタ領域内に存在する画素は、元画像では、白色である可能性が高いため、階調値を「255」に補正するべきである。
【0063】
このような観点から、本実施形態では、補正用閾値取得部23は、選択された階調値(選択階調値)を閾値とする2値化処理によりモノクロ画像Iの特定色のベタ領域から抽出される領域(画素集合)の、当該特定色のベタ領域に占める割合が、大部分(例えば、99.9%)となるときの選択階調値を補正用閾値として取得する。
【0064】
本実施形態では、補正用閾値取得部23は、特定色のベタ領域として特定された黒ベタ領域および白ベタ領域のそれぞれから、補正用閾値として下限閾値TCbおよび上限閾値TCwを取得する。
【0065】
[色調補正部24]
色調補正部24は、補正用閾値取得部23により取得された補正用閾値に基づいて、モノクロ画像Iを色調補正する。本実施形態では、モノクロ画像Iについてのヒストグラムに基づいて、上限閾値TCwと下限閾値TCbとの間の階調値の分布範囲を、所定のルールに従って高階調側および低階調側へ拡張することにより、前記モノクロ画像の色調を補正する。
【0066】
以上が、画像処理装置100の構成および機能の説明である。次に、画像処理装置100の動作について説明する。
【0067】
<1.2. 画像処理装置100の動作>
図5は、画像処理装置100の動作を示す流れ図である。なお、以下の動作は、特に断らない限り、CPU10の制御により実現される。
【0068】
画像処理装置100は、所定の初期設定を行った後、モノクロ画像データDIを取得する(ステップS1)。前述のように、アナログ画像のスキャナ16での読み取りに基づいて、取得部21によりモノクロ画像データDIが取得される。なお、モノクロ画像データDIは、過去にデジタル化されたデータであってもよく、この場合には、記録媒体9などを介して取得され、あるいは、ネットワークを介して取得される。
【0069】
図6は、モノクロ画像データDIが表現するモノクロ画像Iの一例を示す図である。図6に示すモノクロ画像Iの元画像は、白色の背景色を持つ紙上に、黒色の描画色で、曲線や直線が描かれたり、ベタ塗りされたり、網点(図6中、ドットや斜線で示す)が貼付された画像である。したがって、スキャナ16での読み取りにより得られる画像は、理想的には、白黒の2値で表現されるはずである。しかし、予期しないオフセット成分の付加などが起こるため、モノクロ画像Iは、全体的に灰色(中間調の色)を有する画像となっている。このようなモノクロ画像Iに対して、画像処理装置100は、以下に述べる動作を順次に実行することにより、理想的な状態に補正された画像(補正画像Im)を取得する。
【0070】
図5に戻って、モノクロ画像データDIの取得が完了すると、画像処理装置100は、モノクロ画像Iに基づいて、特定色のベタ領域(白ベタ領域および黒ベタ領域)を特定する(ステップS2)。ステップS2の詳細な動作については、図7を参照しつつ説明する。
【0071】
図7は、ベタ領域の特定における画像処理装置100の動作の詳細を示す流れ図である。
【0072】
[ヒストグラム分析]
ベタ領域の特定を開始すると、画像処理装置100は、モノクロ画像データDIについてヒストグラムを分析する(ステップS21)。具体的には、ヒストグラム分析部221により、モノクロ画像Iに含まれる各階調の画素の出現度数を算出する。
【0073】
ここで、ヒストグラム分析部221の解析対象を、モノクロ画像I全体としてもよいが、本実施形態では、モノクロ画像Iの全領域のうち、所定画素幅の端縁部分(端縁領域ER)を除いた残余領域RR(図6中、破線で囲む領域)に設定している。
【0074】
すなわち、スキャナ16での読み取りミスなどが原因で、取得したモノクロ画像Iの端縁部分で特にノイズなどが発生しやすいため、本実施形態では、モノクロ画像Iの全領域のうちの残余領域RRから、特定色のベタ領域を特定する。したがって、ヒストグラム分析についても、当該残余領域RRについて実行される。このように、ノイズを含みやすい端縁領域ERを、補正用閾値取得の対象領域から予め除くことで、色調補正を高精度に行うことができる。
【0075】
なお、モノクロ画像Iの四辺の端縁部分全てが除去されなければならないものではなく、例えば、除去される領域がそのうちの一部であってもよい。また、除去する画素幅は、モノクロ画像Iの端縁から中央に向けて描画線などの描画要素(描画色の画素)が検出される距離に応じて決定されてもよい。
【0076】
図8は、図6に示すモノクロ画像Iの階調値に関するヒストグラムである。図8に示すヒストグラムでは、横軸の級数を階調値(0〜255)、縦軸の度数を画素の出現度数としている。
【0077】
一般的に、白黒で表現された線画から生成されるデジタル画像のヒストグラムでは、図8に示すように、白の背景色の階調(=255)側と、黒の描画色の階調(=0)側とに、出現度数の山(ピーク)が現れる傾向にある。
【0078】
そこで、本実施形態では、ヒストグラム分析部221は、背景色の階調(階調値255)と描画色の階調(階調値0)との間の階調(中間階調:ここでは、階調値127)よりも描画色の階調側(図8中、左側)において、出現度数の最も高い階調値TPbに対して背景色の階調側(図8中、右側)へ所定の階級数X分偏った階調値(=TPb+X)を黒側閾値TMbとして取得する(ステップS22)。
【0079】
また、これと同じ要領で、ヒストグラム分析部221は、中間階調よりも背景色の階調側(図8中、右側)において、出現度数の最も高い階調値TPwに対して前記描画色の階調側(図8中、左側)へ所定の階級数X分偏った階調値(=TPw−X)を白側閾値TMwとして取得する(ステップS22)。
【0080】
このように、ヒストグラムの右側および左側の各ピークの階調値TPb、TPwを基準に、さらに内側へ所定の階級数X分偏った階調値を黒側閾値TMb、白側閾値TMwとして取得することにより、元画像において黒または白のベタであったと予想される黒ベタ領域、白ベタ領域の特定精度を向上できる。
【0081】
なお、階級数Xの値を大きくしすぎると、元画像でベタでない領域が誤ってベタ領域と判定されるおそれがある。したがって、階級数Xの値は、元画像の作風やスキャナ16の性能などに応じて設定されることが望ましい。なお、本実施形態では、階級数Xの値は、「10」程度としているが、これは単に例示するものであり、適宜変更が可能である。
【0082】
また、本実施形態では、黒側閾値TMbを決定する場合と、白側閾値TMwを決定する場合とで、各度数ピークからずらす量(階級数X)を一致させているが、もちろんそれぞれ個別に設定してもよい。
【0083】
図7に戻って、ヒストグラム分析によりベタ領域特定用閾値(黒側閾値TMb,白側閾値TMw)を取得すると、平滑化部222は、モノクロ画像Iを空間的に平滑化することにより、平滑化画像データDIsを生成する(ステップS23)。
【0084】
平滑化画像データDIsを生成すると、画像処理装置100は、マスク生成部223により、平滑化画像データDIsと、黒側閾値TMbおよび白側閾値TMwとに基づいて、黒ベタ領域マスクデータDMbおよび白ベタ領域マスクデータDMwを生成する(ステップS24,S25)。
【0085】
具体的に、ステップS23において、黒ベタ領域マスクデータDMbを生成するために、マスク生成部223は、平滑化画像データDIsの各画素のうち、ステップS22で取得した黒側閾値TMb以下の階調値の画素集合を全て黒色(=階調値0)に、また、黒側閾値TMbを越える階調値の画素集合を全て白色(=階調値255)変換する。この抽出処理は、より詳細には、2値化部2231の黒側閾値TMbに基づく2値化処理により実行される(ステップS24)。
【0086】
また、2値化処理で得られる領域について、収縮部2232の収縮処理により(ステップS25)、黒色の画素集合が所定の画素数(例えば7画素)分収縮された領域情報を示す黒ベタ領域マスクデータDMbが生成される。
【0087】
さらに、マスク生成部223は、白ベタ領域マスクデータDMwを生成するために、平滑化画像データDIsの各画素のうち、ステップS22で取得した白側閾値TMw以上の階調値の画素を全て白色(=階調値255)に、また、白側閾値TMwを越えない階調値の画素を全て黒色(=階調値0)に変換する。この2値化処理は、2値化部2231により実行される(ステップS24)。
【0088】
さらに、得られた画像データについて、収縮部2232の収縮処理により(ステップS25)、白色の画素集合を所定の画素数(例えば7画素)分収縮された領域情報を示す白ベタ領域マスクデータDMwが生成される。
【0089】
図9は、図6に示すモノクロ画像Iから取得される各マスクデータの画像IMb,IMwを示す図である。なお、図9に示す画像IMb中の黒色の部分が、平滑化画像から抽出された黒ベタ領域を示しており、画像IMw中の白色の部分が、平滑化画像から抽出された白ベタ領域を示している。
【0090】
図9に示すように、画像IMb(黒ベタ領域マスクデータDMbに対応)では、図6に示すモノクロ画像Iのうち、比較的細い輪郭線(黒色の描画線)や網点などが上述の収縮処理により除去され、黒色のベタとなっている部分(三角形など)のみが黒色の領域として抽出される。
【0091】
また、画像IMw(白ベタ領域マスクデータDMwに対応)では、図6に示すモノクロ画像Iのうち、背景の白ベタ領域が白色の領域として主に抽出される。
【0092】
画像処理装置100は、後述の補正用閾値(下限閾値TCb,上限閾値TCw)決定処理を実行する際に、黒ベタ領域マスクデータDMbおよび白ベタ領域スクデータDMwを適宜参照する。
【0093】
なお、ステップS23の平滑化処理により得られる平滑化画像は、画像に含まれるノイズ成分や、細かな網点、比較的細かな線で表現された部分が空間的に平滑化されている。そして、ステップS23では、この平滑化画像から特定色のベタ領域を特定する。したがって、ある程度の幅を持つ領域がベタ領域として特定されるため、元の画像において、特定色のベタとなっている可能性が非常に高い領域を効果的に特定できる。
【0094】
再び図5に戻って、黒ベタ領域および白ベタ領域を特定すると、画像処理装置100は、モノクロ画像Iの各ベタ領域において、色調補正のための補正用閾値(下限閾値TCb、上限閾値TCw)の決定を行う(ステップS3)。このステップS3における画像処理装置100の動作の詳細については、図10および図11を参照しつつ説明する。
【0095】
図10は、下限閾値TCbの決定処理における画像処理装置100の動作の詳細を示す流れ図である。また、図11は、上限閾値TCwの決定処理における画像処理装置100の動作の詳細を示す流れ図である。
【0096】
まず、図10に示すように、下限閾値TCbの決定処理を開始すると、補正用閾値取得部23は、初期値として閾値Tbを0(=黒色の階調値)に仮設定する(ステップS31)。そして、補正用閾値取得部23は、当該閾値Tb(=0)に基づいてモノクロ画像Iを2値化処理する(ステップS32)。
【0097】
具体的には、閾値Tb以下の階調を持つ画素を黒色(階調値0)に変換し、閾値Tbを越える階調を持つ画素を白色(階調値255)に変換する。そして、2値化後の画像と、黒ベタ領域マスクデータDMbとを比較することにより、2値化後の画像の黒色画素のうち、黒ベタ領域に含まれる画素集合を抽出する。なお、この処理は、モノクロ画像Iの黒ベタ領域から、階調値が閾値Tb以下の画素集合を抽出することと等価である。
【0098】
そして、補正用閾値取得部23は、ステップS32により抽出した画素の数をカウントすることにより(ステップS33)、ステップS31で閾値Tb以下の階調値の画素集合の面積S(Tb)を算出する。
【0099】
さらに、面積判定部231は、当該画素集合の面積S(Tb)と、黒ベタ領域の面積Sbとを比較する。そして、閾値Tb以下の階調値の画素集合の黒ベタ領域に占める面積の割合が、所定の基準値t以上であるかどうかを判定する(ステップS34)。
【0100】
ステップS34において、設定した閾値Tbでは、相対面積の割合(面積比率)が基準値tに満たないと判定される場合には(ステップS34にてNO)、補正用閾値取得部23は、設定した閾値Tbに「1」を加算した値(ここでは、階調値1)を閾値Tbに再設定し(ステップS35)、再びステップS32以降の処理を実行する。
【0101】
一方、面積の割合が基準値t以上となると判定される場合には(ステップS34にてYES)、補正用閾値取得部23は、そのときに設定されている閾値Tbを下限閾値TCbとして記憶部11に格納し(ステップS36)、下限閾値TCbの決定処理を終了する。
【0102】
また、図11に示すように、補正用閾値取得部23は、上限閾値TCwの決定処理を開始すると、初期値として閾値Twを255(白色の階調値)に仮設定する(ステップS31a)。そして、補正用閾値取得部23は、仮設定した閾値Twに基づいて、モノクロ画像Iを2値化処理する(ステップS32a)。
【0103】
具体的には、閾値Tw以上の階調を持つ画素の階調値を白色(階調値255)に変換し、閾値Twに満たない階調の画素の階調値を黒色(階調値0)に変換する。そして、この2値化の画像と、白ベタ領域マスクデータDMbとを比較することにより、2値化後の画像の白色画素のうち、白ベタ領域に含まれる画素集合を抽出する。なお、この処理は、モノクロ画像Iの白ベタ領域から、階調値が閾値Tw以上の画素を抽出することと等価である。
【0104】
そして、補正用閾値取得部23は、ステップS32aで抽出した画素の数をカウントし(ステップS33a)、ステップS31aで設定した閾値Tw以上の階調の画素集合の面積S(Tw)を算出する。
【0105】
さらに、面積判定部231は、当該画素集合の面積S(Tw)と、白ベタ領域の面積Swとを比較することにより、画素集合の黒ベタ領域に占める相対面積の割合が、所定の基準値t以上であるかどうかを判定する(ステップS34a)。
【0106】
ステップS34aにおいて、設定した閾値Twでは相対面積の割合が基準値tに満たないと判定される場合には(ステップS34aにてNO)、補正用閾値取得部23は、設定した閾値Tw(ここでは、階調値255)から「1」を減じた値(ここでは、階調値254)を閾値Twに再設定し(ステップS35a)、再びステップS32a以降の処理を実行する。
【0107】
一方、面積の割合が基準値t以上となると判定される場合には(ステップS34aにてYES)、補正用閾値取得部23は、そのときに設定されている閾値Twを上限閾値TCwとして記憶部11に格納し(ステップS36a)、上限閾値TCwの決定処理を終了する。
【0108】
なお、ステップS34,S34aにおいて、仮に設定された(選択された)閾値以下、または、以上の階調値の画素集合が、各ベタ領域の面積の大部分を占めると判定されるときの閾値Tb,Twを検出するため、本実施形態では、基準値tの値は、t=0.999とするが、これは単に例示するものであり、適宜に変更できる。
【0109】
また、本実施形態では、下限閾値TCbを決定する場合と、上限閾値TCwを決定する場合とで、面積比率の判定基準(基準値t)を一致させているが、もちろん個別に設定してもよい。
【0110】
以上が、補正用閾値(下限閾値TCb,上限閾値TCw)の決定処理についての詳細な動作についての説明である。
【0111】
再び図5に戻って、補正用閾値を決定すると、色調補正部24は、下限閾値TCbおよび上限閾値TCwに基づいて、モノクロ画像Iを色調補正し(ステップS4)、補正画像データDImを取得する。この色調補正処理については、図12を参照しつつ説明する。
【0112】
図12は、色調補正処理後の補正画像Imの階調値に関するヒストグラムである。
【0113】
本実施形態では、色調補正部24は、上限閾値TCw以上の階調の画素ついては階調値を「255」に、下限閾値TCb以下の階調の画素のついては階調値を「0」に変換する。そして、図12に示すように、色調補正部24は、下限閾値TCbと上限閾値TCwとの間の階調の画素についての色調補正前の度数分布(斜線で示す)が、色調補正後において最小階調値0〜最大階調値255の範囲で分布するように、各画素の階調値を変換する。
【0114】
このような色調補正を行うことにより、上限閾値TCwと下限閾値TCbとの間のヒストグラムの形状が左右にまんべんなく拡張される(図12参照)。換言すれば、画像処理装置100は、上限閾値TCwにハイライト点を、下限閾値TCbにシャドウ点を設定してコントラスト調整を行う。
【0115】
なお、ヒストグラム(の一部)について、分布範囲を拡張する手法は、例えば、ステップS3にて決定される補正用閾値と、色調補正後の分布範囲(ここでは、0〜255)とに応じて、ルックアップテーブルを自動作成し、当該ルックアップテーブルを適宜参照して、各画素の階調値変換を行うように画像処理装置100を構成すればよい。
【0116】
また、本実施形態では、補正用閾値で挟まれる部分の度数分布全部を拡張させて色調補正するとしているが、例えば、下限閾値TCbおよび上限閾値TCwの間の度数分布のうち、両側の裾(または片側の裾)部分のみなど、一部分を拡張させるようにしてもよい。また、この一部分の大きさなどを、オペレータが指定できるようにしてもよい。
【0117】
図13は、図6に示すモノクロ画像Iについての色調補正処理により得られる補正画像Imを示す図である。図13に示すように、線画処理装置100によると、図6に示すモノクロ画像Iから、黒色のベタ塗り部分や、図形に付された模様などを消失させることなく、オフセット成分が除去され、かつ、適切なコントラストの補正画像Imを取得できる。
【0118】
本実施形態における画像処理装置100では、スキャナ16で原画を読み取って得られるモノクロ画像Iに基づいて、特定色のベタ領域を特定し、ベタ領域に対する面積比率が基準値tを満たすときの閾値に基づいて、補正用閾値を決定する。画像処理装置100は、この補正用閾値に基づいて、色調補正を実行するため、元画像に忠実な補正画像Imを取得できる。したがって、カラー化作業(彩色)や、再版(複製)などの目的に適したデジタル画像を、アナログ画像から取得できる。
【0119】
また、画像処理装置100によれば、オペレータは、所定の初期設定をするだけでよいため、モノクロ画像Iの画像処理(色調補正)を効率的に行うことができる。
【0120】
<2. 変形例>
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0121】
例えば、上記実施形態では、画像処理装置100は、下限閾値TCbと上限閾値TCwとを取得して、モノクロ画像Iを色調補正すると説明した。しかし、画像処理装置100の構成はこのようなものに限られるものではなく、例えば、黒ベタ領域を特定し、下限閾値TCbのみを取得して、当該下限閾値TCbのみに基づいて色調補正するようにしてもよい。すなわち、モノクロ画像Iに含まれる特定色(描画色や背景色)にのみ着目して色調補正を実行するように画像処理装置100を構成してもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、補正用閾値(下限閾値TCb、上限閾値TCw)を決定する際に、閾値Tb,Twの初期値を黒色階調値(階調値0)または白色階調値(階調値255)として、1階級ずつずらしながら面積基準を満たす階調値を順に検出しているが、補正用閾値の取得方法は、このようなものに限られるものではない。例えば、モノクロ画像Iの各ベタ領域に含まれる階調値の範囲の中から、面積基準を満たす閾値(階調値)を検出するようにしてもよい。
【0123】
また、上記実施形態に示した各機能ブロックは、ソフトウェアにより実現されるとしているが、これらの機能ブロックの一部または全部を専用の論理回路によりハードウェアとして実現してもよい。
【0124】
さらに、上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の外観図である。
【図2】画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】画像処理装置の機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
【図4】領域特定部が備えるサブブロックをデータの流れとともに示す図である。
【図5】画像処理装置の動作を示す流れ図である。
【図6】モノクロ画像データが表現するモノクロ画像の一例を示す図である。
【図7】ベタ領域の特定における画像処理装置の動作の詳細を示す流れ図である。
【図8】図6に示すモノクロ画像の階調値に関するヒストグラムである。
【図9】図6に示すモノクロ画像から取得される各マスクデータの画像を示す図である。
【図10】下限閾値の決定処理における画像処理装置の動作の詳細を示す流れ図である。
【図11】上限閾値の決定処理における画像処理装置の動作の詳細を示す流れ図である。
【図12】色調補正処理後の補正画像の階調値に関するヒストグラムである。
【図13】図6に示すモノクロ画像についての色調補正処理により得られる補正画像を示す図である。
【符号の説明】
【0126】
100 画像処理装置
2 プログラム
21 取得部
22 領域特定部
221 ヒストグラム分析部
222 平滑化部
223 マスク生成部
2231 2値化部
2232 収縮部
23 補正用閾値取得部
231 面積判定部
24 色調補正部
DI モノクロ画像データ
DIm 補正画像データ
DIs 平滑化画像データ
DMb 黒ベタ領域マスクデータ
DMw 白ベタ領域マスクデータ
I モノクロ画像
Im 補正画像
RR 残余領域
ER 端縁領域
TCb 下限閾値
TCw 上限閾値
TMb 黒側閾値
TMw 白側閾値
t 基準値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクロ画像を色調補正する画像処理装置であって、
多階調表現でのモノクロ画像のデータを取得する取得手段と、
前記モノクロ画像に基づいて、特定色に対応する特定階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を前記特定色のベタ領域として特定する特定手段と、
選択された階調値を閾値として、前記モノクロ画像の前記ベタ領域から抽出される画素集合の面積が、前記ベタ領域の面積との比較に基づいて、所定の面積基準を満たすと判定されるときの階調値を補正用閾値として取得する補正用閾値取得手段と、
前記補正用閾値に基づいて、前記モノクロ画像を色調補正する色調補正手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記モノクロ画像を空間的に平滑化することにより、平滑化画像を生成する平滑化手段、
をさらに備え、
前記特定手段は、
前記平滑化画像に基づいて、前記ベタ領域を特定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置であって、
前記特定手段は、
前記階調値の画素集合をさらに収縮した領域を前記ベタ領域として特定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記特定手段は、
前記モノクロ画像に基づいて、描画色に対応する階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を第1ベタ領域として特定するとともに、背景色に対応する階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を第2ベタ領域として特定し、
前記補正用閾値取得手段は、
前記モノクロ画像の前記第1ベタ領域および前記第2ベタ領域のそれぞれについて、第1補正用閾値および第2補正用閾値を前記補正用閾値として取得し、
前記色調補正手段は、
前記第1補正用閾値および前記第2補正用閾値に基づいて、前記モノクロ画像を色調補正することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記特定手段は、
前記モノクロ画像の各階調値の画素の度数分布を分析することにより、描画色の階調側および背景色の階調側のそれぞれから取得されるベタ領域特定用閾値に基づいて、前記第1ベタ領域および前記第2ベタ領域を特定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、
前記特定手段は、
前記描画色の階調と前記背景色の階調との間の中間階調から前記描画色の階調側において出現度数の最も高い階調値に対し、前記背景色の階調側へ所定の階級数分だけ偏った第1階調値と、
前記中間階調から前記背景色の階調側において出現度数の最も高い階調値に対し、前記描画色の階調側へ所定の階級数分だけ偏った第2階調値と、
のそれぞれを、前記ベタ領域特定用閾値とすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記特定手段は、
前記モノクロ画像の全領域のうちの所定画素幅の端縁部分を除いた残余領域から、前記ベタ領域を特定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
モノクロ画像を色調補正する画像処理方法であって、
(a) 多階調表現でのモノクロ画像のデータを取得する工程と、
(b) 前記(a)工程にて取得されるモノクロ画像に基づいて、特定色に対応する特定階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を前記特定色のベタ領域として特定する工程と、
(c) 選択された階調値を閾値として、前記モノクロ画像の前記ベタ領域から抽出される画素集合の面積が、前記ベタ領域の面積との比較に基づいて、所定の面積基準を満たすと判定されるときの階調値を補正用閾値として取得する工程と、
(d) 前記(c)工程にて取得される前記補正用閾値に基づいて、前記モノクロ画像を色調補正する工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
コンピュータが読み取り可能なプログラムであって、
前記コンピュータが前記プログラムを読み取り、前記コンピュータのCPUが前記プログラムをメモリにて実行することにより、前記コンピュータを
多階調表現でのモノクロ画像のデータを取得する取得手段と、
前記モノクロ画像に基づいて、特定色に対応する特定階調値に対して所定階調範囲内の階調値の画素集合を前記特定色のベタ領域として特定する特定手段と、
選択された階調値を閾値として、前記モノクロ画像の前記ベタ領域から抽出される画素集合の面積が、前記ベタ領域の面積との比較に基づいて、所定の面積基準を満たすと判定されるときの階調値を補正用閾値として取得する補正用閾値取得手段と、
前記補正用閾値に基づいて、前記モノクロ画像を色調補正する色調補正手段と、
を備える画像処理装置として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−74394(P2010−74394A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238141(P2008−238141)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】