画像処理装置、画像処理方法およびプログラム
【課題】複数のユーザに対して用途の異なる画像を送信する際、送信対象となる画像の容量を過度に増やすことなく、各用途に応じた出力画像を生成して出力する。
【解決手段】画像処理装置1は、画像を入力する画像入力部31と、画像の用途を設定する用途設定部37と、入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する第1レイヤ画像生成部33と、入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する第2レイヤ画像生成部34と、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するレイヤ設定部38と、その配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する出力画像生成部36と、を備える構成である。
【解決手段】画像処理装置1は、画像を入力する画像入力部31と、画像の用途を設定する用途設定部37と、入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する第1レイヤ画像生成部33と、入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する第2レイヤ画像生成部34と、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するレイヤ設定部38と、その配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する出力画像生成部36と、を備える構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法およびプログラムに関し、特に画像の用途に応じた出力画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル複合機やMFP(Multi Function Peripheral)などと呼ばれる画像処理装置は、原稿をスキャンすることによって得られたスキャン画像を複数のユーザに対して送信することが可能である。ところが、複数のユーザの中に視覚障害者が含まれている場合、他の健常者と同様の画像をそのまま送信してしまうと、視覚障害者にとっては見づらい画像が送信されてしまうケースが発生する。また、複数のユーザの中にそのスキャン画像を広告用途に使用するユーザが含まれる場合、他のユーザと同様の画像をそのまま送信しても、広告用途として使用するユーザにとっては広告用としては使いづらい不鮮明な画像が送信されてしまうケースが発生する。このような場合、スキャン画像を送信するユーザごとに、その画像の画質などを変更して送信することができれば有用である。
【0003】
一方、この種の画像処理装置において、例えば原稿から画像データを取得する際に、複数の画質モードで画像データを取得し、それら複数の画質モードで取得した画像データを各ページに関連付けてファイルを作成するようにした技術が知られている(例えば特許文献1)。この従来技術では、1ページの原稿が読み取られる度に、予め指定された複数の画質モードのそれぞれに対応する画像処理が行われ、それら複数の画質モードのそれぞれに対応する画像データが生成される。そして最終的に作成されるファイルには、ページごとに、複数の画質モードのそれぞれに対応する画像データが含まれる。
【0004】
この従来技術を利用すれば、原稿をスキャンすることによって得られたスキャン画像を複数のユーザに対して送信する際、予め複数の画質モードを指定しておくことにより、各ユーザにはそれら複数の画質モードの画像データを全て含むファイルを送信することができる。そのため、ファイルを受信したユーザが自身で所望する画像を選択して使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−94036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の場合、複数のユーザに対して送信されるファイルには、予め指定された複数の画質モードのそれぞれに対応する画像データが全て含まれる。そのため、複数のユーザのそれぞれに対して送信されるファイルのデータ量が膨大なものとなってしまうという問題がある。そのため、ファイルの送信を効率的に行うことができない。また、ファイルを受信したユーザが自身でコンピュータを操作しながら所望する画像を選択しようとする際、コンピュータにかかる負荷が大きくなるため、複数の画像の中からユーザが所望する画像を効率的に探し出すことができず、ユーザにとっては却って使いづらいものとなってしまう。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、複数のユーザに対して用途の異なる画像を送信する際、送信対象となる画像の容量を過度に増やすことなく、各種の用途に応じた出力画像を生成して出力する画像処理装置、画像処理方法およびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、画像処理装置であって、画像を入力する画像入力手段と、画像の用途を設定する用途設定手段と、前記画像入力手段に入力される入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する第1レイヤ画像生成手段と、前記画像入力手段に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する第2レイヤ画像生成手段と、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するレイヤ設定手段と、前記レイヤ設定手段により設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する出力画像生成手段と、を備えることを特徴とする構成である。
【0009】
また請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記画像入力手段に入力される画像を解析することにより、当該画像を構成するオブジェクトごとに画像領域を判別する領域判別手段を更に備え、前記第1レイヤ画像生成手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像を生成し、前記第2レイヤ画像生成手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成し、前記レイヤ設定手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定し、前記出力画像生成手段は、前記レイヤ設定手段により設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とのそれぞれに含まれる画像領域を組み合わせることにより、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力することを特徴とする構成である。
【0010】
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の画像処理装置において、前記領域判別手段は、前記画像入力手段に入力される画像に基づいて、文字領域、図領域および写真領域を判別することを特徴とする構成である。
【0011】
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置において、前記第2レイヤ画像生成手段は、前記画像入力手段に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行うことにより、前記入力画像を鮮明にした鮮明画像、前記入力画像の色を反転させた反転画像、および、前記入力画像の色相を変化させた色相変化画像の少なくとも1つを生成して特殊用途向けの前記第2レイヤ画像を生成することを特徴とする構成である。
【0012】
請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置において、前記出力画像生成手段により前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とが組み合わされて生成される出力画像は、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を変更することにより別の用途の画像に変更可能であることを特徴とする構成である。
【0013】
請求項6にかかる発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の画像処理装置において、前記レイヤ設定手段は、ユーザからの指示操作に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定することを特徴とする構成である。
【0014】
請求項7にかかる発明は、画像処理方法であって、画像を入力するステップと、画像の用途を設定するステップと、入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成するステップと、入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成するステップと、設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するステップと、設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、設定された画像の用途ごとに出力画像を生成して出力するステップと、を有することを特徴とする構成である。
【0015】
請求項8にかかる発明は、プログラムであって、コンピュータに、画像を入力するステップと、画像の用途を設定するステップと、入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成するステップと、入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成するステップと、設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するステップと、設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、設定された画像の用途ごとに出力画像を生成して出力するステップと、を実行させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、画像の用途ごとの出力画像が、通常用途向けの第1レイヤ画像と、特殊用途向けの第2レイヤ画像との組み合わせによって生成されるため、複数の送信先に対して用途の異なる画像を送信する際、送信対象となる出力画像の容量を過度に増やすことなく、各送信先での用途に応じた出力画像を生成して出力することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】画像処理システムの概略構成の一例を示す図である。
【図2】画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】用途別画像対応情報の概念を示す図である。
【図4】用途別画像対応情報の具体的な一例を示す図である。
【図5】画像処理装置の制御部における機能構成の一例を示すブロック図である。
【図6】画像入力部がスキャナ部から入力する入力画像の一例を示す図である。
【図7】図6の入力画像に対して領域判別を行った結果、文字領域、図領域および写真領域が判別された状態を示す図である。
【図8】文字領域、図領域および写真領域のそれぞれについて生成される第1レイヤ画像の一例を示す図である。
【図9】文字領域、図領域および写真領域のそれぞれについて生成される第2レイヤ画像の一例を示す図である。
【図10】通常用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。
【図11】視覚障害者用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。
【図12】視覚障害者用途のための出力画像の一例を示す図である。
【図13】セキュリティ用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。
【図14】セキュリティ用途のための出力画像の一例を示す図である。
【図15】画像処理装置から複数のコンピュータに対して画像データが送信される概念を示す図である。
【図16】画像処理装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本実施形態における画像処理システムの概略構成の一例を示す図である。この画像処理システムは、デジタル複合機やMFPなどと呼ばれる画像処理装置1を備え、この画像処理装置1が、LANなどのネットワーク3を介して複数のコンピュータ2と接続された構成である。
【0020】
画像処理装置1は、装置本体の上部にスキャナ部4を備えると共に、その装置本体の正面側に操作パネル5を備えている。スキャナ部4は、原稿を読み取って画像データを生成するものである。また、操作パネル5は、ユーザが画像処理装置1を使用する際のユーザインタフェースとなるものである。このような画像処理装置1は、スキャナ機能を備えており、スキャナ部4にセットされた原稿を読み取って画像データを生成し、その画像データをネットワーク3に接続された複数のコンピュータ2のうち、操作パネル5を介してユーザにより指定された送信先に送信することができるようになっている。特に本実施形態では、複数の送信先に画像データを送信する際、ユーザが操作パネル5を介して送信先ごとに画像データの用途を指定することができるようになっている。そして画像処理装置1は、複数の送信先のそれぞれにおける用途に応じた出力画像を生成し、その出力画像を各送信先に送信するように構成される。
【0021】
また、本実施形態の画像処理装置1は、上記のようなスキャナ機能の他にも、プリンタ機能、コピー機能、FAX機能などの複数の機能を備えている。
【0022】
図2は、画像処理装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、画像処理装置1は、そのハードウェア構成として、制御部10、ネットワークインタフェース13、FAX部14、操作パネル5、スキャナ部4、プリンタ部17、および、記憶装置18を備えており、これら各部がデータバス19を介して相互にデータの入出力を行うことができるように接続されている。
【0023】
制御部10は、CPU11とメモリ12とを備えており、CPU11が記憶装置18に予め記憶されているプログラム21を読み出して実行することにより、後述する各種処理部としての機能を実現するものである。メモリ12は、CPU11がプログラム21を実行する際に一時的なデータなどを記憶するためのものである。
【0024】
ネットワークインタフェース13は、画像処理装置1をネットワーク3に接続するためのものである。制御部10は、このネットワークインタフェース13を介して複数のコンピュータ2のそれぞれとデータ通信を行う。FAX部14は、FAXデータの送受信を行うためのものである。
【0025】
操作パネル5は、ユーザに対して各種情報を表示する表示部5aと、ユーザが各種操作入力を行うための操作部5bとを備えている。表示部5aは、例えばカラー液晶ディスプレイなどで構成される。操作部5bは、表示部5aの画面上に配置されたタッチパネルキーや表示部5aの画面周囲に配置された押しボタンキーなどによって構成される。ユーザは、このような操作パネル5を操作することにより、スキャン機能を選択したり、スキャン機能によって得られる画像データの送信先を指定したりすることができる。また、画像データの送信先ごとに、その画像データの用途を指定することもできる。
【0026】
スキャナ部4は、原稿の画像を読み取って画像データを生成するものである。このスキャナ部4は、例えば自動原稿搬送装置(ADF)を備えている。そのため、スキャナ部4は、その自動原稿搬送装置にセットされる複数枚の原稿を1枚ずつ連続的に自動読み取りすることが可能である。このようなスキャナ部4における画像の読み取り動作は、制御部10によって制御される。そしてスキャナ部4は、原稿を読み取って生成した画像データを制御部10へ出力するように構成される。
【0027】
プリンタ部17は、制御部10から入力する画像データに基づいて印刷用紙などのシート部材に対してトナー像を転写することによって画像形成を行い、印刷出力を行うものである。このようなプリンタ部17の動作もまた、制御部10によって制御される。ただし、このプリンタ部17は、上述したスキャン機能が利用される場合には、動作しないようになっている。
【0028】
記憶装置18は、ハードディスク装置などで構成される不揮発性の記憶手段である。この記憶装置18には、制御部10のCPU11によって実行されるプログラム21が記憶されると共に、用途別画像対応情報22が予め記憶されている。
【0029】
用途別画像対応情報22は、スキャン機能によって原稿を読み取って得られる画像データを複数のコンピュータ2のそれぞれに送信する際、ユーザによって指定される送信先ごとの用途に応じた画像を特定するための情報である。図3は、この用途別画像対応情報22の概念を示す図である。図3に示すように、用途別画像対応情報22は、画像データを送信する際に指定可能な用途と、その用途に対応した出力画像を生成するために必要となる画像とが対応付けられたテーブル情報である。第1レイヤ画像は通常用途向けの画像であり、第2レイヤ画像は特殊用途向けの画像である。そして、図3に示す用途別画像対応情報22では、「用途1」、「用途2」および「用途3」の3つの用途のそれぞれに適した出力画像がそれら第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせによって生成されることが規定されている。すなわち、「用途1」に対応する出力画像が第1レイヤ画像のみによって生成され、「用途2」に対応する出力画像が第2レイヤ画像のみによって生成され、「用途3」に対応する出力画像が第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との2つの画像の組み合わせによって生成されることが規定されている。
【0030】
そして本実施形態の画像処理装置1は、ユーザがスキャン機能を利用して複数のコンピュータ2に対して画像データを送信する指示を行ったとき、各送信先に対して画像の用途が指定されていると、用途別画像対応情報22を参照する。そしてスキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データに基づいて、第1レイヤ画像と、第2レイヤ画像とを生成し、それらを必要に応じて組み合わせることにより、各用途に応じた出力画像を生成する。例えば、図3の例では、3つの用途に対応する出力画像が、第1レイヤ画像と、第2レイヤ画像との2つの画像の組み合わせで生成されることになる。言い換えると、本実施形態では、通常用途向けの第1レイヤ画像および特殊用途向けの第2レイヤ画像の2種類の画像を用いて3種類の用途に対応した出力画像を生成することができるようになっている。
【0031】
ただし、スキャナ部4が原稿を読み取って得られる画像データには、文字領域や図領域、写真領域などの様々な画像構成要素が含まれる場合がある。そのため、本実施形態では、画像データに含まれるそれらの文字領域、図領域および写真領域ごとに、第1レイヤ画像および第2レイヤ画像のうちの必要な画像を組み合わせるように構成されている。
【0032】
図4は、本実施形態における用途別画像対応情報22の具体的な一例を示す図である。図4に示すように、本実施形態の用途別画像対応情報22には、ユーザが選択可能な画像の用途として、「通常」、「視覚障害者」、「広告」、「プロジェクタ」および「セキュリティ」の5つの用途が設定されている。また、これら各用途に対応する画像としては、入力する画像データを構成する各構成要素、すなわち、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域ごとに規定されている。また、本実施形態では、図4に示すように、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像と、特殊用途向けの第2レイヤ画像とが規定される。
【0033】
第1レイヤ画像は、上述したように通常用途向けの画像であり、各領域についてノーマル画像が定められている。このノーマル画像は、例えば、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データに対して標準的な画像処理を施すことによって生成される。
【0034】
また第2レイヤ画像は、上述したように特殊用途向けの画像である。この第2レイヤ画像には、複数種類の画像が規定されている。図4に示す例では、用途に応じた第2レイヤ画像として、鮮明画像と、反転画像と、色相変化画像との3種類の画像が規定されている。これら3種類の画像は、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データに対し、ノーマル画像とは異なる加工処理が施されることにより生成される。例えば、鮮明画像は、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データに対し、画像のコントラストをアップさせる画像処理や、画像の先鋭化処理などが行われ、ノーマル画像よりも鮮明な画像として生成される。反転画像は、文字や図などの画像構成要素の色と、背景色とを反転させた画像であり、例えば、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データの背景色を画像構成要素の色と入れ替えることにより生成される。色相変化画像は、例えばスキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データの色相を変化させることによって生成される画像であり、ノーマル画像とは異なった色調の画像として生成される。
【0035】
そして本実施形態では、図4に示すように、用途が「通常」である場合、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域においてノーマル画像が採用され、これらが組み合わせられて出力画像が生成されるようになっている。
【0036】
また、用途が「視覚障害者」である場合、「文字領域」と「図領域」の2つの領域において反転画像が採用されると共に、「写真領域」においては鮮明画像が採用され、これらが組み合わせられて出力画像が生成されるようになっている。視覚障害者の場合、例えば白地にカラーで文字などが描画されるよりも、カラー地に白文字などで描画される方が読みやすいことが多い。そのため、本実施形態では、「文字領域」と「図領域」の2つの領域において反転画像が採用される。ただし、「写真領域」については、色を反転させてしまうと、却って写真の内容が把握しづらくなってしまうため、そのような反転画像は採用せず、写真を鮮明にした画像が採用される。
【0037】
また、用途が「広告」である場合、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域において鮮明画像が採用され、これらが組み合わせられて出力画像が生成されるようになっている。また、用途が「プロジェクタ」である場合、「文字領域」と「図領域」の2つの領域において鮮明画像が採用されると共に、「写真領域」においてはノーマル画像が採用され、これらが組み合わせられて出力画像が生成されるようになっている。
【0038】
さらに用途が「セキュリティ」である場合、「文字領域」および「図領域」に含まれる画像構成要素を隠蔽する画像が生成される。つまり、「文字領域」と「図領域」の2つの領域において、ノーマル画像と反転画像の2つの画像が採用される。また「写真領域」については、ノーマル画像が採用されるようになっている。そしてこれらの画像が重ね合わせられて出力画像が生成される。
【0039】
したがって、例えば、ユーザが各送信先に送信する画像の用途として、「通常」、「視覚障害者」および「セキュリティ」の3つの用途を選択した場合、図4に示す用途別画像対応情報22を参照すると、「文字領域」についてはノーマル画像と反転画像との2つの画像が生成され、「図領域」についてもノーマル画像と反転画像との2つの画像が生成され、「写真領域」についてはノーマル画像と鮮明画像との2つの画像が生成される。そしてそれらの画像が組み合わせられて各用途に対応した出力画像が生成されるようになっている。以下、このような例に基づき、画像処理装置1の構成および動作について更に詳しく説明する。
【0040】
図5は、画像処理装置1の制御部10における機能構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、画像処理装置1の制御部10は、CPU11が上述したプログラム21を読み出して実行することにより、画像入力部31、領域判別部32、第1レイヤ画像生成部33、第2レイヤ画像生成部34、出力画像生成部36、用途設定部37およびレイヤ設定部38として機能する。そして、このような制御部10は、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データを入力して出力画像を生成し、ネットワークインタフェース13を介してユーザにより指定された送信先にその出力画像を送信するように構成されている。尚、図5において、斜線を施した矢印は画像データの流れを示しており、実線矢印は制御信号の流れを示している。
【0041】
まず、用途設定部37は、操作パネル5を介してユーザにより指定される送信先ごとの用途を設定する処理部である。つまり、ユーザがスキャン機能を選択し、そのスキャン機能によって得られる画像データの送信先を指定すると共に、更に画像データの用途を送信先ごとに指定した場合、用途設定部37は、図4に示した用途別画像対応情報22の中からユーザによって指定された用途を特定し、送信先ごとに、その特定した用途を設定する。そして、用途設定部37は、レイヤ設定部38を機能させる。
【0042】
レイヤ設定部38は、記憶装置18に予め記憶されている用途別画像対応情報22を読み出し、用途設定部37によって設定された用途に対応する画像を特定する。例えば、上述したように、ユーザが「通常」、「視覚障害者」および「セキュリティ」の3つの用途を選択した場合、レイヤ設定部38は、「文字領域」についてノーマル画像と反転画像との2つの画像を特定し、「図領域」についてノーマル画像と反転画像との2つの画像を特定し、さらに「写真領域」についてノーマル画像と鮮明画像との2つの画像を特定する。そしてレイヤ設定部38は、第2レイヤ画像生成部34に対してそれらの特定した画像を指示すると共に、出力画像生成部36に対して出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序と透過率とを指示するように構成される。
【0043】
尚、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせて出力画像を生成する際の配置順序と透過率は、予め用途ごとに設定されている。ただし、このような配置順序と透過率は、ユーザが操作パネル5を操作することによって変更することも可能である。
【0044】
画像入力部31は、スキャナ部4から画像データを入力する処理部である。図6は、画像入力部31がスキャナ部4から入力する入力画像G1の一例を示す図である。この入力画像G1には、画像上部に文字列によって構成される文字領域が含まれ、画像中央にグラフなどの図領域が含まれる。そして画像下部に写真やグラフィックなどの写真領域が含まれる。画像入力部31は、このような画像データを入力すると、その画像データを領域判別部32に出力する。
【0045】
領域判別部32は、画像入力部31から入力する画像データを解析することにより、当該画像に含まれる文字、図、写真などのオブジェクトを抽出し、それら抽出したオブジェクトが含まれる矩形状の外枠をオブジェクトごとの画像領域として判別する処理部である。例えば、図6に示す入力画像G1に基づいて領域判別部32が領域判別を行うと、図7に示すように入力画像G1における文字領域R1、図領域R2および写真領域R3が判別される。そして領域判別部32は、このようにして領域判別を行うと、その判別結果を第1レイヤ画像生成部33および第2レイヤ画像生成部34のそれぞれに出力する。
【0046】
第1レイヤ画像生成部33は、入力画像G1に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する処理部である。この第1レイヤ画像生成部33は、領域判別部32で判別された文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれについてノーマル画像を生成する。図8は、文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれについて生成されるノーマル画像GA1,GA2,GA3の一例を示す図である。図8(a)に示すように、第1レイヤ画像生成部33は、入力画像G1の文字領域R1だけを抽出し、その抽出した文字領域R1だけを含むノーマル画像GA1を生成する。また図8(b)に示すように、第1レイヤ画像生成部33は、入力画像G1の図領域R2だけを抽出し、その抽出した図領域R2だけを含むノーマル画像GA2を生成する。さらに図8(c)に示すように、第1レイヤ画像生成部33は、入力画像G1の写真領域R3だけを抽出し、その抽出した写真領域R3だけを含むノーマル画像GA3を生成する。
【0047】
第2レイヤ画像生成部34は、加工処理部35を備えている。この加工処理部35は、レイヤ設定部38から指示される領域ごとの画像に基づいて、入力画像G1に含まれる文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれに対して施す加工処理を特定する。そして、その特定した加工処理を実行することにより、文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれを加工した第2レイヤ画像を生成する。図9は、文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれについて生成される第2レイヤ画像GB1,GB2,GB3の一例を示す図である。例えば、上述したように、「文字領域」に対する第2レイヤ画像として反転画像が特定されている場合、第2レイヤ画像生成部34は、図9(a)に示すように、入力画像G1に含まれる文字領域R1を抽出し、その文字領域R1に対して文字部分の色と背景色とを反転させた反転画像GB1を生成する。また、上述したように「図領域」に対する第2レイヤ画像としても反転画像が特定されている場合、第2レイヤ画像生成部34は、図9(b)に示すように、入力画像G1に含まれる図領域R2を抽出し、その図領域R2に対して図の部分の色と背景色とを反転させた反転画像GB2を生成する。さらに上述したように「写真領域」についての第2レイヤ画像として鮮明画像が特定されている場合、第2レイヤ画像生成部34は、図9(c)に示すように、入力画像G1に含まれる写真領域R3を抽出し、その写真領域R3に対してノーマル画像GA3よりもより一層写真を鮮明にした鮮明画像GB3を生成する。
【0048】
上記のように第1レイヤ画像生成部33において第1レイヤ画像が生成され、第2レイヤ画像生成部34において第2レイヤ画像が生成されると、次に出力画像生成部36が機能する。出力画像生成部36は、第1レイヤ画像生成部33で生成される第1レイヤ画像と、第2レイヤ画像生成部34で生成される第2レイヤ画像とを、レイヤ設定部38から指示される配置順序に従って重ね合わせることにより、用途設定部37において設定された用途ごとの出力画像を生成する。そして出力画像生成部36は、ネットワークインタフェース13を介して、ユーザにより指定された送信先に出力画像を送信する。
【0049】
この出力画像生成部36は、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを重ね合わせる際、各画像の透過率をレイヤ設定部38から指示される透過率に基づいて設定する。例えば、ある画像の透過率が100%に設定される場合、その画像の濃度値は0%に抑えられ、完全に透明な画像となり、その背面側に配置される画像を100%透過させる画像となる。また、透過率が50%に設定される場合、その画像の濃度値は50%に抑えられ、その背面側に配置される画像を50%透過させる画像となる。さらに透過率が0%に設定される場合、その画像の濃度は100%のまま保持され、その背面側に配置される画像は全く透過させない状態となる。尚、このような透過率は、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域に対して個別に設定されるようになっている。
【0050】
図10は、通常用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。通常用途の場合、レイヤ設定部38は、図10に示すように、ノーマル画像GA1、反転画像B1、ノーマル画像GA2、反転画像GB2、ノーマル画像GA3および鮮明画像GB3をこの順序で配置することを指示し、ノーマル画像GA1に含まれる文字領域R1、ノーマル画像GA2に含まれる図領域R2およびノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3のそれぞれの透過率を0%に設定することを指示する。尚、ノーマル画像GA1に含まれる文字領域R1以外の領域、ノーマル画像GA2に含まれる図領域R2以外の領域、および、ノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3以外の領域については、それぞれ透過率が100%に設定される。
【0051】
出力画像生成部36は、上記のようなレイヤ設定部38からの指示に基づき、図10に示すように、ノーマル画像GA1、反転画像GB1、ノーマル画像GA2、反転画像GB2、ノーマル画像GA3および鮮明画像GB3を重ね合わせて通常用途に使用するための出力画像を生成する。このとき、最前面の1枚目に配置されるノーマル画像GA1は文字領域R1の透過率が0%に設定されるため、2枚目に配置される反転画像GB1の文字領域R1に含まれる画像は最前面には透過しないようになっている。また、1枚目のノーマル画像GA1において文字領域R1以外の領域は透過率が100%に設定されるため、3枚目のノーマル画像GA2に含まれる図領域R2と、5枚目のノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3とが最前面まで透過する。一方、3枚目に配置されるノーマル画像GA2は図領域R2の透過率が0%に設定されるため、4枚目に配置される反転画像GB2の図領域R2に含まれる画像は最前面には透過しない。同様に、5枚目に配置されるノーマル画像GA3は写真領域R3の透過率が0%に設定されるため、6枚目に配置される鮮明画像GB3の写真領域R3に含まれる画像も最前面には透過しない。
【0052】
その結果、図10に示すように各画像が重ね合わせられて生成される出力画像は、図6に示す入力画像G1とほぼ同様の画像となる。このようにして、出力画像生成部36は、通常用途に使用するための出力画像G1を生成する。
【0053】
次に、図11は、視覚障害者用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。視覚障害者用途の場合、レイヤ設定部38は、図11に示すように、反転画像GB1、ノーマル画像GA1、反転画像GB2、ノーマル画像GA2、鮮明画像GB3およびノーマル画像GA3をこの順序で配置することを指示し、反転画像GB1に含まれる文字領域R1、反転画像GB2に含まれる図領域R2および鮮明画像GB3に含まれる写真領域R3のそれぞれの透過率を0%に設定することを指示する。尚、反転画像GB1に含まれる文字領域R1以外の領域、反転画像GB2に含まれる図領域R2以外の領域、および、鮮明画像GB3に含まれる写真領域R3以外の領域については、それぞれ透過率が100%に設定される。
【0054】
出力画像生成部36は、上記のようなレイヤ設定部38からの指示に基づき、図11に示すように、反転画像GB1、ノーマル画像GA1、反転画像GB2、ノーマル画像GA2、鮮明画像GB3およびノーマル画像GA3を重ね合わせて視覚障害者用途に使用するための出力画像を生成する。このとき、最前面の1枚目に配置される反転画像GB1は文字領域R1の透過率が0%に設定されるため、2枚目に配置されるノーマル画像GA1の文字領域R1に含まれる画像は最前面には透過しない。また、1枚目の反転画像GB1において文字領域R1以外の領域は透過率が100%に設定されるため、3枚目の反転画像GB2に含まれる図領域R2と、5枚目の鮮明画像GB3に含まれる写真領域R3とが最前面まで透過する。一方、3枚目に配置される反転画像GB2は図領域R2の透過率が0%に設定されるため、4枚目に配置されるノーマル画像GA2の図領域R2に含まれる画像は最前面には透過しない。同様に、5枚目に配置される鮮明画像GB3は写真領域R3の透過率が0%に設定されるため、6枚目に配置されるノーマル画像GA3の写真領域R3に含まれる画像も最前面には透過しない。
【0055】
その結果、図11に示すように各画像が重ね合わせられて生成される出力画像は、図12に示すような出力画像G2となる。図12は、視覚障害者用途のための出力画像G2の一例を示す図である。図12に示すように、視覚障害者用途の場合には、文字領域R1と図領域R2において色が反転し、さらに写真領域R3においては通常よりも鮮明な状態に加工された写真が含まれる出力画像G2が生成される。したがって、視覚障害者にとっては、より見やすい出力画像G2が生成される。このようにして、出力画像生成部36は、視覚障害者用途のための出力画像G2を生成する。
【0056】
次に、図13は、セキュリティ用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。セキュリティ用途の場合、レイヤ設定部38は、図13に示すように、ノーマル画像GA1、反転画像GB1、ノーマル画像GA2、反転画像GB2、ノーマル画像GA3および鮮明画像GB3をこの順序で配置することを指示し、ノーマル画像GA1に含まれる文字領域R1およびノーマル画像GA2に含まれる図領域R2の透過率を50%に設定し、さらにノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3の透過率を0%に設定することを指示する。尚、ノーマル画像GA1に含まれる文字領域R1以外の領域、ノーマル画像GA2に含まれる図領域R2以外の領域、および、ノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3以外の領域については、それぞれ透過率が100%に設定される。
【0057】
出力画像生成部36は、上記のようなレイヤ設定部38からの指示に基づき、図13に示すように、ノーマル画像GA1、反転画像GB1、ノーマル画像GA2、反転画像GB2、ノーマル画像GA3および鮮明画像GB3を重ね合わせてセキュリティ用途に使用するための出力画像を生成する。このとき、最前面の1枚目に配置されるノーマル画像GA1は文字領域R1の透過率が50%に設定されるため、2枚目に配置される反転画像GB1の文字領域R1に含まれる画像が50%透過する。また、1枚目のノーマル画像GA1において文字領域R1以外の領域は透過率が100%に設定されるため、3枚目のノーマル画像GA2に含まれる図領域R2と、5枚目のノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3とが最前面まで透過する。一方、3枚目に配置されるノーマル画像GA2は図領域R2の透過率が50%に設定されるため、4枚目に配置される反転画像GB2の図領域R2に含まれる画像が50%透過し、その状態で最前面まで透過する。また、5枚目に配置されるノーマル画像GA3は写真領域R3の透過率が0%に設定されるため、6枚目に配置される鮮明画像GB3の写真領域R3に含まれる画像は最前面には透過しない。
【0058】
その結果、図13に示すように各画像が重ね合わせられて生成される出力画像は、図14に示すような出力画像G3となる。図14は、セキュリティ用途のための出力画像G3の一例を示す図である。図14に示すように、セキュリティ用途の場合には、文字領域R1と図領域R2においてノーマル画像と反転画像とが50%ずつで重ね合わせられた状態となり、それぞれの領域が塗りつぶされた状態となるので、文字や図が隠蔽された出力画像G3が生成される。そのため、文字領域R1に含まれる文字や、図領域R2に含まれる図が秘密情報を含むような場合には、このようなセキュリティ用途を選択して出力画像G3を生成することにより、そのような秘密情報が漏洩してしまうことを防止することができるようになる。このようにして、出力画像生成部36は、セキュリティ用途のための出力画像G3を生成する。
【0059】
出力画像生成部36は、上記のようにして用途設定部37により設定された用途ごとに出力画像G1,G2,G3を生成すると、ユーザによって指定された送信先に対し、それぞれの出力画像G1,G2,G3を出力する。このとき、出力画像生成部36は、用途に応じて生成した複数の出力画像G1,G2,G3の中から、ユーザによって指定された送信先の用途に対応する出力画像を選択し、各送信先に対して個別に出力画像を出力する。
【0060】
図15は、画像処理装置1から複数のコンピュータ2に対して画像データD1,D2,D3が送信される概念を示す図である。この図15では、ユーザA,B,Cのそれぞれが使用する複数のコンピュータ2が送信先として指定されると共に、ユーザAのコンピュータ2に対しては「通常」の用途が指定され、ユーザBのコンピュータ2に対しては「視覚障害者」の用途が指定され、ユーザCのコンピュータ2に対しては「セキュリティ」の用途が指定された場合を例示している。この場合、画像処理装置1は、原稿を読み取ることに伴い、上述したように、通常用途の出力画像G1と、視覚障害者用途の出力画像G2と、セキュリティ用途の出力画像G3とを生成する。そして画像処理装置1は、通常用途の出力画像G1に対応する画像データD1をユーザAのコンピュータ2に送信し、視覚障害者用途の出力画像G2に対応する画像データD2をユーザBのコンピュータ2に送信し、セキュリティ用途の出力画像G3をユーザCのコンピュータ2に送信する。そしてユーザAは、画像処理装置1から送信される画像データD1を受信すると、その画像データD1を通常の用途に使用することができる。またユーザBが視覚障害者である場合、上記のように画像処理装置1から送信される画像データD2を受信すると、その画像データD2はユーザBにとって見やすい画像となっている。さらにユーザCが秘密情報にアクセスする権限のない部外者などである場合、ユーザCが上記のように画像処理装置1から送信される画像データD3を受信すると、その画像データD3は文字や図の隠蔽されたものとなっており、秘密情報の漏洩を防止することができる。
【0061】
画像処理装置1は、図15に示すように画像データD1,D2,D3を複数のコンピュータ2のそれぞれに出力する際、図10、図11および図13に示したようなレイヤ構造を解除して1枚の画像データとして送信するようにしても良い。この場合、各コンピュータ2に送信される画像データは1レイヤ分のデータ構造となるので、データ量が少なくなる。そのため、画像データD1,D2,D3の送信を効率良く行うことができるようになる。
【0062】
また画像処理装置1は、図15に示すように画像データD1,D2,D3を複数のコンピュータ2のそれぞれに出力する際、図10、図11および図13に示したようなレイヤ構造をそのまま保持した状態で複数のレイヤ構造を有する画像データとして送信するようにしても良い。この場合、画像データD1,D2,D3を受信したユーザがコンピュータ2を操作することにより、各レイヤの配置順序と透過率の設定を変更して別の画像を得ることが可能になる。例えば、通常用途の画像データD1を受信したユーザAは、図10に示した配置順序および透過率を、図13に示す配置順序および透過率に変更することにより、通常用途の画像データD1を視覚障害者用途の画像データD2に変換することが可能である。したがって、各ユーザは、自身に送信された画像データから他のユーザに送信された画像データを確認することも可能になる。
【0063】
また上記のように、図10、図11および図13に示したようなレイヤ構造をそのまま保持した状態の複数のレイヤ構造を有する画像データとして送信する場合には、用途設定部37によって設定された各用途に対応する1枚ずつの画像データD1,D2,D3を揃えて各ユーザに送信する場合よりも、データ量を低減することができるという利点がある。すなわち、用途設定部37によって設定された各用途に対応する1枚ずつの画像データD1,D2,D3には、それぞれ文字領域R1と図領域R2と写真領域R3とが含まれる。そのため、例えば上記のように3つの用途が指定され、各用途に対応する3枚分の画像データD1,D2,D3が送信されると仮定すると、送信されるデータには、文字領域R1と図領域R2と写真領域R3とがそれぞれ3つずつ含まれることになる。これに対し、本実施形態のように、図10、図11および図13に示したようなレイヤ構造をそのまま保持した状態の複数のレイヤ構造を有する画像データとして送信する場合には、3つの用途に対応するデータを送信する際、文字領域R1と図領域R2と写真領域R3とがそれぞれ2つずつ含まれるだけであるので、データ量が少なくなる。
【0064】
このように本実施形態の画像処理装置1は、レイヤ設定部38により設定される配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とをレイヤ構造にして組み合わせることにより、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する構成であるため、出力画像のデータ量を低減することができるという利点がある。
【0065】
次に図16は、画像処理装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、制御部10においてCPU11がプログラム21を実行することによって行われる処理である。また、この処理は、ユーザによってスキャン機能が選択され、原稿の読み取り動作開始が指示されることにより、開始される。制御部10は、この処理を開始すると、まずスキャナ部4を駆動制御することにより、原稿の読み取り動作を行う(ステップS1)。そして制御部10は、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像を入力する(ステップS2)。
【0066】
次に制御部10は、原稿の読み取りに伴って画像の用途設定が行われているか否かを判断する(ステップS3)。すなわち、ユーザが操作パネル5を操作することにより送信先ごとに画像の用途を指定しているか否かを判断する。そして用途の設定が行われている場合(ステップS3でYES)、制御部10は、スキャナ部4から入力した画像に基づいて領域判別を行う(ステップS4)。ここでは、上述したように文字領域R1と図領域R2と写真領域R3とが判別される。そして制御部10は、領域判別によって抽出された文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれの領域ごとに、第1レイヤ画像となるノーマル画像GA1,GA2,GA3を生成する(ステップS5)。
【0067】
次に制御部10は、用途設定部37によって設定されている特殊用途を特定する(ステップS6)。例えば、上述したように、ユーザが「通常」、「視覚障害者」および「セキュリティ」の3つの用途を指定している場合は、特殊用途として、「視覚障害者」と「セキュリティ」と2つの用途から1つの用途を特定する。そして制御部10は、その特定した特殊用途に対応する加工処理を特定する(ステップS7)。このとき、制御部10は、用途別画像対応情報22を参照して加工処理を特定する。例えば、特殊用途として「視覚障害者」が特定されている場合、制御部10は、図4に示した用途別画像対応情報22を参照し、文字領域R1と図領域R2の2つの領域については反転画像GB1,GB2を生成するための加工処理を特定する。また写真領域R3については、鮮明画像GB3を生成するための加工処理を特定する。そして制御部10は、域判別によって抽出された文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれの領域ごとに、特定された加工処理を実行し、第2レイヤ画像となる反転画像GB1,GB2および鮮明画像GA3を生成する(ステップS8)。
【0068】
次に制御部10は、他の特殊用途があるか否かを判断する(ステップS9)。例えば、上述した例の場合には、特殊用途としてさらに「セキュリティ」が指定されているため、ここではYESと判断される。そして他の特殊用途がある場合(ステップS9でYES)、これまでの処理で既に生成された画像の組み合わせで、その特殊用途に対応する画像を生成することが可能であるか否かを判断する(ステップS10)。例えば、他の特殊用途が「セキュリティ」である場合、用途別画像対応情報22を参照すると、セキュリティ用途の画像を生成するためには、文字領域R1としてノーマル画像GA1と反転画像GB1とが必要であり、図領域R2としてノーマル画像GA2と反転画像GB2とが必要であり、写真領域R3としてノーマル画像GA3とが必要である。これらの画像は、既に上述した処理で全て生成されており、「セキュリティ」の用途に対応する画像はそれらの組み合わせで生成することが可能である。したがって、このような場合はステップS10においてYESと判断され、ステップS11の処理へと進む。
【0069】
一方、ステップS9において他の特殊用途が設定されていない場合も(ステップS9でNO)、処理はステップS11へと進む。また、他の特殊用途が設定されており(ステップS9でYES)、しかもこれまでの処理で既に生成された画像の組み合わせでその特殊用途に対応する画像を生成することができない場合(ステップS10でNO)、ステップS6の処理へと進み、その特殊用途に対応する画像を生成するための加工処理を特定し、領域ごとの画像を生成するための処理を繰り返す。
【0070】
上記のようにして全ての用途に対応する画像を生成するために必要な画像が得られると、制御部10は、これまでの処理で生成された複数の画像の配置順序と透過率とを、用途ごとに設定する(ステップS11)。そしてステップS11で設定された配置順序と透過率とに基づいて複数の画像を組み合わせることにより、用途ごとの出力画像を生成する(ステップS12)。ここでは、ユーザが予め複数の用途を指定していた場合に、それら複数の用途のそれぞれに対応する出力画像が生成されることになる。そしてステップS14へと進む。
【0071】
一方、ステップS3において、画像の用途設定が行われていない場合(ステップS3でNO)、制御部10は、スキャナ部4から入力する入力画像に基づいて通常の出力画像を生成する(ステップS13)。そしてステップS14へと進む。
【0072】
そして制御部10は、ステップS12又はS13で生成された出力画像を、ユーザにより予め指定された送信先に対して出力する(ステップS14)。このとき、制御部10は、送信先ごとに予め設定されている用途に対応した出力画像を送信する。以上で、画像処理装置1における一連の処理が終了する。
【0073】
画像処理装置1において上記のような処理が行われることにより、画像の用途が設定されている場合には、通常用途向けの第1レイヤ画像と、特殊用途向けの第2レイヤ画像とが生成され、用途ごとにそれら第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率が設定される。そして用途ごとに設定される配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、予め設定された画像の用途ごとに出力画像が生成されると共に、そのような出力画像が出力されるようになる。
【0074】
以上のように本実施形態の画像処理装置1は、画像を入力する画像入力部31と、画像の用途を設定する用途設定部37と、画像入力部31に入力される入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する第1レイヤ画像生成部33と、画像入力部31に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する第2レイヤ画像生成部34と、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するレイヤ設定部38と、レイヤ設定部38により設定される配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する出力画像生成部36と、を備える構成である。
【0075】
そのため、本実施形態の画像処理装置1は、複数の送信先に対して用途の異なる画像を送信する際、送信対象となる出力画像の容量を過度に増やすことなく、各送信先での用途に応じた出力画像を生成して出力することができるようになっている。それ故、複数の送信先のそれぞれに対して送信される画像データのデータ量が膨大なものとなってしまうことを抑制でき、画像データの送信処理を効率的に行うことが可能である。
【0076】
また本実施形態の画像処理装置1は、画像入力部31に入力される画像を解析することにより、当該画像を構成するオブジェクトごとに画像領域を判別する領域判別部32を更に備えている。そして第1レイヤ画像生成部33は、領域判別部32により判別される画像領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像を生成し、第2レイヤ画像生成部34は、領域判別部32により判別される画像領域ごとに、特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する。またレイヤ設定部38は、領域判別部32により判別される画像領域ごとに、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するようになっており、出力画像生成部36は、レイヤ設定部38により設定される配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とのそれぞれに含まれる画像領域を組み合わせることにより、予め設定される画像の用途ごとに出力画像を生成する構成である。
【0077】
このような構成によれば、入力画像に含まれる画像領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像と、特殊用途向けの第2レイヤ画像とが生成され、それらが適切に組み合わせられて各用途の出力画像が生成されるようになる。そのため、各用途に対応して生成される出力画像は、画像領域ごとに各用途に適したものとして生成されるようになり、出力画像の利用価値が向上する。
【0078】
また本実施形態の画像処理装置1は、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせた出力画像を生成する際、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を変更することにより別の用途の画像に変更可能な出力画像を生成することも可能である。そのため、出力画像を受信したユーザが自身のコンピュータ2を操作することにより、出力画像を別の用途の画像に変更することができるようになる。また、この場合においても、全ての用途に対応した出力画像を揃えた状態で送信する場合と比較として、送信対象となる画像データのデータ量を低減することができるというメリットがある。
【0079】
(変形例)
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限られるものではなく、種々の変形例が適用可能であることは言うまでもない。
【0080】
例えば、上述した実施形態では、画像処理装置1がデジタル複合機やMFPなどと呼ばれる装置である場合を例示したが、画像処理装置1は必ずしもそのような装置に限られるものではない。すなわち、上述したような画像の用途に対応した出力画像を生成して出力する機能は、一般的なコンピュータによって実現することも可能である。この場合、上述したプログラム21は、一般的なコンピュータに予めインストールされ、そのコンピュータにおいて実行される。そして図5に示した制御部10の各処理部としての機能を、一般的なコンピュータにおいて実現することも可能である。
【0081】
また、上述した実施形態では、レイヤ設定部38が第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定する際、予め用途ごとに定められている配置順序および透過率を設定する場合を例示した。しかし、このような配置順序および透過率は、ユーザが操作パネル5に対する指示操作を行った場合にはその指示操作に基づいて設定するようにしても良い。この場合、各用途に対応する出力画像として、ユーザの嗜好に応じた出力画像を生成することができるようになる。
【符号の説明】
【0082】
1 画像処理装置
2 コンピュータ
4 スキャナ部
10 制御部
22 用途別画像対応情報
31 画像入力部
32 領域判別部
33 第1レイヤ画像生成部
34 第2レイヤ画像生成部
35 加工処理部
36 出力画像生成部
37 用途設定部
38 レイヤ設定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法およびプログラムに関し、特に画像の用途に応じた出力画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル複合機やMFP(Multi Function Peripheral)などと呼ばれる画像処理装置は、原稿をスキャンすることによって得られたスキャン画像を複数のユーザに対して送信することが可能である。ところが、複数のユーザの中に視覚障害者が含まれている場合、他の健常者と同様の画像をそのまま送信してしまうと、視覚障害者にとっては見づらい画像が送信されてしまうケースが発生する。また、複数のユーザの中にそのスキャン画像を広告用途に使用するユーザが含まれる場合、他のユーザと同様の画像をそのまま送信しても、広告用途として使用するユーザにとっては広告用としては使いづらい不鮮明な画像が送信されてしまうケースが発生する。このような場合、スキャン画像を送信するユーザごとに、その画像の画質などを変更して送信することができれば有用である。
【0003】
一方、この種の画像処理装置において、例えば原稿から画像データを取得する際に、複数の画質モードで画像データを取得し、それら複数の画質モードで取得した画像データを各ページに関連付けてファイルを作成するようにした技術が知られている(例えば特許文献1)。この従来技術では、1ページの原稿が読み取られる度に、予め指定された複数の画質モードのそれぞれに対応する画像処理が行われ、それら複数の画質モードのそれぞれに対応する画像データが生成される。そして最終的に作成されるファイルには、ページごとに、複数の画質モードのそれぞれに対応する画像データが含まれる。
【0004】
この従来技術を利用すれば、原稿をスキャンすることによって得られたスキャン画像を複数のユーザに対して送信する際、予め複数の画質モードを指定しておくことにより、各ユーザにはそれら複数の画質モードの画像データを全て含むファイルを送信することができる。そのため、ファイルを受信したユーザが自身で所望する画像を選択して使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−94036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の場合、複数のユーザに対して送信されるファイルには、予め指定された複数の画質モードのそれぞれに対応する画像データが全て含まれる。そのため、複数のユーザのそれぞれに対して送信されるファイルのデータ量が膨大なものとなってしまうという問題がある。そのため、ファイルの送信を効率的に行うことができない。また、ファイルを受信したユーザが自身でコンピュータを操作しながら所望する画像を選択しようとする際、コンピュータにかかる負荷が大きくなるため、複数の画像の中からユーザが所望する画像を効率的に探し出すことができず、ユーザにとっては却って使いづらいものとなってしまう。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、複数のユーザに対して用途の異なる画像を送信する際、送信対象となる画像の容量を過度に増やすことなく、各種の用途に応じた出力画像を生成して出力する画像処理装置、画像処理方法およびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、画像処理装置であって、画像を入力する画像入力手段と、画像の用途を設定する用途設定手段と、前記画像入力手段に入力される入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する第1レイヤ画像生成手段と、前記画像入力手段に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する第2レイヤ画像生成手段と、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するレイヤ設定手段と、前記レイヤ設定手段により設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する出力画像生成手段と、を備えることを特徴とする構成である。
【0009】
また請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記画像入力手段に入力される画像を解析することにより、当該画像を構成するオブジェクトごとに画像領域を判別する領域判別手段を更に備え、前記第1レイヤ画像生成手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像を生成し、前記第2レイヤ画像生成手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成し、前記レイヤ設定手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定し、前記出力画像生成手段は、前記レイヤ設定手段により設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とのそれぞれに含まれる画像領域を組み合わせることにより、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力することを特徴とする構成である。
【0010】
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の画像処理装置において、前記領域判別手段は、前記画像入力手段に入力される画像に基づいて、文字領域、図領域および写真領域を判別することを特徴とする構成である。
【0011】
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置において、前記第2レイヤ画像生成手段は、前記画像入力手段に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行うことにより、前記入力画像を鮮明にした鮮明画像、前記入力画像の色を反転させた反転画像、および、前記入力画像の色相を変化させた色相変化画像の少なくとも1つを生成して特殊用途向けの前記第2レイヤ画像を生成することを特徴とする構成である。
【0012】
請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置において、前記出力画像生成手段により前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とが組み合わされて生成される出力画像は、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を変更することにより別の用途の画像に変更可能であることを特徴とする構成である。
【0013】
請求項6にかかる発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の画像処理装置において、前記レイヤ設定手段は、ユーザからの指示操作に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定することを特徴とする構成である。
【0014】
請求項7にかかる発明は、画像処理方法であって、画像を入力するステップと、画像の用途を設定するステップと、入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成するステップと、入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成するステップと、設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するステップと、設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、設定された画像の用途ごとに出力画像を生成して出力するステップと、を有することを特徴とする構成である。
【0015】
請求項8にかかる発明は、プログラムであって、コンピュータに、画像を入力するステップと、画像の用途を設定するステップと、入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成するステップと、入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成するステップと、設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するステップと、設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、設定された画像の用途ごとに出力画像を生成して出力するステップと、を実行させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、画像の用途ごとの出力画像が、通常用途向けの第1レイヤ画像と、特殊用途向けの第2レイヤ画像との組み合わせによって生成されるため、複数の送信先に対して用途の異なる画像を送信する際、送信対象となる出力画像の容量を過度に増やすことなく、各送信先での用途に応じた出力画像を生成して出力することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】画像処理システムの概略構成の一例を示す図である。
【図2】画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】用途別画像対応情報の概念を示す図である。
【図4】用途別画像対応情報の具体的な一例を示す図である。
【図5】画像処理装置の制御部における機能構成の一例を示すブロック図である。
【図6】画像入力部がスキャナ部から入力する入力画像の一例を示す図である。
【図7】図6の入力画像に対して領域判別を行った結果、文字領域、図領域および写真領域が判別された状態を示す図である。
【図8】文字領域、図領域および写真領域のそれぞれについて生成される第1レイヤ画像の一例を示す図である。
【図9】文字領域、図領域および写真領域のそれぞれについて生成される第2レイヤ画像の一例を示す図である。
【図10】通常用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。
【図11】視覚障害者用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。
【図12】視覚障害者用途のための出力画像の一例を示す図である。
【図13】セキュリティ用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。
【図14】セキュリティ用途のための出力画像の一例を示す図である。
【図15】画像処理装置から複数のコンピュータに対して画像データが送信される概念を示す図である。
【図16】画像処理装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本実施形態における画像処理システムの概略構成の一例を示す図である。この画像処理システムは、デジタル複合機やMFPなどと呼ばれる画像処理装置1を備え、この画像処理装置1が、LANなどのネットワーク3を介して複数のコンピュータ2と接続された構成である。
【0020】
画像処理装置1は、装置本体の上部にスキャナ部4を備えると共に、その装置本体の正面側に操作パネル5を備えている。スキャナ部4は、原稿を読み取って画像データを生成するものである。また、操作パネル5は、ユーザが画像処理装置1を使用する際のユーザインタフェースとなるものである。このような画像処理装置1は、スキャナ機能を備えており、スキャナ部4にセットされた原稿を読み取って画像データを生成し、その画像データをネットワーク3に接続された複数のコンピュータ2のうち、操作パネル5を介してユーザにより指定された送信先に送信することができるようになっている。特に本実施形態では、複数の送信先に画像データを送信する際、ユーザが操作パネル5を介して送信先ごとに画像データの用途を指定することができるようになっている。そして画像処理装置1は、複数の送信先のそれぞれにおける用途に応じた出力画像を生成し、その出力画像を各送信先に送信するように構成される。
【0021】
また、本実施形態の画像処理装置1は、上記のようなスキャナ機能の他にも、プリンタ機能、コピー機能、FAX機能などの複数の機能を備えている。
【0022】
図2は、画像処理装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、画像処理装置1は、そのハードウェア構成として、制御部10、ネットワークインタフェース13、FAX部14、操作パネル5、スキャナ部4、プリンタ部17、および、記憶装置18を備えており、これら各部がデータバス19を介して相互にデータの入出力を行うことができるように接続されている。
【0023】
制御部10は、CPU11とメモリ12とを備えており、CPU11が記憶装置18に予め記憶されているプログラム21を読み出して実行することにより、後述する各種処理部としての機能を実現するものである。メモリ12は、CPU11がプログラム21を実行する際に一時的なデータなどを記憶するためのものである。
【0024】
ネットワークインタフェース13は、画像処理装置1をネットワーク3に接続するためのものである。制御部10は、このネットワークインタフェース13を介して複数のコンピュータ2のそれぞれとデータ通信を行う。FAX部14は、FAXデータの送受信を行うためのものである。
【0025】
操作パネル5は、ユーザに対して各種情報を表示する表示部5aと、ユーザが各種操作入力を行うための操作部5bとを備えている。表示部5aは、例えばカラー液晶ディスプレイなどで構成される。操作部5bは、表示部5aの画面上に配置されたタッチパネルキーや表示部5aの画面周囲に配置された押しボタンキーなどによって構成される。ユーザは、このような操作パネル5を操作することにより、スキャン機能を選択したり、スキャン機能によって得られる画像データの送信先を指定したりすることができる。また、画像データの送信先ごとに、その画像データの用途を指定することもできる。
【0026】
スキャナ部4は、原稿の画像を読み取って画像データを生成するものである。このスキャナ部4は、例えば自動原稿搬送装置(ADF)を備えている。そのため、スキャナ部4は、その自動原稿搬送装置にセットされる複数枚の原稿を1枚ずつ連続的に自動読み取りすることが可能である。このようなスキャナ部4における画像の読み取り動作は、制御部10によって制御される。そしてスキャナ部4は、原稿を読み取って生成した画像データを制御部10へ出力するように構成される。
【0027】
プリンタ部17は、制御部10から入力する画像データに基づいて印刷用紙などのシート部材に対してトナー像を転写することによって画像形成を行い、印刷出力を行うものである。このようなプリンタ部17の動作もまた、制御部10によって制御される。ただし、このプリンタ部17は、上述したスキャン機能が利用される場合には、動作しないようになっている。
【0028】
記憶装置18は、ハードディスク装置などで構成される不揮発性の記憶手段である。この記憶装置18には、制御部10のCPU11によって実行されるプログラム21が記憶されると共に、用途別画像対応情報22が予め記憶されている。
【0029】
用途別画像対応情報22は、スキャン機能によって原稿を読み取って得られる画像データを複数のコンピュータ2のそれぞれに送信する際、ユーザによって指定される送信先ごとの用途に応じた画像を特定するための情報である。図3は、この用途別画像対応情報22の概念を示す図である。図3に示すように、用途別画像対応情報22は、画像データを送信する際に指定可能な用途と、その用途に対応した出力画像を生成するために必要となる画像とが対応付けられたテーブル情報である。第1レイヤ画像は通常用途向けの画像であり、第2レイヤ画像は特殊用途向けの画像である。そして、図3に示す用途別画像対応情報22では、「用途1」、「用途2」および「用途3」の3つの用途のそれぞれに適した出力画像がそれら第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせによって生成されることが規定されている。すなわち、「用途1」に対応する出力画像が第1レイヤ画像のみによって生成され、「用途2」に対応する出力画像が第2レイヤ画像のみによって生成され、「用途3」に対応する出力画像が第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との2つの画像の組み合わせによって生成されることが規定されている。
【0030】
そして本実施形態の画像処理装置1は、ユーザがスキャン機能を利用して複数のコンピュータ2に対して画像データを送信する指示を行ったとき、各送信先に対して画像の用途が指定されていると、用途別画像対応情報22を参照する。そしてスキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データに基づいて、第1レイヤ画像と、第2レイヤ画像とを生成し、それらを必要に応じて組み合わせることにより、各用途に応じた出力画像を生成する。例えば、図3の例では、3つの用途に対応する出力画像が、第1レイヤ画像と、第2レイヤ画像との2つの画像の組み合わせで生成されることになる。言い換えると、本実施形態では、通常用途向けの第1レイヤ画像および特殊用途向けの第2レイヤ画像の2種類の画像を用いて3種類の用途に対応した出力画像を生成することができるようになっている。
【0031】
ただし、スキャナ部4が原稿を読み取って得られる画像データには、文字領域や図領域、写真領域などの様々な画像構成要素が含まれる場合がある。そのため、本実施形態では、画像データに含まれるそれらの文字領域、図領域および写真領域ごとに、第1レイヤ画像および第2レイヤ画像のうちの必要な画像を組み合わせるように構成されている。
【0032】
図4は、本実施形態における用途別画像対応情報22の具体的な一例を示す図である。図4に示すように、本実施形態の用途別画像対応情報22には、ユーザが選択可能な画像の用途として、「通常」、「視覚障害者」、「広告」、「プロジェクタ」および「セキュリティ」の5つの用途が設定されている。また、これら各用途に対応する画像としては、入力する画像データを構成する各構成要素、すなわち、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域ごとに規定されている。また、本実施形態では、図4に示すように、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像と、特殊用途向けの第2レイヤ画像とが規定される。
【0033】
第1レイヤ画像は、上述したように通常用途向けの画像であり、各領域についてノーマル画像が定められている。このノーマル画像は、例えば、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データに対して標準的な画像処理を施すことによって生成される。
【0034】
また第2レイヤ画像は、上述したように特殊用途向けの画像である。この第2レイヤ画像には、複数種類の画像が規定されている。図4に示す例では、用途に応じた第2レイヤ画像として、鮮明画像と、反転画像と、色相変化画像との3種類の画像が規定されている。これら3種類の画像は、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データに対し、ノーマル画像とは異なる加工処理が施されることにより生成される。例えば、鮮明画像は、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データに対し、画像のコントラストをアップさせる画像処理や、画像の先鋭化処理などが行われ、ノーマル画像よりも鮮明な画像として生成される。反転画像は、文字や図などの画像構成要素の色と、背景色とを反転させた画像であり、例えば、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データの背景色を画像構成要素の色と入れ替えることにより生成される。色相変化画像は、例えばスキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データの色相を変化させることによって生成される画像であり、ノーマル画像とは異なった色調の画像として生成される。
【0035】
そして本実施形態では、図4に示すように、用途が「通常」である場合、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域においてノーマル画像が採用され、これらが組み合わせられて出力画像が生成されるようになっている。
【0036】
また、用途が「視覚障害者」である場合、「文字領域」と「図領域」の2つの領域において反転画像が採用されると共に、「写真領域」においては鮮明画像が採用され、これらが組み合わせられて出力画像が生成されるようになっている。視覚障害者の場合、例えば白地にカラーで文字などが描画されるよりも、カラー地に白文字などで描画される方が読みやすいことが多い。そのため、本実施形態では、「文字領域」と「図領域」の2つの領域において反転画像が採用される。ただし、「写真領域」については、色を反転させてしまうと、却って写真の内容が把握しづらくなってしまうため、そのような反転画像は採用せず、写真を鮮明にした画像が採用される。
【0037】
また、用途が「広告」である場合、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域において鮮明画像が採用され、これらが組み合わせられて出力画像が生成されるようになっている。また、用途が「プロジェクタ」である場合、「文字領域」と「図領域」の2つの領域において鮮明画像が採用されると共に、「写真領域」においてはノーマル画像が採用され、これらが組み合わせられて出力画像が生成されるようになっている。
【0038】
さらに用途が「セキュリティ」である場合、「文字領域」および「図領域」に含まれる画像構成要素を隠蔽する画像が生成される。つまり、「文字領域」と「図領域」の2つの領域において、ノーマル画像と反転画像の2つの画像が採用される。また「写真領域」については、ノーマル画像が採用されるようになっている。そしてこれらの画像が重ね合わせられて出力画像が生成される。
【0039】
したがって、例えば、ユーザが各送信先に送信する画像の用途として、「通常」、「視覚障害者」および「セキュリティ」の3つの用途を選択した場合、図4に示す用途別画像対応情報22を参照すると、「文字領域」についてはノーマル画像と反転画像との2つの画像が生成され、「図領域」についてもノーマル画像と反転画像との2つの画像が生成され、「写真領域」についてはノーマル画像と鮮明画像との2つの画像が生成される。そしてそれらの画像が組み合わせられて各用途に対応した出力画像が生成されるようになっている。以下、このような例に基づき、画像処理装置1の構成および動作について更に詳しく説明する。
【0040】
図5は、画像処理装置1の制御部10における機能構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、画像処理装置1の制御部10は、CPU11が上述したプログラム21を読み出して実行することにより、画像入力部31、領域判別部32、第1レイヤ画像生成部33、第2レイヤ画像生成部34、出力画像生成部36、用途設定部37およびレイヤ設定部38として機能する。そして、このような制御部10は、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像データを入力して出力画像を生成し、ネットワークインタフェース13を介してユーザにより指定された送信先にその出力画像を送信するように構成されている。尚、図5において、斜線を施した矢印は画像データの流れを示しており、実線矢印は制御信号の流れを示している。
【0041】
まず、用途設定部37は、操作パネル5を介してユーザにより指定される送信先ごとの用途を設定する処理部である。つまり、ユーザがスキャン機能を選択し、そのスキャン機能によって得られる画像データの送信先を指定すると共に、更に画像データの用途を送信先ごとに指定した場合、用途設定部37は、図4に示した用途別画像対応情報22の中からユーザによって指定された用途を特定し、送信先ごとに、その特定した用途を設定する。そして、用途設定部37は、レイヤ設定部38を機能させる。
【0042】
レイヤ設定部38は、記憶装置18に予め記憶されている用途別画像対応情報22を読み出し、用途設定部37によって設定された用途に対応する画像を特定する。例えば、上述したように、ユーザが「通常」、「視覚障害者」および「セキュリティ」の3つの用途を選択した場合、レイヤ設定部38は、「文字領域」についてノーマル画像と反転画像との2つの画像を特定し、「図領域」についてノーマル画像と反転画像との2つの画像を特定し、さらに「写真領域」についてノーマル画像と鮮明画像との2つの画像を特定する。そしてレイヤ設定部38は、第2レイヤ画像生成部34に対してそれらの特定した画像を指示すると共に、出力画像生成部36に対して出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序と透過率とを指示するように構成される。
【0043】
尚、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせて出力画像を生成する際の配置順序と透過率は、予め用途ごとに設定されている。ただし、このような配置順序と透過率は、ユーザが操作パネル5を操作することによって変更することも可能である。
【0044】
画像入力部31は、スキャナ部4から画像データを入力する処理部である。図6は、画像入力部31がスキャナ部4から入力する入力画像G1の一例を示す図である。この入力画像G1には、画像上部に文字列によって構成される文字領域が含まれ、画像中央にグラフなどの図領域が含まれる。そして画像下部に写真やグラフィックなどの写真領域が含まれる。画像入力部31は、このような画像データを入力すると、その画像データを領域判別部32に出力する。
【0045】
領域判別部32は、画像入力部31から入力する画像データを解析することにより、当該画像に含まれる文字、図、写真などのオブジェクトを抽出し、それら抽出したオブジェクトが含まれる矩形状の外枠をオブジェクトごとの画像領域として判別する処理部である。例えば、図6に示す入力画像G1に基づいて領域判別部32が領域判別を行うと、図7に示すように入力画像G1における文字領域R1、図領域R2および写真領域R3が判別される。そして領域判別部32は、このようにして領域判別を行うと、その判別結果を第1レイヤ画像生成部33および第2レイヤ画像生成部34のそれぞれに出力する。
【0046】
第1レイヤ画像生成部33は、入力画像G1に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する処理部である。この第1レイヤ画像生成部33は、領域判別部32で判別された文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれについてノーマル画像を生成する。図8は、文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれについて生成されるノーマル画像GA1,GA2,GA3の一例を示す図である。図8(a)に示すように、第1レイヤ画像生成部33は、入力画像G1の文字領域R1だけを抽出し、その抽出した文字領域R1だけを含むノーマル画像GA1を生成する。また図8(b)に示すように、第1レイヤ画像生成部33は、入力画像G1の図領域R2だけを抽出し、その抽出した図領域R2だけを含むノーマル画像GA2を生成する。さらに図8(c)に示すように、第1レイヤ画像生成部33は、入力画像G1の写真領域R3だけを抽出し、その抽出した写真領域R3だけを含むノーマル画像GA3を生成する。
【0047】
第2レイヤ画像生成部34は、加工処理部35を備えている。この加工処理部35は、レイヤ設定部38から指示される領域ごとの画像に基づいて、入力画像G1に含まれる文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれに対して施す加工処理を特定する。そして、その特定した加工処理を実行することにより、文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれを加工した第2レイヤ画像を生成する。図9は、文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれについて生成される第2レイヤ画像GB1,GB2,GB3の一例を示す図である。例えば、上述したように、「文字領域」に対する第2レイヤ画像として反転画像が特定されている場合、第2レイヤ画像生成部34は、図9(a)に示すように、入力画像G1に含まれる文字領域R1を抽出し、その文字領域R1に対して文字部分の色と背景色とを反転させた反転画像GB1を生成する。また、上述したように「図領域」に対する第2レイヤ画像としても反転画像が特定されている場合、第2レイヤ画像生成部34は、図9(b)に示すように、入力画像G1に含まれる図領域R2を抽出し、その図領域R2に対して図の部分の色と背景色とを反転させた反転画像GB2を生成する。さらに上述したように「写真領域」についての第2レイヤ画像として鮮明画像が特定されている場合、第2レイヤ画像生成部34は、図9(c)に示すように、入力画像G1に含まれる写真領域R3を抽出し、その写真領域R3に対してノーマル画像GA3よりもより一層写真を鮮明にした鮮明画像GB3を生成する。
【0048】
上記のように第1レイヤ画像生成部33において第1レイヤ画像が生成され、第2レイヤ画像生成部34において第2レイヤ画像が生成されると、次に出力画像生成部36が機能する。出力画像生成部36は、第1レイヤ画像生成部33で生成される第1レイヤ画像と、第2レイヤ画像生成部34で生成される第2レイヤ画像とを、レイヤ設定部38から指示される配置順序に従って重ね合わせることにより、用途設定部37において設定された用途ごとの出力画像を生成する。そして出力画像生成部36は、ネットワークインタフェース13を介して、ユーザにより指定された送信先に出力画像を送信する。
【0049】
この出力画像生成部36は、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを重ね合わせる際、各画像の透過率をレイヤ設定部38から指示される透過率に基づいて設定する。例えば、ある画像の透過率が100%に設定される場合、その画像の濃度値は0%に抑えられ、完全に透明な画像となり、その背面側に配置される画像を100%透過させる画像となる。また、透過率が50%に設定される場合、その画像の濃度値は50%に抑えられ、その背面側に配置される画像を50%透過させる画像となる。さらに透過率が0%に設定される場合、その画像の濃度は100%のまま保持され、その背面側に配置される画像は全く透過させない状態となる。尚、このような透過率は、「文字領域」、「図領域」および「写真領域」のそれぞれの領域に対して個別に設定されるようになっている。
【0050】
図10は、通常用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。通常用途の場合、レイヤ設定部38は、図10に示すように、ノーマル画像GA1、反転画像B1、ノーマル画像GA2、反転画像GB2、ノーマル画像GA3および鮮明画像GB3をこの順序で配置することを指示し、ノーマル画像GA1に含まれる文字領域R1、ノーマル画像GA2に含まれる図領域R2およびノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3のそれぞれの透過率を0%に設定することを指示する。尚、ノーマル画像GA1に含まれる文字領域R1以外の領域、ノーマル画像GA2に含まれる図領域R2以外の領域、および、ノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3以外の領域については、それぞれ透過率が100%に設定される。
【0051】
出力画像生成部36は、上記のようなレイヤ設定部38からの指示に基づき、図10に示すように、ノーマル画像GA1、反転画像GB1、ノーマル画像GA2、反転画像GB2、ノーマル画像GA3および鮮明画像GB3を重ね合わせて通常用途に使用するための出力画像を生成する。このとき、最前面の1枚目に配置されるノーマル画像GA1は文字領域R1の透過率が0%に設定されるため、2枚目に配置される反転画像GB1の文字領域R1に含まれる画像は最前面には透過しないようになっている。また、1枚目のノーマル画像GA1において文字領域R1以外の領域は透過率が100%に設定されるため、3枚目のノーマル画像GA2に含まれる図領域R2と、5枚目のノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3とが最前面まで透過する。一方、3枚目に配置されるノーマル画像GA2は図領域R2の透過率が0%に設定されるため、4枚目に配置される反転画像GB2の図領域R2に含まれる画像は最前面には透過しない。同様に、5枚目に配置されるノーマル画像GA3は写真領域R3の透過率が0%に設定されるため、6枚目に配置される鮮明画像GB3の写真領域R3に含まれる画像も最前面には透過しない。
【0052】
その結果、図10に示すように各画像が重ね合わせられて生成される出力画像は、図6に示す入力画像G1とほぼ同様の画像となる。このようにして、出力画像生成部36は、通常用途に使用するための出力画像G1を生成する。
【0053】
次に、図11は、視覚障害者用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。視覚障害者用途の場合、レイヤ設定部38は、図11に示すように、反転画像GB1、ノーマル画像GA1、反転画像GB2、ノーマル画像GA2、鮮明画像GB3およびノーマル画像GA3をこの順序で配置することを指示し、反転画像GB1に含まれる文字領域R1、反転画像GB2に含まれる図領域R2および鮮明画像GB3に含まれる写真領域R3のそれぞれの透過率を0%に設定することを指示する。尚、反転画像GB1に含まれる文字領域R1以外の領域、反転画像GB2に含まれる図領域R2以外の領域、および、鮮明画像GB3に含まれる写真領域R3以外の領域については、それぞれ透過率が100%に設定される。
【0054】
出力画像生成部36は、上記のようなレイヤ設定部38からの指示に基づき、図11に示すように、反転画像GB1、ノーマル画像GA1、反転画像GB2、ノーマル画像GA2、鮮明画像GB3およびノーマル画像GA3を重ね合わせて視覚障害者用途に使用するための出力画像を生成する。このとき、最前面の1枚目に配置される反転画像GB1は文字領域R1の透過率が0%に設定されるため、2枚目に配置されるノーマル画像GA1の文字領域R1に含まれる画像は最前面には透過しない。また、1枚目の反転画像GB1において文字領域R1以外の領域は透過率が100%に設定されるため、3枚目の反転画像GB2に含まれる図領域R2と、5枚目の鮮明画像GB3に含まれる写真領域R3とが最前面まで透過する。一方、3枚目に配置される反転画像GB2は図領域R2の透過率が0%に設定されるため、4枚目に配置されるノーマル画像GA2の図領域R2に含まれる画像は最前面には透過しない。同様に、5枚目に配置される鮮明画像GB3は写真領域R3の透過率が0%に設定されるため、6枚目に配置されるノーマル画像GA3の写真領域R3に含まれる画像も最前面には透過しない。
【0055】
その結果、図11に示すように各画像が重ね合わせられて生成される出力画像は、図12に示すような出力画像G2となる。図12は、視覚障害者用途のための出力画像G2の一例を示す図である。図12に示すように、視覚障害者用途の場合には、文字領域R1と図領域R2において色が反転し、さらに写真領域R3においては通常よりも鮮明な状態に加工された写真が含まれる出力画像G2が生成される。したがって、視覚障害者にとっては、より見やすい出力画像G2が生成される。このようにして、出力画像生成部36は、視覚障害者用途のための出力画像G2を生成する。
【0056】
次に、図13は、セキュリティ用途に使用される出力画像を生成するための第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との組み合わせ例を示す図である。セキュリティ用途の場合、レイヤ設定部38は、図13に示すように、ノーマル画像GA1、反転画像GB1、ノーマル画像GA2、反転画像GB2、ノーマル画像GA3および鮮明画像GB3をこの順序で配置することを指示し、ノーマル画像GA1に含まれる文字領域R1およびノーマル画像GA2に含まれる図領域R2の透過率を50%に設定し、さらにノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3の透過率を0%に設定することを指示する。尚、ノーマル画像GA1に含まれる文字領域R1以外の領域、ノーマル画像GA2に含まれる図領域R2以外の領域、および、ノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3以外の領域については、それぞれ透過率が100%に設定される。
【0057】
出力画像生成部36は、上記のようなレイヤ設定部38からの指示に基づき、図13に示すように、ノーマル画像GA1、反転画像GB1、ノーマル画像GA2、反転画像GB2、ノーマル画像GA3および鮮明画像GB3を重ね合わせてセキュリティ用途に使用するための出力画像を生成する。このとき、最前面の1枚目に配置されるノーマル画像GA1は文字領域R1の透過率が50%に設定されるため、2枚目に配置される反転画像GB1の文字領域R1に含まれる画像が50%透過する。また、1枚目のノーマル画像GA1において文字領域R1以外の領域は透過率が100%に設定されるため、3枚目のノーマル画像GA2に含まれる図領域R2と、5枚目のノーマル画像GA3に含まれる写真領域R3とが最前面まで透過する。一方、3枚目に配置されるノーマル画像GA2は図領域R2の透過率が50%に設定されるため、4枚目に配置される反転画像GB2の図領域R2に含まれる画像が50%透過し、その状態で最前面まで透過する。また、5枚目に配置されるノーマル画像GA3は写真領域R3の透過率が0%に設定されるため、6枚目に配置される鮮明画像GB3の写真領域R3に含まれる画像は最前面には透過しない。
【0058】
その結果、図13に示すように各画像が重ね合わせられて生成される出力画像は、図14に示すような出力画像G3となる。図14は、セキュリティ用途のための出力画像G3の一例を示す図である。図14に示すように、セキュリティ用途の場合には、文字領域R1と図領域R2においてノーマル画像と反転画像とが50%ずつで重ね合わせられた状態となり、それぞれの領域が塗りつぶされた状態となるので、文字や図が隠蔽された出力画像G3が生成される。そのため、文字領域R1に含まれる文字や、図領域R2に含まれる図が秘密情報を含むような場合には、このようなセキュリティ用途を選択して出力画像G3を生成することにより、そのような秘密情報が漏洩してしまうことを防止することができるようになる。このようにして、出力画像生成部36は、セキュリティ用途のための出力画像G3を生成する。
【0059】
出力画像生成部36は、上記のようにして用途設定部37により設定された用途ごとに出力画像G1,G2,G3を生成すると、ユーザによって指定された送信先に対し、それぞれの出力画像G1,G2,G3を出力する。このとき、出力画像生成部36は、用途に応じて生成した複数の出力画像G1,G2,G3の中から、ユーザによって指定された送信先の用途に対応する出力画像を選択し、各送信先に対して個別に出力画像を出力する。
【0060】
図15は、画像処理装置1から複数のコンピュータ2に対して画像データD1,D2,D3が送信される概念を示す図である。この図15では、ユーザA,B,Cのそれぞれが使用する複数のコンピュータ2が送信先として指定されると共に、ユーザAのコンピュータ2に対しては「通常」の用途が指定され、ユーザBのコンピュータ2に対しては「視覚障害者」の用途が指定され、ユーザCのコンピュータ2に対しては「セキュリティ」の用途が指定された場合を例示している。この場合、画像処理装置1は、原稿を読み取ることに伴い、上述したように、通常用途の出力画像G1と、視覚障害者用途の出力画像G2と、セキュリティ用途の出力画像G3とを生成する。そして画像処理装置1は、通常用途の出力画像G1に対応する画像データD1をユーザAのコンピュータ2に送信し、視覚障害者用途の出力画像G2に対応する画像データD2をユーザBのコンピュータ2に送信し、セキュリティ用途の出力画像G3をユーザCのコンピュータ2に送信する。そしてユーザAは、画像処理装置1から送信される画像データD1を受信すると、その画像データD1を通常の用途に使用することができる。またユーザBが視覚障害者である場合、上記のように画像処理装置1から送信される画像データD2を受信すると、その画像データD2はユーザBにとって見やすい画像となっている。さらにユーザCが秘密情報にアクセスする権限のない部外者などである場合、ユーザCが上記のように画像処理装置1から送信される画像データD3を受信すると、その画像データD3は文字や図の隠蔽されたものとなっており、秘密情報の漏洩を防止することができる。
【0061】
画像処理装置1は、図15に示すように画像データD1,D2,D3を複数のコンピュータ2のそれぞれに出力する際、図10、図11および図13に示したようなレイヤ構造を解除して1枚の画像データとして送信するようにしても良い。この場合、各コンピュータ2に送信される画像データは1レイヤ分のデータ構造となるので、データ量が少なくなる。そのため、画像データD1,D2,D3の送信を効率良く行うことができるようになる。
【0062】
また画像処理装置1は、図15に示すように画像データD1,D2,D3を複数のコンピュータ2のそれぞれに出力する際、図10、図11および図13に示したようなレイヤ構造をそのまま保持した状態で複数のレイヤ構造を有する画像データとして送信するようにしても良い。この場合、画像データD1,D2,D3を受信したユーザがコンピュータ2を操作することにより、各レイヤの配置順序と透過率の設定を変更して別の画像を得ることが可能になる。例えば、通常用途の画像データD1を受信したユーザAは、図10に示した配置順序および透過率を、図13に示す配置順序および透過率に変更することにより、通常用途の画像データD1を視覚障害者用途の画像データD2に変換することが可能である。したがって、各ユーザは、自身に送信された画像データから他のユーザに送信された画像データを確認することも可能になる。
【0063】
また上記のように、図10、図11および図13に示したようなレイヤ構造をそのまま保持した状態の複数のレイヤ構造を有する画像データとして送信する場合には、用途設定部37によって設定された各用途に対応する1枚ずつの画像データD1,D2,D3を揃えて各ユーザに送信する場合よりも、データ量を低減することができるという利点がある。すなわち、用途設定部37によって設定された各用途に対応する1枚ずつの画像データD1,D2,D3には、それぞれ文字領域R1と図領域R2と写真領域R3とが含まれる。そのため、例えば上記のように3つの用途が指定され、各用途に対応する3枚分の画像データD1,D2,D3が送信されると仮定すると、送信されるデータには、文字領域R1と図領域R2と写真領域R3とがそれぞれ3つずつ含まれることになる。これに対し、本実施形態のように、図10、図11および図13に示したようなレイヤ構造をそのまま保持した状態の複数のレイヤ構造を有する画像データとして送信する場合には、3つの用途に対応するデータを送信する際、文字領域R1と図領域R2と写真領域R3とがそれぞれ2つずつ含まれるだけであるので、データ量が少なくなる。
【0064】
このように本実施形態の画像処理装置1は、レイヤ設定部38により設定される配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とをレイヤ構造にして組み合わせることにより、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する構成であるため、出力画像のデータ量を低減することができるという利点がある。
【0065】
次に図16は、画像処理装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、制御部10においてCPU11がプログラム21を実行することによって行われる処理である。また、この処理は、ユーザによってスキャン機能が選択され、原稿の読み取り動作開始が指示されることにより、開始される。制御部10は、この処理を開始すると、まずスキャナ部4を駆動制御することにより、原稿の読み取り動作を行う(ステップS1)。そして制御部10は、スキャナ部4が原稿を読み取って生成した画像を入力する(ステップS2)。
【0066】
次に制御部10は、原稿の読み取りに伴って画像の用途設定が行われているか否かを判断する(ステップS3)。すなわち、ユーザが操作パネル5を操作することにより送信先ごとに画像の用途を指定しているか否かを判断する。そして用途の設定が行われている場合(ステップS3でYES)、制御部10は、スキャナ部4から入力した画像に基づいて領域判別を行う(ステップS4)。ここでは、上述したように文字領域R1と図領域R2と写真領域R3とが判別される。そして制御部10は、領域判別によって抽出された文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれの領域ごとに、第1レイヤ画像となるノーマル画像GA1,GA2,GA3を生成する(ステップS5)。
【0067】
次に制御部10は、用途設定部37によって設定されている特殊用途を特定する(ステップS6)。例えば、上述したように、ユーザが「通常」、「視覚障害者」および「セキュリティ」の3つの用途を指定している場合は、特殊用途として、「視覚障害者」と「セキュリティ」と2つの用途から1つの用途を特定する。そして制御部10は、その特定した特殊用途に対応する加工処理を特定する(ステップS7)。このとき、制御部10は、用途別画像対応情報22を参照して加工処理を特定する。例えば、特殊用途として「視覚障害者」が特定されている場合、制御部10は、図4に示した用途別画像対応情報22を参照し、文字領域R1と図領域R2の2つの領域については反転画像GB1,GB2を生成するための加工処理を特定する。また写真領域R3については、鮮明画像GB3を生成するための加工処理を特定する。そして制御部10は、域判別によって抽出された文字領域R1、図領域R2および写真領域R3のそれぞれの領域ごとに、特定された加工処理を実行し、第2レイヤ画像となる反転画像GB1,GB2および鮮明画像GA3を生成する(ステップS8)。
【0068】
次に制御部10は、他の特殊用途があるか否かを判断する(ステップS9)。例えば、上述した例の場合には、特殊用途としてさらに「セキュリティ」が指定されているため、ここではYESと判断される。そして他の特殊用途がある場合(ステップS9でYES)、これまでの処理で既に生成された画像の組み合わせで、その特殊用途に対応する画像を生成することが可能であるか否かを判断する(ステップS10)。例えば、他の特殊用途が「セキュリティ」である場合、用途別画像対応情報22を参照すると、セキュリティ用途の画像を生成するためには、文字領域R1としてノーマル画像GA1と反転画像GB1とが必要であり、図領域R2としてノーマル画像GA2と反転画像GB2とが必要であり、写真領域R3としてノーマル画像GA3とが必要である。これらの画像は、既に上述した処理で全て生成されており、「セキュリティ」の用途に対応する画像はそれらの組み合わせで生成することが可能である。したがって、このような場合はステップS10においてYESと判断され、ステップS11の処理へと進む。
【0069】
一方、ステップS9において他の特殊用途が設定されていない場合も(ステップS9でNO)、処理はステップS11へと進む。また、他の特殊用途が設定されており(ステップS9でYES)、しかもこれまでの処理で既に生成された画像の組み合わせでその特殊用途に対応する画像を生成することができない場合(ステップS10でNO)、ステップS6の処理へと進み、その特殊用途に対応する画像を生成するための加工処理を特定し、領域ごとの画像を生成するための処理を繰り返す。
【0070】
上記のようにして全ての用途に対応する画像を生成するために必要な画像が得られると、制御部10は、これまでの処理で生成された複数の画像の配置順序と透過率とを、用途ごとに設定する(ステップS11)。そしてステップS11で設定された配置順序と透過率とに基づいて複数の画像を組み合わせることにより、用途ごとの出力画像を生成する(ステップS12)。ここでは、ユーザが予め複数の用途を指定していた場合に、それら複数の用途のそれぞれに対応する出力画像が生成されることになる。そしてステップS14へと進む。
【0071】
一方、ステップS3において、画像の用途設定が行われていない場合(ステップS3でNO)、制御部10は、スキャナ部4から入力する入力画像に基づいて通常の出力画像を生成する(ステップS13)。そしてステップS14へと進む。
【0072】
そして制御部10は、ステップS12又はS13で生成された出力画像を、ユーザにより予め指定された送信先に対して出力する(ステップS14)。このとき、制御部10は、送信先ごとに予め設定されている用途に対応した出力画像を送信する。以上で、画像処理装置1における一連の処理が終了する。
【0073】
画像処理装置1において上記のような処理が行われることにより、画像の用途が設定されている場合には、通常用途向けの第1レイヤ画像と、特殊用途向けの第2レイヤ画像とが生成され、用途ごとにそれら第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率が設定される。そして用途ごとに設定される配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、予め設定された画像の用途ごとに出力画像が生成されると共に、そのような出力画像が出力されるようになる。
【0074】
以上のように本実施形態の画像処理装置1は、画像を入力する画像入力部31と、画像の用途を設定する用途設定部37と、画像入力部31に入力される入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する第1レイヤ画像生成部33と、画像入力部31に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する第2レイヤ画像生成部34と、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するレイヤ設定部38と、レイヤ設定部38により設定される配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、用途設定部37により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する出力画像生成部36と、を備える構成である。
【0075】
そのため、本実施形態の画像処理装置1は、複数の送信先に対して用途の異なる画像を送信する際、送信対象となる出力画像の容量を過度に増やすことなく、各送信先での用途に応じた出力画像を生成して出力することができるようになっている。それ故、複数の送信先のそれぞれに対して送信される画像データのデータ量が膨大なものとなってしまうことを抑制でき、画像データの送信処理を効率的に行うことが可能である。
【0076】
また本実施形態の画像処理装置1は、画像入力部31に入力される画像を解析することにより、当該画像を構成するオブジェクトごとに画像領域を判別する領域判別部32を更に備えている。そして第1レイヤ画像生成部33は、領域判別部32により判別される画像領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像を生成し、第2レイヤ画像生成部34は、領域判別部32により判別される画像領域ごとに、特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する。またレイヤ設定部38は、領域判別部32により判別される画像領域ごとに、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するようになっており、出力画像生成部36は、レイヤ設定部38により設定される配置順序および透過率に基づいて第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とのそれぞれに含まれる画像領域を組み合わせることにより、予め設定される画像の用途ごとに出力画像を生成する構成である。
【0077】
このような構成によれば、入力画像に含まれる画像領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像と、特殊用途向けの第2レイヤ画像とが生成され、それらが適切に組み合わせられて各用途の出力画像が生成されるようになる。そのため、各用途に対応して生成される出力画像は、画像領域ごとに各用途に適したものとして生成されるようになり、出力画像の利用価値が向上する。
【0078】
また本実施形態の画像処理装置1は、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像とを組み合わせた出力画像を生成する際、第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を変更することにより別の用途の画像に変更可能な出力画像を生成することも可能である。そのため、出力画像を受信したユーザが自身のコンピュータ2を操作することにより、出力画像を別の用途の画像に変更することができるようになる。また、この場合においても、全ての用途に対応した出力画像を揃えた状態で送信する場合と比較として、送信対象となる画像データのデータ量を低減することができるというメリットがある。
【0079】
(変形例)
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限られるものではなく、種々の変形例が適用可能であることは言うまでもない。
【0080】
例えば、上述した実施形態では、画像処理装置1がデジタル複合機やMFPなどと呼ばれる装置である場合を例示したが、画像処理装置1は必ずしもそのような装置に限られるものではない。すなわち、上述したような画像の用途に対応した出力画像を生成して出力する機能は、一般的なコンピュータによって実現することも可能である。この場合、上述したプログラム21は、一般的なコンピュータに予めインストールされ、そのコンピュータにおいて実行される。そして図5に示した制御部10の各処理部としての機能を、一般的なコンピュータにおいて実現することも可能である。
【0081】
また、上述した実施形態では、レイヤ設定部38が第1レイヤ画像と第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定する際、予め用途ごとに定められている配置順序および透過率を設定する場合を例示した。しかし、このような配置順序および透過率は、ユーザが操作パネル5に対する指示操作を行った場合にはその指示操作に基づいて設定するようにしても良い。この場合、各用途に対応する出力画像として、ユーザの嗜好に応じた出力画像を生成することができるようになる。
【符号の説明】
【0082】
1 画像処理装置
2 コンピュータ
4 スキャナ部
10 制御部
22 用途別画像対応情報
31 画像入力部
32 領域判別部
33 第1レイヤ画像生成部
34 第2レイヤ画像生成部
35 加工処理部
36 出力画像生成部
37 用途設定部
38 レイヤ設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を入力する画像入力手段と、
画像の用途を設定する用途設定手段と、
前記画像入力手段に入力される入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する第1レイヤ画像生成手段と、
前記画像入力手段に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する第2レイヤ画像生成手段と、
前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するレイヤ設定手段と、
前記レイヤ設定手段により設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する出力画像生成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像入力手段に入力される画像を解析することにより、当該画像を構成するオブジェクトごとに画像領域を判別する領域判別手段を更に備え、
前記第1レイヤ画像生成手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像を生成し、
前記第2レイヤ画像生成手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成し、
前記レイヤ設定手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定し、
前記出力画像生成手段は、前記レイヤ設定手段により設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とのそれぞれに含まれる画像領域を組み合わせることにより、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記領域判別手段は、前記画像入力手段に入力される画像に基づいて、文字領域、図領域および写真領域を判別することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2レイヤ画像生成手段は、前記画像入力手段に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行うことにより、前記入力画像を鮮明にした鮮明画像、前記入力画像の色を反転させた反転画像、および、前記入力画像の色相を変化させた色相変化画像の少なくとも1つを生成して特殊用途向けの前記第2レイヤ画像を生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記出力画像生成手段により前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とが組み合わされて生成される出力画像は、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を変更することにより別の用途の画像に変更可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記レイヤ設定手段は、ユーザからの指示操作に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像を入力するステップと、
画像の用途を設定するステップと、
入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成するステップと、
入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成するステップと、
設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するステップと、
設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、設定された画像の用途ごとに出力画像を生成して出力するステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
プログラムであって、コンピュータに、
画像を入力するステップと、
画像の用途を設定するステップと、
入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成するステップと、
入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成するステップと、
設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するステップと、
設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、設定された画像の用途ごとに出力画像を生成して出力するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
画像を入力する画像入力手段と、
画像の用途を設定する用途設定手段と、
前記画像入力手段に入力される入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成する第1レイヤ画像生成手段と、
前記画像入力手段に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成する第2レイヤ画像生成手段と、
前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するレイヤ設定手段と、
前記レイヤ設定手段により設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力する出力画像生成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像入力手段に入力される画像を解析することにより、当該画像を構成するオブジェクトごとに画像領域を判別する領域判別手段を更に備え、
前記第1レイヤ画像生成手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、通常用途向けの第1レイヤ画像を生成し、
前記第2レイヤ画像生成手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成し、
前記レイヤ設定手段は、前記領域判別手段により判別される画像領域ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定し、
前記出力画像生成手段は、前記レイヤ設定手段により設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とのそれぞれに含まれる画像領域を組み合わせることにより、前記用途設定手段により設定される画像の用途ごとに出力画像を生成して出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記領域判別手段は、前記画像入力手段に入力される画像に基づいて、文字領域、図領域および写真領域を判別することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2レイヤ画像生成手段は、前記画像入力手段に入力される入力画像に対して所定の画像処理を行うことにより、前記入力画像を鮮明にした鮮明画像、前記入力画像の色を反転させた反転画像、および、前記入力画像の色相を変化させた色相変化画像の少なくとも1つを生成して特殊用途向けの前記第2レイヤ画像を生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記出力画像生成手段により前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とが組み合わされて生成される出力画像は、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を変更することにより別の用途の画像に変更可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記レイヤ設定手段は、ユーザからの指示操作に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像を入力するステップと、
画像の用途を設定するステップと、
入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成するステップと、
入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成するステップと、
設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するステップと、
設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、設定された画像の用途ごとに出力画像を生成して出力するステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
プログラムであって、コンピュータに、
画像を入力するステップと、
画像の用途を設定するステップと、
入力画像に基づいて通常用途向けの第1レイヤ画像を生成するステップと、
入力画像に対して所定の画像処理を行って特殊用途向けの第2レイヤ画像を生成するステップと、
設定される画像の用途ごとに、前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像との配置順序および透過率を設定するステップと、
設定される配置順序および透過率に基づいて前記第1レイヤ画像と前記第2レイヤ画像とを組み合わせることにより、設定された画像の用途ごとに出力画像を生成して出力するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−178759(P2012−178759A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41143(P2011−41143)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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