説明

画像処理装置、画像処理方法およびプログラム

【課題】画像中の対象物体の境界領域に重ねられる記録材のパターンを適正化する。
【解決手段】原画像から抽出される対象領域の画像形成のために原画像に重ねられる記録材のパターンを生成する画像処理装置10であって、前記対象領域の境界領域に含まれる画像データの特徴量を算出する演算部15と、前記特徴量に基づき、前記境界領域中の色の変化の度合いを判定する判定部16と、前記境界領域中の色の変化の度合いに応じて、前記境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定するパターン生成部17と、を有することを特徴とする画像処理装置10が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成のための記録材のパターンを生成する画像処理装置、画像処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無色のトナーもしくはインクなどの記録材を利用して、電子写真記録方式やインクジェット記録方式等における画像形成を行う画像処理装置が開発されている。たとえば、特許文献1では、画像中のエッジ領域に対してクリアトナー量を減少させることにより紙面の凹凸を低減することが提案されている。特許文献2では、画像から特徴領域を抽出し、抽出された領域に選択的にクリアトナーを重ねることが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2では、写真中の対象物体に被写体ボケなどがあり対象物体の境界部分があいまいな場合に最終的な印刷物を自然に仕上げることは難しい。たとえば、特許文献1では、エッジなどの画像の特徴に従って、予め定められたクリアトナーのトナー量を変化させることは可能であるが、前記境界部分のあいまいさに応じてトナー量を簡易に変化させて調整することは難しい。また、特許文献2では、画像から抽出された特徴領域に対してクリアトナーの量を適宜調整することはできるが、特徴領域に対してグラデーションなどのパターンを形成することはできない。
【0004】
上記課題に鑑み、本発明の目的とするところは、画像形成のための記録材のパターンを生成する際、画像をより自然に仕上げるために画像中の対象物体の境界領域のパターンを適正化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一の態様によれば、原画像から抽出される対象領域の画像形成のために原画像に重ねられる記録材のパターンを生成する画像処理装置であって、前記対象領域の境界領域に含まれる画像データの特徴量を算出する演算部と、前記特徴量に基づき、前記境界領域中の色の変化の度合いを判定する判定部と、前記境界領域中の色の変化の度合いに応じて、前記境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定するパターン生成部と、を備えることを特徴とする画像処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像形成のための記録材のパターンを生成する際、画像をより自然に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】各実施形態に係る画像形成システムの全体構成図。
【図2】第1及び第2実施形態に係る画像処理装置の機能構成図。
【図3】原画像に対するトナーパターンを説明するための図。
【図4】原画像に対するトナーパターンのグラデーション処理を説明するための図。
【図5】各実施形態に係る画像処理装置にて画像処理する対象を説明する図。
【図6】各実施形態に係る画像処理装置にて画像処理する領域を説明する図。
【図7】グラデーションの方向の計算方法の一例を説明する図。
【図8】第1及び第2実施形態に係る画像処理装置の全体動作を示すフローチャート。
【図9】各実施形態に係る画像処理装置の境界抽出処理の概要を示すフローチャート。
【図10】第1実施形態に係る画像処理装置のグラディエント計算処理を示すフローチャート。
【図11】各実施形態に係る画像処理装置のグラディエント判定処理を示すフローチャート。
【図12】各実施形態に係る画像処理装置のクリアトナーパターン生成処理を示すフローチャート。
【図13】第2実施形態に係る画像処理装置の動作(グラディエント計算処理を含む)を示すフローチャート。
【図14】第3実施形態に係る画像処理装置の機能構成図。
【図15】ルックアップテーブルの一例を示した図。
【図16】第3実施形態に係る画像処理装置の全体動作を示すフローチャート。
【図17】ディザパターンの一例を示した図。
【図18】ルックアップテーブルの一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0009】
<はじめに>
前述の通り、近年、無色のトナーもしくはインクなどの記録材を利用し、電子写真やインクジェットの画像形成などを行う画像処理装置が提案されている。この画像処理装置では、透明なトナー(以下、クリアトナーとも呼称する。)を原画像の一部分に重ねる。これは、スポットクリアと呼ばれている。このような画像形成により、光沢の差異によって原画像の一部分を目立たせることができる。
【0010】
[クリアトナーパターン]
たとえば図3の左側に示した原画像の写真の空の領域を目立たせたい場合、その部分に図3の右側のクリアトナーパターンを重ねる。これにより仕上がった画像の空の領域を目立たせることができる。
【0011】
原画像から抽出される空の領域が明確な場合には、後述する画像の領域分割処理が上手く機能するため、クリアトナーを重ねる領域も抽出されることが多い。しかし、画像処理する対象物体に被写体ボケなどがありその境界があいまいな場合には、クリアトナーを重ねる領域をきれいに抽出することは難しい。この場合、画像のあいまいさに合わせて画像中の対象物体の境界領域のパターンをなだらかに変化させるように、対象物体の境界領域でクリアトナー量を調整する。このようにして境界部分でのトナーパターンの遷移を滑らかにすることにより、最終的な印刷物の画像をより自然に仕上げることができる。
【0012】
図3および図4では、原画像の空の領域および蛙の領域にそれぞれクリアトナーパターンを重ねる。たとえば、図4の蛙の後部の境界部分は被写体ボケによりあいまいになっている。このため、クリアトナーパターンの対応部分(境界部分Aの点線部分)にグラデーション処理が施される。これらのクリアトナーパターンではいずれも、黒が最大のトナー量、白が最小のトナー量となっている。
【0013】
[画像処理の対象領域]
以下の実施形態では、上記クリアトナーパターンのグラデーション処理を中心に説明するが、ここでは、その前提となる画像処理の対象領域について簡単に説明する。
【0014】
入力画像を解析し、適切なクリアトナー版を作成するためには、
(1)クリアトナーパターンを重ねる領域の抽出
(2)該抽出領域に対して与える、クリアトナーの空間的パターン(クリアトナーパターン)の決定
の2ステップが必要である。
(1)の手法としては、例えば顔領域抽出などの一般的な物体抽出方法によって原画像から抽出された領域を対象領域としてもよいし、ユーザに手動で領域を指定させ、その領域を対象領域として抽出してもよい。
(2)の手法としては、例えば前記(1)によって抽出された対象領域もしくはその他の画像領域から抽出された特徴量に基づいて、予め定められたパターンの中から任意の空間パターンを選択してもよく、対象領域を単に一律に塗りつぶしてもよい。
【0015】
以下に説明する各実施形態では、図5の左側に示したように、原稿(原画像)中のクリアトナーパターンを乗せるべき対象領域は既に決まっているものとし、その対象領域に与えるクリアトナーの空間的なパターン(図5の右側の領域中のテクスチャ)を決定することを中心に説明する。空間的パターンには、少なくとも境界部分のグラデーションが含まれる。
【0016】
更に以下に説明する各実施形態では、たとえば図6の右上の空間的パターンのうち、図6の左上の対象領域の対象物体が明確なオブジェクト部分に対応する空間的パターンBは既に塗りつぶされていると仮定し、対象物体がボケている、対象領域の境界部分Cのクリアトナーパターン(空間的パターン)の生成を中心に説明する。つまり、以下では、クリアトナーパターンは境界領域を除いてほぼ一律な値を持っているとして説明するが、これに限られない。
【0017】
境界領域は次のようにして定められる。たとえば図6の左下に示したように画像の領域分割処理後の領域Dを解析し、グラディエントを算出する。算出されたグラディエントの絶対値と所与の閾値との比較処理により、実際にクリアトナーを乗せる境界領域E(図6右下)を決める。そして、他の部分と違和感のないように境界領域Eのクリアトナーパターンにグラデーションを施す。以下の実施形態では、境界領域のクリアトナーパターンのグラデーション処理を中心に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
[画像形成システムの全体構成(画像処理装置のハードウエア構成)]
まず、本発明の第1実施形態に係る画像形成システムの全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成システムの全体構成の一例を示した図であり、画像処理装置のハードウエア構成図を含む。
【0019】
画像形成システム1は、画像処理装置10、画像取得装置20、画像出力装置30および記憶装置40を有する。ネットワーク50は、画像処理装置10、画像取得装置20、画像出力装置30および記憶装置40を接続する。ネットワーク50は、有線、無線のいずれであってもよい。
【0020】
画像処理装置10は、無色のトナーもしくはインクなどの記録材のパターンを生成し、電子写真記録方式やインクジェット記録方式等における画像形成を行う。画像処理装置10は、たとえば、プリンタ、複写機、印刷機等に内蔵され、プリンタ等の本体と一体となっていてもよいし、本体と別体となって設けられてもよい。
【0021】
画像処理装置10は、一般的なPC(Personal Computer)として構成され得る。画像処理装置10は、ネットワーク50を通じてスキャナなどの画像取得装置20、プリンタなどの画像出力装置30、ハードディスクドライブ(HDD)などの記憶装置40と接続される。
【0022】
画像処理装置10は、内部バス110と、内部バス110にそれぞれ接続されるCPU(Central Processing Unit)120、ROM(Read Only Memory)130、RAM(Random Access Memory)140、記憶部150、操作部160、表示部170、および通信部180を有する。
【0023】
ROM130は、プログラムやデータを記憶するメモリである。RAM140は、CPU120が各種動作を行うときに必要なプログラムやデータを一時的に記憶するメモリである。CPU120は、ROM130や記憶部150に格納されているプログラムやデータをRAM140に読み込んで実行することにより、画像処理装置10の全体を制御するプロセッサである。
【0024】
記憶部150は例えばハードディスクドライブからなり、CPU120が各種動作を行うときに使用するプログラムやデータを記憶する大容量の内部記憶装置である。操作部160は、ユーザが画像処理装置10を操作するためのユーザインタフェースであり、例えばキーボードやマウスなどから構成される。表示部170は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)など、操作部160から入力された情報や画像処理装置10の動作状態などを表示するユーザインタフェースである。通信部180は、ネットワーク50を介して、画像取得装置20、画像出力装置30および記憶装置40とデータ通信を行うための装置である。
【0025】
画像取得装置20は、写真、原稿、風景などの画像の画像情報を取得する装置である。画像取得装置20の一例としては、イメージスキャナやデジタルカメラが挙げられるが、これに限られない。
【0026】
画像出力装置30は、画像を形成する装置である。画像出力装置30の一例としては、例えば電子写真記録方式やインクジェット記録方式のプリンタやプロッタが挙げられるが、これに限られない。記憶装置40は、ハードディスクドライブ(HDD)などの大容量の外部記憶装置である。
【0027】
かかる構成により、画像処理装置10は、記憶部150および外部の記憶装置40のいずれかに保持される入力画像、もしくは画像取得装置20により取得される入力画像を取得する。取得された入力画像は、作業用のRAM140に一時的に記憶され、予め定められた処理方法により画像処理される。画像処理の結果は、RAM140又は記憶部150に記憶されてもよく、ネットワーク50を介して記憶装置40に記憶されてもよい。画像形成システム1では、ユーザからの指示に従い、画像処理装置10がRAM140に記憶された画像形成済みの画像情報をネットワーク50を経由して画像出力装置30へ送信すると、画像出力装置30は画像処理された画像を印刷して出力する。
【0028】
このように画像処理装置10は、予め定められた処理方法により、入力画像を処理するが、これは、CPU120がROM130、RAM140、記憶部150等から読み出されたプログラムを実行することにより実現され得る。プログラムは、複数の命令列から構成されていて、CPU120はプログラムの各命令列を順に実行する。このようなCPU120の動作により、画像処理装置10において次に説明する各部の機能が発揮される。
【0029】
[画像処理装置の機能構成]
次に、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る画像処理装置の機能構成図である。
【0030】
本実施形態に係る画像処理装置10は、入力部11、前処理部12、領域分割部13、境界抽出部14、演算部15、判定部16、パターン生成部17、記憶部18および色空間変換部19を有する。
【0031】
入力部11は、記憶部150又は画像取得装置20から入力画像(デジタル画像)を取得する。色空間変換部19は、入力画像がRGBカラーで表現されている場合、プリンタやプロッタの色材(例えばCMYK)に従って色空間を変換する。
【0032】
画像処理装置10は、色空間変換部19から出力された上記CMYKの4色のトナーを用いた出力画像(CMYK)のほか、透明トナーを用いて、原画像から抽出される対象領域に対する画像形成を行うための記録材のパターンを生成し、出力画像(トナーパターン)として出力する。本実施形態では透明なトナーを用いて透明トナーパターン(すなわち無色版)を生成する。なお、以下では、本実施形態では透明トナーパターンをクリアトナーパターン又は単にトナーパターンとも称呼する。
【0033】
本実施形態では透明なトナーを用いるが、これに限られず、無色の記録材であれば、透明なインク等であってもよいし、その他のカラートナーやカラーインク等を用いて記録材のパターンを生成することもできる。なお、画素値は、画像信号が白黒であれば輝度値が用いられ、カラーであれば輝度値や色(カラー)に関する1または2以上の色信号等が用いられる。
【0034】
トナーパターンの生成に際しては、まず前処理部12が入力画像の前処理を行う。前処理部12により行われる前処理の内容は、対象とする画像やシステムに依存するが、多くの場合、ノイズ除去、解像度変換処理等が含まれる。DTP(Desk Top Publishing)処理の場合は、多くのオブジェクトがベクターデータとして表されているため、それらに対してはノイズ除去や解像度変換を行う必要はないことが多い。しかしながら、本実施形態で対象としているのはDTPで扱われるラスター画像オブジェクトである。このため、本実施形態では、前処理部12が、ノイズ除去、解像度変換処理等の処理を行うことを想定する。
【0035】
次に領域分割部13は、領域分割処理を行い、画像をトナーパターン形成のための対象領域とその他の領域に分割する。領域分割部13は、領域分割処理を自動で実行するか、ユーザの指示に応じて処理し得る。自動で行う場合、領域分割部13は、例えば平均値シフト法などのように画像中の領域数を仮定しないノンパラメトリック法を用いることもできるし、予め抽出対象が判っている場合には、例えばk−means法のようなモデルや領域数を仮定するパラメトリック法を用いてもよい。
【0036】
境界抽出部14は、領域分割部13により分割された特定の画像領域を対象領域として入力して、対象領域の境界部分を抽出する。境界は幅0の曲線として定義することもできる。しかし、本実施形態にかかる画像形成システム1では境界部分にグラデーションを与えることが重要であるため、対象領域の境界部分に、ある有限の値の幅を持たせることが必要である。よって、本実施形態においては、抽出された境界領域は、図6の右下に示した境界領域Eのようにある幅をもった領域となる。なお、境界領域の抽出には様々な方法があり得るが、例えば図9のフローチャートで示す方法を用いて抽出することができる。図9のフローチャートについては後述する。
【0037】
演算部15は、対象領域の境界領域に含まれる画像データの特徴量を算出する。演算部15は、前記特徴量として境界領域の輝度情報を算出してもよい。演算部15は、前記特徴量として輝度情報とともに境界領域の1又は2以上のカラー情報を算出してもよい。
【0038】
判定部16は、前記特徴量に基づき境界領域中の色の変化の度合いを判定する。たとえば、判定部16は、輝度情報に基づき境界領域中の色の変化の度合いを判定することができる。判定部16は、輝度情報および1又は2以上のカラー情報に基づき境界領域中の色の変化の度合いを判定してもよい。
【0039】
パターン生成部17は、境界領域中の色の変化の度合いに応じて、境界領域の記録材のパターンのグラデーションを計算により決定する。例えば、判定部16が、境界領域中の色の変化の度合いとして前記境界領域の各画素の輝度勾配(以下、輝度勾配をグラディエントとも呼ぶ)および当該勾配の方向を判定した場合、パターン生成部17は、判定部16により判定された輝度勾配および当該勾配の方向に応じて、境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定することができる。
【0040】
また、判定部16が、境界領域中の色の変化の度合いとして境界領域中の1又は2以上のカラーおよび輝度勾配および当該勾配の方向を判定した場合、パターン生成部17は、判定部16により判定された境界領域中の1又は2以上のカラーの変化、輝度勾配、当該変化および勾配の方向に応じて、境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定してもよい。
【0041】
記憶部18には、判定部16が所定の判定を実行するために必要な閾値等の各種データが記憶される。
【0042】
パターン生成部17にて生成されたトナーパターンの画像データ(出力画像:トナーパターン)は、例えば、画像出力装置30に送られてもよい。その場合、画像出力装置30では、色空間変換部19から送られてきた、CMYKの出力画像データを利用し、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナーにより4つの版の画像を形成することに加えて、トナーパターンの出力画像データによりトナーパターン(無色版画像)を形成する。画像出力装置30は、それらを紙面に印刷して、グロッサーと呼ばれる高温高圧による印刷表面処理機を通すことにより、高い光沢性を有する印刷物を出力する。画像出力装置30は、これにより画像処理を終了するが、印刷が終了した旨のメッセージをオペレータ60に通知してもよい。
【0043】
[境界領域の解析原理]
本実施形態に係る画像処理装置10は、上記領域分割処理により分割された領域の解析に様々な手法を利用可能である。ただし、本実施形態で提案する画像処理では、クリアトナーによる光沢が、画像の内容に対して違和感なく再現されることが重要であるから、画像の内容を解析して分割された領域から境界部分を決定することが妥当であり、好ましい。具体的には、分割された領域の画像の輝度勾配(グラディエント)を基に、トナーパターンを生成すべき領域を決定する。
【0044】
スカラー量をψ(本実施形態の場合は画像の輝度)とすると、一般的にグラディエント(輝度勾配)はベクトル場として以下のように表される。
【0045】
【数1】

ここでx,・・・,xはφの分布する次元の各軸である。今回の場合は画像のx,y軸の位置がこれに相当する。e,・・・,eはこれらの軸における単位ベクトルである。
そのため今回の場合をまとめると、画像の輝度をIとして、輝度グラディエント(∇I)は以下の式のようになる。
【0046】
【数2】

図6の左下の領域Dの各画素について、このグラディエントを計算し、その絶対値|∇I|が予め定めた閾値以下である場合には、当該画素がグラデーション領域であると判断する。
【0047】
【数3】

(SURF)
これ以外にも、グラデーション領域の判定に第2実施形態にて使用する多重解像度解析を用いたSURF(Speeded-Up Robust Features)を用いることもできる。この場合、グラディエントは複数の解像度で計算されることになる。更に各解像度でヘシアンを計算し、その行列式が最も大きくなる解像度を主解像度として選択し、該解像度のグラディエントを、当該位置でのグラディエントとして用いる。グラディエントが決まった後の処理は前記の処理と同様である。
【0048】
【数4】

この解像度選択では、上式に表されるヘシアン(H(x,σ))の行列式を用いる。上式は二次元の場合のヘシアンであり、xは位置(x,y)、σは解像度をそれぞれ表す。Lxx(x,σ)は、位置(x,y)、解像度σにおける、二階偏微分(この場合はx方向を2階)を示した、2次のグラディエントである。Lxyなどについてもそれぞれの方位での二階偏微分を表す。今回の2次元の場合のヘシアンHの行列式det(H(x,σ))は以下のように表すことができる。ここでI(x,σ)は位置x=(x,y)における輝度を表す。この行列式はヘシアンが計算される画像領域における輝度変化の凸性を示している。
【0049】
【数5】

各解像度σについて上記行列式を計算し、最大のものを与える解像度σを主解像度とし、該解像度におけるグラデーションを利用するものとする。
【0050】
領域境界のグラデーション領域が決まった後、クリアトナー版におけるグラデーションを構成する。最も単純には原稿における輝度グラディエントと同じグラディエントを、クリアトナー版においても利用する方法がある。つまり、原稿における位置(x,y)における輝度をIx,yとして、位置(x,y)でのクリアトナーパターンの値Tx,yは以下のように表すことができる。
【0051】
【数6】

グラデーション方向に関してはグラディエントの計算を利用し以下のように表される。
【0052】
【数7】

ただし、θはx軸正方向と該グラディエントとのなす角とする。
【0053】
定義域、値域は実装に依存するが、原稿画像データの輝度成分及びクリアトナー版が、それぞれ8bitで表されるとすると、以下のように定義できる。
【0054】
【数8】

ここで、図7にも示したように、uは、上記グラデーション方向を表す。つまり原稿画像は位置(x,y)を原点として正規化されているものとする。
【0055】
行列形式でこの正規化を書き下すと、角度θでの回転行列R(θ)と、位置(x,y)の移動行列S(x,y)はそれぞれ以下のようになる。
【0056】
【数9】

【0057】
【数10】

これらを合わせると、正規化出力(x',y')は入力(x,y)を用いて以下のように表すことができる。
【0058】
【数11】

以上により、グラデーションの方向を考慮したステップ型のクリアトナーの境界領域を形成することができる。
【0059】
[画像処理装置の全体動作]
次に、画像処理装置10の全体動作について図8のフローチャートを参照しながら説明し、その後、図8で示した各処理の詳細について図9〜図12のフローチャートを参照しながら説明する。画像処理装置10は、図8の基本処理に従ってクリアトナーパターンを生成する。
【0060】
(前処理)
まず、ステップS80にて、前処理部12は、ノイズ除去、解像度変換処理等を実行する。
【0061】
(領域分割処理)
次に、ステップS81にて、領域分割部13は、領域分割処理を行い、入力画像(取得画像)をトナーパターン形成のための対象領域とその他の領域に分割する。領域分割部13は、たとえばsplit and mergeアルゴリズムを用いて画像を各領域へ分割することができるが、領域分割処理方法は上記アルゴリズムに限られない。split and mergeアルゴリズムは、画像を均一な領域に分割することを試みるもので、最初に全体画像を1つの領域として初期推定し、その領域が実質的に均一であるかどうかを判断する。すなわち、予め定められた基準値を基に判断を行い、均一ではないと判断した場合、その領域を均等に4つの領域へ分割する。これを分割した各領域についても行い、分割が必要なくなるまでこの処理を繰り返す。その後、その基準値を満足し、互いに隣接し、類似する領域同士を結合していき、結合できるものがなくなった時点で、この処理を終了する。
【0062】
(境界抽出処理)
次に、ステップS82にて、境界抽出部14は、領域分割部13により分割された領域を対象領域として入力して、対象領域の境界部分を抽出する。境界抽出処理の詳細については、図9を参照しながら後程説明する。
【0063】
(グラディエント計算処理)
次に、ステップS83にて、演算部15は、対象領域の境界領域に含まれる画像データの特徴量を算出する。グラディエント計算処理の詳細については、図10を参照しながら後程説明する。
【0064】
(グラディエント判定処理)
次に、ステップS84にて、判定部16は、前記特徴量に基づき、境界領域中の色の変化の度合いとしてグラディエントの変化値とグラディエントの方向を判定する。本実施形態では、グラディエントの変化値として隣接する画素の輝度勾配を算出し、グラディエントの方向として前記輝度勾配の角度を判定する。グラディエント判定処理の詳細については、図11を参照しながら後程説明する。
【0065】
(グラデーション計算処理)
次に、ステップS85にて、パターン生成部17は、境界領域中の輝度勾配および当該勾配の方向に応じて境界領域中のグラデーションを算出する。
【0066】
(クリアトナーパターン生成処理)
次に、ステップS86にて、パターン生成部17は、算出されたグラデーションの値を用いて境界領域のトナーパターンにグラデーション処理を施す。グラデーション計算処理およびクリアトナーパターン生成処理の詳細については、図12を参照しながら後程説明する。
【0067】
[画像処理装置の境界抽出]
次に、境界抽出処理(図8のステップS82)の詳細について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。図9は、本実施形態に係る画像処理装置の境界抽出処理を示すフローチャートである。なお、境界抽出処理は、境界抽出部14により実行される。
【0068】
図9を参照すると、まず、ステップS90にて、境界抽出部14は、分割された領域のエッジを抽出する。次に、ステップS91にて、境界抽出部14は、抽出されたエッジの状態を評価する。次に、ステップS92にて、境界抽出部14は、エッジの評価に従い対象領域の境界領域を抽出する。これにより、たとえば、図6の左下に示した領域分割後の対象領域Dに対して、図6の右下に示した境界領域Eが形成される。なお、境界領域E以外の対象領域は、図6の右上に示したように均一なトナー量で一律にパターン化してもよいが、これに限られずトナー量を不均一にしてもよい。
【0069】
[画像処理装置のグラディエント計算]
次に、グラディエント計算処理(図8のステップS83)の詳細について、図10のフローチャートを参照しながら説明する。グラディエント計算処理は、演算部15により実行される。なお、下記width, heightはそれぞれ入力画像の幅と高さを表す。
【0070】
演算部15は、画像データの特徴量として各境界画素におけるグラディエントを計算する。本実施形態では、グラディエントは輝度勾配を意味し、簡単のためグラディエントを隣接画素との差分により近似する。
【0071】
図10において、I(x,y)は位置(x, y)における輝度値を返す関数、dx, dy, dl, thetaはそれぞれ位置(x, y)における、x方向の変分、y方向の変分、グラディエントの絶対値、グラディエントの角度を表す。
【0072】
最初に、ステップS101にて、演算部15は、変数i,jを初期化する。変数i,jは、境界領域の所定の位置の画素を示す。次に、ステップS102にて、演算部15は、変数iを1加算して変数iiに代入し(ii=i+1)、ステップS103にて、変数jを1加算し変数jjに代入する(jj=j+1)。次に、ステップS104にて、演算部15は、変数iiが入力画像の幅widthより小さく,かつ変数jjが入力画像の高さheightより小さいかを判定する(ii<width && jj<height?)。
【0073】
ステップS104にてNOの場合、演算部15は、ステップS105〜ステップS108の処理をスキップしステップS109の処理を行う。ステップS104にてYESの場合、演算部15は、ステップS109の処理の前にステップS105〜ステップS108の処理を実行する。ステップS105では、演算部15は、x方向の隣接する画素の輝度値の差分(x方向のグラディエント)を算出する(dx=I(ii,j)-I(i,j))。次に、ステップS106にて、演算部15は、y方向の隣接する画素の輝度値の差分(y方向のグラディエント)を算出する(dy=I(i,jj)-I(i,j))。
【0074】
次に、ステップS107にて、演算部15は、x方向のグラディエントdxおよびy方向のグラディエントdyの2乗和の平方根を算出することにより、グラディエントの絶対値dlを算出する(dl=sqrt(dx2+dy2)。次に、ステップS108にて、演算部15は、x、y方向のグラディエントdx、dyを逆正接関数に用いてグラディエントの角度thetaを算出する(theta=arctan(dy/dx))。
【0075】
次に、ステップS109にて、演算部15は、変数iを1加算し(i++)、ステップS110にて、変数iが入力画像の幅widthより大きいかを判定する(i>width?)。ステップS110にてNOの場合、ステップS102に戻り、演算部15は、次の画素に対してステップS102からの処理を繰り返す。一方、ステップS110にてYESの場合、ステップS111に進み、演算部15は、変数jを1加算し(j++)、ステップS112にて、変数jが入力画像の高さheightより大きいかを判定する(j>height?)。ステップS112にてNOの場合、ステップS102に戻り、演算部15は、次の画素に対してステップS102からの処理を繰り返す。一方、ステップS112にてYESの場合、本処理を終了する。以上の計算により、境界領域の各画素についてのグラディエントの絶対値dlおよびグラディエントの角度thetaが算出される。
【0076】
[画像処理装置のグラディエント判定]
上記グラディエントの絶対値dlやグラディエントの角度thetaは、境界部分のグラデーションの判定に用いられる。最も単純にはこの判定は、判定部16が画素ごとにグラディエントの絶対値dlと所与の閾値とを比較(閾値処理)することによって実現され得る。
【0077】
しかし、より高精度な処理のためには、グラディエントの方位や方向がどのように分布しているのかを判定する必要がある。この例を図11のフローチャートを参照しながら説明する(グラディエント判定処理:図8のステップS84)。グラディエント判定処理は、判定部16により実行される。
【0078】
以下の例で、avg_dl(x, y)、avg_th(x, y)のそれぞれは、境界部分の位置(x, y)を中心とする縦横2sigma(シグマ)のサイズの矩形内部でのグラディエントの絶対値dl及びグラディエントの角度thetaの平均値を、std_dl(x, y)、std_th(x, y)は同矩形内部でのdl及びthetaの標準偏差を示す。関数gradient (x, y)は、位置(x, y)の画素が充分に平滑なグラデーション領域に属している場合には1を、それ以外の場合には0をとる判定関数である。この判定では前述したグラディエントの絶対値dl及びグラディエントの角度thetaの標準偏差が予め定められた閾値TH1及びTH2よりそれぞれ小さいことを条件としている。avg_th及びstd_thの計算には、サイクリックな引数の場合の補正処理が必要となるが、以下の例では簡単のため通常の引数と同様に扱っている。
【0079】
最初に、ステップS111にて、判定部16は、変数i,jを初期化する。変数i,jは、境界領域の所定の位置の画素を示す。次に、ステップS112にて、判定部16は、変数iからsigmaのサイズを減算して変数iiに代入し(ii=i-sigma)、ステップS113にて、変数jからsigmaのサイズを減算して変数jjに代入する(jj=j-sigma)。
【0080】
次に、ステップS114にて、判定部16は、変数iiおよび変数jjが0より大きい値であって、変数iiが入力画像の幅widthより小さく,かつ変数jjが入力画像の高さheightより小さいかを判定する(ii>0 && jj>0 && ii<width && jj<height?)。
【0081】
ステップS114の判定の結果、NOの場合、判定部16は、ステップS115、S116の処理をスキップしステップS117の処理を行う。一方、ステップS114にてYESの場合、判定部16は、ステップS115にてグラディエントの絶対値dlの平均値avg_dl(i,j)と、位置(i,j)からsigmaだけずれた位置のグラディエントの絶対値dl(ii, jj)との差分の2乗をtmp_dl+として求める(tmp_dl+=(avg_dl(i,j)-dl(ii, jj))*(avg_dl(i,j)-dl(ii, jj))。
【0082】
次に、ステップS116にて、判定部16は、グラディエントの角度thetaの平均値avg_th(i,j)と、位置(i,j)からsigmaだけずれた位置のグラディエントの角度theta(ii, jj)との差分の2乗をtmp_ th +として求める(tmp_th+=(avg_th(i,j)- theta (ii, jj))*(avg_th(i,j)- theta (ii, jj))。
【0083】
次に、ステップS117にて、判定部16は、変数jjが変数jにsigmaを加算した値より大きいかを判定する(jj>j+sigma?)。ステップS117にてNOの場合、ステップS118にて変数jjを1加算してステップS114に戻り、ステップS115からの処理を再度実行する。一方、ステップS117にてYESの場合、ステップS119に進み、変数iiが変数iにsigmaを加算した値より大きいかを判定する(ii>i+sigma?)。ステップS119にてNOの場合、ステップS120にて変数iiを1加算してステップS114に戻り、ステップS115からの処理を再度実行する。
【0084】
ステップS119にてYESの場合、ステップS121に進み、判定部16は、グラディエントの絶対値dlの標準偏差std_dl(i,j)を算出する(std_dl(i,j)=sqrt(tmp_dl)/t)。次に、ステップS122にて、判定部16は、グラディエントの角度thetaの標準偏差std_th(i,j)を算出する(std_th(i,j)=sqrt(tmp_th)/t)。
【0085】
次に、ステップS123にて、判定部16は、グラディエントの絶対値dlの標準偏差std_dl(i,j)が予め定められた閾値TH1より小さく、かつ及びグラディエントの角度thetaの標準偏差std_th(i,j)が予め定められた閾値TH2より小さいかを判定する(std_dl(i,j)<TH1 && std_th(i,j)<TH2)。ステップS123にてYESの場合、ステップS124にて、判定部16は、判定関数gradient(i,j)に、位置(i,j)の画素が充分に平滑なグラデーション領域に属していることを示す「1」を代入し、それ以外の場合にはステップS125にて充分に平滑なグラデーション領域以外の領域であることを示す「0」を代入する。
【0086】
なお、本実施形態では、ステップS123にて、グラディエントの絶対値dlの標準偏差std_dl(i,j)およびグラディエントの角度thetaの標準偏差std_th(i,j)がそれぞれ閾値TH1,TH2より小さい場合、判定関数gradient(i,j)に、位置(i,j)の画素が充分に平滑なグラデーション領域に属していることを示す「1」を代入した。しかしながら、グラディエントの絶対値dlの標準偏差std_dl(i,j)が閾値TH1より小さいか、またはグラディエントの角度thetaの標準偏差std_th(i,j)が閾値TH2より小さいか、のいずれかを満足した場合、判定関数gradient(i,j)に、位置(i,j)の画素が充分に平滑なグラデーション領域に属していることを示す「1」を代入してもよい。
【0087】
[画像処理装置のグラデーション計算及びクリアトナーパターン生成]
次に充分に平滑なグラデーション領域に属している境界画素に対して、クリア版(トナーパターン)におけるグラデーションを計算により決定する。クリア版におけるグラデーション計算にはいくつかの方法があるが、最も単純には、これまでに計算されてきた原画像におけるグラディエントdlを利用する方法がある。
【0088】
境界画素において輝度のグラディエントと同じグラディエントを持つクリア版を構成するためには、以下のような方法でクリア版のグラデーションを計算する必要がある。グラデーション計算処理(図8のステップS85)およびクリアトナーパターン生成処理(図8のステップS86)の詳細について、図12のフローチャートを参照しながら説明する。グラデーション計算処理およびクリアトナーパターン生成処理は、パターン生成部17により実行される。
【0089】
ここでI(x,y)、T(x,y)はそれぞれ入力画像の輝度成分(グラディエント)、クリア版の位置(x,y)におけるクリアトナーパターンの値を表す。またgrad_field_x(x,y)及びgrad_field_y(x,y)はそれぞれ位置(x, y)におけるx方向変位の合計、y方向変位の合計である。
【0090】
最初に、ステップS121にて、パターン生成部17は、変数i,jを初期化する。次に、ステップS122にて、パターン生成部17は、位置(x, y)におけるx方向変位の合計grad_field_x(x,y)及び位置(x, y)におけるy方向変位の合計grad_field_y(x,y)を初期化する。次に、ステップS123にて、パターン生成部17は、位置(i,j-1)におけるy方向変位の合計grad_field_y(i,j-1)にy方向の変分dy(i,j)を加算し、grad_field_y(i,j)に代入する(grad_field_y(i,j)=grad_field_y(i,j-1)+dy(i,j))。
【0091】
次に、ステップS124にて、パターン生成部17は、変数jが高さheightより大きいかを判定する(j>height?)。ステップS124にてNOの場合、ステップS125にて変数jを1加算してステップS123に戻り、ステップS123の処理を再度実行する。一方、ステップS124にてYESの場合、ステップS126にてパターン生成部17は、変数iが幅widthより大きいかを判定する(i>width?)。ステップS126にてNOの場合、ステップS127にて変数iを1加算してステップS123に戻り、ステップS123の処理を再度実行する。
【0092】
一方、ステップS126にてYESの場合、ステップS128にてパターン生成部17は、再度変数i,jを初期化する。次に、ステップS129にて、パターン生成部17は、位置(i-1,j)におけるx方向変位の合計grad_field_x(i-1,j)にx方向の変分dx(i,j)を加算して、grad_field_x(i,j)に代入する(grad_field_x(i,j)=grad_field_x(i-1,j)+dx(i,j))。
【0093】
次に、ステップS130にて、パターン生成部17は、変数iが幅widthより大きいかを判定する(i>width?)。ステップS130にてNOの場合、ステップS131にて変数iを1加算してステップS129に戻り、ステップS129の処理を再度実行する。一方、ステップS130にてYESの場合、ステップS132にてパターン生成部17は、変数jが高さheightより大きいかを判定する(j>height?)。ステップS132にてNOの場合、ステップS133にて変数jを1加算してステップS129に戻り、ステップS129の処理を再度実行する。
【0094】
一方、ステップS132にてYESの場合、ステップS134にてパターン生成部17は、2乗平均を用いて、位置T(i,j)におけるクリアトナーパターンを算出する(T(i,j)=sqrt(grad_field_x(i,j)2+grad_field_y(i,j)2))。つまり、位置T(i,j)におけるクリアトナーパターンは、x方向変位の合計grad_field_x(i,j)の2乗とy方向変位の合計grad_field_y(i,j)の2乗とを加算した値の平方根をとる。
以上の計算により、境界領域の各画素についてクリアトナーパターンのグラデーションを決定することができる。
【0095】
なお、パターン生成部17は、上記計算方法によりステップS134にて位置T(i,j)におけるクリアトナーパターンを算出する代わりに、予めルックアップテーブルを用意し、ルックアップテーブルを用いて、計算されたグラディエントの絶対値に対するクリアトナーパターンを決定してもよい。
【0096】
また、パターン生成部17は、上記計算方法によりステップS134にて位置T(i,j)におけるクリアトナーパターンを算出する代わりに、x方向変位の合計grad_field_x(i,j)とy方向変位の合計grad_field_y(i,j)とを加算する方法を採用することもできる。この加算値は、マンハッタン距離とも呼ばれ、クリアトナーパターンの真の値に対してその近似値を比較的高い精度で算出することができ、かつ上記画像処理の負荷を軽減することができる。
【0097】
[効果]
以上説明したように、本実施形態にかかる画像処理装置10によれば、画像形成のためのトナーパターンを生成する際、画像中の特定の対象物体の境界領域についてクリアトナーパターンにグラデーション処理を施す。
【0098】
たとえば図4に示したように、入力画像の蛙の領域にクリアトナーパターンを重ねる場合について本実施形態の効果の一例を説明する。ここでは、蛙が画像中の特定の対象物体、蛙の領域がトナーパターンを重ね合わせる対象領域である。図4の写真では、対象物体の蛙の後部にあいまいさがあるため、境界領域Aのトナーパターンにグラデーション処理が施される。その他の対象領域には、均一なトナー量のパターンを重ねる。これにより、光沢の差異によって原画像の一部分である写真中の蛙の部分を目立たせながら、被写体ボケなどにより対象物体の境界部分があいまいな場合にも、上記境界領域Aのグラデーション処理によって、最終的な印刷物を自然に仕上げることができ、高品質の最終印刷物をユーザに提供できる。
【0099】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る画像処理装置10について説明する。なお、第2実施形態に係る画像処理装置10の機能構成およびハードウエア構成は、第1実施形態の画像処理装置と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0100】
第2実施形態に係る画像処理装置10では、演算部15は、多重解像度解析を用いて算出された複数の解像度からヘシアン行列式を用いて主解像度を選択し、選択された主解像度の画像に基づき前記境界領域の輝度を算出する。ここで、演算部15は、前記複数の解像度に対するヘシアン行列式の度数分布を用いて主解像度を選択してもよい。演算部15は、多重解像度解析を用いて算出された複数の解像度からヘシアン行列式を用いて主解像度を選択し、選択された主解像度の画像に基づき前記境界領域の1又は2以上のカラーおよび輝度を算出してもよい。
【0101】
[画像処理装置のグラディエント計算処理]
本実施形態では、グラデーション領域の抽出に上述したSURFを用いる。SURFの計算は多重解像度解析とグラディエントの計算を内包しているため、第1実施形態で説明した計算の一部を省くことができる。SURFの計算内容については、上記「境界領域の解析原理」で説明した通りである。
【0102】
演算部15は、SURFの手法を用いて、予め定められたいくつかの解像度でヘシアン(式(4))及びその行列式(式(5))を計算し、該行列式を閾値処理することで変化量の大きい位置とその解像度を同定する。SURFは、画像中の特徴的な部分を検出し、符号化するために、該行列式の値が大きい場所を抽出する。この性質を利用し、第2実施形態では、演算部15は、SURFを用いてグラデーション計算のための解像度の選択を行う。
【0103】
図13は、本実施形態にかかる画像処理装置10の動作を示す。図13のステップS231の境界部判定処理は、第1実施形態の境界抽出処理と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0104】
ステップS232では、解像度変換処理が実行される。解像度変換処理では、演算部15は、解像度変換により原画像を予め定められた複数の解像度に変換する。変換後、ステップS233にて、演算部15は、複数の解像度の各解像度の画像に対して、境界領域内の各位置において上記式(4)を用いてヘシアンを計算し、ステップS234にて、上記式(5)を用いてヘシアン行列式を計算する。
【0105】
次に、ステップS235にて、演算部15は、境界部判定処理で境界と判定された各画素において、ヘシアン行列式が最大となる解像度を選択する。演算部15は、この投票処理を境界部全画素に行い、選択画素が最も多い解像度を主解像度として決定する。次に、ステップS236にて、演算部15は、主解像度の画像において境界部分の各画素のグラディエントを計算する。これ以降の処理は第1実施形態の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0106】
[効果]
以上説明したように、第2実施形態にかかる画像処理装置10によれば、画像形成のためのトナーパターンを生成する際、画像中の対象物体の境界領域についてクリアトナーパターンにグラデーション処理を施す。この境界領域のグラデーション処理によって、最終的な印刷物を自然に仕上げることができる。
【0107】
これに加えて、第2実施形態にかかる画像処理装置10によれば、SURFを用いて多重解像度解析およびグラディエントの計算処理を行う。このため、各解像度について上式(5)を算出し、最大の解像度を主解像度として選択した後、主解像度の画像を対象として境界部分の各画素のグラディエントを計算する。これにより、第1実施形態で説明したグラディエントの計算の一部を省略することができる。よって、第2実施形態に係る画像処理装置10にて実行される画像処理方法によれば、画像処理の負荷を軽減することができる。
【0108】
以上説明したように、第1および第2実施形態に係る画像処理装置により実行される画像処理方法によれば、画像形成のための記録材のパターンを生成する際、画像中の対象物体の境界領域のパターンにグラデーション処理を施すことにより、画像をより自然に仕上げることが可能な画像処理装置、画像処理方法およびそのプログラムを提供することができる。
【0109】
<第3実施形態>
(ルックアップテーブル)
次に、本発明の第3実施形態に係る画像処理装置10について説明する。なお、第3実施形態に係る画像処理装置10の機能構成及びハードウエア構成は、第1、2実施形態の画像処理装置と概ね同じである。ただし、第3実施形態に係る画像処理装置10では、図14に示したように、ルックアップテーブル18aが記憶部18に予め登録されている。
【0110】
ルックアップテーブルの一例を図15に示す。図15に示した表の「I」は輝度を表し、「grad」は輝度勾配を表す。ルックアップテーブルの分割数は、本例では輝度Iおよび輝度勾配gradをそれぞれ4分割としたが、これに限らず、クリアトナー濃度の求められる精度に依存した数となる。つまり、精度が高いほどルックアップテーブルの分割数は多くなる。また、輝度Iおよび輝度勾配gradの各要素における数値はクリアトナー濃度を%で示したものである。例えば、輝度が0以上50未満であって、輝度勾配が0以上25未満の場合、クリアトナー濃度は10%となる。
【0111】
[画像処理装置の全体動作]
次に、第3実施形態に係る画像処理装置10の全体動作について図16のフローチャートを参照しながら説明する。第1実施形態と異なる点は、ステップS87及びステップS88である。
【0112】
まず、ステップS80にて、前処理部12は、ノイズ除去、解像度変換処理等を実行する(前処理)。次に、ステップS81にて、領域分割部13は、入力画像(取得画像)をトナーパターン形成のための対象領域とその他の領域に分割する(領域分割処理)。
【0113】
次に、ステップS82にて、境界抽出部14は、領域分割部13により分割された領域を対象領域として入力して、対象領域の境界部分を抽出する(境界抽出処理)。境界抽出処理の詳細は、図9を参照しながら前述したので、ここでは説明を省略する。
【0114】
次に、ステップS83にて、演算部15は、対象領域の境界領域に含まれる画像データの特徴量を算出する(グラディエント計算処理)。演算部15は、画像データの特徴量として各境界画素におけるグラディエントを計算する。本実施形態では、グラディエントは輝度I及び輝度勾配gradを意味する。輝度勾配gradは、簡単のためグラディエントを隣接画素との差分により近似する。
【0115】
次に、ステップS87にて、判定部16は、ルックアップテーブルを検索し、ステップS88にて、ステップS83にて算出された輝度及び輝度勾配に対応するクリアトナー濃度を特定する。次いで、ステップS86にて、判定部16は、特定したクリアトナー濃度に基づき、境界領域のクリアトナーのパターンのグラデーション処理を施す。
【0116】
以上のように、本実施形態に係る画像処理方法では、入力画像から抽出された輝度および輝度勾配情報と、その領域に与えるべきクリアトナーの濃度と、の関係をルックアップテーブルとして保持する。そして、これを利用することで入力画像の各画素についてのクリアトナー濃度を決定する。このように輝度及び輝度勾配とクリアトナー濃度とを関連付けてルックアップテーブルとして実装することで、トナーパターン生成時に極めて高速に各画素に対するクリアトナー濃度を決定することができる。
【0117】
なお、上記ルックアップテーブルでは、クリアトナー濃度を単純に数値で管理した。しかしながら、これに限らず、クリアトナー濃度の替わりにディザパターンとして印刷機(画像処理装置を含む画像形成装置)の性能を考慮した状態でルックアップテーブルに保持してもよい。ディザ(テクスチャ)パターンの一例を図17に示す。図17では、ディザパターン例として、クリアトナー濃度の替わりにパターンA、パターンB、パターンC、パターンDが示されている。各パターンの黒画素の部分にクリアトナーを載せることになる。パターンDは空白としてのパターンである。
【0118】
図18は、にディザパターンを用いたルックアップテーブルの一例である。このルックアップテーブルではクリアトナー濃度ではなく、同濃度を与えるディザパターンを管理する。輝度Iおよび輝度勾配gradの各要素に対応して記憶された英字はディザパターンを示したものである。例えば、輝度が0以上50未満であって、輝度勾配が0以上25未満の場合、ディザパターンBが選択される。図18のルックアップテーブルの分割数は任意に決めることができる。
【0119】
なお、ディザパターンに関しては既知の一般的な手法で作成したものを利用することができる。また、ディザパターンは、記録材のパターンの一例であり、ディザパターン以外にも万線パターンや網点でもよく、万線パターンや網点によっても同様の効果を得ることができる。
【0120】
また、ルックアップテーブルは、輝度および輝度勾配のみならず、入力画像から抽出された特徴量と記録材のパターン(又は、クリアトナー濃度)とを関連付けて予め登録されることができる。特徴量と記録材のパターン(又は、クリアトナー濃度)との関連付けは、記録材のパターン(又は、クリアトナー濃度)が印刷物上のオブジェクト領域(対象領域)に対してどのような効果をもたらすか、オブジェクト領域の境界がどのような勾配やぼけ状態にあれば、どのようなパターン(濃度)がふさわしいかを示す。よって、これらの関連性を示すパターン例を特徴量との関係性とともにルックアップテーブルに予め蓄積する。
【0121】
これにより、ルックアップテーブルに基づき、印刷物に対して高い効果をもたらすようなクリアトナーパターン生成を極めて高速に行うことができる。
【0122】
<おわりに>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【0123】
たとえば、上記実施形態では、境界領域における色の変化の度合いに応じて、境界領域の記録材のパターンのグラデーションが決定された。ここで、境界領域における色の変化の度合いは、輝度の勾配だけに基づき判定されてもよいし、輝度の勾配およびその勾配の角度に基づき判定することもできる。さらに、境界領域における色の変化の度合いは、輝度の勾配およびその勾配の角度に加えて、境界領域中の1色又は2色以上のカラーの変化の度合いにも基づき判定してもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、トナーパターンは無色のトナーを用いることを前提として説明したが、有色のトナーであってもよい。
【0125】
本発明に係る画像処理装置は、印刷機、複合機の他、レーザプリンタなどの他の画像形成装置として構成することもできる。また、さらに他の実施形態では、上記の画像処理部を含むLSI(Large Scale Integration)チップなどの半導体デバイスとして画像処理装置を構成することもできる。
【符号の説明】
【0126】
1 画像形成システム
10 画像処理装置
11 入力部
12 前処理部
13 領域分割部
14 境界抽出部
15 演算部
16 判定部
17 パターン生成部
18 記憶部
19 色空間変換部
20 画像取得装置
30 画像出力装置
40 記憶装置
50 ネットワーク
120 CPU
130 ROM
140 RAM
150 記憶部
160 操作部
170 表示部
180 通信部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】
【特許文献1】特許第4081365号公報
【特許文献2】特開2007−199291号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像から抽出される対象領域の画像形成のために原画像に重ねられる記録材のパターンを生成する画像処理装置であって、
前記対象領域の境界領域に含まれる画像データの特徴量を算出する演算部と、
前記特徴量に基づき、前記境界領域中の色の変化の度合いを判定する判定部と、
前記境界領域中の色の変化の度合いに応じて、前記境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定するパターン生成部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記特徴量として前記境界領域の輝度を算出し、
前記判定部は、前記輝度に基づき、前記境界領域中の色の変化の度合いを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記境界領域中の色の変化の度合いとして前記境界領域中の輝度勾配および当該勾配の方向を判定し、
前記パターン生成部は、前記境界領域中の輝度勾配および当該勾配の方向に応じて、前記境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記特徴量として前記境界領域の1又は2以上のカラーおよび輝度を算出し、
前記判定部は、前記1又は2以上のカラーおよび輝度に基づき、前記境界領域中の色の変化の度合いを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記境界領域中の色の変化の度合いとして前記境界領域中の1又は2以上のカラーおよび輝度勾配および当該勾配の方向を判定し、
前記パターン生成部は、前記境界領域中の1又は2以上のカラーおよび輝度勾配および当該勾配の方向に応じて、前記境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記演算部は、多重解像度解析を用いて算出された複数の解像度からヘシアン行列式を用いて主解像度を選択し、選択された主解像度の画像に基づき前記境界領域の輝度または前記境界領域の1又は2以上のカラーおよび輝度を算出することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記複数の解像度に対する前記ヘシアン行列式の度数分布を用いて主解像度を選択することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記特徴量として前記境界領域の輝度及び輝度勾配を算出し、
前記判定部は、前記輝度及び前記輝度勾配と、記録材の濃度と、を関連させて記憶したルックアップテーブルに基づき、前記算出された輝度及び輝度勾配に応じて特定された記録材の濃度から前記境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記演算部は、前記特徴量として前記境界領域の輝度及び輝度勾配を算出し、
前記判定部は、前記輝度及び前記輝度勾配と、記録材のパターンと、を関連させて記憶したルックアップテーブルに基づき、前記算出された輝度及び輝度勾配に応じて特定された記録材のパターンから前記境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
原画像から抽出される対象領域の画像形成のための記録材のパターンを生成する画像処理方法であって、
前記対象領域の境界領域に含まれる画像データの特徴量を算出するステップと、
前記特徴量に基づき、前記境界領域中の色の変化の度合いを判定するステップと、
前記境界領域中の色の変化の度合いに応じて、前記境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定するステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
原画像から抽出される対象領域の画像形成のための記録材のパターンを生成する画像処理を実行するためのプログラムであって、
前記対象領域の境界領域に含まれる画像データの特徴量を算出する処理と、
前記特徴量に基づき、前記境界領域中の色の変化の度合いを判定する処理と、
前記境界領域中の色の変化の度合いに応じて、前記境界領域の記録材のパターンのグラデーションを決定する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−76986(P2013−76986A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180254(P2012−180254)
【出願日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】