説明

画像処理装置、画像処理方法および記録装置

【課題】ノズルの製造ばらつき等に起因する色ムラを低減する。
【解決手段】複数の種類のインクを記録媒体に対して重ねて吐出することにより記録される色の所定の色からの色ずれを補正するために、異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出するノズルの組み合わせの各々に対して付与されたパラメータであって、互いに異なるプロセスにより生成された第1および第2のパラメータのいずれかを、与えられた条件に応じて選択し、選択されたパラメータを用いて、注目画素の第1の色信号を第2の色信号に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一の吐出量を吐出する様に設計された複数のインク吐出ノズルは、実際には製造上のばらつきによって実際の吐出量が異なってしまう。したがって、上記複数の吐出ノズルを用いて記録媒体上に均一な記録ドット数で画像形成すると、製造上のばらつき等に起因した濃度ムラを生ずる可能性がある。
【0003】
特許文献1は、この濃度ムラを解決するために、各インク吐出ノズルから吐出されるインク量情報を取得し、このインク量情報に応じて記録ドット数を変調するヘッドシェーディング技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−013674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記ヘッドシェーディング技術では、記録ドット数を変調することで、インク色単位での濃度ムラを解決することはできるが、2色以上のインクで形成される色の、各吐出ノズルのインク吐出量に応じた色ムラを解決することができない。
【0006】
本発明は、インク吐出ノズルの製造ばらつき等に起因して発生する2色以上のインクで形成される色の色ムラを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像処理装置は、異なる種類のインクをそれぞれ吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するために、入力画像データを前記記録ヘッドが記録可能な信号に変換する処理過程において、色信号を処理する画像処理装置であって、複数の種類のインクを記録媒体に対して重ねて吐出することにより記録される色の所定の色からの色ずれを補正するために、異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出するノズルの組み合わせの各々に対して与えられたパラメータであって、互いに異なるプロセスにより生成された第1および第2のパラメータのいずれかを、与えられた条件に応じて選択する選択手段と、選択された前記パラメータを用いて、注目画素の第1の色信号を第2の色信号に変換する変換手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像処理方法は、異なる種類のインクをそれぞれ吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するために、入力画像データを前記記録ヘッドが記録可能な信号に変換する処理過程において、色信号を処理する画像処理方法であって、複数の種類のインクを記録媒体に対して重ねて吐出することにより記録される色の所定の色からの色ずれを補正するために、異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出するノズルの組み合わせの各々に対して与えられたパラメータであって、互いに異なるプロセスにより生成された第1および第2のパラメータのいずれかを、与えられた条件に応じて選択するステップと、選択された前記パラメータを用いて、注目画素の第1の色信号を第2の色信号に変換するステップとを有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る記録装置は、異なる種類のインクをそれぞれ吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するための記録装置であって、入力画像データを前記記録ヘッドが記録可能な信号に変換する処理過程において、色信号を処理する画像処理手段を有し、前記画像処理手段は、複数の種類のインクを記録媒体に対して重ねて吐出することにより記録される色の所定の色からの色ずれを補正するために、異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出するノズルの組み合わせの各々に対して与えられたパラメータであって、互いに異なるプロセスにより生成された第1および第2のパラメータのいずれかを、与えられた条件に応じて選択する選択手段と、選択された前記パラメータを用いて、注目画素の第1の色信号を第2の色信号に変換する変換手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2色以上のインクで形成される色の、インク吐出ノズルの製造ばらつきに起因した色ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタを模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る記録システムの構成を示すブロック図である。
【図3】(a)〜(c)は、複数の異なる種類のインクを重ねてある色を表現しようとする場合の色ずれの発生を説明する図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態およびその変形例にかかる、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】(a)および(b)は、図4(a)に示したMCS処理部404で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理部404の処理をそれぞれ示すフローチャートである。
【図6】(a)および(b)は、図5(a)のステップS502における測定用画像の記録を説明する図である。
【図7】(a)および(b)は、図5(b)のステップS508で記録された画像を説明する図である。
【図8】MCS処理部のテーブルパラメータを生成する処理の他の例を説明する図である。
【図9】(a)および(b)は、第1実施形態の第1変形例に係るMCS処理部のテーブルパラメータの生成およびMCS処理部の処理を示すフローチャートである。
【図10】(a)および(b)は、第1実施形態の第2変形例にかかるMCS処理部のテーブルパラメータの生成およびMCS処理部の処理を示すフローチャートである。
【図11】図5(a)のステップS502における測定用画像の記録例を示す図である。
【図12】第1実施形態に係る、実際に用いる記録ヘッドに適切なテーブルパラメータを、記録特性ランクを用いて選択するための処理を説明するフローチャートである。
【図13】(a)および(b)は、図12のステップS1202の記録例を説明する図である。
【図14】(a)および(b)は、本発明の一実施形態に係る記録特性ランクR[Y]を説明する図である。
【図15】MCS処理部内の主要ブロック構成を示した図である。
【図16】制御方式の第1の実施例を示すフローチャートである。
【図17】制御方式の第2の実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタを模式的に示す図である。図1に示すように、プリンタ100は、プリンタの構造材をなすフレーム上に記録ヘッド101〜104を備える。記録ヘッド101〜104はそれぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出するための複数のノズルを記録用紙106の幅に対応した範囲に配列した、いわゆるフルラインタイプのものである。それぞれのインク色のノズル列のノズル配置の解像度は1200dpiである。
【0014】
記録媒体としての記録用紙106は、搬送ローラ105(および他の不図示のローラ)がモータ(不図示)の駆動力によって回転することにより、図中矢印方向に搬送される。そして、記録用紙106が搬送される間に、記録ヘッド101〜104それぞれの複数のノズルから記録データに応じてインクが吐出されることにより、それぞれの記録ヘッドのノズル列に対応した1ラスタ分の画像が順次記録される。このような、搬送される記録用紙に対する各記録ヘッドからのインク吐出動作を繰り返すことにより、例えば、一頁分の画像を記録することができる。なお、本発明を適用可能な記録装置は、以上説明したフルラインタイプの装置に限られない。例えば、記録ヘッドを記録用紙の搬送方向と交差する方向に走査して記録を行う、いわゆるシリアルタイプの記録装置にも本発明を適用できることは、以下の説明からも明らかである。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る記録システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、この記録システムは、図1に示したプリンタ100と、そのホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)300を有して構成されるものである。
【0016】
ホストPC300は、主に以下の要素を有して構成されるものである。CPU301は、HDD303やRAM302に保持されているプログラムに従った処理を実行する。RAM302は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、HDD303は、不揮発性のストレージであり、同じくプログラムやデータを保持する。データ転送I/F(インターフェース)304はプリンタ100との間におけるデータの送受信を制御する。このデータ送受信の接続方式としては、USB、IEEE1394、LAN等を用いることができる。キーボード・マウスI/F305は、キーボードやマウス等のHID(Human Interface Device)を制御するI/Fであり、ユーザは、このI/Fを介して入力をすることができる。ディスプレイI/F306は、ディスプレイ(不図示)における表示を制御する。
【0017】
一方、プリンタ100は、主に以下の要素を有して構成されるものである。CPU311は、ROM313やRAM312に保持されているプログラムに従い、図4以降で後述する各実施形態の処理を実行する。RAM312は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、ROM313は不揮発性のストレージであり、図4以降で後述する各実施形態の処理で作成されるテーブルデータやプログラムを保持することができる。
【0018】
データ転送I/F314はPC300との間におけるデータの送受信を制御する。ヘッドコントローラ315は、図1に示したそれぞれの記録ヘッド101〜104に対して記録データを供給するとともに、記録ヘッドの吐出動作を制御する。具体的には、ヘッドコントローラ315は、RAM312の所定のアドレスから制御パラメータと記録データを読み込む構成とすることができる。そして、CPU311が、制御パラメータと記録データをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、ヘッドコントローラ315により処理が起動され、記録ヘッドからのインク吐出が行われる。画像処理アクセラレータ316は、ハードウェアによって構成され、CPU311よりも高速に画像処理を実行するものである。具体的には、画像処理アクセラレータ316は、RAM312の所定のアドレスから画像処理に必要なパラメータとデータを読み込む構成とすることができる。そして、CPU311が上記パラメータとデータをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、画像処理アクセラレータ316が起動され、所定の画像処理が行われる。本実施形態では、図4以降の各実施形態で後述されるMCS処理部で用いるテーブルのパラメータの作成する処理をCPU311によるソフトウェアによって行う。一方、MCS処理部の処理を含む記録の際の画像処理を画像処理アクセラレータ316によるハードウェア処理によって行う。なお、画像処理アクセラレータ316は必ずしも必要な要素ではく、プリンタの仕様などに応じて、CPU311による処理のみで上記のテーブルパラメータの作成処理および画像処理を実行してもよいことはもちろんである。
【0019】
以上説明した記録システムにおいて、複数種類のインクを用いて画像を記録する場合の、複数のノズル間の吐出量のばらつきに起因して生じる色ずれを低減するためのいくつかの実施形態を以下に説明する。複数の異なる種類のインクのデータについて個別に補正を行う従来のヘッドシェーディング技術では、複数の異なる種類のインクを重ねてある色を表現しようとする場合に、その色が本来の色と異なってしまう、いわゆる色ずれが生じることがある。
【0020】
図3(a)〜(c)は、この色ずれの発生を説明する図である。図3(a)において、102はシアンインクを吐出する記録ヘッド、103はマゼンタインクを吐出する記録ヘッドをそれぞれ示している。同図では、説明および図示の簡略化のためそれぞれの記録ヘッドにおける複数のノズルのうち8つのノズルのみが示され、また、一例として、シアンおよびマゼンタインクによってブルーを記録する場合の色ずれを説明するため2つの記録ヘッドのみが示されている。
【0021】
ここで、シアンインクの記録ヘッド102の8つのノズル10211、10221は総て標準的な吐出量のものである。一方、マゼンタの記録ヘッド103の8つのノズルのうち、図中左側の4つのノズル10311は標準的な吐出量であるが、右側の4つのノズル10321はそれぞれ標準よりも多い吐出量のものである。なお、図3(a)に示すマゼンタインクの記録ヘッド103における右側の4つのノズルを左側より大きいサイズで示してあるが、これは吐出量の違いを分かり易くするためであり、実際のノズルサイズの関係を示しているわけでない。
【0022】
このような吐出量特性を有する記録ヘッドを用いる場合に、従来のヘッドシェーディングによって画像データの補正を行うと、最終的にノズルに対応した2値データ(ドットデータ)が得られる。このシアンおよびマゼンタのドットデータは、仮に、このデータに基づいて記録用紙106に重ねないで個別に記録した場合、図3(b)に示すものとして表される。なお、図3(b)に示す例は、ベタ画像、すなわちシアンおよびマゼンタのいずれも100%デューティーの画像データに対してヘッドシェーディングの処理を行い、その後2値化処理が行われて記録されたドットを示している。
【0023】
図3(b)は、シアンインクの記録ヘッド102のノズルに対応したシアンドット10611、10621、およびマゼンタインクの記録ヘッド103のノズルに対応したマゼンタドット10612、10622を示している。このうち、マゼンタインクの吐出量が多い4つのノズル10321に対応した領域のドット10622は、ヘッドシェーディングによって、上記対応した領域の画像データが補正された結果、ドットの数が減少したものとなる。図に示す例は、吐出量が多いマゼンタインクのノズル10321から吐出されるインクによって形成されるドットの面積が標準の吐出量のときのドット面積の2倍である例を示している。この場合、ヘッドシェーディングによる補正によって、ドットの数が1/2(4ドット→2ドット)とされる。なお、ドット面積が2倍となるときにドットの数を1/2とするのは説明を簡潔にするためである。実際は、吐出量のばらつきによってドット面積が増す(減少する)ことによる濃度の増加(減少)を抑制して標準の濃度となるようにドットデータの数を定めることはもちろんである。
【0024】
図3(c)は、以上のようにして得られたドットデータに基づき、それぞれの記録ヘッドから記録用紙106上にシアンおよびマゼンタのインクを吐出してブルーの画像を記録した例を示している。図3(c)において、記録用紙106における図中左側の領域には、シアンインクとマゼンタインクが重なって形成される、標準のサイズのブルーのドット10613が記録される。一方、図中右側のマゼンタの吐出量が多い4つのノズル10321に対応する領域には、以下のドットが記録される。すなわち、標準のサイズのシアンドット10623と、シアンインクとマゼンタインクが重なって形成されるブルーのエリア10624とその周囲のマゼンタのエリア10625からなるドットである。
【0025】
このように、図中右側の吐出量が多いマゼンタのノズル10321に対応する、ブルー(のベタ画像)を記録する領域は、次の3種類のドットないしエリアによって構成されることになる。
【0026】
2つの標準サイズのシアンエリア(ドット)10623
標準よりも大きなマゼンタドット中に形成された標準サイズのシアンドットによる、2つのブルーエリア10624
標準サイズのブルーエリア10624の廻りに存在する、2つのマゼンタエリア10625
ここで、上述したように従来のヘッドシェーディングでは、シアンおよびマゼンタの画像データがそれぞれ個別に補正されることによりそれぞれのドットの数が調整される。その結果、2つのシアンエリア(ドット)10623の面積=2つのブルーエリア10624の面積=2つのマゼンタエリア10625の面積となっている。この場合仮に、シアンエリア10623の光吸収特性とマゼンタエリア10625の光吸収特性によって全体として観察される色が、ブルーエリア10624の光吸収特性によって観察される色と同じであるとする。そうすれば、この領域全体は、ブルーエリア10624と同じ色となる。
【0027】
しかしながら、ブルーエリア10624のように、異なる種類の複数のインクが重ねて形成される場合、そのエリアの光吸収特性によって観察される色は、複数のインクそれぞれのエリアの光吸収特性を合せて全体として観察される色と異なることが多い。その結果、その領域全体は目標とする標準の色からの色ずれを生じ、結果として、記録用紙106において図中左側半分の領域のブルー画像と、右側半分の領域のブルー画像は異なる色に見えることになる。
【0028】
なお、例えば、大、中、小の3段階のドットによって記録を行う4値の記録装置など、ドットの大きさを可変とできる多値の記録装置でも、ノズル間の吐出量のばらつきによってそれぞれのサイズのドットの大きさにばらつきを生じることがある。この場合も、従来のヘッドシェーディングによる補正を施しても、上述と同様の理由によって色ずれを生じることがある。従って、2値の記録装置に限らず3値以上の多値記録装置にも本発明を適用することができる。
【0029】
以下で説明する本発明の各実施形態は、量子化前の、複数の色信号の組からなる画像データに対する補正処理によって、以上のような色ずれを低減するものである。
(第1実施形態)
図4(a)は、本発明の第一の実施形態にかかる、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成を示すブロック図である。すなわち、本実施形態は、図2に示したプリンタ100の制御、処理のための各要素によって画像処理部を構成する。なお、本発明の適用はこの形態に限られないことはもちろんである。例えば、図2に示したPC300において画像処理部が構成されてもよく、あるいは画像処理部の一部がPC300において構成され、その他の部分がプリンタ100において構成されてもよい。
【0030】
図4(a)に示すように、入力部401はホストPC300から送信された画像データを入力し、画像処理部402へ渡す。この画像処理部402は、入力色変換処理部403、MCS(Multi Color Shading)処理部404を有する。さらに、インク色変換処理部405、HS(Head Shading)処理部406、TRC(Tone Reproduction Curve)処理部407、量子化処理部408を有する。画像処理部402は、入力画像データを記録ヘッドが記録可能な信号に変換する処理過程において、色信号を処理する。
【0031】
画像処理部402において、先ず、入力色変換処理部403は、入力部401からの入力画像データを、プリンタの色再現域に対応した画像データに変換する。入力する画像データは、本実施形態では、モニタの表現色であるsRGB等の色空間座標中の色座標(R,G,B)を示すデータである。入力色変換処理部403は、この各8ビットの入力画像データR,G,Bを、3要素から構成される色信号である、プリンタの色再現域の画像データ(R’,G’,B’)に変換する。なお、入力色変換処理部403は、マトリクス演算処理や三次元ルックアップテーブルを用いた処理等の既知の手法によって変換する。本実施形態では、三次元ルックアップテーブルを用い、これに補間演算を併用して変換処理を行う。なお、画像処理部402において扱われる8ビットの画像データの解像度は600dpiであり、量子化処理部408の量子化によって得られる2値データの解像度は後述のように1200dpiである。
【0032】
MCS(Multi Color Shading)処理部404は、入力色変換処理部403によって変換された第1の色信号としての画像データに対して補正処理を行い、第2の色信号に変換する。この処理も後述するように、三次元ルックアップテーブルを用いて行う。この補正処理によって、出力部409における記録ヘッドのノズル間で吐出量のばらつきがあっても、それによる上述した色ずれを低減することができる。このMCS処理部404の具体的なテーブルの内容およびそれを用いた補正処理については後述する。
【0033】
インク色変換処理部405は、MCS処理部404によって処理されたR、G、B各8ビットの画像データをプリンタで用いるインクの色信号データによる画像データに変換する。本実施形態のプリンタ100はブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを用いることから、RGB信号の画像データは、K、C、M、Yの各8ビットの色信号からなる画像データに変換される。この色変換も、上述の入力色変換処理部と同様、三次元ルックアップテーブルに補間演算を併用して行う。なお、他の変換の手法として、上述と同様、マトリクス演算処理等の手法を用いることもできる。
【0034】
HS(Head Shading)処理部406は、インク色信号の画像データを入力して、インク色ごとにそれぞれ8ビットデータを、記録ヘッドを構成する各ノズルの吐出量に応じたインク色信号の画像データに変換する処理を行う。すなわち、本処理は、前述した従来のヘッドシェーディング処理と同様の処理である。本実施形態では、一次元ルックアップテーブルを用いて本HS処理を行う。なお、本発明を適用する上で、特にことわらない限りこのHS処理部を設けなくてもよい。すなわち、プリンタの仕様などによってはMCS処理部による補正処理の精度がメモリ容量との関連で十分な場合があり、そのような場合には、HS処理部による補正を合せて反映させることができるからである。
【0035】
TRC(Tone Reproduction Curve)処理部407は、HS処理された各8ビットのインク色信号からなる画像データに対して、インク色毎に、出力部409で記録されるドットの数を調整するための補正を行う。すなわち、記録媒体に記録されるドットの数と、その数のドットによって実現される明度との関係が線形にならないことがある。このため、TRC処理部407は、この関係を線形にすべく各8ビットの画像データを補正して、記録媒体に記録されるドットの数を調整するものである。
【0036】
量子化処理部408は、TRC処理部407で処理された各8ビット256値のインク色の画像データに対して、量子化処理を行い、1ビットの2値データを得る処理である。この際、本実施形態では、先ず、「0」〜「4」の3ビット5値のインク色ごとのインデックスデータに変換する。このインデックスデータ「0」〜「4」は、0〜4個のドットを1200dpiの解像度の2画素×2画素に配置するパターンに対応している。なお、本発明を適用する上で、量子化408の形態はこの例に限られないことはもちろんである。例えば、8ビットの画像データを、2値化し直接2値データ(ドットデータ)を得る形態でもよい。また、量子化処理方法として、本実施形態は誤差拡散法を用いるが、ディザ法など他の疑似中間調処理を用いてもよい。
【0037】
出力部409は、量子化によって得られたドットデータに基づいて、記録ヘッドを駆動し記録媒体に各色のインクを吐出して記録を行う。出力部409は、具体的には、図1に示した、記録ヘッド101〜104を備えた記録機構によって構成される。
【0038】
図15はMCS処理部内の主要ブロック構成を示した図である。
図中、破線で示した部がMCS処理部404に相当する。図15の実施例はパラメータ生成部を2種保持していることを特徴とする。1501はMCS処理パラメータ生成部Aを、1502はMCS処理パラメータ生成部Bを示している。1503はスイッチを示し、制御部から与えられた制御信号により、何れか一方のパラメータ生成部を選択する。すなわち、与えられた条件に応じて、第1および第2のパラメータのいずれかを選択する。1504はMCS処理実施部を示し、選択されたパラメータ生成方式に基づいたパラメータを用いてMCS処理を実施する。
【0039】
パラメータ生成部Aは、記録特性ランクの代表的な組み合わせにより予めプロファイルを作成して保持し、該代表組み合わせ間の中間領域に関しては該プロファイルに基づいて補間演算をすることによりMCSパラメータを生成する方式とする。パラメータ生成部Aは、第2のパラメータを生成する。これは、画像を記録する記録ヘッドの異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出する複数のノズルの組み合わせによる記録特性に基づいて形成された色ずれを補正するためのパラメータである。
【0040】
一方、パラメータ生成部Bは、予め代表的な組み合わせにおけるプロファイルを保持することなしに、色ズレ量を測定し補正量を生成する方式とする。パラメータ生成部Bは、第1のパラメータを生成する。これは、画像を記録する記録ヘッドの複数のノズルの各々の記録特性とは独立に予め規定された色ずれを補正するための複数のパラメータから、選択したパラメータである。選択方法は、後述するように、画像を記録する記録ヘッドの異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出する各々のノズルの単独の記録特性に応じて選択する。パラメータ生成部Aとパラメータ生成部Bでそれぞれ生成されるパラメータは異なるプロセスにより生成される。
【0041】
パラメータ生成部Aは、パラメータ生成部Bを基本とした改良版に相当する為、まず先に、パラメータ生成部Bの詳細を説明した後にパラメータ生成部Aを説明する。
【0042】
<パラメータ生成部B(第2のパラメータ生成部)>
図5(a)、(b)は、図4(a)に示したMCS処理部404で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理部404の処理をそれぞれ示すフローチャートである。
【0043】
図5(a)に示す処理S510は、MCS処理部404で用いる三次元ルックテーブルのパラメータを生成する処理であり、ステップS502〜ステップS506の各工程を有する。本実施形態では、処理S510は、プリンタの製造時やプリンタを所定期間使用したときあるいは所定量の記録を行ったときに実行される処理である。すなわち、処理S510はいわゆるキャリブレーションとしても行うことができ、これにより、ルックアップテーブルの内容であるテーブルパラメータが更新される。一方、図5(b)に示す処理S520は、プリンタで記録を行う際にその記録データ生成のために、図4(a)に示した画像処理部402によって行われる画像処理の一環としてMCS処理部404によって実行される処理である。この処理は、ステップS507およびS508の各工程を有する。なお、本発明を適用する上で、テーブルパラメータの生成処理を実行するタイミングは上記の例に限られないことは明らかである。例えば、記録を行うため処理S520を実行する際に、その前に実行するようにしてもよい。
【0044】
最初に、図5(a)に示す、テーブルパラメータを生成するための処理S510について説明する。
【0045】
本実施形態では、HS処理部406のテーブルパラメータの作成を行った後に、MCS処理部のテーブルパラメータを作成する。このため、本処理が起動されるステップS501の時点で既にHS処理部のテーブルパラメータは既に生成(更新)されている。このHS処理部のテーブルパラメータの生成において、マゼンタインクの記録ヘッド103に図3(a)に示すノズル間の吐出量ばらつきがあるとする。記録ヘッド103に対応するテーブルパラメータは、図3(b)に示すように、右半分の4つのノズル10321の対応領域のドットデータ数を左半分の4つのノズル10311の対応領域のドットデータ数の半分にする補正をするものとなる。また、シアンインクの記録ヘッド102が図3(a)に示す各ノズルの吐出量特性のとき、すなわち、総てのノズルが標準の吐出量であるとき、HS処理部のテーブルパラメータは、画像データをそのままのデータとして変換するようなパラメータとなる。以上のように、本実施形態では、MCS処理部のテーブルパラメータを生成ないし更新するときは、その前にHS処理部のテーブルパラメータを生成する。これにより、その生成のときに生じているノズル間ばらつきによる色ずれを、MCS処理部とHS処理部のトータルの処理によって適切に低減することができる。
【0046】
先ず、ステップS502で、記録媒体に測定用画像(パッチ)を記録する。このため、MCS処理部に入力するR、G、Bの組で表される画像データのうち、上述した色ずれの傾向が大きくなる色を表すR、G、Bの組それぞれについて、図1に示した各記録ヘッドの総てのノズルからインクを吐出する。具体的には、R、G、Bそれぞれの0〜255を、例えば、17等分した値の組合せで定まる格子点のうち、色ずれの傾向が大きく変化する格子点を選択し、これらの格子点に対応するR、G、Bの組について測定用画像を記録する。この色ずれの傾向が大きくなる色の格子点は、例えば、図3にて説明したブルー画像に対応した、R=0、G=0、B=255の組のように色ずれが顕著になる色を予め知り、上記17等分した値の組合せで定まる格子点の中から選択することができる。なお、測定用画像を記録する色の格子点の選択は、上例に限られないことはもちろんである。例えば、色ずれが所定以上大きくなるR、G、Bの組を定め、これらの組総てについて、測定用画像記録するようにしてもよい。要は、演算負荷やメモリ容量に応じて、測定用画像を記録するための色信号の組を定めることができる。
【0047】
本実施形態では、以上のように定められた測定用画像のデータそれぞれは、それを構成する複数の画素の解像度が600dpiであり、それら複数の画素のデータは、その測定用画像データのR、G、Bの値の組が同じであることにより一様な色となるデータである。この測定用画像の画像データは、図4(a)に示す入力色変換処理部403の処理を施された8ビットの画像データ(以下、デバイス色画像データD[X]という)として、インク色変換処理部405に入力される。このとき、デバイス色画像データD[X]は、MCS処理部404の処理を経ずに、図4(a)において破線410で示されるバイパス処理経路を介してインク色変換処理部405に入力される。具体的には、MCS処理部404は、デバイス色画像データD[X]に対して、テーブルパラメータが示す補正量が0のテーブルを用いて補正処理を行う。その後、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408を経て出力部409で記録用紙106に記録される。この過程で、測定用画像の画像データは、インク色変換処理部405によってインクの色信号による画像データに変換されるが、測定用画像データの1つとして、図3にて上述したブルーを構成するシアンおよびマゼンタが100%デューティーのデータが得られる。すなわち、測定用画像の画像データとして、(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)のデータが得られる。そして、その後のHS処理部406およびそれ以降の処理によって、図3(b)に示すドットデータによって構成された測定用画像データが得られる。以下の説明では、説明を簡略化するため、このブルーの測定用画像の画像データを示す格子点に対応したテーブルパラメータのみについてその作成処理を説明する。
【0048】
デバイス色画像データD[X]において、Xは、測定用画像データにおける、600dpiの解像度の画素を特定する値である。換言すれば、Xは、図1に示す各インク色の記録ヘッドのノズル配列において連続する4つのノズルに対応した画素領域(以下、エリアという)を300dpiの一単位として特定する値である。従って、記録されるドットの解像度がノズルの配列解像度に対応して1200dpiであるから、600dpiの解像度の画像データD[X]に係る画素の2つ分が、上記エリアの1つに対応してXで特定される。このデバイス色画像データD[X]は、上述したように、インク色変換処理部405以降の処理が施されて、出力部409でそのデータの測定用画像が記録される。
【0049】
図6(a)および(b)は、上記ステップS502における測定用画像の記録を説明する図である。図6(a)および(b)において、図3(a)〜(c)に示した要素と同様の要素には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0050】
図6(a)は、図3(a)に示した例と同様、マゼンタの記録ヘッド103のノズルのうち図中右側の4つのノズルが標準より多い吐出量となっている例を示している。この場合、図6(b)に示すブルーの測定用画像が記録される。すなわち、同図中右側の領域に色ずれを生じ、そのブルーが同左側の領域のブルーとは異なる測定用画像が記録される。
【0051】
再び図5(a)を参照すると、次のステップS503では、上述のように記録用紙106に記録された測定用画像の色を測定して色情報B[X]を得る。本実施形態では、この色測定は、図1に示したプリンタはスキャナ107を備え、このスキャナによって測定用画像を測定する。従って、このステップS503の処理は、スキャナ測定データを受ける処理を含むものである。なお、プリンタとは別体のスキャナを用いてユーザの操作によって測定を行ってもよい。また、例えば、スキャナとプリンタを信号接続しスキャナから測定結果を自動的に入力するようにしてもよい。なお、色情報B[X]は、本実施形態ではスキャナで読み込んだRGB値の組で表されるが、例えば、測色器で測定したL***等、いずれのデータフォーマットであってもよい。
【0052】
また、本実施形態では、上記測定の解像度は600dpiである。一方、記録されるドットの解像度はノズルの解像度に対応した1200dpiである。従って、上記の色測定は、図6(b)に示す4つのノズルに対応した領域を2画素として測定する。そして、この測定の2画素に対応した領域(上述のエリア)の単位で色情報B[X]が得られる。すなわち、色情報B[X]においてXはエリアを特定する値であり、色情報B[X]は、上記測定に係る2画素の測定結果の平均として得られる。図6(b)に示す例では、同図中左側の4つのノズル対応したエリアと右側の4つのノズルに対応したエリアがそれぞれ別のエリアとして色情報B[X]が取得される。
【0053】
このように、デバイス色画像データD[X]が(R、G、B)=(0、0、255)である格子点のブルーの測定用画像は、図1に示したシアンおよびマゼンタの記録ヘッド102および103における総てのノズルからそれぞれインクが吐出されて記録される。そして、4つのノズルに対応したエリア単位で色情報B[X]が取得される。図6(b)は、その一部のエリアを示しており、以下では、図中左側のエリアを第1エリア(X=1)、右側のエリアを第2エリア(X=2)とする。また、第1エリアの色情報をB[1]=(R1、G1、B1)、第2エリアの色情報をB[2]=(R2、G2、B2)とする。なお、図6(b)の右側のエリアに示す例は、マゼンタの4つのノズルが総て標準より大きな吐出量である場合を示している。なお、例えば、4つのうち3つが標準より大きな吐出量で他の1つは標準の吐出量である場合も当然あり得るものであり、その場合には、取得される第2エリアの色情報をB[2]の値も違ったものとなることはもちろんである。
【0054】
次に、図5(a)のステップS504で、目標色A=(Rt、Gt、Bt)とステップS503で取得した色情報B[X]から、各エリア[X]の色ずれ量T[X]を算出する。ここで、目標色Aは、(R、G、B)=(0、0、255)で表される同じブルーの画像データに基づき、出力部409で各色インクの標準吐出量である記録ヘッドを用いて記録された画像を、スキャナで測定することによって得られる色データである。本実施形態では、この測定した色データの解像度を上述のように300dpiとしている。このため、上述のステップS504、および後述のステップS505、ステップS506のMCS処理部のテーブルパラメータの生成処理でも300dpiの画素解像度のデータを処理する。
【0055】
すなわち、色ずれ量Tは次のように表される。
【0056】
色ずれ量T[1]=B[1]−A=(R1−Rt、G1−Gt、B1−Bt)
色ずれ量T[2]=B[2]−A=(R2−Rt、G2−Gt、B2−Bt)
ここで、色ずれ量T[1]は、図6(b)に示す例において、同図中左側のエリアにおける、標準吐出量のシアンインクと標準吐出量のマゼンタインクとが重なることによるブルー色と、目標色データAが示すブルー色との差である。測定誤差等を除けば、理想的には色ずれ量T[1]は0となる。つまり、R1=Rt、G1=Gt、B1=Btの関係を満たす。
【0057】
一方、色ずれ量T[2]は、図6(b)に示す例において、同図中右側のエリアにおける、標準吐出量のシアンインク、標準より大きな吐出量のマゼンタインクの組み合わせによって生ずるブルー色と、目標色データAが示すブルー色との差である。例えば、シアンエリア10623とマゼンタエリア10625を合せて観察されるブルーは目標のブルー色と比べてシアン色が強いとすると、色ずれ量T[2]は、シアン色が大きくなる色ずれ量となる。例えば、R2<Rt、G2=Gt、B2=Btの関係で表される。
【0058】
再び図(a)5を参照すると、次のステップS505では、各エリア[X]の色ずれ量T[X]から、補正値T-1[X]を算出する。本実施形態では簡単に、逆変換式として、
-1[X]=−T[X]
とする。従って、それぞれのエリアの補正値は、
補正値T-1[1]=−T[1]=A−B[1]=(Rt−R1、Gt−G1、Bt−B1)
補正値T-1[2]=−T[2]=A−B[2]=(Rt−R2、Gt−G2、Bt−B2)
となる。
ここで、補正値T-1[1]は、図6(b)の左側のエリアに対応し、理想的には0となるものである。一方、補正値T-1[2]は、図6(b)の右側のエリアに対応し、上記の例ではシアン色を減少させる補正値となる。すなわち、R2<Rtの場合、Rt−R2は正の値となり、赤みを強くしシアン色を減少させる。
【0059】
次に、図5(a)のステップS506で、各エリア[X]の補正値T-1[X]から、等価補正値Z-1[X]を算出する。すなわち、補正値T-1[X]は、測定色空間中のブルー色の補正値であるので、この補正値を元に、デバイス色空間中で同じだけデバイス色空間のブルー色を補正する等価補正値Z-1[X]を算出する。ここで、等価補正値Z-1[1]は、図6(b)の左側のエリアに対応し、理想的には0となるものである。一方、等価補正値Z-1[2]は、図6(b)の右側のエリアに対応し、シアン色を減少させる補正値となる。
【0060】
仮に、測定色空間とデバイス色空間が完全に一致している場合には、
-1[1]=T-1[1]=−T[1]=A−B[1]=(Rt−R1、Gt−G1、Bt−B1)
-1[2]=T-1[2]=−T[2]=A−B[2]=(Rt−R2、Gt−G2、Bt−B2)
となる。しかし、一般的には一致していないこと多いので、その場合は色空間変換を行う。すなわち、両色空間の間で線形変換可能な場合には、次のようなマトリクス変換等の既知の手法を用いて求めることができる。
【0061】
【数1】

【0062】
【数2】

【0063】
ここで、a1〜a9は、測定色空間をデバイス色空間に変換するための変換係数である。両色空間の間で線形変換が不可能な場合には、三次元ルックアップテーブル方式等の既知の手法を用いて、
-1[1]=F(Rt−R1、Gt−G1、Bt−B1)
-1[2]=F(Rt−R2、Gt−G2、Bt−B2)
と求めることもできる。ここで、Fは測定色空間をデバイス色空間に変換するための関数であり、ルックアップテーブルの変換関係がこの関数Fに従ったものである。
【0064】
また、補正値T-1[X]と等価補正値Z-1[X]の関係が色によって異なる場合には、同様に、三次元ルックアップテーブル方式等の既知の手法を用いて、
-1[1]=F(Rt、Gt、Bt)−F(R1、G1、B1)
-1[2]=F(Rt、Gt、Bt)−F(R2、G2、B2)
と求めることもできる。ここでも、Fは測定色空間をデバイス色空間に変換するための関数である。
【0065】
以上のようにして、色ずれの傾向が大きく変化する色として選択された格子点について、ノズルに対応したエリア[X]ごとに、格子点データであるテーブルパラメータを求めることができる。そして、上記選択された格子点以外の他の格子点のテーブルパラメータは、上記選択された格子点の間の補間によって求めることができる。この補間によって求める方法は公知の方法を用いることができ、その説明は省略する。
【0066】
以上のように求められた、各格子点のテーブルパラメータである等価補正値Z-1[X]は、エリア[X]ごとに、その格子点に対応させて、ホストPCのHDD303(図2)に格納される。
【0067】
次に、図5(b)に示すMCS処理部404が実行する処理S520について説明する。すなわち、図4(a)に示した各処理部による一連の画像処理において、MCS処理部404は上述のようにして求めた補正値を格子点データとして有する、エリアごとの三次元ルックアップテーブルを用いて画像データを補正する。
【0068】
最初にステップS507において、デバイス色画像データD[X]に対して、上述のようにして作成した、MCS処理部のテーブルパラメータである等価補正値Z-1[X]を適用して補正を行う。
【0069】
ここでは、先ず、画像処理の対象である注目画素が、上述したエリア[X]のうちどのエリアに含まれているかを判断する。ここで、画像処理における画素の解像度は600dpiであり、一方、エリア[X]は300dpiの解像度で特定されるものである。従って、1つのエリア[X]に2つの画素が対応しもしくは属することになる。
【0070】
注目画素が含まれるエリア[X]の値X=nを得ると、注目画素の画像データが示すR、G、Bの組、および上記エリア[n]によってHDD303に保持されたテーブルを参照し、上記R、G、Bの組およびエリアに対応した等価補正値Z-1[n]を取得する。例えば、注目画素の画像データが示すR、G、Bの組が(0、0、255)でブルーの画像を示す場合、上述したようにしてブルーの等価補正値Z-1[n]が得られる。そして、注目画素の画像データに対して等価補正値Z-1[n]を適用して補正を行う。
【0071】
具体的には、MCS処理部404は、以下の式に従い、注目画素が属するエリア[X]に対応するデバイス色画像データD[X]に対して等価補正値Z-1[X]を適用し、補正されたデバイス色画像データD’[X]を生成する。
【0072】
デバイス色画像データD’[1]=D[1]+Z-1[1]
デバイス色画像データD’[2]=D[2]+Z-1[2]
ここで、Z-1[1]は、図6(b)に示すブルーの例では、同図の左側に示すエリア[1]に対応する補正値であり、前述したように理想的には0の値を持つ。従って、補正されたデバイス色画像データD’[1]は、目標色Aと同じブルーを示すものである。一方、Z-1[2]は、図6(b)に示すブルーの例では、同図の右側に示すエリア[2]に対応する補正値であり、前述したように、シアン色を減少させる補正値である。従って、補正されたデバイス色画像データD’[2]は、補正によって、目標色Aに対してシアン色が減少したブルーを示すものである。
【0073】
次に、ステップS508で、上記のように補正されたデバイス色画像データは、インク色変換処理部405、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408を経て出力部409で記録用紙106に記録される。
【0074】
図7(a)および(b)は、図5(b)のステップS508で記録された画像を説明する図である。図7(a)は、図6(a)と同様、シアンおよびマゼンタの記録ヘッド102、103におけるノズルの吐出量特性示している。これに対して、MCS処理による補正が行われると、図7(b)の右側のエリアのマゼンタドット10626のように、シアンドットが重ならないドットが存在する。すなわち、マゼンタドット10626は、図6(b)に示すHS処理のみを施した記録結果ではシアンドットも記録されていた個所であるが、画像データD’[2]が目標色Aに対してシアン色が減少した結果、シアンのドット数が減ったことを示している。
【0075】
ここで、図7(b)に示す各記録エリアでは、記録時に吐出量のばらつきなどに起因する色ずれ量T[X]が発生する。このため、
左側のエリアの色情報≒D’[1]に対応する紙面上の色+T[1]≒A
右側のエリアの色情報≒D’[2]に対応する紙面上の色+T[2]≒A
となる。ここで、D’[1]は理想的には目標色Aと同じブルー色であり、T[1]は理想的には0である。また、D’[2]は目標色Aに対してT[2]相当のシアン色が減少したブルー色であり、ここで、T[2]はシアン色を増大させるずれ量である。このようにして、左側のエリアと右側のエリアのブルー色はほぼ同じ色となり、色ずれに起因した色ムラを低減することができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態は、色ずれ傾向が大きく変化する色(R、G、Bの組)について記録媒体に測定用画像(パッチ)を記録し、その測定結果に基づいてテーブルパラメータを求めるものである。これは、色ずれの原因である色ずれ量が、その発生原理によって、(1)記録領域に記録する色、(2)記録領域を記録する各インク色の記録特性の組み合わせの両方に依存するからである。ここで、(2)各インク色の記録特性としては、これまで説明してきた吐出量の他、ドットの形状やインクの浸透率、記録媒体の種類等、ドット径に影響を与える要素が考えられる。また、色ずれ量は、その色を記録するのに用いられるインク色の記録特性の組み合わせに依存し、用いられないインク色の記録特性には依存しないことは明らかである。従って、注目画素の色に応じて、関連するインク色の種類と数は異なることになり、色によっては1つのインク色しか関連せず、色ずれ量が発生しない場合も有り得る。
【0077】
ここで、測定色空間とデバイス色空間が完全に一致していた場合を例に説明する。例えば、シアン単色(R=0、G=255、B=255)については、既にHS処理によって濃度が一致しており、色ずれが発生していないので、MCS処理部404で補正を行わないことが望ましい。よって、等価補正値Z-1[1]=Z-1[2]=0=(0、0、0)とすることが望ましい。また、マゼンタ単色(R=255、G=0、B=255)についても、同様に、既にHS処理によって濃度が一致しており、色ズレが発生していないので、MCS処理部404で補正を行わないことが望ましい。よって、等価補正値Z-1[1]=Z-1[2]=0=(0、0、0)である。これに対し、ブルー色(R=0、G=、B=255)については、図3にて前述したとおり、HS処理を行っても色ずれが発生する可能性が高い。このため、図6(b)に示す例では、
等価補正値Z-1[1]=0=(0、0、0)
等価補正値Z-1[2]=T-1[2]=(Rt−R2、Gt−G2、Bt−B2)
とする。つまり、色信号値BがB=255であっても、他のR、Gの色の組み合わせによっては、色ずれ量が異なるため、等価補正値の適切な値は異なることになる。
【0078】
換言すれば、上述のテーブル作成において、色ずれの傾向が大きく変化する色の格子点の選択を、テーブルにおける各格子点が格子点データとして上述の等価補正値の適切な値を持つように行う。そして、MCS処理部404は、上記のように適切に選択された格子点の色の測定用画像の測定結果に基づいて求められた三次元ルックアップテーブルを用いる。
【0079】
MCS処理部のテーブルパラメータを生成する処理S510は他の例として以下のようにすることもできる。
【0080】
先ず、デバイス色R、G、Bの値をそれぞれ独立に変化させた複数のパッチ(測定用画像)を図1に示す記録ヘッドで記録する。図8は、各色0、128、55の3階調とし、それらの組合せのデータに基づいて記録する、合計3×3×3=27個の格子点の色のデバイス色空間における分布を示す。図8はRGB色空間を表しており、801はレッド軸、802はグリーン軸、803はブルー軸を示している。黒丸で示した格子点がパッチ記録を行う色を表す。また、804〜806で示された格子点が以上の実施形態で例として説明されてきた色であり、804がシアン色、805がマゼンタ色、806がブルー色をそれぞれ示す。これらの図8に示す格子点によるテーブル構造は、図5(a)および(b)などで上述したテーブル構造と同様であるが、上記27個の格子点以外における補正データの作成の仕方が、以下のように異なるものである。
【0081】
まず、上記27個の格子点それぞれについて、デバイス色(Rn、Gn、Bn)に基づいてパッチを記録し、各パッチを測色することで、パッチごとの測定値(Rp、Gp、Bp)を求めておく。次に、上記27個の格子点以外の点について、デバイス色(Ri、Gi、Bi)に基づいてパッチを記録し、このパッチを測定して測定値(Rt、Gt,Bt)を得る。次に、測定値(Rt、Gt、Bt)に最も近いパッチの色(Rp、Gp、Bp)を選択することで、選択したパッチ色に対応するデバイス色(Rn、Gn、Bn)が求められる。なお、最も近いパッチの選び方は、
【0082】
【数3】

【0083】
が最小となる(Rp、Gp、Bp)を記録したパッチを選択する。そして、デバイス色(Ri、Gi、Bi)に対しては、デバイス色(Rn、Gn、Bn)における補正テーブルを基に補正テーブルを作成し、これをMCS処理部で用いるテーブルとする。なお、実際には図8に示すものより多い階調で記録することにより27個の格子点以外での補正の精度を向上させたり、推定時に複数のパッチを補間したりする等、既知の手法を用いて精度を向上させることもできる。既知の補間方法としては、四面体補間や立方体補間がある。四面体補間の場合には、測定値(Rt、Gt、Bt)を含む四面体を形成する周囲の4格子点から補間して算出すればよい。立方体補間の場合には、測定値(Rt、Gt、Bt)を含む立方体を形成する周囲の8格子点から補間して算出すればよい。
【0084】
また、MCS処理部404としては、各インク色の吐出量の組み合わせに依存する色ズレ量補正方法として、各記録領域に応じて補正内容が切り替えられる仕組みである必要が有る。つまり例えば、記録領域数分だけ三次元ルックアップテーブルを保持し、記録領域に応じて切り替えられる仕組みであれば良い。図5〜図7で説明した方法を適用すれば、紙面上での2色以上のインクを用いた画像(二次色画像・三次色画像)等の、製造ばらつきによって生じた色ムラを低減する事が出来る。以上がパラメータ生成部Bの説明である。
【0085】
しかし、図5〜図7で説明した方法では、以下のような課題がある。先ず、MCS処理パラメータの数が多いため、作成するための計算時間がかかる。次に、色測定用パッチを印刷すると、二次色以上のインク色の組み合わせのパッチを記録するため、パッチ数が増えて印刷用紙コストがかかる。
【0086】
<パラメータ生成部A>
続いてパラメータ生成部Aを説明する。
【0087】
本実施形態では、以上説明した色ずれ補正の構成を基本とし、さらに、ノズルの吐出量が変動する範囲を複数のランクに分け、このランクとインク色との組合せに対応させてMCS処理部404のテーブルパラメータを求める。
【0088】
具体的には、K、C、M、Yインクの記録ヘッドそれぞれについて、記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに対応したMCS処理部のテーブルパラメータを、図5(a)の処理510について上述したように作成する。そして、作成したテールパラメータをホストPC300のHDD303に格納する(以下、第1処理という)。
【0089】
次に、実際に記録装置で用いる各インク色の記録ヘッドについて、MCS処理部のテーブルパラメータを作成する際に、それぞれの記録ヘッドによってそのインク色(1次色)の測定用画像を記録する。そして、それらの測定用画像を測定してそれぞれの記録ヘッドの記録特性ランクR[Y]を求める。さらに、求めたそれぞれの記録ヘッドの記録特性ランクR[Y]の組合せと同じ組合せに対応するテーブルパラメータを、上記ホストPC300のHDD303から選択して読み出す(以下、第2処理という)。
【0090】
これにより、個々の記録装置でMCS処理部のテーブルパラメータを作成する際の処理時間を短くすることができる。また、測定用画像を記録する際に、一次色のみの測定用画像を記録すれば済むため、画像数を少なくでき、結果として記録用紙のコストを低下することができる。
【0091】
先ず、第1処理、すなわち、記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに対応したMCS処理部のテーブルパラメータを作成する処理の詳細を説明する。
【0092】
図14(a)は、本実施形態に係る記録特性ランクR[Y]を説明する図である。同図は、Y=1〜7の場合の7つの記録特性ランク1401〜1407の例を示している。この記録特性ランクは、吐出量情報V[Y]に基づくものであり、具体的には、記録特性ランクは、使用可能な各インク色記録ヘッドにおけるノズルの吐出量の範囲を、上例では7つに区分したものである。
【0093】
図14(a)において、横軸は記録特性ランクR[Y]を表し、縦軸はスキャナで取得したRGB値を表している。記録特性ランク1401〜1407において、ランク1404は吐出量が標準である場合に対応したランク、ランク1401〜1403は吐出量が標準より小さいそれぞれのランクであり、ランク1401はランク1403に比べて吐出量が小さい場合に対応している。一方、ランク1405〜1407は吐出量が標準より大きい場合に対応したランクであり、ここで、ランク1407はランク1405に比べて吐出量が大きい場合に対応している。
【0094】
以上の記録特性ランク[Y]に対応したテーブルパラメータの作成では、先ず、K、C、M、Yのインク色それぞれについて、7つのランク[Y]に対応した吐出量のインクを吐出するそれぞれの記録ヘッドを用意する。次に、4つのインク色と7つのランクの組合せからなる7^4通りの組合せの記録ヘッドを用いて、図5(a)のステップS502に示したように、測定用画像を記録する。そして、図5(a)のステップS503〜S506にて説明したように、7^4通りの測定用画像のそれぞれを測定し、その測定結果に基づいて、7^4通りの組合せに対応したMCS処理部のテーブルパラメータを求める。
【0095】
このように、各インク色それぞれの記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに対応したテーブルパラメータを作成し、ホストPC300のHDD303に格納する。このように、各インク色の記録特性ランクR[Y]の数を7とする場合は、7^4個(=2401個)のテーブルパラメータを作成し、メモリに格納すればよいことになる。
【0096】
図14(b)は、記録特性ランクR[Y]の別の例を説明する図であり、吐出量の範囲を2つに分割した例を示している。図において、ランク14013は吐出量が標準より小さい場合のランクであり、ランク14014は吐出量が標準より大きい場合のランクである。このように、各インク色の記録特性ランクR[Y]の区分を2とすると、2^4個(=16個)のテーブルパラメータを作成し、メモリに格納すればよいことになる。
【0097】
図14(a)に示すように記録特性ランクR[Y]の区分数を多くすると、インク色と記録特性ランクR[Y]の組み合わせの数が多くなり、それだけメモリに格納するテーブルパラメータの数が多くなる。逆に、図14(b)に示すように、記録特性ランクR[Y]の区分数を少なくすると、インク色と記録特性ランクR[Y]の組み合わせが少なくなり、従って、格納すべきテーブルパラメータの数は少なくなる。しかし、この場合は、1つの記録特性ランクR[Y]に対応する吐出量の範囲における最大吐出量と最小吐出量の差が大きくなるため、テーブルパラメータを用いた色ずれ補正の精度がそれだけ低下する。このように、記録特性ランクR[Y]の区分数は、MCS処理部のテーブルパラメータによる色ずれ補正の精度と作成するパラメータ数とがトレードオフの関係にある。
【0098】
なお、この精度に関して、1つの記録特性ランクR[Y]がカバーする吐出量の範囲は、その範囲内の吐出量の差では色ずれが視認できない大きさがよい。この記録特性ランクR[Y]内における、視認できない色ずれとして、色差値が0.8以下であることが好ましい。
【0099】
次に、第2処理、すなわち、実際に用いる記録ヘッドに適切なテーブルパラメータを、ホストPC300のHDD303から選択するための処理の詳細について説明する。
【0100】
図12は、この第2処理を説明するフローチャートである。図12において、ステップS1201で処理が開始される。最初に、ステップS1202において、図4(a)の入力色変換処理部403の処理によってデバイス色データC[X]が得られ、このデータに基づき測定用画像を記録用紙に記録する。すなわち、デバイス色データC[X]は、図5(a)に示す処理S510と同様、図4(a)において、MCS処理部404の処理が実施されずに、破線410のバイパス処理経路で、インク色変換処理部405へ経由する。さらに、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408を経て、出力部409によって記録用紙106に測定用画像が記録される。
【0101】
図5(a)に示す処理S510と異なる点は、測定用画像を記録するデバイス色データC[X]は、データインク色変換処理部405によって変換された画像データ(K、C、M、Y)が、A1〜A4となるデータのみである。A1〜A4は、(255、0、0、0)、(0、255、0、0)、(0、0、255、0)、(0、0、0、255)である。すなわち、測定用画像として、1次色の画像が記録される。
【0102】
図13(a)および(b)は、ステップS1202の記録例を説明する図である。図13(a)に示すように、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクの記録ヘッド101〜104は、いずれも8つのノズルのうち、図中右側の4つのノズルが標準よりも吐出量が多いことを示している。4つのノズルは、(10021、10721、10821、10921)である。この例では、図13(b)に示すように、いずれのインク色も図中右側の4つのドットが標準より大きなものとなる。
【0103】
図12を再び参照すると、ステップS1203で、以上のように記録した測定用画像をスキャナで測定して各ノズルに対応したエリアごとの吐出量情報V[X]を得る。この測定も、図5(a)の処理S510と同様、測定の解像度は600dpiである。吐出量情報V[X]におけるXは、図5(a)の処理S510と同様、300dpiの解像度のエリアを特定する値である。すなわち、Xで特定されるエリアごとに吐出量情報が取得され、それに基づき記録特性ランクR[X]が取得される。なお、V[X]はスキャナで読み込んだRGB値や、測色器で測定したL***などから算出することができる。または、ノズルの径を測ることにより吐出量情報V[X]を取得してもよい。図13(b)の左側の4つのノズルに対応したエリアをX=1、右側をX=2とすると、K、C、M、YのいずれもV[2]の方がV[3]より大きい値となる。
【0104】
図14(a)において、1408はスキャナで読み込んだRGB値を吐出量情報へ変換するための変換パラメータを示す。この変換パラメータは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクの種類に応じてそれぞれ異なるものとすることができる。ここで、吐出量ばらつきによってノズルAがノズルBより吐出量が小さい場合、一般にノズルBによって記録されるドットよりノズルAによるドットの方が小さくなるから、ノズルAによる記録濃度の方が低くなる。このため、吐出ノズルAと吐出ノズルBで記録した領域をスキャナで測定したRGB値や、測色器で測定したL***は以下のような関係となる。
【0105】
A*≧LB*
AAA値≧RBBB
ここで、LA*:ノズルAで記録した領域のL*値、LB*:ノズルBで記録した領域のL*値である。また、RAAA値:ノズルAで記録した領域のRGB値、RBBB値:ノズルBで記録した領域のRGB値である。さらに、RGB値とは、例えばインク色に対する補色とすることができ、インク色に対して感度の高い色を示すものである。本実施形態の場合、ブラックインクの画像をスキャナで測定して得られるRGB値は、R、G、Bいずれも同じような感度であることから、R、G、Bのうち最も大きな値を採用する。シアンインクの画像は、Rの感度が良いためRの値をRGB値とする。また、マゼンタインクの画像はGを、イエローインクの画像はBをそれぞれRGB値とする。
【0106】
図14(a)において、1409は相対的に吐出量が小さいノズルで記録した領域をスキャナで読み込んだRAAA値を示し、14010は吐出量が大きい記録ヘッドで記録した領域1002をスキャナで読み込んだRBBB値を示している。これらのスキャナで読み込んだRGB値と、変換パラメータ1408との交点を探索する。交点14011は、RAAA値1409と変換パラメータ1408の交点を示し、14012はRBBB値14010と変換パラメータ1408の交点を示している。交点14011は、吐出量が標準のランク1404にあり、交点14012は吐出量が標準より大きいランク1406にある。これより、相対的に異なる2つの吐出量の記録ヘッドにおいて、相対的に小さい記録ヘッドは吐出量が標準の場合のランクであり、相対的に大きい記録ヘッドは吐出量が標準より大きい所定のランクであることが算出される。以上のようにして、K、C、M、Yのインク色それぞれについて、エリアごとに、吐出量情報V[x]から記録特性ランクR[Y]を算出する。
【0107】
次に、図12のステップS1204では、ホストPCのHDD303に格納されているK、C、M、Yのインク色それぞれの、記録特性ランクの総ての組み合わせに対応したテーブルパラメータから、エリアごとに、上記ステップS1203で求めたK、C、M、Yそれぞれの記録ヘッド(におけるノズル)の記録特性ランクR[Y]の組合せと同じ記録特性ランクの組み合わせに対応したテーブルパラメータを選択する。本実施形態では、この選択されたMCS処理部のテーブルパラメータは、プリンタ100のRAM312に格納する。もちろん、これらのパラメータをホストPC300に転送し、例えば、HDD303に保持する形態であってもよない。あるいは、上記ステップS1204の処理を、記録を行う際に図4(a)に示す画像処理のときにその処理の一環として行うようにしてもよい。
【0108】
以上説明したように、本実施形態では、記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに応じたMCS処理部のテーブルパラメータをメモリに予め保持しておき、実際に用いる記録ヘッド(ノズル)の記録特性ランクR[Y]に応じてテーブルパラメータを選択する。これより、パラメータを求めるための演算時間や記録コストを低減することができる。
以上が、パラメータ生成部A、パラメータ生成部B、およびMCS処理実施部の説明である。
【0109】
パラメータ生成部Aでは、予め代表組み合わせのMCSプロファイルを保持している為、測定した吐出量情報だけで全てのMCSパラメータが生成できる特長がある。本発明の画像処理装置を使用するに当たり、工場出荷時に代表組み合わせのMCSプロファイルをROM内に内蔵させておけばよい。これにより、出荷後の画像処理装置を使用するエンドユーザーはMCSパラメータを作成するために数多くのインクの組み合わせパターンを印字する必要がなく、印字に必要な紙の無駄を減らすことができる。また、高速にMCSパラメータを設定できる特長がある。つまり、エンドユーザーにとっては色ズレを補正する為に、画像処理装置使用時に完全なフィードバック制御をするわけではない。エンドユーザーは特定の条件だけを割り出すだけで、工場出荷時の特定条件下の特性把握を組み合わせてフィードバック制御が完成する。以下、このような予め特性を保持しておいた状態を利用するフィードバック系をセミフィードバック系と称する。
【0110】
一方、パラメータ生成部Bでは、エンドユーザーが全てのMCSパラメータを生成する必要があるためにパラメータ生成部Aよりも、印字パターンに必要な紙は増加し、またパラメータ生成に要する時間はかかる。但し、工場出荷時に既に設定している情報を利用するパラメータ生成部Aとは異なり、エンドユーザーが実際に使用している使用環境、例えば使用装置、使用紙、使用温湿度等において発生している色ズレに細かく対処できる為、フィードバックの補正能力は高い。エンドユーザーにとっては完全なフィードバック制御を実施することとなる。以下、このような完全なフィードバック系をフルフィードバック系と称する。
【0111】
さて、前述した2つの特長を有するMCSパラメータ生成部を図15の選択手段としての制御部413により切り替えて使用するが、制御方式には各種方式が考えられる。
【0112】
以下に実施形態1における制御方式の実施例1、実施例2を説明する。
【0113】
<制御方式の実施例1>
図16は、制御方式の第1の実施例を示すフローチャートである。
S1600は、エンドユーザーの使用する紙が所定の紙か否かを判定する手段である。これは、インクを吐出すべき記録媒体の種類に応じて、パラメータを選択する。所定の紙とは、工場出荷時にパラメータ生成部Aの代表的な組み合わせのプロファイルを作成した紙種と同一種であることと定義する。紙種の判定は紙種検知機能を内蔵させ自動的に検出した紙種情報による指定でも良いし、エンドユーザーの手動による指定でも良い。すなわち、ユーザにより、外部から入力された外部選択信号に応じて、変換に用いるパラメータを選択する。また、使用紙のラベル等においてバーコード等により紙の物性的属性情報が管理されている画像記録装置システムにおいては、容易にエンドユーザーは紙種情報を本体内に通知することが可能である。もし所定の紙であればS1601にてパラメータ生成部Aを選択し、否であればS1602にてパラメータ生成部Bを選択する。S1603はMCS処理を示し、生成したパラメータに基づきMCS処理を実施する。
【0114】
この実施例により、使用紙に適合した効率的なMCS処理が実現できる。すなわち、使用頻度の高い紙種の時には既に生成してあるパラメータを利用できるバラメータ生成部Aを使用し、特殊な用紙を使用するときにはパラメータ生成部Bを使用することができる。所要時間及び無駄になる紙量に最適な構成が実現できる。また、所定の紙を同一紙種と定義したが、これに限定するものではない。紙のロット、紙の製造年月日、紙の物性値によりカテゴリー分けもこれに含めることは容易に想像できる。
【0115】
<制御方式の実施例2>
図17は、制御方式の第2の実施例を示すフローチャートである。
【0116】
図17において、まず始めにS1700にて制御部413はパラメータ生成部Aを選択する。前述したようにパラメータ生成部Aは紙の無駄を省き、高速にMCSパラメータが取得できるため、色ずれを簡便に補正するには有効な方法である。続いてS1701において、設定されたパラメータに基づきMCS処理を実施する。S1702は、色ズレ判定を示し、MCS処理にて補正された補正能力を検知する手段である。補正能力検知は補正後の印字サンプルを基に色ずれが正しく補正されたか否かを自動的に判定する手段が考えられる。
【0117】
S1703は、検知した補正結果の色ずれが許容範囲内か否かを判断する。自動的に判定する判定手段を有している場合には、予め許容の閾値を有しておいて閾値を越えるか否かを判定するのが好ましい。もし、許容以内であれば終了し、許容外であれば、S1704にて制御部413はパラメータ生成部Bを選択し、S1705のMCS処理を経て終了する。
【0118】
この動作フローによりエンドユーザーは効率的なMCS処理が実現できる。
【0119】
また、補正能力検知ステップ及び許容内判定は画像処理装置の自動判定ではなく、エンドユーザーの検知により手動で判定する構成も考えられる。
前述した制御方式の実施例1では、両者のパラメータは完全な並列選択であるが、制御方式の実施例2では、まずは簡便に補正できる方法、許容以上であれば精度の高い方法へと切り替えていく方法になる。その為、通常時は最短方法、使用している装置に何らかの問題が存在した場合には高精度の方法を選択するので効率的な補正が可能になる。
【0120】
本発明は、複数の異なる方式の色ズレ補正方法を有していることを特徴としている。その中の少なくともひとつはセミフィードバックの系であることが重要である。ハイブリッド方式にした場合に、セミフィードバック系を用いるか、フルフィードバック系を用いるかは、当初の想定からの変化の度合いによって制御することが好ましい。
【0121】
本発明では、ヘッド単体の特性に依存する要因にはセミフィードバック系を用い、記録紙面上の特性に依存する要因にはフルフィードバック系を用いる。
【0122】
<パラメータ生成部の第一の変形例>
パラメータ生成部B、及びパラメータ生成部Aの第1の変形例を説明する。
【0123】
<パラメータ生成部Bの第一の変形例>
図9は第一変形例のMCS処理フローを説明する図である。
【0124】
図4(b)は、第1変形例に係る、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成を示すブロック図である。図4(b)において、符号401、405〜409で示す各部は、図4(a)において同じ符号で示すそれぞれの部と同じであるためそれらの説明を省略する。本変形例が、図4(a)に示す構成と異なる点は、入力色変換処理部とMCS処理部による処理を一体の処理部として構成した点である。
【0125】
具体的には、入力色変換処理&MCS処理部411は、入力色変換処理部のテーブルとMCS処理部のテーブルを合成した1つのテーブルを用いる。これにより、入力部401からの入力画像データに対して、直接色ずれの補正処理を行い、色ずれを低減したデバイス色画像データを出力することができる。
【0126】
図9(a)および(b)は、第一変形例に係るMCS処理部のテーブルパラメータの生成およびMCS処理部の処理を示すフローチャートであり、図5(a)および(b)と同様の処理を示している。図9(a)の、MCS処理部のテーブルパラメータを生成する処理S910において、図5(a)の処理S510と異なる点は、ステップS902およびステップS906の処理である。以下、この2つの処理について説明する。
【0127】
ステップS902では、入力部401からの入力色画像データI[X]に基づき、記録用紙に色ずれ補正のための測定用画像を記録する。この際、入力色変換処理&MCS処理部411のうち、入力色変換処理部に相当する部分だけが機能するようにし、破線410のバイパス処理経路で、MCS処理をスキップする。具体的には、入力色変換処理&MCS処理部411は、2つのテーブルを切り替えて用いることができるよう構成されている。すなわち、入力画像データI[X]に対して、入力色変換処理とMCS処理部の処理を合成した、以下で説明する色変換W’をテーブルパラメータとして有するテーブルと、入力色変換処理のみのテーブルパラメータを有するテーブルとが、切り替えて用いる。そして、測定用画像を記録する際は、入力色変換処理のみのテーブルに切り替えて用いる。
【0128】
この測定用画像記録に用いるテーブルによる入力色変換処理の色変換係数を入力色変換Wとすると、デバイス色データD[X]=入力色変換W(入力画像データI[X])の関係が成立する。このようにして得られた一様なデバイス色画像データD[X]は、第1の実施形態と同様に、インク色変換処理部405、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408を経て出力部409で、測定用画像として記録用紙106に記録される。
【0129】
ステップS906では、エリアごとの補正値T-1[X]から、テーブルパラメータとしての等価色変換W’[X]を算出する。このW’[X]は、上記入力色変換Wと等価色補正Z-1[X]を合成した色変換である。なお、等価色補正Z-1[X]の算出処理は第1の実施形態と同様なのでその説明を省略する。
【0130】
記録データを作成する際の、入力色変換処理&MCS処理部411による処理である、図9(b)の処理S920では、上記のように作成されたテーブルパラメータとしての等価色変換W’[X]を用いて色ずれ補正をおこなう。すなわち、各エリアに対応した入力色画像データI[X]に対して色ずれ補正をするとともに、色ずれ補正が施されたデバイス色画像データD’[X]を出力する。そして、デバイス色画像データD’[X]に対して、図4(b)に示すインク色変換処理部405以降の処理を行い、出力部409で記録用紙に画像を記録する。
【0131】
以上の変形例によれば、デバイス色画像データD’[X]が第1の実施形態と同じ値となる様にステップS906で等価色変換W’[X]が定められているので、第1の実施形態と同様に色ずれを低減することができる。また、等価色補正Z-1[X]と入力色変換Wの合成色変換W-1[X]を1つの三次元ルックアップテーブルとして保持しているので、第1の実施形態と比較して、記録データを生成する際にルックアップテーブルを参照する回数を2回から1回に減らすことができ、これにより、処理速度を向上させることができる。
【0132】
本変形例の効果として、等価色補正Z-1[X]と入力色変換Wの合成色変換W-1[X]を1つの三次元ルックアップテーブルとして保持する事で、第一の実施形態に対して、ルックアップテーブルの適用回数を2回から1回に低減する事による処理速度向上というメリットが得られる。逆に、第一の実施形態では入力色の種類の増加に対して保持する三次元ルックアップテーブルが増加しない。
【0133】
<パラメータ生成部Aの第一の変形例>
本変形例では、さらに、第1実施形態と同様に、ノズルの吐出量に係るランクに基づき、このランクとインク色との組合せに対応させて上記入力色変換処理&MCS処理部411のテーブルパラメータを求める。
【0134】
すなわち、第1実施形態に係る図9に示した処理と同様の処理を行う。具体的には、図9のステップS1202、S1203と同様、KCMYインクそれぞれのノズルの記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに対応させて、図14(a)にて上述した方法によって、MCS処理のテーブルパラメータを作成し、ホストPCのHDDに格納しておく。
【0135】
また、ステップS1204と同様、ホストPCのHDDに格納されたKCMYの記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに対応したMCS処理のテーブルパラメータから、エリアごとの、K、M、C、Yそれぞれの記録特性ランクR[Y]の組み合わせに対応したMCS処理のテーブルパラメータを選択する。
【0136】
(パラメータ生成部の第2の変形例)
図4(c)は、第1実施形態の第2変形例に係る画像処理部の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例は、MCS処理部404の処理を、入力色変換処理部403の処理の前に実施するようにしたものである。
【0137】
図10(a)および(b)は第2変形例にかかるMCS処理部のテーブルパラメータの生成およびMCS処理部の処理を示すフローチャートであり、図5(a)および(b)と同様の処理を示している。図10(a)の処理S1010において、図5(a)の処理との違いはステップS1002とステップS1006であり、これら2つの処理について説明する。
【0138】
ステップS1002では、入力部401からの入力色画像データI[X]は、MCS処理部404をバイパスし、入力色変換処理部403でデバイス色D[X]に変換される。その後、第1の実施形態に係る図5(a)と同様、インク色変換処理部405、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408を経て出力部409で測定用画像が記録用紙106に記録される。そして、ステップS1006では、入力色空間の色を補正する等価補正値Y-1[X]を算出する。これは、図5(a)におけるステップS506で算出した、デバイス色空間の色を補正する等価補正値Z-1[X]と等価に入力色を補正する補正値である。この等価色補正値Y-1[X]の算出処理は第1の実施形態と同様なので、その説明を省略する。
【0139】
次に、図10(b)の処理S1020の処理手順は以下のとおりである。図10(b)において、ステップS1007では、MCS処理部404は、エリアごとの入力色画像データI[X]に対して、上記処理S1010で作成したテーブルを用いて等価補正値Y-1[X]を適用して補正を行う。そして、ステップS1008では、等価補正値Y-1[X]によって補正された入力色画像データI’[X]は、入力色変換処理部405でデバイス色画像データD’[X]に変換される。これ以降の処理は第1の実施形態と同様なので、その説明を省略する。
【0140】
本変形例によれば、MCS処理部404の処理を入力色変換処理部403の処理よりも前に行うことにより、モジュールの独立性が向上する。例えば、MCS処理部を非搭載の画像処理部に対する拡張機能として提供できるようになる。また、ホストPC側に処理を移すことも可能となる。
【0141】
本変形例でも、さらに、第1実施形態と同様に、ノズルの吐出量に係るランクに基づき、このランクとインク色との組合せに対応させて上記MCS処理部404のテーブルパラメータを求める。
【0142】
すなわち、第1実施形態に係る図12に示した処理と同様の処理を行う。具体的には、図12のステップS1202、S1203と同様、KCMYインクそれぞれのノズルの記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに対応させて、図10(a)にて上述した方法によって、MCS処理部のテーブルパラメータを作成し、ホストPCのHDD303に格納しておく。
【0143】
また、ステップS1204と同様、ホストPCのHDD303に格納されているKCMYの記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに対応したMCS処理のテーブルパラメータから、エリアごとの、K、M、C、Yそれぞれの記録特性ランクR[Y]の組み合わせに対応したMCS処理のテーブルパラメータを選択する。
【0144】
<パラメータ生成部Aの第2の変形例>
上記の方法を用いて、図12中のs1204におけるKCMYの記録特性ランクR[x]の全ての組み合わせに応じたMCS処理パラメータを作成し、ホストPCのRAMに保持しておく。
【0145】
次に、第一の実施形態と同様に、吐出量情報V[X]から記録特性ランクR[x]を算出する。さらに、ホストPCのRAMに保持してあるKCMYの記録特性ランクR[x]の全ての組み合わせに応じたMCS処理パラメータから、記録領域毎に対応付けられたKMCYの記録特性ランクR[x]の組み合わせに応じたMCS処理パラメータを選択する。詳細説明は第一実施形態と同様なので省略する。
【0146】
(パラメータ生成部の第3変形例)
図4(d)は、第1実施形態の第3変形例に係る画像処理部の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例は、図4(a)HSなどで示したHS処理部406を省いた形態に係るものである。
【0147】
<パラメータ生成部Bの第3の変形例>
本変形例のMCS処理部のテーブルパラメータの生成およびMCS処理部の処理は、第1実施形態に係る図5(a)および(b)と同じであり、異なるのはHS処理部にヘッドシェーディングを実施しない点である。すなわち、図5(a)に示すステップS502以前にHS処理は行われない。
【0148】
図11(a)および(b)は、本変形例による、図5(a)のステップS502における測定用画像の記録例を示す図であり、図6(a)および(b)と同様の図である。図11(b)に示すように、測定用画像を記録する際にHS処理が行われないので、記録されるドット数は同図中左側の4つのノズルに対応した領域と、同右側の領域間で同じである。この結果、右側の領域の色は第1実施形態に係る図6(b)に示す例と比べて、マゼンタ色が強いことになる。この結果、図5(a)の処理S510のテーブルパラメータ作成では、マゼンタ色を減少させる補正値が生成されることになる。このようにすることにより、図7(b)に示す記録結果が得られるような補正値をMCS処理のテーブルパラメータとすることができ、HS処理を実施しなくても、色ずれを低減することが可能となる。
【0149】
また、直接の効果として、HS処理を実施しないことにより、処理速度向上、HS処理用のテーブル等のリソースの削減、HS処理のための「記録」、「測定」、「補正パラメータ生成」を実施しないことによる処理工程等の削減、といった利点がある。
【0150】
本変形例でも、さらに、第1実施形態と同様に、ノズルの吐出量に係るランクに基づき、このランクとインク色との組合せに対応させて上記MCS処理部404のテーブルパラメータを求める。
【0151】
すなわち、第1実施形態に係る図12に示した処理と同様の処理を行う。具体的には、図12のステップS1202、S1203と同様、KCMYインクそれぞれのノズルの記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに対応させて、図5(a)にて上述した方法によって、MCS処理のテーブルパラメータを作成し、ホストPCのHDD303に格納しておく。
【0152】
また、ステップS1204と同様、ホストPCのHDD303に格納されたKCMYの記録特性ランクR[Y]の総ての組み合わせに対応したMCS処理のテーブルパラメータから、エリアごとの、K、M、C、Yそれぞれの記録特性ランクR[Y]の組み合わせに対応したMCS処理のテーブルパラメータを選択する。
【0153】
<パラメータ生成部Aの第三の変形例>
上記の方法を用いて、図12中s1204におけるKCMYの記録特性ランクR[x]の全ての組み合わせに応じたMCS処理パラメータを作成し、ホストPCのRAMに保持しておく。
【0154】
次に、第一の実施形態と同様に、吐出量情報V[X]から記録特性ランクR[x]を算出する。さらに、ホストPCのRAMに保持してあるKCMYの記録特性ランクR[x]の全ての組み合わせに応じたMCS処理パラメータから、記録領域毎に対応付けられたKMCYの記録特性ランクR[x]の組み合わせに応じたMCS処理パラメータを選択する。詳細説明は第一実施形態と同様なので省略する。
【0155】
これまでパラメータ生成部の第一変形例〜第三変形例を説明してきたが、それぞれの処理内容についてはあくまで一例であり、本発明の効果である色ムラの低減が実現出来るのであれば、如何なる手段を用いても構わない。
【0156】
例えば、図5、図9、図10中のMCS処理パラメータ生成プロセスにおいて、まず色ズレ量を測定してから補正値を算出する方法を用いたが、他の方法を用いても良い。
【0157】
また、色ムラを低減する事が目標であるので、特に目標色Aを設定する事は必須の要素ではない。つまり、記録領域間の色のズレを元に各記録領域の補正値を設定しても構わない。
【0158】
また、図2では4ノズルを1記録領域としたが、これに限定される物ではなく、より多くのノズル数をまとめて1記録領域としても良いし、逆に少ないノズル数、例えば1ノズルを1記録領域としても構わない。また、各記録領域に属するノズル数は必ずしも同一である必要は無く、デバイスの特性に応じて適宜設定して構わない。
【符号の説明】
【0159】
100 プリンタ本体
101 ブラック記録ヘッド
102 シアン記録ヘッド
103 マゼンタ記録ヘッド
104 イエロー記録ヘッド
106 記録用紙
300 ホストPC
301 ホストPCのCPU
302 ホストPCのRAM
303 ホストPCのHDD
311 プリンタのCPU
312 プリンタのRAM
313 プリンタのROM
401 入力部
403 入力色変換処理部
404 MCS(Multi Color Shading)処理部
405 インク色変換処理部
406 HS(Head Shading)処理部
407 TRC(Tone Reproduction Curve)処理部
408 量子化処理部
409 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる種類のインクをそれぞれ吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するために、入力画像データを前記記録ヘッドが記録可能な信号に変換する処理過程において、色信号を処理する画像処理装置であって、
複数の種類のインクを記録媒体に対して重ねて吐出することにより記録される色の所定の色からの色ずれを補正するために、異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出するノズルの組み合わせの各々に対して与えられたパラメータであって、互いに異なるプロセスにより生成された第1および第2のパラメータのいずれかを、与えられた条件に応じて選択する選択手段と、
選択された前記パラメータを用いて、注目画素の第1の色信号を第2の色信号に変換する変換手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1のパラメータは、画像を記録する記録ヘッドの複数のノズルの各々の記録特性とは独立に予め規定された前記色ずれを補正するための複数のパラメータから、画像を記録する記録ヘッドの異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出する各々のノズルの単独の記録特性に応じて選択されたパラメータである、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2のパラメータは、画像を記録する記録ヘッドの異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出する複数のノズルの組み合わせによる記録特性に基づいて形成された前記色ずれを補正するためのパラメータである、ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記選択手段は、インクを吐出すべき記録媒体の種類に応じて、前記パラメータを選択する、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記選択手段は、外部から入力された外部選択信号に応じて、前記変換手段に用いるパラメータを選択する、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
異なる種類のインクをそれぞれ吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するために、入力画像データを前記記録ヘッドが記録可能な信号に変換する処理過程において、色信号を処理する画像処理方法であって、
複数の種類のインクを記録媒体に対して重ねて吐出することにより記録される色の所定の色からの色ずれを補正するために、異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出するノズルの組み合わせの各々に対して与えられたパラメータであって、互いに異なるプロセスにより生成された第1および第2のパラメータのいずれかを、与えられた条件に応じて選択するステップと、
選択された前記パラメータを用いて、注目画素の第1の色信号を第2の色信号に変換するステップとを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
異なる種類のインクをそれぞれ吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するための記録装置であって、
入力画像データを前記記録ヘッドが記録可能な信号に変換する処理過程において、色信号を処理する画像処理手段を有し、
前記画像処理手段は、複数の種類のインクを記録媒体に対して重ねて吐出することにより記録される色の所定の色からの色ずれを補正するために、異なる種類のインクを記録媒体の同じ領域に吐出するノズルの組み合わせの各々に対して与えられたパラメータであって、互いに異なるプロセスにより生成された第1および第2のパラメータのいずれかを、与えられた条件に応じて選択する選択手段と、
選択された前記パラメータを用いて、注目画素の第1の色信号を第2の色信号に変換する変換手段と、を有することを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−245654(P2011−245654A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118674(P2010−118674)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】