画像処理装置、画像読取装置、検査装置および画像処理方法
【課題】異物等の被検出体を精度良く認識する。
【解決手段】本発明に係る画像処理装置は、被検出体を含むシート状物を表す画像データを取得し(ステップSa)、その端部領域の階調値を「0(白)」に変更する(ステップSb)。その後、画像処理装置は、この画像データに平滑化処理、膨張処理、二値化処理などの画像処理を施すことによりオブジェクトを抽出し(ステップSc)、抽出したオブジェクトのなかから、被検知体に相当するオブジェクトを特定する(ステップSd)。このようにすることで、カールやスキューに起因して生じる認識率の低下を抑えることが可能となる。
【解決手段】本発明に係る画像処理装置は、被検出体を含むシート状物を表す画像データを取得し(ステップSa)、その端部領域の階調値を「0(白)」に変更する(ステップSb)。その後、画像処理装置は、この画像データに平滑化処理、膨張処理、二値化処理などの画像処理を施すことによりオブジェクトを抽出し(ステップSc)、抽出したオブジェクトのなかから、被検知体に相当するオブジェクトを特定する(ステップSd)。このようにすることで、カールやスキューに起因して生じる認識率の低下を抑えることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像読取装置、検査装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等のシート状物を光学的に読み取り、そのシート状物が真正であるか否かを判定することがあるが、かかる判定を行う場合のシート状物に金属繊維等の異物を含める技術がある(例えば、特許文献1参照)。このとき、異物の数をそのシート状物が真正であるか否かの判定基準に用いることがある。また、このシート状物の製造過程において、異物の数が所定の範囲内であれば良品とみなし、それ以外のものを不良品とみなすこともある。
【特許文献1】特開平9−120456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、シート状物を光学的に読み取って画像データを生成する場合には、用紙の端部にいわゆるカール等による「浮き」が生じたりすることによって、端部に相当する部分がその他の部分よりも暗く読み取られてしまうことがある。このような場合において、上述の異物が端部近傍に存在したときには、異物を正確に認識できないおそれがある。また、読み取り時に用紙が斜行(スキュー)した場合にも、画像データの端部に相当する位置にノイズが現れ、このノイズが被検出体として誤認識されるおそれがある。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、上述した異物等を被検出体とし、これを精度良く認識するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明は、基材と被検出体とを含むシート状物の表面を表す画像データを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された画像データが表す画像領域から端部領域を除いた領域に現れるオブジェクトを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出されたオブジェクトのうちの前記領域と前記端部領域との境界に接する位置に現れるオブジェクトについて、そのサイズを大きくするように補正する補正手段と、前記抽出手段により抽出され、または、前記補正手段により補正されたオブジェクトに基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体を特定する特定手段とを備える画像処理装置を提供する。
【0006】
また、かかる構成において、前記シート状物が四辺形であって、前記抽出手段は、対向するある2辺の端部である前記端部領域の幅と、前記2辺と隣り合う2辺の端部である前記端部領域の幅とを異ならせるように構成してもよいが、もちろん、これらの幅を同一としてもよい。
【0007】
また、本発明は、かかる構成を有する画像処理装置を備える画像読取装置や検査装置としても提供され得るものである。また、本発明は、上述した画像処理装置の機能を実現するための方法やプログラムとしても提供され得るものである。例えば、本発明に係る画像処理方法は、コンピュータにより実行される画像処理方法であって、基材と被検出体とを含むシート状物の表面を表す画像データを取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得された画像データが表す画像領域から端部領域を除いた領域に現れるオブジェクトを抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップにおいて抽出されたオブジェクトのうちの前記領域と前記端部領域との境界に接する位置に現れるオブジェクトについて、そのサイズを大きくするように補正する補正ステップと、前記抽出ステップにおいて抽出され、または、前記補正ステップにおいて補正されたオブジェクトに基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体を特定する特定ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、被検出体を精度良く認識することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
[構成]
図1は、本発明の一実施形態である検査装置100の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように、検査装置100は、制御部10と、画像読取部20と、操作部30と、通知部40とを備える。制御部10は、画像読取部20および通知部40の動作を制御するとともに、画像読取部20から取得した画像データに所定の画像処理を実行する。画像読取部20は、用紙(シート状物)を光学的に読み取り、これを表す画像データを生成して制御部10に供給する。操作部30は、キーボード等の入力装置またはボタン等の操作子を備え、ユーザによる操作を受け付けてこれを表す制御信号を生成し、制御部10に供給する。通知部40は、液晶ディスプレイやスピーカを備え、制御部10から供給される画像信号や音声信号を出力することによりユーザに各種情報を通知する。
【0010】
制御部10は、より詳細には、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリ12と、インタフェース13とを備える。CPU11は、メモリ12に記憶されたプログラムを実行する。メモリ12は、例えば、各種プログラムの記憶されたROM(Read Only Memory)や、CPU11のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)を備える。インタフェース13は、制御部10に接続される各部と情報のやりとりを可能にする物理インタフェースであり、画像読取部20および操作部30から各種の情報を取得するとともに、画像読取部20および通知部40に各種の情報を供給する。
【0011】
なお、メモリ12が記憶しているプログラムには、検査装置100の動作を制御する基本プログラムP1と、用紙の判定を行うための検査プログラムP2とがある。検査プログラムP2によって実現される処理には、平滑化処理、膨張処理、二値化処理などの画像処理などがあるが、詳細については後述する。
【0012】
画像読取部20の構成は、具体的には図2のようになっている。同図に示すように、画像読取部20は、光源21と、センサ22と、搬送ロール23、24と、信号処理回路25とを備える。光源21は、例えば蛍光ランプであり、センサ22が撮像を行うべき位置に光を照射する。センサ22は、例えば密着型のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、光源21により照射された光のうち用紙Sにおいて反射した反射光を受光し、その濃淡を示す画像信号を生成する。搬送ロール23、24は、用紙Sを図中の矢印方向に搬送するロール状部材である。信号処理回路25は、センサ21から供給される画像信号にAD変換等の信号処理を実行し、アナログの画像信号をデジタルの画像データに変換して出力する回路である。なお、光源21、センサ22および用紙Sは、図2の紙面に垂直な方向に有限の幅を有している。この方向のことを、以下では「X方向」という。そして、X方向に直交する方向、すなわち図2中の矢印方向のことを、以下では「Y方向」という。
【0013】
また、画像データのサイズや階調は任意であるが、ここではA4サイズ(210mm×297mm)を1インチ当たり600ドット(画素)の入力解像度で読み取り、各ドットが8ビットの階調(256階調)を示すデータであるとする。このときの階調値(輝度情報)は、「0」を白とし、「255」を黒とする。また、画像データは、用紙の表面の全体を画像領域に含むとする。つまり、画像データの画像領域は、X方向に4960(≒210×600÷25.4)画素であり、Y方向に7016(≒297×600÷25.4)画素である。
【0014】
ここで、図3および4を参照して、本実施形態において読み取られる用紙について説明する。図3に示すように、本実施形態の用紙Sは、基材S1に被検出体S2を埋め込んでなるシート状物である。基材S1は、通常の用紙と同様のものが用いられるが、その成分は、例えばセルロースなどである。被検出体S2は、例えば繊維状の金属であり、基材S1に漉き込むようにして埋め込まれている。被検出体S2は、用紙Sの全体に数本〜50本程度埋め込まれている。なお、被検出体S2の光の透過率(または反射率)は、基材S1のそれよりも低く、被検出体S2の厚みは、用紙Sの厚み以下である。それゆえ、用紙Sを光にかざした場合などには、用紙Sの位置や形状がある程度視認できるようになっている。
【0015】
図4は、用紙Sに被検出体S2が埋め込まれている様子を例示した図であり、用紙Sの断面を示している。例えば、図4(a)に示すように、用紙Sがなす平面に対して被検出体S2がほぼ平行に埋め込まれている場合には、被検出体S2は、その全体がほぼ一様な濃度で視認される。一方、例えば図4(b)に示すように、用紙Sがなす平面に対して被検出体S2が傾いた状態で埋め込まれている場合には、被検出体S2として視認される部分の濃度は一様とならず、徐々に薄く(あるいは濃く)なる。用紙Sの製造過程においては、被検出体S2を常に図4(a)に示すような状態で埋め込むことは困難であり、その埋め込み状態には多少の変動を生じ得る。また、被検出体S2が裏面寄りに埋め込まれた場合には、被検出体S2をほとんど視認できない場合もある。それゆえ、本実施形態の検査装置100においては、後述するオブジェクト抽出処理を実行することにより被検出体S2を目立ちやすくして、オブジェクトとして抽出されやすくしているのである。
【0016】
[動作]
本実施形態の構成は以上の通りである。続いて、上述の検査装置100が実行する処理の内容を説明する。以下においては、まず、検査装置100が実行する一連の処理の概要について説明し、その後、その処理における具体的な動作について一の動作例を挙げて説明する。
【0017】
検査装置100は、検査対象の用紙が所定の基準を満たしているか否かを判定するために用いられるものである。この判定の基準はさまざまであるが、例えば、被検出体が所定の個数埋め込まれているか、所定の位置にあるか、所定の形状をなしているか、などである。検査装置100は、このような判定を画像読取部20において生成された画像データに基づいて行うが、画像読取部20において生成された画像データは、用紙の端部が浮いたりすることによって、端部に相当する領域(以下「端部領域」という。)の明度が低下することがある。このような場合において、用紙の端部領域に相当する部分に被検出体が埋め込まれているときには、正確に認識できないおそれがある。そこで、検査装置100においては、画像データが表す画像領域から上述の端部領域を除いた領域について被検出体に相当するオブジェクトを抽出することとしている。また、端部領域を除くことに伴い、抽出されるオブジェクトが実際よりも小さくなってしまう可能性があるため、検査装置100においては所定の条件を満たすオブジェクトのサイズを補正することとしている。
【0018】
ここでは、検査装置100が行う判定の一例として、「用紙に含まれる被検出体が所定の範囲内の個数であるか否か」を判定する場合の動作例を挙げて説明する。なお、ここにおいて、1枚の用紙に含まれる被検出体の個数の理想値は「5」であり、ここに「±1」の許容範囲を設けるとする。つまり、ここでいう「所定の範囲の個数」とは、「4」以上「6」以下であり、この基準を満たす用紙を使用可能品(良品)とし、それ以外の用紙を不良品とするのが本実施形態における判定の内容である。また、本実施形態における被検出体は、長さが25mm、直径(太さ)が30μmの繊維状の金属であるとする。
【0019】
図5は、検査装置100の制御部10により検査プログラムP2が実行されたときの処理を示すフローチャートである。検査プログラムP2は、ユーザが用紙の判定を行うための操作(ボタン押下等)を行い、この操作に対応する制御信号を制御部10が取得したときに実行されるプログラムである。以下、同図に沿ってその内容を説明する。
【0020】
はじめに、検査装置100の制御部10は、画像読取部20に用紙の読み取りを行わせ、画像読取部20により生成された画像データをインタフェース13を介して取得する(ステップSa)。次に、制御部10は、画像読取部20から取得した画像データの端部領域に相当する画素の階調値を「0」にする(ステップSb)。すなわち、このとき制御部10は、画像データの端部領域に相当する画素を、その階調値によらず全て白に変化(クリア)させる。
【0021】
このとき画像データに対して行われる処理を、図面を示して説明する。図6は、画像データの端部領域を説明するための図である。なお、同図は、要部を強調して示したものであるため、実際の縮尺とは異なっている。同図において、領域A1は、画像データが表す画像領域の全体を表している。また、領域A2、すなわちハッチングで示した領域は、後述するオブジェクト抽出処理の処理対象となる領域(以下「対象領域」という。)を表している。そして、端部領域とは、領域A1から領域A2を除いた部分のことであり、領域A2の上下左右に生じる領域のことである。
【0022】
この端部領域は、上下方向(Y方向)と左右方向(X方向)とでその幅が異なっている。具体的には、画像データの上下の端部領域の幅はそれぞれ5mmであり、画像データの左右の端部領域の幅はそれぞれ2mmである。上下方向の端部領域の幅を左右方向の端部領域の幅よりも大きくしたのは、この方向が用紙の搬送方向に一致するからである。なお、それぞれの端部領域の幅を画素数に換算すると、左右方向の幅は47(≒2×600÷25.4)画素ずつに相当し、上下方向の幅は118(≒5×600÷25.4)画素ずつに相当する。制御部10は、この端部領域に含まれる画素の全ての階調値を「0」にする。
【0023】
ここで図5のフローチャートの説明に戻る。端部領域をクリアしたら、続いて制御部10はオブジェクト抽出処理を実行する(ステップSc)。この処理は、図6に示した領域A1、すなわち、画像データが表する画像領域全体について実行される。しかし、端部領域に相当する画素はクリアされているため、実際にオブジェクト抽出処理が実行される画像領域は、Y方向に6780(=7016−118×2)画素分、X方向に4866(=4960−47×2)画素分の画像領域、すなわち図6に示した領域A1である。
【0024】
図7は、ステップScのオブジェクト抽出処理を示すフローチャートである。以下、同図に沿って説明する。はじめに、制御部10は、画像データに対して平滑化処理を実行する(ステップSc1)。この処理は、基材部分の濃淡の差を低減させるための処理であり、例えば、所定のサイズの平滑化フィルタを適用することにより実現される。続いて、制御部10は、画像データに対して膨張処理を実行する(ステップSc2)。この処理は、被検出体が埋め込まれている部分を強調するための処理であり、具体的には、注目画素の近傍にある他の画素(以下「近傍画素」という。)を参照し、近傍画素に1つでも注目画素の階調値よりも大きい(すなわち濃い)階調値を有する画素があれば、注目画素の階調値をその近傍画素の階調値に置換する処理である。
【0025】
この膨張処理について、具体的な例を挙げて説明する。例えば、図8(a)に示すような画素P(i,j)を有する画像データについて考える。なお、ここにおいて、iはX方向の座標値を表しており、jはY方向の座標値を表している。また、説明の便宜上、画素Pの階調値は「1」であり、その他の画素の階調値は全て「0」であるとする。このような画像データに対して、例えば注目画素の上下左右の2ライン分の画素を参照した膨張処理を実行すると、画素P(i−2,j−2)を注目画素とした場合、近傍画素は、図8(b)においてハッチングで示した画素となる。すなわち、近傍画素は、画素P(i−4,j−4)〜P(i,j−4)、P(i−4,j−3)〜P(i,j−3)、P(i−4,j−2)〜P(i−3,j−2)、P(i−1,j−2)〜P(i,j−2)、P(i−4,j−1)〜P(i,j−1)、P(i−4,j)〜P(i,j)の24画素である。このとき、近傍画素には階調値が「1」である画素P(i,j)が含まれるので、注目画素である画素P(i−2,j−2)の階調値は、「0」から「1」に置換される。このような処理を各画素について実行すると、その処理結果は、図8(c)に示すように、画素P(i,j)の近傍の24画素の階調値が「1」となる。
【0026】
なお、この膨張処理においては、近傍画素の数はいくつであってもよい。例えば、上述した例では注目画素の上下左右の2ライン分の画素を近傍画素としたが、これを1ライン分としてもよい。以下では、注目画素の上下左右の2ライン分の画素を近傍画素とした膨張処理のことを、注目画素を中心とした5×5画素を参照する処理という意味で「5×5画素の膨張処理」という。また、同様に、注目画素の上下左右の1ライン分の画素を近傍画素とした膨張処理のことを、注目画素を中心とした3×3画素を参照する処理という意味で「3×3画素の膨張処理」という。つまり、ステップSc2において実行した膨張処理は、5×5画素の膨張処理である。
【0027】
ここで図7のフローチャートの説明に戻る。制御部10は、ステップSc2の膨張処理を実行したら、再び膨張処理を実行する(ステップSc3)。このとき実行される膨張処理は、3×3画素の膨張処理である。続いて、制御部10は、ステップSc1、Sc2およびSc3において実行した平滑化処理と膨張処理とを同じ順番で繰り返す(ステップSc4、Sc5、Sc6)。
【0028】
次に、制御部10は、画像データの全画素の階調値の平均値を算出する(ステップSc7)。制御部10はこのとき算出した平均値に基づき、後段の二値化処理における閾値Th1を決定する(ステップSc8)。閾値Th1と平均値の関係は任意であり、例えば、平均値に所定の係数を乗算した値を閾値Th1とすることもできるが、本動作例においては、平均値から「22」を加算した値を閾値Th1としている。
【0029】
そして、制御部10は、このようにして決定された閾値Th1を用いて二値化処理を実行する(ステップSc9)。すなわち、制御部10は、上述の閾値Th1より小さい階調値を有する画素の階調値を全て「0」とし、上述の閾値Th1以上の階調値を有する画素の階調値を全て「1」とする置換を行う。
【0030】
二値化処理を実行したら、制御部10は、この二値化後の画像データに基づいてオブジェクトを抽出する処理を行う(ステップSc10)。この処理は、例えば、階調値が「1」である画素が連続した固まりを1つのオブジェクトとみなしてラベリングを行うとともに、それぞれのオブジェクトの長さ、周囲長および面積を算出し、これらが所定の閾値に満たないオブジェクトは、用紙の浮きや照射光のムラ等に起因して抽出されるオブジェクト、すなわちノイズとみなして除外する処理である。本実施形態においては、長さ、周囲長および面積の閾値を、それぞれ「236」、「600」および「7000」とした。なお、これらの閾値の単位は、いずれも「画素」である。つまり、長さの閾値Th1は、およそ10(≒236÷600×25.4)mmである。また、以下において単に「オブジェクト」といった場合、これはステップSc10において抽出されたオブジェクト、すなわち画像データに現れたノイズを除外したオブジェクトのことを指すものとする。
【0031】
オブジェクトを抽出したら、制御部10は、それぞれのオブジェクトについて長さ、周囲長、面積、重心および角度を算出し、これらを各オブジェクトの検出値としてメモリ12に記憶する(ステップSc11)。なお、ここにおいて「角度」とは、所定の方向(例えばX方向またはY方向)の直線とオブジェクトとがなす角度のことで、単位は「度」である。
【0032】
オブジェクト抽出処理は以上の通りである。このような処理を実行した結果、制御部10は、画像データのそれぞれのオブジェクトについての検出値を記憶することとなる。例えば、画像データが図9に示すような画像データであった場合、制御部10は図10に示すような検出値をメモリ12に記憶する。なお、同図において、A〜Eはオブジェクトを表している。また、それぞれの検出値は、図12に示す座標系を定義した場合の値を表している。同図に示すように、制御部10は、長さ、周囲長、面積、重心(X方向)、重心(Y方向)および角度の値をオブジェクト毎に記憶する。ここにおいて、各検出値の単位は、角度が「°」であり、その他が「画素」である。なお、図9に示した破線は、端部領域の境界を示している。
【0033】
ここで図5のフローチャートの説明に戻る。オブジェクト抽出処理を実行したら、制御部10はオブジェクト特定処理を実行する(ステップSd)。この処理は、上述のオブジェクト抽出処理において抽出されたオブジェクトから、所定の条件を満たすオブジェクトのサイズを補正し、被検出体に相当するオブジェクトを特定するための処理である。
【0034】
なお、オブジェクト特定処理においては、制御部10は被検出体に相当するオブジェクトを特定するために閾値Th2を用いている。具体的な閾値Th2の値は任意であるが、閾値Th2は、前記オブジェクト抽出のときの閾値Th1より大きい値である。ここでは、閾値Th2を「354」とする。すなわち、ここにおいて、閾値Th2は「15(≒354÷600×25.4)」mmに相当する。
【0035】
図11は、ステップSdのオブジェクト特定処理を示すフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに、制御部10は、処理対象のオブジェクトが上下方向の端部領域に接する位置にあるか否かを判断する(ステップSd1)。図12は、ステップSd1における判断の具体的な手順を説明するための図である。以下、同図を参照してこの処理を説明する。
【0036】
制御部10は、画像領域全体について適当に原点Oを定め、X方向およびY方向に座標軸XおよびYを設定する。ここでは、画像領域の左上端部を原点Oとしている。つまり、このとき、X座標の最小値は「0」、最大値は「4959」であり、Y座標の最小値は「0」、最大値は「7015」である。なお、この座標値は、画像領域の画素の数に対応している。そして、制御部10は、処理対象のオブジェクトの長さをl、X方向の重心をx、Y方向の重心をy、角度をθとした場合に、以下の(1)式または(2)式のいずれかを満たすか否かを判断する。なお、(1)式および(2)式において、Cはオブジェクトの検出位置誤差を考慮した適当な定数(例えば「10」)であり、また、|cosθ|はcosθの絶対値を表している。制御部10は、処理対象のオブジェクトが(1)式を満たす場合には、そのオブジェクトが対象領域の上端に接しているとみなし、処理対象のオブジェクトが(2)式を満たす場合には、そのオブジェクトが対象領域の下端に接しているとみなす。
【数1】
【数2】
【0037】
ここで図11のフローチャートの説明に戻る。続いて、制御部10は、ステップSd1の判断結果の如何によらず、処理対象のオブジェクトが左右方向の端部領域に接する位置にあるか否かを判断する(ステップSd2、Sd5)。この判断も、上述したステップSd1と同様の手順で行われるが、ここでは、制御部10は、以下の(3)式または(4)式のいずれかを満たすか否かを判断する。制御部10は、処理対象のオブジェクトが(3)式を満たす場合には、そのオブジェクトが対象領域の左端に接しているとみなし、処理対象のオブジェクトが(4)式を満たす場合には、そのオブジェクトが対象領域の右端に接しているとみなす。
【数3】
【数4】
【0038】
上述のように、処理対象のオブジェクトが端部領域に接しているか否かを判断したら、制御部10は、それぞれの判断結果に応じた処理を行う。まず、処理対象のオブジェクトが上下方向の端部領域と左右方向の端部領域の双方に接していると判断された場合(ステップSd2;YES)、すなわち、対象領域の頂点近傍に処理対象のオブジェクトが現れている場合には、制御部10は、以下の(5)式にしたがって処理対象のオブジェクトの長さを補正する(ステップSd3)。なお、(5)式においては、補正後の処理対象のオブジェクトの長さをLとしている。また、第2項の分子(すなわち「118」)および第3項の分子(すなわち「47」)は、それぞれ、上下方向および左右方向の端部領域の幅の画素数から決定されている。(5)式の第2項は上下方向についての補正に寄与し、(5)式の第3項は左右方向についての補正に寄与するということである。例えば、処理対象のオブジェクトの角度θが0°であった場合、このオブジェクトの長さは118画素分、つまり5mm分長くなるように補正されるということである。
【数5】
【0039】
また、処理対象のオブジェクトが上下方向の端部領域のみに接していると判断された場合(ステップSd2;NO)には、制御部10は、以下の(6)式にしたがって処理対象のオブジェクトの長さを補正する(ステップSd4)。なお、(6)式は、上述の(5)式の第3項を除いたものである。
【数6】
【0040】
また、処理対象のオブジェクトが左右方向の端部領域のみに接していると判断された場合(ステップSd5;YES)には、制御部10は、以下の(7)式にしたがって処理対象のオブジェクトの長さを補正する(ステップSd6)。なお、(7)式は、上述の(5)式の第2項を除いたものである。
【数7】
【0041】
なお、処理対象のオブジェクトがいずれの端部領域にも接していないと判断された場合(ステップSd5;NO)には、制御部10は、処理対象のオブジェクトの長さを補正しない。これは、処理対象のオブジェクトがいずれの端部領域にも接していなければ、このオブジェクトは端部領域をクリアしたことによる影響を受けないからである。
【0042】
さて、ステップSd3、Sd4またはSd6による補正を行った場合には、制御部10は、処理対象のオブジェクトの長さが閾値Th2以上となるか否かを判断する(ステップSd7)。このとき、制御部10は、長さを補正していないオブジェクトについては、上述したlの値を閾値Th2と比較し、長さを補正したオブジェクトについては、補正後のLの値を閾値Th2と比較する。そして、処理対象のオブジェクトの長さが閾値Th2以上となった場合(ステップSd7;YES)には、制御部10はこのオブジェクトを被検出体に相当するオブジェクトであるとみなし、特定する(ステップSd8)。このとき特定されるオブジェクトのことを、以下では「特定オブジェクト」という。一方、処理対象のオブジェクトの長さが閾値Th2未満であった場合(ステップSd7;NO)には、制御部10はこのオブジェクトを特定オブジェクトであるとはみなさない。
【0043】
制御部10は、これらの処理を処理対象のオブジェクトの全てに実行する。つまり、制御部10は、上述した処理を処理対象のオブジェクトの全てに実行したか否かを判断し(ステップSd9)、未処理のオブジェクトが存在する場合(ステップSd9;NO)には、未処理のオブジェクトに対してステップSd1からの処理を実行する。そして、上述した処理を処理対象のオブジェクトの全てに実行した場合(ステップSd9;YES)には、制御部10は、ステップSd8において特定オブジェクトとみなされたオブジェクトの数に基づき、この画像データに対応する用紙に含まれる被検出体の数を特定する(ステップSd10)。このとき特定される値のことを、以下では「N」とする。
【0044】
このようにして用紙に含まれる被検出体の数Nを特定したら、制御部10は、この用紙が良品か否かを判断する。上述したように、この動作例においては、被検出体の個数は「4」以上「6」以下を許容範囲としたから、制御部10は、被検出体の数Nがこの範囲に含まれるか否かを判断する(ステップSd11)。そして、被検出体の数Nが「4」以上「6」以下である場合には(ステップSd11;YES)、制御部10は読み取った用紙が良品であると判定し、この旨を示す画像信号や音声信号を生成して通知部40に供給する(ステップSd12)。一方、被検出体の数Nが「4」以上「6」以下でない場合には(ステップSd11;NO)、制御部10は読み取った用紙が不良品であると判定し、この旨を示す画像信号や音声信号を生成して通知部40に供給する(ステップSd13)。
【0045】
オブジェクト特定処理がこのように行われた場合の結果について、図13を例示して説明する。図13は、オブジェクト抽出処理によって図10に示した検出値がメモリ12に記憶された場合の判定処理の処理結果を示す図である。同図に示すように、メモリ12に記憶された検出値には、オブジェクト特定処理の前後において変化を生じるものがある。オブジェクト特定処理の前後において検出値が変化するのは、図9に示したオブジェクトEのように、端部領域に接するように位置するオブジェクトである。このようなオブジェクトは、図13に示すように、その長さ、周囲長、面積および重心が変化する。例えば、オブジェクトEの長さは、310画素から434画素、すなわち、13.1(≒310÷600×25.4)mmから18.4(≒434÷600×25.4)mmに変化している。これは、オブジェクトEの長さが、上述の(6)式にしたがって補正されたからである。この補正により、オブジェクトEの長さは閾値Th2(すなわち354)以上に変化するため、被検出体に相当するオブジェクトとして特定されるようになる。
【0046】
このように、本実施形態の検査装置100によれば、画像データが表す画像領域から端部領域をクリアしてからオブジェクトを抽出することにより、画像データの端部に現れるノイズによる誤認識を抑制するとともに、端部領域に接するオブジェクトの長さを補正することにより、上述の端部領域のクリアに起因する誤認識を抑制することが可能となる。
【0047】
[変形例]
以上においては、一の好適な実施形態を例示して本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の態様にて実施することも可能である。本発明においては、例えば、上述した実施形態に対して以下のような変形を適用することができる。なお、これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
【0048】
上述した実施形態においては、「シート状物」の一例として用紙を挙げたが、本発明に係るシート状物はこれに限らず、例えば、ICカード等のカード状の物体などであってもよい。また、被検出体についても、上述した実施形態では繊維状の金属であるとしたが、ICチップのような物体であってもよいし、繊維状でなくともよい。例えば、被検出体は、基材よりも薄く形成されたテープ状の金属であってもよい。また、被検出体の材質も金属に限らず、例えば、大バルクハウゼン効果を有する磁性体やプラスチックなどであってもよい。
【0049】
また、上述した実施形態においては、オブジェクト抽出処理を図7に示したフローチャートにて実行したが、オブジェクト抽出処理はこの手順に限定されない。例えば、上述の実施形態は平滑化処理と膨張処理とを複数回繰り返すものであったが、これを1回ずつにしてもよいし、いずれかの処理を省略してもよい。また、基材と被検出体が明瞭に識別されるようなシート状物にあっては、平滑化処理または膨張処理を実行しなくてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態においては、(5)〜(7)式に示した演算により補正を行ったが、補正のための演算はこの例に限らない。例えば、(5)〜(7)式に示した演算にあっては、sinθやcosθが0に近づくほど補正値が大きくなるので、所定の上限値を設けてもよい。また、補正に際しては、オブジェクトの長さを補正するのではなく、面積や周囲長が大きくなるような補正をしてもよい。要するに、結果的にオブジェクトのサイズを大きくできれば、いずれの検出値を補正してもよいということである。
【0051】
また、上述の実施形態においては、画像読取部20は用紙からの反射光に基づいて画像データを生成する構成であったが、例えば、読み取られるシート状物の基材が透過率の高い物質である場合などには、シート状物を透過した透過光に基づいて画像データを生成する構成を用いることができる。この場合、センサ(すなわち受光手段)と光源(すなわち照射手段)は、シート状物を挟んで互いに対向するように配置すればよい。
【0052】
また、上述した実施形態は、本発明を検査装置に適用するものであったが、例えば、上述の制御部10に相当する機能をプリンタ等の画像形成装置やスキャナ等の画像読取装置に搭載することも可能である。また、本発明は、上述の検査プログラムP2に相当するプログラムとして提供されたり、あるいは、このプログラムを記録したROM等の記録媒体として提供されたりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態である検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】検査装置の画像読取部の構成を示す図である。
【図3】シート状物の一例を示す図である。
【図4】シート状物の一例を示す図である。
【図5】検査装置により検査プログラムが実行されたときの処理を示すフローチャートである。
【図6】画像データの端部領域を説明するための図である。
【図7】検査装置が実行するオブジェクト抽出処理を示すフローチャートである。
【図8】膨張処理を説明するための図である。
【図9】画像データの一例を示す図である。
【図10】図9の画像データから特定される検出値を示す図である。
【図11】検査装置が実行するオブジェクト特定処理を示すフローチャートである。
【図12】画像データに処理を行うために設定される座標を示す図である。
【図13】判定処理の処理結果を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
100…検査装置、10…制御部、11…CPU、12…メモリ、13…インタフェース、20…画像読取部、21…光源、22…センサ、23、24…搬送ロール、25…信号処理回路、30…操作部、40…通知部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像読取装置、検査装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等のシート状物を光学的に読み取り、そのシート状物が真正であるか否かを判定することがあるが、かかる判定を行う場合のシート状物に金属繊維等の異物を含める技術がある(例えば、特許文献1参照)。このとき、異物の数をそのシート状物が真正であるか否かの判定基準に用いることがある。また、このシート状物の製造過程において、異物の数が所定の範囲内であれば良品とみなし、それ以外のものを不良品とみなすこともある。
【特許文献1】特開平9−120456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、シート状物を光学的に読み取って画像データを生成する場合には、用紙の端部にいわゆるカール等による「浮き」が生じたりすることによって、端部に相当する部分がその他の部分よりも暗く読み取られてしまうことがある。このような場合において、上述の異物が端部近傍に存在したときには、異物を正確に認識できないおそれがある。また、読み取り時に用紙が斜行(スキュー)した場合にも、画像データの端部に相当する位置にノイズが現れ、このノイズが被検出体として誤認識されるおそれがある。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、上述した異物等を被検出体とし、これを精度良く認識するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明は、基材と被検出体とを含むシート状物の表面を表す画像データを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された画像データが表す画像領域から端部領域を除いた領域に現れるオブジェクトを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出されたオブジェクトのうちの前記領域と前記端部領域との境界に接する位置に現れるオブジェクトについて、そのサイズを大きくするように補正する補正手段と、前記抽出手段により抽出され、または、前記補正手段により補正されたオブジェクトに基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体を特定する特定手段とを備える画像処理装置を提供する。
【0006】
また、かかる構成において、前記シート状物が四辺形であって、前記抽出手段は、対向するある2辺の端部である前記端部領域の幅と、前記2辺と隣り合う2辺の端部である前記端部領域の幅とを異ならせるように構成してもよいが、もちろん、これらの幅を同一としてもよい。
【0007】
また、本発明は、かかる構成を有する画像処理装置を備える画像読取装置や検査装置としても提供され得るものである。また、本発明は、上述した画像処理装置の機能を実現するための方法やプログラムとしても提供され得るものである。例えば、本発明に係る画像処理方法は、コンピュータにより実行される画像処理方法であって、基材と被検出体とを含むシート状物の表面を表す画像データを取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得された画像データが表す画像領域から端部領域を除いた領域に現れるオブジェクトを抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップにおいて抽出されたオブジェクトのうちの前記領域と前記端部領域との境界に接する位置に現れるオブジェクトについて、そのサイズを大きくするように補正する補正ステップと、前記抽出ステップにおいて抽出され、または、前記補正ステップにおいて補正されたオブジェクトに基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体を特定する特定ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、被検出体を精度良く認識することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
[構成]
図1は、本発明の一実施形態である検査装置100の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように、検査装置100は、制御部10と、画像読取部20と、操作部30と、通知部40とを備える。制御部10は、画像読取部20および通知部40の動作を制御するとともに、画像読取部20から取得した画像データに所定の画像処理を実行する。画像読取部20は、用紙(シート状物)を光学的に読み取り、これを表す画像データを生成して制御部10に供給する。操作部30は、キーボード等の入力装置またはボタン等の操作子を備え、ユーザによる操作を受け付けてこれを表す制御信号を生成し、制御部10に供給する。通知部40は、液晶ディスプレイやスピーカを備え、制御部10から供給される画像信号や音声信号を出力することによりユーザに各種情報を通知する。
【0010】
制御部10は、より詳細には、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリ12と、インタフェース13とを備える。CPU11は、メモリ12に記憶されたプログラムを実行する。メモリ12は、例えば、各種プログラムの記憶されたROM(Read Only Memory)や、CPU11のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)を備える。インタフェース13は、制御部10に接続される各部と情報のやりとりを可能にする物理インタフェースであり、画像読取部20および操作部30から各種の情報を取得するとともに、画像読取部20および通知部40に各種の情報を供給する。
【0011】
なお、メモリ12が記憶しているプログラムには、検査装置100の動作を制御する基本プログラムP1と、用紙の判定を行うための検査プログラムP2とがある。検査プログラムP2によって実現される処理には、平滑化処理、膨張処理、二値化処理などの画像処理などがあるが、詳細については後述する。
【0012】
画像読取部20の構成は、具体的には図2のようになっている。同図に示すように、画像読取部20は、光源21と、センサ22と、搬送ロール23、24と、信号処理回路25とを備える。光源21は、例えば蛍光ランプであり、センサ22が撮像を行うべき位置に光を照射する。センサ22は、例えば密着型のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、光源21により照射された光のうち用紙Sにおいて反射した反射光を受光し、その濃淡を示す画像信号を生成する。搬送ロール23、24は、用紙Sを図中の矢印方向に搬送するロール状部材である。信号処理回路25は、センサ21から供給される画像信号にAD変換等の信号処理を実行し、アナログの画像信号をデジタルの画像データに変換して出力する回路である。なお、光源21、センサ22および用紙Sは、図2の紙面に垂直な方向に有限の幅を有している。この方向のことを、以下では「X方向」という。そして、X方向に直交する方向、すなわち図2中の矢印方向のことを、以下では「Y方向」という。
【0013】
また、画像データのサイズや階調は任意であるが、ここではA4サイズ(210mm×297mm)を1インチ当たり600ドット(画素)の入力解像度で読み取り、各ドットが8ビットの階調(256階調)を示すデータであるとする。このときの階調値(輝度情報)は、「0」を白とし、「255」を黒とする。また、画像データは、用紙の表面の全体を画像領域に含むとする。つまり、画像データの画像領域は、X方向に4960(≒210×600÷25.4)画素であり、Y方向に7016(≒297×600÷25.4)画素である。
【0014】
ここで、図3および4を参照して、本実施形態において読み取られる用紙について説明する。図3に示すように、本実施形態の用紙Sは、基材S1に被検出体S2を埋め込んでなるシート状物である。基材S1は、通常の用紙と同様のものが用いられるが、その成分は、例えばセルロースなどである。被検出体S2は、例えば繊維状の金属であり、基材S1に漉き込むようにして埋め込まれている。被検出体S2は、用紙Sの全体に数本〜50本程度埋め込まれている。なお、被検出体S2の光の透過率(または反射率)は、基材S1のそれよりも低く、被検出体S2の厚みは、用紙Sの厚み以下である。それゆえ、用紙Sを光にかざした場合などには、用紙Sの位置や形状がある程度視認できるようになっている。
【0015】
図4は、用紙Sに被検出体S2が埋め込まれている様子を例示した図であり、用紙Sの断面を示している。例えば、図4(a)に示すように、用紙Sがなす平面に対して被検出体S2がほぼ平行に埋め込まれている場合には、被検出体S2は、その全体がほぼ一様な濃度で視認される。一方、例えば図4(b)に示すように、用紙Sがなす平面に対して被検出体S2が傾いた状態で埋め込まれている場合には、被検出体S2として視認される部分の濃度は一様とならず、徐々に薄く(あるいは濃く)なる。用紙Sの製造過程においては、被検出体S2を常に図4(a)に示すような状態で埋め込むことは困難であり、その埋め込み状態には多少の変動を生じ得る。また、被検出体S2が裏面寄りに埋め込まれた場合には、被検出体S2をほとんど視認できない場合もある。それゆえ、本実施形態の検査装置100においては、後述するオブジェクト抽出処理を実行することにより被検出体S2を目立ちやすくして、オブジェクトとして抽出されやすくしているのである。
【0016】
[動作]
本実施形態の構成は以上の通りである。続いて、上述の検査装置100が実行する処理の内容を説明する。以下においては、まず、検査装置100が実行する一連の処理の概要について説明し、その後、その処理における具体的な動作について一の動作例を挙げて説明する。
【0017】
検査装置100は、検査対象の用紙が所定の基準を満たしているか否かを判定するために用いられるものである。この判定の基準はさまざまであるが、例えば、被検出体が所定の個数埋め込まれているか、所定の位置にあるか、所定の形状をなしているか、などである。検査装置100は、このような判定を画像読取部20において生成された画像データに基づいて行うが、画像読取部20において生成された画像データは、用紙の端部が浮いたりすることによって、端部に相当する領域(以下「端部領域」という。)の明度が低下することがある。このような場合において、用紙の端部領域に相当する部分に被検出体が埋め込まれているときには、正確に認識できないおそれがある。そこで、検査装置100においては、画像データが表す画像領域から上述の端部領域を除いた領域について被検出体に相当するオブジェクトを抽出することとしている。また、端部領域を除くことに伴い、抽出されるオブジェクトが実際よりも小さくなってしまう可能性があるため、検査装置100においては所定の条件を満たすオブジェクトのサイズを補正することとしている。
【0018】
ここでは、検査装置100が行う判定の一例として、「用紙に含まれる被検出体が所定の範囲内の個数であるか否か」を判定する場合の動作例を挙げて説明する。なお、ここにおいて、1枚の用紙に含まれる被検出体の個数の理想値は「5」であり、ここに「±1」の許容範囲を設けるとする。つまり、ここでいう「所定の範囲の個数」とは、「4」以上「6」以下であり、この基準を満たす用紙を使用可能品(良品)とし、それ以外の用紙を不良品とするのが本実施形態における判定の内容である。また、本実施形態における被検出体は、長さが25mm、直径(太さ)が30μmの繊維状の金属であるとする。
【0019】
図5は、検査装置100の制御部10により検査プログラムP2が実行されたときの処理を示すフローチャートである。検査プログラムP2は、ユーザが用紙の判定を行うための操作(ボタン押下等)を行い、この操作に対応する制御信号を制御部10が取得したときに実行されるプログラムである。以下、同図に沿ってその内容を説明する。
【0020】
はじめに、検査装置100の制御部10は、画像読取部20に用紙の読み取りを行わせ、画像読取部20により生成された画像データをインタフェース13を介して取得する(ステップSa)。次に、制御部10は、画像読取部20から取得した画像データの端部領域に相当する画素の階調値を「0」にする(ステップSb)。すなわち、このとき制御部10は、画像データの端部領域に相当する画素を、その階調値によらず全て白に変化(クリア)させる。
【0021】
このとき画像データに対して行われる処理を、図面を示して説明する。図6は、画像データの端部領域を説明するための図である。なお、同図は、要部を強調して示したものであるため、実際の縮尺とは異なっている。同図において、領域A1は、画像データが表す画像領域の全体を表している。また、領域A2、すなわちハッチングで示した領域は、後述するオブジェクト抽出処理の処理対象となる領域(以下「対象領域」という。)を表している。そして、端部領域とは、領域A1から領域A2を除いた部分のことであり、領域A2の上下左右に生じる領域のことである。
【0022】
この端部領域は、上下方向(Y方向)と左右方向(X方向)とでその幅が異なっている。具体的には、画像データの上下の端部領域の幅はそれぞれ5mmであり、画像データの左右の端部領域の幅はそれぞれ2mmである。上下方向の端部領域の幅を左右方向の端部領域の幅よりも大きくしたのは、この方向が用紙の搬送方向に一致するからである。なお、それぞれの端部領域の幅を画素数に換算すると、左右方向の幅は47(≒2×600÷25.4)画素ずつに相当し、上下方向の幅は118(≒5×600÷25.4)画素ずつに相当する。制御部10は、この端部領域に含まれる画素の全ての階調値を「0」にする。
【0023】
ここで図5のフローチャートの説明に戻る。端部領域をクリアしたら、続いて制御部10はオブジェクト抽出処理を実行する(ステップSc)。この処理は、図6に示した領域A1、すなわち、画像データが表する画像領域全体について実行される。しかし、端部領域に相当する画素はクリアされているため、実際にオブジェクト抽出処理が実行される画像領域は、Y方向に6780(=7016−118×2)画素分、X方向に4866(=4960−47×2)画素分の画像領域、すなわち図6に示した領域A1である。
【0024】
図7は、ステップScのオブジェクト抽出処理を示すフローチャートである。以下、同図に沿って説明する。はじめに、制御部10は、画像データに対して平滑化処理を実行する(ステップSc1)。この処理は、基材部分の濃淡の差を低減させるための処理であり、例えば、所定のサイズの平滑化フィルタを適用することにより実現される。続いて、制御部10は、画像データに対して膨張処理を実行する(ステップSc2)。この処理は、被検出体が埋め込まれている部分を強調するための処理であり、具体的には、注目画素の近傍にある他の画素(以下「近傍画素」という。)を参照し、近傍画素に1つでも注目画素の階調値よりも大きい(すなわち濃い)階調値を有する画素があれば、注目画素の階調値をその近傍画素の階調値に置換する処理である。
【0025】
この膨張処理について、具体的な例を挙げて説明する。例えば、図8(a)に示すような画素P(i,j)を有する画像データについて考える。なお、ここにおいて、iはX方向の座標値を表しており、jはY方向の座標値を表している。また、説明の便宜上、画素Pの階調値は「1」であり、その他の画素の階調値は全て「0」であるとする。このような画像データに対して、例えば注目画素の上下左右の2ライン分の画素を参照した膨張処理を実行すると、画素P(i−2,j−2)を注目画素とした場合、近傍画素は、図8(b)においてハッチングで示した画素となる。すなわち、近傍画素は、画素P(i−4,j−4)〜P(i,j−4)、P(i−4,j−3)〜P(i,j−3)、P(i−4,j−2)〜P(i−3,j−2)、P(i−1,j−2)〜P(i,j−2)、P(i−4,j−1)〜P(i,j−1)、P(i−4,j)〜P(i,j)の24画素である。このとき、近傍画素には階調値が「1」である画素P(i,j)が含まれるので、注目画素である画素P(i−2,j−2)の階調値は、「0」から「1」に置換される。このような処理を各画素について実行すると、その処理結果は、図8(c)に示すように、画素P(i,j)の近傍の24画素の階調値が「1」となる。
【0026】
なお、この膨張処理においては、近傍画素の数はいくつであってもよい。例えば、上述した例では注目画素の上下左右の2ライン分の画素を近傍画素としたが、これを1ライン分としてもよい。以下では、注目画素の上下左右の2ライン分の画素を近傍画素とした膨張処理のことを、注目画素を中心とした5×5画素を参照する処理という意味で「5×5画素の膨張処理」という。また、同様に、注目画素の上下左右の1ライン分の画素を近傍画素とした膨張処理のことを、注目画素を中心とした3×3画素を参照する処理という意味で「3×3画素の膨張処理」という。つまり、ステップSc2において実行した膨張処理は、5×5画素の膨張処理である。
【0027】
ここで図7のフローチャートの説明に戻る。制御部10は、ステップSc2の膨張処理を実行したら、再び膨張処理を実行する(ステップSc3)。このとき実行される膨張処理は、3×3画素の膨張処理である。続いて、制御部10は、ステップSc1、Sc2およびSc3において実行した平滑化処理と膨張処理とを同じ順番で繰り返す(ステップSc4、Sc5、Sc6)。
【0028】
次に、制御部10は、画像データの全画素の階調値の平均値を算出する(ステップSc7)。制御部10はこのとき算出した平均値に基づき、後段の二値化処理における閾値Th1を決定する(ステップSc8)。閾値Th1と平均値の関係は任意であり、例えば、平均値に所定の係数を乗算した値を閾値Th1とすることもできるが、本動作例においては、平均値から「22」を加算した値を閾値Th1としている。
【0029】
そして、制御部10は、このようにして決定された閾値Th1を用いて二値化処理を実行する(ステップSc9)。すなわち、制御部10は、上述の閾値Th1より小さい階調値を有する画素の階調値を全て「0」とし、上述の閾値Th1以上の階調値を有する画素の階調値を全て「1」とする置換を行う。
【0030】
二値化処理を実行したら、制御部10は、この二値化後の画像データに基づいてオブジェクトを抽出する処理を行う(ステップSc10)。この処理は、例えば、階調値が「1」である画素が連続した固まりを1つのオブジェクトとみなしてラベリングを行うとともに、それぞれのオブジェクトの長さ、周囲長および面積を算出し、これらが所定の閾値に満たないオブジェクトは、用紙の浮きや照射光のムラ等に起因して抽出されるオブジェクト、すなわちノイズとみなして除外する処理である。本実施形態においては、長さ、周囲長および面積の閾値を、それぞれ「236」、「600」および「7000」とした。なお、これらの閾値の単位は、いずれも「画素」である。つまり、長さの閾値Th1は、およそ10(≒236÷600×25.4)mmである。また、以下において単に「オブジェクト」といった場合、これはステップSc10において抽出されたオブジェクト、すなわち画像データに現れたノイズを除外したオブジェクトのことを指すものとする。
【0031】
オブジェクトを抽出したら、制御部10は、それぞれのオブジェクトについて長さ、周囲長、面積、重心および角度を算出し、これらを各オブジェクトの検出値としてメモリ12に記憶する(ステップSc11)。なお、ここにおいて「角度」とは、所定の方向(例えばX方向またはY方向)の直線とオブジェクトとがなす角度のことで、単位は「度」である。
【0032】
オブジェクト抽出処理は以上の通りである。このような処理を実行した結果、制御部10は、画像データのそれぞれのオブジェクトについての検出値を記憶することとなる。例えば、画像データが図9に示すような画像データであった場合、制御部10は図10に示すような検出値をメモリ12に記憶する。なお、同図において、A〜Eはオブジェクトを表している。また、それぞれの検出値は、図12に示す座標系を定義した場合の値を表している。同図に示すように、制御部10は、長さ、周囲長、面積、重心(X方向)、重心(Y方向)および角度の値をオブジェクト毎に記憶する。ここにおいて、各検出値の単位は、角度が「°」であり、その他が「画素」である。なお、図9に示した破線は、端部領域の境界を示している。
【0033】
ここで図5のフローチャートの説明に戻る。オブジェクト抽出処理を実行したら、制御部10はオブジェクト特定処理を実行する(ステップSd)。この処理は、上述のオブジェクト抽出処理において抽出されたオブジェクトから、所定の条件を満たすオブジェクトのサイズを補正し、被検出体に相当するオブジェクトを特定するための処理である。
【0034】
なお、オブジェクト特定処理においては、制御部10は被検出体に相当するオブジェクトを特定するために閾値Th2を用いている。具体的な閾値Th2の値は任意であるが、閾値Th2は、前記オブジェクト抽出のときの閾値Th1より大きい値である。ここでは、閾値Th2を「354」とする。すなわち、ここにおいて、閾値Th2は「15(≒354÷600×25.4)」mmに相当する。
【0035】
図11は、ステップSdのオブジェクト特定処理を示すフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに、制御部10は、処理対象のオブジェクトが上下方向の端部領域に接する位置にあるか否かを判断する(ステップSd1)。図12は、ステップSd1における判断の具体的な手順を説明するための図である。以下、同図を参照してこの処理を説明する。
【0036】
制御部10は、画像領域全体について適当に原点Oを定め、X方向およびY方向に座標軸XおよびYを設定する。ここでは、画像領域の左上端部を原点Oとしている。つまり、このとき、X座標の最小値は「0」、最大値は「4959」であり、Y座標の最小値は「0」、最大値は「7015」である。なお、この座標値は、画像領域の画素の数に対応している。そして、制御部10は、処理対象のオブジェクトの長さをl、X方向の重心をx、Y方向の重心をy、角度をθとした場合に、以下の(1)式または(2)式のいずれかを満たすか否かを判断する。なお、(1)式および(2)式において、Cはオブジェクトの検出位置誤差を考慮した適当な定数(例えば「10」)であり、また、|cosθ|はcosθの絶対値を表している。制御部10は、処理対象のオブジェクトが(1)式を満たす場合には、そのオブジェクトが対象領域の上端に接しているとみなし、処理対象のオブジェクトが(2)式を満たす場合には、そのオブジェクトが対象領域の下端に接しているとみなす。
【数1】
【数2】
【0037】
ここで図11のフローチャートの説明に戻る。続いて、制御部10は、ステップSd1の判断結果の如何によらず、処理対象のオブジェクトが左右方向の端部領域に接する位置にあるか否かを判断する(ステップSd2、Sd5)。この判断も、上述したステップSd1と同様の手順で行われるが、ここでは、制御部10は、以下の(3)式または(4)式のいずれかを満たすか否かを判断する。制御部10は、処理対象のオブジェクトが(3)式を満たす場合には、そのオブジェクトが対象領域の左端に接しているとみなし、処理対象のオブジェクトが(4)式を満たす場合には、そのオブジェクトが対象領域の右端に接しているとみなす。
【数3】
【数4】
【0038】
上述のように、処理対象のオブジェクトが端部領域に接しているか否かを判断したら、制御部10は、それぞれの判断結果に応じた処理を行う。まず、処理対象のオブジェクトが上下方向の端部領域と左右方向の端部領域の双方に接していると判断された場合(ステップSd2;YES)、すなわち、対象領域の頂点近傍に処理対象のオブジェクトが現れている場合には、制御部10は、以下の(5)式にしたがって処理対象のオブジェクトの長さを補正する(ステップSd3)。なお、(5)式においては、補正後の処理対象のオブジェクトの長さをLとしている。また、第2項の分子(すなわち「118」)および第3項の分子(すなわち「47」)は、それぞれ、上下方向および左右方向の端部領域の幅の画素数から決定されている。(5)式の第2項は上下方向についての補正に寄与し、(5)式の第3項は左右方向についての補正に寄与するということである。例えば、処理対象のオブジェクトの角度θが0°であった場合、このオブジェクトの長さは118画素分、つまり5mm分長くなるように補正されるということである。
【数5】
【0039】
また、処理対象のオブジェクトが上下方向の端部領域のみに接していると判断された場合(ステップSd2;NO)には、制御部10は、以下の(6)式にしたがって処理対象のオブジェクトの長さを補正する(ステップSd4)。なお、(6)式は、上述の(5)式の第3項を除いたものである。
【数6】
【0040】
また、処理対象のオブジェクトが左右方向の端部領域のみに接していると判断された場合(ステップSd5;YES)には、制御部10は、以下の(7)式にしたがって処理対象のオブジェクトの長さを補正する(ステップSd6)。なお、(7)式は、上述の(5)式の第2項を除いたものである。
【数7】
【0041】
なお、処理対象のオブジェクトがいずれの端部領域にも接していないと判断された場合(ステップSd5;NO)には、制御部10は、処理対象のオブジェクトの長さを補正しない。これは、処理対象のオブジェクトがいずれの端部領域にも接していなければ、このオブジェクトは端部領域をクリアしたことによる影響を受けないからである。
【0042】
さて、ステップSd3、Sd4またはSd6による補正を行った場合には、制御部10は、処理対象のオブジェクトの長さが閾値Th2以上となるか否かを判断する(ステップSd7)。このとき、制御部10は、長さを補正していないオブジェクトについては、上述したlの値を閾値Th2と比較し、長さを補正したオブジェクトについては、補正後のLの値を閾値Th2と比較する。そして、処理対象のオブジェクトの長さが閾値Th2以上となった場合(ステップSd7;YES)には、制御部10はこのオブジェクトを被検出体に相当するオブジェクトであるとみなし、特定する(ステップSd8)。このとき特定されるオブジェクトのことを、以下では「特定オブジェクト」という。一方、処理対象のオブジェクトの長さが閾値Th2未満であった場合(ステップSd7;NO)には、制御部10はこのオブジェクトを特定オブジェクトであるとはみなさない。
【0043】
制御部10は、これらの処理を処理対象のオブジェクトの全てに実行する。つまり、制御部10は、上述した処理を処理対象のオブジェクトの全てに実行したか否かを判断し(ステップSd9)、未処理のオブジェクトが存在する場合(ステップSd9;NO)には、未処理のオブジェクトに対してステップSd1からの処理を実行する。そして、上述した処理を処理対象のオブジェクトの全てに実行した場合(ステップSd9;YES)には、制御部10は、ステップSd8において特定オブジェクトとみなされたオブジェクトの数に基づき、この画像データに対応する用紙に含まれる被検出体の数を特定する(ステップSd10)。このとき特定される値のことを、以下では「N」とする。
【0044】
このようにして用紙に含まれる被検出体の数Nを特定したら、制御部10は、この用紙が良品か否かを判断する。上述したように、この動作例においては、被検出体の個数は「4」以上「6」以下を許容範囲としたから、制御部10は、被検出体の数Nがこの範囲に含まれるか否かを判断する(ステップSd11)。そして、被検出体の数Nが「4」以上「6」以下である場合には(ステップSd11;YES)、制御部10は読み取った用紙が良品であると判定し、この旨を示す画像信号や音声信号を生成して通知部40に供給する(ステップSd12)。一方、被検出体の数Nが「4」以上「6」以下でない場合には(ステップSd11;NO)、制御部10は読み取った用紙が不良品であると判定し、この旨を示す画像信号や音声信号を生成して通知部40に供給する(ステップSd13)。
【0045】
オブジェクト特定処理がこのように行われた場合の結果について、図13を例示して説明する。図13は、オブジェクト抽出処理によって図10に示した検出値がメモリ12に記憶された場合の判定処理の処理結果を示す図である。同図に示すように、メモリ12に記憶された検出値には、オブジェクト特定処理の前後において変化を生じるものがある。オブジェクト特定処理の前後において検出値が変化するのは、図9に示したオブジェクトEのように、端部領域に接するように位置するオブジェクトである。このようなオブジェクトは、図13に示すように、その長さ、周囲長、面積および重心が変化する。例えば、オブジェクトEの長さは、310画素から434画素、すなわち、13.1(≒310÷600×25.4)mmから18.4(≒434÷600×25.4)mmに変化している。これは、オブジェクトEの長さが、上述の(6)式にしたがって補正されたからである。この補正により、オブジェクトEの長さは閾値Th2(すなわち354)以上に変化するため、被検出体に相当するオブジェクトとして特定されるようになる。
【0046】
このように、本実施形態の検査装置100によれば、画像データが表す画像領域から端部領域をクリアしてからオブジェクトを抽出することにより、画像データの端部に現れるノイズによる誤認識を抑制するとともに、端部領域に接するオブジェクトの長さを補正することにより、上述の端部領域のクリアに起因する誤認識を抑制することが可能となる。
【0047】
[変形例]
以上においては、一の好適な実施形態を例示して本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の態様にて実施することも可能である。本発明においては、例えば、上述した実施形態に対して以下のような変形を適用することができる。なお、これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
【0048】
上述した実施形態においては、「シート状物」の一例として用紙を挙げたが、本発明に係るシート状物はこれに限らず、例えば、ICカード等のカード状の物体などであってもよい。また、被検出体についても、上述した実施形態では繊維状の金属であるとしたが、ICチップのような物体であってもよいし、繊維状でなくともよい。例えば、被検出体は、基材よりも薄く形成されたテープ状の金属であってもよい。また、被検出体の材質も金属に限らず、例えば、大バルクハウゼン効果を有する磁性体やプラスチックなどであってもよい。
【0049】
また、上述した実施形態においては、オブジェクト抽出処理を図7に示したフローチャートにて実行したが、オブジェクト抽出処理はこの手順に限定されない。例えば、上述の実施形態は平滑化処理と膨張処理とを複数回繰り返すものであったが、これを1回ずつにしてもよいし、いずれかの処理を省略してもよい。また、基材と被検出体が明瞭に識別されるようなシート状物にあっては、平滑化処理または膨張処理を実行しなくてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態においては、(5)〜(7)式に示した演算により補正を行ったが、補正のための演算はこの例に限らない。例えば、(5)〜(7)式に示した演算にあっては、sinθやcosθが0に近づくほど補正値が大きくなるので、所定の上限値を設けてもよい。また、補正に際しては、オブジェクトの長さを補正するのではなく、面積や周囲長が大きくなるような補正をしてもよい。要するに、結果的にオブジェクトのサイズを大きくできれば、いずれの検出値を補正してもよいということである。
【0051】
また、上述の実施形態においては、画像読取部20は用紙からの反射光に基づいて画像データを生成する構成であったが、例えば、読み取られるシート状物の基材が透過率の高い物質である場合などには、シート状物を透過した透過光に基づいて画像データを生成する構成を用いることができる。この場合、センサ(すなわち受光手段)と光源(すなわち照射手段)は、シート状物を挟んで互いに対向するように配置すればよい。
【0052】
また、上述した実施形態は、本発明を検査装置に適用するものであったが、例えば、上述の制御部10に相当する機能をプリンタ等の画像形成装置やスキャナ等の画像読取装置に搭載することも可能である。また、本発明は、上述の検査プログラムP2に相当するプログラムとして提供されたり、あるいは、このプログラムを記録したROM等の記録媒体として提供されたりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態である検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】検査装置の画像読取部の構成を示す図である。
【図3】シート状物の一例を示す図である。
【図4】シート状物の一例を示す図である。
【図5】検査装置により検査プログラムが実行されたときの処理を示すフローチャートである。
【図6】画像データの端部領域を説明するための図である。
【図7】検査装置が実行するオブジェクト抽出処理を示すフローチャートである。
【図8】膨張処理を説明するための図である。
【図9】画像データの一例を示す図である。
【図10】図9の画像データから特定される検出値を示す図である。
【図11】検査装置が実行するオブジェクト特定処理を示すフローチャートである。
【図12】画像データに処理を行うために設定される座標を示す図である。
【図13】判定処理の処理結果を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
100…検査装置、10…制御部、11…CPU、12…メモリ、13…インタフェース、20…画像読取部、21…光源、22…センサ、23、24…搬送ロール、25…信号処理回路、30…操作部、40…通知部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と被検出体とを含むシート状物の表面を表す画像データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された画像データが表す画像領域から端部領域を除いた領域に現れるオブジェクトを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出されたオブジェクトのうちの前記領域と前記端部領域との境界に接する位置に現れるオブジェクトについて、そのサイズを大きくするように補正する補正手段と、
前記抽出手段により抽出され、または、前記補正手段により補正されたオブジェクトに基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体を特定する特定手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記シート状物が四辺形であって、
前記抽出手段は、対向するある2辺の端部である前記端部領域の幅と、前記2辺と隣り合う2辺の端部である前記端部領域の幅とを異ならせる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、
前記取得手段により取得された画像データに所定の画像処理を実行する処理実行手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記処理実行手段は、
平滑化処理、膨張処理および二値化処理の少なくともいずれかを実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記処理実行手段は、
前記平滑化処理を実行した後に前記膨張処理を実行し、前記膨張処理を実行した後に前記二値化処理を実行する
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記抽出手段は、
前記オブジェクトの長さ、周囲長および面積を表す検出値の少なくとも1つの検出値について第1の閾値を設定し、当該検出値が前記第1の閾値以上であるオブジェクトを抽出し、
前記特定手段は、
前記オブジェクトの長さ、周囲長および面積を表す検出値の少なくとも1つの検出値について前記第1の閾値よりも大である第2の閾値を設定し、当該検出値が前記第2の閾値以上であるオブジェクトを、前記シート状物に含まれる被検出体として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記補正手段は、
前記オブジェクトのサイズの補正量を、当該オブジェクトの位置、角度および前記端部領域の幅に基づいて決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記シート状物に光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射された光のうちの前記シート状物を反射した反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光された反射光に基づいて画像データを生成し、当該画像データを前記取得手段に取得させる生成手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記シート状物に光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射された光のうちの前記シート状物において透過した透過光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光された透過光に基づいて画像データを生成し、当該画像データを前記取得手段に取得させる生成手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記特定手段による特定結果に基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体の数が所定の基準を満たすか否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項11】
コンピュータにより実行される画像処理方法であって、
基材と被検出体とを含むシート状物の表面を表す画像データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された画像データが表す画像領域から端部領域を除いた領域に現れるオブジェクトを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出されたオブジェクトのうちの前記領域と前記端部領域との境界に接する位置に現れるオブジェクトについて、そのサイズを大きくするように補正する補正ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出され、または、前記補正ステップにおいて補正されたオブジェクトに基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体を特定する特定ステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
基材と被検出体とを含むシート状物の表面を表す画像データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された画像データが表す画像領域から端部領域を除いた領域に現れるオブジェクトを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出されたオブジェクトのうちの前記領域と前記端部領域との境界に接する位置に現れるオブジェクトについて、そのサイズを大きくするように補正する補正手段と、
前記抽出手段により抽出され、または、前記補正手段により補正されたオブジェクトに基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体を特定する特定手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記シート状物が四辺形であって、
前記抽出手段は、対向するある2辺の端部である前記端部領域の幅と、前記2辺と隣り合う2辺の端部である前記端部領域の幅とを異ならせる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記抽出手段は、
前記取得手段により取得された画像データに所定の画像処理を実行する処理実行手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記処理実行手段は、
平滑化処理、膨張処理および二値化処理の少なくともいずれかを実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記処理実行手段は、
前記平滑化処理を実行した後に前記膨張処理を実行し、前記膨張処理を実行した後に前記二値化処理を実行する
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記抽出手段は、
前記オブジェクトの長さ、周囲長および面積を表す検出値の少なくとも1つの検出値について第1の閾値を設定し、当該検出値が前記第1の閾値以上であるオブジェクトを抽出し、
前記特定手段は、
前記オブジェクトの長さ、周囲長および面積を表す検出値の少なくとも1つの検出値について前記第1の閾値よりも大である第2の閾値を設定し、当該検出値が前記第2の閾値以上であるオブジェクトを、前記シート状物に含まれる被検出体として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記補正手段は、
前記オブジェクトのサイズの補正量を、当該オブジェクトの位置、角度および前記端部領域の幅に基づいて決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記シート状物に光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射された光のうちの前記シート状物を反射した反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光された反射光に基づいて画像データを生成し、当該画像データを前記取得手段に取得させる生成手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記シート状物に光を照射する照射手段と、
前記照射手段により照射された光のうちの前記シート状物において透過した透過光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光された透過光に基づいて画像データを生成し、当該画像データを前記取得手段に取得させる生成手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記特定手段による特定結果に基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体の数が所定の基準を満たすか否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項11】
コンピュータにより実行される画像処理方法であって、
基材と被検出体とを含むシート状物の表面を表す画像データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された画像データが表す画像領域から端部領域を除いた領域に現れるオブジェクトを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出されたオブジェクトのうちの前記領域と前記端部領域との境界に接する位置に現れるオブジェクトについて、そのサイズを大きくするように補正する補正ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出され、または、前記補正ステップにおいて補正されたオブジェクトに基づいて、前記シート状物に含まれる被検出体を特定する特定ステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−129976(P2008−129976A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316646(P2006−316646)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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