説明

画像処理装置、X線撮影装置、及び画像処理方法

【課題】画像データのヒストグラムの分布が一定でない画像を、再撮影を行うことなく一定の画質で表示する。
【解決手段】医用画像のヒストグラムを生成し(S301)、そのヒストグラムと医用画像を撮影したときのオーダにおいて理想的とされる医用画像のヒストグラムとに基づいてLUTを生成し(S307〜S309)、そのLUTを用いてX線平面検出器より出力されたディジタル画像データの階調変換を行う(S311)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、X線撮影装置、及び画像処理方法に係り、特にディジタルX線画像データを診断に適した階調に変換・表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像データのヒストグラムから、所定濃度範囲に含まれる画素の割合や最大値・最小値などの特徴量を算出し、その特徴量に基づき前記画像データの良否判定を行い、不良判定時には階調処理を行わせる放射線画像処理装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、画像データ内の複数指定した関心領域(以下、「ROI」という。)のそれぞれについてヒストグラムを生成し、各ヒストグラムから画素値の最大値・最小値を求め、ブラウン管モニタ等の表示装置の有効輝度範囲に前記画素値の最大値・最小値が対応するような画素値/輝度変換ルックアップテーブル(以下「LUT」という。)をROIごとに作成する医用画像表示装置が開示されている。
【特許文献1】特開平6-78920号公報
【特許文献2】特開平8-111816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、X線撮影装置を用いた診断では、各検査対象部位において診断したい部分が決まっているため、表示系も考慮した上で、おおよそ理想的な画像データおよびそのヒストグラムを求めることができる。当然、そこには描出したい病変の種類、診断する医師の嗜好性も影響する。
【0005】
上記従来の技術は、画像データのヒストグラムを表示系の出力範囲に収めるための技術であり、例えば、特許文献1においては、画像データのヒストグラムが低濃度側または高濃度側に偏った場合に、診断に有効な濃度範囲に画素値を広く分布するように階調処理を行うものである。また、特許文献2は、特許文献1の思想を拡張し、1つの画像データ内に複数のROIを設定し、それぞれのROI毎に適した画素値/輝度変換LUTを作成し階調処理を行うものである。
【0006】
よって、上記両技術では、表示系の出力範囲に画像データの階調を収めることは可能であるが、画像データのヒストグラムの分布が理想的なヒストグラムの分布と著しく異なる場合、それは最適な階調を有する画像データとはならないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたもので、画像データのヒストグラムの分布が一定でない場合においても、一定の画質を得ることができる画像処理装置、X線撮影装置、及び画像処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、X線撮影装置を用いて被検体を撮影して得られた医用画像を読み込む読込手段と、前記医用画像の撮影に適用されたオーダにおいて理想的とされる医用画像のヒストグラムである目標ヒストグラムを格納する格納手段と、前記読み込まれた医用画像の画素値の分布を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、前記生成されたヒストグラムと前記目標ヒストグラムとに基づいて、前記医用画像の階調を前記理想的とされる医用画像の階調に変換するためのルックアップテーブルを生成するルックアップテーブル生成手段と、前記ルックアップテーブルを用いて前記医用画像の階調を変換する階調変換手段と、前記階調変換後の医用画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るX線撮影装置は、上記画像処理装置を備えることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明に係る画像処理方法は、X線撮影装置を用いて被検体を撮影して得られた医用画像において前記X線撮影装置が備えるX線絞りが撮影された絞り領域が、前記医用画像に占める割合により定義された第一割合閾値と、前記医用画像において前記X線撮影装置が備えるX線検出器に前記X線撮影装置から照射されたX線が直接入射した直接X線領域が、前記医用画像に占める割合により定義された第二割合閾値と、の入力を受け付けて登録するステップと、前記医用画像と、前記医用画像を撮影したときの前記X線絞りの位置情報と、を読み込むステップと、前記医用画像の撮影に適用されたオーダにおいて理想的とされる医用画像から、前記絞り領域と前記直接X線領域とを削除した領域の画素値の分布を示す目標ヒストグラムを読み込むステップと、前記医用画像の画素値の分布を示すヒストグラムを生成するステップと、前記X線絞りの位置情報に基づいて、前記絞り領域が前記医用画像に占める割合を算出し、その算出した割合が前記第一割合閾値以上であれば、前記医用画像のヒストグラムから前記絞り領域に相当する画素値を有する画素を削除すると共に、前記直接X線領域に相当する画素値を有する画素数が前記医用画像に占める割合を算出し、その算出した割合が前記第二割合閾値以上であれば、前記医用画像のヒストグラムから前記直接X線領域に相当する画素値を有する画素を削除するステップと、前記絞り領域及び前記直接X線領域に相当する画素が削除されたヒストグラムを、前記医用画像の階調数及び前記理想的とされる医用画像の階調数よりも少ない所定の階調数を用いて平坦化するための第一ルックアップテーブルと、前記目標ヒストグラムを前記所定の階調数を用いて平坦化するためのルックアップテーブルとは逆の変換特性を有する第二ルックアップテーブルと、を生成するステップと、前記第一ルックアップテーブル及び前記第二ルックアップテーブルに基づいて、前記医用画像の階調を前記理想的とされる医用画像の階調に変換するステップと、前記階調変換後の医用画像を表示するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像データのヒストグラムの分布が一定でない場合においても、一定の画質を得ることができる画像処理装置、X線撮影装置、及び画像処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明に係る画像処理装置を搭載したX線撮影装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0013】
図1は、本発明のX線撮影装置の構成を示した概略図である。
【0014】
図1のX線撮影装置は、X線を被検体20に照射するX線発生部1と、被検体20に照射するX線領域を操作する操作部2と、操作部2の操作に基づきX線絞りの位置を制御するX線絞り制御部3と、操作部2またはX線絞り制御部3からX線絞りの位置情報を取得するX線絞り情報取得部4と、X線発生部1と対向に配置され、被検体20を透過後のX線強度分布をディジタル画像データとして出力するX線平面検出器5と、X線平面検出器5より出力されたディジタル画像データを記憶・保存する画像メモリ部6と、1枚の画像におけるX線絞りが撮影された領域(以下「絞り領域」という。)及び直接X線が入射した領域(以下「直接X線領域」という。)を検出するための第一画素値閾値及び第二画素値閾値、更に、それらが1枚の画像中に占める割合の閾値である第一割合閾値、第二割合閾値を入力・登録し、また、理想的なディジタル画像データを登録する画像変換情報入力部7と、X線絞り情報取得部4と画像変換情報入力部7の情報に基づきLUTを生成し、そのLUTを用いて画像メモリ部6に記憶・保存されたディジタル画像データの階調変換を行う画像処理部8と、画像処理部8において階調変換されたディジタル画像データを、D/A変換器9aによりディジタル/アナログ変換し、LCD又はCRTからなるモニタ9bに表示する表示部9を有している。
【0015】
X線絞り情報取得部4は、X線絞り制御部3又は操作部2のどちらか一方に接続されればよい。
【0016】
画像処理部8には、階調変換プログラムがインストールされる。この階調変換プログラムは、医用画像やX線絞りの位置情報を読み込む読込部8aと、読み込まれた医用画像のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部8bと、ヒストグラムを用いてLUTを生成するLUT生成部8cと、LUTを用いて画像データの階調変換を行う階調変換部8dと、LUTのスムージング強度を設定するスムージング強度設定部8eと、画像変換情報入力部7により入力・登録された各種閾値を読み出して設定する閾値設定部8fと、を備える。
【0017】
これらのプログラムは、画像処理部8が備える図示しない主メモリにロードされ、CPUにより実行させることによりその機能を果たす。
【0018】
次に、本発明に係るX線撮影装置の動作・原理を図2のフローチャートに沿って説明する。図2は、本実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
(ステップS1)
X線発生部1からX線を照射して被検体の医用画像のディジタル画像データ(以下、「医用画像」という。)を取得する際、ユーザが、画像変換情報入力部7へ、医用画像におけるX線絞りが撮影された領域である絞り領域を検出するための第一画素値閾値と、X線平面検出器5に直接X線が入射した領域である直接X線領域を検出するための第二画素値閾値と、絞り領域及び直接X線領域の各々が1枚の医用画像中に占める割合の閾値である第一割合閾値及び第二割合閾値を入力・登録する(S1)。
【0019】
なお、本実施の形態では、Nega(ネガ)表示を前提とした医用画像(X線画像)を前提に説明を行うが、Nega(ネガ)表示とPosi(ポジ)表示とでは、絞り領域及び直接X線領域が画像上において示す濃度が異なるため、Posi(ポジ)表示の場合には、第一割合閾値及び第二割合閾値が異なる値になったり、また「閾値以上」、「閾値以下」が「閾値よりも大きい」、「閾値未満」になったりすることがある。
【0020】
本ステップで入力・登録した第一画素値閾値及び第二画素値閾値をそれぞれT1、T2とする。T1は、X線絞りの厚さによってX線透過量が異なるため、X線撮影装置毎に異なる値となるが、例えば0〜50の範囲とする。また、T2も、画素値のビット数や照射条件等により異なる値となるが、例えば12bitの場合、その最大値の4095とする。閾値設定部8fは、画像変換情報入力部7に入力・登録された各種閾値を読み出して、その閾値を用いて閾値処理が実行できるように設定する。
【0021】
X線絞りと直接X線とが画像中に占める割合について、図3を用いて説明する。図3は、画像におけるX線絞りと直接X線とを示す模式図である。図3の右上から左下へハッチングが施された領域41は、画像においてX線絞りが撮影された絞り領域41を示し、左上から右下へハッチングが施された領域51は、直接X線領域51を示す。
【0022】
医用画像全体における絞り領域41と直接X線領域51とのそれぞれが占める割合が、X線絞り及び直接X線のそれぞれが1枚の画像中に占める割合となる。ユーザは、これらの割合の閾値を第一割合閾値及び第二割合閾値として入力設定する。これらの閾値は、後のステップにおいてヒストグラムから絞り領域及び直接X線領域に相当する画素を削除するときに用いられるもので、これらの部分が画素値の平担化処理に妨げになると考えられる値を閾値として設定する。例えば、第一割合閾値及び第二割合閾値の設定方法としては、画像の全画素数をM、平坦化する階調をNとした場合、第一画素値又は第二画素値に指定された範囲にある画素の頻度がM/Nを超えないよう、即ち(M/N)*100[%]を閾値とする。
【0023】
(ステップS2)
X線発生部1から照射されたX線は被検体20を透過後、X線平面検出器5より医用画像のディジタル画像データ(以下「医用画像」という。)として出力され、画像メモリ部6に記憶・保存される。また、同時にX線発生部1からX線が照射された際のX線絞りの位置情報が操作部2またはX線絞り制御部3からX線絞り情報取得部4へ送られる。前述の画像メモリ部6に記憶・保存された医用画像には、X線絞り情報取得部4から送られてくるX線絞りの位置情報が付帯される(S2)。
【0024】
(ステップS3)
画像メモリ部6に記憶・保存されたディジタル画像データは画像処理部8にて階調変換がなされる。画像処理部8では以下の手順にて画像処理が行われる(S3)。
【0025】
(ステップS301)
読込部8aは、画像メモリ部6に記憶・保存された、階調変換の対象となる医用画像を読み込み、ヒストグラム生成部8bが、医用画像のヒストグラムを生成する(S301)。
【0026】
(ステップS302)
併せて、読込部8aは、医用画像に付帯されているX線絞りの位置情報を読み込み、ヒストグラム生成部8bが、絞り領域が医用画像中に占める割合を推定・算出する(S302)。
【0027】
X線撮影装置において撮影サイズは複数設けられている場合がほとんどであり、撮影サイズに応じてX線絞りを制御するのが一般的である。各撮影サイズとその撮影サイズを得るためにX線を照射する領域は1対1に対応しているため、各撮影サイズとX線絞りの位置関係は1対1に対応していると言うことができる。すなわち、撮影サイズとその撮影サイズに対応しているX線絞りの位置からどれだけX線絞りが動いているかを知ることができれば、撮影サイズ内に入り込んだX線絞りの割合が推定・算出可能である。
【0028】
(ステップS303)
ヒストグラム生成部8bは、医用画像中における絞り領域が所定の割合を定めた第一割合閾値以上か否かを判定する(S303)。第一割合閾値以上であれば、ステップS304へ進み、第一割合閾値未満であればステップS305へ進む。
【0029】
(ステップS304)
ヒストグラム生成部8bは、ステップS301で生成したヒストグラム中におけるT1以下の画素値を有する部分を削除する(S304)。
【0030】
(ステップS305)
ヒストグラム生成部8bは、医用画像中に占める直接X線領域の割合が第二割合閾値以上か否かを判定する(S305)。この判定は、画像メモリ部6に記憶・保存された医用画像において、T2以上の画素値の合計頻度を基に算出する。第二割合閾値以上であれば、ステップS306へ進み、第二割合閾値未満であればステップS307へ進む。
【0031】
(ステップS306)
ヒストグラム生成部8bは、ステップS301で生成したヒストグラム中におけるT2以上の画素値を有する部分を削除する(S306)。
【0032】
図4は、ヒストグラムに対して行う閾値処理を説明するための模式図であって、画像メモリ部6に記憶・保存された医用画像のヒストグラム中における絞り領域及び直接X線領域のそれぞれの割合が閾値を超えた場合の処理結果を示す。ヒストグラム生成部8bは、ステップS301で生成したヒストグラムからステップS304においてT1以下を取り除き、ステップS306においてT2以上を削除する。取り除いた部分は点線で表示している。
【0033】
第一割合閾値及び第二割合閾値又はT1、T2に基づく閾値処理は、画像変換情報入力部7に閾値処理のON/OFFの入力項目を設け、閾値処理をするか否かについて任意に入力・設定できるようにしてもよい。なお、図4のヒストグラムは、ネガ表示のヒストグラムである。
【0034】
(ステップS307)
LUT生成部8cは、閾値処理をされた医用画像のヒストグラムに基づいて、画像処理部8にて行う階調変換に用いるLUT1を生成する(S307)。
【0035】
図5は、LUTを生成する過程を示した概略図である。図5を参照しながら階調変換に用いるLUTを生成する過程を説明する。図5(a)は医用画像のヒストグラムに対し、閾値処理を行った後のヒストグラムである。
【0036】
LUT生成部8cは、図5(a)のヒストグラムの面積を算出する。ここで面積とは、ヒストグラムを形成する各画素値における頻度の合計である。その算出した面積をGとする。
【0037】
次に、ヒストグラムができるだけ平坦になるように階調を変化させる。平坦化に用いる階調qは、一般的に、平坦化する前の医用画像が有する階調p以下の値を用いる。更に、階調qは、理想的とされる医用画像の階調s以下の値とする。
【0038】
図5(b)は、面積Gを階調qで割り、平坦化した時の各画素値の頻度G/qを算出し、頻度G/qで平坦化したヒストグラムを示す模式図である。図5(a)の最初の画素値0の頻度から順に加算していき、G/qとなれば加算した画素値までを平坦化後の画素値0と定める。以降同様に階調qまで順に頻度G/qになる画素値を決めていくことにより、ヒストグラムの平坦化を行うことができる。ヒストグラムの平坦化は、階調pを階調qに割り当てることと等価の意味をもつ。そこで、平坦化されたヒストグラムを参照し、階調pを入力値とし、階調qを出力値とするLUT1を生成する。
【0039】
図5(c)は、LUT1を示す。上記では、図5(a)から平坦化をして図5(b)が得られ、その図5(b)を用いて図5(c)が生成されるという順に説明したが、これら3つの関係は、図5(c)のLUT1を用いて図5(a)のヒストグラムを階調変換すると図5(b)の平坦化されたヒストグラムが生成されるという関係にある。
【0040】
図5では、説明のために図5(b)の平坦化されたヒストグラムを記載しているが、階調変換のためには図5(c)のLUT1があればよい。よって、明示的に図5(b)の平坦化されたヒストグラムを生成することなく、図5(b)の平坦化処理と等価の演算のみを行い、その演算結果を用いて図5(c)のLUT1を直接求めてもよい。
【0041】
(ステップS308)
LUT生成部8cは、目標ヒストグラムに基づいて画像処理部8にて行う階調変換に用いるLUT2を生成する(S308)。
【0042】
ステップS307と同様に、読込部8aが画像変換情報入力部7に記録された理想的な医用画像のディジタル画像データ(以下「理想的な医用画像」という。)を読み込み、ヒストグラム生成部8bが、ヒストグラム(図5(d))の面積G’を算出し、これを階調qで割って平坦化されたヒストグラム(図5(e))を生成する。
【0043】
そして、平坦化されたヒストグラム(図5(e))に基づいて、入力値が理想的な医用画像の階調s、出力値が平坦化により割り当てられた階調qであるLUT(図5(f))を生成する。
【0044】
画像変換情報入力部7に、理想的な医用画像から絞り領域と直接X線領域とを除く領域のヒストグラムである目標ヒストグラムを登録しておき、読込部8aがこの目標ヒストグラムを読み込むように構成してもよい。この場合、ヒストグラム生成部8bによるヒストグラム生成処理を省略することができる。
【0045】
LUT生成部8cは、平坦化するためのLUT(図5(f))とは逆の変換特性を有するLUT2(図5(g))を生成する。
LUT2の算出に際し、画像変換情報入力部7に一のオーダに対して複数の理想的なディジタル画像データを格納し、ユーザが任意に選択できるように構成してもよい。
【0046】
(ステップS309)
LUT生成部8cは、LUT1、LUT2を合成し、入力値が階調p、出力値が階調sである合成LUTを求める(S309)。
【0047】
(ステップS310)
LUT生成部8cは、スムージング強度設定部8eにおいて設定された強度に応じたスムージング処理を、合成LUTに対して行う(S310)。
【0048】
スムージング演算はLUTを滑らかにする演算であればいかなる演算でもよい。具体的に例えば、移動平均フィルタ、モルフォロジ演算、等を適用することができる。スムージング演算は、スムージング演算の対象となるLUTのそれぞれの形状に応じて行う。
【0049】
また、スムージング強度設定部8eは、ユーザが操作部2を操作して、スムージングの強弱を任意に選択入力し、その入力値に応じて設定するように構成してもよいし、スムージング演算前のLUTの形状から、スムージングの強弱を複数段階の強度の中から自動決定するように構成してもよい。
【0050】
ここで強弱とは、スムージングの度合いであり、適用したスムージング演算の手法に依存する要素である。具体的には、例えば、スムージング演算の手法に移動平均フィルタを適用したとすれば、フィルタをかけるマスクサイズがスムージングの強弱を決定する要素となり、マスクサイズを大きくすることでスムージングの効き目が強く、一方、マスクサイズを小さくすることでスムージングの効き目が弱くなる。
【0051】
本実施形態では、スムージング演算を合成LUTに対して行ったが、ステップS307においてLUT1に対してスムージング演算を行い、ステップS308においてLUT2に対してスムージング演算を行い、本ステップを省略してもよい。
【0052】
(ステップS311)
階調変換部8dは、合成LUTを用いて、閾値処理を行った医用画像の階調変換を行う(S311)。階調変換は、閾値処理にて削除された絞り領域の画素と直接X線領域の画素に対しては行わない。ここで特筆すべき点は、図5(c)、図5(g)に示すようにLUT1の出力値の階調とLUT2の入力値の階調とが等しいということである。また、図5(d)に示した理想的な医用画像の階調sが平坦となるように定めた階調q以上であるということである。
【0053】
(ステップS4)
D/A変換器9aは、階調変換部8dにより階調変換された医用画像(ディジタル画像データ)をアナログ信号へ変換し、モニタ9bが階調変換後の画像を表示する(S4)。
【0054】
上記実施形態では、LUT1とLUT2とを合成して合成LUTを生成し、これに用いて階調変換をしたが、合成LUTを生成せずに、LUT1とLUT2とを順次用いて階調変換を行ってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、X線撮影装置に本発明に係る画像処理装置を搭載したが、画像処理部8にインストールした階調変換プログラムを、X線撮影装置に搭載及び接続されていないコンピュータにインストールしてX線画像の階調変換・表示を行ってもよい。
【0056】
上記実施形態によれば、撮影条件が不適切、また医師・技師の手技習熟度の差等が要因で画像データのヒストグラムの分布が一定でない場合においても、再撮影を行う必要がなく一定の画質を得ることができ、医師が効率的に診断を行える画像処理装置、X線撮影装置、及び画像処理方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】X線撮影装置の構成を示した概略図。
【図2】本実施形態の処理の流れを示すフローチャート。
【図3】画像におけるX線絞りと直接X線とを示す模式図。
【図4】ヒストグラムに対して行う閾値処理を説明するための模式図。
【図5】LUTを生成する過程を示した概略図。
【符号の説明】
【0058】
1:X線発生部、2:操作部、3:X線絞り制御部、4:X線絞り情報取得部、5:X線平面検出器、6:画像メモリ部、7:画像変換情報入力部、8:画像処理部、9:表示部、20:被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮影装置を用いて被検体を撮影して得られた医用画像を読み込む読込手段と、
前記医用画像の撮影に適用されたオーダにおいて理想的とされる医用画像のヒストグラムである目標ヒストグラムを格納する格納手段と、
前記読み込まれた医用画像の画素値の分布を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成手段と、
前記生成されたヒストグラムと前記目標ヒストグラムとに基づいて、前記医用画像の階調を前記理想的とされる医用画像の階調に変換するためのルックアップテーブルを生成するルックアップテーブル生成手段と、
前記ルックアップテーブルを用いて前記医用画像の階調を変換する階調変換手段と、
前記階調変換後の医用画像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ルックアップテーブル生成手段は、前記医用画像の階調数及び前記理想的とされる医用画像の階調数より少ない所定の階調数を用いて前記医用画像のヒストグラムを平坦化するための第一ルックアップテーブルと、前記目標ヒストグラムを前記所定の階調数を用いて平坦化するためのルックアップテーブルとは逆の変換特性を有する第二ルックアップテーブルと、を生成し、
前記階調変換手段は、前記第一ルックアップテーブル及び前記第二ルックアップテーブルに基づいて階調を変換する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ルックアップテーブル生成手段は、前記第一ルックアップテーブルと前記第二ルックアップテーブルとを合成し、前記医用画像の階調を入力値とし、前記理想的とされる医用画像の階調を出力値とする合成ルックアップテーブルを生成し、
前記階調変換手段は、前記合成ルックアップテーブルを用いて階調を変換する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記目標ヒストグラムは、前記理想的とされる医用画像において前記X線撮影装置が備えるX線絞りが撮影された絞り領域と、前記X線撮影装置が備えるX線検出器に前記X線撮影装置から照射されたX線が直接入射した直接X線領域と、を前記理想的とされる医用画像から取り除いた領域の画素値の分布を示し、
前記医用画像における前記絞り領域を検出するための所定の画素値の閾値である第一画素値閾値と、前記医用画像における前記直接X線領域を検出するための所定の画素値の閾値である第二画素値閾値と、を設定する閾値設定手段を更に備え、
前記ヒストグラム生成手段は、前記第一画素値閾値以下の画素値を有する画素と、又は前記第二画素値閾値以上の画素値を有する画素とを、前記生成されたヒストグラムから削除し、
前記ルックアップテーブル生成手段は、前記削除されたヒストグラムを用いて前記第一ルックアップテーブルを生成する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記読込手段は、前記医用画像を撮影したときの前記X線撮影装置が備えるX線絞りの位置情報を更に読み込み、
前記閾値設定手段は、前記絞り領域が前記医用画像に占める割合により定義された第一割合閾値と、前記第二画素値閾値以上の画素値を有する画素数が前記医用画像に占める割合により定義された第二割合閾値と、を更に設定し、
前記ヒストグラム生成手段は、前記X線絞りの位置情報に基づいて前記絞り領域が前記医用画像に占める割合を算出し、その算出した割合が前記第一割合閾値以上であれば、前記生成されたヒストグラムから前記第一画素値閾値以下の画素値を有する画素を除き、更に、前記第二画素値閾値以上の画素値を有する画素の合計頻度を算出し、その算出した合計頻度に基づいて前記医用画像に占める前記第二画素値閾値以上の画素値を有する画素数の割合を算出し、その算出した割合が前記第二割合閾値以上であれば、前記生成されたヒストグラムから前記第二画素値閾値以上の画素値を有する画素を削除する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ルックアップテーブル生成手段は、前記ルックアップテーブル、前記第一ルックアップテーブル及び前記第二ルックアップテーブル、若しくは前記合成ルックアップテーブルのいずれかに対してスムージング演算を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記スムージング演算におけるスムージングの強弱の選択入力を受け付ける、又は前記スムージング演算前の前記第一ルックアップテーブル、前記第二ルックアップテーブル、及び前記合成ルックアップテーブルの各々の形状に基づいて前記スムージング演算の強弱を決定するスムージング強度設定手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置を備えることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項9】
X線撮影装置を用いて被検体を撮影して得られた医用画像において前記X線撮影装置が備えるX線絞りが撮影された絞り領域が、前記医用画像に占める割合により定義された第一割合閾値と、前記医用画像において前記X線撮影装置が備えるX線検出器に前記X線撮影装置から照射されたX線が直接入射した直接X線領域が、前記医用画像に占める割合により定義された第二割合閾値と、の入力を受け付けて登録するステップと、
前記医用画像と、前記医用画像を撮影したときの前記X線絞りの位置情報と、を読み込むステップと、
前記医用画像の撮影に適用されたオーダにおいて理想的とされる医用画像から、前記絞り領域と前記直接X線領域とを削除した領域の画素値の分布を示す目標ヒストグラムを読み込むステップと、
前記医用画像の画素値の分布を示すヒストグラムを生成するステップと、
前記X線絞りの位置情報に基づいて、前記絞り領域が前記医用画像に占める割合を算出し、その算出した割合が前記第一割合閾値以上であれば、前記医用画像のヒストグラムから前記絞り領域に相当する画素値を有する画素を削除すると共に、前記直接X線領域に相当する画素値を有する画素数が前記医用画像に占める割合を算出し、その算出した割合が前記第二割合閾値以上であれば、前記医用画像のヒストグラムから前記直接X線領域に相当する画素値を有する画素を削除するステップと、
前記絞り領域及び前記直接X線領域に相当する画素が削除されたヒストグラムを、前記医用画像の階調数及び前記理想的とされる医用画像の階調数よりも少ない所定の階調数を用いて平坦化するための第一ルックアップテーブルと、前記目標ヒストグラムを前記所定の階調数を用いて平坦化するためのルックアップテーブルとは逆の変換特性を有する第二ルックアップテーブルと、を生成するステップと、
前記第一ルックアップテーブル及び前記第二ルックアップテーブルに基づいて、前記医用画像の階調を前記理想的とされる医用画像の階調に変換するステップと、
前記階調変換後の医用画像を表示するステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−17329(P2010−17329A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180038(P2008−180038)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】